台本概要
148 views
タイトル | 築いた均衡〜崩れ〜 |
---|---|
作者名 | 明桜 リア (@ria_meiou) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 6人用台本(不問6) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
5人台本。兼ね役があります。 四種族によって戦争が起こり、荒らされた世界を創造神が沈めた世界。 その戦争以降には均衡が保たれていた。 精霊も土地に住まう神々も大地も生きているもの達も、平和に暮らしていた。 だが、とある時にその均衡が…。 *使用について* ・使用許可は要りません。 ・配信に使っていただいても構いませんん。もし使うよーって言ってくださったら、飛んで見に行きます。 ・自作発言はお控えください。 ・改変、加工は可能です 後は、とにかく楽しんで演じてください! 語尾、一人称の改変、大丈夫です。 148 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
シンカ | 不問 | 42 | 獣人族の当主である。気性が荒いが基本的には優しい性質を持っている。メイルと相性が悪いため、よく喧嘩している。 |
メイル | 不問 | 43 | 天使の当主である。大人しく頭脳明晰だが、少し大人気ないところもある。アガレイとの相性が最悪なため、基本は喧嘩腰に話して喧嘩になる。 |
アガレイ | 不問 | 31 | 魔族の当主である。怠惰を極めた魔族。ふわふわとした話し方で、常に眠そうにしている。実力は本物で、魔族の中では誰も敵うものがいない。 |
ミレイ | 不問 | 45 | 人間の当主である。片言で話す。伝わりにくいようだが、的確な事を言うため、他のものにもわかるようにしてる。少しおっとりとしている。 |
ナレーション | 不問 | 16 | ナレーション。この世界の出来事を語る人物。 |
神 | 不問 | 1 | この世界を創り出した神。戦争を起こし出したもの達に呆れてしまっている。怒り心頭。 今は均衡が保たれている事に満足しているが…。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ナレーション:帝国歴1440年。様々な種族が存在していた。獣族、魔族、天使族、人間。この四種族が世界の*中枢《ちゅうすう》にいた。
ナレーション:この世界には他にも精霊、土地を守る神々が暮らしている。
ナレーション:しかし、その四種族は互いの性質が合わないせいで、相対するしてしまう。
ナレーション:四種属は長年争い続けてきたせいで、それぞれの土地を守る神々の神域は荒らされ、種族の*疲弊《ひへい》していくだけでなく、精霊や大地すらも戦争で疲弊してしまっていた。
ナレーション:*醜《みにく》い争いを見ていた創造神が怒り、4種族に*鉄槌《てっつい》を下す。
ナレーション:そして、これ以上戦争を犯す事がないように、協定を結ぶように告げる。
0:
神:『決して互いの領地を*侵《おか》す事なく、尊重し合って生きていく事。精霊達を疲弊させぬこと。土地を守る神々の神域を踏み荒らさむこと。我が言葉に*相反《あいはん》したものは、我が手によって滅ぼされるものと思え。』
0:
ナレーション:そう言い残して、創造神は去っていった。去っていく際に、それぞれの種族にその証として獣族には『上向きの*菱形《ひしがた》』、魔族には『左向きの菱形』、天使族には『右向きの菱形』、そして、人間には『下向きの菱形』の模様を手の甲に浮かび上がらせた。
ナレーション:合わせると、十字架の形になるようにした。神の下した事に反したものは、この模様より火が出てその身が*業火《ごうか》の*焔《ほのお》に焼かれるだろう。
ナレーション:そうして、互いの種族は協定を結び、国交を開いて平和に暮らしていた。
0:
ナレーション:ある時までは…
0:
0:
ナレーション:ここは獣族が暮らす『ワハシュ』。森と共に生きる場所。
ナレーション:森に住む精霊達に護られた土地。
ナレーション:ここを統治しているのは、『シンカ』という獣人の族長。
ナレーション:今、行なっているのは集落の新たな家を建築している最中である。
0:
シンカ:おい!お前!どうしたら、家を作んのにその素材を持ってくんだよ!ちゃんとしろ!
シンカ:ったく…最近の奴らはなってちゃいねぇ…。
メイル:相変わらずな…低脳ですね。
シンカ:あぁ!?…ちっ、なんだよ。メイルか。
メイル:なんだとはどう言う事ですか。失礼ではありませんか。
シンカ:本来なら、会いたくも見たくもねぇ奴だぜ。
メイル:こちらこそですよ。当主同士で無ければ、会うことはないでしょうね。
シンカ:全くだぜ。
0:
ナレーション:四種族は年に一度、四つの種族のどこかの土地に行き、当主会議を行うのが通例となっている。
ナレーション:そうして、種族同士の*均衡《きんこう》を保とうとしている。今回は獣族の集落で行う事になっていた。
0:
メイル:にしても、遅いですね。アガレイは*怠惰《たいだ》の魔族なので分かりますが、ミレイはしっかりと時間を守る種族だというのに。
シンカ:確かにな。あいつは時間にルーズじゃねぇからな。アガレイの野郎は名前の割に*堕落《だらく》にしてっからな。
メイル:それは言えてますね。…おや?噂をすればです、ね。
アガレイ:失礼だなぁ…。そこまでではなよぉ…。ちょぉっとめんどくさいなって思っているだけで…。
シンカ:それがだめなんじゃねぇか。
アガレイ:ちぇー…。
0:
ナレーション:アガレイは名前とは相反して、怠惰を*司《つかさど》る魔族。
ナレーション:なぜ怠惰の者が当主をしているのかというと、一番力を持っていたのがアガレイだという理由だけである。
ナレーション:それは魔族の世界では、一番に重要視されているところだからこそ、アガレイが選ばれたのだ。
0:
シンカ:しっかりしろ。
メイル:そうですよ。当主なんですから。
アガレイ:えーやだよぉ…。
0:
0:シンカが入り口が騒がしい事に気がつく。
0:
シンカ:…あ?なんか騒がしいじゃねぇか。
メイル:行った方がいいですね。
アガレイ:僕はここにいるねぇ…。
シンカ:勝手にしろ。おい、行くぞ、メイル。
メイル:言われなくても。
0:
0:入り口に行くと、そこには獣族の人間達に支えられている者がいた。
0:
シンカ:なんだぁ、誰か倒れた…って、ミレイ!
0:
ナレーション:入り口で獣人族に抱えられていたのは、人間の当主である『ミレイ』であった。
ナレーション:ミレイは優しく、心も清らかな性格をしている為、民に好かれているような人物である故に当主に選ばれたのだ。
ナレーション:優しい性格だが、決して弱くはない。他の当主達と同じように戦闘に*長《た》けている。
0:
メイル:なんですって!?ミレイ、一体何が…こんなに傷が…!
シンカ:お前!回復魔法が得意だろうが!さっさとやれ!
メイル:言われなくてもやりますよ!
0:
0:メイルがミレイに魔法をかける。
0:
メイル:ミレイ!大丈夫ですか?
ミレイ:…っ、メ、メイル…?
メイル:そうです。私ですよ。
シンカ:俺もいるぞ!一体何があったってんだ。
ミレイ:誰かの、襲撃、受けた…。
メイル:襲撃!?
シンカ:協定が結ばれてるってのにか!?
ミレイ:しっかりと、顔は見れなかった。でも、四種族のどこにも、属していない、そう見えた…。
シンカ:なんだと!?
メイル:我々に属さない、ですって…?
0:
0:そこにアガレイがやってくる。
0:
アガレイ:何があったのぉ…?誰も来ないから見にきたけど…。なんでミレイが倒れてるのぉ…?
ミレイ:襲撃に、*遭《あ》った。
アガレイ:襲撃ぃ…?協定むすんでるのに、何でぇ…?
ミレイ:違う。私たちと。見た事、ない。
アガレイ:僕たちとは、違う…?そんなのいるわけないよぉ…。
メイル:ミレイが嘘をつくはずもありません。
シンカ:そうだな。こいつは嘘をつけねぇやつだ。
ミレイ:言いたい放題…。いいけど。
シンカ:にしても…どこにも属してないとなると、一体…。
アガレイ:どこにも属してないところの種族なんて、そんなのいるのぉ?
メイル:いるわけがないです。いたら、創造神が見逃すはずがありません。
ミレイ:そう。なのに、いた…。
アガレイ:うーん…、ちょっと記憶を見せてねぇ?
ミレイ:構わない。
0:
0:そういうとアガレイはミレイの額に己の額を重ねる。
0:
アガレイ:うーん…。これは確かに、違う種族に見えるねぇ…。
アガレイ:獣人の耳もない、人間のような感じでもない、魔族と天使の羽もない。そうだなぁ…もう居なくなった、『*堕ち神《おちかみ》』みたいだよぉ…。
0:
ナレーション:『堕ち神』。遥か昔に大地に住んでいた*数多《あまた》の神が、戦争の最中に神の領域を荒らされたせいで神でなくなり、怨霊になってしまった神を『堕ち神』と呼んだ。
ナレーション:『堕ち神』は四種族のみならず、精霊さえも襲ってしまっていた。しかし、争いが終わったことでこの世界を*創《つく》った『創造神』によって元の神に戻る事ができた。
ナレーション:この戦争以降、誰も神の領域を侵すものは居ない。
0:
シンカ:まじかよ…。
メイル:これは、重大な問題ですね…。
ミレイ:私も、知らない。
ミレイ:ここ、来る途中。急に、誰か、きた。
ミレイ:止まったら、急に、攻撃された。堕ち神、似ている。
アガレイ:僕が見たのと一緒だよぉ。
メイル:そうですか…これは困った事になりそうですね。
メイル:何千年と保たれてきた均衡が崩れる可能性があります。
アガレイ:そう、これじゃあ、また神の神罰が下るほどの事が起こりかねないねぇ…。
アガレイ:もし、本当に居たらの話だけど…見た限りいるんだよねぇ…。
シンカ:まじぃな…、均衡が崩れたら、またあの頃に戻っちまう。
ミレイ:だめ。困る。
ミレイ:どうにかして、突き止める。
メイル:そうですね。突き止める必要があります。
ミレイ:私が行く。知っているの、私。
ミレイ:場所も、人物も。だから、先に、行く。
シンカ:それはだめだろ。
メイル:だめですね。
ミレイ:…なんで。
メイル:危ないからです。私が先行する方がいいでしょう。
メイル:空から見れるので。
シンカ:翼がある天使様だからな。頼んだぞ。
メイル:言われずとも。アガレイ、私に情報共有をしてください。
アガレイ:えー…、めんどくさい…。
メイル:早くしてください。
アガレイ:わかったよぉ…。額だして。
0:
0:額を出すメイルにアガレイが指を当てる。
0:
メイル:…なるほど。この集落よりも少し遠いくらいですね。
シンカ:そうか。よし!先行頼むぜ!天使さんよぉ!
ミレイ:お願い。
アガレイ:僕はお留守番…
ミレイ:(被せるように)だめ、行く。
アガレイ:わかったよぉ…。ミレイの圧すごいよぉ…。
メイル:では行きます。行ったら、光で場所を示しますので、来てくださいね。
ミレイ:理解。頼む。
シンカ:よっしゃ!頼むぜ!
アガレイ:おねがぁい…。
0:
0:メイルが翼を出して飛び去る。
0:暫くすると、遠くの方に光の柱が見えた。
0:
シンカ:あそこか。よし、地形を知っているのは俺だから、お前ら着いてこい。
ミレイ:了解した。
アガレイ:はぁい…。
0:
ナレーション:シンカ、ミレイは馬に乗り、アガレイは翼で光の柱のところまで向かっていく。
ナレーション:着いた先は森の奥深くで、メイルがそこに立っていた。
0:
メイル:遅かったですね。
シンカ:遅かねぇわ!
ミレイ:心外。早く着いた。
アガレイ:そうだよぉ…。僕頑張ったのにぃ…。
シンカ:それにしても…ミレイ。
ミレイ:何。
シンカ:なんでこんな道に来たんだ?
メイル:そうですね。ここからは、あの集落に行くのは遠回りですよね。
ミレイ:…。
アガレイ:そうだよねぇ…。ここからは行くのが大変だよぉ…。
アガレイ:しかも、ここは神域だしぃ…。
メイル:ミレイ、教えてもらえますか?
シンカ:おい、ミレイを疑ってんのか?
メイル:違います。純粋な疑問です。
アガレイ:そうだね…。気になっちゃうよねぇ…。
ミレイ:…。
シンカ:そうかよ。で?ミレイ、何か理由でもあんのか?
ミレイ:…。
メイル:ミレイ?
ミレイ:んふふ…。
アガレイ:ミレイ…?
ミレイ:あはははははは!!
シンカ:ミ、ミレイ…どうした…
ミレイ:(被せるように)理解できないのかい?
メイル:…どういう意味ですか?
ミレイ:このワタクシが!新たな種族だからダ!!
アガレイ:新たな…種族…?
アガレイ:そんなこと出来るわけ…。
ミレイ:理解できないとは…。*嘆《なげ》かわしい…。
ミレイ:わかってもらえるよう、見せようではないいカ!!
0:
ナレーション:ミレイがそう言うと、前屈みになった瞬間にその背中から黒い翼が生えてくる。
ナレーション:その姿は魔族にも、天使にも見えたが、それとは似て非なる存在であるのがみた瞬間に理解できた。
ナレーション:3人は*呆然《ぼうぜん》とした状態で、ミレイを見つめるしかない。
ナレーション:その3人の姿に、*蕩《とろ》ける様な笑顔を見せる。
0:
ミレイ:いいなぁ…!その顔を見たかっタァ…。
メイル:ミレイ、その姿は…。
シンカ:メイル!今はそこじゃねぇ!
シンカ:なんで、どうやって新しい種族になれた!?
アガレイ:…どう頑張っても、新しい種族なんて生まれないはずだよぉ。別の種族同士が結婚したところで産まれるのは、どちらかの種族だけのはずだよぉ?
アガレイ:それと…どうやって記憶を塗り変えれたの?
メイル:っ!そうです。アガレイの記憶を見る能力は、誰にも真似できるものではありません。
シンカ:確かに。アガレイにしか出来ねぇ事だぜ。…どうやって記憶を操作した。
ミレイ:そんなの簡単です。神の領域を*侵《おか》して、攻撃をしていただきて傷を作っただけですヨ。
シンカ:神の領域を侵した…だと…!?
メイル:そんな事をしたと言うのですか!?神を堕ち神にするなど、決してしてはいけない事ですよ。それを、あなたは…!
アガレイ:そんな事をした上に、その後の事を消し去ったって事だよねぇ。
ミレイ:そうだヨ。記憶を見せられないようにしタ。
ミレイ:それを新しい種族になったことで、出来るようになっただけの事。
メイル:そもそも新しい種族なんてなれるわけが…
ミレイ:(遮るように)出来るんダナァ、これが。
シンカ:だから、どうやってなったって聞いてんだ!
アガレイ:あ、まさか…。
メイル:何か思い浮かぶことがあるんですか!?
でも、出回ってるはずかないんだよぉ。きちんと管理してるでしょ?
シンカ:おい…、まさか…!
メイル:そんなはずはありません…!あれは大神殿に保管されているはず!だから、禁書など…
ミレイ:(被せて)そうだヨ!大正解!!
0:
ナレーション:そう言いながら、ミレイは懐から本を取り出す。
ナレーション:その本からは*禍々《まがまが》しい光を放っていた。
0:
ミレイ:ワタクシはとある古い屋敷を壊す予定だった所に調査に入っタ。そうして、屋敷の中を探索していたら、たまたま触った壁が動き、そこには隠し通路があっタ。
ミレイ:隠し通路を進んでいくと、いろんなコレクションを置いてある部屋を見つけ、その中央の台の上に鎖で絡まっている本を見つけタ。
シンカ:それが、まさか…。
ミレイ:分かったカネ!そう!新たな種族の誕生にまつわる内容だッタ!
メイル:そんなこと、本を読んだだけで出来るはずがありません。
ミレイ:出来るんですよ、これが…。そう、*生贄《いけにえ》さえあれば!!
アガレイ:禁術も禁術じゃないか…。生贄をどこから…って、まさか、ミレイを信じている人間達を、生贄にしたのぉ…?
シンカ:なん、だと…!
ミレイ:当たり前じゃないカ!!ワタクシの*糧《かて》になるだから、光栄に思って欲しいほどダ…。
シンカ:テメェ…!なんでそんなこと出来るんだよ!
メイル:信じていた者達を裏切るなんて…!
アガレイ:…僕でさえ、しないのにねぇ…。魔族より魔族じゃないか…。
ミレイ:お褒めいただき、光栄で、す、ヨ。
シンカ:…聞きてぇことがある。
ミレイ:これ以上話すのは嫌だガ…昔の仲間ダ。聞いてあげヨウ、なにかネ?
シンカ:新しい種族を作って、どうするつもりだ。
ミレイ:それカネ…。もちろん、たった一つ。
ミレイ:新しい*混沌《こんとん》を生み出すため!!
メイル:新しい…混沌…?
シンカ:混沌を生み出してそうするもかも知りてぇが、話はそれだけじゃねぇ!
シンカ:目の甲にある菱形は、どうやって消した!
メイル:そうです!私たちに与えられたこの模様は、*禁忌《きんき》を犯したものは、業火の焔によって焼かれて死んでしまうはずです。
メイル:だから、こんな事が許される事などない!
アガレイ:決して、誰も破れることがないよ。創造神が決めたものだからね。
ミレイ:全く…。そんな事簡単な事ダ。
ミレイ:私が創造神よりも強い力を持っているから、消せただけの事!
ミレイ:そして、創造神の思っている事をも*凌駕《りょうが》する混沌!神をも滅ぼす力を持つ種族!
ミレイ:それがワタクシ達『*堕天使《だてんし》』ダ!!
アガレイ:『堕天使』…?それは戦争が始まる前に滅んだでしょぉ?
アガレイ:それに、たった一冊でなれるはずないのに…。
メイル:そうです。禁書は四冊も必要な…
ミレイ:(被せるように)そんなの関係ないではないカ。ワタクシがここにいる事。それこそが真実ではないカ!!
ミレイ:目の前にいるワタクシこそ、その『堕天使』…!!
シンカ:テメェ…!
ミレイ:なんと言われようとも、ワタクシの考えは変わなイ。
ミレイ:この世に混沌をもたらし、そうして…
0:
ミレイ:世界を滅ぼしてくれル。
0:
ミレイ:それでは、ここら辺でワタクシは失礼いたしまス。時間が持ったないなイ。
メイル:待ちなさい!
アガレイ:話は終わってないよ。
ミレイ:ワタクシは終わっタ。これ以上の情報は与えるつもりはなイ。
シンカ:待てよ!おい!
ミレイ:それでは、さようなら…。あは、あはははははははは!!!!!
0:
ナレーション:ミレイは高らかに笑って、その場から去っていった。
ナレーション:その姿を呆然と見ることしか、3人にはできなかった。
0:
ナレーション:こうして、混沌の世界への道ができてしまった。
ナレーション:古き時代に神さえも*凌駕《りょうが》したと言われる『堕天使』。
ナレーション:その種族を生み出してしまったミレイ。
0:
ナレーション:この世は、新たな混沌の世界が生み出してしまった。
ナレーション:一体どうなってしまうのか。
0:
ナレーション:彼らにも、想像ができることがなかった。
ナレーション:帝国歴1440年。様々な種族が存在していた。獣族、魔族、天使族、人間。この四種族が世界の*中枢《ちゅうすう》にいた。
ナレーション:この世界には他にも精霊、土地を守る神々が暮らしている。
ナレーション:しかし、その四種族は互いの性質が合わないせいで、相対するしてしまう。
ナレーション:四種属は長年争い続けてきたせいで、それぞれの土地を守る神々の神域は荒らされ、種族の*疲弊《ひへい》していくだけでなく、精霊や大地すらも戦争で疲弊してしまっていた。
ナレーション:*醜《みにく》い争いを見ていた創造神が怒り、4種族に*鉄槌《てっつい》を下す。
ナレーション:そして、これ以上戦争を犯す事がないように、協定を結ぶように告げる。
0:
神:『決して互いの領地を*侵《おか》す事なく、尊重し合って生きていく事。精霊達を疲弊させぬこと。土地を守る神々の神域を踏み荒らさむこと。我が言葉に*相反《あいはん》したものは、我が手によって滅ぼされるものと思え。』
0:
ナレーション:そう言い残して、創造神は去っていった。去っていく際に、それぞれの種族にその証として獣族には『上向きの*菱形《ひしがた》』、魔族には『左向きの菱形』、天使族には『右向きの菱形』、そして、人間には『下向きの菱形』の模様を手の甲に浮かび上がらせた。
ナレーション:合わせると、十字架の形になるようにした。神の下した事に反したものは、この模様より火が出てその身が*業火《ごうか》の*焔《ほのお》に焼かれるだろう。
ナレーション:そうして、互いの種族は協定を結び、国交を開いて平和に暮らしていた。
0:
ナレーション:ある時までは…
0:
0:
ナレーション:ここは獣族が暮らす『ワハシュ』。森と共に生きる場所。
ナレーション:森に住む精霊達に護られた土地。
ナレーション:ここを統治しているのは、『シンカ』という獣人の族長。
ナレーション:今、行なっているのは集落の新たな家を建築している最中である。
0:
シンカ:おい!お前!どうしたら、家を作んのにその素材を持ってくんだよ!ちゃんとしろ!
シンカ:ったく…最近の奴らはなってちゃいねぇ…。
メイル:相変わらずな…低脳ですね。
シンカ:あぁ!?…ちっ、なんだよ。メイルか。
メイル:なんだとはどう言う事ですか。失礼ではありませんか。
シンカ:本来なら、会いたくも見たくもねぇ奴だぜ。
メイル:こちらこそですよ。当主同士で無ければ、会うことはないでしょうね。
シンカ:全くだぜ。
0:
ナレーション:四種族は年に一度、四つの種族のどこかの土地に行き、当主会議を行うのが通例となっている。
ナレーション:そうして、種族同士の*均衡《きんこう》を保とうとしている。今回は獣族の集落で行う事になっていた。
0:
メイル:にしても、遅いですね。アガレイは*怠惰《たいだ》の魔族なので分かりますが、ミレイはしっかりと時間を守る種族だというのに。
シンカ:確かにな。あいつは時間にルーズじゃねぇからな。アガレイの野郎は名前の割に*堕落《だらく》にしてっからな。
メイル:それは言えてますね。…おや?噂をすればです、ね。
アガレイ:失礼だなぁ…。そこまでではなよぉ…。ちょぉっとめんどくさいなって思っているだけで…。
シンカ:それがだめなんじゃねぇか。
アガレイ:ちぇー…。
0:
ナレーション:アガレイは名前とは相反して、怠惰を*司《つかさど》る魔族。
ナレーション:なぜ怠惰の者が当主をしているのかというと、一番力を持っていたのがアガレイだという理由だけである。
ナレーション:それは魔族の世界では、一番に重要視されているところだからこそ、アガレイが選ばれたのだ。
0:
シンカ:しっかりしろ。
メイル:そうですよ。当主なんですから。
アガレイ:えーやだよぉ…。
0:
0:シンカが入り口が騒がしい事に気がつく。
0:
シンカ:…あ?なんか騒がしいじゃねぇか。
メイル:行った方がいいですね。
アガレイ:僕はここにいるねぇ…。
シンカ:勝手にしろ。おい、行くぞ、メイル。
メイル:言われなくても。
0:
0:入り口に行くと、そこには獣族の人間達に支えられている者がいた。
0:
シンカ:なんだぁ、誰か倒れた…って、ミレイ!
0:
ナレーション:入り口で獣人族に抱えられていたのは、人間の当主である『ミレイ』であった。
ナレーション:ミレイは優しく、心も清らかな性格をしている為、民に好かれているような人物である故に当主に選ばれたのだ。
ナレーション:優しい性格だが、決して弱くはない。他の当主達と同じように戦闘に*長《た》けている。
0:
メイル:なんですって!?ミレイ、一体何が…こんなに傷が…!
シンカ:お前!回復魔法が得意だろうが!さっさとやれ!
メイル:言われなくてもやりますよ!
0:
0:メイルがミレイに魔法をかける。
0:
メイル:ミレイ!大丈夫ですか?
ミレイ:…っ、メ、メイル…?
メイル:そうです。私ですよ。
シンカ:俺もいるぞ!一体何があったってんだ。
ミレイ:誰かの、襲撃、受けた…。
メイル:襲撃!?
シンカ:協定が結ばれてるってのにか!?
ミレイ:しっかりと、顔は見れなかった。でも、四種族のどこにも、属していない、そう見えた…。
シンカ:なんだと!?
メイル:我々に属さない、ですって…?
0:
0:そこにアガレイがやってくる。
0:
アガレイ:何があったのぉ…?誰も来ないから見にきたけど…。なんでミレイが倒れてるのぉ…?
ミレイ:襲撃に、*遭《あ》った。
アガレイ:襲撃ぃ…?協定むすんでるのに、何でぇ…?
ミレイ:違う。私たちと。見た事、ない。
アガレイ:僕たちとは、違う…?そんなのいるわけないよぉ…。
メイル:ミレイが嘘をつくはずもありません。
シンカ:そうだな。こいつは嘘をつけねぇやつだ。
ミレイ:言いたい放題…。いいけど。
シンカ:にしても…どこにも属してないとなると、一体…。
アガレイ:どこにも属してないところの種族なんて、そんなのいるのぉ?
メイル:いるわけがないです。いたら、創造神が見逃すはずがありません。
ミレイ:そう。なのに、いた…。
アガレイ:うーん…、ちょっと記憶を見せてねぇ?
ミレイ:構わない。
0:
0:そういうとアガレイはミレイの額に己の額を重ねる。
0:
アガレイ:うーん…。これは確かに、違う種族に見えるねぇ…。
アガレイ:獣人の耳もない、人間のような感じでもない、魔族と天使の羽もない。そうだなぁ…もう居なくなった、『*堕ち神《おちかみ》』みたいだよぉ…。
0:
ナレーション:『堕ち神』。遥か昔に大地に住んでいた*数多《あまた》の神が、戦争の最中に神の領域を荒らされたせいで神でなくなり、怨霊になってしまった神を『堕ち神』と呼んだ。
ナレーション:『堕ち神』は四種族のみならず、精霊さえも襲ってしまっていた。しかし、争いが終わったことでこの世界を*創《つく》った『創造神』によって元の神に戻る事ができた。
ナレーション:この戦争以降、誰も神の領域を侵すものは居ない。
0:
シンカ:まじかよ…。
メイル:これは、重大な問題ですね…。
ミレイ:私も、知らない。
ミレイ:ここ、来る途中。急に、誰か、きた。
ミレイ:止まったら、急に、攻撃された。堕ち神、似ている。
アガレイ:僕が見たのと一緒だよぉ。
メイル:そうですか…これは困った事になりそうですね。
メイル:何千年と保たれてきた均衡が崩れる可能性があります。
アガレイ:そう、これじゃあ、また神の神罰が下るほどの事が起こりかねないねぇ…。
アガレイ:もし、本当に居たらの話だけど…見た限りいるんだよねぇ…。
シンカ:まじぃな…、均衡が崩れたら、またあの頃に戻っちまう。
ミレイ:だめ。困る。
ミレイ:どうにかして、突き止める。
メイル:そうですね。突き止める必要があります。
ミレイ:私が行く。知っているの、私。
ミレイ:場所も、人物も。だから、先に、行く。
シンカ:それはだめだろ。
メイル:だめですね。
ミレイ:…なんで。
メイル:危ないからです。私が先行する方がいいでしょう。
メイル:空から見れるので。
シンカ:翼がある天使様だからな。頼んだぞ。
メイル:言われずとも。アガレイ、私に情報共有をしてください。
アガレイ:えー…、めんどくさい…。
メイル:早くしてください。
アガレイ:わかったよぉ…。額だして。
0:
0:額を出すメイルにアガレイが指を当てる。
0:
メイル:…なるほど。この集落よりも少し遠いくらいですね。
シンカ:そうか。よし!先行頼むぜ!天使さんよぉ!
ミレイ:お願い。
アガレイ:僕はお留守番…
ミレイ:(被せるように)だめ、行く。
アガレイ:わかったよぉ…。ミレイの圧すごいよぉ…。
メイル:では行きます。行ったら、光で場所を示しますので、来てくださいね。
ミレイ:理解。頼む。
シンカ:よっしゃ!頼むぜ!
アガレイ:おねがぁい…。
0:
0:メイルが翼を出して飛び去る。
0:暫くすると、遠くの方に光の柱が見えた。
0:
シンカ:あそこか。よし、地形を知っているのは俺だから、お前ら着いてこい。
ミレイ:了解した。
アガレイ:はぁい…。
0:
ナレーション:シンカ、ミレイは馬に乗り、アガレイは翼で光の柱のところまで向かっていく。
ナレーション:着いた先は森の奥深くで、メイルがそこに立っていた。
0:
メイル:遅かったですね。
シンカ:遅かねぇわ!
ミレイ:心外。早く着いた。
アガレイ:そうだよぉ…。僕頑張ったのにぃ…。
シンカ:それにしても…ミレイ。
ミレイ:何。
シンカ:なんでこんな道に来たんだ?
メイル:そうですね。ここからは、あの集落に行くのは遠回りですよね。
ミレイ:…。
アガレイ:そうだよねぇ…。ここからは行くのが大変だよぉ…。
アガレイ:しかも、ここは神域だしぃ…。
メイル:ミレイ、教えてもらえますか?
シンカ:おい、ミレイを疑ってんのか?
メイル:違います。純粋な疑問です。
アガレイ:そうだね…。気になっちゃうよねぇ…。
ミレイ:…。
シンカ:そうかよ。で?ミレイ、何か理由でもあんのか?
ミレイ:…。
メイル:ミレイ?
ミレイ:んふふ…。
アガレイ:ミレイ…?
ミレイ:あはははははは!!
シンカ:ミ、ミレイ…どうした…
ミレイ:(被せるように)理解できないのかい?
メイル:…どういう意味ですか?
ミレイ:このワタクシが!新たな種族だからダ!!
アガレイ:新たな…種族…?
アガレイ:そんなこと出来るわけ…。
ミレイ:理解できないとは…。*嘆《なげ》かわしい…。
ミレイ:わかってもらえるよう、見せようではないいカ!!
0:
ナレーション:ミレイがそう言うと、前屈みになった瞬間にその背中から黒い翼が生えてくる。
ナレーション:その姿は魔族にも、天使にも見えたが、それとは似て非なる存在であるのがみた瞬間に理解できた。
ナレーション:3人は*呆然《ぼうぜん》とした状態で、ミレイを見つめるしかない。
ナレーション:その3人の姿に、*蕩《とろ》ける様な笑顔を見せる。
0:
ミレイ:いいなぁ…!その顔を見たかっタァ…。
メイル:ミレイ、その姿は…。
シンカ:メイル!今はそこじゃねぇ!
シンカ:なんで、どうやって新しい種族になれた!?
アガレイ:…どう頑張っても、新しい種族なんて生まれないはずだよぉ。別の種族同士が結婚したところで産まれるのは、どちらかの種族だけのはずだよぉ?
アガレイ:それと…どうやって記憶を塗り変えれたの?
メイル:っ!そうです。アガレイの記憶を見る能力は、誰にも真似できるものではありません。
シンカ:確かに。アガレイにしか出来ねぇ事だぜ。…どうやって記憶を操作した。
ミレイ:そんなの簡単です。神の領域を*侵《おか》して、攻撃をしていただきて傷を作っただけですヨ。
シンカ:神の領域を侵した…だと…!?
メイル:そんな事をしたと言うのですか!?神を堕ち神にするなど、決してしてはいけない事ですよ。それを、あなたは…!
アガレイ:そんな事をした上に、その後の事を消し去ったって事だよねぇ。
ミレイ:そうだヨ。記憶を見せられないようにしタ。
ミレイ:それを新しい種族になったことで、出来るようになっただけの事。
メイル:そもそも新しい種族なんてなれるわけが…
ミレイ:(遮るように)出来るんダナァ、これが。
シンカ:だから、どうやってなったって聞いてんだ!
アガレイ:あ、まさか…。
メイル:何か思い浮かぶことがあるんですか!?
でも、出回ってるはずかないんだよぉ。きちんと管理してるでしょ?
シンカ:おい…、まさか…!
メイル:そんなはずはありません…!あれは大神殿に保管されているはず!だから、禁書など…
ミレイ:(被せて)そうだヨ!大正解!!
0:
ナレーション:そう言いながら、ミレイは懐から本を取り出す。
ナレーション:その本からは*禍々《まがまが》しい光を放っていた。
0:
ミレイ:ワタクシはとある古い屋敷を壊す予定だった所に調査に入っタ。そうして、屋敷の中を探索していたら、たまたま触った壁が動き、そこには隠し通路があっタ。
ミレイ:隠し通路を進んでいくと、いろんなコレクションを置いてある部屋を見つけ、その中央の台の上に鎖で絡まっている本を見つけタ。
シンカ:それが、まさか…。
ミレイ:分かったカネ!そう!新たな種族の誕生にまつわる内容だッタ!
メイル:そんなこと、本を読んだだけで出来るはずがありません。
ミレイ:出来るんですよ、これが…。そう、*生贄《いけにえ》さえあれば!!
アガレイ:禁術も禁術じゃないか…。生贄をどこから…って、まさか、ミレイを信じている人間達を、生贄にしたのぉ…?
シンカ:なん、だと…!
ミレイ:当たり前じゃないカ!!ワタクシの*糧《かて》になるだから、光栄に思って欲しいほどダ…。
シンカ:テメェ…!なんでそんなこと出来るんだよ!
メイル:信じていた者達を裏切るなんて…!
アガレイ:…僕でさえ、しないのにねぇ…。魔族より魔族じゃないか…。
ミレイ:お褒めいただき、光栄で、す、ヨ。
シンカ:…聞きてぇことがある。
ミレイ:これ以上話すのは嫌だガ…昔の仲間ダ。聞いてあげヨウ、なにかネ?
シンカ:新しい種族を作って、どうするつもりだ。
ミレイ:それカネ…。もちろん、たった一つ。
ミレイ:新しい*混沌《こんとん》を生み出すため!!
メイル:新しい…混沌…?
シンカ:混沌を生み出してそうするもかも知りてぇが、話はそれだけじゃねぇ!
シンカ:目の甲にある菱形は、どうやって消した!
メイル:そうです!私たちに与えられたこの模様は、*禁忌《きんき》を犯したものは、業火の焔によって焼かれて死んでしまうはずです。
メイル:だから、こんな事が許される事などない!
アガレイ:決して、誰も破れることがないよ。創造神が決めたものだからね。
ミレイ:全く…。そんな事簡単な事ダ。
ミレイ:私が創造神よりも強い力を持っているから、消せただけの事!
ミレイ:そして、創造神の思っている事をも*凌駕《りょうが》する混沌!神をも滅ぼす力を持つ種族!
ミレイ:それがワタクシ達『*堕天使《だてんし》』ダ!!
アガレイ:『堕天使』…?それは戦争が始まる前に滅んだでしょぉ?
アガレイ:それに、たった一冊でなれるはずないのに…。
メイル:そうです。禁書は四冊も必要な…
ミレイ:(被せるように)そんなの関係ないではないカ。ワタクシがここにいる事。それこそが真実ではないカ!!
ミレイ:目の前にいるワタクシこそ、その『堕天使』…!!
シンカ:テメェ…!
ミレイ:なんと言われようとも、ワタクシの考えは変わなイ。
ミレイ:この世に混沌をもたらし、そうして…
0:
ミレイ:世界を滅ぼしてくれル。
0:
ミレイ:それでは、ここら辺でワタクシは失礼いたしまス。時間が持ったないなイ。
メイル:待ちなさい!
アガレイ:話は終わってないよ。
ミレイ:ワタクシは終わっタ。これ以上の情報は与えるつもりはなイ。
シンカ:待てよ!おい!
ミレイ:それでは、さようなら…。あは、あはははははははは!!!!!
0:
ナレーション:ミレイは高らかに笑って、その場から去っていった。
ナレーション:その姿を呆然と見ることしか、3人にはできなかった。
0:
ナレーション:こうして、混沌の世界への道ができてしまった。
ナレーション:古き時代に神さえも*凌駕《りょうが》したと言われる『堕天使』。
ナレーション:その種族を生み出してしまったミレイ。
0:
ナレーション:この世は、新たな混沌の世界が生み出してしまった。
ナレーション:一体どうなってしまうのか。
0:
ナレーション:彼らにも、想像ができることがなかった。