台本概要

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タイトル 築いた均衡〜崩れ〜
作者名 明桜 リア  (@ria_meiou)
ジャンル ファンタジー
演者人数 6人用台本(不問6) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 5人台本。兼ね役があります。

四種族によって戦争が起こり、荒らされた世界を創造神が沈めた世界。
その戦争以降には均衡が保たれていた。
精霊も土地に住まう神々も大地も生きているもの達も、平和に暮らしていた。
だが、とある時にその均衡が…。

*使用について*
・使用許可は要りません。
・配信に使っていただいても構いませんん。もし使うよーって言ってくださったら、飛んで見に行きます。
・自作発言はお控えください。
・改変、加工は可能です

後は、とにかく楽しんで演じてください!

語尾、一人称の改変、大丈夫です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
シンカ 不問 42 獣人族の当主である。気性が荒いが基本的には優しい性質を持っている。メイルと相性が悪いため、よく喧嘩している。
メイル 不問 43 天使の当主である。大人しく頭脳明晰だが、少し大人気ないところもある。アガレイとの相性が最悪なため、基本は喧嘩腰に話して喧嘩になる。
アガレイ 不問 31 魔族の当主である。怠惰を極めた魔族。ふわふわとした話し方で、常に眠そうにしている。実力は本物で、魔族の中では誰も敵うものがいない。
ミレイ 不問 45 人間の当主である。片言で話す。伝わりにくいようだが、的確な事を言うため、他のものにもわかるようにしてる。少しおっとりとしている。
ナレーション 不問 16 ナレーション。この世界の出来事を語る人物。
不問 1 この世界を創り出した神。戦争を起こし出したもの達に呆れてしまっている。怒り心頭。 今は均衡が保たれている事に満足しているが…。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ナレーション:帝国歴1440年。様々な種族が存在していた。獣族、魔族、天使族、人間。この四種族が世界の*中枢《ちゅうすう》にいた。 ナレーション:この世界には他にも精霊、土地を守る神々が暮らしている。 ナレーション:しかし、その四種族は互いの性質が合わないせいで、相対するしてしまう。 ナレーション:四種属は長年争い続けてきたせいで、それぞれの土地を守る神々の神域は荒らされ、種族の*疲弊《ひへい》していくだけでなく、精霊や大地すらも戦争で疲弊してしまっていた。 ナレーション:*醜《みにく》い争いを見ていた創造神が怒り、4種族に*鉄槌《てっつい》を下す。 ナレーション:そして、これ以上戦争を犯す事がないように、協定を結ぶように告げる。 0: 神:『決して互いの領地を*侵《おか》す事なく、尊重し合って生きていく事。精霊達を疲弊させぬこと。土地を守る神々の神域を踏み荒らさむこと。我が言葉に*相反《あいはん》したものは、我が手によって滅ぼされるものと思え。』 0: ナレーション:そう言い残して、創造神は去っていった。去っていく際に、それぞれの種族にその証として獣族には『上向きの*菱形《ひしがた》』、魔族には『左向きの菱形』、天使族には『右向きの菱形』、そして、人間には『下向きの菱形』の模様を手の甲に浮かび上がらせた。 ナレーション:合わせると、十字架の形になるようにした。神の下した事に反したものは、この模様より火が出てその身が*業火《ごうか》の*焔《ほのお》に焼かれるだろう。 ナレーション:そうして、互いの種族は協定を結び、国交を開いて平和に暮らしていた。 0: ナレーション:ある時までは… 0: 0: ナレーション:ここは獣族が暮らす『ワハシュ』。森と共に生きる場所。 ナレーション:森に住む精霊達に護られた土地。 ナレーション:ここを統治しているのは、『シンカ』という獣人の族長。 ナレーション:今、行なっているのは集落の新たな家を建築している最中である。 0: シンカ:おい!お前!どうしたら、家を作んのにその素材を持ってくんだよ!ちゃんとしろ! シンカ:ったく…最近の奴らはなってちゃいねぇ…。 メイル:相変わらずな…低脳ですね。 シンカ:あぁ!?…ちっ、なんだよ。メイルか。 メイル:なんだとはどう言う事ですか。失礼ではありませんか。 シンカ:本来なら、会いたくも見たくもねぇ奴だぜ。 メイル:こちらこそですよ。当主同士で無ければ、会うことはないでしょうね。 シンカ:全くだぜ。 0: ナレーション:四種族は年に一度、四つの種族のどこかの土地に行き、当主会議を行うのが通例となっている。 ナレーション:そうして、種族同士の*均衡《きんこう》を保とうとしている。今回は獣族の集落で行う事になっていた。 0: メイル:にしても、遅いですね。アガレイは*怠惰《たいだ》の魔族なので分かりますが、ミレイはしっかりと時間を守る種族だというのに。 シンカ:確かにな。あいつは時間にルーズじゃねぇからな。アガレイの野郎は名前の割に*堕落《だらく》にしてっからな。 メイル:それは言えてますね。…おや?噂をすればです、ね。 アガレイ:失礼だなぁ…。そこまでではなよぉ…。ちょぉっとめんどくさいなって思っているだけで…。 シンカ:それがだめなんじゃねぇか。 アガレイ:ちぇー…。 0: ナレーション:アガレイは名前とは相反して、怠惰を*司《つかさど》る魔族。 ナレーション:なぜ怠惰の者が当主をしているのかというと、一番力を持っていたのがアガレイだという理由だけである。 ナレーション:それは魔族の世界では、一番に重要視されているところだからこそ、アガレイが選ばれたのだ。 0: シンカ:しっかりしろ。 メイル:そうですよ。当主なんですから。 アガレイ:えーやだよぉ…。 0: 0:シンカが入り口が騒がしい事に気がつく。 0: シンカ:…あ?なんか騒がしいじゃねぇか。 メイル:行った方がいいですね。 アガレイ:僕はここにいるねぇ…。 シンカ:勝手にしろ。おい、行くぞ、メイル。 メイル:言われなくても。 0: 0:入り口に行くと、そこには獣族の人間達に支えられている者がいた。 0: シンカ:なんだぁ、誰か倒れた…って、ミレイ! 0: ナレーション:入り口で獣人族に抱えられていたのは、人間の当主である『ミレイ』であった。 ナレーション:ミレイは優しく、心も清らかな性格をしている為、民に好かれているような人物である故に当主に選ばれたのだ。 ナレーション:優しい性格だが、決して弱くはない。他の当主達と同じように戦闘に*長《た》けている。 0: メイル:なんですって!?ミレイ、一体何が…こんなに傷が…! シンカ:お前!回復魔法が得意だろうが!さっさとやれ! メイル:言われなくてもやりますよ! 0: 0:メイルがミレイに魔法をかける。 0: メイル:ミレイ!大丈夫ですか? ミレイ:…っ、メ、メイル…? メイル:そうです。私ですよ。 シンカ:俺もいるぞ!一体何があったってんだ。 ミレイ:誰かの、襲撃、受けた…。 メイル:襲撃!? シンカ:協定が結ばれてるってのにか!? ミレイ:しっかりと、顔は見れなかった。でも、四種族のどこにも、属していない、そう見えた…。 シンカ:なんだと!? メイル:我々に属さない、ですって…? 0: 0:そこにアガレイがやってくる。 0: アガレイ:何があったのぉ…?誰も来ないから見にきたけど…。なんでミレイが倒れてるのぉ…? ミレイ:襲撃に、*遭《あ》った。 アガレイ:襲撃ぃ…?協定むすんでるのに、何でぇ…? ミレイ:違う。私たちと。見た事、ない。 アガレイ:僕たちとは、違う…?そんなのいるわけないよぉ…。 メイル:ミレイが嘘をつくはずもありません。 シンカ:そうだな。こいつは嘘をつけねぇやつだ。 ミレイ:言いたい放題…。いいけど。 シンカ:にしても…どこにも属してないとなると、一体…。 アガレイ:どこにも属してないところの種族なんて、そんなのいるのぉ? メイル:いるわけがないです。いたら、創造神が見逃すはずがありません。 ミレイ:そう。なのに、いた…。 アガレイ:うーん…、ちょっと記憶を見せてねぇ? ミレイ:構わない。 0: 0:そういうとアガレイはミレイの額に己の額を重ねる。 0: アガレイ:うーん…。これは確かに、違う種族に見えるねぇ…。 アガレイ:獣人の耳もない、人間のような感じでもない、魔族と天使の羽もない。そうだなぁ…もう居なくなった、『*堕ち神《おちかみ》』みたいだよぉ…。 0: ナレーション:『堕ち神』。遥か昔に大地に住んでいた*数多《あまた》の神が、戦争の最中に神の領域を荒らされたせいで神でなくなり、怨霊になってしまった神を『堕ち神』と呼んだ。 ナレーション:『堕ち神』は四種族のみならず、精霊さえも襲ってしまっていた。しかし、争いが終わったことでこの世界を*創《つく》った『創造神』によって元の神に戻る事ができた。 ナレーション:この戦争以降、誰も神の領域を侵すものは居ない。 0: シンカ:まじかよ…。 メイル:これは、重大な問題ですね…。 ミレイ:私も、知らない。 ミレイ:ここ、来る途中。急に、誰か、きた。 ミレイ:止まったら、急に、攻撃された。堕ち神、似ている。 アガレイ:僕が見たのと一緒だよぉ。 メイル:そうですか…これは困った事になりそうですね。 メイル:何千年と保たれてきた均衡が崩れる可能性があります。 アガレイ:そう、これじゃあ、また神の神罰が下るほどの事が起こりかねないねぇ…。 アガレイ:もし、本当に居たらの話だけど…見た限りいるんだよねぇ…。 シンカ:まじぃな…、均衡が崩れたら、またあの頃に戻っちまう。 ミレイ:だめ。困る。 ミレイ:どうにかして、突き止める。 メイル:そうですね。突き止める必要があります。 ミレイ:私が行く。知っているの、私。 ミレイ:場所も、人物も。だから、先に、行く。 シンカ:それはだめだろ。 メイル:だめですね。 ミレイ:…なんで。 メイル:危ないからです。私が先行する方がいいでしょう。 メイル:空から見れるので。 シンカ:翼がある天使様だからな。頼んだぞ。 メイル:言われずとも。アガレイ、私に情報共有をしてください。 アガレイ:えー…、めんどくさい…。 メイル:早くしてください。 アガレイ:わかったよぉ…。額だして。 0: 0:額を出すメイルにアガレイが指を当てる。 0: メイル:…なるほど。この集落よりも少し遠いくらいですね。 シンカ:そうか。よし!先行頼むぜ!天使さんよぉ! ミレイ:お願い。 アガレイ:僕はお留守番… ミレイ:(被せるように)だめ、行く。 アガレイ:わかったよぉ…。ミレイの圧すごいよぉ…。 メイル:では行きます。行ったら、光で場所を示しますので、来てくださいね。 ミレイ:理解。頼む。 シンカ:よっしゃ!頼むぜ! アガレイ:おねがぁい…。 0: 0:メイルが翼を出して飛び去る。 0:暫くすると、遠くの方に光の柱が見えた。 0: シンカ:あそこか。よし、地形を知っているのは俺だから、お前ら着いてこい。 ミレイ:了解した。 アガレイ:はぁい…。 0: ナレーション:シンカ、ミレイは馬に乗り、アガレイは翼で光の柱のところまで向かっていく。 ナレーション:着いた先は森の奥深くで、メイルがそこに立っていた。 0: メイル:遅かったですね。 シンカ:遅かねぇわ! ミレイ:心外。早く着いた。 アガレイ:そうだよぉ…。僕頑張ったのにぃ…。 シンカ:それにしても…ミレイ。 ミレイ:何。 シンカ:なんでこんな道に来たんだ? メイル:そうですね。ここからは、あの集落に行くのは遠回りですよね。 ミレイ:…。 アガレイ:そうだよねぇ…。ここからは行くのが大変だよぉ…。 アガレイ:しかも、ここは神域だしぃ…。 メイル:ミレイ、教えてもらえますか? シンカ:おい、ミレイを疑ってんのか? メイル:違います。純粋な疑問です。 アガレイ:そうだね…。気になっちゃうよねぇ…。 ミレイ:…。 シンカ:そうかよ。で?ミレイ、何か理由でもあんのか? ミレイ:…。 メイル:ミレイ? ミレイ:んふふ…。 アガレイ:ミレイ…? ミレイ:あはははははは!! シンカ:ミ、ミレイ…どうした… ミレイ:(被せるように)理解できないのかい? メイル:…どういう意味ですか? ミレイ:このワタクシが!新たな種族だからダ!! アガレイ:新たな…種族…? アガレイ:そんなこと出来るわけ…。 ミレイ:理解できないとは…。*嘆《なげ》かわしい…。 ミレイ:わかってもらえるよう、見せようではないいカ!! 0: ナレーション:ミレイがそう言うと、前屈みになった瞬間にその背中から黒い翼が生えてくる。 ナレーション:その姿は魔族にも、天使にも見えたが、それとは似て非なる存在であるのがみた瞬間に理解できた。 ナレーション:3人は*呆然《ぼうぜん》とした状態で、ミレイを見つめるしかない。 ナレーション:その3人の姿に、*蕩《とろ》ける様な笑顔を見せる。 0: ミレイ:いいなぁ…!その顔を見たかっタァ…。 メイル:ミレイ、その姿は…。 シンカ:メイル!今はそこじゃねぇ! シンカ:なんで、どうやって新しい種族になれた!? アガレイ:…どう頑張っても、新しい種族なんて生まれないはずだよぉ。別の種族同士が結婚したところで産まれるのは、どちらかの種族だけのはずだよぉ? アガレイ:それと…どうやって記憶を塗り変えれたの? メイル:っ!そうです。アガレイの記憶を見る能力は、誰にも真似できるものではありません。 シンカ:確かに。アガレイにしか出来ねぇ事だぜ。…どうやって記憶を操作した。 ミレイ:そんなの簡単です。神の領域を*侵《おか》して、攻撃をしていただきて傷を作っただけですヨ。 シンカ:神の領域を侵した…だと…!? メイル:そんな事をしたと言うのですか!?神を堕ち神にするなど、決してしてはいけない事ですよ。それを、あなたは…! アガレイ:そんな事をした上に、その後の事を消し去ったって事だよねぇ。 ミレイ:そうだヨ。記憶を見せられないようにしタ。 ミレイ:それを新しい種族になったことで、出来るようになっただけの事。 メイル:そもそも新しい種族なんてなれるわけが… ミレイ:(遮るように)出来るんダナァ、これが。 シンカ:だから、どうやってなったって聞いてんだ! アガレイ:あ、まさか…。 メイル:何か思い浮かぶことがあるんですか!? でも、出回ってるはずかないんだよぉ。きちんと管理してるでしょ? シンカ:おい…、まさか…! メイル:そんなはずはありません…!あれは大神殿に保管されているはず!だから、禁書など… ミレイ:(被せて)そうだヨ!大正解!! 0: ナレーション:そう言いながら、ミレイは懐から本を取り出す。 ナレーション:その本からは*禍々《まがまが》しい光を放っていた。 0: ミレイ:ワタクシはとある古い屋敷を壊す予定だった所に調査に入っタ。そうして、屋敷の中を探索していたら、たまたま触った壁が動き、そこには隠し通路があっタ。 ミレイ:隠し通路を進んでいくと、いろんなコレクションを置いてある部屋を見つけ、その中央の台の上に鎖で絡まっている本を見つけタ。 シンカ:それが、まさか…。 ミレイ:分かったカネ!そう!新たな種族の誕生にまつわる内容だッタ! メイル:そんなこと、本を読んだだけで出来るはずがありません。 ミレイ:出来るんですよ、これが…。そう、*生贄《いけにえ》さえあれば!! アガレイ:禁術も禁術じゃないか…。生贄をどこから…って、まさか、ミレイを信じている人間達を、生贄にしたのぉ…? シンカ:なん、だと…! ミレイ:当たり前じゃないカ!!ワタクシの*糧《かて》になるだから、光栄に思って欲しいほどダ…。 シンカ:テメェ…!なんでそんなこと出来るんだよ! メイル:信じていた者達を裏切るなんて…! アガレイ:…僕でさえ、しないのにねぇ…。魔族より魔族じゃないか…。 ミレイ:お褒めいただき、光栄で、す、ヨ。 シンカ:…聞きてぇことがある。 ミレイ:これ以上話すのは嫌だガ…昔の仲間ダ。聞いてあげヨウ、なにかネ? シンカ:新しい種族を作って、どうするつもりだ。 ミレイ:それカネ…。もちろん、たった一つ。 ミレイ:新しい*混沌《こんとん》を生み出すため!! メイル:新しい…混沌…? シンカ:混沌を生み出してそうするもかも知りてぇが、話はそれだけじゃねぇ! シンカ:目の甲にある菱形は、どうやって消した! メイル:そうです!私たちに与えられたこの模様は、*禁忌《きんき》を犯したものは、業火の焔によって焼かれて死んでしまうはずです。 メイル:だから、こんな事が許される事などない! アガレイ:決して、誰も破れることがないよ。創造神が決めたものだからね。 ミレイ:全く…。そんな事簡単な事ダ。 ミレイ:私が創造神よりも強い力を持っているから、消せただけの事! ミレイ:そして、創造神の思っている事をも*凌駕《りょうが》する混沌!神をも滅ぼす力を持つ種族! ミレイ:それがワタクシ達『*堕天使《だてんし》』ダ!! アガレイ:『堕天使』…?それは戦争が始まる前に滅んだでしょぉ? アガレイ:それに、たった一冊でなれるはずないのに…。 メイル:そうです。禁書は四冊も必要な… ミレイ:(被せるように)そんなの関係ないではないカ。ワタクシがここにいる事。それこそが真実ではないカ!! ミレイ:目の前にいるワタクシこそ、その『堕天使』…!! シンカ:テメェ…! ミレイ:なんと言われようとも、ワタクシの考えは変わなイ。 ミレイ:この世に混沌をもたらし、そうして… 0: ミレイ:世界を滅ぼしてくれル。 0: ミレイ:それでは、ここら辺でワタクシは失礼いたしまス。時間が持ったないなイ。 メイル:待ちなさい! アガレイ:話は終わってないよ。 ミレイ:ワタクシは終わっタ。これ以上の情報は与えるつもりはなイ。 シンカ:待てよ!おい! ミレイ:それでは、さようなら…。あは、あはははははははは!!!!! 0: ナレーション:ミレイは高らかに笑って、その場から去っていった。 ナレーション:その姿を呆然と見ることしか、3人にはできなかった。 0: ナレーション:こうして、混沌の世界への道ができてしまった。 ナレーション:古き時代に神さえも*凌駕《りょうが》したと言われる『堕天使』。 ナレーション:その種族を生み出してしまったミレイ。 0: ナレーション:この世は、新たな混沌の世界が生み出してしまった。 ナレーション:一体どうなってしまうのか。 0: ナレーション:彼らにも、想像ができることがなかった。

ナレーション:帝国歴1440年。様々な種族が存在していた。獣族、魔族、天使族、人間。この四種族が世界の*中枢《ちゅうすう》にいた。 ナレーション:この世界には他にも精霊、土地を守る神々が暮らしている。 ナレーション:しかし、その四種族は互いの性質が合わないせいで、相対するしてしまう。 ナレーション:四種属は長年争い続けてきたせいで、それぞれの土地を守る神々の神域は荒らされ、種族の*疲弊《ひへい》していくだけでなく、精霊や大地すらも戦争で疲弊してしまっていた。 ナレーション:*醜《みにく》い争いを見ていた創造神が怒り、4種族に*鉄槌《てっつい》を下す。 ナレーション:そして、これ以上戦争を犯す事がないように、協定を結ぶように告げる。 0: 神:『決して互いの領地を*侵《おか》す事なく、尊重し合って生きていく事。精霊達を疲弊させぬこと。土地を守る神々の神域を踏み荒らさむこと。我が言葉に*相反《あいはん》したものは、我が手によって滅ぼされるものと思え。』 0: ナレーション:そう言い残して、創造神は去っていった。去っていく際に、それぞれの種族にその証として獣族には『上向きの*菱形《ひしがた》』、魔族には『左向きの菱形』、天使族には『右向きの菱形』、そして、人間には『下向きの菱形』の模様を手の甲に浮かび上がらせた。 ナレーション:合わせると、十字架の形になるようにした。神の下した事に反したものは、この模様より火が出てその身が*業火《ごうか》の*焔《ほのお》に焼かれるだろう。 ナレーション:そうして、互いの種族は協定を結び、国交を開いて平和に暮らしていた。 0: ナレーション:ある時までは… 0: 0: ナレーション:ここは獣族が暮らす『ワハシュ』。森と共に生きる場所。 ナレーション:森に住む精霊達に護られた土地。 ナレーション:ここを統治しているのは、『シンカ』という獣人の族長。 ナレーション:今、行なっているのは集落の新たな家を建築している最中である。 0: シンカ:おい!お前!どうしたら、家を作んのにその素材を持ってくんだよ!ちゃんとしろ! シンカ:ったく…最近の奴らはなってちゃいねぇ…。 メイル:相変わらずな…低脳ですね。 シンカ:あぁ!?…ちっ、なんだよ。メイルか。 メイル:なんだとはどう言う事ですか。失礼ではありませんか。 シンカ:本来なら、会いたくも見たくもねぇ奴だぜ。 メイル:こちらこそですよ。当主同士で無ければ、会うことはないでしょうね。 シンカ:全くだぜ。 0: ナレーション:四種族は年に一度、四つの種族のどこかの土地に行き、当主会議を行うのが通例となっている。 ナレーション:そうして、種族同士の*均衡《きんこう》を保とうとしている。今回は獣族の集落で行う事になっていた。 0: メイル:にしても、遅いですね。アガレイは*怠惰《たいだ》の魔族なので分かりますが、ミレイはしっかりと時間を守る種族だというのに。 シンカ:確かにな。あいつは時間にルーズじゃねぇからな。アガレイの野郎は名前の割に*堕落《だらく》にしてっからな。 メイル:それは言えてますね。…おや?噂をすればです、ね。 アガレイ:失礼だなぁ…。そこまでではなよぉ…。ちょぉっとめんどくさいなって思っているだけで…。 シンカ:それがだめなんじゃねぇか。 アガレイ:ちぇー…。 0: ナレーション:アガレイは名前とは相反して、怠惰を*司《つかさど》る魔族。 ナレーション:なぜ怠惰の者が当主をしているのかというと、一番力を持っていたのがアガレイだという理由だけである。 ナレーション:それは魔族の世界では、一番に重要視されているところだからこそ、アガレイが選ばれたのだ。 0: シンカ:しっかりしろ。 メイル:そうですよ。当主なんですから。 アガレイ:えーやだよぉ…。 0: 0:シンカが入り口が騒がしい事に気がつく。 0: シンカ:…あ?なんか騒がしいじゃねぇか。 メイル:行った方がいいですね。 アガレイ:僕はここにいるねぇ…。 シンカ:勝手にしろ。おい、行くぞ、メイル。 メイル:言われなくても。 0: 0:入り口に行くと、そこには獣族の人間達に支えられている者がいた。 0: シンカ:なんだぁ、誰か倒れた…って、ミレイ! 0: ナレーション:入り口で獣人族に抱えられていたのは、人間の当主である『ミレイ』であった。 ナレーション:ミレイは優しく、心も清らかな性格をしている為、民に好かれているような人物である故に当主に選ばれたのだ。 ナレーション:優しい性格だが、決して弱くはない。他の当主達と同じように戦闘に*長《た》けている。 0: メイル:なんですって!?ミレイ、一体何が…こんなに傷が…! シンカ:お前!回復魔法が得意だろうが!さっさとやれ! メイル:言われなくてもやりますよ! 0: 0:メイルがミレイに魔法をかける。 0: メイル:ミレイ!大丈夫ですか? ミレイ:…っ、メ、メイル…? メイル:そうです。私ですよ。 シンカ:俺もいるぞ!一体何があったってんだ。 ミレイ:誰かの、襲撃、受けた…。 メイル:襲撃!? シンカ:協定が結ばれてるってのにか!? ミレイ:しっかりと、顔は見れなかった。でも、四種族のどこにも、属していない、そう見えた…。 シンカ:なんだと!? メイル:我々に属さない、ですって…? 0: 0:そこにアガレイがやってくる。 0: アガレイ:何があったのぉ…?誰も来ないから見にきたけど…。なんでミレイが倒れてるのぉ…? ミレイ:襲撃に、*遭《あ》った。 アガレイ:襲撃ぃ…?協定むすんでるのに、何でぇ…? ミレイ:違う。私たちと。見た事、ない。 アガレイ:僕たちとは、違う…?そんなのいるわけないよぉ…。 メイル:ミレイが嘘をつくはずもありません。 シンカ:そうだな。こいつは嘘をつけねぇやつだ。 ミレイ:言いたい放題…。いいけど。 シンカ:にしても…どこにも属してないとなると、一体…。 アガレイ:どこにも属してないところの種族なんて、そんなのいるのぉ? メイル:いるわけがないです。いたら、創造神が見逃すはずがありません。 ミレイ:そう。なのに、いた…。 アガレイ:うーん…、ちょっと記憶を見せてねぇ? ミレイ:構わない。 0: 0:そういうとアガレイはミレイの額に己の額を重ねる。 0: アガレイ:うーん…。これは確かに、違う種族に見えるねぇ…。 アガレイ:獣人の耳もない、人間のような感じでもない、魔族と天使の羽もない。そうだなぁ…もう居なくなった、『*堕ち神《おちかみ》』みたいだよぉ…。 0: ナレーション:『堕ち神』。遥か昔に大地に住んでいた*数多《あまた》の神が、戦争の最中に神の領域を荒らされたせいで神でなくなり、怨霊になってしまった神を『堕ち神』と呼んだ。 ナレーション:『堕ち神』は四種族のみならず、精霊さえも襲ってしまっていた。しかし、争いが終わったことでこの世界を*創《つく》った『創造神』によって元の神に戻る事ができた。 ナレーション:この戦争以降、誰も神の領域を侵すものは居ない。 0: シンカ:まじかよ…。 メイル:これは、重大な問題ですね…。 ミレイ:私も、知らない。 ミレイ:ここ、来る途中。急に、誰か、きた。 ミレイ:止まったら、急に、攻撃された。堕ち神、似ている。 アガレイ:僕が見たのと一緒だよぉ。 メイル:そうですか…これは困った事になりそうですね。 メイル:何千年と保たれてきた均衡が崩れる可能性があります。 アガレイ:そう、これじゃあ、また神の神罰が下るほどの事が起こりかねないねぇ…。 アガレイ:もし、本当に居たらの話だけど…見た限りいるんだよねぇ…。 シンカ:まじぃな…、均衡が崩れたら、またあの頃に戻っちまう。 ミレイ:だめ。困る。 ミレイ:どうにかして、突き止める。 メイル:そうですね。突き止める必要があります。 ミレイ:私が行く。知っているの、私。 ミレイ:場所も、人物も。だから、先に、行く。 シンカ:それはだめだろ。 メイル:だめですね。 ミレイ:…なんで。 メイル:危ないからです。私が先行する方がいいでしょう。 メイル:空から見れるので。 シンカ:翼がある天使様だからな。頼んだぞ。 メイル:言われずとも。アガレイ、私に情報共有をしてください。 アガレイ:えー…、めんどくさい…。 メイル:早くしてください。 アガレイ:わかったよぉ…。額だして。 0: 0:額を出すメイルにアガレイが指を当てる。 0: メイル:…なるほど。この集落よりも少し遠いくらいですね。 シンカ:そうか。よし!先行頼むぜ!天使さんよぉ! ミレイ:お願い。 アガレイ:僕はお留守番… ミレイ:(被せるように)だめ、行く。 アガレイ:わかったよぉ…。ミレイの圧すごいよぉ…。 メイル:では行きます。行ったら、光で場所を示しますので、来てくださいね。 ミレイ:理解。頼む。 シンカ:よっしゃ!頼むぜ! アガレイ:おねがぁい…。 0: 0:メイルが翼を出して飛び去る。 0:暫くすると、遠くの方に光の柱が見えた。 0: シンカ:あそこか。よし、地形を知っているのは俺だから、お前ら着いてこい。 ミレイ:了解した。 アガレイ:はぁい…。 0: ナレーション:シンカ、ミレイは馬に乗り、アガレイは翼で光の柱のところまで向かっていく。 ナレーション:着いた先は森の奥深くで、メイルがそこに立っていた。 0: メイル:遅かったですね。 シンカ:遅かねぇわ! ミレイ:心外。早く着いた。 アガレイ:そうだよぉ…。僕頑張ったのにぃ…。 シンカ:それにしても…ミレイ。 ミレイ:何。 シンカ:なんでこんな道に来たんだ? メイル:そうですね。ここからは、あの集落に行くのは遠回りですよね。 ミレイ:…。 アガレイ:そうだよねぇ…。ここからは行くのが大変だよぉ…。 アガレイ:しかも、ここは神域だしぃ…。 メイル:ミレイ、教えてもらえますか? シンカ:おい、ミレイを疑ってんのか? メイル:違います。純粋な疑問です。 アガレイ:そうだね…。気になっちゃうよねぇ…。 ミレイ:…。 シンカ:そうかよ。で?ミレイ、何か理由でもあんのか? ミレイ:…。 メイル:ミレイ? ミレイ:んふふ…。 アガレイ:ミレイ…? ミレイ:あはははははは!! シンカ:ミ、ミレイ…どうした… ミレイ:(被せるように)理解できないのかい? メイル:…どういう意味ですか? ミレイ:このワタクシが!新たな種族だからダ!! アガレイ:新たな…種族…? アガレイ:そんなこと出来るわけ…。 ミレイ:理解できないとは…。*嘆《なげ》かわしい…。 ミレイ:わかってもらえるよう、見せようではないいカ!! 0: ナレーション:ミレイがそう言うと、前屈みになった瞬間にその背中から黒い翼が生えてくる。 ナレーション:その姿は魔族にも、天使にも見えたが、それとは似て非なる存在であるのがみた瞬間に理解できた。 ナレーション:3人は*呆然《ぼうぜん》とした状態で、ミレイを見つめるしかない。 ナレーション:その3人の姿に、*蕩《とろ》ける様な笑顔を見せる。 0: ミレイ:いいなぁ…!その顔を見たかっタァ…。 メイル:ミレイ、その姿は…。 シンカ:メイル!今はそこじゃねぇ! シンカ:なんで、どうやって新しい種族になれた!? アガレイ:…どう頑張っても、新しい種族なんて生まれないはずだよぉ。別の種族同士が結婚したところで産まれるのは、どちらかの種族だけのはずだよぉ? アガレイ:それと…どうやって記憶を塗り変えれたの? メイル:っ!そうです。アガレイの記憶を見る能力は、誰にも真似できるものではありません。 シンカ:確かに。アガレイにしか出来ねぇ事だぜ。…どうやって記憶を操作した。 ミレイ:そんなの簡単です。神の領域を*侵《おか》して、攻撃をしていただきて傷を作っただけですヨ。 シンカ:神の領域を侵した…だと…!? メイル:そんな事をしたと言うのですか!?神を堕ち神にするなど、決してしてはいけない事ですよ。それを、あなたは…! アガレイ:そんな事をした上に、その後の事を消し去ったって事だよねぇ。 ミレイ:そうだヨ。記憶を見せられないようにしタ。 ミレイ:それを新しい種族になったことで、出来るようになっただけの事。 メイル:そもそも新しい種族なんてなれるわけが… ミレイ:(遮るように)出来るんダナァ、これが。 シンカ:だから、どうやってなったって聞いてんだ! アガレイ:あ、まさか…。 メイル:何か思い浮かぶことがあるんですか!? でも、出回ってるはずかないんだよぉ。きちんと管理してるでしょ? シンカ:おい…、まさか…! メイル:そんなはずはありません…!あれは大神殿に保管されているはず!だから、禁書など… ミレイ:(被せて)そうだヨ!大正解!! 0: ナレーション:そう言いながら、ミレイは懐から本を取り出す。 ナレーション:その本からは*禍々《まがまが》しい光を放っていた。 0: ミレイ:ワタクシはとある古い屋敷を壊す予定だった所に調査に入っタ。そうして、屋敷の中を探索していたら、たまたま触った壁が動き、そこには隠し通路があっタ。 ミレイ:隠し通路を進んでいくと、いろんなコレクションを置いてある部屋を見つけ、その中央の台の上に鎖で絡まっている本を見つけタ。 シンカ:それが、まさか…。 ミレイ:分かったカネ!そう!新たな種族の誕生にまつわる内容だッタ! メイル:そんなこと、本を読んだだけで出来るはずがありません。 ミレイ:出来るんですよ、これが…。そう、*生贄《いけにえ》さえあれば!! アガレイ:禁術も禁術じゃないか…。生贄をどこから…って、まさか、ミレイを信じている人間達を、生贄にしたのぉ…? シンカ:なん、だと…! ミレイ:当たり前じゃないカ!!ワタクシの*糧《かて》になるだから、光栄に思って欲しいほどダ…。 シンカ:テメェ…!なんでそんなこと出来るんだよ! メイル:信じていた者達を裏切るなんて…! アガレイ:…僕でさえ、しないのにねぇ…。魔族より魔族じゃないか…。 ミレイ:お褒めいただき、光栄で、す、ヨ。 シンカ:…聞きてぇことがある。 ミレイ:これ以上話すのは嫌だガ…昔の仲間ダ。聞いてあげヨウ、なにかネ? シンカ:新しい種族を作って、どうするつもりだ。 ミレイ:それカネ…。もちろん、たった一つ。 ミレイ:新しい*混沌《こんとん》を生み出すため!! メイル:新しい…混沌…? シンカ:混沌を生み出してそうするもかも知りてぇが、話はそれだけじゃねぇ! シンカ:目の甲にある菱形は、どうやって消した! メイル:そうです!私たちに与えられたこの模様は、*禁忌《きんき》を犯したものは、業火の焔によって焼かれて死んでしまうはずです。 メイル:だから、こんな事が許される事などない! アガレイ:決して、誰も破れることがないよ。創造神が決めたものだからね。 ミレイ:全く…。そんな事簡単な事ダ。 ミレイ:私が創造神よりも強い力を持っているから、消せただけの事! ミレイ:そして、創造神の思っている事をも*凌駕《りょうが》する混沌!神をも滅ぼす力を持つ種族! ミレイ:それがワタクシ達『*堕天使《だてんし》』ダ!! アガレイ:『堕天使』…?それは戦争が始まる前に滅んだでしょぉ? アガレイ:それに、たった一冊でなれるはずないのに…。 メイル:そうです。禁書は四冊も必要な… ミレイ:(被せるように)そんなの関係ないではないカ。ワタクシがここにいる事。それこそが真実ではないカ!! ミレイ:目の前にいるワタクシこそ、その『堕天使』…!! シンカ:テメェ…! ミレイ:なんと言われようとも、ワタクシの考えは変わなイ。 ミレイ:この世に混沌をもたらし、そうして… 0: ミレイ:世界を滅ぼしてくれル。 0: ミレイ:それでは、ここら辺でワタクシは失礼いたしまス。時間が持ったないなイ。 メイル:待ちなさい! アガレイ:話は終わってないよ。 ミレイ:ワタクシは終わっタ。これ以上の情報は与えるつもりはなイ。 シンカ:待てよ!おい! ミレイ:それでは、さようなら…。あは、あはははははははは!!!!! 0: ナレーション:ミレイは高らかに笑って、その場から去っていった。 ナレーション:その姿を呆然と見ることしか、3人にはできなかった。 0: ナレーション:こうして、混沌の世界への道ができてしまった。 ナレーション:古き時代に神さえも*凌駕《りょうが》したと言われる『堕天使』。 ナレーション:その種族を生み出してしまったミレイ。 0: ナレーション:この世は、新たな混沌の世界が生み出してしまった。 ナレーション:一体どうなってしまうのか。 0: ナレーション:彼らにも、想像ができることがなかった。