台本概要
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タイトル | 築いた均衡〜決意〜 |
---|---|
作者名 | 明桜 リア (@ria_meiou) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 6人用台本(不問6) ※兼役あり |
時間 | 60 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
5人台本です。兼ね役があります。 *使用について* ・使用許可は要りません。 ・配信に使っていただいても構いませんん。もし使うよーって言ってくださったら、飛んで見に行きます。 ・録音しての配信などには、一言お声かけください。 ・自作発言はお控えください。 ・改変、加工は可能です。 ・思ったように演じていただけたらと思います。 後は、とにかく楽しんで演じてください! 感想などを言っていただけたら、泣いて喜びます。小躍りします。 89 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
シンカ | 不問 | 45 | 獣人族当主。気性が荒いが、芯は優しい。メイルと気が合わない。 |
メイル | 不問 | 42 | 天使の当主。きつい口調をしている。几帳面。シンカと気が合わない。 |
アガレイ | 不問 | 34 | 魔族の当主。ゆるゆるしている。力がないようである。 |
ミレイ | 不問 | 16 | 元人間の当主。『堕天使』になってしまった人間。 |
ナレーション | 不問 | 10 | ナレーションしてね。基本的にはこの世界の説明者。 |
『堕天使』 | 不問 | 1 | ミレイとの兼ね役です。昔に神によって生み出されたが、力が強すぎた。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ナレーション:ミレイが『堕天使』となり去って行った後、人間の国は混乱と*混沌《こんとん》に*陥《おちい》ってしまった。
ナレーション:当主が『堕天使』となってしまったことで、彼らは統率が無くなってしまっただらだ。
ナレーション:その人間を残りの三種族の当主がどうにか*沈《しず》めて、人間たちが混乱に陥っていたのを鎮める。
ナレーション:しかし、それも一時*凌《しの》ぎにしかならない。それは三当主もわかっていたが、現状を見るとそれ以外に出来る事がなかったのだ。
ナレーション:当主達は天使族のあるこの世界で一番高いとされるホーン山の中腹にある*山村《さんそん》集まって、これからの事と人間達の当主をどうするかを話し合う事を決める為の話し合いをする。
0:
アガレイ:…これからどうするのぉ?
シンカ:どうするつったって…あいつを止めるしかねぇだろ。
メイル:どうやってするつもりですか。
シンカ:それは…
メイル:『堕天使』は種族の中でも最も強く、神すらも*凌駕《りょうが》する力を持つとも言われるのですよ?
メイル:そんな相手にどうやって*挑《いど》むと言うのですか。
シンカ:そんなもん!やって見なきゃわかんねぇだろうが!!
メイル:そんな簡単な話じゃないですよ!この脳筋が!!
シンカ:なんだと…!?
アガレイ:静かにして。
シンカ:っ!
アガレイ:ここで言い合っててもしょうがないでしょぉ?結局は何か手を打たないと、世界が滅ぶんだからぁ。
メイル:…そうですね。
0:
ナレーション:アガレイの言葉にメイルは考え込み、シンカは厳しい顔で黙り込み、アガレイは*欠伸《あくび》をする。
ナレーション:彼ら自身もどうしたらいいのかが思い浮かなばい状態ではあった。
ナレーション:それもそうだと言えるだろう。『堕天使』は最も強く、凶悪で、全ての種族の上に立ち、世界すらも滅ぼしかけていたところを、産まれたばかりだったからこそ創造神が『堕天使』を世界から消すことができたのだ。
ナレーション:もう生まれることのないように、存在すらも消し去ろうとしていた。だが、彼らは消える直前に言い残した言葉があった。
0:
『堕天使』:我々は決して滅ぶ事はない!いつかこの恨みを*晴《はら》そう!我々以外の者どもを!消し去って、そして、貴様を…神を殺し!我々が頂点に立ってくれる!!
『堕天使』:あは、あはははは!!我らは滅びぬ!この身を四つの書物にし、残してくれる!!
『堕天使』:そしていつか必ず復活して、この*屈辱《くつじょく》を晴らしてみせよう!
0:
ナレーション:そう言い残して、『堕天使』は滅んでいった。
ナレーション:四つに分かれた書物は、神が集めて四種族に一つずつ渡して地下深くに厳重に保管していた。厳重に封印を*施《ほどこ》した状態で。
0:
メイル:我々が作り上げている神殿に厳重に封印していた書物が、どうやって古い館の地下に…。
アガレイ:そうだよねぇ。取り出された*痕跡《こんせき》もなかったのになぁ…。
シンカ:そうだよなぁ…って、そうか…!あの時じゃねぇか!?
アガレイ:あの時ぃ…?
メイル:あの時…、っなるほど!
アガレイ:え、わかってないのって僕だけぇ…?
メイル:アガレイ、思い出してください。一度だけ禁書を見ようとした人間がいましたでしょう?
アガレイ:あぁー…そう言えば、居たねぇ…。でも追い返したでしょぉー?
シンカ:確かに追い出した…。それは俺も覚えてる。
シンカ:でもその時に、俺は何か違和感を感じた。こいつは何かを考えているってな。
メイル:それは私も感じました。それだけではありません。
シンカ:違和感以外に何があったってんだ。
メイル:その時の神殿の警備を行なっていたのは…人間です。
シンカ:なんだと…!?
0:
ナレーション:神殿とは創造神が*設《もう》けた『堕天使』が作った書物を封印する場所。
ナレーション:禁書が読まれる事のないように結界で守られ、四種属が当主会議と同じく四年交代で守ることになっている。
ナレーション:決して、封印が破られる事のないように。誰の目にも触れることがないように。
ナレーション:神殿の警備をする事は四種族の中で決められており、その者たちのことを『*護り人《まもりびと》』と呼ぶ。
ナレーション:そして、護り人は結界を破るような行為をすれば、惨たらしい死を迎えてしまうように力が込められている腕輪をつけて警備を行うしきたりとなっていた。
ナレーション:この腕輪も創造神が創り出したものである。
0:
アガレイ:…そうだったね。確かにあの時の神殿の護り人は人間だったねぇ。
シンカ:でもよ。流石に奴らだって、あの腕輪をつけられてる時点で誰かを入れたら死ぬんだぜ?
シンカ:そんな危険を犯すことができんのか?
メイル:…1つ方法があります。
アガレイ:方法…?
メイル:そうです。決してその腕輪の効力を無効化して、神殿に入ることが。
アガレイ:もしかして、あの術のこと…?
メイル:そうです。
シンカ:がー!もったいぶらねぇで教えろ!俺は考えるのがめんどくせぇ!
メイル:うるさいですね。今から言うところですよ。
メイル:方法はただ一つ。『腕輪を持っていない』者が入ることです。
シンカ:あ?待てよ。そんなことできねぇだろ。持ってなくても持ってたとしても、結界があるんだ。そんなのできるわけねぇ。
メイル:できます。
アガレイ:確かにあの術を使えば、出来るかもね。
シンカ:そんな術あんのか?
メイル:これは禁術にあたるのですが、『*人透明法《じんとうめいほう》』と言う術です。
シンカ:…そんなのあったかぁ?
メイル:全く…この脳筋は…。いいですか?禁術というものは禁書と一緒で使ってはいけない術式です。
シンカ:そ、それくらい知ってらぁ!
アガレイ:この禁術はねぇ?効力的には弱いだけど、禁止されたのには訳があるんだよぉ…。
シンカ:訳…?
アガレイ:覚えてないのぉ?この禁術なら、どんな結界でも通ることができるんだよねぇ。
メイル:そうです。神が作った結界すらも通ることができるのです。
シンカ:はぁ!?なんでそんなもんがあんだよ!
アガレイ:昔の戦争で作られた遺物のようなものだよぉ。だって、四つの種族は結界を互いに張り合っていたからねぇ。
アガレイ:この術を作り出したのは人間達だから、詳細はよく知らないんだけどぉ。
メイル:それだけではありません。これは神の神域すらも侵略できるように*施《ほどこ》された術なのです。故に、禁術とされてきました。
メイル:下手をすれば、力を強めたことにより、『創造神』のいらっしゃる天への道。神殿より先に作られている『創造神』の領域いく道にはわれている結界ですら、通れてしまう可能性があったからこそ、禁術となったのです。
メイル:本来ならば、忘れ去られ使われることがない術ですが…ミレイが言っていた屋敷を所有していた人物がどこかで知ってしまったのでしょう。
シンカ:わかんねぇな…!じゃあ、なんでそいつが禁書を使わなかったんだよ!
シンカ:そんな術を使えるなら、禁書だって使えてもおかしくねぇ!
アガレイ:ミレイ程の力を持ってなかったんだろうねぇ…。
シンカ:力が、ねぇ…?でもよ!禁術は使えたんだろ!?なら、できるじゃ…
アガレイ:ミレイはね、当主だけあって、僕たちと同じように強い力を持っているでしょ?
アガレイ:もちろん、一般的な能力は僕たち以外にも魔力を持ってはいるよぉ。時々、僕たちほどではないだろうけど、通常の数値よりも高い力を持っているやつもいるからねぇ。
メイル:そうですね。しかし、あの禁書を使うには、*膨大《ぼうだい》な魔力を消費します。彼も少しは力が使えたのでしょうが…いざ、使おうとした瞬間に禁書の力に負けて、死んでしまったのでしょうね。
シンカ:…だから、今まで屋敷に眠ってたのか…。
メイル:えぇ、そういう事です。地下で使おうとしたが使えずに、そのまま禁書だけが残されてしまったのでしょう。
アガレイ:それをミレイが見つけたってことだねぇ。
メイル:そうなるでしょうね…。
シンカ:でもあいつ。クソ真面目じゃねぇか…、なんであんな…。
シンカ:俺はあいつを信じてた。人間が暮らしている場所に行った時も、ミレイはたくさんの奴らに好かれていた。なのによ…!
メイル:それについては…私もわかりません…。
アガレイ:隠していたんだろうねぇ。
メイル:隠していた…?
アガレイ:そう、僕たちにバレないように。
シンカ:隠せた状態で、あんな好かれるような当主になれんのか!?
メイル:その気持ちは分かりますが、そうやって言っていてもしょうがありません。それよりも、これからどうするかです。
アガレイ:そうだよねぇ…。今まで仲良くしてきたもんねぇ。
シンカ:そんなもん、あいつを一発叩けば…!
メイル:そんなことで止まるはずないですし、あなたは殺されてしまいますよ。それだけ、強大な力を持っているのですから…。
シンカ:指を*咥《くわ》えてみてろってのか!?
メイル:そう言うわけではありません。しかし、現状では対抗できる力を我々は持ち合わせていないのです。
アガレイ:そうだねぇ。これじゃあ、また*世界規模《せかいきぼ》の戦争になりかねないからなぁ。
メイル:そこが難点なんです。
シンカ:くそ…!どうしようもないってことかよ…。
0:
ナレーション:どうしようもない状況に三当主は、行き詰まっていた。
ナレーション:それもしようがないといえよう。古き友と戦うこと、また世界規模での戦いを起こしてしまうかもしれないこと、禁術を知り得ているものが他にもいるかもしれないという現状は、彼らにとって混乱を引き起こすことは当たり前だ。
ナレーション:その時に急に*暗雲《あんうん》が立ち込めた。
メイル:空が急に暗く…。
シンカ:なんだよこれ!
アガレイ:こんな事できるの、一人しかいないでしょぉ…。
シンカ:まさか…。
ナレーション:混乱の*最中《さなか》に、大きな笑い声が聞こえてくる。
ナレーション:大地を揺るがすほどの声。
ナレーション:その声の主はミレイであった。
0:
ミレイ:『聞くがいい!この世界の無能な者たちヨ!今より、この世界は堕天使が統治スル!』
ミレイ:『例え創造神が我らを攻撃しようとも、*屈《くっ》する事はなイ。その創造神すらも消し去ってしまい、我らが新たな創造神とナル…。』
ミレイ『我らは例え、どれだけ力を持ち合わせた者達がやってきたとしても、負けることのない力を持っていル。』
ミレイ:『従う者は受け入れよウ。しかし、従うことのないものは…』
ミレイ:『世界と共に滅ぼス。』
ミレイ:『考える時間を差し上げまショウ。私たちと共に来るか、滅ぼされるかを選ぶ時間を。』
ミレイ:『いい選択をすることを、祈っていますヨ。』
ミレイ:『あはは、はははははははは!!』
0:
ナレーション:大きな高笑いとともに、黒くなっていた空が元の明るい空へと変化していた。
ナレーション:ミレイの言葉を聞いた四人は、ただただ呆然とした。
0:
シンカ:従わなければ…殺す…だと?
メイル:…これは、ミレイの戦線布告ですね…。
アガレイ:そうだねぇ。止める気は、ないだろうねぇ。
シンカ:そ、そんな事ねぇだろ!ちゃんと話し合えば、ミレイだって…
メイル:(遮って)もうその時は過ぎ去ってしまっています!
シンカ:っ!
メイル:私だって、そう考えました…。でも、今の宣言で分かりました。もう言葉は届かないのだと。
アガレイ:その通りだよぉ。まぁ、ミレイが本性を出した時から、もう届かなくなっていたんだよ。
アガレイ:だって、禁書に*魅入《みいら》られていたんだから。
シンカ:ミレイ…あんなに自分を*慕《した》ってくれている奴らを大事にしていたってのに…。
シンカ:なんでこんな事できんだよ…!
メイル:そうですね…。その気持ちは私だって痛いほど分かります…。
メイル:ですが、それを言っている場合ではないです。
アガレイ:もうその時は過ぎたんだから、覚悟を決めるしかないよ。
シンカ:覚悟…?
アガレイ:そう。ミレイと戦う覚悟だよぉ。
メイル:えぇ、そうなりますね。
シンカ:おい…、そんなに簡単に決めれるかよ!今までこの*均衡《きんこう》を一緒に保ってきた仲間じゃねぇか!それなのに…そんな…。
メイル:簡単ではないでしょう。でも、覚悟をしなければいけません。
メイル:そうでなくては、世界は確実に滅びます。
アガレイ:そう。創造神と共にね。
シンカ:…くそ!もう、方法は…ねぇ、のか…。
ミレイ:そう、その通り。もう方法などナイ。
メイル:っミレイ!?
アガレイ:いつの間に…。
シンカ:ミレイ、戦わなくてもいいだろ!前のお前に戻ってくれよ…!
ミレイ:前のワタクシ…。どんなワタクシですか?
シンカ:前のお前は人間たちに好かれていて、優しさを持っていただろうが!それがお前だろう!?
メイル:そうです。私たちはそう見てました。
アガレイ:…僕は少し違って見えてたよぉ。
シンカ:どう言うことだ…!
ミレイ:さすがアガレイですネェ。
アガレイ:褒められても嬉しくないけど。僕にはね、*鬱憤《うっぷん》が溜まっているように見えた。
アガレイ:それだけじゃない。笑顔も張り付けておるようにも見えた。
アガレイ:でも、これも優しさだと思って、きっと気のせいだと思ってきだけど…違うかったんだねぇ。
ミレイ:そう。私はこの小さい世界が嫌いだった。こんな*狭《せま》っくるしくて、*歯痒《はがゆ》い世界を…。それを壊せることができル…!
ミレイ:それならば、やらない選択なんてなイ!!
メイル:…狂ってますね。
ミレイ:いい*褒《ほ》め言葉ダ。
シンカ:そう、思ってたのか。お前は…。
ミレイ:そうダ。
シンカ:もう、あの時のお前じゃないんだな…。
ミレイ:そもそも、あのときのワタクシとはなんですカ?
ミレイ:優しく振る舞っていた姿ですか?笑っていた姿ですか?理性的な私ですか?
メイル:そうです。それがあなたの本当の姿だと、信じていました。
アガレイ:そう。あの姿が本当の君だってねぇ。
ミレイ:ふ、ふふ、ふはははははは!!
ミレイ:否、否!!ワタクシは最初からそうではなかっタ!
ミレイ:あんな事、義務でしかなイ!!言われたからやっていたけダケ。
ミレイ:本来ならば、私は混沌の世界に生まれたかったのダ。
ミレイ:しかし、叶わなかっタ…。ならば、今作ればいいだけの話!!
ミレイ:今の私にはその力がアル!そして、世界に*宣戦布告《せんせんふこく》しタ。さぁ!貴方たちには覚悟があるカネ!?ワタクシと*対峙《たいじ》その覚悟ガ!
ミレイ:ワタクシは、もう出来ていル。
シンカ:そうかよ…。お前にはこの世界を壊す事、俺たちと戦う覚悟があるって事だな…?
ミレイ:そういうことダ。
メイル:そう、なんですね…。
シンカ:分かった…。なら、今日からテメェは俺の敵だ!!
メイル:シンカ、貴方でだけではなく、私を忘れないでほしいですね。
アガレイ:ちょっと、僕も忘れないでほしいなぁ…。
ミレイ:…分かり合えないようダ。覚悟も決まっているようから、いいだろウ。ここからは、戦争でス。我々と貴方たちの種族との。
ミレイ:情は必要ナイ。とことんとやろうではないカ。
ミレイ:楽しみにしてルヨ。
シンカ:…おい。人間たちはどうするんだ。
ミレイ:あぁ…私の為の*糧《かて》になるもの達のことカ?
ミレイ:そんなこと…知りもしなイ。
シンカ:テメェ…!
メイル:そこまで*堕《お》ちましたか。
アガレイ:…もう、分かり合えないんだねぇ。
ミレイ:何を言っているのやラ。最初から、分かり合えたことなどナイ。
ミレイ:あははは!さぁ、混沌の時代の始まりダ!
ミレイ:あぁ、そうダ。言い忘れていましタ。我々の中には、貴方たちの種族から堕天使になった者がいる事を忘れないでくださいネ。
シンカ:おい…まさか…。
メイル:我々の種族たちの中から、堕天使を*創《つ》り出したのですか…!?
アガレイ:…最低だね。
ミレイ:忘れたのかナ?我々、といったはずだガ?
ミレイ:察しが悪いみたいだネ。
シンカ:くそが…!!
ミレイ:それでは皆様、戦場にてお会いいたしまショウ…。
0:
ナレーション:楽しそうに最後の言葉をいい残して、ミレイは去って行った。
ナレーション:ミレイの後ろ姿を三人は強い目で見ていた。
0:
ナレーション:こうして、開戦の*狼煙《のろし》は上げられた。
0:
ナレーション:戻ることのできない戦争が、また始まってしまったのである。
ナレーション:ミレイが『堕天使』となり去って行った後、人間の国は混乱と*混沌《こんとん》に*陥《おちい》ってしまった。
ナレーション:当主が『堕天使』となってしまったことで、彼らは統率が無くなってしまっただらだ。
ナレーション:その人間を残りの三種族の当主がどうにか*沈《しず》めて、人間たちが混乱に陥っていたのを鎮める。
ナレーション:しかし、それも一時*凌《しの》ぎにしかならない。それは三当主もわかっていたが、現状を見るとそれ以外に出来る事がなかったのだ。
ナレーション:当主達は天使族のあるこの世界で一番高いとされるホーン山の中腹にある*山村《さんそん》集まって、これからの事と人間達の当主をどうするかを話し合う事を決める為の話し合いをする。
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アガレイ:…これからどうするのぉ?
シンカ:どうするつったって…あいつを止めるしかねぇだろ。
メイル:どうやってするつもりですか。
シンカ:それは…
メイル:『堕天使』は種族の中でも最も強く、神すらも*凌駕《りょうが》する力を持つとも言われるのですよ?
メイル:そんな相手にどうやって*挑《いど》むと言うのですか。
シンカ:そんなもん!やって見なきゃわかんねぇだろうが!!
メイル:そんな簡単な話じゃないですよ!この脳筋が!!
シンカ:なんだと…!?
アガレイ:静かにして。
シンカ:っ!
アガレイ:ここで言い合っててもしょうがないでしょぉ?結局は何か手を打たないと、世界が滅ぶんだからぁ。
メイル:…そうですね。
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ナレーション:アガレイの言葉にメイルは考え込み、シンカは厳しい顔で黙り込み、アガレイは*欠伸《あくび》をする。
ナレーション:彼ら自身もどうしたらいいのかが思い浮かなばい状態ではあった。
ナレーション:それもそうだと言えるだろう。『堕天使』は最も強く、凶悪で、全ての種族の上に立ち、世界すらも滅ぼしかけていたところを、産まれたばかりだったからこそ創造神が『堕天使』を世界から消すことができたのだ。
ナレーション:もう生まれることのないように、存在すらも消し去ろうとしていた。だが、彼らは消える直前に言い残した言葉があった。
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『堕天使』:我々は決して滅ぶ事はない!いつかこの恨みを*晴《はら》そう!我々以外の者どもを!消し去って、そして、貴様を…神を殺し!我々が頂点に立ってくれる!!
『堕天使』:あは、あはははは!!我らは滅びぬ!この身を四つの書物にし、残してくれる!!
『堕天使』:そしていつか必ず復活して、この*屈辱《くつじょく》を晴らしてみせよう!
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ナレーション:そう言い残して、『堕天使』は滅んでいった。
ナレーション:四つに分かれた書物は、神が集めて四種族に一つずつ渡して地下深くに厳重に保管していた。厳重に封印を*施《ほどこ》した状態で。
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メイル:我々が作り上げている神殿に厳重に封印していた書物が、どうやって古い館の地下に…。
アガレイ:そうだよねぇ。取り出された*痕跡《こんせき》もなかったのになぁ…。
シンカ:そうだよなぁ…って、そうか…!あの時じゃねぇか!?
アガレイ:あの時ぃ…?
メイル:あの時…、っなるほど!
アガレイ:え、わかってないのって僕だけぇ…?
メイル:アガレイ、思い出してください。一度だけ禁書を見ようとした人間がいましたでしょう?
アガレイ:あぁー…そう言えば、居たねぇ…。でも追い返したでしょぉー?
シンカ:確かに追い出した…。それは俺も覚えてる。
シンカ:でもその時に、俺は何か違和感を感じた。こいつは何かを考えているってな。
メイル:それは私も感じました。それだけではありません。
シンカ:違和感以外に何があったってんだ。
メイル:その時の神殿の警備を行なっていたのは…人間です。
シンカ:なんだと…!?
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ナレーション:神殿とは創造神が*設《もう》けた『堕天使』が作った書物を封印する場所。
ナレーション:禁書が読まれる事のないように結界で守られ、四種属が当主会議と同じく四年交代で守ることになっている。
ナレーション:決して、封印が破られる事のないように。誰の目にも触れることがないように。
ナレーション:神殿の警備をする事は四種族の中で決められており、その者たちのことを『*護り人《まもりびと》』と呼ぶ。
ナレーション:そして、護り人は結界を破るような行為をすれば、惨たらしい死を迎えてしまうように力が込められている腕輪をつけて警備を行うしきたりとなっていた。
ナレーション:この腕輪も創造神が創り出したものである。
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アガレイ:…そうだったね。確かにあの時の神殿の護り人は人間だったねぇ。
シンカ:でもよ。流石に奴らだって、あの腕輪をつけられてる時点で誰かを入れたら死ぬんだぜ?
シンカ:そんな危険を犯すことができんのか?
メイル:…1つ方法があります。
アガレイ:方法…?
メイル:そうです。決してその腕輪の効力を無効化して、神殿に入ることが。
アガレイ:もしかして、あの術のこと…?
メイル:そうです。
シンカ:がー!もったいぶらねぇで教えろ!俺は考えるのがめんどくせぇ!
メイル:うるさいですね。今から言うところですよ。
メイル:方法はただ一つ。『腕輪を持っていない』者が入ることです。
シンカ:あ?待てよ。そんなことできねぇだろ。持ってなくても持ってたとしても、結界があるんだ。そんなのできるわけねぇ。
メイル:できます。
アガレイ:確かにあの術を使えば、出来るかもね。
シンカ:そんな術あんのか?
メイル:これは禁術にあたるのですが、『*人透明法《じんとうめいほう》』と言う術です。
シンカ:…そんなのあったかぁ?
メイル:全く…この脳筋は…。いいですか?禁術というものは禁書と一緒で使ってはいけない術式です。
シンカ:そ、それくらい知ってらぁ!
アガレイ:この禁術はねぇ?効力的には弱いだけど、禁止されたのには訳があるんだよぉ…。
シンカ:訳…?
アガレイ:覚えてないのぉ?この禁術なら、どんな結界でも通ることができるんだよねぇ。
メイル:そうです。神が作った結界すらも通ることができるのです。
シンカ:はぁ!?なんでそんなもんがあんだよ!
アガレイ:昔の戦争で作られた遺物のようなものだよぉ。だって、四つの種族は結界を互いに張り合っていたからねぇ。
アガレイ:この術を作り出したのは人間達だから、詳細はよく知らないんだけどぉ。
メイル:それだけではありません。これは神の神域すらも侵略できるように*施《ほどこ》された術なのです。故に、禁術とされてきました。
メイル:下手をすれば、力を強めたことにより、『創造神』のいらっしゃる天への道。神殿より先に作られている『創造神』の領域いく道にはわれている結界ですら、通れてしまう可能性があったからこそ、禁術となったのです。
メイル:本来ならば、忘れ去られ使われることがない術ですが…ミレイが言っていた屋敷を所有していた人物がどこかで知ってしまったのでしょう。
シンカ:わかんねぇな…!じゃあ、なんでそいつが禁書を使わなかったんだよ!
シンカ:そんな術を使えるなら、禁書だって使えてもおかしくねぇ!
アガレイ:ミレイ程の力を持ってなかったんだろうねぇ…。
シンカ:力が、ねぇ…?でもよ!禁術は使えたんだろ!?なら、できるじゃ…
アガレイ:ミレイはね、当主だけあって、僕たちと同じように強い力を持っているでしょ?
アガレイ:もちろん、一般的な能力は僕たち以外にも魔力を持ってはいるよぉ。時々、僕たちほどではないだろうけど、通常の数値よりも高い力を持っているやつもいるからねぇ。
メイル:そうですね。しかし、あの禁書を使うには、*膨大《ぼうだい》な魔力を消費します。彼も少しは力が使えたのでしょうが…いざ、使おうとした瞬間に禁書の力に負けて、死んでしまったのでしょうね。
シンカ:…だから、今まで屋敷に眠ってたのか…。
メイル:えぇ、そういう事です。地下で使おうとしたが使えずに、そのまま禁書だけが残されてしまったのでしょう。
アガレイ:それをミレイが見つけたってことだねぇ。
メイル:そうなるでしょうね…。
シンカ:でもあいつ。クソ真面目じゃねぇか…、なんであんな…。
シンカ:俺はあいつを信じてた。人間が暮らしている場所に行った時も、ミレイはたくさんの奴らに好かれていた。なのによ…!
メイル:それについては…私もわかりません…。
アガレイ:隠していたんだろうねぇ。
メイル:隠していた…?
アガレイ:そう、僕たちにバレないように。
シンカ:隠せた状態で、あんな好かれるような当主になれんのか!?
メイル:その気持ちは分かりますが、そうやって言っていてもしょうがありません。それよりも、これからどうするかです。
アガレイ:そうだよねぇ…。今まで仲良くしてきたもんねぇ。
シンカ:そんなもん、あいつを一発叩けば…!
メイル:そんなことで止まるはずないですし、あなたは殺されてしまいますよ。それだけ、強大な力を持っているのですから…。
シンカ:指を*咥《くわ》えてみてろってのか!?
メイル:そう言うわけではありません。しかし、現状では対抗できる力を我々は持ち合わせていないのです。
アガレイ:そうだねぇ。これじゃあ、また*世界規模《せかいきぼ》の戦争になりかねないからなぁ。
メイル:そこが難点なんです。
シンカ:くそ…!どうしようもないってことかよ…。
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ナレーション:どうしようもない状況に三当主は、行き詰まっていた。
ナレーション:それもしようがないといえよう。古き友と戦うこと、また世界規模での戦いを起こしてしまうかもしれないこと、禁術を知り得ているものが他にもいるかもしれないという現状は、彼らにとって混乱を引き起こすことは当たり前だ。
ナレーション:その時に急に*暗雲《あんうん》が立ち込めた。
メイル:空が急に暗く…。
シンカ:なんだよこれ!
アガレイ:こんな事できるの、一人しかいないでしょぉ…。
シンカ:まさか…。
ナレーション:混乱の*最中《さなか》に、大きな笑い声が聞こえてくる。
ナレーション:大地を揺るがすほどの声。
ナレーション:その声の主はミレイであった。
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ミレイ:『聞くがいい!この世界の無能な者たちヨ!今より、この世界は堕天使が統治スル!』
ミレイ:『例え創造神が我らを攻撃しようとも、*屈《くっ》する事はなイ。その創造神すらも消し去ってしまい、我らが新たな創造神とナル…。』
ミレイ『我らは例え、どれだけ力を持ち合わせた者達がやってきたとしても、負けることのない力を持っていル。』
ミレイ:『従う者は受け入れよウ。しかし、従うことのないものは…』
ミレイ:『世界と共に滅ぼス。』
ミレイ:『考える時間を差し上げまショウ。私たちと共に来るか、滅ぼされるかを選ぶ時間を。』
ミレイ:『いい選択をすることを、祈っていますヨ。』
ミレイ:『あはは、はははははははは!!』
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ナレーション:大きな高笑いとともに、黒くなっていた空が元の明るい空へと変化していた。
ナレーション:ミレイの言葉を聞いた四人は、ただただ呆然とした。
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シンカ:従わなければ…殺す…だと?
メイル:…これは、ミレイの戦線布告ですね…。
アガレイ:そうだねぇ。止める気は、ないだろうねぇ。
シンカ:そ、そんな事ねぇだろ!ちゃんと話し合えば、ミレイだって…
メイル:(遮って)もうその時は過ぎ去ってしまっています!
シンカ:っ!
メイル:私だって、そう考えました…。でも、今の宣言で分かりました。もう言葉は届かないのだと。
アガレイ:その通りだよぉ。まぁ、ミレイが本性を出した時から、もう届かなくなっていたんだよ。
アガレイ:だって、禁書に*魅入《みいら》られていたんだから。
シンカ:ミレイ…あんなに自分を*慕《した》ってくれている奴らを大事にしていたってのに…。
シンカ:なんでこんな事できんだよ…!
メイル:そうですね…。その気持ちは私だって痛いほど分かります…。
メイル:ですが、それを言っている場合ではないです。
アガレイ:もうその時は過ぎたんだから、覚悟を決めるしかないよ。
シンカ:覚悟…?
アガレイ:そう。ミレイと戦う覚悟だよぉ。
メイル:えぇ、そうなりますね。
シンカ:おい…、そんなに簡単に決めれるかよ!今までこの*均衡《きんこう》を一緒に保ってきた仲間じゃねぇか!それなのに…そんな…。
メイル:簡単ではないでしょう。でも、覚悟をしなければいけません。
メイル:そうでなくては、世界は確実に滅びます。
アガレイ:そう。創造神と共にね。
シンカ:…くそ!もう、方法は…ねぇ、のか…。
ミレイ:そう、その通り。もう方法などナイ。
メイル:っミレイ!?
アガレイ:いつの間に…。
シンカ:ミレイ、戦わなくてもいいだろ!前のお前に戻ってくれよ…!
ミレイ:前のワタクシ…。どんなワタクシですか?
シンカ:前のお前は人間たちに好かれていて、優しさを持っていただろうが!それがお前だろう!?
メイル:そうです。私たちはそう見てました。
アガレイ:…僕は少し違って見えてたよぉ。
シンカ:どう言うことだ…!
ミレイ:さすがアガレイですネェ。
アガレイ:褒められても嬉しくないけど。僕にはね、*鬱憤《うっぷん》が溜まっているように見えた。
アガレイ:それだけじゃない。笑顔も張り付けておるようにも見えた。
アガレイ:でも、これも優しさだと思って、きっと気のせいだと思ってきだけど…違うかったんだねぇ。
ミレイ:そう。私はこの小さい世界が嫌いだった。こんな*狭《せま》っくるしくて、*歯痒《はがゆ》い世界を…。それを壊せることができル…!
ミレイ:それならば、やらない選択なんてなイ!!
メイル:…狂ってますね。
ミレイ:いい*褒《ほ》め言葉ダ。
シンカ:そう、思ってたのか。お前は…。
ミレイ:そうダ。
シンカ:もう、あの時のお前じゃないんだな…。
ミレイ:そもそも、あのときのワタクシとはなんですカ?
ミレイ:優しく振る舞っていた姿ですか?笑っていた姿ですか?理性的な私ですか?
メイル:そうです。それがあなたの本当の姿だと、信じていました。
アガレイ:そう。あの姿が本当の君だってねぇ。
ミレイ:ふ、ふふ、ふはははははは!!
ミレイ:否、否!!ワタクシは最初からそうではなかっタ!
ミレイ:あんな事、義務でしかなイ!!言われたからやっていたけダケ。
ミレイ:本来ならば、私は混沌の世界に生まれたかったのダ。
ミレイ:しかし、叶わなかっタ…。ならば、今作ればいいだけの話!!
ミレイ:今の私にはその力がアル!そして、世界に*宣戦布告《せんせんふこく》しタ。さぁ!貴方たちには覚悟があるカネ!?ワタクシと*対峙《たいじ》その覚悟ガ!
ミレイ:ワタクシは、もう出来ていル。
シンカ:そうかよ…。お前にはこの世界を壊す事、俺たちと戦う覚悟があるって事だな…?
ミレイ:そういうことダ。
メイル:そう、なんですね…。
シンカ:分かった…。なら、今日からテメェは俺の敵だ!!
メイル:シンカ、貴方でだけではなく、私を忘れないでほしいですね。
アガレイ:ちょっと、僕も忘れないでほしいなぁ…。
ミレイ:…分かり合えないようダ。覚悟も決まっているようから、いいだろウ。ここからは、戦争でス。我々と貴方たちの種族との。
ミレイ:情は必要ナイ。とことんとやろうではないカ。
ミレイ:楽しみにしてルヨ。
シンカ:…おい。人間たちはどうするんだ。
ミレイ:あぁ…私の為の*糧《かて》になるもの達のことカ?
ミレイ:そんなこと…知りもしなイ。
シンカ:テメェ…!
メイル:そこまで*堕《お》ちましたか。
アガレイ:…もう、分かり合えないんだねぇ。
ミレイ:何を言っているのやラ。最初から、分かり合えたことなどナイ。
ミレイ:あははは!さぁ、混沌の時代の始まりダ!
ミレイ:あぁ、そうダ。言い忘れていましタ。我々の中には、貴方たちの種族から堕天使になった者がいる事を忘れないでくださいネ。
シンカ:おい…まさか…。
メイル:我々の種族たちの中から、堕天使を*創《つ》り出したのですか…!?
アガレイ:…最低だね。
ミレイ:忘れたのかナ?我々、といったはずだガ?
ミレイ:察しが悪いみたいだネ。
シンカ:くそが…!!
ミレイ:それでは皆様、戦場にてお会いいたしまショウ…。
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ナレーション:楽しそうに最後の言葉をいい残して、ミレイは去って行った。
ナレーション:ミレイの後ろ姿を三人は強い目で見ていた。
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ナレーション:こうして、開戦の*狼煙《のろし》は上げられた。
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ナレーション:戻ることのできない戦争が、また始まってしまったのである。