台本概要

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タイトル オイボレ詐欺
作者名 熊野むっち  (@mucchi_0908)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(不問3)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【声劇配信時の規約】
・配信時に作者名および作品名を記載
※上記一点のみ必ずご対応くだされば、作者への連絡は不要です。
(投げ銭の有無、有償無償に関わらず)
軽微なセリフ変更および性別転換もご自由にしてください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
若者 不問 55 若者
不問 39
不問 29
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
 :熊野むっち作【オイボレ詐欺】 : 0:アパートの一室。一人暮らしの男性(女性)の部屋。 0:電話の着信音 : 若者:トゥルルルルル、トゥルルルルル…… 若者:ピッ(電話を取る)もしもし。 : 爺:あー、ワシじゃ。 : 若者:…ワシ? : 爺:ワシじゃよ!ワシワシ! : 若者:(少し考えて)……えっと、どなたですか? : 爺:だからワシじゃって!ワシワシ!ワーシ!! : 若者:ワシ……おじいちゃん……? : 爺:そうそう!おじいちゃん!お前のおじいちゃんじゃ! 爺:どうじゃ?元気しておったか? : 若者:え?……うん、まあ。 : 爺:実はおじいちゃん、ちょっと困った事になってしもうてのう。 爺:あー、ちょっと待っておれ……(電話を替わる) : : 0:電話口の相手がおじいさんからおばあさんに替わる。 : : 婆:あー、もしもし。わたくし弁護士の梅沢ヨネと申します。 婆:実はあなたのおじい様が電車で痴漢をされましてねえ。いま鉄道警察に拘束されていまして。 : 若者:えっ!? : 婆:ちょっとおじい様に電話を替わりますね。(電話を替わる) : 爺:(電話口で号泣している) 爺:うう!うう……ふぐぅ!おぶおぶ!すまんの~!つい出来心で…… 爺:孫のお前にまで大変な迷惑をかけてしもうて……うぐ…ヒック…… : 若者:……。 : 婆:今すぐ示談金を即金で200万お支払い頂ければ、警察へ身柄の引き渡しをせずに済むんじゃが、いかがかのう~? 婆:まあ、決して安い金額ではないと思うんじゃが、ご家族の方も余り事を大きくしたくないじゃろうし……。 : 若者:(おずおずと口を開く)あの…… : 爺:うぶぅ!おふぅ!すまん!すまんのう~! : 婆:…どうですか?お支払い頂けますか? : 若者:……あの、祖父は、 : 爺:オフゥ!ウグ……ヒック! : 若者:……わたしが小学生の時にはもう亡くなってまして…… : 婆:父方も? : 若者:はい。 : 爺:母方も? : 若者:はい、母方も。……なのでたぶん人違いなんじゃないかと思います。 : 爺:……フグッ!オフッ!オフゥ! 爺:ガチャ!ツーツーツー : : 0:唐突に電話が切れる : : 若者:あ、切れた。 若者:今のってもしかしてオレオレ詐欺……? 若者:それにしても、なんで電話口の人みんな老人だったんだろ……? : : 0:再び電話が鳴る。 : : 若者:トゥルルルルル、トゥルルルルル…… 若者:まただ……。 若者:ピッ(電話を取る) : 婆:もしもし、ワしじゃよ。ワシ。 : 若者:……え……また? : 婆:ワーシ。お前のお婆ちゃんじゃよ。どうじゃ元気にしておったかのう? : 若者:え?いや、はあ、まあ…… : 婆:実は今日電話したのは他でもないんじゃが、ワシももう年じゃから、モーロクする前に、その……遺書を残しておこうと思っての。そこでお前さんに相談なんじゃが……あー、ちょっと待っておれ……。 : : 0:電話口の相手がおばあさんからおじいさんに替わる。 : : 爺:もしもし、わたくし「ジジーレ法律事務所」の老川(おいかわ)と申します。 爺:本日はあなたのお婆様より、お婆様の遺産12億円を、全額あなたに相続したいと申し出がありまして。 : 若者:え!12億円!? : 爺:そうです。これから遺産相続についての書類に取りかかるところなんじゃが、差し当たって書類作成の手数料を至急お支払い頂きたくてですねえ。 : 若者:はあ……。 : 爺:これからご案内する銀行口座にいますぐ150万円を振り込んで頂きたいのです。 : 若者:ひゃ、150万円!? : 爺:なにぶん受け取る遺産の金額が高額なもんじゃから、書類作成の手数料も一般的な感覚ですと、少々お高く感じられるかと思います…… : 婆:(電話を替わって)でも、このあと受け取る金額を考えたら、微々たるもんでしょう? 婆:ゆくゆくは12億円も手に入るんだから。 : 若者:あ、あの(何か言いかける)  : 爺:それでは口座番号をお伝えしますのでメモのご用意をお願いします。 : 若者:あの!ちょっといいですか! : 爺:はい?なんでしょう。 : 若者:これって、オレオレ詐欺ですよね! : 爺:ギク! : 婆:(空々しく)やだわあ、この子ったら、急に何言い出すかと思ったらおばあちゃんの事、詐欺だなんて……。 : 若者:なんだったらさっきの電話もあなたたち二人ですよね! : 爺:ギクギク!! : 婆:さあ、ワシには何の事かさっぱり分かりませんな。一体何を根拠に(そんな事を) : 若者:だってすごい老人だから! : 婆:……はい? : 若者:だって!すごい!さっきから!老人ばっかなんだもん! : 爺:……。 婆:……。 : 若者:不自然すぎるよ!弁護士も老人だしさー! 若者:ミスキャスト!!他に誰かいなかったの!? 若者:あと、おじいちゃんもう死んでるって言ったら、おじいちゃんとおばあちゃんで配役入れ替えてくるのもやめて!おばあちゃんも死んでるから! : 爺:父方も? : 若者:父方も! : 婆:母方も? : 若者:母方も!!他当たって!!(電話切れる)…あ、切れちゃった。 若者:なんか切られたら切られたで腹立つな……。 : : 0:電話が鳴る。 : : 若者:トゥルルルルル、トゥルルルルル…… 若者:ピッ(電話に出る)もういい加減にしてください! : 婆:あの、ワシじゃよ、ワシ。 : 若者:だからいい加減にしないと(警察に通報しますよ) : 婆:(遮って)ワシワシ~!すず~! : 若者:……すず……? : 婆:ちょっとワシ~、いま~、お姉ちゃんのアリスと一緒にいるんだけどぉ~ : 若者:……アリス……? : 婆:ちょっと、お姉ちゃんに替わるね。 : 若者:え。 : 爺:あーもしもし。ワシワシ。姉のアリス。 : 若者:姉のアリス。 : 爺:いまぁ~、ちょっと~、ドラマの撮影の帰りに財布を落としてしもうてえ~ 爺:家に帰れなくなっちゃったもんだから、その、ぺーぺーで送金してもらえんかなあと思ってのう。 : 若者:あの、ちょっと待ってください。 若者:えっと、確認ですけど、あなたお名前は : 爺:あ、ワシ?アリス。 : 若者:あなたがお姉さんのアリスさん。それで最初にかけてきたのが、 : 爺:妹のすず。 : 若者:妹さんの、すずさん。でふたりは、 : 爺:ドラマの撮影の帰り。 : 若者:ドラマの撮影の帰り。 : : 0:しばしの沈黙 : : 爺:じゃあ、これから言うペーペーのアカウントに、とりあえず5万円くらい送金してもらってもいい?? : 若者:あのさあ……寄せてよ……。 : 爺:……はて? : 若者:寄せて!成りすましだったら!成りすますんだったら! 若者:せめて本人に寄せてしゃべってよ!なんなの!(口調を真似て)財布を落としてしもうてえ~って! 若者:すずもアリスも老人だから!このクオリティで騙される奴なんていないから!! : 婆:でも、迷惑メールの成りすましも、そんなにクオリティ高くないじゃろう? : 若者:急に正論で返してこないで!ビックリしちゃうから! 若者:…とにかく!次また電話かけてきたら警察に通報しますからね! : : 0:電話口ですすり泣きを始める爺と婆。 : : 爺:ウグッ、ヒック……やっぱり駄目か。 : 婆:グス……おじいさん、仕方ありませんよ。 婆:私たちが人様をダマすなんて、最初からムリだったのよ。 : 若者:え……。 : 婆:どこのどなたか存じませんが、この度は大変なご迷惑をおかけしてしまいました。 : 爺:申し訳ございませなんだ~!!フグゥ!! : 婆:実はワシたち、オレオレ詐欺の被害に遭って、老後の生活に蓄えていた資金を、すべて騙し取られてしもうたんじゃ。 : 爺:オブゥ~!! : 若者:え。 : 婆:この歳で明日の食事にも困るような暮らしで……。 婆:それで、ワシらが受けた詐欺の手口を見よう見まねでやってみて、同じようにお金を稼げないかと思いまして……。 : 若者:それで、こんな電話を。 : 爺:フグゥ。オブゥ。本当に申し訳ございませなんだ~!! : 若者:……あの、 : 婆:はい。なんでしょう。 : 若者:興味本位の質問なんですが、ちなみに、おふたりはどんな手口の詐欺に遭われたんですか? : 爺:(ここはアドリブパートです。あなたの考えた詐欺手口を発表してください) 爺:以下、アドリブが苦手な方用のセリフです。 爺: 爺:それが……ZARDの復活ライブのクラファンに1000クチも応募してしまいまして……。 爺:返礼品が坂井泉水のクローン人間じゃと言われ、つい……。 : 若者:随分雑な手口だな。 : 爺:いま思えばそうなんじゃが……相手の巧妙な手口にダマされ、ウグ…ヒック! : 婆:もう私たちには生きる希望もありません。 婆:こうなったら自ら(この命を絶つしかないと) : 若者:ちょちょ、ちょっと待って!落ち着いてください! 若者:そうだ!警察に相談したら犯人捕まえてもらえるかも知れないですよ。 : 爺:警察にも相談したんじゃが、もうどうにもならんと言われてしもうてのう。 : 若者:そうなんですか……。 : 婆:あの……こんなに大変なご迷惑をおかけしたあとに、ぶしつけなお願いなのは百も承知なんじゃが……そのお~、ほんのお気持ちで良いんで、お金をお借りできませんかのう……。 : 若者:うーん。そういう事なら仕方ありません。 若者:ただし、二度とこれまでみたいな詐欺行為は働かないと、私に誓ってください。 : 婆:おお~!有難うございます!有難うございます! : 爺:ばあさんや、こんな孫ほど年の離れた方に、暖かい言葉をかけてもらえるとは、世の中まだまだ捨てたもんじゃないのう。 : 婆:本当ですね。じいさんや。 : 若者:まあ、これも何かのご縁だと思う事にします。 若者:電話なんで、あとで銀行に振り込んどけばいいですか? : 爺:あー、ちょっと待ってくだされ……。 爺:……ぴんぽーん。 : : 0:自宅のインターホンが鳴る。 : : 若者:え!?どゆこと!? : 婆:どうもお世話様です。先ほどお電話した者です。 : 若者:えっ!?なんで!?怖い怖い怖い!! : 爺:しばらくここでお世話になろうと思います。 : 若者:ちょっと待って!って言うか何で家の住所知ってんの!? : 爺:改めまして……ウォッホン! 爺:……ワシの名前は……ルフィじゃ!! : 若者:いやそれ特殊詐欺グループのリーダーの名前!! : 爺:オレオレ詐欺の王にオレはなる! : :  :(終わり)

 :熊野むっち作【オイボレ詐欺】 : 0:アパートの一室。一人暮らしの男性(女性)の部屋。 0:電話の着信音 : 若者:トゥルルルルル、トゥルルルルル…… 若者:ピッ(電話を取る)もしもし。 : 爺:あー、ワシじゃ。 : 若者:…ワシ? : 爺:ワシじゃよ!ワシワシ! : 若者:(少し考えて)……えっと、どなたですか? : 爺:だからワシじゃって!ワシワシ!ワーシ!! : 若者:ワシ……おじいちゃん……? : 爺:そうそう!おじいちゃん!お前のおじいちゃんじゃ! 爺:どうじゃ?元気しておったか? : 若者:え?……うん、まあ。 : 爺:実はおじいちゃん、ちょっと困った事になってしもうてのう。 爺:あー、ちょっと待っておれ……(電話を替わる) : : 0:電話口の相手がおじいさんからおばあさんに替わる。 : : 婆:あー、もしもし。わたくし弁護士の梅沢ヨネと申します。 婆:実はあなたのおじい様が電車で痴漢をされましてねえ。いま鉄道警察に拘束されていまして。 : 若者:えっ!? : 婆:ちょっとおじい様に電話を替わりますね。(電話を替わる) : 爺:(電話口で号泣している) 爺:うう!うう……ふぐぅ!おぶおぶ!すまんの~!つい出来心で…… 爺:孫のお前にまで大変な迷惑をかけてしもうて……うぐ…ヒック…… : 若者:……。 : 婆:今すぐ示談金を即金で200万お支払い頂ければ、警察へ身柄の引き渡しをせずに済むんじゃが、いかがかのう~? 婆:まあ、決して安い金額ではないと思うんじゃが、ご家族の方も余り事を大きくしたくないじゃろうし……。 : 若者:(おずおずと口を開く)あの…… : 爺:うぶぅ!おふぅ!すまん!すまんのう~! : 婆:…どうですか?お支払い頂けますか? : 若者:……あの、祖父は、 : 爺:オフゥ!ウグ……ヒック! : 若者:……わたしが小学生の時にはもう亡くなってまして…… : 婆:父方も? : 若者:はい。 : 爺:母方も? : 若者:はい、母方も。……なのでたぶん人違いなんじゃないかと思います。 : 爺:……フグッ!オフッ!オフゥ! 爺:ガチャ!ツーツーツー : : 0:唐突に電話が切れる : : 若者:あ、切れた。 若者:今のってもしかしてオレオレ詐欺……? 若者:それにしても、なんで電話口の人みんな老人だったんだろ……? : : 0:再び電話が鳴る。 : : 若者:トゥルルルルル、トゥルルルルル…… 若者:まただ……。 若者:ピッ(電話を取る) : 婆:もしもし、ワしじゃよ。ワシ。 : 若者:……え……また? : 婆:ワーシ。お前のお婆ちゃんじゃよ。どうじゃ元気にしておったかのう? : 若者:え?いや、はあ、まあ…… : 婆:実は今日電話したのは他でもないんじゃが、ワシももう年じゃから、モーロクする前に、その……遺書を残しておこうと思っての。そこでお前さんに相談なんじゃが……あー、ちょっと待っておれ……。 : : 0:電話口の相手がおばあさんからおじいさんに替わる。 : : 爺:もしもし、わたくし「ジジーレ法律事務所」の老川(おいかわ)と申します。 爺:本日はあなたのお婆様より、お婆様の遺産12億円を、全額あなたに相続したいと申し出がありまして。 : 若者:え!12億円!? : 爺:そうです。これから遺産相続についての書類に取りかかるところなんじゃが、差し当たって書類作成の手数料を至急お支払い頂きたくてですねえ。 : 若者:はあ……。 : 爺:これからご案内する銀行口座にいますぐ150万円を振り込んで頂きたいのです。 : 若者:ひゃ、150万円!? : 爺:なにぶん受け取る遺産の金額が高額なもんじゃから、書類作成の手数料も一般的な感覚ですと、少々お高く感じられるかと思います…… : 婆:(電話を替わって)でも、このあと受け取る金額を考えたら、微々たるもんでしょう? 婆:ゆくゆくは12億円も手に入るんだから。 : 若者:あ、あの(何か言いかける)  : 爺:それでは口座番号をお伝えしますのでメモのご用意をお願いします。 : 若者:あの!ちょっといいですか! : 爺:はい?なんでしょう。 : 若者:これって、オレオレ詐欺ですよね! : 爺:ギク! : 婆:(空々しく)やだわあ、この子ったら、急に何言い出すかと思ったらおばあちゃんの事、詐欺だなんて……。 : 若者:なんだったらさっきの電話もあなたたち二人ですよね! : 爺:ギクギク!! : 婆:さあ、ワシには何の事かさっぱり分かりませんな。一体何を根拠に(そんな事を) : 若者:だってすごい老人だから! : 婆:……はい? : 若者:だって!すごい!さっきから!老人ばっかなんだもん! : 爺:……。 婆:……。 : 若者:不自然すぎるよ!弁護士も老人だしさー! 若者:ミスキャスト!!他に誰かいなかったの!? 若者:あと、おじいちゃんもう死んでるって言ったら、おじいちゃんとおばあちゃんで配役入れ替えてくるのもやめて!おばあちゃんも死んでるから! : 爺:父方も? : 若者:父方も! : 婆:母方も? : 若者:母方も!!他当たって!!(電話切れる)…あ、切れちゃった。 若者:なんか切られたら切られたで腹立つな……。 : : 0:電話が鳴る。 : : 若者:トゥルルルルル、トゥルルルルル…… 若者:ピッ(電話に出る)もういい加減にしてください! : 婆:あの、ワシじゃよ、ワシ。 : 若者:だからいい加減にしないと(警察に通報しますよ) : 婆:(遮って)ワシワシ~!すず~! : 若者:……すず……? : 婆:ちょっとワシ~、いま~、お姉ちゃんのアリスと一緒にいるんだけどぉ~ : 若者:……アリス……? : 婆:ちょっと、お姉ちゃんに替わるね。 : 若者:え。 : 爺:あーもしもし。ワシワシ。姉のアリス。 : 若者:姉のアリス。 : 爺:いまぁ~、ちょっと~、ドラマの撮影の帰りに財布を落としてしもうてえ~ 爺:家に帰れなくなっちゃったもんだから、その、ぺーぺーで送金してもらえんかなあと思ってのう。 : 若者:あの、ちょっと待ってください。 若者:えっと、確認ですけど、あなたお名前は : 爺:あ、ワシ?アリス。 : 若者:あなたがお姉さんのアリスさん。それで最初にかけてきたのが、 : 爺:妹のすず。 : 若者:妹さんの、すずさん。でふたりは、 : 爺:ドラマの撮影の帰り。 : 若者:ドラマの撮影の帰り。 : : 0:しばしの沈黙 : : 爺:じゃあ、これから言うペーペーのアカウントに、とりあえず5万円くらい送金してもらってもいい?? : 若者:あのさあ……寄せてよ……。 : 爺:……はて? : 若者:寄せて!成りすましだったら!成りすますんだったら! 若者:せめて本人に寄せてしゃべってよ!なんなの!(口調を真似て)財布を落としてしもうてえ~って! 若者:すずもアリスも老人だから!このクオリティで騙される奴なんていないから!! : 婆:でも、迷惑メールの成りすましも、そんなにクオリティ高くないじゃろう? : 若者:急に正論で返してこないで!ビックリしちゃうから! 若者:…とにかく!次また電話かけてきたら警察に通報しますからね! : : 0:電話口ですすり泣きを始める爺と婆。 : : 爺:ウグッ、ヒック……やっぱり駄目か。 : 婆:グス……おじいさん、仕方ありませんよ。 婆:私たちが人様をダマすなんて、最初からムリだったのよ。 : 若者:え……。 : 婆:どこのどなたか存じませんが、この度は大変なご迷惑をおかけしてしまいました。 : 爺:申し訳ございませなんだ~!!フグゥ!! : 婆:実はワシたち、オレオレ詐欺の被害に遭って、老後の生活に蓄えていた資金を、すべて騙し取られてしもうたんじゃ。 : 爺:オブゥ~!! : 若者:え。 : 婆:この歳で明日の食事にも困るような暮らしで……。 婆:それで、ワシらが受けた詐欺の手口を見よう見まねでやってみて、同じようにお金を稼げないかと思いまして……。 : 若者:それで、こんな電話を。 : 爺:フグゥ。オブゥ。本当に申し訳ございませなんだ~!! : 若者:……あの、 : 婆:はい。なんでしょう。 : 若者:興味本位の質問なんですが、ちなみに、おふたりはどんな手口の詐欺に遭われたんですか? : 爺:(ここはアドリブパートです。あなたの考えた詐欺手口を発表してください) 爺:以下、アドリブが苦手な方用のセリフです。 爺: 爺:それが……ZARDの復活ライブのクラファンに1000クチも応募してしまいまして……。 爺:返礼品が坂井泉水のクローン人間じゃと言われ、つい……。 : 若者:随分雑な手口だな。 : 爺:いま思えばそうなんじゃが……相手の巧妙な手口にダマされ、ウグ…ヒック! : 婆:もう私たちには生きる希望もありません。 婆:こうなったら自ら(この命を絶つしかないと) : 若者:ちょちょ、ちょっと待って!落ち着いてください! 若者:そうだ!警察に相談したら犯人捕まえてもらえるかも知れないですよ。 : 爺:警察にも相談したんじゃが、もうどうにもならんと言われてしもうてのう。 : 若者:そうなんですか……。 : 婆:あの……こんなに大変なご迷惑をおかけしたあとに、ぶしつけなお願いなのは百も承知なんじゃが……そのお~、ほんのお気持ちで良いんで、お金をお借りできませんかのう……。 : 若者:うーん。そういう事なら仕方ありません。 若者:ただし、二度とこれまでみたいな詐欺行為は働かないと、私に誓ってください。 : 婆:おお~!有難うございます!有難うございます! : 爺:ばあさんや、こんな孫ほど年の離れた方に、暖かい言葉をかけてもらえるとは、世の中まだまだ捨てたもんじゃないのう。 : 婆:本当ですね。じいさんや。 : 若者:まあ、これも何かのご縁だと思う事にします。 若者:電話なんで、あとで銀行に振り込んどけばいいですか? : 爺:あー、ちょっと待ってくだされ……。 爺:……ぴんぽーん。 : : 0:自宅のインターホンが鳴る。 : : 若者:え!?どゆこと!? : 婆:どうもお世話様です。先ほどお電話した者です。 : 若者:えっ!?なんで!?怖い怖い怖い!! : 爺:しばらくここでお世話になろうと思います。 : 若者:ちょっと待って!って言うか何で家の住所知ってんの!? : 爺:改めまして……ウォッホン! 爺:……ワシの名前は……ルフィじゃ!! : 若者:いやそれ特殊詐欺グループのリーダーの名前!! : 爺:オレオレ詐欺の王にオレはなる! : :  :(終わり)