台本概要

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タイトル 優しい嘘
作者名 くま@甘党
ジャンル その他
演者人数 3人用台本(男2、女1) ※兼役あり
時間 70 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 アドリブは特に制限しませんが、世界観やキャラを変えてしまうアドリブはご遠慮ください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
駿 337 菅原 駿(すがわら しゅん) バカでお調子者だけど、真っすぐなやつ。
達也 220 仲原 達也(なかはら たつや) 駿と亜紀の兄貴的な存在。しっかり者。
亜紀 221 宮嶋 亜紀(みやじま あき) 幼稚園児の頃、いじめられている所を駿と達也に助けられてから一緒に過ごすようになった。
のあ 24 仲原 のあ(なかはら のあ) 達也の妹。小学生の頃から難病と闘っている。(亜紀と兼役)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
「優しい嘘」 菅原 駿(しゅん) 仲原 達也(たつや) 宮嶋 亜紀(あき) 仲原 のあ(のあ)亜紀と兼役 0: 0:【1章】 0: 0:登校中 0:自転車に乗る2人 亜紀:やっばーーーい!遅刻するってーー! 駿:ほら亜紀、もっと急げよーーー!! 亜紀:もおおお、誰のせいよ!!ばか!! 駿:しょうがねーだろー?ゲームやり過ぎて寝不足なんだってー! 亜紀:いっっっつもそうじゃん!!少しは学べ!! 駿:るっせーなー、早くしないと置いてくぞ!! 亜紀:あ!!待ってよ駿のばか!!もう朝迎えに行かないからねーー!!! 0:学校に着いた2人 駿:はぁ…はぁ…セーーーーフ!! 達也:おーっす!駿!まーたギリギリか?w 駿:達也ーお前いつも真面目過ぎ! 亜紀:はぁ……はぁ……もう…無理ぃ……。 達也:あははっ、朝からお疲れ様、亜紀! 亜紀:あぁぁぁ…達也ぁ…何か飲み物…。 駿:達也!俺も! 亜紀:ちょっと!あんたはダメ! 駿:はぁ!?なんでだよ!? 亜紀:あんたのせいで朝からこんな汗だくになってんだからね!? 達也:はいはい、2人の分あるから大丈夫だって! 駿:おおお!さっすが達也ー! 亜紀:やったー!ありがとう!! 駿・亜紀:……ぷはああぁぁぁ!!! 達也:ぷっ……お前ら2人揃って親父みたいだなw 駿:はぁー生き返ったー!! 亜紀:ふうぅ…五臓六腑に染み渡るううう…。 駿:お前の感想センスねぇなーw 亜紀:いや、普通の事しか言えないあんたには言われたくない! 達也:おーい、2人ともそろそろホームルーム始まるぞー? 亜紀:げっ!ありがとうね達也! 駿:あ…やっっべ!!昨日の宿題やってねー!! 達也:あーあ!やっちまったな!スガセン宿題に関しては厳しいぞー?駿、今日は居残りかなー?w 亜紀:あはっ、ざまーみろーー!ww 駿:た…達也ああああ!!! 達也:だーーめ!甘えんな! 駿:そんなああ……亜紀ぃ……。 亜紀:はぁー疲れた疲れたー、さぁ席につこーっと! 駿:くそっ…2人とも俺を見捨てんのかよ! 達也:ばか、愛のムチだよ!駿が更生して、ちゃんとした大人になる為のな! 亜紀:ふふふ、そーゆーこと! 駿:ひええ…スガセン来ないでくれえええ…! 亜紀M:私は亜紀。幼稚園の頃からこの2人とは一緒で、まぁいわゆる幼馴染ってやつ。 亜紀M:昔からお調子者の駿と、その駿の面倒を見せられてる私と、その2人の面倒を見てくれるしっかり者の達也。 亜紀M:バランスの取れた3人で、小中高と一緒に過ごしてきた。 亜紀M:私はこの2人に色々な場面で守られてきた。おかけでこれまでの学生生活、本当に楽しかった。 亜紀M:このまま、ずっとこの生活が続けばいいと思っているけど、時の流れは止まってくれない。 0:放課後 校門 達也:さぁて、どっか寄って帰るか! 亜紀:うぅ…自分だけ余裕あるからって…。 達也:あっはは、宿題やってきたはいいけど、半分以上間違えてたら、そりゃ更に宿題出されても文句言えねーよなw 亜紀:んーーーもうっ!!ねね、駅前のカフェ行こうよ!わからないとこ、教えて♡ 達也:そうだなぁ、駿はスガセンがみっちり教えてるだろうし、亜紀は俺が教えてやるか! 亜紀:よっしゃ!!決まり!! 達也:俺、チョコレートパフェな? 亜紀:は、はぁ!?ちょ…女の子に奢らせる気!? 達也:ん?別にいいよ?自腹でも。その代わり、宿題も自分の力で…。 亜紀:(被せて)わあああーーかりました!!チョコレートパフェですね、はい、かしこまりました!! 達也:いえーい!ごちそうさま! 亜紀:あぁ…私のバイト代が……。 達也:有意義な使い方だねー?w あ、そういえば亜紀が働いてるファミレスって時給いくらだっけ? 亜紀:んっとねー高校生は1,100円! 達也:そっか…。 亜紀:え…なに!?まさか達也もうちで働くとか!? 達也:…そうだとしたら? 亜紀:ダメ!!絶っっっ対ダメ!!! 達也:なーんでさ?一緒に働けたら楽しくない? 亜紀:いや…楽しいかもしれないけど……。 達也:ん? 亜紀:お…怒られてるとこ見られたくない…。 達也:あぁ、亜紀怒られてるんだ?w 亜紀:し、しょうがないじゃん!忙しいと頭パニックになるんだもん! 達也:あはは、かわいーw 亜紀:ちょ!バカにしてるー!? 達也:してないしてない!w 亜紀:絶対ダメだからね!達也が入ったらその日に私辞めるからね!! 達也:大丈夫だよ、俺バイトする気無いし。 亜紀:え、じゃーなんで聞いたの? 達也:んー?なんとなく? 亜紀:…?変なの! 達也:気にしない気にしない! 0:学校 駿:ふあぁーーぁ、やっと終わった…。もう1ヶ月くらいスガセンの顔見なくていいや……。(背伸び)んーーはぁ、疲れた、帰ろ。 0:カフェ 達也:……ん、あってる。 亜紀:やった!これで明日は堂々と学校行ける!ありがとうたつや! 達也:おう!またいつでもどうぞー!次は…モンブランにしよっかなw 亜紀:う……背に腹はかえられぬ…。 達也:はは、冗談だよっw 亜紀:でもここのカフェ、安っぽいメニューだなーって思ってたけど、意外とちゃんとしてるし美味しかったね! 達也:こら、そういう事言うんじゃないの!(コツン) 亜紀:いたっ…はーーい。 達也:ふふ。よし、帰るか! 亜紀:うん!あ、ごめんね長々と付き合ってもらっちゃって。 達也:いいよ、今日ものあ部活あるって言ってたし。まだ帰ってないんじゃないかな? 亜紀:のあちゃん、最近調子良いんだ? 達也:あぁ、たまに早退してくるけど、部活も無理なくやってるみたいだしな。 亜紀:また今度女子トークしに行こうかな! 達也:ん、ありがとう助かる!何気にお前との女子トークが楽しみみたいでさ、のあ。 亜紀:何気にって何さ!もうすっかり仲良しなんだからね? 達也:知ってるよ。俺がヤキモチ妬くくらい仲良しですもんねー? 亜紀:はぁ?何バカな事言ってんの! 達也:割とガチなんだけどなぁ? 亜紀:……え…? 達也:お、あれ駿じゃん!スガセン地獄から解放されたんだなw 亜紀:え…、あ、うん…。 達也:行こうぜ! 0:外 達也:よう駿、お勤めご苦労様!w 駿:あ、達也!!この裏切り者め…! 達也:はぁ?人聞き悪いこと言うなよなー?お前の為だって言ったろー? 駿:俺の為って言うなら宿題見せてくれても良かったろー!!こんな時間までスガセンの顔見てたら不登校になるっつーの! 達也:あははっこれに懲りたら、ゲームも程々にして、宿題くらいちゃんとやってこい!w 駿:うっ…ゲームはやめられん!…あれ?亜紀も居たのか。 亜紀:あ、うん…、お疲れ様! 駿:…? 達也:お前がスガセンにみっちり絞られてる間、こっちは俺がみっちり絞ってたんだよw 駿:なーんだ、そういう事か!疲れきって元気無いのか亜紀w 亜紀:そ、そうなんだよ、スガセンに追加の宿題出されちゃってさー、もう頭パンパン…。 駿:へっ!俺を裏切った罰だなw 達也:2人とも少しは真面目になれよー、俺たちもうすぐ卒業するんだからな? 駿:はぁ…卒業かぁ…。あっという間の3年間だったよなぁ…って、まだちょっと早くね?今9月だぞ? 達也:半年なんてあっという間だぞ?来月体育祭があって、11月は講習月間だろ?12月はクリスマスと同時に冬休みに入って、明けたら卒業まで約2ヶ月…すぐじゃん! 駿:そう言われれば…確かに。うわー卒業なんかしたくねーなー…。このままこの生活続けてたいわ。 亜紀:私も…このまま続けてたい、この生活…。 達也:……。 駿:だよなー!?あーあ、一生学生が良いなぁー。 達也:駿、学生の本業知ってるか? 駿:食う!寝る!遊ぶ!!! 達也:よし!お前は留年確定!そのままずっと学生やってろw 駿:待て待て、お前らが居なきゃ意味ねーだろ!? 達也:悪いけど、俺はすぐにでも働きたいんでね!いつまでもお前の宿題に付き合ってらんねーの! 駿:え、じゃあやっぱり大学には行かないのか? 達也:あぁ、まぁ働きながら通信とか考えてはいるんだけどな。 駿:そっか、…のあちゃん元気か? 達也:おぉ、元気元気!今部活も出れてるよ! 駿:そっか!良かった!俺もまた会いてぇなー! 達也:お前さ、何度も言ってるけど、のあの事たぶらかすなよ? 駿:ばっ…ばか言うな!俺がいつのあちゃんをたぶらかしたんだよ! 達也:お前のそのノリ、のあは面白がってるけど、のあが良くても俺は絶対認めないからな? 駿:だ、大丈夫だよ!!俺にはちゃんと好きな人が居るんだから! 達也:…は!? 亜紀:えっ!? 駿:なっ…、なんだよ2人して……。 達也:お前、今までそんな事一言も言ってなかっただろー!!誰だ?誰に惚れた!? 亜紀:同じクラス?隣?学校以外!? 駿:おいおいおい!!もう帰るぞ!!この話は無かったことにしろ!! 達也:うわっ!逃げるな!!亜紀捕まえろ!! 亜紀:ラジャー!! 駿:ば…ばかっあぶねって!チャリを抑えるなー! 亜紀:隊長!捕獲しやした!! 達也:よし!さぁ、観念しろ!そして白状するんだ!お前は、どこの、誰に、惚れたんだ!? 駿:いや…だから…お……同じ…クラスの……。 亜紀:同じ…? 達也:クラスの…? 駿:……………いやーーダメだ!!!言えねーって!!! 亜紀:んもおおお!!男らしくないなー!! 達也:ったく…こんなんじゃ告白も無理だな!きっと片想いで終わっちまうよ! 駿:お…お前らなぁ……。 亜紀:隊長~どうしますか?このヘタレ! 駿:へ…ヘタレ!? 達也:あぁ、もう解放していいぞ。野放しにしても、大した事は起きやしない。 駿:…くっ…好き放題言いやがって…。 亜紀:さぁ帰ろ帰ろー! 達也:お疲れ様、ヘタレ君。 駿:……ったよ。 亜紀:え? 駿:わーったよ!!言えば良いんだろ? 達也:おぉ!誰だ誰だ!? 駿:亜紀…。 亜紀:はいっ!なんでありますか!? 駿:……言った。 達也:……っ!? 亜紀:…ん?どういう事?え、今言った?私聞いてなかった!もっかい!! 駿:だから、亜紀だって言ったんだよ!! 亜紀:………っ!? 達也:……。 駿:…な、なんだよ…。 亜紀:………ぷっ!あっははは!何の冗談よそれw 駿:は…はぁ!? 亜紀:いや、そりゃ私だって好きだよ?2人とも幼馴染みだし、ねえ?達也? 達也:…ん、あぁ…。 駿:…ふんっ、俺帰るからな!じゃあな!! 亜紀:え?ちょ…駿!? 0:駿、自転車に乗り1人で帰る 亜紀:なーにあれっ!もう迎えに行ってやんないんだからね! 達也:……。 亜紀:達也? 達也:あいつ…きっと本気だよ、亜紀の事。 亜紀:…え? 達也:この流れで言うのはずるいかもしれないけど…。 亜紀:……なに? 達也:俺もお前の事好きだから。恋愛感情で。 亜紀:…っ!!? 達也:ふふw そんな反応すると思ったw 俺も本気だよ。本気でお前が好きだ、亜紀。 亜紀:ち…ちょっと……やめてよ…。 達也:じゃー俺も帰るわ!またな! 亜紀:あっ……………。 0:達也も帰る 亜紀:…そんな……私…どうしたらいいのよ…。 0:亜紀宅 寝室 亜紀:んーーーーー……寝れない!!なんで…?なんであんな事言うの…。今まで幼馴染3人仲良くやってきたじゃん…。これからもずっと3人で一緒に居られると思ってたのに………。 駿:だから、亜紀だって言ったんだよ!! 達也:俺もお前の事好きだから。恋愛感情で。 亜紀M:何の根拠もないけど、私は幼馴染は付き合うとかそういう事には発展しない物だと思っていた。感覚も家族みたいなもので、恋愛とは全く別の愛情があると思っていた…。 なのに、まさか2人から同時にあんなカミングアウトされるなんて…。 亜紀:はぁ……もう…考えるのやめよ…。 亜紀M:私は明日、どんな顔で2人に会えばいいか。何の答えも出せずに、そのまま眠りについた。 0:次の日 学校 昼休み 亜紀:…………。 駿:…………。 達也:……(あくび)ふあーあぁ、昼食ったら眠くなるよなー。……ん?お前ら、飯食わねーのか? 亜紀:…た、食べてるよ。 駿:お…俺だって…。 達也:はぁ…やれやれ…。 亜紀:…な、なんであんたはそんな余裕なのよ達也! 達也:ん?なにが? 亜紀:いや……昨日の…。 達也:あぁ…俺達が恋愛感情で亜紀が好きだってやつ? 駿:…はぁっ!?達ってなんだよ、達って!! 達也:ん?俺も亜紀の事好きだからな。 駿:……っ! …そ…そうか……。 達也:俺達ライバルだなw 駿:お、おう……w 亜紀:……なに2人して笑ってるのよ…。 達也:ん? 駿:なんだよ? 亜紀:もおーーーー!!!私は、2人とも幼馴染として好きだけど、恋愛感情なんてないからね!!期待なんかしないでよ、ばか!!!! 0:亜紀 その場を去る 達也:……ぷっ!あはは、亜紀らしい反応だなぁw 駿:……達也。 達也:ん? 駿:亜紀の事…好きだったのか? 達也:あぁ、言ってなかったよな、お互い。 駿:いつからだよ? 達也:んーちゃんと意識したのは、高校入ってからかな? 駿:そこまで一緒かよ…。 達也:あいつさ、高校入ってから垢抜けたっていうか、どんどん可愛くなってるだろ? 駿:あぁ…確かに。 達也:他の誰かに取られる前に、彼女として俺の隣に居て欲しいって思ったんだよ! 駿:…そうか。 達也:お前は? 駿:俺も高校入ってからちゃんと意識したっていうか…ずっと好きだったんだけど、ようやくその好きが恋愛感情だって気付いた…的な? 達也:そうか。なぁ、幼稚園の頃さ、アキが他のクラスの園児に意地悪されてた時の事、覚えてるか? 駿:あー中庭の真ん中で亜紀が泣いてたやつだろ!それ見た途端、ブランコから2人で飛び降りて助けに入った!懐かしいなー! 達也:それからだよ、俺たち3人ずっと一緒に居るようになったの。 駿:そうだったな…。 達也:ヒーローは2人居ても良いけど、彼氏は1人だからな! 駿:わ…わかってるよそんな事…。 達也:へへ、負けねーよ?駿が相手でも。 駿:俺だって負けねーし。勉強できなくたって、亜紀の事本気で好きだって気持ちは負けねー! 達也:まぁ朝のお迎えくらいハンデあっても俺は負けないだろうなーw 駿:ふんっ!朝から亜紀の顔見れて羨ましいか!! 達也:放課後、カフェで2人くっついて勉強してる姿、周りから見たらカップルに見えただろうなーw 駿:くっ……負けねーぞ。 達也:俺も負けねーよ。 0:女子トイレ 手を洗っている亜紀 亜紀:はぁ…もう、2人のバカのせいで頭ガンガンしてきたじゃん…。……あれ?血…?うわっわわわっ、やだやだ…鼻血っっ!もううう…最低っ!なんなのよ今日は!! 0:教室 亜紀:………。 駿:ん?ぶはっっ亜紀www どうしたんだよその鼻ww 亜紀:……(イライラ)。 達也:鼻血?大丈夫か? 亜紀:……ん。 駿:(爆笑)鼻にティッシュ詰め込んでんのマジウケるw いつものブサイクがもっとブっっ……!? 0:亜紀がしゅんの頭を殴る 駿:っってーなー!! 亜紀:あんた…それ以上笑ったら絶交ね。 駿:えぇ……こんなの受け流せよ…。 達也:はい、駿マイナス5点~w 駿:はぁ? 達也:俺が1歩リードかなー。 駿:ちっ…。 亜紀:…達也も、いい加減にしないと絶交するからね。 達也:え? 駿:はい、たつやもマイナス5点ー!これで同点だな!w 亜紀:あんた達ばっかじゃないの!?…帰る!!!先生には早退したって言っといて!! 駿:は!? 0:亜紀 早退し教室から出ていく 駿:…達也、あいつこんな事でいつも怒るか? 達也:いや、よっぽどイライラしたんじゃね?お前のリアクションで。あれは俺でも腹立つしな。 駿:でも亜紀ならもっと殴って喚いて、それで終わりだろ? たつや:うーん、生理かねえ…。 駿:…ほ、ほう。 達也:貧血っぽかったしな、顔青かったし。 駿:マジで?……よし、帰りに…。 達也:一緒に行くぞ?お見舞い。 駿:ちっ…、あーそうですか!! 達也:抜け駆けして襲わないように見張っとかなきゃなw 駿:ばっっ誰がっ!! 達也:あーヘタレ君には無理かーw 駿:お前いつか見てろよ…。 達也:おう、いつでも見てるよw 0:亜紀宅――ピンポーン― 亜紀:(インターホン越し)はい… 駿:よう!お前の具合が心配で来てやったぞー! 亜紀:………。 駿:…ん?おーい、聞こえてるかー? 達也:やめろってそのノリ…。亜紀、大丈夫か? 駿:あぁ?なんだよ、俺は普通に…。 亜紀:……帰って! 0:ガチャ 駿:…はぁ!?なんだぁ!? 達也:ふぅ…やれやれ。 駿:な…なんだよ!俺のせいか!? 達也:ま、今日のとこは帰るとするか。 駿:おい!待てよ! 達也:いいから、ほら行くぞ。 駿:ちょ…ったく!なんだよあの態度…! 達也:バカだなぁ本当に…。 駿:おい、今バカっつったか?誰が! 達也:お前以外にいるかっつーの!この! 駿:いってーな!なんなんだよ…。 0:亜紀の部屋 亜紀:はぁ…はぁ……なにこれ…。 亜紀M:私は今までずっと元気だった。特に大きな病気にかかる事も無く、元気に育ってきた。それが突然、鼻血が止まらないなんて…。 亜紀M:私は怖くて震えが止まらなかった。 亜紀M:貧血になったのか、私は意識がだんだんと遠くなっていく気がした。 亜紀M:ベッドに横たわり、止まらない鼻血が布団の上から流れ落ちるのを見ながら、そのまま意識を失った。 0: 0:【2章】 0: 0:病院 亜紀M:気が付いたら私は病院に居た。 亜紀M:お母さんが帰ってきて、血まみれの私を見てすぐに救急車を呼んだらしい。 亜紀M:そりゃそうだよね…。 亜紀M:娘が血だらけでベッドに倒れてたら…。 亜紀:お母さん…、心配…かけてごめんね。 亜紀M:目が覚めた事を確認したお母さんは、すぐに先生を呼びに行った。 亜紀M:そして次の日、検査結果を聞いた。 亜紀M:私は、血友病という難病らしい。 亜紀M:血友病とは、出血すると血が止まりにくくなる病気だそうだ。 亜紀M:治療を続けていれば良くなるとの事だが、普段の生活でも怪我をしないよう心がけてくださいと言われた。 亜紀M:2,3日様子を見て、体調が変わりなければそのまま退院する事になった。 亜紀M:次の日、ほんの数日の入院だから2人にはお見舞いは大丈夫と連絡したが、退院に合わせて病院に来てくれる事になった。 0:退院日 0:病室 亜紀:お母さん、これも入れておいて。…ふぅ。ん?大丈夫だよ!寝たきりになってたから、少し体力が落ちただけ! 0:ガラッ 駿:ちわーっす。 亜紀:ちょ…バカ!普通ノックくらいしない? 駿:あ、悪い、忘れてた。おばさん、お久しぶりっす。 亜紀:本っ当にバカ。私が着替えてたりしたらどうするのよ! 駿:そんな事…。 亜紀:そんな事!? 駿:あ…いや、ごめんなさい。 0:コンコン 亜紀:はーい。 達也:失礼しまぁす。 亜紀:達也、来てくれてありがとう。…ほら、これが普通の入り方よ? 駿:へいへい…。 達也:よう亜紀、大丈夫そうだな。おばさん、ご無沙汰しています。 亜紀:はぁ、さすが達也。大人な対応! 駿:……。 達也:ん?また駿が何かしたのか?w 駿:いや、ちょっとノックしなかったくらいでこいつが…。 亜紀:ガキ!礼儀知らず!少しは達也を見習え! 駿:ぐっ……。 達也:駿、ノックもせずに入ったのか?もし亜紀が着替えてたら、お前もう絶好もんだぞ? 亜紀:それ私がさっき言った。そしたら「そんな事大した問題じゃない」ってさ! 駿:い、言ってねーだろそこまで! 達也:はいはい、病院内では静かに!亜紀、荷物まとまったか?車まで持っていくぞ。 亜紀:はーい、お願いしまーす! 達也:ほら、お前も持てよ。 駿:あ、あぁ…。 亜紀:駿、荷物落とさないでよねー? 駿:…わざと落としてやる。 亜紀:はぁ!?傷付けたら弁償だからね!! 達也:はいはい大丈夫大丈夫、ほら行くぞ! 駿:あ、おい押すなよ! 亜紀:ほんっとにムカつく…。……はぁ?あんな奴と仲良くないし!! 0:駐車場 駿:くそっ、来るんじゃなかった! 達也:いやいや、お前がノックもしないで入るからだろ? 駿:そんなの…俺達の仲だろー!? 達也:親しき中にも礼儀ありって言葉、知ってるか? 駿:あーあーはいはい、俺が悪うございました! 達也:…。 駿:…。 達也:なぁ…、亜紀の事、俺に任せろよ。 駿:はぁ!? 達也:お前じゃこれから先あいつを守っていけねーよ。 駿:んな事わかんねーだろ!なに抜け駆けしようとしてんだよ! 達也:お前が相手だと、喧嘩ばっかで亜紀の身体に良くないって言ってんだよ! 駿:それならお前だって亜紀の事怒らせる時あんじゃねーか! 達也:俺とお前の場合じゃ状況が全然違うだろ。 駿:はっ、そんなの関係ねーだろ! 達也:…いい加減大人になれよ、駿。 駿:お前こそ大人ぶってんじゃねーよ!ちょっと勉強できるからって上から目線かー? 達也:…。 駿:色々苦労してるからって、年は同じなんだからな! 達也:だったら!!年相応に振る舞えよ!いつまでもガキみたいな事言い続けて、反抗期なんてとっくに終わってるだろうが!! 駿:っっ…!? な…なんだよ…。 達也:(荒い息) 駿:い…いきなりなんなんだよ!! 達也:……。 0:亜紀が心配そうな顔で近付いてくる 亜紀:な…何してんの? 駿:亜紀…。 達也:…亜紀、荷物運び終えたから帰るわ!家に着いたらしっかり休むんだぞ。 亜紀:え…一緒に乗っていかないの? 達也:悪い、寄るところあるんだ。じゃ。 亜紀:あ…行っちゃった。駿、達也の事怒らせた? 駿:なんでそうなるんだよ…。 亜紀:だって…達也があんなに大声出すんだもん…。 駿:あぁ…。 亜紀:大丈夫なの…?行かなくて…。 駿:ん…じゃあ、ゆっくり休めよ。 亜紀:ありがとう…。達也にもありがとうって伝えて。 駿:わかった。 亜紀:絶対伝えてよ?この後、すぐに! 駿:わかったって! 亜紀:ねえ!…これからも、3人一緒じゃなきゃ嫌だよ……。 駿:……あぁ。 0:歩道 駿:おい、達也! 達也:…駿。 駿:…さっきは悪かったよ、ごめん…。 達也:…。 駿:…。 達也:なぁ、駿…。 駿:…ん? 達也:亜紀…大丈夫かな。 駿:え……大…丈夫だろ…。 達也:…。 駿:…どうしたんだよ? 達也:…難病なんだよ、血友病って。 駿:え…? 達也:この前亜紀から病気の事聞いて調べたんだ。そしたらほとんど男がなる病気で、10代の女子が患う事は滅多にないって。 駿:…そうなのか。 達也:でも、治療をちゃんとしていれば落ち着くってさ。怪我をして出血とかしないように気をつけなきゃいけないみたいだけどな。 駿:そうか…危なっかしいからな、亜紀…。 達也:そうだな、朝のチャリで爆走登校も、もうやめてやれよ? 駿:わ…わかってるよ! 達也:てか、そろそろお迎え卒業しろよ! 駿:う…わかってる…。 達也:…。 駿:のあちゃんと同じ難病か…。 達也:…あぁ。だから悪い、つい感情的になっちまって…。 駿:…いや、俺が悪かったから…。 達也:まぁ難病って言っても、のあみたいに回復して、部活まで出られるくらい元気な患者も居るんだ、大丈夫だろ。 駿:そう…だな。大丈夫だって達也!亜紀も、のあちゃんも、絶対治るって!! 達也:…駿……ふふ、だよな!よし、帰るか! 駿:あぁ! 0:1ヶ月後 0:教室 放課後 駿:亜紀、帰ろうぜ。 亜紀:うーん、今日のバイトめんどくさいなぁ…。 駿:今日バイトか…。休んじゃえば? 亜紀:簡単に言うねぇ…。私には責任感というものがあるのだよ、駿君。 駿:ばっ…俺にだってあるわ! 亜紀:ほほう?それは初耳ですなぁ? 駿:ほらっ、早く動け!遅刻するぞ! 亜紀:…ふぅ。よし、行きますか! 0:歩道 亜紀:ねぇ、達也…この頃休み多くなったね…。 駿:あぁ、のあちゃんの具合が良くないみたいで看病してるって。 亜紀:のあちゃん、まだ13歳なのに大変だよね…。 駿:…お前だってまだ17歳だろ。 亜紀:ん?私はこの通り元気じゃん! 駿:でも…。 亜紀:大丈夫だよ、治療もちゃんと続けてるし、病気とうまく付き合えてるって先生も言ってたし。 駿:…。 亜紀:私は心配ご無用!ホップステップジャンピン… 駿:いつの時代のネタだよ…。 亜紀:あっ…! 0:着地に失敗し転倒する亜紀 駿:亜紀っ!! 亜紀:いったぁ…。 駿:お前バカじゃねーの!大丈夫かよ…!? 亜紀:いい…何かの破片で膝切っちゃった…。 駿:なっ…!すぐ手当てしないと! 亜紀:大丈夫だよこれくらい…。 駿:大丈夫じゃねー!どこか…薬局…! 亜紀:ねぇ!落ち着いてよ!すぐバイト先だから手当てもお店でできるってば! 駿:…そ、そうか…? 亜紀:大袈裟なんだから…。でもありがとう! 駿:…本当に大丈夫か? 亜紀:大丈夫大丈夫!こんなバカな怪我でなんともならないよ! 駿:ち…ちゃんと手当てしろよ。 亜紀:わかってるって!じゃーバイト行くね! 駿:あぁ…。 亜紀:また来週ねー! 駿:また来週…。 0:次の週の月曜日 0:教室 駿:おーっす達也。 達也:おう!…あれ?亜紀は? 駿:休み。風邪引いたって。 達也:なんだ風邪かぁ。 駿:それより、のあちゃんもう大丈夫なのか? 達也:おう、週末も家族で出掛けて平気だったし、もう落ち着いたよ。 駿:そうか、良かった! 達也:今日、学校終わったら亜紀のお見舞い行くか? 駿:そうだな、今週末の体育祭までに治ればいいけどなー。 達也:毎年、異常に張り切って参加してるよなw 駿:私には、負けられない戦いがあるーってなw 達也:あー言ってたw そういうとこが可愛いんだよなー。 駿:あれ!あれも…えーっと中学3年のの期末テスト! 達也:このテストで、私の運命が決まる!!だっけ?w 駿:確かに最後の期末は大事だったけど、いちいち大袈裟なんだよなぁw 達也:あははw よし、またネガティブになってないか、帰りに様子見に行こうか! 駿:おっけー! 0:亜紀宅 達也:……はい、わかりました。お大事にとお伝えください。失礼します。 駿:…おばさん、なんか深刻そうじゃなかったか? 達也:…あぁ、とりあえず大丈夫とは言ってたから…また後日かな。 駿:あいつ…本当にただの風邪かな?普段だったら風邪でも普通に家に入れてたよな? 達也:…きっとそれくらい辛い状態なんじゃないか?熱もあるって言ってたし。とにかく今日は帰ろう。 駿:んー、仕方ねーか。 0:2週間後 亜紀宅 0:ピンポーン 駿:おばさん!開けてくれよ!亜紀、中に居るんだろ!?開けろよ!なんで何も言わねーんだよ!! 駿:…。 駿:……。 駿:…ちっ。無視かよ…!! 0:達也宅 達也:のあ、もうすぐご飯できるぞー! 0:着信音 達也:あれ…駿だ。……もしもし? 駿:達也!!亜紀に連絡しても返ってこないし、今家に行ったけど誰も出ないんだよ!おばさんも!! 達也:おいおい…落ち着けよ。亜紀の家に行ったのか? 駿:そりゃ行くだろ!これだけ連絡が無い事なんて今まで無かっただろ!? 達也:んー…ごめん、後で掛け直す。 駿:はぁ!? 達也:今飯の支度してたんだよ。片付いたらすぐ掛けるから! 駿:ちっ…なんだよ飯って!こんな時に! 達也:駿!落ち着けって!ちゃんと話すから、5分だけ待ってろ! 駿:はぁ…?……あぁ、わかった。 達也:じゃあな。 駿:……なんだよそれ。ちゃんと話すからって…何も知らないのは俺だけって事かよ…。 0:10分後 0:着信音 達也:もしもし?悪い、ちょっと時間掛かった。 駿:あぁ。 達也:あれ、怒って…ない? 駿:いいから…早く話せよ…。お前は何でも知ってんだろ。 達也:あぁ…そっちのショックか。 駿:るっせーな!!誰がショック受けてるなんて言ったよ!? 達也:お前の声がそう言ってんだよ。 駿:いいから…早く言え。 達也:…なぁ、亜紀はお前の事を思って口止めしてたっていうのはわかってくれよ? 駿:……。 達也:前にお前と一緒に帰った日、亜紀、転んで膝を怪我しただろ? 駿:…っ!あの時の傷が原因か!? 達也:いや、それは大した事無かったらしいんだけどな。 駿:なんだよ…。 達也:ただその後のバイト中、どこかの学校の不良が数人店に入ってきて、亜紀の接客態度が悪いとか言いがかりをつけてきて、皿を下げろってテーブルから滑らせて床に落としたんだって。 駿:……っ!! 達也:で、落ちた皿が割れて、破片が運悪くその怪我をした部分に当たって大量出血したって…。 駿:……。 達也:すぐに応急処置をして、救急車で病院に行った。しばらく血が止まらなかったけど、今は落ち着いているって。まだ入院して様子を見ているんだけどな。 駿:……。 達也:…聞いてるか? 駿:…ああ。 達也:だから、今は家に誰も居ない時が多いんだよ。今日も多分病院だ。 駿:……。 達也:お前、これを聞いたらその不良たち探すだろ?だから亜紀に口止めされてたんだよ…。 駿:……。 達也:駿…?絶対やめろよ?復讐とかくだらない真似…。 駿:…達也はこの事いつ知ったんだ? 達也:…先週。 駿:そうか…。 達也:…悪かったよ、黙ってて。けどお前の性格を考えたら…亜紀だって心配してんだよ。今、俺達卒業を控えた受験生なんだからな?お前は進学するんだろ?だったら…わかってるだろ。 駿:……。 達也:亜紀な、その件以来血が止まらない事が多くて、何もしてなくても血が出てくるようになってきて、重篤患者になるかもしれないって言われてるんだ…。 駿:重篤… 達也:ああ、だから── 0:プープープー 達也:…もしもし?あ…あいつ……。 0: 0:【3章】 0: 0:亜紀のアルバイト先周辺 駿:……。 達也:はぁ…やっぱり居た。 駿:……達也。 達也:お前、俺の言った事聞いてなかったのか? 駿:…聞いてたよ。 達也:だったら、こんな夜に此処でお前は何をして── 駿:うるせーよ!! 達也:……はぁ。 駿:……帰れ! 達也:何言って…。 駿:いいから帰れっつってんだろ!! 達也:お前が帰れよ!! 駿:放っとけよ!! 達也:んな事できる訳ねーだろ!! 駿:いいから帰れ!! 0:ザワザワ 達也:…駿。こんなところで騒いでたら通行人の迷惑だ。 駿:……くそがっ!! 0:次の日 達也:もしもし、亜紀か?体調は?…そうか。悪い、昨日駿に喋っちまった…。亜紀の家にも行ったみたいでさ、隠せなかった。…うん、それであいつ、昨日の夜亜紀のバイト先の周りで探ってた。予想通りの行動だよな…。…ああ、大丈夫、俺が止める。のあの事もあるから、四六時中とはいかないけど、何とかあいつが暴走しないように見張っとく。悪かったな、こんな連絡で。……ああ、お大事に。また顔出すよ。ん、じゃあまた。 0:3日後 達也:もしもし?おう、どうした? ……えっ!?駿が!? わ…わかった! 0:30分前 亜紀のアルバイト先周辺 駿:お前らか…。お前らが亜紀に怪我させたのかって聞いてんだよ!!! 駿:ふざけんな!!お前らのせいでなぁ!亜紀は今、死にかけてんだぞ!! 駿:ぶっ殺してやる!!!!! 0:30分後 達也:はぁ…はぁ…。あのバカ…本当に……! 駿:…うぅ…ゴホッ……ゴホ…。 達也:あ、駿!! 駿:…た…達也…。 達也:ったく…バカだなお前は!喧嘩弱いくせに、相手5人も居るんじゃねーか…。 駿:…あ…あいつらが…亜紀を…。 達也:……そうか。 駿:亜紀は…亜紀は大丈夫なのか……死に…そうなんだろ…? 達也:…は? 駿:だってお前…重態だって…。 達也:…あぁ、重篤な?お前、危篤と勘違いしてないか?大丈夫だよ、亜紀は。 駿:……そうか…良かった…。 達也:重篤と危篤を間違えるなんて…お前らしいけど、バカだなぁ相変わらずw 駿:…う、うるせ……!…あ、あぶねー達也、後ろ…!! 0:ゴツッッ 達也:がっ…!? 駿:た…達也…たつやあああー!!!! 0:2時間後 0:病院 駿:………。 亜紀:…駿。 駿:…亜紀……。 亜紀:…達也は? 駿:……。 亜紀:ねぇ…。 駿:バールみたいな物で頭を強く殴られて、12針縫った…。まだ…意識は戻ってない…。 亜紀:えっ…!?…そんな……グスッ…。 駿:………。 亜紀:グスッ…グスッ……。 駿:…ごめん、俺…。 亜紀:バカ!!!! 駿:うっ……。 亜紀:バカ!!バカ!!バカバカバカバカ!!!ああぁぁぁ(号泣)。 駿:………。 0:1時間後 駿:………亜紀、お前身体は…? 亜紀:……大丈夫。そっちは…? 駿:…そうか。俺も、大丈夫…。 亜紀:………。 駿:………。 亜紀:ごめんね…、私が黙っててってお願いしたから…。 駿:……。 亜紀:駿が知ったら…きっと犯人捜しするって思ったから…。 駿:……ああ、俺はバカで単純だからな…。 亜紀:……。 駿:…ごめん、俺が悪い。だから亜紀は謝るな…。 亜紀:怪我…してほしくなかった……。 駿:…あぁ、俺が弱かったから…達也は…。 亜紀:違う!強いとか弱いとか…そんなの関係ない……。 駿:だけど実際…達也は俺が手出した奴に反撃されて…。 亜紀:………。 駿:…なんで、なんで達也なんだよ…。 亜紀:……。 駿:俺がやったんだから…俺に……。くそっ…。 亜紀:……嫌だよ。 駿:……え? 亜紀:…どっちが怪我しても嫌なの。2人とも元気じゃなきゃ嫌なの!それくらい、言わなくてもわかってよ…。 駿:……亜紀。 亜紀:…本当にバカ。 駿:……ごめん。 0:朝方 亜紀:ん…寝ちゃった…。…あれ?駿? 0:達也の病室 駿:おい!!起きろよ!!達也!! 亜紀:え…、駿?何してるの…? 駿:亜紀!達也を起こせ!! 亜紀:え……し、心肺停止…って何でっ!? 駿:さっき急変したんだよ!いいから起こしてくれ!!じゃないと…俺…!! 亜紀:バカ!起きるよ!!達也!達也!!ねえ!!私が元気になったのに、なんで達也が…ダメだよそんなの!! 駿:起きろ達也!!お前が居なくて、のあちゃんどうすんだよ!! 亜紀:そうだよ!!達也!!起きて!! 駿:達也!! 亜紀:達也!! 達也:………ん…。 駿:た…達也!!! 亜紀:達也…!? 達也:………ぃ…。 駿:え…? 達也:……わ…るい…しん……ぱい…かけ……て。 亜紀:バ…バカ!そんな事気にしなくていいから!! 駿:そ、そうだよ!早くちゃんと目覚ませ!! 達也:……亜紀…。 亜紀:ここに居るよ!なに!? 達也:し…駿の…こと……頼む…な…。 亜紀:な…何言ってんの!? 駿:おい達也!先に死ぬとか許さねーぞ!! 達也:…駿……お…まえが……亜紀を……し…あわせ…に…。 駿:おい……おい!!ふざけんな!!こんな勝ち方俺は望んでねーんだよ!!正々堂々と勝負しろよ!! 亜紀:たつやあああ!! 達也:…泣く…なよ、亜紀。……俺は…だい……じょうぶ…だから。 亜紀:だづやああああ!!やだよおおお!!! 駿:達也!!おい!!目開けろ!!!!達也!! 達也:………………。 0:心停止を知らせる機械音が鳴り響く 亜紀:っっ!!? 駿:なっ…!!! 亜紀:……うわああああああああ!! 駿:…た…達也……たつやああああああ!!!。 0: 0:【4章】 0: 0:数ヵ月後 駿:おはよう! 亜紀:……。 駿:行くか! 亜紀:…ん。 駿:……。 駿M:あれから亜紀はバイトを辞めた。しばらく学校にも来れず、家に引きこもるようになっていた。俺は卒業の事も考えて、せめて外に出るように促し、亜紀はようやく学校に復帰した。俺もまだきちんと割り切れた訳じゃない。だけど…亜紀を見ていると、俺までいつまでも落ちてるわけにはいかなかった。亜紀の病気は、あれから特に悪化する事も、ケガをする事もなく落ち着いている。俺は無理矢理いつもと変わらない、達也が居たあの頃のように接している。そんな事、亜紀も気付いているだろうし、無理してるのもバレてると思う。でも亜紀は何も言わず、心を無くした人形のように過ごしている。 0:校門前 放課後 駿:じゃあ亜紀、気を付けてな? 亜紀:…ん。 駿:受かっかなー?スタンドのバイトなら大丈夫かっ!俺のこのキャラを持ってすれば余裕だよな! 亜紀:……。 駿:……。じゃ、張り切って行ってくるわ!じゃな、また明日! 亜紀:…。 0:亜紀が帰る姿を見送る 駿:…はぁ。達也…俺どうすればいいんだろうなぁ…。 のあ:駿君! 駿:あ…のあちゃん!どうしたの!? のあ:ごめんね、急に来ちゃって。今ちょっと良いかな…? 駿:あー…ごめん!俺今からバイトの面接なんだ…。 のあ:あ…そうなんだ…。 駿:あ、でももし…のあちゃんが大丈夫なら一緒に行く?どっか近くで待っていてくれたら…20分もあれば面接も終わるだろうからさ、…どう? のあ:…うん、そうする。 駿:おっけ、じゃあ行こうか! 0:カフェ 駿:ごめんのあちゃーん、お待たせ! のあ:うん、大丈夫だよ、お疲れ様。どうだった?面接。 駿:へっへっへ!即時採用!! のあ:すごーい!さすが駿君だねぇ! 駿:まぁ、俺にかかればこんなもんよ!w のあ:いいなぁ、私もバイトしてみたいなぁ…。 駿:のあちゃんも高校に上がったらバイトすればいいじゃん! のあ:…うん、できればいいな…。 駿:大丈夫だって!できるよ!俺が保証するから!!体調も、今はもうだいぶ落ち着いてるんだろ? のあ:…うん!ありがとう!ふふ、駿君はいつでも駿君で安心する! 駿:そうか?へへ。 あ、そういえば話って? のあ:あ…うん…。 駿:……まぁ、何か食べながらゆっくり話そうか! のあ:ううん、あのね、これ…。 駿:…ん?ノート? のあ:……お兄ちゃんの…。 駿:えっ…?達也の…? のあ:そう…。荷物の整理をしてたら見つかったの。それで…見せた方がいいのか迷ってたんだけど…、亜紀ちゃんがずっと元気無いって聞いたから…。だから駿君が中身を見て、亜紀ちゃんに見せてもいいか判断してほしいの…。私じゃ…わからないから。もしかしたら…こんなノートを見たら、余計に思い出して傷つけちゃうかもしれないって…。だから…。 駿:……達也のノート…。 0:ページをめくり、中身を確認する駿 駿:……達也…。 のあ:お兄ちゃん、亜紀ちゃんの事好きだったんだね。恋愛感情で…。駿君も。 駿:あぁ…。しかも達也、バイト探してたのか…。 のあ:あ、うん、その頃内緒にしとけって言われてたんだけどね。いつも私の治療費の為って言ってたけど、亜紀ちゃんへのプレゼントとかも考えてたみたい。 駿:……へっ、「駿には買えないようなプレゼントを渡して俺がリードする!」って書いてやがる…グズッ。 のあ:あはは…お兄ちゃん、バカだよね…。 駿:俺の事散々バカバカ言ってたのに……こんな事ノートに残すとか…あいつもバカだったんだな……へへ。 のあ:亜紀ちゃんの病気がわかってからは、たくさん調べたみたい。 駿:あぁ…めちゃくちゃ書いてあるな…。 のあ:私の時もそうだった…。それで必ず、「大丈夫、ちゃんと治る!」って言ってくれるの…。 駿:…あぁ。 のあ:なんの根拠も無いのにさぁ、適当だよね!……でも、そのおかげで元気が出たし、本当に治るって思えた…。 駿:…とことん優しいからな、達也は…。俺と違ってさ…。 のあ:そんな事ない…。駿君の事もいっぱい書いてあるでしょ。 駿:……グズッ…。視界が滲んで…何にも読めねぇ……。 のあ:……駿君…。 駿:……ありがとうな、のあちゃん。これ、借りてくな。亜紀にも読ませたい。きっと亜紀だってこのノートを読んだら、元気になると思うから! のあ:うん。駿君、亜紀ちゃんの事、お願いね。私、また亜紀ちゃんに会いたい…。また一緒に出掛けたい。もっともっと遊びたいから! 駿:あぁ、任せとけ!俺が居るから大丈夫!絶対元気にしてみせる! のあ:うん!…ふふ、お兄ちゃんみたい。 駿:そ、そうかな? のあ:うん!頑張れ、駿君! 駿:おう!! 0:次の日 駿:おはよう亜紀! 亜紀:……。 駿:亜紀、今日学校終わったらお前ん家行ってもいいか?見せたいものがあるんだよ! 亜紀:…? 駿:へへ。まぁ何かはお楽しみって事で!大丈夫か?行っても。 亜紀:…ん。 駿:よし、決まり!じゃあ今日も張り切って行くかぁ! 亜紀:……。 0:夕方 亜紀の部屋 駿:…あんまり変わってねーのな、亜紀の部屋。いつ来ても殺風景というか…いや物が無さすぎんだよなぁ…あ。 亜紀:……。 駿:悪い悪い!怒った? 亜紀:…なに。 駿:え? 亜紀:…物。 駿:ん?あーあれな、まぁそう急ぐなよ。 亜紀:……。 駿:んん……。 亜紀:………はぁ…。 駿:な…なんだよ? 亜紀:(冷たく)無理しなくていいよ別に。私の事心配で家まで来ただけなんでしょ。私は大丈夫だから。 駿:いや…俺は別に……。 亜紀:用が無いなら私シャワー浴びてきたいから。 駿:…行ってこいよ。本当に見せたい物があるんだ。待ってる。 亜紀:………ならそれ見てから行く。 駿:ん…。 亜紀:……。 駿:これ…。 亜紀:……ノート…? 駿:あぁ…。……達也の。 亜紀:っ!! 駿:今日、亜紀と別れた後、のあちゃんと会ってさ、渡されたんだ。中身は日記みたいなものと、最後のページに俺らの事…書いてある。 亜紀:……。 駿:…なぁ、俺も正直今のお前にこれを見せるのは酷かなとも思った。だけどな…。 亜紀:……。 0:ノートをめくる亜紀 亜紀:……………。 駿:………。 亜紀:………うぅ…。 駿:亜紀…。 達也:【9月22日】今日も2人揃って遅刻ギリギリw 駿の寝坊癖は相変わらずだw 達也:在学中もアルバイトをして、のあの治療費を稼ぎたいと思う。亜紀の宿題に付き合うのに金もかかるしw 達也:亜紀のアルバイト先で働こうと思ったけど、すぐに亜紀に断られた。亜紀は怒られてるところを見られたくないって。可愛いやつw 一緒に働いてたら慰めてあげられるのになぁ。 亜紀:あぁ…ごめん…だづやぁぁ……。 達也:【9月23日】今日、駿が亜紀に好きだと伝えた。先を越されたけど、俺も伝えた。これからは駿とはライバルだ。絶対負けねぇ! 達也:亜紀が鼻血を出した。チョコでも食べ過ぎたか?w 駿にからかわれて激おこ。俺もとばっちりくらった! 達也:【9月25日】「亜紀が入院した。血友病という難病らしい。のあに続いて亜紀まで…。でも絶対治る!2人とも!!」 達也:【9月28日】「亜紀の退院の手伝いに行って、大人げなく駿に怒鳴っちまった。のあの事もあって、俺はいつもの精神状態じゃいられなかった。でも駿が2人とも治るって言ってくれた。いつも俺が言っている言葉、自分に言い聞かせている言葉だった。いつにも増して不安が大きくなってた俺は、駿の言葉にパワーをもらった。やっぱ優しい奴だよ、駿は。」 駿:…達也……。 達也:【10月25日】のあの体調が悪化した。しばらく入院になる。大丈夫だ。のあは負けない。俺の自慢の妹だ。絶対大丈夫。絶対治る。」 達也:【10月28日】やっとのあの体調も落ち着いた。家族でピクニックも行けたし、もう大丈夫だろう。来週からちゃんと学校に行けるな。あいつら、遅刻とか居残りとかになってないかな。」 達也:【11月3日】「亜紀が風邪で学校を休んでいる。体育祭も休んだ。家に行ってもおばさんが家に入れてくれなかった。何かあったのか…?」 達也:【11月8日】「今、亜紀と電話で話した。今すぐ犯人を捜しに…いやダメだ。そんな事をしても亜紀は喜ばない…。だけど駿は…、きっと思い留まれない。落ち着いてから話そう。亜紀にも口止めされたしな…。亜紀も治る。絶対に治る。こんな事で亜紀が負けるはずがない。絶対治る。絶対。」 亜紀:……治ったよ…私は大丈夫だよ……達也あぁぁあ……。 駿:…うぅ……。亜紀、最後のページ…。 亜紀:うっ……うっ……。 0:最後のページまでめくる 達也:「宮嶋 亜紀。幼馴染であり、俺の初恋の人。いつも元気ハツラツで、一緒に居て楽しいやつ。頭は良くないけどw 幼稚園の頃から俺と駿にずっとくっついてきて、気付いたら小中高とずっと一緒に暮らしている。最早家族同然だな!泣き虫で負けず嫌いで、何事にも真っすぐな可愛いやつ。この先も俺がずっと守っていきたい、そう思える程愛おしい。」 0: 達也:「菅原 駿。幼馴染であり、俺の恋のライバル。まぁ文武両道の俺は、それ以外ライバル視する事なんて無いけどな!w でも、駿は心底優しいやつだ。人の痛みをわかってあげられる。だから俺はこいつが大好きだ。もし駿に何かあったらすぐに助ける。いつも俺が困っていると助けてくれたように。お調子者でガキっぽいけど、唯一無二の親友だ。」 亜紀:…たつやぁ……。 駿:…あぁ…くそ、涙止まんね……。 達也:「亜紀には俺が、俺には駿が、駿には亜紀が居る。俺達は何があっても、一生、かけがえのない幼馴染だ。」 駿:………なぁ亜紀、達也さ、今頃俺達の事…。 亜紀:…うん…!…見守ってくれてると思う…。だって達也だもん…! 駿:だよなぁ…。 亜紀:……あーあ、普段こんな事書き留めてるような事一切言ってなかったのにさ、ずるいよね。 駿:本当になぁ。意外だよ、達也がこんなノート書いてたなんて…。 亜紀:駿…。 駿:…ん? 亜紀:ありがとう…持ってきてくれて。 駿:…へ、当たり前じゃん! 亜紀:あぁ…もうくよくよすんのやめよー!! 駿:…亜紀? 亜紀:いつも元気ハツラツな亜紀様が、お調子者のガキっぽい駿の面倒を見なきゃいけないからね!! 駿:…ば、ばかやろう!今まで面倒見てたのは俺だろうが!! 亜紀:……うん、ありがとう。優しい駿も、ちゃんと知ってるよ。 駿:なっ…いや…お、おう…。 亜紀:なーによ! 駿:いや…す…素直すぎて調子狂う…つーか。 亜紀:ふふ、ばーーか!私シャワー浴びてくる!晩御飯作ってあげるから大人しく待ってなさい! 駿:マジ!?やりー! 0:数年後 亜紀:ほーら、駿!早く行くよ!!なんで今日まで寝坊するかなぁ、このバカ! 駿:ちょ…待てって!そんな急ぐ事ねーだろ! 亜紀:バカ!バスの時間ギリギリなんだから急いで!! 駿:うっ…人の事をバカバカって…。 亜紀:バーカ!乗り遅れても知らないからね! 駿:おい!亜紀! 0:霊園 駿:はぁーー、疲れたぁ! 亜紀:はい、よく頑張りました! 駿:ったく荷物全部持たせやがって…。 亜紀:はーい、男がつべこべ言わないのー! 駿:へいへい…。 亜紀:よし、じゃあ…。達也、今年も無事に来れたよ!あれから大きなケガもなく、健康に過ごせてるからね! 駿:外では気を付けてるようだけど、この前家の階段で転んだけどなw 亜紀:うるさいっ!ねぇ達也、こんなバカでも無事就職できたんだよ!?奇跡だよね!? 駿:はぁっ!?努力した結果だろー!! 亜紀:努力ねぇ…面接の日が決まると「この日何時に起こして!」って毎回私に起こされてたの誰? 駿:う……。 亜紀:はぁ、達也ぁ…、このバカが成長するにはまだまだかかりそうだわ…あたしゃ疲れるよ…本当に。 駿:悪かったな!!達也、まぁ何はともあれだ、俺も立派に就職できた事だし、安心しろよ! 亜紀:相変わらず調子のいいやつ…。ふふ、私も!見事3社から内定もらったからねん! 駿:俺達も晴れて4月から新社会人だ! 亜紀:駿はいきなり遅刻連発でクビになるかもねぇw 駿:ならねーよ!! 亜紀:達也、この先も…見守っててね! 駿:のあちゃんも元気にしてるからな!そっちも安心しろよ! 亜紀:そう!のあちゃんも私も、あれからずーっと体調良いんだよ!……もしかして達也のおかげ…かな? 駿:天国で神様に直談判したって事? 亜紀:だって、達也いっつも何の根拠も無しに「絶対治る!!」ってよく言ってたじゃん! 駿:あんなの、達也の優しい嘘じゃん! 亜紀:でも本当になったじゃん! 駿:いやいや…さすがにそれは…。 亜紀:もううう!うるさい!そういう事にしておけばいいでしょー!?ったくあんたは…! 駿:あーはいはい…すいませんでした! 亜紀:達也!また来年も来るからね! 駿:おう、それまでそっちで楽しく暮らしてろよ! 亜紀:じゃあ、またね! 達也:ありがとうな!頑張れよ、2人とも! 亜紀:…えっ!? 駿:い…今…達也の声……。 亜紀:…。 駿:…。 亜紀:ふふ…。 駿:あはは、達也のやつ! 亜紀:ありがとーー!!達也ー!! 駿:元気でなー!! 0: 0: 亜紀M:仲原 達也。私と駿の面倒をよく見てくれる、優しいお兄さん的な存在。 駿M:自分の事よりも、他人(ひと)の事を第一に考える、超がつくほどお人好しで、ムカつくほど大人びた奴。 亜紀M:困った時はいつも助けてくれて、悲しい事があった時はいつも寄り添ってくれて、すぐに元気にしてくれる大切な幼馴染。 駿:もしこの先、俺達に何が起きても、 亜紀:私達は絶対大丈夫。ね、達也! ~完~

「優しい嘘」 菅原 駿(しゅん) 仲原 達也(たつや) 宮嶋 亜紀(あき) 仲原 のあ(のあ)亜紀と兼役 0: 0:【1章】 0: 0:登校中 0:自転車に乗る2人 亜紀:やっばーーーい!遅刻するってーー! 駿:ほら亜紀、もっと急げよーーー!! 亜紀:もおおお、誰のせいよ!!ばか!! 駿:しょうがねーだろー?ゲームやり過ぎて寝不足なんだってー! 亜紀:いっっっつもそうじゃん!!少しは学べ!! 駿:るっせーなー、早くしないと置いてくぞ!! 亜紀:あ!!待ってよ駿のばか!!もう朝迎えに行かないからねーー!!! 0:学校に着いた2人 駿:はぁ…はぁ…セーーーーフ!! 達也:おーっす!駿!まーたギリギリか?w 駿:達也ーお前いつも真面目過ぎ! 亜紀:はぁ……はぁ……もう…無理ぃ……。 達也:あははっ、朝からお疲れ様、亜紀! 亜紀:あぁぁぁ…達也ぁ…何か飲み物…。 駿:達也!俺も! 亜紀:ちょっと!あんたはダメ! 駿:はぁ!?なんでだよ!? 亜紀:あんたのせいで朝からこんな汗だくになってんだからね!? 達也:はいはい、2人の分あるから大丈夫だって! 駿:おおお!さっすが達也ー! 亜紀:やったー!ありがとう!! 駿・亜紀:……ぷはああぁぁぁ!!! 達也:ぷっ……お前ら2人揃って親父みたいだなw 駿:はぁー生き返ったー!! 亜紀:ふうぅ…五臓六腑に染み渡るううう…。 駿:お前の感想センスねぇなーw 亜紀:いや、普通の事しか言えないあんたには言われたくない! 達也:おーい、2人ともそろそろホームルーム始まるぞー? 亜紀:げっ!ありがとうね達也! 駿:あ…やっっべ!!昨日の宿題やってねー!! 達也:あーあ!やっちまったな!スガセン宿題に関しては厳しいぞー?駿、今日は居残りかなー?w 亜紀:あはっ、ざまーみろーー!ww 駿:た…達也ああああ!!! 達也:だーーめ!甘えんな! 駿:そんなああ……亜紀ぃ……。 亜紀:はぁー疲れた疲れたー、さぁ席につこーっと! 駿:くそっ…2人とも俺を見捨てんのかよ! 達也:ばか、愛のムチだよ!駿が更生して、ちゃんとした大人になる為のな! 亜紀:ふふふ、そーゆーこと! 駿:ひええ…スガセン来ないでくれえええ…! 亜紀M:私は亜紀。幼稚園の頃からこの2人とは一緒で、まぁいわゆる幼馴染ってやつ。 亜紀M:昔からお調子者の駿と、その駿の面倒を見せられてる私と、その2人の面倒を見てくれるしっかり者の達也。 亜紀M:バランスの取れた3人で、小中高と一緒に過ごしてきた。 亜紀M:私はこの2人に色々な場面で守られてきた。おかけでこれまでの学生生活、本当に楽しかった。 亜紀M:このまま、ずっとこの生活が続けばいいと思っているけど、時の流れは止まってくれない。 0:放課後 校門 達也:さぁて、どっか寄って帰るか! 亜紀:うぅ…自分だけ余裕あるからって…。 達也:あっはは、宿題やってきたはいいけど、半分以上間違えてたら、そりゃ更に宿題出されても文句言えねーよなw 亜紀:んーーーもうっ!!ねね、駅前のカフェ行こうよ!わからないとこ、教えて♡ 達也:そうだなぁ、駿はスガセンがみっちり教えてるだろうし、亜紀は俺が教えてやるか! 亜紀:よっしゃ!!決まり!! 達也:俺、チョコレートパフェな? 亜紀:は、はぁ!?ちょ…女の子に奢らせる気!? 達也:ん?別にいいよ?自腹でも。その代わり、宿題も自分の力で…。 亜紀:(被せて)わあああーーかりました!!チョコレートパフェですね、はい、かしこまりました!! 達也:いえーい!ごちそうさま! 亜紀:あぁ…私のバイト代が……。 達也:有意義な使い方だねー?w あ、そういえば亜紀が働いてるファミレスって時給いくらだっけ? 亜紀:んっとねー高校生は1,100円! 達也:そっか…。 亜紀:え…なに!?まさか達也もうちで働くとか!? 達也:…そうだとしたら? 亜紀:ダメ!!絶っっっ対ダメ!!! 達也:なーんでさ?一緒に働けたら楽しくない? 亜紀:いや…楽しいかもしれないけど……。 達也:ん? 亜紀:お…怒られてるとこ見られたくない…。 達也:あぁ、亜紀怒られてるんだ?w 亜紀:し、しょうがないじゃん!忙しいと頭パニックになるんだもん! 達也:あはは、かわいーw 亜紀:ちょ!バカにしてるー!? 達也:してないしてない!w 亜紀:絶対ダメだからね!達也が入ったらその日に私辞めるからね!! 達也:大丈夫だよ、俺バイトする気無いし。 亜紀:え、じゃーなんで聞いたの? 達也:んー?なんとなく? 亜紀:…?変なの! 達也:気にしない気にしない! 0:学校 駿:ふあぁーーぁ、やっと終わった…。もう1ヶ月くらいスガセンの顔見なくていいや……。(背伸び)んーーはぁ、疲れた、帰ろ。 0:カフェ 達也:……ん、あってる。 亜紀:やった!これで明日は堂々と学校行ける!ありがとうたつや! 達也:おう!またいつでもどうぞー!次は…モンブランにしよっかなw 亜紀:う……背に腹はかえられぬ…。 達也:はは、冗談だよっw 亜紀:でもここのカフェ、安っぽいメニューだなーって思ってたけど、意外とちゃんとしてるし美味しかったね! 達也:こら、そういう事言うんじゃないの!(コツン) 亜紀:いたっ…はーーい。 達也:ふふ。よし、帰るか! 亜紀:うん!あ、ごめんね長々と付き合ってもらっちゃって。 達也:いいよ、今日ものあ部活あるって言ってたし。まだ帰ってないんじゃないかな? 亜紀:のあちゃん、最近調子良いんだ? 達也:あぁ、たまに早退してくるけど、部活も無理なくやってるみたいだしな。 亜紀:また今度女子トークしに行こうかな! 達也:ん、ありがとう助かる!何気にお前との女子トークが楽しみみたいでさ、のあ。 亜紀:何気にって何さ!もうすっかり仲良しなんだからね? 達也:知ってるよ。俺がヤキモチ妬くくらい仲良しですもんねー? 亜紀:はぁ?何バカな事言ってんの! 達也:割とガチなんだけどなぁ? 亜紀:……え…? 達也:お、あれ駿じゃん!スガセン地獄から解放されたんだなw 亜紀:え…、あ、うん…。 達也:行こうぜ! 0:外 達也:よう駿、お勤めご苦労様!w 駿:あ、達也!!この裏切り者め…! 達也:はぁ?人聞き悪いこと言うなよなー?お前の為だって言ったろー? 駿:俺の為って言うなら宿題見せてくれても良かったろー!!こんな時間までスガセンの顔見てたら不登校になるっつーの! 達也:あははっこれに懲りたら、ゲームも程々にして、宿題くらいちゃんとやってこい!w 駿:うっ…ゲームはやめられん!…あれ?亜紀も居たのか。 亜紀:あ、うん…、お疲れ様! 駿:…? 達也:お前がスガセンにみっちり絞られてる間、こっちは俺がみっちり絞ってたんだよw 駿:なーんだ、そういう事か!疲れきって元気無いのか亜紀w 亜紀:そ、そうなんだよ、スガセンに追加の宿題出されちゃってさー、もう頭パンパン…。 駿:へっ!俺を裏切った罰だなw 達也:2人とも少しは真面目になれよー、俺たちもうすぐ卒業するんだからな? 駿:はぁ…卒業かぁ…。あっという間の3年間だったよなぁ…って、まだちょっと早くね?今9月だぞ? 達也:半年なんてあっという間だぞ?来月体育祭があって、11月は講習月間だろ?12月はクリスマスと同時に冬休みに入って、明けたら卒業まで約2ヶ月…すぐじゃん! 駿:そう言われれば…確かに。うわー卒業なんかしたくねーなー…。このままこの生活続けてたいわ。 亜紀:私も…このまま続けてたい、この生活…。 達也:……。 駿:だよなー!?あーあ、一生学生が良いなぁー。 達也:駿、学生の本業知ってるか? 駿:食う!寝る!遊ぶ!!! 達也:よし!お前は留年確定!そのままずっと学生やってろw 駿:待て待て、お前らが居なきゃ意味ねーだろ!? 達也:悪いけど、俺はすぐにでも働きたいんでね!いつまでもお前の宿題に付き合ってらんねーの! 駿:え、じゃあやっぱり大学には行かないのか? 達也:あぁ、まぁ働きながら通信とか考えてはいるんだけどな。 駿:そっか、…のあちゃん元気か? 達也:おぉ、元気元気!今部活も出れてるよ! 駿:そっか!良かった!俺もまた会いてぇなー! 達也:お前さ、何度も言ってるけど、のあの事たぶらかすなよ? 駿:ばっ…ばか言うな!俺がいつのあちゃんをたぶらかしたんだよ! 達也:お前のそのノリ、のあは面白がってるけど、のあが良くても俺は絶対認めないからな? 駿:だ、大丈夫だよ!!俺にはちゃんと好きな人が居るんだから! 達也:…は!? 亜紀:えっ!? 駿:なっ…、なんだよ2人して……。 達也:お前、今までそんな事一言も言ってなかっただろー!!誰だ?誰に惚れた!? 亜紀:同じクラス?隣?学校以外!? 駿:おいおいおい!!もう帰るぞ!!この話は無かったことにしろ!! 達也:うわっ!逃げるな!!亜紀捕まえろ!! 亜紀:ラジャー!! 駿:ば…ばかっあぶねって!チャリを抑えるなー! 亜紀:隊長!捕獲しやした!! 達也:よし!さぁ、観念しろ!そして白状するんだ!お前は、どこの、誰に、惚れたんだ!? 駿:いや…だから…お……同じ…クラスの……。 亜紀:同じ…? 達也:クラスの…? 駿:……………いやーーダメだ!!!言えねーって!!! 亜紀:んもおおお!!男らしくないなー!! 達也:ったく…こんなんじゃ告白も無理だな!きっと片想いで終わっちまうよ! 駿:お…お前らなぁ……。 亜紀:隊長~どうしますか?このヘタレ! 駿:へ…ヘタレ!? 達也:あぁ、もう解放していいぞ。野放しにしても、大した事は起きやしない。 駿:…くっ…好き放題言いやがって…。 亜紀:さぁ帰ろ帰ろー! 達也:お疲れ様、ヘタレ君。 駿:……ったよ。 亜紀:え? 駿:わーったよ!!言えば良いんだろ? 達也:おぉ!誰だ誰だ!? 駿:亜紀…。 亜紀:はいっ!なんでありますか!? 駿:……言った。 達也:……っ!? 亜紀:…ん?どういう事?え、今言った?私聞いてなかった!もっかい!! 駿:だから、亜紀だって言ったんだよ!! 亜紀:………っ!? 達也:……。 駿:…な、なんだよ…。 亜紀:………ぷっ!あっははは!何の冗談よそれw 駿:は…はぁ!? 亜紀:いや、そりゃ私だって好きだよ?2人とも幼馴染みだし、ねえ?達也? 達也:…ん、あぁ…。 駿:…ふんっ、俺帰るからな!じゃあな!! 亜紀:え?ちょ…駿!? 0:駿、自転車に乗り1人で帰る 亜紀:なーにあれっ!もう迎えに行ってやんないんだからね! 達也:……。 亜紀:達也? 達也:あいつ…きっと本気だよ、亜紀の事。 亜紀:…え? 達也:この流れで言うのはずるいかもしれないけど…。 亜紀:……なに? 達也:俺もお前の事好きだから。恋愛感情で。 亜紀:…っ!!? 達也:ふふw そんな反応すると思ったw 俺も本気だよ。本気でお前が好きだ、亜紀。 亜紀:ち…ちょっと……やめてよ…。 達也:じゃー俺も帰るわ!またな! 亜紀:あっ……………。 0:達也も帰る 亜紀:…そんな……私…どうしたらいいのよ…。 0:亜紀宅 寝室 亜紀:んーーーーー……寝れない!!なんで…?なんであんな事言うの…。今まで幼馴染3人仲良くやってきたじゃん…。これからもずっと3人で一緒に居られると思ってたのに………。 駿:だから、亜紀だって言ったんだよ!! 達也:俺もお前の事好きだから。恋愛感情で。 亜紀M:何の根拠もないけど、私は幼馴染は付き合うとかそういう事には発展しない物だと思っていた。感覚も家族みたいなもので、恋愛とは全く別の愛情があると思っていた…。 なのに、まさか2人から同時にあんなカミングアウトされるなんて…。 亜紀:はぁ……もう…考えるのやめよ…。 亜紀M:私は明日、どんな顔で2人に会えばいいか。何の答えも出せずに、そのまま眠りについた。 0:次の日 学校 昼休み 亜紀:…………。 駿:…………。 達也:……(あくび)ふあーあぁ、昼食ったら眠くなるよなー。……ん?お前ら、飯食わねーのか? 亜紀:…た、食べてるよ。 駿:お…俺だって…。 達也:はぁ…やれやれ…。 亜紀:…な、なんであんたはそんな余裕なのよ達也! 達也:ん?なにが? 亜紀:いや……昨日の…。 達也:あぁ…俺達が恋愛感情で亜紀が好きだってやつ? 駿:…はぁっ!?達ってなんだよ、達って!! 達也:ん?俺も亜紀の事好きだからな。 駿:……っ! …そ…そうか……。 達也:俺達ライバルだなw 駿:お、おう……w 亜紀:……なに2人して笑ってるのよ…。 達也:ん? 駿:なんだよ? 亜紀:もおーーーー!!!私は、2人とも幼馴染として好きだけど、恋愛感情なんてないからね!!期待なんかしないでよ、ばか!!!! 0:亜紀 その場を去る 達也:……ぷっ!あはは、亜紀らしい反応だなぁw 駿:……達也。 達也:ん? 駿:亜紀の事…好きだったのか? 達也:あぁ、言ってなかったよな、お互い。 駿:いつからだよ? 達也:んーちゃんと意識したのは、高校入ってからかな? 駿:そこまで一緒かよ…。 達也:あいつさ、高校入ってから垢抜けたっていうか、どんどん可愛くなってるだろ? 駿:あぁ…確かに。 達也:他の誰かに取られる前に、彼女として俺の隣に居て欲しいって思ったんだよ! 駿:…そうか。 達也:お前は? 駿:俺も高校入ってからちゃんと意識したっていうか…ずっと好きだったんだけど、ようやくその好きが恋愛感情だって気付いた…的な? 達也:そうか。なぁ、幼稚園の頃さ、アキが他のクラスの園児に意地悪されてた時の事、覚えてるか? 駿:あー中庭の真ん中で亜紀が泣いてたやつだろ!それ見た途端、ブランコから2人で飛び降りて助けに入った!懐かしいなー! 達也:それからだよ、俺たち3人ずっと一緒に居るようになったの。 駿:そうだったな…。 達也:ヒーローは2人居ても良いけど、彼氏は1人だからな! 駿:わ…わかってるよそんな事…。 達也:へへ、負けねーよ?駿が相手でも。 駿:俺だって負けねーし。勉強できなくたって、亜紀の事本気で好きだって気持ちは負けねー! 達也:まぁ朝のお迎えくらいハンデあっても俺は負けないだろうなーw 駿:ふんっ!朝から亜紀の顔見れて羨ましいか!! 達也:放課後、カフェで2人くっついて勉強してる姿、周りから見たらカップルに見えただろうなーw 駿:くっ……負けねーぞ。 達也:俺も負けねーよ。 0:女子トイレ 手を洗っている亜紀 亜紀:はぁ…もう、2人のバカのせいで頭ガンガンしてきたじゃん…。……あれ?血…?うわっわわわっ、やだやだ…鼻血っっ!もううう…最低っ!なんなのよ今日は!! 0:教室 亜紀:………。 駿:ん?ぶはっっ亜紀www どうしたんだよその鼻ww 亜紀:……(イライラ)。 達也:鼻血?大丈夫か? 亜紀:……ん。 駿:(爆笑)鼻にティッシュ詰め込んでんのマジウケるw いつものブサイクがもっとブっっ……!? 0:亜紀がしゅんの頭を殴る 駿:っってーなー!! 亜紀:あんた…それ以上笑ったら絶交ね。 駿:えぇ……こんなの受け流せよ…。 達也:はい、駿マイナス5点~w 駿:はぁ? 達也:俺が1歩リードかなー。 駿:ちっ…。 亜紀:…達也も、いい加減にしないと絶交するからね。 達也:え? 駿:はい、たつやもマイナス5点ー!これで同点だな!w 亜紀:あんた達ばっかじゃないの!?…帰る!!!先生には早退したって言っといて!! 駿:は!? 0:亜紀 早退し教室から出ていく 駿:…達也、あいつこんな事でいつも怒るか? 達也:いや、よっぽどイライラしたんじゃね?お前のリアクションで。あれは俺でも腹立つしな。 駿:でも亜紀ならもっと殴って喚いて、それで終わりだろ? たつや:うーん、生理かねえ…。 駿:…ほ、ほう。 達也:貧血っぽかったしな、顔青かったし。 駿:マジで?……よし、帰りに…。 達也:一緒に行くぞ?お見舞い。 駿:ちっ…、あーそうですか!! 達也:抜け駆けして襲わないように見張っとかなきゃなw 駿:ばっっ誰がっ!! 達也:あーヘタレ君には無理かーw 駿:お前いつか見てろよ…。 達也:おう、いつでも見てるよw 0:亜紀宅――ピンポーン― 亜紀:(インターホン越し)はい… 駿:よう!お前の具合が心配で来てやったぞー! 亜紀:………。 駿:…ん?おーい、聞こえてるかー? 達也:やめろってそのノリ…。亜紀、大丈夫か? 駿:あぁ?なんだよ、俺は普通に…。 亜紀:……帰って! 0:ガチャ 駿:…はぁ!?なんだぁ!? 達也:ふぅ…やれやれ。 駿:な…なんだよ!俺のせいか!? 達也:ま、今日のとこは帰るとするか。 駿:おい!待てよ! 達也:いいから、ほら行くぞ。 駿:ちょ…ったく!なんだよあの態度…! 達也:バカだなぁ本当に…。 駿:おい、今バカっつったか?誰が! 達也:お前以外にいるかっつーの!この! 駿:いってーな!なんなんだよ…。 0:亜紀の部屋 亜紀:はぁ…はぁ……なにこれ…。 亜紀M:私は今までずっと元気だった。特に大きな病気にかかる事も無く、元気に育ってきた。それが突然、鼻血が止まらないなんて…。 亜紀M:私は怖くて震えが止まらなかった。 亜紀M:貧血になったのか、私は意識がだんだんと遠くなっていく気がした。 亜紀M:ベッドに横たわり、止まらない鼻血が布団の上から流れ落ちるのを見ながら、そのまま意識を失った。 0: 0:【2章】 0: 0:病院 亜紀M:気が付いたら私は病院に居た。 亜紀M:お母さんが帰ってきて、血まみれの私を見てすぐに救急車を呼んだらしい。 亜紀M:そりゃそうだよね…。 亜紀M:娘が血だらけでベッドに倒れてたら…。 亜紀:お母さん…、心配…かけてごめんね。 亜紀M:目が覚めた事を確認したお母さんは、すぐに先生を呼びに行った。 亜紀M:そして次の日、検査結果を聞いた。 亜紀M:私は、血友病という難病らしい。 亜紀M:血友病とは、出血すると血が止まりにくくなる病気だそうだ。 亜紀M:治療を続けていれば良くなるとの事だが、普段の生活でも怪我をしないよう心がけてくださいと言われた。 亜紀M:2,3日様子を見て、体調が変わりなければそのまま退院する事になった。 亜紀M:次の日、ほんの数日の入院だから2人にはお見舞いは大丈夫と連絡したが、退院に合わせて病院に来てくれる事になった。 0:退院日 0:病室 亜紀:お母さん、これも入れておいて。…ふぅ。ん?大丈夫だよ!寝たきりになってたから、少し体力が落ちただけ! 0:ガラッ 駿:ちわーっす。 亜紀:ちょ…バカ!普通ノックくらいしない? 駿:あ、悪い、忘れてた。おばさん、お久しぶりっす。 亜紀:本っ当にバカ。私が着替えてたりしたらどうするのよ! 駿:そんな事…。 亜紀:そんな事!? 駿:あ…いや、ごめんなさい。 0:コンコン 亜紀:はーい。 達也:失礼しまぁす。 亜紀:達也、来てくれてありがとう。…ほら、これが普通の入り方よ? 駿:へいへい…。 達也:よう亜紀、大丈夫そうだな。おばさん、ご無沙汰しています。 亜紀:はぁ、さすが達也。大人な対応! 駿:……。 達也:ん?また駿が何かしたのか?w 駿:いや、ちょっとノックしなかったくらいでこいつが…。 亜紀:ガキ!礼儀知らず!少しは達也を見習え! 駿:ぐっ……。 達也:駿、ノックもせずに入ったのか?もし亜紀が着替えてたら、お前もう絶好もんだぞ? 亜紀:それ私がさっき言った。そしたら「そんな事大した問題じゃない」ってさ! 駿:い、言ってねーだろそこまで! 達也:はいはい、病院内では静かに!亜紀、荷物まとまったか?車まで持っていくぞ。 亜紀:はーい、お願いしまーす! 達也:ほら、お前も持てよ。 駿:あ、あぁ…。 亜紀:駿、荷物落とさないでよねー? 駿:…わざと落としてやる。 亜紀:はぁ!?傷付けたら弁償だからね!! 達也:はいはい大丈夫大丈夫、ほら行くぞ! 駿:あ、おい押すなよ! 亜紀:ほんっとにムカつく…。……はぁ?あんな奴と仲良くないし!! 0:駐車場 駿:くそっ、来るんじゃなかった! 達也:いやいや、お前がノックもしないで入るからだろ? 駿:そんなの…俺達の仲だろー!? 達也:親しき中にも礼儀ありって言葉、知ってるか? 駿:あーあーはいはい、俺が悪うございました! 達也:…。 駿:…。 達也:なぁ…、亜紀の事、俺に任せろよ。 駿:はぁ!? 達也:お前じゃこれから先あいつを守っていけねーよ。 駿:んな事わかんねーだろ!なに抜け駆けしようとしてんだよ! 達也:お前が相手だと、喧嘩ばっかで亜紀の身体に良くないって言ってんだよ! 駿:それならお前だって亜紀の事怒らせる時あんじゃねーか! 達也:俺とお前の場合じゃ状況が全然違うだろ。 駿:はっ、そんなの関係ねーだろ! 達也:…いい加減大人になれよ、駿。 駿:お前こそ大人ぶってんじゃねーよ!ちょっと勉強できるからって上から目線かー? 達也:…。 駿:色々苦労してるからって、年は同じなんだからな! 達也:だったら!!年相応に振る舞えよ!いつまでもガキみたいな事言い続けて、反抗期なんてとっくに終わってるだろうが!! 駿:っっ…!? な…なんだよ…。 達也:(荒い息) 駿:い…いきなりなんなんだよ!! 達也:……。 0:亜紀が心配そうな顔で近付いてくる 亜紀:な…何してんの? 駿:亜紀…。 達也:…亜紀、荷物運び終えたから帰るわ!家に着いたらしっかり休むんだぞ。 亜紀:え…一緒に乗っていかないの? 達也:悪い、寄るところあるんだ。じゃ。 亜紀:あ…行っちゃった。駿、達也の事怒らせた? 駿:なんでそうなるんだよ…。 亜紀:だって…達也があんなに大声出すんだもん…。 駿:あぁ…。 亜紀:大丈夫なの…?行かなくて…。 駿:ん…じゃあ、ゆっくり休めよ。 亜紀:ありがとう…。達也にもありがとうって伝えて。 駿:わかった。 亜紀:絶対伝えてよ?この後、すぐに! 駿:わかったって! 亜紀:ねえ!…これからも、3人一緒じゃなきゃ嫌だよ……。 駿:……あぁ。 0:歩道 駿:おい、達也! 達也:…駿。 駿:…さっきは悪かったよ、ごめん…。 達也:…。 駿:…。 達也:なぁ、駿…。 駿:…ん? 達也:亜紀…大丈夫かな。 駿:え……大…丈夫だろ…。 達也:…。 駿:…どうしたんだよ? 達也:…難病なんだよ、血友病って。 駿:え…? 達也:この前亜紀から病気の事聞いて調べたんだ。そしたらほとんど男がなる病気で、10代の女子が患う事は滅多にないって。 駿:…そうなのか。 達也:でも、治療をちゃんとしていれば落ち着くってさ。怪我をして出血とかしないように気をつけなきゃいけないみたいだけどな。 駿:そうか…危なっかしいからな、亜紀…。 達也:そうだな、朝のチャリで爆走登校も、もうやめてやれよ? 駿:わ…わかってるよ! 達也:てか、そろそろお迎え卒業しろよ! 駿:う…わかってる…。 達也:…。 駿:のあちゃんと同じ難病か…。 達也:…あぁ。だから悪い、つい感情的になっちまって…。 駿:…いや、俺が悪かったから…。 達也:まぁ難病って言っても、のあみたいに回復して、部活まで出られるくらい元気な患者も居るんだ、大丈夫だろ。 駿:そう…だな。大丈夫だって達也!亜紀も、のあちゃんも、絶対治るって!! 達也:…駿……ふふ、だよな!よし、帰るか! 駿:あぁ! 0:1ヶ月後 0:教室 放課後 駿:亜紀、帰ろうぜ。 亜紀:うーん、今日のバイトめんどくさいなぁ…。 駿:今日バイトか…。休んじゃえば? 亜紀:簡単に言うねぇ…。私には責任感というものがあるのだよ、駿君。 駿:ばっ…俺にだってあるわ! 亜紀:ほほう?それは初耳ですなぁ? 駿:ほらっ、早く動け!遅刻するぞ! 亜紀:…ふぅ。よし、行きますか! 0:歩道 亜紀:ねぇ、達也…この頃休み多くなったね…。 駿:あぁ、のあちゃんの具合が良くないみたいで看病してるって。 亜紀:のあちゃん、まだ13歳なのに大変だよね…。 駿:…お前だってまだ17歳だろ。 亜紀:ん?私はこの通り元気じゃん! 駿:でも…。 亜紀:大丈夫だよ、治療もちゃんと続けてるし、病気とうまく付き合えてるって先生も言ってたし。 駿:…。 亜紀:私は心配ご無用!ホップステップジャンピン… 駿:いつの時代のネタだよ…。 亜紀:あっ…! 0:着地に失敗し転倒する亜紀 駿:亜紀っ!! 亜紀:いったぁ…。 駿:お前バカじゃねーの!大丈夫かよ…!? 亜紀:いい…何かの破片で膝切っちゃった…。 駿:なっ…!すぐ手当てしないと! 亜紀:大丈夫だよこれくらい…。 駿:大丈夫じゃねー!どこか…薬局…! 亜紀:ねぇ!落ち着いてよ!すぐバイト先だから手当てもお店でできるってば! 駿:…そ、そうか…? 亜紀:大袈裟なんだから…。でもありがとう! 駿:…本当に大丈夫か? 亜紀:大丈夫大丈夫!こんなバカな怪我でなんともならないよ! 駿:ち…ちゃんと手当てしろよ。 亜紀:わかってるって!じゃーバイト行くね! 駿:あぁ…。 亜紀:また来週ねー! 駿:また来週…。 0:次の週の月曜日 0:教室 駿:おーっす達也。 達也:おう!…あれ?亜紀は? 駿:休み。風邪引いたって。 達也:なんだ風邪かぁ。 駿:それより、のあちゃんもう大丈夫なのか? 達也:おう、週末も家族で出掛けて平気だったし、もう落ち着いたよ。 駿:そうか、良かった! 達也:今日、学校終わったら亜紀のお見舞い行くか? 駿:そうだな、今週末の体育祭までに治ればいいけどなー。 達也:毎年、異常に張り切って参加してるよなw 駿:私には、負けられない戦いがあるーってなw 達也:あー言ってたw そういうとこが可愛いんだよなー。 駿:あれ!あれも…えーっと中学3年のの期末テスト! 達也:このテストで、私の運命が決まる!!だっけ?w 駿:確かに最後の期末は大事だったけど、いちいち大袈裟なんだよなぁw 達也:あははw よし、またネガティブになってないか、帰りに様子見に行こうか! 駿:おっけー! 0:亜紀宅 達也:……はい、わかりました。お大事にとお伝えください。失礼します。 駿:…おばさん、なんか深刻そうじゃなかったか? 達也:…あぁ、とりあえず大丈夫とは言ってたから…また後日かな。 駿:あいつ…本当にただの風邪かな?普段だったら風邪でも普通に家に入れてたよな? 達也:…きっとそれくらい辛い状態なんじゃないか?熱もあるって言ってたし。とにかく今日は帰ろう。 駿:んー、仕方ねーか。 0:2週間後 亜紀宅 0:ピンポーン 駿:おばさん!開けてくれよ!亜紀、中に居るんだろ!?開けろよ!なんで何も言わねーんだよ!! 駿:…。 駿:……。 駿:…ちっ。無視かよ…!! 0:達也宅 達也:のあ、もうすぐご飯できるぞー! 0:着信音 達也:あれ…駿だ。……もしもし? 駿:達也!!亜紀に連絡しても返ってこないし、今家に行ったけど誰も出ないんだよ!おばさんも!! 達也:おいおい…落ち着けよ。亜紀の家に行ったのか? 駿:そりゃ行くだろ!これだけ連絡が無い事なんて今まで無かっただろ!? 達也:んー…ごめん、後で掛け直す。 駿:はぁ!? 達也:今飯の支度してたんだよ。片付いたらすぐ掛けるから! 駿:ちっ…なんだよ飯って!こんな時に! 達也:駿!落ち着けって!ちゃんと話すから、5分だけ待ってろ! 駿:はぁ…?……あぁ、わかった。 達也:じゃあな。 駿:……なんだよそれ。ちゃんと話すからって…何も知らないのは俺だけって事かよ…。 0:10分後 0:着信音 達也:もしもし?悪い、ちょっと時間掛かった。 駿:あぁ。 達也:あれ、怒って…ない? 駿:いいから…早く話せよ…。お前は何でも知ってんだろ。 達也:あぁ…そっちのショックか。 駿:るっせーな!!誰がショック受けてるなんて言ったよ!? 達也:お前の声がそう言ってんだよ。 駿:いいから…早く言え。 達也:…なぁ、亜紀はお前の事を思って口止めしてたっていうのはわかってくれよ? 駿:……。 達也:前にお前と一緒に帰った日、亜紀、転んで膝を怪我しただろ? 駿:…っ!あの時の傷が原因か!? 達也:いや、それは大した事無かったらしいんだけどな。 駿:なんだよ…。 達也:ただその後のバイト中、どこかの学校の不良が数人店に入ってきて、亜紀の接客態度が悪いとか言いがかりをつけてきて、皿を下げろってテーブルから滑らせて床に落としたんだって。 駿:……っ!! 達也:で、落ちた皿が割れて、破片が運悪くその怪我をした部分に当たって大量出血したって…。 駿:……。 達也:すぐに応急処置をして、救急車で病院に行った。しばらく血が止まらなかったけど、今は落ち着いているって。まだ入院して様子を見ているんだけどな。 駿:……。 達也:…聞いてるか? 駿:…ああ。 達也:だから、今は家に誰も居ない時が多いんだよ。今日も多分病院だ。 駿:……。 達也:お前、これを聞いたらその不良たち探すだろ?だから亜紀に口止めされてたんだよ…。 駿:……。 達也:駿…?絶対やめろよ?復讐とかくだらない真似…。 駿:…達也はこの事いつ知ったんだ? 達也:…先週。 駿:そうか…。 達也:…悪かったよ、黙ってて。けどお前の性格を考えたら…亜紀だって心配してんだよ。今、俺達卒業を控えた受験生なんだからな?お前は進学するんだろ?だったら…わかってるだろ。 駿:……。 達也:亜紀な、その件以来血が止まらない事が多くて、何もしてなくても血が出てくるようになってきて、重篤患者になるかもしれないって言われてるんだ…。 駿:重篤… 達也:ああ、だから── 0:プープープー 達也:…もしもし?あ…あいつ……。 0: 0:【3章】 0: 0:亜紀のアルバイト先周辺 駿:……。 達也:はぁ…やっぱり居た。 駿:……達也。 達也:お前、俺の言った事聞いてなかったのか? 駿:…聞いてたよ。 達也:だったら、こんな夜に此処でお前は何をして── 駿:うるせーよ!! 達也:……はぁ。 駿:……帰れ! 達也:何言って…。 駿:いいから帰れっつってんだろ!! 達也:お前が帰れよ!! 駿:放っとけよ!! 達也:んな事できる訳ねーだろ!! 駿:いいから帰れ!! 0:ザワザワ 達也:…駿。こんなところで騒いでたら通行人の迷惑だ。 駿:……くそがっ!! 0:次の日 達也:もしもし、亜紀か?体調は?…そうか。悪い、昨日駿に喋っちまった…。亜紀の家にも行ったみたいでさ、隠せなかった。…うん、それであいつ、昨日の夜亜紀のバイト先の周りで探ってた。予想通りの行動だよな…。…ああ、大丈夫、俺が止める。のあの事もあるから、四六時中とはいかないけど、何とかあいつが暴走しないように見張っとく。悪かったな、こんな連絡で。……ああ、お大事に。また顔出すよ。ん、じゃあまた。 0:3日後 達也:もしもし?おう、どうした? ……えっ!?駿が!? わ…わかった! 0:30分前 亜紀のアルバイト先周辺 駿:お前らか…。お前らが亜紀に怪我させたのかって聞いてんだよ!!! 駿:ふざけんな!!お前らのせいでなぁ!亜紀は今、死にかけてんだぞ!! 駿:ぶっ殺してやる!!!!! 0:30分後 達也:はぁ…はぁ…。あのバカ…本当に……! 駿:…うぅ…ゴホッ……ゴホ…。 達也:あ、駿!! 駿:…た…達也…。 達也:ったく…バカだなお前は!喧嘩弱いくせに、相手5人も居るんじゃねーか…。 駿:…あ…あいつらが…亜紀を…。 達也:……そうか。 駿:亜紀は…亜紀は大丈夫なのか……死に…そうなんだろ…? 達也:…は? 駿:だってお前…重態だって…。 達也:…あぁ、重篤な?お前、危篤と勘違いしてないか?大丈夫だよ、亜紀は。 駿:……そうか…良かった…。 達也:重篤と危篤を間違えるなんて…お前らしいけど、バカだなぁ相変わらずw 駿:…う、うるせ……!…あ、あぶねー達也、後ろ…!! 0:ゴツッッ 達也:がっ…!? 駿:た…達也…たつやあああー!!!! 0:2時間後 0:病院 駿:………。 亜紀:…駿。 駿:…亜紀……。 亜紀:…達也は? 駿:……。 亜紀:ねぇ…。 駿:バールみたいな物で頭を強く殴られて、12針縫った…。まだ…意識は戻ってない…。 亜紀:えっ…!?…そんな……グスッ…。 駿:………。 亜紀:グスッ…グスッ……。 駿:…ごめん、俺…。 亜紀:バカ!!!! 駿:うっ……。 亜紀:バカ!!バカ!!バカバカバカバカ!!!ああぁぁぁ(号泣)。 駿:………。 0:1時間後 駿:………亜紀、お前身体は…? 亜紀:……大丈夫。そっちは…? 駿:…そうか。俺も、大丈夫…。 亜紀:………。 駿:………。 亜紀:ごめんね…、私が黙っててってお願いしたから…。 駿:……。 亜紀:駿が知ったら…きっと犯人捜しするって思ったから…。 駿:……ああ、俺はバカで単純だからな…。 亜紀:……。 駿:…ごめん、俺が悪い。だから亜紀は謝るな…。 亜紀:怪我…してほしくなかった……。 駿:…あぁ、俺が弱かったから…達也は…。 亜紀:違う!強いとか弱いとか…そんなの関係ない……。 駿:だけど実際…達也は俺が手出した奴に反撃されて…。 亜紀:………。 駿:…なんで、なんで達也なんだよ…。 亜紀:……。 駿:俺がやったんだから…俺に……。くそっ…。 亜紀:……嫌だよ。 駿:……え? 亜紀:…どっちが怪我しても嫌なの。2人とも元気じゃなきゃ嫌なの!それくらい、言わなくてもわかってよ…。 駿:……亜紀。 亜紀:…本当にバカ。 駿:……ごめん。 0:朝方 亜紀:ん…寝ちゃった…。…あれ?駿? 0:達也の病室 駿:おい!!起きろよ!!達也!! 亜紀:え…、駿?何してるの…? 駿:亜紀!達也を起こせ!! 亜紀:え……し、心肺停止…って何でっ!? 駿:さっき急変したんだよ!いいから起こしてくれ!!じゃないと…俺…!! 亜紀:バカ!起きるよ!!達也!達也!!ねえ!!私が元気になったのに、なんで達也が…ダメだよそんなの!! 駿:起きろ達也!!お前が居なくて、のあちゃんどうすんだよ!! 亜紀:そうだよ!!達也!!起きて!! 駿:達也!! 亜紀:達也!! 達也:………ん…。 駿:た…達也!!! 亜紀:達也…!? 達也:………ぃ…。 駿:え…? 達也:……わ…るい…しん……ぱい…かけ……て。 亜紀:バ…バカ!そんな事気にしなくていいから!! 駿:そ、そうだよ!早くちゃんと目覚ませ!! 達也:……亜紀…。 亜紀:ここに居るよ!なに!? 達也:し…駿の…こと……頼む…な…。 亜紀:な…何言ってんの!? 駿:おい達也!先に死ぬとか許さねーぞ!! 達也:…駿……お…まえが……亜紀を……し…あわせ…に…。 駿:おい……おい!!ふざけんな!!こんな勝ち方俺は望んでねーんだよ!!正々堂々と勝負しろよ!! 亜紀:たつやあああ!! 達也:…泣く…なよ、亜紀。……俺は…だい……じょうぶ…だから。 亜紀:だづやああああ!!やだよおおお!!! 駿:達也!!おい!!目開けろ!!!!達也!! 達也:………………。 0:心停止を知らせる機械音が鳴り響く 亜紀:っっ!!? 駿:なっ…!!! 亜紀:……うわああああああああ!! 駿:…た…達也……たつやああああああ!!!。 0: 0:【4章】 0: 0:数ヵ月後 駿:おはよう! 亜紀:……。 駿:行くか! 亜紀:…ん。 駿:……。 駿M:あれから亜紀はバイトを辞めた。しばらく学校にも来れず、家に引きこもるようになっていた。俺は卒業の事も考えて、せめて外に出るように促し、亜紀はようやく学校に復帰した。俺もまだきちんと割り切れた訳じゃない。だけど…亜紀を見ていると、俺までいつまでも落ちてるわけにはいかなかった。亜紀の病気は、あれから特に悪化する事も、ケガをする事もなく落ち着いている。俺は無理矢理いつもと変わらない、達也が居たあの頃のように接している。そんな事、亜紀も気付いているだろうし、無理してるのもバレてると思う。でも亜紀は何も言わず、心を無くした人形のように過ごしている。 0:校門前 放課後 駿:じゃあ亜紀、気を付けてな? 亜紀:…ん。 駿:受かっかなー?スタンドのバイトなら大丈夫かっ!俺のこのキャラを持ってすれば余裕だよな! 亜紀:……。 駿:……。じゃ、張り切って行ってくるわ!じゃな、また明日! 亜紀:…。 0:亜紀が帰る姿を見送る 駿:…はぁ。達也…俺どうすればいいんだろうなぁ…。 のあ:駿君! 駿:あ…のあちゃん!どうしたの!? のあ:ごめんね、急に来ちゃって。今ちょっと良いかな…? 駿:あー…ごめん!俺今からバイトの面接なんだ…。 のあ:あ…そうなんだ…。 駿:あ、でももし…のあちゃんが大丈夫なら一緒に行く?どっか近くで待っていてくれたら…20分もあれば面接も終わるだろうからさ、…どう? のあ:…うん、そうする。 駿:おっけ、じゃあ行こうか! 0:カフェ 駿:ごめんのあちゃーん、お待たせ! のあ:うん、大丈夫だよ、お疲れ様。どうだった?面接。 駿:へっへっへ!即時採用!! のあ:すごーい!さすが駿君だねぇ! 駿:まぁ、俺にかかればこんなもんよ!w のあ:いいなぁ、私もバイトしてみたいなぁ…。 駿:のあちゃんも高校に上がったらバイトすればいいじゃん! のあ:…うん、できればいいな…。 駿:大丈夫だって!できるよ!俺が保証するから!!体調も、今はもうだいぶ落ち着いてるんだろ? のあ:…うん!ありがとう!ふふ、駿君はいつでも駿君で安心する! 駿:そうか?へへ。 あ、そういえば話って? のあ:あ…うん…。 駿:……まぁ、何か食べながらゆっくり話そうか! のあ:ううん、あのね、これ…。 駿:…ん?ノート? のあ:……お兄ちゃんの…。 駿:えっ…?達也の…? のあ:そう…。荷物の整理をしてたら見つかったの。それで…見せた方がいいのか迷ってたんだけど…、亜紀ちゃんがずっと元気無いって聞いたから…。だから駿君が中身を見て、亜紀ちゃんに見せてもいいか判断してほしいの…。私じゃ…わからないから。もしかしたら…こんなノートを見たら、余計に思い出して傷つけちゃうかもしれないって…。だから…。 駿:……達也のノート…。 0:ページをめくり、中身を確認する駿 駿:……達也…。 のあ:お兄ちゃん、亜紀ちゃんの事好きだったんだね。恋愛感情で…。駿君も。 駿:あぁ…。しかも達也、バイト探してたのか…。 のあ:あ、うん、その頃内緒にしとけって言われてたんだけどね。いつも私の治療費の為って言ってたけど、亜紀ちゃんへのプレゼントとかも考えてたみたい。 駿:……へっ、「駿には買えないようなプレゼントを渡して俺がリードする!」って書いてやがる…グズッ。 のあ:あはは…お兄ちゃん、バカだよね…。 駿:俺の事散々バカバカ言ってたのに……こんな事ノートに残すとか…あいつもバカだったんだな……へへ。 のあ:亜紀ちゃんの病気がわかってからは、たくさん調べたみたい。 駿:あぁ…めちゃくちゃ書いてあるな…。 のあ:私の時もそうだった…。それで必ず、「大丈夫、ちゃんと治る!」って言ってくれるの…。 駿:…あぁ。 のあ:なんの根拠も無いのにさぁ、適当だよね!……でも、そのおかげで元気が出たし、本当に治るって思えた…。 駿:…とことん優しいからな、達也は…。俺と違ってさ…。 のあ:そんな事ない…。駿君の事もいっぱい書いてあるでしょ。 駿:……グズッ…。視界が滲んで…何にも読めねぇ……。 のあ:……駿君…。 駿:……ありがとうな、のあちゃん。これ、借りてくな。亜紀にも読ませたい。きっと亜紀だってこのノートを読んだら、元気になると思うから! のあ:うん。駿君、亜紀ちゃんの事、お願いね。私、また亜紀ちゃんに会いたい…。また一緒に出掛けたい。もっともっと遊びたいから! 駿:あぁ、任せとけ!俺が居るから大丈夫!絶対元気にしてみせる! のあ:うん!…ふふ、お兄ちゃんみたい。 駿:そ、そうかな? のあ:うん!頑張れ、駿君! 駿:おう!! 0:次の日 駿:おはよう亜紀! 亜紀:……。 駿:亜紀、今日学校終わったらお前ん家行ってもいいか?見せたいものがあるんだよ! 亜紀:…? 駿:へへ。まぁ何かはお楽しみって事で!大丈夫か?行っても。 亜紀:…ん。 駿:よし、決まり!じゃあ今日も張り切って行くかぁ! 亜紀:……。 0:夕方 亜紀の部屋 駿:…あんまり変わってねーのな、亜紀の部屋。いつ来ても殺風景というか…いや物が無さすぎんだよなぁ…あ。 亜紀:……。 駿:悪い悪い!怒った? 亜紀:…なに。 駿:え? 亜紀:…物。 駿:ん?あーあれな、まぁそう急ぐなよ。 亜紀:……。 駿:んん……。 亜紀:………はぁ…。 駿:な…なんだよ? 亜紀:(冷たく)無理しなくていいよ別に。私の事心配で家まで来ただけなんでしょ。私は大丈夫だから。 駿:いや…俺は別に……。 亜紀:用が無いなら私シャワー浴びてきたいから。 駿:…行ってこいよ。本当に見せたい物があるんだ。待ってる。 亜紀:………ならそれ見てから行く。 駿:ん…。 亜紀:……。 駿:これ…。 亜紀:……ノート…? 駿:あぁ…。……達也の。 亜紀:っ!! 駿:今日、亜紀と別れた後、のあちゃんと会ってさ、渡されたんだ。中身は日記みたいなものと、最後のページに俺らの事…書いてある。 亜紀:……。 駿:…なぁ、俺も正直今のお前にこれを見せるのは酷かなとも思った。だけどな…。 亜紀:……。 0:ノートをめくる亜紀 亜紀:……………。 駿:………。 亜紀:………うぅ…。 駿:亜紀…。 達也:【9月22日】今日も2人揃って遅刻ギリギリw 駿の寝坊癖は相変わらずだw 達也:在学中もアルバイトをして、のあの治療費を稼ぎたいと思う。亜紀の宿題に付き合うのに金もかかるしw 達也:亜紀のアルバイト先で働こうと思ったけど、すぐに亜紀に断られた。亜紀は怒られてるところを見られたくないって。可愛いやつw 一緒に働いてたら慰めてあげられるのになぁ。 亜紀:あぁ…ごめん…だづやぁぁ……。 達也:【9月23日】今日、駿が亜紀に好きだと伝えた。先を越されたけど、俺も伝えた。これからは駿とはライバルだ。絶対負けねぇ! 達也:亜紀が鼻血を出した。チョコでも食べ過ぎたか?w 駿にからかわれて激おこ。俺もとばっちりくらった! 達也:【9月25日】「亜紀が入院した。血友病という難病らしい。のあに続いて亜紀まで…。でも絶対治る!2人とも!!」 達也:【9月28日】「亜紀の退院の手伝いに行って、大人げなく駿に怒鳴っちまった。のあの事もあって、俺はいつもの精神状態じゃいられなかった。でも駿が2人とも治るって言ってくれた。いつも俺が言っている言葉、自分に言い聞かせている言葉だった。いつにも増して不安が大きくなってた俺は、駿の言葉にパワーをもらった。やっぱ優しい奴だよ、駿は。」 駿:…達也……。 達也:【10月25日】のあの体調が悪化した。しばらく入院になる。大丈夫だ。のあは負けない。俺の自慢の妹だ。絶対大丈夫。絶対治る。」 達也:【10月28日】やっとのあの体調も落ち着いた。家族でピクニックも行けたし、もう大丈夫だろう。来週からちゃんと学校に行けるな。あいつら、遅刻とか居残りとかになってないかな。」 達也:【11月3日】「亜紀が風邪で学校を休んでいる。体育祭も休んだ。家に行ってもおばさんが家に入れてくれなかった。何かあったのか…?」 達也:【11月8日】「今、亜紀と電話で話した。今すぐ犯人を捜しに…いやダメだ。そんな事をしても亜紀は喜ばない…。だけど駿は…、きっと思い留まれない。落ち着いてから話そう。亜紀にも口止めされたしな…。亜紀も治る。絶対に治る。こんな事で亜紀が負けるはずがない。絶対治る。絶対。」 亜紀:……治ったよ…私は大丈夫だよ……達也あぁぁあ……。 駿:…うぅ……。亜紀、最後のページ…。 亜紀:うっ……うっ……。 0:最後のページまでめくる 達也:「宮嶋 亜紀。幼馴染であり、俺の初恋の人。いつも元気ハツラツで、一緒に居て楽しいやつ。頭は良くないけどw 幼稚園の頃から俺と駿にずっとくっついてきて、気付いたら小中高とずっと一緒に暮らしている。最早家族同然だな!泣き虫で負けず嫌いで、何事にも真っすぐな可愛いやつ。この先も俺がずっと守っていきたい、そう思える程愛おしい。」 0: 達也:「菅原 駿。幼馴染であり、俺の恋のライバル。まぁ文武両道の俺は、それ以外ライバル視する事なんて無いけどな!w でも、駿は心底優しいやつだ。人の痛みをわかってあげられる。だから俺はこいつが大好きだ。もし駿に何かあったらすぐに助ける。いつも俺が困っていると助けてくれたように。お調子者でガキっぽいけど、唯一無二の親友だ。」 亜紀:…たつやぁ……。 駿:…あぁ…くそ、涙止まんね……。 達也:「亜紀には俺が、俺には駿が、駿には亜紀が居る。俺達は何があっても、一生、かけがえのない幼馴染だ。」 駿:………なぁ亜紀、達也さ、今頃俺達の事…。 亜紀:…うん…!…見守ってくれてると思う…。だって達也だもん…! 駿:だよなぁ…。 亜紀:……あーあ、普段こんな事書き留めてるような事一切言ってなかったのにさ、ずるいよね。 駿:本当になぁ。意外だよ、達也がこんなノート書いてたなんて…。 亜紀:駿…。 駿:…ん? 亜紀:ありがとう…持ってきてくれて。 駿:…へ、当たり前じゃん! 亜紀:あぁ…もうくよくよすんのやめよー!! 駿:…亜紀? 亜紀:いつも元気ハツラツな亜紀様が、お調子者のガキっぽい駿の面倒を見なきゃいけないからね!! 駿:…ば、ばかやろう!今まで面倒見てたのは俺だろうが!! 亜紀:……うん、ありがとう。優しい駿も、ちゃんと知ってるよ。 駿:なっ…いや…お、おう…。 亜紀:なーによ! 駿:いや…す…素直すぎて調子狂う…つーか。 亜紀:ふふ、ばーーか!私シャワー浴びてくる!晩御飯作ってあげるから大人しく待ってなさい! 駿:マジ!?やりー! 0:数年後 亜紀:ほーら、駿!早く行くよ!!なんで今日まで寝坊するかなぁ、このバカ! 駿:ちょ…待てって!そんな急ぐ事ねーだろ! 亜紀:バカ!バスの時間ギリギリなんだから急いで!! 駿:うっ…人の事をバカバカって…。 亜紀:バーカ!乗り遅れても知らないからね! 駿:おい!亜紀! 0:霊園 駿:はぁーー、疲れたぁ! 亜紀:はい、よく頑張りました! 駿:ったく荷物全部持たせやがって…。 亜紀:はーい、男がつべこべ言わないのー! 駿:へいへい…。 亜紀:よし、じゃあ…。達也、今年も無事に来れたよ!あれから大きなケガもなく、健康に過ごせてるからね! 駿:外では気を付けてるようだけど、この前家の階段で転んだけどなw 亜紀:うるさいっ!ねぇ達也、こんなバカでも無事就職できたんだよ!?奇跡だよね!? 駿:はぁっ!?努力した結果だろー!! 亜紀:努力ねぇ…面接の日が決まると「この日何時に起こして!」って毎回私に起こされてたの誰? 駿:う……。 亜紀:はぁ、達也ぁ…、このバカが成長するにはまだまだかかりそうだわ…あたしゃ疲れるよ…本当に。 駿:悪かったな!!達也、まぁ何はともあれだ、俺も立派に就職できた事だし、安心しろよ! 亜紀:相変わらず調子のいいやつ…。ふふ、私も!見事3社から内定もらったからねん! 駿:俺達も晴れて4月から新社会人だ! 亜紀:駿はいきなり遅刻連発でクビになるかもねぇw 駿:ならねーよ!! 亜紀:達也、この先も…見守っててね! 駿:のあちゃんも元気にしてるからな!そっちも安心しろよ! 亜紀:そう!のあちゃんも私も、あれからずーっと体調良いんだよ!……もしかして達也のおかげ…かな? 駿:天国で神様に直談判したって事? 亜紀:だって、達也いっつも何の根拠も無しに「絶対治る!!」ってよく言ってたじゃん! 駿:あんなの、達也の優しい嘘じゃん! 亜紀:でも本当になったじゃん! 駿:いやいや…さすがにそれは…。 亜紀:もううう!うるさい!そういう事にしておけばいいでしょー!?ったくあんたは…! 駿:あーはいはい…すいませんでした! 亜紀:達也!また来年も来るからね! 駿:おう、それまでそっちで楽しく暮らしてろよ! 亜紀:じゃあ、またね! 達也:ありがとうな!頑張れよ、2人とも! 亜紀:…えっ!? 駿:い…今…達也の声……。 亜紀:…。 駿:…。 亜紀:ふふ…。 駿:あはは、達也のやつ! 亜紀:ありがとーー!!達也ー!! 駿:元気でなー!! 0: 0: 亜紀M:仲原 達也。私と駿の面倒をよく見てくれる、優しいお兄さん的な存在。 駿M:自分の事よりも、他人(ひと)の事を第一に考える、超がつくほどお人好しで、ムカつくほど大人びた奴。 亜紀M:困った時はいつも助けてくれて、悲しい事があった時はいつも寄り添ってくれて、すぐに元気にしてくれる大切な幼馴染。 駿:もしこの先、俺達に何が起きても、 亜紀:私達は絶対大丈夫。ね、達也! ~完~