台本概要
73 views
タイトル | 僕の初恋の君(男性一人読み用) |
---|---|
作者名 | くま@甘党 |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 3人用台本(男3) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
初恋シリーズの男性版です。元々あった短編台本に肉付けした台本になります。わかりやすくセリフを役で分けてありますが、全て一人で読む台本です。元の短編台本には①~⑩の番号を振ってあります。 73 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
亮介 | 男 | 12 | |
亮介M | 男 | 37 | |
ゆま | 男 | 9 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
僕の初恋の君
0:
①:夜になると 君の事を思い出す
①:バイト中の君は いつも明るくて いつも元気だ
①:だけどあの日 夜の公園で
①:泣いていた君を見つけてから
①:今夜は大丈夫かなって
①:心配してしまう
①:君は今、笑っていますか?
①:僕の初恋の君は
①:居酒屋でアルバイトをしていた
0:
亮介:「はぁー、お腹空いたー…けど金欠だしなぁ…カップ麺で済ますかぁ。」
亮介M:僕は柳 亮介。
亮介M:社会人になって2年、理想とは程遠い世界でがむしゃらに働いてる。
亮介M:半年前、仕事で嫌な事があり、たまたま通りがかった居酒屋にヤケ酒を飲みに入った。
亮介M:そこには、元気が取り柄です!と言わんばかりの女の子が働いていて、ネームには「ゆま」と書いてあった。
亮介M:店は店主のおじさんと、いつも笑顔が耐えない看板娘であるゆまの2人で営業している。
亮介M:初めて店に行った日から、ゆまは僕によく話し掛けてくれた。歳も近くて、共通の趣味も多くて、すぐに仲良くなれた。
亮介:「でもなぁー…ゆまに会いたいしなぁ…うん、決めた!金はなんとかするとして、明日は店に行こう!」
亮介M:僕は学生時代から女子とあまり交流がなく、楽しい会話をしたり、名前で呼び合うなんて初めての事だった。あっという間にゆまに夢中になった。
亮介M:これが僕の初恋だった。
0:次の日
亮介:「よし、時間ピッタリ仕事終了!!お先に失礼しまーす!……さぁて、行きますかーー!」
亮介M:いつも以上に張り切って仕事を済ませ、予定通り居酒屋に来れた。
ゆま:「あ、亮介!いらっしゃーい!」
亮介M:いつもの笑顔で出迎えるゆま。
亮介M:さすが看板娘。可愛くて愛嬌もあって、ゆま目当ての常連が、たくさん居るのも納得だ。
亮介M:仕事の愚痴を聞いてもらったり、ゲームやアニメの話をしたり、この時間がとても楽しく、とても心地良い。
亮介M:どんどん酒が進み、気付いたら僕は寝てしまっていた。
亮介M:おじさんに起こされ、ゆまが居ない事に気付く。
亮介:「あれ…ゆまは?」
亮介M:僕が寝ている間に店も落ち着いた為、先に上がったと言われた。
亮介M:僕は寝てしまった事を後悔しながら帰路についた。
亮介:「はぁーぁ、あんなに楽しかったのに…まさか寝るなんてなぁ…」
亮介M:とぼとぼと歩いていると、家と居酒屋の間にある公園に着いた。
亮介M:この公園を突っ切ると、家までの近道になる為、よく通っていた。
亮介:「え…あれって…」
亮介M:公園の入口から、ブランコに誰かが座っているのが見えた。
亮介M:目を凝らすと、それはゆまだった。
亮介M:普通ならすぐに近付いて話しかけるところだけど、僕はただ立ちすくんでいた…。
亮介M:ゆまが泣いている。
亮介M:僕はどうするべきか考えた。
亮介M:今すぐ行って、話しを聞いて慰めるべきか。
亮介M:いや…でも泣いてる姿なんて、見られたくないんじゃないか…。
亮介M:そんな事を考えていると、気付いたらゆまは居なくなっていた。
亮介:「あれ……?」
亮介M:まだ揺れているブランコ。
亮介M:だけどゆまの姿は、どこにも確認できなかった。
0:数日後
ゆま:「いらっしゃい!」
亮介M:店に行くと、ゆまはいつもの笑顔で出迎える。
亮介M:あの日、公園で泣いていた時の事を聞こうかと思ったが、他のお客さんとも笑いながら話しているゆまを見て、
亮介M:今はまだ、自分の胸に閉まっておこうと決めた。
0:
②:今日も、君の笑顔に癒された
②:美味しそうな料理を運ぶ君
②:両手でたくさんの飲み物を運ぶ君
②:どれだけお店が混んでいても
②:お客さんが来ると元気に挨拶している君
②:僕の初恋の君は
②:太陽のような存在だった
0:
亮介M:その後僕は給料日が来るまで、店に来れなかった。
亮介M:ちゃんと貯金しておけば良かったのに、ただでさえ少ない給料を、飲み食いに使ってしまうバカな自分に嫌気がさす。
亮介M:ともあれ、やっと手元にお金ができ店に向かった。
亮介M:しかしそこには、ゆまの姿は無かった。
亮介M:おじさんは2人分の仕事を全て1人でこなしていて忙しそう。
亮介M:他にも数組お客さんが入っていて、ゆっくり話す時間も無さそうだ。
亮介M:僕は黙って酒を飲む。
亮介M:きっとおじさんも、ゆまが居ないことを聞きたそうにしている僕に気付いている。
亮介M:だけど「悪いね」としか言わない。
亮介:「今日は…会えなかったな。」
亮介M:ゆまが居ない事で酒もあまり進まず、帰る事にした。
亮介M:次に来たら、会えるだろうと思いながら。
0:
③:不安がこみあげる
③:あれから2週間
③:いつもの活気がないお店にも
③:もう慣れてしまっていた
③:聞けば「ちょっと休んでるだけだから」と
③:理由を教えてくれない店主
③:僕の初恋の君は
③:突然 僕の前から姿を消した
0:
亮介M:いつの日か 、ゆまが泣いていた夜の事をずっと考えている。
亮介M:やっぱり…何かあったんだ…。
亮介M:あの時、どうして自分はゆまの元へ行き、話しを聞かなかったのだろう…。
亮介M:もし、何か力になれる事があったら、ゆまが居なくなる事も無かったんじゃないか…。
亮介M:何もできなかった自分に後悔しながら、今日も眠りについた
0:
④:雨上がりの虹のように
④:今このお店は輝いている
④:そう 君が帰ってきた
④:雲が晴れて 太陽が出てきたように
④:明るさと 賑やかさが戻ってきた
④:だけど…
④:僕の初恋の君は
④:どこか違う この違和感は…一体
0:
亮介M:仕事を終え、今日も居ないよなと思いながら店に行くと、ドアの向こうからあの元気な声が聞こえた。
亮介:「…っ!…ゆまの声だ!」
亮介M:僕は勢いよくドアを開けて中を見た。
亮介M:するとゆまが僕に気付き、「いらっしゃーーい!!」と満面の笑みで出迎えてくれた。
亮介M:嬉しかった…。
亮介M:またゆまに会えて、本当に嬉しかった。
亮介M:正直、もう会えないんじゃないかと思っていた僕は、思わず言葉を詰まらせた。
ゆま:「ほら、早く入りなよ!」
亮介:「あ、あぁ…うん!」
亮介M:ゆまが居るだけで、ここは別世界の様に眩しい。
亮介M:おじさんもまた以前のお店の雰囲気に戻って、安心しているみたいだ
亮介M:だけど、僕はすぐに気付いた。
亮介M:今、笑って接客しているゆまが、
亮介M:以前のゆまではないことが…。
亮介M:この日は客足の引きも早く、あっという間に僕だけになった。
亮介M:おじさんが、ゆまにもう上がるように言った。
亮介M:そのタイミングで、僕も会計を済ませた。
亮介M:そして 帰ろうとしたゆまを呼び止めた。
0:
⑤:「君に伝えたい事がある」
⑤:何があったかは知らないけど
⑤:君が今 普通ではない事が
⑤:痛いくらいに伝わってくる
⑤:「無理しないで」
⑤:ただ君に、また笑ってほしくて
⑤:笑ってほしかったのに……
⑤:僕の初恋の君は
⑤:初めて 僕の前で泣いた
0:
亮介M:僕は、心の底から笑っているゆまが好きだった。
亮介M:どれだけ嫌な事があっても、ゆまの笑顔を見ると心が救われていた。
亮介M:だけど……。
亮介M:今のゆまの笑顔を見ると、涙が出そうになる…。
0:
⑥:いつかの公園で
⑥:初めて2人きりになった
⑥:本当ならドキドキして
⑥:照れながら話したりすると思っていた
⑥:だけど 2人の目線は
⑥:別々の方向を向いている
⑥:「ほ…星が綺麗だね」
⑥:曇り空の下で バカな事を言った
⑥:僕の初恋の君は
⑥:クスッと笑ったが 切なそうな顔をしていた
0:
亮介M:2人ともブランコに乗り適当にこぐ。
亮介M:会話は何も無い。
亮介M:僕は、ゆまが話すのを待っていた。
亮介M:僕が店の前で言った、「無理しないで」という言葉…。
亮介M:伝えたかった事は、それが全てだったからだ。
ゆま:「あのね、、」
亮介M:ブランコをこぐのをやめ、足を着いたと同時に、ゆまが話し始めた。
ゆま:「前にも、ここで泣いてた事があるんだ…」
亮介M:僕はすぐに思い出した。
ゆま:「その時はね、お母さんが倒れたって連絡がきて、お店から病院に向かったの。亮介、寝ちゃってた日かな」
ゆま:「でね、病気だったんだ、お母さん。もう長くないって診断されてさ、私どうしたらいいかわからなくて…。」
亮介M:ゆまの声が、だんだんと震え始めたのがわかる。
ゆま:「そしたらね、この前、本当に……」
0:
⑦:失ったものは もう元には戻らない
⑦:それがどれだけ 強い願いでも…
⑦:「母が病気で亡くなった」
⑦:君は涙目で 声を震わせて言った
⑦:僕は…何も言葉が出なかった
⑦:なんて言えばいいか
⑦:全くわからなかった
⑦:僕の初恋の君は
⑦:想像もできないくらい
⑦:重たいものを背負っていた
0:
亮介M:ゆまの話しがそこで止まり、しばらくまた沈黙が続いた…。
亮介M:僕は、未だに言葉が出てこなかった。
亮介M:すると突然、ゆまが立ち上がった。
0:
⑧:「私、強くなるって決めたんだ!」
⑧:「だから、君も笑って?」
⑧:「また前みたいに、お店でワイワイ騒ごうよ!」
⑧:僕の初恋の君は
⑧:精一杯の笑顔で 僕に言った
⑧:また、無理をして…
0:
亮介M:ゆまが笑うと、僕も笑っていて、
亮介M:僕が笑うと、ゆまも笑っていた。
亮介M:あの楽しかった時間が、夢だったように思えてきた。
亮介M:このまま、無理に作った笑顔のゆまを見続けるなんて…僕には無理だ。
亮介M:僕も立ち上がり、ゆまの目の前に立つ。
0:
⑨:「僕にも、半分背負(せお)わせて。」
⑨:突然の言葉に君は目をまんまるくして
⑨:僕をじっと見つめた
⑨:「僕にも、君の背負ってるもの、半分背負わせて。僕は君に救われてきた。だから今度は、僕が君を救いたい。この先、ずっと。」
⑨:僕の初恋の君は
⑨:目をうるわせながら
⑨:笑って頷いてくれた
0:
ゆま:「…嬉しい。」
亮介M:ゆまは一言、そう呟いた。
亮介:「もう我慢しなくていい、辛い時は泣いていい、僕が一緒に居るから。」
亮介M:僕の言葉を聞いたゆまは、その場に泣き崩れた。
亮介:
亮介M:後に聞いた話しだが、ゆまが店に来なかった間、葬儀や家の事、親戚の訪問等があり、忙しかったせいで、その間ゆまは1度も泣かなかったそうだ。
亮介M:「明るいのが取り柄だから」と、無理に強がっていたとゆまは言った。
亮介M:きっと今、初めて思いっきり泣けたんだろう…。
亮介M:ずっと我慢をして、ずっと強がっていたゆまは、
亮介M:やっと自分に素直になれた瞬間だったんだ。
亮介M:これからは、僕がゆまを守る。
亮介M:ゆまの笑顔を、一生、守っていく。
0:
⑩:僕の初恋の君は
⑩:太陽のような存在
⑩:周りを明るく照らし
⑩:その暖かい光に包まれると
⑩:みんな幸せな気持ちになる
⑩:僕の初恋の君は
⑩:愛する僕の奥さん
僕の初恋の君
0:
①:夜になると 君の事を思い出す
①:バイト中の君は いつも明るくて いつも元気だ
①:だけどあの日 夜の公園で
①:泣いていた君を見つけてから
①:今夜は大丈夫かなって
①:心配してしまう
①:君は今、笑っていますか?
①:僕の初恋の君は
①:居酒屋でアルバイトをしていた
0:
亮介:「はぁー、お腹空いたー…けど金欠だしなぁ…カップ麺で済ますかぁ。」
亮介M:僕は柳 亮介。
亮介M:社会人になって2年、理想とは程遠い世界でがむしゃらに働いてる。
亮介M:半年前、仕事で嫌な事があり、たまたま通りがかった居酒屋にヤケ酒を飲みに入った。
亮介M:そこには、元気が取り柄です!と言わんばかりの女の子が働いていて、ネームには「ゆま」と書いてあった。
亮介M:店は店主のおじさんと、いつも笑顔が耐えない看板娘であるゆまの2人で営業している。
亮介M:初めて店に行った日から、ゆまは僕によく話し掛けてくれた。歳も近くて、共通の趣味も多くて、すぐに仲良くなれた。
亮介:「でもなぁー…ゆまに会いたいしなぁ…うん、決めた!金はなんとかするとして、明日は店に行こう!」
亮介M:僕は学生時代から女子とあまり交流がなく、楽しい会話をしたり、名前で呼び合うなんて初めての事だった。あっという間にゆまに夢中になった。
亮介M:これが僕の初恋だった。
0:次の日
亮介:「よし、時間ピッタリ仕事終了!!お先に失礼しまーす!……さぁて、行きますかーー!」
亮介M:いつも以上に張り切って仕事を済ませ、予定通り居酒屋に来れた。
ゆま:「あ、亮介!いらっしゃーい!」
亮介M:いつもの笑顔で出迎えるゆま。
亮介M:さすが看板娘。可愛くて愛嬌もあって、ゆま目当ての常連が、たくさん居るのも納得だ。
亮介M:仕事の愚痴を聞いてもらったり、ゲームやアニメの話をしたり、この時間がとても楽しく、とても心地良い。
亮介M:どんどん酒が進み、気付いたら僕は寝てしまっていた。
亮介M:おじさんに起こされ、ゆまが居ない事に気付く。
亮介:「あれ…ゆまは?」
亮介M:僕が寝ている間に店も落ち着いた為、先に上がったと言われた。
亮介M:僕は寝てしまった事を後悔しながら帰路についた。
亮介:「はぁーぁ、あんなに楽しかったのに…まさか寝るなんてなぁ…」
亮介M:とぼとぼと歩いていると、家と居酒屋の間にある公園に着いた。
亮介M:この公園を突っ切ると、家までの近道になる為、よく通っていた。
亮介:「え…あれって…」
亮介M:公園の入口から、ブランコに誰かが座っているのが見えた。
亮介M:目を凝らすと、それはゆまだった。
亮介M:普通ならすぐに近付いて話しかけるところだけど、僕はただ立ちすくんでいた…。
亮介M:ゆまが泣いている。
亮介M:僕はどうするべきか考えた。
亮介M:今すぐ行って、話しを聞いて慰めるべきか。
亮介M:いや…でも泣いてる姿なんて、見られたくないんじゃないか…。
亮介M:そんな事を考えていると、気付いたらゆまは居なくなっていた。
亮介:「あれ……?」
亮介M:まだ揺れているブランコ。
亮介M:だけどゆまの姿は、どこにも確認できなかった。
0:数日後
ゆま:「いらっしゃい!」
亮介M:店に行くと、ゆまはいつもの笑顔で出迎える。
亮介M:あの日、公園で泣いていた時の事を聞こうかと思ったが、他のお客さんとも笑いながら話しているゆまを見て、
亮介M:今はまだ、自分の胸に閉まっておこうと決めた。
0:
②:今日も、君の笑顔に癒された
②:美味しそうな料理を運ぶ君
②:両手でたくさんの飲み物を運ぶ君
②:どれだけお店が混んでいても
②:お客さんが来ると元気に挨拶している君
②:僕の初恋の君は
②:太陽のような存在だった
0:
亮介M:その後僕は給料日が来るまで、店に来れなかった。
亮介M:ちゃんと貯金しておけば良かったのに、ただでさえ少ない給料を、飲み食いに使ってしまうバカな自分に嫌気がさす。
亮介M:ともあれ、やっと手元にお金ができ店に向かった。
亮介M:しかしそこには、ゆまの姿は無かった。
亮介M:おじさんは2人分の仕事を全て1人でこなしていて忙しそう。
亮介M:他にも数組お客さんが入っていて、ゆっくり話す時間も無さそうだ。
亮介M:僕は黙って酒を飲む。
亮介M:きっとおじさんも、ゆまが居ないことを聞きたそうにしている僕に気付いている。
亮介M:だけど「悪いね」としか言わない。
亮介:「今日は…会えなかったな。」
亮介M:ゆまが居ない事で酒もあまり進まず、帰る事にした。
亮介M:次に来たら、会えるだろうと思いながら。
0:
③:不安がこみあげる
③:あれから2週間
③:いつもの活気がないお店にも
③:もう慣れてしまっていた
③:聞けば「ちょっと休んでるだけだから」と
③:理由を教えてくれない店主
③:僕の初恋の君は
③:突然 僕の前から姿を消した
0:
亮介M:いつの日か 、ゆまが泣いていた夜の事をずっと考えている。
亮介M:やっぱり…何かあったんだ…。
亮介M:あの時、どうして自分はゆまの元へ行き、話しを聞かなかったのだろう…。
亮介M:もし、何か力になれる事があったら、ゆまが居なくなる事も無かったんじゃないか…。
亮介M:何もできなかった自分に後悔しながら、今日も眠りについた
0:
④:雨上がりの虹のように
④:今このお店は輝いている
④:そう 君が帰ってきた
④:雲が晴れて 太陽が出てきたように
④:明るさと 賑やかさが戻ってきた
④:だけど…
④:僕の初恋の君は
④:どこか違う この違和感は…一体
0:
亮介M:仕事を終え、今日も居ないよなと思いながら店に行くと、ドアの向こうからあの元気な声が聞こえた。
亮介:「…っ!…ゆまの声だ!」
亮介M:僕は勢いよくドアを開けて中を見た。
亮介M:するとゆまが僕に気付き、「いらっしゃーーい!!」と満面の笑みで出迎えてくれた。
亮介M:嬉しかった…。
亮介M:またゆまに会えて、本当に嬉しかった。
亮介M:正直、もう会えないんじゃないかと思っていた僕は、思わず言葉を詰まらせた。
ゆま:「ほら、早く入りなよ!」
亮介:「あ、あぁ…うん!」
亮介M:ゆまが居るだけで、ここは別世界の様に眩しい。
亮介M:おじさんもまた以前のお店の雰囲気に戻って、安心しているみたいだ
亮介M:だけど、僕はすぐに気付いた。
亮介M:今、笑って接客しているゆまが、
亮介M:以前のゆまではないことが…。
亮介M:この日は客足の引きも早く、あっという間に僕だけになった。
亮介M:おじさんが、ゆまにもう上がるように言った。
亮介M:そのタイミングで、僕も会計を済ませた。
亮介M:そして 帰ろうとしたゆまを呼び止めた。
0:
⑤:「君に伝えたい事がある」
⑤:何があったかは知らないけど
⑤:君が今 普通ではない事が
⑤:痛いくらいに伝わってくる
⑤:「無理しないで」
⑤:ただ君に、また笑ってほしくて
⑤:笑ってほしかったのに……
⑤:僕の初恋の君は
⑤:初めて 僕の前で泣いた
0:
亮介M:僕は、心の底から笑っているゆまが好きだった。
亮介M:どれだけ嫌な事があっても、ゆまの笑顔を見ると心が救われていた。
亮介M:だけど……。
亮介M:今のゆまの笑顔を見ると、涙が出そうになる…。
0:
⑥:いつかの公園で
⑥:初めて2人きりになった
⑥:本当ならドキドキして
⑥:照れながら話したりすると思っていた
⑥:だけど 2人の目線は
⑥:別々の方向を向いている
⑥:「ほ…星が綺麗だね」
⑥:曇り空の下で バカな事を言った
⑥:僕の初恋の君は
⑥:クスッと笑ったが 切なそうな顔をしていた
0:
亮介M:2人ともブランコに乗り適当にこぐ。
亮介M:会話は何も無い。
亮介M:僕は、ゆまが話すのを待っていた。
亮介M:僕が店の前で言った、「無理しないで」という言葉…。
亮介M:伝えたかった事は、それが全てだったからだ。
ゆま:「あのね、、」
亮介M:ブランコをこぐのをやめ、足を着いたと同時に、ゆまが話し始めた。
ゆま:「前にも、ここで泣いてた事があるんだ…」
亮介M:僕はすぐに思い出した。
ゆま:「その時はね、お母さんが倒れたって連絡がきて、お店から病院に向かったの。亮介、寝ちゃってた日かな」
ゆま:「でね、病気だったんだ、お母さん。もう長くないって診断されてさ、私どうしたらいいかわからなくて…。」
亮介M:ゆまの声が、だんだんと震え始めたのがわかる。
ゆま:「そしたらね、この前、本当に……」
0:
⑦:失ったものは もう元には戻らない
⑦:それがどれだけ 強い願いでも…
⑦:「母が病気で亡くなった」
⑦:君は涙目で 声を震わせて言った
⑦:僕は…何も言葉が出なかった
⑦:なんて言えばいいか
⑦:全くわからなかった
⑦:僕の初恋の君は
⑦:想像もできないくらい
⑦:重たいものを背負っていた
0:
亮介M:ゆまの話しがそこで止まり、しばらくまた沈黙が続いた…。
亮介M:僕は、未だに言葉が出てこなかった。
亮介M:すると突然、ゆまが立ち上がった。
0:
⑧:「私、強くなるって決めたんだ!」
⑧:「だから、君も笑って?」
⑧:「また前みたいに、お店でワイワイ騒ごうよ!」
⑧:僕の初恋の君は
⑧:精一杯の笑顔で 僕に言った
⑧:また、無理をして…
0:
亮介M:ゆまが笑うと、僕も笑っていて、
亮介M:僕が笑うと、ゆまも笑っていた。
亮介M:あの楽しかった時間が、夢だったように思えてきた。
亮介M:このまま、無理に作った笑顔のゆまを見続けるなんて…僕には無理だ。
亮介M:僕も立ち上がり、ゆまの目の前に立つ。
0:
⑨:「僕にも、半分背負(せお)わせて。」
⑨:突然の言葉に君は目をまんまるくして
⑨:僕をじっと見つめた
⑨:「僕にも、君の背負ってるもの、半分背負わせて。僕は君に救われてきた。だから今度は、僕が君を救いたい。この先、ずっと。」
⑨:僕の初恋の君は
⑨:目をうるわせながら
⑨:笑って頷いてくれた
0:
ゆま:「…嬉しい。」
亮介M:ゆまは一言、そう呟いた。
亮介:「もう我慢しなくていい、辛い時は泣いていい、僕が一緒に居るから。」
亮介M:僕の言葉を聞いたゆまは、その場に泣き崩れた。
亮介:
亮介M:後に聞いた話しだが、ゆまが店に来なかった間、葬儀や家の事、親戚の訪問等があり、忙しかったせいで、その間ゆまは1度も泣かなかったそうだ。
亮介M:「明るいのが取り柄だから」と、無理に強がっていたとゆまは言った。
亮介M:きっと今、初めて思いっきり泣けたんだろう…。
亮介M:ずっと我慢をして、ずっと強がっていたゆまは、
亮介M:やっと自分に素直になれた瞬間だったんだ。
亮介M:これからは、僕がゆまを守る。
亮介M:ゆまの笑顔を、一生、守っていく。
0:
⑩:僕の初恋の君は
⑩:太陽のような存在
⑩:周りを明るく照らし
⑩:その暖かい光に包まれると
⑩:みんな幸せな気持ちになる
⑩:僕の初恋の君は
⑩:愛する僕の奥さん