台本概要
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タイトル | 私の初恋の人(女性一人読み用) |
---|---|
作者名 | くま@甘党 |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 4人用台本(女4) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
初恋シリーズの女性版です。元々あった短編台本に肉付けした台本になります。わかりやすくセリフを役で分けてありますが、全て一人で読む台本です。元の短編台本には①~⑩の番号を振ってあります。
95 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
彩希 | 女 | 9 | |
彩希M | 女 | 29 | |
お母さん | 女 | - | 読まなくて大丈夫です |
店員 | 女 | 2 | 読まなくて大丈夫です |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
私の初恋の人
0:
①:「あ…今日も来てくれた」
①:私の働くカフェに時々来てくれる
①:ちょっと年上風なお兄さん
①:注文はいつも
①:コーヒーとガトーショコラ
①:私の初恋の人は
①:ちょっとクールで大人っぽい人
0:
彩希:「(背伸び)んーーーっ!今日も良い天気だねぇー!さてさて、バイト行きますか!」
彩希M:私は永野彩希。
彩希M:華の女子大生!なんて浮かれてる訳にも行かなくなった、就活に追われる4回生。
彩希M:まだ内定が決まらず、ちょっと焦っている。
彩希M:だけど私のバイト先のカフェ、人手不足でなかなか休めない。
彩希M:それともう1つ、休みたくない理由がある。
店員:(永野さん、オーダー入ったよ、またいつものね!)
彩希:「あ、はーい!…ふふ、今日も同じオーダーだ。あの人…甘党なのかな?それともチョコ中毒とか…?」
彩希M:私の休みたくない理由。
彩希M:それは、ここに来る常連さんの中に、かっこいいあの人が居るから。
彩希M:キッチンにオーダーが流れてくるとすぐわかる。
0:ブレンドコーヒー、ガトーショコラ
彩希M:初めて来店した時から今まで、これ以外の注文はした事がないそうだ。他のスタッフには割と有名なお客さん。
彩希M:名前も声も知らないけど、つい見とれてしまうくらい、かっこいい人。
彩希M:これが、私の初恋だった。
0:
②:「あれ…?髪切ったのかな?」
②:彼は短髪がよく似合う
②:おまたせしましたの一言に
②:ちょっと頷くくらいの反応だけど
②:それだけでも私は嬉しい
②:私の初恋の人は
②:今日もコーヒーとガトーショコラ
0:
店員:(永野さん、悪いけど今日はもう上がっていいよ!)
彩希:「あ、はーい、わかりました!お先に失礼しまーす!」
彩希M:たまにある事だが、お客さんの入り(いり)が悪い日は、早上がりになる。
彩希:「ふぅ、帰って履歴書でも書こうかな。……あの人、何の仕事してるんだろ?
彩希:…一緒に働けたら1日中スーツ姿見てられるんだ……。
彩希:コーヒーとガトーショコラです。少し休憩したらどうですか?なーんて、、あぁぁ、ダメダメ、色々と妄想しちゃう///」
彩希M:私は恥ずかしいくらいに…
彩希M:いつの間にかあの人に夢中だ…
0:
③:「声を…聴いてみたい!」
③:注文はタッチパネルだから
③:まだ1度も聴いた事がない彼の声
③:どうやったら聴けるかな…?
③:「ガトーショコラ、お口に合いましたか?」
③:会計の時に思い切って聞いたけど
③:ちょっと驚いた顔をした後
③:やっぱり頷くだけで帰っていった…
③:私の初恋の人は
③:無口だけど、でもかっこいい!
0:
彩希:「うーーーーん、どうしたら声聴けるかなー?
彩希:今日のは惜しかった気がする!もう少し質問変えないと…。絶対に返答をもらう質問……。」
彩希M:色々と考えているうちに家に着いた。
母:(あんた、ちゃんと就活してるの?バイトなんてしてる場合じゃないんじゃないの?)
彩希:「うるさいな、ちゃんとやってるよ!!」
彩希M:私のお母さんは、超が付くくらいの真面目人間。
彩希M:何事も計画的で、効率良く、損得ばかりを考えている。
彩希M:最近は家に居ると、いちいち口うるさく小言を言ってくるお母さんに、
彩希M:私はついイライラしてしまう。
彩希M:そして次の日。
彩希M:そのイライラと、彼への質問を考えるという集中力の無さが原因で、思わぬ失態を犯してしまう。
0:
④:「申し訳ありませんでした!」
④:やってしまった……
④:彼の目の前で、他のお客様のオーダーを間違えてしまった
④:うぅ…こんな所 見られたくなかった…
④:幻滅してないかな…?
④:私の初恋の人は
④:それでも無口で、頷いて帰っていく
0:
彩希M:うぅん…絶対見てたよね……。
彩希M:はぁ……まぬけな女って思われたかなぁ…。
彩希M:余計な事ばっかり考えてて、おつりは渡し忘れるし…オーダーも間違えるし…。
彩希M:今日はズタボロだったな…。
彩希M:あーーーもう!!!やめやめ!!
彩希M:次に会えた時は、何の仕事してるか聞くの!
彩希M:そしたらきっと答えてくれる!
彩希M:声が聴ける!! …よし。
彩希M:今日、自分のミスのせいで聞けなかった質問を、
彩希M:数日後には彼にすると決めていたのに、
彩希M:人生とは、思い通りにはいかないものだ…。
0:
⑤:「あの人……もう来ないのかな…」
⑤:あれから1ヶ月半
⑤:1度も彼は店に来なかった
⑤:もしかして…私のミスが原因で…?
⑤:あーーそれとも事故とか…?
⑤:うぅぅぅ 頭がグルグルするー
⑤:私の初恋の人は
⑤:なんの前触れもなく
⑤:何処かへ行ってしまった…
0:
彩希M:どうして来ないんだろ……。
彩希M:あれからもう2ヶ月経った。
彩希M:学校に行くことも少なくなり、バイトに入れる日も増えた。
彩希M:今日こそは会えるかなと、出勤の日になる度に再会を期待していたが…彼が現れることは無かった。
彩希M:そろそろ期待も薄れてきてしまった…。
0:
⑥:「いらっしゃいませっ!!」
⑥:とうとう3ヶ月が経ち、もう諦めかけていた
⑥:でも今日、彼がお店にやってきた!
⑥:髪も伸びてて、ちょっと髭も生えてる…
⑥:「あ、あの、、お久しぶりですね」
⑥:「…あぁ、ちょっと出張に行ってて」
⑥:私の初恋の人は
⑥:私の問いに、遂に言葉で返してくれた
0:
彩希M:その日の私は、誰が見ても異常な程ニヤニヤしていた。
彩希M:他のスタッフからも、何か良いことあった?と聞かれるくらい、顔に出てしまっていた。
彩希M:でもそれは仕方のない事。
彩希M:だって、だって…、やっと彼と再会できたんだ!
彩希M:しかも声まで聴けた……!
彩希M:私は一生分の運を使い果たしたかのように思えた。
彩希M:彼の声……やっぱりかっこよかった……。
彩希M:どうしよう…、次はなんて話し掛けよう…。
彩希M:あんな声で応えられたら…私どうなっちゃうんだろう…。
彩希M:数日後、また彼が来てくれた日。
彩希M:結局私は あれから声を掛けられずにいた。
彩希M:そして何故か 声を聞く前以上に緊張していた。
彩希M:意識し過ぎていた…。
0:
⑦:「あの、すいません。」
⑦:突然彼に呼ばれた日、静かな店内に
⑦:私の裏返った声が響いた
⑦:恥ずかし過ぎて帰りたかった…
⑦:「あ、やっぱりいいです」
⑦:驚いた彼は ちょっと焦りながらそう言った
⑦:私の初恋の人は
⑦:それから私に話し掛ける事は無かった
0:
彩希M:び……びっくりした……!
彩希M:ホールを回っていると、突然彼から声を掛けてくるなんて…。
彩希M:あんなの反則だよ……!
彩希M:心の準備もできていなかったし…恥ずかしいいい……!!
彩希M:私が変な声出したせいで、あの人すっごい驚いてたな…。
彩希M:でも、向こうから話し掛けてきてくれたって事は…それだけ心を開いてくれたって事だよね?
彩希M:私の存在を認識してるって事だよね…?
彩希:「……ぃよしっ!これからはどんどん話し掛けて 慣れていかなきゃ!!」
彩希M:そんな意気込みも虚しく、彼の異変に気付くのに時間は掛からなかった。
0:
⑧:「あの、おかわりも…良かったら…」
⑧:あれからも彼は通ってくれている
⑧:最近は週に2回か3回来てくれる時も
⑧:けど、彼は言葉で返す事は無く
⑧:だんだん寂しい気持ちが溢れてきた
⑧:私の初恋の人は
⑧:ぎこちなく話し掛ける私を
⑧:疎ましく思ってる…?
0:
彩希M:また…頷くだけになっちゃった……。
彩希M:どうして?私…嫌われた…?
彩希M:思い当たる節はある…。
彩希M:オーダーを間違えて、お客さんに謝ってるとこを見られたから?
彩希M:それともあの時変な声を出しちゃったから…?
彩希M:もう…声…聴けないのかな。
彩希M:彼の事を考えていると複雑な気持ちになり、就活の面接に行ってもうまく話せなかった。
彩希M:このままじゃ…受かるものも受からない。
彩希M:うん…、切り替えよう!
彩希M:私は今、就活生なんだ。
彩希M:かっこ悪いとこを見られちゃったなら、ちゃんと内定をもらって次はかっこいいとこ見せないと!
彩希M:私は、私を振った彼氏を見返してやる!という妄想をし、
彩希M:彼を振り向かせる!という体(てい)で気合いを入れて就活に臨んだ。
彩希M:それが功を奏したのか、見事に作戦は成功した。
0:
⑨:「私、今月で辞める事になりました。」
⑨:就活の末、企業の内定をもらった
⑨:わざと彼に聞こえるように
⑨:他のアルバイトの子に言った
⑨:「これ。良かったら…。」
⑨:会計の時、いつもみたいに頷いて帰ると思ったら、メモを渡してきた彼。
⑨:夢かと思った…
⑨:私の初恋の人は
⑨:連絡先を渡してきてくれた
0:
彩希:っっよし!!!
彩希M:辞める事になったって言った時、彼がこっちを見たのに気付いた。
彩希M:「聞こえたな」という確信はあったが…まさか連絡先を渡してくるとは…!
彩希M:嬉し過ぎる誤算だった。
彩希:「私は初めてあなたがお店に来た日から、ずっと会えるのを楽しみに働いていました。私の名前は永野彩希です。私がバイトを辞めた後も、あなたに会いたいです。」
彩希M:この最初のメッセージで彼との距離は一気に縮まり、私は見事ゴールインした。
彩希M:後から聞いた話だが、実は彼の方が先に私に気付いていたそう。
彩希M:私が初めて彼を見た日は、彼にとっては2度目の来店。
彩希M:最初に来店した時、キッチンでガトーショコラを作っていた私を見て気になっていたらしい。
彩希M:それから来る度に、私が居る居ない関係無しにガトーショコラを注文していたという。
彩希M:「気になるあの子の手料理を食べている」そんな妄想をしていたらしい。
彩希M:お店で話せなかったのは、ナンパしてるみたいで恥ずかしかった。
彩希M:嫌がられたらどうしようと不安になって、なかなか声を出せなかったそう。
彩希M:私を呼び止めて、声が裏返ったあの日、
彩希M:恥ずかし過ぎて帰りたいって思ったのは、どうやらお互い同じだったみたい。
0:
⑩:私の初恋の人は
⑩:ちょっとクールで大人っぽい人
⑩:私の気持ちに気付きながら
⑩:恥ずかしくて奥手になっていた
⑩:可愛いところがある 無口な人
⑩:私の初恋の人は
⑩:私の愛する旦那さん
⑩:今でもこの頃の話をすると
⑩:恥ずかしがる照れ屋な旦那さん
私の初恋の人
0:
①:「あ…今日も来てくれた」
①:私の働くカフェに時々来てくれる
①:ちょっと年上風なお兄さん
①:注文はいつも
①:コーヒーとガトーショコラ
①:私の初恋の人は
①:ちょっとクールで大人っぽい人
0:
彩希:「(背伸び)んーーーっ!今日も良い天気だねぇー!さてさて、バイト行きますか!」
彩希M:私は永野彩希。
彩希M:華の女子大生!なんて浮かれてる訳にも行かなくなった、就活に追われる4回生。
彩希M:まだ内定が決まらず、ちょっと焦っている。
彩希M:だけど私のバイト先のカフェ、人手不足でなかなか休めない。
彩希M:それともう1つ、休みたくない理由がある。
店員:(永野さん、オーダー入ったよ、またいつものね!)
彩希:「あ、はーい!…ふふ、今日も同じオーダーだ。あの人…甘党なのかな?それともチョコ中毒とか…?」
彩希M:私の休みたくない理由。
彩希M:それは、ここに来る常連さんの中に、かっこいいあの人が居るから。
彩希M:キッチンにオーダーが流れてくるとすぐわかる。
0:ブレンドコーヒー、ガトーショコラ
彩希M:初めて来店した時から今まで、これ以外の注文はした事がないそうだ。他のスタッフには割と有名なお客さん。
彩希M:名前も声も知らないけど、つい見とれてしまうくらい、かっこいい人。
彩希M:これが、私の初恋だった。
0:
②:「あれ…?髪切ったのかな?」
②:彼は短髪がよく似合う
②:おまたせしましたの一言に
②:ちょっと頷くくらいの反応だけど
②:それだけでも私は嬉しい
②:私の初恋の人は
②:今日もコーヒーとガトーショコラ
0:
店員:(永野さん、悪いけど今日はもう上がっていいよ!)
彩希:「あ、はーい、わかりました!お先に失礼しまーす!」
彩希M:たまにある事だが、お客さんの入り(いり)が悪い日は、早上がりになる。
彩希:「ふぅ、帰って履歴書でも書こうかな。……あの人、何の仕事してるんだろ?
彩希:…一緒に働けたら1日中スーツ姿見てられるんだ……。
彩希:コーヒーとガトーショコラです。少し休憩したらどうですか?なーんて、、あぁぁ、ダメダメ、色々と妄想しちゃう///」
彩希M:私は恥ずかしいくらいに…
彩希M:いつの間にかあの人に夢中だ…
0:
③:「声を…聴いてみたい!」
③:注文はタッチパネルだから
③:まだ1度も聴いた事がない彼の声
③:どうやったら聴けるかな…?
③:「ガトーショコラ、お口に合いましたか?」
③:会計の時に思い切って聞いたけど
③:ちょっと驚いた顔をした後
③:やっぱり頷くだけで帰っていった…
③:私の初恋の人は
③:無口だけど、でもかっこいい!
0:
彩希:「うーーーーん、どうしたら声聴けるかなー?
彩希:今日のは惜しかった気がする!もう少し質問変えないと…。絶対に返答をもらう質問……。」
彩希M:色々と考えているうちに家に着いた。
母:(あんた、ちゃんと就活してるの?バイトなんてしてる場合じゃないんじゃないの?)
彩希:「うるさいな、ちゃんとやってるよ!!」
彩希M:私のお母さんは、超が付くくらいの真面目人間。
彩希M:何事も計画的で、効率良く、損得ばかりを考えている。
彩希M:最近は家に居ると、いちいち口うるさく小言を言ってくるお母さんに、
彩希M:私はついイライラしてしまう。
彩希M:そして次の日。
彩希M:そのイライラと、彼への質問を考えるという集中力の無さが原因で、思わぬ失態を犯してしまう。
0:
④:「申し訳ありませんでした!」
④:やってしまった……
④:彼の目の前で、他のお客様のオーダーを間違えてしまった
④:うぅ…こんな所 見られたくなかった…
④:幻滅してないかな…?
④:私の初恋の人は
④:それでも無口で、頷いて帰っていく
0:
彩希M:うぅん…絶対見てたよね……。
彩希M:はぁ……まぬけな女って思われたかなぁ…。
彩希M:余計な事ばっかり考えてて、おつりは渡し忘れるし…オーダーも間違えるし…。
彩希M:今日はズタボロだったな…。
彩希M:あーーーもう!!!やめやめ!!
彩希M:次に会えた時は、何の仕事してるか聞くの!
彩希M:そしたらきっと答えてくれる!
彩希M:声が聴ける!! …よし。
彩希M:今日、自分のミスのせいで聞けなかった質問を、
彩希M:数日後には彼にすると決めていたのに、
彩希M:人生とは、思い通りにはいかないものだ…。
0:
⑤:「あの人……もう来ないのかな…」
⑤:あれから1ヶ月半
⑤:1度も彼は店に来なかった
⑤:もしかして…私のミスが原因で…?
⑤:あーーそれとも事故とか…?
⑤:うぅぅぅ 頭がグルグルするー
⑤:私の初恋の人は
⑤:なんの前触れもなく
⑤:何処かへ行ってしまった…
0:
彩希M:どうして来ないんだろ……。
彩希M:あれからもう2ヶ月経った。
彩希M:学校に行くことも少なくなり、バイトに入れる日も増えた。
彩希M:今日こそは会えるかなと、出勤の日になる度に再会を期待していたが…彼が現れることは無かった。
彩希M:そろそろ期待も薄れてきてしまった…。
0:
⑥:「いらっしゃいませっ!!」
⑥:とうとう3ヶ月が経ち、もう諦めかけていた
⑥:でも今日、彼がお店にやってきた!
⑥:髪も伸びてて、ちょっと髭も生えてる…
⑥:「あ、あの、、お久しぶりですね」
⑥:「…あぁ、ちょっと出張に行ってて」
⑥:私の初恋の人は
⑥:私の問いに、遂に言葉で返してくれた
0:
彩希M:その日の私は、誰が見ても異常な程ニヤニヤしていた。
彩希M:他のスタッフからも、何か良いことあった?と聞かれるくらい、顔に出てしまっていた。
彩希M:でもそれは仕方のない事。
彩希M:だって、だって…、やっと彼と再会できたんだ!
彩希M:しかも声まで聴けた……!
彩希M:私は一生分の運を使い果たしたかのように思えた。
彩希M:彼の声……やっぱりかっこよかった……。
彩希M:どうしよう…、次はなんて話し掛けよう…。
彩希M:あんな声で応えられたら…私どうなっちゃうんだろう…。
彩希M:数日後、また彼が来てくれた日。
彩希M:結局私は あれから声を掛けられずにいた。
彩希M:そして何故か 声を聞く前以上に緊張していた。
彩希M:意識し過ぎていた…。
0:
⑦:「あの、すいません。」
⑦:突然彼に呼ばれた日、静かな店内に
⑦:私の裏返った声が響いた
⑦:恥ずかし過ぎて帰りたかった…
⑦:「あ、やっぱりいいです」
⑦:驚いた彼は ちょっと焦りながらそう言った
⑦:私の初恋の人は
⑦:それから私に話し掛ける事は無かった
0:
彩希M:び……びっくりした……!
彩希M:ホールを回っていると、突然彼から声を掛けてくるなんて…。
彩希M:あんなの反則だよ……!
彩希M:心の準備もできていなかったし…恥ずかしいいい……!!
彩希M:私が変な声出したせいで、あの人すっごい驚いてたな…。
彩希M:でも、向こうから話し掛けてきてくれたって事は…それだけ心を開いてくれたって事だよね?
彩希M:私の存在を認識してるって事だよね…?
彩希:「……ぃよしっ!これからはどんどん話し掛けて 慣れていかなきゃ!!」
彩希M:そんな意気込みも虚しく、彼の異変に気付くのに時間は掛からなかった。
0:
⑧:「あの、おかわりも…良かったら…」
⑧:あれからも彼は通ってくれている
⑧:最近は週に2回か3回来てくれる時も
⑧:けど、彼は言葉で返す事は無く
⑧:だんだん寂しい気持ちが溢れてきた
⑧:私の初恋の人は
⑧:ぎこちなく話し掛ける私を
⑧:疎ましく思ってる…?
0:
彩希M:また…頷くだけになっちゃった……。
彩希M:どうして?私…嫌われた…?
彩希M:思い当たる節はある…。
彩希M:オーダーを間違えて、お客さんに謝ってるとこを見られたから?
彩希M:それともあの時変な声を出しちゃったから…?
彩希M:もう…声…聴けないのかな。
彩希M:彼の事を考えていると複雑な気持ちになり、就活の面接に行ってもうまく話せなかった。
彩希M:このままじゃ…受かるものも受からない。
彩希M:うん…、切り替えよう!
彩希M:私は今、就活生なんだ。
彩希M:かっこ悪いとこを見られちゃったなら、ちゃんと内定をもらって次はかっこいいとこ見せないと!
彩希M:私は、私を振った彼氏を見返してやる!という妄想をし、
彩希M:彼を振り向かせる!という体(てい)で気合いを入れて就活に臨んだ。
彩希M:それが功を奏したのか、見事に作戦は成功した。
0:
⑨:「私、今月で辞める事になりました。」
⑨:就活の末、企業の内定をもらった
⑨:わざと彼に聞こえるように
⑨:他のアルバイトの子に言った
⑨:「これ。良かったら…。」
⑨:会計の時、いつもみたいに頷いて帰ると思ったら、メモを渡してきた彼。
⑨:夢かと思った…
⑨:私の初恋の人は
⑨:連絡先を渡してきてくれた
0:
彩希:っっよし!!!
彩希M:辞める事になったって言った時、彼がこっちを見たのに気付いた。
彩希M:「聞こえたな」という確信はあったが…まさか連絡先を渡してくるとは…!
彩希M:嬉し過ぎる誤算だった。
彩希:「私は初めてあなたがお店に来た日から、ずっと会えるのを楽しみに働いていました。私の名前は永野彩希です。私がバイトを辞めた後も、あなたに会いたいです。」
彩希M:この最初のメッセージで彼との距離は一気に縮まり、私は見事ゴールインした。
彩希M:後から聞いた話だが、実は彼の方が先に私に気付いていたそう。
彩希M:私が初めて彼を見た日は、彼にとっては2度目の来店。
彩希M:最初に来店した時、キッチンでガトーショコラを作っていた私を見て気になっていたらしい。
彩希M:それから来る度に、私が居る居ない関係無しにガトーショコラを注文していたという。
彩希M:「気になるあの子の手料理を食べている」そんな妄想をしていたらしい。
彩希M:お店で話せなかったのは、ナンパしてるみたいで恥ずかしかった。
彩希M:嫌がられたらどうしようと不安になって、なかなか声を出せなかったそう。
彩希M:私を呼び止めて、声が裏返ったあの日、
彩希M:恥ずかし過ぎて帰りたいって思ったのは、どうやらお互い同じだったみたい。
0:
⑩:私の初恋の人は
⑩:ちょっとクールで大人っぽい人
⑩:私の気持ちに気付きながら
⑩:恥ずかしくて奥手になっていた
⑩:可愛いところがある 無口な人
⑩:私の初恋の人は
⑩:私の愛する旦那さん
⑩:今でもこの頃の話をすると
⑩:恥ずかしがる照れ屋な旦那さん