台本概要

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タイトル レッド・ライン
作者名 るでぃあ  (@Rdia_JPN)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(不問3)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 人類が宇宙へと進出してから数百年後の未来
コロニー”スカイ・スフィア”では
あるゲームが注目を集めていた…

カスタマイズ
ロボットアクション
シューティング
シミュレーション
オンライン
バーチャルリアリティ
​​

『CrossOver(クロス・オーバー)』


画期的なシステムと大迫力のサウンド
そして、非常に現実味のあるグラフィック
第1位のシェア率を誇るこのゲームは
スフィア間で大ブームとなった

そんな最中行われた、開発側の
ネットワークを用いた世界大会の緊急告知
優勝者に贈られる名誉と”報酬”…

人々はこのゲームによって、
陰謀が蠢く熾烈な戦いの渦へと
巻き込まれて行く事になる―――

【掲載元サイト】
https://rdiajp.wixsite.com/the-hideaway/redline

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
●アサヒ 不問 199 サウスプラントに移住してきた16歳。 宇宙飛行士を目指し勉学に励んでいたが 重要な国家資格試験に落ちてしまい、 気晴らしにクロスオーバーを始める。 失踪した両親がメカニックだった事もあり 機械イジリに多少の心得がある。 イメージカラーはレッド 一人称は「オレ」・二人称は「オマエ」
▲シノブ 不問 64 イーストプラント出身の16歳。 成績優秀で眉目秀麗。 世界模試ではある科目を除き1位の実力を持つ。 家庭環境で唯一許されているクロスオーバーを ストレス発散の捌け口にしている。 イメージカラーはブルー 一人称は「ワタシ」・二人称は「アナタ」
■イブキ 不問 148 ノースプラント出身の16歳。 アサヒのクラスメイトで謎の多い人物。 クロスオーバーの実力はトップレベル。 後方支援や全体指揮を主に担当する。 何事も一度考えてから発言する癖がある。 イメージカラーはグリーン 一人称は「ボク」・二人称は「キミ」
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:スカイ・スフィア 中央コロニー噴水前 ●アサヒ:(М)『周囲の音が掻き消えて、 ●アサヒ:辺りの景色が白んで見えた ●アサヒ:行き交う人々、噴水の流れる水、 ●アサヒ:鳥達が飛び立つ姿…それらが全て ●アサヒ:スローモーションのように感じられた』 ●アサヒ: ●アサヒ:「…嘘…だろ…」 ●アサヒ: ●アサヒ:(М)『やがて、 ●アサヒ:置き去りにされた時が動き出すと同時に、 ●アサヒ:その呟きだけが口から零れた ●アサヒ:目の前にあるのは半透明な板…もとい ●アサヒ:合格者が掲載された3Dモノリス ●アサヒ:手元の端末に表示されている番号は”ない”』 ●アサヒ: ●アサヒ:「オレが…不合格…?」 ●アサヒ: ●アサヒ:(М)『オレ、こと”アサヒ”はまるで ●アサヒ:この世の全てが終わりのような衝撃を受け、 ●アサヒ:ただその場に立ち尽くしていた―――』 ●アサヒ: 0:【場面転換】中央コロニー 交流広場 0:広場の一角 0:木漏れ日が降り注ぐ共有ベンチに座り 0:大きなため息をつくアサヒ ●アサヒ:「ハァ…何もかも我慢して、 ●アサヒ:めちゃくちゃ勉強したのになぁ… ●アサヒ:オレの”夢”への第一歩が…トホホ ●アサヒ:こうなったら思いっきり羽目を外してやるぅ ●アサヒ:甘いデザート食いまくって―――ん? ●アサヒ:”アレ”は…」 ●アサヒ: 0:広場の電子掲示板に大々的に表示される 0:スカイ・スフィアで大人気の”とあるゲーム” 0:その鮮烈なPVが流れている ●アサヒ:「”クロス・オーバー”…? ●アサヒ:へぇ~オンラインゲームか~ ●アサヒ:ゲームなんて全然してこなかったからなぁ… ●アサヒ:毎日勉強とかトレーニングとか、 ●アサヒ:機械イジリばっかだったし… ●アサヒ:この際、初体験と行きますか ●アサヒ:よ~っし!遊びまくるぞ~!!」 ●アサヒ: 0:沈んだ気持ちを跳ね除けるように 0:アサヒは叫んだ 0: 0:【場面転換】ゲームタワー ブース内 0:コロニー最大のゲームセンター 0:”最後の楽園(ラスト・エデン)” 0:昼間だというのに薄暗く、 0:どこか怪しげな雰囲気を持つ巨大な館内は 0:大勢の人で賑わっていた 0:足音はカーペットの床に消え、かわりに 0:音楽や効果音が騒々しい程鳴り響き 0:壁や天井からぶら下がるネオンが輝いている ●アサヒ:「ここが…ラストエデンかぁ~! ●アサヒ:くぅ~ワクワクするぅ~! ●アサヒ:クロス・オーバーはっと…あ! ●アサヒ:”あそこ”かな?」 0:ひときわ大きいモニターに映し出された 0:見覚えのあるタイトル 0:駆け寄ると、その下では 0:人だかりができていた ●アサヒ:「すみません!ちょっと通りま~すっ! ●アサヒ:通ります!ごめんなさい!っとと、 ●アサヒ:今誰かの足踏んだかも…ゴメンね!? ●アサヒ:ホントゴメン!ん~っしょっ ●アサヒ:…ふぅ、なんとか抜けた…あれ?」 0:謝りつつ観客の最前列へ割り込むアサヒ 0:するとプレイヤー達の顔がハッキリ見え、 0:その内の1人に見覚えがあった ●アサヒ:「”アイツ”は確か…クラスメイトの…」 0:VR機材を装着し、 0:リクライニングシートのような 0:ゲーミングチェアに座っている 0:”その人物”と目が合う ■イブキ:「…キミ、近い」 ●アサヒ:「んぇ?オレ?」 ■イブキ:「…危ないから、少し離れてて」 ●アサヒ:「あ、あぁ…悪い…」 ■イブキ:「…観たいなら、そっち」 0:画面が見やすい場所を指さす ●アサヒ:「見ても良いのか!?」 ■イブキ:「…はじまる」 ●アサヒ:「おぉ~…」 0:観客が沸き立ち、 0:大画面で激しい戦闘が始まる 0:クラスメイトが操作する多脚機体が 0:超遠距離からの狙撃で相手を破壊していく ●アサヒ:「すっげぇ~ ●アサヒ:あんな距離から一撃で潰してる? ●アサヒ:…いや…違う ●アサヒ:一撃なのは交戦中の敵だけ… ●アサヒ:他は足を狙って機動力を削いでるんだ ●アサヒ:しかも、 ●アサヒ:豆粒のような小さい敵すら見逃さない… ●アサヒ:洞察力が優れている証拠だ」 0:いつの間にか集中し、 0:真剣な目をするアサヒ 0:プレイをしているクラスメイトに 0:賞賛の声を投げかける ●アサヒ:「強いな、オマエ」 ■イブキ:「…当然」 0:最後の弾丸が、敵機体を捕らえる 0:ゲームセットと共に、 0:会場は歓声で盛り上がる ●アサヒ:「なぁ」 0:VR機材を外し、席を立つクラスメイト ■イブキ:「…なに?」 ●アサヒ:「このゲーム、長いの?」 ■イブキ:「…それなり」 ●アサヒ:「へぇ~どうりで」 ■イブキ:「…キミも?」 ●アサヒ:「オレさ、今日が初めてなんだ」 ■イブキ:「…そう」 ●アサヒ:「だからさ?どうせなら、 ●アサヒ:顔見知りに教えて貰いたいなぁ~って―――」 ■イブキ:「…顔見知り?」 ●アサヒ:「同じクラスじゃないか! ●アサヒ:クラスメイトのア・サ・ヒ! ●アサヒ:オマエは~…えっと」 ■イブキ:「…”イブキ”」 ●アサヒ:「そうイブキだっ! ●アサヒ:人の名前覚えるの苦手なんだよな… ●アサヒ:でも、顔は知ってた!」 ■イブキ:「…本当に?」 ●アサヒ:「ホントホント!だから教えて?」 ■イブキ:「…条件がある」 ●アサヒ:「なになに?できる事なら何でもするぜ!」 ■イブキ:「…飲み物、奢(おご)って」 ●アサヒ:(М)『したたかな奴だと思った ●アサヒ:それからオレは近くにあった ●アサヒ:ドリンクサーバーで、好物だという ●アサヒ:グリーンティフラッペを注文してやり、 ●アサヒ:なんとかクロス・オーバーの指南役を ●アサヒ:引き受けて貰えるように漕ぎつけた ●アサヒ:その後、イブキに案内され ●アサヒ:”初心者専用ブース”へとやって来た』 ■イブキ:「標的接近、2時方向、警戒…」 ●アサヒ:「あぃよっ…と!よし、倒した!」 ■イブキ:「…基本操作はそんな感じ ■イブキ:次は、実戦」 ●アサヒ:「もう見なくていいのか?」 ■イブキ:「…筋が良かった」 ●アサヒ:「ふーん?でも、不思議と馴染んだな ●アサヒ:あんまり違和感も無かったし」 ■イブキ:「…”どの子”が良かった?」 ●アサヒ:「機体の事か? ●アサヒ:ん-…やっぱり初めに使った”二脚”かな? ●アサヒ:変な感想だけど、懐かしく感じた」 ■イブキ:「…懐かしい?」 ●アサヒ:「いや?なんとなくな? ●アサヒ:どっかで触った事があるような… ●アサヒ:ま、気にしないでくれ」 ■イブキ:「…良い選択だと思う」 ●アサヒ:「ホントか?」 ■イブキ:「…”強襲”型は、万能タイプ」 ●アサヒ:「強襲型かぁ…そういや、 ●アサヒ:イブキが使ってたのは多脚だったよな? ●アサヒ:選択できなかったけど、アレは?」 ■イブキ:「…あの子は”火力”型 ■イブキ:初心者サーバーでは使えない」 ●アサヒ:「そうなのか?あー…けど ●アサヒ:なんとなく、わかる」 ■イブキ:「…レベルが上がれば、使える」 ●アサヒ:「ん~やめとくよ ●アサヒ:あんな繊細な機体、 ●アサヒ:オレが乗ると疲れそうだ」 ■イブキ:「…好みは人それぞれ」 ●アサヒ:「だな!よし、一緒にやろう!」 ■イブキ:「ボクも…?」 ●アサヒ:「おう!あ…でも火力型使えないんだっけか ●アサヒ:なんか他に使いたいタイプあったりする…?」 ■イブキ:「…ある」 ●アサヒ:「おお!なんだ?」 ■イブキ:「…”耐久”型」 ●アサヒ:「耐久?盾って事か?」 ■イブキ:「そう、調整中…」 ●アサヒ:「じゃあそれを使ってくれ、 ●アサヒ:イブキが居てくれたら心強い」 ■イブキ:「…キミがいいなら」 ●アサヒ:「決まりだな ●アサヒ:じゃあオンライン対戦を―――お?」 0:アサヒを手でそっと静止するイブキ ■イブキ:「…まずはNPC戦」 ●アサヒ:「えぬ・ぴー・しー? ●アサヒ:AI戦闘か?」 ■イブキ:「…そう、コンピュータを相手にする ■イブキ:練習にはもってこい」 ●アサヒ:「またコンピュータか… ●アサヒ:でもま、ルール確認もしなきゃだもんな~…」 ▲シノブ:「すみません、少しよろしいでしょうか?」 ●アサヒ:「ん?誰だ?」 0:二人の背後から知らない人物が話しかけてきた ▲シノブ:「そちらの方はもしかして先程、 ▲シノブ:あちらで火力型を使われていた方でしょうか」 ●アサヒ:「イブキの事か?」 ■イブキ:「…たぶん、そう」 ●アサヒ:「知り合いか?」 ■イブキ:「…知らない…何か用?」 ▲シノブ:「とても素晴らしい立ち回りでしたので ▲シノブ:良ければ一度手合わせ頂けたらなと… ▲シノブ:幸い、こちらでプレイをされるなら ▲シノブ:勝敗レートを気にせず済みますから…」 ●アサヒ:「人気者だな~さすがイブキ」 ■イブキ:「…先客がいるから、また今度」 ●アサヒ:「え?いいのか?」 ■イブキ:「…先に約束してたのは、キミ」 ●アサヒ:「そうだけど―――」 ▲シノブ:「そうですか…とても残念です… ▲シノブ:こんな機会、もう無いと思ったので…」 0:その残念そうな姿を自分に重ねるアサヒ ●アサヒ:「むぅ~…じゃあこうしようぜ? ●アサヒ:AIを含めた”ビギナーズルール” ●アサヒ:オレ達がペアでチームを組む ●アサヒ:そっちはNPCと組んでくれ ●アサヒ:イブキは火力型がメインなんだけど ●アサヒ:こっちじゃ使えないんだ ●アサヒ:それくらいのハンデがあっても良いだろ?」 ▲シノブ:「本当ですか?」 ■イブキ:「…いいの?」 ●アサヒ:「どうせ一試合したら終わりだろ、 ●アサヒ:気楽に行こうぜ?」 ■イブキ:「…でも」 ●アサヒ:「いいのいいの!」 ■イブキ:「…わかった」 ▲シノブ:「ありがとうございます! ▲シノブ:ワタシは反対側で準備しておきますね?」 0:そういうと頭を下げ、 0:笑顔で反対側へと消える ●アサヒ:「ま、仮にオレがやられたとしても ●アサヒ:対人戦の良い練習にはなるしな?」 0:腰に手を当てて呟くアサヒ ■イブキ:「…死なせない」 ●アサヒ:「え?」 0:イブキはこちらを見ずに、 0:どこか遠い目をして呟いた ■イブキ:「…ボクが、守るから」 0:その横顔に少し驚きつつも、 0:安心した表情で答えるアサヒ ●アサヒ:「おう!背中は、任せたぜ?」 0:今度は目を合わせ、伝えるイブキ ■イブキ:「…了解」 ■イブキ: 0:【場面転換】ゲーム内 ガレージ ●アサヒ:(M)『クロス・オーバー… ●アサヒ:それは、スカイ・スフィアで ●アサヒ:最も人気のあるオンラインゲーム ●アサヒ:最大5対5のチームバトルが可能 ●アサヒ:互いのプレイヤーはそれぞれ、 ●アサヒ:攻撃側、防衛側に分かれ ●アサヒ:制限時間までに相手チームを全滅させるか、 ●アサヒ:アルファ地点もしくはベータ地点の ●アサヒ:どちらかを”爆破”または ●アサヒ:”防衛”する事で勝敗が決まる ●アサヒ:無数に存在する武器やパーツの中から ●アサヒ:自分だけの”ロボット”を組み上げて操り、 ●アサヒ:戦場を縦横無尽に駆け巡る ●アサヒ:硝煙(しょうえん)と鉄屑に塗(まみ)れた ●アサヒ:戦士達の世界である―――』 0:インカムにイブキの通信が入る ■イブキ:「…準備できた?」 ●アサヒ:「ん~」 ■イブキ:「…どうしたの?」 ●アサヒ:「いや…”どっち”にすべきかってな?」 ■イブキ:「…組み合わせ?」 ●アサヒ:「あぁ… ●アサヒ:相手が何を使ってくるか解らない以上、 ●アサヒ:安易な考えで出撃はできない… ●アサヒ:強襲型に装備されたライフルに合わせるなら ●アサヒ:持続力に長(た)けたマシンガンか、 ●アサヒ:速度と貫通力に優れたレーザーか…」 ■イブキ:「…したい事を、思い浮かべて」 ●アサヒ:「したい事?そうだな~ ●アサヒ:オレは一撃離脱よりは… ●アサヒ:正面から撃ち合いたいな ●アサヒ:よし…マシンガンだ!」 ■イブキ:「…好きな事が、一番」 ●アサヒ:「だな!ありがとなイブキ」 ■イブキ:「…(頷く)」 ●アサヒ:「あとはここをこうしてっと… ●アサヒ:さぁ、出撃だ!」 ●アサヒ: 0:【場面転換】ゲーム内 市街地フィールド ●アサヒ:「待たせたな!」 ■イブキ:「…その機体」 ●アサヒ:「おう!カッコいいだろ~? ●アサヒ:真紅にペイントしてみた!」 ■イブキ:「…派手」 ●アサヒ:「あ…やっぱダメか?」 ■イブキ:「…陽動には最適」 ●アサヒ:「そ、そっか! ●アサヒ:よーっし、やるぞ!」 ■イブキ:「…その調子」 ●アサヒ:「イブキの機体は… ●アサヒ:そりゃあもしかして…”戦車”か?」 0:大型のキャタピラに搭載された 0:巨大な砲塔がギラリと光る ■イブキ:「…そう、主力戦車タイプ」 ●アサヒ:「すげえ砲塔だな?」 ■イブキ:「…火力特化モデル…らしい」 ●アサヒ:「らしい?」 ■イブキ:「…”試乗”を依頼されてる」 ●アサヒ:「そうなんだ?友達か?」 ■イブキ:「…そんなとこ」 ●アサヒ:「へ~見るからに強そうだなぁ」 ■イブキ:「…くる」 ●アサヒ:「っと!おいでなすったか!」 ▲シノブ:「まだこんな所にいらしたのですね? ▲シノブ:てっきり、そちらから近いベータ地点を ▲シノブ:防衛しているとばかり…」 0:動物のようなシルエットを持つ機体が 0:およそ1km程先の橋の上から 0:こちらの様子を見ている ●アサヒ:「オープン回線…? ●アサヒ:それにアレは…”獣脚”…か?」 ■イブキ:「…”何か”あるかも」 ●アサヒ:「何かって?」 ■イブキ:「…”遊撃”型は ■イブキ:奇襲に特化した機体」 ●アサヒ:「なるほど、正面から来たって事は ●アサヒ:余程の自信家か…あるいは―――」 ▲シノブ:「さぁ?どちらでしょう?」 ■イブキ:「…気を付けて」 ●アサヒ:「とはいえ、牽制しようにも ●アサヒ:こっからじゃ何もできねぇな… ●アサヒ:どうする?」 ■イブキ:「…大丈夫」 ●アサヒ:「イブキ?」 ■イブキ:「風速約3m、距離926m前方 ■イブキ:仰角(ぎょうかく)修正…」 0:砲塔が遠方のターゲットを捉える ●アサヒ:「もしかしてオマエ―――」 ■イブキ:「ファイア」 0:轟音と共に発射された砲弾が 0:勢いよく標的目掛けて飛んでいく ●アサヒ:「ッ!マジで撃った!?」 ▲シノブ:「まさか…あの距離から」 0:砲弾は橋の真ん中に着弾、 0:強烈な衝撃波を伴い、爆発 ●アサヒ:「うぉお…すんげぇ… ●アサヒ:それになんつー威力だ… ●アサヒ:ホントに耐久型なのか…? ●アサヒ:あんなのを喰らったらさすがに…」 ■イブキ:「…はずした」 ●アサヒ:「今の爆発でか?」 ■イブキ:「…直撃はしていない ■イブキ:想定よりも弾速が遅かった」 ●アサヒ:「そ、そうか…はは…」 ▲シノブ:「驚きましたよ~ ▲シノブ:本当にあの距離からここまで ▲シノブ:耐久型の砲撃を届かせるなんて… ▲シノブ:さすが…イブキさんですね?」 0:倒壊した橋が巻き上げた煙の中から 0:獣脚のロボットが跳び出し 0:こちらを挑発するかのように身を震わす ●アサヒ:「ピンピンしてやがる… ●アサヒ:いや、それよりも ●アサヒ:やっぱイブキの事を知って…?」 ■イブキ:「…要警戒」 ▲シノブ:「次はこちらから参ります」 0:しなやかな動きでこちらへと走り出す ●アサヒ:「気を付けろ!イブキ!!」 ■イブキ:「…問題ない」 ●アサヒ:「い、イブキ?」 ■イブキ:「…次は、当てる」 ▲シノブ:「期待してますよ?」 0:すると、獣脚ロボットの姿が 0:忽然と目の前から消える ●アサヒ:「なっ消えた…?どこだ!?」 ■イブキ:「…よく見て」 ●アサヒ:「ん!?…なんだ? ●アサヒ:空間が一部分だけ歪んでいる?」 ■イブキ:「…”影”を狙って」 ●アサヒ:「影…そうか!うぉおおお!!」 0:地面に落ちた影をがむしゃらに撃つアサヒ 0:立ち上る砂埃が光学迷彩に干渉し、 0:その輪郭が露(あらわ)になる ▲シノブ:「チィッ…光学迷彩の弱点を…」 ●アサヒ:「今だイブキ!」 ▲シノブ:「しまっ―――」 ■イブキ:「おしまい」 ●アサヒ:(M)『イブキの放った砲弾が直撃し、 ●アサヒ:爆発と共に相手の機体を吹き飛ばす ●アサヒ:構成していたパーツの破片が ●アサヒ:周囲に散らばった』 ■イブキ:「…」 0:立ち上る煙と炎を見つめるイブキ 0:離れていたアサヒが傍に近寄る ●アサヒ:「す…すげぇ… ●アサヒ:見えねぇ敵をあっさりと… ●アサヒ:やったな!あとは…ん?」 0:返事がないイブキを訝しむアサヒ ●アサヒ:「イブキ?」 ■イブキ:「…おかしい」 ●アサヒ:「おかしい?なにがだ?」 ■イブキ:「…簡単過ぎる」 ●アサヒ:「そ、そうか? ●アサヒ:でも、それはイブキが―――」 ■イブキ:「…ッ!」 0:急に戦車をぶつけるイブキ 0:その衝撃で横転するアサヒ ●アサヒ:「ちょ!イブキ!? ●アサヒ:スキンシップにしちゃ大げさだぞ!?」 ■イブキ:「…ゴメン」 ●アサヒ:「イ…ブキ…?」 0:見ると、イブキの操る戦車の 0:キャタピラ部分が、 0:高熱の刃で切り裂かれたかのように 0:大きく損壊している ■イブキ:「…指示が、遅れた」 ▲シノブ:「咄嗟(とっさ)に仲間を助けるなんて ▲シノブ:…お優しいんですね?」 0:戦車の背面から、 0:黒い獣が顔を覗かせた 0:それは紛れもなく、 0:先ほど吹き飛んだはずの機体 ●アサヒ:「オマエ…!さっき確かに!?」 ■イブキ:「…迂闊(うかつ)だった」 ●アサヒ:「え?」 ■イブキ:「…自分の”スキン”を、 ■イブキ:NPCにかぶせて偽装してた」 ●アサヒ:「そうか…オープン回線だったのも、 ●アサヒ:NPCという事を隠蔽(いんぺい)するため…」 ▲シノブ:「ご明察ですね…その通りですよ? ▲シノブ:もう少し見ていたかったのですが… ▲シノブ:そちらの方が余りに無防備でしたので、つい」 ●アサヒ:「くっ…イブキ… ●アサヒ:オレが油断したせいで…すまねぇ」 ■イブキ:「…大丈夫 ■イブキ:履帯(りたい)が持っていかれただけ」 ▲シノブ:「さすが耐久型ですね? ▲シノブ:…けれどアナタが動けないなら、 ▲シノブ:残るはそちらの素人さんのみ… ▲シノブ:こちらとしては勝ったも同然です」 ●アサヒ:「やるってんなら相手になるぜ! ●アサヒ:かかってこいよ!!」 ▲シノブ:「熱いですね~? ▲シノブ:ですが、お断りします」 ●アサヒ:「な、なに?」 ▲シノブ:「ここでアナタをいたぶっても ▲シノブ:どうせすぐ終わってしまいますし ▲シノブ:楽しくありません」 ●アサヒ:「…なんだと?」 ▲シノブ:「せっかくですから、 ▲シノブ:ワタシは攻撃側として ▲シノブ:そちらの拠点を爆破させて頂きます ▲シノブ:アルファ地点でお待ちしていますね?」 0:立ち去ろうと背を向けるシノブ ●アサヒ:「逃げるってのか!戦えよ!!」 ▲シノブ:「はぁ…ルールを確認するのが、 ▲シノブ:本来の目的なんですよね? ▲シノブ:そちらにとっても、 ▲シノブ:悪くない提案だと思ったんですけど?」 ●アサヒ:「それとこれとは―――」 ■イブキ:「良い…」 ●アサヒ:「なっ…イブキ?」 ■イブキ:「…行かせて」 ▲シノブ:「イブキさんは冷静で助かります ▲シノブ:まぁ、たかがゲームですから ▲シノブ:それでは」 0:そう言い残し、2人を残して 0:シノブはビルの屋上へと飛び移り、 0:姿を消した ●アサヒ:「アイツ!!」 ■イブキ:「…落ち着いて」 ●アサヒ:「けど!」 ■イブキ:「…撃ってたら、倒す前に ■イブキ:間合いを詰められておわり」 ●アサヒ:「オレには…勝てないってのかよ」 ■イブキ:「…これは、”チャンス”」 ●アサヒ:「チャンス?」 ■イブキ:「…相手は、油断してる」 ●アサヒ:「でも…それはオレが初心者で ●アサヒ:弱いからだろ…」 ■イブキ:「確かに、キミは初心者」 ●アサヒ:「ぐ…」 ■イブキ:「でも、違う」 ●アサヒ:「…ぇ?」 ■イブキ:「キミは、強い」 ●アサヒ:「オレが…強い?」 ■イブキ:「そう、だから…大丈夫」 0:イブキの声は落ち着いていて 0:けど、どこかに感じる想い ■イブキ:「ボクに構わず、行って」 0:その声だけで伝わる、”気持ち” ●アサヒ:「…あぁ、わかった」 0:そう答える事しかできなかった ■イブキ:「…うん」 0:ただ、 0:言わずにはいられなかった ●アサヒ:「イブキ」 ■イブキ:「…?」 ●アサヒ:「仇は、必ずとってやる」 0:その言葉を、言わずには ■イブキ:「…頑張って」 0:背を向け、去って行くアサヒ 0:機体がビルの向こうへと消えた後 0:自分の機体に目を落とすイブキ ■イブキ:「…無理させて、ごめんね」 0:コックピット内の機材を撫ぜ 0:そう呟いた 0: 0:【場面転換】アルファ地点 拠点付近 0:機体を操り、駆け抜けるアサヒ 0:エネルギーを気にしつつ、 0:ブーストを適度に吹かす ●アサヒ:「アイツ…どこ行ったんだ…?」 0:周囲を警戒するが、 0:それらしき影すら見えない 0:目に映るのは崩壊した街の景色 ●アサヒ:「にしても、足場が悪いな… ●アサヒ:あちこち瓦礫(がれき)の山だ… ●アサヒ:二脚だと移動しずらい…」 ▲シノブ:「やっと来ましたか~ ▲シノブ:待ちくたびれましたよ?」 ●アサヒ:「ッ!どこだ!?」 ▲シノブ:「ここですよ~?」 0:上を見上げると、シノブの駆る獣脚が 0:高層ビルの屋上から見下ろしていた ●アサヒ:「あんな所に…! ●アサヒ:降りて来い!」 ▲シノブ:「はぁ?何を言い出すかと思えば… ▲シノブ:アナタ、バカなんですか? ▲シノブ:ワタシは敵ですよ?来いと言われて、 ▲シノブ:行く訳無いじゃないですか」 ●アサヒ:「んだとぉ…!」 ▲シノブ:「アナタの方こそ ▲シノブ:登って来れば良いじゃないですか? ▲シノブ:あぁ…もしかして、 ▲シノブ:それすら”出来ない”とか?」 ●アサヒ:「じょ…上等だ…! ●アサヒ:ちょっと待ってろ!? ●アサヒ:今から行くからな!!」 0:ブーストを吹かしながら跳躍し 0:建物の壁面にまるで 0:食らいつくようによじ登る ▲シノブ:「こちらですよ~」 0:アサヒとは対照的に 0:地面を、壁を、縦横無尽に翻弄し 0:猫の様に移動するシノブ ●アサヒ:「待ちやがれ!」 ▲シノブ:「そんな速度で、 ▲シノブ:ワタシを捉えられるとでも?」 ●アサヒ:「く…機体が、重い…!」 0:ブーストを吹かし近づくが、 0:漂うような挙動に振り回される ▲シノブ:「まるでダメですね… ▲シノブ:勢いは口先だけですか?」 ●アサヒ:「まだ感覚が掴めて無いだけだ! ●アサヒ:これから―――」 ▲シノブ:「アナタ、甘いんですよ ▲シノブ:自分勝手な期待をして、 ▲シノブ:”理想”ばかりを追い求める… ▲シノブ:できるはずも無いのに」 ●アサヒ:「…理想を求めて何が悪い」 ▲シノブ:「”夢想”の間違いでしょ? ▲シノブ:そんな夢物語なんて、 ▲シノブ:現実には存在しません!」 ●アサヒ:「無ければ作ればいいだろ…! ●アサヒ:他人をバカにする奴に、 ●アサヒ:神も仏も!微笑んだりはしない!!」 ▲シノブ:「…! ▲シノブ:知った風な口をッ!!」 0:壁を蹴り、襲い掛かるシノブ 0:鋭い爪がアサヒの機体に食い込む ●アサヒ:「ぐぁああッ!」 0:叩き落され、ビルに突っ込むアサヒ ▲シノブ:「…柄にもなく、熱くなってしまいました ▲シノブ:アナタは、そこで埋まっていて下さい ▲シノブ:ワタシはアルファを爆破してきます」 ●アサヒ:「ぐ…うぅ…ッ!」 ▲シノブ:「思い知れば良いんですよ… ▲シノブ:自分の愚かさと、無力さを」 ●アサヒ:「チク…ショウ…」 0:目の前が暗くなるアサヒ 0:暫くすると、何処からか 0:”声”が聞こえてくる… ■イブキ:「…サヒ」 ●アサヒ:(М)『呼んでいる…?』 ■イブキ:「…アサヒ」 ●アサヒ:(М)『誰かが、オレを… ●アサヒ:この声は…一体―――』 ■イブキ:「…起きて」 ●アサヒ:「ん…イブキ…?」 ■イブキ:「…起きた?」 ●アサヒ:「あ、あぁ…悪ぃ」 ■イブキ:「…大丈夫?」 0:軽い脳震盪を起こしたらしい 0:後頭部を擦る ●アサヒ:(М)『どれ程眠っていたのだろう ●アサヒ:仇をとると言いつつ何もできず、 ●アサヒ:逆に心配される自分が不甲斐ない』 ■イブキ:「…動ける?」 ●アサヒ:「心配すんな ●アサヒ:ちょっと…躓(つまず)いた」 ■イブキ:「…そう」 ●アサヒ:「どうも調子狂うぜ…な~んかこう、 ●アサヒ:キビキビ動けねぇんだよなぁ… ●アサヒ:ったく情けねぇ」 ■イブキ:「…”ブーストアシスト”のせい?」 ●アサヒ:「ん?なんだソレ?」 ■イブキ:「…搭載されているシステムの”1つ” ■イブキ:機体制御に自動でアシストを加える」 ●アサヒ:「お…コレか?」 0:見上げるとスイッチがあり 0:作動しているように青く光っている ●アサヒ:「切れるのか?」 ■イブキ:「…切れる ■イブキ:けど、操作難度が跳ね上がる」 ●アサヒ:「オフっと」 ■イブキ:「…本気?」 ●アサヒ:「”為(な)せば成(な)る”さ ●アサヒ:知らないか?」 ■イブキ:「…?」 ●アサヒ:「へへっ…ま、見てなって ●アサヒ:きっと面白い事に…ん?」 0:画面上部、 0:謎の赤いタイマーが起動する ●アサヒ:「急にどうしたんだ?」 ■イブキ:「…起爆時間」 ●アサヒ:「って事は…そうか爆弾!」 0:タイマーは240秒を切った ■イブキ:「…時間がない」 ●アサヒ:「急がねぇと!のわッ!!」 0:つんのめるアサヒ 0:機体が前のめりにバランスを崩す ■イブキ:「…どうしたの?」 ●アサヒ:「いや、なんでもねぇ ●アサヒ:さっき設定をいじったから ●アサヒ:どっかでエラーでも吐いてんだろ」 ■イブキ:「…やっぱり、元に戻す?」 ●アサヒ:「時間がねぇんだ… ●アサヒ:むしろこっちの方が安心する」 ■イブキ:「…安心?」 ●アサヒ:「ああ…これだけ”似て”たらな…」 ▲シノブ:「まだ戦うつもりですか…?」 0:ビルの屋上からこちらを見下ろし 0:威嚇するように牙を見せるシノブの機体 ●アサヒ:「オマエ…!戻って来やがったのか!」 ▲シノブ:「いい加減に諦めて下さい ▲シノブ:爆弾は起動し、 ▲シノブ:マップも把握できず、 ▲シノブ:頼れる味方すらいない… ▲シノブ:どうやっても勝つ見込みはありませんよ?」 ●アサヒ:「それは違うぜ?」 ▲シノブ:「え?」 ■イブキ:「…1人じゃない」 0:突如、空から砲弾が着弾 0:辺りが火に包まれる ▲シノブ:「な、コレは…”爆撃”? ▲シノブ:まさかあの位置から!?」 ●アサヒ:「助かったぜ!イブキ!」 0:搭載されている特殊装備、 0:”オーバーブースト”を使用し 0:直線を一気に駆け抜ける ■イブキ:「…前方の曲がり角を抜ければ拠点 ■イブキ:でもその機体じゃ、もう…」 ●アサヒ:「為せば成る!」 ■イブキ:「…どうやって?」 ●アサヒ:「このまま内部データを ●アサヒ:書き換える!」 ■イブキ:「…拠点の爆発まで1分しかない ■イブキ:失敗したら―――」 ●アサヒ:「そんな事わかってる!!」 ■イブキ:「…”できる”の?」 ●アサヒ:「できるかどうかじゃない! ●アサヒ:”やる”んだ!! ●アサヒ:データメモリを経由して、 ●アサヒ:各種パラメーターとBCIを再設定 ●アサヒ:スラスター出力及び、 ●アサヒ:バーニア可動域変更 ●アサヒ:エリアルホバーパワーバランス調整 ●アサヒ:フィードフォワードネットワーク再起動 ●アサヒ:システムオンライン… ●アサヒ:ブースター点火、最大出力ッ! ●アサヒ:曲・が・れぇぇぇええええええ!!」 0:一筋の赤い光の線を描いて 0:火花を散らしながら 0:機体がカーブを突破する ■イブキ:「…赤い…光」 ●アサヒ:「どうだ!」 ■イブキ:「…すごい、今までに見たことがない」 ▲シノブ:「あの速度で曲がり切るなんて… ▲シノブ:けれど、これで!」 0:建物の上から獲物に跳びかかるシノブ ●アサヒ:「させるかぁあああ!!」 0:強烈なブーストで前方へと飛び上がり、 0:その慣性を持ったまま左、前、右、前の 0:連続したブーストでシノブの攻撃を躱す 0:更にブーストを用いた高速旋回で背後をとり、 0:そしてすかさず、 0:後方へのブーストで距離を空ける 0:勢い良く着地した機体の重量で 0:アスファルトとコンクリートが粉々に砕けた ▲シノブ:「まさか!躱(かわ)された!?」 ■イブキ:「あの機動は…」 ●アサヒ:「全砲門…展開!」 0:停止したアサヒの機体の銃口が 0:攻撃動作を終えたシノブの機体を捉える ▲シノブ:「そんな―――」 ●アサヒ:「発っ射ぁあああ!!」 0:着地後の硬直に合わせた一斉射撃 0:回避も間に合わず全弾が命中し、 0:シノブの機体パーツが四散する ▲シノブ:「うぁあああ!」 0:銃口から射撃の余韻を残す硝煙が立ち昇り 0:相手の完全停止を告げる ●アサヒ:「…イブキ」 0:銃を下ろすアサヒ ●アサヒ:「仇は、とったぜ?」 ■イブキ:「…ありがとう」 0:警告音が鳴り響く ●アサヒ:「あ…いっけね!爆弾解除!!」 ■イブキ:「…間に合う?」 ●アサヒ:「為せば成るだ! ●アサヒ:いっけぇえええ!!」 0:再びオーバーブースターを起動し、 0:そこに連続ブーストを織り交ぜた高速移動 0:音速を超える程の衝撃波が発生し、 0:周囲の建物の窓ガラスが割れる ■イブキ:「…解除コードは〇〇〇〇(※日付4桁)」 ●アサヒ:「わかったイブキ! ●アサヒ:間に合ぇえええええ!!」 0:操作パネルから解除コードを入力 0:タイムリミットを示すタイマーが停止し 0:周囲の警報が鳴りやむ ●アサヒ:「(息切れ)と、止まった?」 ■イブキ:「…止まった」 0:見上げれば画面にWINの文字と 0:盛大に流れるファンファーレ ●アサヒ:「やったぜ!オレ達の勝ちだ!! ●アサヒ:バンザ~イ!!」 ■イブキ:「…お疲れ様、アサヒ」 ●アサヒ:「お疲れイブキ! ●アサヒ:…って今!」 ■イブキ:「…どうかした?」 ●アサヒ:「”また”…呼んでくれたな!」 ■イブキ:「…うん」 ●アサヒ:「えへへ…ありがとな!!」 ■イブキ:「(小声)…本当に、良かった」 ●アサヒ:「ん?なんか言ったか?」 ■イブキ:「…なんでもない」 ●アサヒ:「ま、いいや!ロビーに戻ろうぜ!」 ■イブキ:「…うん、帰ろう」 0:そう言いながら機体を擦る 0:口元に少しの笑みを浮かべて 0: 0:【場面転換】 ビギナーロビーブース 0:筐体前で話すアサヒとイブキ ●アサヒ:「いやあ~面白れぇな!」 ■イブキ:「…気に入った?」 ●アサヒ:「ああ!最高だぜクロス・オーバー! ●アサヒ:武器も色々使ってみたいな!」 ■イブキ:「…沢山ある」 ●アサヒ:「そっかあ~そりゃあワクワクするな!」 ■イブキ:「…ん」 ●アサヒ:「ん?どうしたイブキ―――アイツ…」 0:顔を上げると、 0:少しムッとした表情のシノブが 0:腕を組んで2人をジッと見ている ▲シノブ:「…」 ●アサヒ:「まだなんか用か?」 ▲シノブ:「”グッド・ゲーム”」 ●アサヒ:「え?」 ■イブキ:「…試合後の”挨拶” ■イブキ:楽しかったとかの意味」 ▲シノブ:「そんな事も知らないんです? ▲シノブ:まったく…頭良いんだかバカなんだか」 ●アサヒ:「な!バカとはなんだバカとは!!」 ▲シノブ:「ばぁ~か」 ●アサヒ:「コイツ!?」 ▲シノブ:「冗談です、本当に良い試合でしたよ」 0:組んでいた腕を解き、 0:アサヒに向き直って 0:握手を求めるシノブ ●アサヒ:「お…おお ●アサヒ:そっちこそ、すげー強かったぜ! ●アサヒ:ありがとな!グッド・ゲーム!!」 0:握手に応じるアサヒ ●アサヒ:「オレは、アサヒだ」 ▲シノブ:「ワタシは、シノブです」 0:握手を交わし、互いを称え合う ■イブキ:「…2人とも、グッド・ゲーム」 0:それを見て微笑むイブキ ▲シノブ:「ええ、イブキさんも ▲シノブ:砲撃による偏差射撃…お見事でした」 ●アサヒ:「そういや… ●アサヒ:なんでイブキの事知ってたんだ? ●アサヒ:初対面だったんだろ?」 ■イブキ:「…初対面、のはず」 ▲シノブ:「そうですね、 ▲シノブ:イブキさんは知らないでしょう…」 ●アサヒ:「どういう事だ?」 ▲シノブ:「今年の”世界模試”、覚えていますか?」 ●アサヒ:「世界模試ぃ~?なんだそりゃ?」 ■イブキ:「…年に一度の学生行事 ■イブキ:年初めにあって、先日結果が出た」 ▲シノブ:「ワタシはその試験で”ある科目”以外、 ▲シノブ:1番の成績だったんです」 ●アサヒ:「天才かよ…ん? ●アサヒ:ある科目以外?それって―――」 ■イブキ:「…物理演算試験」 ●アサヒ:「ははぁ~ん?つまり…」 ▲シノブ:「ワタシに唯一黒星を付けた相手… ▲シノブ:どんな方なのか、気になっていたんです ▲シノブ:まさか、同じゲームをプレイしているとは ▲シノブ:思っていませんでしたけどね」 ●アサヒ:「なるほど、納得」 ▲シノブ:「結果としては負けてしまいましたが、 ▲シノブ:後悔はしていません ▲シノブ:一矢報いる事もできましたし、ね?」 ■イブキ:「…強かった」 ▲シノブ:「ありがとうございます ▲シノブ:素直に受け取りますよ」 ●アサヒ:「2人ともすげぇなぁ~ ●アサヒ:試験かぁ… ●アサヒ:嫌な事思い出しちまったぜ…」 ■イブキ:「…嫌な事?」 ▲シノブ:「アナタも試験を受けていたんですか? ▲シノブ:でも、世界模試ではないんですよね?」 ●アサヒ:「ソレとは別だ… ●アサヒ:ま、ダメだったんだけどさ」 ▲シノブ:「世界模試と同じ時期に…? ▲シノブ:何の試験か、お伺いしても?」 ■イブキ:「…ボクも知りたい」 ●アサヒ:「う、うーん ●アサヒ:笑うなよ…?」 ■イブキ:「笑わない」 ▲シノブ:「笑いませんよ」 ●アサヒ:「宇宙飛行士の… ●アサヒ:”特級資格試験”だ」 ■イブキ:「…宇宙」 ▲シノブ:「飛行士…?」 ●アサヒ:「だ、だから… ●アサヒ:他の事してる暇無かったんだよ! ●アサヒ:システム周りの勉強とか…体づくりとか… ●アサヒ:今回は上手くいかなかったけど、 ●アサヒ:また来年頑張るさ!」 ▲シノブ:「なれるかもしれませんよ? ▲シノブ:来年とは言わず、”今年中”に」 ■イブキ:「…アサヒならできるかも」 ●アサヒ:「え?」 ▲シノブ:「アナタは知らないみたいですけど ▲シノブ:クロス・オーバーでは今年 ▲シノブ:”世界大会”があるんです ▲シノブ:勝者には栄光と名誉、 ▲シノブ:そして報酬が与えられます ▲シノブ:それも…”特別な報酬”がね?」 ●アサヒ:「ソレって…まさか」 ■イブキ:「…政府公認の、特級資格」 ●アサヒ:「おいおいマジか!ホントに!? ●アサヒ:すげぇ…凄すぎるぜ!! ●アサヒ:このメンバーでなら、絶対やれる!」 ■イブキ:「…うん」 ▲シノブ:「ぇ…ワタシも…? ▲シノブ:いいんですか?」 ●アサヒ:「水クセェな!仲間だろ?」 ▲シノブ:「まったく…アナタって人は…」 0:少し安心したような表情のシノブ ●アサヒ:「チームメンバーは5人必要だったな… ●アサヒ:ソイツさえなんとかなれば」 ■イブキ:「…あとの2人は、当てがある」 ●アサヒ:「ホントかイブキ!?」 ■イブキ:「…任せて」 0:胸に手を当て、微笑むイブキ ●アサヒ:「さすがだぜ! ●アサヒ:そうと決まれば、手を出せ!!」 ■イブキ:「…?こう?」 ▲シノブ:「こうですか?」 0:手の甲を前に出し重ねる3人 0:顔を見合わせ、クスリと笑う ●アサヒ:「よぉおおおし!やるぞ!! ●アサヒ:目指すは、世界一だ!!!」 ●▲■:「おー!」 0:高らかな宣言と共に挙げた 0:それぞれの手の先で 0:流れ星が、煌めく ●アサヒ:(М)『夕日を背にしてはじまった… ●アサヒ:この日、この時、この場所が、 ●アサヒ:オレ達にとっての”スタートライン”―――』 0:Fin. 0:※詳細な設定は元サイトに記載

0:スカイ・スフィア 中央コロニー噴水前 ●アサヒ:(М)『周囲の音が掻き消えて、 ●アサヒ:辺りの景色が白んで見えた ●アサヒ:行き交う人々、噴水の流れる水、 ●アサヒ:鳥達が飛び立つ姿…それらが全て ●アサヒ:スローモーションのように感じられた』 ●アサヒ: ●アサヒ:「…嘘…だろ…」 ●アサヒ: ●アサヒ:(М)『やがて、 ●アサヒ:置き去りにされた時が動き出すと同時に、 ●アサヒ:その呟きだけが口から零れた ●アサヒ:目の前にあるのは半透明な板…もとい ●アサヒ:合格者が掲載された3Dモノリス ●アサヒ:手元の端末に表示されている番号は”ない”』 ●アサヒ: ●アサヒ:「オレが…不合格…?」 ●アサヒ: ●アサヒ:(М)『オレ、こと”アサヒ”はまるで ●アサヒ:この世の全てが終わりのような衝撃を受け、 ●アサヒ:ただその場に立ち尽くしていた―――』 ●アサヒ: 0:【場面転換】中央コロニー 交流広場 0:広場の一角 0:木漏れ日が降り注ぐ共有ベンチに座り 0:大きなため息をつくアサヒ ●アサヒ:「ハァ…何もかも我慢して、 ●アサヒ:めちゃくちゃ勉強したのになぁ… ●アサヒ:オレの”夢”への第一歩が…トホホ ●アサヒ:こうなったら思いっきり羽目を外してやるぅ ●アサヒ:甘いデザート食いまくって―――ん? ●アサヒ:”アレ”は…」 ●アサヒ: 0:広場の電子掲示板に大々的に表示される 0:スカイ・スフィアで大人気の”とあるゲーム” 0:その鮮烈なPVが流れている ●アサヒ:「”クロス・オーバー”…? ●アサヒ:へぇ~オンラインゲームか~ ●アサヒ:ゲームなんて全然してこなかったからなぁ… ●アサヒ:毎日勉強とかトレーニングとか、 ●アサヒ:機械イジリばっかだったし… ●アサヒ:この際、初体験と行きますか ●アサヒ:よ~っし!遊びまくるぞ~!!」 ●アサヒ: 0:沈んだ気持ちを跳ね除けるように 0:アサヒは叫んだ 0: 0:【場面転換】ゲームタワー ブース内 0:コロニー最大のゲームセンター 0:”最後の楽園(ラスト・エデン)” 0:昼間だというのに薄暗く、 0:どこか怪しげな雰囲気を持つ巨大な館内は 0:大勢の人で賑わっていた 0:足音はカーペットの床に消え、かわりに 0:音楽や効果音が騒々しい程鳴り響き 0:壁や天井からぶら下がるネオンが輝いている ●アサヒ:「ここが…ラストエデンかぁ~! ●アサヒ:くぅ~ワクワクするぅ~! ●アサヒ:クロス・オーバーはっと…あ! ●アサヒ:”あそこ”かな?」 0:ひときわ大きいモニターに映し出された 0:見覚えのあるタイトル 0:駆け寄ると、その下では 0:人だかりができていた ●アサヒ:「すみません!ちょっと通りま~すっ! ●アサヒ:通ります!ごめんなさい!っとと、 ●アサヒ:今誰かの足踏んだかも…ゴメンね!? ●アサヒ:ホントゴメン!ん~っしょっ ●アサヒ:…ふぅ、なんとか抜けた…あれ?」 0:謝りつつ観客の最前列へ割り込むアサヒ 0:するとプレイヤー達の顔がハッキリ見え、 0:その内の1人に見覚えがあった ●アサヒ:「”アイツ”は確か…クラスメイトの…」 0:VR機材を装着し、 0:リクライニングシートのような 0:ゲーミングチェアに座っている 0:”その人物”と目が合う ■イブキ:「…キミ、近い」 ●アサヒ:「んぇ?オレ?」 ■イブキ:「…危ないから、少し離れてて」 ●アサヒ:「あ、あぁ…悪い…」 ■イブキ:「…観たいなら、そっち」 0:画面が見やすい場所を指さす ●アサヒ:「見ても良いのか!?」 ■イブキ:「…はじまる」 ●アサヒ:「おぉ~…」 0:観客が沸き立ち、 0:大画面で激しい戦闘が始まる 0:クラスメイトが操作する多脚機体が 0:超遠距離からの狙撃で相手を破壊していく ●アサヒ:「すっげぇ~ ●アサヒ:あんな距離から一撃で潰してる? ●アサヒ:…いや…違う ●アサヒ:一撃なのは交戦中の敵だけ… ●アサヒ:他は足を狙って機動力を削いでるんだ ●アサヒ:しかも、 ●アサヒ:豆粒のような小さい敵すら見逃さない… ●アサヒ:洞察力が優れている証拠だ」 0:いつの間にか集中し、 0:真剣な目をするアサヒ 0:プレイをしているクラスメイトに 0:賞賛の声を投げかける ●アサヒ:「強いな、オマエ」 ■イブキ:「…当然」 0:最後の弾丸が、敵機体を捕らえる 0:ゲームセットと共に、 0:会場は歓声で盛り上がる ●アサヒ:「なぁ」 0:VR機材を外し、席を立つクラスメイト ■イブキ:「…なに?」 ●アサヒ:「このゲーム、長いの?」 ■イブキ:「…それなり」 ●アサヒ:「へぇ~どうりで」 ■イブキ:「…キミも?」 ●アサヒ:「オレさ、今日が初めてなんだ」 ■イブキ:「…そう」 ●アサヒ:「だからさ?どうせなら、 ●アサヒ:顔見知りに教えて貰いたいなぁ~って―――」 ■イブキ:「…顔見知り?」 ●アサヒ:「同じクラスじゃないか! ●アサヒ:クラスメイトのア・サ・ヒ! ●アサヒ:オマエは~…えっと」 ■イブキ:「…”イブキ”」 ●アサヒ:「そうイブキだっ! ●アサヒ:人の名前覚えるの苦手なんだよな… ●アサヒ:でも、顔は知ってた!」 ■イブキ:「…本当に?」 ●アサヒ:「ホントホント!だから教えて?」 ■イブキ:「…条件がある」 ●アサヒ:「なになに?できる事なら何でもするぜ!」 ■イブキ:「…飲み物、奢(おご)って」 ●アサヒ:(М)『したたかな奴だと思った ●アサヒ:それからオレは近くにあった ●アサヒ:ドリンクサーバーで、好物だという ●アサヒ:グリーンティフラッペを注文してやり、 ●アサヒ:なんとかクロス・オーバーの指南役を ●アサヒ:引き受けて貰えるように漕ぎつけた ●アサヒ:その後、イブキに案内され ●アサヒ:”初心者専用ブース”へとやって来た』 ■イブキ:「標的接近、2時方向、警戒…」 ●アサヒ:「あぃよっ…と!よし、倒した!」 ■イブキ:「…基本操作はそんな感じ ■イブキ:次は、実戦」 ●アサヒ:「もう見なくていいのか?」 ■イブキ:「…筋が良かった」 ●アサヒ:「ふーん?でも、不思議と馴染んだな ●アサヒ:あんまり違和感も無かったし」 ■イブキ:「…”どの子”が良かった?」 ●アサヒ:「機体の事か? ●アサヒ:ん-…やっぱり初めに使った”二脚”かな? ●アサヒ:変な感想だけど、懐かしく感じた」 ■イブキ:「…懐かしい?」 ●アサヒ:「いや?なんとなくな? ●アサヒ:どっかで触った事があるような… ●アサヒ:ま、気にしないでくれ」 ■イブキ:「…良い選択だと思う」 ●アサヒ:「ホントか?」 ■イブキ:「…”強襲”型は、万能タイプ」 ●アサヒ:「強襲型かぁ…そういや、 ●アサヒ:イブキが使ってたのは多脚だったよな? ●アサヒ:選択できなかったけど、アレは?」 ■イブキ:「…あの子は”火力”型 ■イブキ:初心者サーバーでは使えない」 ●アサヒ:「そうなのか?あー…けど ●アサヒ:なんとなく、わかる」 ■イブキ:「…レベルが上がれば、使える」 ●アサヒ:「ん~やめとくよ ●アサヒ:あんな繊細な機体、 ●アサヒ:オレが乗ると疲れそうだ」 ■イブキ:「…好みは人それぞれ」 ●アサヒ:「だな!よし、一緒にやろう!」 ■イブキ:「ボクも…?」 ●アサヒ:「おう!あ…でも火力型使えないんだっけか ●アサヒ:なんか他に使いたいタイプあったりする…?」 ■イブキ:「…ある」 ●アサヒ:「おお!なんだ?」 ■イブキ:「…”耐久”型」 ●アサヒ:「耐久?盾って事か?」 ■イブキ:「そう、調整中…」 ●アサヒ:「じゃあそれを使ってくれ、 ●アサヒ:イブキが居てくれたら心強い」 ■イブキ:「…キミがいいなら」 ●アサヒ:「決まりだな ●アサヒ:じゃあオンライン対戦を―――お?」 0:アサヒを手でそっと静止するイブキ ■イブキ:「…まずはNPC戦」 ●アサヒ:「えぬ・ぴー・しー? ●アサヒ:AI戦闘か?」 ■イブキ:「…そう、コンピュータを相手にする ■イブキ:練習にはもってこい」 ●アサヒ:「またコンピュータか… ●アサヒ:でもま、ルール確認もしなきゃだもんな~…」 ▲シノブ:「すみません、少しよろしいでしょうか?」 ●アサヒ:「ん?誰だ?」 0:二人の背後から知らない人物が話しかけてきた ▲シノブ:「そちらの方はもしかして先程、 ▲シノブ:あちらで火力型を使われていた方でしょうか」 ●アサヒ:「イブキの事か?」 ■イブキ:「…たぶん、そう」 ●アサヒ:「知り合いか?」 ■イブキ:「…知らない…何か用?」 ▲シノブ:「とても素晴らしい立ち回りでしたので ▲シノブ:良ければ一度手合わせ頂けたらなと… ▲シノブ:幸い、こちらでプレイをされるなら ▲シノブ:勝敗レートを気にせず済みますから…」 ●アサヒ:「人気者だな~さすがイブキ」 ■イブキ:「…先客がいるから、また今度」 ●アサヒ:「え?いいのか?」 ■イブキ:「…先に約束してたのは、キミ」 ●アサヒ:「そうだけど―――」 ▲シノブ:「そうですか…とても残念です… ▲シノブ:こんな機会、もう無いと思ったので…」 0:その残念そうな姿を自分に重ねるアサヒ ●アサヒ:「むぅ~…じゃあこうしようぜ? ●アサヒ:AIを含めた”ビギナーズルール” ●アサヒ:オレ達がペアでチームを組む ●アサヒ:そっちはNPCと組んでくれ ●アサヒ:イブキは火力型がメインなんだけど ●アサヒ:こっちじゃ使えないんだ ●アサヒ:それくらいのハンデがあっても良いだろ?」 ▲シノブ:「本当ですか?」 ■イブキ:「…いいの?」 ●アサヒ:「どうせ一試合したら終わりだろ、 ●アサヒ:気楽に行こうぜ?」 ■イブキ:「…でも」 ●アサヒ:「いいのいいの!」 ■イブキ:「…わかった」 ▲シノブ:「ありがとうございます! ▲シノブ:ワタシは反対側で準備しておきますね?」 0:そういうと頭を下げ、 0:笑顔で反対側へと消える ●アサヒ:「ま、仮にオレがやられたとしても ●アサヒ:対人戦の良い練習にはなるしな?」 0:腰に手を当てて呟くアサヒ ■イブキ:「…死なせない」 ●アサヒ:「え?」 0:イブキはこちらを見ずに、 0:どこか遠い目をして呟いた ■イブキ:「…ボクが、守るから」 0:その横顔に少し驚きつつも、 0:安心した表情で答えるアサヒ ●アサヒ:「おう!背中は、任せたぜ?」 0:今度は目を合わせ、伝えるイブキ ■イブキ:「…了解」 ■イブキ: 0:【場面転換】ゲーム内 ガレージ ●アサヒ:(M)『クロス・オーバー… ●アサヒ:それは、スカイ・スフィアで ●アサヒ:最も人気のあるオンラインゲーム ●アサヒ:最大5対5のチームバトルが可能 ●アサヒ:互いのプレイヤーはそれぞれ、 ●アサヒ:攻撃側、防衛側に分かれ ●アサヒ:制限時間までに相手チームを全滅させるか、 ●アサヒ:アルファ地点もしくはベータ地点の ●アサヒ:どちらかを”爆破”または ●アサヒ:”防衛”する事で勝敗が決まる ●アサヒ:無数に存在する武器やパーツの中から ●アサヒ:自分だけの”ロボット”を組み上げて操り、 ●アサヒ:戦場を縦横無尽に駆け巡る ●アサヒ:硝煙(しょうえん)と鉄屑に塗(まみ)れた ●アサヒ:戦士達の世界である―――』 0:インカムにイブキの通信が入る ■イブキ:「…準備できた?」 ●アサヒ:「ん~」 ■イブキ:「…どうしたの?」 ●アサヒ:「いや…”どっち”にすべきかってな?」 ■イブキ:「…組み合わせ?」 ●アサヒ:「あぁ… ●アサヒ:相手が何を使ってくるか解らない以上、 ●アサヒ:安易な考えで出撃はできない… ●アサヒ:強襲型に装備されたライフルに合わせるなら ●アサヒ:持続力に長(た)けたマシンガンか、 ●アサヒ:速度と貫通力に優れたレーザーか…」 ■イブキ:「…したい事を、思い浮かべて」 ●アサヒ:「したい事?そうだな~ ●アサヒ:オレは一撃離脱よりは… ●アサヒ:正面から撃ち合いたいな ●アサヒ:よし…マシンガンだ!」 ■イブキ:「…好きな事が、一番」 ●アサヒ:「だな!ありがとなイブキ」 ■イブキ:「…(頷く)」 ●アサヒ:「あとはここをこうしてっと… ●アサヒ:さぁ、出撃だ!」 ●アサヒ: 0:【場面転換】ゲーム内 市街地フィールド ●アサヒ:「待たせたな!」 ■イブキ:「…その機体」 ●アサヒ:「おう!カッコいいだろ~? ●アサヒ:真紅にペイントしてみた!」 ■イブキ:「…派手」 ●アサヒ:「あ…やっぱダメか?」 ■イブキ:「…陽動には最適」 ●アサヒ:「そ、そっか! ●アサヒ:よーっし、やるぞ!」 ■イブキ:「…その調子」 ●アサヒ:「イブキの機体は… ●アサヒ:そりゃあもしかして…”戦車”か?」 0:大型のキャタピラに搭載された 0:巨大な砲塔がギラリと光る ■イブキ:「…そう、主力戦車タイプ」 ●アサヒ:「すげえ砲塔だな?」 ■イブキ:「…火力特化モデル…らしい」 ●アサヒ:「らしい?」 ■イブキ:「…”試乗”を依頼されてる」 ●アサヒ:「そうなんだ?友達か?」 ■イブキ:「…そんなとこ」 ●アサヒ:「へ~見るからに強そうだなぁ」 ■イブキ:「…くる」 ●アサヒ:「っと!おいでなすったか!」 ▲シノブ:「まだこんな所にいらしたのですね? ▲シノブ:てっきり、そちらから近いベータ地点を ▲シノブ:防衛しているとばかり…」 0:動物のようなシルエットを持つ機体が 0:およそ1km程先の橋の上から 0:こちらの様子を見ている ●アサヒ:「オープン回線…? ●アサヒ:それにアレは…”獣脚”…か?」 ■イブキ:「…”何か”あるかも」 ●アサヒ:「何かって?」 ■イブキ:「…”遊撃”型は ■イブキ:奇襲に特化した機体」 ●アサヒ:「なるほど、正面から来たって事は ●アサヒ:余程の自信家か…あるいは―――」 ▲シノブ:「さぁ?どちらでしょう?」 ■イブキ:「…気を付けて」 ●アサヒ:「とはいえ、牽制しようにも ●アサヒ:こっからじゃ何もできねぇな… ●アサヒ:どうする?」 ■イブキ:「…大丈夫」 ●アサヒ:「イブキ?」 ■イブキ:「風速約3m、距離926m前方 ■イブキ:仰角(ぎょうかく)修正…」 0:砲塔が遠方のターゲットを捉える ●アサヒ:「もしかしてオマエ―――」 ■イブキ:「ファイア」 0:轟音と共に発射された砲弾が 0:勢いよく標的目掛けて飛んでいく ●アサヒ:「ッ!マジで撃った!?」 ▲シノブ:「まさか…あの距離から」 0:砲弾は橋の真ん中に着弾、 0:強烈な衝撃波を伴い、爆発 ●アサヒ:「うぉお…すんげぇ… ●アサヒ:それになんつー威力だ… ●アサヒ:ホントに耐久型なのか…? ●アサヒ:あんなのを喰らったらさすがに…」 ■イブキ:「…はずした」 ●アサヒ:「今の爆発でか?」 ■イブキ:「…直撃はしていない ■イブキ:想定よりも弾速が遅かった」 ●アサヒ:「そ、そうか…はは…」 ▲シノブ:「驚きましたよ~ ▲シノブ:本当にあの距離からここまで ▲シノブ:耐久型の砲撃を届かせるなんて… ▲シノブ:さすが…イブキさんですね?」 0:倒壊した橋が巻き上げた煙の中から 0:獣脚のロボットが跳び出し 0:こちらを挑発するかのように身を震わす ●アサヒ:「ピンピンしてやがる… ●アサヒ:いや、それよりも ●アサヒ:やっぱイブキの事を知って…?」 ■イブキ:「…要警戒」 ▲シノブ:「次はこちらから参ります」 0:しなやかな動きでこちらへと走り出す ●アサヒ:「気を付けろ!イブキ!!」 ■イブキ:「…問題ない」 ●アサヒ:「い、イブキ?」 ■イブキ:「…次は、当てる」 ▲シノブ:「期待してますよ?」 0:すると、獣脚ロボットの姿が 0:忽然と目の前から消える ●アサヒ:「なっ消えた…?どこだ!?」 ■イブキ:「…よく見て」 ●アサヒ:「ん!?…なんだ? ●アサヒ:空間が一部分だけ歪んでいる?」 ■イブキ:「…”影”を狙って」 ●アサヒ:「影…そうか!うぉおおお!!」 0:地面に落ちた影をがむしゃらに撃つアサヒ 0:立ち上る砂埃が光学迷彩に干渉し、 0:その輪郭が露(あらわ)になる ▲シノブ:「チィッ…光学迷彩の弱点を…」 ●アサヒ:「今だイブキ!」 ▲シノブ:「しまっ―――」 ■イブキ:「おしまい」 ●アサヒ:(M)『イブキの放った砲弾が直撃し、 ●アサヒ:爆発と共に相手の機体を吹き飛ばす ●アサヒ:構成していたパーツの破片が ●アサヒ:周囲に散らばった』 ■イブキ:「…」 0:立ち上る煙と炎を見つめるイブキ 0:離れていたアサヒが傍に近寄る ●アサヒ:「す…すげぇ… ●アサヒ:見えねぇ敵をあっさりと… ●アサヒ:やったな!あとは…ん?」 0:返事がないイブキを訝しむアサヒ ●アサヒ:「イブキ?」 ■イブキ:「…おかしい」 ●アサヒ:「おかしい?なにがだ?」 ■イブキ:「…簡単過ぎる」 ●アサヒ:「そ、そうか? ●アサヒ:でも、それはイブキが―――」 ■イブキ:「…ッ!」 0:急に戦車をぶつけるイブキ 0:その衝撃で横転するアサヒ ●アサヒ:「ちょ!イブキ!? ●アサヒ:スキンシップにしちゃ大げさだぞ!?」 ■イブキ:「…ゴメン」 ●アサヒ:「イ…ブキ…?」 0:見ると、イブキの操る戦車の 0:キャタピラ部分が、 0:高熱の刃で切り裂かれたかのように 0:大きく損壊している ■イブキ:「…指示が、遅れた」 ▲シノブ:「咄嗟(とっさ)に仲間を助けるなんて ▲シノブ:…お優しいんですね?」 0:戦車の背面から、 0:黒い獣が顔を覗かせた 0:それは紛れもなく、 0:先ほど吹き飛んだはずの機体 ●アサヒ:「オマエ…!さっき確かに!?」 ■イブキ:「…迂闊(うかつ)だった」 ●アサヒ:「え?」 ■イブキ:「…自分の”スキン”を、 ■イブキ:NPCにかぶせて偽装してた」 ●アサヒ:「そうか…オープン回線だったのも、 ●アサヒ:NPCという事を隠蔽(いんぺい)するため…」 ▲シノブ:「ご明察ですね…その通りですよ? ▲シノブ:もう少し見ていたかったのですが… ▲シノブ:そちらの方が余りに無防備でしたので、つい」 ●アサヒ:「くっ…イブキ… ●アサヒ:オレが油断したせいで…すまねぇ」 ■イブキ:「…大丈夫 ■イブキ:履帯(りたい)が持っていかれただけ」 ▲シノブ:「さすが耐久型ですね? ▲シノブ:…けれどアナタが動けないなら、 ▲シノブ:残るはそちらの素人さんのみ… ▲シノブ:こちらとしては勝ったも同然です」 ●アサヒ:「やるってんなら相手になるぜ! ●アサヒ:かかってこいよ!!」 ▲シノブ:「熱いですね~? ▲シノブ:ですが、お断りします」 ●アサヒ:「な、なに?」 ▲シノブ:「ここでアナタをいたぶっても ▲シノブ:どうせすぐ終わってしまいますし ▲シノブ:楽しくありません」 ●アサヒ:「…なんだと?」 ▲シノブ:「せっかくですから、 ▲シノブ:ワタシは攻撃側として ▲シノブ:そちらの拠点を爆破させて頂きます ▲シノブ:アルファ地点でお待ちしていますね?」 0:立ち去ろうと背を向けるシノブ ●アサヒ:「逃げるってのか!戦えよ!!」 ▲シノブ:「はぁ…ルールを確認するのが、 ▲シノブ:本来の目的なんですよね? ▲シノブ:そちらにとっても、 ▲シノブ:悪くない提案だと思ったんですけど?」 ●アサヒ:「それとこれとは―――」 ■イブキ:「良い…」 ●アサヒ:「なっ…イブキ?」 ■イブキ:「…行かせて」 ▲シノブ:「イブキさんは冷静で助かります ▲シノブ:まぁ、たかがゲームですから ▲シノブ:それでは」 0:そう言い残し、2人を残して 0:シノブはビルの屋上へと飛び移り、 0:姿を消した ●アサヒ:「アイツ!!」 ■イブキ:「…落ち着いて」 ●アサヒ:「けど!」 ■イブキ:「…撃ってたら、倒す前に ■イブキ:間合いを詰められておわり」 ●アサヒ:「オレには…勝てないってのかよ」 ■イブキ:「…これは、”チャンス”」 ●アサヒ:「チャンス?」 ■イブキ:「…相手は、油断してる」 ●アサヒ:「でも…それはオレが初心者で ●アサヒ:弱いからだろ…」 ■イブキ:「確かに、キミは初心者」 ●アサヒ:「ぐ…」 ■イブキ:「でも、違う」 ●アサヒ:「…ぇ?」 ■イブキ:「キミは、強い」 ●アサヒ:「オレが…強い?」 ■イブキ:「そう、だから…大丈夫」 0:イブキの声は落ち着いていて 0:けど、どこかに感じる想い ■イブキ:「ボクに構わず、行って」 0:その声だけで伝わる、”気持ち” ●アサヒ:「…あぁ、わかった」 0:そう答える事しかできなかった ■イブキ:「…うん」 0:ただ、 0:言わずにはいられなかった ●アサヒ:「イブキ」 ■イブキ:「…?」 ●アサヒ:「仇は、必ずとってやる」 0:その言葉を、言わずには ■イブキ:「…頑張って」 0:背を向け、去って行くアサヒ 0:機体がビルの向こうへと消えた後 0:自分の機体に目を落とすイブキ ■イブキ:「…無理させて、ごめんね」 0:コックピット内の機材を撫ぜ 0:そう呟いた 0: 0:【場面転換】アルファ地点 拠点付近 0:機体を操り、駆け抜けるアサヒ 0:エネルギーを気にしつつ、 0:ブーストを適度に吹かす ●アサヒ:「アイツ…どこ行ったんだ…?」 0:周囲を警戒するが、 0:それらしき影すら見えない 0:目に映るのは崩壊した街の景色 ●アサヒ:「にしても、足場が悪いな… ●アサヒ:あちこち瓦礫(がれき)の山だ… ●アサヒ:二脚だと移動しずらい…」 ▲シノブ:「やっと来ましたか~ ▲シノブ:待ちくたびれましたよ?」 ●アサヒ:「ッ!どこだ!?」 ▲シノブ:「ここですよ~?」 0:上を見上げると、シノブの駆る獣脚が 0:高層ビルの屋上から見下ろしていた ●アサヒ:「あんな所に…! ●アサヒ:降りて来い!」 ▲シノブ:「はぁ?何を言い出すかと思えば… ▲シノブ:アナタ、バカなんですか? ▲シノブ:ワタシは敵ですよ?来いと言われて、 ▲シノブ:行く訳無いじゃないですか」 ●アサヒ:「んだとぉ…!」 ▲シノブ:「アナタの方こそ ▲シノブ:登って来れば良いじゃないですか? ▲シノブ:あぁ…もしかして、 ▲シノブ:それすら”出来ない”とか?」 ●アサヒ:「じょ…上等だ…! ●アサヒ:ちょっと待ってろ!? ●アサヒ:今から行くからな!!」 0:ブーストを吹かしながら跳躍し 0:建物の壁面にまるで 0:食らいつくようによじ登る ▲シノブ:「こちらですよ~」 0:アサヒとは対照的に 0:地面を、壁を、縦横無尽に翻弄し 0:猫の様に移動するシノブ ●アサヒ:「待ちやがれ!」 ▲シノブ:「そんな速度で、 ▲シノブ:ワタシを捉えられるとでも?」 ●アサヒ:「く…機体が、重い…!」 0:ブーストを吹かし近づくが、 0:漂うような挙動に振り回される ▲シノブ:「まるでダメですね… ▲シノブ:勢いは口先だけですか?」 ●アサヒ:「まだ感覚が掴めて無いだけだ! ●アサヒ:これから―――」 ▲シノブ:「アナタ、甘いんですよ ▲シノブ:自分勝手な期待をして、 ▲シノブ:”理想”ばかりを追い求める… ▲シノブ:できるはずも無いのに」 ●アサヒ:「…理想を求めて何が悪い」 ▲シノブ:「”夢想”の間違いでしょ? ▲シノブ:そんな夢物語なんて、 ▲シノブ:現実には存在しません!」 ●アサヒ:「無ければ作ればいいだろ…! ●アサヒ:他人をバカにする奴に、 ●アサヒ:神も仏も!微笑んだりはしない!!」 ▲シノブ:「…! ▲シノブ:知った風な口をッ!!」 0:壁を蹴り、襲い掛かるシノブ 0:鋭い爪がアサヒの機体に食い込む ●アサヒ:「ぐぁああッ!」 0:叩き落され、ビルに突っ込むアサヒ ▲シノブ:「…柄にもなく、熱くなってしまいました ▲シノブ:アナタは、そこで埋まっていて下さい ▲シノブ:ワタシはアルファを爆破してきます」 ●アサヒ:「ぐ…うぅ…ッ!」 ▲シノブ:「思い知れば良いんですよ… ▲シノブ:自分の愚かさと、無力さを」 ●アサヒ:「チク…ショウ…」 0:目の前が暗くなるアサヒ 0:暫くすると、何処からか 0:”声”が聞こえてくる… ■イブキ:「…サヒ」 ●アサヒ:(М)『呼んでいる…?』 ■イブキ:「…アサヒ」 ●アサヒ:(М)『誰かが、オレを… ●アサヒ:この声は…一体―――』 ■イブキ:「…起きて」 ●アサヒ:「ん…イブキ…?」 ■イブキ:「…起きた?」 ●アサヒ:「あ、あぁ…悪ぃ」 ■イブキ:「…大丈夫?」 0:軽い脳震盪を起こしたらしい 0:後頭部を擦る ●アサヒ:(М)『どれ程眠っていたのだろう ●アサヒ:仇をとると言いつつ何もできず、 ●アサヒ:逆に心配される自分が不甲斐ない』 ■イブキ:「…動ける?」 ●アサヒ:「心配すんな ●アサヒ:ちょっと…躓(つまず)いた」 ■イブキ:「…そう」 ●アサヒ:「どうも調子狂うぜ…な~んかこう、 ●アサヒ:キビキビ動けねぇんだよなぁ… ●アサヒ:ったく情けねぇ」 ■イブキ:「…”ブーストアシスト”のせい?」 ●アサヒ:「ん?なんだソレ?」 ■イブキ:「…搭載されているシステムの”1つ” ■イブキ:機体制御に自動でアシストを加える」 ●アサヒ:「お…コレか?」 0:見上げるとスイッチがあり 0:作動しているように青く光っている ●アサヒ:「切れるのか?」 ■イブキ:「…切れる ■イブキ:けど、操作難度が跳ね上がる」 ●アサヒ:「オフっと」 ■イブキ:「…本気?」 ●アサヒ:「”為(な)せば成(な)る”さ ●アサヒ:知らないか?」 ■イブキ:「…?」 ●アサヒ:「へへっ…ま、見てなって ●アサヒ:きっと面白い事に…ん?」 0:画面上部、 0:謎の赤いタイマーが起動する ●アサヒ:「急にどうしたんだ?」 ■イブキ:「…起爆時間」 ●アサヒ:「って事は…そうか爆弾!」 0:タイマーは240秒を切った ■イブキ:「…時間がない」 ●アサヒ:「急がねぇと!のわッ!!」 0:つんのめるアサヒ 0:機体が前のめりにバランスを崩す ■イブキ:「…どうしたの?」 ●アサヒ:「いや、なんでもねぇ ●アサヒ:さっき設定をいじったから ●アサヒ:どっかでエラーでも吐いてんだろ」 ■イブキ:「…やっぱり、元に戻す?」 ●アサヒ:「時間がねぇんだ… ●アサヒ:むしろこっちの方が安心する」 ■イブキ:「…安心?」 ●アサヒ:「ああ…これだけ”似て”たらな…」 ▲シノブ:「まだ戦うつもりですか…?」 0:ビルの屋上からこちらを見下ろし 0:威嚇するように牙を見せるシノブの機体 ●アサヒ:「オマエ…!戻って来やがったのか!」 ▲シノブ:「いい加減に諦めて下さい ▲シノブ:爆弾は起動し、 ▲シノブ:マップも把握できず、 ▲シノブ:頼れる味方すらいない… ▲シノブ:どうやっても勝つ見込みはありませんよ?」 ●アサヒ:「それは違うぜ?」 ▲シノブ:「え?」 ■イブキ:「…1人じゃない」 0:突如、空から砲弾が着弾 0:辺りが火に包まれる ▲シノブ:「な、コレは…”爆撃”? ▲シノブ:まさかあの位置から!?」 ●アサヒ:「助かったぜ!イブキ!」 0:搭載されている特殊装備、 0:”オーバーブースト”を使用し 0:直線を一気に駆け抜ける ■イブキ:「…前方の曲がり角を抜ければ拠点 ■イブキ:でもその機体じゃ、もう…」 ●アサヒ:「為せば成る!」 ■イブキ:「…どうやって?」 ●アサヒ:「このまま内部データを ●アサヒ:書き換える!」 ■イブキ:「…拠点の爆発まで1分しかない ■イブキ:失敗したら―――」 ●アサヒ:「そんな事わかってる!!」 ■イブキ:「…”できる”の?」 ●アサヒ:「できるかどうかじゃない! ●アサヒ:”やる”んだ!! ●アサヒ:データメモリを経由して、 ●アサヒ:各種パラメーターとBCIを再設定 ●アサヒ:スラスター出力及び、 ●アサヒ:バーニア可動域変更 ●アサヒ:エリアルホバーパワーバランス調整 ●アサヒ:フィードフォワードネットワーク再起動 ●アサヒ:システムオンライン… ●アサヒ:ブースター点火、最大出力ッ! ●アサヒ:曲・が・れぇぇぇええええええ!!」 0:一筋の赤い光の線を描いて 0:火花を散らしながら 0:機体がカーブを突破する ■イブキ:「…赤い…光」 ●アサヒ:「どうだ!」 ■イブキ:「…すごい、今までに見たことがない」 ▲シノブ:「あの速度で曲がり切るなんて… ▲シノブ:けれど、これで!」 0:建物の上から獲物に跳びかかるシノブ ●アサヒ:「させるかぁあああ!!」 0:強烈なブーストで前方へと飛び上がり、 0:その慣性を持ったまま左、前、右、前の 0:連続したブーストでシノブの攻撃を躱す 0:更にブーストを用いた高速旋回で背後をとり、 0:そしてすかさず、 0:後方へのブーストで距離を空ける 0:勢い良く着地した機体の重量で 0:アスファルトとコンクリートが粉々に砕けた ▲シノブ:「まさか!躱(かわ)された!?」 ■イブキ:「あの機動は…」 ●アサヒ:「全砲門…展開!」 0:停止したアサヒの機体の銃口が 0:攻撃動作を終えたシノブの機体を捉える ▲シノブ:「そんな―――」 ●アサヒ:「発っ射ぁあああ!!」 0:着地後の硬直に合わせた一斉射撃 0:回避も間に合わず全弾が命中し、 0:シノブの機体パーツが四散する ▲シノブ:「うぁあああ!」 0:銃口から射撃の余韻を残す硝煙が立ち昇り 0:相手の完全停止を告げる ●アサヒ:「…イブキ」 0:銃を下ろすアサヒ ●アサヒ:「仇は、とったぜ?」 ■イブキ:「…ありがとう」 0:警告音が鳴り響く ●アサヒ:「あ…いっけね!爆弾解除!!」 ■イブキ:「…間に合う?」 ●アサヒ:「為せば成るだ! ●アサヒ:いっけぇえええ!!」 0:再びオーバーブースターを起動し、 0:そこに連続ブーストを織り交ぜた高速移動 0:音速を超える程の衝撃波が発生し、 0:周囲の建物の窓ガラスが割れる ■イブキ:「…解除コードは〇〇〇〇(※日付4桁)」 ●アサヒ:「わかったイブキ! ●アサヒ:間に合ぇえええええ!!」 0:操作パネルから解除コードを入力 0:タイムリミットを示すタイマーが停止し 0:周囲の警報が鳴りやむ ●アサヒ:「(息切れ)と、止まった?」 ■イブキ:「…止まった」 0:見上げれば画面にWINの文字と 0:盛大に流れるファンファーレ ●アサヒ:「やったぜ!オレ達の勝ちだ!! ●アサヒ:バンザ~イ!!」 ■イブキ:「…お疲れ様、アサヒ」 ●アサヒ:「お疲れイブキ! ●アサヒ:…って今!」 ■イブキ:「…どうかした?」 ●アサヒ:「”また”…呼んでくれたな!」 ■イブキ:「…うん」 ●アサヒ:「えへへ…ありがとな!!」 ■イブキ:「(小声)…本当に、良かった」 ●アサヒ:「ん?なんか言ったか?」 ■イブキ:「…なんでもない」 ●アサヒ:「ま、いいや!ロビーに戻ろうぜ!」 ■イブキ:「…うん、帰ろう」 0:そう言いながら機体を擦る 0:口元に少しの笑みを浮かべて 0: 0:【場面転換】 ビギナーロビーブース 0:筐体前で話すアサヒとイブキ ●アサヒ:「いやあ~面白れぇな!」 ■イブキ:「…気に入った?」 ●アサヒ:「ああ!最高だぜクロス・オーバー! ●アサヒ:武器も色々使ってみたいな!」 ■イブキ:「…沢山ある」 ●アサヒ:「そっかあ~そりゃあワクワクするな!」 ■イブキ:「…ん」 ●アサヒ:「ん?どうしたイブキ―――アイツ…」 0:顔を上げると、 0:少しムッとした表情のシノブが 0:腕を組んで2人をジッと見ている ▲シノブ:「…」 ●アサヒ:「まだなんか用か?」 ▲シノブ:「”グッド・ゲーム”」 ●アサヒ:「え?」 ■イブキ:「…試合後の”挨拶” ■イブキ:楽しかったとかの意味」 ▲シノブ:「そんな事も知らないんです? ▲シノブ:まったく…頭良いんだかバカなんだか」 ●アサヒ:「な!バカとはなんだバカとは!!」 ▲シノブ:「ばぁ~か」 ●アサヒ:「コイツ!?」 ▲シノブ:「冗談です、本当に良い試合でしたよ」 0:組んでいた腕を解き、 0:アサヒに向き直って 0:握手を求めるシノブ ●アサヒ:「お…おお ●アサヒ:そっちこそ、すげー強かったぜ! ●アサヒ:ありがとな!グッド・ゲーム!!」 0:握手に応じるアサヒ ●アサヒ:「オレは、アサヒだ」 ▲シノブ:「ワタシは、シノブです」 0:握手を交わし、互いを称え合う ■イブキ:「…2人とも、グッド・ゲーム」 0:それを見て微笑むイブキ ▲シノブ:「ええ、イブキさんも ▲シノブ:砲撃による偏差射撃…お見事でした」 ●アサヒ:「そういや… ●アサヒ:なんでイブキの事知ってたんだ? ●アサヒ:初対面だったんだろ?」 ■イブキ:「…初対面、のはず」 ▲シノブ:「そうですね、 ▲シノブ:イブキさんは知らないでしょう…」 ●アサヒ:「どういう事だ?」 ▲シノブ:「今年の”世界模試”、覚えていますか?」 ●アサヒ:「世界模試ぃ~?なんだそりゃ?」 ■イブキ:「…年に一度の学生行事 ■イブキ:年初めにあって、先日結果が出た」 ▲シノブ:「ワタシはその試験で”ある科目”以外、 ▲シノブ:1番の成績だったんです」 ●アサヒ:「天才かよ…ん? ●アサヒ:ある科目以外?それって―――」 ■イブキ:「…物理演算試験」 ●アサヒ:「ははぁ~ん?つまり…」 ▲シノブ:「ワタシに唯一黒星を付けた相手… ▲シノブ:どんな方なのか、気になっていたんです ▲シノブ:まさか、同じゲームをプレイしているとは ▲シノブ:思っていませんでしたけどね」 ●アサヒ:「なるほど、納得」 ▲シノブ:「結果としては負けてしまいましたが、 ▲シノブ:後悔はしていません ▲シノブ:一矢報いる事もできましたし、ね?」 ■イブキ:「…強かった」 ▲シノブ:「ありがとうございます ▲シノブ:素直に受け取りますよ」 ●アサヒ:「2人ともすげぇなぁ~ ●アサヒ:試験かぁ… ●アサヒ:嫌な事思い出しちまったぜ…」 ■イブキ:「…嫌な事?」 ▲シノブ:「アナタも試験を受けていたんですか? ▲シノブ:でも、世界模試ではないんですよね?」 ●アサヒ:「ソレとは別だ… ●アサヒ:ま、ダメだったんだけどさ」 ▲シノブ:「世界模試と同じ時期に…? ▲シノブ:何の試験か、お伺いしても?」 ■イブキ:「…ボクも知りたい」 ●アサヒ:「う、うーん ●アサヒ:笑うなよ…?」 ■イブキ:「笑わない」 ▲シノブ:「笑いませんよ」 ●アサヒ:「宇宙飛行士の… ●アサヒ:”特級資格試験”だ」 ■イブキ:「…宇宙」 ▲シノブ:「飛行士…?」 ●アサヒ:「だ、だから… ●アサヒ:他の事してる暇無かったんだよ! ●アサヒ:システム周りの勉強とか…体づくりとか… ●アサヒ:今回は上手くいかなかったけど、 ●アサヒ:また来年頑張るさ!」 ▲シノブ:「なれるかもしれませんよ? ▲シノブ:来年とは言わず、”今年中”に」 ■イブキ:「…アサヒならできるかも」 ●アサヒ:「え?」 ▲シノブ:「アナタは知らないみたいですけど ▲シノブ:クロス・オーバーでは今年 ▲シノブ:”世界大会”があるんです ▲シノブ:勝者には栄光と名誉、 ▲シノブ:そして報酬が与えられます ▲シノブ:それも…”特別な報酬”がね?」 ●アサヒ:「ソレって…まさか」 ■イブキ:「…政府公認の、特級資格」 ●アサヒ:「おいおいマジか!ホントに!? ●アサヒ:すげぇ…凄すぎるぜ!! ●アサヒ:このメンバーでなら、絶対やれる!」 ■イブキ:「…うん」 ▲シノブ:「ぇ…ワタシも…? ▲シノブ:いいんですか?」 ●アサヒ:「水クセェな!仲間だろ?」 ▲シノブ:「まったく…アナタって人は…」 0:少し安心したような表情のシノブ ●アサヒ:「チームメンバーは5人必要だったな… ●アサヒ:ソイツさえなんとかなれば」 ■イブキ:「…あとの2人は、当てがある」 ●アサヒ:「ホントかイブキ!?」 ■イブキ:「…任せて」 0:胸に手を当て、微笑むイブキ ●アサヒ:「さすがだぜ! ●アサヒ:そうと決まれば、手を出せ!!」 ■イブキ:「…?こう?」 ▲シノブ:「こうですか?」 0:手の甲を前に出し重ねる3人 0:顔を見合わせ、クスリと笑う ●アサヒ:「よぉおおおし!やるぞ!! ●アサヒ:目指すは、世界一だ!!!」 ●▲■:「おー!」 0:高らかな宣言と共に挙げた 0:それぞれの手の先で 0:流れ星が、煌めく ●アサヒ:(М)『夕日を背にしてはじまった… ●アサヒ:この日、この時、この場所が、 ●アサヒ:オレ達にとっての”スタートライン”―――』 0:Fin. 0:※詳細な設定は元サイトに記載