台本概要

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タイトル 【ガラクタの国のアリス ep.悦楽の宴】
作者名 ハルヒコ  (@kyotaro0625)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、不問3) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 【あらすじ】
「Welcome to the world. ようこそ僕らの夢の世界へ」
突如現れた『黒ウサギ』によって『アリス』はガラクタの国に引き込まれる。
アリスもといクリスとなった彼はシルクハットのキザ男『帽子屋』やその仲間達とのお茶会に明け暮れるようになる。
楽で楽しいお茶会、だけども何故かそこから足が遠のくクリス。
クリスの望みとは、そして彼の行き着く未来とは。

【台本利用規約】
基本的に盗作や自作発言など著作権を侵害されるような事がなければ、どの媒体で使っていただいても構いません。
アイテム等が投げられる場でもOKです。
男女逆転、アドリブ等も周りの迷惑にならない範疇では可とします。
セリフの一部抜粋、サンプルボイスに使用等も可能です。
ボイドラや舞台などで使われる際は、ご一報くださると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
アリス 不問 74 ガラクタの世界に招かれた少年。 怠け者でバイオリンを弾いて遊ぶことが好き。
ガラクタ 不問 32 道化師のような格好をしている。 ガラクタの世界のオーナー。 多弁で説教くさい。
帽子屋 32 シルクハットをかぶった男。 紳士だがキザったらしい。
三月ウサギ 23 ガラクタの国の住人。 日々紅茶で飲んだくれている。 黒ウサギ兼任。女性が演じても可。
眠りネズミ 不問 22 ガラクタの国の住人。 常にウトウトしている。 働き蟻兼任。
黒ウサギ 6 黒いウサギ耳の付いた青年。 ガラクタの国の案内人。無口。
働き蟻 不問 3
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
アリス:ああ、嫌だ…嫌だぁ…僕はこんなこと望んでない。 アリス:違うんだ…。  : アリス:(M)ひもじい、辛い、苦しい、助けて、助けて…。 アリス:でもまさか本当に、これが僕が望んだ『果て』…?  : アリス:お願い…。 アリス:見捨てないで、ガラクタだけど…。  : ガラクタ:さあ、おいで。可愛いガラクタ達よ。 夢の国の使者にさそわれて。ゴミ箱に身を投げる前に。 ガラクタ:さあ、おいで。愛しいガラクタ達よ。 僕らは価値なき物であって、廃棄物(ゴミ)じゃない。   ガラクタ:さあ、おいで。哀れなガラクタ達よ。 ここは、僕らだけの。僕らのための国。 ガラクタ:Welcome to the world.  ようこそ、僕らの夢の世界へ。 0: アリス:《バイオリンを弾き、歌を歌いながら悦に浸っている》 アリス:ら~ら~ららら~ら~♪ アリス:はあ、今日も天気が良くて気持ちがいいなあ。 アリス:一日中木陰で惰眠をむさぼるのも悪くない。  :(ガサリと草木を大きく揺らす音が聞こえる) アリス:ん? 黒ウサギ:《スンスンと鼻を動かしあたりを見回す》 アリス:うわ!うわわわあ!動物だ! アリス:に、逃げなきゃ…! 黒ウサギ:《アリスを見つめる》 アリス:わああああ!ダメだ、たべっ食べられる!  :(瞬間、地面がブラックホールのようにあたり一帯を吸い込んでいく) アリス:なっ、なんだ!?地面にっ!ひっ、引きずり込まれる! アリス:あああああ! 0:  :(小鳥のさえずりがこだまする森の中、アリスが仰向けで倒れている) アリス:…ん? 黒ウサギ:《身をかがめアリスをじっと見つめている》 アリス:うわ! アリス:ななな、なんだ!? 黒ウサギ:《手を差し出す》 アリス:え!?いったい何だって言うんだ!?誰!? 黒ウサギ:《さらに手をずいと差し出す》 アリス:誰だって聞いてるだろ!!やめろ… ガラクタ:《アリスのセリフに被せるように》 ガラクタ:なあにただの親切だよ、さあ、その手を取るんだ、アリス。 アリス:え…? ガラクタ:臆病なことはいいことだ、それは動物の本能であるのだから。 ガラクタ:本能に従順だということはとても素直で、あるべき姿とも言える。 アリス:はぁ…? ガラクタ:《ニッコリ笑って》 ガラクタ:さあ、彼の手を取って。 アリス:《おずおずと黒ウサギの手を取る》 アリス:……。 アリス:お、起こしてくれてありがとう…。 ガラクタ:だってさ!まったくうらやましいよ。 ガラクタ:こんなに、さっそく、アリスにお礼を言ってもらえるなんて光栄の至りだね黒ウサギ。 黒ウサギ:《少しうれしそうに耳をピコピコと動かす》 アリス:……。 ガラクタ:ああ、申し訳ない。なんて不敬だ! ガラクタ:僕としたことが大切な名前を名乗り忘れるなんて! ガラクタ:僕はガラクタ、この世界のオーナーさ。 アリス:ガラクタ…?なんだかへんてこな響きだ…それに…えっとその格好は? ガラクタ:ははは!いいねアリス!やはり君は素直だ!賞賛に値するまでに! ガラクタ:格好かあ…これが何だと聞かれても、僕は道化師だからね、おどけた格好をしているんだ。 ガラクタ:そして、そこの彼は黒ウサギ、君をこの世界まで導いた案内人さ。 アリス:ひッ!なんだい?その、彼の頭についているものは! ガラクタ:そりゃあ耳だよ!彼はウサギなんだから頭のてっぺんに耳が生えてなきゃおかしいだろう? アリス:そ、そうなの…? ガラクタ:まあ無理もないよ、君はまだこの世界に来たばかりだし。 ガラクタ:摩訶不思議なことだらけだろう。だから、ここは不思議の国なんて呼ばれたりもするんだ。 ガラクタ:おいで、ここを案内しよう。そして君が気に入った場所に居つくといい。  : アリス:(N)そうして僕は、ガラクタの国と呼ばれる世界を連れまわされた。 アリス:そしてそこで――帽子屋という奇妙な男に出会った。 0:  :(森を抜けた一角)  :(広い長テーブルに紅茶や菓子がずらりと並び、盛大なお茶会が催されている) ガラクタ:やあ、今日もいつもと同じように盛り上がっているね。 帽子屋:やあ、ガラクタ。ああ、いつもと同じように楽しんでいるよ。 帽子屋:君も一杯と言わずいっぱい紅茶をいかがかな? 三月ウサギ:なんれもない日ぃ~かんぱぁ~い! 眠りネズミ:なんでもない日、かんぱぁい…。 ガラクタ:お誘いいただいて申し訳ないんだけれど、僕は楽しくない別のことで忙しい身でね。 ガラクタ:紹介したい人がいるんだ。 ガラクタ:さ、アリス。 アリス:うん。 帽子屋:おや!なんと!アリスかい、なんてめでたいんだ! 帽子屋:みんな、お茶会の名目を変更しよう! アリス:え? 帽子屋:《アリスに近づき》 帽子屋:こんにちはアリス、そしてようこそ君の歓迎会へ。 帽子屋:君と出会えたことは僕の生涯の喜びさ。 帽子屋:《ひざまずき、アリスの手の甲にキスを落とす》 アリス:げ!な、なにするんだ! 三月ウサギ:へへへッ、お近づきのチッス! 眠りネズミ:そうキッス、チュウチュウ~…。 アリス:なんで僕を女の子扱いするんだ! アリス:大体みんなこぞって、アリスアリスって…アリスなんて女の名前じゃないか! 三月ウサギ:ファッファッ!ファ~~!ホントだぁこりゃあ傑作! 三月ウサギ:僕はアリスゥ~!ヒャッヒャッ! 帽子屋:ん~、僕は別に違和感はないけどね? 帽子屋:《アリスのあごに指を添えて》 帽子屋:だって君はこんなに愛らしいんだから。 アリス:うわっ!だから!そういう女の子扱いをやめてくれって言ってるんだ! アリス:なんなんだよ…恥ずかしい奴だな! 眠りネズミ:そう、帽子屋は…恥ずかしい…ポットがあったら、入りたい…。 帽子屋:そうか、まあ確かに僕も君が嫌がることをするのは本意じゃない。 帽子屋:じゃあそうだな…『クリス』なんてどうだろうか? 帽子屋:君にピッタリの良い名だと僕は思うんだが。 ガラクタ:はっはっは、クリス、か! ガラクタ:うん、いい!君の帽子からは到底考えられないようなハイセンスなネーミングだね! アリス:まあ、アリスよりはいいか…なんだか名前が思い出せないし…。 三月ウサギ:今日はぁ~記念すべき~!我らがクリスを盛大に祝して、カンパ~イ! 眠りネズミ:やんややんや、飲めや歌えや…かんぱぁい…《眠り》スゥスゥ…。 アリス:……ぷっ!ほんとに、なんだか滅茶苦茶な連中だなあ。 帽子屋:ああ、秋になっても飽きの来ない僕の自慢の友人たちさ、では改めてクリス。 帽子屋:紅茶をどうぞ、乾杯。 ガラクタ:その自慢の友人たちが僕らの最愛のアリスにこれ以上無礼を働かないことを祈るよ。 ガラクタ:それじゃあクリス、楽しんで。 0: アリス:(N)そして僕は来る日も来る日もお茶会に明け暮れた。 アリス:僕がいつ行っても、テーブルの上はどんちゃん騒ぎだ。 アリス:毎日がお祭りのように楽しい日々、何故か僕はこの空間に懐かしさすら感じていて。 アリス:いつしかここは僕にとって楽園のような場所になっていた。  : 三月ウサギ:よぉ~クリスぅ!調子はどうでえ? 三月ウサギ:俺は最高だじぇ~! アリス:やあ、三月ウサギ、また紅茶で酔っ払ってるのかい? 三月ウサギ:なぁに言ってんでぇ、酔うわけねぇだるぉ?紅茶とミルクだってんでぇ~! 眠りネズミ:紅茶は…飲んでも、飲まれるな…ウトウト…。 帽子屋:いらっしゃいクリス。砂糖はふたさじ? 帽子屋:うん、さあ召し上がれ。 アリス:ありがとう帽子屋! 帽子屋:《アリスが持っているものに目を落とし》 帽子屋:おや?クリス。その手にしているものは…。 アリス:ん?ああ、これはバイオリンだよ! アリス:最近気づいたのさ、こんなに賑やかなお茶会なのに何か一味足りないってね! 帽子屋:ほお? アリス:音楽だよ!パーティーにはつきものだろ! アリス:喜んでよ、こう見えて僕はこれの演奏には自信があるんだ! 帽子屋:なんと!それは素晴らしい! 帽子屋:ぜひとも弾いて見せてくれないか? アリス:もちろん!さあみんなどんな曲がいい? 三月ウサギ:しっとりとしたジャぁぁズ! 三月ウサギ:ありゃあいいぜぇ、リズムに合わせて体をふりゃあ世界がぐるんぐるん回って心地いいじぇえ! 眠りネズミ:ぐっすり、うっとり…よく眠れる…子守歌…。 アリス:はぁダメダメ!そんな盛り下がるもの…。 アリス:音楽は楽しくなきゃ! アリス:《バイオリンを構えて》 アリス:さあ、歌に合わせて手を叩いて!ラララ~ワンツー!  :(アリスの音楽に合わせてまたどんちゃん騒ぎが始まる)  :(アリスが心地よく演奏しきる) 三月ウサギ:はっははぁ!こりゃあいい! 三月ウサギ:サイコーだ!ヒャッホー! 眠りネズミ:うぅん…拍チュ喝采…アンコール…。 帽子屋:クリスすごく良かったよ! 帽子屋:《アリスの手を取り》 帽子屋:ああ…あの美しい音楽はこの手から奏でられるのかい? 帽子屋:もしかしたらこれは博物館行きになってしまうかもしれないね! アリス:うわっ!もう…よせよぉ、照れるよ。 帽子屋:本当に素晴らしかった、ぜひ毎日聞かせていただきたいね。 帽子屋:そうだ!クリス、君ここ専属の音楽家になったらどうだい? 帽子屋:本当は僕専属で君を独占したいくらいだが…。 アリス:え?毎日…? アリス:んー確かに好きなことを仕事にできるなんてこれ以上いいことはなさそうだけど…。 アリス:でも毎日かあ…それは面倒だなあ…。 帽子屋:そうか、それは残念だな。 アリス:っていうか、仕事みたいな概念があったんだね…。 アリス:ここの人たちは何をして暮らしてるの? 帽子屋:ん?例えば僕は帽子屋さ。 アリス:誰かが帽子を買いに来たことなんて見たことないよ。 帽子屋:それでも帽子屋は帽子屋さ、帽子を売ることで生きているんだ。 アリス:ふうん…。じゃあ彼は?一日中紅茶を飲んで眠りこけているだけじゃないか。 帽子屋:眠りネズミは眠りネズミさ! 帽子屋:彼もまたこの世界で『眠るネズミ』という重大な役割をこなしてるのさ! アリス:なんだそれ…。 アリス:じゃあ僕も、何かしなくちゃいけないって言うの? 帽子屋:そうだね!なんてったって、君はアリスだ! 帽子屋:アリスはアリスにしかこなせないとびきり特別な役割さ! アリス:一体何をしろって言うのさ。 帽子屋:うーんそうだなあ…僕の知っている限りじゃあ、本を読んで勉強をしたり、 帽子屋:ああマッチを売っている子もいたね! アリス:うう、僕のやりたくないことばっかり…。 帽子屋:では違うことをしたらいいじゃないか!君は君のしたいことをしながら生きる。 帽子屋:アリスのしなければならないことはそれだよ、クリス。 アリス:うーん、なんか具体的じゃなさすぎるんだよなあ…。 アリス:…あ!じゃあ一生遊んで生きるっていうのは!? アリス:その感じだとそれもアリなんじゃないの!? 帽子屋:素晴らしい!やはり君は聡明だねクリス、飲み込みが早い。 帽子屋:君は君の生きたいように生きればいいのさ、僕らだって…まあ大半はそうして生きてるんだから。 三月ウサギ:べらんめぇ!なぁんだぁ、おめぇら~一滴もぉ飲んでねえじゃあねえかあ! 三月ウサギ:お~れの茶が飲めねえってのかぁ?お~い誰かポットもってこぉい! 三月ウサギ:いぃや!やかん!いんや大釜もってこぉい! 眠りネズミ:チュウチュウ、お話しチュウ…お取込みチュウに…しちゅれいしまチュウ…。 帽子屋:はっは、ごめんごめん。 帽子屋:クリス、君も今日は興が乗っているようだしもう一曲頼めないかな?  :(ガラクタ、お茶会の様子を離れた空中から眺めて) ガラクタ:一味足りない、ねぇ…。 ガラクタ:さあ、君は本当に刺激なんかを求めているのかな…? 0: アリス:(N)ここ数日僕はお茶会にめっきり顔を出していない、 アリス:居心地がいいことは確かだけど、なんだか…。 アリス:なんだか行く気がしなかった。 アリス:眠るでも何かするでもなく、ただ漫然とのんべんだらりとダラダラと。 アリス:空虚に日々を過ごした。 アリス:きっと毎日のお祭り騒ぎで疲れたんだろう。 アリス:そう、疲れた…ただ、疲れただけだ。 アリス:また、気持ちよく晴れて暖くなれば、きっと気分も変わるだろう。 アリス:暖かくなれば…。  :(コンコンと窓を叩く音がする) アリス:ん? ガラクタ:やあ! アリス:《窓を開けて》 アリス:ガラクタ…。 ガラクタ:実に、いやはや実に怠惰を謳歌しているじゃないか! ガラクタ:これは喜ばしい、最愛なるアリスが気だるさまで覚えるほど平穏な一日を過ごしているというのは。 アリス:《あくびを噛み殺し》 アリス:ふぁ…うるさいなあ、それでガラクタ何か用なの? ガラクタ:いいや? ガラクタ:何度も言うけれどアリス、君は僕にとって特別な存在なんだよ。 ガラクタ:友人以上に恋人以上に。 ガラクタ:そんな君に会いに来るのに理由がいるっていうのかい? ガラクタ:恋人が惹かれあい、焦がれて逢瀬を果たすように。 ガラクタ:家族が寝食を共にし、毎日顔を合わせるように…これは当然の行為で道理で動機であるのさ。 ガラクタ:それとも君はそんな当たり前なことにケチをつけるような妙竹林(みょうちくりん)な子なのかい? アリス:あー…もう、なんでもいいけど…。 アリス:とりあえず僕はアリスじゃなくて、クリスだよ。 アリス:そうだ、ちょうど退屈していたし何か面白いことをして見せてよ。 ガラクタ:うん? アリス:ん、なに? ガラクタ:面白いことを僕がすればいいのかい? アリス:え?だからそうって…。 ガラクタ:僕だけが?一人遊びのように? ガラクタ:面白いことと言うのは君が手ずからやってみて初めて面白いと感じるものなんじゃないのかい? ガラクタ:というか、君にとっての面白いことって…いったい何だい? アリス:……え。 ガラクタ:《パッと表情を変えて》 ガラクタ:ああ、そうか!ごめんごめん荒唐無稽な勘違いだったよ! ガラクタ:そういや僕はピエロだった!君を楽しませられるような技は有り余るほど持っていたんだった! ガラクタ:それを見せてあげればよかったんだね! アリス:そ…そうだよ!な、何か楽しい芸があるなら見せてよ。 ガラクタ:そうだなあ…これはひそかに練習していた新技なんだけど…。  : アリス:(M)なんだろう、なんだろう…。 アリス:さっきガラクタにまっすぐ見据えられた時、妙な気分がした。 アリス:何か腹の底の底の一番嫌な部分をチクリと刺されたような…そんな。 0:  :(数日後、アリスがお茶会に顔を出す) 三月ウサギ:ありゃこりゃあ! 眠りネズミ:あらぁ、これはー…。 アリス:やあ。 三月ウサギ:たぁまげた!何億年振りでぇ! 三月ウサギ:こんにゃろう生きてやがったのかぁ! アリス:まあね。 帽子屋:クリス! 帽子屋:ああなんてことだ、僕は君とはもう今生の別れかと…。 アリス:もうみんな大げさ。 眠りネズミ:どうして、来なかった…?冬ごもりは、ここじゃ、いらない、よ…。 アリス:あー…まあなんていうか紅茶に食傷(しょくしょう)気味だったっていうか、 アリス:平たく言うとちょっと飽きたっていうか。 三月ウサギ:んだとォ!こーんな愉快な俺らとパーチィ前にして飽きただとぉ!? 三月ウサギ:てやんでぇ!そいつぁどういう了見でぇ! 眠りネズミ:食傷(しょくしょう)、で…ショック、で、しょう……がーん。 帽子屋:ふうん、なるほど…君は飽き性なんだね。 帽子屋:僕は延々とお茶会をしていても一時(いっとき)だって飽きたことはないけれど、 帽子屋:まあみんながみんなそうではない。 帽子屋:なんなら楽しいことが鬱陶しい者だっているということだ。 帽子屋:うんうん失念していた。 帽子屋:ごめんね、クリス。 帽子屋:お茶会はいつだってやっている、君が好きな時に好きなように参加したらいいよ。 アリス:あ、うん。ありがとう、帽子屋。  : アリス:(M)あれ?なんで?なんでだ? アリス:三月ウサギの言うとおりだ…お茶会はこんなに楽しくて楽なのに…。 アリス:むしろ僕はこんな日々を望んでいたはずなのに、それがなんで…飽きる?  :  三月ウサギ:クリスぅ、なあに辛気臭ぇ顔してやがる! 三月ウサギ:はしゃげはしゃげ!さわげさわげ! 三月ウサギ:今日はいつもより派手に飲んだくれるぜぃ! 眠りネズミ:どんちゃんどんちゃん、やいのやいの……ん、ちゅぅ…。 眠りネズミ:《コクリコクリと居眠りを始める》 三月ウサギ:こぉらネズ公、寝るなってんでぃ! 三月ウサギ:《眠りネズミを小突く》 眠りネズミ:って!……ぉ? 三月ウサギ:《ハッとして》 三月ウサギ:いけね! アリス:? 帽子屋:緑のポットは!?これか! 帽子屋:さあ、眠りネズミ。君のお気に入りのラベンダー入りのミルクティーだ! 三月ウサギ:詰めろ詰めろ! 眠りネズミ:《頭からポットに詰め込まれ》 眠りネズミ:ちゅ!?…ごぽぽぽぽぽぽぽぽ! アリス:な!何してるんだ!? 眠りネズミ:ごっぽぽ…ごぽぽ……。 眠りネズミ:《シーンと動かなくなる》 三月ウサギ:ひゅう。 帽子屋:《三月ウサギと同時に額の汗をぬぐって》 帽子屋:ふぅ。 アリス:ふぅ…じゃないだろ、この人でなし! アリス:眠りネズミがおぼれ死んで… 帽子屋:《アリスの唇に人差し指をあて制止し》 帽子屋:よく見てごらん。 眠りネズミ:…スゥ…スゥー…むちゅむちゅ…。 アリス:ね、眠ってる? 帽子屋:うちの庭のラベンダーは安眠効果が抜群なんだ。 帽子屋:彼はそれをおいしく飲み干した、ただそれだけさ。 三月ウサギ:そーそー気にすんな! 三月ウサギ:さあ、飲むじぇ~~! アリス:…何だったんだ…? 0: アリス:ここはどこだろう……。 アリス:ポカポカと暖かい、見渡す限りの緑……。 アリス:なんだか懐かしい、ここは草原か。 アリス:でもなんだか、フワフワしている、フワフワフワフワ……浮遊している、意識も足元も地面に届かない……。 アリス:あれ?誰かそこにいるの? ガラクタ:やあ。 アリス:目がチカチカするような派手な色合い、決して周りと溶け込むことのない、異質な……。 アリス:でもその声だけは良く届く、心に馴染む、染み込んでいく……。 ガラクタ:愛しい愛しい僕らのアリス。 ガラクタ:君の幸せは僕たちの幸せさ。 ガラクタ:ねえアリス、君はここにいて幸せかい? アリス:もちろん、こんな風に気楽に楽しく暮らせて僕は大満足さ。 ガラクタ:本当に? ガラクタ:本当にそれは君の望みそのものかい? アリス:望み……? ガラクタ:……ねえアリス、特別で最愛の可愛いアリス。 ガラクタ:君にはいつも満たされた気持ちでいてほしいんだよ。 ガラクタ:君の望みなら僕たちはなんだって叶えてあげよう。 ガラクタ:さあアリス、君の本当の望みを教えておくれ。 アリス:本当の、望み……。 アリス:……僕の本当の望みは……。 0: 三月ウサギ:んごおおおおお!? 三月ウサギ:舌がピリピリしやがる!? 三月ウサギ:帽子屋! 三月ウサギ:このミルクティーはちと、生姜を効かせすぎじゃねえか!? 帽子屋:今日は木枯らしが吹いて寒いからね、芯から存分に温まれるようにという配慮だよ。 眠りネズミ:……ちゅ…ちゅ……。 眠りネズミ:《ぼんやりしている》 三月ウサギ:おい眠りネズミ! 三月ウサギ:おめぇこんなもん飲んでて辛く(からく)ねえのかぁ!? 眠りネズミ:……んー……。 帽子屋:眠りネズミ? 眠りネズミ:クリスが、来ない……。 眠りネズミ:冬ごもりは、いらないって、言ったのに…。 三月ウサギ:アイツぁ気まぐれなやつなんだよ! 三月ウサギ:また暫く来ねえんじゃねえかぁ? 三月ウサギ:飽きた~とか言ってよぉ! 眠りネズミ:……そう、飽きた、と…彼は言っていた。 眠りネズミ:前は、あんなに楽しそうにしていたのに、飽きたって……。 眠りネズミ:楽しいものに飽きてしまうという感覚、よく分からない……。 眠りネズミ:楽しいことさえ退屈…それなら彼は……  :(ガラクタが突如として現れ) ガラクタ:彼なら『何もしなくていい場所』に行ったよ。 ガラクタ:そう、永遠に。 帽子屋:ガラクタ……彼を『廃棄』したのかい? ガラクタ:みなまで言わないでおくれよ、彼の望みさ。 ガラクタ:ああ、いや…ちょっと違うな、彼が廃棄したんだ、この世界を。 0:  :(ヒュウウ、ヒュウウゥ……) アリス:(M)なんだ?風の音がやけにうるさいな、それに手足が氷のように冷えている……。 アリス:あれ?黒ウサギ? アリス:どこに行くんだ黒ウサギ、僕をどこへ置いていくつもりなんだ……? : アリス:《ハッと覚醒する》 アリス:あれ?ここは……。 アリス:うう、寒い…!?それに腹ぺこだ…。 アリス:なんだこの粗末な枯葉は、僕はなんだか暖かくて居心地の良い場所にいたはずだったのに。 アリス:全部夢だったのか……? アリス:しかもいつの間にか草木が枯れて冬が来ている。 アリス:あ!いけない! アリス:これじゃ生きていけない、食べ物を持って巣ごもりを……アレ? アリス:食べ物は?冬ごもりの巣の用意は…? アリス:なにも、なにもない……。 アリス:当たり前だ、僕は何もして来なかったんだから……ああ、ああああ。 アリス:嫌だ!死ぬ、死んでしまう! アリス:隣の蟻さん!助けて! アリス:《戸を強くノックする》 働き蟻:はい、なんですか? アリス:ああ、蟻さん良かった! アリス:僕に食べ物と寝床を分けて欲しいんだ! 働き蟻:……貴方に渡せるものなんてこれぐらいしかないですよ。 アリス:え? 働き蟻:《ヴァイオリンを手渡し》 働き蟻:貴方の得意芸でしたよね、今度をはそれを弾いて踊りながら暖をとったらいかがです?  :(無情にも素っ気なく戸が閉まる) アリス:はは、ははははは……。 アリス:そっかぁ、僕はヴァイオリンを弾くのが好きだったような気がするなあ。 アリス:《ボソボソと呟くように不協和音を奏でながら》 アリス:ららら、ワンツー…。 アリス:らららら、ワンツーワンツー…。 アリス:………ふふ、これで本当に何もしなくていいんだぁ…。 0: ガラクタ:彼は愚かだ、温情の施しようもないほどにどうしようも無く。 ガラクタ:でも馬鹿じゃなかった。 ガラクタ:このまま冬の季節を迎えれば自分がどうなるかぐらい容易に想像できただろう。 ガラクタ:でも、しなかった。 ガラクタ:未来を想像することも、生きようとする行為そのものの、なにもかもをなにも。 ガラクタ:そうなにも、しなかった。 ガラクタ:世界が彼を捨てたんじゃない、彼を捨てたのは彼自身だ。 ガラクタ:違うな彼が世界を捨てたのか。 ガラクタ:退屈で窮屈で億劫な世界を、いるだけで生きているだけで煩わしいその場所を、彼は彼の意思で投げ捨てて来た。 ガラクタ:そしてこのガラクタの世界でさえも例に漏れず彼には不要だっというわけさ。 帽子屋:そう、そうなのか。 帽子屋:君が言うなら全く遍く(あまねく)須らくそうだったのであろうね。 帽子屋:なんだろうね、こうなってしまっては彼を飽きさせてしまうほど面白みのない自分を廃棄してやりたくなるよ。 ガラクタ:それは困るな、君はここの重要なファクターの一つなんだから。 三月ウサギ:栓の無ぇことを言うなよ帽子屋。 三月ウサギ:俺らにゃどうせ永遠のお茶会をする以外にできることなんて何もねえだろうよ。 眠りネズミ:……チッ! 眠りネズミ:《ガン!と机を乱暴に叩く》 三月ウサギ:《音に驚き》 三月ウサギ:! 帽子屋:《三月ウサギ同様驚き》 帽子屋:! 眠りネズミ:あーあー!クソッタレ! 眠りネズミ:やってられるかちくしょうが、目も興もすっかり覚めちまった! 眠りネズミ:まあこんなじゃ目覚めも最悪ってもんだろうがよぉ! 眠りネズミ:毎度毎度これほどむかっ腹が立つ事ったらねえぜ。 眠りネズミ:ケッ、俺ぁ帰るぜ。 眠りネズミ:じゃあな。 ガラクタ:ふぅ、こわいこわい。 ガラクタ:僕を睨み殺さんかというような眼差しだったね。 ガラクタ:まるで僕は大悪党だ。 ガラクタ:うーん、まあしかしこれで、この世界のシステムホールに一つ気づくことができた。 ガラクタ:今度からは、ただ憐れで可愛く可哀想なアリスだけを連れてこれるように、ちゃあんと黒ウサギを躾し直さなければね。 ガラクタ:お、噂をすれば黒ウサギが誰か連れてきたみたいだ。 ガラクタ:次はどんな子かな?  : ガラクタ:ここは僕たちが作った僕たちの世界、今日もガラクタ達が落ちてくる。 ガラクタ:Welcome to the world. ガラクタ:果てにあるのは、永遠の夢かゴミ箱か。  :Fin.

アリス:ああ、嫌だ…嫌だぁ…僕はこんなこと望んでない。 アリス:違うんだ…。  : アリス:(M)ひもじい、辛い、苦しい、助けて、助けて…。 アリス:でもまさか本当に、これが僕が望んだ『果て』…?  : アリス:お願い…。 アリス:見捨てないで、ガラクタだけど…。  : ガラクタ:さあ、おいで。可愛いガラクタ達よ。 夢の国の使者にさそわれて。ゴミ箱に身を投げる前に。 ガラクタ:さあ、おいで。愛しいガラクタ達よ。 僕らは価値なき物であって、廃棄物(ゴミ)じゃない。   ガラクタ:さあ、おいで。哀れなガラクタ達よ。 ここは、僕らだけの。僕らのための国。 ガラクタ:Welcome to the world.  ようこそ、僕らの夢の世界へ。 0: アリス:《バイオリンを弾き、歌を歌いながら悦に浸っている》 アリス:ら~ら~ららら~ら~♪ アリス:はあ、今日も天気が良くて気持ちがいいなあ。 アリス:一日中木陰で惰眠をむさぼるのも悪くない。  :(ガサリと草木を大きく揺らす音が聞こえる) アリス:ん? 黒ウサギ:《スンスンと鼻を動かしあたりを見回す》 アリス:うわ!うわわわあ!動物だ! アリス:に、逃げなきゃ…! 黒ウサギ:《アリスを見つめる》 アリス:わああああ!ダメだ、たべっ食べられる!  :(瞬間、地面がブラックホールのようにあたり一帯を吸い込んでいく) アリス:なっ、なんだ!?地面にっ!ひっ、引きずり込まれる! アリス:あああああ! 0:  :(小鳥のさえずりがこだまする森の中、アリスが仰向けで倒れている) アリス:…ん? 黒ウサギ:《身をかがめアリスをじっと見つめている》 アリス:うわ! アリス:ななな、なんだ!? 黒ウサギ:《手を差し出す》 アリス:え!?いったい何だって言うんだ!?誰!? 黒ウサギ:《さらに手をずいと差し出す》 アリス:誰だって聞いてるだろ!!やめろ… ガラクタ:《アリスのセリフに被せるように》 ガラクタ:なあにただの親切だよ、さあ、その手を取るんだ、アリス。 アリス:え…? ガラクタ:臆病なことはいいことだ、それは動物の本能であるのだから。 ガラクタ:本能に従順だということはとても素直で、あるべき姿とも言える。 アリス:はぁ…? ガラクタ:《ニッコリ笑って》 ガラクタ:さあ、彼の手を取って。 アリス:《おずおずと黒ウサギの手を取る》 アリス:……。 アリス:お、起こしてくれてありがとう…。 ガラクタ:だってさ!まったくうらやましいよ。 ガラクタ:こんなに、さっそく、アリスにお礼を言ってもらえるなんて光栄の至りだね黒ウサギ。 黒ウサギ:《少しうれしそうに耳をピコピコと動かす》 アリス:……。 ガラクタ:ああ、申し訳ない。なんて不敬だ! ガラクタ:僕としたことが大切な名前を名乗り忘れるなんて! ガラクタ:僕はガラクタ、この世界のオーナーさ。 アリス:ガラクタ…?なんだかへんてこな響きだ…それに…えっとその格好は? ガラクタ:ははは!いいねアリス!やはり君は素直だ!賞賛に値するまでに! ガラクタ:格好かあ…これが何だと聞かれても、僕は道化師だからね、おどけた格好をしているんだ。 ガラクタ:そして、そこの彼は黒ウサギ、君をこの世界まで導いた案内人さ。 アリス:ひッ!なんだい?その、彼の頭についているものは! ガラクタ:そりゃあ耳だよ!彼はウサギなんだから頭のてっぺんに耳が生えてなきゃおかしいだろう? アリス:そ、そうなの…? ガラクタ:まあ無理もないよ、君はまだこの世界に来たばかりだし。 ガラクタ:摩訶不思議なことだらけだろう。だから、ここは不思議の国なんて呼ばれたりもするんだ。 ガラクタ:おいで、ここを案内しよう。そして君が気に入った場所に居つくといい。  : アリス:(N)そうして僕は、ガラクタの国と呼ばれる世界を連れまわされた。 アリス:そしてそこで――帽子屋という奇妙な男に出会った。 0:  :(森を抜けた一角)  :(広い長テーブルに紅茶や菓子がずらりと並び、盛大なお茶会が催されている) ガラクタ:やあ、今日もいつもと同じように盛り上がっているね。 帽子屋:やあ、ガラクタ。ああ、いつもと同じように楽しんでいるよ。 帽子屋:君も一杯と言わずいっぱい紅茶をいかがかな? 三月ウサギ:なんれもない日ぃ~かんぱぁ~い! 眠りネズミ:なんでもない日、かんぱぁい…。 ガラクタ:お誘いいただいて申し訳ないんだけれど、僕は楽しくない別のことで忙しい身でね。 ガラクタ:紹介したい人がいるんだ。 ガラクタ:さ、アリス。 アリス:うん。 帽子屋:おや!なんと!アリスかい、なんてめでたいんだ! 帽子屋:みんな、お茶会の名目を変更しよう! アリス:え? 帽子屋:《アリスに近づき》 帽子屋:こんにちはアリス、そしてようこそ君の歓迎会へ。 帽子屋:君と出会えたことは僕の生涯の喜びさ。 帽子屋:《ひざまずき、アリスの手の甲にキスを落とす》 アリス:げ!な、なにするんだ! 三月ウサギ:へへへッ、お近づきのチッス! 眠りネズミ:そうキッス、チュウチュウ~…。 アリス:なんで僕を女の子扱いするんだ! アリス:大体みんなこぞって、アリスアリスって…アリスなんて女の名前じゃないか! 三月ウサギ:ファッファッ!ファ~~!ホントだぁこりゃあ傑作! 三月ウサギ:僕はアリスゥ~!ヒャッヒャッ! 帽子屋:ん~、僕は別に違和感はないけどね? 帽子屋:《アリスのあごに指を添えて》 帽子屋:だって君はこんなに愛らしいんだから。 アリス:うわっ!だから!そういう女の子扱いをやめてくれって言ってるんだ! アリス:なんなんだよ…恥ずかしい奴だな! 眠りネズミ:そう、帽子屋は…恥ずかしい…ポットがあったら、入りたい…。 帽子屋:そうか、まあ確かに僕も君が嫌がることをするのは本意じゃない。 帽子屋:じゃあそうだな…『クリス』なんてどうだろうか? 帽子屋:君にピッタリの良い名だと僕は思うんだが。 ガラクタ:はっはっは、クリス、か! ガラクタ:うん、いい!君の帽子からは到底考えられないようなハイセンスなネーミングだね! アリス:まあ、アリスよりはいいか…なんだか名前が思い出せないし…。 三月ウサギ:今日はぁ~記念すべき~!我らがクリスを盛大に祝して、カンパ~イ! 眠りネズミ:やんややんや、飲めや歌えや…かんぱぁい…《眠り》スゥスゥ…。 アリス:……ぷっ!ほんとに、なんだか滅茶苦茶な連中だなあ。 帽子屋:ああ、秋になっても飽きの来ない僕の自慢の友人たちさ、では改めてクリス。 帽子屋:紅茶をどうぞ、乾杯。 ガラクタ:その自慢の友人たちが僕らの最愛のアリスにこれ以上無礼を働かないことを祈るよ。 ガラクタ:それじゃあクリス、楽しんで。 0: アリス:(N)そして僕は来る日も来る日もお茶会に明け暮れた。 アリス:僕がいつ行っても、テーブルの上はどんちゃん騒ぎだ。 アリス:毎日がお祭りのように楽しい日々、何故か僕はこの空間に懐かしさすら感じていて。 アリス:いつしかここは僕にとって楽園のような場所になっていた。  : 三月ウサギ:よぉ~クリスぅ!調子はどうでえ? 三月ウサギ:俺は最高だじぇ~! アリス:やあ、三月ウサギ、また紅茶で酔っ払ってるのかい? 三月ウサギ:なぁに言ってんでぇ、酔うわけねぇだるぉ?紅茶とミルクだってんでぇ~! 眠りネズミ:紅茶は…飲んでも、飲まれるな…ウトウト…。 帽子屋:いらっしゃいクリス。砂糖はふたさじ? 帽子屋:うん、さあ召し上がれ。 アリス:ありがとう帽子屋! 帽子屋:《アリスが持っているものに目を落とし》 帽子屋:おや?クリス。その手にしているものは…。 アリス:ん?ああ、これはバイオリンだよ! アリス:最近気づいたのさ、こんなに賑やかなお茶会なのに何か一味足りないってね! 帽子屋:ほお? アリス:音楽だよ!パーティーにはつきものだろ! アリス:喜んでよ、こう見えて僕はこれの演奏には自信があるんだ! 帽子屋:なんと!それは素晴らしい! 帽子屋:ぜひとも弾いて見せてくれないか? アリス:もちろん!さあみんなどんな曲がいい? 三月ウサギ:しっとりとしたジャぁぁズ! 三月ウサギ:ありゃあいいぜぇ、リズムに合わせて体をふりゃあ世界がぐるんぐるん回って心地いいじぇえ! 眠りネズミ:ぐっすり、うっとり…よく眠れる…子守歌…。 アリス:はぁダメダメ!そんな盛り下がるもの…。 アリス:音楽は楽しくなきゃ! アリス:《バイオリンを構えて》 アリス:さあ、歌に合わせて手を叩いて!ラララ~ワンツー!  :(アリスの音楽に合わせてまたどんちゃん騒ぎが始まる)  :(アリスが心地よく演奏しきる) 三月ウサギ:はっははぁ!こりゃあいい! 三月ウサギ:サイコーだ!ヒャッホー! 眠りネズミ:うぅん…拍チュ喝采…アンコール…。 帽子屋:クリスすごく良かったよ! 帽子屋:《アリスの手を取り》 帽子屋:ああ…あの美しい音楽はこの手から奏でられるのかい? 帽子屋:もしかしたらこれは博物館行きになってしまうかもしれないね! アリス:うわっ!もう…よせよぉ、照れるよ。 帽子屋:本当に素晴らしかった、ぜひ毎日聞かせていただきたいね。 帽子屋:そうだ!クリス、君ここ専属の音楽家になったらどうだい? 帽子屋:本当は僕専属で君を独占したいくらいだが…。 アリス:え?毎日…? アリス:んー確かに好きなことを仕事にできるなんてこれ以上いいことはなさそうだけど…。 アリス:でも毎日かあ…それは面倒だなあ…。 帽子屋:そうか、それは残念だな。 アリス:っていうか、仕事みたいな概念があったんだね…。 アリス:ここの人たちは何をして暮らしてるの? 帽子屋:ん?例えば僕は帽子屋さ。 アリス:誰かが帽子を買いに来たことなんて見たことないよ。 帽子屋:それでも帽子屋は帽子屋さ、帽子を売ることで生きているんだ。 アリス:ふうん…。じゃあ彼は?一日中紅茶を飲んで眠りこけているだけじゃないか。 帽子屋:眠りネズミは眠りネズミさ! 帽子屋:彼もまたこの世界で『眠るネズミ』という重大な役割をこなしてるのさ! アリス:なんだそれ…。 アリス:じゃあ僕も、何かしなくちゃいけないって言うの? 帽子屋:そうだね!なんてったって、君はアリスだ! 帽子屋:アリスはアリスにしかこなせないとびきり特別な役割さ! アリス:一体何をしろって言うのさ。 帽子屋:うーんそうだなあ…僕の知っている限りじゃあ、本を読んで勉強をしたり、 帽子屋:ああマッチを売っている子もいたね! アリス:うう、僕のやりたくないことばっかり…。 帽子屋:では違うことをしたらいいじゃないか!君は君のしたいことをしながら生きる。 帽子屋:アリスのしなければならないことはそれだよ、クリス。 アリス:うーん、なんか具体的じゃなさすぎるんだよなあ…。 アリス:…あ!じゃあ一生遊んで生きるっていうのは!? アリス:その感じだとそれもアリなんじゃないの!? 帽子屋:素晴らしい!やはり君は聡明だねクリス、飲み込みが早い。 帽子屋:君は君の生きたいように生きればいいのさ、僕らだって…まあ大半はそうして生きてるんだから。 三月ウサギ:べらんめぇ!なぁんだぁ、おめぇら~一滴もぉ飲んでねえじゃあねえかあ! 三月ウサギ:お~れの茶が飲めねえってのかぁ?お~い誰かポットもってこぉい! 三月ウサギ:いぃや!やかん!いんや大釜もってこぉい! 眠りネズミ:チュウチュウ、お話しチュウ…お取込みチュウに…しちゅれいしまチュウ…。 帽子屋:はっは、ごめんごめん。 帽子屋:クリス、君も今日は興が乗っているようだしもう一曲頼めないかな?  :(ガラクタ、お茶会の様子を離れた空中から眺めて) ガラクタ:一味足りない、ねぇ…。 ガラクタ:さあ、君は本当に刺激なんかを求めているのかな…? 0: アリス:(N)ここ数日僕はお茶会にめっきり顔を出していない、 アリス:居心地がいいことは確かだけど、なんだか…。 アリス:なんだか行く気がしなかった。 アリス:眠るでも何かするでもなく、ただ漫然とのんべんだらりとダラダラと。 アリス:空虚に日々を過ごした。 アリス:きっと毎日のお祭り騒ぎで疲れたんだろう。 アリス:そう、疲れた…ただ、疲れただけだ。 アリス:また、気持ちよく晴れて暖くなれば、きっと気分も変わるだろう。 アリス:暖かくなれば…。  :(コンコンと窓を叩く音がする) アリス:ん? ガラクタ:やあ! アリス:《窓を開けて》 アリス:ガラクタ…。 ガラクタ:実に、いやはや実に怠惰を謳歌しているじゃないか! ガラクタ:これは喜ばしい、最愛なるアリスが気だるさまで覚えるほど平穏な一日を過ごしているというのは。 アリス:《あくびを噛み殺し》 アリス:ふぁ…うるさいなあ、それでガラクタ何か用なの? ガラクタ:いいや? ガラクタ:何度も言うけれどアリス、君は僕にとって特別な存在なんだよ。 ガラクタ:友人以上に恋人以上に。 ガラクタ:そんな君に会いに来るのに理由がいるっていうのかい? ガラクタ:恋人が惹かれあい、焦がれて逢瀬を果たすように。 ガラクタ:家族が寝食を共にし、毎日顔を合わせるように…これは当然の行為で道理で動機であるのさ。 ガラクタ:それとも君はそんな当たり前なことにケチをつけるような妙竹林(みょうちくりん)な子なのかい? アリス:あー…もう、なんでもいいけど…。 アリス:とりあえず僕はアリスじゃなくて、クリスだよ。 アリス:そうだ、ちょうど退屈していたし何か面白いことをして見せてよ。 ガラクタ:うん? アリス:ん、なに? ガラクタ:面白いことを僕がすればいいのかい? アリス:え?だからそうって…。 ガラクタ:僕だけが?一人遊びのように? ガラクタ:面白いことと言うのは君が手ずからやってみて初めて面白いと感じるものなんじゃないのかい? ガラクタ:というか、君にとっての面白いことって…いったい何だい? アリス:……え。 ガラクタ:《パッと表情を変えて》 ガラクタ:ああ、そうか!ごめんごめん荒唐無稽な勘違いだったよ! ガラクタ:そういや僕はピエロだった!君を楽しませられるような技は有り余るほど持っていたんだった! ガラクタ:それを見せてあげればよかったんだね! アリス:そ…そうだよ!な、何か楽しい芸があるなら見せてよ。 ガラクタ:そうだなあ…これはひそかに練習していた新技なんだけど…。  : アリス:(M)なんだろう、なんだろう…。 アリス:さっきガラクタにまっすぐ見据えられた時、妙な気分がした。 アリス:何か腹の底の底の一番嫌な部分をチクリと刺されたような…そんな。 0:  :(数日後、アリスがお茶会に顔を出す) 三月ウサギ:ありゃこりゃあ! 眠りネズミ:あらぁ、これはー…。 アリス:やあ。 三月ウサギ:たぁまげた!何億年振りでぇ! 三月ウサギ:こんにゃろう生きてやがったのかぁ! アリス:まあね。 帽子屋:クリス! 帽子屋:ああなんてことだ、僕は君とはもう今生の別れかと…。 アリス:もうみんな大げさ。 眠りネズミ:どうして、来なかった…?冬ごもりは、ここじゃ、いらない、よ…。 アリス:あー…まあなんていうか紅茶に食傷(しょくしょう)気味だったっていうか、 アリス:平たく言うとちょっと飽きたっていうか。 三月ウサギ:んだとォ!こーんな愉快な俺らとパーチィ前にして飽きただとぉ!? 三月ウサギ:てやんでぇ!そいつぁどういう了見でぇ! 眠りネズミ:食傷(しょくしょう)、で…ショック、で、しょう……がーん。 帽子屋:ふうん、なるほど…君は飽き性なんだね。 帽子屋:僕は延々とお茶会をしていても一時(いっとき)だって飽きたことはないけれど、 帽子屋:まあみんながみんなそうではない。 帽子屋:なんなら楽しいことが鬱陶しい者だっているということだ。 帽子屋:うんうん失念していた。 帽子屋:ごめんね、クリス。 帽子屋:お茶会はいつだってやっている、君が好きな時に好きなように参加したらいいよ。 アリス:あ、うん。ありがとう、帽子屋。  : アリス:(M)あれ?なんで?なんでだ? アリス:三月ウサギの言うとおりだ…お茶会はこんなに楽しくて楽なのに…。 アリス:むしろ僕はこんな日々を望んでいたはずなのに、それがなんで…飽きる?  :  三月ウサギ:クリスぅ、なあに辛気臭ぇ顔してやがる! 三月ウサギ:はしゃげはしゃげ!さわげさわげ! 三月ウサギ:今日はいつもより派手に飲んだくれるぜぃ! 眠りネズミ:どんちゃんどんちゃん、やいのやいの……ん、ちゅぅ…。 眠りネズミ:《コクリコクリと居眠りを始める》 三月ウサギ:こぉらネズ公、寝るなってんでぃ! 三月ウサギ:《眠りネズミを小突く》 眠りネズミ:って!……ぉ? 三月ウサギ:《ハッとして》 三月ウサギ:いけね! アリス:? 帽子屋:緑のポットは!?これか! 帽子屋:さあ、眠りネズミ。君のお気に入りのラベンダー入りのミルクティーだ! 三月ウサギ:詰めろ詰めろ! 眠りネズミ:《頭からポットに詰め込まれ》 眠りネズミ:ちゅ!?…ごぽぽぽぽぽぽぽぽ! アリス:な!何してるんだ!? 眠りネズミ:ごっぽぽ…ごぽぽ……。 眠りネズミ:《シーンと動かなくなる》 三月ウサギ:ひゅう。 帽子屋:《三月ウサギと同時に額の汗をぬぐって》 帽子屋:ふぅ。 アリス:ふぅ…じゃないだろ、この人でなし! アリス:眠りネズミがおぼれ死んで… 帽子屋:《アリスの唇に人差し指をあて制止し》 帽子屋:よく見てごらん。 眠りネズミ:…スゥ…スゥー…むちゅむちゅ…。 アリス:ね、眠ってる? 帽子屋:うちの庭のラベンダーは安眠効果が抜群なんだ。 帽子屋:彼はそれをおいしく飲み干した、ただそれだけさ。 三月ウサギ:そーそー気にすんな! 三月ウサギ:さあ、飲むじぇ~~! アリス:…何だったんだ…? 0: アリス:ここはどこだろう……。 アリス:ポカポカと暖かい、見渡す限りの緑……。 アリス:なんだか懐かしい、ここは草原か。 アリス:でもなんだか、フワフワしている、フワフワフワフワ……浮遊している、意識も足元も地面に届かない……。 アリス:あれ?誰かそこにいるの? ガラクタ:やあ。 アリス:目がチカチカするような派手な色合い、決して周りと溶け込むことのない、異質な……。 アリス:でもその声だけは良く届く、心に馴染む、染み込んでいく……。 ガラクタ:愛しい愛しい僕らのアリス。 ガラクタ:君の幸せは僕たちの幸せさ。 ガラクタ:ねえアリス、君はここにいて幸せかい? アリス:もちろん、こんな風に気楽に楽しく暮らせて僕は大満足さ。 ガラクタ:本当に? ガラクタ:本当にそれは君の望みそのものかい? アリス:望み……? ガラクタ:……ねえアリス、特別で最愛の可愛いアリス。 ガラクタ:君にはいつも満たされた気持ちでいてほしいんだよ。 ガラクタ:君の望みなら僕たちはなんだって叶えてあげよう。 ガラクタ:さあアリス、君の本当の望みを教えておくれ。 アリス:本当の、望み……。 アリス:……僕の本当の望みは……。 0: 三月ウサギ:んごおおおおお!? 三月ウサギ:舌がピリピリしやがる!? 三月ウサギ:帽子屋! 三月ウサギ:このミルクティーはちと、生姜を効かせすぎじゃねえか!? 帽子屋:今日は木枯らしが吹いて寒いからね、芯から存分に温まれるようにという配慮だよ。 眠りネズミ:……ちゅ…ちゅ……。 眠りネズミ:《ぼんやりしている》 三月ウサギ:おい眠りネズミ! 三月ウサギ:おめぇこんなもん飲んでて辛く(からく)ねえのかぁ!? 眠りネズミ:……んー……。 帽子屋:眠りネズミ? 眠りネズミ:クリスが、来ない……。 眠りネズミ:冬ごもりは、いらないって、言ったのに…。 三月ウサギ:アイツぁ気まぐれなやつなんだよ! 三月ウサギ:また暫く来ねえんじゃねえかぁ? 三月ウサギ:飽きた~とか言ってよぉ! 眠りネズミ:……そう、飽きた、と…彼は言っていた。 眠りネズミ:前は、あんなに楽しそうにしていたのに、飽きたって……。 眠りネズミ:楽しいものに飽きてしまうという感覚、よく分からない……。 眠りネズミ:楽しいことさえ退屈…それなら彼は……  :(ガラクタが突如として現れ) ガラクタ:彼なら『何もしなくていい場所』に行ったよ。 ガラクタ:そう、永遠に。 帽子屋:ガラクタ……彼を『廃棄』したのかい? ガラクタ:みなまで言わないでおくれよ、彼の望みさ。 ガラクタ:ああ、いや…ちょっと違うな、彼が廃棄したんだ、この世界を。 0:  :(ヒュウウ、ヒュウウゥ……) アリス:(M)なんだ?風の音がやけにうるさいな、それに手足が氷のように冷えている……。 アリス:あれ?黒ウサギ? アリス:どこに行くんだ黒ウサギ、僕をどこへ置いていくつもりなんだ……? : アリス:《ハッと覚醒する》 アリス:あれ?ここは……。 アリス:うう、寒い…!?それに腹ぺこだ…。 アリス:なんだこの粗末な枯葉は、僕はなんだか暖かくて居心地の良い場所にいたはずだったのに。 アリス:全部夢だったのか……? アリス:しかもいつの間にか草木が枯れて冬が来ている。 アリス:あ!いけない! アリス:これじゃ生きていけない、食べ物を持って巣ごもりを……アレ? アリス:食べ物は?冬ごもりの巣の用意は…? アリス:なにも、なにもない……。 アリス:当たり前だ、僕は何もして来なかったんだから……ああ、ああああ。 アリス:嫌だ!死ぬ、死んでしまう! アリス:隣の蟻さん!助けて! アリス:《戸を強くノックする》 働き蟻:はい、なんですか? アリス:ああ、蟻さん良かった! アリス:僕に食べ物と寝床を分けて欲しいんだ! 働き蟻:……貴方に渡せるものなんてこれぐらいしかないですよ。 アリス:え? 働き蟻:《ヴァイオリンを手渡し》 働き蟻:貴方の得意芸でしたよね、今度をはそれを弾いて踊りながら暖をとったらいかがです?  :(無情にも素っ気なく戸が閉まる) アリス:はは、ははははは……。 アリス:そっかぁ、僕はヴァイオリンを弾くのが好きだったような気がするなあ。 アリス:《ボソボソと呟くように不協和音を奏でながら》 アリス:ららら、ワンツー…。 アリス:らららら、ワンツーワンツー…。 アリス:………ふふ、これで本当に何もしなくていいんだぁ…。 0: ガラクタ:彼は愚かだ、温情の施しようもないほどにどうしようも無く。 ガラクタ:でも馬鹿じゃなかった。 ガラクタ:このまま冬の季節を迎えれば自分がどうなるかぐらい容易に想像できただろう。 ガラクタ:でも、しなかった。 ガラクタ:未来を想像することも、生きようとする行為そのものの、なにもかもをなにも。 ガラクタ:そうなにも、しなかった。 ガラクタ:世界が彼を捨てたんじゃない、彼を捨てたのは彼自身だ。 ガラクタ:違うな彼が世界を捨てたのか。 ガラクタ:退屈で窮屈で億劫な世界を、いるだけで生きているだけで煩わしいその場所を、彼は彼の意思で投げ捨てて来た。 ガラクタ:そしてこのガラクタの世界でさえも例に漏れず彼には不要だっというわけさ。 帽子屋:そう、そうなのか。 帽子屋:君が言うなら全く遍く(あまねく)須らくそうだったのであろうね。 帽子屋:なんだろうね、こうなってしまっては彼を飽きさせてしまうほど面白みのない自分を廃棄してやりたくなるよ。 ガラクタ:それは困るな、君はここの重要なファクターの一つなんだから。 三月ウサギ:栓の無ぇことを言うなよ帽子屋。 三月ウサギ:俺らにゃどうせ永遠のお茶会をする以外にできることなんて何もねえだろうよ。 眠りネズミ:……チッ! 眠りネズミ:《ガン!と机を乱暴に叩く》 三月ウサギ:《音に驚き》 三月ウサギ:! 帽子屋:《三月ウサギ同様驚き》 帽子屋:! 眠りネズミ:あーあー!クソッタレ! 眠りネズミ:やってられるかちくしょうが、目も興もすっかり覚めちまった! 眠りネズミ:まあこんなじゃ目覚めも最悪ってもんだろうがよぉ! 眠りネズミ:毎度毎度これほどむかっ腹が立つ事ったらねえぜ。 眠りネズミ:ケッ、俺ぁ帰るぜ。 眠りネズミ:じゃあな。 ガラクタ:ふぅ、こわいこわい。 ガラクタ:僕を睨み殺さんかというような眼差しだったね。 ガラクタ:まるで僕は大悪党だ。 ガラクタ:うーん、まあしかしこれで、この世界のシステムホールに一つ気づくことができた。 ガラクタ:今度からは、ただ憐れで可愛く可哀想なアリスだけを連れてこれるように、ちゃあんと黒ウサギを躾し直さなければね。 ガラクタ:お、噂をすれば黒ウサギが誰か連れてきたみたいだ。 ガラクタ:次はどんな子かな?  : ガラクタ:ここは僕たちが作った僕たちの世界、今日もガラクタ達が落ちてくる。 ガラクタ:Welcome to the world. ガラクタ:果てにあるのは、永遠の夢かゴミ箱か。  :Fin.