台本概要
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タイトル | 「行けたら行くわ。」 |
---|---|
作者名 | 音佐りんご。 (@ringo_otosa) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
◆あらすじ◆ 夢や希望はあれど、パッとしない今日を生きるだけの現実を繰り返す田中のスマホに昔の知り合いから電話がかかってくる。弾む話と揺れる心。それは過ぎ去ったあの頃からの誘い。その言葉に田中はこう返す――「行けたら行くわ。」 ◇備考◇ 実験的に書いた「電話越し、短めの会話劇」です。 ただしこの時点では相手の台詞を想定しておりませんし、具体的な話もしておりません。 相手が何を言っているのか想像して読んでいただければ幸いです。 本作に関しては相手側の台詞を考えて二次創作(?)していただいても大丈夫です。 許可なども特には必要ありません。 また、今後、相手側の台詞を追加したバージョンをいくつか作成予定です。 377 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
田中 | 不問 | 8 | 自分でも「パッとしない人生を送ってるな」と思っているが、口に出したら終わりなんだと分かっている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:「行けたら行くわ。」
:
0:◆あらすじ◆
0:夢や希望はあれど、パッとしない今日を生きるだけの現実を繰り返す田中のスマホに昔の知り合いから電話がかかってくる。弾む話と揺れる心。それは過ぎ去ったあの頃からの誘い。その言葉に田中はこう返す――「行けたら行くわ。」
:
0:◇登場人物◇
田中:自分でも「パッとしない人生を送ってるな」と思っているが、口に出したら終わりなんだと分かっている。
:
0:◇◆◇
:
0:着信音。
0:少し間をあけて、電話に出る田中。
:
田中:はい、田中です。
田中:……えっと。
田中:え?
:
0:間。
:
田中:あ、もしかして……。
田中:マジで!? えー! 久しぶりじゃん! うわ、めっちゃ懐かしい!
田中:いやほんと、声聞いただけであの頃に戻った気がする。
田中:いやいや、分かってたって、嘘じゃないし。
田中:ほんとほんと。
田中:出た瞬間、頭の中で「あれ? なんか懐かしいな、この声ってもしかして……!」ってなってたから。
田中:でもさ、だって、急に電話かかってくるとか思わないじゃん、やっぱ。
田中:いやまぁそうだけどさ。
田中:あれからどんくらい経ったと思ってんの?
田中:うん。
田中:時が経つのってあっという間だよな。
田中:いや、それを言うなら光陰矢の如しだろ。
田中:ほんとそれな。
田中:でもこの一瞬であの頃に戻った感じするわ。
田中:ていうか、今何してんの?
田中:じゃなくて、仕事とか。
田中:こっちは……まぁ、普通に会社員、とか?
田中:うん、まぁ、色々あって。
田中:というか、色々なかったのかも。
田中:まぁ、そうかも。
田中:そっちは?
田中:えー? 嘘だ、絶対なんかあるやつでしょそれ。
田中:そう? まぁ、追々聞くか。
田中:ていうかさ。
田中:なんかありがとな。
田中:なんでって、なんとなく?
田中:こう、埋めたことも忘れてたタイムカプセルが、なんかの拍子にひょこっと出てきた。みたいな感覚?
田中:嬉しくない? そういうの。今、嬉しいしだって。
田中:だからありがとな。かけてきてくれて。いや、ちがうな。
田中:まだ、憶えててくれて、かも。
田中:はは。……まぁ、正直言うと、そう。
田中:いや、ごめんって!
田中:ごめんごめん。
田中:あ、それで、なんか用事あったんじゃない?
田中:そうでもないとかけてこないじゃん、実際。
田中:こっちからかけることも、たぶんなんか用事なかったらないだろうし。
田中:それで、何の――
:
0:間。
:
田中:えっ?
田中:……マジ?!
田中:え、え、えっ?
田中:うわ、うっそ、すげぇじゃん!
田中:そうなんだ……! 全然知らなかったわー!
田中:えー? そっか、ていうことはやっぱ……。
田中:あー、やっぱそう来る感じ?
田中:え? なになに?
田中:あー、なるほどね。
田中:ふーん、そんなことあったんだ。それでさっきちょっと隠したんだ。
田中:気持ちは分かる。
田中:えー? いいと思うけどな。
田中:田中的には全然あり。
田中:でも、そっか。
田中:まぁ、言われてみればそうかも。
田中:ちなみにいつ?
田中:いやいや、なんでそこでまた勿体ぶる?
田中:そりゃ気になるって。
田中:重大発表されてカミングスーンとか言われると「いや、いつだよ!」ってなるでしょ。リニアモーターカーの開通ほんといつになるんだよくらい気になるわ。
田中:へー、そうなんだ?
田中:……じゃなくて、今あの店がどうなってるとかいいんだよ。
田中:確かにそれはそう。近所のコンビニの跡地でなんかよくわからないマッサージ屋とか開業されてる並みにそう。
田中:そうそう。しかも、その後のも割とすぐ潰れるんだよな。
田中:いやいやいや、だからもうその話は良いって。
田中:それでいつ?
田中:え、もうすぐじゃん!
田中:……あー、まぁ確かに?
田中:十年後二十年後の話はわざわざ電話してこないよな。手紙で十分っていうか。
田中:まぁ、最近手紙も全然出さないけどさ。
田中:分かる。仕事以外でメールとかしないよな。友達にメールとか特に。電話の方が早い。
田中:いや、悪かったって。電話どころか何も連絡とってなかったのはほんと。
田中:それも仕方ないかなって。言い訳だけどさ。
田中:お互い「忙しいかな」とか「迷惑じゃないかな」とか考えちゃうじゃん。やっぱ。
田中:そうそう「何時ごろなら平気かな?」って。仕事なら昼過ぎが良いよね、みたいな分かるけど。それも職種によるかもだけど。
田中:うん。電話かかってきたらやっぱ嬉しいよ。
田中:なんていうかさ「自分がされて嬉しいことは、きっと相手も嬉しい筈」なんて、なかなか思えないっていうかさ。
田中:それもわかるけどね。
田中:結局、時間があけばあく程、連絡って取りにくくなるんだよ。
田中:わかってても、先送りしちゃう感じ。
田中:それで「まぁ、もう連絡しても遅いよな」って納得しちゃうんだよ。
田中:ていうか、そうやって納得するために先送りしてたまであるかも。
田中:なんとなく好きじゃないお土産をもらって「食べたくないなぁ」と思いながら「でも捨てるのもなぁ」って放置して、賞味期限来たら「ちょっと悪いけどこれはもう流石に……」って、申し訳なさそうにしてる感じ。
田中:まぁ、ポーズだよな。
田中:あ、ごめんごめん。
田中:そんな話しても仕方ないよな。
田中:あー、ちょっと待って、その日は……。
田中:あっ、休みだ。
田中:うん。行ける、と思う。
田中:いやいや、こっちこそありがとう!
田中:はは、そんな大袈裟な!
田中:いいよ、全然。
田中:え? あ、もうそんな時間か。
田中:ははは、だからそれを言うなら光陰矢の如し。
田中:うん、わかった。
田中:じゃあ、また連絡するよ。今度はこっちから。
田中:うん、じゃあ。行けたら行くわ。
田中:はは、冗談冗談。
田中:じゃ、おやすみ。
:
0:通話を切る音。
:
田中:……ふぅ。久しぶりに、楽しかったな。
田中:あー、早く、来ないかなぁ。……楽しみだなぁ。
:
0:着信音。
:
田中:ん? なんだろ、なんか話し忘れたことでも――。
:
0:電話に出る田中。
:
田中:はい、こちら田中。
田中:……え。あ、すみません、田中です……! はい、お疲れ様です……!
田中:え、あ、はい。
田中:その日は休みですが……。
田中:え?
田中:あ、あの!
田中:いや、その日は、なんといいますか、その……。
田中:いや、そんな!
田中:…………分かり、ました。
田中:はい……。
田中:はい……、おつかれ、さまです。
:
0:通話を切る音。
:
田中:声、聞いただけで元に戻っちゃったな。
田中:……はぁ。
田中:辞めたいなぁ……。
田中:パッとしない人生。
田中:でもきっと、
田中:もう、遅いよなってなるんだろうな。
田中:結局、どこにも行けないんだろうな。
田中:短い夢と、長い現実。
田中:いけないどころか、そもそも居場所すらないんだから。
田中:はは、冗談。
田中:どころか、嘘吐きだ。
:
0:◆◇◆
0:「行けたら行くわ。」
:
0:◆あらすじ◆
0:夢や希望はあれど、パッとしない今日を生きるだけの現実を繰り返す田中のスマホに昔の知り合いから電話がかかってくる。弾む話と揺れる心。それは過ぎ去ったあの頃からの誘い。その言葉に田中はこう返す――「行けたら行くわ。」
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0:◇登場人物◇
田中:自分でも「パッとしない人生を送ってるな」と思っているが、口に出したら終わりなんだと分かっている。
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0:◇◆◇
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0:着信音。
0:少し間をあけて、電話に出る田中。
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田中:はい、田中です。
田中:……えっと。
田中:え?
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0:間。
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田中:あ、もしかして……。
田中:マジで!? えー! 久しぶりじゃん! うわ、めっちゃ懐かしい!
田中:いやほんと、声聞いただけであの頃に戻った気がする。
田中:いやいや、分かってたって、嘘じゃないし。
田中:ほんとほんと。
田中:出た瞬間、頭の中で「あれ? なんか懐かしいな、この声ってもしかして……!」ってなってたから。
田中:でもさ、だって、急に電話かかってくるとか思わないじゃん、やっぱ。
田中:いやまぁそうだけどさ。
田中:あれからどんくらい経ったと思ってんの?
田中:うん。
田中:時が経つのってあっという間だよな。
田中:いや、それを言うなら光陰矢の如しだろ。
田中:ほんとそれな。
田中:でもこの一瞬であの頃に戻った感じするわ。
田中:ていうか、今何してんの?
田中:じゃなくて、仕事とか。
田中:こっちは……まぁ、普通に会社員、とか?
田中:うん、まぁ、色々あって。
田中:というか、色々なかったのかも。
田中:まぁ、そうかも。
田中:そっちは?
田中:えー? 嘘だ、絶対なんかあるやつでしょそれ。
田中:そう? まぁ、追々聞くか。
田中:ていうかさ。
田中:なんかありがとな。
田中:なんでって、なんとなく?
田中:こう、埋めたことも忘れてたタイムカプセルが、なんかの拍子にひょこっと出てきた。みたいな感覚?
田中:嬉しくない? そういうの。今、嬉しいしだって。
田中:だからありがとな。かけてきてくれて。いや、ちがうな。
田中:まだ、憶えててくれて、かも。
田中:はは。……まぁ、正直言うと、そう。
田中:いや、ごめんって!
田中:ごめんごめん。
田中:あ、それで、なんか用事あったんじゃない?
田中:そうでもないとかけてこないじゃん、実際。
田中:こっちからかけることも、たぶんなんか用事なかったらないだろうし。
田中:それで、何の――
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0:間。
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田中:えっ?
田中:……マジ?!
田中:え、え、えっ?
田中:うわ、うっそ、すげぇじゃん!
田中:そうなんだ……! 全然知らなかったわー!
田中:えー? そっか、ていうことはやっぱ……。
田中:あー、やっぱそう来る感じ?
田中:え? なになに?
田中:あー、なるほどね。
田中:ふーん、そんなことあったんだ。それでさっきちょっと隠したんだ。
田中:気持ちは分かる。
田中:えー? いいと思うけどな。
田中:田中的には全然あり。
田中:でも、そっか。
田中:まぁ、言われてみればそうかも。
田中:ちなみにいつ?
田中:いやいや、なんでそこでまた勿体ぶる?
田中:そりゃ気になるって。
田中:重大発表されてカミングスーンとか言われると「いや、いつだよ!」ってなるでしょ。リニアモーターカーの開通ほんといつになるんだよくらい気になるわ。
田中:へー、そうなんだ?
田中:……じゃなくて、今あの店がどうなってるとかいいんだよ。
田中:確かにそれはそう。近所のコンビニの跡地でなんかよくわからないマッサージ屋とか開業されてる並みにそう。
田中:そうそう。しかも、その後のも割とすぐ潰れるんだよな。
田中:いやいやいや、だからもうその話は良いって。
田中:それでいつ?
田中:え、もうすぐじゃん!
田中:……あー、まぁ確かに?
田中:十年後二十年後の話はわざわざ電話してこないよな。手紙で十分っていうか。
田中:まぁ、最近手紙も全然出さないけどさ。
田中:分かる。仕事以外でメールとかしないよな。友達にメールとか特に。電話の方が早い。
田中:いや、悪かったって。電話どころか何も連絡とってなかったのはほんと。
田中:それも仕方ないかなって。言い訳だけどさ。
田中:お互い「忙しいかな」とか「迷惑じゃないかな」とか考えちゃうじゃん。やっぱ。
田中:そうそう「何時ごろなら平気かな?」って。仕事なら昼過ぎが良いよね、みたいな分かるけど。それも職種によるかもだけど。
田中:うん。電話かかってきたらやっぱ嬉しいよ。
田中:なんていうかさ「自分がされて嬉しいことは、きっと相手も嬉しい筈」なんて、なかなか思えないっていうかさ。
田中:それもわかるけどね。
田中:結局、時間があけばあく程、連絡って取りにくくなるんだよ。
田中:わかってても、先送りしちゃう感じ。
田中:それで「まぁ、もう連絡しても遅いよな」って納得しちゃうんだよ。
田中:ていうか、そうやって納得するために先送りしてたまであるかも。
田中:なんとなく好きじゃないお土産をもらって「食べたくないなぁ」と思いながら「でも捨てるのもなぁ」って放置して、賞味期限来たら「ちょっと悪いけどこれはもう流石に……」って、申し訳なさそうにしてる感じ。
田中:まぁ、ポーズだよな。
田中:あ、ごめんごめん。
田中:そんな話しても仕方ないよな。
田中:あー、ちょっと待って、その日は……。
田中:あっ、休みだ。
田中:うん。行ける、と思う。
田中:いやいや、こっちこそありがとう!
田中:はは、そんな大袈裟な!
田中:いいよ、全然。
田中:え? あ、もうそんな時間か。
田中:ははは、だからそれを言うなら光陰矢の如し。
田中:うん、わかった。
田中:じゃあ、また連絡するよ。今度はこっちから。
田中:うん、じゃあ。行けたら行くわ。
田中:はは、冗談冗談。
田中:じゃ、おやすみ。
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0:通話を切る音。
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田中:……ふぅ。久しぶりに、楽しかったな。
田中:あー、早く、来ないかなぁ。……楽しみだなぁ。
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0:着信音。
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田中:ん? なんだろ、なんか話し忘れたことでも――。
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0:電話に出る田中。
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田中:はい、こちら田中。
田中:……え。あ、すみません、田中です……! はい、お疲れ様です……!
田中:え、あ、はい。
田中:その日は休みですが……。
田中:え?
田中:あ、あの!
田中:いや、その日は、なんといいますか、その……。
田中:いや、そんな!
田中:…………分かり、ました。
田中:はい……。
田中:はい……、おつかれ、さまです。
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0:通話を切る音。
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田中:声、聞いただけで元に戻っちゃったな。
田中:……はぁ。
田中:辞めたいなぁ……。
田中:パッとしない人生。
田中:でもきっと、
田中:もう、遅いよなってなるんだろうな。
田中:結局、どこにも行けないんだろうな。
田中:短い夢と、長い現実。
田中:いけないどころか、そもそも居場所すらないんだから。
田中:はは、冗談。
田中:どころか、嘘吐きだ。
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0:◆◇◆