台本概要

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タイトル 俺と私のドキドキ恋愛冒険譚(ぼうけんたん)!
作者名 ふらん☆くりん  (@Frank_lin01)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 5人用台本(男3、女2) ※兼役あり
時間 90 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 【あらすじ】
これは、愛で満ち溢れた新世界「ラブリーニア」を舞台に、恋に見放された男女が織りなすドタバタハチャメチャ冒険譚である。

【著作権について】
本作品の著作権は全て作者である「ふらん☆くりん」に帰属します。
また、いかなる場合であっても当方は著作権の放棄はいたしません。

【禁止事項】
●商業目的での利用
●台本の無断使用、無断転載、自作発言等
●過度なアドリブ、セリフの大幅な改変等

【ご利用に際してのお願い】
●台本の利用に際しては作者X(旧ツイッター)DMに連絡をお願いいたします。
●配信等で利用される場合は①作品名、②作者名、③台本掲載URLを掲示していただけると嬉しいです。
●たくさんの方の演技を聴きに行きたいので、可能であれば告知文にメンションを付けていただけると嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
裕二 163 木村 裕二(きむら ゆうじ)・・・恋に見放された男子(21歳)。世の中のカップルの多さにうんざりしている。意外と頭の回転が早く、追い込まれると力を発揮するタイプ。
愛子 165 桐谷 愛子(きりたに あいこ)・・・同じく恋に見放された女子。(20歳)。ロマンチックな出会いを渇望しているが、リア充に対する敵対心は強め。意外に武闘派。
神的な人 37 新世界「ラブリーニア」の創造主。とにかく偉い人だが、抜けている所が多々あり。【ナレーション、村人Aと兼役】
村人A 6 始まりの村で出会った人。【神的な人役の方が演じてください】
ククル 70 ダンジョン攻略の途中で出会った女の子。優しくおしとやかな性格。
スライム 17 冒険と言えば先ずはこの方。ちょっとオタク気質あり。【デルゴム役の方が演じてください】
岩石魔人 13 岩の巨人。性格は荒っぽいが、その見た目からは想像もつかない攻撃を仕掛けてくる。【デルゴム役の方が演じてください】
ドメス 17 ダンジョンのボスキャラ。オネエ気質あり。狡猾な性格で多彩な攻撃を仕掛けてくる。【デルゴム役の方が演じてください】
デルゴム 26 闇に支配された世界「デスラバー」を支配する魔王。かなりの強敵。【スライム・岩石魔人・ドメスと兼役】
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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タイトル:俺と私のドキドキ恋愛*冒険譚《ぼうけんたん》! : 登場人物: 裕二:*木村 裕二《きむら ゆうじ》・・・恋に見放された男子(21歳)。世の中のカップルの多さにうんざりしている。意外と頭の回転が早く、追い込まれると力を発揮するタイプ。 愛子:*桐谷 愛子《きりたに あいこ》・・・同じく恋に見放された女子。(20歳)。ロマンチックな出会いを渇望しているが、リア充に対する敵対心は強め。意外に武闘派。 神的な人:新世界「ラブリーニア」の創造主。とにかく偉い人だが、抜けている所が多々あり。【ナレーション、村人Aと兼役】 村人A:始まりの村で出会った人。【神的な人役の方が演じてください】 ククル:ダンジョン攻略の途中で出会った女の子。優しくおしとやかな性格。 スライム:冒険と言えば先ずはこの方。ちょっとオタク気質あり。【デルゴム役の方が演じてください】 岩石魔人:岩の巨人。性格は荒っぽいが、その見た目からは想像もつかない攻撃を仕掛けてくる。【デルゴム役の方が演じてください】 ドメス:ダンジョンのボスキャラ。オネエ気質あり。狡猾な性格で多彩な攻撃を仕掛けてくる。【デルゴム役の方が演じてください】 デルゴム:闇に支配された世界「デスラバー」を支配する魔王。かなりの強敵。【スライム・岩石魔人・ドメスと兼役】 ナレーション:この物語のナレーション。【神的な人役の方が演じてください】 : :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声、『』は攻撃セリフです。 : : 本編: 裕二:あー…モテねぇ。俺はどうしてこんなにモテねぇんだ? 愛子:あー…モテない。どうして誰も振り向いてくれないの? ナレーション:(M)これは愛の溢れる世界「ラブリーニア」で繰り広げられる誰からもモテない男女二人組によるドタバタハチャメチャ*冒険譚《ぼうけんたん》である。 : 神的な人:ほっほっほ。良きかな、良きかな。今日もこの世界は愛に満ち溢れておるわい。ラブ&ピースとはよく言ったものじゃが、わしゃこの世界を作って良かったと心の底から思っておる。そうじゃ…思い返せば1000年前…。 神的な人:〈ここでなぜか回想シーン〉人々は日々戦いに明け暮れ、それはまぁ酷い有様じゃった…。下界から聞こえてくるのは、*虐《しいた》げられた者達の悲しみや怒り、そして、お互いを傷付け合うことによって生まれる憎しみの声ばかり…。わしはそんな世界を変えたかった。じゃからわしは巨大な虹を空に架けてみたり、流れる雲を可愛い犬の形にしてみたりと考え付く限りのあらゆる手段を試したんじゃ。じゃが…それでも人々の心は変わらんかった。そこでわしは思い付いたんじゃ。ならばいっそ、新たに愛でいっぱいの世界を作ってみたらどうかと。そうして生まれたのがこの新世界「ラブリーニア」なんじゃ。ここに住む者たちは皆、お互いを愛し合い、協力し合って幸せな生活を送っておる。これこそがわしが長年作りたかった理想の世界。ここには愚痴はおろか、他人を悪く言う者など一人も…。 裕二:ほんとマジでウザイ。クリスマスでもないのに外に出ればカップルだらけ。しかも朝っぱらから人前でベタベタイチャイチャと…当て付けかっての!彼女いないのがそんなに悪いか!こんちくしょう! 愛子:何なのよ!この世は道を歩けばカップルに当たる…なのに私はひとりぼっち。これって不公平以外の何物でもないじゃない!誰よ!こんな生き辛い世界を作ったのは!責任者出て来なさいっての!あーもう!リア充全滅しろ! 神的な人:いた…。しかもめーっちゃ愚痴吐きまくっとる!うう…なぜじゃ?わしは何を間違えたんじゃ?…はっ!そうか!真の愛は自然に育まれる訳じゃない。強くなるためにはそれ相応の鍛錬が必要なように、愛の素晴らしさを理解するにも修行が必要ということか!今ようやくわしは理解したぞ!ならばこの者たちを…むふふ。これは楽しくなってきたわい! : 裕二:はぁ…俺に安息の場所は無いのか。まったく…これじゃ落ち着いて昼飯も食えやしない。せっかくバイト代奮発して買った極上ステーキ弁当だってのに。仕方ない、この際*贅沢《ぜいたく》は言ってられん。せめて誰もいないベンチでも探さないと…ん?イチャつくカップルが描かれたマンホール?こんなの前にあったっけ?ぐぬぬ…何かじっと見てたらムカついて来た!くそ!こうしてやる!〈踏みつける〉 裕二:えっ!?うわあああ!!〈吸い込まれる〉 : 愛子:あー…どっかに良い男転がってないかなぁ…。あれ?見た事ないポスターだ。このイケメン誰かしら?良いなぁ…私もこんな男性と一緒になれたらなぁ…。このキリッとした顔、最高だわ♡ 愛子:〈妄想一人小芝居スタート〉 愛子:〈イケボで〉『おや?どうしたんだい?可愛い可愛い子猫ちゃん。』 愛子:やだ…か、可愛いだなんてそんな…。 愛子:〈イケボで〉『良かったら僕と素敵な場所に行かないかい?』 愛子:まぁ嬉しい♡王子様!私をどこかへ連れ去って! 愛子:〈イケボで〉『喜んで。それじゃあ行こうか!さぁ…手を出して…』 愛子:はい…よろしくお願いします♡〈ポスターに手を伸ばす〉 愛子:〈手を掴まれる〉え!何!?本当に手を掴まれて!って…きゃあ!!〈ポスターに引き込まれる〉 : :----------------------------- 裕二:う…うう。俺は一体…?って女の子!?おい…大丈夫か? 愛子:ん…んん。あれ?私のイケメンは? 裕二:イケメン?寝ぼけてんのか? 愛子:あんた、私のイケメンをどこにやったの? 裕二:知らんわ!てか、それよりもまずお前誰だよ? 愛子:あんたこそ誰よ! 神的な人:はい注目!パンパン〈拍手2回〉 裕二:あれ?そういや、俺の昼飯は?さてはお前食ったな! 愛子:はぁ?あんたのお昼なんて知ったこっちゃないわよ!今私はイケメンロスの真っ最中なんだから邪魔しないでよ! 神的な人:あの、もしもーし?おーい!ってコラ!聞けやお前ら! 裕二:何だよ!こっちは今それどころじゃねぇんだよ! 愛子:そうよ!これは私にとって死活問題なのよ! 神的な人:おい、そこの男子。お前の昼飯ならわしが食ったわい。 裕二:おまっ!何勝手に人の弁当食ってんだよ! 神的な人:いやはや、下界の食べ物もなかなかに美味じゃったわい。 裕二:俺の…飯が…。奮発して買った極上ステーキ弁当が…。 愛子:ふふん!ざまぁ見なさい!日頃の行ないが悪いからバチが当たったのよ! 裕二:〈半泣きしながら〉うるせぇ!お前に唯一の楽しみである昼飯を奪われた俺の気持ちが分かってたまるか! 神的な人:そしてそこの*女子《おなご》。さっきお主の手を引っ張ったポスターのイケメンはわしじゃ。 愛子:な、な、なんですって! 神的な人:お主のスベスベの手、フニフニしていてとっても良きじゃったぞ。 愛子:ああ…嘘だ…イケメンが…脳内で優しく口説いてきたあのイケメンの正体が…こんなジジイだったなんて…。 裕二:ぶははは!!何だ、お前こそ爺さんに手を握られてデレデレしてるなんて傑作だな! 愛子:う、うるさい!ああ…私の…乙女のトキメキが*汚《けが》されていく…もうダメ、生きて行けない。 神的な人:まあまあ二人とも、そう悲観的になるでない。 裕二:なるわ!ってか元はと言えばお前のせいだろーが! 愛子:そうよ!私の傷付いた乙女心、一体どうしてくれんのよ! 神的な人:はぁ…〈深い溜息〉。なんと心の狭いことよ。よもやこの世界にもお主らのような人間がおったとは。わしゃ悲しゅうて悲しゅうて…。 裕二:おい、何自分のやった罪をなかったことにしようとしてるんだ? 愛子:そもそも、あんた誰よ?急に私たちをこんな場所に連れて来て。説明しなさいよ! 神的な人:コホン…ではよく聞くが良い。わしはお前達の住む新世界「ラブリーニア」を作った創造主。一般的には神と呼ばれておる存在じゃ。 裕二:爺さんが神?何かのドッキリか? 愛子:だとしたら笑えないわね。とにかく、とっとと元の世界に帰しなさいよ。 神的な人:(なんじゃ!神を前にしてこの態度!)うおっほん!それはできん。なぜならお前たち二人には勇者となり、この闇に支配された世界「デスラバー」に愛を取り戻すために冒険に出てもらう。 裕二:はぁ?俺達が勇者ぁ? 愛子:なんでそんな面倒臭いことしなきゃなんないのよ? 神的な人:ほっほっほ。つべこべ言わずにやれ。ちなみにこれをクリアせんと元の世界には戻れんようになっとるから。そこんとこよろしく。 裕二:はぁ!何を勝手に! 愛子:横暴だわ!神だからって何でもやって良いわけじゃないんだからね! 神的な人:だまれクソガキども!とにかくじゃ、この世界に巣食う魔王「デルゴム」を倒し、この世に愛を取り戻すのじゃ!行くが良い勇者たちよ!〈姿が消える〉 裕二:あ!ちょっと待てコラ!ちっ…消えやがった。 愛子:はぁ…やるしかないのね。で?どうすんの? 裕二:俺に聞くな。つーか、自己紹介がまだだったな。俺は*木村 裕二《きむら ゆうじ》。よろしくな。 愛子:私は*桐谷 愛子《きりたに あいこ》。不本意だけどよろしく。 裕二:おい、不本意って何だよ。 愛子:はいはい。いちいち突っかからないの。ほら、さっさと行くわよ。とりあえずは情報収集からよ。 裕二:お前、何でそんなに*手馴《てな》れてんだ? 愛子:冒険と言えば大体こんなもんでしょ? 裕二:さては、お前相当やってんな? 愛子:うっさい!ちょっとこの手のゲームが好きなだけよ。 裕二:ふーん。それは頼もしいことで。 : :-------------------始まりの村 愛子:着いたわ。ここで初期装備を揃えてレベルが低いうちはここを拠点に経験値を上げて行くわよ。 裕二:あー…これからレベル上げという果てしなき単純作業が始まるのか…憂鬱だな。 愛子:文句言わないの。こんな世界とっととクリアするわよ。 裕二:へいへい。…それにしてもこの街、武器屋も防具屋も見当たらないけど? 愛子:確かに…言われてみれば妙ね。 裕二:すみません。この辺に武器屋か防具屋ってありませんか? 村人A:はぁ?あんた、何を言ってるんだ?ファンタジーの世界じゃあるまいし、そんな物あるわけないだろう? 裕二:え?でも、この世界は魔王に支配されてて村の外には魔物がうじゃうじゃいるんでしょう? 村人A:ああ。いるよ。 裕二:武器や防具なしでどうやって倒すんですか? 村人A:倒す?馬鹿なこと言っちゃいけねぇ。倒すんじゃなくて「落とす」んだよ。 裕二:はい?? 愛子:言ってる意味が全然分かんないんだけど。 村人A:まあなんだ。試しに村の外に出て奴らとやり合ってみると良い。そうすりゃ俺の言ってる意味が分かるさ。 裕二:はぁ…分かりました。 村人A:くれぐれも油断すんなよ。じゃあな! 愛子:行っちゃったわね。落とす…あくまで武器は使わずその身一つで絞め落とすってことかしら? 裕二:だとしたら俺はパスだな。そんなプロレスラーみたいな*荒業《あらわざ》できるわけないじゃんか。 愛子:私もよ。まあとりあえずは一度村の外に出てみましょう。 裕二:ああ、そうだな。 : :-------------------その辺の草原 愛子:えーっと?魔物、魔物っと…あ!いた! スライム:ぐふふ…。 裕二:おい、何かあいつキモイんだけど。 愛子:まずは私がやってみるわ!はああああ!!〈スライムに蹴りを入れる〉 スライム:ぐぁ!! 裕二:やったか? スライム:痛いなぁ…いきなり何すんだよ! 愛子:え?ノーダメージ? スライム:さてはお前ら新人だな。いてて…まあいいや。それじゃ僕がこの世界での戦い方を教えてあげるよ。ぐふふ…。 裕二:愛子!気を付けろ! 愛子:ちょっと!勝手に下の名前で呼ばないでよ!〈スライムを殴る〉 スライム:ぐふふ…無駄無駄。そんなんじゃ一生かかっても僕は倒せないよ。 愛子:この!この!このぉ!!〈連続でパンチやキックを繰り出す〉 スライム:ぐふふ…全然効かないねぇ。 愛子:はぁ…はぁ…何で倒れないの…? スライム:おやおや…そろそろ疲れて来た頃だねぇ。それじゃそろそろ行かせてもらうよ! 裕二:くそっ!うおおおお!!〈スライムにタックルをする〉 スライム:おっと、君は邪魔だよ!〈裕二のタックルを弾く〉 裕二:ぐはぁ!…ダメだ、タックルしても弾かれる! スライム:覚悟は良いかな?〈愛子に近づく〉 愛子:い、嫌ぁ!来ないで!! スライム:〈イケボで〉『大丈夫…何もしたりしないよ。君があまりにも可愛かったからついからかいたくなっただけなんだ。驚かしたりしてごめんね。さぁ、立てるかい?』 愛子:(ドクン!え?何この胸のトキメキは…。もしかしてこれは…恋?)きゃあああ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:おい愛子!大丈夫か! スライム:〈イケボで〉『おいで、僕が君を癒してあげるよ。』 愛子:(ドクン!!な、なんて甘い言葉なの!)ぐはぁ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:やばい、このままじゃ愛子がやられちまう!(待てよ?これってもしかして…。) スライム:それじゃあトドメといこうか! スライム:〈イケボで〉『君も僕の虜になっちゃいなよ♡』 愛子:(ドクン!!!あぁ♡もう私、この方の物になっても良いわ♡)ぐああ!…ダメ、もう…持たない…〈ダメージを受ける〉 スライム:ほう…まだ落ちないとは意外としぶといな。だが、これで最後だ! 裕二:〈イケボで〉『おいお前!俺という男がいながらそんな女に手を出すのか?』 スライム:(ドクン!な!何だこの展開は!まさか…BL!)ぐああ!!〈ダメージを受ける〉 愛子:え…? 裕二:〈イケボで〉『なぁおい!聞いてんのかって言ってんだろ!』 スライム:(ドクン!!ああ…そんな激しい言葉で責められたら…)がはぁ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:(やっぱりな。俺の予想通りだ。それならコイツでトドメだ!) 裕二:〈イケボで〉『悪かったな…怒鳴ったりして。もうどこにも行くんじゃねーぞ。俺がお前を幸せにしてやるからさ♡』 スライム:(ドクン!!!このタイミングでまさかのツンデレだと!!こんなの耐えられるわけないじゃないか!)ぎゃああああ!!〈HPが0になる〉 スライム:…もう…ダメ…〈スライム消滅〉 愛子:何…これ? 裕二:見ての通りだ。村人が言ってた「落とす」ってのは相手を「口説き落とす」って意味だったんだ。 愛子:は? 裕二:そして、自分の言葉が相手の心に刺さる度にダメージを与えることが出来るらしい。俺も最初はまさかとは思ったが、やってみたらビンゴだったよ。 愛子:ウソでしょ…。 裕二:おっ!さっきので俺のレベルが上がったらしい。へぇ、魅力が2ポイント上がって3になったぞ! 愛子:あれ?普通敵を倒したらパーティ全体に経験値が割り振られるんじゃないの 裕二:どうやら口説き落とした者にしか経験値は入らないシステムのようだな。まぁなんだ。お前も頑張れよ。 愛子:キーっ!!何かすっごい腹立つ!良いわよ!私だって負けないんだから! 裕二:その調子だ。それより、一度街に戻らないか?愛子のHPも回復せにゃならんだろうし。 愛子:そうね。あ、あとさ…私もあんたのこと裕二って呼んで良い? 裕二:ああ、別にいいけど? 愛子:ありがと…。 裕二:さぁて、帰って上手い飯でも食うとするか。 愛子:あ!ちょっと待ってよー!! : :-------------------宿屋 裕二:…なるほど、そういう事か。 愛子:ん?どうしたの? 裕二:いや、さっき手に入れた魔物攻略ブックを読んでたんだけど、敵に対して有効なダメージを与えるには、相手の性別、性癖、ウイークポイントなんかをちゃんと把握しておくことが大事なんだそうな。例えばさっきのスライムの場合、性別はなし。性癖はドMらしくてな、特に責めの言葉に弱いんだってさ。 愛子:あー、だから裕二の言葉に大ダメージを受けていたのね? 裕二:そういうこと。でもこの世界にはまだまだたくさんの魔物が住んでいるらしいから事前の予習と対策はしておいた方が良いみたいだな。 愛子:そうね。ところで、さっきは敵を倒したら消滅しちゃったけど、私たちのHPがゼロになったらどうなるの? 裕二:えっと、それについては…あった!なになに…もし冒険者のHPがゼロになった場合は…えっ!身も心も魅力されて敵の所有物になります…だと!? 愛子:じゃあもしあのまま私がスライムに負けていたら…こわっ! 裕二:また、一度敵の所有物になった者を元に戻すにはその敵を倒して強制的に引き*剥《は》がすか、何らかのアイテムで正気に戻すしか方法はない…って書いてあるぞ。 愛子:なんて恐ろしい世界なの…。裕二、とにかくまずはその情報を頭に叩き込んでから先に進みましょう!そうじゃないと一瞬でやられてしまうわ! 裕二:そうだな。とにかくやってみるか! 愛子:ええ!頑張りましょう! : 神的な人:ふむ…一時はどうなることかと思ったが、何とかなりそうじゃの。さてと、わしはここから高見の見物といこうかの。 : :-------------------一週間後 愛子:食料良し!回復ポーション良し! 裕二:魔物攻略ブック装備よし!帰還ワープの羽根携帯よし! 愛子:ん?帰還ワープの羽根?何それ? 裕二:これはな、いつでもどこでも瞬時に近くの村に転送してくれる便利アイテムだ。 愛子:へぇ。それは便利ね。じゃあそろそろ出掛けましょうか。 裕二:今日は初めてのダンジョンだからな。気を引き締めて行かないとな。 愛子:そうね…。 裕二:どうした? 愛子:私、大丈夫かしら?また前みたいなことになったらと思うと怖くて…。 裕二:心配すんなって!俺がついてるからさ。 愛子:あのねぇ…味方を口説いてどうすんのよ! 裕二:あ?口説いたつもりはねぇけど? 愛子:あっそ。それだけペラペラ出て来るなら安心だわ。 裕二:それは褒めてんのか? 愛子:さぁ?どっちでしょうね。 裕二:とにかく行くぞ! : :-------------------地下ダンジョン 裕二:さてと…どんな敵が待ち構えているのやら。 愛子:あら?あんな所に女性がうずくまって泣いてるわ。 裕二:俺、ちょっと見てくる。 裕二:〈女性に駆け寄る〉あの、大丈夫ですか? ククル:うう…ありがとうございます。私、初めてここに来たんですけど、仲間とはぐれてしまってどうして良いか分からなくて。とりあえず敵に見つからないように隠れていたんです。 裕二:そうだったんですか。それじゃあ一緒に行きませんか?俺達もここに来るのは初めてですし、人数は少しでも多い方が心強いですから。 ククル:え?良いんですか?ありがとうございます!それではお言葉に甘えて御一緒させていただきます! 愛子:裕二、その人は? 裕二:仲間とはぐれてしまったらしい。ずっと*怯《おび》えてたから一緒に連れて行くことにしたよ。 愛子:そう…あなた、お名前は? ククル:私はククルと申します。よろしくお願いいたします。 愛子:ククルさんね。私は愛子、そんでこっちが裕二。よろしくね。 ククル:お二人ともとってもお強そう。何か憧れちゃいます。 裕二:そんなことないっすよ。まだまだ駆け出しのヒヨっ子ですから。 愛子:ところでククルさんは冒険者になってからどれくらい経つの? ククル:そうですね…一年くらいかしら? 愛子:一年…ねぇ。 ククル:それが何か? 愛子:いいえ。別に。 裕二:なあ、もう行こうぜ。まだまだ先は長いんだしさ。 ククル:そうですね。行きましょう!裕二さん! 愛子:…。 : :-------------------ダンジョン中腹部 岩石魔人:グガァァ!! 裕二:現れたな!こいつはえーっと…。 ククル:岩の巨人、岩石魔人です!強力なモンスターなので気を付けてください! 裕二:分かった!行くぜ! 裕二:〈イケボで〉『なあお前さん、あんまりトガってばかりだと可愛くないぜ。』 岩石魔人:ふん、男になど興味は無いわ!! 裕二:くそ!ノーダメージか! ククル:ここは私が! ククル:〈お姉さんボイスで〉『ねぇ…そこのお兄さん。そのゴツゴツした身体、とっても*逞《たくま》しくて素敵よぉ♡』 岩石魔人:ふははは!その程度の攻撃など俺には効かんわ! ククル:そんな…私の攻撃が効かないなんて。 岩石魔人:今度はこちらの番だな。行くぞ! 岩石魔人:〈カワボで〉『クゥーン…お姉ちゃん。あんまりボクをいじめないで…。』 ククル:(ドクン!え!やだ可愛い!)きゃあああ!!〈ダメージを受ける〉 ククル:くっ…強い! 裕二:ククルさん! 岩石魔人:〈カワボで〉『あのね、ボク、お姉ちゃんとずっと一緒にいたいな。ねぇ…ダメ?』 ククル:(ドクン!!な、何なのこの可愛さは♡ああ…連れて帰りたい…)くはぁ!!〈ダメージを受ける〉 ククル:ま、まずい…このままだとやられちゃう…。 岩石魔人:(くくっ…そろそろ終わりか) 岩石魔人:〈カワボで〉『ククルお姉ちゃん、ボクをお家に連れてって…お・ね・が・い♡』 ククル:(ドクン!!!もちろんよ!あなたは私だけの物よ♡)あああ!!〈HPが0になる〉 ククル:…うふふ…岩石魔人様ぁ♡ククルは身も心もあなた様の虜ですわ♡ 岩石魔人:ふははは!どうだ!俺の手にかかればこんなもんだ。 裕二:くそ!男の俺じゃ手も足も出ない! 岩石魔人:さてと、そこの女もすぐに俺の物にしてやる! 岩石魔人:〈カワボで〉『愛子お姉ちゃんもボクのこと好きになってくれると嬉しいな。てへっ♡』(ふふふ…これでこいつも…) 愛子:はぁ?てめぇ何ほざいてんだ? 裕二:はい? 岩石魔人:馬鹿な!1ミリもダメージを受けていないだと!ギャップ萌えだぞ!この攻撃が効かない女なんている訳が… 愛子:〈妖艶ボイスで〉『あらぁ♡こんな悪いことする子は誰かしら?』 岩石魔人:(ドクン!ぐっ!何だこの心を揺さぶる攻撃は!)がはぁ!!〈ダメージを受ける〉 愛子:〈妖艶ボイスで〉『ほんと、イケナイ子ね。そんな坊やにはお仕置が必要ね♡』 岩石魔人:(ドクン!!や、やめろ!それ以上はもう…)ぐおお!!〈ダメージを受ける〉 愛子:〈妖艶ボイスで〉『さぁ♡私に*跪《ひざまず》きなさい!そして、私の奴隷になると誓うの♡分かったかしら?』 岩石魔人:(ドクン!!!はい!女王様ぁ!!)ぎゃあああ!!〈HPが0になる〉 岩石魔人:うう…なんて幸せ…〈岩石魔人消滅する〉 : 裕二:ククルさん!しっかりするんだ! ククル:あ…あれ?私は一体…? 愛子:岩石魔人に負けたのよ。 ククル:え…?それじゃあ私、あの魔人の虜に…うう…〈泣き出す〉 愛子:はぁ…。〈溜息〉大丈夫よ。アイツは私が倒したからもう泣かないの。ほら、回復ポーションよ。飲みなさい。 ククル:ぐすん…はい。ありがとうございます。ゴクゴク…。〈回復ポーションを飲む〉 愛子:それと、あなたに謝らないといけないことがあるの。 ククル:え? 愛子:私、あなたのことを魔物の仲間じゃないかって疑ってたの。 ククル:私が…魔物の仲間? 愛子:ええ。でもさっき、強敵を前にして必死で戦う姿を見て気付いたの。私、あなたに嫉妬してただけなんだって。 ククル:私に嫉妬ですか? 愛子:だってククルは可愛いくて優しいし、とっても良い子なんだもん。 ククル:そんなことないですよ。いやですわ…あんまり褒められると照れちゃいます。 愛子:うふふ。ククル。改めてよろしくね! ククル:はい!よろしくお願いします! 愛子:それと、せっかく仲間になったんだから堅苦しい敬語はなしでいきましょう。 ククル:分かったわ。ありがとう愛子。 裕二:さてと、いよいよダンジョンの最深部だな。どんな敵がいるか分からないから気を付けて進もうぜ! ククル:うん! 愛子:そうね! : :-------------------ダンジョン最深部 裕二:ここがダンジョンの最深部…なんて*禍々《まがまが》しい場所なんだ。 愛子:いよいよなのね。 ククル:う…うう。私、何かとっても嫌な予感がするわ。 愛子:大丈夫よ。これまで一緒に頑張ってきたじゃない。 ククル:そうね。ありがとう愛子。 裕二:さぁ、どっからでもかかって来やがれ! ドメス:なら、遠慮なく。 ドメス:〈オネエボイスで〉『ふーっ〈耳に息を吹きかける〉』 裕二:(ドクン!ゾワ!何!耳責めだと!)ぐぁぁ!〈ダメージを受ける〉 裕二:だ、誰だてめぇは! ドメス:うふふ…初めまして。私はこのダンジョンの*主《ぬし》、ドメスよ。 ククル:ドメス…。ついに現れたわね。 愛子:不意打ちなんて卑怯よ! ドメス:卑怯?あら、それじゃあこういうのはどうかしら? ドメス:「*幻惑魔法《げんわくまほう》…トラウマキネシス!」 愛子:(これは…私の記憶…?そうだ、私、クラスのみんなにいじめられてたんだ…。うう…何で?どうして私ばっかりこんな辛い目に遭うの!) ドメス:〈オネエボイスで〉『愛子、あなたは何にも悪くない。私だけは何があってもあなたの味方よ。』 愛子:(ドクン!え…?私の苦しみを分かってくれるの?)くはっ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:〈オネエボイスで〉『辛かったわね…でももう大丈夫。私があなたを暗闇から連れ出してあげるわ。』 愛子:(ドクン!!あ、ああ…何て温かい言葉なの…)がはぁ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:〈オネエボイスで〉『さぁ…私の手を取って。一緒に楽園に行きましょう♡』 愛子:(ドクン!!!はい…お姉様…♡)きゃあああ!!!〈HPが0になる〉 裕二:愛子!! 愛子:あ…ああ♡ドメスお姉様ぁ♡愛子はお姉様に一生着いて行きます♡ ドメス:うふふ…一丁上がりね。 裕二:くそっ!愛子が一瞬でやられるなんて!それに何だあの魔法は? ククル:次は私が! ククル:〈お姉さんボイスで〉『コラ!ドメスちゃん!弱い者いじめなんかしちゃダメじゃない!…大好きな君がそんなことしたら…うう…お姉さん泣いちゃうんだから…。』 ドメス:あらぁ?泣き落としかしら?残念だけど私の心には全然響かなかったわ。じゃあ、これはお返しね♡ ドメス:〈イケボで〉『おい、無理すんなって。ククルが辛そうにしている姿なんて、俺見たくないからさ。』 ククル:(ドクン!やだ…急にイケボなんて)ああ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:(なんて多彩な攻撃なんだ。一体どうやったらコイツを倒せるんだ?) ドメス:さぁ、どんどん行くわよ! ドメス:〈イケボで〉『君が出来ない分は俺が代わりにやってやる!だからククルは俺の*傍《そば》でずっと笑っていてくれないか?』 ククル:(ドクン!!ああ…そんなこと言われたら私…)くはぁ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:うふふ…次で最後よ。さぁ、あなたも落ちなさい! 裕二:(畜生!俺はこのまま仲間のピンチを黙って見ていることしか出来ないのか!) ククル:裕二…助けて! 裕二:くっ! 裕二:〈素の声で〉『ククル!君は俺の大切な仲間だ!だから誰の物にもなるな!』 ククル:(ドクン!!!ああ!裕二!!)これは…攻撃無効の付加効力? ドメス:何なの?一体何が起きたというの?まあ良いわ。これで終わりよ! ドメス:〈イケボで〉『俺は君の全てが欲しいんだ!愛してるよククル!』 裕二:ククルー!! ククル:ドメス…もうあなたの言葉は私には届かない! ドメス:なっ!そんな馬鹿な!私の*渾身《こんしん》の攻撃が効かないことなんてあるはずがないじゃない! ククル:裕二の魂の言葉が、私に攻撃無効化の*付加効力《ふかこうりょく》を与えてくれたのよ! ドメス:何?そんなことが! 裕二:(敵が動揺している!これはチャンスだ!) 裕二:〈イケボで〉『ドメス、君は良く頑張った。ほんとはずっと一人で寂しかったんだろう?』 ドメス:(ドクン!ウソ…この私がときめいてるの?)ぐああ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:そんな!私がダメージを受けるなんて! 裕二:〈イケボで〉『でももう良いんだ。無理に自分を着飾る必要なんてどこにもないんだから。』 ドメス:(ドクン!!何?何なの?私の心が癒されていく)うぐっ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:〈イケボで〉『ドメス、ありのままの君が一番素敵だよ。』 ドメス:(ドクン!!!や、やめろ!やめなさい!私に優しくしないで!)ぐああああ!!〈HPが0になる〉 ドメス:…ありがとう。勇者よ。〈ドメスが消滅する〉 愛子:うう…あれ?ドメスは? 裕二:愛子、ドメスは消滅したよ。 ククル:裕二が倒してくれたの! 愛子:そうだったんだ。結局私、やられちゃったのね…。 裕二:愛子、気にすんな。 ククル:そうよ。愛子は強いわ。だって岩石魔人の時も敵を倒してくれたじゃない。 愛子:それはそうだけど…。 裕二:とりあえずさ、このダンジョンはクリアしたんだ。村に帰ろうぜ! 愛子:うん…。 ククル:じゃあ私はここでお別れだね。 愛子:え?どういうこと? ククル:本当は二人と一緒に冒険したいけど、仲間のみんなとも合流しないと。 裕二:そっか。そういやはぐれたって言ってたしな。 ククル:うん。そういうことだから…じゃあね。 愛子:また会えるよね? ククル:もちろんよ!また会いましょう! 裕二:ああ!じゃあな! ククル:うん。バイバイ! : 裕二:行っちまったな。 愛子:本当に良い子だったね。 裕二:ああ、じゃあ俺達もそろ帰るか。 愛子:そうしましょう。 裕二:それじゃ!帰還ワープの羽根で!いざ!〈転送される〉 : :------------------一週間後。始まりの村の宿屋にて。 愛子:はぁ…。 裕二:どうしたんだ?ダンジョンから帰ってから元気ないぞ。 愛子:結局私ってみんなの足を引っ張ってばかりでさ。ほんと、情けないよ。 裕二:そんなことないさ。愛子の強さは俺も充分分かってるよ。 愛子:強さかぁ…。 裕二:あんま悩んでるとそれこそ勝てるもんも勝てねぇぞ。 愛子:うん。 裕二:じゃあ景気付けに飯でも食いに行こうぜ! 愛子:ごめん…今、そんな気分じゃないの。ちょっと一人にしてくれる? 裕二:ああ、分かった。ただ、あんまり思い詰めんなよ。 愛子:うん。ありがとう。 : 愛子:(こんな弱い私じゃ、魔王デルゴムなんてとてもじゃないけど*敵《かな》いっこないわ…) デルゴム:おやおやお嬢さん、何をお悩みで? 愛子:きゃ!あんた誰?それにどっから入って来たのよ? デルゴム:これは失礼。私は魔王デルゴム。あなた方が倒そうとしているこの世界の支配者です。 愛子:なっ!どうしてあんたがここに!くっ…一体どうすれば! デルゴム:まあそう警戒しないでください。私はあなたと戦いに来たのではありません。むしろあなたを救いに来たのです。 愛子:私を救いに?ふざけたこと言わないで! デルゴム:本当ですとも。ダンジョン攻略の時から…いや、この世界に来た時からずっとあなたの事を見ていました。 愛子:うそでしょ?それじゃあ今まで起こったことも全部筒抜けだったってこと? デルゴム:その通りです。だから…。 デルゴム:〈優しい口調で〉『愛子、僕は君のことを誰よりも分かっているよ。君の強さも弱さも…そしてとっても優しい所もね。』 愛子:(ドクン!え?何?この感覚?この人は敵なのに…)きゃああ!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:〈優しい口調で〉『傷付いたんだよね?辛かったんだよね?自分の弱さが許せなかったんだよね?』 愛子:(ドクン!!そうだ…私は弱い自分が許せなくて…)ぐっ!ああ!!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:〈優しい口調で〉『大丈夫。そんな君の弱い所も含めて僕が全部包み込んであげるよ。だから君は何も考えず、僕に身を委ねれば良いんだ。』 愛子:(ドクン!!!ああ…なんて心地良い言葉なの…私もうどうなってもいい…)あああ!!〈HPが0になる〉 愛子:はぁ♡愛子の全てをデルゴム様に捧げます…♡ デルゴム:ふふふ…。良い子だ。それじゃあ行こうか。 愛子:はい♡どこへなりともお供しますわ♡ : 裕二:愛子?少しは落ち着いたか?って…あれ?いない。どこ行ったんだ? 神的な人:裕二!裕二はおるか? 裕二:ひっ!びっくりした!何だよ爺さん。急に出て来んなよ! 神的な人:大変なんじゃ!とにかく大変なんじゃあ! 裕二:分かったから一旦落ち着けって。それで、何があったんだ? 神的な人:彼女が…*桐谷 愛子《きりたに あいこ》が魔王デルゴムに*攫《さら》われたんじゃ! 裕二:なっ!何だって!それで、愛子は今どこにいるんだ? 神的な人:彼女は今、魔王デルゴムの*根城《ねじろ》、「マッドキャッスル」におる。 裕二:それじゃあ今すぐ助けに行かないと!爺さん!詳しい場所を教えてくれ! 神的な人:それは構わんが、奴はかなりの強敵じゃ。単身で乗り込んでも今の君のレベルでは返り討ちに遭うのが関の山じゃ。 裕二:それでも!このまま放って置くことなんて出来ない! 神的な人:うむ、困ったのぅ…。誰か強力な味方でもいれば良いのじゃが…。 ククル:あら?何かお困りのようね? 裕二:ククル!?何故君がここに? ククル:久しぶりにお二人に会いたいと思って近くを通り掛かったら、この村から強大な魔力を感じたの。もしやと思って急いで駆け付けて来てみれば愛子が*攫《さら》われたって言うじゃない。私もうびっくりしちゃって。 裕二:そうだったのか…。でも来てくれて嬉しいよ。ありがとう。 神的な人:ククル君じゃったかの。お願いじゃ、裕二と一緒に愛子君を助け出してはくれんかの? 裕二:ククル、すまない。俺からも頼む! ククル:うふふ…もちろんよ! そのつもりで装備もバッチリ整えて来たんだから! 神的な人:おお!それは素晴らしい! 裕二:ククル!本当にありがとな!それじゃあ早速出発しよう! ククル:ええ! 神的な人:あー、ちょっと待つんじゃ。 裕二:何だよ爺さん? 神的な人:これを持って行きなさい。〈スマホ型端末を渡す〉 裕二:スマホ?何に使うんだ? 神的な人:スマホではない。神的アイテム「見守る君」じゃ。 裕二:見守る君?何そのお年寄りの方が身に付けていそうなアイテムは? 神的な人:失礼な!これは高性能レーダー装置じゃ。これで彼女の正確な位置がリアルタイムで表示されるようになっておる。 ククル:まぁ!それはありがたいわ! 裕二:ありがとな!爺さん! 神的な人:あとこれも持って行くと良い。〈二人に包みを手渡す〉 裕二:これは…御守り? 神的な人:そうじゃ。一つは「身代わりの*護符《ごふ》」と言ってな、一度だけHPが0になるのを防いでくれるんじゃ。これは二人に渡しておくから身に着けておくと良い。そしてもう一つは「気付けの護符」。これは身に着けた者を正気に戻すマジックアイテムじゃ。隙を見て愛子君の首に掛けてくれ。そうすれば彼女は正気を取り戻すはずじゃ。 裕二:分かった。いろいろありがとな!それじゃあ行ってくるわ! 神的な人:ああ。くれぐれも気を付けるんじゃぞ!それからククル君、裕二と愛子君を頼む。 ククル:はい!任せてください! : 神的な人:いつの間にやら立派になったのぅ…。頼んだぞ。二人とも。 : :-------------------魔王城「マッドキャッスル」 デルゴム:僕の可愛い愛子よ、君に頼みたいことがあるんだ。 愛子:何なりとお申し付けください。デルゴム様のためならどんな事でもいたしますわ♡ デルゴム:それは頼もしいね。それじゃ耳を貸して…。 愛子:はい……ひゃん♡もう!急に息を吹き掛けないでください♡デルゴム様の意地悪♡ デルゴム:あはは…ごめんごめん。愛子があまりにも可愛いからついからかいたくなっちゃった。それじゃあもう一度耳を貸して。 愛子:はい。 デルゴム:ごにょごにょ…〈内容を伝える〉 愛子:うふふ…それは楽しそうですわね。そのお役目、ぜひやらせてくださいな♡ デルゴム:ああ、頼んだよ。 愛子:お任せください。デルゴム様♡ : :-------------------マッドキャッスル第一の間 裕二:ここが爺さんの言ってたマッドキャッスルか。 ククル:とてつもない魔力が渦巻いているわね。 裕二:ああ…。それじゃあ入るぞ! ククル:ちょっと待って!あそこに繋がれてるのって…愛子!? 裕二:ほんとだ!おい!愛子!大丈夫か! 愛子:う…うう。裕二…?それにククルも!助けに来てくれたの? 裕二:ああ!酷い…こんなにやつれて。待ってろ。今*鎖《くさり》を解いてやる。〈愛子に繋がれた鎖を外す〉 愛子:あ、ありがとう…。 ククル:愛子さん、どこか怪我はない? 愛子:大丈夫よ…。私、アイツに薬で眠らされて気付いたらここに*繋《つな》がれていたの。 裕二:そうだったのか。でももう大丈夫だ。ほら、回復ポーションだぞ。 愛子:ありがとう。ゴクゴク〈回復ポーションを飲む〉 愛子:はぁ…助かったわ。本当にありがとう。 裕二:とにかく無事で良かった。立てるか?俺の肩に掴まれ。 愛子:あ、ありがとう…んっ。〈立ち上がる〉 愛子:行きましょう!デルゴムを倒しに! ククル:ええ! 愛子:あ、ククル。ちょっとじっとしてて。 ククル:ん? 愛子:うん!これでよし! ククル:何? 愛子:肩にゴミが付いてたから取ってあげたの。 ククル:ありがとう。 裕二:それじゃ行くぞ!二人とも! : :-------------------マッドキャッスル謁見の間 デルゴム:これはこれは勇者*御一行様《ごいっこうさま》。ようこそ!我がマッドキャッスルへ! 裕二:お前が魔王デルゴムか! デルゴム:その通り。僕がこの世界の支配者、魔王デルゴムだよ。 ククル:くっ…。なんて魔力なの…。 愛子:あなただけは許さない! デルゴム:うふふ…立ち話も何だから、そろそろ始めようか。…とその前に。 愛子:これは外しておかないとね♡〈身代わりの護符をチラつかせる〉 裕二:なっ!それは身代わりの護符!愛子、いつの間に! ククル:私のもないわ!愛子…まさか? 愛子:あらぁ?今頃気付いたの?ふふふ…間抜けね。そうよ、今の私はデルゴム様の忠実な*下僕《しもべ》よ♡ 裕二:そんな…。 デルゴム:さぁ愛子、それをこちらに。 愛子:はい♡デルゴム様♡〈護符をデルゴムに渡す。〉 デルゴム:こんな小道具を用意していたとはね。ふん!〈護符を燃やす〉 ククル:ああ!大切な護符が! 裕二:燃えていく…。 デルゴム:さてと、これで心置き無く戦えるね。お互い、思う存分楽しもうじゃないか! ククル:くっ…! 愛子:まずはあなたから♡ ククル:しまった! 愛子:〈妖艶ボイスで〉『うふふ…そんなに怖がらないで。ああ…なんて可愛いの♡食べちゃいたいわ♡ペロリ〈ククルの耳を舐める〉』 ククル:(ドクン!ひっ!ゾクゾクする)ひゃあ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:ククル! 愛子:あら裕二、油断しちゃダメよ。 裕二:何!? 愛子:〈素の声で〉『裕二…あのね、私あなたの事、ずっと前から気になってたの…』 裕二:(ドクン!え?愛子…お前…)ぐっ!〈ダメージを受ける〉 ククル:愛子…。 愛子:〈優しい口調で〉『ほぉら…そんなに落ち込まないで。私があなたを癒してあげるわ。なでなで。うふふ…とっても良い子ね。』 ククル:(ドクン!!この包み込まれるような安らぎは何…?)あああ!〈ダメージを受ける〉 ククル:うう…強い…。 裕二:やめろ…愛子。 愛子:それじゃあまずはこっちからね。 愛子:〈女王様ボイスで〉『ククル!誰が休んで良いって言ったの?あなたは私のペットでしょ?ペットはペットらしくご主人様にご奉仕なさい!』 ククル:(ドクン!!!ああ!女王様にご奉仕したいの!)きゃあああ!!!〈HPが0になる〉 ククル:くぅーん…ご主人様ぁ♡ 裕二:ククル!くそっ…! 愛子:次はあなたよ。 愛子:〈優しい口調で〉『裕二…私ね、ずっとあなたと一緒にいたいな。ダメ?』 裕二:(ドクン!!*覗《のぞ》き込むような*上目遣《うわめづか》いだと!か、可愛い…)ぐおお!〈ダメージを受ける〉 裕二:う、うう…。 デルゴム:さぁ愛子、彼にトドメを。 愛子:はい♡仰せのままに♡ 裕二:愛子…やめてくれ…。 愛子:〈カワボで〉『裕二が振り向いてくれないなら、私、*拗《す》ねちゃうんだからね!ぷんぷん!…というのはうーそ!大好きだよ!裕二!』 裕二:(ドクン!!!こ、これは反則だろ!)ぐあああ!!〈HPが0になる〉 裕二:うん…俺も大好きだよぉ♡ デルゴム:ふははは!これは愉快だ!よもやここまで楽しめるとは!よくやったぞ愛子! 愛子:うふふ…私もとっても嬉しゅうございますわ♡それでは一つ愛子のお願い聞いてくださる? デルゴム:ああ良いよ!何でも言ってごらん。 愛子:それではお耳を*拝借《はいしゃく》して…。 愛子:〈女番長口調で〉『おいデルゴム!てめぇ何調子乗ってんだ?ああん?』 デルゴム:(ドクン!え…何?この心に刺さる*罵声《ばせい》は?)ぐふっ!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:な…一体何が起こった? 愛子:裕二!ククル!今がチャンスよ!一気に*畳《たた》み掛けるわよ! 裕二:おう! ククル:分かったわ! ククル:〈冷徹に突き放す感じで〉『あなた、マジでキモイです。私に近づかないでください。』 デルゴム:(ドクン!!はぅあ!この突き放す感じがまた良い!)ぐああ!!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:やばい…このままでは…。 裕二:ラストは俺だ! 裕二:〈正義感溢れる感じで〉『おい!やめろよ二人とも!デルゴム君は何にも悪いことしてないだろ!…もう大丈夫だよ。君は僕が守るから。』 デルゴム:(ドクン!!!や、やめろ!俺を*庇《かば》ったりするな!それにその優しい言葉は!)ぎゃあああ!!〈HPが0になる〉 デルゴム:ああ…俺は負けたのか。ふふふ…今は不思議と悪くない気分だ。見事だ…勇者たちよ。僕を倒したその偉業、誇りに思うが良い…じゃあな…。〈デルゴム消滅する〉 : 裕二:やった…のか? 愛子:ええ!ついに魔王デルゴムを倒したのよ! ククル:やったわね!…それにしても裕二、いつの間に愛子さんに気付けの護符を? 裕二:ああ、それなら第一の間で愛子に肩を貸しただろ?その時に…な? 愛子:ええ。おかげで正気に戻ることが出来たのよ。 ククル:それなら何で私達の身代わりの護符を奪ったの? 裕二:全てはデルゴムを油断させるための作戦だったのさ!俺達が愛子にやられたフリをしてアイツが油断した所を3人で一気に仕掛ける。正直上手くいくかは賭けだったけどな。 愛子:でもこれでミッション達成ね! あの爺さん、そろそろ出てくるんじゃないかしら? 裕二:お!噂をすれば! 神的な人:おお!お前たち!よくぞ魔王デルゴムを倒してくれた!お前たちの活躍で全ての魔物は消え、この世界にもようやく平和が訪れたのじゃ。心から感謝するぞ。 愛子:ってことは、私達も元の世界に戻れるのね? 神的な人:その通りじゃ。 裕二:ん?待てよ?ということはククルはどうなるんだ? ククル:私は元々この世界の住人だからここに残るわ。それに復興のお手伝いもしないといけないしね。 裕二:そっか…じゃあククルとはまた離れ離れになっちまうって事なのか? 愛子:私…嫌よ。せっかく仲良くなれたのに。 ククル:私もよ。でも住む世界は違っても私達の心は繋がってるわ、愛子、裕二、元の世界に帰っても私のこと忘れないでね。 裕二:ああ…絶対に忘れないよ。 愛子:いつまでも親友だからね! ククル:うん…うん!…ううう…〈泣き出す〉 愛子:やだ…泣かないでよ。私まで泣けてくるじゃない…ううう…。〈泣き出す〉 裕二:うう…俺も寂しいよ。 神的な人:じゃあそろそろお前たちを元の世界に戻すとするかの。 裕二:ぐすん…元気でな!ククル! 愛子:またね! ククル:うん…バイバイ! 神的な人:転送の扉オープン!! : :-------------------新世界「ラブリーニア」 裕二:う…うん…あれ?ここは?おい、愛子! 愛子:うう…ん?裕二? 裕二:どうやら無事に帰って来られたみたいだぞ。 愛子:そうみたいね。はぁ…今思い出すと何だか寂しいな。 裕二:そうだな…でもそれ以上に良い冒険だった。 愛子:そうね。…あのさ…裕二。 裕二:ん?何? 愛子:もし良かったらさ、私達…… :〈しばしの間〉 裕二:付き合おっか? 愛子:え?えーー!! 裕二:いやぁ…実は俺もいつ言おうか迷ってたんだよな。 愛子:そっか…それは良いとして… 裕二:どうした? 愛子:一世一代の乙女の告白をアンタは何だと思ってんのよ! 裕二:いや…でも言いにくそうだったから代わりに… 愛子:そこは黙って見守るのが男ってもんでしょ! 裕二:お前がいつまでも黙ってるから助け舟出してやったんだろ! 愛子:そういうとこよ!そーゆーとこ!これだから乙女心が分からない男ってのは全く…! 裕二:ぷっ…ふふふ 愛子:ぷっ…うふふ 裕二:あははは!! 愛子:うふふふ!! :〈しばらく笑い合う〉 裕二:俺達、意外と良いコンビになれそうだな。 愛子:ええ、そうね。 裕二:これから辛いことや苦しいことがいっぱいあるだろうけどさ。 愛子:私達ならきっと乗り越えて行けるよね。 裕二:ああ!これからよろしくな。大好きだよ!愛子! 愛子:こちらこそよろしくね!愛してるわ!裕二! : 神的な人:ふぅ…これでようやくわしの仕事も一段落付くわい。あとは…そうじゃな、空の上から二人の行く末でも眺めて楽しむとするかの。ほっほっほ! : :~完~

タイトル:俺と私のドキドキ恋愛*冒険譚《ぼうけんたん》! : 登場人物: 裕二:*木村 裕二《きむら ゆうじ》・・・恋に見放された男子(21歳)。世の中のカップルの多さにうんざりしている。意外と頭の回転が早く、追い込まれると力を発揮するタイプ。 愛子:*桐谷 愛子《きりたに あいこ》・・・同じく恋に見放された女子。(20歳)。ロマンチックな出会いを渇望しているが、リア充に対する敵対心は強め。意外に武闘派。 神的な人:新世界「ラブリーニア」の創造主。とにかく偉い人だが、抜けている所が多々あり。【ナレーション、村人Aと兼役】 村人A:始まりの村で出会った人。【神的な人役の方が演じてください】 ククル:ダンジョン攻略の途中で出会った女の子。優しくおしとやかな性格。 スライム:冒険と言えば先ずはこの方。ちょっとオタク気質あり。【デルゴム役の方が演じてください】 岩石魔人:岩の巨人。性格は荒っぽいが、その見た目からは想像もつかない攻撃を仕掛けてくる。【デルゴム役の方が演じてください】 ドメス:ダンジョンのボスキャラ。オネエ気質あり。狡猾な性格で多彩な攻撃を仕掛けてくる。【デルゴム役の方が演じてください】 デルゴム:闇に支配された世界「デスラバー」を支配する魔王。かなりの強敵。【スライム・岩石魔人・ドメスと兼役】 ナレーション:この物語のナレーション。【神的な人役の方が演じてください】 : :(M)はモノローグ(独白)、〈〉はト書き、()は心の声、『』は攻撃セリフです。 : : 本編: 裕二:あー…モテねぇ。俺はどうしてこんなにモテねぇんだ? 愛子:あー…モテない。どうして誰も振り向いてくれないの? ナレーション:(M)これは愛の溢れる世界「ラブリーニア」で繰り広げられる誰からもモテない男女二人組によるドタバタハチャメチャ*冒険譚《ぼうけんたん》である。 : 神的な人:ほっほっほ。良きかな、良きかな。今日もこの世界は愛に満ち溢れておるわい。ラブ&ピースとはよく言ったものじゃが、わしゃこの世界を作って良かったと心の底から思っておる。そうじゃ…思い返せば1000年前…。 神的な人:〈ここでなぜか回想シーン〉人々は日々戦いに明け暮れ、それはまぁ酷い有様じゃった…。下界から聞こえてくるのは、*虐《しいた》げられた者達の悲しみや怒り、そして、お互いを傷付け合うことによって生まれる憎しみの声ばかり…。わしはそんな世界を変えたかった。じゃからわしは巨大な虹を空に架けてみたり、流れる雲を可愛い犬の形にしてみたりと考え付く限りのあらゆる手段を試したんじゃ。じゃが…それでも人々の心は変わらんかった。そこでわしは思い付いたんじゃ。ならばいっそ、新たに愛でいっぱいの世界を作ってみたらどうかと。そうして生まれたのがこの新世界「ラブリーニア」なんじゃ。ここに住む者たちは皆、お互いを愛し合い、協力し合って幸せな生活を送っておる。これこそがわしが長年作りたかった理想の世界。ここには愚痴はおろか、他人を悪く言う者など一人も…。 裕二:ほんとマジでウザイ。クリスマスでもないのに外に出ればカップルだらけ。しかも朝っぱらから人前でベタベタイチャイチャと…当て付けかっての!彼女いないのがそんなに悪いか!こんちくしょう! 愛子:何なのよ!この世は道を歩けばカップルに当たる…なのに私はひとりぼっち。これって不公平以外の何物でもないじゃない!誰よ!こんな生き辛い世界を作ったのは!責任者出て来なさいっての!あーもう!リア充全滅しろ! 神的な人:いた…。しかもめーっちゃ愚痴吐きまくっとる!うう…なぜじゃ?わしは何を間違えたんじゃ?…はっ!そうか!真の愛は自然に育まれる訳じゃない。強くなるためにはそれ相応の鍛錬が必要なように、愛の素晴らしさを理解するにも修行が必要ということか!今ようやくわしは理解したぞ!ならばこの者たちを…むふふ。これは楽しくなってきたわい! : 裕二:はぁ…俺に安息の場所は無いのか。まったく…これじゃ落ち着いて昼飯も食えやしない。せっかくバイト代奮発して買った極上ステーキ弁当だってのに。仕方ない、この際*贅沢《ぜいたく》は言ってられん。せめて誰もいないベンチでも探さないと…ん?イチャつくカップルが描かれたマンホール?こんなの前にあったっけ?ぐぬぬ…何かじっと見てたらムカついて来た!くそ!こうしてやる!〈踏みつける〉 裕二:えっ!?うわあああ!!〈吸い込まれる〉 : 愛子:あー…どっかに良い男転がってないかなぁ…。あれ?見た事ないポスターだ。このイケメン誰かしら?良いなぁ…私もこんな男性と一緒になれたらなぁ…。このキリッとした顔、最高だわ♡ 愛子:〈妄想一人小芝居スタート〉 愛子:〈イケボで〉『おや?どうしたんだい?可愛い可愛い子猫ちゃん。』 愛子:やだ…か、可愛いだなんてそんな…。 愛子:〈イケボで〉『良かったら僕と素敵な場所に行かないかい?』 愛子:まぁ嬉しい♡王子様!私をどこかへ連れ去って! 愛子:〈イケボで〉『喜んで。それじゃあ行こうか!さぁ…手を出して…』 愛子:はい…よろしくお願いします♡〈ポスターに手を伸ばす〉 愛子:〈手を掴まれる〉え!何!?本当に手を掴まれて!って…きゃあ!!〈ポスターに引き込まれる〉 : :----------------------------- 裕二:う…うう。俺は一体…?って女の子!?おい…大丈夫か? 愛子:ん…んん。あれ?私のイケメンは? 裕二:イケメン?寝ぼけてんのか? 愛子:あんた、私のイケメンをどこにやったの? 裕二:知らんわ!てか、それよりもまずお前誰だよ? 愛子:あんたこそ誰よ! 神的な人:はい注目!パンパン〈拍手2回〉 裕二:あれ?そういや、俺の昼飯は?さてはお前食ったな! 愛子:はぁ?あんたのお昼なんて知ったこっちゃないわよ!今私はイケメンロスの真っ最中なんだから邪魔しないでよ! 神的な人:あの、もしもーし?おーい!ってコラ!聞けやお前ら! 裕二:何だよ!こっちは今それどころじゃねぇんだよ! 愛子:そうよ!これは私にとって死活問題なのよ! 神的な人:おい、そこの男子。お前の昼飯ならわしが食ったわい。 裕二:おまっ!何勝手に人の弁当食ってんだよ! 神的な人:いやはや、下界の食べ物もなかなかに美味じゃったわい。 裕二:俺の…飯が…。奮発して買った極上ステーキ弁当が…。 愛子:ふふん!ざまぁ見なさい!日頃の行ないが悪いからバチが当たったのよ! 裕二:〈半泣きしながら〉うるせぇ!お前に唯一の楽しみである昼飯を奪われた俺の気持ちが分かってたまるか! 神的な人:そしてそこの*女子《おなご》。さっきお主の手を引っ張ったポスターのイケメンはわしじゃ。 愛子:な、な、なんですって! 神的な人:お主のスベスベの手、フニフニしていてとっても良きじゃったぞ。 愛子:ああ…嘘だ…イケメンが…脳内で優しく口説いてきたあのイケメンの正体が…こんなジジイだったなんて…。 裕二:ぶははは!!何だ、お前こそ爺さんに手を握られてデレデレしてるなんて傑作だな! 愛子:う、うるさい!ああ…私の…乙女のトキメキが*汚《けが》されていく…もうダメ、生きて行けない。 神的な人:まあまあ二人とも、そう悲観的になるでない。 裕二:なるわ!ってか元はと言えばお前のせいだろーが! 愛子:そうよ!私の傷付いた乙女心、一体どうしてくれんのよ! 神的な人:はぁ…〈深い溜息〉。なんと心の狭いことよ。よもやこの世界にもお主らのような人間がおったとは。わしゃ悲しゅうて悲しゅうて…。 裕二:おい、何自分のやった罪をなかったことにしようとしてるんだ? 愛子:そもそも、あんた誰よ?急に私たちをこんな場所に連れて来て。説明しなさいよ! 神的な人:コホン…ではよく聞くが良い。わしはお前達の住む新世界「ラブリーニア」を作った創造主。一般的には神と呼ばれておる存在じゃ。 裕二:爺さんが神?何かのドッキリか? 愛子:だとしたら笑えないわね。とにかく、とっとと元の世界に帰しなさいよ。 神的な人:(なんじゃ!神を前にしてこの態度!)うおっほん!それはできん。なぜならお前たち二人には勇者となり、この闇に支配された世界「デスラバー」に愛を取り戻すために冒険に出てもらう。 裕二:はぁ?俺達が勇者ぁ? 愛子:なんでそんな面倒臭いことしなきゃなんないのよ? 神的な人:ほっほっほ。つべこべ言わずにやれ。ちなみにこれをクリアせんと元の世界には戻れんようになっとるから。そこんとこよろしく。 裕二:はぁ!何を勝手に! 愛子:横暴だわ!神だからって何でもやって良いわけじゃないんだからね! 神的な人:だまれクソガキども!とにかくじゃ、この世界に巣食う魔王「デルゴム」を倒し、この世に愛を取り戻すのじゃ!行くが良い勇者たちよ!〈姿が消える〉 裕二:あ!ちょっと待てコラ!ちっ…消えやがった。 愛子:はぁ…やるしかないのね。で?どうすんの? 裕二:俺に聞くな。つーか、自己紹介がまだだったな。俺は*木村 裕二《きむら ゆうじ》。よろしくな。 愛子:私は*桐谷 愛子《きりたに あいこ》。不本意だけどよろしく。 裕二:おい、不本意って何だよ。 愛子:はいはい。いちいち突っかからないの。ほら、さっさと行くわよ。とりあえずは情報収集からよ。 裕二:お前、何でそんなに*手馴《てな》れてんだ? 愛子:冒険と言えば大体こんなもんでしょ? 裕二:さては、お前相当やってんな? 愛子:うっさい!ちょっとこの手のゲームが好きなだけよ。 裕二:ふーん。それは頼もしいことで。 : :-------------------始まりの村 愛子:着いたわ。ここで初期装備を揃えてレベルが低いうちはここを拠点に経験値を上げて行くわよ。 裕二:あー…これからレベル上げという果てしなき単純作業が始まるのか…憂鬱だな。 愛子:文句言わないの。こんな世界とっととクリアするわよ。 裕二:へいへい。…それにしてもこの街、武器屋も防具屋も見当たらないけど? 愛子:確かに…言われてみれば妙ね。 裕二:すみません。この辺に武器屋か防具屋ってありませんか? 村人A:はぁ?あんた、何を言ってるんだ?ファンタジーの世界じゃあるまいし、そんな物あるわけないだろう? 裕二:え?でも、この世界は魔王に支配されてて村の外には魔物がうじゃうじゃいるんでしょう? 村人A:ああ。いるよ。 裕二:武器や防具なしでどうやって倒すんですか? 村人A:倒す?馬鹿なこと言っちゃいけねぇ。倒すんじゃなくて「落とす」んだよ。 裕二:はい?? 愛子:言ってる意味が全然分かんないんだけど。 村人A:まあなんだ。試しに村の外に出て奴らとやり合ってみると良い。そうすりゃ俺の言ってる意味が分かるさ。 裕二:はぁ…分かりました。 村人A:くれぐれも油断すんなよ。じゃあな! 愛子:行っちゃったわね。落とす…あくまで武器は使わずその身一つで絞め落とすってことかしら? 裕二:だとしたら俺はパスだな。そんなプロレスラーみたいな*荒業《あらわざ》できるわけないじゃんか。 愛子:私もよ。まあとりあえずは一度村の外に出てみましょう。 裕二:ああ、そうだな。 : :-------------------その辺の草原 愛子:えーっと?魔物、魔物っと…あ!いた! スライム:ぐふふ…。 裕二:おい、何かあいつキモイんだけど。 愛子:まずは私がやってみるわ!はああああ!!〈スライムに蹴りを入れる〉 スライム:ぐぁ!! 裕二:やったか? スライム:痛いなぁ…いきなり何すんだよ! 愛子:え?ノーダメージ? スライム:さてはお前ら新人だな。いてて…まあいいや。それじゃ僕がこの世界での戦い方を教えてあげるよ。ぐふふ…。 裕二:愛子!気を付けろ! 愛子:ちょっと!勝手に下の名前で呼ばないでよ!〈スライムを殴る〉 スライム:ぐふふ…無駄無駄。そんなんじゃ一生かかっても僕は倒せないよ。 愛子:この!この!このぉ!!〈連続でパンチやキックを繰り出す〉 スライム:ぐふふ…全然効かないねぇ。 愛子:はぁ…はぁ…何で倒れないの…? スライム:おやおや…そろそろ疲れて来た頃だねぇ。それじゃそろそろ行かせてもらうよ! 裕二:くそっ!うおおおお!!〈スライムにタックルをする〉 スライム:おっと、君は邪魔だよ!〈裕二のタックルを弾く〉 裕二:ぐはぁ!…ダメだ、タックルしても弾かれる! スライム:覚悟は良いかな?〈愛子に近づく〉 愛子:い、嫌ぁ!来ないで!! スライム:〈イケボで〉『大丈夫…何もしたりしないよ。君があまりにも可愛かったからついからかいたくなっただけなんだ。驚かしたりしてごめんね。さぁ、立てるかい?』 愛子:(ドクン!え?何この胸のトキメキは…。もしかしてこれは…恋?)きゃあああ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:おい愛子!大丈夫か! スライム:〈イケボで〉『おいで、僕が君を癒してあげるよ。』 愛子:(ドクン!!な、なんて甘い言葉なの!)ぐはぁ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:やばい、このままじゃ愛子がやられちまう!(待てよ?これってもしかして…。) スライム:それじゃあトドメといこうか! スライム:〈イケボで〉『君も僕の虜になっちゃいなよ♡』 愛子:(ドクン!!!あぁ♡もう私、この方の物になっても良いわ♡)ぐああ!…ダメ、もう…持たない…〈ダメージを受ける〉 スライム:ほう…まだ落ちないとは意外としぶといな。だが、これで最後だ! 裕二:〈イケボで〉『おいお前!俺という男がいながらそんな女に手を出すのか?』 スライム:(ドクン!な!何だこの展開は!まさか…BL!)ぐああ!!〈ダメージを受ける〉 愛子:え…? 裕二:〈イケボで〉『なぁおい!聞いてんのかって言ってんだろ!』 スライム:(ドクン!!ああ…そんな激しい言葉で責められたら…)がはぁ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:(やっぱりな。俺の予想通りだ。それならコイツでトドメだ!) 裕二:〈イケボで〉『悪かったな…怒鳴ったりして。もうどこにも行くんじゃねーぞ。俺がお前を幸せにしてやるからさ♡』 スライム:(ドクン!!!このタイミングでまさかのツンデレだと!!こんなの耐えられるわけないじゃないか!)ぎゃああああ!!〈HPが0になる〉 スライム:…もう…ダメ…〈スライム消滅〉 愛子:何…これ? 裕二:見ての通りだ。村人が言ってた「落とす」ってのは相手を「口説き落とす」って意味だったんだ。 愛子:は? 裕二:そして、自分の言葉が相手の心に刺さる度にダメージを与えることが出来るらしい。俺も最初はまさかとは思ったが、やってみたらビンゴだったよ。 愛子:ウソでしょ…。 裕二:おっ!さっきので俺のレベルが上がったらしい。へぇ、魅力が2ポイント上がって3になったぞ! 愛子:あれ?普通敵を倒したらパーティ全体に経験値が割り振られるんじゃないの 裕二:どうやら口説き落とした者にしか経験値は入らないシステムのようだな。まぁなんだ。お前も頑張れよ。 愛子:キーっ!!何かすっごい腹立つ!良いわよ!私だって負けないんだから! 裕二:その調子だ。それより、一度街に戻らないか?愛子のHPも回復せにゃならんだろうし。 愛子:そうね。あ、あとさ…私もあんたのこと裕二って呼んで良い? 裕二:ああ、別にいいけど? 愛子:ありがと…。 裕二:さぁて、帰って上手い飯でも食うとするか。 愛子:あ!ちょっと待ってよー!! : :-------------------宿屋 裕二:…なるほど、そういう事か。 愛子:ん?どうしたの? 裕二:いや、さっき手に入れた魔物攻略ブックを読んでたんだけど、敵に対して有効なダメージを与えるには、相手の性別、性癖、ウイークポイントなんかをちゃんと把握しておくことが大事なんだそうな。例えばさっきのスライムの場合、性別はなし。性癖はドMらしくてな、特に責めの言葉に弱いんだってさ。 愛子:あー、だから裕二の言葉に大ダメージを受けていたのね? 裕二:そういうこと。でもこの世界にはまだまだたくさんの魔物が住んでいるらしいから事前の予習と対策はしておいた方が良いみたいだな。 愛子:そうね。ところで、さっきは敵を倒したら消滅しちゃったけど、私たちのHPがゼロになったらどうなるの? 裕二:えっと、それについては…あった!なになに…もし冒険者のHPがゼロになった場合は…えっ!身も心も魅力されて敵の所有物になります…だと!? 愛子:じゃあもしあのまま私がスライムに負けていたら…こわっ! 裕二:また、一度敵の所有物になった者を元に戻すにはその敵を倒して強制的に引き*剥《は》がすか、何らかのアイテムで正気に戻すしか方法はない…って書いてあるぞ。 愛子:なんて恐ろしい世界なの…。裕二、とにかくまずはその情報を頭に叩き込んでから先に進みましょう!そうじゃないと一瞬でやられてしまうわ! 裕二:そうだな。とにかくやってみるか! 愛子:ええ!頑張りましょう! : 神的な人:ふむ…一時はどうなることかと思ったが、何とかなりそうじゃの。さてと、わしはここから高見の見物といこうかの。 : :-------------------一週間後 愛子:食料良し!回復ポーション良し! 裕二:魔物攻略ブック装備よし!帰還ワープの羽根携帯よし! 愛子:ん?帰還ワープの羽根?何それ? 裕二:これはな、いつでもどこでも瞬時に近くの村に転送してくれる便利アイテムだ。 愛子:へぇ。それは便利ね。じゃあそろそろ出掛けましょうか。 裕二:今日は初めてのダンジョンだからな。気を引き締めて行かないとな。 愛子:そうね…。 裕二:どうした? 愛子:私、大丈夫かしら?また前みたいなことになったらと思うと怖くて…。 裕二:心配すんなって!俺がついてるからさ。 愛子:あのねぇ…味方を口説いてどうすんのよ! 裕二:あ?口説いたつもりはねぇけど? 愛子:あっそ。それだけペラペラ出て来るなら安心だわ。 裕二:それは褒めてんのか? 愛子:さぁ?どっちでしょうね。 裕二:とにかく行くぞ! : :-------------------地下ダンジョン 裕二:さてと…どんな敵が待ち構えているのやら。 愛子:あら?あんな所に女性がうずくまって泣いてるわ。 裕二:俺、ちょっと見てくる。 裕二:〈女性に駆け寄る〉あの、大丈夫ですか? ククル:うう…ありがとうございます。私、初めてここに来たんですけど、仲間とはぐれてしまってどうして良いか分からなくて。とりあえず敵に見つからないように隠れていたんです。 裕二:そうだったんですか。それじゃあ一緒に行きませんか?俺達もここに来るのは初めてですし、人数は少しでも多い方が心強いですから。 ククル:え?良いんですか?ありがとうございます!それではお言葉に甘えて御一緒させていただきます! 愛子:裕二、その人は? 裕二:仲間とはぐれてしまったらしい。ずっと*怯《おび》えてたから一緒に連れて行くことにしたよ。 愛子:そう…あなた、お名前は? ククル:私はククルと申します。よろしくお願いいたします。 愛子:ククルさんね。私は愛子、そんでこっちが裕二。よろしくね。 ククル:お二人ともとってもお強そう。何か憧れちゃいます。 裕二:そんなことないっすよ。まだまだ駆け出しのヒヨっ子ですから。 愛子:ところでククルさんは冒険者になってからどれくらい経つの? ククル:そうですね…一年くらいかしら? 愛子:一年…ねぇ。 ククル:それが何か? 愛子:いいえ。別に。 裕二:なあ、もう行こうぜ。まだまだ先は長いんだしさ。 ククル:そうですね。行きましょう!裕二さん! 愛子:…。 : :-------------------ダンジョン中腹部 岩石魔人:グガァァ!! 裕二:現れたな!こいつはえーっと…。 ククル:岩の巨人、岩石魔人です!強力なモンスターなので気を付けてください! 裕二:分かった!行くぜ! 裕二:〈イケボで〉『なあお前さん、あんまりトガってばかりだと可愛くないぜ。』 岩石魔人:ふん、男になど興味は無いわ!! 裕二:くそ!ノーダメージか! ククル:ここは私が! ククル:〈お姉さんボイスで〉『ねぇ…そこのお兄さん。そのゴツゴツした身体、とっても*逞《たくま》しくて素敵よぉ♡』 岩石魔人:ふははは!その程度の攻撃など俺には効かんわ! ククル:そんな…私の攻撃が効かないなんて。 岩石魔人:今度はこちらの番だな。行くぞ! 岩石魔人:〈カワボで〉『クゥーン…お姉ちゃん。あんまりボクをいじめないで…。』 ククル:(ドクン!え!やだ可愛い!)きゃあああ!!〈ダメージを受ける〉 ククル:くっ…強い! 裕二:ククルさん! 岩石魔人:〈カワボで〉『あのね、ボク、お姉ちゃんとずっと一緒にいたいな。ねぇ…ダメ?』 ククル:(ドクン!!な、何なのこの可愛さは♡ああ…連れて帰りたい…)くはぁ!!〈ダメージを受ける〉 ククル:ま、まずい…このままだとやられちゃう…。 岩石魔人:(くくっ…そろそろ終わりか) 岩石魔人:〈カワボで〉『ククルお姉ちゃん、ボクをお家に連れてって…お・ね・が・い♡』 ククル:(ドクン!!!もちろんよ!あなたは私だけの物よ♡)あああ!!〈HPが0になる〉 ククル:…うふふ…岩石魔人様ぁ♡ククルは身も心もあなた様の虜ですわ♡ 岩石魔人:ふははは!どうだ!俺の手にかかればこんなもんだ。 裕二:くそ!男の俺じゃ手も足も出ない! 岩石魔人:さてと、そこの女もすぐに俺の物にしてやる! 岩石魔人:〈カワボで〉『愛子お姉ちゃんもボクのこと好きになってくれると嬉しいな。てへっ♡』(ふふふ…これでこいつも…) 愛子:はぁ?てめぇ何ほざいてんだ? 裕二:はい? 岩石魔人:馬鹿な!1ミリもダメージを受けていないだと!ギャップ萌えだぞ!この攻撃が効かない女なんている訳が… 愛子:〈妖艶ボイスで〉『あらぁ♡こんな悪いことする子は誰かしら?』 岩石魔人:(ドクン!ぐっ!何だこの心を揺さぶる攻撃は!)がはぁ!!〈ダメージを受ける〉 愛子:〈妖艶ボイスで〉『ほんと、イケナイ子ね。そんな坊やにはお仕置が必要ね♡』 岩石魔人:(ドクン!!や、やめろ!それ以上はもう…)ぐおお!!〈ダメージを受ける〉 愛子:〈妖艶ボイスで〉『さぁ♡私に*跪《ひざまず》きなさい!そして、私の奴隷になると誓うの♡分かったかしら?』 岩石魔人:(ドクン!!!はい!女王様ぁ!!)ぎゃあああ!!〈HPが0になる〉 岩石魔人:うう…なんて幸せ…〈岩石魔人消滅する〉 : 裕二:ククルさん!しっかりするんだ! ククル:あ…あれ?私は一体…? 愛子:岩石魔人に負けたのよ。 ククル:え…?それじゃあ私、あの魔人の虜に…うう…〈泣き出す〉 愛子:はぁ…。〈溜息〉大丈夫よ。アイツは私が倒したからもう泣かないの。ほら、回復ポーションよ。飲みなさい。 ククル:ぐすん…はい。ありがとうございます。ゴクゴク…。〈回復ポーションを飲む〉 愛子:それと、あなたに謝らないといけないことがあるの。 ククル:え? 愛子:私、あなたのことを魔物の仲間じゃないかって疑ってたの。 ククル:私が…魔物の仲間? 愛子:ええ。でもさっき、強敵を前にして必死で戦う姿を見て気付いたの。私、あなたに嫉妬してただけなんだって。 ククル:私に嫉妬ですか? 愛子:だってククルは可愛いくて優しいし、とっても良い子なんだもん。 ククル:そんなことないですよ。いやですわ…あんまり褒められると照れちゃいます。 愛子:うふふ。ククル。改めてよろしくね! ククル:はい!よろしくお願いします! 愛子:それと、せっかく仲間になったんだから堅苦しい敬語はなしでいきましょう。 ククル:分かったわ。ありがとう愛子。 裕二:さてと、いよいよダンジョンの最深部だな。どんな敵がいるか分からないから気を付けて進もうぜ! ククル:うん! 愛子:そうね! : :-------------------ダンジョン最深部 裕二:ここがダンジョンの最深部…なんて*禍々《まがまが》しい場所なんだ。 愛子:いよいよなのね。 ククル:う…うう。私、何かとっても嫌な予感がするわ。 愛子:大丈夫よ。これまで一緒に頑張ってきたじゃない。 ククル:そうね。ありがとう愛子。 裕二:さぁ、どっからでもかかって来やがれ! ドメス:なら、遠慮なく。 ドメス:〈オネエボイスで〉『ふーっ〈耳に息を吹きかける〉』 裕二:(ドクン!ゾワ!何!耳責めだと!)ぐぁぁ!〈ダメージを受ける〉 裕二:だ、誰だてめぇは! ドメス:うふふ…初めまして。私はこのダンジョンの*主《ぬし》、ドメスよ。 ククル:ドメス…。ついに現れたわね。 愛子:不意打ちなんて卑怯よ! ドメス:卑怯?あら、それじゃあこういうのはどうかしら? ドメス:「*幻惑魔法《げんわくまほう》…トラウマキネシス!」 愛子:(これは…私の記憶…?そうだ、私、クラスのみんなにいじめられてたんだ…。うう…何で?どうして私ばっかりこんな辛い目に遭うの!) ドメス:〈オネエボイスで〉『愛子、あなたは何にも悪くない。私だけは何があってもあなたの味方よ。』 愛子:(ドクン!え…?私の苦しみを分かってくれるの?)くはっ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:〈オネエボイスで〉『辛かったわね…でももう大丈夫。私があなたを暗闇から連れ出してあげるわ。』 愛子:(ドクン!!あ、ああ…何て温かい言葉なの…)がはぁ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:〈オネエボイスで〉『さぁ…私の手を取って。一緒に楽園に行きましょう♡』 愛子:(ドクン!!!はい…お姉様…♡)きゃあああ!!!〈HPが0になる〉 裕二:愛子!! 愛子:あ…ああ♡ドメスお姉様ぁ♡愛子はお姉様に一生着いて行きます♡ ドメス:うふふ…一丁上がりね。 裕二:くそっ!愛子が一瞬でやられるなんて!それに何だあの魔法は? ククル:次は私が! ククル:〈お姉さんボイスで〉『コラ!ドメスちゃん!弱い者いじめなんかしちゃダメじゃない!…大好きな君がそんなことしたら…うう…お姉さん泣いちゃうんだから…。』 ドメス:あらぁ?泣き落としかしら?残念だけど私の心には全然響かなかったわ。じゃあ、これはお返しね♡ ドメス:〈イケボで〉『おい、無理すんなって。ククルが辛そうにしている姿なんて、俺見たくないからさ。』 ククル:(ドクン!やだ…急にイケボなんて)ああ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:(なんて多彩な攻撃なんだ。一体どうやったらコイツを倒せるんだ?) ドメス:さぁ、どんどん行くわよ! ドメス:〈イケボで〉『君が出来ない分は俺が代わりにやってやる!だからククルは俺の*傍《そば》でずっと笑っていてくれないか?』 ククル:(ドクン!!ああ…そんなこと言われたら私…)くはぁ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:うふふ…次で最後よ。さぁ、あなたも落ちなさい! 裕二:(畜生!俺はこのまま仲間のピンチを黙って見ていることしか出来ないのか!) ククル:裕二…助けて! 裕二:くっ! 裕二:〈素の声で〉『ククル!君は俺の大切な仲間だ!だから誰の物にもなるな!』 ククル:(ドクン!!!ああ!裕二!!)これは…攻撃無効の付加効力? ドメス:何なの?一体何が起きたというの?まあ良いわ。これで終わりよ! ドメス:〈イケボで〉『俺は君の全てが欲しいんだ!愛してるよククル!』 裕二:ククルー!! ククル:ドメス…もうあなたの言葉は私には届かない! ドメス:なっ!そんな馬鹿な!私の*渾身《こんしん》の攻撃が効かないことなんてあるはずがないじゃない! ククル:裕二の魂の言葉が、私に攻撃無効化の*付加効力《ふかこうりょく》を与えてくれたのよ! ドメス:何?そんなことが! 裕二:(敵が動揺している!これはチャンスだ!) 裕二:〈イケボで〉『ドメス、君は良く頑張った。ほんとはずっと一人で寂しかったんだろう?』 ドメス:(ドクン!ウソ…この私がときめいてるの?)ぐああ!!〈ダメージを受ける〉 ドメス:そんな!私がダメージを受けるなんて! 裕二:〈イケボで〉『でももう良いんだ。無理に自分を着飾る必要なんてどこにもないんだから。』 ドメス:(ドクン!!何?何なの?私の心が癒されていく)うぐっ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:〈イケボで〉『ドメス、ありのままの君が一番素敵だよ。』 ドメス:(ドクン!!!や、やめろ!やめなさい!私に優しくしないで!)ぐああああ!!〈HPが0になる〉 ドメス:…ありがとう。勇者よ。〈ドメスが消滅する〉 愛子:うう…あれ?ドメスは? 裕二:愛子、ドメスは消滅したよ。 ククル:裕二が倒してくれたの! 愛子:そうだったんだ。結局私、やられちゃったのね…。 裕二:愛子、気にすんな。 ククル:そうよ。愛子は強いわ。だって岩石魔人の時も敵を倒してくれたじゃない。 愛子:それはそうだけど…。 裕二:とりあえずさ、このダンジョンはクリアしたんだ。村に帰ろうぜ! 愛子:うん…。 ククル:じゃあ私はここでお別れだね。 愛子:え?どういうこと? ククル:本当は二人と一緒に冒険したいけど、仲間のみんなとも合流しないと。 裕二:そっか。そういやはぐれたって言ってたしな。 ククル:うん。そういうことだから…じゃあね。 愛子:また会えるよね? ククル:もちろんよ!また会いましょう! 裕二:ああ!じゃあな! ククル:うん。バイバイ! : 裕二:行っちまったな。 愛子:本当に良い子だったね。 裕二:ああ、じゃあ俺達もそろ帰るか。 愛子:そうしましょう。 裕二:それじゃ!帰還ワープの羽根で!いざ!〈転送される〉 : :------------------一週間後。始まりの村の宿屋にて。 愛子:はぁ…。 裕二:どうしたんだ?ダンジョンから帰ってから元気ないぞ。 愛子:結局私ってみんなの足を引っ張ってばかりでさ。ほんと、情けないよ。 裕二:そんなことないさ。愛子の強さは俺も充分分かってるよ。 愛子:強さかぁ…。 裕二:あんま悩んでるとそれこそ勝てるもんも勝てねぇぞ。 愛子:うん。 裕二:じゃあ景気付けに飯でも食いに行こうぜ! 愛子:ごめん…今、そんな気分じゃないの。ちょっと一人にしてくれる? 裕二:ああ、分かった。ただ、あんまり思い詰めんなよ。 愛子:うん。ありがとう。 : 愛子:(こんな弱い私じゃ、魔王デルゴムなんてとてもじゃないけど*敵《かな》いっこないわ…) デルゴム:おやおやお嬢さん、何をお悩みで? 愛子:きゃ!あんた誰?それにどっから入って来たのよ? デルゴム:これは失礼。私は魔王デルゴム。あなた方が倒そうとしているこの世界の支配者です。 愛子:なっ!どうしてあんたがここに!くっ…一体どうすれば! デルゴム:まあそう警戒しないでください。私はあなたと戦いに来たのではありません。むしろあなたを救いに来たのです。 愛子:私を救いに?ふざけたこと言わないで! デルゴム:本当ですとも。ダンジョン攻略の時から…いや、この世界に来た時からずっとあなたの事を見ていました。 愛子:うそでしょ?それじゃあ今まで起こったことも全部筒抜けだったってこと? デルゴム:その通りです。だから…。 デルゴム:〈優しい口調で〉『愛子、僕は君のことを誰よりも分かっているよ。君の強さも弱さも…そしてとっても優しい所もね。』 愛子:(ドクン!え?何?この感覚?この人は敵なのに…)きゃああ!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:〈優しい口調で〉『傷付いたんだよね?辛かったんだよね?自分の弱さが許せなかったんだよね?』 愛子:(ドクン!!そうだ…私は弱い自分が許せなくて…)ぐっ!ああ!!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:〈優しい口調で〉『大丈夫。そんな君の弱い所も含めて僕が全部包み込んであげるよ。だから君は何も考えず、僕に身を委ねれば良いんだ。』 愛子:(ドクン!!!ああ…なんて心地良い言葉なの…私もうどうなってもいい…)あああ!!〈HPが0になる〉 愛子:はぁ♡愛子の全てをデルゴム様に捧げます…♡ デルゴム:ふふふ…。良い子だ。それじゃあ行こうか。 愛子:はい♡どこへなりともお供しますわ♡ : 裕二:愛子?少しは落ち着いたか?って…あれ?いない。どこ行ったんだ? 神的な人:裕二!裕二はおるか? 裕二:ひっ!びっくりした!何だよ爺さん。急に出て来んなよ! 神的な人:大変なんじゃ!とにかく大変なんじゃあ! 裕二:分かったから一旦落ち着けって。それで、何があったんだ? 神的な人:彼女が…*桐谷 愛子《きりたに あいこ》が魔王デルゴムに*攫《さら》われたんじゃ! 裕二:なっ!何だって!それで、愛子は今どこにいるんだ? 神的な人:彼女は今、魔王デルゴムの*根城《ねじろ》、「マッドキャッスル」におる。 裕二:それじゃあ今すぐ助けに行かないと!爺さん!詳しい場所を教えてくれ! 神的な人:それは構わんが、奴はかなりの強敵じゃ。単身で乗り込んでも今の君のレベルでは返り討ちに遭うのが関の山じゃ。 裕二:それでも!このまま放って置くことなんて出来ない! 神的な人:うむ、困ったのぅ…。誰か強力な味方でもいれば良いのじゃが…。 ククル:あら?何かお困りのようね? 裕二:ククル!?何故君がここに? ククル:久しぶりにお二人に会いたいと思って近くを通り掛かったら、この村から強大な魔力を感じたの。もしやと思って急いで駆け付けて来てみれば愛子が*攫《さら》われたって言うじゃない。私もうびっくりしちゃって。 裕二:そうだったのか…。でも来てくれて嬉しいよ。ありがとう。 神的な人:ククル君じゃったかの。お願いじゃ、裕二と一緒に愛子君を助け出してはくれんかの? 裕二:ククル、すまない。俺からも頼む! ククル:うふふ…もちろんよ! そのつもりで装備もバッチリ整えて来たんだから! 神的な人:おお!それは素晴らしい! 裕二:ククル!本当にありがとな!それじゃあ早速出発しよう! ククル:ええ! 神的な人:あー、ちょっと待つんじゃ。 裕二:何だよ爺さん? 神的な人:これを持って行きなさい。〈スマホ型端末を渡す〉 裕二:スマホ?何に使うんだ? 神的な人:スマホではない。神的アイテム「見守る君」じゃ。 裕二:見守る君?何そのお年寄りの方が身に付けていそうなアイテムは? 神的な人:失礼な!これは高性能レーダー装置じゃ。これで彼女の正確な位置がリアルタイムで表示されるようになっておる。 ククル:まぁ!それはありがたいわ! 裕二:ありがとな!爺さん! 神的な人:あとこれも持って行くと良い。〈二人に包みを手渡す〉 裕二:これは…御守り? 神的な人:そうじゃ。一つは「身代わりの*護符《ごふ》」と言ってな、一度だけHPが0になるのを防いでくれるんじゃ。これは二人に渡しておくから身に着けておくと良い。そしてもう一つは「気付けの護符」。これは身に着けた者を正気に戻すマジックアイテムじゃ。隙を見て愛子君の首に掛けてくれ。そうすれば彼女は正気を取り戻すはずじゃ。 裕二:分かった。いろいろありがとな!それじゃあ行ってくるわ! 神的な人:ああ。くれぐれも気を付けるんじゃぞ!それからククル君、裕二と愛子君を頼む。 ククル:はい!任せてください! : 神的な人:いつの間にやら立派になったのぅ…。頼んだぞ。二人とも。 : :-------------------魔王城「マッドキャッスル」 デルゴム:僕の可愛い愛子よ、君に頼みたいことがあるんだ。 愛子:何なりとお申し付けください。デルゴム様のためならどんな事でもいたしますわ♡ デルゴム:それは頼もしいね。それじゃ耳を貸して…。 愛子:はい……ひゃん♡もう!急に息を吹き掛けないでください♡デルゴム様の意地悪♡ デルゴム:あはは…ごめんごめん。愛子があまりにも可愛いからついからかいたくなっちゃった。それじゃあもう一度耳を貸して。 愛子:はい。 デルゴム:ごにょごにょ…〈内容を伝える〉 愛子:うふふ…それは楽しそうですわね。そのお役目、ぜひやらせてくださいな♡ デルゴム:ああ、頼んだよ。 愛子:お任せください。デルゴム様♡ : :-------------------マッドキャッスル第一の間 裕二:ここが爺さんの言ってたマッドキャッスルか。 ククル:とてつもない魔力が渦巻いているわね。 裕二:ああ…。それじゃあ入るぞ! ククル:ちょっと待って!あそこに繋がれてるのって…愛子!? 裕二:ほんとだ!おい!愛子!大丈夫か! 愛子:う…うう。裕二…?それにククルも!助けに来てくれたの? 裕二:ああ!酷い…こんなにやつれて。待ってろ。今*鎖《くさり》を解いてやる。〈愛子に繋がれた鎖を外す〉 愛子:あ、ありがとう…。 ククル:愛子さん、どこか怪我はない? 愛子:大丈夫よ…。私、アイツに薬で眠らされて気付いたらここに*繋《つな》がれていたの。 裕二:そうだったのか。でももう大丈夫だ。ほら、回復ポーションだぞ。 愛子:ありがとう。ゴクゴク〈回復ポーションを飲む〉 愛子:はぁ…助かったわ。本当にありがとう。 裕二:とにかく無事で良かった。立てるか?俺の肩に掴まれ。 愛子:あ、ありがとう…んっ。〈立ち上がる〉 愛子:行きましょう!デルゴムを倒しに! ククル:ええ! 愛子:あ、ククル。ちょっとじっとしてて。 ククル:ん? 愛子:うん!これでよし! ククル:何? 愛子:肩にゴミが付いてたから取ってあげたの。 ククル:ありがとう。 裕二:それじゃ行くぞ!二人とも! : :-------------------マッドキャッスル謁見の間 デルゴム:これはこれは勇者*御一行様《ごいっこうさま》。ようこそ!我がマッドキャッスルへ! 裕二:お前が魔王デルゴムか! デルゴム:その通り。僕がこの世界の支配者、魔王デルゴムだよ。 ククル:くっ…。なんて魔力なの…。 愛子:あなただけは許さない! デルゴム:うふふ…立ち話も何だから、そろそろ始めようか。…とその前に。 愛子:これは外しておかないとね♡〈身代わりの護符をチラつかせる〉 裕二:なっ!それは身代わりの護符!愛子、いつの間に! ククル:私のもないわ!愛子…まさか? 愛子:あらぁ?今頃気付いたの?ふふふ…間抜けね。そうよ、今の私はデルゴム様の忠実な*下僕《しもべ》よ♡ 裕二:そんな…。 デルゴム:さぁ愛子、それをこちらに。 愛子:はい♡デルゴム様♡〈護符をデルゴムに渡す。〉 デルゴム:こんな小道具を用意していたとはね。ふん!〈護符を燃やす〉 ククル:ああ!大切な護符が! 裕二:燃えていく…。 デルゴム:さてと、これで心置き無く戦えるね。お互い、思う存分楽しもうじゃないか! ククル:くっ…! 愛子:まずはあなたから♡ ククル:しまった! 愛子:〈妖艶ボイスで〉『うふふ…そんなに怖がらないで。ああ…なんて可愛いの♡食べちゃいたいわ♡ペロリ〈ククルの耳を舐める〉』 ククル:(ドクン!ひっ!ゾクゾクする)ひゃあ!!〈ダメージを受ける〉 裕二:ククル! 愛子:あら裕二、油断しちゃダメよ。 裕二:何!? 愛子:〈素の声で〉『裕二…あのね、私あなたの事、ずっと前から気になってたの…』 裕二:(ドクン!え?愛子…お前…)ぐっ!〈ダメージを受ける〉 ククル:愛子…。 愛子:〈優しい口調で〉『ほぉら…そんなに落ち込まないで。私があなたを癒してあげるわ。なでなで。うふふ…とっても良い子ね。』 ククル:(ドクン!!この包み込まれるような安らぎは何…?)あああ!〈ダメージを受ける〉 ククル:うう…強い…。 裕二:やめろ…愛子。 愛子:それじゃあまずはこっちからね。 愛子:〈女王様ボイスで〉『ククル!誰が休んで良いって言ったの?あなたは私のペットでしょ?ペットはペットらしくご主人様にご奉仕なさい!』 ククル:(ドクン!!!ああ!女王様にご奉仕したいの!)きゃあああ!!!〈HPが0になる〉 ククル:くぅーん…ご主人様ぁ♡ 裕二:ククル!くそっ…! 愛子:次はあなたよ。 愛子:〈優しい口調で〉『裕二…私ね、ずっとあなたと一緒にいたいな。ダメ?』 裕二:(ドクン!!*覗《のぞ》き込むような*上目遣《うわめづか》いだと!か、可愛い…)ぐおお!〈ダメージを受ける〉 裕二:う、うう…。 デルゴム:さぁ愛子、彼にトドメを。 愛子:はい♡仰せのままに♡ 裕二:愛子…やめてくれ…。 愛子:〈カワボで〉『裕二が振り向いてくれないなら、私、*拗《す》ねちゃうんだからね!ぷんぷん!…というのはうーそ!大好きだよ!裕二!』 裕二:(ドクン!!!こ、これは反則だろ!)ぐあああ!!〈HPが0になる〉 裕二:うん…俺も大好きだよぉ♡ デルゴム:ふははは!これは愉快だ!よもやここまで楽しめるとは!よくやったぞ愛子! 愛子:うふふ…私もとっても嬉しゅうございますわ♡それでは一つ愛子のお願い聞いてくださる? デルゴム:ああ良いよ!何でも言ってごらん。 愛子:それではお耳を*拝借《はいしゃく》して…。 愛子:〈女番長口調で〉『おいデルゴム!てめぇ何調子乗ってんだ?ああん?』 デルゴム:(ドクン!え…何?この心に刺さる*罵声《ばせい》は?)ぐふっ!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:な…一体何が起こった? 愛子:裕二!ククル!今がチャンスよ!一気に*畳《たた》み掛けるわよ! 裕二:おう! ククル:分かったわ! ククル:〈冷徹に突き放す感じで〉『あなた、マジでキモイです。私に近づかないでください。』 デルゴム:(ドクン!!はぅあ!この突き放す感じがまた良い!)ぐああ!!〈ダメージを受ける〉 デルゴム:やばい…このままでは…。 裕二:ラストは俺だ! 裕二:〈正義感溢れる感じで〉『おい!やめろよ二人とも!デルゴム君は何にも悪いことしてないだろ!…もう大丈夫だよ。君は僕が守るから。』 デルゴム:(ドクン!!!や、やめろ!俺を*庇《かば》ったりするな!それにその優しい言葉は!)ぎゃあああ!!〈HPが0になる〉 デルゴム:ああ…俺は負けたのか。ふふふ…今は不思議と悪くない気分だ。見事だ…勇者たちよ。僕を倒したその偉業、誇りに思うが良い…じゃあな…。〈デルゴム消滅する〉 : 裕二:やった…のか? 愛子:ええ!ついに魔王デルゴムを倒したのよ! ククル:やったわね!…それにしても裕二、いつの間に愛子さんに気付けの護符を? 裕二:ああ、それなら第一の間で愛子に肩を貸しただろ?その時に…な? 愛子:ええ。おかげで正気に戻ることが出来たのよ。 ククル:それなら何で私達の身代わりの護符を奪ったの? 裕二:全てはデルゴムを油断させるための作戦だったのさ!俺達が愛子にやられたフリをしてアイツが油断した所を3人で一気に仕掛ける。正直上手くいくかは賭けだったけどな。 愛子:でもこれでミッション達成ね! あの爺さん、そろそろ出てくるんじゃないかしら? 裕二:お!噂をすれば! 神的な人:おお!お前たち!よくぞ魔王デルゴムを倒してくれた!お前たちの活躍で全ての魔物は消え、この世界にもようやく平和が訪れたのじゃ。心から感謝するぞ。 愛子:ってことは、私達も元の世界に戻れるのね? 神的な人:その通りじゃ。 裕二:ん?待てよ?ということはククルはどうなるんだ? ククル:私は元々この世界の住人だからここに残るわ。それに復興のお手伝いもしないといけないしね。 裕二:そっか…じゃあククルとはまた離れ離れになっちまうって事なのか? 愛子:私…嫌よ。せっかく仲良くなれたのに。 ククル:私もよ。でも住む世界は違っても私達の心は繋がってるわ、愛子、裕二、元の世界に帰っても私のこと忘れないでね。 裕二:ああ…絶対に忘れないよ。 愛子:いつまでも親友だからね! ククル:うん…うん!…ううう…〈泣き出す〉 愛子:やだ…泣かないでよ。私まで泣けてくるじゃない…ううう…。〈泣き出す〉 裕二:うう…俺も寂しいよ。 神的な人:じゃあそろそろお前たちを元の世界に戻すとするかの。 裕二:ぐすん…元気でな!ククル! 愛子:またね! ククル:うん…バイバイ! 神的な人:転送の扉オープン!! : :-------------------新世界「ラブリーニア」 裕二:う…うん…あれ?ここは?おい、愛子! 愛子:うう…ん?裕二? 裕二:どうやら無事に帰って来られたみたいだぞ。 愛子:そうみたいね。はぁ…今思い出すと何だか寂しいな。 裕二:そうだな…でもそれ以上に良い冒険だった。 愛子:そうね。…あのさ…裕二。 裕二:ん?何? 愛子:もし良かったらさ、私達…… :〈しばしの間〉 裕二:付き合おっか? 愛子:え?えーー!! 裕二:いやぁ…実は俺もいつ言おうか迷ってたんだよな。 愛子:そっか…それは良いとして… 裕二:どうした? 愛子:一世一代の乙女の告白をアンタは何だと思ってんのよ! 裕二:いや…でも言いにくそうだったから代わりに… 愛子:そこは黙って見守るのが男ってもんでしょ! 裕二:お前がいつまでも黙ってるから助け舟出してやったんだろ! 愛子:そういうとこよ!そーゆーとこ!これだから乙女心が分からない男ってのは全く…! 裕二:ぷっ…ふふふ 愛子:ぷっ…うふふ 裕二:あははは!! 愛子:うふふふ!! :〈しばらく笑い合う〉 裕二:俺達、意外と良いコンビになれそうだな。 愛子:ええ、そうね。 裕二:これから辛いことや苦しいことがいっぱいあるだろうけどさ。 愛子:私達ならきっと乗り越えて行けるよね。 裕二:ああ!これからよろしくな。大好きだよ!愛子! 愛子:こちらこそよろしくね!愛してるわ!裕二! : 神的な人:ふぅ…これでようやくわしの仕事も一段落付くわい。あとは…そうじゃな、空の上から二人の行く末でも眺めて楽しむとするかの。ほっほっほ! : :~完~