台本概要
325 views
タイトル | しにたくない、を知りたくない |
---|---|
作者名 | よぉげるとサマー (@gerutohoukai) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
不問、ひとり読み台本です。 ちょっと他の作品の要素も詰まってます。 でも気にせずー。 基本、非商用利用は連絡不要です。 劇の音声が残るようにしてくれる場合は、 「よぉげるとサマー」と作者名を、X(旧Twitter)の投稿とか配信名に記載してくれると嬉しいです。 是非、聴きたいです。 あと、感想もくれると喜びます。 325 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ケルン | 不問 | 18 | 人類最後の配信者、なのかも。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ケルン:はーいっ、どーもっ。
ケルン:終わる世界に、こんにちわー。
ケルン:今日も、今日とて、映像を、垂れ流して行こー!
ケルン:ってことで。この配信は、チャンネル45140で、キャッチ出来ますので、登録お願いしやーす。
ケルン:チャンネル番号は、45140で、45140(よっこいしょ)って覚えてくださいーいっ、よろしくっ。
ケルン:さてさて、本日なんと……快晴です。
ケルン:いやー、何をするにも良い天気だね。
ケルン:山登るなら尚更……良いっ。
ケルン:ってーことで、昨日までの続きからスタートっ。
ケルン:だいぶ……いやぁ、マジで結構、高いとこまで来たなぁ。
ケルン:ほら、見てっ、ちょー景色が良いっ。
ケルン:頂上とか、もっと凄いんだろなぁ……。
ケルン:こっからが本番か……いやぁ、大丈夫か不安だけど、頑張ってみまーす。
ケルン:……山歩いてて……いや、登ってて?
ケルン:ははっ……やっぱ、ここでも人に会わないですねー。
ケルン:平地にも……山にも……いないって、ははっ、どこにいるんだー?
ケルン:いや、居ないんだろうな……そゆことでしょうね。
ケルン:……いや、って言いつつ、これ聴いてる皆さん居たら、すみません。
ケルン:周りにね、居ないってだけな可能性がね、まだあると。
ケルン:……いつまでが……まだ、なんですかね。
ケルン:……はぁ……いやーっ、それでね、皆さん。
ケルン:もう、何度も言ってますけどね。
ケルン:人が、居ないってことは、インフラを整備する人も、当然居ないんですねー。
ケルン:だから、ガタガタになったアスファルトなんかより、いまじゃ剥き出しの地面の方が歩きやすいからね。
ケルン:どっちも、疲れるのは変わんないけど……。
ケルン:てかっ、山道だとね、整備されてないの、やばいですね。
ケルン:かろうじて……なんか……獣道以下、みたいな……うっすらと道だったのかなー……って形跡があるんで……そこ進むしか無いっていうね。
ケルン:なんか、ロープウェイとか、あればねー。
ケルン:あーでも……そういう、乗り物もねー、山以外……平地……ってなんか表現変な感じするけど、まあ、平地か。
ケルン:そこ移動する時は、自転車とか……そういう、燃料やらを使わないやつしか、流石にもう使えなかったな。
ケルン:いや、なんなら……それも希少だよね。タイヤもフレームも、いろんなとこが、自然にぃ……ふぅ……えっと、壊れて、というか、劣化していってるから。
ケルン:自分も最初の頃は、自転車で移動してたんですよ。たまたま見つけてさ。
ケルン:でも、空気入れが……もう、全然気づいてなくて、必要だってこと。
ケルン:そんで、街とか、見かける度に探してみたんですけどね……いやぁ、先にパンクしちゃった。
ケルン:パンクするとさ、なんであんなに振動するんだろう。全然乗ってらんなくなったよね。
ケルン:いやぁ、それに懲りた……って訳じゃないけど。
ケルン:もう乗り物は良いやってなったねー。
ケルン:まあ、でも……それからも、少し乗り物に乗ったけどさ。
ケルン:こだわらなくなったね。なんかさ。
ケルン:どーせ、誰もいないし。時間も無い訳じゃない。
ケルン:体ひとつで、まあ……なんとかなった。
ケルン:健康には、気をつけないとって感じだけどさ。
ケルン:それもまあ……べつに、こだわらなくて良いし。
ケルン:……もしも、このチャンネルを登録してくれてる、悲しい生き残りの誰かが居て……こんな暇つぶしを楽しんでくれてるとか……そんなことがあるんなら。
ケルン:……申し訳ないなって、少し思うけどさ。
ケルン:なんかっ……テキトーに生きてるだけだし。
ケルン:ま、べつに……いつ……はぁ、少しここ、辛いな……ははっ、えっと……いつ、居なくなっても……やめても、良いかなーって。
ケルン:……はぁ……よっと……うん、思って、ます。
ケルン:…………やー、ちょっとこれ……しばらく登るのに集中するね。
ケルン:はぁ……よしっ、ごめんだけどー、そゆことでっ、よろしくお願いしまーす。
ケルン:……どうせ、誰も見てないし、聞いてないし、コメントも無いと思うけどね。
ケルン:……ははっ、ではー、クライミング……スタートっ。
0:3カウント―――
ケルン:……ふう……あー、やーっと、休めるー!
ケルン:はぁー……疲れた……あぁ……もう、難所は終わったと信じたい……。
ケルン:ちょーっと、休憩ターイム。
ケルン:あー……映像切っても良いなぁ。
ケルン:……まあ、いいや、少しお付き合い下さい。
ケルン:はぁ…………晴れてるなぁ……。
ケルン:ははっ……鳥の鳴き声がする……。
ケルン:……あのさ、動物とか、虫とかにさ……お前らは良いよなぁ、って。思ったことない?
ケルン:……正直、ずっとだよ。
ケルン:……ずーーーっと。羨ましくて、恨めしい。
ケルン:……ただの、八つ当たりだけどさ。
ケルン:…………すぅーっ、はぁーっ。(深呼吸)
ケルン:……人は居ないのになぁ。
ケルン:…………居るよーって、これを聴いて思ってる誰かが居たらー……ははっ……是非、チャンネル登録を、お願いしますねー。
ケルン:はははっ…………本当、世界にひとりきりって、くらい……。
ケルン:……静かだ。
0:3カウント―――
ケルン:……さてさて。登山を再開してから、良い感じに……難所が来ましたよぉ……きっつぅ。
ケルン:……よいしょ……うぉわっ、やっばっ!
ケルン:あっぶな……うぇー、崩れんなよぉ……ビビるぅ……。
ケルン:いや、やばいよ、ここ。アレかも。
ケルン:えっと……アレ。うん……。
ケルン:…………死ぬかも。
ケルン:……ははっ! まあ、それもアリ!
ケルン:うん、てか、その為に登ってるんだろって!
ケルン:……あ、これ、初出し情報じゃん。
ケルン:ははっ……べつに良いんだけどさー。
ケルン:……いやぁ、でも、やっぱさ。出来れば、頂上見たいよなぁ。
ケルン:なんか、悔いが残ってさ、地縛霊? みたいな、そんな事になったら、ほんと……。
ケルン:ははっ……ほんと、最悪だし。
ケルン:……よっし、四の五の(しのごの)言ってないで、気合い入れて、行きますかぁっ!
ケルン:集中します! また後で!
ケルン:……ふっ! ……うわっ、やべぇ……っ、うおっ!
ケルン:……はぁ……はぁ…………つっ……くっそ……。
ケルン:……おっ……あー…………いや、意外……と。
ケルン:……うわっ、こわっ! えぇー……。
ケルン:………………お願いお願いお願いっ……よっしっ!
ケルン:……いや……よかったぁ……。
ケルン:…………はぁい……何とか、生きてまぁす。
ケルン:……つっかれたぁ……あー……ははっ……。
ケルン:なーんで……こんな必死になってんのかなぁ……。
ケルン:痛つつ……はぁ、ちょい休憩……。
ケルン:あー……いてぇ……少し、足に負担かけ過ぎたかもなぁ……。
ケルン:…………ハロー。
ケルン:……誰か、聴いてますか?
ケルン:……まあ、べつに期待なんか……してないって。
ケルン:……疲れたなぁ。
ケルン:ほんと……ずっと、疲れたままだ。
ケルン:…………誰かに会えた時……言葉も忘れてそうだから、って……こんな、誰も聴いてない配信始めたけどさ……。
ケルン:……やっと……こんなの、意味が無いって……気付いたんだ……最近。
ケルン:……どんどん、あの時から……人が居なくなって……。
ケルン:一緒に居た奴も……引き離されて……。
ケルン:あぁ……生きてんのかなぁ……。
ケルン:そうそう……ひとり、看取った奴がね……言ってたんだよ、最後らへんに。
ケルン:……死にたくない、ってさ。
ケルン:…………いや、なんだろ。そりゃ……そういうの、分かるけど。
ケルン:……こっちは……そんな風には、思えないって。
ケルン:……でもさー、言ったって、しょうがないじゃん?
ケルン:……だから。色々、飲み込んで。
ケルン:……うん、大丈夫だろ……いまは寝とけ……起こしてやるから……とか、言っちゃったんだよな。
ケルン:…………ダメだなぁ……ダメだ。
ケルン:……羨ましいとか……どっかで、思ってたんだよ。
ケルン:……楽に、なりたかった。
ケルン:……自分からじゃなくて、仕方なく……勇気なんか要らないで……気付いたら……とか。
ケルン:ははっ……あ、ははっ……。
ケルン:……そんなんだから、こんな目にあってるんだろうな。
ケルン:……最悪だ。本当に……最悪だよ。
0:3カウント―――
ケルン:はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
ケルンM:……教えて欲しい、って。思ってた。
ケルン:はぁ……。
ケルンM:ずっと、足を動かしながら。前に、雑然と進みながら。
ケルン:はぁ……。
ケルンM:どこまでも、続いて行く、目の前の景色を見ながら。
ケルン:はぁ……っ。
ケルンM:ひとりで、どこまで行けばいいのか。
ケルンM:それだけを、誰かに、教えて欲しかった。
ケルンM:生きるだけ、生きて。進むだけ、進み。
ケルンM:その先に、答えをくれる誰かが居る、なんて。
ケルン:はぁ……ははっ……。
ケルンM:期待しちゃ、いなかったし。実際、居なかった、のだろう。
ケルン:……ははっ……はぁ……っ。
ケルンM:けれど、どうして……諦めることは、簡単じゃなかったんだろう。
ケルン:はぁ……はぁ……っ。
ケルンM:そんなことにだって……どうしても、勇気が必要だった。
ケルン:はぁ……はぁ…………はぁ……。
ケルンM:気が付けば、随分長いこと、歩いていた。
ケルンM:どれくらい経ったのか。そんなことを考えても仕方ない程に。
ケルン:……長い……長い……時間が。
ケルンM:振り返ると、遠く、深い地上の方に、街だった物が、見えた。
ケルン:……はぁ…………はぁ……。
ケルンM:なんだか、綺麗だと、思った。
ケルン:……だいぶ、もう……頂上が近いのか……スゲェ…………高いとこまで、来たんだな……。
ケルンM:ふっ、と。不思議な気持ちが湧いた。
ケルン:……いや……そんなん、今更だって。
ケルンM:そうだ。そんな気持ち。
ケルン:……知りたくない。
0:カウント3―――
ケルン:……はぁ……はぁ……っ、うわ……うわぁっ……うわぁあああっ!
ケルン:はぁ、はぁ、うおっ! くっ、はぁ、はぁっ…………っ……やったぁぁぁあ! 頂上だぁぁあああっ!
ケルン:……はぁ……はぁ……あっはははっ……はぁ……はぁ……っ。
ケルン:……どうですか、見てくれてるっ?
ケルン:見といた方が良いよっ……これ……やべぇって!
ケルン:……はぁ……はぁ……いや、やばい……マジで……ははっ、絶景だわぁぁぁあ!
ケルン:…………疲れた……はぁぁぁ……つっかれたぁぁぁ……あーあ。
ケルン:…………皆、知ってたぁ? ……どんだけ高いとこでも……空見上げれば……あんま変わんないって……ふふっ、ははははっ……。
ケルン:……はぁ……達成感えぐい……。
ケルン:…………これは、チャンネル登録するでしょ、皆さん。ねぇ?
ケルン:…………静かなのは、変わらないなぁ。
ケルン:……ふふっ。
ケルン:…………前にさ。天国に近いところから……神様に文句を言ってやるって……山に登る話をさ……読んだんだよ。
ケルン:…………確かに、ここからなら……なんて思ったけど……誰も居ないし……まだ足りないみたいだわ。
ケルン:…………なんで、こんな世界に。
ケルン:…………ひとりぼっちに、したんだよ。
ケルン:…………なぁ? ハロー?
ケルン:…………聴こえて……ないか。
ケルン:…………知ってた。
ケルン:…………よっ、と。
ケルン:……皆も、空ばっかは、飽きたでしょ?
ケルン:……本当に……登って来たんだな……。
ケルン:…………天国に近いって……本当なら、さ。
ケルン:…………会えるのかな、とか……思ったんだ。
ケルン:…………ははっ……馬鹿だよなぁ……。
ケルン:…………ハロー。
ケルン:…………よし……うん……わかった。
ケルン:……さてっ、そろそろ! えー、配信終了のお時間とー、なりました!
ケルン:ひとり登山チャレンジ、見事成功っ! いぇーい!
ケルン:……ってことでね! いやぁ……頑張りました。
ケルン:頑張って……頑張って……もう、頑張るのも、終わりにして、良いね……これは。
ケルン:うん……最後に、大迫力の映像を……いやぁ……はぁ……お見せ、して……ね。
ケルン:…………終わろうと、思います。
ケルン:…………ここからさ、来た道戻るのも……ツラいしさ。
ケルン:…………なんか……あー……配信見てくれてる……誰かさん。
ケルン:もし、もしね……居たらさ……ありがとう。
ケルン:生きがいに、なれてたんなら…………ごめん。
ケルン:……あ、あと、最後にグロイ映像見せるかも……あぁ……先に機材だけ遠くに投げてからにするか……ははっ、配慮配慮。
ケルン:…………まあ、そちらはさ……出来れば、もう少し、生きてみてよ。
ケルン:……なんか、お前が言ってもなぁ‥…って感じだけどさ。
ケルン:…………ははっ。
ケルン:…………終わる世界に……さようならーっ、見てくれてありがとうございましたぁ!
ケルン:…………ばいばい。
ケルン:……………………あっ!
ケルン:…………うわぁ、ははっ……めっちゃ……下手くそだったわ、投げるの。
ケルン:……うわっ、しかも配信止まってねぇんかーいっ!
ケルン:うげ、顔映った……っ……くっ……ははっ…………はははっ…………なんだよ……その顔……っ。
ケルン:…………馬鹿みてぇ……本当……最悪だ……っ。
ケルン:…………なんだ、これ……死にたく、ねえぇ……。
ケルン:…………っ。
0:3カウント―――
ケルン:……はーいっ、どーもっ。
ケルン:終わる世界に、こんにちわー。
ケルン:今日も、今日とて、映像を、垂れ流して行こー!
ケルン:ってことで。この配信は、チャンネル45140で、キャッチ出来ますので、登録お願いしやーす。
ケルン:チャンネル番号は、45140で、45140(よっこいしょ)って覚えてくださいーいっ、よろしくっ。
ケルン:では……今日はぁ……あははっ……何をしましょうか。
ケルン:はーいっ、どーもっ。
ケルン:終わる世界に、こんにちわー。
ケルン:今日も、今日とて、映像を、垂れ流して行こー!
ケルン:ってことで。この配信は、チャンネル45140で、キャッチ出来ますので、登録お願いしやーす。
ケルン:チャンネル番号は、45140で、45140(よっこいしょ)って覚えてくださいーいっ、よろしくっ。
ケルン:さてさて、本日なんと……快晴です。
ケルン:いやー、何をするにも良い天気だね。
ケルン:山登るなら尚更……良いっ。
ケルン:ってーことで、昨日までの続きからスタートっ。
ケルン:だいぶ……いやぁ、マジで結構、高いとこまで来たなぁ。
ケルン:ほら、見てっ、ちょー景色が良いっ。
ケルン:頂上とか、もっと凄いんだろなぁ……。
ケルン:こっからが本番か……いやぁ、大丈夫か不安だけど、頑張ってみまーす。
ケルン:……山歩いてて……いや、登ってて?
ケルン:ははっ……やっぱ、ここでも人に会わないですねー。
ケルン:平地にも……山にも……いないって、ははっ、どこにいるんだー?
ケルン:いや、居ないんだろうな……そゆことでしょうね。
ケルン:……いや、って言いつつ、これ聴いてる皆さん居たら、すみません。
ケルン:周りにね、居ないってだけな可能性がね、まだあると。
ケルン:……いつまでが……まだ、なんですかね。
ケルン:……はぁ……いやーっ、それでね、皆さん。
ケルン:もう、何度も言ってますけどね。
ケルン:人が、居ないってことは、インフラを整備する人も、当然居ないんですねー。
ケルン:だから、ガタガタになったアスファルトなんかより、いまじゃ剥き出しの地面の方が歩きやすいからね。
ケルン:どっちも、疲れるのは変わんないけど……。
ケルン:てかっ、山道だとね、整備されてないの、やばいですね。
ケルン:かろうじて……なんか……獣道以下、みたいな……うっすらと道だったのかなー……って形跡があるんで……そこ進むしか無いっていうね。
ケルン:なんか、ロープウェイとか、あればねー。
ケルン:あーでも……そういう、乗り物もねー、山以外……平地……ってなんか表現変な感じするけど、まあ、平地か。
ケルン:そこ移動する時は、自転車とか……そういう、燃料やらを使わないやつしか、流石にもう使えなかったな。
ケルン:いや、なんなら……それも希少だよね。タイヤもフレームも、いろんなとこが、自然にぃ……ふぅ……えっと、壊れて、というか、劣化していってるから。
ケルン:自分も最初の頃は、自転車で移動してたんですよ。たまたま見つけてさ。
ケルン:でも、空気入れが……もう、全然気づいてなくて、必要だってこと。
ケルン:そんで、街とか、見かける度に探してみたんですけどね……いやぁ、先にパンクしちゃった。
ケルン:パンクするとさ、なんであんなに振動するんだろう。全然乗ってらんなくなったよね。
ケルン:いやぁ、それに懲りた……って訳じゃないけど。
ケルン:もう乗り物は良いやってなったねー。
ケルン:まあ、でも……それからも、少し乗り物に乗ったけどさ。
ケルン:こだわらなくなったね。なんかさ。
ケルン:どーせ、誰もいないし。時間も無い訳じゃない。
ケルン:体ひとつで、まあ……なんとかなった。
ケルン:健康には、気をつけないとって感じだけどさ。
ケルン:それもまあ……べつに、こだわらなくて良いし。
ケルン:……もしも、このチャンネルを登録してくれてる、悲しい生き残りの誰かが居て……こんな暇つぶしを楽しんでくれてるとか……そんなことがあるんなら。
ケルン:……申し訳ないなって、少し思うけどさ。
ケルン:なんかっ……テキトーに生きてるだけだし。
ケルン:ま、べつに……いつ……はぁ、少しここ、辛いな……ははっ、えっと……いつ、居なくなっても……やめても、良いかなーって。
ケルン:……はぁ……よっと……うん、思って、ます。
ケルン:…………やー、ちょっとこれ……しばらく登るのに集中するね。
ケルン:はぁ……よしっ、ごめんだけどー、そゆことでっ、よろしくお願いしまーす。
ケルン:……どうせ、誰も見てないし、聞いてないし、コメントも無いと思うけどね。
ケルン:……ははっ、ではー、クライミング……スタートっ。
0:3カウント―――
ケルン:……ふう……あー、やーっと、休めるー!
ケルン:はぁー……疲れた……あぁ……もう、難所は終わったと信じたい……。
ケルン:ちょーっと、休憩ターイム。
ケルン:あー……映像切っても良いなぁ。
ケルン:……まあ、いいや、少しお付き合い下さい。
ケルン:はぁ…………晴れてるなぁ……。
ケルン:ははっ……鳥の鳴き声がする……。
ケルン:……あのさ、動物とか、虫とかにさ……お前らは良いよなぁ、って。思ったことない?
ケルン:……正直、ずっとだよ。
ケルン:……ずーーーっと。羨ましくて、恨めしい。
ケルン:……ただの、八つ当たりだけどさ。
ケルン:…………すぅーっ、はぁーっ。(深呼吸)
ケルン:……人は居ないのになぁ。
ケルン:…………居るよーって、これを聴いて思ってる誰かが居たらー……ははっ……是非、チャンネル登録を、お願いしますねー。
ケルン:はははっ…………本当、世界にひとりきりって、くらい……。
ケルン:……静かだ。
0:3カウント―――
ケルン:……さてさて。登山を再開してから、良い感じに……難所が来ましたよぉ……きっつぅ。
ケルン:……よいしょ……うぉわっ、やっばっ!
ケルン:あっぶな……うぇー、崩れんなよぉ……ビビるぅ……。
ケルン:いや、やばいよ、ここ。アレかも。
ケルン:えっと……アレ。うん……。
ケルン:…………死ぬかも。
ケルン:……ははっ! まあ、それもアリ!
ケルン:うん、てか、その為に登ってるんだろって!
ケルン:……あ、これ、初出し情報じゃん。
ケルン:ははっ……べつに良いんだけどさー。
ケルン:……いやぁ、でも、やっぱさ。出来れば、頂上見たいよなぁ。
ケルン:なんか、悔いが残ってさ、地縛霊? みたいな、そんな事になったら、ほんと……。
ケルン:ははっ……ほんと、最悪だし。
ケルン:……よっし、四の五の(しのごの)言ってないで、気合い入れて、行きますかぁっ!
ケルン:集中します! また後で!
ケルン:……ふっ! ……うわっ、やべぇ……っ、うおっ!
ケルン:……はぁ……はぁ…………つっ……くっそ……。
ケルン:……おっ……あー…………いや、意外……と。
ケルン:……うわっ、こわっ! えぇー……。
ケルン:………………お願いお願いお願いっ……よっしっ!
ケルン:……いや……よかったぁ……。
ケルン:…………はぁい……何とか、生きてまぁす。
ケルン:……つっかれたぁ……あー……ははっ……。
ケルン:なーんで……こんな必死になってんのかなぁ……。
ケルン:痛つつ……はぁ、ちょい休憩……。
ケルン:あー……いてぇ……少し、足に負担かけ過ぎたかもなぁ……。
ケルン:…………ハロー。
ケルン:……誰か、聴いてますか?
ケルン:……まあ、べつに期待なんか……してないって。
ケルン:……疲れたなぁ。
ケルン:ほんと……ずっと、疲れたままだ。
ケルン:…………誰かに会えた時……言葉も忘れてそうだから、って……こんな、誰も聴いてない配信始めたけどさ……。
ケルン:……やっと……こんなの、意味が無いって……気付いたんだ……最近。
ケルン:……どんどん、あの時から……人が居なくなって……。
ケルン:一緒に居た奴も……引き離されて……。
ケルン:あぁ……生きてんのかなぁ……。
ケルン:そうそう……ひとり、看取った奴がね……言ってたんだよ、最後らへんに。
ケルン:……死にたくない、ってさ。
ケルン:…………いや、なんだろ。そりゃ……そういうの、分かるけど。
ケルン:……こっちは……そんな風には、思えないって。
ケルン:……でもさー、言ったって、しょうがないじゃん?
ケルン:……だから。色々、飲み込んで。
ケルン:……うん、大丈夫だろ……いまは寝とけ……起こしてやるから……とか、言っちゃったんだよな。
ケルン:…………ダメだなぁ……ダメだ。
ケルン:……羨ましいとか……どっかで、思ってたんだよ。
ケルン:……楽に、なりたかった。
ケルン:……自分からじゃなくて、仕方なく……勇気なんか要らないで……気付いたら……とか。
ケルン:ははっ……あ、ははっ……。
ケルン:……そんなんだから、こんな目にあってるんだろうな。
ケルン:……最悪だ。本当に……最悪だよ。
0:3カウント―――
ケルン:はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
ケルンM:……教えて欲しい、って。思ってた。
ケルン:はぁ……。
ケルンM:ずっと、足を動かしながら。前に、雑然と進みながら。
ケルン:はぁ……。
ケルンM:どこまでも、続いて行く、目の前の景色を見ながら。
ケルン:はぁ……っ。
ケルンM:ひとりで、どこまで行けばいいのか。
ケルンM:それだけを、誰かに、教えて欲しかった。
ケルンM:生きるだけ、生きて。進むだけ、進み。
ケルンM:その先に、答えをくれる誰かが居る、なんて。
ケルン:はぁ……ははっ……。
ケルンM:期待しちゃ、いなかったし。実際、居なかった、のだろう。
ケルン:……ははっ……はぁ……っ。
ケルンM:けれど、どうして……諦めることは、簡単じゃなかったんだろう。
ケルン:はぁ……はぁ……っ。
ケルンM:そんなことにだって……どうしても、勇気が必要だった。
ケルン:はぁ……はぁ…………はぁ……。
ケルンM:気が付けば、随分長いこと、歩いていた。
ケルンM:どれくらい経ったのか。そんなことを考えても仕方ない程に。
ケルン:……長い……長い……時間が。
ケルンM:振り返ると、遠く、深い地上の方に、街だった物が、見えた。
ケルン:……はぁ…………はぁ……。
ケルンM:なんだか、綺麗だと、思った。
ケルン:……だいぶ、もう……頂上が近いのか……スゲェ…………高いとこまで、来たんだな……。
ケルンM:ふっ、と。不思議な気持ちが湧いた。
ケルン:……いや……そんなん、今更だって。
ケルンM:そうだ。そんな気持ち。
ケルン:……知りたくない。
0:カウント3―――
ケルン:……はぁ……はぁ……っ、うわ……うわぁっ……うわぁあああっ!
ケルン:はぁ、はぁ、うおっ! くっ、はぁ、はぁっ…………っ……やったぁぁぁあ! 頂上だぁぁあああっ!
ケルン:……はぁ……はぁ……あっはははっ……はぁ……はぁ……っ。
ケルン:……どうですか、見てくれてるっ?
ケルン:見といた方が良いよっ……これ……やべぇって!
ケルン:……はぁ……はぁ……いや、やばい……マジで……ははっ、絶景だわぁぁぁあ!
ケルン:…………疲れた……はぁぁぁ……つっかれたぁぁぁ……あーあ。
ケルン:…………皆、知ってたぁ? ……どんだけ高いとこでも……空見上げれば……あんま変わんないって……ふふっ、ははははっ……。
ケルン:……はぁ……達成感えぐい……。
ケルン:…………これは、チャンネル登録するでしょ、皆さん。ねぇ?
ケルン:…………静かなのは、変わらないなぁ。
ケルン:……ふふっ。
ケルン:…………前にさ。天国に近いところから……神様に文句を言ってやるって……山に登る話をさ……読んだんだよ。
ケルン:…………確かに、ここからなら……なんて思ったけど……誰も居ないし……まだ足りないみたいだわ。
ケルン:…………なんで、こんな世界に。
ケルン:…………ひとりぼっちに、したんだよ。
ケルン:…………なぁ? ハロー?
ケルン:…………聴こえて……ないか。
ケルン:…………知ってた。
ケルン:…………よっ、と。
ケルン:……皆も、空ばっかは、飽きたでしょ?
ケルン:……本当に……登って来たんだな……。
ケルン:…………天国に近いって……本当なら、さ。
ケルン:…………会えるのかな、とか……思ったんだ。
ケルン:…………ははっ……馬鹿だよなぁ……。
ケルン:…………ハロー。
ケルン:…………よし……うん……わかった。
ケルン:……さてっ、そろそろ! えー、配信終了のお時間とー、なりました!
ケルン:ひとり登山チャレンジ、見事成功っ! いぇーい!
ケルン:……ってことでね! いやぁ……頑張りました。
ケルン:頑張って……頑張って……もう、頑張るのも、終わりにして、良いね……これは。
ケルン:うん……最後に、大迫力の映像を……いやぁ……はぁ……お見せ、して……ね。
ケルン:…………終わろうと、思います。
ケルン:…………ここからさ、来た道戻るのも……ツラいしさ。
ケルン:…………なんか……あー……配信見てくれてる……誰かさん。
ケルン:もし、もしね……居たらさ……ありがとう。
ケルン:生きがいに、なれてたんなら…………ごめん。
ケルン:……あ、あと、最後にグロイ映像見せるかも……あぁ……先に機材だけ遠くに投げてからにするか……ははっ、配慮配慮。
ケルン:…………まあ、そちらはさ……出来れば、もう少し、生きてみてよ。
ケルン:……なんか、お前が言ってもなぁ‥…って感じだけどさ。
ケルン:…………ははっ。
ケルン:…………終わる世界に……さようならーっ、見てくれてありがとうございましたぁ!
ケルン:…………ばいばい。
ケルン:……………………あっ!
ケルン:…………うわぁ、ははっ……めっちゃ……下手くそだったわ、投げるの。
ケルン:……うわっ、しかも配信止まってねぇんかーいっ!
ケルン:うげ、顔映った……っ……くっ……ははっ…………はははっ…………なんだよ……その顔……っ。
ケルン:…………馬鹿みてぇ……本当……最悪だ……っ。
ケルン:…………なんだ、これ……死にたく、ねえぇ……。
ケルン:…………っ。
0:3カウント―――
ケルン:……はーいっ、どーもっ。
ケルン:終わる世界に、こんにちわー。
ケルン:今日も、今日とて、映像を、垂れ流して行こー!
ケルン:ってことで。この配信は、チャンネル45140で、キャッチ出来ますので、登録お願いしやーす。
ケルン:チャンネル番号は、45140で、45140(よっこいしょ)って覚えてくださいーいっ、よろしくっ。
ケルン:では……今日はぁ……あははっ……何をしましょうか。