台本概要

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タイトル アカネコ①気まぐれ仔猫~ひとたらしのラムを添えて~
作者名 みゃこ  (@myako__385)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 シリーズ作品になります。随時更新していこうと思うので、よろしければお付き合いください。

(N)はナレーション、一人語り。
()で閉じられている箇所は、ト書き・ルビ・人物の心中での発言・作者のお遊び(←)などがあります。『人物の心中での発言』のみ読みます。判別できるよう気をつけているのでご容赦ください。

演者の性別不問、登場人物の性別変更不可。
語尾や若干の言い回し程度の、微少の改変は可。


一言裏話。
『えろもたらしも、無自覚だからこそタチが悪い。あると思います。』by作者

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
キティ 49 キティ・ナインテール。10代半ばくらい。気まぐれで人見知りが激しい。感情の起伏に乏しい……わけではなく、感情表現が苦手なだけ。
ラム 64 記憶喪失でさまよっていたところをキティに拾われた過去を持つ。外見は10代半ば~後半。超がつくお人好しであり、同時に天然の人たらし。
シルヴィア 23 シルヴィア・ハリスマン。20代前半。若くして帝国軍大佐に登り詰めた女傑であるが、意外とぽんこつな面も。性知識が皆無。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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キティ:(N)――これは、一人の仔猫の物語。 0:間。 0:帝国軍拠点、ラムの自室。 0:ホットミルクを用意しているラム。扉が開いてシルヴィアが入ってくるが……。 ラム:あぁ、おかえり、キティ。お疲れさま。 ラム:今日は、ずいぶんと早く終わったんだね。 シルヴィア:…………。 ラム:待ってて。もう少しでミルクが温まるから。適当にくつろいで(待っていて) シルヴィア:(かぶせぎみに)あー……ラム? 毎度のことながら、いささか以上に注意力散漫だな? 0:入室してきたのがシルヴィアだとようやく気づくラム。 ラム:あ……大佐でしたか……。失礼しました。 シルヴィア:お前らしいといえばらしいが。ただ、ここは一応軍の拠点だ。 シルヴィア:軍人ではないからといって、気を抜きすぎるのはさすがにいただけんぞ? ラム:ぅ……すみません。気をつけるようにします……。 シルヴィア:ま、まぁ? この私、シルヴィア・ハリスマンがこの地を預かっているうちは? 客人であるラムには指・一・本! 触れさせはしないがな!? ラム:大佐……、心強いですっ! シルヴィア:ふっ。(まんざらでもない様子) ラム:ところで……さっきから外が騒がしいですし、大佐がこちらにいらしたってことは、終わったんですよね? ラム:キティはまだ戻っていないんですか? シルヴィア:ここにいないということは、まだ戻っていないのだろうよ。 シルヴィア:相変わらずの気まぐれぶりだ、あの猫様。どこをほっつき歩いているのやら。 ラム:猫様って(笑う)まぁ、言い得て妙ですけど。 ラム:あぁ、よかったら座ってください。お疲れでしょう? お茶入れますね。 シルヴィア:む、そんなつもりはなかったのだが……せっかくのお誘いを無下にするのも無粋だな。 シルヴィア:ありがたくいただくとしよう。 0:テーブルの椅子に腰を下ろすシルヴィア。 0:ラムは手際よく紅茶の準備をする。 シルヴィア:一応言っておくが、私はこれでも忙しい身なのだからな? シルヴィア:キティが出てくれたおかげで思った以上に早く片がついたから、たまたま、そうたまたま時間にふと余裕ができただけだ。 シルヴィア:お前の保護責任者を任されている立場上、ラムの無事な顔を見ることも立派な任務のうちであることだし。うん。変な誤解をするのではないぞ。 ラム:はい、大佐には本当に感謝していますよ。僕みたいな身寄りのない、ましてやどこの誰とも知らない人間の身柄を預かってくださって。こうして、部屋まで用意してくださって。 ラム:本当、頭が上がりませんよ。 シルヴィア:う、うむ……そうだろうそうだろう……。 シルヴィア:(小声で)……にぶちんめ。 0:二人分のミルクティーを持ってテーブルにつくラム。 ラム:はい、お待たせしました。疲れているときは甘いもののほうがいいと思って。 ラム:熱いので、気をつけてくださいね。 シルヴィア:あぁ、ありがとう。いただきます。 シルヴィア:(一口飲んで)……うん。今日もおいしい。 ラム:それはよかったです。ありがとうございます。 シルヴィア:ラムなら、きっといい主夫になれるな。 ラム:は、はぁ……。どう、も? シルヴィア:うむうむ。 シルヴィア:ちなみにだが。我が家は代々、地元のこぢんまりとした教会で人前婚式(じんぜんこんしき)を挙げるのがならわしでな。 ラム:へぇ。そうなんですね。 シルヴィア:うむ。父も、そろそろ孫の顔が見たい、などと、日ごとに口うるさくなるばかりだ。 ラム:大佐のお父さんって、確か軍の元帥(げんすい)だったお方ですよね。すでに退役したとうかがっていますが。 ラム:はは。そんな立派な方でも、やっぱりお孫さんができたりしたら、親バカならぬ祖父バカになるんでしょうかね。 シルヴィア:………………。(好きなだけ舌打ちをしてください) ラム:? 大佐? どうかしましたか? 茶葉でも歯に挟まっちゃいました? シルヴィア:なんでもないですぅ。 ラム:キャラ変わってません? シルヴィア:ふん。 シルヴィア:まぁいい。ところで、どうだ? ここでの生活は。困っていることなどはないか? ラム:はい。皆さん、とてもよくしてくださってますから。なにも問題ありませんよ。 シルヴィア:キティとも順調か? ラム:はい。まぁ、たまの気まぐれに振り回されるくらいはありますけどね。(苦笑) シルヴィア:『よとぎ』のほうはどうだ? ラム:(お茶を吹き出す)ぶはっ!? ラム:(むせながら)た、大佐!? い、いきなりなにを言い出すんですかっ! シルヴィア:うん? なにか変なことを言ったか? シルヴィア:食堂のダンカンさんからそれとなく聞いてみろ、と言われたのだが……はて。 ラム:(わかってない……この人、『夜伽(よとぎ)』の意味もわかってないし、ダンカンさんにからかわれてるってことも全然わかってない……!) シルヴィア:やれやれまったく……。せっかくの紅茶が台無しじゃないか。あーぁ、服もこんなに汚してしまって。 シルヴィア:ほら、拭いてやろう。おとなしくしているんだぞ。 0:ハンカチを片手に、椅子に座るラムの前にひざまずくシルヴィア。 ラム:い、いいですいいですいいです! 子どもじゃないんですからっ! これくらい自分で……! シルヴィア:やんっ。ふふ、そんなことを言っているうちはまだまだ子どもだ。 シルヴィア:いいから、じっとしていろ……すぐにスッキリ、気持ちよくさせてやるから……。 0:キティ、登場。 キティ:ただいまラム。なんだか騒がしい物音が外まで聞こえ、て……。 0:扉を開いたかっこうのまま固まるキティ。 0:その様子を見て固まるラム。 0:100の善意と0の自覚で追い打ちをかけるシルヴィア。 シルヴィア:あぁ、キティ。ご苦労だったな。なに、少々取り込んでいるだけだから気にするな。 シルヴィア:ラムをスッキリさせたらすぐに終わる。 キティ:……………………ふーん。そう。 ラム:き、キティ? 0:無言の圧を放ちながらラムに近づいていくキティ。 0:そしてそのまま、ラムに盛大な平手打ちを食らわせる。 キティ:不潔ッ!! ラム:ぶっ。 0:部屋から飛び出していくキティ。 シルヴィア:……………………。 シルヴィア:(首をかしげる)はて? 0:間。場面転換。 0:ラムの部屋にて、シルヴィアが執務に戻ったあと、ホットミルクを飲んでいるキティ。 キティ:あち……。 ラム:あ、熱すぎた? ごめんよ……。 キティ:(ミルクに息を吹きかけて冷ましながら)ふー、ふー。 キティ:まったくラムは……。おかげで今日は散々。 ラム:僕のセリフなんだよなぁ……。 キティ:なにか言った? ラム:いいえ、なんでも。 キティ:ラム。わたしはおなかがすいてる。 ラム:藪から棒だなぁ、まだなにも用意してないよ。 キティ:40秒で用意して。 ラム:無理だから。 キティ:(むくれて)うーっ……。 ラム:(こうして見ていると、本当にただの女の子にしか見えないんだけどなぁ) ラム:なるべく急いで作るから。そのあいだ、今日の武勇伝でも聞かせてよ。 キティ:聞かせるほど面白い話なんて、ない。 0:ホットミルクを一口飲むキティ。 キティ:わたしは、『兵器』だから。求められるのは敵を排除することだけ。 ラム:そんな悲しいこと言わないでよ。 キティ:本当のことだもの。 ラム:…………。 0:微妙な沈黙。 0:少しの間があり、ミルクをすすりながらキティが口を開く。 キティ:そういえば。シルヴィアはなにをしに来たの。 ラム:あれ。そういえばなんだろ。聞いてなかったな。 キティ:……やましいことに夢中で忘れてたのか。 ラム:うん? なにか言った? キティ:なんでもない。 0:残ったミルクを飲み干し、ラムのベッドに飛び乗る。 キティ:疲れた。寝る。 ラム:いやいやいや。僕のベッドで寝ないでよ。もうすぐご飯もできるし。 キティ:くんくん。(※そのまんま読んでくれていいのよ。) ラム:嗅がないの。 キティ:ラムの匂いがする……。 ラム:当たり前だよ。毎日使ってるんだから。 キティ:人がいないのをいいことに、女を連れ込んで乳繰り(ちちくり)合ってる男の匂いだ……。 ラム:どんな匂いだよ! ラム:あぁもう、ほら。簡単なものばかりだけどできたよ、ご飯。こっちおいで。 キティ:んー……。 0:頭からすっぽり布団をかぶったままベッドから這い出てくるキティ。 ラム:(みのむしみたいだ……みのねこと名づけよう) キティ:変なあだ名をつけないで。 ラム:そういうキティこそ、人の心を読まないでよ……。 キティ:『聞こえた』の。 ラム:……ごめん。 キティ:いい。気にしてないから。 キティ:いただきます。 ラム:どうぞ。召し上がれ。 キティ:(咀嚼しながら)……もっふもっふ。(※そのまんま読んでくれてry) ラム:…………。 キティ:(咀嚼しながら)……あぐあぐ。はぐはぐはぐ。(※そのまんまry) ラム:…………。 キティ:……なに。あまりじろじろ見ないで。 ラム:うん。 ラム:おいしい? キティ。 キティ:…………。 キティ:……うん。(小声で) ラム:よかった。 0:間。 キティ:ごちそうさま。 ラム:おそまつさまでした。後片づけ、しちゃうね。 キティ:よろしく。 キティ:じゃ、わたしは帰るから。 ラム:あれ、もう? もっとゆっくりしていけばいいのに。 キティ:こうしてまた一人、てごめ星人の魔の手に落ちる少女が。 ラム:てごめ星人!? ラム:僕のこと? キティ!? キティ:こっち見ないで。妊娠する。 ラム:見ただけで妊娠するわけがないよねぇ!? キティ:それがてごめ星人の特殊能力……こわい……。 ラム:ないよ。ないから。 キティ:そうやってシルヴィアのことも辱(はずかし)めたんだ。 キティ:なにも知らないシルヴィアに、おしべとめしべの話を延々と聞かせたんだ。 キティ:かわいそうなシルヴィア……。 ラム:今日のきみは引っ張るね!? きみのなかで僕がどういう扱いなのかを詳しく聞きたいな! キティ:冗談。ラム、慌てすぎ。変なの。 ラム:わかってはいるけど心臓に悪いよキティ……。 キティ:ふふ。ごめん。 キティ:でも、今日は本当に疲れてるの。敵さん、今日は無駄に頭数が多かったから。 キティ:人数が多いと本当に大変。『まぶしい』し『うるさい』し『匂う』し。『肌もぴりぴりする』し。 ラム:あ……そうなんだ。大変だったね。 ラム:ごめんね、そんなときに、いろいろイヤな思いまでさせて。 キティ:いい。慣れっこだし。 キティ:それに、ラムはいてくれるだけでいい。 キティ:ラムといるときは……ラムは、安心するから。 ラム:……ありがとう。僕も、キティと一緒にいるとすごく落ち着くし、うれしいよ。 ラム:正直言うと、キティが戦場に出ていくたびに心配なんだ。キティが強いのは、そりゃ知ってるけど……。 ラム:僕にとってのキティは、『兵器』なんかじゃない。恩人で、普通の女の子だ。 キティ:ラム。 ラム:戦場に出ていくたびに心配で、無事に帰ってくるだけでその何倍も安心する。 ラム:きみが今日も無事で、元気で、僕の隣にいてくれるだけでいい。 ラム:僕は、キティのことが本当に大切だから。 キティ:最後がちょっと聞き取れなかった。 ラム:え? 僕は、キティのことが本当に大切だから……。 キティ:もう一度。 ラム:キティのことが本当に大切……。 キティ:もう一度。 ラム:キティのことが! 本当に! 大切だから!! キティ:ラム、顔が赤い。 ラム:誰のせいだよ! キティ:ふふ。 キティ:ありがとう。大丈夫、わかってるから。 キティ:ラムのことは信じてるから。 キティ:ラムの気持ち――ちゃんと、届いてる。 ラム:っ……。 ラム:キティだって。 キティ:? ラム:キティだって。顔、真っ赤じゃないか。 キティ:……そんなこと、ない。 ラム:そんなことあるよ。 キティ:そんなことないってば。 ラム:ある。 キティ:ない! キティ:(顔を背けて)帰る。 ラム:うん。 ラム:明日は? キティ:…………。 キティ:……また、明日。 ラム:うん。おやすみ、キティ。 キティ:……おやすみ。ラム。 0:第二話へ続く。

キティ:(N)――これは、一人の仔猫の物語。 0:間。 0:帝国軍拠点、ラムの自室。 0:ホットミルクを用意しているラム。扉が開いてシルヴィアが入ってくるが……。 ラム:あぁ、おかえり、キティ。お疲れさま。 ラム:今日は、ずいぶんと早く終わったんだね。 シルヴィア:…………。 ラム:待ってて。もう少しでミルクが温まるから。適当にくつろいで(待っていて) シルヴィア:(かぶせぎみに)あー……ラム? 毎度のことながら、いささか以上に注意力散漫だな? 0:入室してきたのがシルヴィアだとようやく気づくラム。 ラム:あ……大佐でしたか……。失礼しました。 シルヴィア:お前らしいといえばらしいが。ただ、ここは一応軍の拠点だ。 シルヴィア:軍人ではないからといって、気を抜きすぎるのはさすがにいただけんぞ? ラム:ぅ……すみません。気をつけるようにします……。 シルヴィア:ま、まぁ? この私、シルヴィア・ハリスマンがこの地を預かっているうちは? 客人であるラムには指・一・本! 触れさせはしないがな!? ラム:大佐……、心強いですっ! シルヴィア:ふっ。(まんざらでもない様子) ラム:ところで……さっきから外が騒がしいですし、大佐がこちらにいらしたってことは、終わったんですよね? ラム:キティはまだ戻っていないんですか? シルヴィア:ここにいないということは、まだ戻っていないのだろうよ。 シルヴィア:相変わらずの気まぐれぶりだ、あの猫様。どこをほっつき歩いているのやら。 ラム:猫様って(笑う)まぁ、言い得て妙ですけど。 ラム:あぁ、よかったら座ってください。お疲れでしょう? お茶入れますね。 シルヴィア:む、そんなつもりはなかったのだが……せっかくのお誘いを無下にするのも無粋だな。 シルヴィア:ありがたくいただくとしよう。 0:テーブルの椅子に腰を下ろすシルヴィア。 0:ラムは手際よく紅茶の準備をする。 シルヴィア:一応言っておくが、私はこれでも忙しい身なのだからな? シルヴィア:キティが出てくれたおかげで思った以上に早く片がついたから、たまたま、そうたまたま時間にふと余裕ができただけだ。 シルヴィア:お前の保護責任者を任されている立場上、ラムの無事な顔を見ることも立派な任務のうちであることだし。うん。変な誤解をするのではないぞ。 ラム:はい、大佐には本当に感謝していますよ。僕みたいな身寄りのない、ましてやどこの誰とも知らない人間の身柄を預かってくださって。こうして、部屋まで用意してくださって。 ラム:本当、頭が上がりませんよ。 シルヴィア:う、うむ……そうだろうそうだろう……。 シルヴィア:(小声で)……にぶちんめ。 0:二人分のミルクティーを持ってテーブルにつくラム。 ラム:はい、お待たせしました。疲れているときは甘いもののほうがいいと思って。 ラム:熱いので、気をつけてくださいね。 シルヴィア:あぁ、ありがとう。いただきます。 シルヴィア:(一口飲んで)……うん。今日もおいしい。 ラム:それはよかったです。ありがとうございます。 シルヴィア:ラムなら、きっといい主夫になれるな。 ラム:は、はぁ……。どう、も? シルヴィア:うむうむ。 シルヴィア:ちなみにだが。我が家は代々、地元のこぢんまりとした教会で人前婚式(じんぜんこんしき)を挙げるのがならわしでな。 ラム:へぇ。そうなんですね。 シルヴィア:うむ。父も、そろそろ孫の顔が見たい、などと、日ごとに口うるさくなるばかりだ。 ラム:大佐のお父さんって、確か軍の元帥(げんすい)だったお方ですよね。すでに退役したとうかがっていますが。 ラム:はは。そんな立派な方でも、やっぱりお孫さんができたりしたら、親バカならぬ祖父バカになるんでしょうかね。 シルヴィア:………………。(好きなだけ舌打ちをしてください) ラム:? 大佐? どうかしましたか? 茶葉でも歯に挟まっちゃいました? シルヴィア:なんでもないですぅ。 ラム:キャラ変わってません? シルヴィア:ふん。 シルヴィア:まぁいい。ところで、どうだ? ここでの生活は。困っていることなどはないか? ラム:はい。皆さん、とてもよくしてくださってますから。なにも問題ありませんよ。 シルヴィア:キティとも順調か? ラム:はい。まぁ、たまの気まぐれに振り回されるくらいはありますけどね。(苦笑) シルヴィア:『よとぎ』のほうはどうだ? ラム:(お茶を吹き出す)ぶはっ!? ラム:(むせながら)た、大佐!? い、いきなりなにを言い出すんですかっ! シルヴィア:うん? なにか変なことを言ったか? シルヴィア:食堂のダンカンさんからそれとなく聞いてみろ、と言われたのだが……はて。 ラム:(わかってない……この人、『夜伽(よとぎ)』の意味もわかってないし、ダンカンさんにからかわれてるってことも全然わかってない……!) シルヴィア:やれやれまったく……。せっかくの紅茶が台無しじゃないか。あーぁ、服もこんなに汚してしまって。 シルヴィア:ほら、拭いてやろう。おとなしくしているんだぞ。 0:ハンカチを片手に、椅子に座るラムの前にひざまずくシルヴィア。 ラム:い、いいですいいですいいです! 子どもじゃないんですからっ! これくらい自分で……! シルヴィア:やんっ。ふふ、そんなことを言っているうちはまだまだ子どもだ。 シルヴィア:いいから、じっとしていろ……すぐにスッキリ、気持ちよくさせてやるから……。 0:キティ、登場。 キティ:ただいまラム。なんだか騒がしい物音が外まで聞こえ、て……。 0:扉を開いたかっこうのまま固まるキティ。 0:その様子を見て固まるラム。 0:100の善意と0の自覚で追い打ちをかけるシルヴィア。 シルヴィア:あぁ、キティ。ご苦労だったな。なに、少々取り込んでいるだけだから気にするな。 シルヴィア:ラムをスッキリさせたらすぐに終わる。 キティ:……………………ふーん。そう。 ラム:き、キティ? 0:無言の圧を放ちながらラムに近づいていくキティ。 0:そしてそのまま、ラムに盛大な平手打ちを食らわせる。 キティ:不潔ッ!! ラム:ぶっ。 0:部屋から飛び出していくキティ。 シルヴィア:……………………。 シルヴィア:(首をかしげる)はて? 0:間。場面転換。 0:ラムの部屋にて、シルヴィアが執務に戻ったあと、ホットミルクを飲んでいるキティ。 キティ:あち……。 ラム:あ、熱すぎた? ごめんよ……。 キティ:(ミルクに息を吹きかけて冷ましながら)ふー、ふー。 キティ:まったくラムは……。おかげで今日は散々。 ラム:僕のセリフなんだよなぁ……。 キティ:なにか言った? ラム:いいえ、なんでも。 キティ:ラム。わたしはおなかがすいてる。 ラム:藪から棒だなぁ、まだなにも用意してないよ。 キティ:40秒で用意して。 ラム:無理だから。 キティ:(むくれて)うーっ……。 ラム:(こうして見ていると、本当にただの女の子にしか見えないんだけどなぁ) ラム:なるべく急いで作るから。そのあいだ、今日の武勇伝でも聞かせてよ。 キティ:聞かせるほど面白い話なんて、ない。 0:ホットミルクを一口飲むキティ。 キティ:わたしは、『兵器』だから。求められるのは敵を排除することだけ。 ラム:そんな悲しいこと言わないでよ。 キティ:本当のことだもの。 ラム:…………。 0:微妙な沈黙。 0:少しの間があり、ミルクをすすりながらキティが口を開く。 キティ:そういえば。シルヴィアはなにをしに来たの。 ラム:あれ。そういえばなんだろ。聞いてなかったな。 キティ:……やましいことに夢中で忘れてたのか。 ラム:うん? なにか言った? キティ:なんでもない。 0:残ったミルクを飲み干し、ラムのベッドに飛び乗る。 キティ:疲れた。寝る。 ラム:いやいやいや。僕のベッドで寝ないでよ。もうすぐご飯もできるし。 キティ:くんくん。(※そのまんま読んでくれていいのよ。) ラム:嗅がないの。 キティ:ラムの匂いがする……。 ラム:当たり前だよ。毎日使ってるんだから。 キティ:人がいないのをいいことに、女を連れ込んで乳繰り(ちちくり)合ってる男の匂いだ……。 ラム:どんな匂いだよ! ラム:あぁもう、ほら。簡単なものばかりだけどできたよ、ご飯。こっちおいで。 キティ:んー……。 0:頭からすっぽり布団をかぶったままベッドから這い出てくるキティ。 ラム:(みのむしみたいだ……みのねこと名づけよう) キティ:変なあだ名をつけないで。 ラム:そういうキティこそ、人の心を読まないでよ……。 キティ:『聞こえた』の。 ラム:……ごめん。 キティ:いい。気にしてないから。 キティ:いただきます。 ラム:どうぞ。召し上がれ。 キティ:(咀嚼しながら)……もっふもっふ。(※そのまんま読んでくれてry) ラム:…………。 キティ:(咀嚼しながら)……あぐあぐ。はぐはぐはぐ。(※そのまんまry) ラム:…………。 キティ:……なに。あまりじろじろ見ないで。 ラム:うん。 ラム:おいしい? キティ。 キティ:…………。 キティ:……うん。(小声で) ラム:よかった。 0:間。 キティ:ごちそうさま。 ラム:おそまつさまでした。後片づけ、しちゃうね。 キティ:よろしく。 キティ:じゃ、わたしは帰るから。 ラム:あれ、もう? もっとゆっくりしていけばいいのに。 キティ:こうしてまた一人、てごめ星人の魔の手に落ちる少女が。 ラム:てごめ星人!? ラム:僕のこと? キティ!? キティ:こっち見ないで。妊娠する。 ラム:見ただけで妊娠するわけがないよねぇ!? キティ:それがてごめ星人の特殊能力……こわい……。 ラム:ないよ。ないから。 キティ:そうやってシルヴィアのことも辱(はずかし)めたんだ。 キティ:なにも知らないシルヴィアに、おしべとめしべの話を延々と聞かせたんだ。 キティ:かわいそうなシルヴィア……。 ラム:今日のきみは引っ張るね!? きみのなかで僕がどういう扱いなのかを詳しく聞きたいな! キティ:冗談。ラム、慌てすぎ。変なの。 ラム:わかってはいるけど心臓に悪いよキティ……。 キティ:ふふ。ごめん。 キティ:でも、今日は本当に疲れてるの。敵さん、今日は無駄に頭数が多かったから。 キティ:人数が多いと本当に大変。『まぶしい』し『うるさい』し『匂う』し。『肌もぴりぴりする』し。 ラム:あ……そうなんだ。大変だったね。 ラム:ごめんね、そんなときに、いろいろイヤな思いまでさせて。 キティ:いい。慣れっこだし。 キティ:それに、ラムはいてくれるだけでいい。 キティ:ラムといるときは……ラムは、安心するから。 ラム:……ありがとう。僕も、キティと一緒にいるとすごく落ち着くし、うれしいよ。 ラム:正直言うと、キティが戦場に出ていくたびに心配なんだ。キティが強いのは、そりゃ知ってるけど……。 ラム:僕にとってのキティは、『兵器』なんかじゃない。恩人で、普通の女の子だ。 キティ:ラム。 ラム:戦場に出ていくたびに心配で、無事に帰ってくるだけでその何倍も安心する。 ラム:きみが今日も無事で、元気で、僕の隣にいてくれるだけでいい。 ラム:僕は、キティのことが本当に大切だから。 キティ:最後がちょっと聞き取れなかった。 ラム:え? 僕は、キティのことが本当に大切だから……。 キティ:もう一度。 ラム:キティのことが本当に大切……。 キティ:もう一度。 ラム:キティのことが! 本当に! 大切だから!! キティ:ラム、顔が赤い。 ラム:誰のせいだよ! キティ:ふふ。 キティ:ありがとう。大丈夫、わかってるから。 キティ:ラムのことは信じてるから。 キティ:ラムの気持ち――ちゃんと、届いてる。 ラム:っ……。 ラム:キティだって。 キティ:? ラム:キティだって。顔、真っ赤じゃないか。 キティ:……そんなこと、ない。 ラム:そんなことあるよ。 キティ:そんなことないってば。 ラム:ある。 キティ:ない! キティ:(顔を背けて)帰る。 ラム:うん。 ラム:明日は? キティ:…………。 キティ:……また、明日。 ラム:うん。おやすみ、キティ。 キティ:……おやすみ。ラム。 0:第二話へ続く。