台本概要
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タイトル | コンビニ強盗・ゴートゥーヘル…? |
---|---|
作者名 | M2酸 (@CaFeLaTtE_ASK) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 4人用台本(男1、不問3) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
コンビニ「ヘヴン・ヘイヴン」でのとある一幕。 コンビニ強盗が、コンビニを襲う…! と、思いきや、新人バイトの子が拳銃を強盗に突きつけ返してきて…? 【アドリブ:だいたいOK】世界観をぶち壊さない程度なら何やってもいいです。 【キャラの性別変更:OK】一人称をそれに合わせて変えたりしてもOKです。 266 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
宮元 | 男 | 124 | コンビニ「ヘブン・ヘイヴン」のバイト。バイト歴7年。いろんな仕事を任されており、本部から正社員として雇われる予定。次期店長候補とのうわさもあるが、V系バンドで活躍する配偶者を持っている。どっちかって言うとV系バンドをやっている配偶者の方が稼ぎがいいので、自身の小遣い稼ぎと配偶者へのプレゼント代を稼ぐためにやっている。配偶者はバイトをしていることに対して「あーしのためにやってることなら別になんだっていいよ~。」とのこと。ちなみに付き合い始めた理由は音楽の趣味が合うから。尻には敷かれてない。 |
小鳥遊 | 不問 | 147 | コンビニ「ヘブン・ヘイヴン」の新人バイト。入ってきておよそ2カ月。今回の騒動の発端。20歳という若さながら華麗な武術を披露した理由、それは幼い頃に暗殺術を叩きこまれた、「殺し屋(ヒットマン)」の末裔だったから。中学生2年からは転校生として一般人にまぎれ混んで生活していた。今回順当に一流大学に合格し、社会勉強のためバイトに。遊ぶ金欲しさにやっている暗殺活動は今も継続中。 |
松永 | 不問 | 92 | コンビニ「ヘブン・ヘイヴン」に強盗に来た人。齢27歳。拳銃を持って強盗しに来るが、小鳥遊のせいでメッタメタにされる。その後、バックルームのパイプ椅子に縛り付けられてしばらく昏睡状態になる。ちなみに拳銃は3Dプリンタで作った偽物。一応BB弾が打ち出せる。かつて会社に勤務していたが、自身のミスと会社内で渦巻いていた策略により首を切られる。やけを起こした結果がこれ。 |
加納 | 不問 | 39 | コンビニ「ヘブン・ヘイヴン」にやってきたお客。実は私服警官。松永が持っていたスマホが、衝撃を感知すると何らかの交通事故に遭ったとして警察や救急に連絡する仕組みになっていた。 事情はたまたま松永のスマホから聴いており(宮元がスマホの電話がつながっていることに気が付かずべらべら話してしまっていた)それで宮元たちを疑っている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:客が退店してドアが開き、ジングルがなる。
宮元:ありがとうございましたー。
小鳥遊:ありがとうございました~。
宮元:はぁ…疲れた。
小鳥遊:お疲れ様で~す。
宮元:ああ、お疲れ様。やっぱり深夜バイトは負担が大きいねぇ…。
小鳥遊:ですね~。昼夜逆転生活だと、リズムも崩れちゃいますよね。
宮元:まあ、分かってやってるからいいんだけど…。
小鳥遊:宮元先輩はどうしてバイトしてるんすか?
宮元:え?いやまぁ、自分のへそくり…というか、小遣い稼ぎのためだよ。
小鳥遊:ふ~ん。つまり「遊ぶ金欲しさにやってる」ってことっすね。
宮元:なんでそう強盗みたいな理由になるんだよ…。まあ、間違っちゃいないけど…。
小鳥遊:ってことは、共働きじゃないんすか?
宮元:ん?どうした?
小鳥遊:いや、薬指に指輪につけてるじゃないすか。だから先輩が頑張ってて、お相手さんが専業主フなのかと思いまして。
宮元:ああ、そういうことか。まあ共働きといえば、そうかもね。
小鳥遊:そうなんすね。
宮元:ほら、聞いたことない?『ブラック・テンペスト・シアター』って。
小鳥遊:そりゃあもちろん。ビジュアル系バンドの中でも最近また人気になってるヤツじゃないすか。
宮元:あれのメンバーのうち1人が…俺の結婚相手でね…。
小鳥遊:え、えぇぇぇぇ!?あんなに大ヒットしてるなら別に先輩が働く必要なくないすか?
宮元:だから言ったろ。「小遣い稼ぎ」のためって。
小鳥遊:まさか、尻に敷かれたりしてるんすか…?
宮元:いやいや、そんなことないよ。あくまで将来の投資も含めてバイトしているだけ。
小鳥遊:なんか、真面目って言うか、何というか…。
宮元:そういう君はどうなの?
小鳥遊:はい?自分が働いてる理由すか?
宮元:そうそう。それこそ「遊ぶ金欲しさにやった」とかじゃないの?
小鳥遊:い、いやいや!自分はちゃんと「社会勉強」のためっすから。
宮元:ホントか~?嘘は良くないぞ~?
小鳥遊:ほ、ホントっすよ。マジっす。大マジ。
宮元:大マジ…?
小鳥遊:そうそう、マジっすよ。「1浪して大学入ったら、意外とお金なくて苦戦してる」とかじゃないっすから!
宮元:…今がっつり言わなかった?
小鳥遊:あ、いや、その…
宮元:まあ、深堀はしないでおくけど…。
小鳥遊:は、はい…。
宮元:しかし…どうしますかねぇ。
小鳥遊:ああ、「例のアレ」ですか。
宮元:そうそう、「アレ」。
松永:(口をガムテープでふさがれて言葉にならない)ん~!ん~っ!
小鳥遊:なんか言おうとしてますよ。
宮元:ああ…全く…。
小鳥遊:なんでこんなことになったんすかね。
宮元:半分君のせいですけど…。
小鳥遊:それは…すんませんした。
宮元:くそぉ…他愛のない話をしてもやっぱり落ち着かない…。
小鳥遊:ま、まあまあ…。こういう日もあるっすよ!
宮元:普 通 は こ ん な 日 は 無 い の !
小鳥遊:あ、アハハ…。はぁ…。
宮元:ああ、そうだ、思い返せばそうだ…。
0:少し前_
宮元:いらっしゃいませ~。
小鳥遊:お疲れ様でーす。
宮元:ああ、小鳥遊君か…。お疲れ。
小鳥遊:今日もお願いしま~す。
宮元:はい、よろしく。…って、従業員は裏の専用ドア通る決まりでしょ。
小鳥遊:えへへ、すんませんっす。でも、お腹すいちゃったんで何か買ってから入ろうかと…。
宮元:…なるほど、そういうこと。
小鳥遊:というわけで、今は買い物客ってことで…。
0:(その時、ドアが開く。入店音が鳴り響いた。)
宮元:いらっしゃいませ~。
小鳥遊:いらっしゃいませ~…って、おっと。
宮元:ははは、今の小鳥遊君はお客様なんだから、挨拶いらなかったでしょ。
小鳥遊:すんません、つい…。
松永:…これ、お願いします。
宮元:いらっしゃいませ、レジ袋ご利用ですか?
松永:はい。あと、割りばしと…
宮元:割り箸お付けしますね。
松永:あとタバコで、114番。
宮元:114番を1箱ですねー。
松永:はい、それと…。
宮元:それと?
松永:これを。
0:(松永の着ていたコートから拳銃が出てくる)
宮元:え。
松永:あと、私が欲しいのは、レジのお金です。
宮元:お客様ー?ちょっとそういったことにはお答えできかねます…と、いいますか…何といいますか…
松永:もしかして、拳銃がおもちゃだと思ってます?
宮元:…正直なところ…はい…。
松永:…そうですか。
0:(その瞬間、松永が床に向かって引金を引く。かすかに火花が走り、破裂音が響く。)
宮元:ひぃ!?
松永:これで、信じてくれましたかね?
宮元:は、はい…。
松永:でしたら、レジのお金を、お願いします。
宮元:か、構いませんが…こちらは防犯カメラで録画されていまして…。
松永:いいですよ別に。今システム障害起きてるらしいじゃないですか。
宮元:え、そうなの…?
松永:公式ホームページでお詫びが出てましたよ。なのでお金貰った後はバックステージのパソコン触らせてもらいますから。
宮元:か、かしこまりました、それでは_
0:(そのとき、もう一人、拳銃を構えた人間がやってきた。)
小鳥遊:うるさいんですよ。買い物の邪魔しないでくれます?
松永:…は?お前、誰?
小鳥遊:社会のクズに個人情報なんか渡したくないんですよ。
松永:…撃たれに来るなんて、本当に間抜け。
小鳥遊:そうだね。本当に間抜けだよね。自分も「実銃」を持ってる人間にここまで近づいたりしない。
松永:…は?
小鳥遊:アンタが持ってるそれは「偽物(フェイク)」。
松永:ッ!お前に何がわかるんだ_
小鳥遊:分かるんだよ。これ、「本物」だもん。試してみる?
松永:…くな…。
小鳥遊:え?
松永:嘘つくな!そんなおもちゃみたいな小さい拳銃なんかが_
0:(松永の言うことを遮り、小鳥遊は引金をためらうことなく引いた。さっきよりも火花が大きく見えて、比較にならないほど、うるさかった。)
宮元:ひぃ!?
松永:ッ!?
小鳥遊:ね~?分かったでしょ?これは、イギリス製の「マービン114」ってやつで、小型だけど殺傷力高いんすよ。アナタが真似したのと偶然にも同じですけど、御存じですよね?
松永:…。
小鳥遊:分かったら、さっさと出ていってくれます?今回の件は黙っといてあげますから。
松永:…分かった…。
小鳥遊:ふーん。意外と聞き分けいいんすね。
松永:でも、このナイフが許すかな!?
宮元:ええぇっ!?ヤバい!小鳥遊君危ない!
小鳥遊:っ…!(舌打ち)
松永:邪魔なんだよ_
0:その瞬間、小鳥遊が潜り抜けて、松永の手にあったナイフを叩き落とす。その間わずか0・5秒。
松永:えっ…!?
0:後ろに回り、小鳥遊が松永の背中を取った。
小鳥遊:(小声)あ~あ。宮元先輩の前でこんな姿、見せたくなかったんすけどねぇ…。
0:手刀、首の後ろ、松永。倒れる。床に。ばたり。
宮元:…
宮元:何が…、起きたの…?
小鳥遊:…。ごめんなさい。宮元先輩。
宮元:…これちょっと、ごめんなさいじゃ、すまないんだけど…。
宮元:ていうか、実銃持ってるって何…?普通に銃刀法違反じゃない…?
小鳥遊:…。
宮元:ねえ、小鳥遊君、何か言って_
小鳥遊:大人しくしてもらえませんか。
0:(刹那、小鳥遊が宮元の後ろに回り、頭部に拳銃を突きつける。)
宮元:ひぃ!?助かったと思ったら助かってないぃ!?
小鳥遊:…。別に、自分は先輩を殺したりしたいわけじゃありません。
宮元:そ、そうなの…かい?
小鳥遊:代わりにドッキリでもないので、これは現実とだけ言っておきます。
宮元:ああ、絶望だぁ…。
小鳥遊:自分の指示に従ってくれれば、それでいいはずなので。
宮元:…。ねえ。
小鳥遊:なんですか。
宮元:ひとつ訊いても、いいかい…?
小鳥遊:…いいでしょう。ひとつだけなら。
宮元:君は…何者なんだ…?
小鳥遊:…やっぱり、気になりますよね。
宮元:…答えたくないならいい。小鳥遊君の気持ちを尊重するから。
小鳥遊:…分かりました。宮元先輩になら伝えてもよさそうですし。
宮元:…。ありがとう。
小鳥遊:…自分、実は「ヒットマン」として活動しているんです。
宮元:え…。「ひっとまん」…?
小鳥遊:はい。
宮元:つまり…その…。殺し屋さん?
小鳥遊:まあ、分かりやすくいうなら。
宮元:じゃあ、実銃を持っているのも…。
小鳥遊:ええ。非合法な組織ですので。
宮元:組織…?その、「ほにゃらら組」とか、暴力団みたいな?
小鳥遊:暴力団ではないんですが…。まあ、知る人ぞ知るみたいなところではあります。
宮元:そ、そう…なんだ…。
小鳥遊:_質疑応答は終わりです。自分の指示に、従ってくれますね?
宮元:もう1個だけ聞きたい。ムリならムリでいいから!
小鳥遊:…特別ですよ。
宮元:まさか…ターゲットが俺ですー、ってことないよね?
小鳥遊:それは…そうですね。今日は「そっち」の仕事終わりなので。
宮元:殺(あや)めてきたの!?
小鳥遊:ええ。それが?
宮元:いや、何も…。
小鳥遊:もう質問は無いですね。大人しく従ってくれます?
宮元:は、はい…。
小鳥遊:…分かりました。じゃあ…。
小鳥遊:この後の事、考えるっすよ。
宮元:あ、裏社会フォームから表の世界フォームに戻った。
小鳥遊:まず、このままだと絶対に足が付くっす。初めにこの強盗さんをバックヤードに隠しましょ。で、このコンビニのシステムは死んでるっぽいので、後でカメラの映像を改ざんするっす。
宮元:強盗撃退したはずなのに、こっちが滅茶苦茶悪いことしてるみたいだ…。
小鳥遊:いいから早くやるっすよ。まずは強盗さんを運んでっ…!
0:そして、今に至る
宮元:もうやだ、この仕事…。
小鳥遊:でも先輩もなんだかんだ乗り気だったじゃないですか。
宮元:隣に殺し屋がいると知ったら真面目にやる以外ないでしょうが。
宮元:…で、防犯カメラの映像、どうするの。
小鳥遊:自分の組織に優秀なハッカーがいるんすよ。映像はうまく加工して、パソコンにアクセスして、改ざん中っすよ。
宮元:…君たちの組織、どうなってんの?
小鳥遊:さあ?自分も良く知らないんすよねぇ。殺し屋は遊ぶ金欲しさにやってるんで。
宮元:遊ぶ金欲しさでやってるのがそっちかよ…。
小鳥遊:さて、そろそろ…
松永:(口をガムテープでふさがれて言葉にならない)ん~!ん~っ!
小鳥遊:そろそろ口を開放しますか。アイマスクは…まだいいや。
宮元:その人を縛り付けるの、大分手馴れてたね…。
小鳥遊:まあこういうこと初めてじゃないんで。殺し屋って言ってもただ暗殺するだけじゃなくて、組織が指定したら生身のまま持ってこないといけないんすよ。
宮元:ああ、そう…。
小鳥遊:強盗さーん。ガムテープ剥がすんで、ちょっと痛いの我慢してくださいね~。
松永:ん!?んんん~~~~~~!?
小鳥遊:それー!べりべり~。
松永:ぷはっ!痛い痛い痛い!
小鳥遊:あ、それは申し訳ないっす…。
松永:痛ぇよ!謝って済むことじゃねぇだろ!
小鳥遊:いやいや、大事なサンプルに傷が付いたらまずいじゃないすか。
松永:サンプルってなんだよ!?余計な心配だよっ!この、このっ!
小鳥遊:ああ、暴れたら!
0:パイプ椅子に縛られた松永が暴れだし、ガタガタと跳ねる。結局倒れた。
松永:痛ぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
小鳥遊:ああ、言わんこっちゃない…。
宮元:うわ痛そ…。
松永:くっ…。分かった悪かったよ…。
小鳥遊:ん?何がすか?
松永:強盗したのは本当に悪かったと思ってる…。でも、こうするしかなかったんだよ…。
小鳥遊:…。聞いてないっすよ、そんなこと。
松永:ああ知ってるよ。でもうっぷん晴らしに言わせてくれ。
小鳥遊:…。勝手にしてください。
松永:少し前まで、会社員だったんだよ。建物の図面を作る会社だ。
小鳥遊:…。それで?
松永:いつも通り上司に言われたとおりに図面を作ってたんだけど、明らかにおかしかった。
松永:誰が見ても明白なミスでも、上司は「これでいい」の一点張り。上司が責任を取るって言うもんだから、そのままクライアントに出したんだよ。
松永:そしたらなんだよ…。クライアントもクライアントでそのまま作りやがった。そしてその責任がこっちにあるって…。図面作ったやつが悪いって…。
小鳥遊:…。ふーん。
松永:辞めてせいせいした…?そんなわけない。損害賠償請求されるし、もうどうしていいか分かんなくなって…!
小鳥遊:それ、関係あります?
松永:え。
小鳥遊:強盗さんがクビになったことと、強盗していい理由。関係あります?無いっすよね?
松永:それは…。
小鳥遊:おかしいと思ったらまず疑うことを覚えなきゃ。それで、常に防衛線を張らないとダメっす。
小鳥遊:そりゃあ、まあ…。すぐ気づけたら悩まなくていいっすけど…。みんながみんないい人とは限らないっすから。
松永:…そうですね。
小鳥遊:自分は今まで人の良さそうな悪人を何度も見てきましたから。人間には裏表がある。それは、いろんな人から見て「良い人だな」と思われたいがための、本能なんすよ。
松永:…。
小鳥遊:だからって、何も非合法な手段で抵抗しちゃダメっすよ。ま、殺し屋やってる自分が言うのも何ですけどね…。
松永:…どうして足を洗わねぇんだ?
小鳥遊:ん~…。自分はまあ、孤児院に捨てられてそれを組織に拾ってもらったんで、何というか、恩返しというか。
小鳥遊:その時に暗殺術を叩きこまれたんで、成り行きでこうなっちゃって。
小鳥遊:でも最近は組織の在り方も変わって、どっちかっていうと過去の罪を精算し始めてるとかなんとか。
小鳥遊:むやみやたらに暗殺業の依頼を受けていたあの頃が懐かしいっすね~…
松永:…普通の生活してみたかった、とか思わなかったのか?
小鳥遊:そりゃあ思いましたよ。ずーっと組織で鍛錬ばっかで、遊びなんてほとんどありませんでしたよ。
小鳥遊:だから、それだけ「普通に生きる」って何だろう、って思ったりもしましたし。
松永:…お前もお前で大変なんだな。
小鳥遊:お互い不運なことに巻き込まれたってことで。先輩の自分から言わせてもらうと、こういうときは案外何とかなるもんですよ。
松永:…ふっ。
小鳥遊:…何すか、どうして笑うんすか。
松永:いや、ふと考えたんだけど「殺し屋に諭されるコンビニ強盗」ってなんだよって思ってさ…。
松永:ホント情けないなぁって、思っただけ。
小鳥遊:…自分もまさかコンビニ強盗を諭すと思ってませんでした。
小鳥遊:それで_
宮元:小鳥遊君!まずい!
小鳥遊:宮元先輩、どうしたんすか?
宮元:警察の聞き込み調査が来ちゃったんだよ!
小鳥遊:ええ!?
松永:…ん?あぁっ!
小鳥遊:どうしたんすか!?
松永:確か、スマホ持ってて…。やっぱり、やっぱりそうだ!
宮元:スマホ?それがどうかしましたか?
松永:あのスマホ、確か強い衝撃を感知すると、すぐに警察とか救急とかにSOSの電話が自動的に発信する仕組みになってるんだよ!
小鳥遊:確か交通事故とかにあったとき用のやつっすよね。それがどうして…
小鳥遊:あ…ああああああっ!!
宮元:…なんか心当たりあるのか?
小鳥遊:ほら、あの時!
0:ちょっと前
小鳥遊:それー!べりべり~。
松永:ぷはっ!痛い痛い痛い!
小鳥遊:あ、それは申し訳ないっす…。
松永:痛ぇよ!謝って済むことじゃねぇだろ!
小鳥遊:いやいや、大事なサンプルに傷が付いたらまずいじゃないすか。
松永:サンプルってなんだよ!?余計な心配だよっ!この、このっ!
小鳥遊:ああ、暴れたら!
0:パイプ椅子に縛られた松永が暴れだし、ガタガタと跳ねる。結局倒れた。
松永:痛ぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
小鳥遊:ああ、言わんこっちゃない…。
宮元:うわ痛そ…。
0:そして今
宮元:あああああああ!アレかよ!
小鳥遊:ちょっと待って、てことは…
松永:多分、強盗とかそいつ監禁したとか、殺し屋のこととか…電話を通してバレてる可能性が…ある。
小鳥遊:ぎゃあああああああ!?そうなったら自分がようやく手に入れたビューティフルライフがバッドエンドじゃないですか!?
宮元:お、おちつけおちつけ、ままままだ手段はある!
松永:どんな手段が?
宮元:警察も同じように監禁して…
小鳥遊:ダメっすよ!そんなのバレるにきまってるっす!さすがに組織を持っても無理っす!
松永:じゃあどうしたら…!
宮元:あの…強盗さん!
松永:は、はいいい!?
宮元:これ、着てください!
松永:これ、このコンビニの制服!?
宮元:いいから早く!あなたは今から従業員です!
松永:え、ええええ!?
小鳥遊:そんな突貫工事バレますって!先輩!
宮元:でも、これしかないんだよ!
松永:…やればいいんだな…?
小鳥遊:え?
松永:もし、何かあったら…自分が全責任負いますんで!
小鳥遊:はいぃ!?
宮元:ほら、小鳥遊君行くよ!
小鳥遊:え、ちょと、先輩!?先ぱああああぁぁい!
0:コンビニ「ヘヴン・ヘイヴン」入り口前
加納:先ほど通報があって参りました。私、警察官の加納です。
宮元:あ、どうも、スタッフの宮元です…
小鳥遊:同じくスタッフの…小鳥遊です。
松永:同じく…松永です…。
加納:皆さんはこちらの店舗の従業員なんですか?
宮元:は、はい。
加納:皆さん、お怪我はありませんか?
小鳥遊:はい!もうご覧の通り!
加納:…そうですか。
加納:…ん?
小鳥遊:あ、あの~何かありましたか?
加納:いや、松永さん…でしたっけ?
松永:は、はい。
加納:あなただけ名札が無いのがちょっと気になりまして。
松永:え、えと…それは…
宮元:ああ、すいません~、ちょっとこちらが本社に提出する資料を忘れていまして、名札が届いてないんです。
小鳥遊:そ、そうそう!そうなんすよ!
宮元:でも、バイトが今日からになってたし、そのまま返すわけにもいかないから…一旦制服着てもらって、レジ以外のバイトを!ってことで…はい。
加納:なるほど。それなら納得です。
宮元:(小声)た、助かった~。
加納:ところで…強盗はもう逃げられましたか?
松永:そ、そうです、ね~、アハハ…。
宮元:はい、逃げられてしまって…ですね…。
加納:それと、あと…聞き間違いでなければ殺し屋もいませんでしたか?
小鳥遊:え、え!?いました、かね~?聞き間違いだと思います~。アハハ…。
加納:そうですか…。では何と聞き間違えたんでしょうねぇ~…。
宮元:…
宮元:「黒・シア」…
加納:「くろしあ」…?
宮元:「黒・シア」ですよ!ほら!あれ!人気バンド!
加納:あ、あぁ!『ブラック・テンペスト・シアター』のことですよね!
松永:そ、そうそう!そのーみんな大ファンでして!
小鳥遊:そ、そうなんですよ!盛り上がっちゃって!
加納:_その割には「暗殺業」とか聞こえてきたんですけども…
小鳥遊:それは、その…「黒シア」と「殺し屋」って語感似てますよね。
加納:はい。似てますね。
小鳥遊:それに掛けて、自分たちが歌を歌ったりとかカバー演奏したりするのを「暗殺業」とか呼んでるんすよ!
加納:なるほど。…ご事情は分かりました。しかし、そうなると強盗の行方が気になりますね…。店内に入らせていただいても?
宮元:ど、どうして、ですか?
加納:防犯カメラの映像を確認したいんです。
宮元:え、それは…。ちょっと今、本社のシステムが不調みたいでして…
加納:ええ、知っています。でも店舗ごとに記録はされていますよね。
宮元:そ、それは…。
宮元:(小声)ちょっ、ちょっと、小鳥遊君?
小鳥遊:(小声)どうしたんすか?先輩?
宮元:(小声)防犯カメラの件、うまく行ったの?
小鳥遊:(小声)え、ええ。ちゃんとやってくれてはいるみたいですけど…。
加納:ん?何を話しているんです。
宮元:あ、いえ!何も…。見てもらっていいですよ。さあ~どうぞ~。
加納:分かりました。では…。
松永:あわわわわ…
小鳥遊:(小声)大丈夫です。自分たちが上手くやってるんで。
松永:で、でも…。
小鳥遊:(小声)落ち着いてください。大丈夫ですから。
加納:んー…。特にはみつかりませんねぇ。
宮元:そ、そうですか…。
加納:しかし、妙ですねぇ…。
小鳥遊:な、何がっすか?
加納:「強盗が入りに来たシーン」もないんですよねぇ…。
小鳥遊:えっ!?
宮元:そ、それってつまり…。
加納:もしかして…。映像を改ざんしたのでは…?
宮元:い、いや~…。でもそんな証拠、無いですよね…?
加納:証拠とは?
宮元:だから…私たちが改ざんしたっていう証拠なんて…どこにも…。
松永:ッ!
小鳥遊:あ、ちょ、どこ行くんすか!?
松永:この度はッー!本当にッー!申し訳ございませんでしたあああァァァァァーー!
加納:え?
小鳥遊:え、えええええええええ!?
宮元:ちょちょちょちょちょ、ちょっと松永さん!?
松永:ごめんなさい…ごめんなさい!映像を改ざんしたのは私なんですぅうう!
加納:え、ええええ!?
松永:あと、強盗が来たって言いましたよね…?
加納:ま、まさか…
松永:強盗は…わたしですぅうううう!
加納:なんだってえええええ!?
小鳥遊:な、何言ってんすか!?まさか、自分たちのこと売る気じゃないっすよね!?
松永:うう、うう…すんません…。すいませんでした…。会社で失敗しちゃってぇ…。上司に責任擦り付けられてぇ…!
松永:本当に気の迷いで…。この2人も全然関係なくて!すんませんでしたぁ!
加納:…。そうですか。ちょっと待っていてください。
松永:はい…。
小鳥遊:ど、どうなるんですかね…。
宮元:さ、さぁ…。
加納:お待たせしました。松永さんと言いましたか。
松永:は、はい…。
加納:残念ですが、貴方を見逃すわけにはいかないようです。
松永:そうですか…。
加納:ですが、ここには、コンビニのスタッフが2人と、警察が1人、そして_
加納:ただのコンビニ客が1人いる。
宮元:そ、それって…。
加納:ここに、強盗は、いませんでした。
松永:え…?じゃあどうして…?
加納:あなたが務めていた会社、かなり法的によろしくないことをしていたみたいでしてね。
加納:松永さんには、その被害者としていろいろ関わることになると思います。
松永:じゃ、じゃあ…!
加納:あなたは犯罪者ではありません。あなたは、「可愛そうな一般人です」。
松永:ご、強盗の件は…?
加納:それは…。今回カメラからもそれらしい映像が出ませんでしたし、本社でシステムエラーが出てますからねぇ。
加納:強盗の被害が表ざたになることは無いんじゃないですか。
松永:あ、ああ…。ありがとうございます…!
加納:…。今回はシステムエラーだったから助かったものの、次は絶対にこんなことしないでくださいね。
松永:は、はい…。
小鳥遊:ね、言ったでしょ。案外何とかなるって。
宮元:…。小鳥遊君、何の話?
小鳥遊:先輩からのアドバイスです。
宮元:君大学生でしょ…。
小鳥遊:関係ありませんよ。散々な道通ってきたのは自分なんすから。
松永:うぅ…ぐすっ…うわぁああああ!!
加納:…この際あなたが本当に強盗しようとしていたかは分かりませんが、それは今後分かることでしょう。さあ、とりあえずこちらに。
松永:あの…。ちょっと待ってもらっていいですか?
加納:ええ。
松永:小鳥遊先輩…。
小鳥遊:うぇぇ!?何すか急に!?
宮元:俺じゃないんだ。
松永:本当にありがとうございました!また心を入れ替えてここに来ます!
小鳥遊:全く、気張りすぎっすよ。まあ、反省してるならいっか。
宮元:あの…。ホントに何話したの?
小鳥遊:それ宮元先輩に関係あります?
宮元:いや、まあ…。なんかごめん。
小鳥遊:分かれば良いんすよ。全く、後でハッカーにはきつく言っておかないとっすね。
宮元:お、おう…それは管轄外だから頼む。なんか、すげぇわ。
小鳥遊:はーい。
小鳥遊:…。元気でやるんだぞ。強盗さん。
0:3か月後
小鳥遊:宮元先輩、外に散ってた桜掃いてきたっすよ~。
宮元:お疲れ。ちょっと品出し手伝ってくれる?
小鳥遊:もちのロンっすよ。そういや、今日から新人が入るって聞いたんすけど。
宮元:お、アンテナ張られてたか。そうなんだ。今日から新人が来るって言っててな、そろそろ来るんだよ。
小鳥遊:そろそろっすか?こんな夜遅くに?
宮元:そうなんだよ。わざわざ夜がいいって言ってたし。
0:その時、裏手のドアが開く。
小鳥遊:あ、お疲れ様っす~…って、ええ!?
宮元:ああ、ようこそ。
松永:今日から、よろしくお願いします!
小鳥遊:よ、よろしくお願いいたします…。
小鳥遊:ちょっと、先輩!?
宮元:ん、何?
小鳥遊:この前の強盗さんじゃないっすか!?
宮元:え?あの事件の後、結局無罪放免で、ちゃんと会社からもちょっとだけ賠償金か何かを貰ったらしいよ。
小鳥遊:いや、それはいいんすけど…。何というか…バツが悪いじゃないっすか!
松永:もしかして、あの時のこと?
小鳥遊:え、ええ、まあ。
松永:あれはあんまり気にしてないから。よろしくお願いします!
小鳥遊:こっちが気にするんだってば…。
宮元:ははは、まあこれで本当に小鳥遊君は先輩になるわけだし、色々教えてあげてよ。
松永:よろしければ、あの時の格闘も教えてほしいです!
小鳥遊:教えないっすからね!?あれで自分も組織からこってり絞られたんすからね!?
松永:とにかく、よろしくお願いします!
小鳥遊:あぁ、ホントにやりにくくなるっすね…。
宮元:ま、まあ、ちょっとずつ教えてやってくれ。経歴書見たけど、かなり仕事できるっぽいから。
小鳥遊:そうなんすか?まあ、仕事上しょうがないっすね…。
松永:色々教えてください!お願いします!
小鳥遊:あーはいはい、分かったすよ…。とりあえず最初は_
宮元:さて、今日も頑張りますかね…。
0:入店音が鳴り響く。
宮元:いらっしゃいませー!
0:END
0:客が退店してドアが開き、ジングルがなる。
宮元:ありがとうございましたー。
小鳥遊:ありがとうございました~。
宮元:はぁ…疲れた。
小鳥遊:お疲れ様で~す。
宮元:ああ、お疲れ様。やっぱり深夜バイトは負担が大きいねぇ…。
小鳥遊:ですね~。昼夜逆転生活だと、リズムも崩れちゃいますよね。
宮元:まあ、分かってやってるからいいんだけど…。
小鳥遊:宮元先輩はどうしてバイトしてるんすか?
宮元:え?いやまぁ、自分のへそくり…というか、小遣い稼ぎのためだよ。
小鳥遊:ふ~ん。つまり「遊ぶ金欲しさにやってる」ってことっすね。
宮元:なんでそう強盗みたいな理由になるんだよ…。まあ、間違っちゃいないけど…。
小鳥遊:ってことは、共働きじゃないんすか?
宮元:ん?どうした?
小鳥遊:いや、薬指に指輪につけてるじゃないすか。だから先輩が頑張ってて、お相手さんが専業主フなのかと思いまして。
宮元:ああ、そういうことか。まあ共働きといえば、そうかもね。
小鳥遊:そうなんすね。
宮元:ほら、聞いたことない?『ブラック・テンペスト・シアター』って。
小鳥遊:そりゃあもちろん。ビジュアル系バンドの中でも最近また人気になってるヤツじゃないすか。
宮元:あれのメンバーのうち1人が…俺の結婚相手でね…。
小鳥遊:え、えぇぇぇぇ!?あんなに大ヒットしてるなら別に先輩が働く必要なくないすか?
宮元:だから言ったろ。「小遣い稼ぎ」のためって。
小鳥遊:まさか、尻に敷かれたりしてるんすか…?
宮元:いやいや、そんなことないよ。あくまで将来の投資も含めてバイトしているだけ。
小鳥遊:なんか、真面目って言うか、何というか…。
宮元:そういう君はどうなの?
小鳥遊:はい?自分が働いてる理由すか?
宮元:そうそう。それこそ「遊ぶ金欲しさにやった」とかじゃないの?
小鳥遊:い、いやいや!自分はちゃんと「社会勉強」のためっすから。
宮元:ホントか~?嘘は良くないぞ~?
小鳥遊:ほ、ホントっすよ。マジっす。大マジ。
宮元:大マジ…?
小鳥遊:そうそう、マジっすよ。「1浪して大学入ったら、意外とお金なくて苦戦してる」とかじゃないっすから!
宮元:…今がっつり言わなかった?
小鳥遊:あ、いや、その…
宮元:まあ、深堀はしないでおくけど…。
小鳥遊:は、はい…。
宮元:しかし…どうしますかねぇ。
小鳥遊:ああ、「例のアレ」ですか。
宮元:そうそう、「アレ」。
松永:(口をガムテープでふさがれて言葉にならない)ん~!ん~っ!
小鳥遊:なんか言おうとしてますよ。
宮元:ああ…全く…。
小鳥遊:なんでこんなことになったんすかね。
宮元:半分君のせいですけど…。
小鳥遊:それは…すんませんした。
宮元:くそぉ…他愛のない話をしてもやっぱり落ち着かない…。
小鳥遊:ま、まあまあ…。こういう日もあるっすよ!
宮元:普 通 は こ ん な 日 は 無 い の !
小鳥遊:あ、アハハ…。はぁ…。
宮元:ああ、そうだ、思い返せばそうだ…。
0:少し前_
宮元:いらっしゃいませ~。
小鳥遊:お疲れ様でーす。
宮元:ああ、小鳥遊君か…。お疲れ。
小鳥遊:今日もお願いしま~す。
宮元:はい、よろしく。…って、従業員は裏の専用ドア通る決まりでしょ。
小鳥遊:えへへ、すんませんっす。でも、お腹すいちゃったんで何か買ってから入ろうかと…。
宮元:…なるほど、そういうこと。
小鳥遊:というわけで、今は買い物客ってことで…。
0:(その時、ドアが開く。入店音が鳴り響いた。)
宮元:いらっしゃいませ~。
小鳥遊:いらっしゃいませ~…って、おっと。
宮元:ははは、今の小鳥遊君はお客様なんだから、挨拶いらなかったでしょ。
小鳥遊:すんません、つい…。
松永:…これ、お願いします。
宮元:いらっしゃいませ、レジ袋ご利用ですか?
松永:はい。あと、割りばしと…
宮元:割り箸お付けしますね。
松永:あとタバコで、114番。
宮元:114番を1箱ですねー。
松永:はい、それと…。
宮元:それと?
松永:これを。
0:(松永の着ていたコートから拳銃が出てくる)
宮元:え。
松永:あと、私が欲しいのは、レジのお金です。
宮元:お客様ー?ちょっとそういったことにはお答えできかねます…と、いいますか…何といいますか…
松永:もしかして、拳銃がおもちゃだと思ってます?
宮元:…正直なところ…はい…。
松永:…そうですか。
0:(その瞬間、松永が床に向かって引金を引く。かすかに火花が走り、破裂音が響く。)
宮元:ひぃ!?
松永:これで、信じてくれましたかね?
宮元:は、はい…。
松永:でしたら、レジのお金を、お願いします。
宮元:か、構いませんが…こちらは防犯カメラで録画されていまして…。
松永:いいですよ別に。今システム障害起きてるらしいじゃないですか。
宮元:え、そうなの…?
松永:公式ホームページでお詫びが出てましたよ。なのでお金貰った後はバックステージのパソコン触らせてもらいますから。
宮元:か、かしこまりました、それでは_
0:(そのとき、もう一人、拳銃を構えた人間がやってきた。)
小鳥遊:うるさいんですよ。買い物の邪魔しないでくれます?
松永:…は?お前、誰?
小鳥遊:社会のクズに個人情報なんか渡したくないんですよ。
松永:…撃たれに来るなんて、本当に間抜け。
小鳥遊:そうだね。本当に間抜けだよね。自分も「実銃」を持ってる人間にここまで近づいたりしない。
松永:…は?
小鳥遊:アンタが持ってるそれは「偽物(フェイク)」。
松永:ッ!お前に何がわかるんだ_
小鳥遊:分かるんだよ。これ、「本物」だもん。試してみる?
松永:…くな…。
小鳥遊:え?
松永:嘘つくな!そんなおもちゃみたいな小さい拳銃なんかが_
0:(松永の言うことを遮り、小鳥遊は引金をためらうことなく引いた。さっきよりも火花が大きく見えて、比較にならないほど、うるさかった。)
宮元:ひぃ!?
松永:ッ!?
小鳥遊:ね~?分かったでしょ?これは、イギリス製の「マービン114」ってやつで、小型だけど殺傷力高いんすよ。アナタが真似したのと偶然にも同じですけど、御存じですよね?
松永:…。
小鳥遊:分かったら、さっさと出ていってくれます?今回の件は黙っといてあげますから。
松永:…分かった…。
小鳥遊:ふーん。意外と聞き分けいいんすね。
松永:でも、このナイフが許すかな!?
宮元:ええぇっ!?ヤバい!小鳥遊君危ない!
小鳥遊:っ…!(舌打ち)
松永:邪魔なんだよ_
0:その瞬間、小鳥遊が潜り抜けて、松永の手にあったナイフを叩き落とす。その間わずか0・5秒。
松永:えっ…!?
0:後ろに回り、小鳥遊が松永の背中を取った。
小鳥遊:(小声)あ~あ。宮元先輩の前でこんな姿、見せたくなかったんすけどねぇ…。
0:手刀、首の後ろ、松永。倒れる。床に。ばたり。
宮元:…
宮元:何が…、起きたの…?
小鳥遊:…。ごめんなさい。宮元先輩。
宮元:…これちょっと、ごめんなさいじゃ、すまないんだけど…。
宮元:ていうか、実銃持ってるって何…?普通に銃刀法違反じゃない…?
小鳥遊:…。
宮元:ねえ、小鳥遊君、何か言って_
小鳥遊:大人しくしてもらえませんか。
0:(刹那、小鳥遊が宮元の後ろに回り、頭部に拳銃を突きつける。)
宮元:ひぃ!?助かったと思ったら助かってないぃ!?
小鳥遊:…。別に、自分は先輩を殺したりしたいわけじゃありません。
宮元:そ、そうなの…かい?
小鳥遊:代わりにドッキリでもないので、これは現実とだけ言っておきます。
宮元:ああ、絶望だぁ…。
小鳥遊:自分の指示に従ってくれれば、それでいいはずなので。
宮元:…。ねえ。
小鳥遊:なんですか。
宮元:ひとつ訊いても、いいかい…?
小鳥遊:…いいでしょう。ひとつだけなら。
宮元:君は…何者なんだ…?
小鳥遊:…やっぱり、気になりますよね。
宮元:…答えたくないならいい。小鳥遊君の気持ちを尊重するから。
小鳥遊:…分かりました。宮元先輩になら伝えてもよさそうですし。
宮元:…。ありがとう。
小鳥遊:…自分、実は「ヒットマン」として活動しているんです。
宮元:え…。「ひっとまん」…?
小鳥遊:はい。
宮元:つまり…その…。殺し屋さん?
小鳥遊:まあ、分かりやすくいうなら。
宮元:じゃあ、実銃を持っているのも…。
小鳥遊:ええ。非合法な組織ですので。
宮元:組織…?その、「ほにゃらら組」とか、暴力団みたいな?
小鳥遊:暴力団ではないんですが…。まあ、知る人ぞ知るみたいなところではあります。
宮元:そ、そう…なんだ…。
小鳥遊:_質疑応答は終わりです。自分の指示に、従ってくれますね?
宮元:もう1個だけ聞きたい。ムリならムリでいいから!
小鳥遊:…特別ですよ。
宮元:まさか…ターゲットが俺ですー、ってことないよね?
小鳥遊:それは…そうですね。今日は「そっち」の仕事終わりなので。
宮元:殺(あや)めてきたの!?
小鳥遊:ええ。それが?
宮元:いや、何も…。
小鳥遊:もう質問は無いですね。大人しく従ってくれます?
宮元:は、はい…。
小鳥遊:…分かりました。じゃあ…。
小鳥遊:この後の事、考えるっすよ。
宮元:あ、裏社会フォームから表の世界フォームに戻った。
小鳥遊:まず、このままだと絶対に足が付くっす。初めにこの強盗さんをバックヤードに隠しましょ。で、このコンビニのシステムは死んでるっぽいので、後でカメラの映像を改ざんするっす。
宮元:強盗撃退したはずなのに、こっちが滅茶苦茶悪いことしてるみたいだ…。
小鳥遊:いいから早くやるっすよ。まずは強盗さんを運んでっ…!
0:そして、今に至る
宮元:もうやだ、この仕事…。
小鳥遊:でも先輩もなんだかんだ乗り気だったじゃないですか。
宮元:隣に殺し屋がいると知ったら真面目にやる以外ないでしょうが。
宮元:…で、防犯カメラの映像、どうするの。
小鳥遊:自分の組織に優秀なハッカーがいるんすよ。映像はうまく加工して、パソコンにアクセスして、改ざん中っすよ。
宮元:…君たちの組織、どうなってんの?
小鳥遊:さあ?自分も良く知らないんすよねぇ。殺し屋は遊ぶ金欲しさにやってるんで。
宮元:遊ぶ金欲しさでやってるのがそっちかよ…。
小鳥遊:さて、そろそろ…
松永:(口をガムテープでふさがれて言葉にならない)ん~!ん~っ!
小鳥遊:そろそろ口を開放しますか。アイマスクは…まだいいや。
宮元:その人を縛り付けるの、大分手馴れてたね…。
小鳥遊:まあこういうこと初めてじゃないんで。殺し屋って言ってもただ暗殺するだけじゃなくて、組織が指定したら生身のまま持ってこないといけないんすよ。
宮元:ああ、そう…。
小鳥遊:強盗さーん。ガムテープ剥がすんで、ちょっと痛いの我慢してくださいね~。
松永:ん!?んんん~~~~~~!?
小鳥遊:それー!べりべり~。
松永:ぷはっ!痛い痛い痛い!
小鳥遊:あ、それは申し訳ないっす…。
松永:痛ぇよ!謝って済むことじゃねぇだろ!
小鳥遊:いやいや、大事なサンプルに傷が付いたらまずいじゃないすか。
松永:サンプルってなんだよ!?余計な心配だよっ!この、このっ!
小鳥遊:ああ、暴れたら!
0:パイプ椅子に縛られた松永が暴れだし、ガタガタと跳ねる。結局倒れた。
松永:痛ぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
小鳥遊:ああ、言わんこっちゃない…。
宮元:うわ痛そ…。
松永:くっ…。分かった悪かったよ…。
小鳥遊:ん?何がすか?
松永:強盗したのは本当に悪かったと思ってる…。でも、こうするしかなかったんだよ…。
小鳥遊:…。聞いてないっすよ、そんなこと。
松永:ああ知ってるよ。でもうっぷん晴らしに言わせてくれ。
小鳥遊:…。勝手にしてください。
松永:少し前まで、会社員だったんだよ。建物の図面を作る会社だ。
小鳥遊:…。それで?
松永:いつも通り上司に言われたとおりに図面を作ってたんだけど、明らかにおかしかった。
松永:誰が見ても明白なミスでも、上司は「これでいい」の一点張り。上司が責任を取るって言うもんだから、そのままクライアントに出したんだよ。
松永:そしたらなんだよ…。クライアントもクライアントでそのまま作りやがった。そしてその責任がこっちにあるって…。図面作ったやつが悪いって…。
小鳥遊:…。ふーん。
松永:辞めてせいせいした…?そんなわけない。損害賠償請求されるし、もうどうしていいか分かんなくなって…!
小鳥遊:それ、関係あります?
松永:え。
小鳥遊:強盗さんがクビになったことと、強盗していい理由。関係あります?無いっすよね?
松永:それは…。
小鳥遊:おかしいと思ったらまず疑うことを覚えなきゃ。それで、常に防衛線を張らないとダメっす。
小鳥遊:そりゃあ、まあ…。すぐ気づけたら悩まなくていいっすけど…。みんながみんないい人とは限らないっすから。
松永:…そうですね。
小鳥遊:自分は今まで人の良さそうな悪人を何度も見てきましたから。人間には裏表がある。それは、いろんな人から見て「良い人だな」と思われたいがための、本能なんすよ。
松永:…。
小鳥遊:だからって、何も非合法な手段で抵抗しちゃダメっすよ。ま、殺し屋やってる自分が言うのも何ですけどね…。
松永:…どうして足を洗わねぇんだ?
小鳥遊:ん~…。自分はまあ、孤児院に捨てられてそれを組織に拾ってもらったんで、何というか、恩返しというか。
小鳥遊:その時に暗殺術を叩きこまれたんで、成り行きでこうなっちゃって。
小鳥遊:でも最近は組織の在り方も変わって、どっちかっていうと過去の罪を精算し始めてるとかなんとか。
小鳥遊:むやみやたらに暗殺業の依頼を受けていたあの頃が懐かしいっすね~…
松永:…普通の生活してみたかった、とか思わなかったのか?
小鳥遊:そりゃあ思いましたよ。ずーっと組織で鍛錬ばっかで、遊びなんてほとんどありませんでしたよ。
小鳥遊:だから、それだけ「普通に生きる」って何だろう、って思ったりもしましたし。
松永:…お前もお前で大変なんだな。
小鳥遊:お互い不運なことに巻き込まれたってことで。先輩の自分から言わせてもらうと、こういうときは案外何とかなるもんですよ。
松永:…ふっ。
小鳥遊:…何すか、どうして笑うんすか。
松永:いや、ふと考えたんだけど「殺し屋に諭されるコンビニ強盗」ってなんだよって思ってさ…。
松永:ホント情けないなぁって、思っただけ。
小鳥遊:…自分もまさかコンビニ強盗を諭すと思ってませんでした。
小鳥遊:それで_
宮元:小鳥遊君!まずい!
小鳥遊:宮元先輩、どうしたんすか?
宮元:警察の聞き込み調査が来ちゃったんだよ!
小鳥遊:ええ!?
松永:…ん?あぁっ!
小鳥遊:どうしたんすか!?
松永:確か、スマホ持ってて…。やっぱり、やっぱりそうだ!
宮元:スマホ?それがどうかしましたか?
松永:あのスマホ、確か強い衝撃を感知すると、すぐに警察とか救急とかにSOSの電話が自動的に発信する仕組みになってるんだよ!
小鳥遊:確か交通事故とかにあったとき用のやつっすよね。それがどうして…
小鳥遊:あ…ああああああっ!!
宮元:…なんか心当たりあるのか?
小鳥遊:ほら、あの時!
0:ちょっと前
小鳥遊:それー!べりべり~。
松永:ぷはっ!痛い痛い痛い!
小鳥遊:あ、それは申し訳ないっす…。
松永:痛ぇよ!謝って済むことじゃねぇだろ!
小鳥遊:いやいや、大事なサンプルに傷が付いたらまずいじゃないすか。
松永:サンプルってなんだよ!?余計な心配だよっ!この、このっ!
小鳥遊:ああ、暴れたら!
0:パイプ椅子に縛られた松永が暴れだし、ガタガタと跳ねる。結局倒れた。
松永:痛ぁぁぁぁぁぁぁぁい!!
小鳥遊:ああ、言わんこっちゃない…。
宮元:うわ痛そ…。
0:そして今
宮元:あああああああ!アレかよ!
小鳥遊:ちょっと待って、てことは…
松永:多分、強盗とかそいつ監禁したとか、殺し屋のこととか…電話を通してバレてる可能性が…ある。
小鳥遊:ぎゃあああああああ!?そうなったら自分がようやく手に入れたビューティフルライフがバッドエンドじゃないですか!?
宮元:お、おちつけおちつけ、ままままだ手段はある!
松永:どんな手段が?
宮元:警察も同じように監禁して…
小鳥遊:ダメっすよ!そんなのバレるにきまってるっす!さすがに組織を持っても無理っす!
松永:じゃあどうしたら…!
宮元:あの…強盗さん!
松永:は、はいいい!?
宮元:これ、着てください!
松永:これ、このコンビニの制服!?
宮元:いいから早く!あなたは今から従業員です!
松永:え、ええええ!?
小鳥遊:そんな突貫工事バレますって!先輩!
宮元:でも、これしかないんだよ!
松永:…やればいいんだな…?
小鳥遊:え?
松永:もし、何かあったら…自分が全責任負いますんで!
小鳥遊:はいぃ!?
宮元:ほら、小鳥遊君行くよ!
小鳥遊:え、ちょと、先輩!?先ぱああああぁぁい!
0:コンビニ「ヘヴン・ヘイヴン」入り口前
加納:先ほど通報があって参りました。私、警察官の加納です。
宮元:あ、どうも、スタッフの宮元です…
小鳥遊:同じくスタッフの…小鳥遊です。
松永:同じく…松永です…。
加納:皆さんはこちらの店舗の従業員なんですか?
宮元:は、はい。
加納:皆さん、お怪我はありませんか?
小鳥遊:はい!もうご覧の通り!
加納:…そうですか。
加納:…ん?
小鳥遊:あ、あの~何かありましたか?
加納:いや、松永さん…でしたっけ?
松永:は、はい。
加納:あなただけ名札が無いのがちょっと気になりまして。
松永:え、えと…それは…
宮元:ああ、すいません~、ちょっとこちらが本社に提出する資料を忘れていまして、名札が届いてないんです。
小鳥遊:そ、そうそう!そうなんすよ!
宮元:でも、バイトが今日からになってたし、そのまま返すわけにもいかないから…一旦制服着てもらって、レジ以外のバイトを!ってことで…はい。
加納:なるほど。それなら納得です。
宮元:(小声)た、助かった~。
加納:ところで…強盗はもう逃げられましたか?
松永:そ、そうです、ね~、アハハ…。
宮元:はい、逃げられてしまって…ですね…。
加納:それと、あと…聞き間違いでなければ殺し屋もいませんでしたか?
小鳥遊:え、え!?いました、かね~?聞き間違いだと思います~。アハハ…。
加納:そうですか…。では何と聞き間違えたんでしょうねぇ~…。
宮元:…
宮元:「黒・シア」…
加納:「くろしあ」…?
宮元:「黒・シア」ですよ!ほら!あれ!人気バンド!
加納:あ、あぁ!『ブラック・テンペスト・シアター』のことですよね!
松永:そ、そうそう!そのーみんな大ファンでして!
小鳥遊:そ、そうなんですよ!盛り上がっちゃって!
加納:_その割には「暗殺業」とか聞こえてきたんですけども…
小鳥遊:それは、その…「黒シア」と「殺し屋」って語感似てますよね。
加納:はい。似てますね。
小鳥遊:それに掛けて、自分たちが歌を歌ったりとかカバー演奏したりするのを「暗殺業」とか呼んでるんすよ!
加納:なるほど。…ご事情は分かりました。しかし、そうなると強盗の行方が気になりますね…。店内に入らせていただいても?
宮元:ど、どうして、ですか?
加納:防犯カメラの映像を確認したいんです。
宮元:え、それは…。ちょっと今、本社のシステムが不調みたいでして…
加納:ええ、知っています。でも店舗ごとに記録はされていますよね。
宮元:そ、それは…。
宮元:(小声)ちょっ、ちょっと、小鳥遊君?
小鳥遊:(小声)どうしたんすか?先輩?
宮元:(小声)防犯カメラの件、うまく行ったの?
小鳥遊:(小声)え、ええ。ちゃんとやってくれてはいるみたいですけど…。
加納:ん?何を話しているんです。
宮元:あ、いえ!何も…。見てもらっていいですよ。さあ~どうぞ~。
加納:分かりました。では…。
松永:あわわわわ…
小鳥遊:(小声)大丈夫です。自分たちが上手くやってるんで。
松永:で、でも…。
小鳥遊:(小声)落ち着いてください。大丈夫ですから。
加納:んー…。特にはみつかりませんねぇ。
宮元:そ、そうですか…。
加納:しかし、妙ですねぇ…。
小鳥遊:な、何がっすか?
加納:「強盗が入りに来たシーン」もないんですよねぇ…。
小鳥遊:えっ!?
宮元:そ、それってつまり…。
加納:もしかして…。映像を改ざんしたのでは…?
宮元:い、いや~…。でもそんな証拠、無いですよね…?
加納:証拠とは?
宮元:だから…私たちが改ざんしたっていう証拠なんて…どこにも…。
松永:ッ!
小鳥遊:あ、ちょ、どこ行くんすか!?
松永:この度はッー!本当にッー!申し訳ございませんでしたあああァァァァァーー!
加納:え?
小鳥遊:え、えええええええええ!?
宮元:ちょちょちょちょちょ、ちょっと松永さん!?
松永:ごめんなさい…ごめんなさい!映像を改ざんしたのは私なんですぅうう!
加納:え、ええええ!?
松永:あと、強盗が来たって言いましたよね…?
加納:ま、まさか…
松永:強盗は…わたしですぅうううう!
加納:なんだってえええええ!?
小鳥遊:な、何言ってんすか!?まさか、自分たちのこと売る気じゃないっすよね!?
松永:うう、うう…すんません…。すいませんでした…。会社で失敗しちゃってぇ…。上司に責任擦り付けられてぇ…!
松永:本当に気の迷いで…。この2人も全然関係なくて!すんませんでしたぁ!
加納:…。そうですか。ちょっと待っていてください。
松永:はい…。
小鳥遊:ど、どうなるんですかね…。
宮元:さ、さぁ…。
加納:お待たせしました。松永さんと言いましたか。
松永:は、はい…。
加納:残念ですが、貴方を見逃すわけにはいかないようです。
松永:そうですか…。
加納:ですが、ここには、コンビニのスタッフが2人と、警察が1人、そして_
加納:ただのコンビニ客が1人いる。
宮元:そ、それって…。
加納:ここに、強盗は、いませんでした。
松永:え…?じゃあどうして…?
加納:あなたが務めていた会社、かなり法的によろしくないことをしていたみたいでしてね。
加納:松永さんには、その被害者としていろいろ関わることになると思います。
松永:じゃ、じゃあ…!
加納:あなたは犯罪者ではありません。あなたは、「可愛そうな一般人です」。
松永:ご、強盗の件は…?
加納:それは…。今回カメラからもそれらしい映像が出ませんでしたし、本社でシステムエラーが出てますからねぇ。
加納:強盗の被害が表ざたになることは無いんじゃないですか。
松永:あ、ああ…。ありがとうございます…!
加納:…。今回はシステムエラーだったから助かったものの、次は絶対にこんなことしないでくださいね。
松永:は、はい…。
小鳥遊:ね、言ったでしょ。案外何とかなるって。
宮元:…。小鳥遊君、何の話?
小鳥遊:先輩からのアドバイスです。
宮元:君大学生でしょ…。
小鳥遊:関係ありませんよ。散々な道通ってきたのは自分なんすから。
松永:うぅ…ぐすっ…うわぁああああ!!
加納:…この際あなたが本当に強盗しようとしていたかは分かりませんが、それは今後分かることでしょう。さあ、とりあえずこちらに。
松永:あの…。ちょっと待ってもらっていいですか?
加納:ええ。
松永:小鳥遊先輩…。
小鳥遊:うぇぇ!?何すか急に!?
宮元:俺じゃないんだ。
松永:本当にありがとうございました!また心を入れ替えてここに来ます!
小鳥遊:全く、気張りすぎっすよ。まあ、反省してるならいっか。
宮元:あの…。ホントに何話したの?
小鳥遊:それ宮元先輩に関係あります?
宮元:いや、まあ…。なんかごめん。
小鳥遊:分かれば良いんすよ。全く、後でハッカーにはきつく言っておかないとっすね。
宮元:お、おう…それは管轄外だから頼む。なんか、すげぇわ。
小鳥遊:はーい。
小鳥遊:…。元気でやるんだぞ。強盗さん。
0:3か月後
小鳥遊:宮元先輩、外に散ってた桜掃いてきたっすよ~。
宮元:お疲れ。ちょっと品出し手伝ってくれる?
小鳥遊:もちのロンっすよ。そういや、今日から新人が入るって聞いたんすけど。
宮元:お、アンテナ張られてたか。そうなんだ。今日から新人が来るって言っててな、そろそろ来るんだよ。
小鳥遊:そろそろっすか?こんな夜遅くに?
宮元:そうなんだよ。わざわざ夜がいいって言ってたし。
0:その時、裏手のドアが開く。
小鳥遊:あ、お疲れ様っす~…って、ええ!?
宮元:ああ、ようこそ。
松永:今日から、よろしくお願いします!
小鳥遊:よ、よろしくお願いいたします…。
小鳥遊:ちょっと、先輩!?
宮元:ん、何?
小鳥遊:この前の強盗さんじゃないっすか!?
宮元:え?あの事件の後、結局無罪放免で、ちゃんと会社からもちょっとだけ賠償金か何かを貰ったらしいよ。
小鳥遊:いや、それはいいんすけど…。何というか…バツが悪いじゃないっすか!
松永:もしかして、あの時のこと?
小鳥遊:え、ええ、まあ。
松永:あれはあんまり気にしてないから。よろしくお願いします!
小鳥遊:こっちが気にするんだってば…。
宮元:ははは、まあこれで本当に小鳥遊君は先輩になるわけだし、色々教えてあげてよ。
松永:よろしければ、あの時の格闘も教えてほしいです!
小鳥遊:教えないっすからね!?あれで自分も組織からこってり絞られたんすからね!?
松永:とにかく、よろしくお願いします!
小鳥遊:あぁ、ホントにやりにくくなるっすね…。
宮元:ま、まあ、ちょっとずつ教えてやってくれ。経歴書見たけど、かなり仕事できるっぽいから。
小鳥遊:そうなんすか?まあ、仕事上しょうがないっすね…。
松永:色々教えてください!お願いします!
小鳥遊:あーはいはい、分かったすよ…。とりあえず最初は_
宮元:さて、今日も頑張りますかね…。
0:入店音が鳴り響く。
宮元:いらっしゃいませー!
0:END