台本概要
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タイトル | 物語の奏楽 第一話 『歴史』 完全版 |
---|---|
作者名 | 明桜 リア (@ria_meiou) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 7人用台本(男4、不問3) ※兼役あり |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
様々な世界は、沢山の物語で溢れている。 それは、生き物達、自然、多くの歴史が作り上げている物語。 しかし、誰も知らない事がある。 物語は最初から定められているのだ 逸脱して仕舞えば、ある人物が現れる。 それがこの物語の序曲。 *使用について* ・使用許可は要りません。 ・配信に使っていただいても構いませんん。もし使うよーって言ってくださったら、飛んで見に行きます。 ・使ったと言ってくださったら、嬉しくて五体投地します。 ・商用利用の際は、一言お伝えください。 ・自作発言はお控えください。 ・改変、加工は可能です ※不協和音と第二王子は兼ね役です。 後は、とにかく楽しんで演じてください! 259 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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マエストロ | 不問 | 43 | 世界の物語の指揮者。物語に愛されてる者。 |
コンダクター | 不問 | 27 | 指揮者がしている事を否定している。 |
第三王子 | 男 | 55 | 英雄譚の主人公。王を倒し、王になった者。 |
第一王子 | 男 | 23 | 王の座を弟に譲った。王に相応しいのは第三王子だと考えている。 |
第二王子 | 男 | 7 | 第三王子に反感を持っている。こいつがいなければ…。 ※不協和音と兼ね役。 |
協和音 | 不問 | 22 | マエストロの右手。マエストロを愛してやまない。使っている楽器はヴァイオリン。 |
不協和音 | 男 | 6 | マイスターの右手。機械的。使っている楽器は調律されてないオーボエ。※第二王子の兼ね役。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
マエストロ:さぁて、皆様お立ち合い!
マエストロ:今日のお話は、とある世界の暦で第一世紀500年。この時代に英雄と呼ばれる王がいた。
マエストロ:この国は先代の王が*脆弱《ぜいじゃく》だった為、他国の侵略を許してし、*蹂躙《じゅうりん》されてしまって、国自体が*疲弊《ひへい》していた。
マエストロ:しかーし!一人の人物がその王を倒し、難攻不落と言われる国を作り上げたという*英雄譚《えいゆうたん》!
マエストロ:先代王には三人の息子がいた。
マエストロ:三人の王子の中でクーデターを起こし、先代王を殺したのはなんと!第三王子!
マエストロ:その時に、王になるのはこの方だと国民が思っていただけでなく、第一王子もそう考えていた。王となるのは第三王子だと。
マエストロ:だが!この状況を面白く思っていないのは、第二王子!
マエストロ:『自分を差し置いて、王になるとは何事か。』
マエストロ:そう考えていた第二王子。奴が死ねば、自分が王になれると考え、*謀反《むほん》を起こそうとする。
マエストロ:支援しているのは、先代王の時に私服を肥していた貴族たち!
マエストロ:しかしこの貴族達、ただ第二王子を支援しているわけではない。
マエストロ:自分たちの懐を温かくするために、あまり賢くなく、言いなりにできる第二王子を*傀儡《くぐつ》とするための策略があった!
マエストロ:さて、この*英雄譚《えいゆうたん》!
マエストロ:先の話は、この第二王子と貴族たちの*思惑《おもわく》は*白日《はくじつ》の元に晒されて処刑される。
マエストロ:その後、第三王子が王になり街を大きくして、*難攻不落《なんこうふらく》と言われる国を築いたのちに、己の息子に継がせるまでが話の終幕!
マエストロ:しかし…その物語が変化しようとしている。
マエストロ:とある者達によって。
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マエストロ:それは決して、許されることではないのですよ…。
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0:
第三王子:兄上!
第一王子:おぉ、王様、ご機嫌麗しゅう。
第三王子:やめてください、兄上まで…。寂しいではありませんか。
第一王子:どこで誰が見ているか、分かりませんからね。気をつけるに越したことはないのですよ。
第三王子:それは、確かにそうだ。気をつける。
第一王子:それで良いのです。威厳を保つことが大事なの…
第二王子:(話している途中に被せて)兄上!…あぁ、王よ、ご機嫌はいかがですか?
第一王子:(ため息)私の事よりも先に、王への挨拶をしなさい。不敬に値する。
第二王子:それはそれは…失礼いたしました。兄上の姿しか、見えなかったもので。
第一王子:お前は…。
第三王子:いい、構わない。息災か?
第二王子:…えぇ、もちろんですとも!元気に過ごさせていただいております。
第三王子:そうか、それならばいい。
第二王子:まぁ、少なからず反発するものはおりましょうが。
第一王子:…何が言いたいのだ。
第二王子:*御身《おんみ》をお気をつけくださいませ…と言う話でございます。
第一王子:失礼な事を申すな。いい加減にするがいい。これ以上は見逃せんぞ。
第三王子:いい。構わん。
第一王子:しかし…。
第三王子:言わせておけばいい。何を言われても私が王である事に変わりない。
第一王子:…分かりました。
第二王子:これはこれは!さすがは我らが王!お心が広くていらっしゃる…。
第一王子:何を言いたいのかわからんが、さっさと消えるといい。これ以上の無礼は許されない。
第二王子:おぉ!兄上は怖くていらっしゃる。
第二王子:これ以上は王の護衛達に何をされるかわかりませんので、私はこれにて…。失礼いたします。
第三王子:あぁ、それでいい。
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0:第二王子が去っていく。
0:
第一王子:…本当にいいのですか見逃して。
第三王子:よい。気にしなくて良い。私には、考えていることがある。
第一王子:それは、一体どういう…。
第三王子:気にしないでくれ。それでは、執務に戻る。
第一王子:…承知いたしました。
0:
第三王子:これではいけない。私は…兄上に…兄上に、この座を渡さなくては。
第三王子:『あの方』が言っていたように…。
0:
協和音:マスター、この世界の歴史である『難攻不落の城を建てし英雄譚』の物語に、大変な改変が見られます。
マエストロ:んんー?あー、確かに。
マエストロ:これは物語から、*逸れて《そ》いってるねぇ。
協和音:いかがなさいますか?
マエストロ:まぁ、誰がこんなことをしでかそうとしているのかなんて分かりきってはいるけど、*軌道《きどう》から逸れていかないように戻さないとね。
協和音:そうですね。お手伝いいたします。
協和音:私はマスターの仕事を*円滑《えんかつ》に進めるために存在していますので。
マエストロ:うん、頼めるかな?
協和音:もちろんにございます。
マエストロ:さて、始めていこうか。『曲を奏でる時間を』。
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0:場面転換(執務室)
0:
第三王子:この工事は、一刻も早く進めるように。こちらの案件は決して先延ばしにしないようにしろ。
第三王子:民が待ち望んでいるのだから、何よりも最優先にしろ。
第一王子:失礼致します。
第一王子:我らが輝きし太陽の王よ。今日も生が出ますね。ですが、少しお休みください。
第三王子:しかし…。
第一王子:そんなに根を詰めてしまっては、お体に支障が出てしまいます。
第三王子:…そうだな、分かった。君たちは下がっていい。
第一王子:あの方々がいらっしゃったという事は、話の内容は民の為に造られていらっしゃる『知恵の場』でしょうか。
第三王子:そうだ。早く、民達に学を得られる場を造りたい。
第一王子:民の事を第一を考えていらっしゃる王は素晴らしいお方です。
第一王子:しかし、休息は必要にございます。
第一王子:こちらは少し安らげることができるようになる飲み物にございます。
第三王子:すまない、ありがとう…。
第一王子:いえ、この国を大切に思っていらっしゃるお方ですから。そんなお方についていけて、幸せにございます。
第三王子:…兄上。
第一王子:ここは執務室にございます。
第三王子:今は私達しかおりません。
第一王子:はぁ、仕方ない。どうした?
第三王子:私は、王になるつもりなどなかったのです。
第一王子:私はお前がなるべきだと、考えていた。
第三王子:いえ!本来なら、兄上がなるべきなのです!
第一王子:何を言っているのか…。私はお前を推すと決めた。それを変える気はない。
第一王子:民の為に動いたお前だから、私はお前になって欲しいと思ったからこそ、私は身を引いたのだから。
第一王子:私は今の立ち位置、王の補佐でいられるのが嬉しいのだ。
第三王子:しかし…!
第一王子:この話はここで終わりだ。
第一王子:何度もする事ではない。
第三王子:それでも私は…兄上にこの座をっ!王の座を貴方に…!!
マエストロ:はい!そこまでー。
0:
0:部屋が真っ暗になる。
0:
第三王子:な!?これは一体何が!!
マエストロ:困るなぁ…。物語の内容を逸らしてもらっちゃ…。
第三王子:な、何者だ!
マエストロ:私としたことが名乗り忘れるとは!
マエストロ:失礼致しました。私の名前は、オーケストラより敬意をこめられら名前である『マエストロ』。つまりは指揮者にございます。この世界…いえ、様々な世界の物語を*司《つかさど》るもの。
マエストロ:あなた達の意思関係なく、歴史という名の物語の流れを指揮する。それが私の役目。
第三王子:…*其方《そなた》があの者が言っていた人物か。
マエストロ:これはこれは…やはり、マイスターが貴方に伝えてくれていたのですね。知っていただけていたようで光栄です。
第三王子:なぜ、先ほど言った者が『マイスター』と知って…。
コンダクター:それは其奴(そやつ)はきっと、配下の者に調べさせたのでしょう。
第三王子:コンダクター!それは本当か!
コンダクター:あぁ、本当だ。そうだろう?マエストロ。
マエストロ:その通り!私の大切な子が教えてくれた!
マエストロ:いやぁ、おかげで止めることができそうだね。
コンダクター:毎回、そんな事をさせると思っているのか?
コンダクター:止めろ、『不協和音』。
不協和音:任せロ。主。
不協和音:決しテ、邪魔はサセン。
マエストロ:協和音、頼みますよぉー。
協和音:お任せください。
不協和音:貴様、また主の邪魔をスルというのカ。
協和音:それは貴様らの方だ。
不協和音:これだから、分かり合えナイ。
協和音:現れなさい、『ヴァイオリン』。
不協和音:来い、『オーボエ』。
0:
協和音:(同時に)奏でよう、この世界を。
不協和音:(同時に)奏でヨウ、この世界を。
0:
第三王子:何だ、この音は…!!色んな音が混ざって耳がおかしくなりそうだ…!!
マエストロ:これは彼らが奏でる、色んな音の…そうだね、いわゆる攻撃、というやつかな?
第三王子:攻撃…?音でそんな事が…。
第三王子:彼らが持っているものは…。
マエストロ:あぁ!彼らが持っているのは、貴方方も知っている『楽器』と呼ばれるものです。
第三王子:あの面妖な形をしたものも、楽器なのか。
第三王子:彼らは楽器で何をしてるのだ?
マエストロ:それはね、音…というよりは音楽で攻撃し合っているのさ。
マエストロ:互いの役目を果たすために、ね。
第三王子:役目を、果たす…?
第三王子:いやしかし、なぜ攻撃なぞ。
マエストロ:ふむ、分かっていないようだから、端的に説明しようか。
マエストロ:今私たちが争っている原因は君であり、そして、その後ろにいるコンダクター君のせいだよ。
第三王子:なぜ、私の…?それに、コンダクターのせいだと?
マエストロ:それは、コンダクターくんの助言で*逸脱《いつだつ》しようとしたからだ。
マエストロ:君の世界の英雄譚という名の物語から。
第三王子:物語、英雄譚…?待て、待ってくれ。一体なんのことを言っている。
第三王子:私には分からない。
コンダクター:聞く必要はない。お前はお前の思うようにしたらいいのだ。
第三王子:何だ、何のことを言っている…。
マエストロ:いいかい?この世の中、全ての*森羅万象《しんらばんしょう》は記憶と歴史という名の『物語』があるんだよ。それを君は逸脱しようとした。だから!それを私は正さないといけないだよ!
第三王子:それは…まさか…そんな事…。
第三王子:待て。ならば、なぜ私を選んだ。
マエストロ:それはね。君に心の*隙間《すきま》があったからだよ。
第三王子:隙間…?
マエストロ:そうだよね?コンダクター君。
コンダクター:…そうだ。本来なら、第二王子を選ぶはずが…奴はもう既に物語に侵食されており、影響を出させるほどの隙間がなかった。
コンダクター:だから、貴様にした。
第三王子:それで…心の隙間があった、私を…。
コンダクター:その通りだ。
マエストロ:君は決意は固い。しかし、不安を持ったままだったからねぇ。
マエストロ:そこを突かれてしまったんだ。
第三王子:そうだったのか…。
マエストロ:そう!分かったようで安心したよぉ!
マエストロ:あ!そうそう、因みに分かっていて欲しい。
マエストロ:悲しいことに、君たちに物語を変える権限はないんだよ。
マエストロ:君たちが作り上げている物語は決まっている。それは決定事項、だからね。
第三王子:決定事項…だと…!?
第三王子:そんな事はできない!我々は、決められた道など生きてはいない!
第三王子:我々は己で考えて、必死に生きているからこそ、こうして物語とやらができているのではないのか!
第三王子:それを決定されているなど、そんなことがあるなど許され、
マエストロ:(食い気味に)決まっている、そして、許されている。
第三王子:っ!
マエストロ:いいかい?今言ったこと、つまりこの世界の君が築き上げた『英雄譚』は、最初からこうなると決まっていた事なんだよ。
マエストロ:君が英雄で王であり続ける。第一王子は王のサポートに回る。第二王子はクーデターを企てたが、失敗に終わってしまう。
マエストロ:これこそが君たちの歴史であり物語。なのに君は破ろうとした。
マエストロ:破ってしまうと、世界の因果がそのものが崩れてしまうんだよ。
マエストロ:崩れてどうなると思うかい?
コンダクター:聞く必要はない!
マエストロ:君は黙っていて欲しいなぁ。それで?どうなると思う?
第三王子:…どうなるというのだ。
マエストロ:君が住んでいる…いや、君がいる世界そのものの崩壊を招いてしまうってことだよ。
マエストロ:分かったかな?
第三王子:そんな…。
第三王子:し、しかし!たった一つの事でそこまで起こるなんて…!!
コンダクター:その通りだ。だから、聞く必要などない!
マエストロ:コンダクター君は相変わらずだなぁ。全く。
マエストロ:これは本当に起こるんだよなぁ…。今も少しづつ、崩壊していっている。
第三王子:どうやってそんな事が…。
コンダクター:気にすることはない。このくらいの事は問題ないことだ。
マエストロ:全く…問題大有りなんだよ!コンダクター君は困った子だね…。
マエストロ:さっき言ったはずなんだけどなぁ。仕方ない。もう一度言おう。
マエストロ:僕が言っている崩壊はね、君の生きている世界、つまりは様々な国や人、生き物が住んでいる場所である世界そのもの全体が壊れるって事だよ。
第三王子:そこまでの影響があるのか!?
マエストロ:そうだとも!ほら、聞こえてこないかい?
マエストロ:*軋《きし》んでいくような音が…。
第三王子:そんな音…ッ!!いや待て…。本当だ…どこからか崩れていくような軋む音が、聞こえてくる…。
第三王子:まさかこれが崩壊していっているという証拠なのか。
コンダクター:この程度は少し軋んだだけだ。気にするほどではない。
コンダクター:だからこのまま…!
マエストロ:(遮って)だから私が、壊れないように物語の指揮者をいている。
マエストロ:崩壊を止めるために。
第三王子:そんな…ただ、私は…兄上に王になっていただきたかっただけ…そんなことになるなんて…。
マエストロ:すまないねー!それはできない。
マエストロ:この物語の英雄は、君でなければいけないのだから。
マエストロ:それじゃ、大変申し訳ないけど。可哀想だが君の願いは叶えられないので、戻させてもらうよ。
第三王子:…分かった。
コンダクター:本当にいいのか!?貴様の願いは叶わないんだぞ!
第三王子:(言葉を被せるように)他の人々に影響があるのなら!私は、できない…。
コンダクター:その程度ならば、もう貴様は必要ない。
第三王子:それは一体…?
コンダクター:用済みの人間には、消えてもらおう。
コンダクター:この世界には、もっと心の隙間を持つものは多くいる。
マエストロ:おぉっと!!ノンノン!!消させたりなんてさせないよー。
マエストロ:おいで、私の大事な子。協和音。
協和音:はい、マスター。
コンダクター:協和音…!毎度邪魔を…。
コンダクター:待て、不協和音はどうした。
協和音:向こうで倒れていらっしゃいます。
協和音:私の実力に叶うわけがありません。
コンダクター:役立たずが…!
コンダクター:だが、別にいい。私自身がすればいいだけだ。
マエストロ:こらこーら。いけない子だねぇ。ほら、いい子にしてくーださーい!
マエストロ:おいで、*指揮棒《タクト》。そして現れろ。楽譜に必要な音を書くための線。『*五線譜《ごせんふ》』
コンダクター:くっ!五線譜が私に絡みついてくる…!毎度毎度、邪魔をしするな、マエストロ!!
マエストロ:僕も君と一緒で指揮者なのでね。さて、このまま大人しく物語が正しく流れているのを観ていてね。
マエストロ:コンダクター君が邪魔しないように見ていてね。協和音。
協和音:承知いたしました。
コンダクター:おのれ…!!
マエストロ:さぁ、奏でる時間だよ。物語達。
マエストロ:『奏楽(そうがく)、プレリュード』
第三王子:…音楽が…聴こえてくる…これは一体…。
協和音:『奏楽』は音楽を奏でること。そして、『プレリュード』はまだあなた様の世界が崩壊に至る前なのであり、貴方方の物語が始まったばかりなので、『*前奏曲《ぜんそうきょく》』を使っていらっしゃいます。
協和音:これが貴方達の物語の*旋律《せんりつ》であり、始まりの音です。
第三王子:我々の…。
第三王子:なんて、なんて美しいんだ…。
第三王子:始まったばかりなのに、これほどの音出せていたのか。
コンダクター:待て!聞くな!!
コンダクター:私の話を聞けば、気が変わるはずだ!!
第三王子:あぁ…、私たちはこんな素晴らしい物語を奏でていたのか。
マエストロ:そう、これが君たちの物語。
マエストロ:最高の旋律だろう?
マエストロ:さぁ、戻る時間だよ。君の物語の世界へと。
第三王子:あぁ、ありがとう…。ちゃんと、戻ろう。
第三王子:兄上を、支えたかったが…きっと、違うかったのだな…。
マエストロ:そう言う事。
マエストロ:だって、こんな素晴らしい音を始まりで奏でているのだから。
マエストロ:さぁ、戻る時間だよ。
第三王子:ありがとう…。さらばだ。
マエストロ:…さようなら、英雄。
0:
0:第三王子が消える。
0:
コンダクター:待て!行くな!!我々ならば…!
協和音:お黙りください。
コンダクター:ぐっ…!許さん、マエストロ…!!
マエストロ:残念だね。でも、これが正しい道なんだよ。
コンダクター:何が、正しい道だ…!操っているだけではないか!!
コンダクター:誰にも自分で決める権利が…!
マエストロ:物語は決まっているのだよ。
マエストロ:それをわからない間は、ずっと君はコンダクターのままなんだよ。
マエストロ:だから諦めてね。マイスター君。
コンダクター:貴様…!くそっ…どけ!!
協和音:くっ…!
マエストロ:お、いつの間にか、拘束から抜け出せてたんだね!褒めてあげよう。
マエストロ:でもね、僕の大事な子を蹴らないでくれるかな…。
マエストロ:それにさ。君がどう*足掻《あが》いたって、この事実は何も変わる事はないんだよ。
マエストロ:君も指揮者なんだから、受け入れたらどうだい?
コンダクター:…次はこうならん。必ず『我ら』の悲願を成し*遂《と》げて見せる。
マエストロ:全く。はいはーい!頑張ってね!
コンダクター:最後まで憎たらしい…!
コンダクター:『ゲート』。
コンダクター:いつまで倒れている不協和音。行くぞ。
不協和音:くっ…承知シタ。主。
不協和音:次は必ず勝ツゾ。協和音。
0:
0:二人が去ってく。
0:
マエストロ:しつこい子だねぇ、全く。
マエストロ:協和音。僕の大事な子。蹴られた所は大丈夫かい?
協和音:問題ありません。
協和音:それよりも、終わりましたね。マスター。
コンダクター:そうだねぇ。
コンダクター:さて、協和音。
協和音:はい。
コンダクター:次も指揮していこうか。
0:
コンダクター:物語を、*円滑《えんかつ》に奏でるために。
マエストロ:さぁて、皆様お立ち合い!
マエストロ:今日のお話は、とある世界の暦で第一世紀500年。この時代に英雄と呼ばれる王がいた。
マエストロ:この国は先代の王が*脆弱《ぜいじゃく》だった為、他国の侵略を許してし、*蹂躙《じゅうりん》されてしまって、国自体が*疲弊《ひへい》していた。
マエストロ:しかーし!一人の人物がその王を倒し、難攻不落と言われる国を作り上げたという*英雄譚《えいゆうたん》!
マエストロ:先代王には三人の息子がいた。
マエストロ:三人の王子の中でクーデターを起こし、先代王を殺したのはなんと!第三王子!
マエストロ:その時に、王になるのはこの方だと国民が思っていただけでなく、第一王子もそう考えていた。王となるのは第三王子だと。
マエストロ:だが!この状況を面白く思っていないのは、第二王子!
マエストロ:『自分を差し置いて、王になるとは何事か。』
マエストロ:そう考えていた第二王子。奴が死ねば、自分が王になれると考え、*謀反《むほん》を起こそうとする。
マエストロ:支援しているのは、先代王の時に私服を肥していた貴族たち!
マエストロ:しかしこの貴族達、ただ第二王子を支援しているわけではない。
マエストロ:自分たちの懐を温かくするために、あまり賢くなく、言いなりにできる第二王子を*傀儡《くぐつ》とするための策略があった!
マエストロ:さて、この*英雄譚《えいゆうたん》!
マエストロ:先の話は、この第二王子と貴族たちの*思惑《おもわく》は*白日《はくじつ》の元に晒されて処刑される。
マエストロ:その後、第三王子が王になり街を大きくして、*難攻不落《なんこうふらく》と言われる国を築いたのちに、己の息子に継がせるまでが話の終幕!
マエストロ:しかし…その物語が変化しようとしている。
マエストロ:とある者達によって。
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マエストロ:それは決して、許されることではないのですよ…。
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第三王子:兄上!
第一王子:おぉ、王様、ご機嫌麗しゅう。
第三王子:やめてください、兄上まで…。寂しいではありませんか。
第一王子:どこで誰が見ているか、分かりませんからね。気をつけるに越したことはないのですよ。
第三王子:それは、確かにそうだ。気をつける。
第一王子:それで良いのです。威厳を保つことが大事なの…
第二王子:(話している途中に被せて)兄上!…あぁ、王よ、ご機嫌はいかがですか?
第一王子:(ため息)私の事よりも先に、王への挨拶をしなさい。不敬に値する。
第二王子:それはそれは…失礼いたしました。兄上の姿しか、見えなかったもので。
第一王子:お前は…。
第三王子:いい、構わない。息災か?
第二王子:…えぇ、もちろんですとも!元気に過ごさせていただいております。
第三王子:そうか、それならばいい。
第二王子:まぁ、少なからず反発するものはおりましょうが。
第一王子:…何が言いたいのだ。
第二王子:*御身《おんみ》をお気をつけくださいませ…と言う話でございます。
第一王子:失礼な事を申すな。いい加減にするがいい。これ以上は見逃せんぞ。
第三王子:いい。構わん。
第一王子:しかし…。
第三王子:言わせておけばいい。何を言われても私が王である事に変わりない。
第一王子:…分かりました。
第二王子:これはこれは!さすがは我らが王!お心が広くていらっしゃる…。
第一王子:何を言いたいのかわからんが、さっさと消えるといい。これ以上の無礼は許されない。
第二王子:おぉ!兄上は怖くていらっしゃる。
第二王子:これ以上は王の護衛達に何をされるかわかりませんので、私はこれにて…。失礼いたします。
第三王子:あぁ、それでいい。
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0:第二王子が去っていく。
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第一王子:…本当にいいのですか見逃して。
第三王子:よい。気にしなくて良い。私には、考えていることがある。
第一王子:それは、一体どういう…。
第三王子:気にしないでくれ。それでは、執務に戻る。
第一王子:…承知いたしました。
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第三王子:これではいけない。私は…兄上に…兄上に、この座を渡さなくては。
第三王子:『あの方』が言っていたように…。
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協和音:マスター、この世界の歴史である『難攻不落の城を建てし英雄譚』の物語に、大変な改変が見られます。
マエストロ:んんー?あー、確かに。
マエストロ:これは物語から、*逸れて《そ》いってるねぇ。
協和音:いかがなさいますか?
マエストロ:まぁ、誰がこんなことをしでかそうとしているのかなんて分かりきってはいるけど、*軌道《きどう》から逸れていかないように戻さないとね。
協和音:そうですね。お手伝いいたします。
協和音:私はマスターの仕事を*円滑《えんかつ》に進めるために存在していますので。
マエストロ:うん、頼めるかな?
協和音:もちろんにございます。
マエストロ:さて、始めていこうか。『曲を奏でる時間を』。
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0:場面転換(執務室)
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第三王子:この工事は、一刻も早く進めるように。こちらの案件は決して先延ばしにしないようにしろ。
第三王子:民が待ち望んでいるのだから、何よりも最優先にしろ。
第一王子:失礼致します。
第一王子:我らが輝きし太陽の王よ。今日も生が出ますね。ですが、少しお休みください。
第三王子:しかし…。
第一王子:そんなに根を詰めてしまっては、お体に支障が出てしまいます。
第三王子:…そうだな、分かった。君たちは下がっていい。
第一王子:あの方々がいらっしゃったという事は、話の内容は民の為に造られていらっしゃる『知恵の場』でしょうか。
第三王子:そうだ。早く、民達に学を得られる場を造りたい。
第一王子:民の事を第一を考えていらっしゃる王は素晴らしいお方です。
第一王子:しかし、休息は必要にございます。
第一王子:こちらは少し安らげることができるようになる飲み物にございます。
第三王子:すまない、ありがとう…。
第一王子:いえ、この国を大切に思っていらっしゃるお方ですから。そんなお方についていけて、幸せにございます。
第三王子:…兄上。
第一王子:ここは執務室にございます。
第三王子:今は私達しかおりません。
第一王子:はぁ、仕方ない。どうした?
第三王子:私は、王になるつもりなどなかったのです。
第一王子:私はお前がなるべきだと、考えていた。
第三王子:いえ!本来なら、兄上がなるべきなのです!
第一王子:何を言っているのか…。私はお前を推すと決めた。それを変える気はない。
第一王子:民の為に動いたお前だから、私はお前になって欲しいと思ったからこそ、私は身を引いたのだから。
第一王子:私は今の立ち位置、王の補佐でいられるのが嬉しいのだ。
第三王子:しかし…!
第一王子:この話はここで終わりだ。
第一王子:何度もする事ではない。
第三王子:それでも私は…兄上にこの座をっ!王の座を貴方に…!!
マエストロ:はい!そこまでー。
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0:部屋が真っ暗になる。
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第三王子:な!?これは一体何が!!
マエストロ:困るなぁ…。物語の内容を逸らしてもらっちゃ…。
第三王子:な、何者だ!
マエストロ:私としたことが名乗り忘れるとは!
マエストロ:失礼致しました。私の名前は、オーケストラより敬意をこめられら名前である『マエストロ』。つまりは指揮者にございます。この世界…いえ、様々な世界の物語を*司《つかさど》るもの。
マエストロ:あなた達の意思関係なく、歴史という名の物語の流れを指揮する。それが私の役目。
第三王子:…*其方《そなた》があの者が言っていた人物か。
マエストロ:これはこれは…やはり、マイスターが貴方に伝えてくれていたのですね。知っていただけていたようで光栄です。
第三王子:なぜ、先ほど言った者が『マイスター』と知って…。
コンダクター:それは其奴(そやつ)はきっと、配下の者に調べさせたのでしょう。
第三王子:コンダクター!それは本当か!
コンダクター:あぁ、本当だ。そうだろう?マエストロ。
マエストロ:その通り!私の大切な子が教えてくれた!
マエストロ:いやぁ、おかげで止めることができそうだね。
コンダクター:毎回、そんな事をさせると思っているのか?
コンダクター:止めろ、『不協和音』。
不協和音:任せロ。主。
不協和音:決しテ、邪魔はサセン。
マエストロ:協和音、頼みますよぉー。
協和音:お任せください。
不協和音:貴様、また主の邪魔をスルというのカ。
協和音:それは貴様らの方だ。
不協和音:これだから、分かり合えナイ。
協和音:現れなさい、『ヴァイオリン』。
不協和音:来い、『オーボエ』。
0:
協和音:(同時に)奏でよう、この世界を。
不協和音:(同時に)奏でヨウ、この世界を。
0:
第三王子:何だ、この音は…!!色んな音が混ざって耳がおかしくなりそうだ…!!
マエストロ:これは彼らが奏でる、色んな音の…そうだね、いわゆる攻撃、というやつかな?
第三王子:攻撃…?音でそんな事が…。
第三王子:彼らが持っているものは…。
マエストロ:あぁ!彼らが持っているのは、貴方方も知っている『楽器』と呼ばれるものです。
第三王子:あの面妖な形をしたものも、楽器なのか。
第三王子:彼らは楽器で何をしてるのだ?
マエストロ:それはね、音…というよりは音楽で攻撃し合っているのさ。
マエストロ:互いの役目を果たすために、ね。
第三王子:役目を、果たす…?
第三王子:いやしかし、なぜ攻撃なぞ。
マエストロ:ふむ、分かっていないようだから、端的に説明しようか。
マエストロ:今私たちが争っている原因は君であり、そして、その後ろにいるコンダクター君のせいだよ。
第三王子:なぜ、私の…?それに、コンダクターのせいだと?
マエストロ:それは、コンダクターくんの助言で*逸脱《いつだつ》しようとしたからだ。
マエストロ:君の世界の英雄譚という名の物語から。
第三王子:物語、英雄譚…?待て、待ってくれ。一体なんのことを言っている。
第三王子:私には分からない。
コンダクター:聞く必要はない。お前はお前の思うようにしたらいいのだ。
第三王子:何だ、何のことを言っている…。
マエストロ:いいかい?この世の中、全ての*森羅万象《しんらばんしょう》は記憶と歴史という名の『物語』があるんだよ。それを君は逸脱しようとした。だから!それを私は正さないといけないだよ!
第三王子:それは…まさか…そんな事…。
第三王子:待て。ならば、なぜ私を選んだ。
マエストロ:それはね。君に心の*隙間《すきま》があったからだよ。
第三王子:隙間…?
マエストロ:そうだよね?コンダクター君。
コンダクター:…そうだ。本来なら、第二王子を選ぶはずが…奴はもう既に物語に侵食されており、影響を出させるほどの隙間がなかった。
コンダクター:だから、貴様にした。
第三王子:それで…心の隙間があった、私を…。
コンダクター:その通りだ。
マエストロ:君は決意は固い。しかし、不安を持ったままだったからねぇ。
マエストロ:そこを突かれてしまったんだ。
第三王子:そうだったのか…。
マエストロ:そう!分かったようで安心したよぉ!
マエストロ:あ!そうそう、因みに分かっていて欲しい。
マエストロ:悲しいことに、君たちに物語を変える権限はないんだよ。
マエストロ:君たちが作り上げている物語は決まっている。それは決定事項、だからね。
第三王子:決定事項…だと…!?
第三王子:そんな事はできない!我々は、決められた道など生きてはいない!
第三王子:我々は己で考えて、必死に生きているからこそ、こうして物語とやらができているのではないのか!
第三王子:それを決定されているなど、そんなことがあるなど許され、
マエストロ:(食い気味に)決まっている、そして、許されている。
第三王子:っ!
マエストロ:いいかい?今言ったこと、つまりこの世界の君が築き上げた『英雄譚』は、最初からこうなると決まっていた事なんだよ。
マエストロ:君が英雄で王であり続ける。第一王子は王のサポートに回る。第二王子はクーデターを企てたが、失敗に終わってしまう。
マエストロ:これこそが君たちの歴史であり物語。なのに君は破ろうとした。
マエストロ:破ってしまうと、世界の因果がそのものが崩れてしまうんだよ。
マエストロ:崩れてどうなると思うかい?
コンダクター:聞く必要はない!
マエストロ:君は黙っていて欲しいなぁ。それで?どうなると思う?
第三王子:…どうなるというのだ。
マエストロ:君が住んでいる…いや、君がいる世界そのものの崩壊を招いてしまうってことだよ。
マエストロ:分かったかな?
第三王子:そんな…。
第三王子:し、しかし!たった一つの事でそこまで起こるなんて…!!
コンダクター:その通りだ。だから、聞く必要などない!
マエストロ:コンダクター君は相変わらずだなぁ。全く。
マエストロ:これは本当に起こるんだよなぁ…。今も少しづつ、崩壊していっている。
第三王子:どうやってそんな事が…。
コンダクター:気にすることはない。このくらいの事は問題ないことだ。
マエストロ:全く…問題大有りなんだよ!コンダクター君は困った子だね…。
マエストロ:さっき言ったはずなんだけどなぁ。仕方ない。もう一度言おう。
マエストロ:僕が言っている崩壊はね、君の生きている世界、つまりは様々な国や人、生き物が住んでいる場所である世界そのもの全体が壊れるって事だよ。
第三王子:そこまでの影響があるのか!?
マエストロ:そうだとも!ほら、聞こえてこないかい?
マエストロ:*軋《きし》んでいくような音が…。
第三王子:そんな音…ッ!!いや待て…。本当だ…どこからか崩れていくような軋む音が、聞こえてくる…。
第三王子:まさかこれが崩壊していっているという証拠なのか。
コンダクター:この程度は少し軋んだだけだ。気にするほどではない。
コンダクター:だからこのまま…!
マエストロ:(遮って)だから私が、壊れないように物語の指揮者をいている。
マエストロ:崩壊を止めるために。
第三王子:そんな…ただ、私は…兄上に王になっていただきたかっただけ…そんなことになるなんて…。
マエストロ:すまないねー!それはできない。
マエストロ:この物語の英雄は、君でなければいけないのだから。
マエストロ:それじゃ、大変申し訳ないけど。可哀想だが君の願いは叶えられないので、戻させてもらうよ。
第三王子:…分かった。
コンダクター:本当にいいのか!?貴様の願いは叶わないんだぞ!
第三王子:(言葉を被せるように)他の人々に影響があるのなら!私は、できない…。
コンダクター:その程度ならば、もう貴様は必要ない。
第三王子:それは一体…?
コンダクター:用済みの人間には、消えてもらおう。
コンダクター:この世界には、もっと心の隙間を持つものは多くいる。
マエストロ:おぉっと!!ノンノン!!消させたりなんてさせないよー。
マエストロ:おいで、私の大事な子。協和音。
協和音:はい、マスター。
コンダクター:協和音…!毎度邪魔を…。
コンダクター:待て、不協和音はどうした。
協和音:向こうで倒れていらっしゃいます。
協和音:私の実力に叶うわけがありません。
コンダクター:役立たずが…!
コンダクター:だが、別にいい。私自身がすればいいだけだ。
マエストロ:こらこーら。いけない子だねぇ。ほら、いい子にしてくーださーい!
マエストロ:おいで、*指揮棒《タクト》。そして現れろ。楽譜に必要な音を書くための線。『*五線譜《ごせんふ》』
コンダクター:くっ!五線譜が私に絡みついてくる…!毎度毎度、邪魔をしするな、マエストロ!!
マエストロ:僕も君と一緒で指揮者なのでね。さて、このまま大人しく物語が正しく流れているのを観ていてね。
マエストロ:コンダクター君が邪魔しないように見ていてね。協和音。
協和音:承知いたしました。
コンダクター:おのれ…!!
マエストロ:さぁ、奏でる時間だよ。物語達。
マエストロ:『奏楽(そうがく)、プレリュード』
第三王子:…音楽が…聴こえてくる…これは一体…。
協和音:『奏楽』は音楽を奏でること。そして、『プレリュード』はまだあなた様の世界が崩壊に至る前なのであり、貴方方の物語が始まったばかりなので、『*前奏曲《ぜんそうきょく》』を使っていらっしゃいます。
協和音:これが貴方達の物語の*旋律《せんりつ》であり、始まりの音です。
第三王子:我々の…。
第三王子:なんて、なんて美しいんだ…。
第三王子:始まったばかりなのに、これほどの音出せていたのか。
コンダクター:待て!聞くな!!
コンダクター:私の話を聞けば、気が変わるはずだ!!
第三王子:あぁ…、私たちはこんな素晴らしい物語を奏でていたのか。
マエストロ:そう、これが君たちの物語。
マエストロ:最高の旋律だろう?
マエストロ:さぁ、戻る時間だよ。君の物語の世界へと。
第三王子:あぁ、ありがとう…。ちゃんと、戻ろう。
第三王子:兄上を、支えたかったが…きっと、違うかったのだな…。
マエストロ:そう言う事。
マエストロ:だって、こんな素晴らしい音を始まりで奏でているのだから。
マエストロ:さぁ、戻る時間だよ。
第三王子:ありがとう…。さらばだ。
マエストロ:…さようなら、英雄。
0:
0:第三王子が消える。
0:
コンダクター:待て!行くな!!我々ならば…!
協和音:お黙りください。
コンダクター:ぐっ…!許さん、マエストロ…!!
マエストロ:残念だね。でも、これが正しい道なんだよ。
コンダクター:何が、正しい道だ…!操っているだけではないか!!
コンダクター:誰にも自分で決める権利が…!
マエストロ:物語は決まっているのだよ。
マエストロ:それをわからない間は、ずっと君はコンダクターのままなんだよ。
マエストロ:だから諦めてね。マイスター君。
コンダクター:貴様…!くそっ…どけ!!
協和音:くっ…!
マエストロ:お、いつの間にか、拘束から抜け出せてたんだね!褒めてあげよう。
マエストロ:でもね、僕の大事な子を蹴らないでくれるかな…。
マエストロ:それにさ。君がどう*足掻《あが》いたって、この事実は何も変わる事はないんだよ。
マエストロ:君も指揮者なんだから、受け入れたらどうだい?
コンダクター:…次はこうならん。必ず『我ら』の悲願を成し*遂《と》げて見せる。
マエストロ:全く。はいはーい!頑張ってね!
コンダクター:最後まで憎たらしい…!
コンダクター:『ゲート』。
コンダクター:いつまで倒れている不協和音。行くぞ。
不協和音:くっ…承知シタ。主。
不協和音:次は必ず勝ツゾ。協和音。
0:
0:二人が去ってく。
0:
マエストロ:しつこい子だねぇ、全く。
マエストロ:協和音。僕の大事な子。蹴られた所は大丈夫かい?
協和音:問題ありません。
協和音:それよりも、終わりましたね。マスター。
コンダクター:そうだねぇ。
コンダクター:さて、協和音。
協和音:はい。
コンダクター:次も指揮していこうか。
0:
コンダクター:物語を、*円滑《えんかつ》に奏でるために。