台本概要

 256 views 

タイトル ひよこのこ
作者名 瀬川こゆ  (@hiina_segawa)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 「人間が好き」
ひよの口癖。
なんで?って聞くとだいたいこう返ってくる。
「面白いから」
でも愛してはいないし、愛されたくもない。
「くだらない事が好きなの。
人間はくだらないから好き」
そうやっていつも、何も考えていないように笑うんだ。

※大学生の恋愛書きたかったのに安定のどシリアスになったやつです。
直接的には書いていませんが、そう言った行為を匂わせる描写がある為、U15↑以外は上演をお控えください。

非商用時は連絡不要ですが、投げ銭機能のある配信媒体等で記録が残る場合はご一報と、概要欄等にクレジット表記をお願いします。

過度なアドリブ、改変、無許可での男女表記のあるキャラの性別変更は御遠慮ください。

 256 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
聡惟 168 「さとい」男子大学生。かなり病みやすいが表には出さないようにしている。愛されたがり。くそほどモテる。
ひよ里 164 時々、聡惟に付き纏う女子大生。気分屋なのでいつもべったりではない。※記事、兼役参照。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ひよ里:鳩(はと)? 聡惟:違う「さと」 聡惟:聡惟(さとい)。 ひよ里:いかん鳩にしか聞こえんぞ。 ひよ里:ぽっぽだ、鳩ぽっぽ。 聡惟:どう頑張ったら「さ」が「は」に聞こえるようになんだよお前の耳。 ひよ里:ちょ、試しにもっかい言ってみ? ひよ里:ね?もっかい。 聡惟:聡惟(さとい)。 ひよ里:聡惟(さとい)? 聡惟:そう、それ。 ひよ里:聡惟(さとい)が名前? 聡惟:そう。 ひよ里:なんで聡惟(さとい)なのに、 ひよ里:あだ名は鳩(はと)なのさ? 聡惟:だから違うっつってんだろ。 聡惟:「はと」じゃなくて「さと」。 聡惟:聡惟(さとい)だからあだ名が「さと」なの! 聡惟:分かった? ひよ里:へい。 聡惟:はぁ。 ひよ里:でも正直な事言ってもいいかい? 聡惟:なに? ひよ里:「さと」なのは分かったけど、 ひよ里:鳩(はと)の印象強くなっちゃってるの。 聡惟:だから? ひよ里:ぽっぽって呼ぶわ、これから君の事は。 聡惟:好きにすればいいんじゃない? ひよ里:ぽっぽー。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:塩間ひよ里(しおま ひより)。 聡惟:一応、僕が所属するサークルに居たらしい子。 聡惟:飲み会には割と来ていた、方。 聡惟:どうして曖昧かって言えば、 聡惟:そもそも今まで話した事が無かったから。 聡惟: 聡惟:お互いがお互いの存在を知りもしないで生きていて、 聡惟:そのまま何年か後にも「こんな人が居たなぁ」とか、 聡惟:思い浮かべもしないくらいになんの縁も無かった。 0:一拍。 ひよ里:めんどくさいじゃんね。 聡惟:何が? ひよ里:人間。 聡惟:あー。 ひよ里:だからぽっぽは凄いと思う。 聡惟:どこが? ひよ里:いい顔出来るから。 ひよ里:色んな女の子に。 聡惟:僕は愛されるのが好きだからねぇ。 ひよ里:悪い男だぁ。 聡惟:少なからず誰でもそう言う面を持ってるものでしょ。 ひよ里:あー確かに。 聡惟:ね? ひよ里:でもひよはもう無理。 聡惟:愛される事が? ひよ里:どっちも。 ひよ里:愛すのも愛されるのも、もういらない。 聡惟:そう。 ひよ里:あ、でも構って貰うのは好き。 ひよ里:ひよ、かまってちゃんだから。 聡惟:だろうねぇ。 ひよ里:にひ。 0:一拍 ひよ里:人間が好き。 聡惟:(M) 聡惟:ひよの口癖。 聡惟:なんで?って聞くとだいたいこう返ってくる。 ひよ里:面白いから。 聡惟:(M) 聡惟:でも愛してはいないし、 聡惟:愛されたくもない。 ひよ里:くだらない事が好きなの。 ひよ里:人間はくだらないから好き。 聡惟:(M) 聡惟:そうやっていつも、 聡惟:何も考えていないように笑うんだ。 聡惟: 聡惟:話しかけてきたのはどっちだったっけ? 聡惟:でもまぁたぶん、 聡惟:関わった理由はくだらなかったよ。 聡惟:だから網に掛かった魚の真似をしたんだろう?お前は。 0:一拍 0:ひよ里、物陰から出てくる。 ひよ里:おモテになりますなぁ、相変わらず。 聡惟:何、ひよ居たの? 聡惟:盗み聞きとは随分いい身分になったなぁ? ひよ里:違わい! ひよ里:歩いてたらなんかピンク色の雰囲気だったから、 ひよ里:今背景に通行人欲しくないだろうなぁって思って、気使って隠れてあげたんだー。 聡惟:変な気回さなくてもいいのに。 ひよ里:ぽっぽにじゃないやい。 ひよ里:女の子に気使ったんだい。 ひよ里:ひよがぽっぽに気使う理由がないもん。 聡惟:へぇ? ひよ里:ほら、ひよ女子供には優しいでしょ? ひよ里:慈愛に満ちてるからさぁ。 聡惟:いや知らねぇけど。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:何個貰った? 聡惟:数えてないから分かんない。 聡惟:なんか持ってく? ひよ里:いらない。 ひよ里:ひよ甘い物嫌い。 聡惟:へぇー。 ひよ里:「女の子のくせに」って思った? 聡惟:ううん? 聡惟:1人1人違うんだから、 聡惟:趣味趣向が違うのも当たり前でしょ。 ひよ里:にひひ。 聡惟:ほんと変な笑い方。 ひよ里:ひよ、ぽっぽのそう言うところ好きだよ。 聡惟:どう言うところ? ひよ里:自分と他人を割り切ってるところ。 聡惟:他は? ひよ里:うぇ、他ぁ? 聡惟:もっと好きって言って。 ひよ里:げぇ、そう言うのは他の子に頼んでよー。 聡惟:いいじゃん。 ひよ里:ぽっぽの好きなところなんかなぁ。 聡惟:うん。 ひよ里:…………顔? 聡惟:顔?(笑) ひよ里:そう、顔は好き。 ひよ里:ぽっぽの顔はひよ凄い好きだよ。 聡惟:"は"って言うなや。 聡惟:なんか僕が顔だけみたいじゃん。 ひよ里:その他の事は、 ひよ里:ぽっぽの周りが好きって言ってくれんだからいいでしょ? 聡惟:沢山言われたいの。 ひよ里:好きって? 聡惟:そう。 ひよ里:*貪欲《どんよく》。 聡惟:知ってる。 聡惟:知ってるから言って?ほら。 ひよ里:やーだねー。 ひよ里:ひよに好きを求めないでくださいー。 ひよ里:お門違いです、専門外です。 ひよ里:本日の営業は終了しましたー。 ひよ里:またのご来店を心よりお待ちしておりますー。 聡惟:何それ?(笑) ひよ里:閉店アナウンス。 聡惟:ひよはお店だったの?(笑) ひよ里:そうですよー。 ひよ里:塩間(しおま)デパートはもう営業時間外なんですー。 ひよ里:他をあたれやこのやろー。 ひよ里:警備員呼ぶぞー。 聡惟:はいはい分かりましたー。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:常日頃から何かある度に一緒に居る訳じゃない。 聡惟:ひよは気紛れ。 聡惟:だからひよの気が紛れた時にしか近寄って来ない。 聡惟:まぁ別に僕もひよが大事な訳じゃない。 聡惟:すれ違っても挨拶を交わす事もしないのに、 聡惟:1度関わったら朝までずっと一緒に居るなんて、僕達以外は誰も知らないのだ。 0:一拍 0:聡惟、女に泣き喚かれて引っ叩かれた後に暗い顔をしている。 聡惟:……。 ひよ里:ぽっぽ。 聡惟:……ひよ。 ひよ里:この後、暇? 聡惟:まぁ? ひよ里:遊ぼ。 聡惟:いいよ。 聡惟:どっか行く? ひよ里:うーん出来れば室内がいーの。 ひよ里:個室。 聡惟:カラオケとか? ひよ里:今日は歌いたくないからカラオケはいや。 ひよ里:なんだろ?ゆっくりお話したいんだ。 聡惟:何を? ひよ里:まだ決めてない。 聡惟:何それ?(笑) 聡惟:まぁいーや、個室……個室ねぇ。 ひよ里:どっかいい所あるかなぁ。 聡惟:……ホテルでも行く? ひよ里:わぁ!遊び人みたいな事言ったぞ今この人! 聡惟:誰が遊び人だ馬鹿。 聡惟:どうせお前腹は減ってないんでしょ? ひよ里:ご明察。 聡惟:腹減ってないなら居酒屋は無し。 聡惟:歌う気分でも無いからカラオケもパス。 聡惟:でも個室がいい。 聡惟:ホテルが1番手っ取り早いじゃん。 ひよ里:確かに。 聡惟:安いとこでいい? ひよ里:いいよ。 聡惟:じゃああそこだなぁ。 ひよ里:わぁいぽっぽにホテルに連れ込まれるぞー。 ひよ里:自衛しなきゃ自衛。 聡惟:危機管理能力がちゃんとある女の子は、 聡惟:そもそもそんなニコニコしながら着いてこない。 ひよ里:別に何かがある訳でもないじゃんね。 聡惟:何かがあったら? ひよ里:その時はその時! 聡惟:何それ(笑) 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:休憩、宿泊。 聡惟:でも休憩ってなんだよ? 聡惟:入っても休む訳じゃない。 聡惟:もっと疲れる事をする人の為の場所。 ひよ里:ひよは眠いから仮眠しに入るけど、 ひよ里:でも寝れないで終わっちゃうんだ。 ひよ里:なんでかなー。 聡惟:(M) 聡惟:道中ひよが言った一言。 聡惟:誰が聞いてもこう返すんじゃない? 聡惟:「当たり前だろ」って。 0:一拍。 0:某ホテルに入った二人。 ひよ里:思ったより広い! 聡惟:値段の割には綺麗? ひよ里:うん! 聡惟:とりあえず適当に、 ひよ里:ぽっぽ座ってて! 聡惟:はい? ひよ里:ひよ探索してくるから! 聡惟:探索? ひよ里:そう! 聡惟:別に初めて入った訳でもないだろ? ひよ里:そうだよ? ひよ里:でもひよ、こーゆー所好きだから、 ひよ里:先に探索するんだ! 聡惟:分かった。 ひよ里:わぁい。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:たぶん何回も見た筈の、 聡惟:ボタン押さなきゃ品物が出てこない冷蔵庫とか。 聡惟:入ったらお金を払うまで開かないドアとか。 聡惟:飛び降りる奴が多過ぎて、 聡惟:数cmしか動かない窓とか。 聡惟:それからさも雰囲気を作る手伝いをしますよーって言ってるみたいな、 聡惟:枕元にある眠たい音楽ばかりが流れる機械。 聡惟:そんなものをいちいち1つずつはしゃぎながら見ている、ひよ。 聡惟:テーマパークにでも来ているとでも思っているのか。 0:バスルームで笑うひよ里。 ひよ里:あはははは! ひよ里:ぽっぽー!ねー! 聡惟:なーに? ひよ里:ちょっと来てーこっち。 聡惟:なんで? ひよ里:いいからー。 0:一拍 聡惟:何? ひよ里:見てこれ、お風呂貝殻の形してるー。 聡惟:そうだね。 0:ひよ里、滑って転ぶ。 ひよ里:ヴィーナスごっこ出来るじゃん。 ひよ里:こう、真ん中に立って、わっ! 聡惟:ひよ?! ひよ里:いったーい!頭打った! 聡惟:はいはい。 ひよ里:このお風呂ゆっくり入るように出来てない。 聡惟:なんで? ひよ里:だって見てて。 ひよ里:こうやって背中付けるとさ、わっ! ひよ里:ほら!滑る。 聡惟:ゆっくり風呂入られるなんて、 聡惟:想定してないんでしょ。 ひよ里:女子会とかあるじゃん。 聡惟:女子会するならもっと値段が高い所とか、 聡惟:プランがある所に行くでしょ? ひよ里:ここプラン無いの? 聡惟:無かった。 ひよ里:へぇ。 聡惟:お湯貯めようか? ひよ里:なんで? 聡惟:先にお風呂入りたがる子が多いから。 聡惟:別に今日はこのままでもいいけどね。 ひよ里:待った待った待った!ぽっぽ! 聡惟:なに? ひよ里:色気!出てる!漏れてるよ! ひよ里:出す相手も誘う対象も違うじゃん! ひよ里:ひよじゃないじゃん! 聡惟:ここまで来といてそんな事言うんだ? ひよ里:ここまで来てるからそんな事言ってるの。 聡惟:あっそ。 ひよ里:他にいっぱい誘われたら喜びそうな子居るのに。 ひよ里:ぽっぽの事なんも思ってないひよに手出し、冷たっっ!なに?! 聡惟:ごめんねーうっかり手が滑って、 聡惟:シャワー出しちゃったわー。 ひよ里:やったなばか! ひよ里:服びしょびしょじゃん! 聡惟:僕も一緒に濡れるから許して、ひよ。 ひよ里:そう言う問題じゃないのにー。 0:聡惟、ひよ里に抱き着いてる。 聡惟:……。 ひよ里:……寂しい? 聡惟:うん。 ひよ里:だと思った。 聡惟:悪い? ひよ里:全然。 聡惟:好きって言って。 ひよ里:ありゃ甘えん坊モードですかい。 聡惟:好きって言って、僕の事。 聡惟:ねぇ、ひよ。 ひよ里:やーだ。 聡惟:なんで? ひよ里:ぽっぽの唯一無二になりたくないから。 聡惟:……。 聡惟:僕が嫌い? ひよ里:ううん。 聡惟:じゃあなんで、 ひよ里:だってひよがぽっぽの事好きになったら、 ひよ里:ぽっぽがひよの事好きになっちゃうじゃん。 聡惟:何が悪いんだよ。 ひよ里:悪いよ、悪い事しかない。 聡惟:どこが? ひよ里:ぽっぽは、ぽっぽの事が好きな人が好きじゃんね? 聡惟:そうだね。 ひよ里:それで初めに好きになったのはぽっぽじゃないのに、 ひよ里:ぽっぽは「好き」で居てくれるように全部すり減らそうとするじゃん。 聡惟:駄目なの? ひよ里:駄目じゃないけど、ひよは嫌。 ひよ里:ひよはね、 聡惟:うん。 ひよ里:ぽっぽにとって都合のいい位置に居たいの。 聡惟:お前全然都合よくねぇじゃん。 ひよ里:好きな時に好きな言葉を吐いてくれる対象としての、都合のいいじゃないからね。 聡惟:意味分かんない。 ひよ里:自分じゃどう足掻いても立てない時ってあるじゃん? 聡惟:まぁね。 ひよ里:そう言う時に気が付いたら隣に居る人がいい。 聡惟:私が立たせてあげる!とかじゃないの? ひよ里:ひよに引っ張られてぽっぽ立てる? 聡惟:立てない。 ひよ里:ほら。 ひよ里:単にあーもうそろそろぽっぽ駄目そうだなーって時に、「気晴らししよう」って言いに行くだけ。 聡惟:いつもは関わっても来ないのに、 聡惟:病んでる時に限って付き纏って来てたの、 聡惟:それが理由? ひよ里:まぁ平たく言えば。 聡惟:普通の時は一緒に居てくれないんだ。 ひよ里:だってその時ひよ必要ないじゃん。 聡惟:確かに。 ひよ里:ね?都合いいでしょ? 聡惟:うん。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:そしたら、そろそろ君はひよを離して、 ひよ里:シャワーを止めて、服着替えて。 ひよ里:そんで適当に9番で何か頼んで、 ひよ里:後はだらだらお話しよう。 聡惟:話す気分じゃない時は? ひよ里:それならなんかして遊ぼう。 ひよ里:ひよ隊員はさっき、テレビの下からゲーム機を発見したんだ。 聡惟:おけ、じゃあ話したくないから遊ぼう。 ひよ里:……まさぐってんのはお化けの手かな? 聡惟:いや、僕の手。 ひよ里:遊ぼう言った! 聡惟:だから遊ぼうとしてんじゃん。 ひよ里:大変だ!ホック外されたぞ! ひよ里:緊急事態だ! 聡惟:遊ぶからねぇ。 ひよ里:結局こうなるんですか? 聡惟:その時はその時なんでしょ? ひよ里:まぁねぇ。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:たぶん本心では僕達は、お互いを道具としてしか思っていない。 聡惟:血の通った人間じゃなくて、ただの玩具としか思っていない。 聡惟:それでも柔らかいしあったかい。 聡惟:僕に今必要なのはそれだけで、 聡惟:ひよはそれが分かったのか、嫌がる素振りを見せなかった。 0:一拍。 ひよ里:虚しくない? 聡惟:そりゃ虚しいよ。 ひよ里:ばーか。 聡惟:お前だって馬鹿じゃん。 ひよ里:切らなくて済む? 聡惟:今日はね。 ひよ里:ならいーや。 聡惟:お節介焼き。 ひよ里:知ってる。 聡惟:明日には戻るから。 ひよ里:別に無理して戻らなくてもいいんじゃない? 聡惟:無理してるように見える? ひよ里:今? 聡惟:うん。 ひよ里:全然。 聡惟:なら、そう言う事だよ。 ひよ里:そっか。 聡惟:……好きって言って。 ひよ里:やだ。 聡惟:こんな時でも駄目なんだ? 0:一拍 ひよ里:堕ちやすい人間が、 ひよ里:堕ちた人間と居ちゃいけないんだよ。 ひよ里:もう、上がれなくなる。 0:一拍 聡惟:(M) 聡惟:その次の日、ひよは居なくなった。 聡惟:ゼミにもサークルにも見掛けなくなって、 聡惟:「どうしたんだろう?」って噂をしていた仲間内も、 聡惟:やがて全く話題に出さないぐらいに時間が過ぎた。 0:一拍 聡惟:(M) 聡惟:元々捕まえていた訳じゃないのに、 聡惟:離してしまった気になるのはどうしてなんだろう。 0:間 0:夕暮れ時、突然聡惟の前に現れるひよ里。 ひよ里:ぽーぽっ! 聡惟:……ひよ? ひよ里:やぁやぁ久しぶりー。 聡惟:帰ってきたの? ひよ里:そうなるの? 聡惟:さぁ? ひよ里:まぁ、帰ってきたでいーや。 聡惟:元気だった? ひよ里:たぶん? 聡惟:そう。 ひよ里:心配だったから探してたんだい。 聡惟:僕が? ひよ里:うん。 聡惟:心配されるのも探されてたのもひよの方でしょ。 聡惟:急に居なくなって、みんな話してたぞ。 ひよ里:でもぽっぽは心配も探してもいないでしょ? 聡惟:まぁ。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:この後暇かい? 聡惟:暇だよ。 ひよ里:じゃあ遊ぼ。 聡惟:どこに行きたい? ひよ里:もう"どこでもいい"よ。 ひよ里:どこにでも行く。 聡惟:……。 聡惟:なら歩きながら決めようか。 ひよ里:分かった。 0:一拍 聡惟:ねぇ……ひよ。 ひよ里:なぁに? 聡惟:お前なんで、 0:一拍 聡惟:(M) 聡惟:なんとなく眺めていたネットニュース。 聡惟:関連記事を適当に選んで読んで、 聡惟:開いた記事の内容に息が止まった。 0:一拍 ひよ里:ぽっぽ? 聡惟:なんで、 0:一拍 記事:【通り魔の犯行か?!女子大生、刺殺される!】 記事:都内に住む女子大生が自宅付近の山中にて、遺体となって発見されました。 記事:司法解剖の結果、死因は腹部を刺された事による失血死と判明しています。 記事:警察は女子大生が何者かに殺害されたとみて、殺人・死体遺棄事件と断定して捜査本部を設置し犯人の行方を捜査しています。 0:一拍。 聡惟:なんで……勝手に死んでんだよ。 聡惟:なぁ?ひよ。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:ごめんねー。 聡惟:ごめんじゃねぇ。 ひよ里:でもひよが死んでも何も思わないでしょ? 聡惟:流石にそれはねぇよ。 聡惟:お前僕の事なんだと思ってんだ。 ひよ里:寂しがりの頑張り屋の愛されたがり。 聡惟:はぁ……。 ひよ里:まぁいーよ別に。 ひよ里:死にたくなかった訳じゃないしさ。 聡惟:人の事は死なねぇようにお節介焼くくせに。 ひよ里:だってひよ、ぽっぽの感情全部分かったんだもん。 聡惟:自分の事だけ考えてろよ。 ひよ里:ぽっぽにそれ出来る? 聡惟:無理。 ひよ里:じゃあひよにも出来る訳ないじゃん。 聡惟:なんで? ひよ里:似てるから。 聡惟:僕と? ひよ里:そう。 聡惟:どこが? ひよ里:全部。 ひよ里:ひよは自分が嫌いだから、 ひよ里:ひよに似てるぽっぽが心配。 聡惟:……。 聡惟:ひよは僕の妄想? ひよ里:違うよ。 ひよ里:でもたぶん幻。 聡惟:幽霊になってでも会いに来るほど執着してたの? ひよ里:どうだろうね? 聡惟:馬鹿なんじゃないの?お前。 ひよ里:なんで?いい事しかないじゃん。 聡惟:どこが? ひよ里:ひよはぽっぽにとって正真正銘の都合のいい存在になれたから。 聡惟:僕の事の好き? ひよ里:ううん。 聡惟:都合いい存在なら好きって言えよ。 ひよ里:やだねー。 聡惟:お前が好きって言ったら、 聡惟:それで終わる話じゃん……。 ひよ里:だからだよ。 ひよ里:ひよ、言ったじゃん。 ひよ里:「似てる」って。 聡惟:……。 ひよ里:本気で思えるの? ひよ里:自分と似た人間が、 ひよ里:簡単に終わらせる手段を選ぶって。 聡惟:……。 ひよ里:ひよ達みたいなのが、 ひよ里:そう簡単に終わらせる訳ないでしょ。 聡惟:そうだよなぁ……。 ひよ里:大丈夫だよ。 ひよ里:軽率に好きなんて、今もこれからも言わないから。 聡惟:求めてろって事? ひよ里:手に入らないから欲しいんじゃん。 聡惟:分かったよ、そこまでなんだね。 ひよ里:うん。 聡惟:隠し事上手だね、ひよ。 ひよ里:でしょ? ひよ里:騙すのは得意なの、自分の事はね。 聡惟:……もう呪いじゃん。 ひよ里:そうだね。 ひよ里:でも悪くないと思ってるんでしょ? 聡惟:はぁ……。 ひよ里:だってこうなれば、 ひよ里:ずっと一緒に居られるもんね。 0:一拍 聡惟:好きだよ、ひよ。 聡惟:だから僕が負けてあげる。 0:一拍 ひよ里:にひひ、楽しいね?ぽっぽ。

ひよ里:鳩(はと)? 聡惟:違う「さと」 聡惟:聡惟(さとい)。 ひよ里:いかん鳩にしか聞こえんぞ。 ひよ里:ぽっぽだ、鳩ぽっぽ。 聡惟:どう頑張ったら「さ」が「は」に聞こえるようになんだよお前の耳。 ひよ里:ちょ、試しにもっかい言ってみ? ひよ里:ね?もっかい。 聡惟:聡惟(さとい)。 ひよ里:聡惟(さとい)? 聡惟:そう、それ。 ひよ里:聡惟(さとい)が名前? 聡惟:そう。 ひよ里:なんで聡惟(さとい)なのに、 ひよ里:あだ名は鳩(はと)なのさ? 聡惟:だから違うっつってんだろ。 聡惟:「はと」じゃなくて「さと」。 聡惟:聡惟(さとい)だからあだ名が「さと」なの! 聡惟:分かった? ひよ里:へい。 聡惟:はぁ。 ひよ里:でも正直な事言ってもいいかい? 聡惟:なに? ひよ里:「さと」なのは分かったけど、 ひよ里:鳩(はと)の印象強くなっちゃってるの。 聡惟:だから? ひよ里:ぽっぽって呼ぶわ、これから君の事は。 聡惟:好きにすればいいんじゃない? ひよ里:ぽっぽー。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:塩間ひよ里(しおま ひより)。 聡惟:一応、僕が所属するサークルに居たらしい子。 聡惟:飲み会には割と来ていた、方。 聡惟:どうして曖昧かって言えば、 聡惟:そもそも今まで話した事が無かったから。 聡惟: 聡惟:お互いがお互いの存在を知りもしないで生きていて、 聡惟:そのまま何年か後にも「こんな人が居たなぁ」とか、 聡惟:思い浮かべもしないくらいになんの縁も無かった。 0:一拍。 ひよ里:めんどくさいじゃんね。 聡惟:何が? ひよ里:人間。 聡惟:あー。 ひよ里:だからぽっぽは凄いと思う。 聡惟:どこが? ひよ里:いい顔出来るから。 ひよ里:色んな女の子に。 聡惟:僕は愛されるのが好きだからねぇ。 ひよ里:悪い男だぁ。 聡惟:少なからず誰でもそう言う面を持ってるものでしょ。 ひよ里:あー確かに。 聡惟:ね? ひよ里:でもひよはもう無理。 聡惟:愛される事が? ひよ里:どっちも。 ひよ里:愛すのも愛されるのも、もういらない。 聡惟:そう。 ひよ里:あ、でも構って貰うのは好き。 ひよ里:ひよ、かまってちゃんだから。 聡惟:だろうねぇ。 ひよ里:にひ。 0:一拍 ひよ里:人間が好き。 聡惟:(M) 聡惟:ひよの口癖。 聡惟:なんで?って聞くとだいたいこう返ってくる。 ひよ里:面白いから。 聡惟:(M) 聡惟:でも愛してはいないし、 聡惟:愛されたくもない。 ひよ里:くだらない事が好きなの。 ひよ里:人間はくだらないから好き。 聡惟:(M) 聡惟:そうやっていつも、 聡惟:何も考えていないように笑うんだ。 聡惟: 聡惟:話しかけてきたのはどっちだったっけ? 聡惟:でもまぁたぶん、 聡惟:関わった理由はくだらなかったよ。 聡惟:だから網に掛かった魚の真似をしたんだろう?お前は。 0:一拍 0:ひよ里、物陰から出てくる。 ひよ里:おモテになりますなぁ、相変わらず。 聡惟:何、ひよ居たの? 聡惟:盗み聞きとは随分いい身分になったなぁ? ひよ里:違わい! ひよ里:歩いてたらなんかピンク色の雰囲気だったから、 ひよ里:今背景に通行人欲しくないだろうなぁって思って、気使って隠れてあげたんだー。 聡惟:変な気回さなくてもいいのに。 ひよ里:ぽっぽにじゃないやい。 ひよ里:女の子に気使ったんだい。 ひよ里:ひよがぽっぽに気使う理由がないもん。 聡惟:へぇ? ひよ里:ほら、ひよ女子供には優しいでしょ? ひよ里:慈愛に満ちてるからさぁ。 聡惟:いや知らねぇけど。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:何個貰った? 聡惟:数えてないから分かんない。 聡惟:なんか持ってく? ひよ里:いらない。 ひよ里:ひよ甘い物嫌い。 聡惟:へぇー。 ひよ里:「女の子のくせに」って思った? 聡惟:ううん? 聡惟:1人1人違うんだから、 聡惟:趣味趣向が違うのも当たり前でしょ。 ひよ里:にひひ。 聡惟:ほんと変な笑い方。 ひよ里:ひよ、ぽっぽのそう言うところ好きだよ。 聡惟:どう言うところ? ひよ里:自分と他人を割り切ってるところ。 聡惟:他は? ひよ里:うぇ、他ぁ? 聡惟:もっと好きって言って。 ひよ里:げぇ、そう言うのは他の子に頼んでよー。 聡惟:いいじゃん。 ひよ里:ぽっぽの好きなところなんかなぁ。 聡惟:うん。 ひよ里:…………顔? 聡惟:顔?(笑) ひよ里:そう、顔は好き。 ひよ里:ぽっぽの顔はひよ凄い好きだよ。 聡惟:"は"って言うなや。 聡惟:なんか僕が顔だけみたいじゃん。 ひよ里:その他の事は、 ひよ里:ぽっぽの周りが好きって言ってくれんだからいいでしょ? 聡惟:沢山言われたいの。 ひよ里:好きって? 聡惟:そう。 ひよ里:*貪欲《どんよく》。 聡惟:知ってる。 聡惟:知ってるから言って?ほら。 ひよ里:やーだねー。 ひよ里:ひよに好きを求めないでくださいー。 ひよ里:お門違いです、専門外です。 ひよ里:本日の営業は終了しましたー。 ひよ里:またのご来店を心よりお待ちしておりますー。 聡惟:何それ?(笑) ひよ里:閉店アナウンス。 聡惟:ひよはお店だったの?(笑) ひよ里:そうですよー。 ひよ里:塩間(しおま)デパートはもう営業時間外なんですー。 ひよ里:他をあたれやこのやろー。 ひよ里:警備員呼ぶぞー。 聡惟:はいはい分かりましたー。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:常日頃から何かある度に一緒に居る訳じゃない。 聡惟:ひよは気紛れ。 聡惟:だからひよの気が紛れた時にしか近寄って来ない。 聡惟:まぁ別に僕もひよが大事な訳じゃない。 聡惟:すれ違っても挨拶を交わす事もしないのに、 聡惟:1度関わったら朝までずっと一緒に居るなんて、僕達以外は誰も知らないのだ。 0:一拍 0:聡惟、女に泣き喚かれて引っ叩かれた後に暗い顔をしている。 聡惟:……。 ひよ里:ぽっぽ。 聡惟:……ひよ。 ひよ里:この後、暇? 聡惟:まぁ? ひよ里:遊ぼ。 聡惟:いいよ。 聡惟:どっか行く? ひよ里:うーん出来れば室内がいーの。 ひよ里:個室。 聡惟:カラオケとか? ひよ里:今日は歌いたくないからカラオケはいや。 ひよ里:なんだろ?ゆっくりお話したいんだ。 聡惟:何を? ひよ里:まだ決めてない。 聡惟:何それ?(笑) 聡惟:まぁいーや、個室……個室ねぇ。 ひよ里:どっかいい所あるかなぁ。 聡惟:……ホテルでも行く? ひよ里:わぁ!遊び人みたいな事言ったぞ今この人! 聡惟:誰が遊び人だ馬鹿。 聡惟:どうせお前腹は減ってないんでしょ? ひよ里:ご明察。 聡惟:腹減ってないなら居酒屋は無し。 聡惟:歌う気分でも無いからカラオケもパス。 聡惟:でも個室がいい。 聡惟:ホテルが1番手っ取り早いじゃん。 ひよ里:確かに。 聡惟:安いとこでいい? ひよ里:いいよ。 聡惟:じゃああそこだなぁ。 ひよ里:わぁいぽっぽにホテルに連れ込まれるぞー。 ひよ里:自衛しなきゃ自衛。 聡惟:危機管理能力がちゃんとある女の子は、 聡惟:そもそもそんなニコニコしながら着いてこない。 ひよ里:別に何かがある訳でもないじゃんね。 聡惟:何かがあったら? ひよ里:その時はその時! 聡惟:何それ(笑) 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:休憩、宿泊。 聡惟:でも休憩ってなんだよ? 聡惟:入っても休む訳じゃない。 聡惟:もっと疲れる事をする人の為の場所。 ひよ里:ひよは眠いから仮眠しに入るけど、 ひよ里:でも寝れないで終わっちゃうんだ。 ひよ里:なんでかなー。 聡惟:(M) 聡惟:道中ひよが言った一言。 聡惟:誰が聞いてもこう返すんじゃない? 聡惟:「当たり前だろ」って。 0:一拍。 0:某ホテルに入った二人。 ひよ里:思ったより広い! 聡惟:値段の割には綺麗? ひよ里:うん! 聡惟:とりあえず適当に、 ひよ里:ぽっぽ座ってて! 聡惟:はい? ひよ里:ひよ探索してくるから! 聡惟:探索? ひよ里:そう! 聡惟:別に初めて入った訳でもないだろ? ひよ里:そうだよ? ひよ里:でもひよ、こーゆー所好きだから、 ひよ里:先に探索するんだ! 聡惟:分かった。 ひよ里:わぁい。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:たぶん何回も見た筈の、 聡惟:ボタン押さなきゃ品物が出てこない冷蔵庫とか。 聡惟:入ったらお金を払うまで開かないドアとか。 聡惟:飛び降りる奴が多過ぎて、 聡惟:数cmしか動かない窓とか。 聡惟:それからさも雰囲気を作る手伝いをしますよーって言ってるみたいな、 聡惟:枕元にある眠たい音楽ばかりが流れる機械。 聡惟:そんなものをいちいち1つずつはしゃぎながら見ている、ひよ。 聡惟:テーマパークにでも来ているとでも思っているのか。 0:バスルームで笑うひよ里。 ひよ里:あはははは! ひよ里:ぽっぽー!ねー! 聡惟:なーに? ひよ里:ちょっと来てーこっち。 聡惟:なんで? ひよ里:いいからー。 0:一拍 聡惟:何? ひよ里:見てこれ、お風呂貝殻の形してるー。 聡惟:そうだね。 0:ひよ里、滑って転ぶ。 ひよ里:ヴィーナスごっこ出来るじゃん。 ひよ里:こう、真ん中に立って、わっ! 聡惟:ひよ?! ひよ里:いったーい!頭打った! 聡惟:はいはい。 ひよ里:このお風呂ゆっくり入るように出来てない。 聡惟:なんで? ひよ里:だって見てて。 ひよ里:こうやって背中付けるとさ、わっ! ひよ里:ほら!滑る。 聡惟:ゆっくり風呂入られるなんて、 聡惟:想定してないんでしょ。 ひよ里:女子会とかあるじゃん。 聡惟:女子会するならもっと値段が高い所とか、 聡惟:プランがある所に行くでしょ? ひよ里:ここプラン無いの? 聡惟:無かった。 ひよ里:へぇ。 聡惟:お湯貯めようか? ひよ里:なんで? 聡惟:先にお風呂入りたがる子が多いから。 聡惟:別に今日はこのままでもいいけどね。 ひよ里:待った待った待った!ぽっぽ! 聡惟:なに? ひよ里:色気!出てる!漏れてるよ! ひよ里:出す相手も誘う対象も違うじゃん! ひよ里:ひよじゃないじゃん! 聡惟:ここまで来といてそんな事言うんだ? ひよ里:ここまで来てるからそんな事言ってるの。 聡惟:あっそ。 ひよ里:他にいっぱい誘われたら喜びそうな子居るのに。 ひよ里:ぽっぽの事なんも思ってないひよに手出し、冷たっっ!なに?! 聡惟:ごめんねーうっかり手が滑って、 聡惟:シャワー出しちゃったわー。 ひよ里:やったなばか! ひよ里:服びしょびしょじゃん! 聡惟:僕も一緒に濡れるから許して、ひよ。 ひよ里:そう言う問題じゃないのにー。 0:聡惟、ひよ里に抱き着いてる。 聡惟:……。 ひよ里:……寂しい? 聡惟:うん。 ひよ里:だと思った。 聡惟:悪い? ひよ里:全然。 聡惟:好きって言って。 ひよ里:ありゃ甘えん坊モードですかい。 聡惟:好きって言って、僕の事。 聡惟:ねぇ、ひよ。 ひよ里:やーだ。 聡惟:なんで? ひよ里:ぽっぽの唯一無二になりたくないから。 聡惟:……。 聡惟:僕が嫌い? ひよ里:ううん。 聡惟:じゃあなんで、 ひよ里:だってひよがぽっぽの事好きになったら、 ひよ里:ぽっぽがひよの事好きになっちゃうじゃん。 聡惟:何が悪いんだよ。 ひよ里:悪いよ、悪い事しかない。 聡惟:どこが? ひよ里:ぽっぽは、ぽっぽの事が好きな人が好きじゃんね? 聡惟:そうだね。 ひよ里:それで初めに好きになったのはぽっぽじゃないのに、 ひよ里:ぽっぽは「好き」で居てくれるように全部すり減らそうとするじゃん。 聡惟:駄目なの? ひよ里:駄目じゃないけど、ひよは嫌。 ひよ里:ひよはね、 聡惟:うん。 ひよ里:ぽっぽにとって都合のいい位置に居たいの。 聡惟:お前全然都合よくねぇじゃん。 ひよ里:好きな時に好きな言葉を吐いてくれる対象としての、都合のいいじゃないからね。 聡惟:意味分かんない。 ひよ里:自分じゃどう足掻いても立てない時ってあるじゃん? 聡惟:まぁね。 ひよ里:そう言う時に気が付いたら隣に居る人がいい。 聡惟:私が立たせてあげる!とかじゃないの? ひよ里:ひよに引っ張られてぽっぽ立てる? 聡惟:立てない。 ひよ里:ほら。 ひよ里:単にあーもうそろそろぽっぽ駄目そうだなーって時に、「気晴らししよう」って言いに行くだけ。 聡惟:いつもは関わっても来ないのに、 聡惟:病んでる時に限って付き纏って来てたの、 聡惟:それが理由? ひよ里:まぁ平たく言えば。 聡惟:普通の時は一緒に居てくれないんだ。 ひよ里:だってその時ひよ必要ないじゃん。 聡惟:確かに。 ひよ里:ね?都合いいでしょ? 聡惟:うん。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:そしたら、そろそろ君はひよを離して、 ひよ里:シャワーを止めて、服着替えて。 ひよ里:そんで適当に9番で何か頼んで、 ひよ里:後はだらだらお話しよう。 聡惟:話す気分じゃない時は? ひよ里:それならなんかして遊ぼう。 ひよ里:ひよ隊員はさっき、テレビの下からゲーム機を発見したんだ。 聡惟:おけ、じゃあ話したくないから遊ぼう。 ひよ里:……まさぐってんのはお化けの手かな? 聡惟:いや、僕の手。 ひよ里:遊ぼう言った! 聡惟:だから遊ぼうとしてんじゃん。 ひよ里:大変だ!ホック外されたぞ! ひよ里:緊急事態だ! 聡惟:遊ぶからねぇ。 ひよ里:結局こうなるんですか? 聡惟:その時はその時なんでしょ? ひよ里:まぁねぇ。 0:一拍。 聡惟:(M) 聡惟:たぶん本心では僕達は、お互いを道具としてしか思っていない。 聡惟:血の通った人間じゃなくて、ただの玩具としか思っていない。 聡惟:それでも柔らかいしあったかい。 聡惟:僕に今必要なのはそれだけで、 聡惟:ひよはそれが分かったのか、嫌がる素振りを見せなかった。 0:一拍。 ひよ里:虚しくない? 聡惟:そりゃ虚しいよ。 ひよ里:ばーか。 聡惟:お前だって馬鹿じゃん。 ひよ里:切らなくて済む? 聡惟:今日はね。 ひよ里:ならいーや。 聡惟:お節介焼き。 ひよ里:知ってる。 聡惟:明日には戻るから。 ひよ里:別に無理して戻らなくてもいいんじゃない? 聡惟:無理してるように見える? ひよ里:今? 聡惟:うん。 ひよ里:全然。 聡惟:なら、そう言う事だよ。 ひよ里:そっか。 聡惟:……好きって言って。 ひよ里:やだ。 聡惟:こんな時でも駄目なんだ? 0:一拍 ひよ里:堕ちやすい人間が、 ひよ里:堕ちた人間と居ちゃいけないんだよ。 ひよ里:もう、上がれなくなる。 0:一拍 聡惟:(M) 聡惟:その次の日、ひよは居なくなった。 聡惟:ゼミにもサークルにも見掛けなくなって、 聡惟:「どうしたんだろう?」って噂をしていた仲間内も、 聡惟:やがて全く話題に出さないぐらいに時間が過ぎた。 0:一拍 聡惟:(M) 聡惟:元々捕まえていた訳じゃないのに、 聡惟:離してしまった気になるのはどうしてなんだろう。 0:間 0:夕暮れ時、突然聡惟の前に現れるひよ里。 ひよ里:ぽーぽっ! 聡惟:……ひよ? ひよ里:やぁやぁ久しぶりー。 聡惟:帰ってきたの? ひよ里:そうなるの? 聡惟:さぁ? ひよ里:まぁ、帰ってきたでいーや。 聡惟:元気だった? ひよ里:たぶん? 聡惟:そう。 ひよ里:心配だったから探してたんだい。 聡惟:僕が? ひよ里:うん。 聡惟:心配されるのも探されてたのもひよの方でしょ。 聡惟:急に居なくなって、みんな話してたぞ。 ひよ里:でもぽっぽは心配も探してもいないでしょ? 聡惟:まぁ。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:この後暇かい? 聡惟:暇だよ。 ひよ里:じゃあ遊ぼ。 聡惟:どこに行きたい? ひよ里:もう"どこでもいい"よ。 ひよ里:どこにでも行く。 聡惟:……。 聡惟:なら歩きながら決めようか。 ひよ里:分かった。 0:一拍 聡惟:ねぇ……ひよ。 ひよ里:なぁに? 聡惟:お前なんで、 0:一拍 聡惟:(M) 聡惟:なんとなく眺めていたネットニュース。 聡惟:関連記事を適当に選んで読んで、 聡惟:開いた記事の内容に息が止まった。 0:一拍 ひよ里:ぽっぽ? 聡惟:なんで、 0:一拍 記事:【通り魔の犯行か?!女子大生、刺殺される!】 記事:都内に住む女子大生が自宅付近の山中にて、遺体となって発見されました。 記事:司法解剖の結果、死因は腹部を刺された事による失血死と判明しています。 記事:警察は女子大生が何者かに殺害されたとみて、殺人・死体遺棄事件と断定して捜査本部を設置し犯人の行方を捜査しています。 0:一拍。 聡惟:なんで……勝手に死んでんだよ。 聡惟:なぁ?ひよ。 ひよ里:にひひ。 ひよ里:ごめんねー。 聡惟:ごめんじゃねぇ。 ひよ里:でもひよが死んでも何も思わないでしょ? 聡惟:流石にそれはねぇよ。 聡惟:お前僕の事なんだと思ってんだ。 ひよ里:寂しがりの頑張り屋の愛されたがり。 聡惟:はぁ……。 ひよ里:まぁいーよ別に。 ひよ里:死にたくなかった訳じゃないしさ。 聡惟:人の事は死なねぇようにお節介焼くくせに。 ひよ里:だってひよ、ぽっぽの感情全部分かったんだもん。 聡惟:自分の事だけ考えてろよ。 ひよ里:ぽっぽにそれ出来る? 聡惟:無理。 ひよ里:じゃあひよにも出来る訳ないじゃん。 聡惟:なんで? ひよ里:似てるから。 聡惟:僕と? ひよ里:そう。 聡惟:どこが? ひよ里:全部。 ひよ里:ひよは自分が嫌いだから、 ひよ里:ひよに似てるぽっぽが心配。 聡惟:……。 聡惟:ひよは僕の妄想? ひよ里:違うよ。 ひよ里:でもたぶん幻。 聡惟:幽霊になってでも会いに来るほど執着してたの? ひよ里:どうだろうね? 聡惟:馬鹿なんじゃないの?お前。 ひよ里:なんで?いい事しかないじゃん。 聡惟:どこが? ひよ里:ひよはぽっぽにとって正真正銘の都合のいい存在になれたから。 聡惟:僕の事の好き? ひよ里:ううん。 聡惟:都合いい存在なら好きって言えよ。 ひよ里:やだねー。 聡惟:お前が好きって言ったら、 聡惟:それで終わる話じゃん……。 ひよ里:だからだよ。 ひよ里:ひよ、言ったじゃん。 ひよ里:「似てる」って。 聡惟:……。 ひよ里:本気で思えるの? ひよ里:自分と似た人間が、 ひよ里:簡単に終わらせる手段を選ぶって。 聡惟:……。 ひよ里:ひよ達みたいなのが、 ひよ里:そう簡単に終わらせる訳ないでしょ。 聡惟:そうだよなぁ……。 ひよ里:大丈夫だよ。 ひよ里:軽率に好きなんて、今もこれからも言わないから。 聡惟:求めてろって事? ひよ里:手に入らないから欲しいんじゃん。 聡惟:分かったよ、そこまでなんだね。 ひよ里:うん。 聡惟:隠し事上手だね、ひよ。 ひよ里:でしょ? ひよ里:騙すのは得意なの、自分の事はね。 聡惟:……もう呪いじゃん。 ひよ里:そうだね。 ひよ里:でも悪くないと思ってるんでしょ? 聡惟:はぁ……。 ひよ里:だってこうなれば、 ひよ里:ずっと一緒に居られるもんね。 0:一拍 聡惟:好きだよ、ひよ。 聡惟:だから僕が負けてあげる。 0:一拍 ひよ里:にひひ、楽しいね?ぽっぽ。