台本概要
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タイトル | 憂鬱で退屈な日常 |
---|---|
作者名 | 明桜 リア (@ria_meiou) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男1、不問4) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
君は見破れるかな? この事件の真相を。 わかればきっと…人間の深淵を見てしまった事になる。 *使用について* ・使用許可は要りません。 ・配信に使っていただいても構いませんん。もし使うよーって言ってくださったら、飛んで見に行きます。 ・自作発言はお控えください。 ・改変、加工は可能です 後は、とにかく楽しんで演じてください! 141 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
橋咲 | 不問 | 49 | 優しげに見えて、根本をついてくる切れ者。しかし何かを見落としている。部下を信用している。 |
菅野 | 不問 | 51 | 機械的に物事を進めていく。もしかして…? |
紺野 | 男 | 18 | 熱血で単純な男。騙されやすいタイプ。先輩方を信頼している。盲目。※モブ警官と兼ね役。 |
透 | 不問 | 74 | 今回の事件の容疑者。なんで自分が容疑者になってしまっているのかが理解できずにいる。 |
モブ警察官 | 男 | 3 | 勾留所の見張り役。※紺野と兼ね役。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
透:これは経験した話。
透:きっと、誰も経験したことなどないだろう。
透:そう、自分もあの時まではなかった。
透:決して忘れることなんて、出来やしないんだ。
0:
橋咲:こんばんは。
透:…どうも。
橋咲:まぁ、そう警戒しなさんな。
橋咲:私は橋咲(はしざき)、後ろにいるのが
菅野:菅野(すがの)と申します。
橋咲:私たちは自己紹介をしたから、君の名前を教えてもらってもいいかな?
透:透。
橋咲:そうか。じゃあ、透。
透:何。
橋咲:君はなぜ今ここにいるのか分かるかな?
透:分かるわけない…。
透:逆に聞きますけど、俺はなんで連れてこられたのですか…。
橋咲:ここに連れてきた理由は、君は殺人事件の容疑者。
橋咲:容疑の内容は、十代の女性をナイフで刺した事だ。
透:…でも証拠がないじゃないか…。
橋咲:証拠がなくても同行を要請可能なんだよ。
橋咲:でも任意だったのに、君は着いてきた。とうしてかな?
透:任意と言いながら、周りに人がいる中で囲み込んだくせに…。
透:まるで、犯人かのように。
橋咲:まぁ、それは私たちも悪かった。
橋咲:断り辛い状況を作ってしまったな。
透:全然謝る気がないじゃないですか。
橋咲:そんなことはない。
橋咲:部下にもきちんと説教しておいた。
橋咲:そうだよな?菅野。
菅野:はい、それは私が確認しております。
橋咲:とう事なんだ、本当にすまない。
橋咲:手荒な真似をしてしまって。
透:もういいです…。
透:どうせ俺には説教をしたのかどうかなんて分かんないですから。
透:で、任意で連れてこられたんですか?
橋咲:連れてきた理由か…。
橋咲:君と思われる人物の目撃情報があってね。
橋咲:話を聞きたくて、来てもらったんだ。
透:僕は…やってない…。
透:どんな人が僕を見たって言ったのか分からないけど、僕みたいな人間なんて、いっぱいいるだろ。
橋咲:目撃情報は不確かなものだ。
橋咲:しかし、本当に君がその時間に出歩いていないのかを確かめるため、ここに来てもらったんだ。
透:そんな曖昧な理由で僕を…。
透:これだから警察は信用できないんだ。
透:はぁ…。でもさっさと終わらしたいから、話を聞くなら早くしてくれ…。
橋咲:そうか。では手っ取り早く進めよう。
橋咲:とりあえず、情報整理をしようか。
橋咲:菅野。
菅野:はい。貴方は午後22時に東京都西東京市『西東京こいこいの森公園』にて、十代の女性を殺害。
菅野:最近、この公園付近で十代の若者が殺害されている事件が多発しており、殺されている女性もこの連続で起こっている事件の被害者ではないかと推測されています。
菅野:こちらが事件の内容です。
菅野:貴方に来ていただいた理由は、どの犯行現場においても貴方と似た容姿の人物の目撃情報があった為、任意同行を要請した。
橋咲:…と言うものだ。
透:それだけか。
橋咲:ん?
透:それだけの理由で俺が捕まったのか?
橋咲:そうだ。
透:俺と似た容姿の人間なんて、たくさんいるじゃないか!
透:なのに、俺だと確信もできてないのに任意同行させようなんてことが、俺には理解できない!
橋咲:それについては、同意しよう。
橋咲:でも我々警察は、一般市民の言葉に耳を傾けないといけない。
橋咲:目撃情報があったと言われたら、その時間に君が何をしていたのかを聞かなくてはいけないんだ。
透:たった一つの証言で、僕は公衆面前で囲まれたのか…。
橋咲:すまないな。
0:
0:菅野の携帯がなる。
0:
菅野:失礼します。
菅野:もしもし。…はい、その話については伺っています。はい…そうですか。わかりました。では。
菅野:橋咲警部。
橋咲:どうした?
菅野:お耳を…。
菅野:(小声で)被害者の爪の間から、容疑者のDNAが出ました。
そうか、なるほど…。
透:何かわかったのか?
透:もしかして、証拠か何かか?
透:それなら、僕じゃないってわかってもらえたよな。
橋咲:(遮って)いや、申し訳ないがその希望は捨ててくれ。
透:は…?
橋咲:君が殺したという証拠が出た。
透:は!?そ、そんなわけ…!!
橋咲:先ほどの連絡は、とある証拠が出たという内容だった。
橋咲:それは被害者の爪にに皮膚片が付着していたDNAを検査した結果だった。
透:は、はは…ならそれは、僕のじゃない。
透:その人になんて、会った事ないんだから。
橋咲:それがそうではなかった。
橋咲:DNAは君を指していた。
橋咲:つまり君は、もう立派な犯罪者というわけだ。
透:そんな…、まさかそんなわけがない!!
透:その時間には、俺は家にいたんだ!ゲームをしてた!!
菅野:それを証明する人間は?
透:そ、それは…。あ!家族、家族が…。
透:いや、違う…。そうだ、そうだったな。
透:家族は僕の事を見ているはずがないんだ。
透:僕は、汚点だから…。
橋咲:汚点、とはどういう事かな?
透:聞いた通りの意味だ。
透:僕の家系は代々医者の家系だった。
透:だから、必ず医者になる。これが当たり前のことだった。
透:でも、僕は頭が良くないし、要領も悪かった。
透:だから家では、僕よりも頭も良くて要領がいい兄弟の方が愛されてる。
菅野:…それで、ご家族は証言者になってくれないんですか?
透:そうだよ。家だろうが、学校だろうが、誰も俺なんて見てくれちゃいない。
橋咲:なるほど。じゃあ、目撃証言も取れないと。
透:…そうだな。そういう事だよ。
橋咲:では、これらの証拠を合わせると君が犯人、という事だな。
透:でも!でも…僕は…。
菅野:まぁ、一つは不確定の物なので、決めれませんが。
透:そ、そうだ!目撃情報は曖昧だ!
橋咲:実はもう一つ犯人が残していったものがあってね。
透:それはなんだよ。
橋咲:それは、指紋だ。
透:指紋…?
橋咲:そう。凶器についていた指紋だよ。
透:そんなの、俺じゃないに決まってる。
橋咲:では指紋提出はできるね。
透:当たり前だ!
橋咲:では頼むよ。菅野、鑑識班を呼んでくれ。
菅野:承知しました。
透:好きにしてくれ。
0:
0:指紋を取る。
0:
橋咲:ご協力ありがとう。
透:拭くものをくださいよ。
菅野:こちらをお使いください。
透:ありがとうございます。
橋咲:では、報告が来るのを待とう。
橋咲:しばらくは話でもしておこうか。
透:いらない。話す必要なんてない。
橋咲:そうなのかい?君と話がしてみたかったんだが。
透:あんたと話すことなんてない。
橋咲:そうかい。
0:
0:扉が勢いよく開く。
0:
紺野:橋咲警部!
橋咲:どうした、紺野。
紺野:お耳をお貸しいただけますか?
紺野:(小声で)指紋も容疑者と合致しました。
橋咲:そうか…。
透:なんだよ…なんなんだよ…。
橋咲:紺野。
紺野:はい。16時35分、午後22時に東京都西東京市『西東京こいこいの森公園』にて、十代の女性をナイフで殺害した容疑で逮捕する。
透:ちょ、なんで!どうして俺が!!!
紺野:君のDNAだけでなく、先ほどの提出してもらった指紋も現場に残っていた遺留物であるナイフについていたものと一致した。
透:出るわけない!
紺野:このナイフに見覚えは?
透:見た事ない!
透:こんなナイフ、どこにでもあるだろ!!
紺野:そう、このナイフはどこにでもあるものだ。
紺野:しかし写真の凶器には君の指紋がついていた。
透:ま、待てよ!!俺はこんなの知らない!!
紺野:証拠が全ても物語っているんだ。
紺野:正直に認めろ!!
透:そ、そんな…。
紺野:何を言おうとも、もうお前は殺害犯だ!!
紺野:さっさと諦めて、現実を受け止めるんだな。
紺野:逮捕する。
透:で、でも!指紋なんて、つけるままにする奴いんのかよ!
透:普通は…そう、手袋とかすんだろ!?
紺野:どう言う経緯でついたのかは知らないが、お前が失敗しただけだろう。
紺野:つべこべ言わずに大人しくしろ!!
透:なんでしてないことを認めないといけないんだよ!!
紺野:うるさい!貴様がした事は許される事じゃないんだよ!
紺野:この、殺害犯が!!
透:ッ!!
橋咲:こらこら、紺野。
橋咲:君が熱心なのはわかるが、強く言い過ぎだ。
紺野:しかし…!!
橋咲:我々のすることは、犯人を逮捕すること。
橋咲:糾弾(きゅうだん)することではない。
紺野:すみません…。
橋咲:わかったならいい。
橋咲:では紺野。手錠をかけなさい。
紺野:わかりました。
0:
0:手錠をかけられる。
0:
橋咲:それでは透くん、このまま勾留場まで案内しよう。
菅野:警部。それには及びません。
橋咲:ん?
菅野:私が彼を案内いたします。
紺野:菅野さん!!
菅野:大丈夫です。私だけでも制圧することは可能です。
紺野:それでも、こいつは連続殺人犯だ!
紺野:危ないに決まってます!!
菅野:私を信用できませんか?
紺野:そう言ってるわけでは…!!
橋咲:まぁまぁ、紺野。菅野の力はよく知っているだろう?
橋咲:なら任せて大丈夫だ。
紺野:…わかりました。
橋咲:菅野。頼んだぞ。
菅野:了解しました。
菅野:ついてきてください。
透:…。
0:
0:場面転換。勾留場。
0:
菅野:こちらです。
透:こんなところに入るのか?
菅野:あなたは容疑者ですので。
透:容疑者…ね。
菅野:…申し訳ないですが、容疑者と二人にしてください。
菅野:大丈夫です。
菅野:彼には攻撃できませんので。
透:なんだよ。二人になって、罵声を浴びせたいとか?
透:それとも、笑いたいのか?
菅野:…った。
透:は?
菅野:(少しずつ大きくしていくように)上手くいった上手くいった上手くいった上手くいった!!!
透:な、なんだよ!何言ってんだ、あんた!!
菅野:なぁんだ、こんなにもスムーズに進んでいってくれて、本当に嬉しいわ…。
透:な、何を言って…。
菅野:おかしいと思わなかった?
透:何が、だよ。
菅野:いい?私が言いたいのはね?
菅野:簡単にこぉんなにもたくさんの証拠がそろっている事よ。
透:え…。
菅野:あなたはいつも一人、ご飯はコンビニ弁当。
菅野:友人はいない。ネットゲームが好き。
透:は?
菅野:ネット友達しかおらず、現実の世界では一人きり。
菅野:誰からも見放されている存在。
透:あんた何言って
菅野:(被せるように)常にフード付きの服を着て歩いている。
菅野:フードを目ぶかにかぶって。
菅野:髪の毛は、時々安い理髪店で切ってもらっている。しかし、短髪にはしない
菅野:必ず前髪で目が隠れるようにしている。
透:なんだよ、なんだよ!
菅野:あぁ、忘れてた。
菅野:コンビニに行く時はあの公園の近くを通るんでしたね?
透:なんで、なんでそんな事を細かく知ってんだよ!!
透:なんなんだよ、お前!!
菅野:何…ですか。
菅野:そんな事、簡単明白。
菅野:私がこの事件の、連続殺害犯だから。
透:な…そんな…!
菅野:あなたが一人で誰にも相手をされていないような人間で、本当に安心したわ…。
菅野:おかげで、私は簡単に貴方を犯人にすることができた…。
菅野:ありがとうね。私の操り人形さん。
透:く、狂ってる…。
菅野:なんでか分からないけれど、ふふ、よく言われるわ。
透:で、でも!!どうやって、俺のDNAや指紋を手に入れたんだよ!!
菅野:公園で黄昏ていた時に、隣に座った人を覚えているかな?
透:え…。
菅野:覚えているようで安心した。
菅野:そう。それも私。
透:で、でも、そうであったとしても、どうやってとったんだよ!!
菅野:何も覚えていないのね。
菅野:あの時に缶コーヒーを渡されて飲んだでしょう?
透:確かに飲んだ…、あ、あぁ…!
菅野:そう、あの時の君が飲んだ缶コーヒーを捨てるふりをして、持って帰ったんだよ。
菅野:それで指紋が取れた。
菅野:それだけじゃない。
菅野:私はね、透くん。君を間違って引っ掻いてしまった。
菅野:というのは、覚えてるかなぁ?
透:ひっ…。
菅野:そう!君のDNAはそこから貰ったんだ。
菅野:ありがとう。君が素直に、私の行動に乗ってくれて…。
透:で、でも…連続殺人のは…?
菅野:あぁー。それはね、私の憂さ晴らし。
透:憂さ、晴らし…。
菅野:そう。この仕事をしてるとね。疲れてきちゃうんだよ。
菅野:めんどくさい連中も多いし。
菅野:だから、私は憂さ晴らしをしている。
透:なんでそんな酷いことできるんだ…!!
菅野:酷くなんてないよ?
菅野:むしろ、褒めて欲しい。
菅野:社会のゴミを排除したんだから。
透:…その人たちは、アンタになんかしたのかよ…。
菅野:うーん…強いていうなら、人たちに迷惑をかけてるってところかな。
菅野:私には実害はないけどね。
透:そんなことできるなんて、人間じゃない!!
菅野:人間じゃない?
菅野:何を言ってるの。私は警察官。
菅野:人間として、立派な人間よ。
透:クソが…!!
菅野:酷い言葉だ。泣いてしまいそう。
菅野:まぁ、でも私が捕まってないことこそ、やっている事は正義なんだよ。
菅野:わかるかな?
透:そんなの言い訳だ!
菅野:言い訳ではないなぁ。事実だ。
菅野:それと付け加えさせてほしい。
透:なんだよ。
菅野:(耳元で囁くように)君で三人目だよ。こうして、犯人になってくれるのは…。
透:ッお前ェェェェ!!!
0:
0:勾留所の扉が開く。
0:
モブ警察官:菅野刑事、大丈夫ですか!?
菅野:大丈夫。容疑者が暴れただけだ。
菅野:問題ない。
モブ警察官:よかったです。
モブ警察官:あとは我々にお任せください。
菅野:頼みます。
菅野:それじゃあ、これでお別れですね。
菅野:さようなら。
透:うわぁぁぁぁ!!!
モブ警察官:暴れるな!大人しく、部屋に入れ!!
0:
0:場面転換。
0:
菅野:戻りました。
橋咲:おぉ。大丈夫だったか?
菅野:問題ありません。
紺野:よかったです!!
紺野:あの殺人犯。最後まで認めませんでしたね。
橋咲:まぁ、証拠は揃ってるんだ。
橋咲:系は重くなるだろう。
菅野:そうですね。
菅野:(小声で)私の代わりに…。
橋咲:ん?菅野、何か言ったか?
菅野:いいえ、何もありません。
橋咲:そうか。では、次の事件に取り掛かるぞ。
菅野:わかりました。
0:
菅野:これだから、私はやめられない。
菅野:もっと、もっと絶望する顔が見たいから。
菅野:そうして、退屈で憂鬱な日常をより良いものにしてね。
菅野:私のお人形さんたち。
透:これは経験した話。
透:きっと、誰も経験したことなどないだろう。
透:そう、自分もあの時まではなかった。
透:決して忘れることなんて、出来やしないんだ。
0:
橋咲:こんばんは。
透:…どうも。
橋咲:まぁ、そう警戒しなさんな。
橋咲:私は橋咲(はしざき)、後ろにいるのが
菅野:菅野(すがの)と申します。
橋咲:私たちは自己紹介をしたから、君の名前を教えてもらってもいいかな?
透:透。
橋咲:そうか。じゃあ、透。
透:何。
橋咲:君はなぜ今ここにいるのか分かるかな?
透:分かるわけない…。
透:逆に聞きますけど、俺はなんで連れてこられたのですか…。
橋咲:ここに連れてきた理由は、君は殺人事件の容疑者。
橋咲:容疑の内容は、十代の女性をナイフで刺した事だ。
透:…でも証拠がないじゃないか…。
橋咲:証拠がなくても同行を要請可能なんだよ。
橋咲:でも任意だったのに、君は着いてきた。とうしてかな?
透:任意と言いながら、周りに人がいる中で囲み込んだくせに…。
透:まるで、犯人かのように。
橋咲:まぁ、それは私たちも悪かった。
橋咲:断り辛い状況を作ってしまったな。
透:全然謝る気がないじゃないですか。
橋咲:そんなことはない。
橋咲:部下にもきちんと説教しておいた。
橋咲:そうだよな?菅野。
菅野:はい、それは私が確認しております。
橋咲:とう事なんだ、本当にすまない。
橋咲:手荒な真似をしてしまって。
透:もういいです…。
透:どうせ俺には説教をしたのかどうかなんて分かんないですから。
透:で、任意で連れてこられたんですか?
橋咲:連れてきた理由か…。
橋咲:君と思われる人物の目撃情報があってね。
橋咲:話を聞きたくて、来てもらったんだ。
透:僕は…やってない…。
透:どんな人が僕を見たって言ったのか分からないけど、僕みたいな人間なんて、いっぱいいるだろ。
橋咲:目撃情報は不確かなものだ。
橋咲:しかし、本当に君がその時間に出歩いていないのかを確かめるため、ここに来てもらったんだ。
透:そんな曖昧な理由で僕を…。
透:これだから警察は信用できないんだ。
透:はぁ…。でもさっさと終わらしたいから、話を聞くなら早くしてくれ…。
橋咲:そうか。では手っ取り早く進めよう。
橋咲:とりあえず、情報整理をしようか。
橋咲:菅野。
菅野:はい。貴方は午後22時に東京都西東京市『西東京こいこいの森公園』にて、十代の女性を殺害。
菅野:最近、この公園付近で十代の若者が殺害されている事件が多発しており、殺されている女性もこの連続で起こっている事件の被害者ではないかと推測されています。
菅野:こちらが事件の内容です。
菅野:貴方に来ていただいた理由は、どの犯行現場においても貴方と似た容姿の人物の目撃情報があった為、任意同行を要請した。
橋咲:…と言うものだ。
透:それだけか。
橋咲:ん?
透:それだけの理由で俺が捕まったのか?
橋咲:そうだ。
透:俺と似た容姿の人間なんて、たくさんいるじゃないか!
透:なのに、俺だと確信もできてないのに任意同行させようなんてことが、俺には理解できない!
橋咲:それについては、同意しよう。
橋咲:でも我々警察は、一般市民の言葉に耳を傾けないといけない。
橋咲:目撃情報があったと言われたら、その時間に君が何をしていたのかを聞かなくてはいけないんだ。
透:たった一つの証言で、僕は公衆面前で囲まれたのか…。
橋咲:すまないな。
0:
0:菅野の携帯がなる。
0:
菅野:失礼します。
菅野:もしもし。…はい、その話については伺っています。はい…そうですか。わかりました。では。
菅野:橋咲警部。
橋咲:どうした?
菅野:お耳を…。
菅野:(小声で)被害者の爪の間から、容疑者のDNAが出ました。
そうか、なるほど…。
透:何かわかったのか?
透:もしかして、証拠か何かか?
透:それなら、僕じゃないってわかってもらえたよな。
橋咲:(遮って)いや、申し訳ないがその希望は捨ててくれ。
透:は…?
橋咲:君が殺したという証拠が出た。
透:は!?そ、そんなわけ…!!
橋咲:先ほどの連絡は、とある証拠が出たという内容だった。
橋咲:それは被害者の爪にに皮膚片が付着していたDNAを検査した結果だった。
透:は、はは…ならそれは、僕のじゃない。
透:その人になんて、会った事ないんだから。
橋咲:それがそうではなかった。
橋咲:DNAは君を指していた。
橋咲:つまり君は、もう立派な犯罪者というわけだ。
透:そんな…、まさかそんなわけがない!!
透:その時間には、俺は家にいたんだ!ゲームをしてた!!
菅野:それを証明する人間は?
透:そ、それは…。あ!家族、家族が…。
透:いや、違う…。そうだ、そうだったな。
透:家族は僕の事を見ているはずがないんだ。
透:僕は、汚点だから…。
橋咲:汚点、とはどういう事かな?
透:聞いた通りの意味だ。
透:僕の家系は代々医者の家系だった。
透:だから、必ず医者になる。これが当たり前のことだった。
透:でも、僕は頭が良くないし、要領も悪かった。
透:だから家では、僕よりも頭も良くて要領がいい兄弟の方が愛されてる。
菅野:…それで、ご家族は証言者になってくれないんですか?
透:そうだよ。家だろうが、学校だろうが、誰も俺なんて見てくれちゃいない。
橋咲:なるほど。じゃあ、目撃証言も取れないと。
透:…そうだな。そういう事だよ。
橋咲:では、これらの証拠を合わせると君が犯人、という事だな。
透:でも!でも…僕は…。
菅野:まぁ、一つは不確定の物なので、決めれませんが。
透:そ、そうだ!目撃情報は曖昧だ!
橋咲:実はもう一つ犯人が残していったものがあってね。
透:それはなんだよ。
橋咲:それは、指紋だ。
透:指紋…?
橋咲:そう。凶器についていた指紋だよ。
透:そんなの、俺じゃないに決まってる。
橋咲:では指紋提出はできるね。
透:当たり前だ!
橋咲:では頼むよ。菅野、鑑識班を呼んでくれ。
菅野:承知しました。
透:好きにしてくれ。
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0:指紋を取る。
0:
橋咲:ご協力ありがとう。
透:拭くものをくださいよ。
菅野:こちらをお使いください。
透:ありがとうございます。
橋咲:では、報告が来るのを待とう。
橋咲:しばらくは話でもしておこうか。
透:いらない。話す必要なんてない。
橋咲:そうなのかい?君と話がしてみたかったんだが。
透:あんたと話すことなんてない。
橋咲:そうかい。
0:
0:扉が勢いよく開く。
0:
紺野:橋咲警部!
橋咲:どうした、紺野。
紺野:お耳をお貸しいただけますか?
紺野:(小声で)指紋も容疑者と合致しました。
橋咲:そうか…。
透:なんだよ…なんなんだよ…。
橋咲:紺野。
紺野:はい。16時35分、午後22時に東京都西東京市『西東京こいこいの森公園』にて、十代の女性をナイフで殺害した容疑で逮捕する。
透:ちょ、なんで!どうして俺が!!!
紺野:君のDNAだけでなく、先ほどの提出してもらった指紋も現場に残っていた遺留物であるナイフについていたものと一致した。
透:出るわけない!
紺野:このナイフに見覚えは?
透:見た事ない!
透:こんなナイフ、どこにでもあるだろ!!
紺野:そう、このナイフはどこにでもあるものだ。
紺野:しかし写真の凶器には君の指紋がついていた。
透:ま、待てよ!!俺はこんなの知らない!!
紺野:証拠が全ても物語っているんだ。
紺野:正直に認めろ!!
透:そ、そんな…。
紺野:何を言おうとも、もうお前は殺害犯だ!!
紺野:さっさと諦めて、現実を受け止めるんだな。
紺野:逮捕する。
透:で、でも!指紋なんて、つけるままにする奴いんのかよ!
透:普通は…そう、手袋とかすんだろ!?
紺野:どう言う経緯でついたのかは知らないが、お前が失敗しただけだろう。
紺野:つべこべ言わずに大人しくしろ!!
透:なんでしてないことを認めないといけないんだよ!!
紺野:うるさい!貴様がした事は許される事じゃないんだよ!
紺野:この、殺害犯が!!
透:ッ!!
橋咲:こらこら、紺野。
橋咲:君が熱心なのはわかるが、強く言い過ぎだ。
紺野:しかし…!!
橋咲:我々のすることは、犯人を逮捕すること。
橋咲:糾弾(きゅうだん)することではない。
紺野:すみません…。
橋咲:わかったならいい。
橋咲:では紺野。手錠をかけなさい。
紺野:わかりました。
0:
0:手錠をかけられる。
0:
橋咲:それでは透くん、このまま勾留場まで案内しよう。
菅野:警部。それには及びません。
橋咲:ん?
菅野:私が彼を案内いたします。
紺野:菅野さん!!
菅野:大丈夫です。私だけでも制圧することは可能です。
紺野:それでも、こいつは連続殺人犯だ!
紺野:危ないに決まってます!!
菅野:私を信用できませんか?
紺野:そう言ってるわけでは…!!
橋咲:まぁまぁ、紺野。菅野の力はよく知っているだろう?
橋咲:なら任せて大丈夫だ。
紺野:…わかりました。
橋咲:菅野。頼んだぞ。
菅野:了解しました。
菅野:ついてきてください。
透:…。
0:
0:場面転換。勾留場。
0:
菅野:こちらです。
透:こんなところに入るのか?
菅野:あなたは容疑者ですので。
透:容疑者…ね。
菅野:…申し訳ないですが、容疑者と二人にしてください。
菅野:大丈夫です。
菅野:彼には攻撃できませんので。
透:なんだよ。二人になって、罵声を浴びせたいとか?
透:それとも、笑いたいのか?
菅野:…った。
透:は?
菅野:(少しずつ大きくしていくように)上手くいった上手くいった上手くいった上手くいった!!!
透:な、なんだよ!何言ってんだ、あんた!!
菅野:なぁんだ、こんなにもスムーズに進んでいってくれて、本当に嬉しいわ…。
透:な、何を言って…。
菅野:おかしいと思わなかった?
透:何が、だよ。
菅野:いい?私が言いたいのはね?
菅野:簡単にこぉんなにもたくさんの証拠がそろっている事よ。
透:え…。
菅野:あなたはいつも一人、ご飯はコンビニ弁当。
菅野:友人はいない。ネットゲームが好き。
透:は?
菅野:ネット友達しかおらず、現実の世界では一人きり。
菅野:誰からも見放されている存在。
透:あんた何言って
菅野:(被せるように)常にフード付きの服を着て歩いている。
菅野:フードを目ぶかにかぶって。
菅野:髪の毛は、時々安い理髪店で切ってもらっている。しかし、短髪にはしない
菅野:必ず前髪で目が隠れるようにしている。
透:なんだよ、なんだよ!
菅野:あぁ、忘れてた。
菅野:コンビニに行く時はあの公園の近くを通るんでしたね?
透:なんで、なんでそんな事を細かく知ってんだよ!!
透:なんなんだよ、お前!!
菅野:何…ですか。
菅野:そんな事、簡単明白。
菅野:私がこの事件の、連続殺害犯だから。
透:な…そんな…!
菅野:あなたが一人で誰にも相手をされていないような人間で、本当に安心したわ…。
菅野:おかげで、私は簡単に貴方を犯人にすることができた…。
菅野:ありがとうね。私の操り人形さん。
透:く、狂ってる…。
菅野:なんでか分からないけれど、ふふ、よく言われるわ。
透:で、でも!!どうやって、俺のDNAや指紋を手に入れたんだよ!!
菅野:公園で黄昏ていた時に、隣に座った人を覚えているかな?
透:え…。
菅野:覚えているようで安心した。
菅野:そう。それも私。
透:で、でも、そうであったとしても、どうやってとったんだよ!!
菅野:何も覚えていないのね。
菅野:あの時に缶コーヒーを渡されて飲んだでしょう?
透:確かに飲んだ…、あ、あぁ…!
菅野:そう、あの時の君が飲んだ缶コーヒーを捨てるふりをして、持って帰ったんだよ。
菅野:それで指紋が取れた。
菅野:それだけじゃない。
菅野:私はね、透くん。君を間違って引っ掻いてしまった。
菅野:というのは、覚えてるかなぁ?
透:ひっ…。
菅野:そう!君のDNAはそこから貰ったんだ。
菅野:ありがとう。君が素直に、私の行動に乗ってくれて…。
透:で、でも…連続殺人のは…?
菅野:あぁー。それはね、私の憂さ晴らし。
透:憂さ、晴らし…。
菅野:そう。この仕事をしてるとね。疲れてきちゃうんだよ。
菅野:めんどくさい連中も多いし。
菅野:だから、私は憂さ晴らしをしている。
透:なんでそんな酷いことできるんだ…!!
菅野:酷くなんてないよ?
菅野:むしろ、褒めて欲しい。
菅野:社会のゴミを排除したんだから。
透:…その人たちは、アンタになんかしたのかよ…。
菅野:うーん…強いていうなら、人たちに迷惑をかけてるってところかな。
菅野:私には実害はないけどね。
透:そんなことできるなんて、人間じゃない!!
菅野:人間じゃない?
菅野:何を言ってるの。私は警察官。
菅野:人間として、立派な人間よ。
透:クソが…!!
菅野:酷い言葉だ。泣いてしまいそう。
菅野:まぁ、でも私が捕まってないことこそ、やっている事は正義なんだよ。
菅野:わかるかな?
透:そんなの言い訳だ!
菅野:言い訳ではないなぁ。事実だ。
菅野:それと付け加えさせてほしい。
透:なんだよ。
菅野:(耳元で囁くように)君で三人目だよ。こうして、犯人になってくれるのは…。
透:ッお前ェェェェ!!!
0:
0:勾留所の扉が開く。
0:
モブ警察官:菅野刑事、大丈夫ですか!?
菅野:大丈夫。容疑者が暴れただけだ。
菅野:問題ない。
モブ警察官:よかったです。
モブ警察官:あとは我々にお任せください。
菅野:頼みます。
菅野:それじゃあ、これでお別れですね。
菅野:さようなら。
透:うわぁぁぁぁ!!!
モブ警察官:暴れるな!大人しく、部屋に入れ!!
0:
0:場面転換。
0:
菅野:戻りました。
橋咲:おぉ。大丈夫だったか?
菅野:問題ありません。
紺野:よかったです!!
紺野:あの殺人犯。最後まで認めませんでしたね。
橋咲:まぁ、証拠は揃ってるんだ。
橋咲:系は重くなるだろう。
菅野:そうですね。
菅野:(小声で)私の代わりに…。
橋咲:ん?菅野、何か言ったか?
菅野:いいえ、何もありません。
橋咲:そうか。では、次の事件に取り掛かるぞ。
菅野:わかりました。
0:
菅野:これだから、私はやめられない。
菅野:もっと、もっと絶望する顔が見たいから。
菅野:そうして、退屈で憂鬱な日常をより良いものにしてね。
菅野:私のお人形さんたち。