台本概要

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タイトル ハローアゲイン
作者名 あまね  (@Amane_1115a)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 今日も届かない言葉を吐く
目の前にいるのに伝わらない
諦めることもできない臆病者でごめんね、

植物人間状態になった恋人に、いつまでも届かない声を伝えようとする話。
待つ方と待たせる方、どちらがつらいのか。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ナツキ 65 植物状態の女の子
ショウタ 61 ナツキの恋人
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
今日も届かない言葉を吐く 目の前にいるのに伝わらない 諦めることもできない臆病者でごめんね、 植物人間状態になった恋人に、いつまでも届かない声を伝えようとする話。 待つ方と待たせる方、どちらがつらいのか。 ナツキ:恋人に言った最後の言葉が、いつまでも頭から離れない。 0:    ショウタ:「おはよう、ナツキ。今日もいい天気だよ。」 ナツキ:「あっまた来た。ショウタ、さては暇人だな?」 ショウタ:「何だか今日は顔色がよく見えるなぁ。」 ナツキ:「ふふん、今日はベテラン看護師のスズキさんが点滴かえてくれたからね!一発で決まっていい感じ!」 ショウタ:「いつも手ぶらだったから、たまには花でもって思ったけど、結構恥ずかしかったな、」 ナツキ:「わぁ!綺麗な花束!なぁに、こんなの初めてじゃん。入院もしてみるものだね~。」 ショウタ:「・・・こんなことなら、ナツキが好きな花でも聞いておくんだったな・・・。花屋の店員さんに聞かれて、答えられなかったよ。」 ナツキ:「ふふ、今度目が覚めたらちゃんと教えるね。」 ショウタ:「じゃあ、そろそろ行くから・・・。早く起きろよ、ナツキ・・・。」 ナツキ:「・・・またね、ショウタ。」 0:    ナツキ:交通事故で意識が戻らなくなってから約3か月。 ナツキ:医者に植物人間状態だと申告された。 ナツキ:私は、目の前で泣き崩れる両親と、ベッドで眠り続ける自分の姿を俯瞰(ふかん)で見てた。 ナツキ:自分の体から切り離されたこの私は、幽体なのか、魂なのか。 ナツキ:よくわからないままふわふわと浮かんでいる。 ナツキ:「それにしても、よく来るなぁ。もうすぐ半年になるのに。」 ナツキ:最初の方はよく来てくれていた大学の友達も、ここ最近はまったく見ない。 ショウタ:「少しでも話しかけた方がいいんだって。俺、話すのあんまり得意じゃないけど・・・。会いに来るよ、ナツキが寂しくないように。」 ナツキ:そう言ってショウタは週に2回ほど会いに来てくれる。 ナツキ:「別にいいのに。ショウタって案外律儀だね。」 ナツキ:お互い返ってこないのに、話している姿はさぞ滑稽(こっけい)だろう。 ナツキ:だけど、聞こえないとわかっていてもつい返事をしてしまう。 ナツキ:「ごめんねショウタ。頑張って早く目を覚ますから・・・。」 ナツキ:呑気な顔して眠る自分に、でこぴんをしたけど指は当たることなく、すうっとすり抜けてしまった。 0:   ショウタ:「おはよう、ナツキ。今日は雨が降ってるよ。」 ナツキ:「ほんとだね。いきなり降ってきたみたいだけど傘持ってたのかな?」 ショウタ:「学校を出る前に降りだして、傘がなかったんだけど。」 ナツキ:「その割には濡れてないじゃん。」 ショウタ:「同じ学科のナカオさんが貸してくれたよ。」 ナツキ:「ナカオ!?ナカオってあのミスコンに出てた人?やだやだやだ浮気じゃん!」 ショウタ:「美人で、優しくて、ナツキが見てたらきっとやきもちやいたんだろうな。」 ナツキ:「当たり前でしょ!何笑ってんのよ!ナカオさんと浮気でもして私のこと捨てたら絶対許さないんだからねっ!」 ショウタ:「・・・怒ってもいいから、早く起きろよ・・・。」 ナツキ:「そーんなに優しく撫でたって起きてあげないんだから!」 ショウタ:「少し冷たいな、雨の日は冷えるからなぁ。」 ナツキ:「・・・ショウタ。」 ショウタ:「ナツキ。」 ナツキ:「っ、ショウタ!私の声、聞こえ」 ショウタ:「またな。早く起きろよ。」 ナツキ:「、、私はこっちだよ、ばか・・・。」 ナツキ:引き留めようと伸ばした手は、触れることなくすり抜けてしまった。 ナツキ:声も、手も、届かない。 ナツキ:私だけが取り残されたこの部屋で、医療器具の音だけが響いていた。 0:   ショウタ:「ナツキ、おはよう。今日であの事故から1年が経つんだって・・・。時間が経つのってこんなに早かったんだな、」 ナツキ:「おはよう、ショウタ。そっか、もう1年になるんだ・・・。」 ショウタ:「1年前のあの日の事、覚えてる?」 ナツキ:「・・・忘れるわけないよ。」 ショウタ:「あの日・・・ナツキと喧嘩した時。俺、言われたよな。ショウタの気持ちがわからない、って。」 ナツキ:「っ、」 ショウタ:「俺、さ。自分の気持ちとか伝えるの、苦手で。あの時も何て言えばいいかわからなくて、その場しのぎじゃないけど、適当に濁して、」 ナツキ:「ちがうよ、私が悪いの。」 ショウタ:「話し合いから逃げて、情けない彼氏だよな。」 ナツキ:「そんなことない!私が、勝手に不安になってショウタを困らせてただけだよ!」 ショウタ:「ショウタなんか大嫌い、もう別れるって泣いてたナツキを、あの時意地でも止めてれば、こんなことにならなかったのかな、」 ナツキ:「っショウタ!ごめんねっ、嘘だから!あんな言葉っ、嘘なのっ、、、」 ショウタ:「・・・謝るのが遅くなってごめんな。ナツキが目覚めたら一番に言おうと思ってたけど、お前、全然起きないから。」 ナツキ:「やだっ、なんでそんな、、私が悪いのっ、」 ショウタ:「ナツキ、好きだよ・・・ごめんな、守れなくて。」 ナツキ:「なに、やめて、、別れの言葉みたいに言わないでよっ、」 ショウタ:「俺、、何やってんだろうな。届かない・・・伝わらないのがこんなにきついなんて思いもしなかった。」 ナツキ:「届いてるよ!!ちゃんと聞こえてるっ、」 ショウタ:「こんなことなら、ちゃんと言えばよかった・・・。ナツキに、たくさん、好きって伝えればよかったな。」 ナツキ:「っ!!動いて!起きてよっ!!私の体でしょっ!早く起きて、ショウタにっ、」 ショウタ:「俺、もう・・・っいや、何でもない。こんな弱音吐いてたら、ナツキに怒られるな。」 ナツキ:「ショウタ、ショウタ!」 ショウタ:「今日はもう帰るよ。また・・・会いに来るから。」 ナツキ:「私は!ここにいるよっ!」 0:   ナツキ:限界だった。 ナツキ:病室から出ていくショウタを引き留めることもできずに、私は、半透明の自分の手を握りしめた。 ナツキ:「ごめんなさい、ショウタ、、ショウタっ、、、捨てないで、」 ナツキ:もうきっと来ることはないだろうと、毎日泣いて過ごしていた私の前に、ショウタが現れたのは2週間後だった。 0:   ショウタ:「おはよう、ナツキ・・・ごめんな、最近来れなくて。」 ナツキ:「、ショウタ?」 ショウタ:「ごめん、俺最低だ・・・ナツキの方がつらいのに、また逃げようとして、」 ナツキ:「・・・いいよ。もういいよ、ショウタ。」 ショウタ:「ナツキが目を覚ました時に、一人ぼっちだと寂しいよな。」 ナツキ:「ううん。もう充分だよ。」 ショウタ:「ずっと、待ってるから。大丈夫だよ。」 ナツキ:「ショウタ、私ね、確かに悲しかったけど!むしろよかったって思ったの!もうこれ以上、私に縛られることないって、」 ショウタ:「今日はナツキが好きなお菓子買ってきたんだ。ここに置いておくから、目が覚めたら食べような。」 ナツキ:「っ、お願い、届いてよっ・・・もういいんだよ、ショウタ、」 ショウタ:「おやすみ、ナツキ。また来るから。」 0:   ナツキ:それから、私はこの病室で5回目の春を迎えた。 0:   ショウタ:「おはよう、ナツキ。」 ナツキ:「・・・。」 ショウタ:「今日は天気もいいし、近くの公園で桜が咲いてたよ。」 ナツキ:「・・・。」 ショウタ:「今度車いすに乗って外を散歩しようか。きっと気持ちいいよ。」 ナツキ:「、どうして、」 ショウタ:「お弁当も作って、ナツキのご両親と一緒にさ。」 ナツキ:「どうしてずっとここに来るの、」 ショウタ:「髪、また伸びたな。」 ナツキ:「ねぇ、私たち、大学のサークルで出会って、まともに付き合った期間なんて1年くらいでしょ!結婚してるわけでもないし、こんなにしてもらうほどっ、ショウタにこんなに尽くしてもらうほどの彼女じゃないじゃんっ、、!」 ショウタ:「俺もナツキも、随分と変わったなぁ・・・。ナツキが目を覚ました時、俺の事わかるかな。」 ナツキ:「もうやめてよっ、、、たかが大学時代の彼女に、どうして5年もっ、」 ショウタ:「ナツキと行きたい場所ややりたいこと、たくさんあるよ。」 ナツキ:「私っ、逆の立場だったらもうとっくの昔にショウタのことっ、、、っ、もうやめてよぉ、」 ショウタ:「あ、指が動いてる・・・知ってる?ナツキ。植物状態でも、指が動いたり、涙を流したりするんだって。先生に聞いたよ。」 ナツキ:「もういいよっ!全部嘘だからっ!!捨てないでって言ったのも、浮気したら許さないって言ったのも嘘だから、、、お願いだから私のことなんて忘れて、幸せになってよっ!」 ショウタ:「こうやって話しかけ続ければ、もしかしたら意識が戻るかもしれないって、初めて聞いたときは自信なかったけど・・・。意外と話し上手になったかな。」 ナツキ:「もうやだっ、誰か、ショウタを助けてっ、、」 ショウタ:「話し上手はまた違うか、俺が一人で喋ってるだけだから・・・。」 ナツキ:「もう来ないでっ!嫌いっ、大嫌いっ!ここに来たら許さない!出てってよ、私なんかのために、ショウタの人生犠牲にしないでっ、、、」 ショウタ:「・・・ナツキ、好きだよ。」 ナツキ:「っ、、、ショウタぁ、」 ショウタ:「言ったことあったっけ?俺、初めての彼女がナツキなんだ。恋愛なんてまともにしたことなかった俺が、ナツキと付き合えたこと自体奇跡だったんだ。」 ナツキ:「やめてよぉ、もう私に縛られることない、」 ショウタ:「可愛くて、無邪気で、毎日楽しかった。」 ナツキ:「嘘だっ、わがままばっかりでいつもショウタを困らせてたじゃん!」 ショウタ:「いつも幸せをナツキにもらってばかりで、、この5年で少しは返せたかな、」 ナツキ:「っ、充分すぎるよ、、もうこれ以上、ショウタの人生めちゃくちゃにしたくない、」 ショウタ:「毎日後悔ばかりしてるんだ、もっと好きだって伝えればよかった、」 ナツキ:「・・・。」 ショウタ:「ナツキ、知らなかっただろ。俺が、こんなに君のこと好きだなんて。」 ナツキ:「、ほんとだよ、、、いっつも素っ気なくて、仏頂面で、」 ショウタ:「恥ずかしかった言葉も、もう慣れたもんでさ。きっと今ならナツキの目を見て言えるよ。」 ナツキ:「嘘だ、きっといざとなったら恥ずかしくて言えないよ。」 ショウタ:「ナツキ、これから先も、君が目を覚ますのをずっと待ってるよ。」 ナツキ:「ショウタ、、、起きろっ!!起きて!目を覚ましてっ、、、、ショウタにっ、ショウタに好きって言ってよぉっ、、、おねがぃ、、」 ショウタ:「、ナツキ・・・泣いてるの?」 ナツキ:「え?」 ショウタ:「はは、もしかしたら、届いてるのかな。」 ナツキ:「っ、うん、聞こえてるよ」 ショウタ:「・・・ナツキ、好きだよ。」 ナツキ:もう何回言ってくれただろう。 ナツキ:付き合っていたあの頃、なかなか言ってくれなかった言葉を、 ナツキ:私が好きだと言っても返してくれなかった言葉を、たくさん。 ナツキ:涙を流しながら眠る私に、ショウタは優しくキスをしてくれた。 ショウタ:「・・・おとぎ話ならここで目を覚ますのにな、」 0:   ナツキ:「ショウタ、、、私は、こっちだよ。」 ナツキ:悲しそうに笑うショウタの頬に、半透明の手を添えて、そっとキスをした。 0:   ショウタ:「ナツキ、、」 ナツキ:「しょ、た」 ショウタ:「っ!ナツキ、、、ナツキ!?」 ナツキ:「ショウタ、」 ショウタ:「あ、あぁ、、ナツキっ!!嘘だ、意識が、」 ナツキ:「あり、がとう。」 ショウタ:「っ、ナツキ、俺、ナツキに伝えたいことがたくさんっ、」 ナツキ:「ぜんぶ、とどいてたよ。」 ショウタ:「、」 ナツキ:「まっててくれて、ありがとう、、、、」 ショウタ:「、いいんだ、ナツキっ」 ナツキ:「わたしも、ショウタのこと、だいすき、」 ショウタ:「俺も・・・ずっと、伝えたかった。好きだよ、ナツキ。」 ナツキ:そっと伸ばした手は、ショウタの手をすり抜けることなく柔らかく包まれる。 ナツキ:その温かさにまた涙がにじんで、ショウタの笑顔がぼやける。 ナツキ:淡く色づいたこの世界で、また会えた。 ナツキ:ハロー、アゲイン。

今日も届かない言葉を吐く 目の前にいるのに伝わらない 諦めることもできない臆病者でごめんね、 植物人間状態になった恋人に、いつまでも届かない声を伝えようとする話。 待つ方と待たせる方、どちらがつらいのか。 ナツキ:恋人に言った最後の言葉が、いつまでも頭から離れない。 0:    ショウタ:「おはよう、ナツキ。今日もいい天気だよ。」 ナツキ:「あっまた来た。ショウタ、さては暇人だな?」 ショウタ:「何だか今日は顔色がよく見えるなぁ。」 ナツキ:「ふふん、今日はベテラン看護師のスズキさんが点滴かえてくれたからね!一発で決まっていい感じ!」 ショウタ:「いつも手ぶらだったから、たまには花でもって思ったけど、結構恥ずかしかったな、」 ナツキ:「わぁ!綺麗な花束!なぁに、こんなの初めてじゃん。入院もしてみるものだね~。」 ショウタ:「・・・こんなことなら、ナツキが好きな花でも聞いておくんだったな・・・。花屋の店員さんに聞かれて、答えられなかったよ。」 ナツキ:「ふふ、今度目が覚めたらちゃんと教えるね。」 ショウタ:「じゃあ、そろそろ行くから・・・。早く起きろよ、ナツキ・・・。」 ナツキ:「・・・またね、ショウタ。」 0:    ナツキ:交通事故で意識が戻らなくなってから約3か月。 ナツキ:医者に植物人間状態だと申告された。 ナツキ:私は、目の前で泣き崩れる両親と、ベッドで眠り続ける自分の姿を俯瞰(ふかん)で見てた。 ナツキ:自分の体から切り離されたこの私は、幽体なのか、魂なのか。 ナツキ:よくわからないままふわふわと浮かんでいる。 ナツキ:「それにしても、よく来るなぁ。もうすぐ半年になるのに。」 ナツキ:最初の方はよく来てくれていた大学の友達も、ここ最近はまったく見ない。 ショウタ:「少しでも話しかけた方がいいんだって。俺、話すのあんまり得意じゃないけど・・・。会いに来るよ、ナツキが寂しくないように。」 ナツキ:そう言ってショウタは週に2回ほど会いに来てくれる。 ナツキ:「別にいいのに。ショウタって案外律儀だね。」 ナツキ:お互い返ってこないのに、話している姿はさぞ滑稽(こっけい)だろう。 ナツキ:だけど、聞こえないとわかっていてもつい返事をしてしまう。 ナツキ:「ごめんねショウタ。頑張って早く目を覚ますから・・・。」 ナツキ:呑気な顔して眠る自分に、でこぴんをしたけど指は当たることなく、すうっとすり抜けてしまった。 0:   ショウタ:「おはよう、ナツキ。今日は雨が降ってるよ。」 ナツキ:「ほんとだね。いきなり降ってきたみたいだけど傘持ってたのかな?」 ショウタ:「学校を出る前に降りだして、傘がなかったんだけど。」 ナツキ:「その割には濡れてないじゃん。」 ショウタ:「同じ学科のナカオさんが貸してくれたよ。」 ナツキ:「ナカオ!?ナカオってあのミスコンに出てた人?やだやだやだ浮気じゃん!」 ショウタ:「美人で、優しくて、ナツキが見てたらきっとやきもちやいたんだろうな。」 ナツキ:「当たり前でしょ!何笑ってんのよ!ナカオさんと浮気でもして私のこと捨てたら絶対許さないんだからねっ!」 ショウタ:「・・・怒ってもいいから、早く起きろよ・・・。」 ナツキ:「そーんなに優しく撫でたって起きてあげないんだから!」 ショウタ:「少し冷たいな、雨の日は冷えるからなぁ。」 ナツキ:「・・・ショウタ。」 ショウタ:「ナツキ。」 ナツキ:「っ、ショウタ!私の声、聞こえ」 ショウタ:「またな。早く起きろよ。」 ナツキ:「、、私はこっちだよ、ばか・・・。」 ナツキ:引き留めようと伸ばした手は、触れることなくすり抜けてしまった。 ナツキ:声も、手も、届かない。 ナツキ:私だけが取り残されたこの部屋で、医療器具の音だけが響いていた。 0:   ショウタ:「ナツキ、おはよう。今日であの事故から1年が経つんだって・・・。時間が経つのってこんなに早かったんだな、」 ナツキ:「おはよう、ショウタ。そっか、もう1年になるんだ・・・。」 ショウタ:「1年前のあの日の事、覚えてる?」 ナツキ:「・・・忘れるわけないよ。」 ショウタ:「あの日・・・ナツキと喧嘩した時。俺、言われたよな。ショウタの気持ちがわからない、って。」 ナツキ:「っ、」 ショウタ:「俺、さ。自分の気持ちとか伝えるの、苦手で。あの時も何て言えばいいかわからなくて、その場しのぎじゃないけど、適当に濁して、」 ナツキ:「ちがうよ、私が悪いの。」 ショウタ:「話し合いから逃げて、情けない彼氏だよな。」 ナツキ:「そんなことない!私が、勝手に不安になってショウタを困らせてただけだよ!」 ショウタ:「ショウタなんか大嫌い、もう別れるって泣いてたナツキを、あの時意地でも止めてれば、こんなことにならなかったのかな、」 ナツキ:「っショウタ!ごめんねっ、嘘だから!あんな言葉っ、嘘なのっ、、、」 ショウタ:「・・・謝るのが遅くなってごめんな。ナツキが目覚めたら一番に言おうと思ってたけど、お前、全然起きないから。」 ナツキ:「やだっ、なんでそんな、、私が悪いのっ、」 ショウタ:「ナツキ、好きだよ・・・ごめんな、守れなくて。」 ナツキ:「なに、やめて、、別れの言葉みたいに言わないでよっ、」 ショウタ:「俺、、何やってんだろうな。届かない・・・伝わらないのがこんなにきついなんて思いもしなかった。」 ナツキ:「届いてるよ!!ちゃんと聞こえてるっ、」 ショウタ:「こんなことなら、ちゃんと言えばよかった・・・。ナツキに、たくさん、好きって伝えればよかったな。」 ナツキ:「っ!!動いて!起きてよっ!!私の体でしょっ!早く起きて、ショウタにっ、」 ショウタ:「俺、もう・・・っいや、何でもない。こんな弱音吐いてたら、ナツキに怒られるな。」 ナツキ:「ショウタ、ショウタ!」 ショウタ:「今日はもう帰るよ。また・・・会いに来るから。」 ナツキ:「私は!ここにいるよっ!」 0:   ナツキ:限界だった。 ナツキ:病室から出ていくショウタを引き留めることもできずに、私は、半透明の自分の手を握りしめた。 ナツキ:「ごめんなさい、ショウタ、、ショウタっ、、、捨てないで、」 ナツキ:もうきっと来ることはないだろうと、毎日泣いて過ごしていた私の前に、ショウタが現れたのは2週間後だった。 0:   ショウタ:「おはよう、ナツキ・・・ごめんな、最近来れなくて。」 ナツキ:「、ショウタ?」 ショウタ:「ごめん、俺最低だ・・・ナツキの方がつらいのに、また逃げようとして、」 ナツキ:「・・・いいよ。もういいよ、ショウタ。」 ショウタ:「ナツキが目を覚ました時に、一人ぼっちだと寂しいよな。」 ナツキ:「ううん。もう充分だよ。」 ショウタ:「ずっと、待ってるから。大丈夫だよ。」 ナツキ:「ショウタ、私ね、確かに悲しかったけど!むしろよかったって思ったの!もうこれ以上、私に縛られることないって、」 ショウタ:「今日はナツキが好きなお菓子買ってきたんだ。ここに置いておくから、目が覚めたら食べような。」 ナツキ:「っ、お願い、届いてよっ・・・もういいんだよ、ショウタ、」 ショウタ:「おやすみ、ナツキ。また来るから。」 0:   ナツキ:それから、私はこの病室で5回目の春を迎えた。 0:   ショウタ:「おはよう、ナツキ。」 ナツキ:「・・・。」 ショウタ:「今日は天気もいいし、近くの公園で桜が咲いてたよ。」 ナツキ:「・・・。」 ショウタ:「今度車いすに乗って外を散歩しようか。きっと気持ちいいよ。」 ナツキ:「、どうして、」 ショウタ:「お弁当も作って、ナツキのご両親と一緒にさ。」 ナツキ:「どうしてずっとここに来るの、」 ショウタ:「髪、また伸びたな。」 ナツキ:「ねぇ、私たち、大学のサークルで出会って、まともに付き合った期間なんて1年くらいでしょ!結婚してるわけでもないし、こんなにしてもらうほどっ、ショウタにこんなに尽くしてもらうほどの彼女じゃないじゃんっ、、!」 ショウタ:「俺もナツキも、随分と変わったなぁ・・・。ナツキが目を覚ました時、俺の事わかるかな。」 ナツキ:「もうやめてよっ、、、たかが大学時代の彼女に、どうして5年もっ、」 ショウタ:「ナツキと行きたい場所ややりたいこと、たくさんあるよ。」 ナツキ:「私っ、逆の立場だったらもうとっくの昔にショウタのことっ、、、っ、もうやめてよぉ、」 ショウタ:「あ、指が動いてる・・・知ってる?ナツキ。植物状態でも、指が動いたり、涙を流したりするんだって。先生に聞いたよ。」 ナツキ:「もういいよっ!全部嘘だからっ!!捨てないでって言ったのも、浮気したら許さないって言ったのも嘘だから、、、お願いだから私のことなんて忘れて、幸せになってよっ!」 ショウタ:「こうやって話しかけ続ければ、もしかしたら意識が戻るかもしれないって、初めて聞いたときは自信なかったけど・・・。意外と話し上手になったかな。」 ナツキ:「もうやだっ、誰か、ショウタを助けてっ、、」 ショウタ:「話し上手はまた違うか、俺が一人で喋ってるだけだから・・・。」 ナツキ:「もう来ないでっ!嫌いっ、大嫌いっ!ここに来たら許さない!出てってよ、私なんかのために、ショウタの人生犠牲にしないでっ、、、」 ショウタ:「・・・ナツキ、好きだよ。」 ナツキ:「っ、、、ショウタぁ、」 ショウタ:「言ったことあったっけ?俺、初めての彼女がナツキなんだ。恋愛なんてまともにしたことなかった俺が、ナツキと付き合えたこと自体奇跡だったんだ。」 ナツキ:「やめてよぉ、もう私に縛られることない、」 ショウタ:「可愛くて、無邪気で、毎日楽しかった。」 ナツキ:「嘘だっ、わがままばっかりでいつもショウタを困らせてたじゃん!」 ショウタ:「いつも幸せをナツキにもらってばかりで、、この5年で少しは返せたかな、」 ナツキ:「っ、充分すぎるよ、、もうこれ以上、ショウタの人生めちゃくちゃにしたくない、」 ショウタ:「毎日後悔ばかりしてるんだ、もっと好きだって伝えればよかった、」 ナツキ:「・・・。」 ショウタ:「ナツキ、知らなかっただろ。俺が、こんなに君のこと好きだなんて。」 ナツキ:「、ほんとだよ、、、いっつも素っ気なくて、仏頂面で、」 ショウタ:「恥ずかしかった言葉も、もう慣れたもんでさ。きっと今ならナツキの目を見て言えるよ。」 ナツキ:「嘘だ、きっといざとなったら恥ずかしくて言えないよ。」 ショウタ:「ナツキ、これから先も、君が目を覚ますのをずっと待ってるよ。」 ナツキ:「ショウタ、、、起きろっ!!起きて!目を覚ましてっ、、、、ショウタにっ、ショウタに好きって言ってよぉっ、、、おねがぃ、、」 ショウタ:「、ナツキ・・・泣いてるの?」 ナツキ:「え?」 ショウタ:「はは、もしかしたら、届いてるのかな。」 ナツキ:「っ、うん、聞こえてるよ」 ショウタ:「・・・ナツキ、好きだよ。」 ナツキ:もう何回言ってくれただろう。 ナツキ:付き合っていたあの頃、なかなか言ってくれなかった言葉を、 ナツキ:私が好きだと言っても返してくれなかった言葉を、たくさん。 ナツキ:涙を流しながら眠る私に、ショウタは優しくキスをしてくれた。 ショウタ:「・・・おとぎ話ならここで目を覚ますのにな、」 0:   ナツキ:「ショウタ、、、私は、こっちだよ。」 ナツキ:悲しそうに笑うショウタの頬に、半透明の手を添えて、そっとキスをした。 0:   ショウタ:「ナツキ、、」 ナツキ:「しょ、た」 ショウタ:「っ!ナツキ、、、ナツキ!?」 ナツキ:「ショウタ、」 ショウタ:「あ、あぁ、、ナツキっ!!嘘だ、意識が、」 ナツキ:「あり、がとう。」 ショウタ:「っ、ナツキ、俺、ナツキに伝えたいことがたくさんっ、」 ナツキ:「ぜんぶ、とどいてたよ。」 ショウタ:「、」 ナツキ:「まっててくれて、ありがとう、、、、」 ショウタ:「、いいんだ、ナツキっ」 ナツキ:「わたしも、ショウタのこと、だいすき、」 ショウタ:「俺も・・・ずっと、伝えたかった。好きだよ、ナツキ。」 ナツキ:そっと伸ばした手は、ショウタの手をすり抜けることなく柔らかく包まれる。 ナツキ:その温かさにまた涙がにじんで、ショウタの笑顔がぼやける。 ナツキ:淡く色づいたこの世界で、また会えた。 ナツキ:ハロー、アゲイン。