台本概要
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タイトル | 魔王×試練 【1:2:2】 30分 |
---|---|
作者名 | ろくしょうるり (@ruri6syo) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(男1、女2、不問2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
純なる王の血を受け継ぐ者、フィストと共に試練に挑み魔王とならん 魔王になるため「試練の洞窟」に向かう魔族の姫、アベリア その先に待ち受ける試練とは… ------ 5人シナリオ、30分 ボイコネ版で1話2000字調整を施される前の完全版となっております 任意ですが、使っていただけたらツイートなどしてくださると嬉しいです 282 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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アベリア | 女 | 103 | 魔族の姫。 代々伝わる籠手(こて)、フィストと共に試練に挑む。 ケニーシャ大好き |
ケニーシャ | 不問 | 42 | 代々魔族王家に仕える森妖精。 かっこいい、かわいい、クール、どんな読み方でも合うような台詞回しです。お好きなキャラ設定で楽しんでください。 アベリア様はわが命 |
ユール | 男 | 45 | クソ勇者 クソを楽しみたい方どうぞ |
メイス | 不問 | 40 | 魔法使い 男女不問なのだわ |
リヨナ | 女 | 28 | 聖女だよぉ~ キャハハハハッ |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0: 魔王×試練 【1:1:2】 30分
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アベリア:はあ… はあ… ぐう…ッ…
ユール:ははっ、どうした魔王。随分チョロいじゃねえか
0:
アベリア:(体が… 重い) はあ、 はあ…
0:
メイス:あらぁ、もうちょっと楽しめるかと思ったのに、ざーんねん
0:
アベリア:(力が… 出ない) はあ、 はあ…
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リヨナ:いちおー回復しとくねぇ~
ユール:お、さーんきゅ
メイス:ま、もういらないけどぉ?
ユール:ハハハハ! たしかにィ
0:
アベリア:(こんな… こんなのって…) ううぅ…ッ
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ユール:これで終わりだ、魔王
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アベリア:はあっ … はあっ …
アベリア:勇者が高く振り上げた剣が、ギラリと輝く
アベリア:ああ。私たちは
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アベリア:最初からはめられていたんだ…
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0: 洞窟の入り口に立つアベリアとケニーシャ
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ケニーシャ:アベリア様、いよいよですね。「試練の洞窟」
アベリア:10年に一度だけ開く門。ついにこの時が来たのね。この日のため私は、武術、魔術共に鍛錬を重ねてきた。あなたはそんな私をいつもそばで支えてくれた。ありがとう、ケニーシャ
ケニーシャ:アベリア様… 本当はわたくしもお供したいです! でもここから先は、純王の血を継ぐ者だけが進むことを許される場所… そして、最後にここから生きて帰った魔王様は、もう180年も前のこと
アベリア:その先代魔王、私の高祖父(こうそふ)さま…ファブリス王も崩御されて久しく、この魔国にはずっと王は不在のまま。だからわたしがなってやるわ。魔王に。そしてこの閉ざされた世界を解放する!
ケニーシャ:アベリア様…アベリア様ならきっとできます!そしてきっと、創ってください。誰もが笑顔でいられる国を
アベリア:ええ、もちろんよ! ケニーシャ、フィストを
ケニーシャ:はい
アベリア:これは代々我が王家に受け継がれてきた私たちの誇り。このフィストに誓って、私は絶対に成し遂げるわ!
ケニーシャ:アベリア様、行ってらっしゃいませ! わたくし、ここでお待ちしております。アベリア様のお帰りをいつまでも… …いつまでも… ぐすっ
アベリア:ちょ、ちょっとケニーシャ?! 励ましてるけど本当は無理みたいな空気出すのやめて!
ケニーシャ:ううっ、ぐすっ ごめんなさい。 こうしてフィストを姫様の腕につけていたら、お父上様や、兄上様がたの時のことを、思い出してしまって…
アベリア:ケニーシャ… ううん。私は父や兄のようにはならない。絶対、帰ってくるんだから
ケニーシャ:(涙を払う)ぐすっ はい! そうですね、アベリア様
アベリア:大好きよケニーシャ。あなたが待っていてくれるなら、私は絶対に戻ってくるわ。 …じゃ、行ってくる
0:扉を押し開け、アベリアの姿は洞窟の闇に消えていく
ケニーシャ:…姫様
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0: 洞窟を進むアベリア
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アベリア:真っ暗ね…
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アベリア:試練の洞窟。父上も兄上たちも… 挑んだきり戻ってこなかった
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アベリア:随分進んだ気がするけど何もない。一体何が待ち受けているの?
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アベリア:扉…? きっとこの先ね
0:ギイィ、と音を立て扉が開く。アベリアの目はまぶしさに撃たれた
アベリア:っ、これは… 闘技場?!
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アベリア:そう。そういうことなのね
アベリア:フフ… 面白いじゃない
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0: 闘技場
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ユール:ん? 女?
メイス:あらぁ、可愛らしいお嬢ちゃん。迷子? ダメよォ こんなところに入ってきちゃ
リヨナ:そーそ、今からうちら、魔王を倒すんだから
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アベリア:アベリア・グランワーズ! 私は純なる王の血! お前達は勇者か
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ユール:へぇ…
メイス:アラアラ。ンフ
リヨナ:こいつなんだァ かーわいそ。アハハ
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アベリア:…っ!
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ユール:やー悪ぃ悪ぃ。魔王っていうからでっかくてクサそうなのが出てくると思ったんだよ。俺は勇者。ユールだ
メイス:メイス。魔法使いよ。 フフ。あんたたち魔族からとれる魔素をありがたーく使わせて貰ってるの
リヨナ:リヨナは~、んー、聖女? 次の生け贄はお嬢ちゃんかぁ キャハッ
アベリア:生け贄? 随分ナメてくれるじゃない。さ、やるんでしょ? 早く来なさいよ
ユール:はは、早く来てぇー、だって! んじゃ、いくわ
メイス:リヨナは後ろで見てなさい。アタシはこっちから行くわ
リヨナ:フレー!フレー! 聖女リヨナが鼓舞しちゃうよぉ!
アベリア:勇者は右から… 魔法使いは左 っ あ! ッ、早い! うッ!
ユール:なんだあ? ガラ空きだぜ、お嬢ちゃん
メイス:ダウナーフレア…地の底に深く眠りし灼熱よ!
アベリア:くぁ…フィスト! っあ… あああー!
メイス:アラアラ。もう無様に転がっちゃうの?
アベリア:ううッ…
アベリア:(おかしい… フィストに魔素が伝わってない… それに)
アベリア:(重い… うまく動けない… 高祖父様のフィスト、これはどういうことなの?!)
アベリア:(く… せめて剣を、 剣を出せれば)
0:
ユール:聞いた話だけどさあ。魔王って自分の魔素で武器を作り出して戦うんだろ? あんたは何も出せねえの? お・嬢・ちゃんッ!
アベリア:あう!
リヨナ:まおーチャンはつよっつよだから、武器無しで勝てるんだって! キャハッ じゃあ、リヨナみんなにばふばふしちゃおっかな
ユール:うおー みなぎるぅ
メイス:ありがと、リヨナ
アベリア:あなたね聖女、私の力を
リヨナ:えー、リヨナ、何もやってなぁ~い
メイス:ウフフ。ダメよ、人のせいにしちゃ。 アイスバインド…冬の精霊はね、天より降りてきて静かに地を這うの
アベリア:あ、足が!
メイス:動けない? イケナイ子にはお・し・お・き
アベリア:このくらい! 魔素よ、巡って! …う、うそ! どうして
メイス:ククッ、魔素が使えない?
アベリア:!
メイス:それはね、その籠手つけてるからよ ウフフ! 魔王の一族ってつくづくバカよねぇ
ユール:なーんだメイス。ばらしちまうのかよ
メイス:あら。アタシ優しいの。 何も知らずに死ぬなんてかわいそうじゃない
アベリア:これは… このフィストは… 我ら一族の誇り!
ユール:ははっ、ほんとだ! コイツバカだ
アベリア:くっ… あなたたちは!
リヨナ:キャハハハ! それ、魔素吸引アーティファクトなのにねー!
アベリア:・・・・・・え
ユーリ:ほら、見てみろよ、ここ。俺らの装備品につけてあるコレ。コレにさ、お嬢ちゃんの魔素がさー、流れてくるんだよね
アベリア:うそ
メイス:あなたの魔素がそのまんまアタシ達力になってくれてるの
アベリア:うそ
メイス:それにね、アタシのこの杖の魔石、何が込められてるか…わかるかしら。ほらぁ、よーく感じてごらんなさい?
アベリア:あ、 ああ … こ… れ は… に、兄様… 兄様の、魔素
メイス:ア・タ・リ ウフフ。 魔王はね、10年に一度ここで殺されて、コッチ側で使う魔素発生器の素材になるの
リヨナ:ね、ね、ついでに教えてあげよっか。この戦い、コッチ側でなんて呼ばれてるか知ってる?
アベリア:・・・・・
リヨナ:『魔王狩り』
アベリア:・・・・まおう、が、り…
リヨナ:だからァ リヨナ最初に言ったよ? 生け贄だ、って
ユール:ギャハハハ! テメェもなるんだよ! 素材にさぁ!
アベリア:ううう…っ なん、ですって…
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ケニーシャ:こうしてフィストを姫様の腕につけていたら、お父上様や、兄上様がたの時のことを、思い出してしまって…
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アベリア:試練… 試練て…なに… 父様や兄様達も… こうやって陵辱されて… 殺された… の?
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0:ユール、メイス、リヨナ 一斉にバカ笑い(長めに取ること推奨)
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ユール:ギャッハハハハ! 絶望しちゃった? その顔、ウケる~!
リヨナ:ばっかみたーい じゃなくて、バカでマヌケぇ キャハハハハハ!
メイス:ウッフフフ! アナタもなるのよ。素材に。 今感じてるアナタの魔素、とっても澄んでてきれい! 上玉だわぁ! ウフフフフフ!
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アベリア:(私は父や兄のようにはならない)
アベリア:(わたしがなってやるわ。魔王に。そしてあいつらに蹂躙された民を解放する)
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ケニーシャ:アベリア様…アベリア様ならきっとできます!
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ケニーシャ:そしてきっと、創ってください。誰もが笑顔でいられる国を
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アベリア:(父様… 兄様)
アベリア:(大好きなケニーシャ。あなたが待っていてくれるなら、私は絶対に…)
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アベリア:(負けられない… 私は! 必ず生きて戻る!)
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アベリア:く、こんなものッ こんなもの…ッ 壊してやる!
ユール:ハハハハハ! それ、あんたが死ぬまでとれねーよ 無駄なあがきは…
アベリア:くっ…なら みてなさい! ウアアアアア!
メイス:! 氷の枷(かせ)が?! 下がって!危ないわよ、ユール!
ユール:うお!
アベリア:喰らいなさい!
ユール:ぐあっ! 痛って… ペッ、こいつ、殴りやがった!
アベリア:父様の! 兄様の! 無念は! 私がー! 晴らす…ッ!
ユール:くそ! ちいっくしょ! ウッ!
リヨナ:ユール!
アベリア:魔素を吸い取られるなら使わなければいいんでしょう? ついでに … こうするのは! どう?!
ユール:け、剣を奪う気か! っくそっ離せ!
アベリア:離すもんですかッ フッ、魔素を使わなければ体が軽いわね 私、こう見えて地力もあるの
ユール:クッソ力(ぢから)がァ!
リヨナ:ユール、ばっふばふーーーッ
アベリア:負けるもんですかッ ハッ!
ユール:うおっ、あっぶね! くっそ、巧いな
アベリア:今のを立て直すなんて、そっちこそやるじゃない
メイス:はあ。バレット 風よ。つぶてを弾け
アベリア:がはっ
ユール:オラアッ! くはっ、助かったぜメイス
メイス:ハイハイ
アベリア:はぁ、はぁ
メイス:フフ。調子に乗っちゃダメよ? アベリアちゃん。魔素を使わないならアナタはただのお嬢ちゃん。おしとやかに、ね?
アベリア:ぐう…ッ 兄様の魔素を…穢すなアアッ!
メイス:バレット、 バレット … バレット!
アベリア:ガハッ アアッ う、うう…
メイス:ほらぁ。兄様もお怒りなんじゃなァい? 大人しくしなさいって
アベリア:ふざける… な
メイス:だいたいね。アナタ意味、わかってる?
アベリア:うう…
リヨナ:はいはいはぁーい! ここでリヨナからの問題だよぉ~ 誰がその籠手、アベリアチャンにつけさせたのかなぁ~? んふっ キャハハ! キャハハハ
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アベリア:ケニー… シャ…?
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0:幼い頃の回想
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アベリア:ねえ、ケニーシャ、ケニーシャは森妖精なんでしょう?
ケニーシャ:はい! わたくしは精霊王の森林で生まれました。とってもきれいで素敵な森なんですよ
アベリア:わぁ-、私も行ってみたい
ケニーシャ:ウフフ。わたくしもいつか、アベリア様をお連れしてみたいです。でも…なかなか難しいかもしれないす。洞窟の向こう側なので
アベリア:洞窟の向こう?! ケニーシャ、洞窟の向こうから来たの? どうやって? だって、父上様も、おじいさまも、洞窟は誰も通れないって言ってたよ
ケニーシャ:そうですね、試練の洞窟は誰も通り抜ける事はできません。でも、わたくしは精霊王さまより、魔王族にお仕えし「試練のフィスト」をお届けするお役目をいただいているので、通ることができるのですよ
アベリア:しれんの、ふぃすと?
ケニーシャ:「フィスト」。魔王様の為の魔具です。魔王となる試練を受ける際には、代々、このフィストをつけて臨んできたのですよ
アベリア:フィスト… おじ上様の腕につけていた、あの籠手? でもおじ上様、試練から戻られなかったって …それを、ケニーシャが届けてくれたの?
ケニーシャ:そうです。ずっと昔に与えられた、大切な役目なのですよ
アベリア:ケニーシャ大好き! いつまでもずっと一緒にいてね
ケニーシャ:もちろんです!姫様
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0: 回想から戻る
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アベリア:あ… あ …
ユール:精霊王の森妖精はいにしえの盟約により代々勇者の従属なんだよ。そいつを魔王の腕にくっつけるためにさ
アベリア:そんな そんなことって… ケニーシャ、 ケニーシャ、 …ケニーシャ!
ユール:ははっ、どうした魔王。まさかもう墜ちちゃった? 随分チョロいじゃねえか
メイス:あらぁ、もう反撃終わり? もうちょっとくらい楽しめるかと思ったのに、ざーんねん
ユール:にしてももったいねぇな。へへ、折角かわいい顔してんのにな。どう?一回、俺の女になってみねえ? 標本みたいにされる前にさあ
アベリア:ぐう…ッ だ、だれが… あんたなんかに…ッ
ユール:そーりゃ! (蹴り)
アベリア: (ユールに蹴られる) …ガハッ!
ユール:あれ、まだそんな口きけんの
アベリア:はぁ、はぁ… う…っ
メイス:あらあらウフフ… こうまで一方的だとなんだかワタシたちが悪者みたいね。 ま、ユール。勘弁してあげなさいな。折角のいい素材がダメになったらどうするの
ユール:ちっ、わかったよ
リヨナ:んー、コレで終わりかぁ。 みんな、いちおー回復しとくねぇ~
ユール:お、さーんきゅ
メイス:ま、もういらないけどぉ?
ユール:ハハハハ! たしかにィ
アベリア:ううぅ…
ユール:んじゃ、サクッとやっちゃいますかあ! …これで終わりだ、魔王
アベリア:くっ!
0:
ケニーシャ:アブラチャンの茂みよ、アベリア様を護って!
アベリア:えっ
ユール:な、なんだこの枝!
メイス:森妖精?!
リヨナ:なんで?!
アベリア:ケニー、シャ…
ケニーシャ:アベリア様、試練の邪魔をしてごめんなさい。それでもわたくし…もしアベリア様が戻られなかったらと思ったらいてもたってもいられなくて!
アベリア:ケニーシャ! ううん、いいの。大好きよケニーシャ 大好き
ケニーシャ:それより、一体どうなさったのです? あんな奴ら、アベリア様の敵じゃないでしょう
アベリア:・・・そう、よね。これはあなたのせいじゃ、ない
ケニーシャ:?
ユール:おい森妖精、何邪魔してんだよ! この枝とっとと消せよ! 魔王殺(や)れねーだろうがァ!
リヨナ:ちょっとお! 森妖精は勇者の従属でしょー! 言うこと聞かなきゃリヨナ、おこだよっ
ケニーシャ:あなたたちは誰? 従属? 姫様を害する者はわたくし、許しませんから!
ユール:おいなんか話が違う
メイス:ダウナーフレア… 木々など燃やしてしまえばいいわ。もろとも死ね!
ケニーシャ:アブラチャンよ、ナナカマドに変わって! アベリア様、水の魔術をお願いします
アベリア:・・・ごめんなさい、ケニーシャ
ユール:ハハハ! いいぞ、燃えろー! この裏切り者がァ!
リヨナ:どうしたの? 魔王のくせに魔術も使えないなんてね! キャハハハ!
ケニーシャ:魔術が… 使え、ない 、どういうことですかアベリア様、何か呪いが
アベリア:・・・これよ
ケニーシャ:試練のフィスト…ですか?
アベリア:ぐすっ ケニーシャ、あなたは何も知らない。それでいいのね?
ケニーシャ:アベリア様、涙が… どうなさったのですか
アベリア:ううん、なんでもない。ただ嬉しいの。それだけよ。でももう…おしまいみたい。 ケニーシャ、あなただけでも逃げて
ケニーシャ:姫様何を! わたくしにはそんなことできません! ナナカマド! もっと厚く茂って! 姫様はわたくしが命に代えてもお守りするのです!
アベリア:ううっ、このフィストさえなければ! 私がケニーシャを護れるのに! くそっ、 くそっ! 腕を切り落とすこともできないなんて
ケニーシャ:これ、これなのですね! 姫様を苦しめているのは ああっ あつ…い… 体が…
アベリア:火が!
ケニーシャ:ああ… わかってきました… きっと… 父上様、兄上様を殺したのは… わた く… し
アベリア:ケニーシャ!
ケニーシャ:ひめ… さま わたくし、最後に一つ できることが … それで許されるとは 思ってないです けど この身が燃え尽きる 前 に
アベリア:ダメよケニーシャ、約束したじゃない!
0:
ケニーシャ:『土に還れ』
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0:
メイス:ウフフフフ! 燃えさかりなさい、もっと、もっとよ!
リヨナ:メイス、やっちゃえやっちゃえ! ばーふばふばふ~
ユール:アッハハハハ! ざまあねえな! っ うお! な、なんだ?!
メイス:水柱! う、うそッ
リヨナ:魔素使えないはずでしょ? と、どーなっちゃったのぉ?!
ユール:み、水柱の中から… え、な、なんだよ… この…
メイス:あ… ああ… なんて…力? なに、これ、なんて…圧…
リヨナ:え、え、なんかヤバいよ… ヤバいよ り、リヨナ帰るぅ~!
アベリア:帰さない、わよ
ユール:ひ、ひい!!
アベリア:あなたたち。動けるものなら動いてみなさい
メイス:あ… あ…
リヨナ:い、いや…
0:
0: 水柱の中からケニーシャを抱えたアベリアが出てくる
0:
ケニーシャ:ひ、め… さ、ま…
アベリア:ケニーシャ、ありがとう。フィストを… 土に還してくれて。今、回復するわね … 魔素よ…
ケニーシャ:ふ…う … きもちいい です… 誰よりもきれいで … とても澄んでいる アベリア様の 魔素…
アベリア:フフ。大切な私の… ケニーシャ。 よかった。間に合って
アベリア:さて
0:(一斉に)
ユール:ひぃ!
メイス:ひっ!
リヨナ:ひぁっ!
アベリア:まずは、座りましょ
0:(一斉に)
ユール:ハイ!
メイス:ハイ!
リヨナ:ひゃい!
アベリア:(力を込める)はあああああーーー!
ユール:ご、ごめんなさい、ごめんなさい!
メイス:こここここころさないでぇ~!
リヨナ:や、やだ、やだ、やだ、やだ ぐすっ グスン うぇ… えええ(泣)
アベリア:…ハイ。これ
ケニーシャ:アベリア様!
リヨナ:え
ユール:宝石?
メイス:えっ! こ、これって… あなた!
アベリア:そう。魔素の塊よ。 人間はこれが欲しかったんでしょ?
メイス:あ、あなた…
アベリア:魔族だけが持つ魔素はあなたたち人間の生活にも、大森林の精霊や、妖精達にも必要だものね。『魔王狩り』が必要だったのはそのためでしょう?
アベリア:2000年前の魔大戦で、こうして魔族と人間の世界は断絶してしまったのだから
ケニーシャ:アベリア様、お優しすぎます!
アベリア:フフッ、試練、ね! 確かに、このくらいなんとかできないようじゃ、魔王は名乗れないわ
アベリア:あなたたちははっきり言って胸くそ悪い連中だったけど、きっと、それはあなたたちのせいじゃないのよ。さっさとそれ持って人間の世界に帰りなさい。そういう仕事なんでしょ? 勇者『役』
ユール:え、あ、ああ… 勇者、役
アベリア:あーあ! おかげで私の魔素はすっからかんだわ! 戻るのに10年はかかるわね!
ケニーシャ:アベリア様、いいのです? あんな連中に大きな力の塊を渡してしまって
アベリア:大丈夫よ。ケニーシャも知っているでしょ? 多すぎる魔素は魔物を生む。魔素を使い始めた人間が欲張りすぎて、世界が魔物だらけになった。それが魔大戦
アベリア:今の人間は、ちょうどいい魔素の使い方を知っているのよ。もしこの人たちが魔素を独り占めにした所で、自分たちが理性も持たない魔物に変化してしまうだけだもの
ユール:ヒエッ
メイス:大丈夫よ、この魔素石はとても安定してるわ。見たことないくらいすごい力が内包されてるけど…持っているだけなら安全よ
リヨナ:お姉様! アベリアお姉様と呼ばせてくださいぃぃいい~!
アベリア:なれなれしくしないで! それに! 試練はクリアしたもの。 今から私、『魔王様』よ! フフッ
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0:
0:
0: 洞窟から帰還したアベリアとケニーシャ
0:
アベリア:んーーーっ、いい天気ね!
ケニーシャ:うーっ、アベリア様。それにしてもやっぱりわたくし、心配です!
アベリア:あら。ケニーシャ、これはあなたとの約束なのよ?
ケニーシャ:えっ、わたくしとの、ですか?
アベリア:『みんなが笑顔で暮らせる国を創ってください』。そう言ったわよね、ケニーシャ
アベリア:あの人達を殺し、父様や兄様の仇を取るのも、人間の世界を恨むのも簡単。でも、それでは何もおきないわ。そこで終わってしまうもの
ケニーシャ:アベリア様…
アベリア:それにね
ケニーシャ:それに?
アベリア:2000年前、魔大戦を平定したわたしたちの『始祖』。純なる王と呼ばれたあのリリィ様はね、『魔王』と『勇者』の間に生まれた、『半魔』だったと聞いているわ
アベリア:人も魔族も隔てない世を掲げていたリリィ様。その、末裔ですの! わ・た・し
ケニーシャ:フフッ、すごいドヤ顔です!アベリア様!
アベリア:フフッ、いいでしょう?こんなときくらい!
ケニーシャ:アベリア様、これからもずっとあなたのお側に
アベリア:ええ! ずっと私の隣にいてね、ケニーシャ。世界で一番大好きよ!
0: 魔王×試練 【1:1:2】 30分
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アベリア:はあ… はあ… ぐう…ッ…
ユール:ははっ、どうした魔王。随分チョロいじゃねえか
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アベリア:(体が… 重い) はあ、 はあ…
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メイス:あらぁ、もうちょっと楽しめるかと思ったのに、ざーんねん
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アベリア:(力が… 出ない) はあ、 はあ…
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リヨナ:いちおー回復しとくねぇ~
ユール:お、さーんきゅ
メイス:ま、もういらないけどぉ?
ユール:ハハハハ! たしかにィ
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アベリア:(こんな… こんなのって…) ううぅ…ッ
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ユール:これで終わりだ、魔王
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アベリア:はあっ … はあっ …
アベリア:勇者が高く振り上げた剣が、ギラリと輝く
アベリア:ああ。私たちは
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アベリア:最初からはめられていたんだ…
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0: 洞窟の入り口に立つアベリアとケニーシャ
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ケニーシャ:アベリア様、いよいよですね。「試練の洞窟」
アベリア:10年に一度だけ開く門。ついにこの時が来たのね。この日のため私は、武術、魔術共に鍛錬を重ねてきた。あなたはそんな私をいつもそばで支えてくれた。ありがとう、ケニーシャ
ケニーシャ:アベリア様… 本当はわたくしもお供したいです! でもここから先は、純王の血を継ぐ者だけが進むことを許される場所… そして、最後にここから生きて帰った魔王様は、もう180年も前のこと
アベリア:その先代魔王、私の高祖父(こうそふ)さま…ファブリス王も崩御されて久しく、この魔国にはずっと王は不在のまま。だからわたしがなってやるわ。魔王に。そしてこの閉ざされた世界を解放する!
ケニーシャ:アベリア様…アベリア様ならきっとできます!そしてきっと、創ってください。誰もが笑顔でいられる国を
アベリア:ええ、もちろんよ! ケニーシャ、フィストを
ケニーシャ:はい
アベリア:これは代々我が王家に受け継がれてきた私たちの誇り。このフィストに誓って、私は絶対に成し遂げるわ!
ケニーシャ:アベリア様、行ってらっしゃいませ! わたくし、ここでお待ちしております。アベリア様のお帰りをいつまでも… …いつまでも… ぐすっ
アベリア:ちょ、ちょっとケニーシャ?! 励ましてるけど本当は無理みたいな空気出すのやめて!
ケニーシャ:ううっ、ぐすっ ごめんなさい。 こうしてフィストを姫様の腕につけていたら、お父上様や、兄上様がたの時のことを、思い出してしまって…
アベリア:ケニーシャ… ううん。私は父や兄のようにはならない。絶対、帰ってくるんだから
ケニーシャ:(涙を払う)ぐすっ はい! そうですね、アベリア様
アベリア:大好きよケニーシャ。あなたが待っていてくれるなら、私は絶対に戻ってくるわ。 …じゃ、行ってくる
0:扉を押し開け、アベリアの姿は洞窟の闇に消えていく
ケニーシャ:…姫様
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0: 洞窟を進むアベリア
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アベリア:真っ暗ね…
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アベリア:試練の洞窟。父上も兄上たちも… 挑んだきり戻ってこなかった
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アベリア:随分進んだ気がするけど何もない。一体何が待ち受けているの?
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アベリア:扉…? きっとこの先ね
0:ギイィ、と音を立て扉が開く。アベリアの目はまぶしさに撃たれた
アベリア:っ、これは… 闘技場?!
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アベリア:そう。そういうことなのね
アベリア:フフ… 面白いじゃない
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0: 闘技場
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ユール:ん? 女?
メイス:あらぁ、可愛らしいお嬢ちゃん。迷子? ダメよォ こんなところに入ってきちゃ
リヨナ:そーそ、今からうちら、魔王を倒すんだから
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アベリア:アベリア・グランワーズ! 私は純なる王の血! お前達は勇者か
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ユール:へぇ…
メイス:アラアラ。ンフ
リヨナ:こいつなんだァ かーわいそ。アハハ
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アベリア:…っ!
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ユール:やー悪ぃ悪ぃ。魔王っていうからでっかくてクサそうなのが出てくると思ったんだよ。俺は勇者。ユールだ
メイス:メイス。魔法使いよ。 フフ。あんたたち魔族からとれる魔素をありがたーく使わせて貰ってるの
リヨナ:リヨナは~、んー、聖女? 次の生け贄はお嬢ちゃんかぁ キャハッ
アベリア:生け贄? 随分ナメてくれるじゃない。さ、やるんでしょ? 早く来なさいよ
ユール:はは、早く来てぇー、だって! んじゃ、いくわ
メイス:リヨナは後ろで見てなさい。アタシはこっちから行くわ
リヨナ:フレー!フレー! 聖女リヨナが鼓舞しちゃうよぉ!
アベリア:勇者は右から… 魔法使いは左 っ あ! ッ、早い! うッ!
ユール:なんだあ? ガラ空きだぜ、お嬢ちゃん
メイス:ダウナーフレア…地の底に深く眠りし灼熱よ!
アベリア:くぁ…フィスト! っあ… あああー!
メイス:アラアラ。もう無様に転がっちゃうの?
アベリア:ううッ…
アベリア:(おかしい… フィストに魔素が伝わってない… それに)
アベリア:(重い… うまく動けない… 高祖父様のフィスト、これはどういうことなの?!)
アベリア:(く… せめて剣を、 剣を出せれば)
0:
ユール:聞いた話だけどさあ。魔王って自分の魔素で武器を作り出して戦うんだろ? あんたは何も出せねえの? お・嬢・ちゃんッ!
アベリア:あう!
リヨナ:まおーチャンはつよっつよだから、武器無しで勝てるんだって! キャハッ じゃあ、リヨナみんなにばふばふしちゃおっかな
ユール:うおー みなぎるぅ
メイス:ありがと、リヨナ
アベリア:あなたね聖女、私の力を
リヨナ:えー、リヨナ、何もやってなぁ~い
メイス:ウフフ。ダメよ、人のせいにしちゃ。 アイスバインド…冬の精霊はね、天より降りてきて静かに地を這うの
アベリア:あ、足が!
メイス:動けない? イケナイ子にはお・し・お・き
アベリア:このくらい! 魔素よ、巡って! …う、うそ! どうして
メイス:ククッ、魔素が使えない?
アベリア:!
メイス:それはね、その籠手つけてるからよ ウフフ! 魔王の一族ってつくづくバカよねぇ
ユール:なーんだメイス。ばらしちまうのかよ
メイス:あら。アタシ優しいの。 何も知らずに死ぬなんてかわいそうじゃない
アベリア:これは… このフィストは… 我ら一族の誇り!
ユール:ははっ、ほんとだ! コイツバカだ
アベリア:くっ… あなたたちは!
リヨナ:キャハハハ! それ、魔素吸引アーティファクトなのにねー!
アベリア:・・・・・・え
ユーリ:ほら、見てみろよ、ここ。俺らの装備品につけてあるコレ。コレにさ、お嬢ちゃんの魔素がさー、流れてくるんだよね
アベリア:うそ
メイス:あなたの魔素がそのまんまアタシ達力になってくれてるの
アベリア:うそ
メイス:それにね、アタシのこの杖の魔石、何が込められてるか…わかるかしら。ほらぁ、よーく感じてごらんなさい?
アベリア:あ、 ああ … こ… れ は… に、兄様… 兄様の、魔素
メイス:ア・タ・リ ウフフ。 魔王はね、10年に一度ここで殺されて、コッチ側で使う魔素発生器の素材になるの
リヨナ:ね、ね、ついでに教えてあげよっか。この戦い、コッチ側でなんて呼ばれてるか知ってる?
アベリア:・・・・・
リヨナ:『魔王狩り』
アベリア:・・・・まおう、が、り…
リヨナ:だからァ リヨナ最初に言ったよ? 生け贄だ、って
ユール:ギャハハハ! テメェもなるんだよ! 素材にさぁ!
アベリア:ううう…っ なん、ですって…
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ケニーシャ:こうしてフィストを姫様の腕につけていたら、お父上様や、兄上様がたの時のことを、思い出してしまって…
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アベリア:試練… 試練て…なに… 父様や兄様達も… こうやって陵辱されて… 殺された… の?
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0:ユール、メイス、リヨナ 一斉にバカ笑い(長めに取ること推奨)
0:
ユール:ギャッハハハハ! 絶望しちゃった? その顔、ウケる~!
リヨナ:ばっかみたーい じゃなくて、バカでマヌケぇ キャハハハハハ!
メイス:ウッフフフ! アナタもなるのよ。素材に。 今感じてるアナタの魔素、とっても澄んでてきれい! 上玉だわぁ! ウフフフフフ!
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アベリア:(私は父や兄のようにはならない)
アベリア:(わたしがなってやるわ。魔王に。そしてあいつらに蹂躙された民を解放する)
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ケニーシャ:アベリア様…アベリア様ならきっとできます!
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ケニーシャ:そしてきっと、創ってください。誰もが笑顔でいられる国を
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アベリア:(父様… 兄様)
アベリア:(大好きなケニーシャ。あなたが待っていてくれるなら、私は絶対に…)
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アベリア:(負けられない… 私は! 必ず生きて戻る!)
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0:
アベリア:く、こんなものッ こんなもの…ッ 壊してやる!
ユール:ハハハハハ! それ、あんたが死ぬまでとれねーよ 無駄なあがきは…
アベリア:くっ…なら みてなさい! ウアアアアア!
メイス:! 氷の枷(かせ)が?! 下がって!危ないわよ、ユール!
ユール:うお!
アベリア:喰らいなさい!
ユール:ぐあっ! 痛って… ペッ、こいつ、殴りやがった!
アベリア:父様の! 兄様の! 無念は! 私がー! 晴らす…ッ!
ユール:くそ! ちいっくしょ! ウッ!
リヨナ:ユール!
アベリア:魔素を吸い取られるなら使わなければいいんでしょう? ついでに … こうするのは! どう?!
ユール:け、剣を奪う気か! っくそっ離せ!
アベリア:離すもんですかッ フッ、魔素を使わなければ体が軽いわね 私、こう見えて地力もあるの
ユール:クッソ力(ぢから)がァ!
リヨナ:ユール、ばっふばふーーーッ
アベリア:負けるもんですかッ ハッ!
ユール:うおっ、あっぶね! くっそ、巧いな
アベリア:今のを立て直すなんて、そっちこそやるじゃない
メイス:はあ。バレット 風よ。つぶてを弾け
アベリア:がはっ
ユール:オラアッ! くはっ、助かったぜメイス
メイス:ハイハイ
アベリア:はぁ、はぁ
メイス:フフ。調子に乗っちゃダメよ? アベリアちゃん。魔素を使わないならアナタはただのお嬢ちゃん。おしとやかに、ね?
アベリア:ぐう…ッ 兄様の魔素を…穢すなアアッ!
メイス:バレット、 バレット … バレット!
アベリア:ガハッ アアッ う、うう…
メイス:ほらぁ。兄様もお怒りなんじゃなァい? 大人しくしなさいって
アベリア:ふざける… な
メイス:だいたいね。アナタ意味、わかってる?
アベリア:うう…
リヨナ:はいはいはぁーい! ここでリヨナからの問題だよぉ~ 誰がその籠手、アベリアチャンにつけさせたのかなぁ~? んふっ キャハハ! キャハハハ
0:
0:
アベリア:ケニー… シャ…?
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0:
0:
0:幼い頃の回想
0:
アベリア:ねえ、ケニーシャ、ケニーシャは森妖精なんでしょう?
ケニーシャ:はい! わたくしは精霊王の森林で生まれました。とってもきれいで素敵な森なんですよ
アベリア:わぁ-、私も行ってみたい
ケニーシャ:ウフフ。わたくしもいつか、アベリア様をお連れしてみたいです。でも…なかなか難しいかもしれないす。洞窟の向こう側なので
アベリア:洞窟の向こう?! ケニーシャ、洞窟の向こうから来たの? どうやって? だって、父上様も、おじいさまも、洞窟は誰も通れないって言ってたよ
ケニーシャ:そうですね、試練の洞窟は誰も通り抜ける事はできません。でも、わたくしは精霊王さまより、魔王族にお仕えし「試練のフィスト」をお届けするお役目をいただいているので、通ることができるのですよ
アベリア:しれんの、ふぃすと?
ケニーシャ:「フィスト」。魔王様の為の魔具です。魔王となる試練を受ける際には、代々、このフィストをつけて臨んできたのですよ
アベリア:フィスト… おじ上様の腕につけていた、あの籠手? でもおじ上様、試練から戻られなかったって …それを、ケニーシャが届けてくれたの?
ケニーシャ:そうです。ずっと昔に与えられた、大切な役目なのですよ
アベリア:ケニーシャ大好き! いつまでもずっと一緒にいてね
ケニーシャ:もちろんです!姫様
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0: 回想から戻る
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アベリア:あ… あ …
ユール:精霊王の森妖精はいにしえの盟約により代々勇者の従属なんだよ。そいつを魔王の腕にくっつけるためにさ
アベリア:そんな そんなことって… ケニーシャ、 ケニーシャ、 …ケニーシャ!
ユール:ははっ、どうした魔王。まさかもう墜ちちゃった? 随分チョロいじゃねえか
メイス:あらぁ、もう反撃終わり? もうちょっとくらい楽しめるかと思ったのに、ざーんねん
ユール:にしてももったいねぇな。へへ、折角かわいい顔してんのにな。どう?一回、俺の女になってみねえ? 標本みたいにされる前にさあ
アベリア:ぐう…ッ だ、だれが… あんたなんかに…ッ
ユール:そーりゃ! (蹴り)
アベリア: (ユールに蹴られる) …ガハッ!
ユール:あれ、まだそんな口きけんの
アベリア:はぁ、はぁ… う…っ
メイス:あらあらウフフ… こうまで一方的だとなんだかワタシたちが悪者みたいね。 ま、ユール。勘弁してあげなさいな。折角のいい素材がダメになったらどうするの
ユール:ちっ、わかったよ
リヨナ:んー、コレで終わりかぁ。 みんな、いちおー回復しとくねぇ~
ユール:お、さーんきゅ
メイス:ま、もういらないけどぉ?
ユール:ハハハハ! たしかにィ
アベリア:ううぅ…
ユール:んじゃ、サクッとやっちゃいますかあ! …これで終わりだ、魔王
アベリア:くっ!
0:
ケニーシャ:アブラチャンの茂みよ、アベリア様を護って!
アベリア:えっ
ユール:な、なんだこの枝!
メイス:森妖精?!
リヨナ:なんで?!
アベリア:ケニー、シャ…
ケニーシャ:アベリア様、試練の邪魔をしてごめんなさい。それでもわたくし…もしアベリア様が戻られなかったらと思ったらいてもたってもいられなくて!
アベリア:ケニーシャ! ううん、いいの。大好きよケニーシャ 大好き
ケニーシャ:それより、一体どうなさったのです? あんな奴ら、アベリア様の敵じゃないでしょう
アベリア:・・・そう、よね。これはあなたのせいじゃ、ない
ケニーシャ:?
ユール:おい森妖精、何邪魔してんだよ! この枝とっとと消せよ! 魔王殺(や)れねーだろうがァ!
リヨナ:ちょっとお! 森妖精は勇者の従属でしょー! 言うこと聞かなきゃリヨナ、おこだよっ
ケニーシャ:あなたたちは誰? 従属? 姫様を害する者はわたくし、許しませんから!
ユール:おいなんか話が違う
メイス:ダウナーフレア… 木々など燃やしてしまえばいいわ。もろとも死ね!
ケニーシャ:アブラチャンよ、ナナカマドに変わって! アベリア様、水の魔術をお願いします
アベリア:・・・ごめんなさい、ケニーシャ
ユール:ハハハ! いいぞ、燃えろー! この裏切り者がァ!
リヨナ:どうしたの? 魔王のくせに魔術も使えないなんてね! キャハハハ!
ケニーシャ:魔術が… 使え、ない 、どういうことですかアベリア様、何か呪いが
アベリア:・・・これよ
ケニーシャ:試練のフィスト…ですか?
アベリア:ぐすっ ケニーシャ、あなたは何も知らない。それでいいのね?
ケニーシャ:アベリア様、涙が… どうなさったのですか
アベリア:ううん、なんでもない。ただ嬉しいの。それだけよ。でももう…おしまいみたい。 ケニーシャ、あなただけでも逃げて
ケニーシャ:姫様何を! わたくしにはそんなことできません! ナナカマド! もっと厚く茂って! 姫様はわたくしが命に代えてもお守りするのです!
アベリア:ううっ、このフィストさえなければ! 私がケニーシャを護れるのに! くそっ、 くそっ! 腕を切り落とすこともできないなんて
ケニーシャ:これ、これなのですね! 姫様を苦しめているのは ああっ あつ…い… 体が…
アベリア:火が!
ケニーシャ:ああ… わかってきました… きっと… 父上様、兄上様を殺したのは… わた く… し
アベリア:ケニーシャ!
ケニーシャ:ひめ… さま わたくし、最後に一つ できることが … それで許されるとは 思ってないです けど この身が燃え尽きる 前 に
アベリア:ダメよケニーシャ、約束したじゃない!
0:
ケニーシャ:『土に還れ』
0:
0:
0:
メイス:ウフフフフ! 燃えさかりなさい、もっと、もっとよ!
リヨナ:メイス、やっちゃえやっちゃえ! ばーふばふばふ~
ユール:アッハハハハ! ざまあねえな! っ うお! な、なんだ?!
メイス:水柱! う、うそッ
リヨナ:魔素使えないはずでしょ? と、どーなっちゃったのぉ?!
ユール:み、水柱の中から… え、な、なんだよ… この…
メイス:あ… ああ… なんて…力? なに、これ、なんて…圧…
リヨナ:え、え、なんかヤバいよ… ヤバいよ り、リヨナ帰るぅ~!
アベリア:帰さない、わよ
ユール:ひ、ひい!!
アベリア:あなたたち。動けるものなら動いてみなさい
メイス:あ… あ…
リヨナ:い、いや…
0:
0: 水柱の中からケニーシャを抱えたアベリアが出てくる
0:
ケニーシャ:ひ、め… さ、ま…
アベリア:ケニーシャ、ありがとう。フィストを… 土に還してくれて。今、回復するわね … 魔素よ…
ケニーシャ:ふ…う … きもちいい です… 誰よりもきれいで … とても澄んでいる アベリア様の 魔素…
アベリア:フフ。大切な私の… ケニーシャ。 よかった。間に合って
アベリア:さて
0:(一斉に)
ユール:ひぃ!
メイス:ひっ!
リヨナ:ひぁっ!
アベリア:まずは、座りましょ
0:(一斉に)
ユール:ハイ!
メイス:ハイ!
リヨナ:ひゃい!
アベリア:(力を込める)はあああああーーー!
ユール:ご、ごめんなさい、ごめんなさい!
メイス:こここここころさないでぇ~!
リヨナ:や、やだ、やだ、やだ、やだ ぐすっ グスン うぇ… えええ(泣)
アベリア:…ハイ。これ
ケニーシャ:アベリア様!
リヨナ:え
ユール:宝石?
メイス:えっ! こ、これって… あなた!
アベリア:そう。魔素の塊よ。 人間はこれが欲しかったんでしょ?
メイス:あ、あなた…
アベリア:魔族だけが持つ魔素はあなたたち人間の生活にも、大森林の精霊や、妖精達にも必要だものね。『魔王狩り』が必要だったのはそのためでしょう?
アベリア:2000年前の魔大戦で、こうして魔族と人間の世界は断絶してしまったのだから
ケニーシャ:アベリア様、お優しすぎます!
アベリア:フフッ、試練、ね! 確かに、このくらいなんとかできないようじゃ、魔王は名乗れないわ
アベリア:あなたたちははっきり言って胸くそ悪い連中だったけど、きっと、それはあなたたちのせいじゃないのよ。さっさとそれ持って人間の世界に帰りなさい。そういう仕事なんでしょ? 勇者『役』
ユール:え、あ、ああ… 勇者、役
アベリア:あーあ! おかげで私の魔素はすっからかんだわ! 戻るのに10年はかかるわね!
ケニーシャ:アベリア様、いいのです? あんな連中に大きな力の塊を渡してしまって
アベリア:大丈夫よ。ケニーシャも知っているでしょ? 多すぎる魔素は魔物を生む。魔素を使い始めた人間が欲張りすぎて、世界が魔物だらけになった。それが魔大戦
アベリア:今の人間は、ちょうどいい魔素の使い方を知っているのよ。もしこの人たちが魔素を独り占めにした所で、自分たちが理性も持たない魔物に変化してしまうだけだもの
ユール:ヒエッ
メイス:大丈夫よ、この魔素石はとても安定してるわ。見たことないくらいすごい力が内包されてるけど…持っているだけなら安全よ
リヨナ:お姉様! アベリアお姉様と呼ばせてくださいぃぃいい~!
アベリア:なれなれしくしないで! それに! 試練はクリアしたもの。 今から私、『魔王様』よ! フフッ
0:
0:
0:
0: 洞窟から帰還したアベリアとケニーシャ
0:
アベリア:んーーーっ、いい天気ね!
ケニーシャ:うーっ、アベリア様。それにしてもやっぱりわたくし、心配です!
アベリア:あら。ケニーシャ、これはあなたとの約束なのよ?
ケニーシャ:えっ、わたくしとの、ですか?
アベリア:『みんなが笑顔で暮らせる国を創ってください』。そう言ったわよね、ケニーシャ
アベリア:あの人達を殺し、父様や兄様の仇を取るのも、人間の世界を恨むのも簡単。でも、それでは何もおきないわ。そこで終わってしまうもの
ケニーシャ:アベリア様…
アベリア:それにね
ケニーシャ:それに?
アベリア:2000年前、魔大戦を平定したわたしたちの『始祖』。純なる王と呼ばれたあのリリィ様はね、『魔王』と『勇者』の間に生まれた、『半魔』だったと聞いているわ
アベリア:人も魔族も隔てない世を掲げていたリリィ様。その、末裔ですの! わ・た・し
ケニーシャ:フフッ、すごいドヤ顔です!アベリア様!
アベリア:フフッ、いいでしょう?こんなときくらい!
ケニーシャ:アベリア様、これからもずっとあなたのお側に
アベリア:ええ! ずっと私の隣にいてね、ケニーシャ。世界で一番大好きよ!