台本概要
177 views
タイトル | 桜と共に散った彼と、桜と共に出会った人 |
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作者名 | くま@甘党 |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 3人用台本(男2、女1) |
時間 | 60 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
大切な思い出と共に生きてきた唯。 新しい恋が見つかったが、素直に進めないもどかしさ。 そんな唯に、奇跡が起きる。 177 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
唯 | 女 | 299 | 桜庭 唯(さくらば ゆい) この春から新社会人になる。幼馴染の思い出と共に生きている。 |
翔平 | 男 | 202 | 相田 翔平(あいだ しょうへい) 唯が働く会社の先輩。仕事が出来るキザな人気者。 |
和樹 | 男 | 87 | 高橋 和樹(たかはし かずき) 唯の幼馴染。小学6年の時に事故で亡くなった。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
唯M:幼馴染だった和樹。
唯M:彼が交通事故で亡くなったのは小学6年生になった春。
唯M:桜が散る中、自転車で颯爽と走る和樹の後ろ姿が
唯M:今でも目に焼き付いている。
唯:さて…、行きますか!
唯M:私は桜庭唯。今年から新社会人。
唯M:生まれ育ったこの田舎町を離れ、東京に引っ越す事になった。今日はその引っ越し日当日。
唯M:不安もあるけど、私は小さいころから好奇心旺盛で、新天地で何が待っているかを考えるとワクワクする。
唯M:初めての東京で、初めての一人暮らし。
唯M:これから私の、新たな生活が始まる。
唯:…今までお世話になりました、行ってきます!
唯M:駅のホームから、町の方を向いて挨拶をして電車に乗った。
唯M:空から散る桜の花びらが、見送ってくれた気がした。
0:半年後―
唯:はぁー今日も疲れたぁ!
翔平:お疲れ!桜庭!
唯:あ、相田先輩、お疲れ様です。
翔平:桜庭、今日この後何か予定ある?
唯:いえ、今日は何も無いです!
翔平:そう?じゃー飲み行かない?
唯:あー…、ちょっと今金欠で…。
翔平:ばーか、奢るに決まってんだろ?
唯:え、いいんですか!?行きます!!
翔平:ははw 現金な奴w
唯:だって…、物価高過ぎますよ東京…。
翔平:あー、桜庭ってこっちの人じゃないんだっけ?
唯:はい。田舎育ちにパンケーキ1,700円は衝撃です…。
翔平:あっはっはw じゃー行くか!気が済むまで好きなもん食っていいぞ!
唯:やったー!ありがとうございます!!
0:
唯M:先輩の名前は相田翔平。私が働く部署のエース的存在。
唯M:入社当時から、私の教育担当として仕事を教えてくれている。
唯M:顔もスタイルも良く、もちろん人気者で、最近会社にはファンクラブができたとか。
唯M:桜をバックに新入社員への挨拶をした事で、ファンが激増したらしい。
唯M:そんな先輩が、最近ご飯に誘ってくれるようになった。
0:居酒屋
唯:うぅー…もう…、お腹いっぱい…ですぅ。
翔平:…よ、よくもまぁこんな食べられたもんだ…w
唯:ん…これ以上食べたら…出てきそうです。
翔平:はいはい、もうお開きにしよ!
唯:はぁい…ごちそうさまでしたぁ…うぅ…。
翔平:やれやれw
0:外
唯:ふうう、今日は本っ当にごちそうさまでしたぁ。
翔平:おう、どういたしまして!まだ苦しそうだなw …あ、ちょっとそこの公園で休んでいこうか?
唯:んー、そうですね。
0:公園
翔平:じゃあちょっと座って待ってて。
唯:あれ、どこ行くんですか?
翔平:ん?ちょっとトーイレ!
唯:あ、わかりましたw
0:間
唯:はぁー、美味しかったなぁ。久しぶりにこんな食べちゃったw
0:急に頬に冷たい感触がする
唯:きゃっ!?
翔平:びっくりした?w ほら、コーヒー。
唯:あ、ありがとうございます…。ふふ…。
翔平:ん?どうした?
唯:あ、いえ、…ちょっと昔の事を思い出して。
翔平:へぇ、聞いてもいい?
唯:あ、別に大したことじゃないんですけどね…。昔、小学生の頃、幼馴染がこうやって缶コーヒーをくれた事があって…。
翔平:え、子供の頃から缶コーヒー飲んでたの?w
唯:おかしいですよねw ホントいつもかっこつけしいで…。
翔平:まぁ、コーヒーを飲むのって大人のイメージだもんなぁw
唯:……。あ、そういえば先輩、どうして今日誘ってくれたんですか?
翔平:ん?理由ないと誘っちゃダメ?
唯:え、いや…そういう訳じゃ…。
翔平:ふふw 普段から頑張ってるからそのご褒美ってとこかな?
唯:…ありがとうございます。そう見えてたら、嬉しいです。でも、私まだまだだなって。もっと頑張らなくちゃって思ってます。仕事覚えるのも遅いし、すぐ予定忘れちゃうし。
翔平:あーw 部長から聞いたよw この前も大事なアポ、すっぽかしそうになってたってw
唯:えぇ!?は…恥ずかしい……。
翔平:あははw まぁ誰でも失敗する事はあるんだし、そんな気にすんなよw
唯:はい…気を付けます。
0:間
翔平:……あの、桜庭はさぁ、
唯:はい?
翔平:今…好きな人とか、居ないの?
唯:……え?
翔平:あ、いやいや、ほんの興味本位!他意はないから。
唯:…いません。
翔平:そ、そうなんだ…。そっか…。
唯:はい…。…先輩は、ご結婚されてるんですか?
翔平:え、なんで?してないよ?
唯:だって…、先輩社内でも有名なモテ男じゃないですか。
翔平:モテ男って…。あまり嬉しくない言われ方だなぁ。
唯:あ…ごめんなさい…。
翔平:だってさ、好きな人にだけモテていたくない?
唯:そ、そうですか?
翔平:うん。まぁ嫌われるより全然良いけどさ。でも好きな人に好きだって思われてたら、他の人からは普通と思われていたいかな。
唯:……。
翔平:…ちなみに桜庭は、俺の事どう思ってる?
唯:……え?
翔平:俺の事、少しはかっこいいとか…、思ってくれてたりする?
唯:え…まぁ、仕事もできるし、スタイルも良いし…、って思ってますけど。
翔平:へぇー!そうやって思ってくれてるんだー!
唯:あの…他意は無いですから。
翔平:大丈夫だよ、そんな警戒しなくてもw
唯:警戒は…してないですけど。
翔平:よし、お腹も落ち着いたようだし、そろそろ帰ろうか!
唯:あ、はい…。
0:駅
翔平:今日はありがとう、付き合ってくれて!
唯:いえ、こちらこそ奢ってもらっちゃって、ごちそうさまでした!
翔平:おう、じゃあまた。気を付けて帰るんだぞ!
唯:はい!お疲れ様でした!
翔平:お疲れ様! ………はぁ、まだまだこれからだな。
0:
唯:…ふう。久しぶりに和樹の事、思い出しちゃった。
0:
唯M:高橋和樹。物心ついた頃からよく遊んでいた幼馴染。
唯M:6年生になった春、自転車で遊びに行く途中、信号無視の車に跳ねられて亡くなった。
唯M:いつもかっこつけてて、子供のくせに缶コーヒーを飲んで、キザなセリフを言ったりして。
唯M:今の会社に入社して、相田先輩と会ってから、和樹の事を思い出すようになった。
0:回想
唯:きゃっ冷たい!?
和樹:ほら、コーヒー!
唯:えー、子供が飲んだら夜寝れなくなるってお母さんが言ってたよー?
和樹:俺はそんなおこちゃまじゃないから飲んでも平気なんだよ!
唯:うっそだー!
和樹:本当だって!それに、似合うだろ?俺がコーヒー飲んでる姿!
唯:ぜーんぜん!オレンジジュース飲んでる和樹の方が笑ってて美味しそうだよ?
和樹:ぶっ!あれは…!
唯:あれは?
和樹:あれは…あれで美味しいけど…。ほら、飲めよ唯も!
唯:えぇー…。
0:回想 終
―:
0:数ヵ月後 会社 昼休み
唯:いただきまーす。
翔平:お疲れー桜庭!俺も一緒していいか?
唯:先輩、お疲れ様です。どうぞ。
翔平:おー今日も美味しそうな弁当だなぁ!いつも全部手作りだろ?偉いよなぁ。
唯:いえ、そんな事は。ただ単に冷凍食品とか好きじゃなくて。味付けも適当だから毎回微妙ですし…レパートリーもそんな多くないし。
翔平:もっと自分に自信持てよー。どれ、卵焼きいただきっ!
唯:あっ、ちょっ…!
翔平:んん…ん。美味い!!絶妙な甘さだぁ。出汁巻きも良いけど、卵焼きはやっぱこの甘いのが良いんだよなぁ。
唯:ふふ、先輩も、甘い派なんですね。
翔平:ん?「先輩も」って事は、誰かにも食べさせたの?
唯:あ、いや…昔に。
翔平:あーあの幼馴染くんか!
唯:はい…。
翔平:そっかぁ、俺とその幼馴染くんは似てるのかなぁ?
唯:どう…なんでしょう。でも先輩と居ると、たまに思い出します。
翔平:へぇ、じゃあ似てるとこもあるって事だな!
唯:そうですね…。
翔平:……あ!!
唯:えっ!?
翔平:なぁ!今度の週末、ちょっと付き合ってくれない!?
唯:な…なんでですか?
翔平:これこれ、映画のチケットもらったんだよ!
唯:「桜散る木の下で」…?
翔平:そう、めっちゃ泣ける話らしいんだ。あ…こういうの、好き?
唯:……好きです。
翔平:そうか!じゃあ予定が無ければ、一緒にどう?
唯:…わ、私でいいんですか?
翔平:ふはw じゃなきゃ誘ってないって。
唯:…じゃあ、是非…。
翔平:いえーい!
唯:…ふふふ。
翔平:ん?
唯:いや、先輩って、子供みたいな喜び方するんですねw
翔平:そうかな?大人でも嬉しい時は「いえーい」ってなるだろ?
唯:なんか…可愛かったですw
翔平:…はは。笑顔の桜庭の方が何倍も可愛いよ!
唯:かっ…!?。…は…恥ずかしくないんですか、そんなストレートに…。
翔平:思った事は正直に伝えたいんだ、俺。
唯:…言われた方は……恥ずかしいですよ。
翔平:恥ずかしがってる桜庭も可愛いw
唯:も…もう…やめてくださいよ!
翔平:あっはは。ほら、食べようぜ!
0:週末
唯:ごめんなさい!電車に乗り遅れて遅刻しちゃいましたっ!
翔平:おー、おはよう桜庭!全然大丈夫だよ!
唯:時間…、間に合いますか?
翔平:あぁ、予定より1時間前に待ち合わせておいて良かったw あと30分くらいで始まるから早速向かおうか。
唯:はぁ、良かった…。
翔平:桜庭の事だから、きっと遅れるだろうと想定して待ち合わせ時間と場所決めたからなw
唯:なっ……失礼…です…よ、他の人なら。
翔平:あっはは、桜庭なら失礼じゃないんだ?
唯:うぅ…言い返せません…。
翔平:可愛いねぇw ほら行こう!
0:映画が終わり とあるカフェへ
唯:あー、なんで私ってこうなんだろう……。
翔平:ぷっww まーだ言ってるw
唯:ほんっっとにごめんなさい…。まさか半分以上寝ちゃうなんて…。
翔平:あはは。まぁ疲れてるのに誘っちゃった俺にも責任あるからw
唯:いや…そんな事…。あー…、ごめんなさい…。
翔平:もういいってw …それより、なんか夢見てた?
唯:えっ!?…まさか映画中に寝た挙句、何か寝言でも言ってました!?
翔平:ちょっとだけね?言葉も聞き取れないくらいだったよ。
唯:だぁ…恥ずかしすぎて…帰りたいです……。
翔平:えーダメだよ?せっかくの休日だもん、もう少し付き合ってよー。
唯:いや…帰りませんけど…あぁ、穴があったら入りたい……。
翔平:ふふw で、どんな夢見てたんだ?
唯:…えっと、ヒロインが公園でいじめられてる時に、主人公が助けに入った場面があったじゃないですか。
翔平:ああ。
唯:あの辺から意識が無くなったんですけど…、夢で私も公園にいて、幼馴染が助けに来てくれた夢を見てました…。
翔平:へぇ!じゃあその幼馴染くん、桜庭にとってヒーローだったんだな。
唯:んー、そうですね。喧嘩には負けちゃったんですけど…。それでも…。
0:回想
唯:やめてよー!返してよー!
和樹:お前ら!その子のぬいぐるみを返せ!
唯:…えっ、和樹?
和樹:うおおおおお!!
0:
唯:和樹、大丈夫?痛い?
和樹:グズ…これくらい、なんでもないっ!
唯:でも…泣いてるよ?
和樹:な、泣いてない!!グズ…。
唯:…ありがとう、助けに来てくれて。
和樹:…あぁ、でも悪い、取り返せなくて…。
唯:…ううん、………グズ……グズ…。
和樹:な…泣くな!俺が新しいぬいぐるみ買ってきてやるから!!
唯:…え?でも…和樹、お金あるの?
和樹:そんなもん、働いて稼ぐさ!
唯:働くって…、大人にならないと働けないよ?
和樹:ああ!だから大人になったらいっぱい働いて、唯の好きな物なんでも買ってやるよ!
唯:えっ本当!?
和樹:約束する!だからもう泣くな!
唯:うん!えへへ、楽しみ!
和樹:唯は笑ってる方が可愛い。だからずっと笑ってろ!
唯:か…和樹…。恥ずかしいよ…。
和樹:へへ。俺が唯の笑顔を守るからな!
唯:…うん!
0:回想 終
翔平:かぁーー、良い男だねぇ!
唯:あはは。
翔平:負けるとわかってても、助ける為に果敢に挑む姿。男として見習わないとなぁ。
唯:……かっこよかったです。
0:間
翔平:なぁ、俺も桜庭の笑顔を守りたいって言ったら、困る?
唯:………え?…な、なんで急にそんな話に…。
翔平:俺、桜庭の事が好きなんだよ。
唯:…えっ!?あ…、あの……えっと…。
翔平:俺が桜庭…いや、唯の笑顔を守りたい。ずっと俺の隣で、笑っててほしいんだ。
唯:…せ…先輩…。
翔平:か…翔平って呼んでくれると嬉しいんだけどなぁ?
唯:しょっ!?…は、は恥ずかし過ぎます!!
翔平:あははw やっぱ可愛いなぁ!
唯:う…うぅ…。
翔平:返事は来週の週末、聞かせてほしい。
唯:ら…来週…?
翔平:そ!また来週デートしよう!で、その帰りに答えを聞かせてほしい。
唯:……。
翔平:それまで、ちょっと考えてみて。
唯:…わ、わかりました。
翔平:ん。って事で…、今日はこれで解散にしようか!
唯:はい…。
0:間
翔平:じゃあまた明日、会社でな!ドキドキし過ぎてミスするなよー?w
唯:しっ…しませんよ!!
翔平:あははw じゃあな!
0:唯 自宅
唯:はぁ…。どうしよ…告白されちゃった。
唯M:先輩の事は嫌いじゃない。むしろ仕事ができて、見た目も中身も素敵な男性…。
唯M:だけど…、何か引っかかる。違和感というか…、和樹の面影が見える。
唯M:たまたま和樹と同じような行動をしているからかもしれないけど…、
唯M:もしかして…和樹の生まれ変わりとか…?
唯:…ぷっw 考えすぎか。そんな訳…ないじゃない。
0:週末
0:
0:唯 自宅
唯:あー…やばい…ゲホッゲホッ。んー…38.7℃か。これは…無理だなぁ…。
唯:先輩に…電話しなきゃ…。
0:プルルルルル
翔平:もしもし?おはよう、桜庭!
唯:あ…せんぱゲホッゲホッ…。先輩…すいません…。
翔平:え、ど…どうした!?風邪か!?
唯:…そう…みたいです。本当…申し訳なゲホッゲホ…。
翔平:バカ!なんで電話なんだよ!そんな状態ならメールで断ればいいのに!
唯:いや…それは…あまりに失礼かと…。
翔平:なぁ、家そんなに遠くないだろ!?お見舞い行くから住所教えてくれ!
唯:え…えぇ…いいですよ!迷惑だし…それに風邪移しちゃいますよ…。
翔平:そんなの!!…あ…いや、いきなり家に行くのは…さすがにか。悪い。
唯:あ…別にそういう意味じゃ…。でも…ありがとうございます。お気持ちだけ頂きます。
翔平:んん。俺との約束はいつでもいいから、とにかく今日はゆっくり休んで。
唯:はい…申し訳ありません。
翔平:気にしなくていいから!じゃあ…安静にな?
唯:はい…、ありがとうございます…。
唯:……ふう。…とりあえず今日は薬飲んで寝てよう…。
0:翌日 会社
翔平:…えっ!?桜庭!?もう出勤してんのか!?
唯:あ…先輩…。
翔平:おいおい、昨日の今日で…大丈夫か!?
唯:んー…ちょっとふらつきがあるくらい…で…大丈夫です。
翔平:いや…全然大丈夫に見えないんだけど!?
唯:この資料を……経理課に……。
翔平:いいって、俺が持っていくからよこせ!
唯:…あ、
0:その場で倒れ込む唯
翔平:なっ…!?桜庭!!おい、しっかりしろ!!
0:病院
唯:…………ん…、ここは…?
翔平:あ、気が付いたか?
唯:……先輩?
翔平:あぁ。ここは病院だよ。
唯:……病院?………(思い出して)あっ!ごめんなさい…私…倒れ…ました、よね?
翔平:…ったく、無理に出勤するからこんな事になるんだぞ?
唯:う…すみませんでした。
翔平:…ふ。まぁ点滴も打ってだいぶ熱も下がったみたいだし、もう大丈夫だろ。先生呼んでくる。
唯:あ…ありがとうございます。
0:間
唯:…はぁ、やっちゃった…。
唯:なんか…あの時みたい……。
0:回想
0:
0:
0:学校
0:
0:
唯:ゲホッ…コホッ…。
和樹:唯、帰るぞ!
唯:…え?学校は?
和樹:そんな状態じゃ無理だろ!
唯:だいじょうゲホッ…ゲホッ…。
和樹:先生にはもう言った!唯のランドセルも持った!ほら行くぞ!
唯:…うん、ケホ…ありがとう。
0:間
和樹:…なんで休まなかったんだよ?
唯:だって…学校行きたかったんだもん。
和樹:そうやって無理したら、もっとひどくなって、もっと休む事になるだろ。
唯:……グズ…。ゲホッ…ケホ…。
0:間
和樹:よし…着いた。
唯:え…か…帰っちゃうの……?
和樹:…一緒に居る。
唯:ケホ…本当…?
和樹:うん。ほら、入ろう。
0:唯の部屋
和樹:唯、入るぞ。
唯:はぁい。
和樹:おばさんがおかゆ作ってくれた。ちょっと買い物行ってくるって。
唯:そっか…ありがとう。
和樹:………。
唯:……ケホ…。
和樹:…食べられそうか?
唯:んー…、いつもお母さんが食べさせてくれてたから…。
和樹:………。
唯:…和樹。
和樹:…な、なに。
唯:……食べさせて?
和樹:なっ…!?あ…甘えるなよ……。
唯:……あれ…和樹…、顔真っ赤だよ?…風邪移しちゃった?……ごめんね…ケホ…ケホ。
和樹:ばか!違えよ!…………ほ、ほら…。
唯:……ん…。……美味しい…。
和樹:……。
唯:…ありがとう、和樹。
和樹:…あぁ。
0:回想 終
翔平:桜庭、この後一度診察して、問題がなければそのまま帰れるってさ。
唯:先輩、ありがとうございます。
翔平:俺このままロビーで待ってるから、終わったら来て。
唯:すみません、ご迷惑をお掛けして…。
翔平:いいって!また後でな!
唯:はい。
0:診察後 ロビー
翔平:お、来た来た。
唯:お待たせしました。もう大丈夫です。
翔平:そっか!外でタクシー待たせてあるから、家まで送るよ!
唯:え…いや、そこまでしてもらわなくても…。
翔平:まだ完治した訳じゃないんだからな?どうせ医者から「今日明日は安静にしてください」って言われただろ?
唯:え、い…言われましたけど…。
翔平:ほら、行くぞ!
唯:…はい。
0:タクシー内
翔平:……あのさ、もし良かったら…なんだけど…。
唯:はい。
翔平:ちょっとだけ…家に寄らせてもらっても……いい?
唯:え…?
翔平:あの…これ、待ってる間に色々と買っちゃって…。飲み物も入ってるから重たいんだ。運ぶくらいはしてあげたいなぁと。
唯:わっ…こんなにいっぱい…。…ありがとうございます。せっかくなので…よろしくお願いします。
翔平:本当?良かった!
唯:……。
0:唯 自宅
翔平:お邪魔しまーす。
唯:どうぞ…汚い所ですけど…。
翔平:え、どこが?めちゃくちゃ綺麗に片付いてるじゃん!
唯:あんまり見ないでくださいね…?
翔平:あ、悪い悪いw 荷物、しまっちゃうね。冷蔵庫、開けるよ?
唯:あ、はい…。
翔平:…てか、寝てなよ!あと俺やっとくから!
唯:え…でも…。
翔平:大丈夫!なっ?
唯:…はい、じゃあ…お言葉に甘えて…。
翔平:ん!
0:間
翔平:桜庭ー、開けるよー?
唯:すー…すー…。
翔平:あ、寝てる…。んー…、このまま帰るのも心配だし…、ちょっと仕事するか。
0:2時間後
翔平:よし、こんなもんかな。
唯:…先輩。
翔平:あ、起きた?だいぶ楽になったか?
唯:はい、おかげさまで。本当にありがとうございました。
翔平:全然!桜庭が元気になって良かった!
唯:あの…ずっと待っててくれたんですか…?
翔平:ん?あぁ、もうこんな時間だったんだ…。仕事してたからあっという間に時間経ってたわw
唯:ごめんなさい…。
翔平:謝るなよー。俺がしたくてした事なんだし。
唯:あの、もう本当に楽になったし元気になったので…。
翔平:あ、あぁ…ごめんごめん、すぐ帰るよ!
唯:いや!そうじゃなくて…。
翔平:え?
唯:あの…夕飯食べていきませんか?
翔平:え!もしかして…作ってくれるの!?
唯:そんな大した物は作れないですけど…。
翔平:えーめっちゃ感激!!いえーーい!
唯:いや…w あの…本当、期待しないでくださいよ!?
翔平:するに決まってるじゃん!!いつもあんな美味しそうな弁当作ってるんだもんw
唯:(小声で)………作るのやめようかな……。
翔平:え!?ごめん!ごめんって!嘘だって!!いや嘘じゃないけど…。
唯:…ふふふ。こっちも嘘ですよーだ!
翔平:こ…このやろーw
唯:お返しですーw じゃあちょっと待っててくださいね!
翔平:…あ!
唯:え?
翔平:やっぱ手伝う!一緒に作ろうよ!
唯:えぇ?でも…。
翔平:大丈夫!何か切ったり皿用意したりするだけだから!味付けには一切触れないから!
唯:そんな事思ってませんよ!お礼にならないって思ったんです!
翔平:俺にとっては一緒に料理できることが十分お礼なの!ほら、何作る?俺何する?
唯:…もう!w わかりましたから、ちょっと落ち着いてくださいw
0:
―:数ヵ月後 春
0:
唯:先輩遅いですよー?女の子を待たせるなんて!
翔平:え…早くない!?まだ待ち合わせ時間の30分も前だよ!?
唯:ふっふっふ。私だってやればできるんですよー!
翔平:あははw 負けましたw
唯:さて、今日はどこに連れてってくれるんですかー?
翔平:すごい気合い入ってるなぁw 今日は無事に天気にも恵まれた事だし、桜満開の森林公園に行こうかなと思っております。
唯:わぁ、お花見ですね!!森林公園かぁ、私…何年ぶりだろう!?
翔平:俺も久しぶりなんだぁ。この前ネットで見たんだけど、最近新しいモニュメントもできたらしいんだ!
唯:へぇ!じゃあー早速行きましょう!
翔平:おいおいw 張り切り過ぎじゃないかー?w
0:森林公園
唯:ふぁーー、桜満開!!綺麗ー!!…懐かしいなぁ…あ、巨大噴水もある!
翔平:本当だなー!あんまり変わってなくて安心した。
唯:あの噴水、夜になるとライトアップされてましたよね!
翔平:そうそう、今時期もライトアップやってるかな?
唯:私、ちょっと見てきますね!
翔平:え…あ、あぁ。
0:噴水の方へ走っていく
翔平:…相変わらず、こういう時の唯は元気だなぁw
唯:せんぱーーい!夕方から2回、やってるみたいですよー!今日もー!
翔平:わかったー!じゃあ時間に合わせて見に来よーう!
唯:はーーい! うわっっ!?
0:こちらに向かって走ってくる途中で転ぶ
翔平:あっ!大丈夫か!?
唯:いてて…、あ、すいません、大丈夫です!
翔平:ほら、掴まれよ。
唯:あ…ありがとうございます。
翔平:ったく、気を付けろよなぁ。
唯:…んふふ。はーい。
翔平:あっちの桜の木の下、丁度いい場所があるから、そこでレジャーシート敷いてのんびりしよう!
唯:え、さっすが先輩!準備が良いですねー!
翔平:まぁ元々ここに来る予定で居たからな。丁度荷物も揃ってたし。
唯:あー、過去に誰かとしたんですか?公園デート!
翔平:とーもーだーちーと!
唯:あははw 別に過去に何があっても何にも思わないですよーw
翔平:それでもこういう時は友達とって事にしておくの!
唯:あー、女の子の扱いも慣れてらっしゃるんですねw
翔平:お前…言うようになったじゃねーか!このやろ!
0:唯の脇腹をくすぐる翔平
唯:っきゃあ!ちょ…wくすぐったい…ですってwwいやああw
翔平:生意気なんだよおーーw
唯:ひいぃwwごめwなさいwいーいーww
翔平:あっはっはっははははw
唯:はぁ…はぁ……、おかしくなるかと思った…。
翔平:弱点発見だなw
唯:もう…!ここ効かない人ってたまに居るけど、意味わかんないですよね!
翔平:俺、効かないけど?
唯:え、ずるい!!本当か確かめる!!
翔平:残念無念また来週~w
唯:あ!待てーーー!!
0:回想
和樹:ほら、掴まれよ。
唯:うぅ、痛いよう…グズ。
和樹:ったく、気を付けろよなぁ。
唯:グズ。…うん。
和樹:ほら、あそこ!あの木の下で休もうぜ!もうシートも敷いてあるんだ!
唯:え、あれって和樹のだったの?
和樹:あぁ!こないだ来た時にセットしたんだ!あそこが俺達の特等席だ!
唯:準備が良いんだね!ありがとう!
和樹:へへ。唯が喜ぶと思ってさ、こんな物も持ってきたんだぜ!
唯:うっわーー!!早くやろやろーー!!
0:回想
―:
0:夕方
翔平:はぁー…久しぶりにこんなのんびり遊んだなぁ。
唯:はい。たまには都会の喧騒を忘れて、のんびり穏やかな公園デートも良いですね!
翔平:そうだな!それに…こんな子供のおもちゃで喜んでくれて良かったw
唯:ふふ。私、シャボン玉好きなんですよ。
翔平:そうなんだ?…あ、それもあの幼馴染くんと…?
唯:はい!
翔平:…そっか。よく覚えてるよなぁ、そんな昔の思い出。
唯:もちろん覚えてますよ!どれも大切な思い出です。一生忘れません。
翔平:……。
唯:あ、そろそろ噴水の時間じゃないですか?
翔平:おぉ、…そういえばもうすっかり日も暮れてきたな。行ってみるか!
唯:はい!
0:噴水広場
翔平:あと…5分ってとこだな。
唯:……。
翔平:…?どうかした?
唯:…あ、いえ。なんでもないです!
翔平:…なんだよ?何か思う事があるなら正直に言ってほしいんだけど…?
唯:……いえ、本当に…何も…。
翔平:じゃあさ、ずっと待ってたあの質問の答え、もらってもいい?
唯:………。
翔平:まだ、答えは出てない?
唯:いえ…答えは出ているんです。だけど…。
翔平:だけど?
唯:………。
翔平:…何か、考えてる?
唯:………怖いんです。
翔平:…怖い?
唯:はい…。先輩と居ると楽しいし、幸せだなって思いました。でも…もし先輩と交際して、この先もずっと…先輩の傍に居られるのかなって…。
翔平:……。
唯:私、もう大事な人が傍から居なくなるの…耐えられないと思ってて…。
翔平:……。
唯:……グズ…。
翔平:…唯。
唯:…グズ……グズ…。
翔平:泣くなよ、唯。俺がちゃんと傍に居るから。
唯:…グズ……、……えっ!?
翔平:俺を信じろ!俺は、この先ずっとお前の傍に居る!だから信じろ!
唯:……か…ずき…?
0:回想
唯:えぅ…うっ……グズ…。
和樹:おーいー、もう泣くなって!ちょっと転んだだけじゃんか!
唯:…グズ……だけじゃないもん…。
和樹:あぁ…?
唯:転んだだけじゃない!轢かれそうになった!!
和樹:だ…大丈夫だっただろう!!
唯:いやだ!!!
和樹:何がだよ!!
唯:和樹が死んじゃったらいやだーーー!!……うわああああん!!
和樹:唯…。
唯:(泣き続ける)
和樹:……なよ。
唯:…うっ…うっ………。
和樹:泣くなよ、唯。俺がちゃんと傍に居るから。
唯:…本当?
和樹:俺を信じろ!俺は、この先ずっとお前の傍に居る!だから信じろ!
唯:……グズ…、わかった…。……信じる…。
和樹:約束だ!
唯:…うん!約束!…へへへ。
0:回想 終
唯:なん…で…?……なんで、その言葉……。
翔平:……ごめん、唯。
唯:……え?
翔平:俺さ、事故にあってから、どうしてもお前が心配でさ…。
唯:…なに…言ってるの……?
翔平:信じてもらえないかもしれないけど…、
和樹:(翔平のセリフに続けて)今話してるの…俺、和樹だよ。
唯:……は? ………か…和樹…?
和樹:俺さ、今ちょっとだけこの人の身体借りてんだ…へへ。
唯:へ…へへって……。
和樹:お前の事、あれからずーっと見守ってた。言ったろ?この先ずっとお前の傍に居るって。
唯:……。
和樹:…悪い、傍に居ても…お前に見えないんじゃしょうがないか…。
唯:………。
和樹:唯、あれから中学高校大学って進んでさ、その中で一度も誰とも付き合わなかっただろ?
唯:…っ!
和樹:何回か告られてたのにさー、もったいない。
唯:もっ………。
和樹:わかってるよ、俺の事をずっと想ってくれてたって事は。今になっても俺との思い出ひきずってさー!
唯:…ないじゃん。
和樹:…ん?
唯:し…仕方ないじゃん!!そんなの!!!
和樹:っっ!?
唯:私には…私には……グズ……うぅ…。
和樹:…。
唯:私には和樹しか居なかったの!!
和樹:……。
唯:あんなにかっこよくて、頼りになって、暖かくて、一緒に居たいと思った人は!!
和樹:……。
唯:どれだけ成長しても、どれだけ色んな人に出会っても、和樹以上の男なんて居ないんだよ!!!
和樹:唯…。
唯:なによ!!いきなり出てきて!!もったいないだの、思い出ひきずってるだの、そんなの当たり前じゃない!!私は和樹が大好きなんだから!!!
和樹:唯!
唯:身体を借りてるって何…?先輩は…ずっと和樹だったの!?先輩になりすましてたの!?
和樹:違う!話を聞けよ!!
唯:ずっと不思議だった…。何度か和樹の話をした時、和樹が死んだなんて一度も言ってないのに、今和樹と私がどうなっているのか、どうして聞かないんだろうって…。
和樹:そ…それは…。
唯:そりゃ聞かないよね!だって、全部わかってるんだもん!本人なんだもん!!
和樹:ゆ…唯、落ち着けよ!
唯:落ち着いてるわよ!!………グズ……グズ…。
和樹:…まーた泣いた。
唯:……るっさい…グズ。
和樹:なぁ、許してくれよ。
唯:……グズ…。
和樹:ゆーいー!ごめんって!
唯:……。
和樹:俺な、ずっとお前の事見ててさ、この会社に入って、やっと唯が新しい恋ができるかなって思ったんだよ。
唯:……は?
和樹:この翔平って人、良い人だよ、俺と似てて!w
唯:…自分で言うか……。
和樹:けど、お前も思っただろ?だから俺も、この人になら…託せると思ったんだよ。
唯:た…託す?
和樹:あぁ、お前の事、この人になら託せると思った。なんせ俺と同じセリフ言うんだもん、こんなキザで良い男はなかなか居ないだろ?w
唯:だから自分で言う?そういう事…。…まったく、和樹らしい…。
和樹:へへ。でな、ちょっとだけ身体借りてさ、俺がこの人の身体で唯にアプローチかければ…より確実にって。
唯:なにそれ……最低。
和樹:ん…まぁ正直悩んだんだけどさ。…でも、俺もう見ていられなかったんだよ。毎晩寂しそうにしてる唯の事…。
唯:……。
和樹:唯は笑ってる方が可愛い。だからずっと笑ってろ!
唯:…それ!あの時も…。
和樹:ほーら、笑ってみ?w
唯:わ…笑えるわけないでしょ…。
和樹:なんでだよー、俺はお前の笑顔が好きなのにさぁ。
唯:……ばか。そんなストレートに言われたら恥ずかしいって言ってるじゃん…。
和樹:へへ。思った事は正直に伝えたいんだ、俺。
唯:…あ……それも…。
和樹:本当に似てるよな、この人と俺w
唯:……。
和樹:なぁ、もう悩むなよ!大丈夫だから!
唯:…なにが。
和樹:この人は、ちゃんとお前の傍に居るよ。この先ずーーーっと!
唯:……説得力無いんだけど。
和樹:うわぁ、それ言っちゃう?
唯:……ごめん。
和樹:ふw 俺もごめん!勝手に先に逝っちまって。だけどさ、二人の事は、俺がこの先も守ってやるから!安心して良い家庭を築けよ!
唯:か…家庭って…気が早い…。
和樹:そんな事ないって!あと数年後にはきっと結婚して、そのうち子供が産まれて、唯はいつも笑顔溢れる家庭で暮らして、可愛いおばあちゃんになるまで、最高に楽しい人生を生きていくんだ!
唯:……和樹…。
和樹:俺はそれを、上から見守ってる。何かあったら、ちゃんと守ってやっから安心しろ!
唯:え…かず…き?なんで…光って…?
和樹:あぁ…もう時間か。
唯:……は?時間?ね…ねぇ、待ってよ!
和樹:悪いな、唯、ちゃんと幸せになれよ!
0:強い光に包まれて翔平の身体が見えなくなると同時に、桜が舞う
唯:ま…まぶしっ……桜!? …か、かずき? かずきーー!!
0:光が消えて目が慣れると、そこに翔平の姿が見えた
翔平:……か!?
唯:…………ぇ?
翔平:…おい、大丈夫か!?
唯:…あ……先輩…?
翔平:ど、どうしたんだよ?急に黙ったかと思えば…呆然としちゃって…大丈夫か?
唯:…あ……はい…、だい…じょうぶです。
翔平:…そっか。それで…あの。
唯:…あ、
翔平:え?
唯:先輩…、私…。
翔平:…何?
唯:私、幼馴染の和樹が大好きです。今でも。
翔平:…………そうか。……それじゃあ。
唯:(被せて)亡くなったんです。小学6年の春に。
翔平:……え!?そうだったの!?
唯:はい。でも今でも好きなんです。
翔平:…そうか…うん。
唯:先輩は、その和樹にとても似ています。
翔平:へ…へぇ?
唯:なので、私は先輩に和樹の面影を見ることがあるかもしれません。
翔平:……?
唯:それでも良ければ、私とお付き合いしてください!
翔平:………えっ!?
唯:多分、和樹の事を吹っ切れるまでにまだ時間は掛かりそうなんですけど、…でも、好きなんです。先輩のかっこつけてる感じとか、頼りになるところとか、暖かいところが。
翔平:……。
唯:それでも良ければ…私とお付き合いして頂けませんか?
翔平:…よ、喜んで!いや…え、逆告白になっちゃった…!?
唯:……そう、ですねw
翔平:なんだよ…かっこつかないじゃん!俺が告白したはずだったのに!
唯:……ふふ。
翔平:…はは、はははは!
唯:あははははは!
0:(しばらく笑いあう)
―:
0:噴水がいきなり吹き上がる
翔平:あ、始まった!!
唯:わぁ……綺麗…。
翔平:……唯の方が、綺麗だよ。
唯:…ふふ。出た出たw
翔平:な…なんだよ!?
唯:せん…翔平さん、これから、末永くよろしくお願いします。
翔平:お、おう!
唯:……ずっと、傍に居てくれますか?
翔平:……。俺を信じろ!俺は、この先ずっとお前の傍に居る!だから信じろ!
唯:……はい!
0:
0:
0:
0:~完~
0:
0:
唯M:幼馴染だった和樹。
唯M:彼が交通事故で亡くなったのは小学6年生になった春。
唯M:桜が散る中、自転車で颯爽と走る和樹の後ろ姿が
唯M:今でも目に焼き付いている。
唯:さて…、行きますか!
唯M:私は桜庭唯。今年から新社会人。
唯M:生まれ育ったこの田舎町を離れ、東京に引っ越す事になった。今日はその引っ越し日当日。
唯M:不安もあるけど、私は小さいころから好奇心旺盛で、新天地で何が待っているかを考えるとワクワクする。
唯M:初めての東京で、初めての一人暮らし。
唯M:これから私の、新たな生活が始まる。
唯:…今までお世話になりました、行ってきます!
唯M:駅のホームから、町の方を向いて挨拶をして電車に乗った。
唯M:空から散る桜の花びらが、見送ってくれた気がした。
0:半年後―
唯:はぁー今日も疲れたぁ!
翔平:お疲れ!桜庭!
唯:あ、相田先輩、お疲れ様です。
翔平:桜庭、今日この後何か予定ある?
唯:いえ、今日は何も無いです!
翔平:そう?じゃー飲み行かない?
唯:あー…、ちょっと今金欠で…。
翔平:ばーか、奢るに決まってんだろ?
唯:え、いいんですか!?行きます!!
翔平:ははw 現金な奴w
唯:だって…、物価高過ぎますよ東京…。
翔平:あー、桜庭ってこっちの人じゃないんだっけ?
唯:はい。田舎育ちにパンケーキ1,700円は衝撃です…。
翔平:あっはっはw じゃー行くか!気が済むまで好きなもん食っていいぞ!
唯:やったー!ありがとうございます!!
0:
唯M:先輩の名前は相田翔平。私が働く部署のエース的存在。
唯M:入社当時から、私の教育担当として仕事を教えてくれている。
唯M:顔もスタイルも良く、もちろん人気者で、最近会社にはファンクラブができたとか。
唯M:桜をバックに新入社員への挨拶をした事で、ファンが激増したらしい。
唯M:そんな先輩が、最近ご飯に誘ってくれるようになった。
0:居酒屋
唯:うぅー…もう…、お腹いっぱい…ですぅ。
翔平:…よ、よくもまぁこんな食べられたもんだ…w
唯:ん…これ以上食べたら…出てきそうです。
翔平:はいはい、もうお開きにしよ!
唯:はぁい…ごちそうさまでしたぁ…うぅ…。
翔平:やれやれw
0:外
唯:ふうう、今日は本っ当にごちそうさまでしたぁ。
翔平:おう、どういたしまして!まだ苦しそうだなw …あ、ちょっとそこの公園で休んでいこうか?
唯:んー、そうですね。
0:公園
翔平:じゃあちょっと座って待ってて。
唯:あれ、どこ行くんですか?
翔平:ん?ちょっとトーイレ!
唯:あ、わかりましたw
0:間
唯:はぁー、美味しかったなぁ。久しぶりにこんな食べちゃったw
0:急に頬に冷たい感触がする
唯:きゃっ!?
翔平:びっくりした?w ほら、コーヒー。
唯:あ、ありがとうございます…。ふふ…。
翔平:ん?どうした?
唯:あ、いえ、…ちょっと昔の事を思い出して。
翔平:へぇ、聞いてもいい?
唯:あ、別に大したことじゃないんですけどね…。昔、小学生の頃、幼馴染がこうやって缶コーヒーをくれた事があって…。
翔平:え、子供の頃から缶コーヒー飲んでたの?w
唯:おかしいですよねw ホントいつもかっこつけしいで…。
翔平:まぁ、コーヒーを飲むのって大人のイメージだもんなぁw
唯:……。あ、そういえば先輩、どうして今日誘ってくれたんですか?
翔平:ん?理由ないと誘っちゃダメ?
唯:え、いや…そういう訳じゃ…。
翔平:ふふw 普段から頑張ってるからそのご褒美ってとこかな?
唯:…ありがとうございます。そう見えてたら、嬉しいです。でも、私まだまだだなって。もっと頑張らなくちゃって思ってます。仕事覚えるのも遅いし、すぐ予定忘れちゃうし。
翔平:あーw 部長から聞いたよw この前も大事なアポ、すっぽかしそうになってたってw
唯:えぇ!?は…恥ずかしい……。
翔平:あははw まぁ誰でも失敗する事はあるんだし、そんな気にすんなよw
唯:はい…気を付けます。
0:間
翔平:……あの、桜庭はさぁ、
唯:はい?
翔平:今…好きな人とか、居ないの?
唯:……え?
翔平:あ、いやいや、ほんの興味本位!他意はないから。
唯:…いません。
翔平:そ、そうなんだ…。そっか…。
唯:はい…。…先輩は、ご結婚されてるんですか?
翔平:え、なんで?してないよ?
唯:だって…、先輩社内でも有名なモテ男じゃないですか。
翔平:モテ男って…。あまり嬉しくない言われ方だなぁ。
唯:あ…ごめんなさい…。
翔平:だってさ、好きな人にだけモテていたくない?
唯:そ、そうですか?
翔平:うん。まぁ嫌われるより全然良いけどさ。でも好きな人に好きだって思われてたら、他の人からは普通と思われていたいかな。
唯:……。
翔平:…ちなみに桜庭は、俺の事どう思ってる?
唯:……え?
翔平:俺の事、少しはかっこいいとか…、思ってくれてたりする?
唯:え…まぁ、仕事もできるし、スタイルも良いし…、って思ってますけど。
翔平:へぇー!そうやって思ってくれてるんだー!
唯:あの…他意は無いですから。
翔平:大丈夫だよ、そんな警戒しなくてもw
唯:警戒は…してないですけど。
翔平:よし、お腹も落ち着いたようだし、そろそろ帰ろうか!
唯:あ、はい…。
0:駅
翔平:今日はありがとう、付き合ってくれて!
唯:いえ、こちらこそ奢ってもらっちゃって、ごちそうさまでした!
翔平:おう、じゃあまた。気を付けて帰るんだぞ!
唯:はい!お疲れ様でした!
翔平:お疲れ様! ………はぁ、まだまだこれからだな。
0:
唯:…ふう。久しぶりに和樹の事、思い出しちゃった。
0:
唯M:高橋和樹。物心ついた頃からよく遊んでいた幼馴染。
唯M:6年生になった春、自転車で遊びに行く途中、信号無視の車に跳ねられて亡くなった。
唯M:いつもかっこつけてて、子供のくせに缶コーヒーを飲んで、キザなセリフを言ったりして。
唯M:今の会社に入社して、相田先輩と会ってから、和樹の事を思い出すようになった。
0:回想
唯:きゃっ冷たい!?
和樹:ほら、コーヒー!
唯:えー、子供が飲んだら夜寝れなくなるってお母さんが言ってたよー?
和樹:俺はそんなおこちゃまじゃないから飲んでも平気なんだよ!
唯:うっそだー!
和樹:本当だって!それに、似合うだろ?俺がコーヒー飲んでる姿!
唯:ぜーんぜん!オレンジジュース飲んでる和樹の方が笑ってて美味しそうだよ?
和樹:ぶっ!あれは…!
唯:あれは?
和樹:あれは…あれで美味しいけど…。ほら、飲めよ唯も!
唯:えぇー…。
0:回想 終
―:
0:数ヵ月後 会社 昼休み
唯:いただきまーす。
翔平:お疲れー桜庭!俺も一緒していいか?
唯:先輩、お疲れ様です。どうぞ。
翔平:おー今日も美味しそうな弁当だなぁ!いつも全部手作りだろ?偉いよなぁ。
唯:いえ、そんな事は。ただ単に冷凍食品とか好きじゃなくて。味付けも適当だから毎回微妙ですし…レパートリーもそんな多くないし。
翔平:もっと自分に自信持てよー。どれ、卵焼きいただきっ!
唯:あっ、ちょっ…!
翔平:んん…ん。美味い!!絶妙な甘さだぁ。出汁巻きも良いけど、卵焼きはやっぱこの甘いのが良いんだよなぁ。
唯:ふふ、先輩も、甘い派なんですね。
翔平:ん?「先輩も」って事は、誰かにも食べさせたの?
唯:あ、いや…昔に。
翔平:あーあの幼馴染くんか!
唯:はい…。
翔平:そっかぁ、俺とその幼馴染くんは似てるのかなぁ?
唯:どう…なんでしょう。でも先輩と居ると、たまに思い出します。
翔平:へぇ、じゃあ似てるとこもあるって事だな!
唯:そうですね…。
翔平:……あ!!
唯:えっ!?
翔平:なぁ!今度の週末、ちょっと付き合ってくれない!?
唯:な…なんでですか?
翔平:これこれ、映画のチケットもらったんだよ!
唯:「桜散る木の下で」…?
翔平:そう、めっちゃ泣ける話らしいんだ。あ…こういうの、好き?
唯:……好きです。
翔平:そうか!じゃあ予定が無ければ、一緒にどう?
唯:…わ、私でいいんですか?
翔平:ふはw じゃなきゃ誘ってないって。
唯:…じゃあ、是非…。
翔平:いえーい!
唯:…ふふふ。
翔平:ん?
唯:いや、先輩って、子供みたいな喜び方するんですねw
翔平:そうかな?大人でも嬉しい時は「いえーい」ってなるだろ?
唯:なんか…可愛かったですw
翔平:…はは。笑顔の桜庭の方が何倍も可愛いよ!
唯:かっ…!?。…は…恥ずかしくないんですか、そんなストレートに…。
翔平:思った事は正直に伝えたいんだ、俺。
唯:…言われた方は……恥ずかしいですよ。
翔平:恥ずかしがってる桜庭も可愛いw
唯:も…もう…やめてくださいよ!
翔平:あっはは。ほら、食べようぜ!
0:週末
唯:ごめんなさい!電車に乗り遅れて遅刻しちゃいましたっ!
翔平:おー、おはよう桜庭!全然大丈夫だよ!
唯:時間…、間に合いますか?
翔平:あぁ、予定より1時間前に待ち合わせておいて良かったw あと30分くらいで始まるから早速向かおうか。
唯:はぁ、良かった…。
翔平:桜庭の事だから、きっと遅れるだろうと想定して待ち合わせ時間と場所決めたからなw
唯:なっ……失礼…です…よ、他の人なら。
翔平:あっはは、桜庭なら失礼じゃないんだ?
唯:うぅ…言い返せません…。
翔平:可愛いねぇw ほら行こう!
0:映画が終わり とあるカフェへ
唯:あー、なんで私ってこうなんだろう……。
翔平:ぷっww まーだ言ってるw
唯:ほんっっとにごめんなさい…。まさか半分以上寝ちゃうなんて…。
翔平:あはは。まぁ疲れてるのに誘っちゃった俺にも責任あるからw
唯:いや…そんな事…。あー…、ごめんなさい…。
翔平:もういいってw …それより、なんか夢見てた?
唯:えっ!?…まさか映画中に寝た挙句、何か寝言でも言ってました!?
翔平:ちょっとだけね?言葉も聞き取れないくらいだったよ。
唯:だぁ…恥ずかしすぎて…帰りたいです……。
翔平:えーダメだよ?せっかくの休日だもん、もう少し付き合ってよー。
唯:いや…帰りませんけど…あぁ、穴があったら入りたい……。
翔平:ふふw で、どんな夢見てたんだ?
唯:…えっと、ヒロインが公園でいじめられてる時に、主人公が助けに入った場面があったじゃないですか。
翔平:ああ。
唯:あの辺から意識が無くなったんですけど…、夢で私も公園にいて、幼馴染が助けに来てくれた夢を見てました…。
翔平:へぇ!じゃあその幼馴染くん、桜庭にとってヒーローだったんだな。
唯:んー、そうですね。喧嘩には負けちゃったんですけど…。それでも…。
0:回想
唯:やめてよー!返してよー!
和樹:お前ら!その子のぬいぐるみを返せ!
唯:…えっ、和樹?
和樹:うおおおおお!!
0:
唯:和樹、大丈夫?痛い?
和樹:グズ…これくらい、なんでもないっ!
唯:でも…泣いてるよ?
和樹:な、泣いてない!!グズ…。
唯:…ありがとう、助けに来てくれて。
和樹:…あぁ、でも悪い、取り返せなくて…。
唯:…ううん、………グズ……グズ…。
和樹:な…泣くな!俺が新しいぬいぐるみ買ってきてやるから!!
唯:…え?でも…和樹、お金あるの?
和樹:そんなもん、働いて稼ぐさ!
唯:働くって…、大人にならないと働けないよ?
和樹:ああ!だから大人になったらいっぱい働いて、唯の好きな物なんでも買ってやるよ!
唯:えっ本当!?
和樹:約束する!だからもう泣くな!
唯:うん!えへへ、楽しみ!
和樹:唯は笑ってる方が可愛い。だからずっと笑ってろ!
唯:か…和樹…。恥ずかしいよ…。
和樹:へへ。俺が唯の笑顔を守るからな!
唯:…うん!
0:回想 終
翔平:かぁーー、良い男だねぇ!
唯:あはは。
翔平:負けるとわかってても、助ける為に果敢に挑む姿。男として見習わないとなぁ。
唯:……かっこよかったです。
0:間
翔平:なぁ、俺も桜庭の笑顔を守りたいって言ったら、困る?
唯:………え?…な、なんで急にそんな話に…。
翔平:俺、桜庭の事が好きなんだよ。
唯:…えっ!?あ…、あの……えっと…。
翔平:俺が桜庭…いや、唯の笑顔を守りたい。ずっと俺の隣で、笑っててほしいんだ。
唯:…せ…先輩…。
翔平:か…翔平って呼んでくれると嬉しいんだけどなぁ?
唯:しょっ!?…は、は恥ずかし過ぎます!!
翔平:あははw やっぱ可愛いなぁ!
唯:う…うぅ…。
翔平:返事は来週の週末、聞かせてほしい。
唯:ら…来週…?
翔平:そ!また来週デートしよう!で、その帰りに答えを聞かせてほしい。
唯:……。
翔平:それまで、ちょっと考えてみて。
唯:…わ、わかりました。
翔平:ん。って事で…、今日はこれで解散にしようか!
唯:はい…。
0:間
翔平:じゃあまた明日、会社でな!ドキドキし過ぎてミスするなよー?w
唯:しっ…しませんよ!!
翔平:あははw じゃあな!
0:唯 自宅
唯:はぁ…。どうしよ…告白されちゃった。
唯M:先輩の事は嫌いじゃない。むしろ仕事ができて、見た目も中身も素敵な男性…。
唯M:だけど…、何か引っかかる。違和感というか…、和樹の面影が見える。
唯M:たまたま和樹と同じような行動をしているからかもしれないけど…、
唯M:もしかして…和樹の生まれ変わりとか…?
唯:…ぷっw 考えすぎか。そんな訳…ないじゃない。
0:週末
0:
0:唯 自宅
唯:あー…やばい…ゲホッゲホッ。んー…38.7℃か。これは…無理だなぁ…。
唯:先輩に…電話しなきゃ…。
0:プルルルルル
翔平:もしもし?おはよう、桜庭!
唯:あ…せんぱゲホッゲホッ…。先輩…すいません…。
翔平:え、ど…どうした!?風邪か!?
唯:…そう…みたいです。本当…申し訳なゲホッゲホ…。
翔平:バカ!なんで電話なんだよ!そんな状態ならメールで断ればいいのに!
唯:いや…それは…あまりに失礼かと…。
翔平:なぁ、家そんなに遠くないだろ!?お見舞い行くから住所教えてくれ!
唯:え…えぇ…いいですよ!迷惑だし…それに風邪移しちゃいますよ…。
翔平:そんなの!!…あ…いや、いきなり家に行くのは…さすがにか。悪い。
唯:あ…別にそういう意味じゃ…。でも…ありがとうございます。お気持ちだけ頂きます。
翔平:んん。俺との約束はいつでもいいから、とにかく今日はゆっくり休んで。
唯:はい…申し訳ありません。
翔平:気にしなくていいから!じゃあ…安静にな?
唯:はい…、ありがとうございます…。
唯:……ふう。…とりあえず今日は薬飲んで寝てよう…。
0:翌日 会社
翔平:…えっ!?桜庭!?もう出勤してんのか!?
唯:あ…先輩…。
翔平:おいおい、昨日の今日で…大丈夫か!?
唯:んー…ちょっとふらつきがあるくらい…で…大丈夫です。
翔平:いや…全然大丈夫に見えないんだけど!?
唯:この資料を……経理課に……。
翔平:いいって、俺が持っていくからよこせ!
唯:…あ、
0:その場で倒れ込む唯
翔平:なっ…!?桜庭!!おい、しっかりしろ!!
0:病院
唯:…………ん…、ここは…?
翔平:あ、気が付いたか?
唯:……先輩?
翔平:あぁ。ここは病院だよ。
唯:……病院?………(思い出して)あっ!ごめんなさい…私…倒れ…ました、よね?
翔平:…ったく、無理に出勤するからこんな事になるんだぞ?
唯:う…すみませんでした。
翔平:…ふ。まぁ点滴も打ってだいぶ熱も下がったみたいだし、もう大丈夫だろ。先生呼んでくる。
唯:あ…ありがとうございます。
0:間
唯:…はぁ、やっちゃった…。
唯:なんか…あの時みたい……。
0:回想
0:
0:
0:学校
0:
0:
唯:ゲホッ…コホッ…。
和樹:唯、帰るぞ!
唯:…え?学校は?
和樹:そんな状態じゃ無理だろ!
唯:だいじょうゲホッ…ゲホッ…。
和樹:先生にはもう言った!唯のランドセルも持った!ほら行くぞ!
唯:…うん、ケホ…ありがとう。
0:間
和樹:…なんで休まなかったんだよ?
唯:だって…学校行きたかったんだもん。
和樹:そうやって無理したら、もっとひどくなって、もっと休む事になるだろ。
唯:……グズ…。ゲホッ…ケホ…。
0:間
和樹:よし…着いた。
唯:え…か…帰っちゃうの……?
和樹:…一緒に居る。
唯:ケホ…本当…?
和樹:うん。ほら、入ろう。
0:唯の部屋
和樹:唯、入るぞ。
唯:はぁい。
和樹:おばさんがおかゆ作ってくれた。ちょっと買い物行ってくるって。
唯:そっか…ありがとう。
和樹:………。
唯:……ケホ…。
和樹:…食べられそうか?
唯:んー…、いつもお母さんが食べさせてくれてたから…。
和樹:………。
唯:…和樹。
和樹:…な、なに。
唯:……食べさせて?
和樹:なっ…!?あ…甘えるなよ……。
唯:……あれ…和樹…、顔真っ赤だよ?…風邪移しちゃった?……ごめんね…ケホ…ケホ。
和樹:ばか!違えよ!…………ほ、ほら…。
唯:……ん…。……美味しい…。
和樹:……。
唯:…ありがとう、和樹。
和樹:…あぁ。
0:回想 終
翔平:桜庭、この後一度診察して、問題がなければそのまま帰れるってさ。
唯:先輩、ありがとうございます。
翔平:俺このままロビーで待ってるから、終わったら来て。
唯:すみません、ご迷惑をお掛けして…。
翔平:いいって!また後でな!
唯:はい。
0:診察後 ロビー
翔平:お、来た来た。
唯:お待たせしました。もう大丈夫です。
翔平:そっか!外でタクシー待たせてあるから、家まで送るよ!
唯:え…いや、そこまでしてもらわなくても…。
翔平:まだ完治した訳じゃないんだからな?どうせ医者から「今日明日は安静にしてください」って言われただろ?
唯:え、い…言われましたけど…。
翔平:ほら、行くぞ!
唯:…はい。
0:タクシー内
翔平:……あのさ、もし良かったら…なんだけど…。
唯:はい。
翔平:ちょっとだけ…家に寄らせてもらっても……いい?
唯:え…?
翔平:あの…これ、待ってる間に色々と買っちゃって…。飲み物も入ってるから重たいんだ。運ぶくらいはしてあげたいなぁと。
唯:わっ…こんなにいっぱい…。…ありがとうございます。せっかくなので…よろしくお願いします。
翔平:本当?良かった!
唯:……。
0:唯 自宅
翔平:お邪魔しまーす。
唯:どうぞ…汚い所ですけど…。
翔平:え、どこが?めちゃくちゃ綺麗に片付いてるじゃん!
唯:あんまり見ないでくださいね…?
翔平:あ、悪い悪いw 荷物、しまっちゃうね。冷蔵庫、開けるよ?
唯:あ、はい…。
翔平:…てか、寝てなよ!あと俺やっとくから!
唯:え…でも…。
翔平:大丈夫!なっ?
唯:…はい、じゃあ…お言葉に甘えて…。
翔平:ん!
0:間
翔平:桜庭ー、開けるよー?
唯:すー…すー…。
翔平:あ、寝てる…。んー…、このまま帰るのも心配だし…、ちょっと仕事するか。
0:2時間後
翔平:よし、こんなもんかな。
唯:…先輩。
翔平:あ、起きた?だいぶ楽になったか?
唯:はい、おかげさまで。本当にありがとうございました。
翔平:全然!桜庭が元気になって良かった!
唯:あの…ずっと待っててくれたんですか…?
翔平:ん?あぁ、もうこんな時間だったんだ…。仕事してたからあっという間に時間経ってたわw
唯:ごめんなさい…。
翔平:謝るなよー。俺がしたくてした事なんだし。
唯:あの、もう本当に楽になったし元気になったので…。
翔平:あ、あぁ…ごめんごめん、すぐ帰るよ!
唯:いや!そうじゃなくて…。
翔平:え?
唯:あの…夕飯食べていきませんか?
翔平:え!もしかして…作ってくれるの!?
唯:そんな大した物は作れないですけど…。
翔平:えーめっちゃ感激!!いえーーい!
唯:いや…w あの…本当、期待しないでくださいよ!?
翔平:するに決まってるじゃん!!いつもあんな美味しそうな弁当作ってるんだもんw
唯:(小声で)………作るのやめようかな……。
翔平:え!?ごめん!ごめんって!嘘だって!!いや嘘じゃないけど…。
唯:…ふふふ。こっちも嘘ですよーだ!
翔平:こ…このやろーw
唯:お返しですーw じゃあちょっと待っててくださいね!
翔平:…あ!
唯:え?
翔平:やっぱ手伝う!一緒に作ろうよ!
唯:えぇ?でも…。
翔平:大丈夫!何か切ったり皿用意したりするだけだから!味付けには一切触れないから!
唯:そんな事思ってませんよ!お礼にならないって思ったんです!
翔平:俺にとっては一緒に料理できることが十分お礼なの!ほら、何作る?俺何する?
唯:…もう!w わかりましたから、ちょっと落ち着いてくださいw
0:
―:数ヵ月後 春
0:
唯:先輩遅いですよー?女の子を待たせるなんて!
翔平:え…早くない!?まだ待ち合わせ時間の30分も前だよ!?
唯:ふっふっふ。私だってやればできるんですよー!
翔平:あははw 負けましたw
唯:さて、今日はどこに連れてってくれるんですかー?
翔平:すごい気合い入ってるなぁw 今日は無事に天気にも恵まれた事だし、桜満開の森林公園に行こうかなと思っております。
唯:わぁ、お花見ですね!!森林公園かぁ、私…何年ぶりだろう!?
翔平:俺も久しぶりなんだぁ。この前ネットで見たんだけど、最近新しいモニュメントもできたらしいんだ!
唯:へぇ!じゃあー早速行きましょう!
翔平:おいおいw 張り切り過ぎじゃないかー?w
0:森林公園
唯:ふぁーー、桜満開!!綺麗ー!!…懐かしいなぁ…あ、巨大噴水もある!
翔平:本当だなー!あんまり変わってなくて安心した。
唯:あの噴水、夜になるとライトアップされてましたよね!
翔平:そうそう、今時期もライトアップやってるかな?
唯:私、ちょっと見てきますね!
翔平:え…あ、あぁ。
0:噴水の方へ走っていく
翔平:…相変わらず、こういう時の唯は元気だなぁw
唯:せんぱーーい!夕方から2回、やってるみたいですよー!今日もー!
翔平:わかったー!じゃあ時間に合わせて見に来よーう!
唯:はーーい! うわっっ!?
0:こちらに向かって走ってくる途中で転ぶ
翔平:あっ!大丈夫か!?
唯:いてて…、あ、すいません、大丈夫です!
翔平:ほら、掴まれよ。
唯:あ…ありがとうございます。
翔平:ったく、気を付けろよなぁ。
唯:…んふふ。はーい。
翔平:あっちの桜の木の下、丁度いい場所があるから、そこでレジャーシート敷いてのんびりしよう!
唯:え、さっすが先輩!準備が良いですねー!
翔平:まぁ元々ここに来る予定で居たからな。丁度荷物も揃ってたし。
唯:あー、過去に誰かとしたんですか?公園デート!
翔平:とーもーだーちーと!
唯:あははw 別に過去に何があっても何にも思わないですよーw
翔平:それでもこういう時は友達とって事にしておくの!
唯:あー、女の子の扱いも慣れてらっしゃるんですねw
翔平:お前…言うようになったじゃねーか!このやろ!
0:唯の脇腹をくすぐる翔平
唯:っきゃあ!ちょ…wくすぐったい…ですってwwいやああw
翔平:生意気なんだよおーーw
唯:ひいぃwwごめwなさいwいーいーww
翔平:あっはっはっははははw
唯:はぁ…はぁ……、おかしくなるかと思った…。
翔平:弱点発見だなw
唯:もう…!ここ効かない人ってたまに居るけど、意味わかんないですよね!
翔平:俺、効かないけど?
唯:え、ずるい!!本当か確かめる!!
翔平:残念無念また来週~w
唯:あ!待てーーー!!
0:回想
和樹:ほら、掴まれよ。
唯:うぅ、痛いよう…グズ。
和樹:ったく、気を付けろよなぁ。
唯:グズ。…うん。
和樹:ほら、あそこ!あの木の下で休もうぜ!もうシートも敷いてあるんだ!
唯:え、あれって和樹のだったの?
和樹:あぁ!こないだ来た時にセットしたんだ!あそこが俺達の特等席だ!
唯:準備が良いんだね!ありがとう!
和樹:へへ。唯が喜ぶと思ってさ、こんな物も持ってきたんだぜ!
唯:うっわーー!!早くやろやろーー!!
0:回想
―:
0:夕方
翔平:はぁー…久しぶりにこんなのんびり遊んだなぁ。
唯:はい。たまには都会の喧騒を忘れて、のんびり穏やかな公園デートも良いですね!
翔平:そうだな!それに…こんな子供のおもちゃで喜んでくれて良かったw
唯:ふふ。私、シャボン玉好きなんですよ。
翔平:そうなんだ?…あ、それもあの幼馴染くんと…?
唯:はい!
翔平:…そっか。よく覚えてるよなぁ、そんな昔の思い出。
唯:もちろん覚えてますよ!どれも大切な思い出です。一生忘れません。
翔平:……。
唯:あ、そろそろ噴水の時間じゃないですか?
翔平:おぉ、…そういえばもうすっかり日も暮れてきたな。行ってみるか!
唯:はい!
0:噴水広場
翔平:あと…5分ってとこだな。
唯:……。
翔平:…?どうかした?
唯:…あ、いえ。なんでもないです!
翔平:…なんだよ?何か思う事があるなら正直に言ってほしいんだけど…?
唯:……いえ、本当に…何も…。
翔平:じゃあさ、ずっと待ってたあの質問の答え、もらってもいい?
唯:………。
翔平:まだ、答えは出てない?
唯:いえ…答えは出ているんです。だけど…。
翔平:だけど?
唯:………。
翔平:…何か、考えてる?
唯:………怖いんです。
翔平:…怖い?
唯:はい…。先輩と居ると楽しいし、幸せだなって思いました。でも…もし先輩と交際して、この先もずっと…先輩の傍に居られるのかなって…。
翔平:……。
唯:私、もう大事な人が傍から居なくなるの…耐えられないと思ってて…。
翔平:……。
唯:……グズ…。
翔平:…唯。
唯:…グズ……グズ…。
翔平:泣くなよ、唯。俺がちゃんと傍に居るから。
唯:…グズ……、……えっ!?
翔平:俺を信じろ!俺は、この先ずっとお前の傍に居る!だから信じろ!
唯:……か…ずき…?
0:回想
唯:えぅ…うっ……グズ…。
和樹:おーいー、もう泣くなって!ちょっと転んだだけじゃんか!
唯:…グズ……だけじゃないもん…。
和樹:あぁ…?
唯:転んだだけじゃない!轢かれそうになった!!
和樹:だ…大丈夫だっただろう!!
唯:いやだ!!!
和樹:何がだよ!!
唯:和樹が死んじゃったらいやだーーー!!……うわああああん!!
和樹:唯…。
唯:(泣き続ける)
和樹:……なよ。
唯:…うっ…うっ………。
和樹:泣くなよ、唯。俺がちゃんと傍に居るから。
唯:…本当?
和樹:俺を信じろ!俺は、この先ずっとお前の傍に居る!だから信じろ!
唯:……グズ…、わかった…。……信じる…。
和樹:約束だ!
唯:…うん!約束!…へへへ。
0:回想 終
唯:なん…で…?……なんで、その言葉……。
翔平:……ごめん、唯。
唯:……え?
翔平:俺さ、事故にあってから、どうしてもお前が心配でさ…。
唯:…なに…言ってるの……?
翔平:信じてもらえないかもしれないけど…、
和樹:(翔平のセリフに続けて)今話してるの…俺、和樹だよ。
唯:……は? ………か…和樹…?
和樹:俺さ、今ちょっとだけこの人の身体借りてんだ…へへ。
唯:へ…へへって……。
和樹:お前の事、あれからずーっと見守ってた。言ったろ?この先ずっとお前の傍に居るって。
唯:……。
和樹:…悪い、傍に居ても…お前に見えないんじゃしょうがないか…。
唯:………。
和樹:唯、あれから中学高校大学って進んでさ、その中で一度も誰とも付き合わなかっただろ?
唯:…っ!
和樹:何回か告られてたのにさー、もったいない。
唯:もっ………。
和樹:わかってるよ、俺の事をずっと想ってくれてたって事は。今になっても俺との思い出ひきずってさー!
唯:…ないじゃん。
和樹:…ん?
唯:し…仕方ないじゃん!!そんなの!!!
和樹:っっ!?
唯:私には…私には……グズ……うぅ…。
和樹:…。
唯:私には和樹しか居なかったの!!
和樹:……。
唯:あんなにかっこよくて、頼りになって、暖かくて、一緒に居たいと思った人は!!
和樹:……。
唯:どれだけ成長しても、どれだけ色んな人に出会っても、和樹以上の男なんて居ないんだよ!!!
和樹:唯…。
唯:なによ!!いきなり出てきて!!もったいないだの、思い出ひきずってるだの、そんなの当たり前じゃない!!私は和樹が大好きなんだから!!!
和樹:唯!
唯:身体を借りてるって何…?先輩は…ずっと和樹だったの!?先輩になりすましてたの!?
和樹:違う!話を聞けよ!!
唯:ずっと不思議だった…。何度か和樹の話をした時、和樹が死んだなんて一度も言ってないのに、今和樹と私がどうなっているのか、どうして聞かないんだろうって…。
和樹:そ…それは…。
唯:そりゃ聞かないよね!だって、全部わかってるんだもん!本人なんだもん!!
和樹:ゆ…唯、落ち着けよ!
唯:落ち着いてるわよ!!………グズ……グズ…。
和樹:…まーた泣いた。
唯:……るっさい…グズ。
和樹:なぁ、許してくれよ。
唯:……グズ…。
和樹:ゆーいー!ごめんって!
唯:……。
和樹:俺な、ずっとお前の事見ててさ、この会社に入って、やっと唯が新しい恋ができるかなって思ったんだよ。
唯:……は?
和樹:この翔平って人、良い人だよ、俺と似てて!w
唯:…自分で言うか……。
和樹:けど、お前も思っただろ?だから俺も、この人になら…託せると思ったんだよ。
唯:た…託す?
和樹:あぁ、お前の事、この人になら託せると思った。なんせ俺と同じセリフ言うんだもん、こんなキザで良い男はなかなか居ないだろ?w
唯:だから自分で言う?そういう事…。…まったく、和樹らしい…。
和樹:へへ。でな、ちょっとだけ身体借りてさ、俺がこの人の身体で唯にアプローチかければ…より確実にって。
唯:なにそれ……最低。
和樹:ん…まぁ正直悩んだんだけどさ。…でも、俺もう見ていられなかったんだよ。毎晩寂しそうにしてる唯の事…。
唯:……。
和樹:唯は笑ってる方が可愛い。だからずっと笑ってろ!
唯:…それ!あの時も…。
和樹:ほーら、笑ってみ?w
唯:わ…笑えるわけないでしょ…。
和樹:なんでだよー、俺はお前の笑顔が好きなのにさぁ。
唯:……ばか。そんなストレートに言われたら恥ずかしいって言ってるじゃん…。
和樹:へへ。思った事は正直に伝えたいんだ、俺。
唯:…あ……それも…。
和樹:本当に似てるよな、この人と俺w
唯:……。
和樹:なぁ、もう悩むなよ!大丈夫だから!
唯:…なにが。
和樹:この人は、ちゃんとお前の傍に居るよ。この先ずーーーっと!
唯:……説得力無いんだけど。
和樹:うわぁ、それ言っちゃう?
唯:……ごめん。
和樹:ふw 俺もごめん!勝手に先に逝っちまって。だけどさ、二人の事は、俺がこの先も守ってやるから!安心して良い家庭を築けよ!
唯:か…家庭って…気が早い…。
和樹:そんな事ないって!あと数年後にはきっと結婚して、そのうち子供が産まれて、唯はいつも笑顔溢れる家庭で暮らして、可愛いおばあちゃんになるまで、最高に楽しい人生を生きていくんだ!
唯:……和樹…。
和樹:俺はそれを、上から見守ってる。何かあったら、ちゃんと守ってやっから安心しろ!
唯:え…かず…き?なんで…光って…?
和樹:あぁ…もう時間か。
唯:……は?時間?ね…ねぇ、待ってよ!
和樹:悪いな、唯、ちゃんと幸せになれよ!
0:強い光に包まれて翔平の身体が見えなくなると同時に、桜が舞う
唯:ま…まぶしっ……桜!? …か、かずき? かずきーー!!
0:光が消えて目が慣れると、そこに翔平の姿が見えた
翔平:……か!?
唯:…………ぇ?
翔平:…おい、大丈夫か!?
唯:…あ……先輩…?
翔平:ど、どうしたんだよ?急に黙ったかと思えば…呆然としちゃって…大丈夫か?
唯:…あ……はい…、だい…じょうぶです。
翔平:…そっか。それで…あの。
唯:…あ、
翔平:え?
唯:先輩…、私…。
翔平:…何?
唯:私、幼馴染の和樹が大好きです。今でも。
翔平:…………そうか。……それじゃあ。
唯:(被せて)亡くなったんです。小学6年の春に。
翔平:……え!?そうだったの!?
唯:はい。でも今でも好きなんです。
翔平:…そうか…うん。
唯:先輩は、その和樹にとても似ています。
翔平:へ…へぇ?
唯:なので、私は先輩に和樹の面影を見ることがあるかもしれません。
翔平:……?
唯:それでも良ければ、私とお付き合いしてください!
翔平:………えっ!?
唯:多分、和樹の事を吹っ切れるまでにまだ時間は掛かりそうなんですけど、…でも、好きなんです。先輩のかっこつけてる感じとか、頼りになるところとか、暖かいところが。
翔平:……。
唯:それでも良ければ…私とお付き合いして頂けませんか?
翔平:…よ、喜んで!いや…え、逆告白になっちゃった…!?
唯:……そう、ですねw
翔平:なんだよ…かっこつかないじゃん!俺が告白したはずだったのに!
唯:……ふふ。
翔平:…はは、はははは!
唯:あははははは!
0:(しばらく笑いあう)
―:
0:噴水がいきなり吹き上がる
翔平:あ、始まった!!
唯:わぁ……綺麗…。
翔平:……唯の方が、綺麗だよ。
唯:…ふふ。出た出たw
翔平:な…なんだよ!?
唯:せん…翔平さん、これから、末永くよろしくお願いします。
翔平:お、おう!
唯:……ずっと、傍に居てくれますか?
翔平:……。俺を信じろ!俺は、この先ずっとお前の傍に居る!だから信じろ!
唯:……はい!
0:
0:
0:
0:~完~
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0: