台本概要

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タイトル 世界を統べる魔王と瓶の勇者…時々神
作者名 Sui@シナリオライター  (@fM1KaY5J95ORcNN)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男2、女1) ※兼役あり
時間 30 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 唐突に異世界転生を命じられた土瓶先崎夢至(どびんざきむい)。
どうやら彼の生は終わりを告げたようだ。
その転生先は、何とクソゲーの様な世界線!
ドMな敵に、いきなり魔王スヴェイルまで現れる始末!?
そして勇者土瓶崎の武器は一本の瓶のみ…
コレどーすんの!?
異世界スヴェ・ラレイルを舞台に魔王と勇者が大暴れ!
時々神も顔を出す…良く分らん物語の始まり始まり~!

~ご利用について~
特に制限を付けるつもりはありませんが、Xでのメンション付きのポストをして頂けると嬉しく思います。
聞きに行けるなら聞きに行きたいので…
アドリブ等は自由にして頂いて構いませんが、大幅な改変・相手を傷つける様な発言は慎んで下さい。
後は、楽しんで頂ければ光栄の限りです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
魔王 46 名前、魔王スヴェイル。 異世界スヴェ・ラレイルを統べる魔王。 最強の魔王ではあるが、実は被害者。 性別は男性にしていますが、女性が演じても構いません。
魔王ナレ 33 魔王のナレーション能力。 魔王と同一人物ですが、ナレーションと区別するために役割を分けてます。 上に同じく性別不問です。
勇者 160 名前、土瓶崎夢至(どびんざき むい) 神に転生召喚されし勇者。割と被害者。 一応男性とさせて頂いてますが、女性が演じても大丈夫です。
109 名前、ヴィルヴィス・ヴィヴィン 勇者を転生召喚した神。 加害者であり、瓶でもある。 一応女性としていますが、神に性別があるかは謎なので、男性が演じても問題ありません。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
魔王ナレ:この世界は混沌に満ちている… 魔王ナレ:世は乱れ、魔物は跋扈(ばっこ)する。 魔王ナレ:そんな世の乱れに一計を案じた神は、一人の男を勇者として転生召喚することを決めた。 魔王ナレ:彼の名は土瓶崎夢至(どびんざき むい)。 魔王ナレ:ここから…彼の冒険が始まるのだ!  : 0:天界  : 勇者:…ここは…? 神:よくぞ参りました、勇者よ! 勇者:勇者!? 神:私は神、ヴィルヴィス・ヴィヴィンと言います。 神:あなたの生は終わりを告げました。 神:ですので、代わりに異世界への転生を…と思いまして… 神:異世界転生をご希望されますか? されますよね? して下さい。 勇者:ちょっと待ってください!? 神:何でしょうか? 勇者:お願いが…とか、依頼的なやつですよね? 転生って… 神:いえ、強制です。 勇者:強制!? 神:だって死んじゃったのですから、もう仕方の無い事でしょう? 勇者:そりゃまぁ…そうだけど… 神:はい、と言う訳で…サクサクと行きましょう。 神:あなたには、そのままの姿、そのままの能力値、そこに多少のステータスの増加と共に、ボーナス武器を進呈します。 神:異世界に行ったら、その力を如何(いかん)無く発揮して、魔王を討伐して頂きいます。 神:魔王を倒した暁には、魔王の魔力等を利用して元の世界に帰れるように取り計らいましょう。 勇者:え? 帰れるの? 神:はい。 0:間 勇者:神の力で帰れるんじゃね? 神:無理です。 勇者:神って魔王よりも強いですよね? きっと。 神:はい、魔王と私のハナクソが、大体同じくらいの強さですね。 勇者:いや、その力あるなら、問答無用で元の世界に帰してくんない? 神:無理です。 勇者:じゃぁ、代わりに俺が神様のハナクソをほじるんで、元の世界に戻して頂くというのは? 神:無理です。 勇者:なぜ!? 神:あなたでは、私のハナクソに勝てないからです。 勇者:はぁ… 神:納得しましたか? 勇者:まぁ…するしか無いんでしょ? 神:その通りです。 0:短い間 神:はい、と言う訳で転生しちゃいますね。 勇者:あの、ボーナス武器は!? 神:現地に着いたらアイテムボックスを確認して下さい。 勇者:アイテムボックス!? なにそれ!? 神:Xボタン押したらメニューが出るから、そこで確認して下さい。 勇者:Xボタン!? 神:もう説明するの面倒臭いので、現地で確認して下さい。 神:それでは…行ってらっしゃーい! 勇者:うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁー…  : 0:勇者、異世界に到着  : 勇者:(目を覚まして)…ん…ここは…? 勇者:あぁ…神様の言ってた異世界か… 勇者:何だよこれ…ドットか!? モロ、ゲームの世界じゃないか…あれ…空に文字が… 魔王ナレ:世界は魔王の猛攻に怯えていた。 勇者:音声付きかよ! 魔王ナレ:人々は蹂躙(じゅうりん)され搾取され日々の暮らしさえ、ままならない… 魔王ナレ:人々は願う…勇者の降誕を… 魔王ナレ:かの魔王を倒し、世に平和を取り戻す勇者を… 勇者:おぉ… 神:はい、導入も終わった所で… 勇者:何で居るんだよ!台無しじゃないか!? 神:だって…ねぇ… 勇者:『だって』じゃないんだよ。 神:はい、とりあえずメニュー画面を開いて。 勇者:メニュー画面っつったって… 神:目の前に見えない? 勇者:うわぁ…これ見よがしにボタンあるわぁ… 空中に浮いてるし… 神:はい、とっとと押す。 勇者:あの…神様? 神:何? 勇者:キャラ違いすぎません? さっきと… 神:あんな重苦しいキャラで、ずっと居られないからね? めんどくさいし… 勇者:あ…そぅ… 神:良いからXボタン押して。 勇者:でも… 神:いいから押せや! 勇者:はいはい…(ボタンを押す) 魔王ナレ:ドシュ! メニュー。 ドシュ! 持ち物。 勇者:メニュー画面にまで音声あるの!? 神:メニューの中の道具を選択したら出てくるから、選んでみて。 魔王ナレ:ピ、薬草。 ピ、瓶 勇者:持ち物、これだけ!? 神:はい。 勇者:ボーナス武器は、どこ行ったよ!? 神:ありますよ? 勇者:え…? ウソだろ!? 神:はい、その『瓶』です。 勇者:え…俺、瓶で戦うの!? 神:はい。 勇者:町のヤンキーだって、もうちょっとマシな武器使うぞ!? 神:昔のアメリカヤンキーみたいでカッコいいと思うんだけどなぁ… 勇者:いやいや!ヤンキーってか、酒場に居る悪党が持ってるやつよ!? 勇者:割って刺して攻撃しろってか!?  神:因みに、割ってはいけませんよ? 勇者:鈍器として使えと!? 神:その通りです。 勇者:いや、酔っ払いが瓶で魔王倒しに行く様を想像してみろよ!? 締まらねぇって! 神:体裁(ていさい)なんて気にしてる場合ですか? あなたは勇者なんですよ? 魔王を倒す義務があるんですよ? 勇者:じゃぁ…この『瓶』と言う武器は…それなりに強いと? 神:それは…あなた次第でしょうかね… 勇者:俺次第とは? 神:あ…丁度良い所に、モンスターが居ましたね。 神:その瓶で倒してみましょう。 勇者:勝手に進めんな! 魔王ナレ:デゥルルルルン… スライムMが現れた。 勇者:既に見えていたのに、現れたとは? 神:小さい事は気にしないで。 魔王ナレ:ピ、攻撃 ピ、魔法 ピ、防御 ピ、逃げる 勇者:逐一、効果音とコマンド音声が出るの、ウザいな… 神:いいいから! とりあえず、その瓶で攻撃してみてください。 魔王ナレ:ピ! 攻撃! 魔王ナレ:スライムMは 後ろを向いて身構えている。 勇者:うぉぉぉぉぉぉぉ!りゃっ!(瓶でスライムを殴る) 魔王ナレ:勇者の攻撃、バスン! スライムに、マイナス15のダメージ。 勇者:ダメージしょぼっ! …ん、マイナス!? 神:言い忘れていましたが、この世界のモンスターは大半がドMです。 勇者:はぁ!? 何でそんな事になってんの!? 神:さぁ…? 魔王ナレ:スライムは、待ち構えている。 神:まぁ、それは置いといて… 生半可な攻撃だと、M性の強さで逆に回復します。 勇者:それを上回る攻撃をしないと、敵を倒せないって事かよ… そんなのどうすれば… 神:はい! ここでこの瓶の出番なんですね! 勇者:ほう… ってか、この瓶プルンプルンなのだが? 神:はい、この瓶は非常に柔らかいです。 勇者:そんな物で、モンスターなんて倒せるはずないよね? 神:その通りです。 …ですが! 勇者:何かある訳だ! 神:カッコいい言葉、呪文、台詞、ちょっとセンシティブぅな言葉など! 言って頂けると、この瓶は硬くなるのです! 勇者:(遠い目)へぇ… すっげぇー 魔王ナレ:スライムMは、今か今かと息を荒げて待っている。 勇者:なんでこんな仕様にしたんだよ! 神:それは…私が声フェチだからですよ! 勇者:は? 神:声フェチなんですよ! 勇者:はい… 神:声フェ… 勇者:もう、言葉の意味は理解してるんで大丈夫ですが… 神:でしたら、素敵な台詞や、いやらしい台詞を、お願いします。 魔王ナレ:スライムMは、放置プレイに飽き始めている。 神:ほら見なさい、スライムMさんも… 勇者:何か、このシステム、やだぁ… 神:良いんですか?転生したばかりなのに殺されても? 勇者:何で!? 相手は、たかがスライムでしょ!? 神:この世界の魔物は、基本受け身ですが、攻撃してきたら、ほぼ即死攻撃をしてきますよ? 勇者:クソゲーの世界に飛ばしやがって! 魔王ナレ:スライムMは、もうそろそろキレても良いかなと身構えている。 神:ほら! 何だかヤバい雰囲気でしょ!? 神:迷っている時間はありません! 勇者:えぇい… こんな所で殺されるのも心外だ! 覚悟を決めろ、俺! 神:その意気です! 勇者:(呪文を唱える要領で)神を愛し、神に愛されし、褐色なる我が身体の一部よ! 勇者:地を、空を、風を! 怒りの炎で焼き尽くせ! ヘルフレイム・アブダクト!! 神:んん…良いですね! 60点! 神:さぁ! お殴りなさい! 勇者:たぁぁぁぁぁぁぁ! はぁー! 魔王ナレ:勇者の攻撃、ドゴン! スライムMに7億8002万56のダメージ。 勇者:は!? 魔王ナレ:スライムMは、跡形も無く砕け散った。 勇者:ダメージおかしくね!? あと「倒れた」とかじゃなくて「跡形も無く砕け散った」って表現も、なんなん!? 魔王ナレ:勇者は58万9930の経験値を得た。 勇者:経験値が破格すぎねぇか!? 魔王ナレ:勇者は32兆7万82エールを得た。 勇者:エール? 神:この世界の通貨ですね。 勇者:多すぎねぇか!? 因みに1エールってどのくらいよ? 神:5エールで安い宿が取れますね… 勇者:田舎の素泊まりで5000円と考えて…1エール1000円!? 取得した通貨も破格すぎねぇか!? 神:やりましたね! 勇者:やったかどうかも判別付き辛いわ! 魔王ナレ:勇者のレベルが1076上がった。 神:やりましたね! 勇者:いきなりレベル1000越えって、インフレが過ぎるわ! 勇者:コレ、オープニングバトルみたいなやつでしょ? 神:は? そんなのは知りませんけど? 勇者:え…いきなりガチなの…? 神:はい。 勇者:何それ…うわぁ…クソゲーの世界に転生した感が半端ねぇわ… 神:さっきから言ってる「クソゲー」って何ですか? 勇者:…はい、もう…良いです。 説明するのが面倒なので… 神:そうですか… 0:短い間 勇者:とりあえず…町とかあるんですよね? 神:はい、ありますよ。 勇者:とりあえず拠点も必要ですし…町を探してみることにします。 神:頑張ってください。 勇者:そこのサポートは無しかよ… 神:そう言うのは、楽しむのが吉ですよ。 勇者:分かったよ… 0:街道 勇者:はぁ…歩けども歩けども、道しかないや… 勇者:まあ、道があるって事は、人が作った証があるって訳で…これを辿れば、どこかの街に着くんだろうけど… 勇者:先が全く見えねぇ… 神:まぁまぁ…気楽に行きましょ? 神:おや、またモンスターが出ましたよ? 魔王ナレ:デゥルルルルン… オシーリが現れた。 勇者:見た目も名前も最低なモンスターが来ちゃったよ! 魔王ナレ:オシーリは、頭を突き出している。 勇者:もう、頭だか尻だか分っかんねぇ! 勇者:そう言えばレベルも上がったことだし、今度は素手でやってみるか… 0:短い間 勇者:とは…言ってみたものの…何だか触るの嫌だな… 魔王ナレ:オシーリはキレかけている。 勇者:こいつ予想外に短気だった! 勇者:もう、覚悟を決めて… (平手打ち)とりゃぁ! 魔王ナレ:ボゾン! オシーリに98万3600のダメージ。 勇者:瓶が無くても、すごい事になってしまった… 魔王ナレ:オシーリは地の底深くにメリ込み、息絶えた… 勇者:力加減が分からなかったとはいえ…ごめんね!オシーリ! 魔王ナレ:勇者は147万5333の経験値を得た。 勇者:逐一多いんだよ! 経験値! 魔王ナレ:勇者は2京278兆7690万500エールを手に入れた。 勇者:金に困らないことは分かったから、いい加減にしてくれ! 申し訳なくなっちゃうだろ! 魔王ナレ:勇者のレベルが1170上がった。 勇者:始まって数十分で、強さが要らなくなったよ! 勇者:…はぁ… 勇者:あんだけ出しゃばってた神がウンともスンとも言わなくなったし… 勇者:もう…気楽にやるかぁ… 0:第一村人発見! 勇者:あれ…あそこに人影が… 勇者:良かった…人がいた! おーい! 勇者:あ…手を振り返してくれた! 0:勇者、走って近づく。 魔王ナレ:ピ、話す。 勇者:どうもどうも…初めまして。 魔王:あ…どうも。 勇者:あれ…どこかでお会いした事ありましたっけ…? 魔王:何故…そう思われるのですか? 勇者:いえね…すごく聞き覚えのある声な気がしてならないんですよ…あなたの声… 勇者:失礼ですが…お名前は? 魔王:スヴェイルと申します。 勇者:俺は、土瓶崎夢至(どびんざき むい)と言います。 魔王:珍しいお名前ですね。 勇者:スヴェイルさんこそ。 0:二人笑い合う 勇者:それはそうと、こんな所で何をしているんですか? 勇者:魔物がいて危険だと思うのですが… 魔王:危険ですか? 勇者:攻撃を食らったら即死すると聞いたのですが… 魔王:それは、普通の人間が相手だった場合の話でしょう? 勇者:あ…冒険者の方! なるほど! きっとお強いんでしょう? 魔王:いえ…そういう訳ではなく… 神:ふわぁぁぁぁ…よく寝たぁー! 勇者:寝てたのかよ! 神:寝る子は育つのだよ! 勇者:神が何言ってんの? 魔王:…神…だと!? 勇者:ス…スヴェイルさん? 怖い顔してどうしたんですか!? 魔王:土瓶崎さん! 神が居るんですね!? どこに居ますか!? 勇者:うわ…グイグイ来るなぁ…この人… 魔王:吐けぇぇぇぇぇぇぇ! 勇者:うっさい!黙れぇぇぇぇぇ! 魔王ナレ:ドゴン! 勇者の攻撃、魔王スヴェイルに7万5090のダメージ。 勇者:スヴェイルさん! ごめんなさい! 0:短い間 勇者:え…魔王スヴェイル? 神:勇者よ、絶好の機会がやってまいりました、そこに居る者こそが、この世界を統べる魔王なのです! 勇者:え!? こんな何の変哲もない草原に魔王いるの!? 城に鎮座してるモンじゃないの!? 魔王:君…勇者なんだね…来ることは分かっていたけど…何か…すんごい痛いのだが!? 勇者:それには諸々の事情がありまして… 神:さぁ、倒すのです! そのハナクソ魔王を倒してしまうのです! 魔王:ハナクソは、あなたでしょう!? 神様、いやヴィルヴィス・ヴィヴィン! 神:神を呼び捨てにするだけではなく、ハナクソ呼ばわり!? 良い度胸ですね! 神:勇者よ! やーっておしまい! 勇者:俺がやんの!? 自分でやんなさいよ!? 神:今の私は瓶の姿をしているのですよ? あなたの力を借りないと、攻撃出来ないのですよ! 魔王:そんな状態で偉そうにすんなよな! このクソ神! 勇者:そうですよ? 神様、他人の力を借りて偉そうにするなんて、最低ですよ!? 神:魔王の言う事なんて信じてはいけません! 魔王を倒さないとアナタは元の世界に帰れないのですよ!? 勇者:そうだった! ごめんスヴェイルさん!倒させてもらいます!俺の為に! 魔王ナレ:デゥルルルルン… 魔王スヴェイルが現れた。 勇者:待って待って! スヴェイルさん! 魔王:何だ。 勇者:さっきからナレーションやってたの、スヴェイルさんだったの!? 魔王:その通りだ。 もう…大変なんだぞ…? 神:魔王が、その気になれば、ナレーション通りに事態が進み、世界の破滅もあり得ます。 神:それ程に危険な存在なのです! 魔王:いや…だからね…滅多なことが言えないから大変なんだよ… 勇者:確かに、自由に喋れないって不自由だよね… 神:口封じ! そう、文字通りそこの魔王を口封じするのです! 魔王:うるさい! そもそも、この能力と現況を作ったのアンタだろう! 勇者:…え? …どういう事なの? 0:間 魔王:ええと…土瓶崎さん…この女神が声フェチと言う事は…? 勇者:あ…はい、知ってます。 神:勇者よ、聞く耳を持ってはいけません! 勇者:(神の台詞を遮って )大丈夫です、続けて下さい。 魔王:私もね…この神に召喚されたんですよ… 勇者:あ…声が良いから…? 魔王:みたいですねぇ…神の心に刺さったのかも知れません。 神:そうなのです、素敵な声でしょう? 勇者:アンタはスヴェイルさんが好きなの?嫌いなの? 神:声は好き! 魔王:そんな訳でね、この世界に転生するときに好きな能力を貰えたんだよ。 勇者:え!? 俺の時は貰えたの瓶だけだったのに… 神:それにはね、深い深ぁい訳があって… 魔王:私がもらった能力は「言った言葉が現実になる」…と言う物。 魔王:こんな能力を指定しちゃったからでしょうね…世界のバランスが崩れてしまいまして… 勇者:なるほど…経験値やエールの多さが異常だったのもそう言う…? 魔王:はい。 魔王:この能力を貰った時の私は…それはもう酷い中二病でして… 勇者:比喩的に言った「自分が魔王である」…的な発言が、実現してしまった…みたいな? 魔王:その通りです。 魔王:ですが…もう、魔王であることに疲れました。 魔王:…と言うか、正直ナレーションをする事にも疲れました。 勇者:言ったことが本当になるから…ですかね? 魔王:それもあるんですが、それ以上に、起こった事象のナレーションを入れなければならない…と言う制約付きでして… 神:それ相応の対価は頂かないといけませんからね。 魔王:事あるごとに、ナレーションを言わされるんです。強制的に。 魔王:例え寝ていても、どこかで戦争が起きれば「火の手が上がった」とか「絶望の淵に落ちたのだ」…とか… 魔王:もうウンザリなんですよ… 勇者:では、ずっと安眠出来ていないのでは? 魔王:普通に寝れませんよ…ははは… 勇者:なるほど… 魔王:一時期は、この世界を滅ぼせばナレーションしなくても良いんじゃないかな…なんて邪な考えを抱いた事もありました。 神:そんな事、この神が許す訳無いでしょう? 魔王:その通りで、天使の…いえ、瓶の軍勢が襲い掛かってきたこともありました。 神:世界規模の争いになりましたね… 魔王:辛(から)くも、我々が勝利を収める事に成功しましたが…私自身がボロボロになりまして… 勇者:それは大変でしたね。 神:私は、そこのスヴェイルを魔王と断定し、戦力が整い次第、次々と兵を送り込みました。 魔王:それが…もう…ホント辛くて… 勇者:寝れないんですもんね…よく頑張りました。 魔王:世界を壊す事を諦めたら、今度は転生した人間を送り込んできたじゃありませんか。 勇者:俺の事ですか? 魔王:はい。 勇者:なんか…ごめんなさい。 神:あなたが謝ることでは無いのですよ? 勇者:お前が言うなよ? 魔王:もういっそね、思い切って大量の経験値あげて、私自身を倒してもらおうって思ったのですよ。 勇者:そう言う事情でしたか。 神:分かりましたか? あなたのした行いの浅はかさを。 勇者:お前が考えなしに、世界を統べるだけの力を与えたんだろうが! 魔王:さぁ!勇者である土瓶崎よ! 私を倒すには十分すぎる力を与えたのだ! 一思いにやってくれ! 神:やれ!勇者よ! 勇者:えぇ… 神:どうしたのですか? 元の世界に帰りたくはないのですか? 勇者:いや、帰りたいけれども… 神:ならば、さぁ! 勇者:こんな状況って…やりにくいじゃん… 神:この根性なしが! 勇者:根性とか何とかいう前に、神の力で何とかしたらどうなんだ? 勇者:魔王の力がハナクソ程度なんだろ!? 神:ぶちゃけて言いますけどね? 勇者:言ってみろよ。 神:私の力の大半が、魔王の物になっていますからね? 0:間 勇者:え…? 勇者:神って…ハナクソだったの? 神:言葉の使い方に気をつけなさい! 勇者:あ、図星なんだ。 神:くっ… 勇者:そもそも、スヴェイルさんが召喚された理由って何なんだよ? 魔王:それはですね…魔王を倒せと言う物で… 勇者:…で、その魔王は? 魔王:私に魔王の地位を譲り、今でも生きてます。 勇者:なるほど。 勇者:神、ちょっといいか? 神:なんですか…? 勇者:スヴェイルさんを倒したら神の力は元に戻るんだよな? 神:戻りますね。 勇者:じゃぁ、スヴェイルさんを倒したら、魔王の地位はどうなる? 神:昔の魔王に戻りますね。 勇者:じゃぁ、スヴェイルさんを倒して、元の世界に転生召喚させれば問題無いんでしょ? 魔王:それをしたら、土瓶崎さんは元の世界に戻れなくなってしまうのでは? 勇者:俺は、この神に「魔王を倒せ」って言われただけで、スヴェイルさんを倒せと言われた訳ではないし… 勇者:元の魔王に戻ったら、そいつを倒せば、俺は元の世界に帰してくれる…そういう約束で問題ないだろ? 神:まぁ…理屈としては… 勇者:スヴェイルさんも、転生時の能力付与で「言った言葉が現実になる」能力の解除を願えば問題無いでしょ? 魔王:確かに! 勇者:そしたら、神も力が戻って、ハナクソが本体に戻る訳で… 神:ハナクソって言わない! 勇者:アンタが言い出したんだろうが… 神:はい…そうですね… 勇者:みんな幸せになって、めでたしめでたし…でしょ? 魔王:確かにそうだ…だが! 勇者:何か問題でも? 魔王:それだと、勇者土瓶崎よ…お前は一人ぼっちになってしまうじゃないか? 勇者:いいよ、何とかできる問題が残るだけなんだ、気楽に魔王討伐の旅をするさ。 魔王:お前の様な男を招くナレーションを入れて…心から良かったと思うぞ。 勇者:そりゃ何よりだ。 0:別れの時 勇者:それじゃぁ、スヴェイルさん…準備はいいか? 魔王:ああ、思い切ってやってくれ。 魔王:これは儀式なんだ。 私を殺す訳ではないんだからな。 神:それでは…始めますよ? 勇者:しっかしなぁ…転生召喚って、厄介だよなぁ… 勇者:死なないと転生できないんだから… 魔王:仕方の無い事さ。 勇者:…そっか… 勇者:んじゃ、全力で行かせてもらうぞ! 魔王:ああ! 勇者:カッコいい台詞とか言えば、この瓶の力は上がるんだよな? 神:その通りです。とっておきの台詞を期待していますよ。 勇者:任せとけ! 勇者:おい…神よ… 神:えっ…? 勇者:おまえ…よく見たら、すっげぇ可愛いじゃないか…愛らしくて丸みを帯びた身体。可愛らしい声。 勇者:ちょっと生意気で、考え無しな所もあるけどさ…そういう所も…大好きだぞ! 神:えっ!えっ!えぇぇぇぇぇーっ! 勇者:これからも…よろしくな? ちゅっ(瓶にキスする) 神:これは…これはたまらん! 勇者:愛と情熱の…流星打ぁぁぁぁ! 0:エンディング 魔王ナレ:こうして…我々の旅は終結する…問題全てを消し去って… 魔王ナレ:ズゴゴン! 異世界、スヴェ・ラレイルに無量大数のダメージ。 勇者:は? なんじゃそりゃぁぁぁぁ! 神:世界が…世界がぁぁぁぁぁ! 0:ではなかった 魔王ナレ:勇者は、無限の経験値を得た。 魔王ナレ:勇者は、無限の富を得た。 0:元の世界 魔王ナレ:異世界スヴェ・ラレイルが完全に破壊され、強制的に別の世界に飛ばされた我々は…偶然にも元居た世界への帰還を果たした。 魔王ナレ:魔王スヴェイルの能力は無くなる事無く、また神をも超える力を持つ勇者も存在する日常の世界に…我々の苦労は絶えない。 神:私の力…全部持っていかれたまんま… 勇者:いや…こんな事になるなんて思わなくて…ホントごめん… 魔王:人が多い!ナレーションも多い!私はどうすれば良いんだ! 0:そして… 魔王ナレ:彼らと一瓶に幸せが訪れる日は来るのであろうか… 魔王ナレ:彼らの苦悩は、始まったばかりなのだ… 0:つづく…かも。

魔王ナレ:この世界は混沌に満ちている… 魔王ナレ:世は乱れ、魔物は跋扈(ばっこ)する。 魔王ナレ:そんな世の乱れに一計を案じた神は、一人の男を勇者として転生召喚することを決めた。 魔王ナレ:彼の名は土瓶崎夢至(どびんざき むい)。 魔王ナレ:ここから…彼の冒険が始まるのだ!  : 0:天界  : 勇者:…ここは…? 神:よくぞ参りました、勇者よ! 勇者:勇者!? 神:私は神、ヴィルヴィス・ヴィヴィンと言います。 神:あなたの生は終わりを告げました。 神:ですので、代わりに異世界への転生を…と思いまして… 神:異世界転生をご希望されますか? されますよね? して下さい。 勇者:ちょっと待ってください!? 神:何でしょうか? 勇者:お願いが…とか、依頼的なやつですよね? 転生って… 神:いえ、強制です。 勇者:強制!? 神:だって死んじゃったのですから、もう仕方の無い事でしょう? 勇者:そりゃまぁ…そうだけど… 神:はい、と言う訳で…サクサクと行きましょう。 神:あなたには、そのままの姿、そのままの能力値、そこに多少のステータスの増加と共に、ボーナス武器を進呈します。 神:異世界に行ったら、その力を如何(いかん)無く発揮して、魔王を討伐して頂きいます。 神:魔王を倒した暁には、魔王の魔力等を利用して元の世界に帰れるように取り計らいましょう。 勇者:え? 帰れるの? 神:はい。 0:間 勇者:神の力で帰れるんじゃね? 神:無理です。 勇者:神って魔王よりも強いですよね? きっと。 神:はい、魔王と私のハナクソが、大体同じくらいの強さですね。 勇者:いや、その力あるなら、問答無用で元の世界に帰してくんない? 神:無理です。 勇者:じゃぁ、代わりに俺が神様のハナクソをほじるんで、元の世界に戻して頂くというのは? 神:無理です。 勇者:なぜ!? 神:あなたでは、私のハナクソに勝てないからです。 勇者:はぁ… 神:納得しましたか? 勇者:まぁ…するしか無いんでしょ? 神:その通りです。 0:短い間 神:はい、と言う訳で転生しちゃいますね。 勇者:あの、ボーナス武器は!? 神:現地に着いたらアイテムボックスを確認して下さい。 勇者:アイテムボックス!? なにそれ!? 神:Xボタン押したらメニューが出るから、そこで確認して下さい。 勇者:Xボタン!? 神:もう説明するの面倒臭いので、現地で確認して下さい。 神:それでは…行ってらっしゃーい! 勇者:うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁー…  : 0:勇者、異世界に到着  : 勇者:(目を覚まして)…ん…ここは…? 勇者:あぁ…神様の言ってた異世界か… 勇者:何だよこれ…ドットか!? モロ、ゲームの世界じゃないか…あれ…空に文字が… 魔王ナレ:世界は魔王の猛攻に怯えていた。 勇者:音声付きかよ! 魔王ナレ:人々は蹂躙(じゅうりん)され搾取され日々の暮らしさえ、ままならない… 魔王ナレ:人々は願う…勇者の降誕を… 魔王ナレ:かの魔王を倒し、世に平和を取り戻す勇者を… 勇者:おぉ… 神:はい、導入も終わった所で… 勇者:何で居るんだよ!台無しじゃないか!? 神:だって…ねぇ… 勇者:『だって』じゃないんだよ。 神:はい、とりあえずメニュー画面を開いて。 勇者:メニュー画面っつったって… 神:目の前に見えない? 勇者:うわぁ…これ見よがしにボタンあるわぁ… 空中に浮いてるし… 神:はい、とっとと押す。 勇者:あの…神様? 神:何? 勇者:キャラ違いすぎません? さっきと… 神:あんな重苦しいキャラで、ずっと居られないからね? めんどくさいし… 勇者:あ…そぅ… 神:良いからXボタン押して。 勇者:でも… 神:いいから押せや! 勇者:はいはい…(ボタンを押す) 魔王ナレ:ドシュ! メニュー。 ドシュ! 持ち物。 勇者:メニュー画面にまで音声あるの!? 神:メニューの中の道具を選択したら出てくるから、選んでみて。 魔王ナレ:ピ、薬草。 ピ、瓶 勇者:持ち物、これだけ!? 神:はい。 勇者:ボーナス武器は、どこ行ったよ!? 神:ありますよ? 勇者:え…? ウソだろ!? 神:はい、その『瓶』です。 勇者:え…俺、瓶で戦うの!? 神:はい。 勇者:町のヤンキーだって、もうちょっとマシな武器使うぞ!? 神:昔のアメリカヤンキーみたいでカッコいいと思うんだけどなぁ… 勇者:いやいや!ヤンキーってか、酒場に居る悪党が持ってるやつよ!? 勇者:割って刺して攻撃しろってか!?  神:因みに、割ってはいけませんよ? 勇者:鈍器として使えと!? 神:その通りです。 勇者:いや、酔っ払いが瓶で魔王倒しに行く様を想像してみろよ!? 締まらねぇって! 神:体裁(ていさい)なんて気にしてる場合ですか? あなたは勇者なんですよ? 魔王を倒す義務があるんですよ? 勇者:じゃぁ…この『瓶』と言う武器は…それなりに強いと? 神:それは…あなた次第でしょうかね… 勇者:俺次第とは? 神:あ…丁度良い所に、モンスターが居ましたね。 神:その瓶で倒してみましょう。 勇者:勝手に進めんな! 魔王ナレ:デゥルルルルン… スライムMが現れた。 勇者:既に見えていたのに、現れたとは? 神:小さい事は気にしないで。 魔王ナレ:ピ、攻撃 ピ、魔法 ピ、防御 ピ、逃げる 勇者:逐一、効果音とコマンド音声が出るの、ウザいな… 神:いいいから! とりあえず、その瓶で攻撃してみてください。 魔王ナレ:ピ! 攻撃! 魔王ナレ:スライムMは 後ろを向いて身構えている。 勇者:うぉぉぉぉぉぉぉ!りゃっ!(瓶でスライムを殴る) 魔王ナレ:勇者の攻撃、バスン! スライムに、マイナス15のダメージ。 勇者:ダメージしょぼっ! …ん、マイナス!? 神:言い忘れていましたが、この世界のモンスターは大半がドMです。 勇者:はぁ!? 何でそんな事になってんの!? 神:さぁ…? 魔王ナレ:スライムは、待ち構えている。 神:まぁ、それは置いといて… 生半可な攻撃だと、M性の強さで逆に回復します。 勇者:それを上回る攻撃をしないと、敵を倒せないって事かよ… そんなのどうすれば… 神:はい! ここでこの瓶の出番なんですね! 勇者:ほう… ってか、この瓶プルンプルンなのだが? 神:はい、この瓶は非常に柔らかいです。 勇者:そんな物で、モンスターなんて倒せるはずないよね? 神:その通りです。 …ですが! 勇者:何かある訳だ! 神:カッコいい言葉、呪文、台詞、ちょっとセンシティブぅな言葉など! 言って頂けると、この瓶は硬くなるのです! 勇者:(遠い目)へぇ… すっげぇー 魔王ナレ:スライムMは、今か今かと息を荒げて待っている。 勇者:なんでこんな仕様にしたんだよ! 神:それは…私が声フェチだからですよ! 勇者:は? 神:声フェチなんですよ! 勇者:はい… 神:声フェ… 勇者:もう、言葉の意味は理解してるんで大丈夫ですが… 神:でしたら、素敵な台詞や、いやらしい台詞を、お願いします。 魔王ナレ:スライムMは、放置プレイに飽き始めている。 神:ほら見なさい、スライムMさんも… 勇者:何か、このシステム、やだぁ… 神:良いんですか?転生したばかりなのに殺されても? 勇者:何で!? 相手は、たかがスライムでしょ!? 神:この世界の魔物は、基本受け身ですが、攻撃してきたら、ほぼ即死攻撃をしてきますよ? 勇者:クソゲーの世界に飛ばしやがって! 魔王ナレ:スライムMは、もうそろそろキレても良いかなと身構えている。 神:ほら! 何だかヤバい雰囲気でしょ!? 神:迷っている時間はありません! 勇者:えぇい… こんな所で殺されるのも心外だ! 覚悟を決めろ、俺! 神:その意気です! 勇者:(呪文を唱える要領で)神を愛し、神に愛されし、褐色なる我が身体の一部よ! 勇者:地を、空を、風を! 怒りの炎で焼き尽くせ! ヘルフレイム・アブダクト!! 神:んん…良いですね! 60点! 神:さぁ! お殴りなさい! 勇者:たぁぁぁぁぁぁぁ! はぁー! 魔王ナレ:勇者の攻撃、ドゴン! スライムMに7億8002万56のダメージ。 勇者:は!? 魔王ナレ:スライムMは、跡形も無く砕け散った。 勇者:ダメージおかしくね!? あと「倒れた」とかじゃなくて「跡形も無く砕け散った」って表現も、なんなん!? 魔王ナレ:勇者は58万9930の経験値を得た。 勇者:経験値が破格すぎねぇか!? 魔王ナレ:勇者は32兆7万82エールを得た。 勇者:エール? 神:この世界の通貨ですね。 勇者:多すぎねぇか!? 因みに1エールってどのくらいよ? 神:5エールで安い宿が取れますね… 勇者:田舎の素泊まりで5000円と考えて…1エール1000円!? 取得した通貨も破格すぎねぇか!? 神:やりましたね! 勇者:やったかどうかも判別付き辛いわ! 魔王ナレ:勇者のレベルが1076上がった。 神:やりましたね! 勇者:いきなりレベル1000越えって、インフレが過ぎるわ! 勇者:コレ、オープニングバトルみたいなやつでしょ? 神:は? そんなのは知りませんけど? 勇者:え…いきなりガチなの…? 神:はい。 勇者:何それ…うわぁ…クソゲーの世界に転生した感が半端ねぇわ… 神:さっきから言ってる「クソゲー」って何ですか? 勇者:…はい、もう…良いです。 説明するのが面倒なので… 神:そうですか… 0:短い間 勇者:とりあえず…町とかあるんですよね? 神:はい、ありますよ。 勇者:とりあえず拠点も必要ですし…町を探してみることにします。 神:頑張ってください。 勇者:そこのサポートは無しかよ… 神:そう言うのは、楽しむのが吉ですよ。 勇者:分かったよ… 0:街道 勇者:はぁ…歩けども歩けども、道しかないや… 勇者:まあ、道があるって事は、人が作った証があるって訳で…これを辿れば、どこかの街に着くんだろうけど… 勇者:先が全く見えねぇ… 神:まぁまぁ…気楽に行きましょ? 神:おや、またモンスターが出ましたよ? 魔王ナレ:デゥルルルルン… オシーリが現れた。 勇者:見た目も名前も最低なモンスターが来ちゃったよ! 魔王ナレ:オシーリは、頭を突き出している。 勇者:もう、頭だか尻だか分っかんねぇ! 勇者:そう言えばレベルも上がったことだし、今度は素手でやってみるか… 0:短い間 勇者:とは…言ってみたものの…何だか触るの嫌だな… 魔王ナレ:オシーリはキレかけている。 勇者:こいつ予想外に短気だった! 勇者:もう、覚悟を決めて… (平手打ち)とりゃぁ! 魔王ナレ:ボゾン! オシーリに98万3600のダメージ。 勇者:瓶が無くても、すごい事になってしまった… 魔王ナレ:オシーリは地の底深くにメリ込み、息絶えた… 勇者:力加減が分からなかったとはいえ…ごめんね!オシーリ! 魔王ナレ:勇者は147万5333の経験値を得た。 勇者:逐一多いんだよ! 経験値! 魔王ナレ:勇者は2京278兆7690万500エールを手に入れた。 勇者:金に困らないことは分かったから、いい加減にしてくれ! 申し訳なくなっちゃうだろ! 魔王ナレ:勇者のレベルが1170上がった。 勇者:始まって数十分で、強さが要らなくなったよ! 勇者:…はぁ… 勇者:あんだけ出しゃばってた神がウンともスンとも言わなくなったし… 勇者:もう…気楽にやるかぁ… 0:第一村人発見! 勇者:あれ…あそこに人影が… 勇者:良かった…人がいた! おーい! 勇者:あ…手を振り返してくれた! 0:勇者、走って近づく。 魔王ナレ:ピ、話す。 勇者:どうもどうも…初めまして。 魔王:あ…どうも。 勇者:あれ…どこかでお会いした事ありましたっけ…? 魔王:何故…そう思われるのですか? 勇者:いえね…すごく聞き覚えのある声な気がしてならないんですよ…あなたの声… 勇者:失礼ですが…お名前は? 魔王:スヴェイルと申します。 勇者:俺は、土瓶崎夢至(どびんざき むい)と言います。 魔王:珍しいお名前ですね。 勇者:スヴェイルさんこそ。 0:二人笑い合う 勇者:それはそうと、こんな所で何をしているんですか? 勇者:魔物がいて危険だと思うのですが… 魔王:危険ですか? 勇者:攻撃を食らったら即死すると聞いたのですが… 魔王:それは、普通の人間が相手だった場合の話でしょう? 勇者:あ…冒険者の方! なるほど! きっとお強いんでしょう? 魔王:いえ…そういう訳ではなく… 神:ふわぁぁぁぁ…よく寝たぁー! 勇者:寝てたのかよ! 神:寝る子は育つのだよ! 勇者:神が何言ってんの? 魔王:…神…だと!? 勇者:ス…スヴェイルさん? 怖い顔してどうしたんですか!? 魔王:土瓶崎さん! 神が居るんですね!? どこに居ますか!? 勇者:うわ…グイグイ来るなぁ…この人… 魔王:吐けぇぇぇぇぇぇぇ! 勇者:うっさい!黙れぇぇぇぇぇ! 魔王ナレ:ドゴン! 勇者の攻撃、魔王スヴェイルに7万5090のダメージ。 勇者:スヴェイルさん! ごめんなさい! 0:短い間 勇者:え…魔王スヴェイル? 神:勇者よ、絶好の機会がやってまいりました、そこに居る者こそが、この世界を統べる魔王なのです! 勇者:え!? こんな何の変哲もない草原に魔王いるの!? 城に鎮座してるモンじゃないの!? 魔王:君…勇者なんだね…来ることは分かっていたけど…何か…すんごい痛いのだが!? 勇者:それには諸々の事情がありまして… 神:さぁ、倒すのです! そのハナクソ魔王を倒してしまうのです! 魔王:ハナクソは、あなたでしょう!? 神様、いやヴィルヴィス・ヴィヴィン! 神:神を呼び捨てにするだけではなく、ハナクソ呼ばわり!? 良い度胸ですね! 神:勇者よ! やーっておしまい! 勇者:俺がやんの!? 自分でやんなさいよ!? 神:今の私は瓶の姿をしているのですよ? あなたの力を借りないと、攻撃出来ないのですよ! 魔王:そんな状態で偉そうにすんなよな! このクソ神! 勇者:そうですよ? 神様、他人の力を借りて偉そうにするなんて、最低ですよ!? 神:魔王の言う事なんて信じてはいけません! 魔王を倒さないとアナタは元の世界に帰れないのですよ!? 勇者:そうだった! ごめんスヴェイルさん!倒させてもらいます!俺の為に! 魔王ナレ:デゥルルルルン… 魔王スヴェイルが現れた。 勇者:待って待って! スヴェイルさん! 魔王:何だ。 勇者:さっきからナレーションやってたの、スヴェイルさんだったの!? 魔王:その通りだ。 もう…大変なんだぞ…? 神:魔王が、その気になれば、ナレーション通りに事態が進み、世界の破滅もあり得ます。 神:それ程に危険な存在なのです! 魔王:いや…だからね…滅多なことが言えないから大変なんだよ… 勇者:確かに、自由に喋れないって不自由だよね… 神:口封じ! そう、文字通りそこの魔王を口封じするのです! 魔王:うるさい! そもそも、この能力と現況を作ったのアンタだろう! 勇者:…え? …どういう事なの? 0:間 魔王:ええと…土瓶崎さん…この女神が声フェチと言う事は…? 勇者:あ…はい、知ってます。 神:勇者よ、聞く耳を持ってはいけません! 勇者:(神の台詞を遮って )大丈夫です、続けて下さい。 魔王:私もね…この神に召喚されたんですよ… 勇者:あ…声が良いから…? 魔王:みたいですねぇ…神の心に刺さったのかも知れません。 神:そうなのです、素敵な声でしょう? 勇者:アンタはスヴェイルさんが好きなの?嫌いなの? 神:声は好き! 魔王:そんな訳でね、この世界に転生するときに好きな能力を貰えたんだよ。 勇者:え!? 俺の時は貰えたの瓶だけだったのに… 神:それにはね、深い深ぁい訳があって… 魔王:私がもらった能力は「言った言葉が現実になる」…と言う物。 魔王:こんな能力を指定しちゃったからでしょうね…世界のバランスが崩れてしまいまして… 勇者:なるほど…経験値やエールの多さが異常だったのもそう言う…? 魔王:はい。 魔王:この能力を貰った時の私は…それはもう酷い中二病でして… 勇者:比喩的に言った「自分が魔王である」…的な発言が、実現してしまった…みたいな? 魔王:その通りです。 魔王:ですが…もう、魔王であることに疲れました。 魔王:…と言うか、正直ナレーションをする事にも疲れました。 勇者:言ったことが本当になるから…ですかね? 魔王:それもあるんですが、それ以上に、起こった事象のナレーションを入れなければならない…と言う制約付きでして… 神:それ相応の対価は頂かないといけませんからね。 魔王:事あるごとに、ナレーションを言わされるんです。強制的に。 魔王:例え寝ていても、どこかで戦争が起きれば「火の手が上がった」とか「絶望の淵に落ちたのだ」…とか… 魔王:もうウンザリなんですよ… 勇者:では、ずっと安眠出来ていないのでは? 魔王:普通に寝れませんよ…ははは… 勇者:なるほど… 魔王:一時期は、この世界を滅ぼせばナレーションしなくても良いんじゃないかな…なんて邪な考えを抱いた事もありました。 神:そんな事、この神が許す訳無いでしょう? 魔王:その通りで、天使の…いえ、瓶の軍勢が襲い掛かってきたこともありました。 神:世界規模の争いになりましたね… 魔王:辛(から)くも、我々が勝利を収める事に成功しましたが…私自身がボロボロになりまして… 勇者:それは大変でしたね。 神:私は、そこのスヴェイルを魔王と断定し、戦力が整い次第、次々と兵を送り込みました。 魔王:それが…もう…ホント辛くて… 勇者:寝れないんですもんね…よく頑張りました。 魔王:世界を壊す事を諦めたら、今度は転生した人間を送り込んできたじゃありませんか。 勇者:俺の事ですか? 魔王:はい。 勇者:なんか…ごめんなさい。 神:あなたが謝ることでは無いのですよ? 勇者:お前が言うなよ? 魔王:もういっそね、思い切って大量の経験値あげて、私自身を倒してもらおうって思ったのですよ。 勇者:そう言う事情でしたか。 神:分かりましたか? あなたのした行いの浅はかさを。 勇者:お前が考えなしに、世界を統べるだけの力を与えたんだろうが! 魔王:さぁ!勇者である土瓶崎よ! 私を倒すには十分すぎる力を与えたのだ! 一思いにやってくれ! 神:やれ!勇者よ! 勇者:えぇ… 神:どうしたのですか? 元の世界に帰りたくはないのですか? 勇者:いや、帰りたいけれども… 神:ならば、さぁ! 勇者:こんな状況って…やりにくいじゃん… 神:この根性なしが! 勇者:根性とか何とかいう前に、神の力で何とかしたらどうなんだ? 勇者:魔王の力がハナクソ程度なんだろ!? 神:ぶちゃけて言いますけどね? 勇者:言ってみろよ。 神:私の力の大半が、魔王の物になっていますからね? 0:間 勇者:え…? 勇者:神って…ハナクソだったの? 神:言葉の使い方に気をつけなさい! 勇者:あ、図星なんだ。 神:くっ… 勇者:そもそも、スヴェイルさんが召喚された理由って何なんだよ? 魔王:それはですね…魔王を倒せと言う物で… 勇者:…で、その魔王は? 魔王:私に魔王の地位を譲り、今でも生きてます。 勇者:なるほど。 勇者:神、ちょっといいか? 神:なんですか…? 勇者:スヴェイルさんを倒したら神の力は元に戻るんだよな? 神:戻りますね。 勇者:じゃぁ、スヴェイルさんを倒したら、魔王の地位はどうなる? 神:昔の魔王に戻りますね。 勇者:じゃぁ、スヴェイルさんを倒して、元の世界に転生召喚させれば問題無いんでしょ? 魔王:それをしたら、土瓶崎さんは元の世界に戻れなくなってしまうのでは? 勇者:俺は、この神に「魔王を倒せ」って言われただけで、スヴェイルさんを倒せと言われた訳ではないし… 勇者:元の魔王に戻ったら、そいつを倒せば、俺は元の世界に帰してくれる…そういう約束で問題ないだろ? 神:まぁ…理屈としては… 勇者:スヴェイルさんも、転生時の能力付与で「言った言葉が現実になる」能力の解除を願えば問題無いでしょ? 魔王:確かに! 勇者:そしたら、神も力が戻って、ハナクソが本体に戻る訳で… 神:ハナクソって言わない! 勇者:アンタが言い出したんだろうが… 神:はい…そうですね… 勇者:みんな幸せになって、めでたしめでたし…でしょ? 魔王:確かにそうだ…だが! 勇者:何か問題でも? 魔王:それだと、勇者土瓶崎よ…お前は一人ぼっちになってしまうじゃないか? 勇者:いいよ、何とかできる問題が残るだけなんだ、気楽に魔王討伐の旅をするさ。 魔王:お前の様な男を招くナレーションを入れて…心から良かったと思うぞ。 勇者:そりゃ何よりだ。 0:別れの時 勇者:それじゃぁ、スヴェイルさん…準備はいいか? 魔王:ああ、思い切ってやってくれ。 魔王:これは儀式なんだ。 私を殺す訳ではないんだからな。 神:それでは…始めますよ? 勇者:しっかしなぁ…転生召喚って、厄介だよなぁ… 勇者:死なないと転生できないんだから… 魔王:仕方の無い事さ。 勇者:…そっか… 勇者:んじゃ、全力で行かせてもらうぞ! 魔王:ああ! 勇者:カッコいい台詞とか言えば、この瓶の力は上がるんだよな? 神:その通りです。とっておきの台詞を期待していますよ。 勇者:任せとけ! 勇者:おい…神よ… 神:えっ…? 勇者:おまえ…よく見たら、すっげぇ可愛いじゃないか…愛らしくて丸みを帯びた身体。可愛らしい声。 勇者:ちょっと生意気で、考え無しな所もあるけどさ…そういう所も…大好きだぞ! 神:えっ!えっ!えぇぇぇぇぇーっ! 勇者:これからも…よろしくな? ちゅっ(瓶にキスする) 神:これは…これはたまらん! 勇者:愛と情熱の…流星打ぁぁぁぁ! 0:エンディング 魔王ナレ:こうして…我々の旅は終結する…問題全てを消し去って… 魔王ナレ:ズゴゴン! 異世界、スヴェ・ラレイルに無量大数のダメージ。 勇者:は? なんじゃそりゃぁぁぁぁ! 神:世界が…世界がぁぁぁぁぁ! 0:ではなかった 魔王ナレ:勇者は、無限の経験値を得た。 魔王ナレ:勇者は、無限の富を得た。 0:元の世界 魔王ナレ:異世界スヴェ・ラレイルが完全に破壊され、強制的に別の世界に飛ばされた我々は…偶然にも元居た世界への帰還を果たした。 魔王ナレ:魔王スヴェイルの能力は無くなる事無く、また神をも超える力を持つ勇者も存在する日常の世界に…我々の苦労は絶えない。 神:私の力…全部持っていかれたまんま… 勇者:いや…こんな事になるなんて思わなくて…ホントごめん… 魔王:人が多い!ナレーションも多い!私はどうすれば良いんだ! 0:そして… 魔王ナレ:彼らと一瓶に幸せが訪れる日は来るのであろうか… 魔王ナレ:彼らの苦悩は、始まったばかりなのだ… 0:つづく…かも。