台本概要
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タイトル | 青空文庫走れメロス声劇アレンジ前編 |
---|---|
作者名 | おちば |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 4人用台本(不問4) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ナレーション | 不問 | 3 | ナレーション |
メロス | 不問 | 10 | メロス |
おうさま | 不問 | 8 | おうさま |
じじい | 不問 | 4 | じじい |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
待て。セリヌンティウス
:ナレーション部
ナレーション:メロスは激怒した
ナレーション:必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した
ナレーション:メロスには政治がわからぬ
ナレーション:メロスは、村の牧人である笛を吹き、羊と遊んで暮して来た
ナレーション:けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった
ナレーション:きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た
ナレーション:メロスには父も、母も無い
ナレーション:女房も無い
ナレーション:十六の、内気な妹と二人暮しだ
ナレーション:この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた
ナレーション:結婚式も間近かなのである
ナレーション:メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ
ナレーション:先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた
ナレーション:メロスには竹馬の友があった
ナレーション:セリヌンティウスである
ナレーション:今は此のシラクスの市で、石工をしている
ナレーション:その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ
ナレーション:久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである
ナレーション:歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った
ナレーション:ひっそりしているもう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい
ナレーション:のんきなメロスも、だんだん不安になって来た
ナレーション:路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した
ナレーション:若い衆は、首を振って答えなかった
ナレーション:しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した
ナレーション:老爺は答えなかった
ナレーション:メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた
:セリフ部
じじい:王様は、人を殺します
メロス:なぜ殺すのだ
じじい:悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ
メロス:たくさんの人を殺したのか
じじい:はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を
メロス:おどろいた。国王は乱心か
じじい:いいえ、乱心ではございませぬ
じじい:人を、信ずる事が出来ぬ、というのです
じじい:このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります
じじい:御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます
じじい:きょうは、六人殺されました
メロス:呆れた王だ
メロス:生かして置けぬ
:ナレーション部
ナレーション:メロスは、単純な男であった
ナレーション:買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った
ナレーション:たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された
ナレーション:調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった
ナレーション:メロスは、王の前に引き出された
:セリフ部
おうさま:この短刀で何をするつもりであったか。言え!
メロス:市を暴君の手から救うのだ
おうさま:おまえがか?
おうさま:仕方の無いやつじゃ
おうさま:おまえには、わしの孤独がわからぬ
メロス:言うな!
メロス:人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ
メロス:王は、民の忠誠をさえ疑って居られる
おうさま:疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ
おうさま:人の心は、あてにならない
おうさま:人間は、もともと私慾のかたまりさ
おうさま:信じては、ならぬ
おうさま:わしだって、平和を望んでいるのだが
メロス:なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か
メロス:罪の無い人を殺して、何が平和だ
おうさま:だまれ、下賤の者
おうさま:口では、どんな清らかな事でも言える
おうさま:わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ
おうさま:おまえだって、いまに、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ
メロス:ああ、王は悧巧だ
メロス:自惚ているがよい
メロス:私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない
メロス:ただ、――
メロス:ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい
メロス:たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです
メロス:三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます
おうさま:ばかな
おうさま:とんでもない嘘うそを言うわい
おうさま:逃がした小鳥が帰って来るというのか
メロス:そうです
メロス:帰って来るのです
メロス:私は約束を守ります
メロス:私を、三日間だけ許して下さい
メロス:妹が、私の帰りを待っているのだ
メロス:そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます
メロス:私の無二の友人だ
メロス:あれを、人質としてここに置いて行こう
メロス:私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい
メロス:たのむ、そうして下さい
:おうさまこころの声(リバーブ)
おうさま:(生意気なことを言うわい)
おうさま:(どうせ帰って来ないにきまっている)
おうさま:(この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い)
おうさま:(人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ)
おうさま:(世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ)
:セリフ部
おうさま:願いを、聞いた
おうさま:その身代りを呼ぶがよい
おうさま:三日目には日没までに帰って来い
おうさま:おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ
おうさま:ちょっとおくれて来るがいい
おうさま:おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ
メロス:なに、何をおっしゃる
おうさま:はは
おうさま:いのちが大事だったら、おくれて来い
おうさま:おまえの心は、わかっているぞ
:ナレーション部
ナレーション:メロスは口惜しく、地団駄踏んだ
ナレーション:ものも言いたくなくなった
ナレーション:竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された
ナレーション:暴君ディオニスの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた
ナレーション:メロスは、友に一切の事情を語った
ナレーション:セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた
ナレーション:友と友の間は、それでよかった
ナレーション:セリヌンティウスは、縄打たれた
ナレーション:メロスは、すぐに出発した
ナレーション:初夏、満天の星である
待て。セリヌンティウス
:ナレーション部
ナレーション:メロスは激怒した
ナレーション:必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した
ナレーション:メロスには政治がわからぬ
ナレーション:メロスは、村の牧人である笛を吹き、羊と遊んで暮して来た
ナレーション:けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった
ナレーション:きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このシラクスの市にやって来た
ナレーション:メロスには父も、母も無い
ナレーション:女房も無い
ナレーション:十六の、内気な妹と二人暮しだ
ナレーション:この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた
ナレーション:結婚式も間近かなのである
ナレーション:メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ
ナレーション:先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた
ナレーション:メロスには竹馬の友があった
ナレーション:セリヌンティウスである
ナレーション:今は此のシラクスの市で、石工をしている
ナレーション:その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ
ナレーション:久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである
ナレーション:歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った
ナレーション:ひっそりしているもう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい
ナレーション:のんきなメロスも、だんだん不安になって来た
ナレーション:路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した
ナレーション:若い衆は、首を振って答えなかった
ナレーション:しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した
ナレーション:老爺は答えなかった
ナレーション:メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた
:セリフ部
じじい:王様は、人を殺します
メロス:なぜ殺すのだ
じじい:悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ
メロス:たくさんの人を殺したのか
じじい:はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を
メロス:おどろいた。国王は乱心か
じじい:いいえ、乱心ではございませぬ
じじい:人を、信ずる事が出来ぬ、というのです
じじい:このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります
じじい:御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます
じじい:きょうは、六人殺されました
メロス:呆れた王だ
メロス:生かして置けぬ
:ナレーション部
ナレーション:メロスは、単純な男であった
ナレーション:買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った
ナレーション:たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された
ナレーション:調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった
ナレーション:メロスは、王の前に引き出された
:セリフ部
おうさま:この短刀で何をするつもりであったか。言え!
メロス:市を暴君の手から救うのだ
おうさま:おまえがか?
おうさま:仕方の無いやつじゃ
おうさま:おまえには、わしの孤独がわからぬ
メロス:言うな!
メロス:人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ
メロス:王は、民の忠誠をさえ疑って居られる
おうさま:疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ
おうさま:人の心は、あてにならない
おうさま:人間は、もともと私慾のかたまりさ
おうさま:信じては、ならぬ
おうさま:わしだって、平和を望んでいるのだが
メロス:なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か
メロス:罪の無い人を殺して、何が平和だ
おうさま:だまれ、下賤の者
おうさま:口では、どんな清らかな事でも言える
おうさま:わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ
おうさま:おまえだって、いまに、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ
メロス:ああ、王は悧巧だ
メロス:自惚ているがよい
メロス:私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない
メロス:ただ、――
メロス:ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい
メロス:たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです
メロス:三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます
おうさま:ばかな
おうさま:とんでもない嘘うそを言うわい
おうさま:逃がした小鳥が帰って来るというのか
メロス:そうです
メロス:帰って来るのです
メロス:私は約束を守ります
メロス:私を、三日間だけ許して下さい
メロス:妹が、私の帰りを待っているのだ
メロス:そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます
メロス:私の無二の友人だ
メロス:あれを、人質としてここに置いて行こう
メロス:私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい
メロス:たのむ、そうして下さい
:おうさまこころの声(リバーブ)
おうさま:(生意気なことを言うわい)
おうさま:(どうせ帰って来ないにきまっている)
おうさま:(この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い)
おうさま:(人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ)
おうさま:(世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ)
:セリフ部
おうさま:願いを、聞いた
おうさま:その身代りを呼ぶがよい
おうさま:三日目には日没までに帰って来い
おうさま:おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ
おうさま:ちょっとおくれて来るがいい
おうさま:おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ
メロス:なに、何をおっしゃる
おうさま:はは
おうさま:いのちが大事だったら、おくれて来い
おうさま:おまえの心は、わかっているぞ
:ナレーション部
ナレーション:メロスは口惜しく、地団駄踏んだ
ナレーション:ものも言いたくなくなった
ナレーション:竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された
ナレーション:暴君ディオニスの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた
ナレーション:メロスは、友に一切の事情を語った
ナレーション:セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた
ナレーション:友と友の間は、それでよかった
ナレーション:セリヌンティウスは、縄打たれた
ナレーション:メロスは、すぐに出発した
ナレーション:初夏、満天の星である