台本概要
207 views
タイトル | 終わらない御伽噺を、もう一度 |
---|---|
作者名 | Alice (@Alice15827178) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
「俺のために、俺を殺してくれ」 「殺すくらいなら、死んだ方がいい!!」 吸血鬼ファンタジー×ラブストーリー 第二弾 『御伽噺に幕切れを』の続編ですが、これ単体でも読めるかと思います (M)はモノローグです ☆お願い☆ キャスト様の性別不問 アドリブ可 世界観が崩れるような大幅な改変のみ不可 どなた様も自由に演じてください 207 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
テイル | 男 | 70 | 英語表記:tale。 元・吸血鬼ハンター。 既に死んでおり魂だけの存在。 フィンには姿が見えており会話もできる。 年齢設定自由。 |
フィン | 女 | 76 | 英語表記:fin 。吸血鬼の生き残り。 吸血衝動を克服している。 年齢設定自由。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
フィン:むかしむかしのお話です。
フィン:瀕死の重症を負った1匹の吸血鬼は、街を彷徨っているところを、1人の吸血鬼ハンターに助けられました。
テイル:天敵の施しを受けてまで生きる事を拒んだ吸血鬼は死のうとしましたが、吸血鬼ハンターがそれを許しませんでした。
テイル:彼は、自分の目的のために吸血鬼を利用していたのです。
フィン:人に飼い慣らされ、利用されていることに絶望した吸血鬼でしたが、吸血鬼ハンターが時折見せる優しさに次第に心を開き始めました。
テイル:吸血鬼ハンターもまた、吸血鬼に好意を抱くようになり、いつしか二人は惹かれあい、そして結ばれました。
フィン:けれど想いが通じ合ったのも束の間…
フィン:吸血鬼ハンターは吸血鬼を守って死んでしまいました。
0:
テイル:これは、そんな二人のその後の御伽噺…
0:
0:
0:海の見える街外れの丘の上
0:ひっそりと建てられた小さなお墓
0:
テイル:死んでからもこんな綺麗な月夜が見れるなんてな…
テイル:景色の良いところに墓建ててくれて感謝するよ。
テイル:いるんだろ?
フィン:…何よ?気づいてたの?
テイル:気配消すの上手くなったな。
テイル:けど、俺がわからないわけないだろう。
フィン:あっそ。
0:
0:フィンが歩いてくる
0:
テイル:それにしてもまた来たのか?この前きたばかり…
フィン:(遮って)うるさい。
フィン:いつどこに行こうが私の勝手でしょ?
フィン:私はもう、あんたに飼われてるわけじゃないんだから。
テイル:飼われてるわけじゃないのに、よく来るな?
テイル:せっかく吸血衝動も無くなって、自由になったってのに物好きなやつだ。
フィン:相変わらず嫌味な男ね。
テイル:お互いさまだな。
テイル:お前も相変わらず口が悪い。
テイル:そんなんじゃいつまで経っても、嫁の貰い手が見つからないぞ。
フィン:あんたにそんなこと言われる筋合いないわよ。
テイル:ごもっともだ。
テイル:まぁでも、俺が買ってやったブレスレットを今でも大事そうにつけてるのは、可愛げがあるけどな?
フィン:なっ…
フィン:いいでしょ…!?別に…
フィン:そっちこそ、あの世でモテないから、いつまでも現世に止まってるんじゃないの?
テイル:ふっ…
フィン:何よ…?
テイル:…いや?ここにいたらお前に会えるからな。
テイル:あの世でモテるより、そっちの方がずっといい。
フィン:っ…、急に、なに、言ってんのよ。
フィン:女々しい男はモテない、わよ…
テイル:構わないよ、お前がいてくれれば。
フィン:…テイル、あんた死んでからずいぶん口が軽くなったんじゃない…?
テイル:そう言うフィンも、ずいぶん素直になったな。
フィン:…
テイル:…
フィン:ふふ‥っ
テイル:ははっ
0:
フィン:(M)夜の冷気を孕んだ心地いい風が、私達を包み込む。
フィン:テイルが死んでから、どれくらい経っただろう…
フィン:生きていた頃は、力で押さえつけられて、ぶつかり合ってばかりいた吸血鬼ハンターのテイルと、こんな風に話ができる日がくるなんて思ってもみなかった。
フィン:テイルが死んだあの日から続く幸せな時間。
フィン:絶対言えないけど、心のどこかで思ってる。
フィン:こんな日がずっと続いてほしいって。
0:
テイル:フィン、しばらくここには来るな。
フィン:…急に何?
フィン:テイルの言うこと聞く筋合いなんて無いって、言ってるでしょ?
テイル:そうじゃない。いいから聞け。
テイル:最近妙な奴らがこの近くをうろついている。
フィン:だから?
テイル:俺の墓を探してる。
フィン:…なんの、ために?
テイル:…(言い淀むような間)
テイル:わからない。
フィン:テイル、見くびらないで。
フィン:そんな嘘が通じると思ってるの?
テイル:…はぁ(ため息)
テイル:下手に隠した方が逆効果になりそうだ。
フィン:何年の付き合いだと思ってるのよ。
テイル:そう…だな。
テイル:落ち着いて聞いてくれ。
テイル:昔からこんな話がある。
テイル:『愛しあった人間の番(つがい)の血を飲んだ吸血鬼は、血を必要としなくなり、その吸血鬼の血肉には、不老不死の力が宿る』
フィン:何それ…
テイル:本当かどうかはわからない。
テイル:何せ実例がない。
テイル:だが、信じてる人間はごまんといた。
テイル:不老不死に目が眩み、吸血鬼ハンターになるやつもな。
フィン:…っ
テイル:返り討ちにあって殺される奴らも多かったが、飼い殺しにされて、無惨な最期を迎えた吸血鬼も見てきたよ…
テイル:吸血鬼狩りに拍車がかかったのも、この頃からだった…
フィン:にん…げん…!!
テイル:落ち着け、フィン。
テイル:もう何十年も前の話だ。
フィン:ならなんで今そんなこと言うの…!?
フィン:なんの関係があるのよ!?
テイル:どこから聞きつけたか知らないが、絶滅したと思われてた吸血鬼が、吸血衝動を克服して生きていると噂が流れている。
フィン:っ…!
テイル:奴らの目的はおそらくお前だ、フィン。
テイル:俺がその番(つがい)ってのまでバレてる。
テイル:俺を囮にすれば、お前が出てくると踏んでる阿呆どもがいるんだ。
テイル:ここは危ない。
フィン:そんな奴ら私が殺してやる!
テイル:やめろ。
フィン:なんで止めるの…!?
テイル:お前の存在はまだ噂程度だ。
テイル:今、人間を殺したら、確実に存在を知られるぞ。
フィン:…
テイル:大丈夫だ。
テイル:いずれ熱り(ほとぼり)も冷める。
テイル:それまで大人しく身を隠してろ。
フィン:…わかった。
0:
フィン:(M)それから私はしばらくの間、街を離れた。
フィン:人間に対する怒りは収まらなかったけれど、感情に任せて動けば、奴らの思い通りになってしまう。
フィン:テイルの言うように、無駄な争いはすべきじゃない。
フィン:私は身を引いたものの、もどかしい思いを抱えたまま時間だけが過ぎた。
フィン:そんな、とある夕暮れのことだった。
0:
テイル:フィン…
フィン:え?テイル?
フィン:どうしてここに?
テイル:フィン…、に…げ…
フィン:なに?よく聞こえない。
テイル:(被せて)フィン!逃げろ!!
フィン:テイル!?(目が覚める)
フィン:はぁ…はぁ…はぁ…
フィン:え…あ…、ゆ…め?
フィン:なに…今の夢…?嫌な、感じ…
フィン:テイル…に何かあった…?
フィン:行かなきゃ…!
0:
0:街外れの丘
0:テイルのお墓前
0:
フィン:っ…、何これ、お墓が暴(あば)かれて…、テイルの身体がなくなってる…
フィン:テイルが言ってた奴らが本当に来たの…?
0:
フィン:テイル!?テイル!?
フィン:いるんでしょ!?どこ!?返事してよ!
0:
0:
0:間
0:
0:
フィン:いない…そんな…
フィン:いったいどこに…
テイル:見つ…けた…(虚ろな声でフィンの背後から声をかける)
フィン:テイル!良かった…どこ行って…(振り返りながら)
フィン:…っ!(息を呑む音)
テイル:う…あ…
フィン:何…これ?どうなってるの…?
フィン:なんでテイルの身体が動いてるのよ…!?
0:
フィン:(M)ありえない光景が目の前に広がっていた。
フィン:死んだはずのテイルの身体が、覚束ない足取りで、フラフラとこちらに近づいてくる。
フィン:目は虚ろで光が宿っていない。
フィン:まるで人形だ…
フィン:目の前まで来たテイルの冷たい手が、ものすごい力で私を引っ張っていく
0:
テイル:こ…い…
フィン:ひっ…やめて!離して!
フィン:テイル…、私がわからないの!?
テイル:うる…さい…っ(フィンの頬を叩く)
フィン:あぅ…っ
テイル:お前は…不老…不死の…力…(引きづって連れて行こうとする)
フィン:嫌ぁ…!離して…!やだ…!
テイル:大人しく…しろ…
フィン:やめて!ブレスレット引っ張らないで…壊れちゃ…あ…!
0:
フィン:(M)人間とは思えない腕力で引っ張られたブレスレットは粉々に砕け、テイルへと降りかかった。
フィン:月明かりに怪しく煌めく破片に、顔を歪めるのが目に入る。
フィン:反動でよろめいた私は、反射的に離れようとしたが、テイルの様子がどこかおかしかった。
0:
テイル:っ…、う…あ…
テイル:ここは…どこだ?
フィン:テイル…?
テイル:その声、フィン…か?
フィン:私のことわかる…の…?
テイル:あぁ…
フィン:良かった…意識が戻って…
テイル:(独り言のように)俺どうして…?
テイル:そうだ。
テイル:墓を暴かれて、身体ごと連れて行かれて…
テイル:それからの記憶がない…
テイル:っ…なんだこれ…身体がおかし…?
フィン:どうしたの…?
テイル:フィン、離れろ…
フィン:え?
テイル:離れろ!(フィンをつき飛ばす)
フィン:きゃあ…!
テイル:くっ…なんだ…?身体がいう事をきかない…
フィン:テイル…!(駆け寄ろうとする)
テイル:くるな!
フィン:っ…!
テイル:(頭を抱え苦しんでいる)
テイル:うるさい…!うるさい!黙れ!
テイル:やめろ…!フィンは連れて行かない!
テイル:こいつはそんなんじゃない!
テイル:ただの吸血鬼だ!お前達に渡すものか!
フィン:なに…?どうしたの!?
テイル:頭の中で…声が聞こえる。
テイル:お前を連れて来いって。
テイル:気を抜いたらまたすぐ意識が持って行かれそうだ。
フィン:そんな…
テイル:フィン…それ以上俺に近づくな。
テイル:身体が勝手に動いて、お前を捕まえようとするんだ。
テイル:洗脳みたいなもの…か…?
フィン:なんで…
フィン:なんでこんなひどいことを…
フィン:…許さない。テイルを弄んだ人間ども一人残らず
殺してやる…!
テイル:やめろ!
フィン:なんで止めるの!?
フィン:テイルがこんな目に合わされて許せるわけない!
フィン:それともなに?
フィン:こんなになってもまだ人間が、同族が大事ってわけ…!?
テイル:違う!
フィン:何が違うの!!
テイル:俺はもうお前に人を殺して欲しくないんだ!!
フィン:…っ
テイル:せっかく吸血を克服できて、人間を手をかけなくて良くなったんだ。
テイル:お前の手をもう血で汚して欲しくない…!
フィン:…なによ、それ…
フィン:そんなこと言われたら…、何もできない…じゃない…
テイル:ごめんな…フィン
テイル:お前ばかりにいつも辛い思いさせてごめん…
フィン:私は、どうしたらいいのよ…
テイル:…
テイル:俺が受け止めてやる…
テイル:お前の怒りも悲しみも、全部俺が受け止める。
テイル:だから…
テイル:俺を殺せ。
フィン:…え?
フィン:何言って…
フィン:笑えない冗談やめてよ…
フィン:私がテイルを殺せるわけ無いじゃない!
テイル:じゃあ言い方を変える。
テイル:俺のために俺を殺してくれ。
フィン:いや…
テイル:その頬の傷、俺がやったんだろう?
テイル:このままじゃあ、俺はまたお前を傷つける。
フィン:いや…!
テイル:それどころか、俺の手でお前を…
フィン:(遮って)いや!絶対いや!!
フィン:できるわけない!
テイル:フィン!
テイル:俺はもう死んでるんだ!
フィン:だったら…だったら私を殺してよ!
フィン:テイルを殺すくらいなら、死んだ方がいい!!
テイル:わがまま言うな!!
テイル:俺をこんな風にした奴らは、お前の身体を欲しがってる!
テイル:不老不死の話が本当かなんてどうでもいい。
テイル:フィンを好きにされるなんて冗談じゃない…!
テイル:絶対に渡さない。
フィン:ずるいよ…自分ばっかり…
フィン:いつだって…私の言うこと聞いてくれない…
テイル:俺がそういうやつだって知ってるだろ?
テイル:何年の付き合いだと思ってるんだ…?
フィン:…っ
テイル:殺せ!フィン!
フィン:あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!
0:
テイル:(M)フィンは俺の身体にしがみつくと、顔を首元に埋め肩を震わせた。
テイル:暖かい雫が俺の肩を濡らし、苦しそうな嗚咽が漏れ出す。
テイル:爪を立て、必死に堪えながら、牙を少しずつ首筋に沈めてくれる。
テイル:牙の深度に合わせて、頭の中で響いていた声が消え、言う事を聞かなかった身体は、次第に大人しくなっていった。
0:
テイル:あ…りがとな…フィン
フィン:うるさい…
テイル:ごめんな…、また泣かせ…て…
フィン:ほんと…よ…
フィン:いつまでも世話の焼ける男ね…
フィン:あんたみたいな自分勝手なやつ、人間の手には余るのよ…
テイル:ははっ…、ひでぇ言われよう…
フィン:だから、テイルの全部私がもらう。
フィン:身体も魂も。
フィン:もう2度と誰にも触らせない。
テイル:あぁ、全部終わらせよう。
0:
0:
テイル:(M)静寂に包まれ、黒く染まる丘の上に、フィンが放った赤が静かに灯る。
テイル:俺の足元から立ち上る小さなそれは、少しずつ大きくなり、俺の身体を暖かく包み込んでいく。
テイル:ふと顔を上げると、ゆらめく赤の向こうで、俺を見つめながらフィンが何か言っているのが見えた。
0:
フィン:ねぇ、テイル
フィン:私-----(間でも、何か言葉を入れてもいいです)
0:
テイル:次の瞬間、俺の身体は赤に包まれ崩れ落ち、月のない暗い夜空を、一晩中明るく照らし続けた。
0:
0:
0:
0:長めの間
0:
0:
0:
0:街外れの丘の上で
0:首にかかっているロケット型ネックレスを撫でているフィン
0:
フィン:今夜も綺麗な月夜だね。
フィン:旅立ちには絶好の夜だと思わない?
0:
フィン:…ねぇ、テイル
フィン:私忘れないよ。
フィン:最後に感じたテイルの温もり。
フィン:もう触れられないし、声も聞こえないけど、これからはずっと一緒。
フィン:私はもうテイルのものじゃない。
フィン:テイルが、私のものになったの。
フィン:もう2度と離してなんてあげないから、覚悟してよね。
フィン:あっ、私の首にかかってるからって、噛みつかないでよ?
0:
フィン:(M)『人に生かされた吸血鬼』のお話はこれでおしまい。
フィン:これからは、
フィン:『愛する人と一緒に生きる吸血鬼』の物語を一緒に始めよう。
0:
フィン:(M)タイトルはそう…
0:
0:
テイル:『終わらない御伽噺を、もう一度』
フィン:むかしむかしのお話です。
フィン:瀕死の重症を負った1匹の吸血鬼は、街を彷徨っているところを、1人の吸血鬼ハンターに助けられました。
テイル:天敵の施しを受けてまで生きる事を拒んだ吸血鬼は死のうとしましたが、吸血鬼ハンターがそれを許しませんでした。
テイル:彼は、自分の目的のために吸血鬼を利用していたのです。
フィン:人に飼い慣らされ、利用されていることに絶望した吸血鬼でしたが、吸血鬼ハンターが時折見せる優しさに次第に心を開き始めました。
テイル:吸血鬼ハンターもまた、吸血鬼に好意を抱くようになり、いつしか二人は惹かれあい、そして結ばれました。
フィン:けれど想いが通じ合ったのも束の間…
フィン:吸血鬼ハンターは吸血鬼を守って死んでしまいました。
0:
テイル:これは、そんな二人のその後の御伽噺…
0:
0:
0:海の見える街外れの丘の上
0:ひっそりと建てられた小さなお墓
0:
テイル:死んでからもこんな綺麗な月夜が見れるなんてな…
テイル:景色の良いところに墓建ててくれて感謝するよ。
テイル:いるんだろ?
フィン:…何よ?気づいてたの?
テイル:気配消すの上手くなったな。
テイル:けど、俺がわからないわけないだろう。
フィン:あっそ。
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0:フィンが歩いてくる
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テイル:それにしてもまた来たのか?この前きたばかり…
フィン:(遮って)うるさい。
フィン:いつどこに行こうが私の勝手でしょ?
フィン:私はもう、あんたに飼われてるわけじゃないんだから。
テイル:飼われてるわけじゃないのに、よく来るな?
テイル:せっかく吸血衝動も無くなって、自由になったってのに物好きなやつだ。
フィン:相変わらず嫌味な男ね。
テイル:お互いさまだな。
テイル:お前も相変わらず口が悪い。
テイル:そんなんじゃいつまで経っても、嫁の貰い手が見つからないぞ。
フィン:あんたにそんなこと言われる筋合いないわよ。
テイル:ごもっともだ。
テイル:まぁでも、俺が買ってやったブレスレットを今でも大事そうにつけてるのは、可愛げがあるけどな?
フィン:なっ…
フィン:いいでしょ…!?別に…
フィン:そっちこそ、あの世でモテないから、いつまでも現世に止まってるんじゃないの?
テイル:ふっ…
フィン:何よ…?
テイル:…いや?ここにいたらお前に会えるからな。
テイル:あの世でモテるより、そっちの方がずっといい。
フィン:っ…、急に、なに、言ってんのよ。
フィン:女々しい男はモテない、わよ…
テイル:構わないよ、お前がいてくれれば。
フィン:…テイル、あんた死んでからずいぶん口が軽くなったんじゃない…?
テイル:そう言うフィンも、ずいぶん素直になったな。
フィン:…
テイル:…
フィン:ふふ‥っ
テイル:ははっ
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フィン:(M)夜の冷気を孕んだ心地いい風が、私達を包み込む。
フィン:テイルが死んでから、どれくらい経っただろう…
フィン:生きていた頃は、力で押さえつけられて、ぶつかり合ってばかりいた吸血鬼ハンターのテイルと、こんな風に話ができる日がくるなんて思ってもみなかった。
フィン:テイルが死んだあの日から続く幸せな時間。
フィン:絶対言えないけど、心のどこかで思ってる。
フィン:こんな日がずっと続いてほしいって。
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テイル:フィン、しばらくここには来るな。
フィン:…急に何?
フィン:テイルの言うこと聞く筋合いなんて無いって、言ってるでしょ?
テイル:そうじゃない。いいから聞け。
テイル:最近妙な奴らがこの近くをうろついている。
フィン:だから?
テイル:俺の墓を探してる。
フィン:…なんの、ために?
テイル:…(言い淀むような間)
テイル:わからない。
フィン:テイル、見くびらないで。
フィン:そんな嘘が通じると思ってるの?
テイル:…はぁ(ため息)
テイル:下手に隠した方が逆効果になりそうだ。
フィン:何年の付き合いだと思ってるのよ。
テイル:そう…だな。
テイル:落ち着いて聞いてくれ。
テイル:昔からこんな話がある。
テイル:『愛しあった人間の番(つがい)の血を飲んだ吸血鬼は、血を必要としなくなり、その吸血鬼の血肉には、不老不死の力が宿る』
フィン:何それ…
テイル:本当かどうかはわからない。
テイル:何せ実例がない。
テイル:だが、信じてる人間はごまんといた。
テイル:不老不死に目が眩み、吸血鬼ハンターになるやつもな。
フィン:…っ
テイル:返り討ちにあって殺される奴らも多かったが、飼い殺しにされて、無惨な最期を迎えた吸血鬼も見てきたよ…
テイル:吸血鬼狩りに拍車がかかったのも、この頃からだった…
フィン:にん…げん…!!
テイル:落ち着け、フィン。
テイル:もう何十年も前の話だ。
フィン:ならなんで今そんなこと言うの…!?
フィン:なんの関係があるのよ!?
テイル:どこから聞きつけたか知らないが、絶滅したと思われてた吸血鬼が、吸血衝動を克服して生きていると噂が流れている。
フィン:っ…!
テイル:奴らの目的はおそらくお前だ、フィン。
テイル:俺がその番(つがい)ってのまでバレてる。
テイル:俺を囮にすれば、お前が出てくると踏んでる阿呆どもがいるんだ。
テイル:ここは危ない。
フィン:そんな奴ら私が殺してやる!
テイル:やめろ。
フィン:なんで止めるの…!?
テイル:お前の存在はまだ噂程度だ。
テイル:今、人間を殺したら、確実に存在を知られるぞ。
フィン:…
テイル:大丈夫だ。
テイル:いずれ熱り(ほとぼり)も冷める。
テイル:それまで大人しく身を隠してろ。
フィン:…わかった。
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フィン:(M)それから私はしばらくの間、街を離れた。
フィン:人間に対する怒りは収まらなかったけれど、感情に任せて動けば、奴らの思い通りになってしまう。
フィン:テイルの言うように、無駄な争いはすべきじゃない。
フィン:私は身を引いたものの、もどかしい思いを抱えたまま時間だけが過ぎた。
フィン:そんな、とある夕暮れのことだった。
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テイル:フィン…
フィン:え?テイル?
フィン:どうしてここに?
テイル:フィン…、に…げ…
フィン:なに?よく聞こえない。
テイル:(被せて)フィン!逃げろ!!
フィン:テイル!?(目が覚める)
フィン:はぁ…はぁ…はぁ…
フィン:え…あ…、ゆ…め?
フィン:なに…今の夢…?嫌な、感じ…
フィン:テイル…に何かあった…?
フィン:行かなきゃ…!
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0:街外れの丘
0:テイルのお墓前
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フィン:っ…、何これ、お墓が暴(あば)かれて…、テイルの身体がなくなってる…
フィン:テイルが言ってた奴らが本当に来たの…?
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フィン:テイル!?テイル!?
フィン:いるんでしょ!?どこ!?返事してよ!
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0:間
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フィン:いない…そんな…
フィン:いったいどこに…
テイル:見つ…けた…(虚ろな声でフィンの背後から声をかける)
フィン:テイル!良かった…どこ行って…(振り返りながら)
フィン:…っ!(息を呑む音)
テイル:う…あ…
フィン:何…これ?どうなってるの…?
フィン:なんでテイルの身体が動いてるのよ…!?
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フィン:(M)ありえない光景が目の前に広がっていた。
フィン:死んだはずのテイルの身体が、覚束ない足取りで、フラフラとこちらに近づいてくる。
フィン:目は虚ろで光が宿っていない。
フィン:まるで人形だ…
フィン:目の前まで来たテイルの冷たい手が、ものすごい力で私を引っ張っていく
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テイル:こ…い…
フィン:ひっ…やめて!離して!
フィン:テイル…、私がわからないの!?
テイル:うる…さい…っ(フィンの頬を叩く)
フィン:あぅ…っ
テイル:お前は…不老…不死の…力…(引きづって連れて行こうとする)
フィン:嫌ぁ…!離して…!やだ…!
テイル:大人しく…しろ…
フィン:やめて!ブレスレット引っ張らないで…壊れちゃ…あ…!
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フィン:(M)人間とは思えない腕力で引っ張られたブレスレットは粉々に砕け、テイルへと降りかかった。
フィン:月明かりに怪しく煌めく破片に、顔を歪めるのが目に入る。
フィン:反動でよろめいた私は、反射的に離れようとしたが、テイルの様子がどこかおかしかった。
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テイル:っ…、う…あ…
テイル:ここは…どこだ?
フィン:テイル…?
テイル:その声、フィン…か?
フィン:私のことわかる…の…?
テイル:あぁ…
フィン:良かった…意識が戻って…
テイル:(独り言のように)俺どうして…?
テイル:そうだ。
テイル:墓を暴かれて、身体ごと連れて行かれて…
テイル:それからの記憶がない…
テイル:っ…なんだこれ…身体がおかし…?
フィン:どうしたの…?
テイル:フィン、離れろ…
フィン:え?
テイル:離れろ!(フィンをつき飛ばす)
フィン:きゃあ…!
テイル:くっ…なんだ…?身体がいう事をきかない…
フィン:テイル…!(駆け寄ろうとする)
テイル:くるな!
フィン:っ…!
テイル:(頭を抱え苦しんでいる)
テイル:うるさい…!うるさい!黙れ!
テイル:やめろ…!フィンは連れて行かない!
テイル:こいつはそんなんじゃない!
テイル:ただの吸血鬼だ!お前達に渡すものか!
フィン:なに…?どうしたの!?
テイル:頭の中で…声が聞こえる。
テイル:お前を連れて来いって。
テイル:気を抜いたらまたすぐ意識が持って行かれそうだ。
フィン:そんな…
テイル:フィン…それ以上俺に近づくな。
テイル:身体が勝手に動いて、お前を捕まえようとするんだ。
テイル:洗脳みたいなもの…か…?
フィン:なんで…
フィン:なんでこんなひどいことを…
フィン:…許さない。テイルを弄んだ人間ども一人残らず
殺してやる…!
テイル:やめろ!
フィン:なんで止めるの!?
フィン:テイルがこんな目に合わされて許せるわけない!
フィン:それともなに?
フィン:こんなになってもまだ人間が、同族が大事ってわけ…!?
テイル:違う!
フィン:何が違うの!!
テイル:俺はもうお前に人を殺して欲しくないんだ!!
フィン:…っ
テイル:せっかく吸血を克服できて、人間を手をかけなくて良くなったんだ。
テイル:お前の手をもう血で汚して欲しくない…!
フィン:…なによ、それ…
フィン:そんなこと言われたら…、何もできない…じゃない…
テイル:ごめんな…フィン
テイル:お前ばかりにいつも辛い思いさせてごめん…
フィン:私は、どうしたらいいのよ…
テイル:…
テイル:俺が受け止めてやる…
テイル:お前の怒りも悲しみも、全部俺が受け止める。
テイル:だから…
テイル:俺を殺せ。
フィン:…え?
フィン:何言って…
フィン:笑えない冗談やめてよ…
フィン:私がテイルを殺せるわけ無いじゃない!
テイル:じゃあ言い方を変える。
テイル:俺のために俺を殺してくれ。
フィン:いや…
テイル:その頬の傷、俺がやったんだろう?
テイル:このままじゃあ、俺はまたお前を傷つける。
フィン:いや…!
テイル:それどころか、俺の手でお前を…
フィン:(遮って)いや!絶対いや!!
フィン:できるわけない!
テイル:フィン!
テイル:俺はもう死んでるんだ!
フィン:だったら…だったら私を殺してよ!
フィン:テイルを殺すくらいなら、死んだ方がいい!!
テイル:わがまま言うな!!
テイル:俺をこんな風にした奴らは、お前の身体を欲しがってる!
テイル:不老不死の話が本当かなんてどうでもいい。
テイル:フィンを好きにされるなんて冗談じゃない…!
テイル:絶対に渡さない。
フィン:ずるいよ…自分ばっかり…
フィン:いつだって…私の言うこと聞いてくれない…
テイル:俺がそういうやつだって知ってるだろ?
テイル:何年の付き合いだと思ってるんだ…?
フィン:…っ
テイル:殺せ!フィン!
フィン:あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!
0:
テイル:(M)フィンは俺の身体にしがみつくと、顔を首元に埋め肩を震わせた。
テイル:暖かい雫が俺の肩を濡らし、苦しそうな嗚咽が漏れ出す。
テイル:爪を立て、必死に堪えながら、牙を少しずつ首筋に沈めてくれる。
テイル:牙の深度に合わせて、頭の中で響いていた声が消え、言う事を聞かなかった身体は、次第に大人しくなっていった。
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テイル:あ…りがとな…フィン
フィン:うるさい…
テイル:ごめんな…、また泣かせ…て…
フィン:ほんと…よ…
フィン:いつまでも世話の焼ける男ね…
フィン:あんたみたいな自分勝手なやつ、人間の手には余るのよ…
テイル:ははっ…、ひでぇ言われよう…
フィン:だから、テイルの全部私がもらう。
フィン:身体も魂も。
フィン:もう2度と誰にも触らせない。
テイル:あぁ、全部終わらせよう。
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テイル:(M)静寂に包まれ、黒く染まる丘の上に、フィンが放った赤が静かに灯る。
テイル:俺の足元から立ち上る小さなそれは、少しずつ大きくなり、俺の身体を暖かく包み込んでいく。
テイル:ふと顔を上げると、ゆらめく赤の向こうで、俺を見つめながらフィンが何か言っているのが見えた。
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フィン:ねぇ、テイル
フィン:私-----(間でも、何か言葉を入れてもいいです)
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テイル:次の瞬間、俺の身体は赤に包まれ崩れ落ち、月のない暗い夜空を、一晩中明るく照らし続けた。
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0:長めの間
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0:街外れの丘の上で
0:首にかかっているロケット型ネックレスを撫でているフィン
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フィン:今夜も綺麗な月夜だね。
フィン:旅立ちには絶好の夜だと思わない?
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フィン:…ねぇ、テイル
フィン:私忘れないよ。
フィン:最後に感じたテイルの温もり。
フィン:もう触れられないし、声も聞こえないけど、これからはずっと一緒。
フィン:私はもうテイルのものじゃない。
フィン:テイルが、私のものになったの。
フィン:もう2度と離してなんてあげないから、覚悟してよね。
フィン:あっ、私の首にかかってるからって、噛みつかないでよ?
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フィン:(M)『人に生かされた吸血鬼』のお話はこれでおしまい。
フィン:これからは、
フィン:『愛する人と一緒に生きる吸血鬼』の物語を一緒に始めよう。
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フィン:(M)タイトルはそう…
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テイル:『終わらない御伽噺を、もう一度』