台本概要

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タイトル [1:1]とある兄妹の話
作者名 夜霧ミスト@夜霧姫  (@YogiriMist)
ジャンル その他
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 東北のとある兄妹のお話・・・

台本使用規定:
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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
91
94
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台本本編

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0:とある川辺にて 兄:・・・今日も今日とて良い天気だな 妹:そうですね、兄(あに)様 兄:こうも良い天気だと、世が乱れているのは嘘のようであるな 妹:・・・そうですね 兄:・・・のう 妹:はい 兄:もし、そなたは・・・世が乱れておらず平和であったら、何をしたい 妹:・・・ 兄:私は・・・そうだな・・・畑いじり・・・とか良さそうだな 妹:わたくしは、兄様と一緒にいたいです 兄:・・・私とか 妹:はい 兄:ふふふ、そなた、私のことを何と思うておる 妹:この世で一番敬愛する兄様でございます 兄:悪い気はせぬな 妹:兄様、お慕いしております 兄:我ら兄妹ぞ 妹:それでも、でございます 兄:そうか 妹:・・・ 兄:・・・それにしても、良い天気よ 妹:そうですね 兄:この世も、空のように晴れ渡っていると良いのだがなぁ・・・ 0:妹ナレーション 妹:これは、とある時代のとある兄妹のお話である・・・ 0:数年後・・・ 妹:・・・結婚、でございますか 兄:そうだ 妹:・・・ 兄:・・・ 妹:わたくしは、兄(あに)様と離れとうございませぬ 兄:・・・それは、私も、であるが 妹:ならば・・・! 兄:・・・わがままを言うでない 妹:しかし 兄:・・・わかってくれ、これは家のため、でもあるのだ 妹:・・・ 兄:我が家を繁栄させるためには・・・この道しかない 妹:政略・・・結婚・・・ 兄:私とて辛いのだ・・・そなたと離れるのは・・・しかし 妹:・・・ 兄:すまぬ・・・ 妹:・・・ 兄:・・・ 妹:わたくしとて、乱世の女・・・役目はわかっています 兄:・・・ 妹:しかし、女である前に兄様の妹なのです・・・ 妹:兄との別れを惜しまぬ妹がおりましょうか 兄:わかっておる・・・わかっておるが 妹:正直なところ、行きたくありませぬ 兄:・・・ 妹:しかしながら、わたくしが嫁ぐことで、兄様の救けとなるなら・・・ 兄:・・・ 妹:・・・ 兄:文(ふみ)を書く 妹:・・・ 兄:私は、そなたの身を案じておる 妹:・・・それならば、寂しくはありませぬね 兄:・・・ 妹:・・・わたくしも、兄様に文を書きます 兄:・・・ 妹:わたくしとて、兄様の身を案じておりますゆえ 兄:・・・ふふ、そうか 0:妹ナレーション 妹:こうして、妹は兄の元を離れ、他家の女として生きていくことになりました 0:手紙 兄:(手紙)我が妹君(いもうとぎみ)へ・・・と 妹:(手紙)親愛なる兄様へ・・・ 兄:ふふふ・・・向こうでも、うまくやっておるようだ 妹:兄様も壮健で何より・・・ 兄:(手紙)夫殿や舅殿とうまくやれているようで何よりである 妹:ふふ、兄様・・・わたくしはこちらでもよくされていましてよ 妹:(手紙)夫婦仲良好にて・・・ 0:妹ナレーション 妹:両家の関係は良好に保たれているかに見えました 妹:・・・しかし、乱世の荒波は、二人につかの間の平穏を許してはくれませんでした 0:激突 兄:・・・まさか、ここまで追い詰められるとは 0:妹ナレーション 妹:兄と、妹の嫁ぎ先が戦になってしまったのです 妹:兄は勇猛果敢に戦いましたが次第に戦況は不利に 妹:兄は窮地に立たされることになります 0:妹登場 兄:為すすべなしか 妹:者ども、道を開けよ! 兄:むむ、あれは 0:静寂が流れる 妹:両軍とも、剣を収めよ! 0:一本の矢が妹めがけ飛んでくる 兄:ああッ! 0:妹、矢を切り払い一喝 妹:最上の兵よ!我が姿、忘れたとは言わせぬぞ! 妹:伊達の兵らよ!そなたらは主君が正室の顔を見知らぬか、痴れ者め! 兄:・・・義姫 0:妹ナレーション 妹:そう、これは東北の謀将、最上義光(よしあき)とその妹、義姫のお話 0:タイトル「とある兄妹の話」 妹:兄上、遅参の儀、御免あれ 兄:義姫・・・まことに義姫か 妹:お久しゅうございます、兄上 兄:・・・ 妹:兄上ともあろうお方が、ここまで苦戦なさるとは 兄:ふっ、輝宗殿が戦巧者であられるのよ 妹:・・・正室としては喜ばしい限りですが、そういうわけにも行きませぬな 兄:・・・いかがいたす 妹:夫殿に話をつけに行ってまいります 兄:単身で乗り込むつもりか 妹:ご心配には及びませぬ、では 兄:強くなったなぁ 0:数時間後・・・ 妹:輝宗様は撤兵をお決めになりました 兄:・・・ 妹:いかがなされた 兄:ふふ、強うなったな 妹:他家に嫁ぎ、生きていくためにはこうなるしかなかったのです 兄:いや、兄は嬉しく思うぞ 妹:・・・ 兄:それと同時に少し寂しくもある 妹:兄様 兄:・・・! 妹:わたくしは、いくら変わろうと兄様の妹でございます 兄:・・・そうだな 妹:ふふ、妹離れできていないのは、兄様の方でございましたわね 兄:ははは、返す言葉もないわ 妹:さて、わたくしはあちらへ帰ります 兄:ああ、元気でな 妹:文をしたためます 兄:こちらも同様だ 妹:では、お達者で 兄:義姫も・・・な 0:妹ナレーション 妹:こうして、最上家と伊達家の戦は一応の決着がつく 妹:これより数年、両家はぶつかることなく良好な関係を築いていた 0:手紙 兄:(手紙)我が妹、義姫へ・・・ 妹:(手紙)此度、伊達家は我が息子、政宗が継ぐこととなりました 兄:ほう、家督を継ぎしはあの長男坊か 妹:(手紙)兄上におかれましては・・・ 兄:ふふ、「こちらも元気である」・・・と 0:数カ月後 妹:(手紙)我が子、政宗は東北の統一を目指しているようです・・・もしや、最上家も・・・ 兄:ふむ、東北の統一とな・・・ううむ、「案ずるなかれ」・・・と 妹:(手紙)政宗が、輝宗様を射殺しました・・・これは政宗による謀略では・・・ 兄:・・・輝宗殿が二本松に拉致されたときのことか・・・話には聞き及んでいたが・・・ 兄:(手紙)今は気持ちを落ち着かせよ・・・ 0:妹ナレーション 妹:政宗による輝宗射殺事件以降、義姫は政宗に対する不信感を募らせていきます 妹:そして、ついに・・・ 0:伊達による大崎攻め 兄:ほう、伊達め、ついに我らが本家筋を攻めたか 兄:いくら甥といえど、これは看過できぬ 兄:・・・ふふ、覚悟はできておろうな? 0:妹ナレーション 妹:こうして、再び、伊達と最上は対峙することになったのです 0:大崎合戦 兄:ふふふ、甥御どの?最上が戦、馳走せん 兄:遠慮はいらぬ、存分に堪能せい 0:妹ナレーション 妹:伊達と最上の戦は、最上に軍配が上がる 妹:最上の戦に伊達は次第に窮地に立たされることになる 0:義姫登場 兄:伊達め、勢いはあると思うたが、ワシのほうが一枚も二枚も上手だったようだな 妹:道を開けよ! 兄:・・・この声は 妹:・・・兄上、お久しゅうございます 兄:・・・やはりな 妹:・・・ 兄:以前もこのようなことがあった 妹:しかし、此度は逆です 兄:・・・要件は何だ? 妹:単刀直入に言います 妹:兵を退いてください 兄:(被せて)断る 妹:・・・ 兄:先に仕掛けたは伊達である 兄:それに・・・ 妹:それに? 兄:戦況を見よ 兄:今は我らが優勢なのだ 兄:兵を退く道理などない 妹:・・・ 兄:・・・ 妹:わかりました 兄:・・・ 妹:兄上におかれましては、妹の嫁ぎ先を自らの手で滅ぼすと 兄:・・・ 妹:そして自らの手で妹の命を絶つと、そう申されるのですね 兄:そこまでは申しておらぬ 妹:いえ、申しておるのです 兄:伊達家を滅ぼしたところでお主は最上家に戻れば良い 妹:いいえ、そういうわけには参りませぬ 妹:伊達が滅べば私は敗者の妻!死をもってこの結末を見届けましょうや! 兄:・・・ 妹:然れども!それでは兄上はきっと不義理の烙印を押されるでしょうな! 妹:妹だけではなく!甥もその手で殺めるのですから! 妹:しかし、わたくしはそれを受け入れましょう 妹:それが戦国の女の努め! 妹:さぁ!その汚れた手で一思いにひねりつぶしてくださいまし! 兄:・・・わ、わかった!わかった!最上は兵を退く!それで良いだろう! 妹:・・・妹の言葉に耳を傾けていただき感謝の極み 兄:・・・まったく、強きおなごになったは良いが、私はこのようなおなごになってほしいと願った覚えはないぞ 妹:ふふ、稀代の謀将たる兄上にそこまで言われるは最上(さいじょう)の誉(ほまれ)ですね 兄:言いよるわ 0:妹ナレーション 妹:その後、最上義光は伊達家と停戦す・・・ 妹:そして・・・ 0:手紙 兄:我が敬愛する妹君、義姫殿に大崎家と伊達家の仲介をお願い申したき候・・・ 0:妹ナレーション 妹:最上義光は難航していた伊達家と大崎家の停戦の仲介を義姫に哀願している 0:兄ナレーション 兄:天下の趨勢は「羽柴秀吉」改め「豊臣秀吉」の物となった 兄:関白となり天下人となった秀吉は統一事業の総仕上げ・・・最後まで抵抗を続けていた北条家を攻める 0:妹ナレーション 妹:伊達家では波乱が起きる 0:報告を聞く兄 兄:ふむ、甥御殿が弟を殺害したと・・・ 兄:妹は無事であろうか・・・ 0:妹ナレーション 妹:巷では、母である義姫は長子である政宗よりも、次子の小次郎を溺愛し、政宗の小田原参陣時、毒殺しようとしたという話 妹:そして、政宗が弟・「伊達小次郎」を殺害したとの風聞があった・・・ 0:兄手紙 兄:妹におかれましては・・・と 0:妹ナレーション 妹:しかし・・・ 0:兄返信 兄:お気遣いありがたく・・・わたくしは無事でございます・・・か 0:妹ナレーション 妹:義姫と政宗の関係は良好であったとする説もある 0:兄手紙 兄:我が娘、駒姫はとても愛らしく、目に入れても痛くないほどかわいいおなごじゃ・・・と 0:手紙 妹:・・・兄様、娘をとても気に入ってる様子ですね 妹:良きことです・・・良きことですが・・・ 妹:姪とはいえ、少々妬いてしまいますね 妹:(手紙)兄上の娘、かわいいこと間違いないでしょう 妹:(手紙)なぜなら兄上の娘でございますゆえ 妹:・・・と 0:兄ナレーション 兄:しかしながら、悲劇が起こる 0:妹 妹:関白、豊臣秀次が謀反・・・? 0:兄ナレーション 兄:豊臣秀次が謀反の嫌疑をかけられ、蟄居(ちっきょ) 0:妹ナレーション 妹:処遇は苛烈を極めた 妹:秀次の親族、侍女、関係者は共々さらし首となった 妹:そして、その中には・・・ 0:兄の絶望 兄:連座・・・?駒姫が・・・? 兄:何を申しておる? 兄:駒姫はまだ幼く・・・関白に嫁いだばかりであるぞ・・・? 兄:何を連座するというのだ・・・? 兄:謀反など・・・企むわけなかろう・・・? 兄:何を・・・何を・・・!何を申しておる!!!! 兄:かような馬鹿な話があってたまるか! 兄:誰じゃ・・・私の駒姫の命を奪ったものは誰じゃ! 兄:許さぬ・・・許さぬぞ・・・誰であろうと・・・許さぬ・・・! 0:妹ナレーション 妹:駒姫を失った義光の悲しみは深く、豊臣家憎悪につながっていったという 妹:そんな折、義姫は突然伊達家を出奔、実家へと帰っていきます 0:兄モノローグ 兄:今、豊臣家は荒れておる・・・ 兄:私は・・・徳川家康殿に味方する 0:妹ナレーション 妹:1600年・・・石田三成率いる西軍と、徳川家康率いる東軍が美濃で激突した戦い 妹:それは日の本を二分する戦い・・・ 妹:最上家は東軍につき西軍の上杉家と戦った・・・ 0:その後 妹:最上義光は山形藩初代藩主となり善政を行う 妹:しかし、後継者争いで嫡男を失うなど悲劇に見舞われ 0:兄死去 兄:あとは・・・任せた・・・ 妹:兄様・・・お疲れ様でした・・・ 0:兄ナレーション 兄:その後、最上家は内紛により改易、義姫は伊達家に戻り天寿を全うしている 0:妹モノローグ 妹:兄上のいなくなった最上家はすっかり様変わりしてしまった・・・ 妹:兄上・・・いや、兄様・・・ 妹:私も・・・もうすぐ兄様の元へ・・・参ります 私:幼き日の・・・あの川辺で・・・また会えたら・・・ 0:兄ナレーション 兄:義姫、没 兄:波乱に満ちた彼女の人生は如何ほどであったか 兄:それは、彼女のみぞ知る・・・

0:とある川辺にて 兄:・・・今日も今日とて良い天気だな 妹:そうですね、兄(あに)様 兄:こうも良い天気だと、世が乱れているのは嘘のようであるな 妹:・・・そうですね 兄:・・・のう 妹:はい 兄:もし、そなたは・・・世が乱れておらず平和であったら、何をしたい 妹:・・・ 兄:私は・・・そうだな・・・畑いじり・・・とか良さそうだな 妹:わたくしは、兄様と一緒にいたいです 兄:・・・私とか 妹:はい 兄:ふふふ、そなた、私のことを何と思うておる 妹:この世で一番敬愛する兄様でございます 兄:悪い気はせぬな 妹:兄様、お慕いしております 兄:我ら兄妹ぞ 妹:それでも、でございます 兄:そうか 妹:・・・ 兄:・・・それにしても、良い天気よ 妹:そうですね 兄:この世も、空のように晴れ渡っていると良いのだがなぁ・・・ 0:妹ナレーション 妹:これは、とある時代のとある兄妹のお話である・・・ 0:数年後・・・ 妹:・・・結婚、でございますか 兄:そうだ 妹:・・・ 兄:・・・ 妹:わたくしは、兄(あに)様と離れとうございませぬ 兄:・・・それは、私も、であるが 妹:ならば・・・! 兄:・・・わがままを言うでない 妹:しかし 兄:・・・わかってくれ、これは家のため、でもあるのだ 妹:・・・ 兄:我が家を繁栄させるためには・・・この道しかない 妹:政略・・・結婚・・・ 兄:私とて辛いのだ・・・そなたと離れるのは・・・しかし 妹:・・・ 兄:すまぬ・・・ 妹:・・・ 兄:・・・ 妹:わたくしとて、乱世の女・・・役目はわかっています 兄:・・・ 妹:しかし、女である前に兄様の妹なのです・・・ 妹:兄との別れを惜しまぬ妹がおりましょうか 兄:わかっておる・・・わかっておるが 妹:正直なところ、行きたくありませぬ 兄:・・・ 妹:しかしながら、わたくしが嫁ぐことで、兄様の救けとなるなら・・・ 兄:・・・ 妹:・・・ 兄:文(ふみ)を書く 妹:・・・ 兄:私は、そなたの身を案じておる 妹:・・・それならば、寂しくはありませぬね 兄:・・・ 妹:・・・わたくしも、兄様に文を書きます 兄:・・・ 妹:わたくしとて、兄様の身を案じておりますゆえ 兄:・・・ふふ、そうか 0:妹ナレーション 妹:こうして、妹は兄の元を離れ、他家の女として生きていくことになりました 0:手紙 兄:(手紙)我が妹君(いもうとぎみ)へ・・・と 妹:(手紙)親愛なる兄様へ・・・ 兄:ふふふ・・・向こうでも、うまくやっておるようだ 妹:兄様も壮健で何より・・・ 兄:(手紙)夫殿や舅殿とうまくやれているようで何よりである 妹:ふふ、兄様・・・わたくしはこちらでもよくされていましてよ 妹:(手紙)夫婦仲良好にて・・・ 0:妹ナレーション 妹:両家の関係は良好に保たれているかに見えました 妹:・・・しかし、乱世の荒波は、二人につかの間の平穏を許してはくれませんでした 0:激突 兄:・・・まさか、ここまで追い詰められるとは 0:妹ナレーション 妹:兄と、妹の嫁ぎ先が戦になってしまったのです 妹:兄は勇猛果敢に戦いましたが次第に戦況は不利に 妹:兄は窮地に立たされることになります 0:妹登場 兄:為すすべなしか 妹:者ども、道を開けよ! 兄:むむ、あれは 0:静寂が流れる 妹:両軍とも、剣を収めよ! 0:一本の矢が妹めがけ飛んでくる 兄:ああッ! 0:妹、矢を切り払い一喝 妹:最上の兵よ!我が姿、忘れたとは言わせぬぞ! 妹:伊達の兵らよ!そなたらは主君が正室の顔を見知らぬか、痴れ者め! 兄:・・・義姫 0:妹ナレーション 妹:そう、これは東北の謀将、最上義光(よしあき)とその妹、義姫のお話 0:タイトル「とある兄妹の話」 妹:兄上、遅参の儀、御免あれ 兄:義姫・・・まことに義姫か 妹:お久しゅうございます、兄上 兄:・・・ 妹:兄上ともあろうお方が、ここまで苦戦なさるとは 兄:ふっ、輝宗殿が戦巧者であられるのよ 妹:・・・正室としては喜ばしい限りですが、そういうわけにも行きませぬな 兄:・・・いかがいたす 妹:夫殿に話をつけに行ってまいります 兄:単身で乗り込むつもりか 妹:ご心配には及びませぬ、では 兄:強くなったなぁ 0:数時間後・・・ 妹:輝宗様は撤兵をお決めになりました 兄:・・・ 妹:いかがなされた 兄:ふふ、強うなったな 妹:他家に嫁ぎ、生きていくためにはこうなるしかなかったのです 兄:いや、兄は嬉しく思うぞ 妹:・・・ 兄:それと同時に少し寂しくもある 妹:兄様 兄:・・・! 妹:わたくしは、いくら変わろうと兄様の妹でございます 兄:・・・そうだな 妹:ふふ、妹離れできていないのは、兄様の方でございましたわね 兄:ははは、返す言葉もないわ 妹:さて、わたくしはあちらへ帰ります 兄:ああ、元気でな 妹:文をしたためます 兄:こちらも同様だ 妹:では、お達者で 兄:義姫も・・・な 0:妹ナレーション 妹:こうして、最上家と伊達家の戦は一応の決着がつく 妹:これより数年、両家はぶつかることなく良好な関係を築いていた 0:手紙 兄:(手紙)我が妹、義姫へ・・・ 妹:(手紙)此度、伊達家は我が息子、政宗が継ぐこととなりました 兄:ほう、家督を継ぎしはあの長男坊か 妹:(手紙)兄上におかれましては・・・ 兄:ふふ、「こちらも元気である」・・・と 0:数カ月後 妹:(手紙)我が子、政宗は東北の統一を目指しているようです・・・もしや、最上家も・・・ 兄:ふむ、東北の統一とな・・・ううむ、「案ずるなかれ」・・・と 妹:(手紙)政宗が、輝宗様を射殺しました・・・これは政宗による謀略では・・・ 兄:・・・輝宗殿が二本松に拉致されたときのことか・・・話には聞き及んでいたが・・・ 兄:(手紙)今は気持ちを落ち着かせよ・・・ 0:妹ナレーション 妹:政宗による輝宗射殺事件以降、義姫は政宗に対する不信感を募らせていきます 妹:そして、ついに・・・ 0:伊達による大崎攻め 兄:ほう、伊達め、ついに我らが本家筋を攻めたか 兄:いくら甥といえど、これは看過できぬ 兄:・・・ふふ、覚悟はできておろうな? 0:妹ナレーション 妹:こうして、再び、伊達と最上は対峙することになったのです 0:大崎合戦 兄:ふふふ、甥御どの?最上が戦、馳走せん 兄:遠慮はいらぬ、存分に堪能せい 0:妹ナレーション 妹:伊達と最上の戦は、最上に軍配が上がる 妹:最上の戦に伊達は次第に窮地に立たされることになる 0:義姫登場 兄:伊達め、勢いはあると思うたが、ワシのほうが一枚も二枚も上手だったようだな 妹:道を開けよ! 兄:・・・この声は 妹:・・・兄上、お久しゅうございます 兄:・・・やはりな 妹:・・・ 兄:以前もこのようなことがあった 妹:しかし、此度は逆です 兄:・・・要件は何だ? 妹:単刀直入に言います 妹:兵を退いてください 兄:(被せて)断る 妹:・・・ 兄:先に仕掛けたは伊達である 兄:それに・・・ 妹:それに? 兄:戦況を見よ 兄:今は我らが優勢なのだ 兄:兵を退く道理などない 妹:・・・ 兄:・・・ 妹:わかりました 兄:・・・ 妹:兄上におかれましては、妹の嫁ぎ先を自らの手で滅ぼすと 兄:・・・ 妹:そして自らの手で妹の命を絶つと、そう申されるのですね 兄:そこまでは申しておらぬ 妹:いえ、申しておるのです 兄:伊達家を滅ぼしたところでお主は最上家に戻れば良い 妹:いいえ、そういうわけには参りませぬ 妹:伊達が滅べば私は敗者の妻!死をもってこの結末を見届けましょうや! 兄:・・・ 妹:然れども!それでは兄上はきっと不義理の烙印を押されるでしょうな! 妹:妹だけではなく!甥もその手で殺めるのですから! 妹:しかし、わたくしはそれを受け入れましょう 妹:それが戦国の女の努め! 妹:さぁ!その汚れた手で一思いにひねりつぶしてくださいまし! 兄:・・・わ、わかった!わかった!最上は兵を退く!それで良いだろう! 妹:・・・妹の言葉に耳を傾けていただき感謝の極み 兄:・・・まったく、強きおなごになったは良いが、私はこのようなおなごになってほしいと願った覚えはないぞ 妹:ふふ、稀代の謀将たる兄上にそこまで言われるは最上(さいじょう)の誉(ほまれ)ですね 兄:言いよるわ 0:妹ナレーション 妹:その後、最上義光は伊達家と停戦す・・・ 妹:そして・・・ 0:手紙 兄:我が敬愛する妹君、義姫殿に大崎家と伊達家の仲介をお願い申したき候・・・ 0:妹ナレーション 妹:最上義光は難航していた伊達家と大崎家の停戦の仲介を義姫に哀願している 0:兄ナレーション 兄:天下の趨勢は「羽柴秀吉」改め「豊臣秀吉」の物となった 兄:関白となり天下人となった秀吉は統一事業の総仕上げ・・・最後まで抵抗を続けていた北条家を攻める 0:妹ナレーション 妹:伊達家では波乱が起きる 0:報告を聞く兄 兄:ふむ、甥御殿が弟を殺害したと・・・ 兄:妹は無事であろうか・・・ 0:妹ナレーション 妹:巷では、母である義姫は長子である政宗よりも、次子の小次郎を溺愛し、政宗の小田原参陣時、毒殺しようとしたという話 妹:そして、政宗が弟・「伊達小次郎」を殺害したとの風聞があった・・・ 0:兄手紙 兄:妹におかれましては・・・と 0:妹ナレーション 妹:しかし・・・ 0:兄返信 兄:お気遣いありがたく・・・わたくしは無事でございます・・・か 0:妹ナレーション 妹:義姫と政宗の関係は良好であったとする説もある 0:兄手紙 兄:我が娘、駒姫はとても愛らしく、目に入れても痛くないほどかわいいおなごじゃ・・・と 0:手紙 妹:・・・兄様、娘をとても気に入ってる様子ですね 妹:良きことです・・・良きことですが・・・ 妹:姪とはいえ、少々妬いてしまいますね 妹:(手紙)兄上の娘、かわいいこと間違いないでしょう 妹:(手紙)なぜなら兄上の娘でございますゆえ 妹:・・・と 0:兄ナレーション 兄:しかしながら、悲劇が起こる 0:妹 妹:関白、豊臣秀次が謀反・・・? 0:兄ナレーション 兄:豊臣秀次が謀反の嫌疑をかけられ、蟄居(ちっきょ) 0:妹ナレーション 妹:処遇は苛烈を極めた 妹:秀次の親族、侍女、関係者は共々さらし首となった 妹:そして、その中には・・・ 0:兄の絶望 兄:連座・・・?駒姫が・・・? 兄:何を申しておる? 兄:駒姫はまだ幼く・・・関白に嫁いだばかりであるぞ・・・? 兄:何を連座するというのだ・・・? 兄:謀反など・・・企むわけなかろう・・・? 兄:何を・・・何を・・・!何を申しておる!!!! 兄:かような馬鹿な話があってたまるか! 兄:誰じゃ・・・私の駒姫の命を奪ったものは誰じゃ! 兄:許さぬ・・・許さぬぞ・・・誰であろうと・・・許さぬ・・・! 0:妹ナレーション 妹:駒姫を失った義光の悲しみは深く、豊臣家憎悪につながっていったという 妹:そんな折、義姫は突然伊達家を出奔、実家へと帰っていきます 0:兄モノローグ 兄:今、豊臣家は荒れておる・・・ 兄:私は・・・徳川家康殿に味方する 0:妹ナレーション 妹:1600年・・・石田三成率いる西軍と、徳川家康率いる東軍が美濃で激突した戦い 妹:それは日の本を二分する戦い・・・ 妹:最上家は東軍につき西軍の上杉家と戦った・・・ 0:その後 妹:最上義光は山形藩初代藩主となり善政を行う 妹:しかし、後継者争いで嫡男を失うなど悲劇に見舞われ 0:兄死去 兄:あとは・・・任せた・・・ 妹:兄様・・・お疲れ様でした・・・ 0:兄ナレーション 兄:その後、最上家は内紛により改易、義姫は伊達家に戻り天寿を全うしている 0:妹モノローグ 妹:兄上のいなくなった最上家はすっかり様変わりしてしまった・・・ 妹:兄上・・・いや、兄様・・・ 妹:私も・・・もうすぐ兄様の元へ・・・参ります 私:幼き日の・・・あの川辺で・・・また会えたら・・・ 0:兄ナレーション 兄:義姫、没 兄:波乱に満ちた彼女の人生は如何ほどであったか 兄:それは、彼女のみぞ知る・・・