台本概要

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タイトル 『檻、厚顔無恥な一門、それと独立』
作者名 やまさん  (@minimam1239)
ジャンル コメディ
演者人数 5人用台本(男3、女2)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 田河家。
寿司の出前が届くまでの家族内での複数の事柄から決断までの物語。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
秀介 226 田河秀介(タガワシュウスケ)・・・21歳、次男。 大学を中退し、実家暮らしのニート。
有里子 247 田河有里子(タガワユリコ)・・・53歳、母親。 主婦。昔は秀介が生まれるまではヒステリックだった。
彰彦 213 田河彰彦(タガワアキヒコ)・・・56歳、父親。 会社員。仕事に追われている。
望結 135 田河望結(タガワミユ)・・・27歳、長女。 女優を目指し、実家暮らし。
真治 282 田河真治(タガワシンジ)・・・25歳、長男。 出版社勤め。ある理由で実家に突如帰省する。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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有里子:「秀ちゃん、今日何食べたい?」 秀介:「・・・何でもいいよ」 有里子:「久しぶりにお寿司でもとろっか」 秀介:「何でもいいって」 有里子:「・・・わかった、お寿司とるね」 秀介:「・・・」 有里子:「あ、もしもし、出前とりたいんですけど・・・はい、十種盛り一人前と・・・あ、ちょっと待ってくださいね、秀ちゃん海鮮丼いる?ちらしとか、あなご丼もあるけど」 秀介:「・・・海鮮」 有里子:「わかった、あ、すみませんあと海鮮丼一つで・・・はい、以上で、え・・・ああ、そうですかすみません。秀ちゃん、あと七百円分頼まないといけないんだけど食べたいのある?」 秀介:「ん」 有里子:「ん?何?」 秀介:「ん」 有里子:「どうしたの?」 秀介:「チラシ・・・」 有里子:「ああごめんごめんわかんないよね、はい」 秀介:「・・・」 有里子:「決まった?」 秀介:「まだ」 有里子:「すみません、ちょっと待っててくださいね。息子がまだ探してまして」 秀介:「うっさいよ」 有里子:「・・・それにしてもあれですね、最近急に暑くなりましたね。宅配のお仕事も見てたら大変そうで、こんな暑い中色んな所行って・・・ねえ、そうですよねえ。若い人多いしそこら辺は体力あるから大丈夫なんでしょうけど・・・本当偉いですよ、最近だと女性も多いですし」 秀介:「・・・いらない」 有里子:「ん?決まった?」 秀介:「やっぱいい」 有里子:「え、でもそれじゃあ注文完了しないよ」 秀介:「飯いい」 有里子:「ええ、お母さんはお寿司食べたいな」 秀介:「一人で食っていいよ」 有里子:「それは寂しいよ・・・一緒に食べよ、ね?」 秀介:「俺はいいや」 有里子:「・・・一応秀ちゃんの分とっとくね」 秀介:「いらないって」 有里子:「えっと、海鮮丼もう一つ追加で」 秀介:「だから」 有里子:「あ、田河です・・・緑区上大和田町三の一、東野スカイ四○一です。はい、お願いします。お待たせしてすみません。はい、宜しくお願いします。はいーすみませーん」 秀介:「いらないから」 有里子:「夜中に食べたくなっても知らないよ?」 秀介:「ならないから」 有里子:「・・・お母さんちょっと回覧板回してくるね」 秀介:「・・・ってかさっきの何?」 有里子:「え?」 秀介:「いやさっきの、ああいうの言われたらさ、俺もモチベーション下がるっていうか、なんでそう気使えないかな」 有里子:「何のこと?」 秀介:「え、無意識で言ってんの?だとしたらやばいって直しようないじゃん」 有里子:「ん、私なんか変な事言ってた?」 秀介:「いやまじか、怖いわ、言ってたじゃん、最近若い子が暑い中働いてて偉いとかどうとか」 有里子:「え」 秀介:「あれさ、完全に俺への当てつけだよね?気兼ねない会話にそういうの入っちゃってるって気付くじゃん普通」 有里子:「・・・ああ、ごめんね」 秀介:「いやだから、それが問題なんだって。ごめんねでその問題が解決できるならいいけどさ、それじゃ次もそういったミスが起こって俺が傷つくわけじゃん」 有里子:「でも、分かんなかったし・・・そういうの言わないようにするから、ごめんね」 秀介:「んん・・・それじゃ意味ないんだよな、母さんは次そういう事言わないようにしたいわけでしょ?だったら今何をして、今後どういった事をするべきか具体的な解決方法を探さないといけないと思うんだよね」 有里子:「・・・」 秀介:「今母さんはごめんねって言って問題から逃げようとしてるけどさ、それは何にも解決したことになってないと思う」 有里子:「問題かな・・・」 秀介:「問題だよ、ほらそういうとこ、分かってないんだもん」 有里子:「・・・」 秀介:「あとさ、出前の注文遅れてることを俺のせいにしないでくれる?息子が選んでましてみたいな・・・あれさ、別に母さんが勝手に決めてもいいわけじゃん、いちいち俺に決めさせようとしてもチラシ持ってない俺が分かるわけないじゃん」 有里子:「・・・そうだね」 秀介:「うん、そういっためんどくさいロスをさ、嫌がるくらいだったら母さんが全部決めてよかったはずだし」 有里子:「・・・別に嫌がってたわけじゃないんだけどね」 秀介:「じゃあ言って欲しくなかったわ、ああいうこと」 有里子:「・・・はあ」 秀介:「・・・え、なんでため息つくの?」 有里子:「ああ、違うごめん」 秀介:「あ、いや別にいいよ?俺面倒くさい?でもそういう思考になるように育てたのって母さん達だし、まあ学校生活とか色々あると思うけど、圧倒的に家族といる時間長かったわけだしさ、しょうがないと思うんだよねもう・・・そういう、息子です俺は」 有里子:「・・・回覧板行ってくるね」 秀介:「・・・」 有里子:「はあい」 彰彦:「ただいま」 有里子:「おかえりなさい。今日飲み会じゃなかったの?」 彰彦:「ああ無くなった」 有里子:「そう、ちょうどお寿司出前で取ったんだけど、食べる?」 彰彦:「ああ、でも二人前じゃないのかそれ」 有里子:「そうなんだけど、秀ちゃんいらないって」 彰彦:「ん?じゃあ何で二人前取ったんだ」 有里子:「一応ね」 彰彦:「・・・なんかまたぐちぐち言ってんのか?」 有里子:「いやそういうわけじゃなくてね。今はお腹すいてないみたいだから、後で食べるかなって、私が勝手に」 彰彦:「まあ、それならいいけど・・・ちょっと話さないとな」 有里子:「あんまり、ね」 彰彦:「ただいま」 秀介:「・・・」 彰彦:「ただいま」 秀介:「ん」 彰彦:「・・・今日は何してた」 秀介:「何が?」 彰彦:「仕事探してみたか?」 秀介:「うん、まあぼちぼち」 彰彦:「・・・ちょっと話すか」 秀介:「いいよ別に」 有里子:「回覧板行ってくるね」 彰彦:「母さんも、ちょっと座って」 有里子:「ええ、でも回覧板」 彰彦:「明日でもいいだろ」 秀介:「回覧板俺行くよ」 彰彦:「お前が行ってどうする」 秀介:「・・・何話すの?もういいって、自分のペースがあるから」 彰彦:「どうせ今日も家でゴロゴロしてたんだろ」 秀介:「・・・じゃなかったらどうすんの?」 彰彦:「どうなんだ」 秀介:「俺の質問に答えてよ」 彰彦:「どうなんだって」 秀介:「会話になんないわ。それじゃだめでしょ、議論の意味がないじゃん」 彰彦:「議論じゃない、確認作業だ」 秀介:「は?何それ、そういうの毎回されたらストレス溜まるって知ってる?」 彰彦:「今日が初めてだろ」 秀介:「いやこれからを含めてって話」 彰彦:「そうやって揚げ足とろうとして、楽しいか?」 秀介:「何言ってんの?違うじゃん、俺は事実を言ってるだけだから、それを揚げ足とか単純に逃げてるだけでしょ、会話から」 彰彦:「それはお前だろ!」 有里子:「お父さん」 秀介:「うわ、何急に、普通に不愉快なんですけど」 彰彦:「お前が大学辞めて半年たつ、約束はどうした。こっちも限界だぞ」 秀介:「・・・あのさ、限界とかさ、そういう言葉家族で使わないでほしいんだけど・・・いや俺もさ、ここにいる以上迷惑はかけないようにって、努力してるつもりだよ?」 彰彦:「努力って」 秀介:「いや、洗濯もの取り込んだり、風呂掃除したり、言われたらトイレ掃除だってやってるし」 彰彦:「それは母さんから聞いてる。でもそれとお前が就職しないで毎日家で過ごしているってことは、別だ」 有里子:「秀ちゃん家事手伝ってくれて助かってるよ?」 秀介:「・・・」 彰彦:「どうすんだ。これ以上仕事につかない状況が続くんなら、こっちにも考えがあるぞ」 秀介:「え、何考えって、絶縁?」 有里子:「何言ってるの違うよ・・・知り合いの奥さんのご家族がコンビニ経営しててそこでバイトで入らせてもらおうかって」 秀介:「は、勝手に話進めないでよ」 彰彦:「じゃあ出てってもらう」 秀介:「ほら絶縁じゃん」 有里子:「お父さん」 秀介:「・・・別にいいけど、でもいいの?俺はここ以外に住む場所ないし、金もないし、後々後悔するのそっちだよ?」 彰彦:「・・・もうしてる」 秀介:「・・・」 有里子:「本気じゃないからね」 真治:「ただいまー(玄関からの声)」 有里子:「え?」 真治:「ただいまー(玄関からの声)」 彰彦:「誰だ?」 有里子:「あれー!?どうしたの?(リビングからの声)」 彰彦:「どうしたー」 有里子:「真くんー!帰ってきたー(リビングからの声)」 彰彦:「え?」 真治:「連絡せずにごめんね」 有里子:「ほんとどうしたの?仕事は?」 真治:「んん、ちょっと色々あってさ」 有里子:「何色々って」 真治:「とりあえず、中入るわ」 有里子:「そうね、おとーさーん」 彰彦:「おお」 真治:「ただいま」 彰彦:「どうしたんだ急に」 真治:「ああごめんね、連絡もなしに」 彰彦:「いやそれはいいけど・・・どうする、酒でも飲むか?」 真治:「ああ・・・うん飲む」 秀介:「眠いから寝るわ」 有里子:「もう寝るの?せっかくだし皆でいない?」 真治:「秀介大学は?休み?」 秀介:「もういいよ」 真治:「ん、どうしたの?」 秀介:「寝るね」 有里子:「まあ、眠くなかったら、ね、皆でお酒飲む?」 秀介:「だから眠いって」 彰彦:「もういいよ勝手にさせとけ、明日早く起きろよ、さっき言った事忘れるな」 秀介:「・・・」 有里子:「秀ちゃんおやすみ、歯磨きは?」 秀介:「さっきした」 有里子:「そう、おやすみ」 秀介:「・・・」 彰彦:「・・・はあ」 真治:「秀介どうしたの、大学もう休みだっけ」 彰彦:「ああ、言ってなかったな、辞めたんだよあいつ」 真治:「え?」 彰彦:「それよりどうした急に帰ってきて」 真治:「え・・・ああ、まあ報告を、明日には戻るよ」 彰彦:「ちょっと待って、ビール」 有里子:「ああはいはい」 彰彦:「いい知らせではなさそうだな」 真治:「そう、だね」 彰彦:「上手くいってないのか?」 真治:「ていうか、上手くいかなかった」 有里子:「冷凍の枝豆あるけど食べる?」 彰彦:「ん、ああ・・・どういうことだ」 真治:「・・・辞めた、会社」 有里子:「え!?」 彰彦:「辞めたのか?じゃあ今何してんだ」 真治:「まあニート・・・つっても辞めたの先週なんだけど」 彰彦:「・・・はあ」 真治:「まあそれが報告なんだけど」 有里子:「でもちゃんとした出版の会社なんでしょ?ちょっともったいない気がするけど・・・」 彰彦:「そうだよな、相当頑張って入社したんだろ?今からでも戻れないのか?」 真治:「んん・・・そこに居たくないから辞めたんだよね」 有里子:「・・・そう」 彰彦:「とりあえず、飲むか」 真治:「うん」 彰彦:「こういう時、何言えばいいんだ」 真治:「何が?」 彰彦:「いや、乾杯の音頭」 真治:「こういう場合乾杯じゃないでしょ」 彰彦:「じゃあなんだ」 有里子:「献杯?」 真治:「いや誰も死んでないから」 彰彦:「不謹慎だな」 有里子:「ああごめんなさい」 真治:「まあ言い換えれば、会社辞めれてよかったし・・・うん、俺の、退職祝いに・・・」 有里子:「あ、枝豆」 真治:「・・・乾杯」 秀介:「『檻、厚顔無恥な一門、それと独立』」 真治:「秀介ー(廊下からの声)」 秀介:「・・・」 真治:「秀介ー?部屋?(廊下からの声)」 秀介:「・・・」 真治:「開けるぞ(廊下からの声)」 秀介:「・・・」 真治:「寝てんの?」 秀介:「・・・」 真治:「お前の狸寝入りわかりやすいわ」 秀介:「・・・何」 真治:「ほら」 秀介:「閉めて」 真治:「ああ」 秀介:「・・・で何」 真治:「・・・仕事辞めたわ俺」 秀介:「え、まじで、なんで」 真治:「まあ色々あってな」 秀介:「もったいな」 真治:「いやお前もだよ、さっき聞いてびっくりしたわ、何で大学辞めたんだよ」 秀介:「・・・疲れたから」 真治:「何に?」 秀介:「勉強」 真治:「ああ、まあ経済難しいもんな」 秀介:「統計学とか、マルクスとか・・・何の意味があんのって感じじゃん。ミクロもマクロも意味とか忘れたし」 真治:「でもお前が望んで入った大学だろ?」 秀介:「いやそれは、単に東京行けたらいいなって感じだったし、元から経済興味なかったんだよね。俺がいけそうな都内の大学ってそこくらいしかなかったし」 真治:「もっかい大卒の資格取る気ないの?」 秀介:「ないかな・・・兄ちゃんこそ、出版の仕事辞めてどうすんの?」 真治:「そうだなあ、しばらくはニート軽く経験してから再出発しようかなって」 秀介:「ここに戻るの?」 真治:「いやそれはないわ、さすがに成人した子供三人実家暮らしってやばいだろ」 秀介:「確かに、笑い事じゃないけど」 真治:「姉ちゃんは?」 秀介:「まだ仕事」 真治:「まだ女優やってんの?」 秀介:「だね」 真治:「もう二十七だろ?高校の演劇部の頃からだから・・・芸歴十二年か、すげえなベテランじゃん」 秀介:「それ言うと姉ちゃんめっちゃ怒るよ」 真治:「だろうな」 秀介:「あの人沸点低いし」 真治:「な・・・てか田河家って喜怒激しいよな」 秀介:「だね」 真治:「母さんとか今あんなだけどさ、お前が生まれる前超怖かったんだよ?ヒステリック半端なくてさ」 秀介:「100回聞いた」 真治:「いやでも、お前の事相当心配してるからさ」 秀介:「だろうね」 真治:「まあわかってんなら、あんま困ること言うのやめろよ?」 秀介:「何困ることって」 真治:「なんか父さんが言ってたぞ?揚げ足とるばっかって。」 秀介:「いや違う違う、事実を述べてるだけなの、それを揚げ足っていう言葉で片づける方がおかしいと思うんだよね」 真治:「ああ、そういう理論ね」 秀介:「理論っていうか」 真治:「まあでもそれはさ、説得力ないだろ」 秀介:「は?」 真治:「そういうのは、実績と能力がある人間が言うことによって初めて正論として成り立つんだよ・・・今のお前が言っても、単純に嫌な奴にしかならないから」 秀介:「・・・」 真治:「むかつく?」 秀介:「いや」 真治:「あ、そう、俺だったらムカつくな」 秀介:「何それ・・・まあ兄ちゃん合ってると思うよ」 真治:「・・・へえ」 秀介:「何」 真治:「いや、ちゃんと理解はしようとするんだなって」 秀介:「は?」 真治:「お前はさ、根はちゃんとしてるんだよ。だからこういう事言われてもしっかり受け止めてる、真面目な証拠だわな」 秀介:「良いから別に」 真治:「いやマジで、お前やれば出来るんだよ。なんか今はそういう事言っちゃう時期なんだよな」 秀介:「・・・」 有里子:「秀ちゃん、まだ起きてる?(廊下からの声) 」 真治:「ああ起きてるよ」 有里子:「真くん、秀ちゃんと話してた?(廊下からの声)」 真治:「うん」 有里子:「開けるね(廊下からの声)」 秀介:「いやいいよ」 有里子:「回覧板行ってくるね。」 秀介:「それ部屋入んなくても言えるでしょ、わざとかよ」 真治:「・・・秀介も頑張るって、母さんと父さんに心配かけたくないって言ってたよ」 秀介:「何言ってんの」 有里子:「ありがと、お父さんも本気で言ってたわけではないからね」 秀介:「いや本気でしょ」 有里子:「そんなことないよ」 彰彦:「本気だぞ」 秀介:「ほら」 彰彦:「約束したからな、もう半年経ってる。明日何もしないんだったら出てってもらう」 真治:「なあ、秀介も考えてはいるみたいだからさ」 彰彦:「考えてるだけじゃ駄目だ動きなさい」 秀介:「もういいよ、おやすみ」 彰彦:「本気だぞ」 真治:「・・・まあ、父さんの言い方はあれだけど、その通りっちゃその通りだから」 有里子:「明日、動けるといいね」 秀介:「わかってるから、おやすみ」 有里子:「うん、おやすみ。あ、歯磨きは?した?」 秀介:「だからしたって、もう寝るから、ほら」 真治:「分かった分かった、おやすみ」 有里子:「秀ちゃんおやすみ」 秀介:「扉閉めといて」 有里子:「はーい」 真治:「・・・こりゃ歯磨いてないな」 有里子:「とりあえず、回覧板行ってくるね」 真治:「うん」 有里子:「あ、お寿司くるんだ」 真治:「え、寿司とったの?」 有里子:「二人前だけど、真ちゃんとお父さんで食べて」 真治:「いや悪いよ」 有里子:「いいからいいから」 望結:「ただいまー」 有里子:「あ、お帰り」 望結:「うん」」 有里子:「お稽古どうだった?」 望結:「別に、いつも通り」 有里子:「そっか、お寿司とったんだけど二人前しかなくて」 望結:「ああそうなんだ、いいよいいよ食べてきたから」 真治:「え・・・」 望結:「あれ、真治帰ってたの?」 真治:「え・・・」 有里子:「そう、さっき急に、連絡なくてびっくりしたのよ」 真治:「え・・・誰」 有里子:「あれ?」 望結:「ああ、そういや言ってなかったっけ。」 真治:「え・・・姉ちゃん!?」 望結:「どう、見違えた?」 有里子:「望結・・・整形したのよ」 真治:「え・・・ええ」 望結:「何その反応」 真治:「本当に姉ちゃん?」 望結:「そうだけど」 真治:「なんも言わなかったの?」 望結:「何が」 真治:「いや二人、母さんも父さんも何も言わなかったの?」 有里子:「・・・そりゃ反対したよ?まあでも望結が売れる為には整形が必須だって、かたくなだったから」 真治:「え、それで?」 望結:「何あんた整形反対派?」 真治:「いやそういうわけじゃないけどさ」 望結:「韓国とじゃ普通だよ?むしろ親が勧めてるくらいだし」 真治:「いやだからそういうのじゃないじゃん、これは田河家の・・・なんていうか、問題でしょ」 望結:「何問題って」 真治:「いやせめて一言言ってよ、プチとかならまだしも・・・別人じゃん」 望結:「人の顔指ささないで」 真治:「いや、え・・・は?」 望結:「何怒ってんの」 真治:「怒ってるっていうか・・・あれ怒ってんのかな、いや普通に考えてさ、久々に実家帰って来て身内の顔変わってたらビビるじゃん」 彰彦:「望結お帰り」 望結:「ただいま、てか今日お風呂?」 有里子:「あ、ごめん今日もシャワー」 望結:「まじか・・・おっけ」 有里子:「ごめんね」 望結:「いいよいいよ」 有里子:「お父さん先入ったら?もう寝ちゃいそうだし」 彰彦:「ああ望結先でいいよ」 望結:「じゃあ先入るね」 真治:「え・・・何その感じ、もう普通なの?」 有里子:「え?」 真治:「いやだから・・・姉ちゃんの整形、話し合ったんでしょ?何でそうなるの?」 彰彦:「望結が自分で決めて自分の金でやったんだ、文句ないだろ」 真治:「違うって・・・なんで俺に一言ないの?」 望結:「何あんた拗ねてんの?」 真治:「いやだから・・・、俺たち家族じゃん。そういう、なんか、大きな出来事って共有するもんじゃないの?」 彰彦:「・・・ごめん、ちょっとメール来た」 望結:「お風呂入るね」 真治:「いやちょっと待ってよ、父さんも、俺今大事な話してるの分かるよね?」 彰彦:「仕事なんだよ、返さないと」 真治:「秀介の事も、俺言わなかったけどさ、父さん言ってよ、大学辞めたんでしょ?大事じゃん」 有里子:「真くんにちゃんと連絡しなかったのはごめんね。いつかはちゃんと話さないとなって思ってたんだけど」 真治:「いつかって、すぐしてよ」 有里子:「忘れちゃってて」 真治:「何それ」 望結:「ねえもういい?風呂入りたいんだけど」 彰彦:「俺もちょっと、メール返すから」 真治:「だから待てって、え、何。俺がおかしいの?」 望結:「おかしいよ」 真治:「いやいや違うでしょ。ねえ、なんか一言俺にあるんじゃないの?」 望結:「何一言って」 有里子:「ごめんねほんと」 真治:「いやそういうのいいから、ねえ父さんに聞いてるんだけど」 彰彦:「わかった後でな」 真治:「いや今だろ」 有里子:「真くん仕事で忙しそうだったし連絡するタイミング逃しちゃって」 真治:「母さんちょっと黙って!」 有里子:「・・・」 彰彦:「なにそんな怒ってんだ」 真治:「そりゃ怒るだろ!身内の顔がこんなに変わってるんだよ?その事について今まで一言もないとかありえないだろ」 望結:「風呂入る」 真治:「父さんが言わなきゃいけなかったことじゃないのかよ」 彰彦:「整形くらいでぎゃあぎゃあ言うな」 真治:「・・・は?無関心すぎるだろ」 彰彦:「なんだと」 有里子:「お父さん」 彰彦:「無関心だと!?俺が!?ふざけるなよ!俺がどれだけお前達の為に動いてきたと思ってるんだ!」 真治:「・・・なんだよそれ」 彰彦:「・・・メール返してくる」 真治:「・・・まじでなんなんだよ」 有里子:「ごめんね」 真治:「・・・え、俺に連絡しなかった理由ってそれ?」 有里子:「え」 真治:「仕事で忙しそうだって、言ってたじゃん」 有里子:「うん・・・真くん帰ってきた時に言おうって話してたの」 真治:「何でそうなんの?普通にその話になった時電話でもくれればいいじゃん」 有里子:「ごめん」 真治:「姉ちゃんは整形する前にちゃんと二人に相談したんだよね」 有里子:「うん」 真治:「だったらさ、そういう事って家族全員で話し合う流れになんないの?」 有里子:「・・・ごめんね」 真治:「ごめんじゃなくて・・・え、秀介もその時居たの?」 有里子:「うん、秀ちゃんは整形まあ良いんじゃないって」 真治:「適当かよあいつ・・・ってかなんだよ、俺だけのけ者かよ」 有里子:「・・・ちゃんと思ってるよ?」 真治:「は?」 有里子:「真くんの事、ちゃんと考えてる」 真治:「だからいいよそういうの」 有里子:「ここ半年、秀ちゃんあんな感じだし、望結もずっと女優さんやっててなかなか実家から出られないし・・・お父さんちょっと疲れてるのよ」 真治:「まあそうだろうけど」 有里子:「真くんはちゃんと就職して外で頑張ってるでしょ?あんまり家族のことで真くん疲れさせないようにって、お父さんなりに気使ってるのよ」 真治:「・・・」 有里子:「だからね、無関心なんてことないの、お父さんが一番皆の事考えてると思うから」 真治:「・・・」 有里子:「私がしっかりしなきゃいけないんだけどね、望結と真くんには子供の頃迷惑かけちゃったし」 真治:「・・・まあ、怖かったよ、あの頃の母さん」 有里子:「ごめんね本当に」 真治:「父さんに皿投げてた頃は鬼にしか見えなかったわ」 有里子:「今も鬼になれるよ?」 真治:「怖いってやめてよ」 望結:「もう喧嘩終わった?(風呂場からの声)」 真治:「うわあ、声は姉ちゃんだわ」 望結:「何ー?(風呂場からの声)」 真治:「風呂場から知らない美人出てくんだろ?」 有里子:「昔の望結の方が美人さんに私は見えたんだけどね」 真治:「今の方が良いでしょ」 望結:「だから何ー?(風呂場からの声)」 真治:「なんでもない」 望結:「あっそー(風呂場からの声)」 真治:「そういやお寿司とったんだっけ」 有里子:「うん。三十分くらいかかるって言ってた」 真治:「今から追加頼む?」 有里子:「そうしよっか、私も食べたいし」 真治:「元は母さんのだから、俺自分で頼むよ。姉ちゃんの分も」 有里子:「そう?じゃあお言葉に甘えて」 真治:「うん」 有里子:「あ、そうだ回覧板回さないと」 真治:「秀介に行かせたら?」 有里子:「え、でも秀ちゃん嫌がるから」 真治:「人のこと言えないけど、母さん秀介に甘すぎない?」 有里子:「うん・・・でもあの子、今はそういう時期だから」 真治:「ああ・・・分かってんだ」 有里子:「ん?」 真治:「いやなんでもない、あ、どこのすし屋?」 有里子:「そこにチラシ置いてある」 真治:「ああここか、久々だな」 有里子:「じゃあ回覧板行ってくるね」 真治:「うん・・・あ、後、別に俺整形反対とかじゃないから」 有里子:「そう・・・」 真治:「まあ、もう顔変わっちゃってるけど」 有里子:「ちゃんと考えてくれてありがとうね」 真治:「父さんにも、謝っとくよ」 有里子:「うん・・・ありがとう」 真治:「・・・母さんも、ごめんね怒鳴っちゃって」 有里子:「全然大丈夫、いざとなったらお皿あるし」 真治:「怖いって」 有里子:「じゃあ行ってくるね」 真治:「うん」 彰彦:「どっか行くのか」 有里子:「うん、回覧板」 彰彦:「そうか」 有里子:「真くんごめんって。お父さんも許してあげてね」 彰彦:「・・・ああ」 有里子:「メール・・・仕事、忙しそうね」 彰彦:「まあ、ちょっと最近バタバタしててな」 有里子:「あんまり無理しないでね。秀ちゃんの事は出来る限り私が見るようにするから」 彰彦:「ああ、ありがとう。トイレいいか?」 有里子:「うん、私も回覧板行ってくるね」 真治:「トイレー」 彰彦:「おお」 真治:「あ・・・いいよ」 彰彦:「真治先行けよ」 真治:「良いよ先入って」 彰彦:「俺が先だと臭いだろ」 真治:「何父さんうんち?」 彰彦:「いや違うけど」 真治:「俺うんちだから、先良いよ」 彰彦:「・・・そうか」 真治:「ああ父さん・・・あの、ごめん」 彰彦:「・・・まあ、俺も怒鳴って悪かった。後、連絡なくてすまん」 真治:「・・・うん」 有里子:「仲直り出来た?」 真治:「・・・回覧板行くんでしょ?」 有里子:「うん」 真治:「行ってらっしゃい」 有里子:「お父さん携帯鳴ってるよ」 彰彦:「え・・・ああ、良いよほっといて(トイレの中からの声)」 有里子:「わかった。じゃあ行ってきますー」 真治:「俺も寿司頼まないと」 有里子:「ねえ、ずっと鳴ってるよー?」 彰彦:「ほっといていいって(トイレからの声)」 有里子:「会社の人でしょ?でないとまずいんじゃない?」 彰彦:「だからいいって(トイレからの声)」 有里子:「もしもし田河です、すみません今主人手が離せなくて」 彰彦:「おい!何してんだ!(トイレからの声)」 有里子:「・・・え?」 彰彦:「ちょっと待ってちょっと待って何してんだよ・・・!あ、もしもしすみません、また後で掛けなおしますので、はい、失礼します」 有里子:「・・・」 彰彦:「・・・会社の電話に勝手に出るなよ」 有里子:「・・・誰?」 彰彦:「・・・会社の人だよ。回覧板は、行かないのか」 有里子:「・・・誰」 彰彦:「だから会社の人だって」 有里子:「・・・違う」 彰彦:「・・・」 有里子:「あなたが彰彦さんの奥さんですかって」 彰彦:「・・・」 有里子:「愛していますとお伝えくださいって」 彰彦:「え・・・なんだそれ、いたずらか?」 有里子:「嘘つかないで」 彰彦:「嘘じゃないって」 有里子:「履歴見せて」 彰彦:「おいやめろよどうした」 有里子:「見せて」 彰彦:「なんだ急にやめろって」 有里子:「急じゃないでしょ、見せて!」 彰彦:「いい加減にしろ!」 有里子:「・・・何よ」 彰彦:「・・・」 有里子:「ちゃんと言って」 彰彦:「・・・」 有里子:「ねえ・・・」 真治:「父さんー?(リビングからの声)」 有里子:「答えて・・・」 彰彦:「・・・」 望結:「どうしたのかな(リビングからの声)」 真治:「わかんない(リビングからの声)」 有里子:「答えて」 彰彦:「・・・」 真治:「どうしたの」 有里子:「・・・黙ってるってことは、そういうことでしょ」 彰彦:「・・・」 望結:「なんかあったの?」 有里子:「・・・」 真治:「本当どうしたの?」 有里子:「・・・お寿司とった?」 真治:「え、うんさっき電話した」 有里子:「お父さんは・・・どうするの」 彰彦:「・・・」 有里子:「そう・・・もういい」 彰彦:「・・・」 真治:「え、どうしたの」 望結:「何かあったの?」 彰彦:「いや、大丈夫だ」 真治:「いやいや絶対何かあった雰囲気じゃん、大丈夫じゃないでしょ」 彰彦:「とりあえず飯食おう。寿司は?もう来るのか?」 望結:「さっき真治が追加で注文してたから、もうちょっとかかりそう」 彰彦:「そうか」 真治:「何、さっきの事?」 彰彦:「いや・・・」 真治:「じゃあ何」 望結:「・・・私戻ってるね」 真治:「ちゃんと言ってよ、急に母さんどうしたの?」 彰彦:「ちょっと・・・落ち着きたい」 真治:「・・・」 望結:「お母さん大丈夫?」 有里子:「・・・」 真治:「俺も洗い物手伝うわ」 望結:「ああいいよ私やるから、真治お風呂入っちゃって」 真治:「あ、うん」 望結:「今日シャワー」 真治:「ああまじか」 有里子:「・・・」 望結:「お風呂にする?なんなら私やるけど」 真治:「いや良いよシャワーで、先トイレ行くわ」 望結:「お母さんお風呂入ってないでしょ、どうする?お風呂入った方が疲れとれたりするんじゃない?」 有里子:「・・・なんなの」 望結:「え」 有里子:「ああもう・・・ごめんなさいね、今日もシャワーで」 望結:「どうしたの」 有里子:「毎回当てつけ?今日はお風呂なの、シャワーなのって」 望結:「・・・」 有里子:「お風呂の掃除くらいあんたが自分でやりなさいよ。なんでシャワーでそんな毎回ガッカリされなきゃいけないの?その歳で独り立ちしてないんだから家事くらいしなさい、秀ちゃんですらやってるわよ」 望結:「・・・」 真治:「でも・・・まあ、ほら、望結も今洗い物拭いてるしさ」 有里子:「私の機嫌が悪いからでしょ?どうせ普段からやらないのに・・・家事っていうのはね、機嫌取りにやるものじゃないの」 望結:「・・・お風呂やる」 有里子:「・・・」 真治:「・・・本当に、どうしたの母さん」 有里子:「・・・どうしたのって何が」 真治:「いやなんか、急に、どうしたのかなって」 有里子:「だから急じゃないでしょ!」 真治:「・・・」 有里子:「・・・」 真治:「・・・ごめん」 有里子:「・・・」 彰彦:「有里子、話したい」 有里子:「・・・」 彰彦:「ちゃんと話す」 有里子:「・・・ちゃんと?」 彰彦:「ああ」 有里子:「何その態度!」 彰彦:「・・・」 有里子:「じゃあ最初にしっかり説明しなさいよ!分かりきった嘘ばっか・・・不倫しといてなんなの!話したい?追い込まれて嘘ついた男がなに上から目線でもの言ってんのよ!」 真治:「え、不倫?え」 彰彦:「・・・」 有里子:「何、聞かれたくなかった?」 彰彦:「・・・」 有里子:「なに黙ってるのよ。自業自得でしょ」 彰彦:「ちょっと落ち着こう」 有里子:「落ち着いてるわよ、私は落ち着いてる」 彰彦:「俺の部屋で話さないか」 有里子:「もうなに、そうやっていっつもいっつも・・・あなたは冷静、私は慌てて、馬鹿みたい」 彰彦:「真治、望結と秀介連れて外行ってくれないか」 真治:「あ、うん」 有里子:「駄目だから」 真治:「え、あ、うん」 彰彦:「いや、これは二人の問題だ。二人で話したい。外行ってくれ」 真治:「わ、分かった」 有里子:「何言ってるの!?二人の問題じゃないから!あなたの!問題でしょ?不倫をしたあなたにのみ問題があるの!私のせいでよその女性と関係もったっていう事!?」 彰彦:「・・・」 真治:「父さん・・・俺、とりあえず出るよ」 有里子:「秀ちゃん!」 真治:「・・・秀介、寝てると思う」 有里子:「望結!秀ちゃん連れてきて!」 望結:「・・・」 有里子:「望結!」 望結:「今掃除してるからー(風呂場からの声)」 有里子:「はあ・・・」 真治:「母さん、俺達外出るから・・・二人で話した方が良いんじゃない?」 有里子:「二人じゃ駄目、この際だからきっちり家族で話すの」 真治:「いやでも、俺たちが居てもなんもできないから」 有里子:「ああもううっさいうっさい!なんなの!?私に意見しないで!少しくらい言うこと聞きなさいよ!」 彰彦:「有里子」 有里子:「何!?」 彰彦:「わかった・・・家族で話す」 真治:「まじ?」 有里子:「・・・秀ちゃん呼んできて」 彰彦:「・・・」 望結:「・・・掃除終わった」 真治:「ああ、ありがと」 有里子:「・・・はあ」 望結:「聞こえてたけど・・・本当?」 真治:「・・・うん、らしい」 有里子:「・・・私が優勢」 真治:「え?」 有里子:「決めた」 真治:「・・・」 望結:「ねえ、お母さん」 有里子:「何」 望結:「ごめんなさい」 有里子:「・・・」 望結:「整形する時、お母さんもお父さんも相当反対してたけど、最終的には私のこと思って受け入れてくれたから、本当に感謝してる」 有里子:「・・・望結の人生だから」 望結:「ありがと」 真治:「・・・うん、うんよかった。なんか、ここは仲直り出来たみたいで」 有里子:「勘違いしないで」 望結:「え」 有里子:「私は決めたから」 真治:「うん、まあ、とりあえず俺トイレ行くわ」 望結:「うん」 有里子:「今から、家族の時間よ」 真治:「・・・」 望結:「・・・」 有里子:「『田河家』」 彰彦:「秀介、ちょっと居間に来てくれ」 秀介:「・・・」 彰彦:「頼むから」 秀介:「・・・」 彰彦:「秀介、起きてるんだろ、頼む」 秀介:「・・・何」 彰彦:「さっき言ったことは謝る」 秀介:「・・・で」 彰彦:「え」 秀介:「謝るんでしょ?謝ってよ」 彰彦:「・・・すまん」 秀介:「・・・」 彰彦:「居間に来てくれ」 秀介:「・・・なんか母さん怒鳴ってたけど、何かあったの」 彰彦:「俺のせいだ、とにかく来てほしい」 秀介:「・・・俺も必要?」 彰彦:「ああ、全員」 秀介:「何、父さん浮気でもしたの?」 彰彦:「・・・聞こえてたか」 秀介:「え・・・まじ?」 彰彦:「とにかく来てくれ」 秀介:「まじで、何してんだよ」 彰彦:「・・・すまん」 秀介:「なにそれやばいな」 彰彦:「ああ」 秀介:「いやまじか、そんなことあんの?うちで?浮気か、すげえな」 彰彦:「・・・面白いか」 秀介:「いや別に、まあなんかすごそうだなって」 彰彦:「・・・」 秀介:「行くわ」 彰彦:「・・・」 秀介:「・・・」 彰彦:「どうした」 秀介:「ああ・・・あのさ」 彰彦:「なんだ」 秀介:「俺生んだこと、後悔してる?」 彰彦:「・・・何言ってんだ、してるわけないだろう」 秀介:「そっか・・・ならまあ」 真治:「あ、母さん来たよ」 有里子:「・・・」 望結:「さあ、どうしよ」 彰彦:「連れてきた」 有里子:「座って」 秀介:「浮気したってまじ?」 真治:「おい」 有里子:「とにかく二人とも座って」 秀介:「いやまじか、すげえな、あてずっぽうで父さんに聞いたらそんな感じだったからびっくりしたわ」 有里子:「座りなさい」 真治:「秀介」 秀介:「父さんそっち座りなよ、母さんの真向かいのがいいでしょ」 彰彦:「・・・ああ」 秀介:「俺ここでいい?つってもここしかないけど」 有里子:「・・・」 秀介:「やべえ緊張する何話すの、ってかなんで俺たちも?二人の問題じゃないの?」 真治:「秀介」 秀介:「はーい、黙ってます」 彰彦:「・・・俺から話すべきか」 有里子:「・・・そうね」 彰彦:「その・・・秀介が言った通り、俺は、不倫をした」 秀介:「おおー」 真治:「秀介」 秀介:「はいはい」 彰彦:「・・・皆すまん、父として、夫として、やってはいけないことをしてしまったと反省してる」 有里子:「・・・」 彰彦:「有里子、本当にすまなかった」 望結:「お父さん・・・」 秀介:「土下座って・・・まじか」 彰彦:「本当に、すみませんでした」 有里子:「・・・あなたが、話したいことはそれで終わりですか」 彰彦:「え?」 有里子:「言ってましたよね、話し合いたいって、それで終わりですか」 彰彦:「・・・いや・・・ああ、まあ」 有里子:「離婚しましょう」 秀介:「え?」 彰彦:「・・・は?」 真治:「まじ?」 望結:「ちょっとお母さん」 有里子:「私を説得する材料がない今のあなたとは一緒に過ごしたくありません。ただ単に欲に駆られてよその女性と関係を持ったということならば私は離婚を望みます」 真治:「母さんちょっと待ってよ」 望結:「そうだよ、急すぎだって」 有里子:「・・・さっきも言ったけど、別に急じゃない、私には離婚をする充分な蓄積があるの」 彰彦:「・・・」 有里子:「あなたは浮気をしていました。私にとってそれが何よりの離婚を望む理由です」 彰彦:「・・・それは、すまない・・・でも離婚っていうのは」 有里子:「あなただけじゃないです。仕事探しすらしてない秀ちゃんも、揚げ足取ってばかりで私とまともな会話をしようとすらしない」 秀介:「・・・」 有里子:「望結はその歳になってもまだ実家暮らし、整形までして近所の人になんて説明していいかもわからない、家事も一切やらない怠け者」 望結:「さっきちゃんと謝ったじゃんなにそれ」 有里子:「真くんも、後先考えず急に出版辞めただなんて、秀ちゃんと一緒じゃない」 真治:「は?」 有里子:「私の言い分は以上です。離婚を望みます」 秀介:「いやいや」 真治:「ちょっと待ってよ、なんで・・・は?俺達そんなにおかしい?父さんの浮気はともかくそんな理由で離婚されなきゃいけないの?」 有里子:「そんな理由?」 望結:「そうでしょ」 有里子:「良かった、今あなた達居てくれて・・・はっきり言うけど糞よ!糞!家族として糞!何もできない何もしない、どれだけ私が我慢してきたと思ってるの・・・秀ちゃん、大学くらい卒業しなさいよ、いくらつぎ込んだと思ってるの?お金返してよ!」 秀介:「・・・」 有里子:「望結も!女優なんてやめて普通に働きなさい!無理よ、あなたのお芝居下手なんだから!整形なんてしても何も変わらないわよ、近所の人達からどれだけ白い目で見られてるか知ってるの!?」 望結:「・・・最低」 有里子:「何が最低よ、あなた達の方が最低よ、理想の家族像ぶち壊して!なんなの!」 真治:「それ、俺も入ってんのかよ」 有里子:「そうよ、勝手に仕事辞めて・・・どうするの?あなたも実家暮らしするつもり?」 真治:「するわけないだろ、俺は二人と違ってちゃんと考えてるから」 望結:「は?」 真治:「俺が一番真面目にやってきた、こいつらとは違う」 有里子:「・・・四人で話し合って」 彰彦:「え」 有里子:「回覧板行ってきます。今後どうするかをきちんと四人で話してください」 望結:「ねえごめんって、とにかく離婚とか言うのやめようよ」 有里子:「本気だから」 真治:「俺は違う」 有里子:「同じ、ちゃんと、考えて」 彰彦:「はあ」 有里子:「溜息なんてつかないで、むかつく」 彰彦:「・・・」 秀介:「話すって・・・何話せばいいの」 有里子:「自分で考えなさいよ・・・問題に対して具体的な解決案を探さないといけないんでしょ?お母さんにいつも自慢げに言ってるじゃない、しなさいよ、まず、あなたが」 秀介:「・・・」 有里子:「ちゃんと、四人で話して」 彰彦:「・・・」 真治:「父さん」 彰彦:「・・・わかった、ちゃんと話し合う」 有里子:「・・・そう」 彰彦:「離婚の件はそれから改めて考えて欲しい」 有里子:「・・・行ってきます」 彰彦:「・・・」 真治:「・・・」 望結:「・・・」 秀介:「・・・」 望結:「ってか真治仕事辞めたって本当?」 真治:「うん・・・辞めた」 望結:「何で」 秀介:「はあ・・・」 真治:「どこ行くんだ」 秀介:「いや外に、母さんとこ」 真治:「馬鹿かここに居ろ」 秀介:「え、どうすんの?母さん居ない状態で話し合って何か変わんの?無理でしょ」 望結:「何最初から無理とか言ってんの?」 秀介:「いや無理でしょ、今の母さん説得する材料とかあんの?」 真治:「お前は知らないから、昔の母さん」 秀介:「だから100回聞いた」 真治:「いいから居ろ」 秀介:「絶対追いかけた方が良い」 望結:「いい加減にして、ねえ、あんたがそれ言う?一番家庭に打撃与えてるあんたなんだよ?」 秀介:「は?姉ちゃんも同じだから」 望結:「同じじゃねえよ」 秀介:「何切れてんの」 望結:「は?」 秀介:「いやここで怒っても生産性ないから」 望結:「まじで殴るよ」 秀介:「うわ、家族でそれやったら終わりだからね」 望結:「ああ!?」 真治:「馬鹿かお前ら」 望結:「ちっ・・・」 真治:「秀介も、姉ちゃんも・・・やめろ」 秀介:「・・・行ってくる」 真治:「だから!ここに居ろ!」 秀介:「・・・」 真治:「母さんは話し合えって言ってんだよ、ちゃんとした答え出さないと」 彰彦:「すまん、俺のせいだ・・・俺が馬鹿な事したから」 真治:「いいよもう」 彰彦:「どうすればいいかな」 真治:「まあ、これまでの俺たち三人の行動が、母さんへのイライラを貯めてきたんだよね・・・んで、父さんの浮気でその蓄積が爆発したって、まあそういう事でしょ」 秀介:「じゃあそれで何話し合えっていうの」 彰彦:「家族の時間が・・・少なすぎたんだな」 真治:「・・・わかってんなら最初からしてよ」 彰彦:「すまん」 真治:「まず理由を話して、不倫の理由」 彰彦:「ああ」 秀介:「そうじゃないでしょ」 真治:「いいから、座れ」 秀介:「・・・」 彰彦:「・・・セックスレスだ」 真治:「え」 彰彦:「母さんとは、秀介が生まれてからしてない」 望結:「そんな理由?」 彰彦:「俺にとってそれは大きな理由だ」 真治:「うん、まあ・・・それで、不倫に走ったてこと?」 彰彦:「大まかに言うとそうだ」 真治:「風俗とか、そういうので紛らわすことできなかったの?」 望結:「どっちにしても最低でしょ」 彰彦:「愛情が・・・感じられなかったから」 真治:「風俗だと?」 彰彦:「いや、両方・・・俺は仕事、母さんは家庭の事、お互いにただこのリビングに居るだけの関係になってたんだよ」 望結:「・・・それってお父さんが悪いんじゃないの?」 彰彦:「・・・」 真治:「まあ全部が全部悪いってわけじゃ」 望結:「いや違うって、その夫婦の会話がないって件に関してはさ、お父さんがダメでしょ、ちゃんとお母さんと話さなきゃ」 彰彦:「そうだよな」 望結:「それで不倫したって言われても、こっちは納得できないよ」 真治:「そうかもしんないけど」 望結:「けど?」 真治:「けど・・・仕事で父さんも忙しいしさ、母さんも、二人の事で、いっぱいだったんでしょ」 望結:「だから、三人ね」 真治:「俺は違うよ」 望結:「は、会社辞めたんでしょ?一緒じゃん」 真治:「そりゃ多少は原因でもあるかもしんないけどさ、二人と違ってちゃんと大学卒業して就職したから・・・成人して実家暮らしのニートとフリーターとは別次元だから」 望結:「あ?」 真治:「だからキレんなって」 彰彦:「俺のせいだ、お前たちは悪くない、本当にすまん」 真治:「・・・はあもう、ループだよこれ」 望結:「まず認めて、プライドとかあるのかもしれないけど、真治も同じだから、お母さんは四人で話し合ってって言ったじゃん、私達全員関係することだから」 真治:「・・・ああもうわかったよ」 望結:「お父さんも、もういいから、確かにお父さんのせいでこんなことになってはいるけど、私達も相当お母さんに迷惑かけてきたから」 彰彦:「すまん」 望結:「だから」 彰彦:「ああ・・・わかった、四人の問題だな」 望結:「とにかく、もっと詳しく話して」 彰彦:「『田河家』」 彰彦:「さっきも言った通り、若いころ母さんとは、セックスレスの状態が続いてた。秀介も生まれて、俺が仕事仕事で家族の事ちゃんと見れてなかったのが一番の原因なんだけど・・・昔言われたんだ、そういうことをしようと話を持ち掛けた時、『それどころじゃない』って、その時気付けばよかったんだよな・・・俺に魅力を感じないって俺自身思い込んでたんだよ」 真治:「その時、母さんの話を聞こうとかそういう事しなかったの?」 彰彦:「俺もいっぱいだったんだよ、皆を養わないといけないし、仕事さえしてれば家族の為になると思ってた。それは反省してる」 望結:「不倫はそれから?」 彰彦:「まあ・・・四十になる手前の頃、出会い系みたいのに手出しちゃってな、恥ずかしい話、男としての俺を見てほしかった」 望結:「ネットって」 真治:「まだ続いてんの?」 彰彦:「いや、三年前には別れを切り出したんだが」 真治:「それは父さんから?」 彰彦:「ああ・・・でも、なかなか相手がそれを許してくれなくて、会社とか俺に嫌がらせの電話をしてくるんだよ」 望結:「うわ昼ドラ?」 真治:「それでさっき、母さんにばれたってこと?」 彰彦:「ああ・・・まさか俺の携帯の電話に出ると思わなくて」 望結:「はあ」 彰彦:「あーあ、なんであんな女に手出しちゃったかな」 秀介:「・・・」 真治:「じゃあ、どうするの今後」 彰彦:「それは・・・ちゃんと話はつけるつもりだ、出来れば母さんも交えて、しっかりと別れの話をしたい」 真治:「母さんも同席ってまずくない?」 彰彦:「いやでも、そうしないと納得してくれないだろ」 望結:「私はそれでいいと思う、自分が見てないと安心できないでしょ」 真治:「まあ、確かに」 彰彦:「・・・俺の話は、以上だ」 真治:「・・・うん、じゃあまあ、父さんの件はそれで母さんに伝えよう、じゃあ次俺話すよ」 彰彦:「ああ」 真治:「『田河家』」 真治:「皆も知ってると思うけど、出版社を、先週辞めた」 望結:「あ、そうだなんで?」 真治:「いや最悪だったんだよ、そりゃブラックってのは覚悟してたけど、家に帰れるのなんて週に二、三回だよ?ほとんど会社に寝泊まり」 彰彦:「それは辛いな」 真治:「入ってから数年は書店とか広告の営業でやりがいはあったけどさ、そっからようやく雑誌の編集に配属されたかと思うと、毎日毎日興味のないメディアとかアダルトコンテンツの企画やらされてさ、頑張ってやった結果、最終段階で編集長からNG出されたりてて・・・そんなんが毎回続くんだぜ?やれこれはウケが良くないとか、話題性がないとか・・・知らねえよって、誰が読んでんだよそんな記事」 彰彦:「でも編集の仕事はしたかったんじゃないのか」 真治:「俺がやりたかったのは書籍なの・・・それがこの四年間、一回も関わらせてもらえなくてさ、どんだけ頼んでもお前にはまだ早いとか言われて・・・もう最悪だったんだよね」 彰彦:「・・・まあそうか、四年間も頑張ったんだもんな、辞めたくなる気持ちもわかるよ」 真治:「・・・うん、だから、まあ今は辞めて、新しい就職先探そうかなって」 彰彦:「・・・そうだな、それでいこう」 望結:「・・・じゃあ私?」 真治:「ああ」 望結:「『田河家』」 望結:「・・・整形の理由とかはまあ、売れる為にって考えてたんだけど、ちょっと軽率すぎたかも、お母さんの事ちゃんと考えて行動してなかったって反省してる」 真治:「玄関から知らない美人入ってきてまじでビビったもん」 彰彦:「でもその顔で、順調なんだろ?」 望結:「うん・・・まあ、前よりは全然反応いいよね、古株のお客さんに隠すのはほぼ無理だけど」 真治:「二人とも整形に関しては、最終的に納得したんでしょ?」 彰彦:「ああ、俺も母さんも相当反対はしたけど、納得した」 望結:「泣きながら説得したからね」 真治:「おお、大女優じゃん」 望結:「まあでもわがまま言っちゃった分、ちゃんとしないと・・・かな」 真治:「じゃあもう整形しちゃったし、今後女優としてもっと頑張るからって伝えればいいんじゃないの?」 彰彦:「そうだな」 真治:「あと家事も」 望結:「うん、そうする」 彰彦:「よし、じゃあ秀介」 秀介:「・・・」 真治:「秀介は明確でしょ」 望結:「まあだよね」 真治:「仕事、ちゃんと探せよ?」 秀介:「・・・うん」 真治:「よし、じゃあ秀介は仕事を探す、姉ちゃんは女優の道を諦めず家事もして、俺は再就職、父さんはしっかり相手と話して今後の関係を断ち切ってもらうよう説得する、これでいいよね」 彰彦:「ああ、そうだな」 望結:「そうしよ」 彰彦:「回覧板長いな、近所だろ」 真治:「母さんも考えてるんでしょ」 彰彦:「しばらく待ってるか」 望結:「ねえお風呂入っていい?」 真治:「さっきシャワー浴びたじゃん」 望結:「なんか汗かいちゃったから、入りたい」 彰彦:「ビールでも飲むか、三人ともいる?」 秀介:「・・・」 真治:「ああ、飲もうかな」 望結:「お風呂入ってからね」 彰彦:「秀介は?」 秀介:「・・・いや、なんかもう気持ち悪いわ」 彰彦:「どうした」 秀介:「いや、まじか」 真治:「何気分悪いの?」 秀介:「・・・皆何してんの?」 望結:「最悪、お湯はりしてなかった(風呂場からの声)」 秀介「風呂じゃねえって・・・ビールじゃねえって」 真治:「・・・」 彰彦:「・・・」 望結:「お湯張しといた。私やっぱビール飲もっかな」 秀介:「だから飲むなって、違うじゃん」 望結:「ん、どうしたの」 秀介:「空気的にさ、違うじゃん、なんでそう気楽なの?」 真治:「・・・ああ」 彰彦:「・・・そうだな、すまん、ちょっと違うな、ビールはなし」 望結:「え、どうしたの?」 秀介:「だって・・・テンプレじゃん」 真治:「何が」 秀介:「・・・母さんまじでしょあれ、俺達糞って言われたんだよ?それなのにそんな答えでいいのかな」 真治:「まあ、あれは気が動転してたんだよ」 望結:「何あんたお母さんに言われて傷ついてんの?」 秀介:「いやいやいや・・・あんな冷静な母さん見たことないって、父さんの浮気の事で俺達も一緒に聞けって言われたんだよ?もういっそのこと本気で、俺達への不満ぶつけようって感じだったじゃん」 彰彦:「ああ、だから俺たちも本気で話し合ったんじゃないか」 秀介:「本気?まじかよ冗談でしょ、本気だったの?」 真治:「本気だよ」 秀介:「はは・・・まじで嘘だろ」 真治:「は?」 望結:「さっきからなんなの」 秀介:「いや皆がさ、母さんの喜ぶルートに沿って話してたから俺も乗っかっただけだし・・・姉ちゃん女優として大成できるの?これから」 望結:「は、今はそう言うしかないじゃん」 秀介:「ほら、今はって・・・その通り行動する気ないでしょ」 望結:「そういう事じゃないから、今この場では、お母さんの納得できる答え出さないといけないじゃん、その後の事は各々が何とかするんでしょ」 秀介:「いや分かってんならさ、その答えじゃなおさら駄目でしょ」 望結:「一番迷惑かけてるあんたがそれ言うなよ」 秀介:「いやいいよ別にもう、何言われても」 真治:「俺はちゃんとできる、中途採用も前々から考えてたし」 秀介:「それが無理だったら?」 真治:「は?」 秀介:「それがダメだったらどうすんの」 真治:「なんだそれ、それ以上はまだ考えてないよ」 秀介:「なんで考えないの?じゃあダメじゃん、本気で離婚止めたいんでしょ?何でそこで終わるの」 真治:「だから・・・母さんが怒ってんのは俺たちの行動だろ?それが改善できるように今話し合ったじゃん」 秀介:「じゃあそれでいいと思ってんだ」 真治:「何が言いたいんだよ」 彰彦:「心配かけてごめんな、でも今はそれで行くしかないだろ」 秀介:「父さんも何さっきから、それで行こうとか、別にこれ面接じゃないじゃん、家族の話じゃん・・・母さん俺たちに本気でぶつかってきたんだよ?だったら俺たちも本気で母さんに言わないと」 望結:「馬鹿、それじゃ喧嘩になるじゃん」 秀介:「いいじゃん喧嘩になって、離婚って言葉が出てるんだよ?嘘つくよりましでしょ」 彰彦:「嘘なんかついてない」 秀介:「じゃあさ!なんでそう楽観的なの?いや俺もさ、今になってようやく反省してるけど・・・俺このまま母さんが俺達の事許してくれても、いつも通りの生活待ってると思えないんだけど」 真治:「だから、このままじゃいつも通りにいかないから、俺たちが変わるってのを母さんに示すんだろ?」 望結:「そうだよ」 秀介:「いや違う違う、それうわべだけじゃん、その回答で元通りになるんだったら離婚したほうがましでしょ?」 望結:「何言ってんの」 秀介:「軽いんだよなんか、やばいことじゃんこれ、もっと真剣に考えないと」 真治:「真剣だよ」 望結:「いやもうほんと、まじであんたがそういう事言わないで、正直お母さんからしたら秀介が一番の原因だからね?」 秀介:「わかってるから、何、迷惑かけた人間は発言も駄目なの?」 望結:「駄目でしょ」 彰彦:「秀介、俺が言うのもなんだが、お前は何も動かなかった、今反省してるんだろ?じゃあ明日から動く、それでいいじゃないか」 秀介:「そうじゃないんだよ・・・」 真治:「あのさ、さっきからよくわかんないんだけど、結局何が言いたいの?」 秀介:「いや、なんだろ・・・俺もよくわかんなくなってきた」 望結:「はあ?」 秀介:「なんか形式的っていうか、本当にこれで合ってるのかなって」 望結:「合ってるよ」 秀介:「自分の事だけ考えてる気がして」 望結:「だから」 秀介:「いや聞いて、俺も、兄ちゃんも姉ちゃんも、父さんも、多分母さんの気持ちまだわかってない気がする・・・あの感じさ、ただ俺たちに変わってほしいから離婚って言葉出したとかじゃなくてさ、完全に離婚したいって、そう感じ取れたんだよね」 真治:「・・・それはさすがにないだろ」 彰彦:「こういっちゃなんだが・・・この程度で離婚なんてされたらたまったもんじゃない」 秀介:「でも離婚なんて言葉初めてでしょ」 真治:「それは脅しだろ」 彰彦:「確かに、これまで以上に怒ってたことは間違いないけど、離婚はない、あってもあっちも困るだけだ」 望結:「だよね、さすがに本気で離婚とか考えてないでしょ」 真治:「だよな」 望結:「ってか、芝居下手くそって言われてめっちゃムカついたし、まじでなんなの?朝ドラしか見てない人に言われたくないんだけど」 彰彦:「望結は全然うまいと思うぞ」 望結:「あとさ、私の整形のことで近所の人から白い目で見られるとか知らないんだけど、お母さんも納得したんだよ?ってかさっき言ってたし、望結の人生だからって」 真治:「ああ俺もむかついたわ、秀介と一緒って、さすがに違うから」 秀介:「・・・それ言えばいいじゃん」 真治:「は?」 秀介:「皆そういう事言えばいいんじゃないの?母さんに」 望結:「だから、喧嘩になるから」 真治:「母さんの気持ち逆なでして何になるんだよ」 秀介:「でも実際皆そう思ってるんでしょ?じゃあ本音言えばいいじゃん、なんだよ、母さんのご機嫌取りになってさ、家族だよ?言いたいこと言おうよ」 真治:「・・・家族だからだろ」 秀介:「は?」 真治:「俺だって姉ちゃんが整形したって話、聞かされてないことにむかついたから言ったよ、家族なのに何でだよって」 秀介:「じゃあそれと同じじゃん」 真治:「今回に関しては、母さんが圧倒的に上だろ?気使って機嫌取るしかねえだろ」 秀介:「家族だから言いたいこと言わないとダメじゃないの?」 真治:「お前は言い過ぎなんだって、母さんに対して特に」 望結:「しかも揚げ足取りながら」 秀介:「・・・」 彰彦:「普通にすればいいんだよ、母さんもああ言ってたけど、お前たちの事を愛してるのは確かだから、今は母さんの言うことを聞こう」 真治:「そうだよ、お前ももう餓鬼みたいなこと言うなよ、それこそ空気読めって」 望結:「もうこれでいいよね」 彰彦:「ああ、母さん遅いな」 秀介:「だからよくないって!」 望結:「もう何あんたほんと!」 秀介:「『田河家』」 真治:「おい騒ぐなよ」 秀介:「ああもう気持ち悪いわ!何これ、田河家ってこんなんなの?おかしいでしょ!」 望結:「だから!あんたなんかにそんなこと言われる筋合いないから!」 秀介:「『田河家』」 彰彦:「おいやめろ」 望結:「死ねまじで」 彰彦:「『田河家』」 秀介:「これで一旦収集ついたらどうせまた不倫すんだろ?ネットで出会っておいて一人なわけないもんな!?」 彰彦:「なんだと」 真治:「秀介、ここで喧嘩してどうすんだよ」 望結:「『田河家』」 秀介:「うるせえな!上から目線で話してんじゃねえよ!何にも知らねえくせに人生の先輩ぶんなよ!」 真治:「は?何言ってんのお前?」 秀介:「なんでも知ってるみたいな顔すんなよ」 真治:「大学も卒業できない馬鹿に言われたくねえわ」 秀介:「は?」 真治:「『田河家』」 望結:「秀介プライドだけ一丁前だよねほんと」 秀介:「姉ちゃんにだけは言われたくないわそれ」 望結:「マジでうざい何あんた」 秀介:「『田河家、チャイム』」 真治:「チャイム鳴ってる・・・」 彰彦:「母さんか」 真治:「・・・行ってくるわ」 秀介:「俺話すから」 彰彦:「何を」 秀介:「母さんへの愚痴」 望結:「は?何言ってんの」 真治:「ああ、お寿司来たよー(玄関からの声)」 秀介:「俺言うから・・・」 有里子:「『田河家、朝』」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・おはよ」 有里子:「おはよう」 秀介:「兄ちゃんは?」 有里子:「帰ったよ、朝早く」 秀介:「父さんも仕事?」 有里子:「そうみたい」 秀介:「お姉ちゃんは?」 有里子:「まだ寝てると思う、秀ちゃん、起こしてきて」 秀介:「・・・うん」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・本当に、離婚するの?」 有里子:「うん、来週までに協議書っていうのを作るみたい」 秀介:「・・・そう」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・」 有里子:「秀ちゃんは?仕事探すんでしょ?」 秀介:「うん」 有里子:「頑張って、応援してる」 秀介:「・・・」 有里子:「そろそろできそうだから、望結呼んできて」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「ごめんなさい・・・」 有里子:「・・・うん」

有里子:「秀ちゃん、今日何食べたい?」 秀介:「・・・何でもいいよ」 有里子:「久しぶりにお寿司でもとろっか」 秀介:「何でもいいって」 有里子:「・・・わかった、お寿司とるね」 秀介:「・・・」 有里子:「あ、もしもし、出前とりたいんですけど・・・はい、十種盛り一人前と・・・あ、ちょっと待ってくださいね、秀ちゃん海鮮丼いる?ちらしとか、あなご丼もあるけど」 秀介:「・・・海鮮」 有里子:「わかった、あ、すみませんあと海鮮丼一つで・・・はい、以上で、え・・・ああ、そうですかすみません。秀ちゃん、あと七百円分頼まないといけないんだけど食べたいのある?」 秀介:「ん」 有里子:「ん?何?」 秀介:「ん」 有里子:「どうしたの?」 秀介:「チラシ・・・」 有里子:「ああごめんごめんわかんないよね、はい」 秀介:「・・・」 有里子:「決まった?」 秀介:「まだ」 有里子:「すみません、ちょっと待っててくださいね。息子がまだ探してまして」 秀介:「うっさいよ」 有里子:「・・・それにしてもあれですね、最近急に暑くなりましたね。宅配のお仕事も見てたら大変そうで、こんな暑い中色んな所行って・・・ねえ、そうですよねえ。若い人多いしそこら辺は体力あるから大丈夫なんでしょうけど・・・本当偉いですよ、最近だと女性も多いですし」 秀介:「・・・いらない」 有里子:「ん?決まった?」 秀介:「やっぱいい」 有里子:「え、でもそれじゃあ注文完了しないよ」 秀介:「飯いい」 有里子:「ええ、お母さんはお寿司食べたいな」 秀介:「一人で食っていいよ」 有里子:「それは寂しいよ・・・一緒に食べよ、ね?」 秀介:「俺はいいや」 有里子:「・・・一応秀ちゃんの分とっとくね」 秀介:「いらないって」 有里子:「えっと、海鮮丼もう一つ追加で」 秀介:「だから」 有里子:「あ、田河です・・・緑区上大和田町三の一、東野スカイ四○一です。はい、お願いします。お待たせしてすみません。はい、宜しくお願いします。はいーすみませーん」 秀介:「いらないから」 有里子:「夜中に食べたくなっても知らないよ?」 秀介:「ならないから」 有里子:「・・・お母さんちょっと回覧板回してくるね」 秀介:「・・・ってかさっきの何?」 有里子:「え?」 秀介:「いやさっきの、ああいうの言われたらさ、俺もモチベーション下がるっていうか、なんでそう気使えないかな」 有里子:「何のこと?」 秀介:「え、無意識で言ってんの?だとしたらやばいって直しようないじゃん」 有里子:「ん、私なんか変な事言ってた?」 秀介:「いやまじか、怖いわ、言ってたじゃん、最近若い子が暑い中働いてて偉いとかどうとか」 有里子:「え」 秀介:「あれさ、完全に俺への当てつけだよね?気兼ねない会話にそういうの入っちゃってるって気付くじゃん普通」 有里子:「・・・ああ、ごめんね」 秀介:「いやだから、それが問題なんだって。ごめんねでその問題が解決できるならいいけどさ、それじゃ次もそういったミスが起こって俺が傷つくわけじゃん」 有里子:「でも、分かんなかったし・・・そういうの言わないようにするから、ごめんね」 秀介:「んん・・・それじゃ意味ないんだよな、母さんは次そういう事言わないようにしたいわけでしょ?だったら今何をして、今後どういった事をするべきか具体的な解決方法を探さないといけないと思うんだよね」 有里子:「・・・」 秀介:「今母さんはごめんねって言って問題から逃げようとしてるけどさ、それは何にも解決したことになってないと思う」 有里子:「問題かな・・・」 秀介:「問題だよ、ほらそういうとこ、分かってないんだもん」 有里子:「・・・」 秀介:「あとさ、出前の注文遅れてることを俺のせいにしないでくれる?息子が選んでましてみたいな・・・あれさ、別に母さんが勝手に決めてもいいわけじゃん、いちいち俺に決めさせようとしてもチラシ持ってない俺が分かるわけないじゃん」 有里子:「・・・そうだね」 秀介:「うん、そういっためんどくさいロスをさ、嫌がるくらいだったら母さんが全部決めてよかったはずだし」 有里子:「・・・別に嫌がってたわけじゃないんだけどね」 秀介:「じゃあ言って欲しくなかったわ、ああいうこと」 有里子:「・・・はあ」 秀介:「・・・え、なんでため息つくの?」 有里子:「ああ、違うごめん」 秀介:「あ、いや別にいいよ?俺面倒くさい?でもそういう思考になるように育てたのって母さん達だし、まあ学校生活とか色々あると思うけど、圧倒的に家族といる時間長かったわけだしさ、しょうがないと思うんだよねもう・・・そういう、息子です俺は」 有里子:「・・・回覧板行ってくるね」 秀介:「・・・」 有里子:「はあい」 彰彦:「ただいま」 有里子:「おかえりなさい。今日飲み会じゃなかったの?」 彰彦:「ああ無くなった」 有里子:「そう、ちょうどお寿司出前で取ったんだけど、食べる?」 彰彦:「ああ、でも二人前じゃないのかそれ」 有里子:「そうなんだけど、秀ちゃんいらないって」 彰彦:「ん?じゃあ何で二人前取ったんだ」 有里子:「一応ね」 彰彦:「・・・なんかまたぐちぐち言ってんのか?」 有里子:「いやそういうわけじゃなくてね。今はお腹すいてないみたいだから、後で食べるかなって、私が勝手に」 彰彦:「まあ、それならいいけど・・・ちょっと話さないとな」 有里子:「あんまり、ね」 彰彦:「ただいま」 秀介:「・・・」 彰彦:「ただいま」 秀介:「ん」 彰彦:「・・・今日は何してた」 秀介:「何が?」 彰彦:「仕事探してみたか?」 秀介:「うん、まあぼちぼち」 彰彦:「・・・ちょっと話すか」 秀介:「いいよ別に」 有里子:「回覧板行ってくるね」 彰彦:「母さんも、ちょっと座って」 有里子:「ええ、でも回覧板」 彰彦:「明日でもいいだろ」 秀介:「回覧板俺行くよ」 彰彦:「お前が行ってどうする」 秀介:「・・・何話すの?もういいって、自分のペースがあるから」 彰彦:「どうせ今日も家でゴロゴロしてたんだろ」 秀介:「・・・じゃなかったらどうすんの?」 彰彦:「どうなんだ」 秀介:「俺の質問に答えてよ」 彰彦:「どうなんだって」 秀介:「会話になんないわ。それじゃだめでしょ、議論の意味がないじゃん」 彰彦:「議論じゃない、確認作業だ」 秀介:「は?何それ、そういうの毎回されたらストレス溜まるって知ってる?」 彰彦:「今日が初めてだろ」 秀介:「いやこれからを含めてって話」 彰彦:「そうやって揚げ足とろうとして、楽しいか?」 秀介:「何言ってんの?違うじゃん、俺は事実を言ってるだけだから、それを揚げ足とか単純に逃げてるだけでしょ、会話から」 彰彦:「それはお前だろ!」 有里子:「お父さん」 秀介:「うわ、何急に、普通に不愉快なんですけど」 彰彦:「お前が大学辞めて半年たつ、約束はどうした。こっちも限界だぞ」 秀介:「・・・あのさ、限界とかさ、そういう言葉家族で使わないでほしいんだけど・・・いや俺もさ、ここにいる以上迷惑はかけないようにって、努力してるつもりだよ?」 彰彦:「努力って」 秀介:「いや、洗濯もの取り込んだり、風呂掃除したり、言われたらトイレ掃除だってやってるし」 彰彦:「それは母さんから聞いてる。でもそれとお前が就職しないで毎日家で過ごしているってことは、別だ」 有里子:「秀ちゃん家事手伝ってくれて助かってるよ?」 秀介:「・・・」 彰彦:「どうすんだ。これ以上仕事につかない状況が続くんなら、こっちにも考えがあるぞ」 秀介:「え、何考えって、絶縁?」 有里子:「何言ってるの違うよ・・・知り合いの奥さんのご家族がコンビニ経営しててそこでバイトで入らせてもらおうかって」 秀介:「は、勝手に話進めないでよ」 彰彦:「じゃあ出てってもらう」 秀介:「ほら絶縁じゃん」 有里子:「お父さん」 秀介:「・・・別にいいけど、でもいいの?俺はここ以外に住む場所ないし、金もないし、後々後悔するのそっちだよ?」 彰彦:「・・・もうしてる」 秀介:「・・・」 有里子:「本気じゃないからね」 真治:「ただいまー(玄関からの声)」 有里子:「え?」 真治:「ただいまー(玄関からの声)」 彰彦:「誰だ?」 有里子:「あれー!?どうしたの?(リビングからの声)」 彰彦:「どうしたー」 有里子:「真くんー!帰ってきたー(リビングからの声)」 彰彦:「え?」 真治:「連絡せずにごめんね」 有里子:「ほんとどうしたの?仕事は?」 真治:「んん、ちょっと色々あってさ」 有里子:「何色々って」 真治:「とりあえず、中入るわ」 有里子:「そうね、おとーさーん」 彰彦:「おお」 真治:「ただいま」 彰彦:「どうしたんだ急に」 真治:「ああごめんね、連絡もなしに」 彰彦:「いやそれはいいけど・・・どうする、酒でも飲むか?」 真治:「ああ・・・うん飲む」 秀介:「眠いから寝るわ」 有里子:「もう寝るの?せっかくだし皆でいない?」 真治:「秀介大学は?休み?」 秀介:「もういいよ」 真治:「ん、どうしたの?」 秀介:「寝るね」 有里子:「まあ、眠くなかったら、ね、皆でお酒飲む?」 秀介:「だから眠いって」 彰彦:「もういいよ勝手にさせとけ、明日早く起きろよ、さっき言った事忘れるな」 秀介:「・・・」 有里子:「秀ちゃんおやすみ、歯磨きは?」 秀介:「さっきした」 有里子:「そう、おやすみ」 秀介:「・・・」 彰彦:「・・・はあ」 真治:「秀介どうしたの、大学もう休みだっけ」 彰彦:「ああ、言ってなかったな、辞めたんだよあいつ」 真治:「え?」 彰彦:「それよりどうした急に帰ってきて」 真治:「え・・・ああ、まあ報告を、明日には戻るよ」 彰彦:「ちょっと待って、ビール」 有里子:「ああはいはい」 彰彦:「いい知らせではなさそうだな」 真治:「そう、だね」 彰彦:「上手くいってないのか?」 真治:「ていうか、上手くいかなかった」 有里子:「冷凍の枝豆あるけど食べる?」 彰彦:「ん、ああ・・・どういうことだ」 真治:「・・・辞めた、会社」 有里子:「え!?」 彰彦:「辞めたのか?じゃあ今何してんだ」 真治:「まあニート・・・つっても辞めたの先週なんだけど」 彰彦:「・・・はあ」 真治:「まあそれが報告なんだけど」 有里子:「でもちゃんとした出版の会社なんでしょ?ちょっともったいない気がするけど・・・」 彰彦:「そうだよな、相当頑張って入社したんだろ?今からでも戻れないのか?」 真治:「んん・・・そこに居たくないから辞めたんだよね」 有里子:「・・・そう」 彰彦:「とりあえず、飲むか」 真治:「うん」 彰彦:「こういう時、何言えばいいんだ」 真治:「何が?」 彰彦:「いや、乾杯の音頭」 真治:「こういう場合乾杯じゃないでしょ」 彰彦:「じゃあなんだ」 有里子:「献杯?」 真治:「いや誰も死んでないから」 彰彦:「不謹慎だな」 有里子:「ああごめんなさい」 真治:「まあ言い換えれば、会社辞めれてよかったし・・・うん、俺の、退職祝いに・・・」 有里子:「あ、枝豆」 真治:「・・・乾杯」 秀介:「『檻、厚顔無恥な一門、それと独立』」 真治:「秀介ー(廊下からの声)」 秀介:「・・・」 真治:「秀介ー?部屋?(廊下からの声)」 秀介:「・・・」 真治:「開けるぞ(廊下からの声)」 秀介:「・・・」 真治:「寝てんの?」 秀介:「・・・」 真治:「お前の狸寝入りわかりやすいわ」 秀介:「・・・何」 真治:「ほら」 秀介:「閉めて」 真治:「ああ」 秀介:「・・・で何」 真治:「・・・仕事辞めたわ俺」 秀介:「え、まじで、なんで」 真治:「まあ色々あってな」 秀介:「もったいな」 真治:「いやお前もだよ、さっき聞いてびっくりしたわ、何で大学辞めたんだよ」 秀介:「・・・疲れたから」 真治:「何に?」 秀介:「勉強」 真治:「ああ、まあ経済難しいもんな」 秀介:「統計学とか、マルクスとか・・・何の意味があんのって感じじゃん。ミクロもマクロも意味とか忘れたし」 真治:「でもお前が望んで入った大学だろ?」 秀介:「いやそれは、単に東京行けたらいいなって感じだったし、元から経済興味なかったんだよね。俺がいけそうな都内の大学ってそこくらいしかなかったし」 真治:「もっかい大卒の資格取る気ないの?」 秀介:「ないかな・・・兄ちゃんこそ、出版の仕事辞めてどうすんの?」 真治:「そうだなあ、しばらくはニート軽く経験してから再出発しようかなって」 秀介:「ここに戻るの?」 真治:「いやそれはないわ、さすがに成人した子供三人実家暮らしってやばいだろ」 秀介:「確かに、笑い事じゃないけど」 真治:「姉ちゃんは?」 秀介:「まだ仕事」 真治:「まだ女優やってんの?」 秀介:「だね」 真治:「もう二十七だろ?高校の演劇部の頃からだから・・・芸歴十二年か、すげえなベテランじゃん」 秀介:「それ言うと姉ちゃんめっちゃ怒るよ」 真治:「だろうな」 秀介:「あの人沸点低いし」 真治:「な・・・てか田河家って喜怒激しいよな」 秀介:「だね」 真治:「母さんとか今あんなだけどさ、お前が生まれる前超怖かったんだよ?ヒステリック半端なくてさ」 秀介:「100回聞いた」 真治:「いやでも、お前の事相当心配してるからさ」 秀介:「だろうね」 真治:「まあわかってんなら、あんま困ること言うのやめろよ?」 秀介:「何困ることって」 真治:「なんか父さんが言ってたぞ?揚げ足とるばっかって。」 秀介:「いや違う違う、事実を述べてるだけなの、それを揚げ足っていう言葉で片づける方がおかしいと思うんだよね」 真治:「ああ、そういう理論ね」 秀介:「理論っていうか」 真治:「まあでもそれはさ、説得力ないだろ」 秀介:「は?」 真治:「そういうのは、実績と能力がある人間が言うことによって初めて正論として成り立つんだよ・・・今のお前が言っても、単純に嫌な奴にしかならないから」 秀介:「・・・」 真治:「むかつく?」 秀介:「いや」 真治:「あ、そう、俺だったらムカつくな」 秀介:「何それ・・・まあ兄ちゃん合ってると思うよ」 真治:「・・・へえ」 秀介:「何」 真治:「いや、ちゃんと理解はしようとするんだなって」 秀介:「は?」 真治:「お前はさ、根はちゃんとしてるんだよ。だからこういう事言われてもしっかり受け止めてる、真面目な証拠だわな」 秀介:「良いから別に」 真治:「いやマジで、お前やれば出来るんだよ。なんか今はそういう事言っちゃう時期なんだよな」 秀介:「・・・」 有里子:「秀ちゃん、まだ起きてる?(廊下からの声) 」 真治:「ああ起きてるよ」 有里子:「真くん、秀ちゃんと話してた?(廊下からの声)」 真治:「うん」 有里子:「開けるね(廊下からの声)」 秀介:「いやいいよ」 有里子:「回覧板行ってくるね。」 秀介:「それ部屋入んなくても言えるでしょ、わざとかよ」 真治:「・・・秀介も頑張るって、母さんと父さんに心配かけたくないって言ってたよ」 秀介:「何言ってんの」 有里子:「ありがと、お父さんも本気で言ってたわけではないからね」 秀介:「いや本気でしょ」 有里子:「そんなことないよ」 彰彦:「本気だぞ」 秀介:「ほら」 彰彦:「約束したからな、もう半年経ってる。明日何もしないんだったら出てってもらう」 真治:「なあ、秀介も考えてはいるみたいだからさ」 彰彦:「考えてるだけじゃ駄目だ動きなさい」 秀介:「もういいよ、おやすみ」 彰彦:「本気だぞ」 真治:「・・・まあ、父さんの言い方はあれだけど、その通りっちゃその通りだから」 有里子:「明日、動けるといいね」 秀介:「わかってるから、おやすみ」 有里子:「うん、おやすみ。あ、歯磨きは?した?」 秀介:「だからしたって、もう寝るから、ほら」 真治:「分かった分かった、おやすみ」 有里子:「秀ちゃんおやすみ」 秀介:「扉閉めといて」 有里子:「はーい」 真治:「・・・こりゃ歯磨いてないな」 有里子:「とりあえず、回覧板行ってくるね」 真治:「うん」 有里子:「あ、お寿司くるんだ」 真治:「え、寿司とったの?」 有里子:「二人前だけど、真ちゃんとお父さんで食べて」 真治:「いや悪いよ」 有里子:「いいからいいから」 望結:「ただいまー」 有里子:「あ、お帰り」 望結:「うん」」 有里子:「お稽古どうだった?」 望結:「別に、いつも通り」 有里子:「そっか、お寿司とったんだけど二人前しかなくて」 望結:「ああそうなんだ、いいよいいよ食べてきたから」 真治:「え・・・」 望結:「あれ、真治帰ってたの?」 真治:「え・・・」 有里子:「そう、さっき急に、連絡なくてびっくりしたのよ」 真治:「え・・・誰」 有里子:「あれ?」 望結:「ああ、そういや言ってなかったっけ。」 真治:「え・・・姉ちゃん!?」 望結:「どう、見違えた?」 有里子:「望結・・・整形したのよ」 真治:「え・・・ええ」 望結:「何その反応」 真治:「本当に姉ちゃん?」 望結:「そうだけど」 真治:「なんも言わなかったの?」 望結:「何が」 真治:「いや二人、母さんも父さんも何も言わなかったの?」 有里子:「・・・そりゃ反対したよ?まあでも望結が売れる為には整形が必須だって、かたくなだったから」 真治:「え、それで?」 望結:「何あんた整形反対派?」 真治:「いやそういうわけじゃないけどさ」 望結:「韓国とじゃ普通だよ?むしろ親が勧めてるくらいだし」 真治:「いやだからそういうのじゃないじゃん、これは田河家の・・・なんていうか、問題でしょ」 望結:「何問題って」 真治:「いやせめて一言言ってよ、プチとかならまだしも・・・別人じゃん」 望結:「人の顔指ささないで」 真治:「いや、え・・・は?」 望結:「何怒ってんの」 真治:「怒ってるっていうか・・・あれ怒ってんのかな、いや普通に考えてさ、久々に実家帰って来て身内の顔変わってたらビビるじゃん」 彰彦:「望結お帰り」 望結:「ただいま、てか今日お風呂?」 有里子:「あ、ごめん今日もシャワー」 望結:「まじか・・・おっけ」 有里子:「ごめんね」 望結:「いいよいいよ」 有里子:「お父さん先入ったら?もう寝ちゃいそうだし」 彰彦:「ああ望結先でいいよ」 望結:「じゃあ先入るね」 真治:「え・・・何その感じ、もう普通なの?」 有里子:「え?」 真治:「いやだから・・・姉ちゃんの整形、話し合ったんでしょ?何でそうなるの?」 彰彦:「望結が自分で決めて自分の金でやったんだ、文句ないだろ」 真治:「違うって・・・なんで俺に一言ないの?」 望結:「何あんた拗ねてんの?」 真治:「いやだから・・・、俺たち家族じゃん。そういう、なんか、大きな出来事って共有するもんじゃないの?」 彰彦:「・・・ごめん、ちょっとメール来た」 望結:「お風呂入るね」 真治:「いやちょっと待ってよ、父さんも、俺今大事な話してるの分かるよね?」 彰彦:「仕事なんだよ、返さないと」 真治:「秀介の事も、俺言わなかったけどさ、父さん言ってよ、大学辞めたんでしょ?大事じゃん」 有里子:「真くんにちゃんと連絡しなかったのはごめんね。いつかはちゃんと話さないとなって思ってたんだけど」 真治:「いつかって、すぐしてよ」 有里子:「忘れちゃってて」 真治:「何それ」 望結:「ねえもういい?風呂入りたいんだけど」 彰彦:「俺もちょっと、メール返すから」 真治:「だから待てって、え、何。俺がおかしいの?」 望結:「おかしいよ」 真治:「いやいや違うでしょ。ねえ、なんか一言俺にあるんじゃないの?」 望結:「何一言って」 有里子:「ごめんねほんと」 真治:「いやそういうのいいから、ねえ父さんに聞いてるんだけど」 彰彦:「わかった後でな」 真治:「いや今だろ」 有里子:「真くん仕事で忙しそうだったし連絡するタイミング逃しちゃって」 真治:「母さんちょっと黙って!」 有里子:「・・・」 彰彦:「なにそんな怒ってんだ」 真治:「そりゃ怒るだろ!身内の顔がこんなに変わってるんだよ?その事について今まで一言もないとかありえないだろ」 望結:「風呂入る」 真治:「父さんが言わなきゃいけなかったことじゃないのかよ」 彰彦:「整形くらいでぎゃあぎゃあ言うな」 真治:「・・・は?無関心すぎるだろ」 彰彦:「なんだと」 有里子:「お父さん」 彰彦:「無関心だと!?俺が!?ふざけるなよ!俺がどれだけお前達の為に動いてきたと思ってるんだ!」 真治:「・・・なんだよそれ」 彰彦:「・・・メール返してくる」 真治:「・・・まじでなんなんだよ」 有里子:「ごめんね」 真治:「・・・え、俺に連絡しなかった理由ってそれ?」 有里子:「え」 真治:「仕事で忙しそうだって、言ってたじゃん」 有里子:「うん・・・真くん帰ってきた時に言おうって話してたの」 真治:「何でそうなんの?普通にその話になった時電話でもくれればいいじゃん」 有里子:「ごめん」 真治:「姉ちゃんは整形する前にちゃんと二人に相談したんだよね」 有里子:「うん」 真治:「だったらさ、そういう事って家族全員で話し合う流れになんないの?」 有里子:「・・・ごめんね」 真治:「ごめんじゃなくて・・・え、秀介もその時居たの?」 有里子:「うん、秀ちゃんは整形まあ良いんじゃないって」 真治:「適当かよあいつ・・・ってかなんだよ、俺だけのけ者かよ」 有里子:「・・・ちゃんと思ってるよ?」 真治:「は?」 有里子:「真くんの事、ちゃんと考えてる」 真治:「だからいいよそういうの」 有里子:「ここ半年、秀ちゃんあんな感じだし、望結もずっと女優さんやっててなかなか実家から出られないし・・・お父さんちょっと疲れてるのよ」 真治:「まあそうだろうけど」 有里子:「真くんはちゃんと就職して外で頑張ってるでしょ?あんまり家族のことで真くん疲れさせないようにって、お父さんなりに気使ってるのよ」 真治:「・・・」 有里子:「だからね、無関心なんてことないの、お父さんが一番皆の事考えてると思うから」 真治:「・・・」 有里子:「私がしっかりしなきゃいけないんだけどね、望結と真くんには子供の頃迷惑かけちゃったし」 真治:「・・・まあ、怖かったよ、あの頃の母さん」 有里子:「ごめんね本当に」 真治:「父さんに皿投げてた頃は鬼にしか見えなかったわ」 有里子:「今も鬼になれるよ?」 真治:「怖いってやめてよ」 望結:「もう喧嘩終わった?(風呂場からの声)」 真治:「うわあ、声は姉ちゃんだわ」 望結:「何ー?(風呂場からの声)」 真治:「風呂場から知らない美人出てくんだろ?」 有里子:「昔の望結の方が美人さんに私は見えたんだけどね」 真治:「今の方が良いでしょ」 望結:「だから何ー?(風呂場からの声)」 真治:「なんでもない」 望結:「あっそー(風呂場からの声)」 真治:「そういやお寿司とったんだっけ」 有里子:「うん。三十分くらいかかるって言ってた」 真治:「今から追加頼む?」 有里子:「そうしよっか、私も食べたいし」 真治:「元は母さんのだから、俺自分で頼むよ。姉ちゃんの分も」 有里子:「そう?じゃあお言葉に甘えて」 真治:「うん」 有里子:「あ、そうだ回覧板回さないと」 真治:「秀介に行かせたら?」 有里子:「え、でも秀ちゃん嫌がるから」 真治:「人のこと言えないけど、母さん秀介に甘すぎない?」 有里子:「うん・・・でもあの子、今はそういう時期だから」 真治:「ああ・・・分かってんだ」 有里子:「ん?」 真治:「いやなんでもない、あ、どこのすし屋?」 有里子:「そこにチラシ置いてある」 真治:「ああここか、久々だな」 有里子:「じゃあ回覧板行ってくるね」 真治:「うん・・・あ、後、別に俺整形反対とかじゃないから」 有里子:「そう・・・」 真治:「まあ、もう顔変わっちゃってるけど」 有里子:「ちゃんと考えてくれてありがとうね」 真治:「父さんにも、謝っとくよ」 有里子:「うん・・・ありがとう」 真治:「・・・母さんも、ごめんね怒鳴っちゃって」 有里子:「全然大丈夫、いざとなったらお皿あるし」 真治:「怖いって」 有里子:「じゃあ行ってくるね」 真治:「うん」 彰彦:「どっか行くのか」 有里子:「うん、回覧板」 彰彦:「そうか」 有里子:「真くんごめんって。お父さんも許してあげてね」 彰彦:「・・・ああ」 有里子:「メール・・・仕事、忙しそうね」 彰彦:「まあ、ちょっと最近バタバタしててな」 有里子:「あんまり無理しないでね。秀ちゃんの事は出来る限り私が見るようにするから」 彰彦:「ああ、ありがとう。トイレいいか?」 有里子:「うん、私も回覧板行ってくるね」 真治:「トイレー」 彰彦:「おお」 真治:「あ・・・いいよ」 彰彦:「真治先行けよ」 真治:「良いよ先入って」 彰彦:「俺が先だと臭いだろ」 真治:「何父さんうんち?」 彰彦:「いや違うけど」 真治:「俺うんちだから、先良いよ」 彰彦:「・・・そうか」 真治:「ああ父さん・・・あの、ごめん」 彰彦:「・・・まあ、俺も怒鳴って悪かった。後、連絡なくてすまん」 真治:「・・・うん」 有里子:「仲直り出来た?」 真治:「・・・回覧板行くんでしょ?」 有里子:「うん」 真治:「行ってらっしゃい」 有里子:「お父さん携帯鳴ってるよ」 彰彦:「え・・・ああ、良いよほっといて(トイレの中からの声)」 有里子:「わかった。じゃあ行ってきますー」 真治:「俺も寿司頼まないと」 有里子:「ねえ、ずっと鳴ってるよー?」 彰彦:「ほっといていいって(トイレからの声)」 有里子:「会社の人でしょ?でないとまずいんじゃない?」 彰彦:「だからいいって(トイレからの声)」 有里子:「もしもし田河です、すみません今主人手が離せなくて」 彰彦:「おい!何してんだ!(トイレからの声)」 有里子:「・・・え?」 彰彦:「ちょっと待ってちょっと待って何してんだよ・・・!あ、もしもしすみません、また後で掛けなおしますので、はい、失礼します」 有里子:「・・・」 彰彦:「・・・会社の電話に勝手に出るなよ」 有里子:「・・・誰?」 彰彦:「・・・会社の人だよ。回覧板は、行かないのか」 有里子:「・・・誰」 彰彦:「だから会社の人だって」 有里子:「・・・違う」 彰彦:「・・・」 有里子:「あなたが彰彦さんの奥さんですかって」 彰彦:「・・・」 有里子:「愛していますとお伝えくださいって」 彰彦:「え・・・なんだそれ、いたずらか?」 有里子:「嘘つかないで」 彰彦:「嘘じゃないって」 有里子:「履歴見せて」 彰彦:「おいやめろよどうした」 有里子:「見せて」 彰彦:「なんだ急にやめろって」 有里子:「急じゃないでしょ、見せて!」 彰彦:「いい加減にしろ!」 有里子:「・・・何よ」 彰彦:「・・・」 有里子:「ちゃんと言って」 彰彦:「・・・」 有里子:「ねえ・・・」 真治:「父さんー?(リビングからの声)」 有里子:「答えて・・・」 彰彦:「・・・」 望結:「どうしたのかな(リビングからの声)」 真治:「わかんない(リビングからの声)」 有里子:「答えて」 彰彦:「・・・」 真治:「どうしたの」 有里子:「・・・黙ってるってことは、そういうことでしょ」 彰彦:「・・・」 望結:「なんかあったの?」 有里子:「・・・」 真治:「本当どうしたの?」 有里子:「・・・お寿司とった?」 真治:「え、うんさっき電話した」 有里子:「お父さんは・・・どうするの」 彰彦:「・・・」 有里子:「そう・・・もういい」 彰彦:「・・・」 真治:「え、どうしたの」 望結:「何かあったの?」 彰彦:「いや、大丈夫だ」 真治:「いやいや絶対何かあった雰囲気じゃん、大丈夫じゃないでしょ」 彰彦:「とりあえず飯食おう。寿司は?もう来るのか?」 望結:「さっき真治が追加で注文してたから、もうちょっとかかりそう」 彰彦:「そうか」 真治:「何、さっきの事?」 彰彦:「いや・・・」 真治:「じゃあ何」 望結:「・・・私戻ってるね」 真治:「ちゃんと言ってよ、急に母さんどうしたの?」 彰彦:「ちょっと・・・落ち着きたい」 真治:「・・・」 望結:「お母さん大丈夫?」 有里子:「・・・」 真治:「俺も洗い物手伝うわ」 望結:「ああいいよ私やるから、真治お風呂入っちゃって」 真治:「あ、うん」 望結:「今日シャワー」 真治:「ああまじか」 有里子:「・・・」 望結:「お風呂にする?なんなら私やるけど」 真治:「いや良いよシャワーで、先トイレ行くわ」 望結:「お母さんお風呂入ってないでしょ、どうする?お風呂入った方が疲れとれたりするんじゃない?」 有里子:「・・・なんなの」 望結:「え」 有里子:「ああもう・・・ごめんなさいね、今日もシャワーで」 望結:「どうしたの」 有里子:「毎回当てつけ?今日はお風呂なの、シャワーなのって」 望結:「・・・」 有里子:「お風呂の掃除くらいあんたが自分でやりなさいよ。なんでシャワーでそんな毎回ガッカリされなきゃいけないの?その歳で独り立ちしてないんだから家事くらいしなさい、秀ちゃんですらやってるわよ」 望結:「・・・」 真治:「でも・・・まあ、ほら、望結も今洗い物拭いてるしさ」 有里子:「私の機嫌が悪いからでしょ?どうせ普段からやらないのに・・・家事っていうのはね、機嫌取りにやるものじゃないの」 望結:「・・・お風呂やる」 有里子:「・・・」 真治:「・・・本当に、どうしたの母さん」 有里子:「・・・どうしたのって何が」 真治:「いやなんか、急に、どうしたのかなって」 有里子:「だから急じゃないでしょ!」 真治:「・・・」 有里子:「・・・」 真治:「・・・ごめん」 有里子:「・・・」 彰彦:「有里子、話したい」 有里子:「・・・」 彰彦:「ちゃんと話す」 有里子:「・・・ちゃんと?」 彰彦:「ああ」 有里子:「何その態度!」 彰彦:「・・・」 有里子:「じゃあ最初にしっかり説明しなさいよ!分かりきった嘘ばっか・・・不倫しといてなんなの!話したい?追い込まれて嘘ついた男がなに上から目線でもの言ってんのよ!」 真治:「え、不倫?え」 彰彦:「・・・」 有里子:「何、聞かれたくなかった?」 彰彦:「・・・」 有里子:「なに黙ってるのよ。自業自得でしょ」 彰彦:「ちょっと落ち着こう」 有里子:「落ち着いてるわよ、私は落ち着いてる」 彰彦:「俺の部屋で話さないか」 有里子:「もうなに、そうやっていっつもいっつも・・・あなたは冷静、私は慌てて、馬鹿みたい」 彰彦:「真治、望結と秀介連れて外行ってくれないか」 真治:「あ、うん」 有里子:「駄目だから」 真治:「え、あ、うん」 彰彦:「いや、これは二人の問題だ。二人で話したい。外行ってくれ」 真治:「わ、分かった」 有里子:「何言ってるの!?二人の問題じゃないから!あなたの!問題でしょ?不倫をしたあなたにのみ問題があるの!私のせいでよその女性と関係もったっていう事!?」 彰彦:「・・・」 真治:「父さん・・・俺、とりあえず出るよ」 有里子:「秀ちゃん!」 真治:「・・・秀介、寝てると思う」 有里子:「望結!秀ちゃん連れてきて!」 望結:「・・・」 有里子:「望結!」 望結:「今掃除してるからー(風呂場からの声)」 有里子:「はあ・・・」 真治:「母さん、俺達外出るから・・・二人で話した方が良いんじゃない?」 有里子:「二人じゃ駄目、この際だからきっちり家族で話すの」 真治:「いやでも、俺たちが居てもなんもできないから」 有里子:「ああもううっさいうっさい!なんなの!?私に意見しないで!少しくらい言うこと聞きなさいよ!」 彰彦:「有里子」 有里子:「何!?」 彰彦:「わかった・・・家族で話す」 真治:「まじ?」 有里子:「・・・秀ちゃん呼んできて」 彰彦:「・・・」 望結:「・・・掃除終わった」 真治:「ああ、ありがと」 有里子:「・・・はあ」 望結:「聞こえてたけど・・・本当?」 真治:「・・・うん、らしい」 有里子:「・・・私が優勢」 真治:「え?」 有里子:「決めた」 真治:「・・・」 望結:「ねえ、お母さん」 有里子:「何」 望結:「ごめんなさい」 有里子:「・・・」 望結:「整形する時、お母さんもお父さんも相当反対してたけど、最終的には私のこと思って受け入れてくれたから、本当に感謝してる」 有里子:「・・・望結の人生だから」 望結:「ありがと」 真治:「・・・うん、うんよかった。なんか、ここは仲直り出来たみたいで」 有里子:「勘違いしないで」 望結:「え」 有里子:「私は決めたから」 真治:「うん、まあ、とりあえず俺トイレ行くわ」 望結:「うん」 有里子:「今から、家族の時間よ」 真治:「・・・」 望結:「・・・」 有里子:「『田河家』」 彰彦:「秀介、ちょっと居間に来てくれ」 秀介:「・・・」 彰彦:「頼むから」 秀介:「・・・」 彰彦:「秀介、起きてるんだろ、頼む」 秀介:「・・・何」 彰彦:「さっき言ったことは謝る」 秀介:「・・・で」 彰彦:「え」 秀介:「謝るんでしょ?謝ってよ」 彰彦:「・・・すまん」 秀介:「・・・」 彰彦:「居間に来てくれ」 秀介:「・・・なんか母さん怒鳴ってたけど、何かあったの」 彰彦:「俺のせいだ、とにかく来てほしい」 秀介:「・・・俺も必要?」 彰彦:「ああ、全員」 秀介:「何、父さん浮気でもしたの?」 彰彦:「・・・聞こえてたか」 秀介:「え・・・まじ?」 彰彦:「とにかく来てくれ」 秀介:「まじで、何してんだよ」 彰彦:「・・・すまん」 秀介:「なにそれやばいな」 彰彦:「ああ」 秀介:「いやまじか、そんなことあんの?うちで?浮気か、すげえな」 彰彦:「・・・面白いか」 秀介:「いや別に、まあなんかすごそうだなって」 彰彦:「・・・」 秀介:「行くわ」 彰彦:「・・・」 秀介:「・・・」 彰彦:「どうした」 秀介:「ああ・・・あのさ」 彰彦:「なんだ」 秀介:「俺生んだこと、後悔してる?」 彰彦:「・・・何言ってんだ、してるわけないだろう」 秀介:「そっか・・・ならまあ」 真治:「あ、母さん来たよ」 有里子:「・・・」 望結:「さあ、どうしよ」 彰彦:「連れてきた」 有里子:「座って」 秀介:「浮気したってまじ?」 真治:「おい」 有里子:「とにかく二人とも座って」 秀介:「いやまじか、すげえな、あてずっぽうで父さんに聞いたらそんな感じだったからびっくりしたわ」 有里子:「座りなさい」 真治:「秀介」 秀介:「父さんそっち座りなよ、母さんの真向かいのがいいでしょ」 彰彦:「・・・ああ」 秀介:「俺ここでいい?つってもここしかないけど」 有里子:「・・・」 秀介:「やべえ緊張する何話すの、ってかなんで俺たちも?二人の問題じゃないの?」 真治:「秀介」 秀介:「はーい、黙ってます」 彰彦:「・・・俺から話すべきか」 有里子:「・・・そうね」 彰彦:「その・・・秀介が言った通り、俺は、不倫をした」 秀介:「おおー」 真治:「秀介」 秀介:「はいはい」 彰彦:「・・・皆すまん、父として、夫として、やってはいけないことをしてしまったと反省してる」 有里子:「・・・」 彰彦:「有里子、本当にすまなかった」 望結:「お父さん・・・」 秀介:「土下座って・・・まじか」 彰彦:「本当に、すみませんでした」 有里子:「・・・あなたが、話したいことはそれで終わりですか」 彰彦:「え?」 有里子:「言ってましたよね、話し合いたいって、それで終わりですか」 彰彦:「・・・いや・・・ああ、まあ」 有里子:「離婚しましょう」 秀介:「え?」 彰彦:「・・・は?」 真治:「まじ?」 望結:「ちょっとお母さん」 有里子:「私を説得する材料がない今のあなたとは一緒に過ごしたくありません。ただ単に欲に駆られてよその女性と関係を持ったということならば私は離婚を望みます」 真治:「母さんちょっと待ってよ」 望結:「そうだよ、急すぎだって」 有里子:「・・・さっきも言ったけど、別に急じゃない、私には離婚をする充分な蓄積があるの」 彰彦:「・・・」 有里子:「あなたは浮気をしていました。私にとってそれが何よりの離婚を望む理由です」 彰彦:「・・・それは、すまない・・・でも離婚っていうのは」 有里子:「あなただけじゃないです。仕事探しすらしてない秀ちゃんも、揚げ足取ってばかりで私とまともな会話をしようとすらしない」 秀介:「・・・」 有里子:「望結はその歳になってもまだ実家暮らし、整形までして近所の人になんて説明していいかもわからない、家事も一切やらない怠け者」 望結:「さっきちゃんと謝ったじゃんなにそれ」 有里子:「真くんも、後先考えず急に出版辞めただなんて、秀ちゃんと一緒じゃない」 真治:「は?」 有里子:「私の言い分は以上です。離婚を望みます」 秀介:「いやいや」 真治:「ちょっと待ってよ、なんで・・・は?俺達そんなにおかしい?父さんの浮気はともかくそんな理由で離婚されなきゃいけないの?」 有里子:「そんな理由?」 望結:「そうでしょ」 有里子:「良かった、今あなた達居てくれて・・・はっきり言うけど糞よ!糞!家族として糞!何もできない何もしない、どれだけ私が我慢してきたと思ってるの・・・秀ちゃん、大学くらい卒業しなさいよ、いくらつぎ込んだと思ってるの?お金返してよ!」 秀介:「・・・」 有里子:「望結も!女優なんてやめて普通に働きなさい!無理よ、あなたのお芝居下手なんだから!整形なんてしても何も変わらないわよ、近所の人達からどれだけ白い目で見られてるか知ってるの!?」 望結:「・・・最低」 有里子:「何が最低よ、あなた達の方が最低よ、理想の家族像ぶち壊して!なんなの!」 真治:「それ、俺も入ってんのかよ」 有里子:「そうよ、勝手に仕事辞めて・・・どうするの?あなたも実家暮らしするつもり?」 真治:「するわけないだろ、俺は二人と違ってちゃんと考えてるから」 望結:「は?」 真治:「俺が一番真面目にやってきた、こいつらとは違う」 有里子:「・・・四人で話し合って」 彰彦:「え」 有里子:「回覧板行ってきます。今後どうするかをきちんと四人で話してください」 望結:「ねえごめんって、とにかく離婚とか言うのやめようよ」 有里子:「本気だから」 真治:「俺は違う」 有里子:「同じ、ちゃんと、考えて」 彰彦:「はあ」 有里子:「溜息なんてつかないで、むかつく」 彰彦:「・・・」 秀介:「話すって・・・何話せばいいの」 有里子:「自分で考えなさいよ・・・問題に対して具体的な解決案を探さないといけないんでしょ?お母さんにいつも自慢げに言ってるじゃない、しなさいよ、まず、あなたが」 秀介:「・・・」 有里子:「ちゃんと、四人で話して」 彰彦:「・・・」 真治:「父さん」 彰彦:「・・・わかった、ちゃんと話し合う」 有里子:「・・・そう」 彰彦:「離婚の件はそれから改めて考えて欲しい」 有里子:「・・・行ってきます」 彰彦:「・・・」 真治:「・・・」 望結:「・・・」 秀介:「・・・」 望結:「ってか真治仕事辞めたって本当?」 真治:「うん・・・辞めた」 望結:「何で」 秀介:「はあ・・・」 真治:「どこ行くんだ」 秀介:「いや外に、母さんとこ」 真治:「馬鹿かここに居ろ」 秀介:「え、どうすんの?母さん居ない状態で話し合って何か変わんの?無理でしょ」 望結:「何最初から無理とか言ってんの?」 秀介:「いや無理でしょ、今の母さん説得する材料とかあんの?」 真治:「お前は知らないから、昔の母さん」 秀介:「だから100回聞いた」 真治:「いいから居ろ」 秀介:「絶対追いかけた方が良い」 望結:「いい加減にして、ねえ、あんたがそれ言う?一番家庭に打撃与えてるあんたなんだよ?」 秀介:「は?姉ちゃんも同じだから」 望結:「同じじゃねえよ」 秀介:「何切れてんの」 望結:「は?」 秀介:「いやここで怒っても生産性ないから」 望結:「まじで殴るよ」 秀介:「うわ、家族でそれやったら終わりだからね」 望結:「ああ!?」 真治:「馬鹿かお前ら」 望結:「ちっ・・・」 真治:「秀介も、姉ちゃんも・・・やめろ」 秀介:「・・・行ってくる」 真治:「だから!ここに居ろ!」 秀介:「・・・」 真治:「母さんは話し合えって言ってんだよ、ちゃんとした答え出さないと」 彰彦:「すまん、俺のせいだ・・・俺が馬鹿な事したから」 真治:「いいよもう」 彰彦:「どうすればいいかな」 真治:「まあ、これまでの俺たち三人の行動が、母さんへのイライラを貯めてきたんだよね・・・んで、父さんの浮気でその蓄積が爆発したって、まあそういう事でしょ」 秀介:「じゃあそれで何話し合えっていうの」 彰彦:「家族の時間が・・・少なすぎたんだな」 真治:「・・・わかってんなら最初からしてよ」 彰彦:「すまん」 真治:「まず理由を話して、不倫の理由」 彰彦:「ああ」 秀介:「そうじゃないでしょ」 真治:「いいから、座れ」 秀介:「・・・」 彰彦:「・・・セックスレスだ」 真治:「え」 彰彦:「母さんとは、秀介が生まれてからしてない」 望結:「そんな理由?」 彰彦:「俺にとってそれは大きな理由だ」 真治:「うん、まあ・・・それで、不倫に走ったてこと?」 彰彦:「大まかに言うとそうだ」 真治:「風俗とか、そういうので紛らわすことできなかったの?」 望結:「どっちにしても最低でしょ」 彰彦:「愛情が・・・感じられなかったから」 真治:「風俗だと?」 彰彦:「いや、両方・・・俺は仕事、母さんは家庭の事、お互いにただこのリビングに居るだけの関係になってたんだよ」 望結:「・・・それってお父さんが悪いんじゃないの?」 彰彦:「・・・」 真治:「まあ全部が全部悪いってわけじゃ」 望結:「いや違うって、その夫婦の会話がないって件に関してはさ、お父さんがダメでしょ、ちゃんとお母さんと話さなきゃ」 彰彦:「そうだよな」 望結:「それで不倫したって言われても、こっちは納得できないよ」 真治:「そうかもしんないけど」 望結:「けど?」 真治:「けど・・・仕事で父さんも忙しいしさ、母さんも、二人の事で、いっぱいだったんでしょ」 望結:「だから、三人ね」 真治:「俺は違うよ」 望結:「は、会社辞めたんでしょ?一緒じゃん」 真治:「そりゃ多少は原因でもあるかもしんないけどさ、二人と違ってちゃんと大学卒業して就職したから・・・成人して実家暮らしのニートとフリーターとは別次元だから」 望結:「あ?」 真治:「だからキレんなって」 彰彦:「俺のせいだ、お前たちは悪くない、本当にすまん」 真治:「・・・はあもう、ループだよこれ」 望結:「まず認めて、プライドとかあるのかもしれないけど、真治も同じだから、お母さんは四人で話し合ってって言ったじゃん、私達全員関係することだから」 真治:「・・・ああもうわかったよ」 望結:「お父さんも、もういいから、確かにお父さんのせいでこんなことになってはいるけど、私達も相当お母さんに迷惑かけてきたから」 彰彦:「すまん」 望結:「だから」 彰彦:「ああ・・・わかった、四人の問題だな」 望結:「とにかく、もっと詳しく話して」 彰彦:「『田河家』」 彰彦:「さっきも言った通り、若いころ母さんとは、セックスレスの状態が続いてた。秀介も生まれて、俺が仕事仕事で家族の事ちゃんと見れてなかったのが一番の原因なんだけど・・・昔言われたんだ、そういうことをしようと話を持ち掛けた時、『それどころじゃない』って、その時気付けばよかったんだよな・・・俺に魅力を感じないって俺自身思い込んでたんだよ」 真治:「その時、母さんの話を聞こうとかそういう事しなかったの?」 彰彦:「俺もいっぱいだったんだよ、皆を養わないといけないし、仕事さえしてれば家族の為になると思ってた。それは反省してる」 望結:「不倫はそれから?」 彰彦:「まあ・・・四十になる手前の頃、出会い系みたいのに手出しちゃってな、恥ずかしい話、男としての俺を見てほしかった」 望結:「ネットって」 真治:「まだ続いてんの?」 彰彦:「いや、三年前には別れを切り出したんだが」 真治:「それは父さんから?」 彰彦:「ああ・・・でも、なかなか相手がそれを許してくれなくて、会社とか俺に嫌がらせの電話をしてくるんだよ」 望結:「うわ昼ドラ?」 真治:「それでさっき、母さんにばれたってこと?」 彰彦:「ああ・・・まさか俺の携帯の電話に出ると思わなくて」 望結:「はあ」 彰彦:「あーあ、なんであんな女に手出しちゃったかな」 秀介:「・・・」 真治:「じゃあ、どうするの今後」 彰彦:「それは・・・ちゃんと話はつけるつもりだ、出来れば母さんも交えて、しっかりと別れの話をしたい」 真治:「母さんも同席ってまずくない?」 彰彦:「いやでも、そうしないと納得してくれないだろ」 望結:「私はそれでいいと思う、自分が見てないと安心できないでしょ」 真治:「まあ、確かに」 彰彦:「・・・俺の話は、以上だ」 真治:「・・・うん、じゃあまあ、父さんの件はそれで母さんに伝えよう、じゃあ次俺話すよ」 彰彦:「ああ」 真治:「『田河家』」 真治:「皆も知ってると思うけど、出版社を、先週辞めた」 望結:「あ、そうだなんで?」 真治:「いや最悪だったんだよ、そりゃブラックってのは覚悟してたけど、家に帰れるのなんて週に二、三回だよ?ほとんど会社に寝泊まり」 彰彦:「それは辛いな」 真治:「入ってから数年は書店とか広告の営業でやりがいはあったけどさ、そっからようやく雑誌の編集に配属されたかと思うと、毎日毎日興味のないメディアとかアダルトコンテンツの企画やらされてさ、頑張ってやった結果、最終段階で編集長からNG出されたりてて・・・そんなんが毎回続くんだぜ?やれこれはウケが良くないとか、話題性がないとか・・・知らねえよって、誰が読んでんだよそんな記事」 彰彦:「でも編集の仕事はしたかったんじゃないのか」 真治:「俺がやりたかったのは書籍なの・・・それがこの四年間、一回も関わらせてもらえなくてさ、どんだけ頼んでもお前にはまだ早いとか言われて・・・もう最悪だったんだよね」 彰彦:「・・・まあそうか、四年間も頑張ったんだもんな、辞めたくなる気持ちもわかるよ」 真治:「・・・うん、だから、まあ今は辞めて、新しい就職先探そうかなって」 彰彦:「・・・そうだな、それでいこう」 望結:「・・・じゃあ私?」 真治:「ああ」 望結:「『田河家』」 望結:「・・・整形の理由とかはまあ、売れる為にって考えてたんだけど、ちょっと軽率すぎたかも、お母さんの事ちゃんと考えて行動してなかったって反省してる」 真治:「玄関から知らない美人入ってきてまじでビビったもん」 彰彦:「でもその顔で、順調なんだろ?」 望結:「うん・・・まあ、前よりは全然反応いいよね、古株のお客さんに隠すのはほぼ無理だけど」 真治:「二人とも整形に関しては、最終的に納得したんでしょ?」 彰彦:「ああ、俺も母さんも相当反対はしたけど、納得した」 望結:「泣きながら説得したからね」 真治:「おお、大女優じゃん」 望結:「まあでもわがまま言っちゃった分、ちゃんとしないと・・・かな」 真治:「じゃあもう整形しちゃったし、今後女優としてもっと頑張るからって伝えればいいんじゃないの?」 彰彦:「そうだな」 真治:「あと家事も」 望結:「うん、そうする」 彰彦:「よし、じゃあ秀介」 秀介:「・・・」 真治:「秀介は明確でしょ」 望結:「まあだよね」 真治:「仕事、ちゃんと探せよ?」 秀介:「・・・うん」 真治:「よし、じゃあ秀介は仕事を探す、姉ちゃんは女優の道を諦めず家事もして、俺は再就職、父さんはしっかり相手と話して今後の関係を断ち切ってもらうよう説得する、これでいいよね」 彰彦:「ああ、そうだな」 望結:「そうしよ」 彰彦:「回覧板長いな、近所だろ」 真治:「母さんも考えてるんでしょ」 彰彦:「しばらく待ってるか」 望結:「ねえお風呂入っていい?」 真治:「さっきシャワー浴びたじゃん」 望結:「なんか汗かいちゃったから、入りたい」 彰彦:「ビールでも飲むか、三人ともいる?」 秀介:「・・・」 真治:「ああ、飲もうかな」 望結:「お風呂入ってからね」 彰彦:「秀介は?」 秀介:「・・・いや、なんかもう気持ち悪いわ」 彰彦:「どうした」 秀介:「いや、まじか」 真治:「何気分悪いの?」 秀介:「・・・皆何してんの?」 望結:「最悪、お湯はりしてなかった(風呂場からの声)」 秀介「風呂じゃねえって・・・ビールじゃねえって」 真治:「・・・」 彰彦:「・・・」 望結:「お湯張しといた。私やっぱビール飲もっかな」 秀介:「だから飲むなって、違うじゃん」 望結:「ん、どうしたの」 秀介:「空気的にさ、違うじゃん、なんでそう気楽なの?」 真治:「・・・ああ」 彰彦:「・・・そうだな、すまん、ちょっと違うな、ビールはなし」 望結:「え、どうしたの?」 秀介:「だって・・・テンプレじゃん」 真治:「何が」 秀介:「・・・母さんまじでしょあれ、俺達糞って言われたんだよ?それなのにそんな答えでいいのかな」 真治:「まあ、あれは気が動転してたんだよ」 望結:「何あんたお母さんに言われて傷ついてんの?」 秀介:「いやいやいや・・・あんな冷静な母さん見たことないって、父さんの浮気の事で俺達も一緒に聞けって言われたんだよ?もういっそのこと本気で、俺達への不満ぶつけようって感じだったじゃん」 彰彦:「ああ、だから俺たちも本気で話し合ったんじゃないか」 秀介:「本気?まじかよ冗談でしょ、本気だったの?」 真治:「本気だよ」 秀介:「はは・・・まじで嘘だろ」 真治:「は?」 望結:「さっきからなんなの」 秀介:「いや皆がさ、母さんの喜ぶルートに沿って話してたから俺も乗っかっただけだし・・・姉ちゃん女優として大成できるの?これから」 望結:「は、今はそう言うしかないじゃん」 秀介:「ほら、今はって・・・その通り行動する気ないでしょ」 望結:「そういう事じゃないから、今この場では、お母さんの納得できる答え出さないといけないじゃん、その後の事は各々が何とかするんでしょ」 秀介:「いや分かってんならさ、その答えじゃなおさら駄目でしょ」 望結:「一番迷惑かけてるあんたがそれ言うなよ」 秀介:「いやいいよ別にもう、何言われても」 真治:「俺はちゃんとできる、中途採用も前々から考えてたし」 秀介:「それが無理だったら?」 真治:「は?」 秀介:「それがダメだったらどうすんの」 真治:「なんだそれ、それ以上はまだ考えてないよ」 秀介:「なんで考えないの?じゃあダメじゃん、本気で離婚止めたいんでしょ?何でそこで終わるの」 真治:「だから・・・母さんが怒ってんのは俺たちの行動だろ?それが改善できるように今話し合ったじゃん」 秀介:「じゃあそれでいいと思ってんだ」 真治:「何が言いたいんだよ」 彰彦:「心配かけてごめんな、でも今はそれで行くしかないだろ」 秀介:「父さんも何さっきから、それで行こうとか、別にこれ面接じゃないじゃん、家族の話じゃん・・・母さん俺たちに本気でぶつかってきたんだよ?だったら俺たちも本気で母さんに言わないと」 望結:「馬鹿、それじゃ喧嘩になるじゃん」 秀介:「いいじゃん喧嘩になって、離婚って言葉が出てるんだよ?嘘つくよりましでしょ」 彰彦:「嘘なんかついてない」 秀介:「じゃあさ!なんでそう楽観的なの?いや俺もさ、今になってようやく反省してるけど・・・俺このまま母さんが俺達の事許してくれても、いつも通りの生活待ってると思えないんだけど」 真治:「だから、このままじゃいつも通りにいかないから、俺たちが変わるってのを母さんに示すんだろ?」 望結:「そうだよ」 秀介:「いや違う違う、それうわべだけじゃん、その回答で元通りになるんだったら離婚したほうがましでしょ?」 望結:「何言ってんの」 秀介:「軽いんだよなんか、やばいことじゃんこれ、もっと真剣に考えないと」 真治:「真剣だよ」 望結:「いやもうほんと、まじであんたがそういう事言わないで、正直お母さんからしたら秀介が一番の原因だからね?」 秀介:「わかってるから、何、迷惑かけた人間は発言も駄目なの?」 望結:「駄目でしょ」 彰彦:「秀介、俺が言うのもなんだが、お前は何も動かなかった、今反省してるんだろ?じゃあ明日から動く、それでいいじゃないか」 秀介:「そうじゃないんだよ・・・」 真治:「あのさ、さっきからよくわかんないんだけど、結局何が言いたいの?」 秀介:「いや、なんだろ・・・俺もよくわかんなくなってきた」 望結:「はあ?」 秀介:「なんか形式的っていうか、本当にこれで合ってるのかなって」 望結:「合ってるよ」 秀介:「自分の事だけ考えてる気がして」 望結:「だから」 秀介:「いや聞いて、俺も、兄ちゃんも姉ちゃんも、父さんも、多分母さんの気持ちまだわかってない気がする・・・あの感じさ、ただ俺たちに変わってほしいから離婚って言葉出したとかじゃなくてさ、完全に離婚したいって、そう感じ取れたんだよね」 真治:「・・・それはさすがにないだろ」 彰彦:「こういっちゃなんだが・・・この程度で離婚なんてされたらたまったもんじゃない」 秀介:「でも離婚なんて言葉初めてでしょ」 真治:「それは脅しだろ」 彰彦:「確かに、これまで以上に怒ってたことは間違いないけど、離婚はない、あってもあっちも困るだけだ」 望結:「だよね、さすがに本気で離婚とか考えてないでしょ」 真治:「だよな」 望結:「ってか、芝居下手くそって言われてめっちゃムカついたし、まじでなんなの?朝ドラしか見てない人に言われたくないんだけど」 彰彦:「望結は全然うまいと思うぞ」 望結:「あとさ、私の整形のことで近所の人から白い目で見られるとか知らないんだけど、お母さんも納得したんだよ?ってかさっき言ってたし、望結の人生だからって」 真治:「ああ俺もむかついたわ、秀介と一緒って、さすがに違うから」 秀介:「・・・それ言えばいいじゃん」 真治:「は?」 秀介:「皆そういう事言えばいいんじゃないの?母さんに」 望結:「だから、喧嘩になるから」 真治:「母さんの気持ち逆なでして何になるんだよ」 秀介:「でも実際皆そう思ってるんでしょ?じゃあ本音言えばいいじゃん、なんだよ、母さんのご機嫌取りになってさ、家族だよ?言いたいこと言おうよ」 真治:「・・・家族だからだろ」 秀介:「は?」 真治:「俺だって姉ちゃんが整形したって話、聞かされてないことにむかついたから言ったよ、家族なのに何でだよって」 秀介:「じゃあそれと同じじゃん」 真治:「今回に関しては、母さんが圧倒的に上だろ?気使って機嫌取るしかねえだろ」 秀介:「家族だから言いたいこと言わないとダメじゃないの?」 真治:「お前は言い過ぎなんだって、母さんに対して特に」 望結:「しかも揚げ足取りながら」 秀介:「・・・」 彰彦:「普通にすればいいんだよ、母さんもああ言ってたけど、お前たちの事を愛してるのは確かだから、今は母さんの言うことを聞こう」 真治:「そうだよ、お前ももう餓鬼みたいなこと言うなよ、それこそ空気読めって」 望結:「もうこれでいいよね」 彰彦:「ああ、母さん遅いな」 秀介:「だからよくないって!」 望結:「もう何あんたほんと!」 秀介:「『田河家』」 真治:「おい騒ぐなよ」 秀介:「ああもう気持ち悪いわ!何これ、田河家ってこんなんなの?おかしいでしょ!」 望結:「だから!あんたなんかにそんなこと言われる筋合いないから!」 秀介:「『田河家』」 彰彦:「おいやめろ」 望結:「死ねまじで」 彰彦:「『田河家』」 秀介:「これで一旦収集ついたらどうせまた不倫すんだろ?ネットで出会っておいて一人なわけないもんな!?」 彰彦:「なんだと」 真治:「秀介、ここで喧嘩してどうすんだよ」 望結:「『田河家』」 秀介:「うるせえな!上から目線で話してんじゃねえよ!何にも知らねえくせに人生の先輩ぶんなよ!」 真治:「は?何言ってんのお前?」 秀介:「なんでも知ってるみたいな顔すんなよ」 真治:「大学も卒業できない馬鹿に言われたくねえわ」 秀介:「は?」 真治:「『田河家』」 望結:「秀介プライドだけ一丁前だよねほんと」 秀介:「姉ちゃんにだけは言われたくないわそれ」 望結:「マジでうざい何あんた」 秀介:「『田河家、チャイム』」 真治:「チャイム鳴ってる・・・」 彰彦:「母さんか」 真治:「・・・行ってくるわ」 秀介:「俺話すから」 彰彦:「何を」 秀介:「母さんへの愚痴」 望結:「は?何言ってんの」 真治:「ああ、お寿司来たよー(玄関からの声)」 秀介:「俺言うから・・・」 有里子:「『田河家、朝』」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・おはよ」 有里子:「おはよう」 秀介:「兄ちゃんは?」 有里子:「帰ったよ、朝早く」 秀介:「父さんも仕事?」 有里子:「そうみたい」 秀介:「お姉ちゃんは?」 有里子:「まだ寝てると思う、秀ちゃん、起こしてきて」 秀介:「・・・うん」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・本当に、離婚するの?」 有里子:「うん、来週までに協議書っていうのを作るみたい」 秀介:「・・・そう」 有里子:「・・・」 秀介:「・・・」 有里子:「秀ちゃんは?仕事探すんでしょ?」 秀介:「うん」 有里子:「頑張って、応援してる」 秀介:「・・・」 有里子:「そろそろできそうだから、望結呼んできて」 秀介:「・・・」 有里子:「・・・」 秀介:「ごめんなさい・・・」 有里子:「・・・うん」