台本概要
114 views
タイトル | MANEATER |
---|---|
作者名 | AVID4DIVA (@AVIDNODIVA) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
大晦日の夜、『ハジメ』はかつて片想いをしていた女性『れい』から自宅に呼び出された。 ドアを開けると玄関に男の死体があった。 114 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ハジメ | 男 | 173 | 29歳。建設会社に勤務する男性。大晦日の夜に、かつて慕っていた女性 れい から呼び出される。 |
れい | 女 | 172 | 30歳。ハジメの幼馴染の女性。同棲相手を事故で死なせてしまいハジメに助けを求める。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:小雨の降る夜、アパートの2階、ハジメがインターフォンを押す。
ハジメ:来たけど。いるの。ここで、あってる。
0:ドアが開かれる。隙間かられいが顔を覗かせる。
れい:あー、ハジメちゃん。久しぶり。ごめんねえ突然呼び出して。
ハジメ:別にいいけど。どうしたの。
れい:インターホン越しじゃなんだから、入って。
ハジメ:はあ。
れい:あと、ちょっと驚くかもしれないけど、声出さないでね。夜だから。近所迷惑だし。
ハジメ:そんな散らかってるの。
れい:うん。まあそんな感じ。
ハジメ:別にいいけど。お邪魔します。
0:ハジメ、室内に入る。
れい:ありがとね、来てくれて。
ハジメ:ああ。うん。
0:ハジメ、シュークローゼットにもたれかかって死んでいる若い男を凝視する。
れい:驚いたよね。
ハジメ:そうだね。
れい:さっきちょっと揉めてね。彼お酒飲んでたから。転んで頭打っちゃって。
ハジメ:死んでるよね。
れい:うん。何しても起きないの。返事しないし。
ハジメ:この人彼氏。
れい:うん。ジュリヤっていうの。
ハジメ:そうなんだ。派手な頭してるね。
れい:うん。
ハジメ:そんで、なんで俺呼んだの。
れい:あのね。手伝ってほしいの。
ハジメ:何を。
れい:なかったことにしたいの。
ハジメ:何を。まさか、これ。
れい:うん。
ハジメ:救急車呼ぼうか。
れい:それはダメ。
ハジメ:ダメじゃないでしょ。人死んでるんだからさ。
ハジメ:事故なんでしょ。まず救急車呼ばなきゃ。
ハジメ:それから警察。
れい:だめなの。
ハジメ:あのね。
れい:だめなの。れいがジュリヤを殺したことになっちゃうもん。
ハジメ:事故なんでしょ。早く電話しよう。
れい:だめなの。
ハジメ:犯罪になっちゃうよ。
ハジメ:今ならまだ事故で済むかもしれないよ。
れい:だめなの。
ハジメ:殺してないけど死なせちゃったじゃん。
れい:どうしてそんな酷いこと言うの。
ハジメ:ああ、ごめんね。
れい:ねえ。ちょっとそっち持ってくれる。
ハジメ:え。
れい:ジュリヤ、酔っ払ってるだけだから。
れい:シャワー浴びせたら目を覚ますかもしれないから。
れい:だからお風呂場連れてくの手伝って。
ハジメ:いやいや呼吸止まってるよ。
ハジメ:目も開いてるし。血溜まりできてるじゃん。
れい:だったらなおさら早くシャワー入れなきゃ。
ハジメ:死体の処理手伝わせるために俺呼んだの。
れい:死体じゃないよ。起きないだけだよ。
ハジメ:これ、生きてるっていうの。
れい:もう。意地悪言わないで。早く。玄関汚れちゃう。
ハジメ:はあ。いいよ。お風呂どっち。
れい:うん。廊下の突き当たりの左。
ハジメ:じゃ、いくよ。せーの。
0:二人、死体の手と足をそれぞれ掴み、持ち上げようとする。
れい:ハジメちゃん、ごめん。
れい:持ち上がらない。手に力が入らないよ。
ハジメ:そりゃそうだろうね。
ハジメ:彼氏死んでるしね目の前で。
れい:死んでないよ。
ハジメ:そっか。まだ死んでないか。
ハジメ:いいよ。俺一人で持てる。この人、すっげえ細いから。
れい:うん。ジュリヤはね、太らないようにって一日一食しか食べないからね。
れい:体重なんてれいと変わらないんじゃないかな。
ハジメ:そうなんだ。モデルとかやってたの。
れい:ううん。メンコン。
ハジメ:メンコンって何。
ハジメ:農家の人ってこと。
れい:違う違う。ハジメちゃん知らないの。
れい:メンズコンカフェだよ。
ハジメ:コンカフェって、ガールズバーみたいなところじゃないの。
れい:ちょっと違うかなぁ。まあでも農家の人よりは近いよ。
れい:それの男版。
ハジメ:へえ。そうなんだ。ホストかと思った。
れい:違うよ! ジュリヤはホストなんかじゃないもん。
ハジメ:そっか。まあいいや。
ハジメ:じゃあ先行ってお風呂のドア開けておいて。
れい:うん。
0:れい、突き当たりの浴室の引き戸を開ける。
0:ハジメ、ため息をついて死体を持ち上げ、浴室の中に移す。
ハジメ:結構広いとこ住んでるんだね。
ハジメ:駅から結構近いし。家賃大丈夫なの。
れい:うん。バイト二つしてるから。
ハジメ:あれ。仕事やめたの。
れい:仕事もしてるよ。仕事終わった後にバイトしてるの。
ハジメ:そうなんだ。何のバイトしてるの。
れい:うん。ちょっとね。
ハジメ:キャバクラ。
れい:ううん。
ハジメ:風俗。
れい:うーん。
ハジメ:パパ活。
れい:ナイショ。
ハジメ:働くのは偉いけどさ。無理すると風邪ひくよ。
れい:うん。
ハジメ:バスタブに寝かせていい。
れい:うん。
0:ハジメ、死体をバスタブの中に放り込む。
ハジメ:シャワーかけるんだっけ。
れい:うん。
ハジメ:それも俺がやるの。
れい:うん。
ハジメ:ガスの元栓ついてる。
れい:うん。
0:ハジメ、死体の頭にシャワーをかける。
ハジメ:……起きないねえ。
れい:うん。
ハジメ:鼻に水圧マックスで水入れてみよっか。
れい:やめてよかわいそう。
ハジメ:冗談だよ。そんなことしても起きないもんな。
れい:起きないかなあ。
ハジメ:起きないよ。死んでるもん。
れい:ねえハジメちゃん。
ハジメ:何。
れい:なかったことにできないかなあ。
ハジメ:いやどう考えても無理でしょ。
ハジメ:救急車呼ぶなら今だよ。早くしたほうがいい。
れい:でもさあ。
れい:そしたられいがジュリヤを殺したことになっちゃう。
ハジメ:うん。でもまあ、ちゃんと自分で言えば執行猶予つくかもしれないよ。
れい:そうじゃないの。
ハジメ:じゃあ何なの。
れい:別に逮捕されるのはいいの。
ハジメ:何がダメなの。
れい:れいがジュリヤを殺したことが嫌なの。
ハジメ:一応聞くけどさ、なんで嫌なの。
れい:ジュリヤはね、れいの希望だから。
ハジメ:希望。このナスの漬物みたいなのが。
0:ハジメ、死体の髪の毛を掴み、顔を自分に向ける。
れい:そうだよ。れいの、コードーゲンリ。
ハジメ:行動原理。難しい言葉覚えたね。
れい:ジュリヤが教えてくれたの。
ハジメ:そうなんだ。頭いいんだねこの子。
れい:うん。だからね、ジュリヤのためにしてることは全部れいのためにしてることなの。
れい:なのにれいがジュリヤを殺しちゃうのはおかしいよ。
ハジメ:でも死んでるよ。どうするの。
れい:なかったことにしたいの。
ハジメ:ドラえもんがなんとかしてくれればいいんだけどね。
れい:ねえハジメちゃん。助けてほしい。
ハジメ:助けるってどうするの。
れい:(無言)
ハジメ:身代わり出頭しろってこと。
ハジメ:それとも証拠隠滅しろってこと。
れい:とにかく、これをなくしてほしいの。
ハジメ:バラせってこと。
れい:なかったことにしてほしい。
ハジメ:あのさあ。ムシが良すぎるよね。
れい:だよね。
ハジメ:年末の夜中に電話してきてさ。
ハジメ:助けてって言うから来たんだよ。
ハジメ:そんで死体バラしてほしいって。ちょっとどうかしてない。
れい:うん。ごめん。
ハジメ:俺ならいいよって言うと思ったの。
れい:うん。
ハジメ:すごい自信だね。
れい:だってハジメちゃん、れいのこと好きでしょ。
ハジメ:そうだね。好きだった。
れい:今でも好き。
ハジメ:うん。割と。
れい:れいと好きなだけセックスしていいから。
れい:だからジュリヤをなかったことにして。
ハジメ:やらせてやるから死体片付けろってこと。
れい:うん。
ハジメ:それで俺がウンって言うと思ったの。
れい:うん。
ハジメ:そうか。すごいね、れいは。
れい:そうかな。あ、でもね。
ハジメ:うん。
れい:後ろにしてほしいの。
ハジメ:後ろ。
れい:うん。前はね、まだ痛いんだ。
ハジメ:どういうこと。
れい:三日前にね、下ろしたの。
ハジメ:給料。
れい:子供。
0:(間)
ハジメ:ああ。そう。
れい:3回目だからもう大丈夫かなあって思ったんだけど、当分無理っぽくて。
ハジメ:後ろならいいんだ。
れい:うん。バイトで慣れてるから。
ハジメ:そっか。
れい:やってくれる。
ハジメ:うーん。どうしようかなぁ。
れい:お願い。
ハジメ:あのさ。
ハジメ:れいはこの、ジュリアくんのどこが好きなの。
ハジメ:ぶっちゃけ顔がいいわけじゃないじゃん。
れい:ジュリアじゃないよ。ジュリヤ。
ハジメ:ああ、うん。ジュリヤ。
れい:ジュリヤといるとね、れいは何も考えなくていいの。
ハジメ:いつも何か考えてるような言いぶりじゃん。
れい:考えてるよー。頭が痛くなるくらい考えてる。イライラするくらい考える。
ハジメ:何を考えてんの。
0:(間)
れい:色々。
ハジメ:たとえば。
れい:思い出せないんだよね。でもずっと何か考えてる。
ハジメ:そうなんだ。
れい:ジュリヤといるとね、考えなくて済むの。
れい:それがすごく好きなの。
ハジメ:へえ。
0:ハジメ、シャワーヘッドで死体の頭を何度も強く殴る。
れい:ハジメちゃん、何するの。
ハジメ:シャワー浴びせても起きないからさ。
れい:やめてよ。そんなので叩いたらジュリヤ痛いよ。
ハジメ:痛くて起きたらいいじゃん。
れい:やめてよ。やめてってば。飛び出ちゃう。
ハジメ:どうせバラすんだからいいでしょ。
れい:そっか。それもそうだね。
ハジメ:車の後ろに仕事道具積んでるから。それ使うね。
れい:うん。
ハジメ:ところでもう夕飯食ったの。
れい:ううん。ジュリヤは朝しか食べないから。
れい:れいもそうしてるの。
ハジメ:お腹空かない?
れい:うん。
ハジメ:焼肉食べたくない?
れい:うん!
れい:でももうこんな時間だからやってるお店ないよ。
ハジメ:そっか。ちょっと車戻る。
れい:待ってるね。
0:ハジメ、自分の車に戻る。
0:場面は再び浴室。
0:ハジメ、チェーンソーを始動させ、死体の解体を始める。
ハジメ:あのさあ。
れい:なに。
ハジメ:最近どう。
れい:え。今聞くの。
ハジメ:黙ってるとなんか笑えてきちゃって。
れい:ハジメちゃんすごいね。こんなことしながら笑えるの。
ハジメ:そういう意味じゃないよ。
れい:今年はねえ、色々あったなぁ。
ハジメ:たとえば。
れい:バイト増やしたし、肋骨折れたし、病院の診察券ばっかり溜まったなあ。
ハジメ:大変じゃん。ジュリヤくんに殴られたの。
れい:ううん。蹴られた。
ハジメ:そうなんだ。痛くなかった。
れい:痛かった。
れい:でもまあ、しょうがないかなぁって思ってる。
ハジメ:なんかやらかした。
れい:数字取れなかったんだって。
ハジメ:メンコン、だっけ。
れい:そう。エースじゃなくなった! って怒られた。
ハジメ:すごいね。トップ営業マンみたいだ。
れい:ジュリヤも大変なんだなあって思う。
ハジメ:そうかもね。
れい:ハジメちゃんはどうだったの。
ハジメ:仕事してたよ。
れい:そうなんだ。お疲れさま。
れい:他には。
ハジメ:ラーメン食ったり、たまにパチンコ打ったり。
れい:他になんかあった。
ハジメ:それくらいかな。
れい:来年はどうするの。
ハジメ:仕事してると思うよ。
れい:それだけ。
ハジメ:うん。多分ね。
れい:そっかあ。偉いね。
ハジメ:偉いかな。
れい:うん。
0:ハジメ、死体の四肢を胴体から切断する。
ハジメ:よし、切れた。
れい:すごい!ありがとう!
ハジメ:いやいやこれからだから。
ハジメ:ちょっと休憩しようか。
れい:何か食べる?
ハジメ:うん。焼肉。
れい:この辺お店ないよ。それにハジメちゃん血まみれだし。
ハジメ:ここでやろうよ。
れい:え。
ハジメ:フライパンあるでしょ。
れい:ある。
ハジメ:肉あるでしょ。
れい:ないよ。
れい:ジュリヤはベジタリアンだもん。
ハジメ:肉あるでしょ。
れい:ないって。
ハジメ:肉あるでしょ。
れい:ジュリヤを食べるってこと。
ハジメ:そう。
れい:ダメだよ! 絶対だめ!
れい:ジュリヤはれいのコードーゲンリなんだよ!
れい:それを食べるのはおかしいよ!
ハジメ:これはもうジュリヤじゃないよ。
れい:ジュリヤだよ。
ハジメ:なかったことにしてくれって言ったじゃん。
れい:言った、けど。
ハジメ:ジュリヤじゃないんだよ。ジュリヤをなかったことにしたんだ。
ハジメ:これは、肉だよ。スーパーで売ってる精肉じゃないけど、肉だから。
れい:肉。
ハジメ:うん。お肉。
れい:お肉かあ。
ハジメ:ジュリヤ君に食事も合わせてたんでしょ。
れい:うん。
ハジメ:焼肉食べたいって言ってたじゃん。
れい:うん。
ハジメ:食べよう。
れい:うーん。でもさあ。
0:(間)
ハジメ:昔聞いた話なんだけどさ。
ハジメ:インディアン。
れい:インディアン。
ハジメ:うん。インディアンはね、大切な人がなくなると魂を自分の体に入れるためにその人の肉を食ったんだって。
れい:そうなの。
ハジメ:うん。だからさ、れいにとっての、行動原理になったジュリヤを、れいの中に入れてみようよ。
れい:それいい!入れる!
ハジメ:じゃあ切り分けて持って行くから。
ハジメ:フライパンに油引いておいて。
れい:わかった。
0:場面転換。キッチンのコンロの前に二人並ぶ。不揃いな形の肉がフライパンの上で音を立てる。
ハジメ:いい匂いだね。料理できたんだ。
れい:馬鹿にしないでよー。家庭科3だったんだから。
ハジメ:5じゃないんだ。
れい:うん。でも他は2とか1だから。
ハジメ:じゃあ、得意科目だね。
れい:魚肉ソーセージと野菜の炒め物が得意です。
ハジメ:渋いね。
れい:ねえハジメちゃん、テレビつけてくれる。
ハジメ:はいはい。おお、紅白やってる。
ハジメ:もうすぐ今年も終わりだ。
れい:今年の紅白にHIASOBIが出るの。
ハジメ:ああ、ネットですごい売れた人たち。
れい:そう。すごいんだよ。
ハジメ:ガチャガチャしたテンポのはやいラブソングばっかりじゃん。
れい:それがいいの。声と綺麗な歌詞が好き。
ハジメ:そうなんだ。俺は、ちょっと聞き取れないや。
れい:今度ちゃんと聞いてみて。
ハジメ:今度ね。
れい:ねえハジメちゃん。
れい:好きってなんだろうねえ。
ハジメ:急だね。どしたの。
れい:曲聴いてたらさあ。
ハジメ:うん、なんだろうね。
れい:愛とか恋とかってさ、難しいよね。
ハジメ:そうだね。
れい:れいはバカだからわかんないのかなあ。
ハジメ:わかんないからバカなんじゃない。
れい:バカって言わないでよ。
ハジメ:自分で言ったじゃん。
れい:そうでした。
ハジメ:さて、いい具合に焼きあがった。味見してみるか。
れい:うん。
ハジメ:いただきます。
れい:いただきます。
0:二人、焼けた肉を口に運び無言で噛みしめる。
ハジメ:どう。
れい:まずい。
ハジメ:まずいよね。
れい:すっごくまずい。
ハジメ:これ全部食べる?
れい:食べたほうがいいよねえ。
ハジメ:別に残してもいいんじゃない。
れい:そっか。ハジメちゃん食べる?
ハジメ:いらない。
れい:だよね。
ハジメ:あのさあ。
ハジメ:これからどうすんの。
れい:どうしよっか。
ハジメ:行動原理、食べちゃったじゃん。
れい:残したよ。
ハジメ:一口食べて残したじゃん。
れい:うん。
0:(間)
ハジメ:俺と逃げようか。
れい:さっき来年も仕事するって言ったじゃん。
ハジメ:そうは言ったけど、無理だと思うなあ。
ハジメ:絶対アシがつくし。
れい:えー。
ハジメ:俺と逃げようよ。
ハジメ:どこでもいいから。
れい:うーん。
ハジメ:嫌なの。
れい:うーん。うん。
0:(間)
ハジメ:なんで。
れい:だってハジメちゃんのこと好きじゃないし。
れい:ハジメちゃんはれいのコードーゲンリじゃないから。
0:(間)
ハジメ:そっかあ。またフラれるのかあ。
れい:ごめんねえ。セックスならいいからさ。
ハジメ:うん。それもそれで辛いもんだよ。
ハジメ:でもさ、さっき愛とか恋とかわかんないって言ったじゃない。
れい:うん。
ハジメ:好きとか好きじゃないとかはわかるんだ。
れい:好きじゃないはわかるよ。
ハジメ:好きは。
れい:わかる気がする。
ハジメ:ジュリヤくんのことは好きだったの。
れい:うーん。
ハジメ:わかってないじゃん。
れい:わかってないね。
ハジメ:ウケる。
ハジメ:変わんないねえ、れいは。
れい:そうかな。
れい:美容整形頑張ったんだけどなあ。
ハジメ:うん。変わんない。
ハジメ:よかった。
れい:へへ。
ハジメ:俺さあ、これからジュリヤ細かくするから。
ハジメ:もう遅いし寝てなよ。
れい:え。いいの。
れい:なんか悪いなあ。
ハジメ:いいって。
ハジメ:もういいから。
れい:うん。じゃあ、ごめんちょっと寝るね。
れい:ここんとこ仕事とバイトでほとんど寝てなくて。
れい:ありがとね。
れい:起きたらいっぱいセックスしていいよ。
ハジメ:ありがと。
れい:うん。じゃあ、あっちの部屋で寝るから。
れい:なんかあったら起こしてね。
ハジメ:ああ。終わったら起こしに行くよ。
ハジメ:おやすみ。
れい:うん。おやすみ!
0:れい、キッチンを出て寝室に消える
0:ハジメ、シンク下の戸を開き、包丁を探し当てる。
ハジメ:もしもし。警察ですか。
ハジメ:今、人を殺しました。
ハジメ:二人です。
0:終
0:小雨の降る夜、アパートの2階、ハジメがインターフォンを押す。
ハジメ:来たけど。いるの。ここで、あってる。
0:ドアが開かれる。隙間かられいが顔を覗かせる。
れい:あー、ハジメちゃん。久しぶり。ごめんねえ突然呼び出して。
ハジメ:別にいいけど。どうしたの。
れい:インターホン越しじゃなんだから、入って。
ハジメ:はあ。
れい:あと、ちょっと驚くかもしれないけど、声出さないでね。夜だから。近所迷惑だし。
ハジメ:そんな散らかってるの。
れい:うん。まあそんな感じ。
ハジメ:別にいいけど。お邪魔します。
0:ハジメ、室内に入る。
れい:ありがとね、来てくれて。
ハジメ:ああ。うん。
0:ハジメ、シュークローゼットにもたれかかって死んでいる若い男を凝視する。
れい:驚いたよね。
ハジメ:そうだね。
れい:さっきちょっと揉めてね。彼お酒飲んでたから。転んで頭打っちゃって。
ハジメ:死んでるよね。
れい:うん。何しても起きないの。返事しないし。
ハジメ:この人彼氏。
れい:うん。ジュリヤっていうの。
ハジメ:そうなんだ。派手な頭してるね。
れい:うん。
ハジメ:そんで、なんで俺呼んだの。
れい:あのね。手伝ってほしいの。
ハジメ:何を。
れい:なかったことにしたいの。
ハジメ:何を。まさか、これ。
れい:うん。
ハジメ:救急車呼ぼうか。
れい:それはダメ。
ハジメ:ダメじゃないでしょ。人死んでるんだからさ。
ハジメ:事故なんでしょ。まず救急車呼ばなきゃ。
ハジメ:それから警察。
れい:だめなの。
ハジメ:あのね。
れい:だめなの。れいがジュリヤを殺したことになっちゃうもん。
ハジメ:事故なんでしょ。早く電話しよう。
れい:だめなの。
ハジメ:犯罪になっちゃうよ。
ハジメ:今ならまだ事故で済むかもしれないよ。
れい:だめなの。
ハジメ:殺してないけど死なせちゃったじゃん。
れい:どうしてそんな酷いこと言うの。
ハジメ:ああ、ごめんね。
れい:ねえ。ちょっとそっち持ってくれる。
ハジメ:え。
れい:ジュリヤ、酔っ払ってるだけだから。
れい:シャワー浴びせたら目を覚ますかもしれないから。
れい:だからお風呂場連れてくの手伝って。
ハジメ:いやいや呼吸止まってるよ。
ハジメ:目も開いてるし。血溜まりできてるじゃん。
れい:だったらなおさら早くシャワー入れなきゃ。
ハジメ:死体の処理手伝わせるために俺呼んだの。
れい:死体じゃないよ。起きないだけだよ。
ハジメ:これ、生きてるっていうの。
れい:もう。意地悪言わないで。早く。玄関汚れちゃう。
ハジメ:はあ。いいよ。お風呂どっち。
れい:うん。廊下の突き当たりの左。
ハジメ:じゃ、いくよ。せーの。
0:二人、死体の手と足をそれぞれ掴み、持ち上げようとする。
れい:ハジメちゃん、ごめん。
れい:持ち上がらない。手に力が入らないよ。
ハジメ:そりゃそうだろうね。
ハジメ:彼氏死んでるしね目の前で。
れい:死んでないよ。
ハジメ:そっか。まだ死んでないか。
ハジメ:いいよ。俺一人で持てる。この人、すっげえ細いから。
れい:うん。ジュリヤはね、太らないようにって一日一食しか食べないからね。
れい:体重なんてれいと変わらないんじゃないかな。
ハジメ:そうなんだ。モデルとかやってたの。
れい:ううん。メンコン。
ハジメ:メンコンって何。
ハジメ:農家の人ってこと。
れい:違う違う。ハジメちゃん知らないの。
れい:メンズコンカフェだよ。
ハジメ:コンカフェって、ガールズバーみたいなところじゃないの。
れい:ちょっと違うかなぁ。まあでも農家の人よりは近いよ。
れい:それの男版。
ハジメ:へえ。そうなんだ。ホストかと思った。
れい:違うよ! ジュリヤはホストなんかじゃないもん。
ハジメ:そっか。まあいいや。
ハジメ:じゃあ先行ってお風呂のドア開けておいて。
れい:うん。
0:れい、突き当たりの浴室の引き戸を開ける。
0:ハジメ、ため息をついて死体を持ち上げ、浴室の中に移す。
ハジメ:結構広いとこ住んでるんだね。
ハジメ:駅から結構近いし。家賃大丈夫なの。
れい:うん。バイト二つしてるから。
ハジメ:あれ。仕事やめたの。
れい:仕事もしてるよ。仕事終わった後にバイトしてるの。
ハジメ:そうなんだ。何のバイトしてるの。
れい:うん。ちょっとね。
ハジメ:キャバクラ。
れい:ううん。
ハジメ:風俗。
れい:うーん。
ハジメ:パパ活。
れい:ナイショ。
ハジメ:働くのは偉いけどさ。無理すると風邪ひくよ。
れい:うん。
ハジメ:バスタブに寝かせていい。
れい:うん。
0:ハジメ、死体をバスタブの中に放り込む。
ハジメ:シャワーかけるんだっけ。
れい:うん。
ハジメ:それも俺がやるの。
れい:うん。
ハジメ:ガスの元栓ついてる。
れい:うん。
0:ハジメ、死体の頭にシャワーをかける。
ハジメ:……起きないねえ。
れい:うん。
ハジメ:鼻に水圧マックスで水入れてみよっか。
れい:やめてよかわいそう。
ハジメ:冗談だよ。そんなことしても起きないもんな。
れい:起きないかなあ。
ハジメ:起きないよ。死んでるもん。
れい:ねえハジメちゃん。
ハジメ:何。
れい:なかったことにできないかなあ。
ハジメ:いやどう考えても無理でしょ。
ハジメ:救急車呼ぶなら今だよ。早くしたほうがいい。
れい:でもさあ。
れい:そしたられいがジュリヤを殺したことになっちゃう。
ハジメ:うん。でもまあ、ちゃんと自分で言えば執行猶予つくかもしれないよ。
れい:そうじゃないの。
ハジメ:じゃあ何なの。
れい:別に逮捕されるのはいいの。
ハジメ:何がダメなの。
れい:れいがジュリヤを殺したことが嫌なの。
ハジメ:一応聞くけどさ、なんで嫌なの。
れい:ジュリヤはね、れいの希望だから。
ハジメ:希望。このナスの漬物みたいなのが。
0:ハジメ、死体の髪の毛を掴み、顔を自分に向ける。
れい:そうだよ。れいの、コードーゲンリ。
ハジメ:行動原理。難しい言葉覚えたね。
れい:ジュリヤが教えてくれたの。
ハジメ:そうなんだ。頭いいんだねこの子。
れい:うん。だからね、ジュリヤのためにしてることは全部れいのためにしてることなの。
れい:なのにれいがジュリヤを殺しちゃうのはおかしいよ。
ハジメ:でも死んでるよ。どうするの。
れい:なかったことにしたいの。
ハジメ:ドラえもんがなんとかしてくれればいいんだけどね。
れい:ねえハジメちゃん。助けてほしい。
ハジメ:助けるってどうするの。
れい:(無言)
ハジメ:身代わり出頭しろってこと。
ハジメ:それとも証拠隠滅しろってこと。
れい:とにかく、これをなくしてほしいの。
ハジメ:バラせってこと。
れい:なかったことにしてほしい。
ハジメ:あのさあ。ムシが良すぎるよね。
れい:だよね。
ハジメ:年末の夜中に電話してきてさ。
ハジメ:助けてって言うから来たんだよ。
ハジメ:そんで死体バラしてほしいって。ちょっとどうかしてない。
れい:うん。ごめん。
ハジメ:俺ならいいよって言うと思ったの。
れい:うん。
ハジメ:すごい自信だね。
れい:だってハジメちゃん、れいのこと好きでしょ。
ハジメ:そうだね。好きだった。
れい:今でも好き。
ハジメ:うん。割と。
れい:れいと好きなだけセックスしていいから。
れい:だからジュリヤをなかったことにして。
ハジメ:やらせてやるから死体片付けろってこと。
れい:うん。
ハジメ:それで俺がウンって言うと思ったの。
れい:うん。
ハジメ:そうか。すごいね、れいは。
れい:そうかな。あ、でもね。
ハジメ:うん。
れい:後ろにしてほしいの。
ハジメ:後ろ。
れい:うん。前はね、まだ痛いんだ。
ハジメ:どういうこと。
れい:三日前にね、下ろしたの。
ハジメ:給料。
れい:子供。
0:(間)
ハジメ:ああ。そう。
れい:3回目だからもう大丈夫かなあって思ったんだけど、当分無理っぽくて。
ハジメ:後ろならいいんだ。
れい:うん。バイトで慣れてるから。
ハジメ:そっか。
れい:やってくれる。
ハジメ:うーん。どうしようかなぁ。
れい:お願い。
ハジメ:あのさ。
ハジメ:れいはこの、ジュリアくんのどこが好きなの。
ハジメ:ぶっちゃけ顔がいいわけじゃないじゃん。
れい:ジュリアじゃないよ。ジュリヤ。
ハジメ:ああ、うん。ジュリヤ。
れい:ジュリヤといるとね、れいは何も考えなくていいの。
ハジメ:いつも何か考えてるような言いぶりじゃん。
れい:考えてるよー。頭が痛くなるくらい考えてる。イライラするくらい考える。
ハジメ:何を考えてんの。
0:(間)
れい:色々。
ハジメ:たとえば。
れい:思い出せないんだよね。でもずっと何か考えてる。
ハジメ:そうなんだ。
れい:ジュリヤといるとね、考えなくて済むの。
れい:それがすごく好きなの。
ハジメ:へえ。
0:ハジメ、シャワーヘッドで死体の頭を何度も強く殴る。
れい:ハジメちゃん、何するの。
ハジメ:シャワー浴びせても起きないからさ。
れい:やめてよ。そんなので叩いたらジュリヤ痛いよ。
ハジメ:痛くて起きたらいいじゃん。
れい:やめてよ。やめてってば。飛び出ちゃう。
ハジメ:どうせバラすんだからいいでしょ。
れい:そっか。それもそうだね。
ハジメ:車の後ろに仕事道具積んでるから。それ使うね。
れい:うん。
ハジメ:ところでもう夕飯食ったの。
れい:ううん。ジュリヤは朝しか食べないから。
れい:れいもそうしてるの。
ハジメ:お腹空かない?
れい:うん。
ハジメ:焼肉食べたくない?
れい:うん!
れい:でももうこんな時間だからやってるお店ないよ。
ハジメ:そっか。ちょっと車戻る。
れい:待ってるね。
0:ハジメ、自分の車に戻る。
0:場面は再び浴室。
0:ハジメ、チェーンソーを始動させ、死体の解体を始める。
ハジメ:あのさあ。
れい:なに。
ハジメ:最近どう。
れい:え。今聞くの。
ハジメ:黙ってるとなんか笑えてきちゃって。
れい:ハジメちゃんすごいね。こんなことしながら笑えるの。
ハジメ:そういう意味じゃないよ。
れい:今年はねえ、色々あったなぁ。
ハジメ:たとえば。
れい:バイト増やしたし、肋骨折れたし、病院の診察券ばっかり溜まったなあ。
ハジメ:大変じゃん。ジュリヤくんに殴られたの。
れい:ううん。蹴られた。
ハジメ:そうなんだ。痛くなかった。
れい:痛かった。
れい:でもまあ、しょうがないかなぁって思ってる。
ハジメ:なんかやらかした。
れい:数字取れなかったんだって。
ハジメ:メンコン、だっけ。
れい:そう。エースじゃなくなった! って怒られた。
ハジメ:すごいね。トップ営業マンみたいだ。
れい:ジュリヤも大変なんだなあって思う。
ハジメ:そうかもね。
れい:ハジメちゃんはどうだったの。
ハジメ:仕事してたよ。
れい:そうなんだ。お疲れさま。
れい:他には。
ハジメ:ラーメン食ったり、たまにパチンコ打ったり。
れい:他になんかあった。
ハジメ:それくらいかな。
れい:来年はどうするの。
ハジメ:仕事してると思うよ。
れい:それだけ。
ハジメ:うん。多分ね。
れい:そっかあ。偉いね。
ハジメ:偉いかな。
れい:うん。
0:ハジメ、死体の四肢を胴体から切断する。
ハジメ:よし、切れた。
れい:すごい!ありがとう!
ハジメ:いやいやこれからだから。
ハジメ:ちょっと休憩しようか。
れい:何か食べる?
ハジメ:うん。焼肉。
れい:この辺お店ないよ。それにハジメちゃん血まみれだし。
ハジメ:ここでやろうよ。
れい:え。
ハジメ:フライパンあるでしょ。
れい:ある。
ハジメ:肉あるでしょ。
れい:ないよ。
れい:ジュリヤはベジタリアンだもん。
ハジメ:肉あるでしょ。
れい:ないって。
ハジメ:肉あるでしょ。
れい:ジュリヤを食べるってこと。
ハジメ:そう。
れい:ダメだよ! 絶対だめ!
れい:ジュリヤはれいのコードーゲンリなんだよ!
れい:それを食べるのはおかしいよ!
ハジメ:これはもうジュリヤじゃないよ。
れい:ジュリヤだよ。
ハジメ:なかったことにしてくれって言ったじゃん。
れい:言った、けど。
ハジメ:ジュリヤじゃないんだよ。ジュリヤをなかったことにしたんだ。
ハジメ:これは、肉だよ。スーパーで売ってる精肉じゃないけど、肉だから。
れい:肉。
ハジメ:うん。お肉。
れい:お肉かあ。
ハジメ:ジュリヤ君に食事も合わせてたんでしょ。
れい:うん。
ハジメ:焼肉食べたいって言ってたじゃん。
れい:うん。
ハジメ:食べよう。
れい:うーん。でもさあ。
0:(間)
ハジメ:昔聞いた話なんだけどさ。
ハジメ:インディアン。
れい:インディアン。
ハジメ:うん。インディアンはね、大切な人がなくなると魂を自分の体に入れるためにその人の肉を食ったんだって。
れい:そうなの。
ハジメ:うん。だからさ、れいにとっての、行動原理になったジュリヤを、れいの中に入れてみようよ。
れい:それいい!入れる!
ハジメ:じゃあ切り分けて持って行くから。
ハジメ:フライパンに油引いておいて。
れい:わかった。
0:場面転換。キッチンのコンロの前に二人並ぶ。不揃いな形の肉がフライパンの上で音を立てる。
ハジメ:いい匂いだね。料理できたんだ。
れい:馬鹿にしないでよー。家庭科3だったんだから。
ハジメ:5じゃないんだ。
れい:うん。でも他は2とか1だから。
ハジメ:じゃあ、得意科目だね。
れい:魚肉ソーセージと野菜の炒め物が得意です。
ハジメ:渋いね。
れい:ねえハジメちゃん、テレビつけてくれる。
ハジメ:はいはい。おお、紅白やってる。
ハジメ:もうすぐ今年も終わりだ。
れい:今年の紅白にHIASOBIが出るの。
ハジメ:ああ、ネットですごい売れた人たち。
れい:そう。すごいんだよ。
ハジメ:ガチャガチャしたテンポのはやいラブソングばっかりじゃん。
れい:それがいいの。声と綺麗な歌詞が好き。
ハジメ:そうなんだ。俺は、ちょっと聞き取れないや。
れい:今度ちゃんと聞いてみて。
ハジメ:今度ね。
れい:ねえハジメちゃん。
れい:好きってなんだろうねえ。
ハジメ:急だね。どしたの。
れい:曲聴いてたらさあ。
ハジメ:うん、なんだろうね。
れい:愛とか恋とかってさ、難しいよね。
ハジメ:そうだね。
れい:れいはバカだからわかんないのかなあ。
ハジメ:わかんないからバカなんじゃない。
れい:バカって言わないでよ。
ハジメ:自分で言ったじゃん。
れい:そうでした。
ハジメ:さて、いい具合に焼きあがった。味見してみるか。
れい:うん。
ハジメ:いただきます。
れい:いただきます。
0:二人、焼けた肉を口に運び無言で噛みしめる。
ハジメ:どう。
れい:まずい。
ハジメ:まずいよね。
れい:すっごくまずい。
ハジメ:これ全部食べる?
れい:食べたほうがいいよねえ。
ハジメ:別に残してもいいんじゃない。
れい:そっか。ハジメちゃん食べる?
ハジメ:いらない。
れい:だよね。
ハジメ:あのさあ。
ハジメ:これからどうすんの。
れい:どうしよっか。
ハジメ:行動原理、食べちゃったじゃん。
れい:残したよ。
ハジメ:一口食べて残したじゃん。
れい:うん。
0:(間)
ハジメ:俺と逃げようか。
れい:さっき来年も仕事するって言ったじゃん。
ハジメ:そうは言ったけど、無理だと思うなあ。
ハジメ:絶対アシがつくし。
れい:えー。
ハジメ:俺と逃げようよ。
ハジメ:どこでもいいから。
れい:うーん。
ハジメ:嫌なの。
れい:うーん。うん。
0:(間)
ハジメ:なんで。
れい:だってハジメちゃんのこと好きじゃないし。
れい:ハジメちゃんはれいのコードーゲンリじゃないから。
0:(間)
ハジメ:そっかあ。またフラれるのかあ。
れい:ごめんねえ。セックスならいいからさ。
ハジメ:うん。それもそれで辛いもんだよ。
ハジメ:でもさ、さっき愛とか恋とかわかんないって言ったじゃない。
れい:うん。
ハジメ:好きとか好きじゃないとかはわかるんだ。
れい:好きじゃないはわかるよ。
ハジメ:好きは。
れい:わかる気がする。
ハジメ:ジュリヤくんのことは好きだったの。
れい:うーん。
ハジメ:わかってないじゃん。
れい:わかってないね。
ハジメ:ウケる。
ハジメ:変わんないねえ、れいは。
れい:そうかな。
れい:美容整形頑張ったんだけどなあ。
ハジメ:うん。変わんない。
ハジメ:よかった。
れい:へへ。
ハジメ:俺さあ、これからジュリヤ細かくするから。
ハジメ:もう遅いし寝てなよ。
れい:え。いいの。
れい:なんか悪いなあ。
ハジメ:いいって。
ハジメ:もういいから。
れい:うん。じゃあ、ごめんちょっと寝るね。
れい:ここんとこ仕事とバイトでほとんど寝てなくて。
れい:ありがとね。
れい:起きたらいっぱいセックスしていいよ。
ハジメ:ありがと。
れい:うん。じゃあ、あっちの部屋で寝るから。
れい:なんかあったら起こしてね。
ハジメ:ああ。終わったら起こしに行くよ。
ハジメ:おやすみ。
れい:うん。おやすみ!
0:れい、キッチンを出て寝室に消える
0:ハジメ、シンク下の戸を開き、包丁を探し当てる。
ハジメ:もしもし。警察ですか。
ハジメ:今、人を殺しました。
ハジメ:二人です。
0:終