台本概要

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タイトル SAKURA AWAKE
作者名 あまくケイ  (@amak0331)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(男1、女1) ※兼役あり
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 SAKURA AWAKE(サクラ アウェイク)

無機質な部屋で目覚めた白髪の青年
彼には記憶がなかった
隣に居た少女「ケア」は、彼の事を「桜花(おうか)」と呼び
記憶を戻す手伝いをすると言う

「迅雷の最適解」シリーズ作品
男1:女1
男性役は女性がやっても可
ストーリー展開・雰囲気が崩れない程度のアドリブ・言い換えは可
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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
桜花 93 桜花(おうか) 白髪の青年 目覚めた時は、白い無機質な部屋にいた 記憶がないせいで、戸惑う事が多く、ケアによく質問をする 一人称は僕
ケア 73 目覚めた桜花の隣に居た少女 彼の手伝いをすることが目的 人間味が少ない、淡白な喋り方をする
少女 9 物語後半に登場 ケア役が兼ね役
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
桜花:(白い天井は、一番に見えた) 桜花:(ただ目を開けただけ、何も知らないまま) 桜花:……ここは? ケア:お目覚めですか、桜花様 桜花:……え? ケア:おはようございます 桜花:お、おはよう。……ちょっと待って ケア:なんでしょう? 桜花:軽く挨拶してるけどさ、君は誰? ケア:私の名は「ケア」です。桜花様 桜花:……桜花(おうか)? ケア:桜に花と書いて、桜花です 桜花:それは、僕の名前? ケア:はい、あなた様に与えれらた名前です 桜花:与えられた……? 本名じゃないの? ……あと、ここは? ケア:桜花様の寝室です 桜花:寝室? こんなに機械っぽい部屋が? 桜花:ええと……ううん、ごめん ケア:謝られることは、何も 桜花:いや、そういう意味じゃなくて……その、全然ついていけないんだ ケア:ついていけないとは? 桜花:この状況にだよ。起きたら知らない部屋なんだし、知らない人が隣にいるし、これですぐ整理できる人はいないよ ケア:……やはり、記憶の損失が大きくあるようです 桜花:記憶? ケア:結論から申し上げますと、桜花様は、記憶を失っております 桜花:そう……なんだ。ていうかその「様」ってのは? ケア:はい? 桜花:様呼びってことは……僕は何か、位の高い人なのかな、って ケア:私から見れば、そうですね ケア:貴方様は、造られた存在ですので 桜花:……造られた、存在? 僕が ケア:はい 桜花:……次から次へと、色んな話が出てくるなぁ ケア:一度、紅茶を飲まれますか? 桜花:紅茶、あるの? ケア:はい ケア:マスターが……「私を造ってくれたお方が」好んで飲んでいたものがありますので 桜花:君も、造られたの ケア:はい。桜花様と同じです 桜花:…… 桜花:(その後、ケアは僕を寝室から別の場所へ案内した) 桜花:(次の部屋も、無機質な部屋。真ん中にはテーブル席があった) ケア:こちらでお待ちください 桜花:(しばらくして、ケアは別の部屋から、小さなティーカップを持ってくる。慣れたような手つきで、僕の目の前に置いた) 桜花:ありがとう ケア:それでは、お話の続きを…… 桜花:あれ? 君のは? ケア:私は、要らないので 桜花:要らないの? ケア:特段、私は紅茶を飲まなくても、アンドロイドですから、死ぬことはありません 桜花:ん? アンド、ロイド? ……機械ってこと? ケア:はい 桜花:そんな風には、見えないな…… ケア:今の技術では、外見は人間と変わりないレベルにすることは可能です 桜花:君は、アンドロイドとして造られたの? ケア:おっしゃる通りです 桜花:じゃあ、僕も造られたんだから、僕もアンドロイド? ケア:桜花様は違います 桜花:僕は、違うんだ? ケア:桜花様は、マスターの言葉を借りると……生命体という言葉が近いです 桜花:生命体って……人間じゃないみたい ケア:特別な力を持った、人間といえばいいでしょうか 桜花:超能力ってこと? ケア:そうですね 桜花:……ふうん 桜花:じゃあ僕は、ここで、その……実験みたいなのを受けてたとか? 能力の ケア:実際は、桜花様は眠った状態で、調整をされておりました 桜花:調整!? ケア:マスターはあの部屋に入って、桜花様の容態などをチェックされていました。毎日 桜花:へぇ……そんなに。よほど、大切だったのかな ケア:はい。最高傑作と、よく呼んでおられました 桜花:は、はは。そうなんだ…… 0:しばらくの間 桜花:……あの、こんなことをいきなり聞くのもどうかだけど ケア:なんでしょうか 桜花:ケアは、僕に何をさせたいの? 桜花:僕が造られた存在なのは分かったけど、なんで造られたのか分かんないし 桜花:ケアはその理由を知っているんでしょ? ケア:一つ、言えるとすれば、戦闘をするため、と 桜花:兵器、ってことかな ケア:言葉としては、近いです ケア:……別の部屋に、マスターの資料が残っております 桜花:資料? ケア:あちらの部屋です。……その前に、紅茶は飲まれましたか? 片付けておきます 桜花:ああ、ありがとう 桜花:そうだ。……紅茶、美味しかったよ ケア:……ありがとうございます ケア:それでは、こちらへ 桜花:(ケアはそう言って、僕をまた別の部屋へ連れてきた) 桜花:(今度は少し広い部屋だ。部屋の作りやデザインに変わりないけど、奥のほうにぽつんと机があった。でもその机の上を見ると、乱雑に散らかっているのが見えた) ケア:マスターの使われていた資料です。ご覧になりますか? 桜花:いいの? ケア:もう、おられませんので 桜花:帰ってこないの? ケア:いえ。既に死亡したものと思われます 桜花:えっ……? ケア:なので、マスターは帰ってこられません 桜花:そうなんだ…… ケア:どうされますか? 桜花:ああ、うん。見てみるよ 桜花:えーっと……色々あるな…… 桜花:……「髪の色や瞳の色を覗けばオリジナルと差異はなし。クローン体に直接、樹液を混ぜる実験は初の試みであったが、数々の開発個体の中でも、より強力な存在になる可能性が高い……」 桜花:……なんか、いろいろ書いてあるけど、これって僕の事? ケア:はい 桜花:はは、はっきり言うんだね…… 桜花:えっと、これ、クローン体ってあるけど。僕は誰かのクローンなの? ケア:はい。桜花様のモデルになった人物がいます 桜花:そのクローンって、誰? ケア:それに関してですが。次の部屋で、桜花様の記憶を取り戻す装置がありますゆえ、その時に、わかるかと 桜花:装置? ケア:マスターが造られた装置です 桜花:へぇ……じゃあそれも、僕の為に? ケア:はい 桜花:……まぁ、いきなりあなたはどこの誰ですって言われても、ピンとこないしな……そういう装置を使った方が、早いのか…… 桜花:はぁ……考えれば考えるほど、疑問ばっかり浮かんでくる…… 桜花:とりあえず……僕は、記憶を取り戻す必要があるんだね? ケア:はい。それは、桜花様にとっても大事なものです 桜花:……そしたら、その記憶を取り戻す手伝い、してもらっていい? ケア:承知しました。……では、こちらへ 桜花:(ケアは僕を、別の部屋へと案内する) 桜花:(今度は、更に広く、中央の床には、光の線が、円をえがくようにいくつも走っていて。上を見ると、巨大な円柱のようなものがあった。おそらく、あれが記憶を取り戻す装置なんだろう) 桜花:ここに立てばいいのかな? ケア:はい。理解が早くて助かります ケア:……それでは、これから桜花様には、オリジナル体の記憶から再現された「イメージ空間」を、桜花様の周りに展開いたします 桜花:展開……? 部屋が変わるの? ケア:いえ。この部屋自体に変わりはないですが、仮想空間のようなものだと思ってくださいませ 桜花:分かった 桜花:っ? あそこにおいてあるのは? ケア:あれは、桜花様の武器です 桜花:僕の? あの剣が? ケア:マスターが造られました 桜花:……そうか、戦闘のため、って言ってたもんね 0:しばらくの間 ケア:それでは、準備はよろしいですか? 桜花:うん ケア:承知しました ケア:記憶追想プログラム、起動。第一段階、開始 桜花:っ! 桜花:(その瞬間、周りの景色が光の渦につつまれる。僕はまぶしくて、目を閉じたが、しばらくしてから開けると、別の場所になっていた 桜花:……ここは? 丘? 森、かな? 桜花:夕方、か 桜花:でも、あの部屋なんだよな…… 桜花:……ん? あそこに、誰か、いる? 桜花:(僕の視線の先には、少女が居た。少女は軽い足取りで歩いていた。僕は、その子に呼びかける) 桜花:ねぇ、君…… 少女:遅いよー! ハル! 桜花:っ……ハ、ル……! 桜花:(そう呼ばれた瞬間、頭の中で急に、電気が走るように記憶がよみがえってきた) 桜花:……そうか……そうだ 桜花:……なんで忘れてたんだろう 桜花:君の軽い足取りは、いつだって見ていたじゃないか 桜花:「ヒナミ」 少女:ハル?  桜花:今日も、丘に行くの? 少女:うん。だって「飛んで」みたいし 桜花:……村の人に見られたら、大変だよ 少女:でも、ハルがいるから、大丈夫 桜花:……そうだね。そうだった 桜花:例え、村の人が、ヒナミの敵になっても 桜花:僕はヒナミをまもる 桜花:ずっと前から決めていたから 少女:……ありがとう、ハル 桜花:君が、「白い大樹」……昔、世界を滅ぼした大樹の血を持っているのは知ってる 少女:そう、私は言い伝えで聞いただけなんだけどね 少女:昔に存在していた「白い大樹」は、元は一人の人間。それが大樹になって、毒を撒いて、世界を壊しちゃった 少女:私は、その一族の末裔(まつえい) 少女:……ハルは、私が化け物でも、平気? 桜花:何回言わせるんだよ。ヒナミが化け物だろうと関係ない 桜花:僕は、君を守ると、ずっと決めている 桜花:それだけなんかじゃない 桜花:もし君が「白い大樹」になったとしても、必ず、必ず君を戻す方法を見つけて、助ける 桜花:絶対に、助ける 桜花:君は誰にも、殺させはしない 少女:……! 少女:ありがとう、ハル 少女:……あ、そうだ。最近、綺麗な花が咲いたの 桜花:へぇ、そうなんだ? 少女:ぽつんと伸びた木でね、この辺りで咲くのは珍しいって言われてる 桜花:なんて花? 少女:桜っていう名前、前に村の人に教えてもらったんだ 少女:小さなピンクの花弁だけど、遠くから見ると、その桜の花がまとまった木が……とても綺麗なんだ 少女:あ、ほら! あれ! 桜花:……。本当だ 桜花:……綺麗だよ、とても 0: ケア:第一段階、終了 桜花:っ! ケア:お疲れさまです 桜花:……ありがとう、ケア 桜花:大事なことを思い出したよ ケア:無事に、第一段階は、成功したようですね 桜花:第一段階。 ケア:はい。もう一つだけ、あります 桜花:……その前に、少し疲れた 桜花:またさっきの紅茶、もらってもいい? ケア:承知しました 0: ケア:どうぞ 桜花:ありがとう 桜花:……うん。美味しいな、これ ケア:マスターお気に入りの、紅茶です 桜花:はは。好きなものが合いそう ケア:その話をすればきっと、マスターも喜ばれます 桜花:そうかな?  ケア:ええ、おそらくですが 桜花:まぁ、今は、居ないんだもんね…… 桜花:……ヒナミにも、飲ませてあげたいな ケア:…… 桜花:きっと美味しいって思ってくれる 桜花:……ねぇ、ケア ケア:なんでしょう? 桜花:……ヒナミは、何処にいるか知らない? ケア:……申し訳ございませんが 桜花:あ、ううん、いいんだ 桜花:その、マスターって人が、僕を造ったのも 桜花:きっと……元の僕が死んでしまったからなんだよね 桜花:だったらわざわざクローン体なんて造らないし ケア:…… 桜花:もしかしたらマスターも、ヒナミを知ってる人で 桜花:僕に、ヒナミを助けるように……体が変わっても、そうするように、造ってくれたのかなぁとか、考えちゃって 桜花:都合がいいかもしれないけど 桜花:マスターには感謝してるよ 桜花:……そしたら、次の段階 桜花:頼んでもいいかな ケア:承知、しました 0: ケア:……準備はよろしいですか? 桜花:うん 桜花:(ケアは、自分のことをずっとアンドロイドと言っている。それは事実なんだろうけど、でも、紅茶を出してくれたり、時折見せる表情は、どこか人間のよう。最後に見せた切ないような顔も、人間らしくて) ケア:記憶追想プログラム。第2段階、開始 0: 桜花:……ここは? 0:- 桜花:(たくさんの瓦礫に、崩壊したビル。さっきの景色とはまるっきり違うところに来ていた。僕は、その中を進んでいく) 桜花:……あそこにいるのは? 誰だ? 0:- 桜花:(金色の髪に、一振りの剣、機械出てきた体。後姿は全く見たことのない人と思ったが、顔を見た瞬間、僕は驚きを隠せなかった) 桜花:……あれは、僕? 桜花:……ねぇ! 君! 0:- 桜花:(僕は呼びかけるが、青年は応えない) 桜花:(僕は、彼の後を追った) 0:- 桜花:この空間は、僕の記憶で出てきている……オリジナルの 桜花:……でも、なんであんな姿に? 桜花:っ!? あれは!? 桜花:なんだ、あの巨大な樹は……!?  桜花:……待てよ。あの幹の中 桜花:(巨大な樹が、僕の前に現れる。ただ、その中央に大きく咲いている花のようなものがある。さらに、その花の中心には) 桜花:……まさか。……ヒナミ!? 桜花:そんな……嘘だろ? 大樹になってしまったのか!? 0:桜花は、自分に似た青年に声をかけた 桜花:……おい! 聞こえてるのか! 桜花:君は、僕なんだろ!? 桜花:今こそ、助ける時だ! ヒナミを救う時だ 桜花:なんでそんな体になったのか分からない! 桜花:でも……君は、君の持ってるその剣は、きっとヒナミを助けるためにあるんだろ!? 桜花:なぁ! 0:- 桜花:(しかし、その青年は、考えられない表情をしていた) 0:- 桜花:……え? 桜花:なんで、笑ってるんだ? 桜花:おい……おい! 0:- 桜花:(もう一人の僕は、笑う。笑って、剣を握る) 桜花:(剣に、段々と電気が纏われ、どんどんと大きくなっていく) 桜花:(何が起こっているかはわからない。でもはっきりとした悪い予感が、僕の脳裏をかすめていた) 桜花:(まさか、あの剣で、ヒナミを斬るんじゃ……) 0:- 桜花:何やってるんだよ……! 辞めろ!  桜花:辞めろおおおおおおおお!!! 0:しばらくの間 桜花:ぁ……ぁぁ…… 桜花:嘘だ……ヒナミ、そんな、そんな……! 桜花:待って、消えないで、ヒナミ! 嫌だ! 嫌だ!! 桜花:ぁ、ぁぁ……ぁぁぁああああ! 桜花:…… 桜花:……ふざけるなよ 桜花:……何やってんだよ、お前 桜花:この、人殺しがああああああああああああ!!! 0: 桜花:殺してやる、殺してやる!! 桜花:あ、ああああああ……ぁぁ! ケア:っ……かはっ……! 桜花:っ!? 桜花:ケ……ケア? 桜花:(ケアの声で、現実に戻ってきた) 桜花:(でも僕は、知らない間に、剣を握って、ケアを刺していた) ケア:記憶追想プログラム……完了 ケア:オリジナルの……神器も……正常に稼働…… ケア:お疲れ……さまでした……桜花、様…… 桜花:……っ! ケア:あなたの……赴くままに…… 桜花:……ケア? 桜花:死んだ、のか? 桜花:……いや、アンドロイドに、死ぬなんてないか 桜花:……はは 桜花:……あいつも、機械だったな 桜花:人殺しの機械になったのか? お前は? 桜花:……あいつは、僕なんかじゃない 桜花:あのイカれた機械は……僕が必ず…… 桜花:壊してやるよ

桜花:(白い天井は、一番に見えた) 桜花:(ただ目を開けただけ、何も知らないまま) 桜花:……ここは? ケア:お目覚めですか、桜花様 桜花:……え? ケア:おはようございます 桜花:お、おはよう。……ちょっと待って ケア:なんでしょう? 桜花:軽く挨拶してるけどさ、君は誰? ケア:私の名は「ケア」です。桜花様 桜花:……桜花(おうか)? ケア:桜に花と書いて、桜花です 桜花:それは、僕の名前? ケア:はい、あなた様に与えれらた名前です 桜花:与えられた……? 本名じゃないの? ……あと、ここは? ケア:桜花様の寝室です 桜花:寝室? こんなに機械っぽい部屋が? 桜花:ええと……ううん、ごめん ケア:謝られることは、何も 桜花:いや、そういう意味じゃなくて……その、全然ついていけないんだ ケア:ついていけないとは? 桜花:この状況にだよ。起きたら知らない部屋なんだし、知らない人が隣にいるし、これですぐ整理できる人はいないよ ケア:……やはり、記憶の損失が大きくあるようです 桜花:記憶? ケア:結論から申し上げますと、桜花様は、記憶を失っております 桜花:そう……なんだ。ていうかその「様」ってのは? ケア:はい? 桜花:様呼びってことは……僕は何か、位の高い人なのかな、って ケア:私から見れば、そうですね ケア:貴方様は、造られた存在ですので 桜花:……造られた、存在? 僕が ケア:はい 桜花:……次から次へと、色んな話が出てくるなぁ ケア:一度、紅茶を飲まれますか? 桜花:紅茶、あるの? ケア:はい ケア:マスターが……「私を造ってくれたお方が」好んで飲んでいたものがありますので 桜花:君も、造られたの ケア:はい。桜花様と同じです 桜花:…… 桜花:(その後、ケアは僕を寝室から別の場所へ案内した) 桜花:(次の部屋も、無機質な部屋。真ん中にはテーブル席があった) ケア:こちらでお待ちください 桜花:(しばらくして、ケアは別の部屋から、小さなティーカップを持ってくる。慣れたような手つきで、僕の目の前に置いた) 桜花:ありがとう ケア:それでは、お話の続きを…… 桜花:あれ? 君のは? ケア:私は、要らないので 桜花:要らないの? ケア:特段、私は紅茶を飲まなくても、アンドロイドですから、死ぬことはありません 桜花:ん? アンド、ロイド? ……機械ってこと? ケア:はい 桜花:そんな風には、見えないな…… ケア:今の技術では、外見は人間と変わりないレベルにすることは可能です 桜花:君は、アンドロイドとして造られたの? ケア:おっしゃる通りです 桜花:じゃあ、僕も造られたんだから、僕もアンドロイド? ケア:桜花様は違います 桜花:僕は、違うんだ? ケア:桜花様は、マスターの言葉を借りると……生命体という言葉が近いです 桜花:生命体って……人間じゃないみたい ケア:特別な力を持った、人間といえばいいでしょうか 桜花:超能力ってこと? ケア:そうですね 桜花:……ふうん 桜花:じゃあ僕は、ここで、その……実験みたいなのを受けてたとか? 能力の ケア:実際は、桜花様は眠った状態で、調整をされておりました 桜花:調整!? ケア:マスターはあの部屋に入って、桜花様の容態などをチェックされていました。毎日 桜花:へぇ……そんなに。よほど、大切だったのかな ケア:はい。最高傑作と、よく呼んでおられました 桜花:は、はは。そうなんだ…… 0:しばらくの間 桜花:……あの、こんなことをいきなり聞くのもどうかだけど ケア:なんでしょうか 桜花:ケアは、僕に何をさせたいの? 桜花:僕が造られた存在なのは分かったけど、なんで造られたのか分かんないし 桜花:ケアはその理由を知っているんでしょ? ケア:一つ、言えるとすれば、戦闘をするため、と 桜花:兵器、ってことかな ケア:言葉としては、近いです ケア:……別の部屋に、マスターの資料が残っております 桜花:資料? ケア:あちらの部屋です。……その前に、紅茶は飲まれましたか? 片付けておきます 桜花:ああ、ありがとう 桜花:そうだ。……紅茶、美味しかったよ ケア:……ありがとうございます ケア:それでは、こちらへ 桜花:(ケアはそう言って、僕をまた別の部屋へ連れてきた) 桜花:(今度は少し広い部屋だ。部屋の作りやデザインに変わりないけど、奥のほうにぽつんと机があった。でもその机の上を見ると、乱雑に散らかっているのが見えた) ケア:マスターの使われていた資料です。ご覧になりますか? 桜花:いいの? ケア:もう、おられませんので 桜花:帰ってこないの? ケア:いえ。既に死亡したものと思われます 桜花:えっ……? ケア:なので、マスターは帰ってこられません 桜花:そうなんだ…… ケア:どうされますか? 桜花:ああ、うん。見てみるよ 桜花:えーっと……色々あるな…… 桜花:……「髪の色や瞳の色を覗けばオリジナルと差異はなし。クローン体に直接、樹液を混ぜる実験は初の試みであったが、数々の開発個体の中でも、より強力な存在になる可能性が高い……」 桜花:……なんか、いろいろ書いてあるけど、これって僕の事? ケア:はい 桜花:はは、はっきり言うんだね…… 桜花:えっと、これ、クローン体ってあるけど。僕は誰かのクローンなの? ケア:はい。桜花様のモデルになった人物がいます 桜花:そのクローンって、誰? ケア:それに関してですが。次の部屋で、桜花様の記憶を取り戻す装置がありますゆえ、その時に、わかるかと 桜花:装置? ケア:マスターが造られた装置です 桜花:へぇ……じゃあそれも、僕の為に? ケア:はい 桜花:……まぁ、いきなりあなたはどこの誰ですって言われても、ピンとこないしな……そういう装置を使った方が、早いのか…… 桜花:はぁ……考えれば考えるほど、疑問ばっかり浮かんでくる…… 桜花:とりあえず……僕は、記憶を取り戻す必要があるんだね? ケア:はい。それは、桜花様にとっても大事なものです 桜花:……そしたら、その記憶を取り戻す手伝い、してもらっていい? ケア:承知しました。……では、こちらへ 桜花:(ケアは僕を、別の部屋へと案内する) 桜花:(今度は、更に広く、中央の床には、光の線が、円をえがくようにいくつも走っていて。上を見ると、巨大な円柱のようなものがあった。おそらく、あれが記憶を取り戻す装置なんだろう) 桜花:ここに立てばいいのかな? ケア:はい。理解が早くて助かります ケア:……それでは、これから桜花様には、オリジナル体の記憶から再現された「イメージ空間」を、桜花様の周りに展開いたします 桜花:展開……? 部屋が変わるの? ケア:いえ。この部屋自体に変わりはないですが、仮想空間のようなものだと思ってくださいませ 桜花:分かった 桜花:っ? あそこにおいてあるのは? ケア:あれは、桜花様の武器です 桜花:僕の? あの剣が? ケア:マスターが造られました 桜花:……そうか、戦闘のため、って言ってたもんね 0:しばらくの間 ケア:それでは、準備はよろしいですか? 桜花:うん ケア:承知しました ケア:記憶追想プログラム、起動。第一段階、開始 桜花:っ! 桜花:(その瞬間、周りの景色が光の渦につつまれる。僕はまぶしくて、目を閉じたが、しばらくしてから開けると、別の場所になっていた 桜花:……ここは? 丘? 森、かな? 桜花:夕方、か 桜花:でも、あの部屋なんだよな…… 桜花:……ん? あそこに、誰か、いる? 桜花:(僕の視線の先には、少女が居た。少女は軽い足取りで歩いていた。僕は、その子に呼びかける) 桜花:ねぇ、君…… 少女:遅いよー! ハル! 桜花:っ……ハ、ル……! 桜花:(そう呼ばれた瞬間、頭の中で急に、電気が走るように記憶がよみがえってきた) 桜花:……そうか……そうだ 桜花:……なんで忘れてたんだろう 桜花:君の軽い足取りは、いつだって見ていたじゃないか 桜花:「ヒナミ」 少女:ハル?  桜花:今日も、丘に行くの? 少女:うん。だって「飛んで」みたいし 桜花:……村の人に見られたら、大変だよ 少女:でも、ハルがいるから、大丈夫 桜花:……そうだね。そうだった 桜花:例え、村の人が、ヒナミの敵になっても 桜花:僕はヒナミをまもる 桜花:ずっと前から決めていたから 少女:……ありがとう、ハル 桜花:君が、「白い大樹」……昔、世界を滅ぼした大樹の血を持っているのは知ってる 少女:そう、私は言い伝えで聞いただけなんだけどね 少女:昔に存在していた「白い大樹」は、元は一人の人間。それが大樹になって、毒を撒いて、世界を壊しちゃった 少女:私は、その一族の末裔(まつえい) 少女:……ハルは、私が化け物でも、平気? 桜花:何回言わせるんだよ。ヒナミが化け物だろうと関係ない 桜花:僕は、君を守ると、ずっと決めている 桜花:それだけなんかじゃない 桜花:もし君が「白い大樹」になったとしても、必ず、必ず君を戻す方法を見つけて、助ける 桜花:絶対に、助ける 桜花:君は誰にも、殺させはしない 少女:……! 少女:ありがとう、ハル 少女:……あ、そうだ。最近、綺麗な花が咲いたの 桜花:へぇ、そうなんだ? 少女:ぽつんと伸びた木でね、この辺りで咲くのは珍しいって言われてる 桜花:なんて花? 少女:桜っていう名前、前に村の人に教えてもらったんだ 少女:小さなピンクの花弁だけど、遠くから見ると、その桜の花がまとまった木が……とても綺麗なんだ 少女:あ、ほら! あれ! 桜花:……。本当だ 桜花:……綺麗だよ、とても 0: ケア:第一段階、終了 桜花:っ! ケア:お疲れさまです 桜花:……ありがとう、ケア 桜花:大事なことを思い出したよ ケア:無事に、第一段階は、成功したようですね 桜花:第一段階。 ケア:はい。もう一つだけ、あります 桜花:……その前に、少し疲れた 桜花:またさっきの紅茶、もらってもいい? ケア:承知しました 0: ケア:どうぞ 桜花:ありがとう 桜花:……うん。美味しいな、これ ケア:マスターお気に入りの、紅茶です 桜花:はは。好きなものが合いそう ケア:その話をすればきっと、マスターも喜ばれます 桜花:そうかな?  ケア:ええ、おそらくですが 桜花:まぁ、今は、居ないんだもんね…… 桜花:……ヒナミにも、飲ませてあげたいな ケア:…… 桜花:きっと美味しいって思ってくれる 桜花:……ねぇ、ケア ケア:なんでしょう? 桜花:……ヒナミは、何処にいるか知らない? ケア:……申し訳ございませんが 桜花:あ、ううん、いいんだ 桜花:その、マスターって人が、僕を造ったのも 桜花:きっと……元の僕が死んでしまったからなんだよね 桜花:だったらわざわざクローン体なんて造らないし ケア:…… 桜花:もしかしたらマスターも、ヒナミを知ってる人で 桜花:僕に、ヒナミを助けるように……体が変わっても、そうするように、造ってくれたのかなぁとか、考えちゃって 桜花:都合がいいかもしれないけど 桜花:マスターには感謝してるよ 桜花:……そしたら、次の段階 桜花:頼んでもいいかな ケア:承知、しました 0: ケア:……準備はよろしいですか? 桜花:うん 桜花:(ケアは、自分のことをずっとアンドロイドと言っている。それは事実なんだろうけど、でも、紅茶を出してくれたり、時折見せる表情は、どこか人間のよう。最後に見せた切ないような顔も、人間らしくて) ケア:記憶追想プログラム。第2段階、開始 0: 桜花:……ここは? 0:- 桜花:(たくさんの瓦礫に、崩壊したビル。さっきの景色とはまるっきり違うところに来ていた。僕は、その中を進んでいく) 桜花:……あそこにいるのは? 誰だ? 0:- 桜花:(金色の髪に、一振りの剣、機械出てきた体。後姿は全く見たことのない人と思ったが、顔を見た瞬間、僕は驚きを隠せなかった) 桜花:……あれは、僕? 桜花:……ねぇ! 君! 0:- 桜花:(僕は呼びかけるが、青年は応えない) 桜花:(僕は、彼の後を追った) 0:- 桜花:この空間は、僕の記憶で出てきている……オリジナルの 桜花:……でも、なんであんな姿に? 桜花:っ!? あれは!? 桜花:なんだ、あの巨大な樹は……!?  桜花:……待てよ。あの幹の中 桜花:(巨大な樹が、僕の前に現れる。ただ、その中央に大きく咲いている花のようなものがある。さらに、その花の中心には) 桜花:……まさか。……ヒナミ!? 桜花:そんな……嘘だろ? 大樹になってしまったのか!? 0:桜花は、自分に似た青年に声をかけた 桜花:……おい! 聞こえてるのか! 桜花:君は、僕なんだろ!? 桜花:今こそ、助ける時だ! ヒナミを救う時だ 桜花:なんでそんな体になったのか分からない! 桜花:でも……君は、君の持ってるその剣は、きっとヒナミを助けるためにあるんだろ!? 桜花:なぁ! 0:- 桜花:(しかし、その青年は、考えられない表情をしていた) 0:- 桜花:……え? 桜花:なんで、笑ってるんだ? 桜花:おい……おい! 0:- 桜花:(もう一人の僕は、笑う。笑って、剣を握る) 桜花:(剣に、段々と電気が纏われ、どんどんと大きくなっていく) 桜花:(何が起こっているかはわからない。でもはっきりとした悪い予感が、僕の脳裏をかすめていた) 桜花:(まさか、あの剣で、ヒナミを斬るんじゃ……) 0:- 桜花:何やってるんだよ……! 辞めろ!  桜花:辞めろおおおおおおおお!!! 0:しばらくの間 桜花:ぁ……ぁぁ…… 桜花:嘘だ……ヒナミ、そんな、そんな……! 桜花:待って、消えないで、ヒナミ! 嫌だ! 嫌だ!! 桜花:ぁ、ぁぁ……ぁぁぁああああ! 桜花:…… 桜花:……ふざけるなよ 桜花:……何やってんだよ、お前 桜花:この、人殺しがああああああああああああ!!! 0: 桜花:殺してやる、殺してやる!! 桜花:あ、ああああああ……ぁぁ! ケア:っ……かはっ……! 桜花:っ!? 桜花:ケ……ケア? 桜花:(ケアの声で、現実に戻ってきた) 桜花:(でも僕は、知らない間に、剣を握って、ケアを刺していた) ケア:記憶追想プログラム……完了 ケア:オリジナルの……神器も……正常に稼働…… ケア:お疲れ……さまでした……桜花、様…… 桜花:……っ! ケア:あなたの……赴くままに…… 桜花:……ケア? 桜花:死んだ、のか? 桜花:……いや、アンドロイドに、死ぬなんてないか 桜花:……はは 桜花:……あいつも、機械だったな 桜花:人殺しの機械になったのか? お前は? 桜花:……あいつは、僕なんかじゃない 桜花:あのイカれた機械は……僕が必ず…… 桜花:壊してやるよ