台本概要

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タイトル 希望の魔女は森を歩く
作者名 あまくケイ  (@amak0331)
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男1、女2、不問1)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 「あいつは悪魔だ」
そう言われ、生まれ故郷の村から逃げだした
家族を失い、1人生き延びた魔女は、森を歩く

これは、苦しみつつも歩いた小さな魔女の物語

「冥闇のダーカー」後日譚
「カイエの魔道具と半端剣士」の続編的な話

4人(男1:女2:不問1)
男性キャラは女性が演じても可
30~40分くらい
ストーリー展開・雰囲気が崩れない程度のアドリブ・言い換えは可

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ミサラ 121 本名 ミサラ=ウィシュホープ。とある村で「悪魔」と呼ばれて迫害に会い、命からがら逃げ伸びてきた 誰も居ない古い宿を見つけては夜を過ごし、起きては森の中を歩いている 人のペースを狂わせる健気さがある 生まれつき、魔法の習得能力が高い
パスエン 不問 86 森の中にある、古い館に住む吸血鬼  1人で住んでいる 血を吸わずとも生きられる 日の光が苦手で、外に出る時はフードを被る 物静かで穏やかな性格
ゼスト 90 村から依頼を受けて、吸血鬼を殺しに来たアサシン 魔道具(まどうぐ)と呼ばれるものを使う 若干捻くれているが、根っからの悪人ではない アサシンをする前は剣士をしていた カイエと共に行動している
カイエ 83 魔道具を作っている魔導士 ヘンテコな機械をつくっている ゼストのサポート的ポジション 調子のいい天真爛漫さがあるものの、いざという時には真面目な発言もする
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ミサラ:「あいつは悪魔だ」 ミサラ:「あいつを殺せ」 ミサラ:火の手があがる、村が消える ミサラ:お父さん、お母さん、兄さん ミサラ:皆、どこかへ消えていく 0: 0:小屋の中。鳥のさえずりが聴こえ、目を覚ますミサラ ミサラ:……朝、か ミサラ:……今日も ミサラ:……まだ、生きてた ミサラ:……っ ミサラ:お腹、空いたな…… 0: ミサラ:(狭く古びた、誰も使っていない宿屋。ゆっくりと身体を起こした私は、森で事前にとってきた木の実を、一つ、二つとほおばった) ミサラ:っ、固い…… ミサラ:でも、中は甘くて、美味しい ミサラ:兄さんが、教えてくれた、木の実 ミサラ:幼い時、村からちょっと出たところで見つけた木 ミサラ:…… ミサラ:駄目だな、私 ミサラ:これじゃきっと、夜、兄さんが出てきて、怒られちゃう 0:ミサラは胸にかざっている黒いペンダントを握った ミサラ:っ? 小屋の入り口に……何か? ミサラ:っ、マードック……!? 0:牙と爪が鋭利に伸びた、犬型のクリーチャーが、ミサラに襲い掛かる ミサラ:魔法発動、ウォーターウェイバ! 0:ミサラは水の魔法を放ち、マードックをしりぞける ミサラ:っ、はぁ……はぁ……! 小屋から出ないと! ミサラ:……まだ、こんなに!? ミサラ:っ、魔法発動 ファイアーボール! 0: ミサラ:(私は、迫ってくるマードックの群れを追い払うように魔法を放ち、逃げていく) ミサラ:(しばらく走って。もう追ってはこなくなったもの、度重なる疲労がどっと襲ってきた) 0: ミサラ:……はぁ、はぁ ミサラ:(重く、辛く、のしかかる) ミサラ:(過去と、痛みと、苦しみと) ミサラ:(それを全て背負って、森の中を、また、歩いて、進んでいく) 0:- ミサラ:……疲れたな ミサラ:休みたいな ミサラ:歩きたくないな ミサラ:楽に、なりたいな 0:- ミサラ:……っ? あれは ミサラ:古い、館…… ミサラ:……どうせ、このまま死ぬんだったら ミサラ:誰も見ないところで 0:ミサラは古い館へと入っていく ミサラ:いないよね、流石に パスエン:誰!? ミサラ:っ……!?  パスエン:……人間? ミサラ:えっと、あ、その…… パスエン:……君も、僕を襲いに来たの? ミサラ:え?  パスエン:どうなのさ? ミサラ:ち、違います……私は……その…… パスエン:じゃあ、なんなのさ ミサラ:もう……、疲れて ミサラ:分からなくなって……何も ミサラ:それで、ずっと……死にたくて パスエン:……えっ? 0:ミサラはそのまま気絶する パスエン:っ!? 君! 0: ミサラ:……暖かい? ミサラ:なんだろう、これ パスエン:目覚めた?  パスエン:……ごめんね、その毛布、もう古いけど。我慢して ミサラ:……ありがとう、ございます パスエン:……その流れで、こんなの勧めるのもどうかだけど パスエン:はい ミサラ:……美味しそう ミサラ:っ? このスープって パスエン:知ってるの? ミサラ:「ホルプスの実」を使ってます? パスエン:そうだよ。でも、美味しいかどうかは、別だけど ミサラ:いただきます! パスエン:えっ!? ミサラ:ゴク……ゴク……っ パスエン:あぁちょっと! ……すごい飲みっぷり ミサラ:…… パスエン:あ、やっぱり不味かった、よね ミサラ:……っ、ぁ……ぁぁ……ぅ…ぁぁ パスエン:だ、大丈夫!? ミサラ:ごめんなさい……ごめんなさい……なんで、私…… パスエン:…… パスエン:(それからしばらく、彼女は泣いて、泣いた) パスエン:(思えば、最初に館に来た時、吐き出しそうな顔をしていた、ような気がする) 0: パスエン:落ち着いた? ミサラ:…… パスエン:そういえば、名前、聞いてなかったね ミサラ:……ミサラ、です パスエン:僕は、パスエン パスエン:ずっとここに住んでる、吸血鬼 ミサラ:吸血鬼さん、なんですか? パスエン:うん。君は、人間だよね? ミサラ:私は……魔女です パスエン:魔女? ミサラ:ずっと、そう呼ばれていました パスエン:どこで? ミサラ:私が生まれ育った場所です パスエン:……ごめん、聞かない方が良かったかな ミサラ:優しいんですね ミサラ:吸血鬼さんなら、人間の血、欲しくならないですか? パスエン:えっ? ミサラ:パスエンさんになら、構いません パスエン:どういうことだい? ミサラ:……もう、辛くて ミサラ:みんな、みんな、居なくなって ミサラ:誰もいなくなって、森の中でずっと ミサラ:ずっと1人で ミサラ:でも、死んじゃいけない気がするから、死ねなくて ミサラ:それでも……っ パスエン:……辛かったんだね、ずっと、ずっと、1人で ミサラ:…… パスエン:僕も、1人だったよ ミサラ:……えっ? パスエン:なんでだろうね パスエン:悪くないものを、悪いと決めつけたり パスエン:自分達が被害者で脅かされると思ったら、すぐにそれを排除しようとする パスエン:何にもしてないのに、さ ミサラ:……それって? パスエン:僕、人間の血を吸わなくても生きていけるし、興味ないし、ただ、日光だけはめんどくさいけど パスエン:そう、だって争いなんて、一番めんどくさいじゃないか パスエン:めんどくさいし、何も生まない パスエン:例えば、こんな森の中に火なんて放ったら、ここに住んでいる者は全て、消えちゃうよ パスエン:でも、人間は……自分たちを守るためなら、何を犠牲にしてでも火を放てる 0:パスエンは腕を抑える ミサラ:その傷は? パスエン:拷問を受けたことがあってね パスエン:その時かな、初めて手にかけたのは パスエン:口で言ってもさ、何も通用しなくて、僕の言葉なんか、明後日のほうこうへ通り過ぎるような顔しててさ パスエン:そいつら、ずっと「僕たちは平和が好き」なんて真顔で言ってたんだよ? パスエン:そしたらもう……分からなくなって、そいつらを、吸血鬼の力を使って、殺して パスエン:それで、逃げて、逃げて パスエン:気づいたら、こんなの森の、館の中って感じ? ミサラ:…… パスエン:……長話だったね。ありがとう、ミサラ パスエン:初めてかな、僕が作ったのを美味しそうに味わってくれる人 パスエン:人間でも、こんな人いるんだなって、びっくりした ミサラ:……だって、美味しかったですから パスエン:えっ? ミサラ:パスエンさんの作る料理が、すごく美味しかったから……っ……っ…… 0:パスエンはゆっくりと、泣いているミサラの傍にくる パスエン:ほら、毛布被って、ゆっくり ミサラ:……っ……っ……ぁ……ぁ パスエン:……えっと、じゃあ パスエン:よし、よし パスエン:(ミサラの涙が、僕の服を少しずつ濡らしていく) パスエン:(なぜだろうか。服が濡れているだけなのに、泣きそうになっている僕も居た) 0: 0:一方、パスエンの館の近く、二人の人影があった ゼスト:……ここか? カイエ:ああ、ここだ ゼスト:断言できるのかよ? カイエ:もちろん! ギルド経由でもらった依頼主の情報を元に分析! 私のおりじなるの地図によれば……ううむ、ここ! もはやここしかない! ゼスト:はっきりいいやがるぜ。その地図も即席でつくったやつだろうに カイエ:いずれはどういう場所でも対応できるものとして考えておる! カイエ:技術の発展は日進月歩、常に進化するのだ ゼスト:つっても、場所を見つけたところで、目標が達成できなきゃ意味がないけどな カイエ:ぬぬ! そういう言い方はよくないぞゼスト! カイエ:開発は過程こそ重要だ! ゼスト:はいはい……で、そしたら カイエ:依頼主の情報によれば、街を脅かす危険な吸血鬼がいる……だったな カイエ:それこそ、ゼスト。お前の魔道具を証明する機会だ カイエ:それの積み重ねがいずれ、そう! あの魔道学院のじじいどもにぎゃふんと! ゼスト:退学撤回な。ご苦労さん カイエ:ぬぬ……他人事のようにいいおって ゼスト:……さて、行くぜ カイエ:さて? 私はサポート役だぞ? ゼスト:は? カイエ:お前が先陣きって行んだろう。私はとことこついていくだけだ ゼスト:なんでだよ! カイエ:それとも、1人じゃ心細いのかぁ~このこの~ カイエ:アサシンだというのに、こんなふるーい館の一つや二つ怖くないだろう ゼスト:あの、まるで俺が怖いもの苦手みたいな話になってるんだが? カイエ:だってさっきの「行くぜ」は、「あー、もしや吸血鬼と見せかけてトンデモないゴーレムがいたりして? そうなったら、くっ! 俺の、俺の魔道具使いとしてのキャリアがっ!……ていうか、ちょっとこの館怖くない?」みたいな態度だったからな ゼスト:どんな態度だよ……怖いのか、報酬目当てなのか、よくわからないぜ、それ カイエ:半分は本当の事だろう。あれから故郷を出ても、まーだ過去を引きずっているような素振りを、時折感じるが? ゼスト:そりゃな。全部が全部、振り切ったといえばそうでもねえ ゼスト:でも、あの街にはレンがいる。俺が不要だったのは現実だ ゼスト:それを、ダラダラと酒飲みみたいに愚痴るのは、辞めた ゼスト:そこから抜け出したのは、振り返ったら正解だと思ってる カイエ:ふふ、ちゃんと学んでいるじゃないか ゼスト:……妙に腹が立つけど、まいいや ゼスト:敵の居場所は……おそらく、この様子だと、他のクリーチャーはいないな。 ゼスト:従えている線も考えたが、静かすぎるからな カイエ:あまり警戒する必要がないかもしれない、ということか? ゼスト:いいや。そういう時こそ、油断ならない ゼスト:常に大物(おおもの)に油断せず、かといって怖気ず カイエ:時には豪快に? ゼスト:それ、魔道具のこと言ってんのか? カイエ:ああ! 私の魔道具は豪快な武器も多い! エクスニィィィドル! とか、あ、これはお前の真似な ゼスト:似てねえから。とっとと入るぞ 0:ゼストが先陣をきり、館の扉を開く ゼスト:よし……入口には敵はなし。進むぞ カイエ:……静かだな、館の中は カイエ:まだ外は昼だというのに、この中だけ夜みたいだ ゼスト:油断するなよ、とりあえず、お前は後ろを…… パスエン:吸血技(きゅうけつぎ)発動 「ヴァンパースティング」 ゼスト:っ!!  カイエ:左だ! ゼスト:わかってる! ゼスト:魔導技(まどうぎ)発動 「ボルテックナイフ」! パスエン:っ!  0:パスエンはゼストの攻撃をギリギリでよけ、離れる ゼスト:あと少しで、お陀仏だったな パスエン:さっきのは、ナイフ? にしても、まるで魔法のようだったね カイエ:ううむ! 気になるか! それもそう、この私が創った発明品なのだ! パスエン:……物好きだね、人間って パスエン:そうやって、自分達のエゴを満たすために、自分より弱い者で試す ゼスト:……? カイエ:何を勘違いしてるのかはわからぬが、私は弱い者で試すなど、そのような考えは持ち合わせてはおらん パスエン:口だけならいくらでも言えるよ パスエン:お前らみたいな奴がいるから…… ミサラ:魔法発動! 「ウィンドブレイディッター」! カイエ:っ!? ゼスト:カイエ! カイエ:大丈夫だ……! にしても……、もう一人? ミサラ:はぁ……はぁ カイエ:しかも……人間? パスエン:ミサラ……! 駄目だよ! 隠れて! ゼスト:なんだよ、俺達を散々煽っておいて、自分はエサをきっちり用意してるじゃないか? あとでたっぷり味わうつもりかよ……! パスエン:違う! 彼女は関係ない! ゼスト:あ……? ミサラ:パスエンさんに、手を出さないでください! カイエ:待ってくれ。君は……彼の味方、なのか? ミサラ:もし、パスエンさんに何かをするなら、私が許しません! カイエ:……? ミサラ:っ、魔法発動「ファイアーボール」! カイエ:! なんて大きさだ……! ミサラ:はぁぁぁぁぁっ! ゼスト:魔導技(まどうぎ)発動!「エクスニードル」! 0:ミサラのファイアーボールと、ゼストのエクスニードルがあたり、大きく爆発を起こし 館の壁が、一部壊れる。辺りが一度、煙だらけになった ミサラ:うっ……! カイエ:げほっげほっ……っ! 馬鹿者ぉ! あんな火の玉にエクスニードルなんてぶつけるなんざ、危ない真似しおって! こっちまで巻き込む気か! ゼスト:とっさに思いついたのが、これしかなかったんだよ! 悪かったな! ミサラ:っ……止められた……! パスエン:……こいつら、ただの人間じゃない パスエン:僕の技を簡単に止めてくる ゼスト:……待て! ミサラ:……なんですか? 0:ゼストはそう言って、魔道具をしまった ゼスト:……カイエ カイエ:なんだ? ゼスト:ギルドからもらった情報、もう一回教えてくれ カイエ:教えずとも私の、この……魔法で作ったメモに書いておる……えーと、そうだなぁ カイエ:「人間を襲う極めて危険な吸血鬼がいるため、討伐に向かってほしい」というのが文言だ ゼスト:お前から見て、「極めて危険」にみえるか? カイエ:? ミサラ:…… カイエ:……いいや ゼスト:へっ。同意見だ カイエ:いつから思ってた? ゼスト:そこのお嬢さんが出てきてからだ ゼスト:かばう反応がな、嘘とは思えない パスエン:……殺さないの? ゼスト:仕事なら、そうすることもできる ゼスト:でも、その選択肢は選べない。いや、選ばない ミサラ:……、本当に? ゼスト:ああ ゼスト:むしろ、気がかりなのは……外か ミサラ:えっ? どういう、ことですか? カイエ:むむ……ははーん カイエ:さては依頼主め、ここまで予想していたかぁ? ミサラ:外って……? っ!? ゼスト:出来なかった時の保険か……あの依頼主、ちょっときな臭いと思ってたが、当たりか。何人だこれ…… カイエ:12人だ ゼスト:わかるのか? カイエ:こうもあろうかと、外の様子が見える装置を、事前に館へ入る前につけていたのだよ~ カイエ:どうにもこのクエスト、妙なにおいがしていたものでな ゼスト:あんまり報酬額が高すぎだ ゼスト:ギルドの奴らは信用できても、外部の人間になると、分からないものだぜ ゼスト:……パスエンだっけか? パスエン:う、うん ゼスト:手を貸してくれ。俺も狙われてる パスエン:…… ゼスト:ああ、俺がもし、お前を後ろから狙ってきたら、俺を殺せ パスエン:……っ。分かった ゼスト:それと……えっと カイエ:甘いなゼスト、レディの名前は覚えておかねばの カイエ:……ミサラ、と呼んでおったかな? ミサラ:は、はい! カイエ:良ければ、君も手伝ってくれないか? カイエ:というか正直、センスの塊のような魔法でなぁ…… ミサラ:え……? ゼスト:話はあとでしろ カイエ:よし! そうしたら二人で手分けして、外の敵を追い払おうではないか! 2人一組で手分けすると、6人担当するが、まぁゼストに任せておけ! ゼスト:いや、全部俺かよ パスエン:手伝うよ ゼスト:……サンキュー。じゃ、とっとと片付けるか 0: ゼスト:魔道技発動 「ボルテックナイフ」! パスエン:吸血技発動「ブラッディシュート」! ゼスト:っ! 援護助かる! カイエ:おおっと。女子も負けてられないのう! ミサラ:魔法発動!「ウォーターウェイバ」! カイエ:ふむ! 水の魔法か……! にしても水の勢いが……凄まじい カイエ:なら、そこにびりびりと加えてみるか カイエ:魔導技発動「ボルトボム」! カイエ:ただでさえ雷ドッカンな、魔法を圧縮した爆弾だが、水があることでさらに広範囲に! ミサラ:す、すごい…… 0: 0:4人は外敵の人間たちをなぎ倒した ゼスト:お前らの依頼主に言っとけ。手をだす相手が悪かったってな カイエ:おー。すたこらさっさと逃げだしたなー。大した事がなかったの ゼスト:ほんとにあいつらアサシンか? あの動きは、ヘタクソすぎるぜ カイエ:なんだぁ? 先輩風をふかせおって~ ミサラ:あの……ありがとうございます ゼスト:気にすんな パスエン:君も、アサシン? ゼスト:まぁ、アサシンやってたけど、前は剣士やっててな。なんていえばいいんかな…… カイエ:「魔道具使い」だ ミサラ:魔道具、使い? カイエ:ふふふふ! 聞いて驚け! なーんと今、ゼストが使っておるのは、全て私が発明したものなのだー! カイエ:あと、これと、これもな ゼスト:ここで出すな……! ミサラ:わぁ、こんなに色んな物がつくれるんですか!? カイエ:むむ! 君……なかなか見どころがあるじゃないか……むふふ…… ゼスト:だから! あとにしろって パスエン:……助かった ゼスト:悪かったな、疑って パスエン:ううん カイエ:にしても……ここに、二人で住んでおるのか? ミサラ:実は……その 0: パスエン:(ミサラは、ゆっくりと話を始める。でも今は、館に来たばかりの時より、どこか落ち着いていて、でも、どこか崩れそうでいて) カイエ:……魔女、か ゼスト:……そんなことがあったのか ゼスト:胸糞悪い話だぜ ミサラ:っ? ゼスト:……俺がアサシンの頃、標的にしていたのは、身ぐるみをはぐような人間や、裏で汚いことをしている奴らだった。1人1人。 ゼスト:でもなんだ……村まるごとだって? それはつまり「全員」ってことだろ?  ゼスト:……ふざけてるぜ 0:ゼストは拳を握る ミサラ:ありがとう、ございます ミサラ:私の兄さんも怒ってました。ゼストさんのように カイエ:兄がいるのか? ミサラ:守ってくれたんです、でも、兄さん……ロシュ兄さんは亡くなりました ミサラ:最後の、最後まで、私をまもる為に戦ってくれたんです パスエン:…… ミサラ:兄さんは最後に、私にこう言い残しました ミサラ:「希望をもって歩いていけ」って パスエン:希望……か パスエン:この実と、一緒だね ミサラ:そう。パスエンさんが、飲ませてくれた、「ホルプスの実」のスープ。……その由来は、光の天王(てんおう)の祈りが「実」になった。言い伝えによればですけど。 ミサラ:兄さんは、もしもこうなった時の為に。ずっと前から教えてくれたのかもしれないですね。大事な事を カイエ:……いい、お兄さんだな ミサラ:……はい カイエ:……すまない。そんな事情があると思ってはいなく。襲い掛かるような真似をして ミサラ:いえ、慣れてますから カイエ:…… パスエン:そんな事に慣れちゃだめだよ、ミサラ ミサラ:っ パスエン:君は、優しい人間だ パスエン:例え誰かに忌み嫌われていたとしても、君の自由を奪う権利は、誰にもない カイエ:パスエンと同意見だ カイエ:ミサラ、君の魔法はその…… ミサラ:は、はい? カイエ:自分で習得したのか? ミサラ:そう、ですね……幼い頃に教会においてあった魔導書を呼んだのが、最初だったかな……草原に魔法で出来た花を咲かせる、小さな魔法なんですけど、それを読んで、試してみたら、使えるようになってて。それから魔法を覚えるのが、楽しくなったんです カイエ:そんな頃から、か カイエ:……羨ましいな ミサラ:えっ? カイエ:私は、どうにも魔法の才能がなくてね カイエ:でも、君はすさまじい。魔道学院なら首席レベルだろう ミサラ:しゅ、しゅせき? ゼスト:優秀ってことだ ミサラ:そ、そうなんですね? カイエ:でも、君にはそんな余裕などなかった カイエ:私の、「優秀への嫉妬心」など、君の辛さとは比べ物にならない カイエ:なぜなら君はずっと……生きている事そのものが、辛かったわけなのだからな ミサラ:…… ゼスト:ミサラ、一つ聞いていいか? ミサラ:はい ゼスト:お前は、死のうと思ったら、別に死ねたはずだ。限界まで来ていたんだろ? ゼスト:なぜ、ここまで来れた? カイエ:ゼスト……! お前な……! ミサラ:いえいえ! いいんです! ミサラ:私が死ねなかった……いや、死のうとしなかったのは ミサラ:……兄さんが、夢に出てくるんです ゼスト:お兄さんが? ミサラ:正直、あんまり覚えていなくて ミサラ:夢から起きた後は、記憶があいまいなんですけど ミサラ:でも、兄さんが出てくるたびに、あの言葉を思いだして、歩かなきゃって思ってて パスエン:……それでも、限界だったんだよね ミサラ:……っ パスエン:館に着いた君は、いつでも死んでもいい、そう思ってる顔をしていた パスエン:どこか、何とか前を向こうとしていて パスエン:でも何かが、自分の何かが追いついていなくて パスエン:正直、ほうっておけなかった ミサラ:…… ゼスト:……強いな ミサラ:えっ? ゼスト:ここまで歩いて来たのは、ミサラ自身の力だろ? ゼスト:今の現実は、ミサラが希望を持って、歩いてきた結果だ ミサラ:……そんなことは ゼスト:……っていうのも、俺もな。クソみたい奴だったよ ゼスト:自力で歩こうとせず、愚痴を吐いているだけの、な ミサラ:そう、なんですか? ゼスト:でも、俺の悩み事とは、ベクトルが違う ゼスト:それなのに、ここまで歩いてこられたのは、本当に奇跡みたいなもんだ ゼスト:すごいよ、お前は ゼスト:あとパスエンもな パスエン:えっ? ゼスト:その傷、人間にやられたんだろ? パスエン:うん…… ゼスト:自分で抵抗して、自力で今まで生きてきた ゼスト:しかも、俺と戦えるレベルとまで来た ゼスト:ミサラと同じくらい、強いし、人を、善悪をしっかり見分けられる目がある パスエン:そんな……大した事じゃないよ、ミサラに比べたら パスエン:僕はだって、種族が違うしさ、嫌われてもおかしくないし ミサラ:種族なんて関係ないですよ! パスエン:っ……ミサラ? ミサラ:パスエンさんは、スープをくれたじゃないですか ミサラ:私を殺さずに、館に入れてくれて、暖かい毛布までくれて ミサラ:そんな人を「種族が違うから」って嫌うのは、あんまりです パスエン:……ありが、とう カイエ:うむ、ミサラの言う通り カイエ:能力の差、種族の差、そんなものは関係ない カイエ:それを、いち人間の憶測や勘違いで、勝手に奪われてはならない カイエ:そして、「どうせ自分は違うから」と、自分で自分の可能性を曲げる事もよろしくない カイエ:それはとても、勿体ない事だ カイエ:二人とも、ものすごく魅力的なのだからな カイエ:死ぬなんて、勿体ないぞ ミサラ:……カイエさん。ありがとうございます ゼスト:……で、話がまとまったところで、提案だけどよ ゼスト:この森を抜けた先、俺達が来た道なんだが、一つ街がある ゼスト:そこを活動拠点にしていてな……つっても、俺が出入りすることが多いのは、地下だけど。信頼できる筋の人間が多い ミサラ:それって……? ゼスト:二人とも、良かったら来ないか? パスエン:えっ? ゼスト:そこにはワケありの人間や、人外もいる ゼスト:俺も、アサシンやってた意味じゃ、ワケありだ カイエ:私もな。ふふーん ゼスト:お前の場合は、退学してほっぽり歩いているニートって意味だな カイエ:うるさいッ! ミサラ:でも……どう思われるか ミサラ:……そうしたら、ゼストさんや、カイエさんに カイエ:迷惑などかからんよ カイエ:仮に万が一、問題が起こったなら、解決をすればよい カイエ:そのために魔導具は存在するのであるからな……! ゼスト:なんでそっちに繋げたんだよ…… カイエ:いずれは、あらゆる問題解決にも役立てるつもりだからなぁ カイエ:今は! 魔道具の証明が優先だ、今はな! カイエ:……あ、問題解決といえば。私達のギルドの、受付嬢が1人欠員しててな、誰か探しておるといっておったのを思い出した ミサラ:受付嬢、ですか? カイエ:……というわけで、ミサラ! 君を連れていきたいのだが、よいか!? ミサラ:わ、私!? カイエ:ああ! 君は可愛いから大丈夫だ! ゼスト:そうだ……人が足りない話なら、もう一つ パスエン:え? ゼスト:ギルドの雑貨屋、人が欲しくて困ってるんだ パスエン:僕でいいの? ゼスト:ああ。報酬が、もらえるからな パスエン:……っ、ふふ。分かった カイエ:マスコット属性がどことなくあるよのぉ、パスエンは。ふふふ、期待大だ ゼスト:変な実験に付き合わせんなよ、全く カイエ:よし! そうと決まれば、さっそく案内しようじゃないかー! 0: ミサラ:(その後、街に連れてこられて、ゼストさん達が所属するギルドに入ることになった) ミサラ:(最初は、見た目が怖い人たちばっかりだったけど、話してみると、全然、第一印象と違っていて……私の勘違いだったみたい) ミサラ:(その後、小さな家と、仕事を紹介してもらって、そこに住むことになった) 0: ミサラ:(それから数週間後) ミサラ:いらっしゃいませ……ええと、初級クエストですか……? ミサラ:そうですね、初級、初級……あ、これか ミサラ:近辺のマードック退治はどうですか? ミサラ:わかりました。では……あ、少々待っていただいていいですか! ミサラ:……すみません、この後どうするんでしたっけ? ……あ、ごめんなさい……お願いします ミサラ:(ゼストさん達の紹介で、私はギルドの受付嬢をすることになった) ミサラ:(最初は全然わからなかったし、今でやっと、少しだけ覚えてきた) ミサラ:はぁ~、疲れた……また先輩に頼りっきりだったな…… ゼスト:お。やってるな ミサラ:あ、ゼストさん。カイエさんも カイエ:むふふ~! サマになっているな、受付嬢 ミサラ:いえいえ。でも、なかなか、仕事を覚えられなくて ゼスト:出来ているように見えるけどな カイエ:ゼストよりは真面目だぞ、うん ゼスト:それは余計だ ミサラ:あ! パスエンさんは、お元気ですか? ゼスト:ああ、まだ他の人間に不信感がぬぐえないだろうけど……その不気味さが丁度いいんだろうな。雑貨屋は盛り上がってるよ ミサラ:そうなんですね……良かった…… ゼスト:夜は、寝られるか? ミサラ:……すみません、時折、怖くなって、起きてしまいます カイエ:無理もない。来たとは言えど、そう簡単に変わるものではないさ カイエ:パスエンもそうだが、ゆっくり行こうじゃないか ミサラ:そうですね…… 0:ミサラは少し俯いた後、笑顔を見せる ミサラ:最初、ここに来た時は、警戒してました ミサラ:でも、皆さん、まるで、普通の人間のように扱ってくれて ミサラ:それが、嬉しくて ミサラ:だから、前より、怖くないです。大丈夫 カイエ:……そうか カイエ:いい顔だな、ミサラ ミサラ:今は、仕事中だから、不安な顔はできません ゼスト:はは、仕事熱心だな カイエ:そしたら! ほれ! もっと笑顔の練習をしようではないか! カイエ:受付嬢は笑顔でいることも仕事のうちだろ~! ゼスト:強要すんな、強要を カイエ:でも普通に可愛いくないか、ミサラ。もはやお持ち帰りしたいレベルだ ミサラ:か、かわいい?!  ゼスト:あー、この馬鹿のいうことは気にするな カイエ:馬鹿とはなんだー! 馬鹿とは! パスエン:……どうも。こんにちは ミサラ:……あ! 0:フードを被って、受付所に入ってくる人影が居た パスエン:元気そうだね、ミサラ カイエ:人の事がいえんぞ、パスエン。お前だって、フードを被ってるにも関わらず、底からのぞく表情、悪くない! パスエン:あはは。人が、来るからさ パスエン:それに、店長にはもっと笑顔になれって言われるから カイエ:ならそれを披露してみるのだ! ゼスト:お前な…… パスエン:え?  ミサラ:…… カイエ:ミサラの前だぞ! 笑顔笑顔! パスエン:……あ。はは 0:パスエンは、ミサラの前でにっこりする ミサラ:か、可愛い! パスエン:ええ!? ミサラ:なでなでしてもいいですか!? パスエン:ちょ、ちょっと……ぉ カイエ:むふふ~。スキンシップは互いの信頼関係を深める、とな! ゼスト:ほとんどお前が誘導してたけどな カイエ:いいではないか~! 我々のギルドの面々を見てみろ、こんな可愛い子らは珍しいだろうに ゼスト:ギルドの面々にあやまれお前は ミサラ:……ゼストさん、カイエさん、改めてありがとうございました ミサラ:パスエンさんも、本当に、ありがとうございます パスエン:いや、何もしてないよ。僕もみんなに礼を言わないと パスエン:ありがとう、ゼスト、カイエ、……ミサラ ゼスト:礼はいらねえよ カイエ:うむ! そうとなれば……時にパスエン、君の吸血鬼としての力……是非とも拝見したいのだが、私の研究に役立ちそうな発見があるかもしれなくてな ミサラ:研究ですか? ゼスト:吸血鬼の力を使っても、魔道具って作れるのか? カイエ:わからん! ゼスト:なんじゃそりゃ! カイエ:しかし! 研究は常に未知なるものを探索するもの、可能性を追いかけることは、立派なことなのだ ゼスト:空振りで終わりそうな予感がするぜ…… カイエ:あと、ミサラ! 君の魔力にも興味がある! ミサラ:私も、ですか? カイエ:前にも言ったが、君の魔法はセンスの塊だ。より良い魔道具を作り出せるかもしれん ミサラ:わかりました。でも……まだこの仕事を覚えられなくて、今日もてんてこまいなんですよ…… カイエ:ああ構わぬ!あとでよいあとで! パスエン:そしたら、僕もそろそろ ゼスト:お。ならせっかくだ。パスエンの雑貨屋に寄っていくかな。店長にも挨拶しときたいし パスエン:ぜひ、いらっしゃい 0:ゼストとカイエは、一度受付所からです パスエン:……すごい、変わったね、ミサラ ミサラ:え? パスエン:最初に館に来た時より、明るくなってる ミサラ:パスエンさんも ミサラ:……またあのスープ、飲みたいですね パスエン:あ、それ実は、雑貨屋の店長に気に入られて……スープも出すことになったんだよ ミサラ:えっ、そうなんですか!? パスエン:食事するところじゃないのにね、あはは ミサラ:飲みに行きます! パスエン:そんな、恥ずかしいよ パスエン:……じゃ、ミサラ。そろそろ行くね パスエン:はぁ。今日は日差しがすごいな…… ミサラ:大丈夫です? パスエン:うん。平気。死ぬわけじゃないし、ただ苦手なだけだから パスエン:でも、青空はいいよね。見ていて ミサラ:えっ? パスエン:館に居た時も、その前も、そんなの考えてなかったから ミサラ:……そうですね ミサラ:空なんて見ずに、ずっと森ばっかり ミサラ:でも、進んで良かったって、思ってます ミサラ:パスエンさんに会えて、ゼストさんにも、カイエさんにも会って ミサラ:これで良かったと パスエン:……そうだね ミサラ:あ! 仕事、戻りますね! また! パスエン:うん、また……うぅ、まぶしいなぁ 0: ミサラ:こうして、森を抜けた私は ミサラ:新しい場所で、新しい生活を始めることになった ミサラ:「希望をもって歩いていけ」 ミサラ:兄さんの言葉が無かったら、パスエンさんが拾ってくれなかったら ミサラ:ゼストさんとカイエさんに出会ってなかったら、今の私はいなかった ミサラ:まだ不安な事も多いし、時折、怖くて目が覚めるけど ミサラ:あの時とは、どこか違う 0:ミサラは、黒いお守りを握りしめる ミサラ:ありがとう、兄さん ミサラ:……あっ! はーい! 今行きまーす!!

ミサラ:「あいつは悪魔だ」 ミサラ:「あいつを殺せ」 ミサラ:火の手があがる、村が消える ミサラ:お父さん、お母さん、兄さん ミサラ:皆、どこかへ消えていく 0: 0:小屋の中。鳥のさえずりが聴こえ、目を覚ますミサラ ミサラ:……朝、か ミサラ:……今日も ミサラ:……まだ、生きてた ミサラ:……っ ミサラ:お腹、空いたな…… 0: ミサラ:(狭く古びた、誰も使っていない宿屋。ゆっくりと身体を起こした私は、森で事前にとってきた木の実を、一つ、二つとほおばった) ミサラ:っ、固い…… ミサラ:でも、中は甘くて、美味しい ミサラ:兄さんが、教えてくれた、木の実 ミサラ:幼い時、村からちょっと出たところで見つけた木 ミサラ:…… ミサラ:駄目だな、私 ミサラ:これじゃきっと、夜、兄さんが出てきて、怒られちゃう 0:ミサラは胸にかざっている黒いペンダントを握った ミサラ:っ? 小屋の入り口に……何か? ミサラ:っ、マードック……!? 0:牙と爪が鋭利に伸びた、犬型のクリーチャーが、ミサラに襲い掛かる ミサラ:魔法発動、ウォーターウェイバ! 0:ミサラは水の魔法を放ち、マードックをしりぞける ミサラ:っ、はぁ……はぁ……! 小屋から出ないと! ミサラ:……まだ、こんなに!? ミサラ:っ、魔法発動 ファイアーボール! 0: ミサラ:(私は、迫ってくるマードックの群れを追い払うように魔法を放ち、逃げていく) ミサラ:(しばらく走って。もう追ってはこなくなったもの、度重なる疲労がどっと襲ってきた) 0: ミサラ:……はぁ、はぁ ミサラ:(重く、辛く、のしかかる) ミサラ:(過去と、痛みと、苦しみと) ミサラ:(それを全て背負って、森の中を、また、歩いて、進んでいく) 0:- ミサラ:……疲れたな ミサラ:休みたいな ミサラ:歩きたくないな ミサラ:楽に、なりたいな 0:- ミサラ:……っ? あれは ミサラ:古い、館…… ミサラ:……どうせ、このまま死ぬんだったら ミサラ:誰も見ないところで 0:ミサラは古い館へと入っていく ミサラ:いないよね、流石に パスエン:誰!? ミサラ:っ……!?  パスエン:……人間? ミサラ:えっと、あ、その…… パスエン:……君も、僕を襲いに来たの? ミサラ:え?  パスエン:どうなのさ? ミサラ:ち、違います……私は……その…… パスエン:じゃあ、なんなのさ ミサラ:もう……、疲れて ミサラ:分からなくなって……何も ミサラ:それで、ずっと……死にたくて パスエン:……えっ? 0:ミサラはそのまま気絶する パスエン:っ!? 君! 0: ミサラ:……暖かい? ミサラ:なんだろう、これ パスエン:目覚めた?  パスエン:……ごめんね、その毛布、もう古いけど。我慢して ミサラ:……ありがとう、ございます パスエン:……その流れで、こんなの勧めるのもどうかだけど パスエン:はい ミサラ:……美味しそう ミサラ:っ? このスープって パスエン:知ってるの? ミサラ:「ホルプスの実」を使ってます? パスエン:そうだよ。でも、美味しいかどうかは、別だけど ミサラ:いただきます! パスエン:えっ!? ミサラ:ゴク……ゴク……っ パスエン:あぁちょっと! ……すごい飲みっぷり ミサラ:…… パスエン:あ、やっぱり不味かった、よね ミサラ:……っ、ぁ……ぁぁ……ぅ…ぁぁ パスエン:だ、大丈夫!? ミサラ:ごめんなさい……ごめんなさい……なんで、私…… パスエン:…… パスエン:(それからしばらく、彼女は泣いて、泣いた) パスエン:(思えば、最初に館に来た時、吐き出しそうな顔をしていた、ような気がする) 0: パスエン:落ち着いた? ミサラ:…… パスエン:そういえば、名前、聞いてなかったね ミサラ:……ミサラ、です パスエン:僕は、パスエン パスエン:ずっとここに住んでる、吸血鬼 ミサラ:吸血鬼さん、なんですか? パスエン:うん。君は、人間だよね? ミサラ:私は……魔女です パスエン:魔女? ミサラ:ずっと、そう呼ばれていました パスエン:どこで? ミサラ:私が生まれ育った場所です パスエン:……ごめん、聞かない方が良かったかな ミサラ:優しいんですね ミサラ:吸血鬼さんなら、人間の血、欲しくならないですか? パスエン:えっ? ミサラ:パスエンさんになら、構いません パスエン:どういうことだい? ミサラ:……もう、辛くて ミサラ:みんな、みんな、居なくなって ミサラ:誰もいなくなって、森の中でずっと ミサラ:ずっと1人で ミサラ:でも、死んじゃいけない気がするから、死ねなくて ミサラ:それでも……っ パスエン:……辛かったんだね、ずっと、ずっと、1人で ミサラ:…… パスエン:僕も、1人だったよ ミサラ:……えっ? パスエン:なんでだろうね パスエン:悪くないものを、悪いと決めつけたり パスエン:自分達が被害者で脅かされると思ったら、すぐにそれを排除しようとする パスエン:何にもしてないのに、さ ミサラ:……それって? パスエン:僕、人間の血を吸わなくても生きていけるし、興味ないし、ただ、日光だけはめんどくさいけど パスエン:そう、だって争いなんて、一番めんどくさいじゃないか パスエン:めんどくさいし、何も生まない パスエン:例えば、こんな森の中に火なんて放ったら、ここに住んでいる者は全て、消えちゃうよ パスエン:でも、人間は……自分たちを守るためなら、何を犠牲にしてでも火を放てる 0:パスエンは腕を抑える ミサラ:その傷は? パスエン:拷問を受けたことがあってね パスエン:その時かな、初めて手にかけたのは パスエン:口で言ってもさ、何も通用しなくて、僕の言葉なんか、明後日のほうこうへ通り過ぎるような顔しててさ パスエン:そいつら、ずっと「僕たちは平和が好き」なんて真顔で言ってたんだよ? パスエン:そしたらもう……分からなくなって、そいつらを、吸血鬼の力を使って、殺して パスエン:それで、逃げて、逃げて パスエン:気づいたら、こんなの森の、館の中って感じ? ミサラ:…… パスエン:……長話だったね。ありがとう、ミサラ パスエン:初めてかな、僕が作ったのを美味しそうに味わってくれる人 パスエン:人間でも、こんな人いるんだなって、びっくりした ミサラ:……だって、美味しかったですから パスエン:えっ? ミサラ:パスエンさんの作る料理が、すごく美味しかったから……っ……っ…… 0:パスエンはゆっくりと、泣いているミサラの傍にくる パスエン:ほら、毛布被って、ゆっくり ミサラ:……っ……っ……ぁ……ぁ パスエン:……えっと、じゃあ パスエン:よし、よし パスエン:(ミサラの涙が、僕の服を少しずつ濡らしていく) パスエン:(なぜだろうか。服が濡れているだけなのに、泣きそうになっている僕も居た) 0: 0:一方、パスエンの館の近く、二人の人影があった ゼスト:……ここか? カイエ:ああ、ここだ ゼスト:断言できるのかよ? カイエ:もちろん! ギルド経由でもらった依頼主の情報を元に分析! 私のおりじなるの地図によれば……ううむ、ここ! もはやここしかない! ゼスト:はっきりいいやがるぜ。その地図も即席でつくったやつだろうに カイエ:いずれはどういう場所でも対応できるものとして考えておる! カイエ:技術の発展は日進月歩、常に進化するのだ ゼスト:つっても、場所を見つけたところで、目標が達成できなきゃ意味がないけどな カイエ:ぬぬ! そういう言い方はよくないぞゼスト! カイエ:開発は過程こそ重要だ! ゼスト:はいはい……で、そしたら カイエ:依頼主の情報によれば、街を脅かす危険な吸血鬼がいる……だったな カイエ:それこそ、ゼスト。お前の魔道具を証明する機会だ カイエ:それの積み重ねがいずれ、そう! あの魔道学院のじじいどもにぎゃふんと! ゼスト:退学撤回な。ご苦労さん カイエ:ぬぬ……他人事のようにいいおって ゼスト:……さて、行くぜ カイエ:さて? 私はサポート役だぞ? ゼスト:は? カイエ:お前が先陣きって行んだろう。私はとことこついていくだけだ ゼスト:なんでだよ! カイエ:それとも、1人じゃ心細いのかぁ~このこの~ カイエ:アサシンだというのに、こんなふるーい館の一つや二つ怖くないだろう ゼスト:あの、まるで俺が怖いもの苦手みたいな話になってるんだが? カイエ:だってさっきの「行くぜ」は、「あー、もしや吸血鬼と見せかけてトンデモないゴーレムがいたりして? そうなったら、くっ! 俺の、俺の魔道具使いとしてのキャリアがっ!……ていうか、ちょっとこの館怖くない?」みたいな態度だったからな ゼスト:どんな態度だよ……怖いのか、報酬目当てなのか、よくわからないぜ、それ カイエ:半分は本当の事だろう。あれから故郷を出ても、まーだ過去を引きずっているような素振りを、時折感じるが? ゼスト:そりゃな。全部が全部、振り切ったといえばそうでもねえ ゼスト:でも、あの街にはレンがいる。俺が不要だったのは現実だ ゼスト:それを、ダラダラと酒飲みみたいに愚痴るのは、辞めた ゼスト:そこから抜け出したのは、振り返ったら正解だと思ってる カイエ:ふふ、ちゃんと学んでいるじゃないか ゼスト:……妙に腹が立つけど、まいいや ゼスト:敵の居場所は……おそらく、この様子だと、他のクリーチャーはいないな。 ゼスト:従えている線も考えたが、静かすぎるからな カイエ:あまり警戒する必要がないかもしれない、ということか? ゼスト:いいや。そういう時こそ、油断ならない ゼスト:常に大物(おおもの)に油断せず、かといって怖気ず カイエ:時には豪快に? ゼスト:それ、魔道具のこと言ってんのか? カイエ:ああ! 私の魔道具は豪快な武器も多い! エクスニィィィドル! とか、あ、これはお前の真似な ゼスト:似てねえから。とっとと入るぞ 0:ゼストが先陣をきり、館の扉を開く ゼスト:よし……入口には敵はなし。進むぞ カイエ:……静かだな、館の中は カイエ:まだ外は昼だというのに、この中だけ夜みたいだ ゼスト:油断するなよ、とりあえず、お前は後ろを…… パスエン:吸血技(きゅうけつぎ)発動 「ヴァンパースティング」 ゼスト:っ!!  カイエ:左だ! ゼスト:わかってる! ゼスト:魔導技(まどうぎ)発動 「ボルテックナイフ」! パスエン:っ!  0:パスエンはゼストの攻撃をギリギリでよけ、離れる ゼスト:あと少しで、お陀仏だったな パスエン:さっきのは、ナイフ? にしても、まるで魔法のようだったね カイエ:ううむ! 気になるか! それもそう、この私が創った発明品なのだ! パスエン:……物好きだね、人間って パスエン:そうやって、自分達のエゴを満たすために、自分より弱い者で試す ゼスト:……? カイエ:何を勘違いしてるのかはわからぬが、私は弱い者で試すなど、そのような考えは持ち合わせてはおらん パスエン:口だけならいくらでも言えるよ パスエン:お前らみたいな奴がいるから…… ミサラ:魔法発動! 「ウィンドブレイディッター」! カイエ:っ!? ゼスト:カイエ! カイエ:大丈夫だ……! にしても……、もう一人? ミサラ:はぁ……はぁ カイエ:しかも……人間? パスエン:ミサラ……! 駄目だよ! 隠れて! ゼスト:なんだよ、俺達を散々煽っておいて、自分はエサをきっちり用意してるじゃないか? あとでたっぷり味わうつもりかよ……! パスエン:違う! 彼女は関係ない! ゼスト:あ……? ミサラ:パスエンさんに、手を出さないでください! カイエ:待ってくれ。君は……彼の味方、なのか? ミサラ:もし、パスエンさんに何かをするなら、私が許しません! カイエ:……? ミサラ:っ、魔法発動「ファイアーボール」! カイエ:! なんて大きさだ……! ミサラ:はぁぁぁぁぁっ! ゼスト:魔導技(まどうぎ)発動!「エクスニードル」! 0:ミサラのファイアーボールと、ゼストのエクスニードルがあたり、大きく爆発を起こし 館の壁が、一部壊れる。辺りが一度、煙だらけになった ミサラ:うっ……! カイエ:げほっげほっ……っ! 馬鹿者ぉ! あんな火の玉にエクスニードルなんてぶつけるなんざ、危ない真似しおって! こっちまで巻き込む気か! ゼスト:とっさに思いついたのが、これしかなかったんだよ! 悪かったな! ミサラ:っ……止められた……! パスエン:……こいつら、ただの人間じゃない パスエン:僕の技を簡単に止めてくる ゼスト:……待て! ミサラ:……なんですか? 0:ゼストはそう言って、魔道具をしまった ゼスト:……カイエ カイエ:なんだ? ゼスト:ギルドからもらった情報、もう一回教えてくれ カイエ:教えずとも私の、この……魔法で作ったメモに書いておる……えーと、そうだなぁ カイエ:「人間を襲う極めて危険な吸血鬼がいるため、討伐に向かってほしい」というのが文言だ ゼスト:お前から見て、「極めて危険」にみえるか? カイエ:? ミサラ:…… カイエ:……いいや ゼスト:へっ。同意見だ カイエ:いつから思ってた? ゼスト:そこのお嬢さんが出てきてからだ ゼスト:かばう反応がな、嘘とは思えない パスエン:……殺さないの? ゼスト:仕事なら、そうすることもできる ゼスト:でも、その選択肢は選べない。いや、選ばない ミサラ:……、本当に? ゼスト:ああ ゼスト:むしろ、気がかりなのは……外か ミサラ:えっ? どういう、ことですか? カイエ:むむ……ははーん カイエ:さては依頼主め、ここまで予想していたかぁ? ミサラ:外って……? っ!? ゼスト:出来なかった時の保険か……あの依頼主、ちょっときな臭いと思ってたが、当たりか。何人だこれ…… カイエ:12人だ ゼスト:わかるのか? カイエ:こうもあろうかと、外の様子が見える装置を、事前に館へ入る前につけていたのだよ~ カイエ:どうにもこのクエスト、妙なにおいがしていたものでな ゼスト:あんまり報酬額が高すぎだ ゼスト:ギルドの奴らは信用できても、外部の人間になると、分からないものだぜ ゼスト:……パスエンだっけか? パスエン:う、うん ゼスト:手を貸してくれ。俺も狙われてる パスエン:…… ゼスト:ああ、俺がもし、お前を後ろから狙ってきたら、俺を殺せ パスエン:……っ。分かった ゼスト:それと……えっと カイエ:甘いなゼスト、レディの名前は覚えておかねばの カイエ:……ミサラ、と呼んでおったかな? ミサラ:は、はい! カイエ:良ければ、君も手伝ってくれないか? カイエ:というか正直、センスの塊のような魔法でなぁ…… ミサラ:え……? ゼスト:話はあとでしろ カイエ:よし! そうしたら二人で手分けして、外の敵を追い払おうではないか! 2人一組で手分けすると、6人担当するが、まぁゼストに任せておけ! ゼスト:いや、全部俺かよ パスエン:手伝うよ ゼスト:……サンキュー。じゃ、とっとと片付けるか 0: ゼスト:魔道技発動 「ボルテックナイフ」! パスエン:吸血技発動「ブラッディシュート」! ゼスト:っ! 援護助かる! カイエ:おおっと。女子も負けてられないのう! ミサラ:魔法発動!「ウォーターウェイバ」! カイエ:ふむ! 水の魔法か……! にしても水の勢いが……凄まじい カイエ:なら、そこにびりびりと加えてみるか カイエ:魔導技発動「ボルトボム」! カイエ:ただでさえ雷ドッカンな、魔法を圧縮した爆弾だが、水があることでさらに広範囲に! ミサラ:す、すごい…… 0: 0:4人は外敵の人間たちをなぎ倒した ゼスト:お前らの依頼主に言っとけ。手をだす相手が悪かったってな カイエ:おー。すたこらさっさと逃げだしたなー。大した事がなかったの ゼスト:ほんとにあいつらアサシンか? あの動きは、ヘタクソすぎるぜ カイエ:なんだぁ? 先輩風をふかせおって~ ミサラ:あの……ありがとうございます ゼスト:気にすんな パスエン:君も、アサシン? ゼスト:まぁ、アサシンやってたけど、前は剣士やっててな。なんていえばいいんかな…… カイエ:「魔道具使い」だ ミサラ:魔道具、使い? カイエ:ふふふふ! 聞いて驚け! なーんと今、ゼストが使っておるのは、全て私が発明したものなのだー! カイエ:あと、これと、これもな ゼスト:ここで出すな……! ミサラ:わぁ、こんなに色んな物がつくれるんですか!? カイエ:むむ! 君……なかなか見どころがあるじゃないか……むふふ…… ゼスト:だから! あとにしろって パスエン:……助かった ゼスト:悪かったな、疑って パスエン:ううん カイエ:にしても……ここに、二人で住んでおるのか? ミサラ:実は……その 0: パスエン:(ミサラは、ゆっくりと話を始める。でも今は、館に来たばかりの時より、どこか落ち着いていて、でも、どこか崩れそうでいて) カイエ:……魔女、か ゼスト:……そんなことがあったのか ゼスト:胸糞悪い話だぜ ミサラ:っ? ゼスト:……俺がアサシンの頃、標的にしていたのは、身ぐるみをはぐような人間や、裏で汚いことをしている奴らだった。1人1人。 ゼスト:でもなんだ……村まるごとだって? それはつまり「全員」ってことだろ?  ゼスト:……ふざけてるぜ 0:ゼストは拳を握る ミサラ:ありがとう、ございます ミサラ:私の兄さんも怒ってました。ゼストさんのように カイエ:兄がいるのか? ミサラ:守ってくれたんです、でも、兄さん……ロシュ兄さんは亡くなりました ミサラ:最後の、最後まで、私をまもる為に戦ってくれたんです パスエン:…… ミサラ:兄さんは最後に、私にこう言い残しました ミサラ:「希望をもって歩いていけ」って パスエン:希望……か パスエン:この実と、一緒だね ミサラ:そう。パスエンさんが、飲ませてくれた、「ホルプスの実」のスープ。……その由来は、光の天王(てんおう)の祈りが「実」になった。言い伝えによればですけど。 ミサラ:兄さんは、もしもこうなった時の為に。ずっと前から教えてくれたのかもしれないですね。大事な事を カイエ:……いい、お兄さんだな ミサラ:……はい カイエ:……すまない。そんな事情があると思ってはいなく。襲い掛かるような真似をして ミサラ:いえ、慣れてますから カイエ:…… パスエン:そんな事に慣れちゃだめだよ、ミサラ ミサラ:っ パスエン:君は、優しい人間だ パスエン:例え誰かに忌み嫌われていたとしても、君の自由を奪う権利は、誰にもない カイエ:パスエンと同意見だ カイエ:ミサラ、君の魔法はその…… ミサラ:は、はい? カイエ:自分で習得したのか? ミサラ:そう、ですね……幼い頃に教会においてあった魔導書を呼んだのが、最初だったかな……草原に魔法で出来た花を咲かせる、小さな魔法なんですけど、それを読んで、試してみたら、使えるようになってて。それから魔法を覚えるのが、楽しくなったんです カイエ:そんな頃から、か カイエ:……羨ましいな ミサラ:えっ? カイエ:私は、どうにも魔法の才能がなくてね カイエ:でも、君はすさまじい。魔道学院なら首席レベルだろう ミサラ:しゅ、しゅせき? ゼスト:優秀ってことだ ミサラ:そ、そうなんですね? カイエ:でも、君にはそんな余裕などなかった カイエ:私の、「優秀への嫉妬心」など、君の辛さとは比べ物にならない カイエ:なぜなら君はずっと……生きている事そのものが、辛かったわけなのだからな ミサラ:…… ゼスト:ミサラ、一つ聞いていいか? ミサラ:はい ゼスト:お前は、死のうと思ったら、別に死ねたはずだ。限界まで来ていたんだろ? ゼスト:なぜ、ここまで来れた? カイエ:ゼスト……! お前な……! ミサラ:いえいえ! いいんです! ミサラ:私が死ねなかった……いや、死のうとしなかったのは ミサラ:……兄さんが、夢に出てくるんです ゼスト:お兄さんが? ミサラ:正直、あんまり覚えていなくて ミサラ:夢から起きた後は、記憶があいまいなんですけど ミサラ:でも、兄さんが出てくるたびに、あの言葉を思いだして、歩かなきゃって思ってて パスエン:……それでも、限界だったんだよね ミサラ:……っ パスエン:館に着いた君は、いつでも死んでもいい、そう思ってる顔をしていた パスエン:どこか、何とか前を向こうとしていて パスエン:でも何かが、自分の何かが追いついていなくて パスエン:正直、ほうっておけなかった ミサラ:…… ゼスト:……強いな ミサラ:えっ? ゼスト:ここまで歩いて来たのは、ミサラ自身の力だろ? ゼスト:今の現実は、ミサラが希望を持って、歩いてきた結果だ ミサラ:……そんなことは ゼスト:……っていうのも、俺もな。クソみたい奴だったよ ゼスト:自力で歩こうとせず、愚痴を吐いているだけの、な ミサラ:そう、なんですか? ゼスト:でも、俺の悩み事とは、ベクトルが違う ゼスト:それなのに、ここまで歩いてこられたのは、本当に奇跡みたいなもんだ ゼスト:すごいよ、お前は ゼスト:あとパスエンもな パスエン:えっ? ゼスト:その傷、人間にやられたんだろ? パスエン:うん…… ゼスト:自分で抵抗して、自力で今まで生きてきた ゼスト:しかも、俺と戦えるレベルとまで来た ゼスト:ミサラと同じくらい、強いし、人を、善悪をしっかり見分けられる目がある パスエン:そんな……大した事じゃないよ、ミサラに比べたら パスエン:僕はだって、種族が違うしさ、嫌われてもおかしくないし ミサラ:種族なんて関係ないですよ! パスエン:っ……ミサラ? ミサラ:パスエンさんは、スープをくれたじゃないですか ミサラ:私を殺さずに、館に入れてくれて、暖かい毛布までくれて ミサラ:そんな人を「種族が違うから」って嫌うのは、あんまりです パスエン:……ありが、とう カイエ:うむ、ミサラの言う通り カイエ:能力の差、種族の差、そんなものは関係ない カイエ:それを、いち人間の憶測や勘違いで、勝手に奪われてはならない カイエ:そして、「どうせ自分は違うから」と、自分で自分の可能性を曲げる事もよろしくない カイエ:それはとても、勿体ない事だ カイエ:二人とも、ものすごく魅力的なのだからな カイエ:死ぬなんて、勿体ないぞ ミサラ:……カイエさん。ありがとうございます ゼスト:……で、話がまとまったところで、提案だけどよ ゼスト:この森を抜けた先、俺達が来た道なんだが、一つ街がある ゼスト:そこを活動拠点にしていてな……つっても、俺が出入りすることが多いのは、地下だけど。信頼できる筋の人間が多い ミサラ:それって……? ゼスト:二人とも、良かったら来ないか? パスエン:えっ? ゼスト:そこにはワケありの人間や、人外もいる ゼスト:俺も、アサシンやってた意味じゃ、ワケありだ カイエ:私もな。ふふーん ゼスト:お前の場合は、退学してほっぽり歩いているニートって意味だな カイエ:うるさいッ! ミサラ:でも……どう思われるか ミサラ:……そうしたら、ゼストさんや、カイエさんに カイエ:迷惑などかからんよ カイエ:仮に万が一、問題が起こったなら、解決をすればよい カイエ:そのために魔導具は存在するのであるからな……! ゼスト:なんでそっちに繋げたんだよ…… カイエ:いずれは、あらゆる問題解決にも役立てるつもりだからなぁ カイエ:今は! 魔道具の証明が優先だ、今はな! カイエ:……あ、問題解決といえば。私達のギルドの、受付嬢が1人欠員しててな、誰か探しておるといっておったのを思い出した ミサラ:受付嬢、ですか? カイエ:……というわけで、ミサラ! 君を連れていきたいのだが、よいか!? ミサラ:わ、私!? カイエ:ああ! 君は可愛いから大丈夫だ! ゼスト:そうだ……人が足りない話なら、もう一つ パスエン:え? ゼスト:ギルドの雑貨屋、人が欲しくて困ってるんだ パスエン:僕でいいの? ゼスト:ああ。報酬が、もらえるからな パスエン:……っ、ふふ。分かった カイエ:マスコット属性がどことなくあるよのぉ、パスエンは。ふふふ、期待大だ ゼスト:変な実験に付き合わせんなよ、全く カイエ:よし! そうと決まれば、さっそく案内しようじゃないかー! 0: ミサラ:(その後、街に連れてこられて、ゼストさん達が所属するギルドに入ることになった) ミサラ:(最初は、見た目が怖い人たちばっかりだったけど、話してみると、全然、第一印象と違っていて……私の勘違いだったみたい) ミサラ:(その後、小さな家と、仕事を紹介してもらって、そこに住むことになった) 0: ミサラ:(それから数週間後) ミサラ:いらっしゃいませ……ええと、初級クエストですか……? ミサラ:そうですね、初級、初級……あ、これか ミサラ:近辺のマードック退治はどうですか? ミサラ:わかりました。では……あ、少々待っていただいていいですか! ミサラ:……すみません、この後どうするんでしたっけ? ……あ、ごめんなさい……お願いします ミサラ:(ゼストさん達の紹介で、私はギルドの受付嬢をすることになった) ミサラ:(最初は全然わからなかったし、今でやっと、少しだけ覚えてきた) ミサラ:はぁ~、疲れた……また先輩に頼りっきりだったな…… ゼスト:お。やってるな ミサラ:あ、ゼストさん。カイエさんも カイエ:むふふ~! サマになっているな、受付嬢 ミサラ:いえいえ。でも、なかなか、仕事を覚えられなくて ゼスト:出来ているように見えるけどな カイエ:ゼストよりは真面目だぞ、うん ゼスト:それは余計だ ミサラ:あ! パスエンさんは、お元気ですか? ゼスト:ああ、まだ他の人間に不信感がぬぐえないだろうけど……その不気味さが丁度いいんだろうな。雑貨屋は盛り上がってるよ ミサラ:そうなんですね……良かった…… ゼスト:夜は、寝られるか? ミサラ:……すみません、時折、怖くなって、起きてしまいます カイエ:無理もない。来たとは言えど、そう簡単に変わるものではないさ カイエ:パスエンもそうだが、ゆっくり行こうじゃないか ミサラ:そうですね…… 0:ミサラは少し俯いた後、笑顔を見せる ミサラ:最初、ここに来た時は、警戒してました ミサラ:でも、皆さん、まるで、普通の人間のように扱ってくれて ミサラ:それが、嬉しくて ミサラ:だから、前より、怖くないです。大丈夫 カイエ:……そうか カイエ:いい顔だな、ミサラ ミサラ:今は、仕事中だから、不安な顔はできません ゼスト:はは、仕事熱心だな カイエ:そしたら! ほれ! もっと笑顔の練習をしようではないか! カイエ:受付嬢は笑顔でいることも仕事のうちだろ~! ゼスト:強要すんな、強要を カイエ:でも普通に可愛いくないか、ミサラ。もはやお持ち帰りしたいレベルだ ミサラ:か、かわいい?!  ゼスト:あー、この馬鹿のいうことは気にするな カイエ:馬鹿とはなんだー! 馬鹿とは! パスエン:……どうも。こんにちは ミサラ:……あ! 0:フードを被って、受付所に入ってくる人影が居た パスエン:元気そうだね、ミサラ カイエ:人の事がいえんぞ、パスエン。お前だって、フードを被ってるにも関わらず、底からのぞく表情、悪くない! パスエン:あはは。人が、来るからさ パスエン:それに、店長にはもっと笑顔になれって言われるから カイエ:ならそれを披露してみるのだ! ゼスト:お前な…… パスエン:え?  ミサラ:…… カイエ:ミサラの前だぞ! 笑顔笑顔! パスエン:……あ。はは 0:パスエンは、ミサラの前でにっこりする ミサラ:か、可愛い! パスエン:ええ!? ミサラ:なでなでしてもいいですか!? パスエン:ちょ、ちょっと……ぉ カイエ:むふふ~。スキンシップは互いの信頼関係を深める、とな! ゼスト:ほとんどお前が誘導してたけどな カイエ:いいではないか~! 我々のギルドの面々を見てみろ、こんな可愛い子らは珍しいだろうに ゼスト:ギルドの面々にあやまれお前は ミサラ:……ゼストさん、カイエさん、改めてありがとうございました ミサラ:パスエンさんも、本当に、ありがとうございます パスエン:いや、何もしてないよ。僕もみんなに礼を言わないと パスエン:ありがとう、ゼスト、カイエ、……ミサラ ゼスト:礼はいらねえよ カイエ:うむ! そうとなれば……時にパスエン、君の吸血鬼としての力……是非とも拝見したいのだが、私の研究に役立ちそうな発見があるかもしれなくてな ミサラ:研究ですか? ゼスト:吸血鬼の力を使っても、魔道具って作れるのか? カイエ:わからん! ゼスト:なんじゃそりゃ! カイエ:しかし! 研究は常に未知なるものを探索するもの、可能性を追いかけることは、立派なことなのだ ゼスト:空振りで終わりそうな予感がするぜ…… カイエ:あと、ミサラ! 君の魔力にも興味がある! ミサラ:私も、ですか? カイエ:前にも言ったが、君の魔法はセンスの塊だ。より良い魔道具を作り出せるかもしれん ミサラ:わかりました。でも……まだこの仕事を覚えられなくて、今日もてんてこまいなんですよ…… カイエ:ああ構わぬ!あとでよいあとで! パスエン:そしたら、僕もそろそろ ゼスト:お。ならせっかくだ。パスエンの雑貨屋に寄っていくかな。店長にも挨拶しときたいし パスエン:ぜひ、いらっしゃい 0:ゼストとカイエは、一度受付所からです パスエン:……すごい、変わったね、ミサラ ミサラ:え? パスエン:最初に館に来た時より、明るくなってる ミサラ:パスエンさんも ミサラ:……またあのスープ、飲みたいですね パスエン:あ、それ実は、雑貨屋の店長に気に入られて……スープも出すことになったんだよ ミサラ:えっ、そうなんですか!? パスエン:食事するところじゃないのにね、あはは ミサラ:飲みに行きます! パスエン:そんな、恥ずかしいよ パスエン:……じゃ、ミサラ。そろそろ行くね パスエン:はぁ。今日は日差しがすごいな…… ミサラ:大丈夫です? パスエン:うん。平気。死ぬわけじゃないし、ただ苦手なだけだから パスエン:でも、青空はいいよね。見ていて ミサラ:えっ? パスエン:館に居た時も、その前も、そんなの考えてなかったから ミサラ:……そうですね ミサラ:空なんて見ずに、ずっと森ばっかり ミサラ:でも、進んで良かったって、思ってます ミサラ:パスエンさんに会えて、ゼストさんにも、カイエさんにも会って ミサラ:これで良かったと パスエン:……そうだね ミサラ:あ! 仕事、戻りますね! また! パスエン:うん、また……うぅ、まぶしいなぁ 0: ミサラ:こうして、森を抜けた私は ミサラ:新しい場所で、新しい生活を始めることになった ミサラ:「希望をもって歩いていけ」 ミサラ:兄さんの言葉が無かったら、パスエンさんが拾ってくれなかったら ミサラ:ゼストさんとカイエさんに出会ってなかったら、今の私はいなかった ミサラ:まだ不安な事も多いし、時折、怖くて目が覚めるけど ミサラ:あの時とは、どこか違う 0:ミサラは、黒いお守りを握りしめる ミサラ:ありがとう、兄さん ミサラ:……あっ! はーい! 今行きまーす!!