台本概要
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タイトル | 勇者おじいちゃん |
---|---|
作者名 | ハスキ (@e8E3z1ze9Yecxs2) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
魔王がいるとある世界で、のどかに農民として働くおじいちゃん(パウロ爺)は今日も元気に畑仕事をしていたが、突然現れた若者達から勇者である事を告げられる。勇者の資質があったらしいおじいちゃんは成り行き的に魔王軍の四天王と戦うハメになってしまう⋯。 男女不問。アドリブ大歓迎! 147 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
パウロ爺 | 男 | 59 | ただの農民として生きてきたお爺さんだが勇者の資質があったらしい。婆さんと孫が好き。趣味はお茶を縁側でのんびり飲む事。 |
カイン | 男 | 28 | 戦士。北の街の漁師の息子。王国より腕っぷしを買われ勇者パーティーに誘われる。打たれ強さに定評があり盾役を担う。 |
サーリ | 女 | 22 | 魔法使い。王国で占い屋をしていた。占いは割と適当にしていたが実は魔力が高く魔法使いに向いていたので勇者パーティーに誘われる。モットーはノリと勢い。 |
シルビア | 女 | 30 | 僧侶。教会で働いていた神に使える僧侶の見習い。ある日勇者を導くよう神の啓示を受け勇者を探す旅に出た。思い込みが激しい性格。 |
カマセイーヌ | 男 | 22 | 魔王軍の四天王の一人。見た目はめちゃくちゃ強そうに見えるが四天王最弱。自信過剰でよく魔王様にたしなめられていた。一言「誰がかませ犬だ!」 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
シルビア:やっぱり⋯。皆さん、どうやらこの村みたいです。
サーリ:ほんと!?良かった~、もう私歩き疲れちゃった~。
カイン:シルビア、今度こそ「勇者」がいる村で間違いないんだよな?
シルビア:ええ。この王様から頂いた勇者を探し出す「光のオーヴ」に間違いは無いわ。
サーリ:私、そのセリフ10回以上聞いたんだけど。
カイン:だよな?しかもそのたびに「これは神の試練です」とか言って誤魔化してたよな。
シルビア:あ!ほら皆さん!光のオーヴが今までにないくらい輝きを放っていますよ!もうこれは間違いない!!
カイン:⋯ま、期待せずに行くか。
サーリ:だね。あ、何か美味しい食べ物あるかなー。
シルビア:サーリさん!我々は王様から直々に託された魔王討伐の旅の途中なんですよ?観光ではないんですからね!
パウロ爺:あのー
サーリ:え~、王様からお金もらってるんだし、ちょっとくらいイイじゃ~ん。
シルビア:このお金は旅の装備を整える為に頂いたお金です!無駄遣いは私が許しません!
パウロ爺:あの~~
カイン:まあまあ、サーリもここまで魔物を倒したり色々頑張って来たんだから、許してやったらどうだ?
シルビア:カインさんはそうやっていつもサーリさんを甘やかすんですから!
パウロ爺:ウェッホン!!
サーリ:ヒエッ!
シルビア:はっ!だ、誰ですか?
カイン:こいつ、今、気配がしなかったぞ⋯って、爺さん⋯?
パウロ爺:君らわしの畑で何しとるんじゃ?
カイン:畑⋯?
サーリ:もしかして⋯この廃れた荒地みたいな場所の事?
パウロ爺:⋯いきなりな言い草じゃが、その廃れた荒地がわしの畑なんじゃ。
シルビア:そ、それは大変失礼しました!お二人も一旦ここから出ますよ!
:間
カイン:さっきは悪かったな爺さん。
パウロ爺:いや、まだ種を植える前の畑だったし気にせんでくれ。
サーリ:そうなんだ、良かった~。
パウロ爺:廃れた荒地って言ったの忘れとらんからな。
シルビア:私達は王国からの使者と言うのに、そのように素行が悪くては駄目ですよサーリさん。
サーリ:は~い⋯。
パウロ爺:王国からの使者?こんな田舎の村に使者様が何の用なんじゃ?
シルビア:はい。我々は王様から直々に、勇者様を探し出すという使命を託されているんです。
パウロ爺:ほ~、勇者とはあの伝説の存在と言われる勇者様の事じゃろ?ほんとに居ったんじゃな。
カイン:この村にその勇者がいるかもしれないって話らしいんだ。
パウロ爺:そうなのか⋯しかし村の中に勇者になりそうな者がおったかのう⋯?
カイン:さっきの気配の無さ、爺さんもしかして、ただ者じゃないんじゃないか?
パウロ爺:わし?ははは、わしは生まれてこのかた畑仕事しか知らんただのジジイじゃよ。
サーリ:だよね、顔もしわくちゃだし、腰も曲がってて老い先短かそうな普通のおじいちゃんだもんね。
パウロ爺:この子なんでこんなに口悪いの?
シルビア:サーリさん!またそんな風な言い方を⋯なっ!?
カイン:ん?どうしたんだシルビア、そんなスライムがファイアを食らったような顔をして。
シルビア:あ⋯あ⋯
パウロ爺:わしの顔をじっと見て、どうしたんじゃ?
シルビア:ゆ、勇者様~~~!!!
パウロ爺:え?
カイン:は?
サーリ:ええぇ~~~!?
シルビア:勇者様~~!ついに、ついにお会い出来ました~~!
パウロ爺:ちょ、お嬢さん!ち、近い、顔が近いぞ!それと、力強すぎじゃ!!
カイン:ちょっと待てシルビア!どういう事か説明しろ!?
サーリ:そ、そうだよ、おじいちゃんが勇者って、ありえないでしょ?
シルビア:いいえ、間違いありません!ほら、これを見て下さい!
パウロ爺:ぬわ!なんじゃその眩しい玉は!?目が、目が~!!
シルビア:これは光のオーヴと言って、王様から授かった勇者様を見つけ出す魔法のアイテムです。それが今までにないほどの強い輝きを放っているんです!これはもう勇者様で間違い無い!!
カイン:その勇者様かもしれない爺さんがそこで、のたうち回ってるんだが⋯?
サーリ:ほんとだ明るい~、これで夜道も平気だね~。
カイン:おじいちゃんの心配してあげて!?
:間
パウロ爺:はぁ、はぁ⋯。
シルビア:勇者様、お身体は大丈夫ですか?
パウロ爺:目が潰れるかと思った⋯。いやちょっと待つんじゃ、まだわしが勇者だとは認めておらんよ?
シルビア:ですが、ほら
パウロ爺:分かった!分かったからとりあえずその光る玉はしまっといてくれ。
シルビア:そうですか?こんなに光ってるのに⋯。
カイン:なんで残念そうなんだ⋯。
サーリ:で、このおじいちゃんが勇者様って事?
パウロ爺:いやいや、そんなわけないじゃろ。
シルビア:そんな事はありません!正真正銘、勇者様です!
パウロ爺:いや⋯だってわし、今まで魔物と戦った事もないんじゃよ?
カイン:待てよ⋯さっきの気配の無さからしても普通じゃなかったよな⋯?
パウロ爺:え?
カイン:よし爺さん、今から俺と勝負してみてくれ。
サーリ:あ、腕試しで勇者か分かるってやつだね?
パウロ爺:いや、ちょっと⋯?
カイン:ああ、俺の予測が正しければ凄いのが拝めるぜ。
パウロ爺:いや、たぶんわし⋯死んじゃうよ?
シルビア:まったく、そんな物騒な事をしなくても、勇者様で間違い無いと言ってるのに。
カイン:さあ行くぞ爺さん。どおりゃあああーーー!!!
パウロ爺:嘘じゃろ!?
カイン:中段斬り!
パウロ爺:ヒィ!!
カイン:下段斬り!
パウロ爺:ホヒョッ!!
カイン:上段、斬りーー!!
パウロ爺:ヌハァッ!!
サーリ:ふえ⋯?全部避けた⋯?
カイン:⋯やっぱりな。俺の得意の上段斬りまで避けられるとは。
パウロ爺:冗談じゃないわい!わしを殺す気か~~!
サーリ:でも凄い動きしてたよおじいちゃん!
カイン:ああ、これは本物だな。
シルビア:だから最初からそう言っていたではありませんか。
パウロ爺:いやいや!今のは偶然かわせただけじゃよ!?
シルビア:そんな事はありません。我々はここに来るまでに数々の魔物と戦ってきました。先程の勇者様の動きはその、どの強力な魔物よりも素早く見えました。そんな方がただの一般人なわけはありません。
パウロ爺:えぇ⋯ほんとに⋯?
サーリ:そうそう、自信持っていいと思うよー。
パウロ爺:しかし、今更勇者だと言われてものぅ⋯わしは田舎でのんびりスローライフがしたいんじゃが⋯
カマセイーヌ:ハッハッハッ!見つけたぞ勇者!
パウロ爺:な、なんじゃ!?
カマセイーヌ:我は魔王軍四天王の一人、カマセイーヌ様だ!!
サーリ:うわーめちゃくちゃ強そうなの来ちゃったよ。
シルビア:タイミングが良すぎる⋯まさか!
カマセイーヌ:ハッハッハッ!ご苦労だったな。勇者を探すお前達の後をこっそり付けさせてもらったぞ。
シルビア:く、気がつかなかったとは言えなんという失態⋯。
パウロ爺:あの⋯わしまだ状況がよく飲み込めておらんのだけど?あとそこわしの畑なんじゃけど⋯。
カマセイーヌ:魔王様のお話では、魔王軍を脅かす存在である勇者なる者が近々現れるとは言っていたが⋯まさかこんな老いぼれだったとはな!
パウロ爺:そう、わしもビックリ⋯。
カマセイーヌ:だが年寄りだからといって手心など加えんぞ!覚悟しろジジイ!!
パウロ爺:ヒィ!!またこのパターン!?
カイン:勇者、あんたなら楽勝だろ?
パウロ爺:正気かお主!?
サーリ:サクッとぶっ飛ばしちゃってよ!
パウロ爺:いやあんなめちゃくちゃ強そうな見た目の相手に無理じゃって!
シルビア:さあ勇者様!今こそ勇者としての勤めを果たす時です、さあ!さあさあ!!
パウロ爺:ちょ!押すな、押さんでくれー!!
カマセイーヌ:⋯なんだこの状況は?おい!真面目に戦う気はあるのか?
パウロ爺:見て分かるじゃろ!?ないって!!
カマセイーヌ:ええい問答無用!死ねーーー!!!
パウロ爺:ぎゃああああ!!
カマセイーヌ:なっ!?よ、避けた⋯だと?
パウロ爺:ハァ、ハァ、し、死ぬかと思った⋯。
カマセイーヌ:い、いや、きっとまぐれに違いない。次は外さんぞ!オラーー!
パウロ爺:ヒエー!!
カマセイーヌ:ぬ、くそ!ウラ!ウラ!
パウロ爺:ヒョエ!ヌホ!!
カマセイーヌ:ハァ、ハァ⋯くそ!なぜ当たん?
パウロ爺:ハァ、ハァ⋯もう、よさんか⋯?
カイン:ん⋯?なんかこっちに近づいてくるやつが居るな⋯子供か?
サーリ:あ、ほんとだ。可愛い子だね。
シルビア:なにか「ご飯」がどうとか叫んでますね。
パウロ爺:ああ、あれはわしの孫で⋯
カマセイーヌ:このカマセイーヌ様の戦いに水を刺す無粋な人間め。目障りだ、まずあいつから殺してやるか!
パウロ爺:は⋯?
カマセイーヌ:ハッハッハッ!我と出会った事を後悔するがいい!!
パウロ爺:わしの⋯孫に何する気じゃーーー!!!
カマセイーヌ:え⋯?ぐあああああーーー!!!
カイン:なっ!なんて爆風だ!
サーリ:ひゃー!と、飛ばされる~~!
シルビア:なんて力なの⋯さすが勇者様⋯。
カマセイーヌ:ぐはっ!ま、まさか⋯勇者の力がこれほどとは⋯
パウロ爺:ハァ、ハァ⋯孫に手を出すやつは許さんぞ⋯ってあれ⋯?
カマセイーヌ:ま、魔王様のおっしゃっていた通り⋯この強さは魔王軍の最大の敵になるのは間違いない⋯。
パウロ爺:いや、あの⋯今のはたまたまで⋯
カマセイーヌ:見た目がジジイだったのも、我々魔族をあざむく為だったのか⋯。
パウロ爺:わし、そんなどこぞのエルフみたいに狡猾じゃないぞ⋯?
カマセイーヌ:ふふ、残念だったな⋯自分で言うのもなんだが、我は四天王の中でも最弱!貴様に四天王全てを倒しきる事が出来るかな?
パウロ爺:いや、わしはのんびりスローライフが⋯
カマセイーヌ:さらに運良く四天王全てを倒したとしても、魔王様がいる魔王城は遙か端の大陸、果たしてそこまでたどり着ける事が出来るかな?
パウロ爺:あの、わし体力無いし⋯隣り村が限界じゃよ?
カマセイーヌ:そろそろ限界か⋯先にあの世で待ってるぞ、勇者よ。
パウロ爺:いや、待たんでも、すぐあの世に行く事になるんじゃけど⋯。
カマセイーヌ:く⋯勇者がジジイだという情報を持ち帰れないのが心残りだが⋯きっと魔王様がなんとかしてくれる⋯その時、貴様は魔王様の恐ろしさに絶望するだろう!
パウロ爺:あの、そろそろわし家に帰っていい?
カマセイーヌ:ふ⋯そうやって余裕ぶっていられるのも今の内だ勇者⋯。魔王様バンザイ!!ガク。
パウロ爺:あ⋯消えた。
カイン:なんかあっさり四天王を一人倒すことが出来たな、さすがは勇者だぜ。
シルビア:まだ一人倒しただけです。魔王を倒さないかぎり平和はありません。さあ勇者様、旅立ちの準備を!
パウロ爺:いや⋯わしは孫と今から飯の時間で⋯。
サーリ:あ、今お孫さんと話ししてきたけど「お土産よろしく」だって。
パウロ爺:嘘じゃろ⋯?
シルビア:さあ!目指すは魔王城です、勇者様!
パウロ爺:誰か、勇者代わってくれ~~~!!
:おわり
シルビア:やっぱり⋯。皆さん、どうやらこの村みたいです。
サーリ:ほんと!?良かった~、もう私歩き疲れちゃった~。
カイン:シルビア、今度こそ「勇者」がいる村で間違いないんだよな?
シルビア:ええ。この王様から頂いた勇者を探し出す「光のオーヴ」に間違いは無いわ。
サーリ:私、そのセリフ10回以上聞いたんだけど。
カイン:だよな?しかもそのたびに「これは神の試練です」とか言って誤魔化してたよな。
シルビア:あ!ほら皆さん!光のオーヴが今までにないくらい輝きを放っていますよ!もうこれは間違いない!!
カイン:⋯ま、期待せずに行くか。
サーリ:だね。あ、何か美味しい食べ物あるかなー。
シルビア:サーリさん!我々は王様から直々に託された魔王討伐の旅の途中なんですよ?観光ではないんですからね!
パウロ爺:あのー
サーリ:え~、王様からお金もらってるんだし、ちょっとくらいイイじゃ~ん。
シルビア:このお金は旅の装備を整える為に頂いたお金です!無駄遣いは私が許しません!
パウロ爺:あの~~
カイン:まあまあ、サーリもここまで魔物を倒したり色々頑張って来たんだから、許してやったらどうだ?
シルビア:カインさんはそうやっていつもサーリさんを甘やかすんですから!
パウロ爺:ウェッホン!!
サーリ:ヒエッ!
シルビア:はっ!だ、誰ですか?
カイン:こいつ、今、気配がしなかったぞ⋯って、爺さん⋯?
パウロ爺:君らわしの畑で何しとるんじゃ?
カイン:畑⋯?
サーリ:もしかして⋯この廃れた荒地みたいな場所の事?
パウロ爺:⋯いきなりな言い草じゃが、その廃れた荒地がわしの畑なんじゃ。
シルビア:そ、それは大変失礼しました!お二人も一旦ここから出ますよ!
:間
カイン:さっきは悪かったな爺さん。
パウロ爺:いや、まだ種を植える前の畑だったし気にせんでくれ。
サーリ:そうなんだ、良かった~。
パウロ爺:廃れた荒地って言ったの忘れとらんからな。
シルビア:私達は王国からの使者と言うのに、そのように素行が悪くては駄目ですよサーリさん。
サーリ:は~い⋯。
パウロ爺:王国からの使者?こんな田舎の村に使者様が何の用なんじゃ?
シルビア:はい。我々は王様から直々に、勇者様を探し出すという使命を託されているんです。
パウロ爺:ほ~、勇者とはあの伝説の存在と言われる勇者様の事じゃろ?ほんとに居ったんじゃな。
カイン:この村にその勇者がいるかもしれないって話らしいんだ。
パウロ爺:そうなのか⋯しかし村の中に勇者になりそうな者がおったかのう⋯?
カイン:さっきの気配の無さ、爺さんもしかして、ただ者じゃないんじゃないか?
パウロ爺:わし?ははは、わしは生まれてこのかた畑仕事しか知らんただのジジイじゃよ。
サーリ:だよね、顔もしわくちゃだし、腰も曲がってて老い先短かそうな普通のおじいちゃんだもんね。
パウロ爺:この子なんでこんなに口悪いの?
シルビア:サーリさん!またそんな風な言い方を⋯なっ!?
カイン:ん?どうしたんだシルビア、そんなスライムがファイアを食らったような顔をして。
シルビア:あ⋯あ⋯
パウロ爺:わしの顔をじっと見て、どうしたんじゃ?
シルビア:ゆ、勇者様~~~!!!
パウロ爺:え?
カイン:は?
サーリ:ええぇ~~~!?
シルビア:勇者様~~!ついに、ついにお会い出来ました~~!
パウロ爺:ちょ、お嬢さん!ち、近い、顔が近いぞ!それと、力強すぎじゃ!!
カイン:ちょっと待てシルビア!どういう事か説明しろ!?
サーリ:そ、そうだよ、おじいちゃんが勇者って、ありえないでしょ?
シルビア:いいえ、間違いありません!ほら、これを見て下さい!
パウロ爺:ぬわ!なんじゃその眩しい玉は!?目が、目が~!!
シルビア:これは光のオーヴと言って、王様から授かった勇者様を見つけ出す魔法のアイテムです。それが今までにないほどの強い輝きを放っているんです!これはもう勇者様で間違い無い!!
カイン:その勇者様かもしれない爺さんがそこで、のたうち回ってるんだが⋯?
サーリ:ほんとだ明るい~、これで夜道も平気だね~。
カイン:おじいちゃんの心配してあげて!?
:間
パウロ爺:はぁ、はぁ⋯。
シルビア:勇者様、お身体は大丈夫ですか?
パウロ爺:目が潰れるかと思った⋯。いやちょっと待つんじゃ、まだわしが勇者だとは認めておらんよ?
シルビア:ですが、ほら
パウロ爺:分かった!分かったからとりあえずその光る玉はしまっといてくれ。
シルビア:そうですか?こんなに光ってるのに⋯。
カイン:なんで残念そうなんだ⋯。
サーリ:で、このおじいちゃんが勇者様って事?
パウロ爺:いやいや、そんなわけないじゃろ。
シルビア:そんな事はありません!正真正銘、勇者様です!
パウロ爺:いや⋯だってわし、今まで魔物と戦った事もないんじゃよ?
カイン:待てよ⋯さっきの気配の無さからしても普通じゃなかったよな⋯?
パウロ爺:え?
カイン:よし爺さん、今から俺と勝負してみてくれ。
サーリ:あ、腕試しで勇者か分かるってやつだね?
パウロ爺:いや、ちょっと⋯?
カイン:ああ、俺の予測が正しければ凄いのが拝めるぜ。
パウロ爺:いや、たぶんわし⋯死んじゃうよ?
シルビア:まったく、そんな物騒な事をしなくても、勇者様で間違い無いと言ってるのに。
カイン:さあ行くぞ爺さん。どおりゃあああーーー!!!
パウロ爺:嘘じゃろ!?
カイン:中段斬り!
パウロ爺:ヒィ!!
カイン:下段斬り!
パウロ爺:ホヒョッ!!
カイン:上段、斬りーー!!
パウロ爺:ヌハァッ!!
サーリ:ふえ⋯?全部避けた⋯?
カイン:⋯やっぱりな。俺の得意の上段斬りまで避けられるとは。
パウロ爺:冗談じゃないわい!わしを殺す気か~~!
サーリ:でも凄い動きしてたよおじいちゃん!
カイン:ああ、これは本物だな。
シルビア:だから最初からそう言っていたではありませんか。
パウロ爺:いやいや!今のは偶然かわせただけじゃよ!?
シルビア:そんな事はありません。我々はここに来るまでに数々の魔物と戦ってきました。先程の勇者様の動きはその、どの強力な魔物よりも素早く見えました。そんな方がただの一般人なわけはありません。
パウロ爺:えぇ⋯ほんとに⋯?
サーリ:そうそう、自信持っていいと思うよー。
パウロ爺:しかし、今更勇者だと言われてものぅ⋯わしは田舎でのんびりスローライフがしたいんじゃが⋯
カマセイーヌ:ハッハッハッ!見つけたぞ勇者!
パウロ爺:な、なんじゃ!?
カマセイーヌ:我は魔王軍四天王の一人、カマセイーヌ様だ!!
サーリ:うわーめちゃくちゃ強そうなの来ちゃったよ。
シルビア:タイミングが良すぎる⋯まさか!
カマセイーヌ:ハッハッハッ!ご苦労だったな。勇者を探すお前達の後をこっそり付けさせてもらったぞ。
シルビア:く、気がつかなかったとは言えなんという失態⋯。
パウロ爺:あの⋯わしまだ状況がよく飲み込めておらんのだけど?あとそこわしの畑なんじゃけど⋯。
カマセイーヌ:魔王様のお話では、魔王軍を脅かす存在である勇者なる者が近々現れるとは言っていたが⋯まさかこんな老いぼれだったとはな!
パウロ爺:そう、わしもビックリ⋯。
カマセイーヌ:だが年寄りだからといって手心など加えんぞ!覚悟しろジジイ!!
パウロ爺:ヒィ!!またこのパターン!?
カイン:勇者、あんたなら楽勝だろ?
パウロ爺:正気かお主!?
サーリ:サクッとぶっ飛ばしちゃってよ!
パウロ爺:いやあんなめちゃくちゃ強そうな見た目の相手に無理じゃって!
シルビア:さあ勇者様!今こそ勇者としての勤めを果たす時です、さあ!さあさあ!!
パウロ爺:ちょ!押すな、押さんでくれー!!
カマセイーヌ:⋯なんだこの状況は?おい!真面目に戦う気はあるのか?
パウロ爺:見て分かるじゃろ!?ないって!!
カマセイーヌ:ええい問答無用!死ねーーー!!!
パウロ爺:ぎゃああああ!!
カマセイーヌ:なっ!?よ、避けた⋯だと?
パウロ爺:ハァ、ハァ、し、死ぬかと思った⋯。
カマセイーヌ:い、いや、きっとまぐれに違いない。次は外さんぞ!オラーー!
パウロ爺:ヒエー!!
カマセイーヌ:ぬ、くそ!ウラ!ウラ!
パウロ爺:ヒョエ!ヌホ!!
カマセイーヌ:ハァ、ハァ⋯くそ!なぜ当たん?
パウロ爺:ハァ、ハァ⋯もう、よさんか⋯?
カイン:ん⋯?なんかこっちに近づいてくるやつが居るな⋯子供か?
サーリ:あ、ほんとだ。可愛い子だね。
シルビア:なにか「ご飯」がどうとか叫んでますね。
パウロ爺:ああ、あれはわしの孫で⋯
カマセイーヌ:このカマセイーヌ様の戦いに水を刺す無粋な人間め。目障りだ、まずあいつから殺してやるか!
パウロ爺:は⋯?
カマセイーヌ:ハッハッハッ!我と出会った事を後悔するがいい!!
パウロ爺:わしの⋯孫に何する気じゃーーー!!!
カマセイーヌ:え⋯?ぐあああああーーー!!!
カイン:なっ!なんて爆風だ!
サーリ:ひゃー!と、飛ばされる~~!
シルビア:なんて力なの⋯さすが勇者様⋯。
カマセイーヌ:ぐはっ!ま、まさか⋯勇者の力がこれほどとは⋯
パウロ爺:ハァ、ハァ⋯孫に手を出すやつは許さんぞ⋯ってあれ⋯?
カマセイーヌ:ま、魔王様のおっしゃっていた通り⋯この強さは魔王軍の最大の敵になるのは間違いない⋯。
パウロ爺:いや、あの⋯今のはたまたまで⋯
カマセイーヌ:見た目がジジイだったのも、我々魔族をあざむく為だったのか⋯。
パウロ爺:わし、そんなどこぞのエルフみたいに狡猾じゃないぞ⋯?
カマセイーヌ:ふふ、残念だったな⋯自分で言うのもなんだが、我は四天王の中でも最弱!貴様に四天王全てを倒しきる事が出来るかな?
パウロ爺:いや、わしはのんびりスローライフが⋯
カマセイーヌ:さらに運良く四天王全てを倒したとしても、魔王様がいる魔王城は遙か端の大陸、果たしてそこまでたどり着ける事が出来るかな?
パウロ爺:あの、わし体力無いし⋯隣り村が限界じゃよ?
カマセイーヌ:そろそろ限界か⋯先にあの世で待ってるぞ、勇者よ。
パウロ爺:いや、待たんでも、すぐあの世に行く事になるんじゃけど⋯。
カマセイーヌ:く⋯勇者がジジイだという情報を持ち帰れないのが心残りだが⋯きっと魔王様がなんとかしてくれる⋯その時、貴様は魔王様の恐ろしさに絶望するだろう!
パウロ爺:あの、そろそろわし家に帰っていい?
カマセイーヌ:ふ⋯そうやって余裕ぶっていられるのも今の内だ勇者⋯。魔王様バンザイ!!ガク。
パウロ爺:あ⋯消えた。
カイン:なんかあっさり四天王を一人倒すことが出来たな、さすがは勇者だぜ。
シルビア:まだ一人倒しただけです。魔王を倒さないかぎり平和はありません。さあ勇者様、旅立ちの準備を!
パウロ爺:いや⋯わしは孫と今から飯の時間で⋯。
サーリ:あ、今お孫さんと話ししてきたけど「お土産よろしく」だって。
パウロ爺:嘘じゃろ⋯?
シルビア:さあ!目指すは魔王城です、勇者様!
パウロ爺:誰か、勇者代わってくれ~~~!!
:おわり