台本概要

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タイトル 強引まいうぇい
作者名 ラッキー  (@lucky_toypoo)
ジャンル コメディ
演者人数 6人用台本(男4、女1、不問1)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 とある会社の中での出来事
自己肯定感低めの社員堅山は、今日もせっせと働くが、自分が情けない気がしてしまう
そんなある日、堅山に心の声が届く

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
堅山 172 別段仕事が出来ない訳ではないが、特別仕事が出来る訳でもない一般社員。
石田 37 若くリーダーを任される有能社員。誰に対しても分け隔てなく話ができる。
中川 42 いつもせかせかしてる中年社員。悪い人では無い。ボーリングが好き。
下川 53 明るい女性社員。ダンスが好きで、嬉しいことがあるとつい踊ってしまう。
三田 20 三田(さんだ)。アホ。声と兼役でもあり。
不問 43 神様。時間を止めて堅山にだけ語りかけてくる。オカマっぽい口調だが性別不明。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:とある小さな会社の中、せかせかと働く人達がいる。 : 堅山:石田さん。 石田:ん? 堅山:今電話で、配送業者さんが今日も間に合いそうにないって言ってるんですけど、どうします? 石田:またかよ、ちょっと電話変わって。 堅山:はい。 石田:もしもし、石田です。 石田:お世話になります、こちらに着くのは何時頃になりそうですか? 石田:…3時、あぁ。 : 堅山M:この人は、石田さん。 堅山M:今は俺の上司だけど、高校の後輩でもある。 堅山M:高校時代は全然絡みはなかったけど、昔から出来のいい人でトイレでご飯を食べてた俺でも名前は知っていた。 堅山M:俺より3年も早く入社していて、とても仕事が出来る人だ。 : 石田:何度もお伝えしたと思うんですが、3時だともうこちらで発送準備するんで、2時に着いて頂かないと困るんです。 石田:……いや、混んでるじゃないです。この時間は混むから早めに配送を頼んでるんでしょ? 石田:はい、はい。そうですよね、じゃあ待ってますんで、はーい。 : 0:石田、電話を切る。 : 石田:2時半には間に合わせるってよ。 堅山:あ、分かりました。じゃあ準備してきます​─── 中川:ジャマ!どいて! : 0:中川、台車を押して走ってくる。 : 堅山:あ、すいません! 中川:前見て歩いて!じゃないとぶつかるから! 堅山:あ、はい、気をつけます。 : 堅山M:この人は中川さん。 堅山M:この部署では一番年上で、石田さんと同じく上司だ。 堅山M:堅山中川さんは本当は優しいんだけど、急いでるときはたまに口うるさい。 : 中川:で、配送業者は? 堅山:2時半頃に来るらしいです。 中川:2時半か、まだ時間あるな。 中川:じゃあちょっと荷物下ろすの手伝ってくれる? 堅山:はい。 中川:よっ……あ、でも二人じゃ時間かかるな。 中川:三田君!ちょっと! 三田:はい! 中川:荷物下ろすの手伝って。 三田:はい!何するんですか? 中川:だから荷物下ろすの手伝って! 三田:あ、分かりましたー!どこに下ろすんですか? 中川:えっとね、あの使ってない部屋あるでしょ。 中川:そこの部屋に荷物下ろして運んでって。 三田:はい!どこの部屋ですか? 中川:だから!使ってないあの部屋! : 堅山M:この子は三田君。 堅山M:見て分かる通り、アホだ。 : 三田:使ってない部屋ですね!分かりました! 中川:一個ずつ運んでね!怪我すると危ないから! 三田:(遠くから)はーい! 中川:はぁ、じゃあ堅山君も運んでもらっていい? 堅山:分かりました。 堅山:あ、多分僕と三田君で間に合うと思うので、中川さん他の作業あればやっときますよ。 中川:あ、ほんと?ありがとうね、じゃあ任せるわ。 三田:(遠くから)中川さん!手が塞がってるので扉開けて下さい! 中川:荷物一回降ろせよ! 三田:(遠くから)分かりましたー! 中川:ごめんね、頼むわ。 堅山:はい、頑張ります。 : 荷物を運び終わり、一息つく : 堅山:ふぅ、終わったし少しお水飲んでおいで。 三田:いいんですかー! 堅山:行っておいで、片付けやっとくから。 三田:ありがとうございます!じゃあ代わりに堅山さんの分も飲んできますね! 堅山:うん、ありが……待って!俺の水飲まないでね!おーい!!……まぁいいや、さてと。 下川:あれ?三田君と二人じゃなかったんですか? 堅山:あ、下川さん。 堅山:三田君手伝ってくれたんで、今お水飲みに行かせたんだ。 下川:あぁ、三田君言わないと一生お水飲まないもんね。 堅山:うん、こないだも扉の前で脱水してピクピクしてたからね。 下川:じゃあ結局今一人?それとも誰か手伝いに来るの? 堅山:いや、多分一人だと思うけど。 下川:そっか、じゃあ大変だねー。 堅山:まぁ、なんとかなるでしょ! 下川:そっかー。 : 0:下川、そのまま特に何もすることなく、二人沈黙 : 堅山:……ん、下川さん? 下川:ん? 堅山:えっと、今はやることない感じ? 下川:あ、いや!そういうわけじゃないんだけど……。 下川:あ!ここにいたら邪魔? 堅山:いや、全然邪魔ではないけど。 下川:ならよかったですー! 堅山:……あ、よかったらでいいんだけど、忙しくなければ手伝ってもらえると助かるかなーって。 下川:あ、ほんとですか?じゃあ手伝っちゃおーかな! 堅山:……ありがとね? : 堅山M:この子は下川さん。 堅山M:後輩だけど努力家で真面目だ。 堅山M:とても優しいし、いい子だけど、何故か絶対こっちから手伝ってって言わないと手伝ってくれない。 堅山M:少し変わった子だ。 : 下川:いやー、でも堅山さんって本当真面目ですよねー。 堅山:そうかな?俺はそうは思わないけど。 下川:真面目ですよー!凄く仕事熱心だし、みんなに優しくて……こう、なんて言うのかな、あのー……あれぇ? 堅山:あー、なんかありがとうね。 堅山:褒めてくれようとしたのだけは分かったから。 下川:あのー、はい。そういうことで。 堅山:はい。 下川:……えっとー。 堅山:ん? 下川:……あ!堅山さんって趣味とかあるんですか! 堅山:おぉ、急だな。 堅山:そーだな、強いて言うならヘヴィメタかな。 下川:ヘヴィメタ? 堅山:うん、ヘヴィメタ。 堅山:……あぁ、変わってるから分かんないよね。 下川:いや!分かります!あれですよね!X JAPANとか! 堅山:まぁメジャーなとこだとそうだけど、個人的にはXはヘヴィメタルというよりハードロックかな。 下川:そ……そうですよね! 堅山:うん。 堅山:どちらかと言えばXが尊敬してるバウワウってバンドがあるんだけど、俺はそっちの方が好きかな。 下川:あ、あー……ばう? 下川:ば、う、あ……。 堅山:バウワウ。 下川:バウワウ……バウワウですか。 下川:そっかー、そんなにいいんだ!また聞いてみます! 堅山:いや、人によると思うよ。 下川:……は、はい。 堅山:……あれ? 堅山:あ、なんかごめんね、分かんないよね、ごめん……。 下川:だ、大丈夫ですよ!気にしないで下さい! 堅山:いや、気にするよ。 堅山:せっかく聞いてくれるって言ってるのに人によるとか、ちょっとめんどくさいよね。うん、ダメだ、俺はめんどくさいな。死のう。 下川:大丈夫ですー! 下川:め、めんどくささなら私の趣味の方がめんどくさいですよ! 下川:私ダンスが趣味なんですけど、アップが全然出来ないんですよー! 下川:あ!でも他は出来るんですよ!コンビネーションとか前先生に褒めてもらって……。 堅山:ごめん、全然分かんないです。 下川:……そうですよね、仕事します。 堅山:あ、はい。そうですね、仕事しましょう。 下川:……はい。 : 0:片付け終わり、ひと段落 : 堅山:ごめんね、片付け手伝ってもらっちゃって。 下川:え、全然大丈夫ですよ!お役に立ててよかったです! 堅山:ありがとね、じゃあちょっと休んでおいで。 下川:はい!じゃあお先に! 堅山:はーい。 中川:堅山君。 堅山:はいぃ!? 中川:いや、そんなビックリしなくてもいいだろー! 堅山:あぁ、え?はい。 中川:なんだよ、連れないなー。 中川:ていうかさ、今日仕事終わったら(ボーリングのポーズをして)行かない? 堅山:あ、すいません。 堅山:今日は夜ちょっと予定入ってるんですよ。 中川:えー、昨日もじゃん。 中川:何があるの? 堅山:おじいちゃんのお見舞いに行かなくちゃいけなくて。 中川:……それなら、仕方ないな。 堅山:はい。 中川:じゃあまた行ける時教えてよー。 中川:一回は君と行ってみたかったんだけどなー。 堅山:また、行ける時は連絡しますー。 : 0:中川、帰っていく。 : 堅山:……はぁ。 石田:お前のじいちゃん元気だろ? 堅山:うわぁ!! 石田:ははは!なんだよその反応。 堅山:ビックリさせないでくださいよー! 堅山:いや、元気ですけど……正直ボーリング苦手なんですよね。 石田:苦手だからやんねーのか?だからお前はダメなんだよ。 石田:苦手なことから逃げてばっかで。 堅山:…はい、確かに。 堅山:逃げてばっかりですよね。 堅山:分かりました、次誘われたら行きます。 石田:次じゃおせーだろ。 石田:おーい!中川さーん! 堅山:うわあぁぁ!やめてくださいよ! 堅山:今はじいちゃん死にかけてる予定なんですから! 石田:ははは!!!ごめんごめん。 中川:呼んだ? 堅山:あ!えっと、違うんです、あの……。 石田:中川さん、ボーリング僕と行きましょうよ。 石田:今堅山君から聞いたんで。 中川:えー、やだよぉ。石田君強いから負けたくないじゃん。 石田:何子供みたいなこと言ってんすか、強いものに負けるって思ってちゃ絶対勝てないっすよ? 中川:あー、そういうこと言うか。 中川:じゃあ今日行こうか!絶対負けないからな! 石田:全力で打ち負かしに行きますよー! : 0:二人、帰っていく : 堅山:……はぁ、凄いな、石田さんは。 堅山:俺もあんな風になれたらな。 : 0:突如、空から声が聞こえる : 声:あー、へい、へい。 声:聞こえる?これ、聞こえてる? 堅山:え、なに!?なにこれ!? 堅山:え、ちょっと待って、誰!? 声:あ、聞こえてる?じゃあオッケーオッケー、はーい。 声:さて、今、君は願いごとをしましたね? 堅山:……は?しましたっけ?! 声:しましたよ。ほら、思い出してごらんなさい。 堅山:えーっと!すいません!今ここで起こってることでビックリしすぎて記憶ないです!! 声:ほら!さっき、なんか……あの、ね! 声:自分を変えたい的な?俺なんか的な!ね! 堅山:すいません!全然覚えてないです! 声:あー!もう!だからぁ!言ってたじゃん! 声:はぁ、凄いな、石田さんは。俺もあんな風になれたらな。って! 声:言ってたでしょ!? 堅山:あー……うっすらと!? 声:言ってたの!!だから来たの!私がここに!! 声:で!願いを叶えにきたわけなのよ!! 堅山:……はい。 声:あ、あんた信じてないんじゃない? 声:まぁ仕方ないよね、いきなりだしー。混乱しても仕方ないねー! 堅山:あの、そんな大っきい声出してたら多分みんなに聞こえてるんじゃないですかー? 声:なんでそこだけ冷静なんだよ。 声:まぁいいわ、お答えしましょう! 声:えー、今!私の声は、あなたにしか聞こえていませーん! 声:何故かというと!今時間が止まっているからでーす! 堅山:ということは、僕だけみんなより若干年をとるってことですか? 声:別に今そんなデメリットについて考える時じゃないでしょ!気にしなさんな! 声:さて、えーっと、どこまで話したっけ。 堅山:あと、どうやって時間止めてるんですか?時間って概念の問題かと思ってたんですけどなんか空間的に感じれるものとして動いてるんでしょうかー? 声:知らん!そんなもん!! 声:気になるなら後でウィキペディアみとけ! 声:違う!だからそんな話はどーでもいーんだよ! 声:本題だよ本題!! 声:あんたの願いを叶えにきたの! 堅山:あの、あなたは誰なんですか? 声:ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。 声:そう!やっと聞いてくれたわね、そういうことを何で一番に聞かないのかな!! 声:まぁ説教ばっかしてたら何も始まらないから教えてあげるわ。 声:私はね、神様です。 声:日頃よく頑張っているあなたの為に、天からあなたの願いを叶えにきたのです。 堅山:ほんとですか!ありがとうございます! 声:ふっ、真面目ね、でもそういうのはおいといて。 声:あなたの願いごと、石田ちゃんみたいになりたいって願い? 声:叶えてあげよう、はい叶えましょう。 声:しかーし! 声:ただ叶えるのでは意味がない! 声:あなたが自ら変わるという意思がなければどんなにいい能力を与えたとしても使いこなせはしない。 声:よって無意味、よって無価値! 声:そこでね、あなたには試練を与えようと思うの。これからあなたの身近な人達から、ちょいちょい試練を与えられます。 声:いいですね? 堅山:あのー、ふと言った言葉を勝手に願いだと思われた挙句、無価値とか言われて更に試練与えられるとかもう何か既にやる気ないんですけど。 声:……これからあなたの身近な人達から、ちょいちょい試練を与えられます。いいですね? 堅山:あ、もっかい言った。 堅山:なんかどうやってもやらなきゃダメみたいなんで、やります。 声:その意気よ。逃げてばっかりだったあなたの人生から生きる意味、溢れる活力、燃えたぎる情熱を取り戻してあげましょう! 堅山:後半精力剤のCMみたいになってましたけど、何となく分かりました。 堅山:とりあえず僕にはもう逃げ場はないという事ですね。 声:そう!いや、そんな風には言ってないけどまぁいいや!そういうこと! 声:だからね!あなたはこれから来るとてつもない試練を乗り越えるの、いいわね? 声:出来なきゃ、あなたの願いは叶えられない。分かった? 堅山:……でも確かに石田さんのようにカッコいい人になりたいっていうのは本当です。 堅山:分かりました、試練受けます! 声:はい、分かりました。 声:じゃあ、もうすぐ始まるから!頑張って!それじゃあね!ばーぃばー…… : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山:うわ…消えた。 堅山:何だったんだろ、なんか、夢だった気もするけど……。 堅山:どんな試練が来るんだろ── 中川:おい。 堅山:うわあぁぁい!? 中川:なんだよ、うわあぁぁいって。 中川:喜んでんのか怖がってんのかハッキリしろよ。 堅山:いや、いつも急に来るんでビックリして……! 中川:ところでさ、今日のボーリング、やっぱ止めにしたわ。 堅山:え、なんでですか? 中川:……実はさ、俺の息子が熱出ちゃって今日は帰ってやらなくちゃダメになってさ。 堅山:そうなんですか? 中川:まぁ、微熱だしほっときゃ治るって嫁には言ったんだけどさ、ほら。 中川:堅山君もおじいちゃんのお見舞い行くって聞いたし、戻ってやろうかなって。 堅山:あ、それがいいと思いますよ、戻ってあげてしっかり看病してあげてください。 中川:ありがとね、それじゃまた今度さそ── 声:ストーーップ!!! 堅山:うわあぁぁ!もうビックリするからやめてくださいって!!! 声:何してんの!?願い叶わないよ!? 堅山:何がですか?!何か悪いことしました!? 声:したわよ!!あんた相手の気持ち分かってんの?! 堅山:え? 堅山:いや、親なら子供の心配して当然でしょ?だから看病してあげてくださいって。 声:NOーーーー!!この人はそんなこと思ってません!! 声:あなた本当に話聞いてた?! 堅山:聞いてましたよ!! 堅山:子供さんが熱出ちゃって今日は止めるって話でしょ?! 声:ちがーう!!! 声:この人は子供に微熱が出たくらいじゃ心配しないのよ!! 声:言ってたでしょ!?微熱だしほっときゃ治るって!ってことはよ!!用事さえあれば帰らねぇよって奥さんに言ってんのよこの人は!! 声:でもあんたがおじいちゃんの嘘ついたせいで帰らなきゃダメな感じがしたから、あんたをもう一回誘ってみて、あんたが来れるなら行こうって寸法だったのよ! 堅山:……分かるわけないでしょ!! 堅山:なんですか!その子供みたいな考え方は!! 声:それはこの人の性格なんだから直接言いなさいよ!ほれ! 中川:うから。次は絶対来── 堅山:うわあぁぁ!って急に言えるわけないでしょーが!! 声:なんだよ、直接言わせてあげたのに。 堅山:もうちょっと俺の気持ちもわかってよ! 声:はいはい、とりあえずこの人はこういう性格で、とにかく超正直だから遠回しに考えないこと! 声:それを踏まえてもう一回やってみる? 堅山:え?また出来るんですか? 声:当たり前じゃない、神様なんだから。 声:時間を止められるなら時間を戻すことだって可能よ。 堅山:あ、じゃあもう一回お願いします! 声:はい、それじゃ321どん。 堅山:うわっ!だから急なんですよ! 堅山:ってか、時間戻ったのかな? 中川:おい。 堅山:うわあぁぁい!! 中川:なんだよ、うわあぁぁいって。 中川:喜んでんのか怖がってんのかハッキリしろよ。 堅山:……戻ってる!! 中川:はぁ?戻ってるって何? 堅山:あ!いえ!何でもないです! 中川:あ、そう。ところでさ、今日のボーリング、やっぱ止めにしたわ。 堅山:え、息子さんが熱出たからですか? 中川:実は……いや、そう。なんで知ってんだよ。 堅山:あ!いや、なんかそうじゃないかなーって! 中川:あぁ、そう。 中川:まぁそうなんだよ、だから今日は帰ってやらなくちゃダメになっちゃって。 堅山:……いや、ボーリング行きましょう。 中川:まぁ、微熱だしほっときゃ治るって……え?マジで? 堅山:はい、行きましょう。 中川:え、お、おう……いや、ってかお前じいちゃんのお見舞いは? 堅山:あぁ、なんか、さっき退院しました。 中川:早すぎんだろそれは流石に。 堅山:いえ、退院したんで。 中川:えぇ……まぁ、お前が言うなら別にいいけど。 中川:え、本当にいいのか? 堅山:はい、大丈夫です。 中川:……そっか、それならいっか。 中川:まぁ、ボーリング行けるならな!よし!行こう! 中川:はは!見直したぞ!じゃあ仕事終わったらまたあとでなー! 堅山:はーい。 : 0:少し沈黙 : 声:ごーかく!!!! 堅山:来ると思った。 声:やれば出来るじゃない!! 声:どうなのよ!え!? 声:やってみたら案外様になったんじゃない? 堅山:ええ。まぁ息子さん熱出てるのに見直されたのは正直どうなのかと思いましたが、なんか喜んでもらえたのはちょっと嬉しかったです。 声:その調子よ! 声:案外あんたいけるじゃない!じゃあ早速次行こう! 堅山:あの。 声:え、何? 堅山:ふと疑問に思ったんだけど、なんで俺の願い叶えようと思ったの? 声:んー、まぁそれはおいといて、とりあえず次の試練よ!それぇ! 堅山:え、ちょっ……! 堅山:毎回急だろ……次は誰だ? 下川:あれ?堅山さん、何してるんですか? 堅山:あ、下川さんか。 堅山:え、なにって?いや、何って……何、何……なに、してると思う? 下川:え!?えーっと……? 下川:しいて言えば、お話? 堅山:……そうだね、そう、今会話してるからね、そうだね 。 下川:ですよね……えーっと……。 堅山、下川:(同時に)あの。 堅山:あ、お先に……。 下川:あ!いえ、お先に……。 堅山:あ、えっと……ごめん。特に何も言おうとはして無かったんだけど……。 下川:あ、そ、そうなんですね。 下川:私も、特には……。 堅山:……。 下川:……あ、じゃあ。 堅山:あ、これは違った!ヤバいえっと……!し、下川さん!! 下川:は、はい? 堅山:あ、えっと、何か用だった? 下川:あ!そ、そうなんです! 下川:こっちもやることなくなっちゃって! 下川:何かやることないですか? 堅山:えっと、こっちもないんだよね。 堅山:ちょっと休憩しよっか。 下川:分かりました、休憩ですね! 堅山:よっと……座る? 下川:え、いいんですか? 堅山:いいよ、どうぞ。 下川:ありがとうございます! 下川:あ、あの。 堅山:どうしたの? 下川:あ、その……私って、空気読めないじゃないですか。 堅山:え、そんなこと、ないと思うけど。 下川:……さっきも、石田さんと作業してて言われたんですけど、私って普通にしてる時も踊ってるように見えるって言われたんです。 堅山:あー、確かに。 下川:それで、遊んでんじゃねーよって、笑いながらですけど、言われちゃって……。 堅山:それは、多分石田さんなりの仲良くなりたい表現じゃないかな。 下川:え!そうなんですか? 堅山:うん。石田さんってちょっと素直じゃないとこあるから、多分そうだよ。 下川:そうなんだぁー……よかったぁ! 下川:私凄く呆れられたんじゃないかって心配してたんですよ! 堅山:大丈夫だよ。あの人は仲間を悪く言う人じゃないから。 下川:よかった……。 下川:……私、堅山さんに話せてよかったです。 堅山:え? 下川:なんか、堅山さんにだと、私も凄く素直になれるというか……堅山さんは、凄く落ち着きます。 堅山:……ありがと。 下川:……あ、もうそろそろ戻りますか! 堅山:そ、そうだね。 下川:さぁ、気分も晴れたし、仕事しますか!それとも、踊っちゃいます!? 堅山:あ、仕事してください。 声:ストーーーップ!!!! 堅山:え? 声:バッカじゃねぇの!? 声:何が「あ、仕事してください。」だよ!! 声:空気読めよ空気!! 堅山:え!い、いや……え、何が悪かったの? 声:お前「仕事しますか、踊りますか」って選択肢あったら普通は空気読んで、じゃあ、踊っちゃおうか!とか言うだろ!! 声:なんだよ!「あ、仕事してください。」って!! 声:言った方恥ずかしくて死ぬわアホんだら!! 堅山:そ、そういうもんなの?? 声:決まってんだろアホか! 声:空気を和ませたくて踊りますかって聞いてくれてんだから何か乗っかってやれよ!はい321どん! 堅山:うわっ! 下川:え? 堅山:え?いや、なんでもないよー?急だな、あの野郎。で、なんだっけ? 下川:え、あ、その……堅山さんに話せてよかったって話でした。 堅山:あ、ほんと? 堅山:俺も話聞けて凄く嬉しかったよ。 下川:ほんとですか!嬉しい! 下川:……なんか、堅山さんにだと、私も凄く素直になれるというか……堅山さんは、凄く落ち着きます。 堅山:……ありがとね。 下川:……あ、もうそろそろ戻りますか! 堅山:そうだね。 下川:さぁ、気分も晴れたし、仕事しますか!それとも、踊っちゃいます? 堅山:きた。 下川:え? 堅山:え?なんでもないよ。ってか、踊っちゃいますか! 下川:……マジですか!わぁい!!踊っちゃいましょう! 堅山:いえーい!! : 0:数分後 : 堅山:これが正解なんだ。 声:そうだよ、これが空気を読むってことだよ。 声:お前に足りないもんだ。 堅山:……なんかわかってきた気がする。 声:そうか、よかったよ。 堅山:踊りに誘われたら、乗っかる。 声:……まって。踊り限定じゃないからね?全般的に空気を読むって話だから。 堅山:あぁ、そういうことか。 堅山:よし!分かりました!ありがとうございます! 声:よし、じゃあ次にチャレンジしようか、321どん! 堅山:…慣れてきたな。さて、次は誰だ? 三田:堅山さん! 堅山:あ、次は三田君か。どうしたの? 三田:ニックネーム付けてもらいました! 堅山:お、誰にだ? 三田:ニックネーム付けてもらいました! 堅山:……お、どういうことだ? 三田:ニックネームを、付けてもらいました! 堅山:いや、言い方とかじゃなくてね……うん、いいや。どんなニックネーム付けてもらったの? 三田:サンダー。 堅山:……サンダー? 三田:サンダー。 堅山:……サンダー。 三田:三田だから、サンダー。 堅山:……三田だからサンダー。 三田:サンダー。 堅山:ねぇ、誰に付けてもらったの? 三田:じゃ! : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山:え、何!?何だったの今のは!? 声:ごめん、あの子にも試練やらせるために頭の中に指令送ったんだけど、なんか違うのやりはじめたわ……。 堅山:え、じゃあ何?俺はこれクリアでいいの?何なの? 声:あー、どうしよ。何もしてないけど……いいや!クリア!! 堅山:あ、やった!なんかよく分からないけど! 声:何だよあの子、超怖ぇ。何で神様の意思に背けるの? 堅山:スゲェことしてんな。 声:もういいや!最後の試練321どん! : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山:……さぁ、次は誰だろ。 石田:おっす。 堅山:え、石田さん!? 石田:え、俺だけど、どうした? 堅山:い、いや!何でもないですけど……どうしました? 石田:いや、別に。 石田:あ、そういやお前ボーリング行くって言ったんだな! 堅山:あ、はい!もう嘘はやめました! 石田:ははは!その方がいいよ。 石田:中川さん喜んでたし、よかったじゃん。 堅山:……はい! 石田:そういえばお前夢とかあんの? 堅山:え、夢ですか?夢は……はい、あります。 石田:そうなんだ、何? 堅山:それは……。 石田:うん。 堅山:……俺は、石田さんを超えることです。 石田:は?俺を超えるって……ははは!マジで言ってんの! 堅山:……マジです。 石田:……そうか、おう、超えろ。 堅山:……言われなくても。 石田:でも、そのままじゃいくら頑張っても超えられねぇぞ。 堅山:え? 石田:当たり前だよ、それ俺の真似じゃん。 堅山:いや、そんなこと……だって俺、石田さん程── 石田:俺ほど悪態つけないってか? 堅山:いや!そんなこと! 石田:ははは!そうだよな!俺ほど悪態ついたら色んな奴に嫌われるぞ! 堅山:石田さんみたいに明るかったらそんなこと……。 石田:そんなことねぇよ。 石田:俺は最初の頃、悪態ついてたことでみんなから嫌われてたよ。 石田:会社の偉い人からも、同僚からも。 石田:それこそ中川さんからもだぞ? 堅山:そうなんですか? 石田:そうだよ。 石田:それでも俺は悪態をつき続けた。 石田:何でだと思う? 堅山:えっと……その方が強くなれるからとか……? 石田:違ぇよ。 石田:単純にそれしか出来ないからだよ。性格だよ、性格。 石田:俺もこんな性格じゃなきゃ、もっと早く出世できたのにな、はは。 堅山:そう……なんですか。 堅山:でも心が強いから出来ることですよね。 石田:俺が心強いわけねぇだろ。弱いから悪態ついて、自分守ってんだよ。 石田:悪態つけば、それ以上は悪く思われないからさ。 堅山:……。 石田:でも、それがいいとは思わないよ。 石田:だけど、それしか出来ない。 石田:とんでもなく不器用なんだ、俺って。 堅山:でも── 石田:でも、自分より強い奴に負けると思ってたら勝てないんだ。 だから俺になろうとするな、自分をもっと貫き通せ。 堅山:自分をもっと……。 石田:でも、自分を貫き通す強さはもう持ってるだろうからさ。 石田:後はそれをしっかり見つめ続けるだけだよ。 石田:それが出来たら、俺なんかすぐ超えられるよ、先輩。 堅山:石田さん……。 石田:頑張ってくださいよ、俺も先輩超えますから。 : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山M:それから、あの声は聞こえなくなり、俺は普通の日常を何日か続けていた。 堅山M:周りもいつも通り。 堅山M:中川さんは忙しくなるとイライラし、下川さんは空回り、石田さんもいつもと変わらず俺を堅山君と呼んでいる。 堅山M:でもこれでいいと思う。俺は俺のままで、このままの俺で行く。 堅山M:それしか出来ないから、そのように行くんだと分かった。 : 堅山:石田さん。 石田:ん? 堅山:今電話で、配送業者さんが今日も間に合いそうにないって言ってるんですけど、どうします? 石田:またかよ、ちょっと電話変わって。 堅山:はい。 石田:もしもし、石田です、お世話になります。こちらに着くのは何時頃になりそうですか? 石田:……2時半? 石田:あ、いえいえ、はい。 石田:そうしていただけると助かります。 石田:はい、はーい、失礼します。 石田:……やるじゃん。 堅山:でしょ? : 堅山M:俺は俺のままだけど、これでいい。 : 0:暗転 : 0:ドンガラガッシャーン : 0:明転 : 三田:荷物拾うの手伝ってくださーい! 中川:だから一個ずつ運べって!! 堅山M:でもこいつは早く変えないと。 end

0:とある小さな会社の中、せかせかと働く人達がいる。 : 堅山:石田さん。 石田:ん? 堅山:今電話で、配送業者さんが今日も間に合いそうにないって言ってるんですけど、どうします? 石田:またかよ、ちょっと電話変わって。 堅山:はい。 石田:もしもし、石田です。 石田:お世話になります、こちらに着くのは何時頃になりそうですか? 石田:…3時、あぁ。 : 堅山M:この人は、石田さん。 堅山M:今は俺の上司だけど、高校の後輩でもある。 堅山M:高校時代は全然絡みはなかったけど、昔から出来のいい人でトイレでご飯を食べてた俺でも名前は知っていた。 堅山M:俺より3年も早く入社していて、とても仕事が出来る人だ。 : 石田:何度もお伝えしたと思うんですが、3時だともうこちらで発送準備するんで、2時に着いて頂かないと困るんです。 石田:……いや、混んでるじゃないです。この時間は混むから早めに配送を頼んでるんでしょ? 石田:はい、はい。そうですよね、じゃあ待ってますんで、はーい。 : 0:石田、電話を切る。 : 石田:2時半には間に合わせるってよ。 堅山:あ、分かりました。じゃあ準備してきます​─── 中川:ジャマ!どいて! : 0:中川、台車を押して走ってくる。 : 堅山:あ、すいません! 中川:前見て歩いて!じゃないとぶつかるから! 堅山:あ、はい、気をつけます。 : 堅山M:この人は中川さん。 堅山M:この部署では一番年上で、石田さんと同じく上司だ。 堅山M:堅山中川さんは本当は優しいんだけど、急いでるときはたまに口うるさい。 : 中川:で、配送業者は? 堅山:2時半頃に来るらしいです。 中川:2時半か、まだ時間あるな。 中川:じゃあちょっと荷物下ろすの手伝ってくれる? 堅山:はい。 中川:よっ……あ、でも二人じゃ時間かかるな。 中川:三田君!ちょっと! 三田:はい! 中川:荷物下ろすの手伝って。 三田:はい!何するんですか? 中川:だから荷物下ろすの手伝って! 三田:あ、分かりましたー!どこに下ろすんですか? 中川:えっとね、あの使ってない部屋あるでしょ。 中川:そこの部屋に荷物下ろして運んでって。 三田:はい!どこの部屋ですか? 中川:だから!使ってないあの部屋! : 堅山M:この子は三田君。 堅山M:見て分かる通り、アホだ。 : 三田:使ってない部屋ですね!分かりました! 中川:一個ずつ運んでね!怪我すると危ないから! 三田:(遠くから)はーい! 中川:はぁ、じゃあ堅山君も運んでもらっていい? 堅山:分かりました。 堅山:あ、多分僕と三田君で間に合うと思うので、中川さん他の作業あればやっときますよ。 中川:あ、ほんと?ありがとうね、じゃあ任せるわ。 三田:(遠くから)中川さん!手が塞がってるので扉開けて下さい! 中川:荷物一回降ろせよ! 三田:(遠くから)分かりましたー! 中川:ごめんね、頼むわ。 堅山:はい、頑張ります。 : 荷物を運び終わり、一息つく : 堅山:ふぅ、終わったし少しお水飲んでおいで。 三田:いいんですかー! 堅山:行っておいで、片付けやっとくから。 三田:ありがとうございます!じゃあ代わりに堅山さんの分も飲んできますね! 堅山:うん、ありが……待って!俺の水飲まないでね!おーい!!……まぁいいや、さてと。 下川:あれ?三田君と二人じゃなかったんですか? 堅山:あ、下川さん。 堅山:三田君手伝ってくれたんで、今お水飲みに行かせたんだ。 下川:あぁ、三田君言わないと一生お水飲まないもんね。 堅山:うん、こないだも扉の前で脱水してピクピクしてたからね。 下川:じゃあ結局今一人?それとも誰か手伝いに来るの? 堅山:いや、多分一人だと思うけど。 下川:そっか、じゃあ大変だねー。 堅山:まぁ、なんとかなるでしょ! 下川:そっかー。 : 0:下川、そのまま特に何もすることなく、二人沈黙 : 堅山:……ん、下川さん? 下川:ん? 堅山:えっと、今はやることない感じ? 下川:あ、いや!そういうわけじゃないんだけど……。 下川:あ!ここにいたら邪魔? 堅山:いや、全然邪魔ではないけど。 下川:ならよかったですー! 堅山:……あ、よかったらでいいんだけど、忙しくなければ手伝ってもらえると助かるかなーって。 下川:あ、ほんとですか?じゃあ手伝っちゃおーかな! 堅山:……ありがとね? : 堅山M:この子は下川さん。 堅山M:後輩だけど努力家で真面目だ。 堅山M:とても優しいし、いい子だけど、何故か絶対こっちから手伝ってって言わないと手伝ってくれない。 堅山M:少し変わった子だ。 : 下川:いやー、でも堅山さんって本当真面目ですよねー。 堅山:そうかな?俺はそうは思わないけど。 下川:真面目ですよー!凄く仕事熱心だし、みんなに優しくて……こう、なんて言うのかな、あのー……あれぇ? 堅山:あー、なんかありがとうね。 堅山:褒めてくれようとしたのだけは分かったから。 下川:あのー、はい。そういうことで。 堅山:はい。 下川:……えっとー。 堅山:ん? 下川:……あ!堅山さんって趣味とかあるんですか! 堅山:おぉ、急だな。 堅山:そーだな、強いて言うならヘヴィメタかな。 下川:ヘヴィメタ? 堅山:うん、ヘヴィメタ。 堅山:……あぁ、変わってるから分かんないよね。 下川:いや!分かります!あれですよね!X JAPANとか! 堅山:まぁメジャーなとこだとそうだけど、個人的にはXはヘヴィメタルというよりハードロックかな。 下川:そ……そうですよね! 堅山:うん。 堅山:どちらかと言えばXが尊敬してるバウワウってバンドがあるんだけど、俺はそっちの方が好きかな。 下川:あ、あー……ばう? 下川:ば、う、あ……。 堅山:バウワウ。 下川:バウワウ……バウワウですか。 下川:そっかー、そんなにいいんだ!また聞いてみます! 堅山:いや、人によると思うよ。 下川:……は、はい。 堅山:……あれ? 堅山:あ、なんかごめんね、分かんないよね、ごめん……。 下川:だ、大丈夫ですよ!気にしないで下さい! 堅山:いや、気にするよ。 堅山:せっかく聞いてくれるって言ってるのに人によるとか、ちょっとめんどくさいよね。うん、ダメだ、俺はめんどくさいな。死のう。 下川:大丈夫ですー! 下川:め、めんどくささなら私の趣味の方がめんどくさいですよ! 下川:私ダンスが趣味なんですけど、アップが全然出来ないんですよー! 下川:あ!でも他は出来るんですよ!コンビネーションとか前先生に褒めてもらって……。 堅山:ごめん、全然分かんないです。 下川:……そうですよね、仕事します。 堅山:あ、はい。そうですね、仕事しましょう。 下川:……はい。 : 0:片付け終わり、ひと段落 : 堅山:ごめんね、片付け手伝ってもらっちゃって。 下川:え、全然大丈夫ですよ!お役に立ててよかったです! 堅山:ありがとね、じゃあちょっと休んでおいで。 下川:はい!じゃあお先に! 堅山:はーい。 中川:堅山君。 堅山:はいぃ!? 中川:いや、そんなビックリしなくてもいいだろー! 堅山:あぁ、え?はい。 中川:なんだよ、連れないなー。 中川:ていうかさ、今日仕事終わったら(ボーリングのポーズをして)行かない? 堅山:あ、すいません。 堅山:今日は夜ちょっと予定入ってるんですよ。 中川:えー、昨日もじゃん。 中川:何があるの? 堅山:おじいちゃんのお見舞いに行かなくちゃいけなくて。 中川:……それなら、仕方ないな。 堅山:はい。 中川:じゃあまた行ける時教えてよー。 中川:一回は君と行ってみたかったんだけどなー。 堅山:また、行ける時は連絡しますー。 : 0:中川、帰っていく。 : 堅山:……はぁ。 石田:お前のじいちゃん元気だろ? 堅山:うわぁ!! 石田:ははは!なんだよその反応。 堅山:ビックリさせないでくださいよー! 堅山:いや、元気ですけど……正直ボーリング苦手なんですよね。 石田:苦手だからやんねーのか?だからお前はダメなんだよ。 石田:苦手なことから逃げてばっかで。 堅山:…はい、確かに。 堅山:逃げてばっかりですよね。 堅山:分かりました、次誘われたら行きます。 石田:次じゃおせーだろ。 石田:おーい!中川さーん! 堅山:うわあぁぁ!やめてくださいよ! 堅山:今はじいちゃん死にかけてる予定なんですから! 石田:ははは!!!ごめんごめん。 中川:呼んだ? 堅山:あ!えっと、違うんです、あの……。 石田:中川さん、ボーリング僕と行きましょうよ。 石田:今堅山君から聞いたんで。 中川:えー、やだよぉ。石田君強いから負けたくないじゃん。 石田:何子供みたいなこと言ってんすか、強いものに負けるって思ってちゃ絶対勝てないっすよ? 中川:あー、そういうこと言うか。 中川:じゃあ今日行こうか!絶対負けないからな! 石田:全力で打ち負かしに行きますよー! : 0:二人、帰っていく : 堅山:……はぁ、凄いな、石田さんは。 堅山:俺もあんな風になれたらな。 : 0:突如、空から声が聞こえる : 声:あー、へい、へい。 声:聞こえる?これ、聞こえてる? 堅山:え、なに!?なにこれ!? 堅山:え、ちょっと待って、誰!? 声:あ、聞こえてる?じゃあオッケーオッケー、はーい。 声:さて、今、君は願いごとをしましたね? 堅山:……は?しましたっけ?! 声:しましたよ。ほら、思い出してごらんなさい。 堅山:えーっと!すいません!今ここで起こってることでビックリしすぎて記憶ないです!! 声:ほら!さっき、なんか……あの、ね! 声:自分を変えたい的な?俺なんか的な!ね! 堅山:すいません!全然覚えてないです! 声:あー!もう!だからぁ!言ってたじゃん! 声:はぁ、凄いな、石田さんは。俺もあんな風になれたらな。って! 声:言ってたでしょ!? 堅山:あー……うっすらと!? 声:言ってたの!!だから来たの!私がここに!! 声:で!願いを叶えにきたわけなのよ!! 堅山:……はい。 声:あ、あんた信じてないんじゃない? 声:まぁ仕方ないよね、いきなりだしー。混乱しても仕方ないねー! 堅山:あの、そんな大っきい声出してたら多分みんなに聞こえてるんじゃないですかー? 声:なんでそこだけ冷静なんだよ。 声:まぁいいわ、お答えしましょう! 声:えー、今!私の声は、あなたにしか聞こえていませーん! 声:何故かというと!今時間が止まっているからでーす! 堅山:ということは、僕だけみんなより若干年をとるってことですか? 声:別に今そんなデメリットについて考える時じゃないでしょ!気にしなさんな! 声:さて、えーっと、どこまで話したっけ。 堅山:あと、どうやって時間止めてるんですか?時間って概念の問題かと思ってたんですけどなんか空間的に感じれるものとして動いてるんでしょうかー? 声:知らん!そんなもん!! 声:気になるなら後でウィキペディアみとけ! 声:違う!だからそんな話はどーでもいーんだよ! 声:本題だよ本題!! 声:あんたの願いを叶えにきたの! 堅山:あの、あなたは誰なんですか? 声:ふっふっふ、よくぞ聞いてくれました。 声:そう!やっと聞いてくれたわね、そういうことを何で一番に聞かないのかな!! 声:まぁ説教ばっかしてたら何も始まらないから教えてあげるわ。 声:私はね、神様です。 声:日頃よく頑張っているあなたの為に、天からあなたの願いを叶えにきたのです。 堅山:ほんとですか!ありがとうございます! 声:ふっ、真面目ね、でもそういうのはおいといて。 声:あなたの願いごと、石田ちゃんみたいになりたいって願い? 声:叶えてあげよう、はい叶えましょう。 声:しかーし! 声:ただ叶えるのでは意味がない! 声:あなたが自ら変わるという意思がなければどんなにいい能力を与えたとしても使いこなせはしない。 声:よって無意味、よって無価値! 声:そこでね、あなたには試練を与えようと思うの。これからあなたの身近な人達から、ちょいちょい試練を与えられます。 声:いいですね? 堅山:あのー、ふと言った言葉を勝手に願いだと思われた挙句、無価値とか言われて更に試練与えられるとかもう何か既にやる気ないんですけど。 声:……これからあなたの身近な人達から、ちょいちょい試練を与えられます。いいですね? 堅山:あ、もっかい言った。 堅山:なんかどうやってもやらなきゃダメみたいなんで、やります。 声:その意気よ。逃げてばっかりだったあなたの人生から生きる意味、溢れる活力、燃えたぎる情熱を取り戻してあげましょう! 堅山:後半精力剤のCMみたいになってましたけど、何となく分かりました。 堅山:とりあえず僕にはもう逃げ場はないという事ですね。 声:そう!いや、そんな風には言ってないけどまぁいいや!そういうこと! 声:だからね!あなたはこれから来るとてつもない試練を乗り越えるの、いいわね? 声:出来なきゃ、あなたの願いは叶えられない。分かった? 堅山:……でも確かに石田さんのようにカッコいい人になりたいっていうのは本当です。 堅山:分かりました、試練受けます! 声:はい、分かりました。 声:じゃあ、もうすぐ始まるから!頑張って!それじゃあね!ばーぃばー…… : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山:うわ…消えた。 堅山:何だったんだろ、なんか、夢だった気もするけど……。 堅山:どんな試練が来るんだろ── 中川:おい。 堅山:うわあぁぁい!? 中川:なんだよ、うわあぁぁいって。 中川:喜んでんのか怖がってんのかハッキリしろよ。 堅山:いや、いつも急に来るんでビックリして……! 中川:ところでさ、今日のボーリング、やっぱ止めにしたわ。 堅山:え、なんでですか? 中川:……実はさ、俺の息子が熱出ちゃって今日は帰ってやらなくちゃダメになってさ。 堅山:そうなんですか? 中川:まぁ、微熱だしほっときゃ治るって嫁には言ったんだけどさ、ほら。 中川:堅山君もおじいちゃんのお見舞い行くって聞いたし、戻ってやろうかなって。 堅山:あ、それがいいと思いますよ、戻ってあげてしっかり看病してあげてください。 中川:ありがとね、それじゃまた今度さそ── 声:ストーーップ!!! 堅山:うわあぁぁ!もうビックリするからやめてくださいって!!! 声:何してんの!?願い叶わないよ!? 堅山:何がですか?!何か悪いことしました!? 声:したわよ!!あんた相手の気持ち分かってんの?! 堅山:え? 堅山:いや、親なら子供の心配して当然でしょ?だから看病してあげてくださいって。 声:NOーーーー!!この人はそんなこと思ってません!! 声:あなた本当に話聞いてた?! 堅山:聞いてましたよ!! 堅山:子供さんが熱出ちゃって今日は止めるって話でしょ?! 声:ちがーう!!! 声:この人は子供に微熱が出たくらいじゃ心配しないのよ!! 声:言ってたでしょ!?微熱だしほっときゃ治るって!ってことはよ!!用事さえあれば帰らねぇよって奥さんに言ってんのよこの人は!! 声:でもあんたがおじいちゃんの嘘ついたせいで帰らなきゃダメな感じがしたから、あんたをもう一回誘ってみて、あんたが来れるなら行こうって寸法だったのよ! 堅山:……分かるわけないでしょ!! 堅山:なんですか!その子供みたいな考え方は!! 声:それはこの人の性格なんだから直接言いなさいよ!ほれ! 中川:うから。次は絶対来── 堅山:うわあぁぁ!って急に言えるわけないでしょーが!! 声:なんだよ、直接言わせてあげたのに。 堅山:もうちょっと俺の気持ちもわかってよ! 声:はいはい、とりあえずこの人はこういう性格で、とにかく超正直だから遠回しに考えないこと! 声:それを踏まえてもう一回やってみる? 堅山:え?また出来るんですか? 声:当たり前じゃない、神様なんだから。 声:時間を止められるなら時間を戻すことだって可能よ。 堅山:あ、じゃあもう一回お願いします! 声:はい、それじゃ321どん。 堅山:うわっ!だから急なんですよ! 堅山:ってか、時間戻ったのかな? 中川:おい。 堅山:うわあぁぁい!! 中川:なんだよ、うわあぁぁいって。 中川:喜んでんのか怖がってんのかハッキリしろよ。 堅山:……戻ってる!! 中川:はぁ?戻ってるって何? 堅山:あ!いえ!何でもないです! 中川:あ、そう。ところでさ、今日のボーリング、やっぱ止めにしたわ。 堅山:え、息子さんが熱出たからですか? 中川:実は……いや、そう。なんで知ってんだよ。 堅山:あ!いや、なんかそうじゃないかなーって! 中川:あぁ、そう。 中川:まぁそうなんだよ、だから今日は帰ってやらなくちゃダメになっちゃって。 堅山:……いや、ボーリング行きましょう。 中川:まぁ、微熱だしほっときゃ治るって……え?マジで? 堅山:はい、行きましょう。 中川:え、お、おう……いや、ってかお前じいちゃんのお見舞いは? 堅山:あぁ、なんか、さっき退院しました。 中川:早すぎんだろそれは流石に。 堅山:いえ、退院したんで。 中川:えぇ……まぁ、お前が言うなら別にいいけど。 中川:え、本当にいいのか? 堅山:はい、大丈夫です。 中川:……そっか、それならいっか。 中川:まぁ、ボーリング行けるならな!よし!行こう! 中川:はは!見直したぞ!じゃあ仕事終わったらまたあとでなー! 堅山:はーい。 : 0:少し沈黙 : 声:ごーかく!!!! 堅山:来ると思った。 声:やれば出来るじゃない!! 声:どうなのよ!え!? 声:やってみたら案外様になったんじゃない? 堅山:ええ。まぁ息子さん熱出てるのに見直されたのは正直どうなのかと思いましたが、なんか喜んでもらえたのはちょっと嬉しかったです。 声:その調子よ! 声:案外あんたいけるじゃない!じゃあ早速次行こう! 堅山:あの。 声:え、何? 堅山:ふと疑問に思ったんだけど、なんで俺の願い叶えようと思ったの? 声:んー、まぁそれはおいといて、とりあえず次の試練よ!それぇ! 堅山:え、ちょっ……! 堅山:毎回急だろ……次は誰だ? 下川:あれ?堅山さん、何してるんですか? 堅山:あ、下川さんか。 堅山:え、なにって?いや、何って……何、何……なに、してると思う? 下川:え!?えーっと……? 下川:しいて言えば、お話? 堅山:……そうだね、そう、今会話してるからね、そうだね 。 下川:ですよね……えーっと……。 堅山、下川:(同時に)あの。 堅山:あ、お先に……。 下川:あ!いえ、お先に……。 堅山:あ、えっと……ごめん。特に何も言おうとはして無かったんだけど……。 下川:あ、そ、そうなんですね。 下川:私も、特には……。 堅山:……。 下川:……あ、じゃあ。 堅山:あ、これは違った!ヤバいえっと……!し、下川さん!! 下川:は、はい? 堅山:あ、えっと、何か用だった? 下川:あ!そ、そうなんです! 下川:こっちもやることなくなっちゃって! 下川:何かやることないですか? 堅山:えっと、こっちもないんだよね。 堅山:ちょっと休憩しよっか。 下川:分かりました、休憩ですね! 堅山:よっと……座る? 下川:え、いいんですか? 堅山:いいよ、どうぞ。 下川:ありがとうございます! 下川:あ、あの。 堅山:どうしたの? 下川:あ、その……私って、空気読めないじゃないですか。 堅山:え、そんなこと、ないと思うけど。 下川:……さっきも、石田さんと作業してて言われたんですけど、私って普通にしてる時も踊ってるように見えるって言われたんです。 堅山:あー、確かに。 下川:それで、遊んでんじゃねーよって、笑いながらですけど、言われちゃって……。 堅山:それは、多分石田さんなりの仲良くなりたい表現じゃないかな。 下川:え!そうなんですか? 堅山:うん。石田さんってちょっと素直じゃないとこあるから、多分そうだよ。 下川:そうなんだぁー……よかったぁ! 下川:私凄く呆れられたんじゃないかって心配してたんですよ! 堅山:大丈夫だよ。あの人は仲間を悪く言う人じゃないから。 下川:よかった……。 下川:……私、堅山さんに話せてよかったです。 堅山:え? 下川:なんか、堅山さんにだと、私も凄く素直になれるというか……堅山さんは、凄く落ち着きます。 堅山:……ありがと。 下川:……あ、もうそろそろ戻りますか! 堅山:そ、そうだね。 下川:さぁ、気分も晴れたし、仕事しますか!それとも、踊っちゃいます!? 堅山:あ、仕事してください。 声:ストーーーップ!!!! 堅山:え? 声:バッカじゃねぇの!? 声:何が「あ、仕事してください。」だよ!! 声:空気読めよ空気!! 堅山:え!い、いや……え、何が悪かったの? 声:お前「仕事しますか、踊りますか」って選択肢あったら普通は空気読んで、じゃあ、踊っちゃおうか!とか言うだろ!! 声:なんだよ!「あ、仕事してください。」って!! 声:言った方恥ずかしくて死ぬわアホんだら!! 堅山:そ、そういうもんなの?? 声:決まってんだろアホか! 声:空気を和ませたくて踊りますかって聞いてくれてんだから何か乗っかってやれよ!はい321どん! 堅山:うわっ! 下川:え? 堅山:え?いや、なんでもないよー?急だな、あの野郎。で、なんだっけ? 下川:え、あ、その……堅山さんに話せてよかったって話でした。 堅山:あ、ほんと? 堅山:俺も話聞けて凄く嬉しかったよ。 下川:ほんとですか!嬉しい! 下川:……なんか、堅山さんにだと、私も凄く素直になれるというか……堅山さんは、凄く落ち着きます。 堅山:……ありがとね。 下川:……あ、もうそろそろ戻りますか! 堅山:そうだね。 下川:さぁ、気分も晴れたし、仕事しますか!それとも、踊っちゃいます? 堅山:きた。 下川:え? 堅山:え?なんでもないよ。ってか、踊っちゃいますか! 下川:……マジですか!わぁい!!踊っちゃいましょう! 堅山:いえーい!! : 0:数分後 : 堅山:これが正解なんだ。 声:そうだよ、これが空気を読むってことだよ。 声:お前に足りないもんだ。 堅山:……なんかわかってきた気がする。 声:そうか、よかったよ。 堅山:踊りに誘われたら、乗っかる。 声:……まって。踊り限定じゃないからね?全般的に空気を読むって話だから。 堅山:あぁ、そういうことか。 堅山:よし!分かりました!ありがとうございます! 声:よし、じゃあ次にチャレンジしようか、321どん! 堅山:…慣れてきたな。さて、次は誰だ? 三田:堅山さん! 堅山:あ、次は三田君か。どうしたの? 三田:ニックネーム付けてもらいました! 堅山:お、誰にだ? 三田:ニックネーム付けてもらいました! 堅山:……お、どういうことだ? 三田:ニックネームを、付けてもらいました! 堅山:いや、言い方とかじゃなくてね……うん、いいや。どんなニックネーム付けてもらったの? 三田:サンダー。 堅山:……サンダー? 三田:サンダー。 堅山:……サンダー。 三田:三田だから、サンダー。 堅山:……三田だからサンダー。 三田:サンダー。 堅山:ねぇ、誰に付けてもらったの? 三田:じゃ! : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山:え、何!?何だったの今のは!? 声:ごめん、あの子にも試練やらせるために頭の中に指令送ったんだけど、なんか違うのやりはじめたわ……。 堅山:え、じゃあ何?俺はこれクリアでいいの?何なの? 声:あー、どうしよ。何もしてないけど……いいや!クリア!! 堅山:あ、やった!なんかよく分からないけど! 声:何だよあの子、超怖ぇ。何で神様の意思に背けるの? 堅山:スゲェことしてんな。 声:もういいや!最後の試練321どん! : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山:……さぁ、次は誰だろ。 石田:おっす。 堅山:え、石田さん!? 石田:え、俺だけど、どうした? 堅山:い、いや!何でもないですけど……どうしました? 石田:いや、別に。 石田:あ、そういやお前ボーリング行くって言ったんだな! 堅山:あ、はい!もう嘘はやめました! 石田:ははは!その方がいいよ。 石田:中川さん喜んでたし、よかったじゃん。 堅山:……はい! 石田:そういえばお前夢とかあんの? 堅山:え、夢ですか?夢は……はい、あります。 石田:そうなんだ、何? 堅山:それは……。 石田:うん。 堅山:……俺は、石田さんを超えることです。 石田:は?俺を超えるって……ははは!マジで言ってんの! 堅山:……マジです。 石田:……そうか、おう、超えろ。 堅山:……言われなくても。 石田:でも、そのままじゃいくら頑張っても超えられねぇぞ。 堅山:え? 石田:当たり前だよ、それ俺の真似じゃん。 堅山:いや、そんなこと……だって俺、石田さん程── 石田:俺ほど悪態つけないってか? 堅山:いや!そんなこと! 石田:ははは!そうだよな!俺ほど悪態ついたら色んな奴に嫌われるぞ! 堅山:石田さんみたいに明るかったらそんなこと……。 石田:そんなことねぇよ。 石田:俺は最初の頃、悪態ついてたことでみんなから嫌われてたよ。 石田:会社の偉い人からも、同僚からも。 石田:それこそ中川さんからもだぞ? 堅山:そうなんですか? 石田:そうだよ。 石田:それでも俺は悪態をつき続けた。 石田:何でだと思う? 堅山:えっと……その方が強くなれるからとか……? 石田:違ぇよ。 石田:単純にそれしか出来ないからだよ。性格だよ、性格。 石田:俺もこんな性格じゃなきゃ、もっと早く出世できたのにな、はは。 堅山:そう……なんですか。 堅山:でも心が強いから出来ることですよね。 石田:俺が心強いわけねぇだろ。弱いから悪態ついて、自分守ってんだよ。 石田:悪態つけば、それ以上は悪く思われないからさ。 堅山:……。 石田:でも、それがいいとは思わないよ。 石田:だけど、それしか出来ない。 石田:とんでもなく不器用なんだ、俺って。 堅山:でも── 石田:でも、自分より強い奴に負けると思ってたら勝てないんだ。 だから俺になろうとするな、自分をもっと貫き通せ。 堅山:自分をもっと……。 石田:でも、自分を貫き通す強さはもう持ってるだろうからさ。 石田:後はそれをしっかり見つめ続けるだけだよ。 石田:それが出来たら、俺なんかすぐ超えられるよ、先輩。 堅山:石田さん……。 石田:頑張ってくださいよ、俺も先輩超えますから。 : 0:暗転 : 0:明転 : 堅山M:それから、あの声は聞こえなくなり、俺は普通の日常を何日か続けていた。 堅山M:周りもいつも通り。 堅山M:中川さんは忙しくなるとイライラし、下川さんは空回り、石田さんもいつもと変わらず俺を堅山君と呼んでいる。 堅山M:でもこれでいいと思う。俺は俺のままで、このままの俺で行く。 堅山M:それしか出来ないから、そのように行くんだと分かった。 : 堅山:石田さん。 石田:ん? 堅山:今電話で、配送業者さんが今日も間に合いそうにないって言ってるんですけど、どうします? 石田:またかよ、ちょっと電話変わって。 堅山:はい。 石田:もしもし、石田です、お世話になります。こちらに着くのは何時頃になりそうですか? 石田:……2時半? 石田:あ、いえいえ、はい。 石田:そうしていただけると助かります。 石田:はい、はーい、失礼します。 石田:……やるじゃん。 堅山:でしょ? : 堅山M:俺は俺のままだけど、これでいい。 : 0:暗転 : 0:ドンガラガッシャーン : 0:明転 : 三田:荷物拾うの手伝ってくださーい! 中川:だから一個ずつ運べって!! 堅山M:でもこいつは早く変えないと。 end