台本概要

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タイトル 魔法使いと幸福人の苦悩
作者名 あ~るさん。  (@Rbeats4250)
ジャンル ミステリー
演者人数 2人用台本(男1、不問1) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 昔書いた台本ぱーとに。
なんか好きな妄想キャラ、「魔法使い」シリーズ。
男か女か、善人か悪人か、人間かそれとも…?
そんな不思議な存在です。

自由に演じてもらえたら嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
浩志 15 こうし。有名な俳優。(語り)と兼役。
魔法使い 不問 17 まほうつかい。男女不明な不思議で、綺麗で、魅力ある存在。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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浩志:はぁ…はぁ…はぁ… 浩志:ここまで来れば…もう、あいつも……!!! 浩志: 浩志:(空白) 浩志: 浩志: 浩志(語り):俺は、俳優として芸能界で生きてきた。 浩志(語り):そこそこ、いや、国民的タレント兼俳優として約20年、日々の仕事をこなしていた。 浩志(語り):色々なランキングで1位を総なめ。順風満帆だった…… 浩志(語り):だが、事件は起きた。今の妻が不倫をしたのだ。 浩志(語り):問い詰めて話を聞いてみれば、40過ぎた自分に魅力を感じなくなり、若い男につられるまま肉体関係まで発展していたらしい。 浩志(語り):今まで必死に働いて、頑張って。報われた先がこれだ。 浩志(語り):もう怒りを通り越して、なんにも感じなかった。 浩志(語り):でも、そんな中自分に新しい考えが浮かんで来たんだ。 浩志(語り):今、この瞬間が人生のピークなのではないか? 浩志(語り):今後、歳とともに体も頭も衰えていく。芸能界の世界は、1年後自分の席あるかどうか分からない。 浩志(語り):この瞬間こそ、幸福の絶頂。 浩志(語り):今死ねれば、いいのではないか…? 浩志(語り):そんな身勝手な思考、どこか人の道から外れたような狂気じみた考えを巡らせていれば、混乱してくる。 浩志(語り):普段飲まない酒を飲むため、家近くのバーに入った。人の少ない、こじんまりとしたバーだった。 浩志(語り):このくらいの静かさの方が、今の自分には合っていた。一口、二口。ゆっくり、ゆっくり… 浩志(語り):アルコールの回る感覚と、慣れない味が染みわたってくる。 浩志(語り):そんな時だった。 浩志(語り): 魔法使い:浮かない顔してますね。 魔法使い: 浩志(語り):いつの間にか隣にいた人。 浩志(語り):人、というのには理由がある。 浩志(語り):男か女か、わからなかったからだ。 浩志(語り):その容姿は、男性的なのか、女性的なのか。 浩志(語り):漫画でよく見るような雰囲気のある、ミステリアスな…そんな初対面だった。 浩志(語り):だが、惹き込まれた。彼の灯りのない瞳に。 浩志(語り): 魔法使い:…どうしました? 浩志:あ、…申し訳ない、つい… 魔法使い:いえいえ……どこか、悩んでいるような、辛そうな、それでいて、すっきりしたような。 魔法使い:ぐちゃぐちゃしてる、そんな私の好きな顔をしてたもので。つい、声をかけてしまったんですよ。 魔法使い: 浩志(語り):言動も、行動も不思議だった。 浩志(語り):しかも話を聞けば、魔法使いとも言っていた。馬鹿馬鹿しいとも思ったが、彼の雰囲気は、言葉だけで信憑性を持たせていた。 浩志(語り):そして、感情のままに口が開く、自分の悩みを…そのまま吐き出してしまうように… 浩志: 魔法使い:…ふむ、それは災難ですね。 浩志:まぁ、でも…それで死んでもいいかもしれないって思えたんだ。 浩志:今のこの瞬間が…一番幸せだって。 浩志:名誉だって、地位だって、財産だって貰えたし、それでいて守るべきものもない。 浩志:俺に出来る生き方は、もう達成できたんだ。 魔法使い:だから、今死にたいと…ね。もったいないとおもいますよ? 浩志:いや…元々長生きには興味なかったんだ。人間、どう生きて、どう死ぬか…そう思わないか? 魔法使い:まぁ、人間それぞれ考え方があっていいと思いますよ。 浩志:もう俺は充分生きた。あとは楽に死ぬだけ… 浩志:これから長々と生きるのも、疲れるだけだしな。 魔法使い:…それが貴方の悩み事、ですか? 浩志:え? 魔法使い:それなら…私の魔法でどうにかしてあげましょうか? 魔法使い:綺麗さっぱりと…ね。自殺するのも、気が引けるでしょ? 浩志:……いやいやいや。こんな馬鹿らしいお願い…しかも初対面の人に、そんなこと… 魔法使い:大丈夫ですよ。私、そういうとこもしっかりするんで。 魔法使い:後のことは心配せず…いかがです? 浩志(語り):こんなのあり得ない。魔法なんて存在するわけない。 浩志(語り):なのに、このまま断れない…不思議な彼、もしくは彼女の魅力に惹かれてしまっているようだった。 浩志(語り):私は、その首を縦に振った。 浩志:……なら…本当にお願いしても…いいのか? 魔法使い:ええ。では、改めて……おほん。 魔法使い:私はお喋り好きな魔法使い。良かったら、悩み事を解決してあげよう。 魔法使い:何か、悩み事はあるかい? 浩志:……なんなんだい、それ。 魔法使い:契約、です。雰囲気あっていいと思いませんか? 魔法使い: 魔法使い: 浩志(語り):今考えれば、なんでお願いしたんだろうか。こんなバカげた空想を。 浩志(語り):だが、本当に叶えてくれるような気がして…酔いも相まって悩み事を伝えてしまった。 浩志(語り):彼が言うには、1週間後…すべてが整うらしい。 浩志(語り):その次の日。おぼろげな記憶の中、魔法が本物だということを知る。 浩志(語り):急に仕事がすべてキャンセルになった。しかも、1週間先まで。 浩志(語り):こんなこと、一度もなかったのに…… 浩志(語り):俺は、その1週間を身辺整理にあてようと考えた。 浩志(語り):しかし、意外とあっさり終わるものだった。 浩志(語り):後5日。少し外へ出てみた。 浩志(語り):前はあんな変装しててもキャーキャー言われてたが、誰からも話しかけられない。少し寂しいが、気は楽だ。 浩志(語り):余生を過ごす…ということは、こういうことなのだろうか。 浩志(語り):あと3日。急激な不安に襲われる。 浩志(語り):…本当に、死ぬのか…?これは、夢じゃないのか? 浩志(語り):あれほど望んでいた。楽になりたいと、願っていた。 浩志(語り):これ以上生きても、今ほど幸せな時、環境はない。人生、やり切った。そのはずなのに… 浩志(語り):俺はあのバーへと向かった。あの魔法使いに会えるのではないかと考えて…… 浩志(語り):そこには、あの魔法使いはいなかった。しかし、店主はどうやら手紙を預かってるらしい。 浩志(語り):その中身は……… 浩志(語り): 浩志(語り): 浩志(語り): 魔法使い:『現実、ですよ。夢ではありません。 魔法使い:大丈夫、あなたが死んでも、不慮の事故にしてあげます。 魔法使い:皆、あなたの死を思って泣いてくれますよ。 魔法使い:良かったですね?死んだ後も幸せ者じゃないですか。 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い:貴方は三日後に死にます。 魔法使い:楽しみに、しててくださいね。』 魔法使い: 魔法使い: 浩志(語り):俺は逃げた。生きたい、そう願った。 浩志(語り):なぜ死にたいと考えた!?なぜ!? 浩志(語り):どう生きて、どう死ぬか!?そんなもの、関係ない!生きていること自体が幸福なのにそう生きるかなんて関係ない! 浩志(語り):長生きに興味がない?そんなのただ聞こえがいいだけ 浩志(語り):ただの言い訳だ…人生が充実してると勘違いした! 浩志(語り):人生という限られた時間の中で、少しずつ幸せを感じていくんだ! 浩志(語り):それなのに…それなのに…!!!!! 浩志(語り): 浩志(語り): 浩志(語り): 0:海外のとあるホテル 浩志:はぁ…はぁ…はぁ……! 浩志:ここまで、来れば…あいつだって…わからないはずだ… 浩志:魔法使い?なに言ってんだ…ただの不気味なやつじゃねえか… 浩志:…まさか…こんなところまで…… 浩志: 浩志: 浩志: 魔法使い:きちゃうんですよ。それが。 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 浩志:っ………!!!く…ぁ…(体と口の自由が利かなくなる) 魔法使い:へぇ…綺麗ねぇ。良い死に場所だと思いますよ? 魔法使い:あらら。どうしたんです?そんなに怖がって、汗までかいて。 浩志:あ˝……ぐ……っ!!! 魔法使い:さて。予定通り殺しますね。失礼しまーす…… 魔法使い:(鼻と口を押える) 浩志:んーーーーーー!!!っ………! 浩志:(魔法使いのセリフ中も小さく呻き続ける) 魔法使い:ようやくわかりましたか?生きていることがどれだけ幸せか。 魔法使い:貴方は死ぬ、ということがどんなことか分かっていない。 魔法使い:幸せ者にこそ、死ぬことがわからなくなる。恐れるものがなくなるから。 魔法使い:死ぬ、というのは、貴方自身を認識できなくなるという事。 魔法使い:認識できない、ということは…貴方は生きていないと同等なのです。 魔法使い:ふふふ…どうです・死を感じるということは、無抵抗のまま…何もできず、無力に死に近づくこと。 魔法使い:誰かの言ってる武勇伝なんて、指動かせるくらいの抵抗はできるでしょ?それは死を感じるとは言わない。 魔法使い:こうやって、すこしずつ…無力に…ね。そして段々1秒1秒が尊く感じてくる…… 浩志:(だんだん弱ってくる) 魔法使い:おっと。もうじき、意識が落ちますか?安心してください。 魔法使い:死ぬその時まで、付き合ってあげますよ。 魔法使い: 魔法使い:あー、そうそう。一つ、伝えておきますね。 魔法使い: 魔法使い:私、不気味な奴でもなんでもないですよ。 魔法使い:だって、人間じゃないんで。 魔法使い:人間じゃないのに、奴、はおかしいでしょ? 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い:おはよう、こんにちは、こんばんは。 魔法使い:私はお喋り好きな魔法使い。今少し海外旅行に行ってきて疲れたので、少しだけお喋りを。 魔法使い:…ん?今手に持ってるのは何かって? 魔法使い:紫のバーベナ、です。いやぁ、綺麗ですね。 魔法使い: 魔法使い:えっと。私が花が好きなのには、いくつか理由がありまして。その一つが、儚さです。 魔法使い:花は儚い。短い期間に、咲き、繁殖し、そして散る。 魔法使い:だからこそ愛を注ぎ、少しでも長く咲けるように、綺麗になるように世話したくなるんです。 魔法使い:花の一生も、人間の人生も同じです。いずれ無くなる命を、尽きるまで世話をする。 魔法使い:段々色あせたり、触れただけで朽ちたり、萎れたり…そうやって過去の綺麗な姿を羨む。 魔法使い:これも味だと喜ぶ人もいるでしょう。満足するか、後悔するか、それは死ぬ寸前まで分からない。 魔法使い:それまでの過程が、見てる側も世話する側も楽しい…はずなんですけど。 魔法使い:たった100年ぽっちしか生きれない人間が?死ぬ生きるを?人間如きが決める? 魔法使い:ははは!冗談にしては笑えない…笑っちゃったけど。 魔法使い: 魔法使い:まぁとにかく。長く生きましょうね。自殺は論外。 魔法使い:どんなに苦しくたって、明日は来ます。例外はありますけど。 魔法使い:本当に死にたくなったときは、誰かのために死んでください。 魔法使い:それが、老衰以外で最も幸福な死に方です。 魔法使い:幸福じゃなくても、僕はニヤニヤ出来るんで、どっちにしても嬉しいってことで。 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い:身勝手に死ぬとか言わないでくださいね。 魔法使い:長生きが眼中にない人は、目標も守るべきものも自ら捨ててるつまらない人間です。 魔法使い:決して、そうならないように。 魔法使い: 魔法使い:そうじゃないと、その命。貰いに行きますよ? 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い:

浩志:はぁ…はぁ…はぁ… 浩志:ここまで来れば…もう、あいつも……!!! 浩志: 浩志:(空白) 浩志: 浩志: 浩志(語り):俺は、俳優として芸能界で生きてきた。 浩志(語り):そこそこ、いや、国民的タレント兼俳優として約20年、日々の仕事をこなしていた。 浩志(語り):色々なランキングで1位を総なめ。順風満帆だった…… 浩志(語り):だが、事件は起きた。今の妻が不倫をしたのだ。 浩志(語り):問い詰めて話を聞いてみれば、40過ぎた自分に魅力を感じなくなり、若い男につられるまま肉体関係まで発展していたらしい。 浩志(語り):今まで必死に働いて、頑張って。報われた先がこれだ。 浩志(語り):もう怒りを通り越して、なんにも感じなかった。 浩志(語り):でも、そんな中自分に新しい考えが浮かんで来たんだ。 浩志(語り):今、この瞬間が人生のピークなのではないか? 浩志(語り):今後、歳とともに体も頭も衰えていく。芸能界の世界は、1年後自分の席あるかどうか分からない。 浩志(語り):この瞬間こそ、幸福の絶頂。 浩志(語り):今死ねれば、いいのではないか…? 浩志(語り):そんな身勝手な思考、どこか人の道から外れたような狂気じみた考えを巡らせていれば、混乱してくる。 浩志(語り):普段飲まない酒を飲むため、家近くのバーに入った。人の少ない、こじんまりとしたバーだった。 浩志(語り):このくらいの静かさの方が、今の自分には合っていた。一口、二口。ゆっくり、ゆっくり… 浩志(語り):アルコールの回る感覚と、慣れない味が染みわたってくる。 浩志(語り):そんな時だった。 浩志(語り): 魔法使い:浮かない顔してますね。 魔法使い: 浩志(語り):いつの間にか隣にいた人。 浩志(語り):人、というのには理由がある。 浩志(語り):男か女か、わからなかったからだ。 浩志(語り):その容姿は、男性的なのか、女性的なのか。 浩志(語り):漫画でよく見るような雰囲気のある、ミステリアスな…そんな初対面だった。 浩志(語り):だが、惹き込まれた。彼の灯りのない瞳に。 浩志(語り): 魔法使い:…どうしました? 浩志:あ、…申し訳ない、つい… 魔法使い:いえいえ……どこか、悩んでいるような、辛そうな、それでいて、すっきりしたような。 魔法使い:ぐちゃぐちゃしてる、そんな私の好きな顔をしてたもので。つい、声をかけてしまったんですよ。 魔法使い: 浩志(語り):言動も、行動も不思議だった。 浩志(語り):しかも話を聞けば、魔法使いとも言っていた。馬鹿馬鹿しいとも思ったが、彼の雰囲気は、言葉だけで信憑性を持たせていた。 浩志(語り):そして、感情のままに口が開く、自分の悩みを…そのまま吐き出してしまうように… 浩志: 魔法使い:…ふむ、それは災難ですね。 浩志:まぁ、でも…それで死んでもいいかもしれないって思えたんだ。 浩志:今のこの瞬間が…一番幸せだって。 浩志:名誉だって、地位だって、財産だって貰えたし、それでいて守るべきものもない。 浩志:俺に出来る生き方は、もう達成できたんだ。 魔法使い:だから、今死にたいと…ね。もったいないとおもいますよ? 浩志:いや…元々長生きには興味なかったんだ。人間、どう生きて、どう死ぬか…そう思わないか? 魔法使い:まぁ、人間それぞれ考え方があっていいと思いますよ。 浩志:もう俺は充分生きた。あとは楽に死ぬだけ… 浩志:これから長々と生きるのも、疲れるだけだしな。 魔法使い:…それが貴方の悩み事、ですか? 浩志:え? 魔法使い:それなら…私の魔法でどうにかしてあげましょうか? 魔法使い:綺麗さっぱりと…ね。自殺するのも、気が引けるでしょ? 浩志:……いやいやいや。こんな馬鹿らしいお願い…しかも初対面の人に、そんなこと… 魔法使い:大丈夫ですよ。私、そういうとこもしっかりするんで。 魔法使い:後のことは心配せず…いかがです? 浩志(語り):こんなのあり得ない。魔法なんて存在するわけない。 浩志(語り):なのに、このまま断れない…不思議な彼、もしくは彼女の魅力に惹かれてしまっているようだった。 浩志(語り):私は、その首を縦に振った。 浩志:……なら…本当にお願いしても…いいのか? 魔法使い:ええ。では、改めて……おほん。 魔法使い:私はお喋り好きな魔法使い。良かったら、悩み事を解決してあげよう。 魔法使い:何か、悩み事はあるかい? 浩志:……なんなんだい、それ。 魔法使い:契約、です。雰囲気あっていいと思いませんか? 魔法使い: 魔法使い: 浩志(語り):今考えれば、なんでお願いしたんだろうか。こんなバカげた空想を。 浩志(語り):だが、本当に叶えてくれるような気がして…酔いも相まって悩み事を伝えてしまった。 浩志(語り):彼が言うには、1週間後…すべてが整うらしい。 浩志(語り):その次の日。おぼろげな記憶の中、魔法が本物だということを知る。 浩志(語り):急に仕事がすべてキャンセルになった。しかも、1週間先まで。 浩志(語り):こんなこと、一度もなかったのに…… 浩志(語り):俺は、その1週間を身辺整理にあてようと考えた。 浩志(語り):しかし、意外とあっさり終わるものだった。 浩志(語り):後5日。少し外へ出てみた。 浩志(語り):前はあんな変装しててもキャーキャー言われてたが、誰からも話しかけられない。少し寂しいが、気は楽だ。 浩志(語り):余生を過ごす…ということは、こういうことなのだろうか。 浩志(語り):あと3日。急激な不安に襲われる。 浩志(語り):…本当に、死ぬのか…?これは、夢じゃないのか? 浩志(語り):あれほど望んでいた。楽になりたいと、願っていた。 浩志(語り):これ以上生きても、今ほど幸せな時、環境はない。人生、やり切った。そのはずなのに… 浩志(語り):俺はあのバーへと向かった。あの魔法使いに会えるのではないかと考えて…… 浩志(語り):そこには、あの魔法使いはいなかった。しかし、店主はどうやら手紙を預かってるらしい。 浩志(語り):その中身は……… 浩志(語り): 浩志(語り): 浩志(語り): 魔法使い:『現実、ですよ。夢ではありません。 魔法使い:大丈夫、あなたが死んでも、不慮の事故にしてあげます。 魔法使い:皆、あなたの死を思って泣いてくれますよ。 魔法使い:良かったですね?死んだ後も幸せ者じゃないですか。 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い:貴方は三日後に死にます。 魔法使い:楽しみに、しててくださいね。』 魔法使い: 魔法使い: 浩志(語り):俺は逃げた。生きたい、そう願った。 浩志(語り):なぜ死にたいと考えた!?なぜ!? 浩志(語り):どう生きて、どう死ぬか!?そんなもの、関係ない!生きていること自体が幸福なのにそう生きるかなんて関係ない! 浩志(語り):長生きに興味がない?そんなのただ聞こえがいいだけ 浩志(語り):ただの言い訳だ…人生が充実してると勘違いした! 浩志(語り):人生という限られた時間の中で、少しずつ幸せを感じていくんだ! 浩志(語り):それなのに…それなのに…!!!!! 浩志(語り): 浩志(語り): 浩志(語り): 0:海外のとあるホテル 浩志:はぁ…はぁ…はぁ……! 浩志:ここまで、来れば…あいつだって…わからないはずだ… 浩志:魔法使い?なに言ってんだ…ただの不気味なやつじゃねえか… 浩志:…まさか…こんなところまで…… 浩志: 浩志: 浩志: 魔法使い:きちゃうんですよ。それが。 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 浩志:っ………!!!く…ぁ…(体と口の自由が利かなくなる) 魔法使い:へぇ…綺麗ねぇ。良い死に場所だと思いますよ? 魔法使い:あらら。どうしたんです?そんなに怖がって、汗までかいて。 浩志:あ˝……ぐ……っ!!! 魔法使い:さて。予定通り殺しますね。失礼しまーす…… 魔法使い:(鼻と口を押える) 浩志:んーーーーーー!!!っ………! 浩志:(魔法使いのセリフ中も小さく呻き続ける) 魔法使い:ようやくわかりましたか?生きていることがどれだけ幸せか。 魔法使い:貴方は死ぬ、ということがどんなことか分かっていない。 魔法使い:幸せ者にこそ、死ぬことがわからなくなる。恐れるものがなくなるから。 魔法使い:死ぬ、というのは、貴方自身を認識できなくなるという事。 魔法使い:認識できない、ということは…貴方は生きていないと同等なのです。 魔法使い:ふふふ…どうです・死を感じるということは、無抵抗のまま…何もできず、無力に死に近づくこと。 魔法使い:誰かの言ってる武勇伝なんて、指動かせるくらいの抵抗はできるでしょ?それは死を感じるとは言わない。 魔法使い:こうやって、すこしずつ…無力に…ね。そして段々1秒1秒が尊く感じてくる…… 浩志:(だんだん弱ってくる) 魔法使い:おっと。もうじき、意識が落ちますか?安心してください。 魔法使い:死ぬその時まで、付き合ってあげますよ。 魔法使い: 魔法使い:あー、そうそう。一つ、伝えておきますね。 魔法使い: 魔法使い:私、不気味な奴でもなんでもないですよ。 魔法使い:だって、人間じゃないんで。 魔法使い:人間じゃないのに、奴、はおかしいでしょ? 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い:おはよう、こんにちは、こんばんは。 魔法使い:私はお喋り好きな魔法使い。今少し海外旅行に行ってきて疲れたので、少しだけお喋りを。 魔法使い:…ん?今手に持ってるのは何かって? 魔法使い:紫のバーベナ、です。いやぁ、綺麗ですね。 魔法使い: 魔法使い:えっと。私が花が好きなのには、いくつか理由がありまして。その一つが、儚さです。 魔法使い:花は儚い。短い期間に、咲き、繁殖し、そして散る。 魔法使い:だからこそ愛を注ぎ、少しでも長く咲けるように、綺麗になるように世話したくなるんです。 魔法使い:花の一生も、人間の人生も同じです。いずれ無くなる命を、尽きるまで世話をする。 魔法使い:段々色あせたり、触れただけで朽ちたり、萎れたり…そうやって過去の綺麗な姿を羨む。 魔法使い:これも味だと喜ぶ人もいるでしょう。満足するか、後悔するか、それは死ぬ寸前まで分からない。 魔法使い:それまでの過程が、見てる側も世話する側も楽しい…はずなんですけど。 魔法使い:たった100年ぽっちしか生きれない人間が?死ぬ生きるを?人間如きが決める? 魔法使い:ははは!冗談にしては笑えない…笑っちゃったけど。 魔法使い: 魔法使い:まぁとにかく。長く生きましょうね。自殺は論外。 魔法使い:どんなに苦しくたって、明日は来ます。例外はありますけど。 魔法使い:本当に死にたくなったときは、誰かのために死んでください。 魔法使い:それが、老衰以外で最も幸福な死に方です。 魔法使い:幸福じゃなくても、僕はニヤニヤ出来るんで、どっちにしても嬉しいってことで。 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い:身勝手に死ぬとか言わないでくださいね。 魔法使い:長生きが眼中にない人は、目標も守るべきものも自ら捨ててるつまらない人間です。 魔法使い:決して、そうならないように。 魔法使い: 魔法使い:そうじゃないと、その命。貰いに行きますよ? 魔法使い: 魔法使い: 魔法使い: