台本概要
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タイトル | 藍色はやがて緋色に染まる |
---|---|
作者名 | ぴー (@p_kouhai_chan) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 3人用台本(男1、女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
とある大学の講義中に常に一人で受講している男子学生の洋輝を見つけるアカリ。 友人のキエに止められるがノートを見せてもらうために話しかけることで接点を持ち始める。 その後食事に誘い洋輝は色覚障碍者であることを知る。 だがアカリの一言で洋輝を傷つけてしまい事態は急変する。 赤が見えることで苦しむアカリ 赤が見えないことで苦しむ洋輝 そんな二人を結び付けたものは意外なものであった。 アレンジアドリブご自由に。 ですが誹謗中傷・自作発言はおやめください。 修正等はその都度行います。 また作者の励みになりますので感想や使用時にご連絡等頂けるととてもありがたいです。 107 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
洋輝 | 男 | 100 | 藍野 洋輝(あいの ひろき) 20歳男子大学生 オッドアイ(黒とゴールド)の持ち主 色覚障害で赤色の認識が出来ない内向的な性格 |
朱里 | 女 | 86 | 緋色 朱里(ひいろ あかり) 21歳女子大生 1年浪人しており洋輝と同学年 赤色に強いトラウマを持ち赤色を見るとパニックを起こすこともある |
黄愛 | 女 | 83 | 中野 黄愛(なかの きえ) 21歳女子大生 1年浪人している朱里の幼馴染 男勝りな性格で口が悪い |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
洋輝:(M)人はボクの事を可哀想という。
洋輝:なぜボクは哀(あわ)れに思われるのか?
洋輝:初めから知らないし分からない。だから比べたくても比べられない。
洋輝:大丈夫…ボクの世界は少しばかり輝いて見えないだけだから…。
0:大学のとある講義室
黄愛:おっ!アカリじゃん!今日は寝坊しないでちゃんと来れたね!
朱里:おはようキエ。昨日は生理が辛すぎて起きれなかったの…。思ったより出血してたし…
黄愛:そかそか。それは辛かったね。だったら今日も休めば良かったのに…
朱里:さすがに連続で休めないよ…
黄愛:アカリ偉いっ!そんなアカリちゃんに昨日のノート写させてあげよう
朱里:ありがとう!…って全然書いてないじゃん?
黄愛:あはは。実は講義始まって5分で寝落ちしてさ
朱里:もー…。必修科目だから落としたら留年なんだよ…
黄愛:大丈夫!大丈夫!みんな寝てたから!
朱里:そうじゃなくて…。誰かノート取ってそうな人…
0:1番前の席に座っている男子を見付ける
朱里:あの人は?
黄愛:アイツ?あー、チャラ勉ね。確かにアイツならノート取ってるかもね
朱里:チャラ勉くん?なんでそんなアダ名なの?
黄愛:アイツいっつも1番前で講義受けててマジメ過ぎるのよ。でも片目だけカラコン入れてんだよね。確かにそこそこイケメンだと思うよ?だからチャラいガリ勉でチャラ勉
朱里:そのアダ名キエが付けたでしょ?
黄愛:さぁね?でも基本的に誰とも話してないっぽいし
朱里:私声かけてみる
黄愛:ちょ、アカリ!待ちなって!
0:朱里は洋輝に近付き声をかける
朱里:はじめまして!私、緋彩朱里(ひいろ あかり)っていいます!急で申し訳ないんだけど、昨日の講義のノート見せてもらえないかな?
0:黒と金の眼を朱里に向ける洋輝
洋輝:…別に構いませんよ。ただ色を使ってないので、見にくいと思います
0:差し出されたノートを見る朱里と黄愛
黄愛:わっ、ホントだ。黒だけじゃん!デスノートってレベルじゃん!
朱里:キエ!そんな事言わない!ごめんね、えっと…
洋輝:藍野です。藍野洋輝(あいの ひろき)。別に気にしてないです。ノートは講義が終わってから貸しますよ
朱里:ありがとう!ついでに質問しても良い?
洋輝:えぇ、どうぞ
朱里:藍野くんはどうしていつも1番前で講義受けてるの?
洋輝:…単に黒板が見えにくいからです
黄愛:だったらメガネかければ良いじゃん。どうせ陰キャなんだから変わらないしょ
洋輝:そうですね。メガネでよく見えれば良いんですけどね
黄愛:は?何言ってんの?
朱里:キエやめなって!ごめんね藍野くん
洋輝:気にしてないので。それより、そろそろ講義が始まるので後ろに行かなくて良いんですか?
黄愛:だね、ほらアカリ行くよ?
朱里:私も今日は1番前で受ける!
黄愛:は?1番前だと寝れないじゃん!私寝不足なんだけど!
朱里:せっかくだもん!それにこういう所でアピールしないと万が一の時単位貰えないかもだし!
黄愛:はー…。ホントこういう所だけマジメだな…。ってかチャラ勉!アンタは良いのか?
洋輝:何がですか?
黄愛:アンタの聖域に私たちが入っても良いのかって聞いてんの!
洋輝:別に気にしません。元々ボクだけの場所ではありませんし
黄愛:ちっ、空気読めよ
朱里:という事で、おじゃまします!
0:講義中
黄愛:あー!眠い!めっちゃ教授に見られてるし!ストレス溜まるわ!
朱里:確かに私たち以外みんな後ろの方の席だもん。でも勉強してる感じがして良いね!
黄愛:はぁ…。アンタのポジティブについて行けないわ。ってかチャラ勉!今日も黒だけで書いてるのか!
洋輝:別に気にしてないので。内容が分かれば問題ありません
黄愛:気にしてない…って。少しは気にしろよ
朱里:キエもイライラしないの。藍野くんの言う通り内容が分かれば良いでしょ!
黄愛:へーい。…おっ、チャラ勉。アンタ漢字間違えてんぞ
洋輝:え?どこですか?
朱里:ホントだ。藍野くん、そこは盲心じゃなくて盲目だよ?
洋輝:あ、すみません。ありがとうございます
黄愛:小学生の漢字を間違えるとか恥ずかしっ!実はあんまり頭良くないんじゃないの?
朱里:そんな事言わない!大体キエは頭悪すぎて浪人してるでしょ?
黄愛:ひどいよアカリ!私とアカリの仲なのに…っ!
朱里:はいはい。…愛野くん?どうしたの?そんなに目細めて
洋輝:…すみません。ついでに、この部分も何と書いてあるか教えてもらえますか?
朱里:良いよ?えっと…。あれ?全部赤で板書されてる部分?…うっ
洋輝:アカリさん?
朱里:…ごめん、なんでもない
黄愛:おい、チャラ勉。私が教えてやるから、あんまりアカリに近付くな
朱里:ごめんキエ…。そうしてくれると助かる。藍野くん、お詫びに講義終わったら学食行かない?
洋輝:構いませんよ
0:学食にて
朱里:藍野くん、好きな物頼んで良いよ。ノートのお礼も兼ねてだから
洋輝:アカリさん、体調はもう大丈夫なんですか?
黄愛:大丈夫な訳ないだろ!見ろよ!アカリの顔!青白いだろうが!
洋輝:青白い…?それは良くない事なんですか?
黄愛:は?アンタ何言ってんの?
朱里:ちょっと疲れただけだから大丈夫だよ?だからケンカしないで?
黄愛:分かったよ。アカリの分は私取ってくるから。何がいい?レバニラ炒め?
朱里:うん。それでお願い
黄愛:おけおけ!おいチャラ勉!アンタも一緒に来な
洋輝:分かりました
朱里:ごめんね、2人とも。戻ってきたらお金渡すね
0:列に並ぶ2人
洋輝:不快な思いをさせて、すみませんでした
黄愛:なんだよ急に
洋輝:いえ、ボク…人の顔色とか全く分からなくて
黄愛:アンタ、空気読めないってよく言われるしょ?
洋輝:よく言われますね。入学当初は色んな人に言われましたね
黄愛:ふーん。ってかアンタ何で片方だけカラコン入れてるの?
洋輝:いいえ。これは生まれつきなんです
黄愛:マジで!?めっちゃ羨ましいんだけど!
洋輝:残念ですが、この目で得した事なんて何一つないです
黄愛:マジでアンタのそういう発言ムカつくわ。ってか実際アンタ結構モテるでしょ?
洋輝:いいえ?今まで誰ともお付き合いした事ありません。それに好きとかよく分かりませんし
黄愛:ナチュラルにムカつくわ。でもアンタの目が赤じゃなくて良かったわ
洋輝:赤?どうしてですか?
黄愛:いや、なんでもない。それより選んだなら、さっさと戻るよ
0:席にもどってきた2人
朱里:キエごめん、ありがとう。お金いくらだった?
黄愛:私が出すから気にすんな。今度奢ってもらうけど
朱里:はーい。藍野くんは何頼んだの?
洋輝:ボクはカレーです
黄愛:コイツ遠慮してトッピング無しにしてんのよ。まっ、そういうの大事だと思うけどね
朱里:遠慮しなくて良かったのに。ちなみにキエは?
黄愛:私はトンカツ定食!ガッツリ食べたいからね!あ、チャラ勉、そこのソース取って!赤いキャップの
0:少し迷って緑のキャップの容器を渡す洋輝
洋輝:これで合ってますか?
黄愛:アンタふざけんなよ!私は赤って言ったの!誰が緑って言ったのよ!
洋輝:…すみません
朱里:待ってキエ
黄愛:何よアカリ?アンタ、コイツの味方するつもり?
朱里:違うよ。ねぇ藍野くん。もし間違ってたらゴメン
洋輝:何がですか?
朱里:藍野くん、もしかして赤が見えないんじゃない?
黄愛:は?赤が見えない?そんなわけ…
洋輝:その通りです
朱里:やっぱり…。だからあの時も…
黄愛:どういう事よ?赤が見えないって?透明に見えるわけ?
洋輝:正確に言うと、皆さんが見えている色に見えないという事です。ボクは生まれつき色覚障害があって赤色を見ることが出来ません
黄愛:は?でも青とか黄色は見えるって事でしょ?
洋輝:それらも鮮やかには見えません。だから色合いによっては違いが分かりません
朱里:何で隠してたの?
洋輝:別に隠していた訳じゃありません。下手に同情されるのがイヤなだけです
黄愛:同情…って、アンタそれでよく生きてられるわね
洋輝:ボクは盲目ではありません。それに不都合はあっても不自由ではありません
黄愛:コイツちょっと顔が良いからって生意気だな
朱里:でも今は色盲の人の為のメガネあるよね?それは使わないの?
洋輝:ありますよ?でも必ずしも全ての人間に適用される訳ではありません
黄愛:そうなのかよ…
洋輝:ですので、同情はいりません。必要ならノートは差し上げます。なのでボクにあまり関わらないで…
朱里:…羨ましい
洋輝:今なんと?
朱里:あ、いや…ごめんなさい。不適切な発言だった…
洋輝:…そんなにボクをからかって楽しいですか?
朱里:いえ…そんなつもりは…
洋輝:くだらない同情の次は、見下した羨望(せんぼう)ですか?いい加減にして下さい!
黄愛:落ち着けって、アカリはそんなつもりで言ってないから!…な?アカリも反省してるよな?
洋輝:不愉快です。ボクは別の場所で食べさせてもらいます
0:席を立ち移動する洋輝
朱里:ごめん…キエ…。私…
黄愛:それ以上言わなくて良い。アイツにも人には分からない傷があっただけだ
朱里:でも…。あの人も私と同じように…もしかしたら私以上に苦しんでるかも…
黄愛:だったらもう気にしちゃダメだ。アカリはアカリの事だけ考えな
朱里:分かった…
洋輝:(M)それから彼女達はボクに近付くことはなかった。時々目が合うことはあったが、話すことはなかった。次第に講義でも姿を見る機会が少なくなっていった。だが2週間ほど経った雨の日、事態が急変する
0:講堂に向かって歩く洋輝に黄愛が掴みかかる
黄愛:おいっ!チャラ勉っ!アカリを…アカリを見なかったか!?
洋輝:な、何ですか…いきなり
黄愛:今日、いや昨日見たか!?
洋輝:いえ、ここ最近姿をお見かけしてないです
黄愛:くっ…だよな…。いきなり悪かったな
0:立ち去ろうとする黄愛
洋輝:待って下さい!講義はどうするんですか?それにアカリさんがどうかしたんですか?
黄愛:講義なんてどうでもいい!アカリは昨日から家に帰ってないみたいなんだ。最近…大学にも体調不良で来てないのにだ…
洋輝:カレシさんの家とかなのでは…
黄愛:アカリに彼氏はいない!アカリは…、いや…なんでもない
洋輝:分かりました。ではボクはこれで失礼します
黄愛:アンタ…本気かよ…?
洋輝:何がですか?
黄愛:確かに大した仲良くないかもしれないけどよ…。探すの手伝うとか、情報集めるとか…何か出来ることあるだろ…?
洋輝:…ボクには関係ないので
黄愛:…見損なったよ!ただの悲劇のヒーロー気取りが…!自分がそんなに可愛いか?
洋輝:アカリさんはボクをバカに…
黄愛:もういいよ、アンタに少しでも期待した私がバカだった。でもこれだけは忘れるな。苦しんでるのはアンタだけじゃない。アカリもアンタ以上に苦しんでるんだよ
0:立ち去る黄愛
洋輝:そんな事言われても…ボクに何が出来るんだよ…。…あれ?何だこのヒモは…?どんどん伸びていく?あっ、待って!
黄愛:何だよチャラ勉?
洋輝:あ、いえ…なんでも…
黄愛:だったら呼び止めるなよ!こっちは急いでんだからさ!
洋輝:ボクの小指から見たことないヒモが見えるんです!ずっと奥まで続いてるんです
黄愛:ヒモ?私には見えないけど?
洋輝:初めて見る色です。何だか温かい色…今まで見た中で1番鮮やかな色…
黄愛:もしかして赤か?
洋輝:赤…?だったらなんでボクに見えるんですか?
黄愛:んな事しらねぇよ!それよりもアンタ本当に見えるんだな?
洋輝:はい。この先ずっと続いてます
黄愛:だったらアンタはそっちに行ってくれ。私は違う方を探す
洋輝:どうして?ボクは講義に…
黄愛:頼む!アンタに関係ない事は承知してる!でも…アカリの居場所の手がかりがないんだ!
洋輝:キエさん…
黄愛:私はアカリを助けたい!その為なら妄想でも盲信でも付き合ってやる!だから…頼むっ!
洋輝:…分かりました。もし見付けたらご飯奢って下さいね?
黄愛:あぁ。分かったから、後は頼んだぞ
洋輝:それでは後ほど!
0:2人は駆け出す
黄愛:残念だけど本当にあるんだな…運命の赤い糸って…。アイツにアカリを取られのは悔しいけど…仕方ないか
0:河川敷に1人座る朱里
朱里:あはは…また学校サボっちゃった。雨は本当に嫌だ…。赤もキライ。私の名前もキライ。男の人もキライ。全部キライ。
朱里:でも…藍野君に酷いこと言った私が1番キライ…。
0:小走りで朱里を探す洋輝
洋輝:アカリさーん!どこですかー?居たら返事して下さーい!…くっ、雨のせいか糸が見えにくくなってきた
朱里:藍野くん…っ!なんでこんな所に?しかも私を探してる?
洋輝:糸は…この下に続いてる…?あ、アカリさんっ!探したんですよ!
朱里:来ないでっ!
洋輝:アカリさん?
朱里:ごめんね藍野くん。私ホントに自分勝手で
洋輝:…気にしてませんよ?
朱里:ウソつかないで!
洋輝:ウソじゃないです。それにこの前の事はもう気にしてないです!
朱里:ホントに…?
洋輝:えぇ、代わりではないですが、アカリさんの事教えてくれませんか?
朱里:私のこと…?
洋輝:はい!その前に雨も強くなってきたのでボクもそっちに行っていいですか?
朱里:わかったよ、こっちに来て?
0:橋の下で隣合って座る2人
朱里:私ね…赤色が怖いの…
洋輝:怖い?
朱里:そう。私ね高3の時に男の人達に襲われてね…。その時いっぱい血が出たの。視界が全部赤くなったの。そしたらね赤色を見るとフラッシュバックするようになったの
洋輝:そんな事が…
朱里:だからね本当は男の人も怖いの。でもキエが一緒に居てくれるから私頑張れたの
洋輝:だったら何であの時ボクに声をかけたんですか?
朱里:それは…何となく私に似てる気がしたの。実際私たちは同じだったね。赤が見えない事で苦しむ藍野くんと赤を見る事で苦しむ私…
洋輝:アカリさん…
朱里:だから藍野くんなら分かってくれる?この死にたいって気持ち
洋輝:…分かります。自分の見えている世界を他人に否定されて哀れに思われて…勝手に可哀想なヤツって扱われて
朱里:そうだよね…。藍野くんなら分かってくれるよね…
洋輝:でも今は分かりません
朱里:どういうこと?
洋輝:赤ってキレイな色なんですよ
朱里:でも藍野くん見えないんじゃ?
洋輝:えぇ。見えないです。でもこの小指の先から延びる赤い糸は見えます。そしてその先にアカリさんが居たんです
朱里:そんな妄言信じるわけ…
洋輝:ボクは妄想家ではなく色盲です
朱里:でもだからって信じられるわけないよ
洋輝:ボクも信じられません。ですが赤い糸がアカリさんに導いてくれたんです
朱里:私にはそう思えないよ
洋輝:分かってます。でもアカリさんに出会わなければこの赤い糸を見る事は出来なかったと思います
朱里:そんなこと…
洋輝:ボクはただ怖かっただけなんだと思います
朱里:怖かった?何が怖かったの?
洋輝:周りの人達から色んな事を言われて、お前は普通の人とは違うって笑われて…
朱里:藍野くん…
洋輝:気が付いたらボクから人を避けるようになって、でもボクは人と違うから仕方ないって思うようになりました…
朱里:そうだったんだね…ホントに辛かったね…
洋輝:えぇ…。でも今は後悔してます
朱里:後悔?
洋輝:はい。目をそらさなければ見えてた景色が沢山あったかもしれないという後悔です
朱里:でも…それは仮定の話だよね?
洋輝:えぇ。ですがアカリさんが居てくれたから今があるんです
朱里:そんな事…
洋輝:だからボクのそばに居てください!ボクと一緒に綺麗な世界を見てください!
朱里:…それって告白?
洋輝:…になるんですかね?
0:泣きながら笑う朱里
朱里:あははは!なるんですかね?って、私が聞いてるのに
洋輝:す、すみません…
朱里:じゃあ1つだけ答えて?
洋輝:何ですか?
朱里:今の私はどう?
洋輝:キレイな緋(あか)で染まった美しい人です
0:大学に戻ってきた2人
黄愛:おっ、戻ってきた!おーい!
朱里:キエ…!心配かけてごめんね…!
黄愛:ったく、心配かけやがって…!ってかチャラ勉っ!見付けたなら連絡しろよ!
洋輝:そもそもキエさんの連絡先知りませんよ
黄愛:ぐっ…、な、ならアカリのスマホで連絡しろって!
洋輝:アカリさんのスマホはバッテリー切れです
黄愛:あー言えば、こー言う…こいつムカつくー!
朱里:キエ落ち着いて?
黄愛:アカリー!やっぱりアカリは良い子だのぉ。こんなチャラ勉にはもったいない
朱里:え?
黄愛:え?アンタたち付き合うんだろ?
朱里:なんで?
黄愛:だって、チャラ勉が運命の赤い糸が見えるって言ってたから
洋輝:そ、そんな事言ってないですよ!ただ赤い糸が見えるって言っただけで…!それに今はもう見えませんし
朱里:そうなんだ…残念…
黄愛:ほーほー。それは良かった良かった
洋輝:でも…
黄愛:でも何だよ?
洋輝:キレイな緋い人なら見えます
朱里:藍野くん…っ!
黄愛:ったく、アカリの事幸せにしないとぶっ飛ばすからな?
洋輝:もちろんです!それよりも約束覚えてますよね?
黄愛:約束?なんのだ?
洋輝:アカリさんを見付けたらご飯奢ってくれるって
黄愛:…あー、したな。うん、したした。言っとくけど高級焼肉とかは無しな?
朱里:そんな約束してたんだ…。キエ私もお金出すから藍野くんの行きたい所にしよ?
黄愛:アカリ…すまん…
洋輝:焼肉ですか、確かにそれもアリですね
黄愛:この強欲タヌキめ
洋輝:でも残念ながらボク、お肉焼いても焼けてるか分からないんですよ
朱里:だったら私たちが焼くから安心して…
洋輝:学食のカレーをトッピング全部乗せ
朱里:え?
洋輝:夢だったんですよ、トッピング全部のせ
朱里:本当にそれで良いの?
洋輝:もちろんです。あとボクは色が分からないのでソースもかけて下さいね?
黄愛:ったく、チャラ勉のクセに生意気だな!ほら行くぞ2人とも!
朱里:(M)こうして私と藍野くんは付き合い、お互いを支えながら過ごしていく。その後キエにも恋人が出来るのだが、そのお話はまたいつかのお楽しみ
0:終
洋輝:(M)人はボクの事を可哀想という。
洋輝:なぜボクは哀(あわ)れに思われるのか?
洋輝:初めから知らないし分からない。だから比べたくても比べられない。
洋輝:大丈夫…ボクの世界は少しばかり輝いて見えないだけだから…。
0:大学のとある講義室
黄愛:おっ!アカリじゃん!今日は寝坊しないでちゃんと来れたね!
朱里:おはようキエ。昨日は生理が辛すぎて起きれなかったの…。思ったより出血してたし…
黄愛:そかそか。それは辛かったね。だったら今日も休めば良かったのに…
朱里:さすがに連続で休めないよ…
黄愛:アカリ偉いっ!そんなアカリちゃんに昨日のノート写させてあげよう
朱里:ありがとう!…って全然書いてないじゃん?
黄愛:あはは。実は講義始まって5分で寝落ちしてさ
朱里:もー…。必修科目だから落としたら留年なんだよ…
黄愛:大丈夫!大丈夫!みんな寝てたから!
朱里:そうじゃなくて…。誰かノート取ってそうな人…
0:1番前の席に座っている男子を見付ける
朱里:あの人は?
黄愛:アイツ?あー、チャラ勉ね。確かにアイツならノート取ってるかもね
朱里:チャラ勉くん?なんでそんなアダ名なの?
黄愛:アイツいっつも1番前で講義受けててマジメ過ぎるのよ。でも片目だけカラコン入れてんだよね。確かにそこそこイケメンだと思うよ?だからチャラいガリ勉でチャラ勉
朱里:そのアダ名キエが付けたでしょ?
黄愛:さぁね?でも基本的に誰とも話してないっぽいし
朱里:私声かけてみる
黄愛:ちょ、アカリ!待ちなって!
0:朱里は洋輝に近付き声をかける
朱里:はじめまして!私、緋彩朱里(ひいろ あかり)っていいます!急で申し訳ないんだけど、昨日の講義のノート見せてもらえないかな?
0:黒と金の眼を朱里に向ける洋輝
洋輝:…別に構いませんよ。ただ色を使ってないので、見にくいと思います
0:差し出されたノートを見る朱里と黄愛
黄愛:わっ、ホントだ。黒だけじゃん!デスノートってレベルじゃん!
朱里:キエ!そんな事言わない!ごめんね、えっと…
洋輝:藍野です。藍野洋輝(あいの ひろき)。別に気にしてないです。ノートは講義が終わってから貸しますよ
朱里:ありがとう!ついでに質問しても良い?
洋輝:えぇ、どうぞ
朱里:藍野くんはどうしていつも1番前で講義受けてるの?
洋輝:…単に黒板が見えにくいからです
黄愛:だったらメガネかければ良いじゃん。どうせ陰キャなんだから変わらないしょ
洋輝:そうですね。メガネでよく見えれば良いんですけどね
黄愛:は?何言ってんの?
朱里:キエやめなって!ごめんね藍野くん
洋輝:気にしてないので。それより、そろそろ講義が始まるので後ろに行かなくて良いんですか?
黄愛:だね、ほらアカリ行くよ?
朱里:私も今日は1番前で受ける!
黄愛:は?1番前だと寝れないじゃん!私寝不足なんだけど!
朱里:せっかくだもん!それにこういう所でアピールしないと万が一の時単位貰えないかもだし!
黄愛:はー…。ホントこういう所だけマジメだな…。ってかチャラ勉!アンタは良いのか?
洋輝:何がですか?
黄愛:アンタの聖域に私たちが入っても良いのかって聞いてんの!
洋輝:別に気にしません。元々ボクだけの場所ではありませんし
黄愛:ちっ、空気読めよ
朱里:という事で、おじゃまします!
0:講義中
黄愛:あー!眠い!めっちゃ教授に見られてるし!ストレス溜まるわ!
朱里:確かに私たち以外みんな後ろの方の席だもん。でも勉強してる感じがして良いね!
黄愛:はぁ…。アンタのポジティブについて行けないわ。ってかチャラ勉!今日も黒だけで書いてるのか!
洋輝:別に気にしてないので。内容が分かれば問題ありません
黄愛:気にしてない…って。少しは気にしろよ
朱里:キエもイライラしないの。藍野くんの言う通り内容が分かれば良いでしょ!
黄愛:へーい。…おっ、チャラ勉。アンタ漢字間違えてんぞ
洋輝:え?どこですか?
朱里:ホントだ。藍野くん、そこは盲心じゃなくて盲目だよ?
洋輝:あ、すみません。ありがとうございます
黄愛:小学生の漢字を間違えるとか恥ずかしっ!実はあんまり頭良くないんじゃないの?
朱里:そんな事言わない!大体キエは頭悪すぎて浪人してるでしょ?
黄愛:ひどいよアカリ!私とアカリの仲なのに…っ!
朱里:はいはい。…愛野くん?どうしたの?そんなに目細めて
洋輝:…すみません。ついでに、この部分も何と書いてあるか教えてもらえますか?
朱里:良いよ?えっと…。あれ?全部赤で板書されてる部分?…うっ
洋輝:アカリさん?
朱里:…ごめん、なんでもない
黄愛:おい、チャラ勉。私が教えてやるから、あんまりアカリに近付くな
朱里:ごめんキエ…。そうしてくれると助かる。藍野くん、お詫びに講義終わったら学食行かない?
洋輝:構いませんよ
0:学食にて
朱里:藍野くん、好きな物頼んで良いよ。ノートのお礼も兼ねてだから
洋輝:アカリさん、体調はもう大丈夫なんですか?
黄愛:大丈夫な訳ないだろ!見ろよ!アカリの顔!青白いだろうが!
洋輝:青白い…?それは良くない事なんですか?
黄愛:は?アンタ何言ってんの?
朱里:ちょっと疲れただけだから大丈夫だよ?だからケンカしないで?
黄愛:分かったよ。アカリの分は私取ってくるから。何がいい?レバニラ炒め?
朱里:うん。それでお願い
黄愛:おけおけ!おいチャラ勉!アンタも一緒に来な
洋輝:分かりました
朱里:ごめんね、2人とも。戻ってきたらお金渡すね
0:列に並ぶ2人
洋輝:不快な思いをさせて、すみませんでした
黄愛:なんだよ急に
洋輝:いえ、ボク…人の顔色とか全く分からなくて
黄愛:アンタ、空気読めないってよく言われるしょ?
洋輝:よく言われますね。入学当初は色んな人に言われましたね
黄愛:ふーん。ってかアンタ何で片方だけカラコン入れてるの?
洋輝:いいえ。これは生まれつきなんです
黄愛:マジで!?めっちゃ羨ましいんだけど!
洋輝:残念ですが、この目で得した事なんて何一つないです
黄愛:マジでアンタのそういう発言ムカつくわ。ってか実際アンタ結構モテるでしょ?
洋輝:いいえ?今まで誰ともお付き合いした事ありません。それに好きとかよく分かりませんし
黄愛:ナチュラルにムカつくわ。でもアンタの目が赤じゃなくて良かったわ
洋輝:赤?どうしてですか?
黄愛:いや、なんでもない。それより選んだなら、さっさと戻るよ
0:席にもどってきた2人
朱里:キエごめん、ありがとう。お金いくらだった?
黄愛:私が出すから気にすんな。今度奢ってもらうけど
朱里:はーい。藍野くんは何頼んだの?
洋輝:ボクはカレーです
黄愛:コイツ遠慮してトッピング無しにしてんのよ。まっ、そういうの大事だと思うけどね
朱里:遠慮しなくて良かったのに。ちなみにキエは?
黄愛:私はトンカツ定食!ガッツリ食べたいからね!あ、チャラ勉、そこのソース取って!赤いキャップの
0:少し迷って緑のキャップの容器を渡す洋輝
洋輝:これで合ってますか?
黄愛:アンタふざけんなよ!私は赤って言ったの!誰が緑って言ったのよ!
洋輝:…すみません
朱里:待ってキエ
黄愛:何よアカリ?アンタ、コイツの味方するつもり?
朱里:違うよ。ねぇ藍野くん。もし間違ってたらゴメン
洋輝:何がですか?
朱里:藍野くん、もしかして赤が見えないんじゃない?
黄愛:は?赤が見えない?そんなわけ…
洋輝:その通りです
朱里:やっぱり…。だからあの時も…
黄愛:どういう事よ?赤が見えないって?透明に見えるわけ?
洋輝:正確に言うと、皆さんが見えている色に見えないという事です。ボクは生まれつき色覚障害があって赤色を見ることが出来ません
黄愛:は?でも青とか黄色は見えるって事でしょ?
洋輝:それらも鮮やかには見えません。だから色合いによっては違いが分かりません
朱里:何で隠してたの?
洋輝:別に隠していた訳じゃありません。下手に同情されるのがイヤなだけです
黄愛:同情…って、アンタそれでよく生きてられるわね
洋輝:ボクは盲目ではありません。それに不都合はあっても不自由ではありません
黄愛:コイツちょっと顔が良いからって生意気だな
朱里:でも今は色盲の人の為のメガネあるよね?それは使わないの?
洋輝:ありますよ?でも必ずしも全ての人間に適用される訳ではありません
黄愛:そうなのかよ…
洋輝:ですので、同情はいりません。必要ならノートは差し上げます。なのでボクにあまり関わらないで…
朱里:…羨ましい
洋輝:今なんと?
朱里:あ、いや…ごめんなさい。不適切な発言だった…
洋輝:…そんなにボクをからかって楽しいですか?
朱里:いえ…そんなつもりは…
洋輝:くだらない同情の次は、見下した羨望(せんぼう)ですか?いい加減にして下さい!
黄愛:落ち着けって、アカリはそんなつもりで言ってないから!…な?アカリも反省してるよな?
洋輝:不愉快です。ボクは別の場所で食べさせてもらいます
0:席を立ち移動する洋輝
朱里:ごめん…キエ…。私…
黄愛:それ以上言わなくて良い。アイツにも人には分からない傷があっただけだ
朱里:でも…。あの人も私と同じように…もしかしたら私以上に苦しんでるかも…
黄愛:だったらもう気にしちゃダメだ。アカリはアカリの事だけ考えな
朱里:分かった…
洋輝:(M)それから彼女達はボクに近付くことはなかった。時々目が合うことはあったが、話すことはなかった。次第に講義でも姿を見る機会が少なくなっていった。だが2週間ほど経った雨の日、事態が急変する
0:講堂に向かって歩く洋輝に黄愛が掴みかかる
黄愛:おいっ!チャラ勉っ!アカリを…アカリを見なかったか!?
洋輝:な、何ですか…いきなり
黄愛:今日、いや昨日見たか!?
洋輝:いえ、ここ最近姿をお見かけしてないです
黄愛:くっ…だよな…。いきなり悪かったな
0:立ち去ろうとする黄愛
洋輝:待って下さい!講義はどうするんですか?それにアカリさんがどうかしたんですか?
黄愛:講義なんてどうでもいい!アカリは昨日から家に帰ってないみたいなんだ。最近…大学にも体調不良で来てないのにだ…
洋輝:カレシさんの家とかなのでは…
黄愛:アカリに彼氏はいない!アカリは…、いや…なんでもない
洋輝:分かりました。ではボクはこれで失礼します
黄愛:アンタ…本気かよ…?
洋輝:何がですか?
黄愛:確かに大した仲良くないかもしれないけどよ…。探すの手伝うとか、情報集めるとか…何か出来ることあるだろ…?
洋輝:…ボクには関係ないので
黄愛:…見損なったよ!ただの悲劇のヒーロー気取りが…!自分がそんなに可愛いか?
洋輝:アカリさんはボクをバカに…
黄愛:もういいよ、アンタに少しでも期待した私がバカだった。でもこれだけは忘れるな。苦しんでるのはアンタだけじゃない。アカリもアンタ以上に苦しんでるんだよ
0:立ち去る黄愛
洋輝:そんな事言われても…ボクに何が出来るんだよ…。…あれ?何だこのヒモは…?どんどん伸びていく?あっ、待って!
黄愛:何だよチャラ勉?
洋輝:あ、いえ…なんでも…
黄愛:だったら呼び止めるなよ!こっちは急いでんだからさ!
洋輝:ボクの小指から見たことないヒモが見えるんです!ずっと奥まで続いてるんです
黄愛:ヒモ?私には見えないけど?
洋輝:初めて見る色です。何だか温かい色…今まで見た中で1番鮮やかな色…
黄愛:もしかして赤か?
洋輝:赤…?だったらなんでボクに見えるんですか?
黄愛:んな事しらねぇよ!それよりもアンタ本当に見えるんだな?
洋輝:はい。この先ずっと続いてます
黄愛:だったらアンタはそっちに行ってくれ。私は違う方を探す
洋輝:どうして?ボクは講義に…
黄愛:頼む!アンタに関係ない事は承知してる!でも…アカリの居場所の手がかりがないんだ!
洋輝:キエさん…
黄愛:私はアカリを助けたい!その為なら妄想でも盲信でも付き合ってやる!だから…頼むっ!
洋輝:…分かりました。もし見付けたらご飯奢って下さいね?
黄愛:あぁ。分かったから、後は頼んだぞ
洋輝:それでは後ほど!
0:2人は駆け出す
黄愛:残念だけど本当にあるんだな…運命の赤い糸って…。アイツにアカリを取られのは悔しいけど…仕方ないか
0:河川敷に1人座る朱里
朱里:あはは…また学校サボっちゃった。雨は本当に嫌だ…。赤もキライ。私の名前もキライ。男の人もキライ。全部キライ。
朱里:でも…藍野君に酷いこと言った私が1番キライ…。
0:小走りで朱里を探す洋輝
洋輝:アカリさーん!どこですかー?居たら返事して下さーい!…くっ、雨のせいか糸が見えにくくなってきた
朱里:藍野くん…っ!なんでこんな所に?しかも私を探してる?
洋輝:糸は…この下に続いてる…?あ、アカリさんっ!探したんですよ!
朱里:来ないでっ!
洋輝:アカリさん?
朱里:ごめんね藍野くん。私ホントに自分勝手で
洋輝:…気にしてませんよ?
朱里:ウソつかないで!
洋輝:ウソじゃないです。それにこの前の事はもう気にしてないです!
朱里:ホントに…?
洋輝:えぇ、代わりではないですが、アカリさんの事教えてくれませんか?
朱里:私のこと…?
洋輝:はい!その前に雨も強くなってきたのでボクもそっちに行っていいですか?
朱里:わかったよ、こっちに来て?
0:橋の下で隣合って座る2人
朱里:私ね…赤色が怖いの…
洋輝:怖い?
朱里:そう。私ね高3の時に男の人達に襲われてね…。その時いっぱい血が出たの。視界が全部赤くなったの。そしたらね赤色を見るとフラッシュバックするようになったの
洋輝:そんな事が…
朱里:だからね本当は男の人も怖いの。でもキエが一緒に居てくれるから私頑張れたの
洋輝:だったら何であの時ボクに声をかけたんですか?
朱里:それは…何となく私に似てる気がしたの。実際私たちは同じだったね。赤が見えない事で苦しむ藍野くんと赤を見る事で苦しむ私…
洋輝:アカリさん…
朱里:だから藍野くんなら分かってくれる?この死にたいって気持ち
洋輝:…分かります。自分の見えている世界を他人に否定されて哀れに思われて…勝手に可哀想なヤツって扱われて
朱里:そうだよね…。藍野くんなら分かってくれるよね…
洋輝:でも今は分かりません
朱里:どういうこと?
洋輝:赤ってキレイな色なんですよ
朱里:でも藍野くん見えないんじゃ?
洋輝:えぇ。見えないです。でもこの小指の先から延びる赤い糸は見えます。そしてその先にアカリさんが居たんです
朱里:そんな妄言信じるわけ…
洋輝:ボクは妄想家ではなく色盲です
朱里:でもだからって信じられるわけないよ
洋輝:ボクも信じられません。ですが赤い糸がアカリさんに導いてくれたんです
朱里:私にはそう思えないよ
洋輝:分かってます。でもアカリさんに出会わなければこの赤い糸を見る事は出来なかったと思います
朱里:そんなこと…
洋輝:ボクはただ怖かっただけなんだと思います
朱里:怖かった?何が怖かったの?
洋輝:周りの人達から色んな事を言われて、お前は普通の人とは違うって笑われて…
朱里:藍野くん…
洋輝:気が付いたらボクから人を避けるようになって、でもボクは人と違うから仕方ないって思うようになりました…
朱里:そうだったんだね…ホントに辛かったね…
洋輝:えぇ…。でも今は後悔してます
朱里:後悔?
洋輝:はい。目をそらさなければ見えてた景色が沢山あったかもしれないという後悔です
朱里:でも…それは仮定の話だよね?
洋輝:えぇ。ですがアカリさんが居てくれたから今があるんです
朱里:そんな事…
洋輝:だからボクのそばに居てください!ボクと一緒に綺麗な世界を見てください!
朱里:…それって告白?
洋輝:…になるんですかね?
0:泣きながら笑う朱里
朱里:あははは!なるんですかね?って、私が聞いてるのに
洋輝:す、すみません…
朱里:じゃあ1つだけ答えて?
洋輝:何ですか?
朱里:今の私はどう?
洋輝:キレイな緋(あか)で染まった美しい人です
0:大学に戻ってきた2人
黄愛:おっ、戻ってきた!おーい!
朱里:キエ…!心配かけてごめんね…!
黄愛:ったく、心配かけやがって…!ってかチャラ勉っ!見付けたなら連絡しろよ!
洋輝:そもそもキエさんの連絡先知りませんよ
黄愛:ぐっ…、な、ならアカリのスマホで連絡しろって!
洋輝:アカリさんのスマホはバッテリー切れです
黄愛:あー言えば、こー言う…こいつムカつくー!
朱里:キエ落ち着いて?
黄愛:アカリー!やっぱりアカリは良い子だのぉ。こんなチャラ勉にはもったいない
朱里:え?
黄愛:え?アンタたち付き合うんだろ?
朱里:なんで?
黄愛:だって、チャラ勉が運命の赤い糸が見えるって言ってたから
洋輝:そ、そんな事言ってないですよ!ただ赤い糸が見えるって言っただけで…!それに今はもう見えませんし
朱里:そうなんだ…残念…
黄愛:ほーほー。それは良かった良かった
洋輝:でも…
黄愛:でも何だよ?
洋輝:キレイな緋い人なら見えます
朱里:藍野くん…っ!
黄愛:ったく、アカリの事幸せにしないとぶっ飛ばすからな?
洋輝:もちろんです!それよりも約束覚えてますよね?
黄愛:約束?なんのだ?
洋輝:アカリさんを見付けたらご飯奢ってくれるって
黄愛:…あー、したな。うん、したした。言っとくけど高級焼肉とかは無しな?
朱里:そんな約束してたんだ…。キエ私もお金出すから藍野くんの行きたい所にしよ?
黄愛:アカリ…すまん…
洋輝:焼肉ですか、確かにそれもアリですね
黄愛:この強欲タヌキめ
洋輝:でも残念ながらボク、お肉焼いても焼けてるか分からないんですよ
朱里:だったら私たちが焼くから安心して…
洋輝:学食のカレーをトッピング全部乗せ
朱里:え?
洋輝:夢だったんですよ、トッピング全部のせ
朱里:本当にそれで良いの?
洋輝:もちろんです。あとボクは色が分からないのでソースもかけて下さいね?
黄愛:ったく、チャラ勉のクセに生意気だな!ほら行くぞ2人とも!
朱里:(M)こうして私と藍野くんは付き合い、お互いを支えながら過ごしていく。その後キエにも恋人が出来るのだが、そのお話はまたいつかのお楽しみ
0:終