台本概要

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タイトル ハッピーエンドの申し子
作者名 鴉  (@krahe0320 )
ジャンル ラブストーリー
演者人数 4人用台本(男2、女2) ※兼役あり
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 1.キャラクターの性別は変更不可。キャスト様の性別は指定なし。
2.時間は大体の目安です。
3.非商用の場合は連絡は必要ありませんが、教えてくだされば時間が合えば聞きに行きます

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
瑛人 68 堀 瑛人。演技のうまい役者。トップスターの階段を駆け上がる。
詩織 45 山本詩織。演技指導のうまい役者。のちに演劇監督を目指す。
黒崎 23 瑛人の事務所社長。実はいい人。制作と兼ね役
真美 47 瑛人のことが好きな瑛人のマネージャー。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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詩織:(演技として)ずっと、一緒にいようね。 瑛人:(演技として)ああ、この世界が終わったとしても。俺が一番愛しているのは、君だよ。 詩織:(演技として)本当に? 瑛人:(演技として)もちろん。たとえ世界が滅びても、俺は君と、ハッピーエンドを演じて見せる。 詩織:……プッ。あはははは! 瑛人:おい、笑うなよー! 詩織:だって、瑛人、ちょっと真剣すぎない?これ瑛人が演じる役じゃないのにさ。 瑛人:だってさあ、僕、一番下っ端の役でしょ?主役の役とかセリフ入れてみて、勉強しないと。 詩織:えらいね、そういうとこ。 瑛人:あーあ。早く主役になりたいなあ。 詩織:どんな役でも関係ないよ。私には瑛人が一番……なんでもない。 瑛人:ちょ、なに。今なんて言おうとした?! 詩織:なんでもないってー!もう、しつこいなあ! 瑛人:ええ? なんだよもうー。 : 0:扉が開く音 : 黒崎:ここが、君の言っていた劇団かね。 真美:ええ。まだ原石ですが、磨けば光る子がいましてね……。ああ、あの子です。 詩織:あれ?誰か入ってきたよ? 瑛人:座長の知り合いかなあ?すみません、まだ開演時間じゃないんですけど。 黒崎:君が、堀 瑛人君? 瑛人:え? ああ、そうですけど。あの、どちら様で。 黒崎:ネプロエンターテイメント、と言えばわかるかな。 詩織:えっ。業界大手じゃん。えっと、今私たちしかいないんですけど、座長とか呼んできますか? 真美:それには及ばないわ。私たちが興味あるのは、瑛人君。君だけ。 瑛人:……僕? 真美:この間の劇、見せていただいたわ。一番目立たない役どころのはずなのに、その後ろに、人生があった。何を食べて、どうやって生きて、どんな家族構成で、何が嫌いなのか。そのすべてが分かったの。 瑛人:そんな。僕はただ詩織に、あ、彼女に練習付き合ってもらって、それで役を練れただけで。 黒崎:理由はなんでもいいのさ。私たちが求めているのは、優秀な俳優。それも役をしっかり深くまで理解できる頭のいい役者。どうだい?私たちの会社で、マネジメントを受けてみないかい? 瑛人:いいんですか!? 黒崎:ああ。これは名刺だ。打ち合わせと契約の日を決めよう。連絡、待っているよ。 真美:覚えていてね。瑛人君。その名刺は、片道切符。芸能界に入り、そこで活躍するためのモノ。こんなチャンスは、そう、訪れないからね……。 : 0:扉がしまっていく音 : 瑛人:すごい!すごいよ!僕なんかが、ネプロに!?えっ。嘘だろ?これ夢じゃないよな!?……詩織?どうした? 詩織:……おめでとう、瑛人。 瑛人:え……っ。なんでそんな泣きそうなの? 詩織:だってプロになるんでしょ?彼女いたら、ダメじゃん。 瑛人:そんなことないって!隠せばいいんだし、いや、隠さなくても、堂々と恋人だって言えばなんとかなるって。 詩織:ならないよ!(すこし涙ぐんで) 瑛人:詩織……。 詩織:私、馬鹿じゃない。好きな人が羽ばたいてく時に、邪魔するようなことはしたくない。 瑛人:じゃあ……。どうするっていうんだよ……。 詩織:今日は、千秋楽でしょ。終わりにしよう。劇も、私たちの、関係も……。 : 0:場面転換 : 黒崎:よかったよー、瑛人。今回もいいキャラしてたね。 瑛人:でも、またヒロインの男友達役ですよ。この間は、ヒロインの彼氏の親友役。その前は、ヒロインの当て馬役。主役には程遠いですよ。 真美:なに言ってるのよ。主役ってのはね、旬が過ぎたら捨てられるの。でも友達ポジションとか、当て馬ポジションならね、六十才になっても演技ができる。 瑛人:それはそうですけど。 黒崎:それにほら、ネットでもみんな噂してるぞ。堀 瑛人が脇役で出てくれば、どんな悲惨な状況でも、ヒロインたちは絶対に幸せになれる。ハッピーエンドの申し子だって。 瑛人:ハッピーエンドねえ。僕は脇役ばかりでハッピーじゃないですけど。 真美:まったく。あなたの目標は、死ぬまで現役でいることでしょ?だったら喜ばないと。 瑛人:でも、主役を張って、八十まで頑張ってる役者もいるじゃないですか。 黒崎:そんなの、ごく少数さ。ま、今度の主演オーディション受けてみるか?お前も、うちに入って五年たったんだ。顔も売れてきたし、そろそろいいだろ。 瑛人:本当ですか!?はい、頑張ります! 黒崎:ったく。お前は素直だなあ。それは芸能界で生きるうえでの長所だ。大事にしろよ。 : 0:扉がしまる音。黒崎が出ていく。 : 真美:それじゃ、帰りましょうか。車で送っていくわ。 瑛人:あ、はい。よろしくお願いします。まあ、僕は電車でもいいですけど。 真美:今度主演を取るかもなのよ?箔付けって意味では、車での送迎も大事なの。 瑛人:ありがとうございます。それじゃあ、よろしくお願いします。 : 0:道路 : 真美:ねえ、瑛人。 瑛人:はい。 真美:あなた、恋人は作らないの? 瑛人:へ!?な、なんですかいきなり!?今水吹き出すとこでした。 真美:だって、前の彼女と別れて五年でしょ。そろそろ寂しくならないのかなって。 瑛人:そりゃあ……寂しいです。恋愛シーンを演じてても、なんでここに詩織がいないのかなとか。幼馴染役の役者さんが他の男と恋に落ちるシーン演じていたら、僕も、好きな人を失ったんだなって思うし……。 真美:それが、あなたの演技に生きてるのね。 瑛人:でも……寂しいからって、詩織のこと、忘れられるわけないじゃないですか。 真美:……そういうもの? 瑛人:ええ。だって、六年一緒だったんですよ。高校で知り合って、一緒に劇団に入って、毎日一緒に稽古して。僕が役を深く理解できるって言うなら、それ、全部詩織のおかげなんです。 真美:でも、あの子は、その、演技のほうは……。 瑛人:そうなんですよ。役者より、たぶん、監督とかのほうが向いてるやつで。役者に指導することは得意だけど、自分のほうで落とし込むのは苦手っていうか。 真美:珍しいタイプね。 瑛人:ええ。今頃、どうしているのかなぁ。元気にやってるのかなあ。他にいい男できたのかなあ。そう思ったら、新しい恋人なんて、できないです。 真美:……そ、っか……。 瑛人:真美さんは?僕のマネージャーずっとしてくれてますけど、恋人がいたって話、一回も聞いたことないし。 真美:好きな人はいるんだけどねえ。 瑛人:え!?真美さんが!?うわー、その男、損してる~!真美さんほどいい女なんてそうそういませんよ! 真美:そう思ってたんだけどね。その人、私以外の人に夢中なの。好きで好きで、たまらないんだって。 瑛人:えーーー。今度会わせてくださいよー。僕、説教してやりますから!真美さんはすごいんだぞ、かっこいんだぞ、素敵なんだぞ、って。 真美:それは無理かな。 瑛人:何でですか? 真美:それは……。 瑛人:あっ! 真美:えっ? 瑛人:すいません、止めてください! 真美:ちょっと!瑛人!! : 0:車のブレーキ音。車の扉が開き、瑛人が走っていく。 : 瑛人:詩織!! 詩織:え? 瑛人:詩織!詩織だろ!わかる?覚えてるよな? 詩織:瑛人!?え、なんでこんなとこにいてるの!? 瑛人:今から帰るところで……。詩織はなにしてんだよ、こんなとこで。劇団三日月?立ち上げ講演?なんだよ、詩織、劇団監督になったのか! 詩織:役者は、全然芽がでなかったし……。って、そういう問題じゃないから! もう別れたんだし、あんたの活躍はテレビで見てる!こんなとこ見られたら問題だから……。 瑛人:待って、行くなよ! 真美:瑛人、やめなさい!人が集まってきてる! 詩織8:じゃ、そういうことだから。もう、私のことなんて、ちゃんと忘れて! 瑛人:詩織!! : 0:場面転換・社長室 : 黒崎:まったく。やってくれたね。 瑛人:すいません……。 真美:男友達役で大ブレイク!堀 瑛人、夜の渋谷で大騒ぎ!主演の座も危ういか。 瑛人:本当に……ご迷惑をおかけして……。 黒崎:まあ、いいよ。あの時のことを映像に取っていたファンがいてね。ネットで拡散されて、ドラマみたいな恋だって評判になっている。 真美:おかげで、主演もとれましたしね。 瑛人:えっ?オーディション、まだ受けてないですよ? 真美:芸能界なんて、話題性がすべてよ。 黒崎:とはいえ、今回のは看過できないな。これ以上、あの子に近づくようだったら、私たちとしても、君をかばいきれない。大体、もう五年も経ったんだぞ。そろそろ忘れてもいいころじゃないか。 瑛人:もう、五年も経ったんです。そろそろ。好きな人と、一緒になってもいいじゃないですか。 黒崎:素直なのはいいとは言ったが……ここまでか。 真美:社長、お話が。 黒崎:ん? 真美:瑛人、あなたはもういいわ。台本、覚え始めてね。 瑛人:あ、はい。……本当に、すみませんでした。 : 0:扉を閉める音。 0:場面転換・現場 0:にぎやかな人の声。 : 瑛人:ネプロエンターテイメント所属、堀 瑛人です!今回、主演を努めさせていただきます!よろしくお願いいたします! : 0:拍手の音。 : 黒崎:瑛人、ちょっとこっちへ来てくれないか。 瑛人:えっ?…何かあったんですか? 真美:あなたに会わせたい人がいるの。 黒崎:さっ、入りたまえ。 詩織:……失礼します。 瑛人:えっ?詩織? 詩織:……大事な話があると聞いたんですけど。 黒崎:あぁ。でも、その前に瑛人の演技を近くで見ないか?監督には話はつけてある。 詩織:……見学は結構です。早く話をしてください。 真美:せっかちなのね。見学くらいいいじゃない。もうこんな機会ないかもしれないわよ。 詩織:……。 黒崎:瑛人、頑張れよ。 瑛人:ありがとうございます。 : 0:2人から離れる : 瑛人:……今、どこで劇やろうと思ってるの? 詩織:下北。やっぱり一番人集まるし、私みたいな新参者でも、見に来てくれる人いるし。 瑛人:脚本は? 詩織:プロに頼んだ。っていうか、ぜひ書いてみたいって言われて……。役者もいい人集まったし。 瑛人:違うよ、それは。 詩織:え? 瑛人:詩織は、役者のいいところ見つけて、それを伸ばして、演じる役の深堀がうまいんだ。だからその脚本家さんも、詩織のためなら書こうと思ったんだよ。 詩織:ありがとう。 瑛人:……なあ、詩織…。 真美:話し中ごめんなさい。瑛人、撮影始まるわ。スタンバイ。 瑛人:はい! 真美:山本さんは、瑛人の演技を見てちょうだい。この撮影が終わったら話したいことがあるから。 詩織:あ、はい。分かりました……。 制作:はーい。じゃあシーン8、カット2、テイク1。スタート! 瑛人:(演技として)愛!(息切れ)ようやく、会えた。この手も、この足も、愛のものだよ。どんなに姿が変わっても、オレの好きな愛だよ(涙ぐみつつ) 詩織:すごいですね。劇団にいた時より、ずっと演技うまくなってる。 真美:でも基礎は、あなたに教えてもらったのよ。 詩織:私ですか? 真美:瑛人はいつも言ってる。詩織は恩人だ。演技のことなんて何もわからない僕に、全部教えてくれた。今の僕が役者をできるのは、詩織がいたからだって。 詩織:そんな。言いすぎですよ。 真美:……あなたも、瑛人が好きなの? 詩織:え……それは……。 真美:瑛人ね、五年たっても、あなたのことが好きなんだって。忘れられないんだって。 詩織:……そう、言ってたんですか。 真美:ええ。この間の渋谷の件をみればわかるでしょ。自分がどれだけ愛されて、大切にされて、今も想われているかってことくらい。 詩織:でも、……無理ですよ。瑛人は一流の役者になった。私は、ただの新人監督。そんな関係じゃ、釣り合わないって……。 真美:あなたの劇の脚本を書いた人ね、私の知り合いなの。 詩織:ええっ!?そんな繋がりがあったなんて。 真美:彼、本当に気に入った監督のところじゃなきゃ書かない。瑛人も言ってたけど、あなた、監督としての筋がいいのね。 詩織:まだ、始めたばかりなので、わかりませんけど……。 真美:ネプロエンターテイメントに養成所があるのは知ってる? 詩織:ええ、もちろん。 真美:なら話は早いわ。あなたの監督としての才能を認め、指導者として本気で雇おうと社長は考えているの。 詩織:えっ? 真美:もっと自信を持ちなさい。 制作:休憩入りまーす。 瑛人:ありがとうございました! : 0:走ってくる足音。 : 瑛人:詩織! 詩織:瑛人……。立派になったね。私なんて、まだただの劇団員なのに。それも端役だよ。 瑛人:どんな役でも関係ないって言ったのは詩織だろ。 詩織:そうだけどさ……。 瑛人:……なあ、詩織。 詩織:なに? 瑛人:僕が一番愛しているのは…詩織だよ?五年経っても、それは全然変わってない。 詩織:でも、ようやく主役になったんでしょ?私なんかといたら、ファン逃げちゃうよ。 瑛人:じゃあ……結婚しよう。 詩織:え? 瑛人:熱愛報道なら、スキャンダルだ。でも結婚なら、しかも下積みを支えてくれた彼女なら、ファンも応援してくれる。 詩織:本当に……? 瑛人:ああ。僕は、絶対に詩織を裏切らない。それに、知っているだろ? 詩織:なにを? 瑛人:僕は、ハッピーエンドの申し子だって。 詩織:もう……ばか! 黒崎:真美君。 真美:社長。 黒崎:よかったのかね?好きだったんだろ、瑛人のこと。 真美:……ええ。 黒崎:二人のために彼女を雇いたいって。まったく、お人よしだよ。 真美:この世界に入って、思い知りました。自分だけじゃどうにもならないことがあるって……どれだけ好きでも……(涙ぐんで)。 黒崎:……ほら。ハンカチ。 真美:すみません……。 黒崎:美味いものでも食べにいこう。彼らが結婚するっていうなら、根回しもしておかなきゃいけないし。 真美:はい……。 詩織:ずっと、一緒にいようね。 瑛人:ああ。僕が一番愛しているのは、詩織だけさ。

詩織:(演技として)ずっと、一緒にいようね。 瑛人:(演技として)ああ、この世界が終わったとしても。俺が一番愛しているのは、君だよ。 詩織:(演技として)本当に? 瑛人:(演技として)もちろん。たとえ世界が滅びても、俺は君と、ハッピーエンドを演じて見せる。 詩織:……プッ。あはははは! 瑛人:おい、笑うなよー! 詩織:だって、瑛人、ちょっと真剣すぎない?これ瑛人が演じる役じゃないのにさ。 瑛人:だってさあ、僕、一番下っ端の役でしょ?主役の役とかセリフ入れてみて、勉強しないと。 詩織:えらいね、そういうとこ。 瑛人:あーあ。早く主役になりたいなあ。 詩織:どんな役でも関係ないよ。私には瑛人が一番……なんでもない。 瑛人:ちょ、なに。今なんて言おうとした?! 詩織:なんでもないってー!もう、しつこいなあ! 瑛人:ええ? なんだよもうー。 : 0:扉が開く音 : 黒崎:ここが、君の言っていた劇団かね。 真美:ええ。まだ原石ですが、磨けば光る子がいましてね……。ああ、あの子です。 詩織:あれ?誰か入ってきたよ? 瑛人:座長の知り合いかなあ?すみません、まだ開演時間じゃないんですけど。 黒崎:君が、堀 瑛人君? 瑛人:え? ああ、そうですけど。あの、どちら様で。 黒崎:ネプロエンターテイメント、と言えばわかるかな。 詩織:えっ。業界大手じゃん。えっと、今私たちしかいないんですけど、座長とか呼んできますか? 真美:それには及ばないわ。私たちが興味あるのは、瑛人君。君だけ。 瑛人:……僕? 真美:この間の劇、見せていただいたわ。一番目立たない役どころのはずなのに、その後ろに、人生があった。何を食べて、どうやって生きて、どんな家族構成で、何が嫌いなのか。そのすべてが分かったの。 瑛人:そんな。僕はただ詩織に、あ、彼女に練習付き合ってもらって、それで役を練れただけで。 黒崎:理由はなんでもいいのさ。私たちが求めているのは、優秀な俳優。それも役をしっかり深くまで理解できる頭のいい役者。どうだい?私たちの会社で、マネジメントを受けてみないかい? 瑛人:いいんですか!? 黒崎:ああ。これは名刺だ。打ち合わせと契約の日を決めよう。連絡、待っているよ。 真美:覚えていてね。瑛人君。その名刺は、片道切符。芸能界に入り、そこで活躍するためのモノ。こんなチャンスは、そう、訪れないからね……。 : 0:扉がしまっていく音 : 瑛人:すごい!すごいよ!僕なんかが、ネプロに!?えっ。嘘だろ?これ夢じゃないよな!?……詩織?どうした? 詩織:……おめでとう、瑛人。 瑛人:え……っ。なんでそんな泣きそうなの? 詩織:だってプロになるんでしょ?彼女いたら、ダメじゃん。 瑛人:そんなことないって!隠せばいいんだし、いや、隠さなくても、堂々と恋人だって言えばなんとかなるって。 詩織:ならないよ!(すこし涙ぐんで) 瑛人:詩織……。 詩織:私、馬鹿じゃない。好きな人が羽ばたいてく時に、邪魔するようなことはしたくない。 瑛人:じゃあ……。どうするっていうんだよ……。 詩織:今日は、千秋楽でしょ。終わりにしよう。劇も、私たちの、関係も……。 : 0:場面転換 : 黒崎:よかったよー、瑛人。今回もいいキャラしてたね。 瑛人:でも、またヒロインの男友達役ですよ。この間は、ヒロインの彼氏の親友役。その前は、ヒロインの当て馬役。主役には程遠いですよ。 真美:なに言ってるのよ。主役ってのはね、旬が過ぎたら捨てられるの。でも友達ポジションとか、当て馬ポジションならね、六十才になっても演技ができる。 瑛人:それはそうですけど。 黒崎:それにほら、ネットでもみんな噂してるぞ。堀 瑛人が脇役で出てくれば、どんな悲惨な状況でも、ヒロインたちは絶対に幸せになれる。ハッピーエンドの申し子だって。 瑛人:ハッピーエンドねえ。僕は脇役ばかりでハッピーじゃないですけど。 真美:まったく。あなたの目標は、死ぬまで現役でいることでしょ?だったら喜ばないと。 瑛人:でも、主役を張って、八十まで頑張ってる役者もいるじゃないですか。 黒崎:そんなの、ごく少数さ。ま、今度の主演オーディション受けてみるか?お前も、うちに入って五年たったんだ。顔も売れてきたし、そろそろいいだろ。 瑛人:本当ですか!?はい、頑張ります! 黒崎:ったく。お前は素直だなあ。それは芸能界で生きるうえでの長所だ。大事にしろよ。 : 0:扉がしまる音。黒崎が出ていく。 : 真美:それじゃ、帰りましょうか。車で送っていくわ。 瑛人:あ、はい。よろしくお願いします。まあ、僕は電車でもいいですけど。 真美:今度主演を取るかもなのよ?箔付けって意味では、車での送迎も大事なの。 瑛人:ありがとうございます。それじゃあ、よろしくお願いします。 : 0:道路 : 真美:ねえ、瑛人。 瑛人:はい。 真美:あなた、恋人は作らないの? 瑛人:へ!?な、なんですかいきなり!?今水吹き出すとこでした。 真美:だって、前の彼女と別れて五年でしょ。そろそろ寂しくならないのかなって。 瑛人:そりゃあ……寂しいです。恋愛シーンを演じてても、なんでここに詩織がいないのかなとか。幼馴染役の役者さんが他の男と恋に落ちるシーン演じていたら、僕も、好きな人を失ったんだなって思うし……。 真美:それが、あなたの演技に生きてるのね。 瑛人:でも……寂しいからって、詩織のこと、忘れられるわけないじゃないですか。 真美:……そういうもの? 瑛人:ええ。だって、六年一緒だったんですよ。高校で知り合って、一緒に劇団に入って、毎日一緒に稽古して。僕が役を深く理解できるって言うなら、それ、全部詩織のおかげなんです。 真美:でも、あの子は、その、演技のほうは……。 瑛人:そうなんですよ。役者より、たぶん、監督とかのほうが向いてるやつで。役者に指導することは得意だけど、自分のほうで落とし込むのは苦手っていうか。 真美:珍しいタイプね。 瑛人:ええ。今頃、どうしているのかなぁ。元気にやってるのかなあ。他にいい男できたのかなあ。そう思ったら、新しい恋人なんて、できないです。 真美:……そ、っか……。 瑛人:真美さんは?僕のマネージャーずっとしてくれてますけど、恋人がいたって話、一回も聞いたことないし。 真美:好きな人はいるんだけどねえ。 瑛人:え!?真美さんが!?うわー、その男、損してる~!真美さんほどいい女なんてそうそういませんよ! 真美:そう思ってたんだけどね。その人、私以外の人に夢中なの。好きで好きで、たまらないんだって。 瑛人:えーーー。今度会わせてくださいよー。僕、説教してやりますから!真美さんはすごいんだぞ、かっこいんだぞ、素敵なんだぞ、って。 真美:それは無理かな。 瑛人:何でですか? 真美:それは……。 瑛人:あっ! 真美:えっ? 瑛人:すいません、止めてください! 真美:ちょっと!瑛人!! : 0:車のブレーキ音。車の扉が開き、瑛人が走っていく。 : 瑛人:詩織!! 詩織:え? 瑛人:詩織!詩織だろ!わかる?覚えてるよな? 詩織:瑛人!?え、なんでこんなとこにいてるの!? 瑛人:今から帰るところで……。詩織はなにしてんだよ、こんなとこで。劇団三日月?立ち上げ講演?なんだよ、詩織、劇団監督になったのか! 詩織:役者は、全然芽がでなかったし……。って、そういう問題じゃないから! もう別れたんだし、あんたの活躍はテレビで見てる!こんなとこ見られたら問題だから……。 瑛人:待って、行くなよ! 真美:瑛人、やめなさい!人が集まってきてる! 詩織8:じゃ、そういうことだから。もう、私のことなんて、ちゃんと忘れて! 瑛人:詩織!! : 0:場面転換・社長室 : 黒崎:まったく。やってくれたね。 瑛人:すいません……。 真美:男友達役で大ブレイク!堀 瑛人、夜の渋谷で大騒ぎ!主演の座も危ういか。 瑛人:本当に……ご迷惑をおかけして……。 黒崎:まあ、いいよ。あの時のことを映像に取っていたファンがいてね。ネットで拡散されて、ドラマみたいな恋だって評判になっている。 真美:おかげで、主演もとれましたしね。 瑛人:えっ?オーディション、まだ受けてないですよ? 真美:芸能界なんて、話題性がすべてよ。 黒崎:とはいえ、今回のは看過できないな。これ以上、あの子に近づくようだったら、私たちとしても、君をかばいきれない。大体、もう五年も経ったんだぞ。そろそろ忘れてもいいころじゃないか。 瑛人:もう、五年も経ったんです。そろそろ。好きな人と、一緒になってもいいじゃないですか。 黒崎:素直なのはいいとは言ったが……ここまでか。 真美:社長、お話が。 黒崎:ん? 真美:瑛人、あなたはもういいわ。台本、覚え始めてね。 瑛人:あ、はい。……本当に、すみませんでした。 : 0:扉を閉める音。 0:場面転換・現場 0:にぎやかな人の声。 : 瑛人:ネプロエンターテイメント所属、堀 瑛人です!今回、主演を努めさせていただきます!よろしくお願いいたします! : 0:拍手の音。 : 黒崎:瑛人、ちょっとこっちへ来てくれないか。 瑛人:えっ?…何かあったんですか? 真美:あなたに会わせたい人がいるの。 黒崎:さっ、入りたまえ。 詩織:……失礼します。 瑛人:えっ?詩織? 詩織:……大事な話があると聞いたんですけど。 黒崎:あぁ。でも、その前に瑛人の演技を近くで見ないか?監督には話はつけてある。 詩織:……見学は結構です。早く話をしてください。 真美:せっかちなのね。見学くらいいいじゃない。もうこんな機会ないかもしれないわよ。 詩織:……。 黒崎:瑛人、頑張れよ。 瑛人:ありがとうございます。 : 0:2人から離れる : 瑛人:……今、どこで劇やろうと思ってるの? 詩織:下北。やっぱり一番人集まるし、私みたいな新参者でも、見に来てくれる人いるし。 瑛人:脚本は? 詩織:プロに頼んだ。っていうか、ぜひ書いてみたいって言われて……。役者もいい人集まったし。 瑛人:違うよ、それは。 詩織:え? 瑛人:詩織は、役者のいいところ見つけて、それを伸ばして、演じる役の深堀がうまいんだ。だからその脚本家さんも、詩織のためなら書こうと思ったんだよ。 詩織:ありがとう。 瑛人:……なあ、詩織…。 真美:話し中ごめんなさい。瑛人、撮影始まるわ。スタンバイ。 瑛人:はい! 真美:山本さんは、瑛人の演技を見てちょうだい。この撮影が終わったら話したいことがあるから。 詩織:あ、はい。分かりました……。 制作:はーい。じゃあシーン8、カット2、テイク1。スタート! 瑛人:(演技として)愛!(息切れ)ようやく、会えた。この手も、この足も、愛のものだよ。どんなに姿が変わっても、オレの好きな愛だよ(涙ぐみつつ) 詩織:すごいですね。劇団にいた時より、ずっと演技うまくなってる。 真美:でも基礎は、あなたに教えてもらったのよ。 詩織:私ですか? 真美:瑛人はいつも言ってる。詩織は恩人だ。演技のことなんて何もわからない僕に、全部教えてくれた。今の僕が役者をできるのは、詩織がいたからだって。 詩織:そんな。言いすぎですよ。 真美:……あなたも、瑛人が好きなの? 詩織:え……それは……。 真美:瑛人ね、五年たっても、あなたのことが好きなんだって。忘れられないんだって。 詩織:……そう、言ってたんですか。 真美:ええ。この間の渋谷の件をみればわかるでしょ。自分がどれだけ愛されて、大切にされて、今も想われているかってことくらい。 詩織:でも、……無理ですよ。瑛人は一流の役者になった。私は、ただの新人監督。そんな関係じゃ、釣り合わないって……。 真美:あなたの劇の脚本を書いた人ね、私の知り合いなの。 詩織:ええっ!?そんな繋がりがあったなんて。 真美:彼、本当に気に入った監督のところじゃなきゃ書かない。瑛人も言ってたけど、あなた、監督としての筋がいいのね。 詩織:まだ、始めたばかりなので、わかりませんけど……。 真美:ネプロエンターテイメントに養成所があるのは知ってる? 詩織:ええ、もちろん。 真美:なら話は早いわ。あなたの監督としての才能を認め、指導者として本気で雇おうと社長は考えているの。 詩織:えっ? 真美:もっと自信を持ちなさい。 制作:休憩入りまーす。 瑛人:ありがとうございました! : 0:走ってくる足音。 : 瑛人:詩織! 詩織:瑛人……。立派になったね。私なんて、まだただの劇団員なのに。それも端役だよ。 瑛人:どんな役でも関係ないって言ったのは詩織だろ。 詩織:そうだけどさ……。 瑛人:……なあ、詩織。 詩織:なに? 瑛人:僕が一番愛しているのは…詩織だよ?五年経っても、それは全然変わってない。 詩織:でも、ようやく主役になったんでしょ?私なんかといたら、ファン逃げちゃうよ。 瑛人:じゃあ……結婚しよう。 詩織:え? 瑛人:熱愛報道なら、スキャンダルだ。でも結婚なら、しかも下積みを支えてくれた彼女なら、ファンも応援してくれる。 詩織:本当に……? 瑛人:ああ。僕は、絶対に詩織を裏切らない。それに、知っているだろ? 詩織:なにを? 瑛人:僕は、ハッピーエンドの申し子だって。 詩織:もう……ばか! 黒崎:真美君。 真美:社長。 黒崎:よかったのかね?好きだったんだろ、瑛人のこと。 真美:……ええ。 黒崎:二人のために彼女を雇いたいって。まったく、お人よしだよ。 真美:この世界に入って、思い知りました。自分だけじゃどうにもならないことがあるって……どれだけ好きでも……(涙ぐんで)。 黒崎:……ほら。ハンカチ。 真美:すみません……。 黒崎:美味いものでも食べにいこう。彼らが結婚するっていうなら、根回しもしておかなきゃいけないし。 真美:はい……。 詩織:ずっと、一緒にいようね。 瑛人:ああ。僕が一番愛しているのは、詩織だけさ。