台本概要
520 views
タイトル | #1 スカウティング・ヴィラン~バレンタインナイト編~ |
---|---|
作者名 | あまね (@Amane_1115a) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
バレンタイン(愛しい者) 1年に1度の特別な日に、甘いチョコレートと爆弾はいかがでしょうか。 ヴィラン共の巣窟である街に、今年も『バレンタインナイト』がやってくる。 520 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ショコラ | 女 | 126 | ヴィランが巣食う街のホテルの受付 |
マニーニャ | 男 | 121 | とあるヴィラングループのスカウト担当。見た目は優男だが中身はクズ |
タルボ | 男 | 102 | マニーニャの相棒。見た目も口も悪い |
ミエット | 女 | 38 | バレンタインナイトに心酔する女 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
バレンタイン(愛しい者)
1年に1度の特別な日に、甘いチョコレートと爆弾はいかがでしょうか。
ヴィラン共の巣窟である街に、今年も『バレンタインナイト』がやってくる。
ショコラ:「さぁ、はじめよう。」
ミエット:「今年もやってくる。」
ショコラ:「脳までとろけてしまうようなあまい1日。」
ミエット:「崇(あが)めよ!讃(たた)えよ!刮目(かつもく)せよ!!」
ショコラ:「バレンタインに粛清を。」
0:
ミエット:「バレンタインナイトに賞賛をっ!!」
0:
0:ホテルのロビー
タルボ:「ああーっ!!てめぇ、また俺のパソコン使いやがって!!」
マニーニャ:「やぁタルボ、借りてるよ。」
タルボ:「借りてるよじゃねーよ!このコソ泥がっ!」
マニーニャ:「ははは、そんなに褒めるなよ。」
タルボ:「褒めてねーよ殺すぞっ!」
マニーニャ:「おいおい、冗談に聞こえないなぁ君に言われると。」
タルボ:「冗談かどうか試してみるか?」
ショコラ:「ちょっと!!二人ともやめてくださいよ!」
マニーニャ:「やぁショコラ、今日もかわいいね。」
タルボ:「邪魔すんなチビ。」
ショコラ:「邪魔なのはそっちでしょう?なんでわざわざホテルのロビーで騒ぐんですか!二人とも、それぞれVIPルームとってるでしょ!」
マニーニャ:「お互いの部屋には入らないルールなんだ。」
ショコラ:「なんでそんなルールは守れるのに大人のマナーは守れないんですか、、、」
タルボ:「マナー?はっ、んなもん俺らにあるわけねーだろ。」
ショコラ:「・・・それもそうでした。」
マニーニャ:「えー?僕はあるでしょう。」
ショコラ:「マニーニャさんは普段まともに見える分、怖いんですよ。」
マニーニャ:「えぇ!?なんでさ!」
タルボ:「こう見えてシリアルキラー(連続殺人犯)の立派なヴィランだもんな。」
ショコラ:「そう言うタルボさんもですけどね。」
マニーニャ:「殺した数ならそんなに変わらないだろう?」
ショコラ:「・・・だから怖いんですよ。タルボさんならわかるけど・・・。」
タルボ:「おいチビどーいう意味だ。」
ショコラ:「いててっ、ちょ、いたいいたいっ!」
マニーニャ:「やめなよタルボ、かわいそうだろ。」
ショコラ:「いや説得力無いですよその笑顔。」
0:
ミエット:「あの、すみません。」
ショコラ:「あ、お客様だ!はーい!もう、タルボさん、マニーニャさん。ロビーにいるなら静かにしててくださいね!他のお客様の迷惑になりますから!」
マニーニャ:「ははは、了解。」
タルボ:「けっ、他のお客様って俺らしかいなかったじゃねーか。」
マニーニャ:「・・・珍しいね、女性の一人客なんて。」
タルボ:「そーか?別に珍しくもねーだろ。」
マニーニャ:「しかも見たことない顔だ。」
タルボ:「あん?・・・確かに、この街には似合わねーな、あんな美人。」
マニーニャ:「素人がこのホテルにたどり着くわけがない。」
タルボ:「ふん、見てくれがいいだけの奴が、無事にこの街歩けるわけないしな。一般人ならすぐに攫(さら)われる。」
マニーニャ:「・・・何者だ、あいつ。」
タルボ:「・・・・おい、そんなことより、さっさとパソコン返せよ。」
マニーニャ:「あぁ・・・・あ、検索履歴は毎回削除した方がいいよ。」
タルボ:「ぶっ殺すぞてめぇ!!!余計なもん見てんじゃねー!!」
0:
ショコラ:「お待たせしました、えーっと、ミエットさん。606号室です。」
ミエット:「どうもありがとう。」
ショコラ:「あの、すみません、騒がしくて・・・。」
ミエット:「いいのよ、賑やかで楽しいわ。」
ショコラ:「えっと、今日から3日間滞在で、チェックアウトは2月15日ですよね?」
ミエット:「えぇ、そうよ。」
ショコラ:「・・・2月14日の夜は、街には出ないようにしてください。」
ミエット:「あら、どうして?」
ショコラ:「危険なので。」
ミエット:「おもしろいこと言うのね、普段でも充分危ないところだと思うけど。」
ショコラ:「いや、まぁそうなんですけど、その日は特に・・・。」
ミエット:「・・・2月14日の夜は1年に1度の特別な日。」
ショコラ:「え?」
ミエット:「私の愛しい人に会いに行かなきゃいけないの。ご忠告どうも、小さなレディー。」
ショコラ:「・・・あの、余計なお世話かもしれないんですけど、護身用の銃貸しましょうか?」
ミエット:「、ふふふ。」
ショコラ:「すみません、お姉さん美人だから、それくらい持ってないと、、、」
ミエット:「心配してくれてありがとう、でも大丈夫。」
ショコラ:「え、」
ミエット:「もう持ってるわ。」
ショコラ:「あっ・・・・・ごゆっくりどうぞー、」
0:
マニーニャ:「ねぇねぇショコラ、聞いてよ、タルボったらさー、」
タルボ:「今すぐ黙らねーとその口八つ裂きにするぞ!!」
マニーニャ:「世界の可愛い犬って動画ブックマークしてるんだよ!」
タルボ:「殺す!!!」
ショコラ:「・・・・ほんと、人って見た目で判断しちゃダメですね・・・。」
タルボ:「あ?何言ってんだお前。」
ショコラ:「いえ、さっきのお姉さんといい、普通に見える人ほど、危ないのかもしれません、、、」
マニーニャ:「あぁ、あの人・・・。」
タルボ:「まぁ、まともな奴がこんな所来るわけねーしな。」
ショコラ:「こんな所ってなんですか!」
マニーニャ:「そうだよタルボ。いいホテルじゃないか。」
ショコラ:「うんうん。」
マニーニャ:「綺麗な部屋、可愛いフロントの女の子。」
ショコラ:「そうそう。」
マニーニャ:「人を殺しても見て見ぬフリしてくれる、ヴィラン御用達のホテル!」
ショコラ:「う、んん?」
タルボ:「金さえ払えば後片付けもしてくれるしな。」
ショコラ:「ぐぅ、ぬぬ。褒めてる、のか?」
タルボ:「まぁもっとも、用心棒としている間は部屋代無料らしいし?」
ショコラ:「・・・はぁ、まぁこんな治安悪い街で、女一人の経営じゃ無理がありますし・・・。」
タルボ:「なぁんでこんな割の合わねー仕事してんだ、お前。」
ショコラ:「それはっ、、、」
マニーニャ:「前から不思議だったんだよねー。僕たちが滞在している時から、客の入りはまばらだし、とてもこのホテルを維持するほどの利益は出ていないはずだ。」
ショコラ:「いや、だから人件費を削るために私一人でやってるわけで、」
タルボ:「それでも赤字だろ。どっから金出てんだよ。でかいスポンサーでもついてんのか?」
ショコラ:「・・・・企業秘密ってことにしときましょう!さぁ、お掃除お掃除~!!」
タルボ:「あ、逃げた。」
マニーニャ:「・・・まぁ、誰にでも裏の顔ってあるか。僕はショコラがヴィランでもマフィアの愛人でも驚かないよ。」
タルボ:「あいつが?!ないだろ。ふっつーの女じゃねーか。」
マニーニャ:「・・・タルボは純粋だなぁ。」
タルボ:「おい馬鹿にしてんな?馬鹿にしてんだろ。」
マニーニャ:「普通の女の子が、ヴィラン2人と普通に話していること自体異常だろ。」
タルボ:「あ?あぁ、確かに・・・。」
マニーニャ:「殺人現場を見ても顔色一つ変えないし、死体の処理も手馴れてる。」
タルボ:「あいつのおかげで後処理楽だしな。」
マニーニャ:「気になるなぁ、いつかショコラの本当の姿、見てみたいなぁ・・・。」
タルボ:「・・・おい、殺すなよ。」
マニーニャ:「えぇ?殺さないよ~今は、ね。」
タルボ:「今は、ね。」
マニーニャ:「僕は自分の事を愛してくれる人しか殺せないからねぇ。」
タルボ:「おえ、相変わらず悪趣味だな・・・。」
マニーニャ:「君もそうだろ、殺しの対象者には何かしらこだわりがあるはずだ。」
タルボ:「ねーよそんなもん。殺したいから殺す、やりたいことは我慢しねぇ。」
マニーニャ:「野蛮だなぁ。」
タルボ:「そんなことより!!ボスから連絡は来たか?」
マニーニャ:「・・・来たよ、やっと。今回のターゲットはこいつ。」
タルボ:「・・・バレンタインナイト?はぁーん、だからこの街なのか、」
マニーニャ:「毎年バレンタインの夜にだけ現れる、正体不明、性別不明、謎に包まれたヴィラン・・・。」
タルボ:「だっりぃー、ほとんど情報もないのに、どうやってスカウトすんだよ!」
マニーニャ:「しょうがないよ、ボスがお求めだ。」
タルボ:「けっ、まぁ人探しは俺の専門外だ。まかせた。」
マニーニャ:「・・・ほんと、役割に差がありすぎると思うんだけどなぁ、」
タルボ:「んなことねーだろ、スカウト対象者の情報を集めるのはお前。対象者を力づくでもファミリーに入れるのが俺。最高のコンビじゃねーか。」
マニーニャ:「よく言うよ。スカウトの交渉もろくにできなくていっつも僕がフォローしてるのに。」
タルボ:「あぁ?誰が弱っちぃお前を守ってやってると思う?」
マニーニャ:「自分の身は自分で守れるけど。」
タルボ:「はっ、自分に好意を向けている無防備な奴しか殺れねーくせに。」
マニーニャ:「警戒心がない子ほど、死ぬ瞬間にいい顔を見せてくれるんだぁ。」
0:
ショコラ:「あのー、ロビーで物騒な会話やめてもらえます?」
マニーニャ:「あぁショコラ。丁度いいところに。」
ショコラ:「はい?」
マニーニャ:「ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
ショコラ:「・・・掃除しながらでもいいですか?」
マニーニャ:「もちろん。・・・君はいつからこのホテルにいる?」
ショコラ:「え?そうですねぇ・・・もう6年目、ですね。」
マニーニャ:「なるほど。じゃあこの街でバレンタインを迎えるのは今年で6回目だね。」
ショコラ:「はぁ、まぁ。」
タルボ:「花束でもやろうか?チビ。」
ショコラ:「いりませんよ。」
マニーニャ:「バレンタインナイトについて何か知らないかい?」
ショコラ:「・・・なるほど、そういうことですか。」
タルボ:「あん?」
ショコラ:「バレンタインデーが近い時期に、このホテルに滞在する理由がわかりました。」
マニーニャ:「話が早くて助かるよ。」
ショコラ:「言っときますけど、バレンタインナイトについては私もほとんど知りませんよ。」
タルボ:「おいおい、勿体ぶるなよ。6年もいるんじゃ、この街じゃ古参(こさん)だろ?」
ショコラ:「ほんとに何も。ただ、バレンタインの夜に街は出歩かないようにしてます。毎年物騒ですから。」
マニーニャ:「でも、ショコラはそんなに警戒しなくても大丈夫でしょ。」
タルボ:「あ?なんでだよ。」
マニーニャ:「バレンタインナイトの名前の由来は2つあってね。1つはそのまま、バレンタインの夜しか現れないから。」
タルボ:「単純だな。」
マニーニャ:「もう一つは、ヴィランでありながら、騎士(ナイト)のように紳士的だから・・・。」
タルボ:「なんだそりゃ。ヴィランに紳士もクソもねーだろ。」
マニーニャ:「毎年犠牲になるのは男だけ・・・。それも、女性をターゲットにした人身売買や性犯罪者のヴィラン中心。」
ショコラ:「・・・私に聞かなくても充分詳しいじゃないですか。」
マニーニャ:「ここまでは過去の事件を調べれば簡単に出てくるよ。僕はもっと、バレンタインナイトの人物像が知りたいんだ。」
ショコラ:「人物像?」
マニーニャ:「バレンタインナイトがどんな性格で、どんな思想を持っていて、なぜ男だけを狙うのか。気になるだろう?」
タルボ:「俺はモテない童貞男の逆恨みに一票。」
ショコラ:「ふふ、おもしろい考察ですね。」
マニーニャ:「仲間になるかもしれないんだ、あさってまでにちゃんと勧誘の材料を揃えないと・・・。」
ショコラ:「あ、そうだ。2月14日は、チョコレートに気を付けてくださいね。」
タルボ:「チョコレート?」
ショコラ:「バレンタインナイトの武器ですよ。」
タルボ:「はっ、チョコレートでどうやって殺すんだよ!毒でも入ってんのか?」
ショコラ:「さぁ、食べたことないので知りませんが・・・毎年、チョコレートまみれの焼死体が街中に転がってるから。」
タルボ:「・・・。」
ショコラ:「結構きますよ、人間の焼け焦げた匂いとチョコレートの甘い匂いが混ざって、」
タルボ:「いい、みなまで言うな気持ち悪ぃ。」
マニーニャ:「タルボ、チョコレート好きだもんね。気を付けなよ。」
ショコラ:「意外と甘党なんですね。」
タルボ:「うるせぇよ。あー気分悪ぃ。俺は昼寝でもする。」
ショコラ:「おやすみなさい、では、私も受付に戻りますね。」
マニーニャ:「・・・なんでチョコレートなんだろうね。」
ショコラ:「・・・え、まだ話続きます?」
マニーニャ:「だっておかしいと思わないかい?2月14日にしか現れないことから、バレンタインデーに拘(こだわ)っているのはわかるけど、なぜチョコレートなのか。」
ショコラ:「さぁ、特に気になりませんけど。」
マニーニャ:「バレンタインデーは一般的に、男から女性へ思いを伝える愛の日。贈り物といっても、カードやアクセサリー、ジュエリーに花束・・・チョコレートなんて聞いたことがない。」
ショコラ:「・・・理由なんてないんじゃないですか?」
マニーニャ:「いいや絶対あるはずだ。バレンタインナイトには強いこだわりを感じる。殺人対象者も、活動日も規則性があるのに、チョコレートに何の意味もないわけがない。」
ショコラ:「はぁ・・・私はヴィランの思想なんてわかりませんけど。」
マニーニャ:「ねぇ知ってるショコラ?日本では女性から男性にチョコレートを贈る文化があるんだって。」
ショコラ:「・・・・。」
マニーニャ:「そういえばショコラは、ここに来る前、」
タルボ:「マニーニャ!!」
マニーニャ:「・・・はぁ、タルボ、おねむの時間じゃなかったのかい?」
タルボ:「んなこと言ってる場合かよ、バレンタインナイトだ!」
マニーニャ:「、はぁ?」
タルボ:「外見てみろ!」
マニーニャ:「・・・なんだあれ、」
ショコラ:「あれは・・・カードと、花・・・?」
マニーニャ:「行ってみよう。」
0:
ミエット:「キヒ、ひひひひいあははははははっ!(狂ったような高笑い)さぁ、悪夢の始まりよ・・・。」
0:
ショコラ:「“HappyValentine”~バレンタインナイトに賞賛を~・・・。変わったバレンタインカードですね。」
タルボ:「おえ、街中バラの花とカードを飛ばすとは、気障(きざ)なことしやがる・・・。」
マニーニャ:「・・・戻ろう。」
タルボ:「あぁ?なんでだよ、折角のチャンスじゃねーか。」
マニーニャ:「あれは偽物だ。」
タルボ:「は?」
ショコラ:「・・・模倣犯。」
0:
ミエット:「ダニエル、ヘンリー、ジョセフ、カーター、マイケルウィリアムアンドリューライアンネオ!!!みんなみんなクズばかり・・・私が、バレンタインナイトが、ぐっちゃぐちゃのどっろどろにしてあげる・・・・。」
0:
タルボ:「おいおいおい、ほんとにいいのか?」
マニーニャ:「大丈夫、当日までホテルでのんびり過ごそう。」
タルボ:「あいつが偽物って確証がない限り、接触した方がいいだろ、」
マニーニャ:「偽物さ。というより、お粗末な模倣犯だよ。」
タルボ:「だからなんでそう言い切れるんだよ。」
マニーニャ:「まずバレンタインナイトを名乗っている割にはやり口が違いすぎる。派手に昼間から街中にカードと花をばらまき、存在を知らしめるような演出。自己顕示欲の塊のようだ。」
タルボ:「・・・。」
マニーニャ:「もう何人か被害が出ているようだが、その中には巻き込まれてケガをした女性もいる。これじゃあただのヴィラン。これまでのバレンタインナイトの特徴をまったく捉(とら)えていない。」
タルボ:「仮にそいつが偽物でも模倣犯でも、止めなきゃ当日の夜、本物は来ないんじゃねーのか?こんだけ派手にやられてたら。」
マニーニャ:「来るさ。ねぇ、ショコラ。」
ショコラ:「・・・・さぁ、どうでしょうね。」
タルボ:「あ?なんでここでチビが出てくんだよ。」
マニーニャ:「さ、仕事仕事~。」
タルボ:「おいマニーニャ!・・・ちっ、ほんとに、わけわかんねー。」
ショコラ:「・・・外、騒がしいですね。」
タルボ:「あぁ、こりゃ・・・祭りだな、」
0:
ミエット:「ねーぇ?いまどんな気分?ハッピーで気持ちい?答えなさいよ!!ほら、ほらほらほらっ!!弱い女ターゲットにして、薬使っておもちゃにして・・・ねぇ?どう、今度は自分がおもちゃになる気分は・・・。」
0:
ショコラ:「どうして模倣犯なんて現れたのでしょう、」
0:
ミエット:「こんなものじゃ終わらないわよ?すぐに楽になんてさせないんだから・・・。」
0:
タルボ:「あ?んなもん、そいつに罪をなすりつけるとか、」
0:
ミエット:「バレンタインナイト・・・私でもできたわ、案外簡単なのね、人を壊すのって、」
0:
タルボ:「対抗意識もあるんじゃねーのか?」
ショコラ:「対抗意識・・・。」
タルボ:「あいつでもやれんなら自分だって、とか。よくわかんねーけど。」
0:
ミエット:「あぁ、早く会いたい・・・私の愛しい人・・・バレンタインナイトっ!!はぁ、もし一目会えたなら、あなたに、いいえあなたを・・・」
0:
タルボ:「あとはそうだな、憧れや懸想(けそう)で自分もそうなりたい、って気持ちとか、」
ショコラ:「・・・タルボさん、意外と言葉知ってるんですね。」
タルボ:「おい、生意気言うじゃねーかおら、」
ショコラ:「いひゃいれふ、ごめんなはい。」
0:
ミエット:「殺してしまいたい。」
0:
0:バレンタイン当日
ショコラ:「あ、おはようございます、タルボさん。」
タルボ:「おー・・・」
ショコラ:「何だかお疲れのようですね。」
タルボ:「疲れもするだろ、あの日から朝から晩までボンボンボンボン、爆発の音に悲鳴、女の高笑い・・・黙って寝れやしねー。」
ショコラ:「確かに、ここまで騒がしいのも困りものですね。」
タルボ:「・・・マニーニャは?」
ショコラ:「え?見てませんけど・・・まだ寝てるんじゃないですか?」
タルボ:「部屋にはいなかったんだが・・・ちっ、勝手な行動ばかりしやがって。」
ショコラ:「・・・あ、そうだタルボさん。はい、これ。」
タルボ:「あ?何だこりゃ。」
ショコラ:「ハッピーバレンタイン。」
タルボ:「はぁ?・・・チョコレート?」
ショコラ:「私の故郷では、お世話になっている人にチョコレートをプレゼントするんです。タルボさん、甘いものお好きだと聞いたので。」
タルボ:「・・・毒でも入ってんじゃねーだろうな。」
ショコラ:「失礼ですね。入ってませんよ、」
タルボ:「うん、うまい、、、、ぐっ、んだこれ、ゲホッ、(咳き込む)なにいれやがった、くそっ、」
0:気を失うタルボ
ショコラ:「・・・毒は、ね。・・・よい夢を、タルボさん。」
0:夜、ホテルの屋上
マニーニャ:「やぁショコラ。珍しい場所で会うね。」
ショコラ:「・・・ほんとですね。こんな時間に屋上で一体何を?マニーニャさん。」
マニーニャ:「いやぁ?そろそろ本物のバレンタインナイトが動き出す頃かな、と見に来ただけさ。」
ショコラ:「そうですか。」
マニーニャ:「さっきからタルボと連絡が取れないんだけど、何か知らないかい?」
ショコラ:「・・・タルボさんなら、朝からお疲れのようで、ロビーのソファで眠ってましたけど。」
マニーニャ:「ふーん、普段人前では寝ない、警戒心の強いタルボがねぇ。珍しいこともあるもんだ。」
ショコラ:「・・・。」
マニーニャ:「あ、そうだショコラ、僕にはチョコレートくれないのかい?」
ショコラ:「はぁ・・・やっぱり先にマニーニャさんを眠らせるべきでした。」
マニーニャ:「あはははは、そうだね、無駄な探り合いはやめよう。初めまして、バレンタインナイト。僕はマニーニャ。とあるヴィランファミリーのスカウト担当。よろしくね。」
ショコラ:「この姿でははじめまして。」
マニーニャ:「早速だけど、僕たちのファミリーに入らないかい?」
ショコラ:「残念ですが、今あなたとゆっくり話している時間はありません。」
マニーニャ:「あぁ、ごめんよ、つい先走っちゃって。だけど焦る気持ちもわかるだろ?君には、バレンタインの夜にしか会えないんだから。」
ショコラ:「はぁ・・・。」
マニーニャ:「いいじゃないか、どうせ君が今日ヤる予定だったターゲットは、ほとんどこの偽物がヤってくれたんだから。」
ミエット:「っ、離しなさいよ!!」
ショコラ:「・・・驚いた、捕まえてたんですね。」
マニーニャ:「君のためにね。」
ミエット:「ああ!!バレンタインナイト!!会いたかったっ、あぁお願い、今すぐこの縄を解いて!!」
マニーニャ:「うるさいなぁ、折角の勧誘も雰囲気ぶち壊しじゃないか。」
ショコラ:「どうやってこの人を?」
マニーニャ:「んん?多分僕もこいつのターゲットだったんだろうね。ありがたいことに、向こうから来てくれたから、特製の催涙ガスと筋弛緩剤(きんしかんざい)でね。」
ショコラ:「・・・ということはマニーニャさんもバレンタインナイトの粛清対象だと。」
マニーニャ:「光栄なことにね。」
ショコラ:「・・・・。」
マニーニャ:「あぁ待って待って。その爆弾を下げてくれ。確かに今まで殺した中に女性はいるけど、君の粛清対象とやらにはならないよ。」
ショコラ:「.・・・私が殺す人物の特徴を知っているような口ぶりですね。」
マニーニャ:「知ってるさ。6年前、バレンタインナイトがこの街で活躍した日から今日まで、全部の事件を洗い出した。そこから見えてくる対象の特徴は、」
ミエット:「女性をターゲットにした人身売買に関わる者。次に性犯罪者。そして、この2つに必ず共通しているのは、」
マニーニャ:「・・・この街で事件を起こした男だけ。なんだ、君も知っていたのか。」
ミエット:「ふふふ、当たり前でしょう、調べれば簡単にわかることを、よくもまぁ自信満々に・・・。」
マニーニャ:「その割にはここ数日、関係のないヴィランも無節操に殺してたみたいだけど・・・。と、まぁ今言ったとおりだ。僕はこの街で女性を殺したことはないから、君に殺される心配はない。」
ショコラ:「・・・わかりませんよ。私だって、気が変わることくらいっ、ぐっ、」
0:縄から抜け出したミエット、ショコラの胸倉をつかみ地面に叩きつける
マニーニャ:「ショコラ!!くそ、もう薬が、」
ミエット:「動かないでっ!!邪魔したら殺す、」
ショコラ:「・・・マニーニャさん、大丈夫です。離れててください。」
マニーニャ:「・・・。」
ミエット:「あぁ、バレンタインナイト、会いたかったの、」
ショコラ:「・・・一体どうして、」
ミエット:「えぇ覚えていないでしょうね、私のことなんて。だけど私は覚えているわ、いいえ忘れられるわけがない・・・。」
タルボ:「マニーニャ!」
マニーニャ:「やぁタルボ、やっとお目覚めかい?もう夜だよ。」
タルボ:「くそ、チビにやられた、って・・・・どういう状況だ?」
マニーニャ:「・・・まぁ静かに見てなよ。」
ミエット:「私はミエット。2月14日、この街で恋人を殺されたの・・・そして、泣き叫ぶ私の前にあなたが現れた・・・。」
ショコラ:「・・・。」
ミエット:「バレンタインナイトは知っていたわ。1年に1度しか現れない、バレンタインの騎士。私はあなたに頼んだ、恋人を殺した奴を同じ目に合わせて、と。だけどあなたは断った。なぜなら、」
ショコラ:「私はこの街で、女性をターゲットにした者しか殺さない。」
ミエット:「・・・えぇそうよ、一言一句同じ言葉をあの夜のあなたも言ったわ。まさか断られるなんて思ってなかった私は、ならせめて、私を殺してと頼んだ。だけどそれも断られた。」
タルボ:「・・・おい、なんでだよ。」
マニーニャ:「はぁ・・・ちゃんと話聞いてた?」
タルボ:「いや遠くてあんまり聞こえてねぇ。てか、あのチビがバレンタインナイトだったのか?!」
マニーニャ:「ちょっとタルボ、今いいところだから静かに!」
0:
ミエット:「おかげで今日まで無様に生きているわ・・・自分で死ぬこともできずに。恋人を亡くした悲しみは、いつしかあなたへの怒りに変わっていった。おかしいでしょう?あなたへの執着、恨み、憧れや憎しみが混ざってわけわかんなくなっちゃったの・・・。」
ショコラ:「あなたは一体私に何を望んでいるんですか?」
ミエット:「・・・・・殺してほしい、」
ショコラ:「無理です。」
タルボ:「よぉ姉ちゃん、俺が殺ってやろーか?」
ミエット:「ゴミは黙ってなさい!!男に殺されるだなんて、想像しただけでも虫唾が走る!」
タルボ:「・・・んだよ、人がせっかく親切心で、」
マニーニャ:「いや、それは怒られるよ。空気読みなよ。」
タルボ:「るせっ!」
ミエット:「ねぇお願い、もうこれ以上耐えられないの、あの人がいなくても生きている私に、幸せそうな人たちを見るのも・・・暗い感情に押しつぶされて私が私じゃなくなっちゃう!」
ショコラ:「・・・男性に殺されたくないなら、女性の殺し屋を紹介します。」
ミエット:「それじゃあダメだって、わかって言ってるでしょ?あなたじゃないとダメなの・・・あなたの思想やルールなんて知らない、あなたには責任があるのよ。」
ショコラ:「・・・はぁ、まぁそこまで言うなら、」
ミエット:「あ・・・あぁ、ありがとう・・・。これでやっと、、、」
マニーニャ:「ショコラ?」
ショコラ:「確かに、私にも責任があると言われれば強く否定もできませんし、」
マニーニャ:「やめなよショコラ。」
ショコラ:「それに、意地を張るほどルールに拘(こだわ)っているわけでも、」
マニーニャ:「やめろって言ってるんだけど。」
ショコラ:「、マニーニャさん?」
タルボ:「はーぁ、始まったよ、マニーニャの悪癖(あくへき)。」
マニーニャ:「なんだよそれ・・・キャラ崩壊だよ。バレンタインナイトは男しか殺さない!バレンタインの夜しか現れない!それがかっこいいんじゃないか!!」
ショコラ:「?」
マニーニャ:「つまらない女の感情一つで、そんなにあっさり自分の定義、思想を変えてしまうのかい?つまらないつまらないつまらない、それじゃあダメだ。」
ショコラ:「なに言って、」
タルボ:「マニーニャはな、完全キャラ設定厨なんだよ。」
ショコラ:「はい?」
タルボ:「ほらあんだろ、決まった武器しか使わないとか、殺すときには絶対同じセリフを言うとか。そーいう設定があるヴィラン、ヒーロが異常なほど好きなんだよ。だから俺も、変なキャラ設定つけられたし。」
ショコラ:「・・・そんなのありました?」
タルボ:「交渉術を身に着けようと専門書読んでたら本燃やされた。」
ショコラ:「えぇ、」
マニーニャ:「だってそうだろ、タルボは交渉なんてできないから力で解決する!勤勉な野蛮人なんてキャラじゃない。」
タルボ:「な、気持ち悪いだろ。俺よりよっぽど歪んでんだよこいつ。」
マニーニャ:「君の流儀を変えるほど、この女に価値はないよ。」
ショコラ:「え、」
タルボ:「あーぁ、殺りやがった。」
ミエット:「が、はっ、な、んでっ・・・バレンタイン、ナイt、」
ショコラ:「・・・これでマニーニャさんも私の粛清対象に入りましたね。」
マニーニャ:「わぁほんとだ、君に狙われるなんて心が躍(おど)るよ。」
ショコラ:「言い残すことはそれだけですか?」
マニーニャ:「あれ?何だか怒ってる?」
ショコラ:「・・・なるほど、わざわざ目の前でこの人を殺したのも、すべて計算済みだったんですね。」
マニーニャ:「んん?」
ショコラ:「0:03分・・・バレンタイン終了です。」
マニーニャ:「あははは、さすが。そうだよね、設定は守ろうね。」
ショコラ:「性格悪いですね。」
マニーニャ:「どうもありがとう。」
ショコラ:「来年、必ず殺してあげますよ。」
マニーニャ:「1年越しの約束だなんて、随分ロマンチックじゃないか。」
タルボ:「してやられたな、チビ。」
ショコラ:「はぁ・・・。今年のバレンタインは疲れました。」
マニーニャ:「ねぇショコラ。君はどうしてバレンタインの夜に?」
ショコラ:「さぁ、どうしてでしょうか。」
タルボ:「質問を質問で返すなよ。」
ショコラ:「ふふ、すぐに答えがわかってもつまらないじゃないですか。」
マニーニャ:「他にも聞きたいことがたくさんある。どうして女性を狙った男しか殺さないのか、そして、何故この街にこだわるのか・・・。」
ショコラ:「・・・謎に満ちたままの方が、魅力的では?」
マニーニャ:「そうだね、そういう設定も惹かれるけど・・・。」
タルボ:「まぁ何だっていい。これから知っていけばいいんだから。よぉチビ、俺たちのところへ来いよ。毎日悪いことし放題だぜ?」
ショコラ:「・・・とても魅力的なお誘いですけど。」
タルボ:「おいおいおい、まさか断るつもりか?」
ショコラ:「私がヴィラン・・・バレンタインナイトになるのは2月14日だけ。その日以外はただのホテルの受付。ただのショコラです。」
マニーニャ:「それでもいいと言ったら?ただのショコラも、バレンタインナイトも、僕たちはウェルカムさ。」
ショコラ:「ふふ、もしかして口説いてます?」
マニーニャ:「やっと気付いた?」
ショコラ:「私には勿体ないお話です。」
タルボ:「おい!」
ショコラ:「マニーニャさん、タルボさん、さようなら。」
マニーニャ:「・・・また会えるかい?」
ショコラ:「ただのショコラにはいつでも・・・。」
マニーニャ:「君には?」
ショコラ:「ふふ、来年のバレンタインの夜に、きっと。」
マニーニャ:「・・・あーあ、行っちゃった。」
タルボ:「どうすんだよ、ボスへの報告。」
マニーニャ:「うーん、取り合えず、長期戦覚悟で待ってもらおうか。」
タルボ:「それで納得するかぁ?もうめんどくさいから弱すぎて殺しちまったことにしようぜ!」
マニーニャ:「1年越しにウソがばれたとき、痛い目見るのは君だよ、タルボ。」
タルボ:「ちっ。」
マニーニャ:「まぁバレンタインナイトには必ずまた会えるさ。僕が粛清対象に入ったからね。」
タルボ:「・・・お前、わざと殺しただろ。」
マニーニャ:「えぇ?何のことかな?」
タルボ:「自分の事を愛してくれる奴しか殺さないんじゃなかったか?あ?」
マニーニャ:「そんなこと、どうでもいいじゃないか。」
タルボ:「お前、人には設定だの流儀だの言っておきながらっ・・・。」
マニーニャ:「さぁさぁ、早く次のターゲットをボスに送ってもらおう。」
タルボ:「逃げんなマニーニャ!」
0:
ショコラ:「ハッピーバレンタイン・・・来年また、お会いしましょう。」
バレンタイン(愛しい者)
1年に1度の特別な日に、甘いチョコレートと爆弾はいかがでしょうか。
ヴィラン共の巣窟である街に、今年も『バレンタインナイト』がやってくる。
ショコラ:「さぁ、はじめよう。」
ミエット:「今年もやってくる。」
ショコラ:「脳までとろけてしまうようなあまい1日。」
ミエット:「崇(あが)めよ!讃(たた)えよ!刮目(かつもく)せよ!!」
ショコラ:「バレンタインに粛清を。」
0:
ミエット:「バレンタインナイトに賞賛をっ!!」
0:
0:ホテルのロビー
タルボ:「ああーっ!!てめぇ、また俺のパソコン使いやがって!!」
マニーニャ:「やぁタルボ、借りてるよ。」
タルボ:「借りてるよじゃねーよ!このコソ泥がっ!」
マニーニャ:「ははは、そんなに褒めるなよ。」
タルボ:「褒めてねーよ殺すぞっ!」
マニーニャ:「おいおい、冗談に聞こえないなぁ君に言われると。」
タルボ:「冗談かどうか試してみるか?」
ショコラ:「ちょっと!!二人ともやめてくださいよ!」
マニーニャ:「やぁショコラ、今日もかわいいね。」
タルボ:「邪魔すんなチビ。」
ショコラ:「邪魔なのはそっちでしょう?なんでわざわざホテルのロビーで騒ぐんですか!二人とも、それぞれVIPルームとってるでしょ!」
マニーニャ:「お互いの部屋には入らないルールなんだ。」
ショコラ:「なんでそんなルールは守れるのに大人のマナーは守れないんですか、、、」
タルボ:「マナー?はっ、んなもん俺らにあるわけねーだろ。」
ショコラ:「・・・それもそうでした。」
マニーニャ:「えー?僕はあるでしょう。」
ショコラ:「マニーニャさんは普段まともに見える分、怖いんですよ。」
マニーニャ:「えぇ!?なんでさ!」
タルボ:「こう見えてシリアルキラー(連続殺人犯)の立派なヴィランだもんな。」
ショコラ:「そう言うタルボさんもですけどね。」
マニーニャ:「殺した数ならそんなに変わらないだろう?」
ショコラ:「・・・だから怖いんですよ。タルボさんならわかるけど・・・。」
タルボ:「おいチビどーいう意味だ。」
ショコラ:「いててっ、ちょ、いたいいたいっ!」
マニーニャ:「やめなよタルボ、かわいそうだろ。」
ショコラ:「いや説得力無いですよその笑顔。」
0:
ミエット:「あの、すみません。」
ショコラ:「あ、お客様だ!はーい!もう、タルボさん、マニーニャさん。ロビーにいるなら静かにしててくださいね!他のお客様の迷惑になりますから!」
マニーニャ:「ははは、了解。」
タルボ:「けっ、他のお客様って俺らしかいなかったじゃねーか。」
マニーニャ:「・・・珍しいね、女性の一人客なんて。」
タルボ:「そーか?別に珍しくもねーだろ。」
マニーニャ:「しかも見たことない顔だ。」
タルボ:「あん?・・・確かに、この街には似合わねーな、あんな美人。」
マニーニャ:「素人がこのホテルにたどり着くわけがない。」
タルボ:「ふん、見てくれがいいだけの奴が、無事にこの街歩けるわけないしな。一般人ならすぐに攫(さら)われる。」
マニーニャ:「・・・何者だ、あいつ。」
タルボ:「・・・・おい、そんなことより、さっさとパソコン返せよ。」
マニーニャ:「あぁ・・・・あ、検索履歴は毎回削除した方がいいよ。」
タルボ:「ぶっ殺すぞてめぇ!!!余計なもん見てんじゃねー!!」
0:
ショコラ:「お待たせしました、えーっと、ミエットさん。606号室です。」
ミエット:「どうもありがとう。」
ショコラ:「あの、すみません、騒がしくて・・・。」
ミエット:「いいのよ、賑やかで楽しいわ。」
ショコラ:「えっと、今日から3日間滞在で、チェックアウトは2月15日ですよね?」
ミエット:「えぇ、そうよ。」
ショコラ:「・・・2月14日の夜は、街には出ないようにしてください。」
ミエット:「あら、どうして?」
ショコラ:「危険なので。」
ミエット:「おもしろいこと言うのね、普段でも充分危ないところだと思うけど。」
ショコラ:「いや、まぁそうなんですけど、その日は特に・・・。」
ミエット:「・・・2月14日の夜は1年に1度の特別な日。」
ショコラ:「え?」
ミエット:「私の愛しい人に会いに行かなきゃいけないの。ご忠告どうも、小さなレディー。」
ショコラ:「・・・あの、余計なお世話かもしれないんですけど、護身用の銃貸しましょうか?」
ミエット:「、ふふふ。」
ショコラ:「すみません、お姉さん美人だから、それくらい持ってないと、、、」
ミエット:「心配してくれてありがとう、でも大丈夫。」
ショコラ:「え、」
ミエット:「もう持ってるわ。」
ショコラ:「あっ・・・・・ごゆっくりどうぞー、」
0:
マニーニャ:「ねぇねぇショコラ、聞いてよ、タルボったらさー、」
タルボ:「今すぐ黙らねーとその口八つ裂きにするぞ!!」
マニーニャ:「世界の可愛い犬って動画ブックマークしてるんだよ!」
タルボ:「殺す!!!」
ショコラ:「・・・・ほんと、人って見た目で判断しちゃダメですね・・・。」
タルボ:「あ?何言ってんだお前。」
ショコラ:「いえ、さっきのお姉さんといい、普通に見える人ほど、危ないのかもしれません、、、」
マニーニャ:「あぁ、あの人・・・。」
タルボ:「まぁ、まともな奴がこんな所来るわけねーしな。」
ショコラ:「こんな所ってなんですか!」
マニーニャ:「そうだよタルボ。いいホテルじゃないか。」
ショコラ:「うんうん。」
マニーニャ:「綺麗な部屋、可愛いフロントの女の子。」
ショコラ:「そうそう。」
マニーニャ:「人を殺しても見て見ぬフリしてくれる、ヴィラン御用達のホテル!」
ショコラ:「う、んん?」
タルボ:「金さえ払えば後片付けもしてくれるしな。」
ショコラ:「ぐぅ、ぬぬ。褒めてる、のか?」
タルボ:「まぁもっとも、用心棒としている間は部屋代無料らしいし?」
ショコラ:「・・・はぁ、まぁこんな治安悪い街で、女一人の経営じゃ無理がありますし・・・。」
タルボ:「なぁんでこんな割の合わねー仕事してんだ、お前。」
ショコラ:「それはっ、、、」
マニーニャ:「前から不思議だったんだよねー。僕たちが滞在している時から、客の入りはまばらだし、とてもこのホテルを維持するほどの利益は出ていないはずだ。」
ショコラ:「いや、だから人件費を削るために私一人でやってるわけで、」
タルボ:「それでも赤字だろ。どっから金出てんだよ。でかいスポンサーでもついてんのか?」
ショコラ:「・・・・企業秘密ってことにしときましょう!さぁ、お掃除お掃除~!!」
タルボ:「あ、逃げた。」
マニーニャ:「・・・まぁ、誰にでも裏の顔ってあるか。僕はショコラがヴィランでもマフィアの愛人でも驚かないよ。」
タルボ:「あいつが?!ないだろ。ふっつーの女じゃねーか。」
マニーニャ:「・・・タルボは純粋だなぁ。」
タルボ:「おい馬鹿にしてんな?馬鹿にしてんだろ。」
マニーニャ:「普通の女の子が、ヴィラン2人と普通に話していること自体異常だろ。」
タルボ:「あ?あぁ、確かに・・・。」
マニーニャ:「殺人現場を見ても顔色一つ変えないし、死体の処理も手馴れてる。」
タルボ:「あいつのおかげで後処理楽だしな。」
マニーニャ:「気になるなぁ、いつかショコラの本当の姿、見てみたいなぁ・・・。」
タルボ:「・・・おい、殺すなよ。」
マニーニャ:「えぇ?殺さないよ~今は、ね。」
タルボ:「今は、ね。」
マニーニャ:「僕は自分の事を愛してくれる人しか殺せないからねぇ。」
タルボ:「おえ、相変わらず悪趣味だな・・・。」
マニーニャ:「君もそうだろ、殺しの対象者には何かしらこだわりがあるはずだ。」
タルボ:「ねーよそんなもん。殺したいから殺す、やりたいことは我慢しねぇ。」
マニーニャ:「野蛮だなぁ。」
タルボ:「そんなことより!!ボスから連絡は来たか?」
マニーニャ:「・・・来たよ、やっと。今回のターゲットはこいつ。」
タルボ:「・・・バレンタインナイト?はぁーん、だからこの街なのか、」
マニーニャ:「毎年バレンタインの夜にだけ現れる、正体不明、性別不明、謎に包まれたヴィラン・・・。」
タルボ:「だっりぃー、ほとんど情報もないのに、どうやってスカウトすんだよ!」
マニーニャ:「しょうがないよ、ボスがお求めだ。」
タルボ:「けっ、まぁ人探しは俺の専門外だ。まかせた。」
マニーニャ:「・・・ほんと、役割に差がありすぎると思うんだけどなぁ、」
タルボ:「んなことねーだろ、スカウト対象者の情報を集めるのはお前。対象者を力づくでもファミリーに入れるのが俺。最高のコンビじゃねーか。」
マニーニャ:「よく言うよ。スカウトの交渉もろくにできなくていっつも僕がフォローしてるのに。」
タルボ:「あぁ?誰が弱っちぃお前を守ってやってると思う?」
マニーニャ:「自分の身は自分で守れるけど。」
タルボ:「はっ、自分に好意を向けている無防備な奴しか殺れねーくせに。」
マニーニャ:「警戒心がない子ほど、死ぬ瞬間にいい顔を見せてくれるんだぁ。」
0:
ショコラ:「あのー、ロビーで物騒な会話やめてもらえます?」
マニーニャ:「あぁショコラ。丁度いいところに。」
ショコラ:「はい?」
マニーニャ:「ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
ショコラ:「・・・掃除しながらでもいいですか?」
マニーニャ:「もちろん。・・・君はいつからこのホテルにいる?」
ショコラ:「え?そうですねぇ・・・もう6年目、ですね。」
マニーニャ:「なるほど。じゃあこの街でバレンタインを迎えるのは今年で6回目だね。」
ショコラ:「はぁ、まぁ。」
タルボ:「花束でもやろうか?チビ。」
ショコラ:「いりませんよ。」
マニーニャ:「バレンタインナイトについて何か知らないかい?」
ショコラ:「・・・なるほど、そういうことですか。」
タルボ:「あん?」
ショコラ:「バレンタインデーが近い時期に、このホテルに滞在する理由がわかりました。」
マニーニャ:「話が早くて助かるよ。」
ショコラ:「言っときますけど、バレンタインナイトについては私もほとんど知りませんよ。」
タルボ:「おいおい、勿体ぶるなよ。6年もいるんじゃ、この街じゃ古参(こさん)だろ?」
ショコラ:「ほんとに何も。ただ、バレンタインの夜に街は出歩かないようにしてます。毎年物騒ですから。」
マニーニャ:「でも、ショコラはそんなに警戒しなくても大丈夫でしょ。」
タルボ:「あ?なんでだよ。」
マニーニャ:「バレンタインナイトの名前の由来は2つあってね。1つはそのまま、バレンタインの夜しか現れないから。」
タルボ:「単純だな。」
マニーニャ:「もう一つは、ヴィランでありながら、騎士(ナイト)のように紳士的だから・・・。」
タルボ:「なんだそりゃ。ヴィランに紳士もクソもねーだろ。」
マニーニャ:「毎年犠牲になるのは男だけ・・・。それも、女性をターゲットにした人身売買や性犯罪者のヴィラン中心。」
ショコラ:「・・・私に聞かなくても充分詳しいじゃないですか。」
マニーニャ:「ここまでは過去の事件を調べれば簡単に出てくるよ。僕はもっと、バレンタインナイトの人物像が知りたいんだ。」
ショコラ:「人物像?」
マニーニャ:「バレンタインナイトがどんな性格で、どんな思想を持っていて、なぜ男だけを狙うのか。気になるだろう?」
タルボ:「俺はモテない童貞男の逆恨みに一票。」
ショコラ:「ふふ、おもしろい考察ですね。」
マニーニャ:「仲間になるかもしれないんだ、あさってまでにちゃんと勧誘の材料を揃えないと・・・。」
ショコラ:「あ、そうだ。2月14日は、チョコレートに気を付けてくださいね。」
タルボ:「チョコレート?」
ショコラ:「バレンタインナイトの武器ですよ。」
タルボ:「はっ、チョコレートでどうやって殺すんだよ!毒でも入ってんのか?」
ショコラ:「さぁ、食べたことないので知りませんが・・・毎年、チョコレートまみれの焼死体が街中に転がってるから。」
タルボ:「・・・。」
ショコラ:「結構きますよ、人間の焼け焦げた匂いとチョコレートの甘い匂いが混ざって、」
タルボ:「いい、みなまで言うな気持ち悪ぃ。」
マニーニャ:「タルボ、チョコレート好きだもんね。気を付けなよ。」
ショコラ:「意外と甘党なんですね。」
タルボ:「うるせぇよ。あー気分悪ぃ。俺は昼寝でもする。」
ショコラ:「おやすみなさい、では、私も受付に戻りますね。」
マニーニャ:「・・・なんでチョコレートなんだろうね。」
ショコラ:「・・・え、まだ話続きます?」
マニーニャ:「だっておかしいと思わないかい?2月14日にしか現れないことから、バレンタインデーに拘(こだわ)っているのはわかるけど、なぜチョコレートなのか。」
ショコラ:「さぁ、特に気になりませんけど。」
マニーニャ:「バレンタインデーは一般的に、男から女性へ思いを伝える愛の日。贈り物といっても、カードやアクセサリー、ジュエリーに花束・・・チョコレートなんて聞いたことがない。」
ショコラ:「・・・理由なんてないんじゃないですか?」
マニーニャ:「いいや絶対あるはずだ。バレンタインナイトには強いこだわりを感じる。殺人対象者も、活動日も規則性があるのに、チョコレートに何の意味もないわけがない。」
ショコラ:「はぁ・・・私はヴィランの思想なんてわかりませんけど。」
マニーニャ:「ねぇ知ってるショコラ?日本では女性から男性にチョコレートを贈る文化があるんだって。」
ショコラ:「・・・・。」
マニーニャ:「そういえばショコラは、ここに来る前、」
タルボ:「マニーニャ!!」
マニーニャ:「・・・はぁ、タルボ、おねむの時間じゃなかったのかい?」
タルボ:「んなこと言ってる場合かよ、バレンタインナイトだ!」
マニーニャ:「、はぁ?」
タルボ:「外見てみろ!」
マニーニャ:「・・・なんだあれ、」
ショコラ:「あれは・・・カードと、花・・・?」
マニーニャ:「行ってみよう。」
0:
ミエット:「キヒ、ひひひひいあははははははっ!(狂ったような高笑い)さぁ、悪夢の始まりよ・・・。」
0:
ショコラ:「“HappyValentine”~バレンタインナイトに賞賛を~・・・。変わったバレンタインカードですね。」
タルボ:「おえ、街中バラの花とカードを飛ばすとは、気障(きざ)なことしやがる・・・。」
マニーニャ:「・・・戻ろう。」
タルボ:「あぁ?なんでだよ、折角のチャンスじゃねーか。」
マニーニャ:「あれは偽物だ。」
タルボ:「は?」
ショコラ:「・・・模倣犯。」
0:
ミエット:「ダニエル、ヘンリー、ジョセフ、カーター、マイケルウィリアムアンドリューライアンネオ!!!みんなみんなクズばかり・・・私が、バレンタインナイトが、ぐっちゃぐちゃのどっろどろにしてあげる・・・・。」
0:
タルボ:「おいおいおい、ほんとにいいのか?」
マニーニャ:「大丈夫、当日までホテルでのんびり過ごそう。」
タルボ:「あいつが偽物って確証がない限り、接触した方がいいだろ、」
マニーニャ:「偽物さ。というより、お粗末な模倣犯だよ。」
タルボ:「だからなんでそう言い切れるんだよ。」
マニーニャ:「まずバレンタインナイトを名乗っている割にはやり口が違いすぎる。派手に昼間から街中にカードと花をばらまき、存在を知らしめるような演出。自己顕示欲の塊のようだ。」
タルボ:「・・・。」
マニーニャ:「もう何人か被害が出ているようだが、その中には巻き込まれてケガをした女性もいる。これじゃあただのヴィラン。これまでのバレンタインナイトの特徴をまったく捉(とら)えていない。」
タルボ:「仮にそいつが偽物でも模倣犯でも、止めなきゃ当日の夜、本物は来ないんじゃねーのか?こんだけ派手にやられてたら。」
マニーニャ:「来るさ。ねぇ、ショコラ。」
ショコラ:「・・・・さぁ、どうでしょうね。」
タルボ:「あ?なんでここでチビが出てくんだよ。」
マニーニャ:「さ、仕事仕事~。」
タルボ:「おいマニーニャ!・・・ちっ、ほんとに、わけわかんねー。」
ショコラ:「・・・外、騒がしいですね。」
タルボ:「あぁ、こりゃ・・・祭りだな、」
0:
ミエット:「ねーぇ?いまどんな気分?ハッピーで気持ちい?答えなさいよ!!ほら、ほらほらほらっ!!弱い女ターゲットにして、薬使っておもちゃにして・・・ねぇ?どう、今度は自分がおもちゃになる気分は・・・。」
0:
ショコラ:「どうして模倣犯なんて現れたのでしょう、」
0:
ミエット:「こんなものじゃ終わらないわよ?すぐに楽になんてさせないんだから・・・。」
0:
タルボ:「あ?んなもん、そいつに罪をなすりつけるとか、」
0:
ミエット:「バレンタインナイト・・・私でもできたわ、案外簡単なのね、人を壊すのって、」
0:
タルボ:「対抗意識もあるんじゃねーのか?」
ショコラ:「対抗意識・・・。」
タルボ:「あいつでもやれんなら自分だって、とか。よくわかんねーけど。」
0:
ミエット:「あぁ、早く会いたい・・・私の愛しい人・・・バレンタインナイトっ!!はぁ、もし一目会えたなら、あなたに、いいえあなたを・・・」
0:
タルボ:「あとはそうだな、憧れや懸想(けそう)で自分もそうなりたい、って気持ちとか、」
ショコラ:「・・・タルボさん、意外と言葉知ってるんですね。」
タルボ:「おい、生意気言うじゃねーかおら、」
ショコラ:「いひゃいれふ、ごめんなはい。」
0:
ミエット:「殺してしまいたい。」
0:
0:バレンタイン当日
ショコラ:「あ、おはようございます、タルボさん。」
タルボ:「おー・・・」
ショコラ:「何だかお疲れのようですね。」
タルボ:「疲れもするだろ、あの日から朝から晩までボンボンボンボン、爆発の音に悲鳴、女の高笑い・・・黙って寝れやしねー。」
ショコラ:「確かに、ここまで騒がしいのも困りものですね。」
タルボ:「・・・マニーニャは?」
ショコラ:「え?見てませんけど・・・まだ寝てるんじゃないですか?」
タルボ:「部屋にはいなかったんだが・・・ちっ、勝手な行動ばかりしやがって。」
ショコラ:「・・・あ、そうだタルボさん。はい、これ。」
タルボ:「あ?何だこりゃ。」
ショコラ:「ハッピーバレンタイン。」
タルボ:「はぁ?・・・チョコレート?」
ショコラ:「私の故郷では、お世話になっている人にチョコレートをプレゼントするんです。タルボさん、甘いものお好きだと聞いたので。」
タルボ:「・・・毒でも入ってんじゃねーだろうな。」
ショコラ:「失礼ですね。入ってませんよ、」
タルボ:「うん、うまい、、、、ぐっ、んだこれ、ゲホッ、(咳き込む)なにいれやがった、くそっ、」
0:気を失うタルボ
ショコラ:「・・・毒は、ね。・・・よい夢を、タルボさん。」
0:夜、ホテルの屋上
マニーニャ:「やぁショコラ。珍しい場所で会うね。」
ショコラ:「・・・ほんとですね。こんな時間に屋上で一体何を?マニーニャさん。」
マニーニャ:「いやぁ?そろそろ本物のバレンタインナイトが動き出す頃かな、と見に来ただけさ。」
ショコラ:「そうですか。」
マニーニャ:「さっきからタルボと連絡が取れないんだけど、何か知らないかい?」
ショコラ:「・・・タルボさんなら、朝からお疲れのようで、ロビーのソファで眠ってましたけど。」
マニーニャ:「ふーん、普段人前では寝ない、警戒心の強いタルボがねぇ。珍しいこともあるもんだ。」
ショコラ:「・・・。」
マニーニャ:「あ、そうだショコラ、僕にはチョコレートくれないのかい?」
ショコラ:「はぁ・・・やっぱり先にマニーニャさんを眠らせるべきでした。」
マニーニャ:「あはははは、そうだね、無駄な探り合いはやめよう。初めまして、バレンタインナイト。僕はマニーニャ。とあるヴィランファミリーのスカウト担当。よろしくね。」
ショコラ:「この姿でははじめまして。」
マニーニャ:「早速だけど、僕たちのファミリーに入らないかい?」
ショコラ:「残念ですが、今あなたとゆっくり話している時間はありません。」
マニーニャ:「あぁ、ごめんよ、つい先走っちゃって。だけど焦る気持ちもわかるだろ?君には、バレンタインの夜にしか会えないんだから。」
ショコラ:「はぁ・・・。」
マニーニャ:「いいじゃないか、どうせ君が今日ヤる予定だったターゲットは、ほとんどこの偽物がヤってくれたんだから。」
ミエット:「っ、離しなさいよ!!」
ショコラ:「・・・驚いた、捕まえてたんですね。」
マニーニャ:「君のためにね。」
ミエット:「ああ!!バレンタインナイト!!会いたかったっ、あぁお願い、今すぐこの縄を解いて!!」
マニーニャ:「うるさいなぁ、折角の勧誘も雰囲気ぶち壊しじゃないか。」
ショコラ:「どうやってこの人を?」
マニーニャ:「んん?多分僕もこいつのターゲットだったんだろうね。ありがたいことに、向こうから来てくれたから、特製の催涙ガスと筋弛緩剤(きんしかんざい)でね。」
ショコラ:「・・・ということはマニーニャさんもバレンタインナイトの粛清対象だと。」
マニーニャ:「光栄なことにね。」
ショコラ:「・・・・。」
マニーニャ:「あぁ待って待って。その爆弾を下げてくれ。確かに今まで殺した中に女性はいるけど、君の粛清対象とやらにはならないよ。」
ショコラ:「.・・・私が殺す人物の特徴を知っているような口ぶりですね。」
マニーニャ:「知ってるさ。6年前、バレンタインナイトがこの街で活躍した日から今日まで、全部の事件を洗い出した。そこから見えてくる対象の特徴は、」
ミエット:「女性をターゲットにした人身売買に関わる者。次に性犯罪者。そして、この2つに必ず共通しているのは、」
マニーニャ:「・・・この街で事件を起こした男だけ。なんだ、君も知っていたのか。」
ミエット:「ふふふ、当たり前でしょう、調べれば簡単にわかることを、よくもまぁ自信満々に・・・。」
マニーニャ:「その割にはここ数日、関係のないヴィランも無節操に殺してたみたいだけど・・・。と、まぁ今言ったとおりだ。僕はこの街で女性を殺したことはないから、君に殺される心配はない。」
ショコラ:「・・・わかりませんよ。私だって、気が変わることくらいっ、ぐっ、」
0:縄から抜け出したミエット、ショコラの胸倉をつかみ地面に叩きつける
マニーニャ:「ショコラ!!くそ、もう薬が、」
ミエット:「動かないでっ!!邪魔したら殺す、」
ショコラ:「・・・マニーニャさん、大丈夫です。離れててください。」
マニーニャ:「・・・。」
ミエット:「あぁ、バレンタインナイト、会いたかったの、」
ショコラ:「・・・一体どうして、」
ミエット:「えぇ覚えていないでしょうね、私のことなんて。だけど私は覚えているわ、いいえ忘れられるわけがない・・・。」
タルボ:「マニーニャ!」
マニーニャ:「やぁタルボ、やっとお目覚めかい?もう夜だよ。」
タルボ:「くそ、チビにやられた、って・・・・どういう状況だ?」
マニーニャ:「・・・まぁ静かに見てなよ。」
ミエット:「私はミエット。2月14日、この街で恋人を殺されたの・・・そして、泣き叫ぶ私の前にあなたが現れた・・・。」
ショコラ:「・・・。」
ミエット:「バレンタインナイトは知っていたわ。1年に1度しか現れない、バレンタインの騎士。私はあなたに頼んだ、恋人を殺した奴を同じ目に合わせて、と。だけどあなたは断った。なぜなら、」
ショコラ:「私はこの街で、女性をターゲットにした者しか殺さない。」
ミエット:「・・・えぇそうよ、一言一句同じ言葉をあの夜のあなたも言ったわ。まさか断られるなんて思ってなかった私は、ならせめて、私を殺してと頼んだ。だけどそれも断られた。」
タルボ:「・・・おい、なんでだよ。」
マニーニャ:「はぁ・・・ちゃんと話聞いてた?」
タルボ:「いや遠くてあんまり聞こえてねぇ。てか、あのチビがバレンタインナイトだったのか?!」
マニーニャ:「ちょっとタルボ、今いいところだから静かに!」
0:
ミエット:「おかげで今日まで無様に生きているわ・・・自分で死ぬこともできずに。恋人を亡くした悲しみは、いつしかあなたへの怒りに変わっていった。おかしいでしょう?あなたへの執着、恨み、憧れや憎しみが混ざってわけわかんなくなっちゃったの・・・。」
ショコラ:「あなたは一体私に何を望んでいるんですか?」
ミエット:「・・・・・殺してほしい、」
ショコラ:「無理です。」
タルボ:「よぉ姉ちゃん、俺が殺ってやろーか?」
ミエット:「ゴミは黙ってなさい!!男に殺されるだなんて、想像しただけでも虫唾が走る!」
タルボ:「・・・んだよ、人がせっかく親切心で、」
マニーニャ:「いや、それは怒られるよ。空気読みなよ。」
タルボ:「るせっ!」
ミエット:「ねぇお願い、もうこれ以上耐えられないの、あの人がいなくても生きている私に、幸せそうな人たちを見るのも・・・暗い感情に押しつぶされて私が私じゃなくなっちゃう!」
ショコラ:「・・・男性に殺されたくないなら、女性の殺し屋を紹介します。」
ミエット:「それじゃあダメだって、わかって言ってるでしょ?あなたじゃないとダメなの・・・あなたの思想やルールなんて知らない、あなたには責任があるのよ。」
ショコラ:「・・・はぁ、まぁそこまで言うなら、」
ミエット:「あ・・・あぁ、ありがとう・・・。これでやっと、、、」
マニーニャ:「ショコラ?」
ショコラ:「確かに、私にも責任があると言われれば強く否定もできませんし、」
マニーニャ:「やめなよショコラ。」
ショコラ:「それに、意地を張るほどルールに拘(こだわ)っているわけでも、」
マニーニャ:「やめろって言ってるんだけど。」
ショコラ:「、マニーニャさん?」
タルボ:「はーぁ、始まったよ、マニーニャの悪癖(あくへき)。」
マニーニャ:「なんだよそれ・・・キャラ崩壊だよ。バレンタインナイトは男しか殺さない!バレンタインの夜しか現れない!それがかっこいいんじゃないか!!」
ショコラ:「?」
マニーニャ:「つまらない女の感情一つで、そんなにあっさり自分の定義、思想を変えてしまうのかい?つまらないつまらないつまらない、それじゃあダメだ。」
ショコラ:「なに言って、」
タルボ:「マニーニャはな、完全キャラ設定厨なんだよ。」
ショコラ:「はい?」
タルボ:「ほらあんだろ、決まった武器しか使わないとか、殺すときには絶対同じセリフを言うとか。そーいう設定があるヴィラン、ヒーロが異常なほど好きなんだよ。だから俺も、変なキャラ設定つけられたし。」
ショコラ:「・・・そんなのありました?」
タルボ:「交渉術を身に着けようと専門書読んでたら本燃やされた。」
ショコラ:「えぇ、」
マニーニャ:「だってそうだろ、タルボは交渉なんてできないから力で解決する!勤勉な野蛮人なんてキャラじゃない。」
タルボ:「な、気持ち悪いだろ。俺よりよっぽど歪んでんだよこいつ。」
マニーニャ:「君の流儀を変えるほど、この女に価値はないよ。」
ショコラ:「え、」
タルボ:「あーぁ、殺りやがった。」
ミエット:「が、はっ、な、んでっ・・・バレンタイン、ナイt、」
ショコラ:「・・・これでマニーニャさんも私の粛清対象に入りましたね。」
マニーニャ:「わぁほんとだ、君に狙われるなんて心が躍(おど)るよ。」
ショコラ:「言い残すことはそれだけですか?」
マニーニャ:「あれ?何だか怒ってる?」
ショコラ:「・・・なるほど、わざわざ目の前でこの人を殺したのも、すべて計算済みだったんですね。」
マニーニャ:「んん?」
ショコラ:「0:03分・・・バレンタイン終了です。」
マニーニャ:「あははは、さすが。そうだよね、設定は守ろうね。」
ショコラ:「性格悪いですね。」
マニーニャ:「どうもありがとう。」
ショコラ:「来年、必ず殺してあげますよ。」
マニーニャ:「1年越しの約束だなんて、随分ロマンチックじゃないか。」
タルボ:「してやられたな、チビ。」
ショコラ:「はぁ・・・。今年のバレンタインは疲れました。」
マニーニャ:「ねぇショコラ。君はどうしてバレンタインの夜に?」
ショコラ:「さぁ、どうしてでしょうか。」
タルボ:「質問を質問で返すなよ。」
ショコラ:「ふふ、すぐに答えがわかってもつまらないじゃないですか。」
マニーニャ:「他にも聞きたいことがたくさんある。どうして女性を狙った男しか殺さないのか、そして、何故この街にこだわるのか・・・。」
ショコラ:「・・・謎に満ちたままの方が、魅力的では?」
マニーニャ:「そうだね、そういう設定も惹かれるけど・・・。」
タルボ:「まぁ何だっていい。これから知っていけばいいんだから。よぉチビ、俺たちのところへ来いよ。毎日悪いことし放題だぜ?」
ショコラ:「・・・とても魅力的なお誘いですけど。」
タルボ:「おいおいおい、まさか断るつもりか?」
ショコラ:「私がヴィラン・・・バレンタインナイトになるのは2月14日だけ。その日以外はただのホテルの受付。ただのショコラです。」
マニーニャ:「それでもいいと言ったら?ただのショコラも、バレンタインナイトも、僕たちはウェルカムさ。」
ショコラ:「ふふ、もしかして口説いてます?」
マニーニャ:「やっと気付いた?」
ショコラ:「私には勿体ないお話です。」
タルボ:「おい!」
ショコラ:「マニーニャさん、タルボさん、さようなら。」
マニーニャ:「・・・また会えるかい?」
ショコラ:「ただのショコラにはいつでも・・・。」
マニーニャ:「君には?」
ショコラ:「ふふ、来年のバレンタインの夜に、きっと。」
マニーニャ:「・・・あーあ、行っちゃった。」
タルボ:「どうすんだよ、ボスへの報告。」
マニーニャ:「うーん、取り合えず、長期戦覚悟で待ってもらおうか。」
タルボ:「それで納得するかぁ?もうめんどくさいから弱すぎて殺しちまったことにしようぜ!」
マニーニャ:「1年越しにウソがばれたとき、痛い目見るのは君だよ、タルボ。」
タルボ:「ちっ。」
マニーニャ:「まぁバレンタインナイトには必ずまた会えるさ。僕が粛清対象に入ったからね。」
タルボ:「・・・お前、わざと殺しただろ。」
マニーニャ:「えぇ?何のことかな?」
タルボ:「自分の事を愛してくれる奴しか殺さないんじゃなかったか?あ?」
マニーニャ:「そんなこと、どうでもいいじゃないか。」
タルボ:「お前、人には設定だの流儀だの言っておきながらっ・・・。」
マニーニャ:「さぁさぁ、早く次のターゲットをボスに送ってもらおう。」
タルボ:「逃げんなマニーニャ!」
0:
ショコラ:「ハッピーバレンタイン・・・来年また、お会いしましょう。」