台本概要

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タイトル みらいTakt〜プロローグ
作者名 風緑ラピス  (@Lapis_019)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男1、女2、不問2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 シリーズ1作目。
プロローグの舞台は、戦国時代。

©2023 Lapis.Kazamidori

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
誾千代 35 立花誾千代(たちばな・ぎんちよ) 伝説を残して下野した、元・女武将。
林堂 23 林堂修一郎(りんどう・しゅういちろう) 誾千代の首を狙う、剣聖。
兵士A 20 豊臣軍の女兵士。 責任感が強い。
兵士B 不問 11 豊臣軍の兵士。 正反対に弱気。
ナレーション 不問 28 ナレーター
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ナレーション:時は、戦国。太閤・豊臣秀吉は、様々な戦略で領地を拡大。九州の征服に、いよいよ取り掛かろうとしていた。その九州の、とある奥地。男女が1人ずつ、刀を構え、対峙していた。 林堂:ようやく、決着をつける機会が訪れたというワケだ。 誾千代:私としては、二度と来なくても良かったのだがな……   林堂:それは、俺としては困る。何せ、『雷神の娘』の首が、そこにあるのだからな。真の剣聖である私には、譲れない野望だ。 誾千代:言っておくが、私は城を抜け出した、ただの落ち武者だぞ。刀の使い方は、何もない……単なる我流だ。剣聖さまには、殺る(やる)価値の無きに等しいと思うが……? 林堂:価値は有るぞ、立花よ。並の武士どもには解らない……俺だからこそ、高い価値だと解るのだ! 誾千代:…… 林堂:だから、死ぬ前に胸を張って良いのだぞ、立花。 誾千代:…… 林堂:どうした……何か気になる事でも、あるのか? 誾千代:そこで隠れて観てないで、出て来い!……言っておくが、見物料は高く付くぞ! 林堂:なに……? (茂みの中から、2人の兵士が姿を現した) 林堂:貴様ら、女子(おなご)か!?……だが、身なりからして、秀吉の者か? 兵士A:ほう……よく解ったな。 浪人の分際で。 林堂:俺は流浪の剣聖として、あらゆる国の武将や兵士らの稽古を付けてきたからな。どこぞの国の武将が着せるべき甲冑(かっちゅう)の種類くらいは、理解できるのだ。 兵士B:なるほど……ならば、話は早い。 兵士A:我らが豊臣軍は、戦(いくさ)の連続により、刀を使い果たしておる。 林堂:それで……俺達に、どうしろと言うのか? 兵士B:大人しく、我々にその持っている刀をよこせ! 林堂:何だ、刀の方が必要なのか……俺達を使えば、より簡単に敵を倒せるぞ? 誾千代:まあ、それは正論だな。 兵士A:関白殿下は、刀を求めておられる……貴様らは関係ない! 兵士B:ええい、時間が無いのだ……さっさと寄越せ!   林堂:(苦笑しながら)だそうだ……どうする、立花よ? 誾千代:私達より刀か……舐められたものだな。 ナレーション:誾千代は、暫く目を閉じ、考え込んだ。そして、再び目を開け…… 誾千代:お前ら、ちこう寄れ! ナレーション:兵士2人は、警戒しつつも、誾千代と林堂の近くまで歩み寄った。そして、誾千代は何と、兵士の1人に刀を鞘ごと差し出した。兵士2人は、揃って驚きの表情を見せた。 誾千代:私の刀を持つことができたら……お前に譲ってもよい。 兵士A:…… ナレーション:兵士2人は、身震いしながら、実感していた。誾千代の刀からあふれ出る、闘気を。 兵士B:これは、まさしく凄い刀だ……おい、何をしている、早く奪え。ここは絶好の機会だぞ! ナレーション:兵士は、仲間に促され、誾千代の刀を恐る恐る握った。その直後である! 兵士A:ぎゃぁ~っ、重いっ!! ナレーション:兵士は、誾千代の刀の重さに耐え切れず、それを地面に落としてしまった。 誾千代:刀を落とすんじゃねえ、無礼者! 兵士A:グホッ!! ナレーション:誾千代は、兵士Aの腹部を右足のつま先から蹴り上げた。 兵士B:おい、大丈夫か!? 林堂:おい、お前……隙だらけだぞ! 兵士B:ギャア〜ッ!! ナレーション:林堂は、もう一人の兵士の額を狙って、刀の峰(みね)で叩き倒した。 誾千代:お前ら如きに、名匠(めいしょう)の刀が持ててたまるか! 林堂:単に刀を持ち、鎧をまとっただけで、出しゃばるな……このアマどもが! ナレーション:2人は、悶え苦しむ兵士を見下しながら、一喝した。誾千代は、刀を取り戻した。 誾千代:まったく……ホンモノの刀さえも持てない、即席兵士どもが! 林堂:そうだな、女子とはいえ豊臣の軍の者だ。少しは出来るかと思っていたが……過信だったようだ。 ナレーション:2人が踵を返し、歩こうとした、その時…… 兵士A:待て……このままじゃ、我々は帰れない。 兵士B:まてまて……気持ちは解るが、無茶だ! 兵士A:どけっ、邪魔だっ!! 兵士B:うわっ!?(足蹴にされた) 兵士A:私は……名誉ある豊臣の兵士だ。何も報告も出来ず……手ぶらで帰るワケには、いかないのだ! ナレーション:兵士の1人が自身の刀を鞘から抜くと、2人は足を止めた。そして、誾千代だけが再び正面に戻した。 林堂:そんな雑魚、放っておいても良いのでは? 誾千代:刀を向けられたんだ……礼儀を尽くさねばなるまい。 ナレーション:誾千代は、再び刀を抜いた。 兵士のソレとは、ひと回りも長く、幅も広く、更に重厚な野太刀である。誾千代は、八艘(はっそう)に構えた。 林堂:立花……それは、柳生の!? 誾千代:柳生……そんなヤツは知らん。面白そうな構えを、風の伝えで知っただけだ。 ナレーション:林堂からの質問を、誾千代は煙に巻いた。 誾千代:来い……貴様の腕、魅せてみろ! 兵士A:……でやぁ〜っ!! ナレーション:兵士は、何度も上段から斬りに掛かる。しかし誾千代は、軽く左右に避け続けた。そして、兵士の動きが鈍ったところを……鍔(つば)で受け止めた。 自然と、鍔迫り合い(つばぜりあい)のカタチになった。 誾千代:まあまあだ。女でも雑魚は倒せるだろう……だがっ!! ナレーション:誾千代はそう言って、兵士を軽く突き放した。 誾千代:はぁ~っ!! ナレーション:誾千代は、初めて上段から一気に、兵士の刀を目掛けて、刀を振(ふる)い落した。兵士の刀は、真っ二つに折れた。 兵士A:キャ〜ッ!? ナレーション:兵士は、自慢の刀を折られ、パニック状態となった。決着は、呆気(あっけ)なかった。 誾千代:華奢な女子ゆえ、槍すら重くて持てないから、軽い鈍ら刀(なまくらがたな)なのだろう? ナレーション:誾千代の問い掛けに、兵士は答えられなかった。それは、肯定を意味していた。 誾千代:お前らでは、話にならん……さっさと、秀吉の元に帰れ! ナレーション:誾千代が踵を返した、その時だった。 兵士A:頼む……斬ってくれ! (誾千代は背中を向けたまま) 兵士A:(泣きながら)こんな状態で、生き恥を晒したくない……“天下の為に尽くせ”と送り出してくれた家族に、示しが付かない……だから……だから! 誾千代:(再び、正面に返り)格好を付けてるんじゃ、ねえよ!! ナレーション:誾千代の一喝に、兵士2人は表情を青ざめた。武将は、ひとつひとつに威圧が込められている。 誾千代:お前1人が死んだところで、この土地の肥やしにすら、成らねえんだよ!数多(あまた)の兵士が散って、初めて戰場(いくさば)が出来るんだ。そんな彼等の血と肉、そして骨が、まさしく命の宿る土地を築いていくのだ! ナレーション:誾千代の説教に、2人は黙って聴くしかなかった。一方の林堂は、相変わらず背を向けたままだった。 誾千代:おい、お前! 兵士A:はっ……はいっ!? 誾千代:生き恥を晒したくなければ……刀を鍬(くわ)に持ち換えて、生きる証を作ってみせよ! 兵士A:えっ……ええっ!? 誾千代:刀を失ったお前なぞ、誰も兵士として使ってはくれぬわ。だから、せいぜい、ここで耕し、飯を作り、生きる証を作れ!空きの屋敷なら、分けてやる。だから、一度死んだつもりで……生まれ変わったつもりで、1から耕してみろ!農作業に、男も女も関係ない……私だって、耕してるんだ! 兵士A:…… ナレーション:兵士Aにすれば、生き残れるチャンスである。秀吉軍に戻ったところで、下っ端である。命の保証は無い。 誾千代:……そこの、もう1人のヤツ! 兵士B:はっ、はいっ!?(正座した) 誾千代:貴様が、秀吉に伝えるのだ……“兵士1名は、立花誾千代に斬り捨てられた”と! 兵士A:たっ……立花!? 兵士B:ぎっ、誾千代!? 兵士A:関白殿下を押し返した、あの……!? ナレーション:誾千代の言伝て(ことづて)に、2人は派手に驚いた。関白・秀吉を一歩も寄せ付けなかった、女傑・立花誾千代の武勇伝は、秀吉の軍一帯に伝わっていた。 林堂:(背を向けたまま)正気か、立花? 誾千代:ああ……こうなったら、再び豊臣と相見える(あいまみえる)までよ!……あの猿ヅラは、二度と拝みたくなかったけどな。   ナレーション:太閤関白を堂々と茶化す誾千代に、兵士2人は相手が悪過ぎたと、初めて痛感した。 誾千代:早急に……とは、言わない。ここで飯でも食ってから、出立(しゅったつ)しろ。 兵士A:ほっ、本当ですか!? 兵士B:本当に……本当に、ありがたき幸せ! 誾千代:ふぅ……本当に、関白の兵士なのか……?女にすら、兵糧も、ろくに与えないとは……うぐっ!? ナレーション:誾千代は、言い切る直前に片膝を着いた。 林堂:(慌てて正面に戻る)立花!?(誾千代を介抱しようとする) 兵士A:立花様!?(兵士2人も、援助しようとした) 誾千代:大丈夫だ! ナレーション:誾千代は介抱を断ると、ゆっくりと立ち上がった。 誾千代:林堂……すまぬが、あの2人を飯屋に案内してやってくれ。死合(しあい)は、延期だ。 林堂:……立花? 誾千代:秀吉は、間違いなく、ここを攻めてくる。あやつに刀を向けるまでは……そして、再びお前と死合うまでは……私は死なない! 林堂:……承知した。この者どもは、俺に任せろ。 誾千代:……林堂? 林堂:……何だ? 誾千代:その2人、戴く(いただく)なよ? 林堂:誰が喰うか!! 兵士A&B:(ほぼ同時に)ヒィ〜ッ!! 林堂:だから、誰も喰わねえと言ってるだろ!! ナレーション:林堂は兵士2人に目配せして踵を返し、歩き出すと、彼女達も追従した。 誾千代:……済まねえな、林堂。お前との約束、果たせるかは微妙だ。だが……秀吉にだけは、最期の雷(いかづち)を落とさねばな! ナレーション:その後、立花誾千代は、その土地で病死したと記されている。しかし、詳細は謎に包まれたままである。そして……時は22世紀へと突入する! ※この物語は、フィクションです。 ©2023 Lapis.Kazamidori  

ナレーション:時は、戦国。太閤・豊臣秀吉は、様々な戦略で領地を拡大。九州の征服に、いよいよ取り掛かろうとしていた。その九州の、とある奥地。男女が1人ずつ、刀を構え、対峙していた。 林堂:ようやく、決着をつける機会が訪れたというワケだ。 誾千代:私としては、二度と来なくても良かったのだがな……   林堂:それは、俺としては困る。何せ、『雷神の娘』の首が、そこにあるのだからな。真の剣聖である私には、譲れない野望だ。 誾千代:言っておくが、私は城を抜け出した、ただの落ち武者だぞ。刀の使い方は、何もない……単なる我流だ。剣聖さまには、殺る(やる)価値の無きに等しいと思うが……? 林堂:価値は有るぞ、立花よ。並の武士どもには解らない……俺だからこそ、高い価値だと解るのだ! 誾千代:…… 林堂:だから、死ぬ前に胸を張って良いのだぞ、立花。 誾千代:…… 林堂:どうした……何か気になる事でも、あるのか? 誾千代:そこで隠れて観てないで、出て来い!……言っておくが、見物料は高く付くぞ! 林堂:なに……? (茂みの中から、2人の兵士が姿を現した) 林堂:貴様ら、女子(おなご)か!?……だが、身なりからして、秀吉の者か? 兵士A:ほう……よく解ったな。 浪人の分際で。 林堂:俺は流浪の剣聖として、あらゆる国の武将や兵士らの稽古を付けてきたからな。どこぞの国の武将が着せるべき甲冑(かっちゅう)の種類くらいは、理解できるのだ。 兵士B:なるほど……ならば、話は早い。 兵士A:我らが豊臣軍は、戦(いくさ)の連続により、刀を使い果たしておる。 林堂:それで……俺達に、どうしろと言うのか? 兵士B:大人しく、我々にその持っている刀をよこせ! 林堂:何だ、刀の方が必要なのか……俺達を使えば、より簡単に敵を倒せるぞ? 誾千代:まあ、それは正論だな。 兵士A:関白殿下は、刀を求めておられる……貴様らは関係ない! 兵士B:ええい、時間が無いのだ……さっさと寄越せ!   林堂:(苦笑しながら)だそうだ……どうする、立花よ? 誾千代:私達より刀か……舐められたものだな。 ナレーション:誾千代は、暫く目を閉じ、考え込んだ。そして、再び目を開け…… 誾千代:お前ら、ちこう寄れ! ナレーション:兵士2人は、警戒しつつも、誾千代と林堂の近くまで歩み寄った。そして、誾千代は何と、兵士の1人に刀を鞘ごと差し出した。兵士2人は、揃って驚きの表情を見せた。 誾千代:私の刀を持つことができたら……お前に譲ってもよい。 兵士A:…… ナレーション:兵士2人は、身震いしながら、実感していた。誾千代の刀からあふれ出る、闘気を。 兵士B:これは、まさしく凄い刀だ……おい、何をしている、早く奪え。ここは絶好の機会だぞ! ナレーション:兵士は、仲間に促され、誾千代の刀を恐る恐る握った。その直後である! 兵士A:ぎゃぁ~っ、重いっ!! ナレーション:兵士は、誾千代の刀の重さに耐え切れず、それを地面に落としてしまった。 誾千代:刀を落とすんじゃねえ、無礼者! 兵士A:グホッ!! ナレーション:誾千代は、兵士Aの腹部を右足のつま先から蹴り上げた。 兵士B:おい、大丈夫か!? 林堂:おい、お前……隙だらけだぞ! 兵士B:ギャア〜ッ!! ナレーション:林堂は、もう一人の兵士の額を狙って、刀の峰(みね)で叩き倒した。 誾千代:お前ら如きに、名匠(めいしょう)の刀が持ててたまるか! 林堂:単に刀を持ち、鎧をまとっただけで、出しゃばるな……このアマどもが! ナレーション:2人は、悶え苦しむ兵士を見下しながら、一喝した。誾千代は、刀を取り戻した。 誾千代:まったく……ホンモノの刀さえも持てない、即席兵士どもが! 林堂:そうだな、女子とはいえ豊臣の軍の者だ。少しは出来るかと思っていたが……過信だったようだ。 ナレーション:2人が踵を返し、歩こうとした、その時…… 兵士A:待て……このままじゃ、我々は帰れない。 兵士B:まてまて……気持ちは解るが、無茶だ! 兵士A:どけっ、邪魔だっ!! 兵士B:うわっ!?(足蹴にされた) 兵士A:私は……名誉ある豊臣の兵士だ。何も報告も出来ず……手ぶらで帰るワケには、いかないのだ! ナレーション:兵士の1人が自身の刀を鞘から抜くと、2人は足を止めた。そして、誾千代だけが再び正面に戻した。 林堂:そんな雑魚、放っておいても良いのでは? 誾千代:刀を向けられたんだ……礼儀を尽くさねばなるまい。 ナレーション:誾千代は、再び刀を抜いた。 兵士のソレとは、ひと回りも長く、幅も広く、更に重厚な野太刀である。誾千代は、八艘(はっそう)に構えた。 林堂:立花……それは、柳生の!? 誾千代:柳生……そんなヤツは知らん。面白そうな構えを、風の伝えで知っただけだ。 ナレーション:林堂からの質問を、誾千代は煙に巻いた。 誾千代:来い……貴様の腕、魅せてみろ! 兵士A:……でやぁ〜っ!! ナレーション:兵士は、何度も上段から斬りに掛かる。しかし誾千代は、軽く左右に避け続けた。そして、兵士の動きが鈍ったところを……鍔(つば)で受け止めた。 自然と、鍔迫り合い(つばぜりあい)のカタチになった。 誾千代:まあまあだ。女でも雑魚は倒せるだろう……だがっ!! ナレーション:誾千代はそう言って、兵士を軽く突き放した。 誾千代:はぁ~っ!! ナレーション:誾千代は、初めて上段から一気に、兵士の刀を目掛けて、刀を振(ふる)い落した。兵士の刀は、真っ二つに折れた。 兵士A:キャ〜ッ!? ナレーション:兵士は、自慢の刀を折られ、パニック状態となった。決着は、呆気(あっけ)なかった。 誾千代:華奢な女子ゆえ、槍すら重くて持てないから、軽い鈍ら刀(なまくらがたな)なのだろう? ナレーション:誾千代の問い掛けに、兵士は答えられなかった。それは、肯定を意味していた。 誾千代:お前らでは、話にならん……さっさと、秀吉の元に帰れ! ナレーション:誾千代が踵を返した、その時だった。 兵士A:頼む……斬ってくれ! (誾千代は背中を向けたまま) 兵士A:(泣きながら)こんな状態で、生き恥を晒したくない……“天下の為に尽くせ”と送り出してくれた家族に、示しが付かない……だから……だから! 誾千代:(再び、正面に返り)格好を付けてるんじゃ、ねえよ!! ナレーション:誾千代の一喝に、兵士2人は表情を青ざめた。武将は、ひとつひとつに威圧が込められている。 誾千代:お前1人が死んだところで、この土地の肥やしにすら、成らねえんだよ!数多(あまた)の兵士が散って、初めて戰場(いくさば)が出来るんだ。そんな彼等の血と肉、そして骨が、まさしく命の宿る土地を築いていくのだ! ナレーション:誾千代の説教に、2人は黙って聴くしかなかった。一方の林堂は、相変わらず背を向けたままだった。 誾千代:おい、お前! 兵士A:はっ……はいっ!? 誾千代:生き恥を晒したくなければ……刀を鍬(くわ)に持ち換えて、生きる証を作ってみせよ! 兵士A:えっ……ええっ!? 誾千代:刀を失ったお前なぞ、誰も兵士として使ってはくれぬわ。だから、せいぜい、ここで耕し、飯を作り、生きる証を作れ!空きの屋敷なら、分けてやる。だから、一度死んだつもりで……生まれ変わったつもりで、1から耕してみろ!農作業に、男も女も関係ない……私だって、耕してるんだ! 兵士A:…… ナレーション:兵士Aにすれば、生き残れるチャンスである。秀吉軍に戻ったところで、下っ端である。命の保証は無い。 誾千代:……そこの、もう1人のヤツ! 兵士B:はっ、はいっ!?(正座した) 誾千代:貴様が、秀吉に伝えるのだ……“兵士1名は、立花誾千代に斬り捨てられた”と! 兵士A:たっ……立花!? 兵士B:ぎっ、誾千代!? 兵士A:関白殿下を押し返した、あの……!? ナレーション:誾千代の言伝て(ことづて)に、2人は派手に驚いた。関白・秀吉を一歩も寄せ付けなかった、女傑・立花誾千代の武勇伝は、秀吉の軍一帯に伝わっていた。 林堂:(背を向けたまま)正気か、立花? 誾千代:ああ……こうなったら、再び豊臣と相見える(あいまみえる)までよ!……あの猿ヅラは、二度と拝みたくなかったけどな。   ナレーション:太閤関白を堂々と茶化す誾千代に、兵士2人は相手が悪過ぎたと、初めて痛感した。 誾千代:早急に……とは、言わない。ここで飯でも食ってから、出立(しゅったつ)しろ。 兵士A:ほっ、本当ですか!? 兵士B:本当に……本当に、ありがたき幸せ! 誾千代:ふぅ……本当に、関白の兵士なのか……?女にすら、兵糧も、ろくに与えないとは……うぐっ!? ナレーション:誾千代は、言い切る直前に片膝を着いた。 林堂:(慌てて正面に戻る)立花!?(誾千代を介抱しようとする) 兵士A:立花様!?(兵士2人も、援助しようとした) 誾千代:大丈夫だ! ナレーション:誾千代は介抱を断ると、ゆっくりと立ち上がった。 誾千代:林堂……すまぬが、あの2人を飯屋に案内してやってくれ。死合(しあい)は、延期だ。 林堂:……立花? 誾千代:秀吉は、間違いなく、ここを攻めてくる。あやつに刀を向けるまでは……そして、再びお前と死合うまでは……私は死なない! 林堂:……承知した。この者どもは、俺に任せろ。 誾千代:……林堂? 林堂:……何だ? 誾千代:その2人、戴く(いただく)なよ? 林堂:誰が喰うか!! 兵士A&B:(ほぼ同時に)ヒィ〜ッ!! 林堂:だから、誰も喰わねえと言ってるだろ!! ナレーション:林堂は兵士2人に目配せして踵を返し、歩き出すと、彼女達も追従した。 誾千代:……済まねえな、林堂。お前との約束、果たせるかは微妙だ。だが……秀吉にだけは、最期の雷(いかづち)を落とさねばな! ナレーション:その後、立花誾千代は、その土地で病死したと記されている。しかし、詳細は謎に包まれたままである。そして……時は22世紀へと突入する! ※この物語は、フィクションです。 ©2023 Lapis.Kazamidori