台本概要
724 views
タイトル | 片喰竜胆退魔行 第3話「声劇デビューの衝撃!唐揚げBLって何!?」 |
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作者名 | 熊野むっち (@mucchi_0908) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 4人用台本(男3、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
【声劇配信時の規約】 ・配信時に作者名および作品名を記載 ※上記一点のみ必ずご対応くだされば、作者への連絡は不要です。 (投げ銭の有無、有償無償に関わらず) 724 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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竜胆 | 男 | 67 | 片喰竜胆(かたばみ りんどう) 不動明王の真言を操り、禍津日(マガツヒ)と呼ばれる物の怪を退治する退魔師。 |
万作 | 男 | 90 | 一富士万作(いちふじ まんさく) 声劇配信にドハマり中の青年。とある理由で片喰竜胆のマガツヒ退治に協力している。 |
燕子花 | 女 | 71 | 燕子花牡丹(かきつばた ぼたん) 新進気鋭のBLシナリオライター。深刻な盗作被害に頭を悩ませている。 |
ガマズミ | 男 | 24 | ガマズミ 悪辣な方法で燕子花のシナリオを盗作している。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:
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:タイトル
: 【片喰竜胆退魔行(かたばみ りんどう たいまこう】
: 【第3話 声劇デビューの衝撃!唐揚げBLって何!?】作・くまのムッチ
:
:登場人物
:
竜胆:
竜胆:(配役が決まったらここをタップしてください)
竜胆:片喰 竜胆(かたばみ りんどう)
:
:
万作:
万作:(配役が決まったらここをタップしてください)
万作:一富士 万作(いちふじ まんさく)
万作:兼ね役(レモン役・カボス役)があります。
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レモン:
レモン:レモン
レモン:(万作役の方はここをタップしてください)
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カボス:
カボス:カボス
カボス:(万作役の方はここをタップしてください)
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燕子花:
燕子花:(配役が決まったらここをタップしてください)
燕子花:燕子花牡丹(かきつばた ぼたん)
燕子花:兼ね役(マヨネーズ役・ケチャップ役)があります。
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マヨネーズ:
マヨネーズ:マヨネーズ
マヨネーズ:(燕子花役の方はここをタップしてください)
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ケチャップ:
ケチャップ:ケチャップ
ケチャップ:(燕子花役の方はここをタップしてください)
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ガマズミ:
ガマズミ:(配役が決まったらここをタップしてください)
ガマズミ:ガマズミ
ガマズミ:兼ね役(唐揚げ役)があります。
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唐揚げ:
唐揚げ:唐揚げ
唐揚げ:(ガマズミ役の方はここをタップしてください)
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0:劇中劇【唐揚げのBL】
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唐揚げ:(モノローグ)僕の名前は唐揚げ。
唐揚げ:老若男女に愛される大人気メニュー。それがこの僕、唐揚げ…なんだけど…僕は今日田舎から出荷されたばかりの新人唐揚げ、新しい場所で上手く馴染めるか、すっごく不安なんだ。
唐揚げ:
唐揚げ:はじめまして、今日からこちらでお世話になる事になった……【唐揚げ】と申します。
唐揚げ:大分県産の鶏肉を、醤油とニンニクをベースにした秘伝のタレで漬け込みました!
唐揚げ:こちらの食卓のメインディッシュとなれる様、一生懸命頑張りますので、皆さん、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いしますっ!
:
マヨネーズ:フフッ
:
唐揚げ:わっ!
:
マヨネーズ:唐揚げくんって呼んじゃうね。
:
唐揚げ:あ、あなたは…
:
マヨネーズ:あっ、ボク?
マヨネーズ:ボクは……ボクの名前はマヨネーズ。
:
唐揚げ:マヨネーズ…さん…?
唐揚げ:
唐揚げ:(モノローグ)マヨネーズと呼ばれた少年は、少し色素の薄い、茶色がかった瞳で僕を見つめてくる。
唐揚げ:潤んだ瞳に僕も目を見やると、瞳の中に映った僕まで見えたような気がして、ハッと息を呑む。
:
マヨネーズ:どうしたの?唐揚げくん、初日の挨拶を終えたばかりなのにボーッとしちゃって。
:
唐揚げ:あっ、すっ、すいません!つい…
:
マヨネーズ:フフ。……つい、なあに?
:
唐揚げ:いやあの、お人形さんみたいだなあって。
:
マヨネーズ:えっ?人形?
マヨネーズ:あっ、もーっ!僕の事キューピー人形みたいなお子ちゃまだって、バカにしてるんでしょ~!?
:
唐揚げ:いえっ、そんなつもりは!
唐揚げ:でも小柄で、まるで硝子玉みたいな目だったから……あの、ご出身は、海外なんですか?
:
マヨネーズ:ううん、ハーフだよ。カロリーも、ハーフ。
マヨネーズ:あっ、唐揚げくん、初日だってのに、ネクタイ曲がってるよ。
マヨネーズ:ほら、おいで。直してあげる。
:
唐揚げ:(モノローグ)そう言った途端、僕の胸元にグッとにじみ寄るマヨネーズさん…薄茶色の瞳に、今度は確実に僕の顔が映り込む。
唐揚げ:(胸元に触れられて思わず声が漏れ出る)
唐揚げ:ハアッ…!
:
マヨネーズ:どうしたの?可愛い声出しちゃって。
マヨネーズ:…あれ?もしかして冷凍唐揚げが……知らない間に解凍されて、アツアツになっちゃった?
:
唐揚げ:ちっ、違います!やめてください、マヨネーズさん!ネクタイくらい、自分で直せます!
:
マヨネーズ:フフッ!可愛い唐揚げくん!
マヨネーズ:僕の事はマヨって呼んでくれていいからね!
:
唐揚げ:なっ……!?
唐揚げ:初対面でいきなりニックネームで呼ぶなんて、僕にはハードルが高すぎますっ!
:
マヨネーズ:フフフ。そういうとこも可愛い。
:
レモン:(遮って)やめねえかマヨネーズ。唐揚げが困ってんじゃねえか。
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唐揚げ:えっ
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マヨネーズ:ちぇ。良いとこだったのに。
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唐揚げ:あ、あなたは…?
:
レモン:レモンだ。ここの食卓ではそれなりのベテランかもしれんな。宜しく頼む。
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唐揚げ:ハッ!宜しくお願いしますっ!レモン先輩!
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レモン:(カチンときて)…お前、何か勘違いしていないか?
:
唐揚げ:えっ…?
:
レモン:俺は何もお前を助けようとして、言った訳じゃない。俺は俺の、優雅な朝の一時を邪魔する、騒々しい輩が許せんだけだ。
:
唐揚げ:あっ、すいませんでした…。
:
マヨネーズ:もう相変わらずだなあレモン先輩は、見てよ唐揚げくんの顔、今にも泣き出しそうじゃん。
:
唐揚げ:あ、あの、ごめんなさい!レモン先輩!
唐揚げ:まだ出会ったばかりなのに、不愉快な思いをさせてしまって!本当にごめんなさい!僕には謝る事しか出来ないけど…
:
レモン:おい!何度も謝ってんじゃねえ!
レモン:そうやって、何が悪いかもわかってねえのにすぐペコペコ謝って来る奴が俺は一番嫌いなんだよ!!
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唐揚げ:(モノローグ)そう言ってレモン先輩が僕の胸ぐらを掴む。
唐揚げ:長身のレモン先輩が目の前に立つと、僕の視界が一気に遮られる。眼前に広がるのは、先輩の逞しく、厚い、胸板。
唐揚げ:大きくて広い。何故か僕は恐怖心より先にそんな事を考えていた…。おそるおそる目線をあげると、レモン先輩と、目が合う。
唐揚げ:
唐揚げ:(上目遣いで)ご、ごめんなさい…。
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レモン:(顔を赤らめて)ちょ!だから謝んじゃねえって!もういい……許してやる…次はねえからな…。
:
マヨネーズ:あれ?レモン先輩、なに赤くなってるの?これじゃあレモンじゃなくてピンクレモネードだね。
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レモン:バ…!バカ言うんじゃねえぞマヨネーズ!!
レモン:テメーは黙ってろ!
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マヨネーズ:ふふ。素直じゃないなあ。
マヨネーズ:…ねえ、ところでさ、唐揚げくん。
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唐揚げ:え?あ、はい。
:
マヨネーズ:唐揚げくんはさ、もう、パートナーは決めてるの?
:
唐揚げ:え?パートナー?
唐揚げ:…パートナーってなんの事ですか?
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マヨネーズ:今夜のディナーのお相手さ、まだ決めてないんだったらさ、僕とシようよ。揚げたての君の衣にさ、僕の濃厚なのを、たっぷり、かけてあげる…。
:
唐揚げ:ええっ!?そ、そんな事、きゅ、急に言われても…
:
レモン:おい、マヨネーズ。なに勝手に話進めてんだよ。何も知らないコイツの初めてを奪おうってオメーの魂胆がみえみえなんだよ!
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マヨネーズ:あれー?バレてた?
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唐揚げ:ちょ!マヨネーズさんっ!
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レモン:唐揚げ。
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唐揚げ:はい。
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レモン:先輩命令だ。今夜のディナーは俺とにしろ。
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唐揚げ:……ええっ!?
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レモン:今まで誰にもかけられた事ねえんだろ?
レモン:だったら最初は俺様しかあり得ねえだろ?お前には俺の酸味こそが相応しい。
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唐揚げ:いや、その、
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レモン:さあ、どこにかけて欲しいんだ?
レモン:モモか?ムネか?自分でおねだりしてみろよ。
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唐揚げ:そっ、そんな…
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マヨネーズ:もう!レモン先輩、抜け駆けは許さないからねー!
マヨネーズ:ね?唐揚げくん。キミだって、僕にかけてもらった方が嬉しいよね?
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レモン:邪魔すんなマヨネーズ!
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マヨネーズ:じゃあ、キミが選んでよ、唐揚げくん。
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レモン:どっちにすんだよ?唐揚げ。
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唐揚げ:そ、そんな事言ったって、僕選べない!選べないよぉ~!!
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0:劇中劇終わり。
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竜胆:…なんだこれは?
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万作:知らないんですか!?
万作:今、声劇のBL界隈でジワジワ来てる燕子花牡丹(かきつばた・ぼたん)先生の傑作擬人化BL「アゲアゲ☆唐揚げ部」ですよ!
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燕子花:先生はやめてください。私なんてそんな大層なものを書いてる訳じゃありませんから…。
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万作:いやいやそんなご謙遜を!
万作:こうして燕子花先生に直接感想をお伝えできるなんて光栄です!
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燕子花:はあ…有り難うございます…恐縮です…
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万作:それで今日はどういったご相談なんでしょうか?
:
燕子花:はい。こちらでは声劇配信で起きたトラブルを何でも解決してくれるとお伺いしまして…。
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万作:えっ
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燕子花:もう自分一人の力ではどうにもできないと、ほとほと困り果てていたところだったので、本当に藁にもすがる思いでご連絡させてもらったんです。
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万作:いや、あの、僕たちは何でも屋でも探偵でもなくってマガツヒ専門なんですよ。
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燕子花:マガツヒ?
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万作:あー、えっと、マガツヒっていうのは、怒りや嫉妬、絶望なんかの強い負の感情をきっかけに、物の怪に心と身体を乗っ取られてしまった人の事を、マガツヒと呼ぶんです!
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燕子花:そんな!でも、もうあなた方しか頼れる人がいないんです!どうか!どうか!宜しくお願いします!
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万作:そんな事言っても僕たちでお力になれる用件かどうかもわかりませんし…
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竜胆:いいじゃないか。
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万作:え!?
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竜胆:そのBL?とかいうジャンルについて見識を深める事が声劇の真髄を極めるために必要であると、私の第六感がそう告げている。
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万作:あの、それを聞いて、僕の第六感も身の危険を知らせてるんですけど。
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竜胆:しかも、それだけ声劇でも人気ジャンルの一角を担っている、というなら、そこにマガツヒが現れても何ら不思議ではあるまい…。
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燕子花:本当ですか!?片喰(かたばみ)さん!有り難うございます!
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竜胆:竜胆と呼んでください、燕子花(かきつばた)先生。
竜胆:さあ、詳しいお話をお聞かせ願えますか?
:
燕子花:はい…実は私の書いた作品が…知らない人に盗作されているんです!
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万作:盗作!?
万作:
万作:(タイトルコール)
万作:片喰竜胆退魔行 第3話「衝撃の声劇デビュー!唐揚げBLって何!?」
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竜胆:盗作か…それはまた物騒な話だな。
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万作:許せない…!燕子花先生が苦心の末に編み出した擬人化BLの世界を、パクる奴がいるなんて!
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竜胆:すまないがちょっと、先に幾つか質問させてくれないか?
竜胆:まだ声劇配信に触れたばかりの私にとっては、先ほどから耳慣れぬ言葉だらけでさっぱり意味がわからん。
竜胆:BL?擬人化?そもそも何故、唐揚げやマヨネーズが喋るんだ?
:
万作:ああ、それはですね…
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燕子花:万作さん、それは私からご説明させてもらいます。
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万作:おお!燕子花先生、御自ら!是非ご高説を賜りたく存じます!
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竜胆:万作くん、君、そんな話し方だったか?
:
燕子花:まずBLというのは、ボーイズラブの略称で、男性同士のラブロマンスの物語を指します。これに対して女性同士の恋愛物はGL、ガールズラブまたは百合と呼びます。
燕子花:ちなみに男女の恋愛物はNL、ノーマルラブと呼びます。
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竜胆:ちょっと待ってくれ。NLって何故男女の恋愛物がNLなんだ!?それじゃあまるでBLが基準のような言い方じゃないか!
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燕子花:(ピシャリと)BLが基準だからです。竜胆さん。
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竜胆:……。
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万作:BLこそ至高。至高の愛にして究極のエンタメなんですよ、竜胆さん。
万作:BLを知ればもうNLには…戻れません。
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竜胆:いやいや、万作くん。君には菫(すみれ)さんという恋人がいるだろう。何故男性を恋愛対象としない君まで、そうやってBL作品に没頭できるんだ?
:
万作:フッフッフ。愚問ですよ竜胆さん。
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燕子花:では、竜胆さんに質問です。男女のラブロマンスに必要不可欠な要素ってなんだと思いますか?
:
竜胆:ん?私が答えるのか。
竜胆:うむ、遥か昔シェイクスピアの頃から、ラブロマンスに必要なのは、2人の愛を阻む、壁のようなものだろうな。
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燕子花:正解です。では次は万作さんに質問です。壁とは具体的にどういったシチュエーションを連想しますか?
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万作:あっ、えーっと、壁ですか?壁壁壁…(閃いて)あ!わかった!彼女の家が巨大な壁に覆われてるとかですか?
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燕子花:(キッパリと)違います。
燕子花:では、竜胆さんは分かりますか?
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竜胆:2人の愛を阻む壁、つまりそれは身分の違いや、政治的対立、不治の病や、配偶者の存在などになるのかな?
:
燕子花:パーフェクトです、竜胆さん!
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竜胆:この程度は一般教養の範囲だ。
竜胆:万作くん、君は燕子花先生の熱心なファンの割には、先生の意図するところをあまり理解していない様だな。
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万作:ぐぬぬ…。
:
燕子花:じゃあ竜胆さん、質問を変えます。
燕子花:もし、シェイクスピア作品のロミオとジュリエットがどちらも男性で、どちらか一方がノン気、つまり異性愛者だった場合、あなたならこの物語にどんな壁を用意しますか?
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竜胆:(竜胆、燕子花の意図するところに気付く)……ハッ!
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燕子花:うふふ。竜胆さん、あなたはBLの才能をお持ちのようね。
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万作:え!?何!?何なの!?
万作:ちょっと僕だけ置いてけぼりなんですけどー!?
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竜胆:万作くん、わからないのか?
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万作:えっ
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竜胆:いらないんだよ。
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万作:……?
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竜胆:BL作品なら、愛する人が異性愛者だと言うだけで、儚い、叶わずの恋になる。
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万作:……あ!たしかに!
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燕子花:そうです!BLなら片思いの相手がノン気なだけで、身分の違いも、不治の病も、恋のライバルさえも必要ない!
燕子花:わかりやすいんです!単純明快なんです!玄関開けたら5秒でBLなんです!激シコ案件必至!!ムッハァ~!!
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万作:あの、燕子花先生?
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燕子花:あら失礼。つい一目も憚らず耽ってしまいました…。
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竜胆:燕子花先生。先生の懇切丁寧な説明のおかげで、BLについて基礎的な理解は出来たが、まだわからない点があります。
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燕子花:どうぞ。分からない事があったら何でも聞いてください。
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竜胆:何故?唐揚げなんですか?
竜胆:唐揚げのBLというのが、未だにさっぱり理解出来ないのですが…。
:
万作:竜胆さん!不躾にも程がありますよ!
万作:耽美なBLの世界を、あえて食材に擬人化する事で、先生は独創的な作風を手に入れられたんです!
:
燕子花:それは、その…(口ごもる)
:
竜胆:是非、後学のためにご教授ください、先生。
:
燕子花:…センシティブな表現を誤魔化すためです!
燕子花:とりあえず人間じゃないって事にしとけば、多少過激な表現になっても怒られないかなと思って!
:
万作:ええ!?そんな理由!?
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燕子花:いや、だって!
燕子花:最初は私も自分の性癖を書き殴ってただけで、まさかこんなに話題になるとは思ってもなかったですもん!
燕子花:ましてや盗作被害にあうなんて夢にも思いませんでしたよー!!
:
竜胆:ああ、そう言えば盗作被害の詳細については、まだお聞きしていませんでしたね。
竜胆:具体的には先生の作品のどの部分が盗用されたんでしょうか。
:
燕子花:…はい。
燕子花:これ、なんです。
:
万作:えーっと…(タイトルを読む)「揚げたて★唐揚げクラブ」
万作:タイトルもそこはかとなく、先生の作品に寄せていますね。
:
燕子花:はい。でも本編はもっと酷くて…。
:
竜胆:ちょっと目を通させてもらっても良いですか?
:
燕子花:ええ、勿論。
:
:
0:ここから劇中劇
:
:
唐揚げ:はじめまして、今日からこちらでお世話になる事になった……【唐揚げ】と申します。
唐揚げ:大分県産の鶏肉を、醤油とニンニクをベースにした秘伝のタレで漬け込みました!
唐揚げ:こちらの食卓のメインディッシュとなれる様、一生懸命頑張りますので、皆さん、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いしますっ!
:
ケチャップ:フフッ
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唐揚げ:わっ!
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ケチャップ:唐揚げくんって呼んじゃうね。
:
唐揚げ:あ、あなたは…
:
ケチャップ:あっ、ボク?
ケチャップ:ボクは……ボクの名前はケチャップ。
:
唐揚げ:ケチャップ…さん…?
唐揚げ:
唐揚げ:(モノローグ)ケチャップと呼ばれた少年は、紅く紅潮した、ぽってりとしたエキゾチックな唇を僕に向ける。
唐揚げ:その美しい唇に僕も目を見やると、まるで唇に吸い込まれそうな気がして、ハッと息を呑む。
:
:
0:劇中劇終わり
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:
竜胆:これは…酷い盗作だな…。
:
燕子花:はい…初めてこれを読んだ時は、怒りで頭が真っ白になっちゃって…。
:
竜胆:ほとんど燕子花(かきつばた)先生の原文のままじゃないか、マヨネーズがケチャップに変わったぐらいか。
:
燕子花:ええ。
:
万作:(怒りに震えて)…許せない!
:
燕子花:万作さん。
:
万作:こんな卑劣で最低な行為、絶対に許せないです!
:
燕子花:はい。許せません…
燕子花:続きも本当に酷くて…
:
竜胆:わかった。もう既に悪辣な盗作であるという事は理解したが、もう少し読み進めてみる事にしよう。
:
:
0:再び劇中劇が始まる
:
:
カボス:(遮って)やめねえかケチャップ。唐揚げが困ってんじゃねえか。
:
唐揚げ:えっ
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ケチャップ:ちぇ。良いとこだったのに。
:
唐揚げ:あ、あなたは…?
:
カボス:カボスだ。ここの食卓ではそれなりのベテランかもしれんな。宜しく頼む。
:
唐揚げ:(上目遣いで)カボス先輩、
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カボス:(顔を赤らめて)ちょ!だからじっと見てんじゃねえって!
:
ケチャップ:あれ?カボス先輩、なに赤くなってるの?これじゃあカボスじゃなくて赤ピーマンだね。
:
カボス:バ…!バカ言うんじゃねえぞケチャップ!!
カボス:テメーは黙ってろ!
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ケチャップ:ふふ。素直じゃないなあ。
:
:
0:劇中劇終わり
:
:
竜胆:今度はレモンの代わりにカボスか…。
竜胆:あまりに酷くて言葉が出ないな。
:
燕子花:そうなんです!登場人物の名前だけ変えて、あとはまるっきり一緒!
:
万作:チクショー!なんて奴だ!
万作:もはや人間として許せない!コイツの血は何色なんだ!?
:
燕子花:万作さん…
:
竜胆:万作くん、エライ興奮のしようだな。
竜胆:まあ、それだけ燕子花(かきつばた)先生の作品に思い入れがあるという事か…。
:
万作:そりゃ腹立つに決まってますよー!
万作:唐揚げにケチャップってなんですか!こんな酷いチョイスありますー!?
:
燕子花:え…そこ?
:
万作:唐揚げにかける薬味で美味しい組み合わせなんて無限にあるのに、なんで!よりによってケチャップなんですか!
万作:あと、なんでカボスが赤くなったら赤ピーマンになるんですか!?ってか野菜の種類変わってるし!
:
燕子花:……。
:
万作:燕子花先生、本当にお辛かったですね…。
万作:唐揚げにケチャップをかける様な輩に、先生の心血を注いで作り上げた作品を盗作されるだなんて。
:
燕子花:ええ、まあ…。
:
竜胆:万作くん、君の気持ちはわからなくはないが、君の発言のせいで燕子花先生の振り上げた拳が、行き場を失って彷徨っているぞ。
:
万作:え!?そうなんですか!?
:
燕子花:…はい。
:
竜胆:君は少しの間、黙っていた方が良さそうだ。
:
万作:なんでですかっ!
:
竜胆:とにかく、問題はこの盗作した犯人をどうやって懲らしめるか、だな。
竜胆:先生、管理者への問い合わせや通報はちゃんとしたんですか?
:
燕子花:はい。盗作されてるのを知ってすぐに!
燕子花:だけど、管理者側ではどちらがオリジナル作品かの判別がつかないので、個人間で話し合って解決して欲しいという回答でした。
:
竜胆:随分と弱腰な管理者だな…。
竜胆:それで直接犯人と連絡を取ってみたと?
:
燕子花:はい、勿論。
燕子花:何度かシナリオを取り下げてもらうよう、DMを送ってはみたんですが、なしのつぶてで…。
:
竜胆:そうか…。まあ素直に削除に応じるくらいだったら、最初からこんな事もしないか。
:
万作:犯人を、上手く釣りだす必要があるという事ですね…。
万作:
万作:あの、僕がその盗作犯のファンのフリをして、コンタクトを取ってみる、というのはどうでしょうか?
:
竜胆:ふうむ。悪くないアイデアだが…。
:
燕子花:それだと、私たちの素性を明かした途端、逃げ出す可能性もありますね。
:
万作:確かに。
:
竜胆:だったら逃げ出せない場所に、釣り出すというのはどうだ?
:
万作:え?
:
燕子花:と、言いますと?
:
竜胆:犯人を生配信の場で追及するのさ。
竜胆:だったらその場を逃げる事も、言い逃れする事もできまい。
:
万作:なるほど。
:
竜胆:作品の熱心なファンだとでも言って、犯人を呼び出せばいい。
竜胆:その盗作作品の配信中に、奴の愚行を暴いてやれば、うんと盛り上がるじゃないか。
竜胆:(ネットリとした笑みをウカベテ)
竜胆:そうだな、ギャラリーもなるべくたくさん集めると、より一層楽しくなるだろうな。
:
万作:竜胆さん、今めちゃくちゃ悪い顔になってるの、自分で気付いてます?
:
竜胆:さあ、善は急げだ万作くん。
竜胆:早速例の盗作犯に接触を図ってくれたまえ。
:
燕子花:あの、でも、ひとつだけ問題があります。
:
万作:え?問題…ですか?
:
燕子花:私のシナリオも、私のシナリオを元にしたあの盗作作品も、登場人物が3人のシナリオなので、万作さんの他にあとお二人、協力者が必要です。
:
竜胆:なるほどな…。
:
万作:そうか…。秘密裏に作戦を進めるためには信用できる人をあと2人、探さないといけないって事か……。
:
竜胆:燕子花先生、ご自身の作品の盗作を読むだなんて、口も腐る思いだという事を承知の上でお願いしますが、事件解決にお力を貸しては頂けないだろうか。
:
燕子花:勿論です、竜胆さん!
燕子花:元を正せば私がお二人にお願いした事ですから。私でお役に立てる事でしたら、なんでもさせてください!
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竜胆:おお、有り難うございます、先生。
竜胆:…よし、これで無事に3人揃ったな。
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万作:え!?(数を数えて)いち、に、あと一人足りませんけど。
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竜胆:決まっているだろう、この私だ。
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万作:ええ!?竜胆さんも声劇するんですか!?
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竜胆:万作くん、私は君の声劇配信を通じて、ひとつの大きな学びを得たのさ。
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万作:えっ、学びですか。
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竜胆:そう。これくらいなら私にもできそうだとね。
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万作:ぐうっ。
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竜胆:それに燕子花先生の雪辱を果たすための大一番、私の声劇デビューに相応しい戦いだとは思わないか。
竜胆:
竜胆:さあ、万作くん、マイクを持て!ヘッドホンを付けろ!
竜胆:いざ、決戦の時だ!!
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万作:本日は、貴重な機会をくださって有り難うございます、ガマズミ先生。
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ガマズミ:はは。先生なんて言われるのも、まんざら悪い気はしないな。
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万作:えっと、僕は万作といいます、こちらの二人は燕子花せん…じゃなかったえーっと…
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燕子花:(敵意を隠しきれない様子で)アイリスです。
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万作:そう!アイリスさんです!アイリスさんもガマズミ先生の熱心なファンでして、
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ガマズミ:ああ、そうなんだ。よろしくどうぞ。
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燕子花:(憮然として)……。
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万作:あー!えーっと、それとこの人が、マイク片喰(かたばみ)さんです。
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0:竜胆、異常なまでの緊張で万作に話しかけられている事に全く気付いていない。
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竜胆:……
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万作:マイクさん、マイク片喰さん!
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竜胆:ハアハア……。
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万作:(小声で)ちょっと、竜胆さん!
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竜胆:ああ!そうか!私の事か!
竜胆:(緊張で声が上ずっている)マ、マ、マイク、かたばびでず!
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ガマズミ:はは。いくら僕が有名シナリオライターだからって、そんなに緊張する事ないだろう。
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燕子花:(舌打ち)チッ。
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ガマズミ:…ん?何か言ったか?
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万作:いえ!何も!何も言ってませんー!
万作:(小声で)ちょっと燕子花先生、落ち着いてください!
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燕子花:なんなんですか!あの態度はー!人の作品パクっといてなんであんなにデカい顔出来るんですか!?
燕子花:盗人猛々しいとはこの事です!!
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万作:わかります!わかりますけど!今は堪えてください!
万作:
万作:では早速今日はガマズミ先生の最新作「揚げたて★唐揚げクラブ」を読ませて頂きたいと思います。
万作:上演後のフリートークで先生に、今回の作品について色々お話を伺っていきたいと思います!
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ガマズミ:ええ。せっかくなので僕の解釈についても特別にお話ししようと思います。
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燕子花:ぐぬぬぬぬ…。
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万作:落ち着いて!落ち着いて先生!
万作:(取り繕って)えーっと、それでは今日の配役を紹介していきたいと思います!
万作:物語の主人公、唐揚げ役はわたくし万作が務めさせて頂きまーす。宜しくお願いしまーす!
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万作:続いて、ケチャップ役のアイリスさんです!アイリスさん、意気込みをどうぞ。
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燕子花:…別に。
:
ガマズミ:ん?
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万作:特【別に】!ガマズミさんにお越し頂いたからには一生懸命頑張りたい!って事ですね!
万作:アイリスさん、宜しくお願いしまーす!
万作:続いて、カボス役のマイク片喰さんでーす!
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竜胆:(ブツブツとうわ言のように言葉を繰り返している)
:
万作:ちょっと竜胆さん、さっきからどうしたんですかっ!?
万作:しっかりしてください!
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竜胆:ああっ!……私の番か。
竜胆:えー、たっ、ただいま、ご紹介に預かりました、マママ、マイク片喰です!
竜胆:この度はカボス役を仰せつかりました!ぜっ、全身全霊を賭けて、がっ、がっ、がんぼるまず!(頑張ります)
:
ガマズミ:がんぼるまず?
:
万作:あの、竜胆さん、もしかして、緊張してます?
:
竜胆:バババババカ言うな!私が緊張?冗談も休み休み、いいいい言え……
:
万作:ダメだこりゃ…。
万作:竜胆さんは緊張でガチガチだし、燕子花先生は敵意剥き出しだし……せっかく犯人を懲らしめるチャンスなのに。こうなったら僕だけでもしっかりしなきゃ。
:
ガマズミ:これは困ったものだね。
ガマズミ:君の友達二人は僕がいるせいか随分と様子がおかしいじゃないか。こんな状態で僕の作った繊細な世界を表現できるのか、ちょっと心配だな。
:
万作:いやいや、大丈夫です!僕たち本番に強いタイプなんで!
万作:
万作:もうこうなったら作戦決行だー!
万作:
万作:(小声で)二人ともしっかりしてくださいっ!今日ここに集まった目的を忘れないでくださいねー!!
万作:
万作:それじゃあガマズミ先生作「唐揚げクラブ」3、2、1……アクトッッ!!
:
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0:ここから劇中劇
:
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万作:唐揚げ「(モノローグ)僕の名前は唐揚げ。」
万作:唐揚げ「老若男女に愛される大人気メニュー。それがこの僕、唐揚げ…なんだけど…僕は今日田舎から出荷されたばかりの新人唐揚げ、新しい場所で上手く馴染めるか、すっごく不安なんだ。」
万作:
万作:唐揚げ「はじめまして、今日からこちらでお世話になる事になった……【唐揚げ】と申します。」
万作:唐揚げ「大分県産の鶏肉を、醤油とニンニクをベースにした秘伝のタレで漬け込みました!」
万作:唐揚げ「こちらの食卓のメインディッシュとなれる様、一生懸命頑張りますので、皆さん、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いしますっ!」
:
燕子花:ケチャップ「フフッ」
:
万作:唐揚げ「わっ!」
:
燕子花:ケチャップ「唐揚げくんって呼んじゃうね。」
:
万作:唐揚げ「あ、あなたは…」
:
燕子花:ケチャップ「あっ、ボク?」
燕子花:ケチャップ「ボクは……ボクの名前はケチャップ。ほんとはマヨネーズの方が良いに決まってっけど!」
:
万作:(小声で)ちょっといきなり打ち合わせにないアドリブやめてくださいって!
万作:唐揚げ「(咳払いをして仕切り直す)ケチャップ…さん…?」
:
燕子花:ケチャップ「どうしたの?唐揚げくん、初日の挨拶を終えたばかりなのにボーッとしちゃって。」
:
万作:唐揚げ「あっ、すっ、すいません!つい…」
:
燕子花:ケチャップ「あっ、唐揚げくん、初日だってのに、ネクタイ曲がってるよ。」
燕子花:ケチャップ「ほら、おいで。直してあげる。」
:
万作:唐揚げ「(モノローグ)そう言った途端、僕の胸元にグッとにじみ寄るケチャップさん…紅い瞳に、今度は確実に僕の顔が映り込む。」
万作:唐揚げ「(胸元に触れられて思わず声が漏れ出る)」
万作:唐揚げ「ハアッ…!」
:
燕子花:ケチャップ「どうしたの?可愛い声出しちゃって。」
燕子花:ケチャップ「…あれ?もしかして冷凍唐揚げが……知らない間に解凍されて、アツアツになっちゃった?」
:
万作:唐揚げ「ちっ、違います!やめてください、ケチャップさん!ネクタイくらい、自分で直せます!」
:
燕子花:ケチャップ「フフッ!可愛い唐揚げくん!」
:
:
0:次のセリフを言うはずの竜胆のセリフを待ち、奇妙な沈黙が起きる。
:
:
万作:(小声で)竜胆さん!次、竜胆さんです!
:
竜胆:あっ、しまった。私か。
竜胆:カボス「(すごい棒読みで)や、やめねえかケチャップ。唐揚げが、こ、困ってんじゃねえか。」
:
万作:唐揚げ「えっ」
:
燕子花:ケチャップ「ちぇ。良いとこだったのに。」
:
万作:唐揚げ「あ、あなたは…?」
:
竜胆:カボス「(棒読みで)やめねえかケチャップ。唐揚げが困ってんじゃねえか。」
:
万作:竜胆さん、そこはもう読みました!
:
竜胆:えっ、
:
万作:もっかい行きますよ!
万作:唐揚げ「あっ、あなたは…?」
:
竜胆:カボス「やめねえかケチャップ。唐揚げが困ってんじゃねえか。」
:
万作:だから竜胆さん、そこはもう読んだんだって!ダメだ、壊れたカーナビみたいになってる…。
:
ガマズミ:おい、いい加減にしてくれ。僕の作品の大ファンだっていうから来てやったのに、なんだこの酷い有り様は!
ガマズミ:こんな酷い芝居で僕の繊細な世界観が表現できる訳ないだろう!
:
燕子花:なにが、僕の繊細な世界観よ!人のシナリオ盗んでおいて、よくそんな事言えるわね!
:
ガマズミ:なっ!?何を言ってる!?
:
燕子花:言葉の通りよ!私が考えに考えて作った擬人化BLのアイデアどころか、セリフも殆ど一緒…こんな事して恥ずかしくないの!?
:
ガマズミ:お前…まさか…
:
燕子花:そうよ。私はあなたに盗作された「アゲアゲ☆唐揚げ部」の作者、燕子花牡丹(かきつばた・ぼたん)よっ!
:
ガマズミ:くだらない!お前みたいな無名ライターをこの僕が知る訳ないだろう!悪いがくだらん因縁をつけるんだったら僕はこれで失礼させ(てもらう)
:
万作:おっと、ガマズミ先生、今この枠から出ていくんだったら、盗作をお認めになるという事と同じだと思ってくださいね!
:
ガマズミ:グッ……
:
万作:この配信を聴きに来られているリスナーたちに身の潔白を証明したいって言うんだったら、あなたはもうしばらくここにいるべきだ!
:
ガマズミ:だっ、だったら!証拠を見せてみろよ!
ガマズミ:ぼぼ、僕が盗作した証拠がどこにあるって言うんだよー!
:
万作:…剽窃(ひょうせつ)って言葉をご存知ですか?
:
ガマズミ:剽窃?
:
万作:他者の成果物を許可なく使用する事、今あなたが燕子花先生にしている事です!
:
ガマズミ:だから何を根拠に(そんな事を言っている)
:
万作:実は剽窃行為は深刻な社会問題でもあるんです。大学生が論文を書くのに、ネットの記事を考察ごと盗用する事に頭を悩ませた大学教授があるプログラムを作ったんです。
:
ガマズミ:ある…プログラム?
:
万作:そう、その名も【剽窃チェッカー】このプログラムを使えば元になった記事から何割が引用されたかをすぐに調べる事が出来る。
:
ガマズミ:ウグッ…。
:
万作:因みにあなたの書いた「揚げたて★唐揚げクラブ」を、この「剽窃チェッカー」にかけてみたところ、実にその92パーセントが、燕子花先生の「アゲアゲ☆唐揚げ部」からの剽窃でした。
:
燕子花:私の書いた「アゲアゲ☆唐揚げ部」は、あなたがその汚らわしい盗作を投稿する10日前にアップされているわ……。
燕子花:さあ、もうこれで言い逃れは出来ないわよ!この……唐揚げ泥棒!!
:
万作:いや、それだとちょっと意味が変わってきます、燕子花先生。
:
竜胆:さあ、観念したまえ唐揚げ泥棒……いや、盗作ライターガマズミ!!
:
万作:あ、竜胆さん。
:
燕子花:竜胆さん、もう大丈夫なんですか?
:
竜胆:フン。慣れない声劇にほんの少し戸惑っただけさ。
:
燕子花:ほんの少し、でしたか?
:
ガマズミ:うるせえ!うるせえうるせえうるせえ!
ガマズミ:別にいいだろうちょっとくらい【引用】したってよう?お前のくだらない同人作品にこの僕がインスパイアされてやってるんだろうが!
:
燕子花:なっ!?
:
ガマズミ:インスパイアだっけか?オマージュ?リスペクト?パスティーシュ?
ガマズミ:ハァ…もう何でもいいや!お前ら全員ぶぶぶぶぶちコロコロココココ……
:
竜胆:奴から離れろ!万作くん!燕子花先生!
:
ガマズミ:グバァ!ゴプゥ…!
ガマズミ:ブチ殺せば、お前の書いたシナリオ全部僕のもんだろ?アババババ……
:
燕子花:キャアッ!
:
竜胆:(手で印を組んで真言を唱える)
竜胆:ノウマク・サンマンダ・バサラ・ダン・カン!
:
ガマズミ:グギャッ!
:
:
0:竜胆が真言を唱えると、竜胆のいる配信部屋に巨大なガマガエルの影が浮かび上がる。
:
:
燕子花:こ、これは一体…なんなの……?
:
竜胆:とっくに骨の髄まで腐っていたか……ちょうど良い、その腐った性根もろともヤキを入れてやろう。
竜胆:(再び手で印を組んで)
竜胆:
竜胆:迦楼羅の羽!穿つ倶利伽羅!奈落の業火に命ず!
竜胆:(かるらのはね うがつくりから ならくのごうかにめいず)
竜胆:ノウマク・サンマンダ・バサラ・ダン・カン!
:
ガマズミ:ギャアアアアー!!!!
:
:
0:いくつもの火柱に包まれたガマガエルの影が、業火に焼かれ朽ちていく。
:
:
竜胆:ふぅ。これでひとまず一件落着だな…。
:
万作:(笑いを堪えながら)…竜胆さんにも苦手なものってあるんですね?
:
竜胆:万作くん、何か言いたそうだな。
:
万作:プププ…何でもありませーん!
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燕子花:万作さん、竜胆さん、その節は本当に有難うございました。
:
万作:燕子花先生、その後、調子はいかがですか?
:
燕子花:はい!悩みがなくなった途端、またアイデアが次々と湧いてきちゃって。
燕子花:やっぱり面白い作品は、心が健康じゃないと書けないものですね!
:
万作:それは良かった!先生のファンとして、それが一番嬉しい言葉です!
:
竜胆:次はどんな作品を執筆されているんですか?
:
燕子花:次はですねえ…。なんと!次回作も擬人化BLでーす!
:
竜胆:やっぱり。
:
万作:カーッ!燕子花先生の擬人化BL第2弾!この日をどれだけ待ちわびた事か!
万作:それで先生!次はどんな設定で書くおつもりなんですか!?
:
燕子花:ズバリ!【チキン南蛮】を【あんかけ】と【タルタルソース】が取り合う話です!
燕子花:今回はお二人にお礼の意味も込めて、当て書きで書いてみたんです!また3人でやりましょ!
:
万作:えー!大好きな燕子花先生に当て書きしてもらうなんて、夢のようです!やりましょう!やりましょう!
:
竜胆:いや、その、私は……
:
万作:どうしたんですか?竜胆さん。
:
竜胆:少し、考えさせてくれっ!
:
万作:あーちょっと、竜胆さーん!竜胆さーん!
:
:
:
0:終わり
0:
:
:タイトル
: 【片喰竜胆退魔行(かたばみ りんどう たいまこう】
: 【第3話 声劇デビューの衝撃!唐揚げBLって何!?】作・くまのムッチ
:
:登場人物
:
竜胆:
竜胆:(配役が決まったらここをタップしてください)
竜胆:片喰 竜胆(かたばみ りんどう)
:
:
万作:
万作:(配役が決まったらここをタップしてください)
万作:一富士 万作(いちふじ まんさく)
万作:兼ね役(レモン役・カボス役)があります。
:
レモン:
レモン:レモン
レモン:(万作役の方はここをタップしてください)
:
カボス:
カボス:カボス
カボス:(万作役の方はここをタップしてください)
:
:
燕子花:
燕子花:(配役が決まったらここをタップしてください)
燕子花:燕子花牡丹(かきつばた ぼたん)
燕子花:兼ね役(マヨネーズ役・ケチャップ役)があります。
:
マヨネーズ:
マヨネーズ:マヨネーズ
マヨネーズ:(燕子花役の方はここをタップしてください)
:
ケチャップ:
ケチャップ:ケチャップ
ケチャップ:(燕子花役の方はここをタップしてください)
:
:
ガマズミ:
ガマズミ:(配役が決まったらここをタップしてください)
ガマズミ:ガマズミ
ガマズミ:兼ね役(唐揚げ役)があります。
:
:
唐揚げ:
唐揚げ:唐揚げ
唐揚げ:(ガマズミ役の方はここをタップしてください)
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0:劇中劇【唐揚げのBL】
:
:
唐揚げ:(モノローグ)僕の名前は唐揚げ。
唐揚げ:老若男女に愛される大人気メニュー。それがこの僕、唐揚げ…なんだけど…僕は今日田舎から出荷されたばかりの新人唐揚げ、新しい場所で上手く馴染めるか、すっごく不安なんだ。
唐揚げ:
唐揚げ:はじめまして、今日からこちらでお世話になる事になった……【唐揚げ】と申します。
唐揚げ:大分県産の鶏肉を、醤油とニンニクをベースにした秘伝のタレで漬け込みました!
唐揚げ:こちらの食卓のメインディッシュとなれる様、一生懸命頑張りますので、皆さん、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いしますっ!
:
マヨネーズ:フフッ
:
唐揚げ:わっ!
:
マヨネーズ:唐揚げくんって呼んじゃうね。
:
唐揚げ:あ、あなたは…
:
マヨネーズ:あっ、ボク?
マヨネーズ:ボクは……ボクの名前はマヨネーズ。
:
唐揚げ:マヨネーズ…さん…?
唐揚げ:
唐揚げ:(モノローグ)マヨネーズと呼ばれた少年は、少し色素の薄い、茶色がかった瞳で僕を見つめてくる。
唐揚げ:潤んだ瞳に僕も目を見やると、瞳の中に映った僕まで見えたような気がして、ハッと息を呑む。
:
マヨネーズ:どうしたの?唐揚げくん、初日の挨拶を終えたばかりなのにボーッとしちゃって。
:
唐揚げ:あっ、すっ、すいません!つい…
:
マヨネーズ:フフ。……つい、なあに?
:
唐揚げ:いやあの、お人形さんみたいだなあって。
:
マヨネーズ:えっ?人形?
マヨネーズ:あっ、もーっ!僕の事キューピー人形みたいなお子ちゃまだって、バカにしてるんでしょ~!?
:
唐揚げ:いえっ、そんなつもりは!
唐揚げ:でも小柄で、まるで硝子玉みたいな目だったから……あの、ご出身は、海外なんですか?
:
マヨネーズ:ううん、ハーフだよ。カロリーも、ハーフ。
マヨネーズ:あっ、唐揚げくん、初日だってのに、ネクタイ曲がってるよ。
マヨネーズ:ほら、おいで。直してあげる。
:
唐揚げ:(モノローグ)そう言った途端、僕の胸元にグッとにじみ寄るマヨネーズさん…薄茶色の瞳に、今度は確実に僕の顔が映り込む。
唐揚げ:(胸元に触れられて思わず声が漏れ出る)
唐揚げ:ハアッ…!
:
マヨネーズ:どうしたの?可愛い声出しちゃって。
マヨネーズ:…あれ?もしかして冷凍唐揚げが……知らない間に解凍されて、アツアツになっちゃった?
:
唐揚げ:ちっ、違います!やめてください、マヨネーズさん!ネクタイくらい、自分で直せます!
:
マヨネーズ:フフッ!可愛い唐揚げくん!
マヨネーズ:僕の事はマヨって呼んでくれていいからね!
:
唐揚げ:なっ……!?
唐揚げ:初対面でいきなりニックネームで呼ぶなんて、僕にはハードルが高すぎますっ!
:
マヨネーズ:フフフ。そういうとこも可愛い。
:
レモン:(遮って)やめねえかマヨネーズ。唐揚げが困ってんじゃねえか。
:
唐揚げ:えっ
:
マヨネーズ:ちぇ。良いとこだったのに。
:
唐揚げ:あ、あなたは…?
:
レモン:レモンだ。ここの食卓ではそれなりのベテランかもしれんな。宜しく頼む。
:
唐揚げ:ハッ!宜しくお願いしますっ!レモン先輩!
:
レモン:(カチンときて)…お前、何か勘違いしていないか?
:
唐揚げ:えっ…?
:
レモン:俺は何もお前を助けようとして、言った訳じゃない。俺は俺の、優雅な朝の一時を邪魔する、騒々しい輩が許せんだけだ。
:
唐揚げ:あっ、すいませんでした…。
:
マヨネーズ:もう相変わらずだなあレモン先輩は、見てよ唐揚げくんの顔、今にも泣き出しそうじゃん。
:
唐揚げ:あ、あの、ごめんなさい!レモン先輩!
唐揚げ:まだ出会ったばかりなのに、不愉快な思いをさせてしまって!本当にごめんなさい!僕には謝る事しか出来ないけど…
:
レモン:おい!何度も謝ってんじゃねえ!
レモン:そうやって、何が悪いかもわかってねえのにすぐペコペコ謝って来る奴が俺は一番嫌いなんだよ!!
:
唐揚げ:(モノローグ)そう言ってレモン先輩が僕の胸ぐらを掴む。
唐揚げ:長身のレモン先輩が目の前に立つと、僕の視界が一気に遮られる。眼前に広がるのは、先輩の逞しく、厚い、胸板。
唐揚げ:大きくて広い。何故か僕は恐怖心より先にそんな事を考えていた…。おそるおそる目線をあげると、レモン先輩と、目が合う。
唐揚げ:
唐揚げ:(上目遣いで)ご、ごめんなさい…。
:
レモン:(顔を赤らめて)ちょ!だから謝んじゃねえって!もういい……許してやる…次はねえからな…。
:
マヨネーズ:あれ?レモン先輩、なに赤くなってるの?これじゃあレモンじゃなくてピンクレモネードだね。
:
レモン:バ…!バカ言うんじゃねえぞマヨネーズ!!
レモン:テメーは黙ってろ!
:
マヨネーズ:ふふ。素直じゃないなあ。
マヨネーズ:…ねえ、ところでさ、唐揚げくん。
:
唐揚げ:え?あ、はい。
:
マヨネーズ:唐揚げくんはさ、もう、パートナーは決めてるの?
:
唐揚げ:え?パートナー?
唐揚げ:…パートナーってなんの事ですか?
:
マヨネーズ:今夜のディナーのお相手さ、まだ決めてないんだったらさ、僕とシようよ。揚げたての君の衣にさ、僕の濃厚なのを、たっぷり、かけてあげる…。
:
唐揚げ:ええっ!?そ、そんな事、きゅ、急に言われても…
:
レモン:おい、マヨネーズ。なに勝手に話進めてんだよ。何も知らないコイツの初めてを奪おうってオメーの魂胆がみえみえなんだよ!
:
マヨネーズ:あれー?バレてた?
:
唐揚げ:ちょ!マヨネーズさんっ!
:
レモン:唐揚げ。
:
唐揚げ:はい。
:
レモン:先輩命令だ。今夜のディナーは俺とにしろ。
:
唐揚げ:……ええっ!?
:
レモン:今まで誰にもかけられた事ねえんだろ?
レモン:だったら最初は俺様しかあり得ねえだろ?お前には俺の酸味こそが相応しい。
:
唐揚げ:いや、その、
:
レモン:さあ、どこにかけて欲しいんだ?
レモン:モモか?ムネか?自分でおねだりしてみろよ。
:
唐揚げ:そっ、そんな…
:
マヨネーズ:もう!レモン先輩、抜け駆けは許さないからねー!
マヨネーズ:ね?唐揚げくん。キミだって、僕にかけてもらった方が嬉しいよね?
:
レモン:邪魔すんなマヨネーズ!
:
マヨネーズ:じゃあ、キミが選んでよ、唐揚げくん。
:
レモン:どっちにすんだよ?唐揚げ。
:
唐揚げ:そ、そんな事言ったって、僕選べない!選べないよぉ~!!
:
:
0:劇中劇終わり。
:
:
竜胆:…なんだこれは?
:
万作:知らないんですか!?
万作:今、声劇のBL界隈でジワジワ来てる燕子花牡丹(かきつばた・ぼたん)先生の傑作擬人化BL「アゲアゲ☆唐揚げ部」ですよ!
:
燕子花:先生はやめてください。私なんてそんな大層なものを書いてる訳じゃありませんから…。
:
万作:いやいやそんなご謙遜を!
万作:こうして燕子花先生に直接感想をお伝えできるなんて光栄です!
:
燕子花:はあ…有り難うございます…恐縮です…
:
万作:それで今日はどういったご相談なんでしょうか?
:
燕子花:はい。こちらでは声劇配信で起きたトラブルを何でも解決してくれるとお伺いしまして…。
:
万作:えっ
:
燕子花:もう自分一人の力ではどうにもできないと、ほとほと困り果てていたところだったので、本当に藁にもすがる思いでご連絡させてもらったんです。
:
万作:いや、あの、僕たちは何でも屋でも探偵でもなくってマガツヒ専門なんですよ。
:
燕子花:マガツヒ?
:
万作:あー、えっと、マガツヒっていうのは、怒りや嫉妬、絶望なんかの強い負の感情をきっかけに、物の怪に心と身体を乗っ取られてしまった人の事を、マガツヒと呼ぶんです!
:
燕子花:そんな!でも、もうあなた方しか頼れる人がいないんです!どうか!どうか!宜しくお願いします!
:
万作:そんな事言っても僕たちでお力になれる用件かどうかもわかりませんし…
:
竜胆:いいじゃないか。
:
万作:え!?
:
竜胆:そのBL?とかいうジャンルについて見識を深める事が声劇の真髄を極めるために必要であると、私の第六感がそう告げている。
:
万作:あの、それを聞いて、僕の第六感も身の危険を知らせてるんですけど。
:
竜胆:しかも、それだけ声劇でも人気ジャンルの一角を担っている、というなら、そこにマガツヒが現れても何ら不思議ではあるまい…。
:
燕子花:本当ですか!?片喰(かたばみ)さん!有り難うございます!
:
竜胆:竜胆と呼んでください、燕子花(かきつばた)先生。
竜胆:さあ、詳しいお話をお聞かせ願えますか?
:
燕子花:はい…実は私の書いた作品が…知らない人に盗作されているんです!
:
万作:盗作!?
万作:
万作:(タイトルコール)
万作:片喰竜胆退魔行 第3話「衝撃の声劇デビュー!唐揚げBLって何!?」
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:・
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:・
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竜胆:盗作か…それはまた物騒な話だな。
:
万作:許せない…!燕子花先生が苦心の末に編み出した擬人化BLの世界を、パクる奴がいるなんて!
:
竜胆:すまないがちょっと、先に幾つか質問させてくれないか?
竜胆:まだ声劇配信に触れたばかりの私にとっては、先ほどから耳慣れぬ言葉だらけでさっぱり意味がわからん。
竜胆:BL?擬人化?そもそも何故、唐揚げやマヨネーズが喋るんだ?
:
万作:ああ、それはですね…
:
燕子花:万作さん、それは私からご説明させてもらいます。
:
万作:おお!燕子花先生、御自ら!是非ご高説を賜りたく存じます!
:
竜胆:万作くん、君、そんな話し方だったか?
:
燕子花:まずBLというのは、ボーイズラブの略称で、男性同士のラブロマンスの物語を指します。これに対して女性同士の恋愛物はGL、ガールズラブまたは百合と呼びます。
燕子花:ちなみに男女の恋愛物はNL、ノーマルラブと呼びます。
:
竜胆:ちょっと待ってくれ。NLって何故男女の恋愛物がNLなんだ!?それじゃあまるでBLが基準のような言い方じゃないか!
:
燕子花:(ピシャリと)BLが基準だからです。竜胆さん。
:
竜胆:……。
:
万作:BLこそ至高。至高の愛にして究極のエンタメなんですよ、竜胆さん。
万作:BLを知ればもうNLには…戻れません。
:
竜胆:いやいや、万作くん。君には菫(すみれ)さんという恋人がいるだろう。何故男性を恋愛対象としない君まで、そうやってBL作品に没頭できるんだ?
:
万作:フッフッフ。愚問ですよ竜胆さん。
:
燕子花:では、竜胆さんに質問です。男女のラブロマンスに必要不可欠な要素ってなんだと思いますか?
:
竜胆:ん?私が答えるのか。
竜胆:うむ、遥か昔シェイクスピアの頃から、ラブロマンスに必要なのは、2人の愛を阻む、壁のようなものだろうな。
:
燕子花:正解です。では次は万作さんに質問です。壁とは具体的にどういったシチュエーションを連想しますか?
:
万作:あっ、えーっと、壁ですか?壁壁壁…(閃いて)あ!わかった!彼女の家が巨大な壁に覆われてるとかですか?
:
燕子花:(キッパリと)違います。
燕子花:では、竜胆さんは分かりますか?
:
竜胆:2人の愛を阻む壁、つまりそれは身分の違いや、政治的対立、不治の病や、配偶者の存在などになるのかな?
:
燕子花:パーフェクトです、竜胆さん!
:
竜胆:この程度は一般教養の範囲だ。
竜胆:万作くん、君は燕子花先生の熱心なファンの割には、先生の意図するところをあまり理解していない様だな。
:
万作:ぐぬぬ…。
:
燕子花:じゃあ竜胆さん、質問を変えます。
燕子花:もし、シェイクスピア作品のロミオとジュリエットがどちらも男性で、どちらか一方がノン気、つまり異性愛者だった場合、あなたならこの物語にどんな壁を用意しますか?
:
竜胆:(竜胆、燕子花の意図するところに気付く)……ハッ!
:
燕子花:うふふ。竜胆さん、あなたはBLの才能をお持ちのようね。
:
万作:え!?何!?何なの!?
万作:ちょっと僕だけ置いてけぼりなんですけどー!?
:
竜胆:万作くん、わからないのか?
:
万作:えっ
:
竜胆:いらないんだよ。
:
万作:……?
:
竜胆:BL作品なら、愛する人が異性愛者だと言うだけで、儚い、叶わずの恋になる。
:
万作:……あ!たしかに!
:
燕子花:そうです!BLなら片思いの相手がノン気なだけで、身分の違いも、不治の病も、恋のライバルさえも必要ない!
燕子花:わかりやすいんです!単純明快なんです!玄関開けたら5秒でBLなんです!激シコ案件必至!!ムッハァ~!!
:
万作:あの、燕子花先生?
:
燕子花:あら失礼。つい一目も憚らず耽ってしまいました…。
:
竜胆:燕子花先生。先生の懇切丁寧な説明のおかげで、BLについて基礎的な理解は出来たが、まだわからない点があります。
:
燕子花:どうぞ。分からない事があったら何でも聞いてください。
:
竜胆:何故?唐揚げなんですか?
竜胆:唐揚げのBLというのが、未だにさっぱり理解出来ないのですが…。
:
万作:竜胆さん!不躾にも程がありますよ!
万作:耽美なBLの世界を、あえて食材に擬人化する事で、先生は独創的な作風を手に入れられたんです!
:
燕子花:それは、その…(口ごもる)
:
竜胆:是非、後学のためにご教授ください、先生。
:
燕子花:…センシティブな表現を誤魔化すためです!
燕子花:とりあえず人間じゃないって事にしとけば、多少過激な表現になっても怒られないかなと思って!
:
万作:ええ!?そんな理由!?
:
燕子花:いや、だって!
燕子花:最初は私も自分の性癖を書き殴ってただけで、まさかこんなに話題になるとは思ってもなかったですもん!
燕子花:ましてや盗作被害にあうなんて夢にも思いませんでしたよー!!
:
竜胆:ああ、そう言えば盗作被害の詳細については、まだお聞きしていませんでしたね。
竜胆:具体的には先生の作品のどの部分が盗用されたんでしょうか。
:
燕子花:…はい。
燕子花:これ、なんです。
:
万作:えーっと…(タイトルを読む)「揚げたて★唐揚げクラブ」
万作:タイトルもそこはかとなく、先生の作品に寄せていますね。
:
燕子花:はい。でも本編はもっと酷くて…。
:
竜胆:ちょっと目を通させてもらっても良いですか?
:
燕子花:ええ、勿論。
:
:
0:ここから劇中劇
:
:
唐揚げ:はじめまして、今日からこちらでお世話になる事になった……【唐揚げ】と申します。
唐揚げ:大分県産の鶏肉を、醤油とニンニクをベースにした秘伝のタレで漬け込みました!
唐揚げ:こちらの食卓のメインディッシュとなれる様、一生懸命頑張りますので、皆さん、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いしますっ!
:
ケチャップ:フフッ
:
唐揚げ:わっ!
:
ケチャップ:唐揚げくんって呼んじゃうね。
:
唐揚げ:あ、あなたは…
:
ケチャップ:あっ、ボク?
ケチャップ:ボクは……ボクの名前はケチャップ。
:
唐揚げ:ケチャップ…さん…?
唐揚げ:
唐揚げ:(モノローグ)ケチャップと呼ばれた少年は、紅く紅潮した、ぽってりとしたエキゾチックな唇を僕に向ける。
唐揚げ:その美しい唇に僕も目を見やると、まるで唇に吸い込まれそうな気がして、ハッと息を呑む。
:
:
0:劇中劇終わり
:
:
竜胆:これは…酷い盗作だな…。
:
燕子花:はい…初めてこれを読んだ時は、怒りで頭が真っ白になっちゃって…。
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竜胆:ほとんど燕子花(かきつばた)先生の原文のままじゃないか、マヨネーズがケチャップに変わったぐらいか。
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燕子花:ええ。
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万作:(怒りに震えて)…許せない!
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燕子花:万作さん。
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万作:こんな卑劣で最低な行為、絶対に許せないです!
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燕子花:はい。許せません…
燕子花:続きも本当に酷くて…
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竜胆:わかった。もう既に悪辣な盗作であるという事は理解したが、もう少し読み進めてみる事にしよう。
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0:再び劇中劇が始まる
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カボス:(遮って)やめねえかケチャップ。唐揚げが困ってんじゃねえか。
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唐揚げ:えっ
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ケチャップ:ちぇ。良いとこだったのに。
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唐揚げ:あ、あなたは…?
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カボス:カボスだ。ここの食卓ではそれなりのベテランかもしれんな。宜しく頼む。
:
唐揚げ:(上目遣いで)カボス先輩、
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カボス:(顔を赤らめて)ちょ!だからじっと見てんじゃねえって!
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ケチャップ:あれ?カボス先輩、なに赤くなってるの?これじゃあカボスじゃなくて赤ピーマンだね。
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カボス:バ…!バカ言うんじゃねえぞケチャップ!!
カボス:テメーは黙ってろ!
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ケチャップ:ふふ。素直じゃないなあ。
:
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0:劇中劇終わり
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:
竜胆:今度はレモンの代わりにカボスか…。
竜胆:あまりに酷くて言葉が出ないな。
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燕子花:そうなんです!登場人物の名前だけ変えて、あとはまるっきり一緒!
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万作:チクショー!なんて奴だ!
万作:もはや人間として許せない!コイツの血は何色なんだ!?
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燕子花:万作さん…
:
竜胆:万作くん、エライ興奮のしようだな。
竜胆:まあ、それだけ燕子花(かきつばた)先生の作品に思い入れがあるという事か…。
:
万作:そりゃ腹立つに決まってますよー!
万作:唐揚げにケチャップってなんですか!こんな酷いチョイスありますー!?
:
燕子花:え…そこ?
:
万作:唐揚げにかける薬味で美味しい組み合わせなんて無限にあるのに、なんで!よりによってケチャップなんですか!
万作:あと、なんでカボスが赤くなったら赤ピーマンになるんですか!?ってか野菜の種類変わってるし!
:
燕子花:……。
:
万作:燕子花先生、本当にお辛かったですね…。
万作:唐揚げにケチャップをかける様な輩に、先生の心血を注いで作り上げた作品を盗作されるだなんて。
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燕子花:ええ、まあ…。
:
竜胆:万作くん、君の気持ちはわからなくはないが、君の発言のせいで燕子花先生の振り上げた拳が、行き場を失って彷徨っているぞ。
:
万作:え!?そうなんですか!?
:
燕子花:…はい。
:
竜胆:君は少しの間、黙っていた方が良さそうだ。
:
万作:なんでですかっ!
:
竜胆:とにかく、問題はこの盗作した犯人をどうやって懲らしめるか、だな。
竜胆:先生、管理者への問い合わせや通報はちゃんとしたんですか?
:
燕子花:はい。盗作されてるのを知ってすぐに!
燕子花:だけど、管理者側ではどちらがオリジナル作品かの判別がつかないので、個人間で話し合って解決して欲しいという回答でした。
:
竜胆:随分と弱腰な管理者だな…。
竜胆:それで直接犯人と連絡を取ってみたと?
:
燕子花:はい、勿論。
燕子花:何度かシナリオを取り下げてもらうよう、DMを送ってはみたんですが、なしのつぶてで…。
:
竜胆:そうか…。まあ素直に削除に応じるくらいだったら、最初からこんな事もしないか。
:
万作:犯人を、上手く釣りだす必要があるという事ですね…。
万作:
万作:あの、僕がその盗作犯のファンのフリをして、コンタクトを取ってみる、というのはどうでしょうか?
:
竜胆:ふうむ。悪くないアイデアだが…。
:
燕子花:それだと、私たちの素性を明かした途端、逃げ出す可能性もありますね。
:
万作:確かに。
:
竜胆:だったら逃げ出せない場所に、釣り出すというのはどうだ?
:
万作:え?
:
燕子花:と、言いますと?
:
竜胆:犯人を生配信の場で追及するのさ。
竜胆:だったらその場を逃げる事も、言い逃れする事もできまい。
:
万作:なるほど。
:
竜胆:作品の熱心なファンだとでも言って、犯人を呼び出せばいい。
竜胆:その盗作作品の配信中に、奴の愚行を暴いてやれば、うんと盛り上がるじゃないか。
竜胆:(ネットリとした笑みをウカベテ)
竜胆:そうだな、ギャラリーもなるべくたくさん集めると、より一層楽しくなるだろうな。
:
万作:竜胆さん、今めちゃくちゃ悪い顔になってるの、自分で気付いてます?
:
竜胆:さあ、善は急げだ万作くん。
竜胆:早速例の盗作犯に接触を図ってくれたまえ。
:
燕子花:あの、でも、ひとつだけ問題があります。
:
万作:え?問題…ですか?
:
燕子花:私のシナリオも、私のシナリオを元にしたあの盗作作品も、登場人物が3人のシナリオなので、万作さんの他にあとお二人、協力者が必要です。
:
竜胆:なるほどな…。
:
万作:そうか…。秘密裏に作戦を進めるためには信用できる人をあと2人、探さないといけないって事か……。
:
竜胆:燕子花先生、ご自身の作品の盗作を読むだなんて、口も腐る思いだという事を承知の上でお願いしますが、事件解決にお力を貸しては頂けないだろうか。
:
燕子花:勿論です、竜胆さん!
燕子花:元を正せば私がお二人にお願いした事ですから。私でお役に立てる事でしたら、なんでもさせてください!
:
竜胆:おお、有り難うございます、先生。
竜胆:…よし、これで無事に3人揃ったな。
:
万作:え!?(数を数えて)いち、に、あと一人足りませんけど。
:
竜胆:決まっているだろう、この私だ。
:
万作:ええ!?竜胆さんも声劇するんですか!?
:
竜胆:万作くん、私は君の声劇配信を通じて、ひとつの大きな学びを得たのさ。
:
万作:えっ、学びですか。
:
竜胆:そう。これくらいなら私にもできそうだとね。
:
万作:ぐうっ。
:
竜胆:それに燕子花先生の雪辱を果たすための大一番、私の声劇デビューに相応しい戦いだとは思わないか。
竜胆:
竜胆:さあ、万作くん、マイクを持て!ヘッドホンを付けろ!
竜胆:いざ、決戦の時だ!!
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:・
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万作:本日は、貴重な機会をくださって有り難うございます、ガマズミ先生。
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ガマズミ:はは。先生なんて言われるのも、まんざら悪い気はしないな。
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万作:えっと、僕は万作といいます、こちらの二人は燕子花せん…じゃなかったえーっと…
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燕子花:(敵意を隠しきれない様子で)アイリスです。
:
万作:そう!アイリスさんです!アイリスさんもガマズミ先生の熱心なファンでして、
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ガマズミ:ああ、そうなんだ。よろしくどうぞ。
:
燕子花:(憮然として)……。
:
万作:あー!えーっと、それとこの人が、マイク片喰(かたばみ)さんです。
:
:
0:竜胆、異常なまでの緊張で万作に話しかけられている事に全く気付いていない。
:
:
竜胆:……
:
万作:マイクさん、マイク片喰さん!
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竜胆:ハアハア……。
:
万作:(小声で)ちょっと、竜胆さん!
:
竜胆:ああ!そうか!私の事か!
竜胆:(緊張で声が上ずっている)マ、マ、マイク、かたばびでず!
:
ガマズミ:はは。いくら僕が有名シナリオライターだからって、そんなに緊張する事ないだろう。
:
燕子花:(舌打ち)チッ。
:
ガマズミ:…ん?何か言ったか?
:
万作:いえ!何も!何も言ってませんー!
万作:(小声で)ちょっと燕子花先生、落ち着いてください!
:
燕子花:なんなんですか!あの態度はー!人の作品パクっといてなんであんなにデカい顔出来るんですか!?
燕子花:盗人猛々しいとはこの事です!!
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万作:わかります!わかりますけど!今は堪えてください!
万作:
万作:では早速今日はガマズミ先生の最新作「揚げたて★唐揚げクラブ」を読ませて頂きたいと思います。
万作:上演後のフリートークで先生に、今回の作品について色々お話を伺っていきたいと思います!
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ガマズミ:ええ。せっかくなので僕の解釈についても特別にお話ししようと思います。
:
燕子花:ぐぬぬぬぬ…。
:
万作:落ち着いて!落ち着いて先生!
万作:(取り繕って)えーっと、それでは今日の配役を紹介していきたいと思います!
万作:物語の主人公、唐揚げ役はわたくし万作が務めさせて頂きまーす。宜しくお願いしまーす!
:
万作:続いて、ケチャップ役のアイリスさんです!アイリスさん、意気込みをどうぞ。
:
燕子花:…別に。
:
ガマズミ:ん?
:
万作:特【別に】!ガマズミさんにお越し頂いたからには一生懸命頑張りたい!って事ですね!
万作:アイリスさん、宜しくお願いしまーす!
万作:続いて、カボス役のマイク片喰さんでーす!
:
竜胆:(ブツブツとうわ言のように言葉を繰り返している)
:
万作:ちょっと竜胆さん、さっきからどうしたんですかっ!?
万作:しっかりしてください!
:
竜胆:ああっ!……私の番か。
竜胆:えー、たっ、ただいま、ご紹介に預かりました、マママ、マイク片喰です!
竜胆:この度はカボス役を仰せつかりました!ぜっ、全身全霊を賭けて、がっ、がっ、がんぼるまず!(頑張ります)
:
ガマズミ:がんぼるまず?
:
万作:あの、竜胆さん、もしかして、緊張してます?
:
竜胆:バババババカ言うな!私が緊張?冗談も休み休み、いいいい言え……
:
万作:ダメだこりゃ…。
万作:竜胆さんは緊張でガチガチだし、燕子花先生は敵意剥き出しだし……せっかく犯人を懲らしめるチャンスなのに。こうなったら僕だけでもしっかりしなきゃ。
:
ガマズミ:これは困ったものだね。
ガマズミ:君の友達二人は僕がいるせいか随分と様子がおかしいじゃないか。こんな状態で僕の作った繊細な世界を表現できるのか、ちょっと心配だな。
:
万作:いやいや、大丈夫です!僕たち本番に強いタイプなんで!
万作:
万作:もうこうなったら作戦決行だー!
万作:
万作:(小声で)二人ともしっかりしてくださいっ!今日ここに集まった目的を忘れないでくださいねー!!
万作:
万作:それじゃあガマズミ先生作「唐揚げクラブ」3、2、1……アクトッッ!!
:
:
0:ここから劇中劇
:
:
万作:唐揚げ「(モノローグ)僕の名前は唐揚げ。」
万作:唐揚げ「老若男女に愛される大人気メニュー。それがこの僕、唐揚げ…なんだけど…僕は今日田舎から出荷されたばかりの新人唐揚げ、新しい場所で上手く馴染めるか、すっごく不安なんだ。」
万作:
万作:唐揚げ「はじめまして、今日からこちらでお世話になる事になった……【唐揚げ】と申します。」
万作:唐揚げ「大分県産の鶏肉を、醤油とニンニクをベースにした秘伝のタレで漬け込みました!」
万作:唐揚げ「こちらの食卓のメインディッシュとなれる様、一生懸命頑張りますので、皆さん、ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願いしますっ!」
:
燕子花:ケチャップ「フフッ」
:
万作:唐揚げ「わっ!」
:
燕子花:ケチャップ「唐揚げくんって呼んじゃうね。」
:
万作:唐揚げ「あ、あなたは…」
:
燕子花:ケチャップ「あっ、ボク?」
燕子花:ケチャップ「ボクは……ボクの名前はケチャップ。ほんとはマヨネーズの方が良いに決まってっけど!」
:
万作:(小声で)ちょっといきなり打ち合わせにないアドリブやめてくださいって!
万作:唐揚げ「(咳払いをして仕切り直す)ケチャップ…さん…?」
:
燕子花:ケチャップ「どうしたの?唐揚げくん、初日の挨拶を終えたばかりなのにボーッとしちゃって。」
:
万作:唐揚げ「あっ、すっ、すいません!つい…」
:
燕子花:ケチャップ「あっ、唐揚げくん、初日だってのに、ネクタイ曲がってるよ。」
燕子花:ケチャップ「ほら、おいで。直してあげる。」
:
万作:唐揚げ「(モノローグ)そう言った途端、僕の胸元にグッとにじみ寄るケチャップさん…紅い瞳に、今度は確実に僕の顔が映り込む。」
万作:唐揚げ「(胸元に触れられて思わず声が漏れ出る)」
万作:唐揚げ「ハアッ…!」
:
燕子花:ケチャップ「どうしたの?可愛い声出しちゃって。」
燕子花:ケチャップ「…あれ?もしかして冷凍唐揚げが……知らない間に解凍されて、アツアツになっちゃった?」
:
万作:唐揚げ「ちっ、違います!やめてください、ケチャップさん!ネクタイくらい、自分で直せます!」
:
燕子花:ケチャップ「フフッ!可愛い唐揚げくん!」
:
:
0:次のセリフを言うはずの竜胆のセリフを待ち、奇妙な沈黙が起きる。
:
:
万作:(小声で)竜胆さん!次、竜胆さんです!
:
竜胆:あっ、しまった。私か。
竜胆:カボス「(すごい棒読みで)や、やめねえかケチャップ。唐揚げが、こ、困ってんじゃねえか。」
:
万作:唐揚げ「えっ」
:
燕子花:ケチャップ「ちぇ。良いとこだったのに。」
:
万作:唐揚げ「あ、あなたは…?」
:
竜胆:カボス「(棒読みで)やめねえかケチャップ。唐揚げが困ってんじゃねえか。」
:
万作:竜胆さん、そこはもう読みました!
:
竜胆:えっ、
:
万作:もっかい行きますよ!
万作:唐揚げ「あっ、あなたは…?」
:
竜胆:カボス「やめねえかケチャップ。唐揚げが困ってんじゃねえか。」
:
万作:だから竜胆さん、そこはもう読んだんだって!ダメだ、壊れたカーナビみたいになってる…。
:
ガマズミ:おい、いい加減にしてくれ。僕の作品の大ファンだっていうから来てやったのに、なんだこの酷い有り様は!
ガマズミ:こんな酷い芝居で僕の繊細な世界観が表現できる訳ないだろう!
:
燕子花:なにが、僕の繊細な世界観よ!人のシナリオ盗んでおいて、よくそんな事言えるわね!
:
ガマズミ:なっ!?何を言ってる!?
:
燕子花:言葉の通りよ!私が考えに考えて作った擬人化BLのアイデアどころか、セリフも殆ど一緒…こんな事して恥ずかしくないの!?
:
ガマズミ:お前…まさか…
:
燕子花:そうよ。私はあなたに盗作された「アゲアゲ☆唐揚げ部」の作者、燕子花牡丹(かきつばた・ぼたん)よっ!
:
ガマズミ:くだらない!お前みたいな無名ライターをこの僕が知る訳ないだろう!悪いがくだらん因縁をつけるんだったら僕はこれで失礼させ(てもらう)
:
万作:おっと、ガマズミ先生、今この枠から出ていくんだったら、盗作をお認めになるという事と同じだと思ってくださいね!
:
ガマズミ:グッ……
:
万作:この配信を聴きに来られているリスナーたちに身の潔白を証明したいって言うんだったら、あなたはもうしばらくここにいるべきだ!
:
ガマズミ:だっ、だったら!証拠を見せてみろよ!
ガマズミ:ぼぼ、僕が盗作した証拠がどこにあるって言うんだよー!
:
万作:…剽窃(ひょうせつ)って言葉をご存知ですか?
:
ガマズミ:剽窃?
:
万作:他者の成果物を許可なく使用する事、今あなたが燕子花先生にしている事です!
:
ガマズミ:だから何を根拠に(そんな事を言っている)
:
万作:実は剽窃行為は深刻な社会問題でもあるんです。大学生が論文を書くのに、ネットの記事を考察ごと盗用する事に頭を悩ませた大学教授があるプログラムを作ったんです。
:
ガマズミ:ある…プログラム?
:
万作:そう、その名も【剽窃チェッカー】このプログラムを使えば元になった記事から何割が引用されたかをすぐに調べる事が出来る。
:
ガマズミ:ウグッ…。
:
万作:因みにあなたの書いた「揚げたて★唐揚げクラブ」を、この「剽窃チェッカー」にかけてみたところ、実にその92パーセントが、燕子花先生の「アゲアゲ☆唐揚げ部」からの剽窃でした。
:
燕子花:私の書いた「アゲアゲ☆唐揚げ部」は、あなたがその汚らわしい盗作を投稿する10日前にアップされているわ……。
燕子花:さあ、もうこれで言い逃れは出来ないわよ!この……唐揚げ泥棒!!
:
万作:いや、それだとちょっと意味が変わってきます、燕子花先生。
:
竜胆:さあ、観念したまえ唐揚げ泥棒……いや、盗作ライターガマズミ!!
:
万作:あ、竜胆さん。
:
燕子花:竜胆さん、もう大丈夫なんですか?
:
竜胆:フン。慣れない声劇にほんの少し戸惑っただけさ。
:
燕子花:ほんの少し、でしたか?
:
ガマズミ:うるせえ!うるせえうるせえうるせえ!
ガマズミ:別にいいだろうちょっとくらい【引用】したってよう?お前のくだらない同人作品にこの僕がインスパイアされてやってるんだろうが!
:
燕子花:なっ!?
:
ガマズミ:インスパイアだっけか?オマージュ?リスペクト?パスティーシュ?
ガマズミ:ハァ…もう何でもいいや!お前ら全員ぶぶぶぶぶちコロコロココココ……
:
竜胆:奴から離れろ!万作くん!燕子花先生!
:
ガマズミ:グバァ!ゴプゥ…!
ガマズミ:ブチ殺せば、お前の書いたシナリオ全部僕のもんだろ?アババババ……
:
燕子花:キャアッ!
:
竜胆:(手で印を組んで真言を唱える)
竜胆:ノウマク・サンマンダ・バサラ・ダン・カン!
:
ガマズミ:グギャッ!
:
:
0:竜胆が真言を唱えると、竜胆のいる配信部屋に巨大なガマガエルの影が浮かび上がる。
:
:
燕子花:こ、これは一体…なんなの……?
:
竜胆:とっくに骨の髄まで腐っていたか……ちょうど良い、その腐った性根もろともヤキを入れてやろう。
竜胆:(再び手で印を組んで)
竜胆:
竜胆:迦楼羅の羽!穿つ倶利伽羅!奈落の業火に命ず!
竜胆:(かるらのはね うがつくりから ならくのごうかにめいず)
竜胆:ノウマク・サンマンダ・バサラ・ダン・カン!
:
ガマズミ:ギャアアアアー!!!!
:
:
0:いくつもの火柱に包まれたガマガエルの影が、業火に焼かれ朽ちていく。
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:
竜胆:ふぅ。これでひとまず一件落着だな…。
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万作:(笑いを堪えながら)…竜胆さんにも苦手なものってあるんですね?
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竜胆:万作くん、何か言いたそうだな。
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万作:プププ…何でもありませーん!
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燕子花:万作さん、竜胆さん、その節は本当に有難うございました。
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万作:燕子花先生、その後、調子はいかがですか?
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燕子花:はい!悩みがなくなった途端、またアイデアが次々と湧いてきちゃって。
燕子花:やっぱり面白い作品は、心が健康じゃないと書けないものですね!
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万作:それは良かった!先生のファンとして、それが一番嬉しい言葉です!
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竜胆:次はどんな作品を執筆されているんですか?
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燕子花:次はですねえ…。なんと!次回作も擬人化BLでーす!
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竜胆:やっぱり。
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万作:カーッ!燕子花先生の擬人化BL第2弾!この日をどれだけ待ちわびた事か!
万作:それで先生!次はどんな設定で書くおつもりなんですか!?
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燕子花:ズバリ!【チキン南蛮】を【あんかけ】と【タルタルソース】が取り合う話です!
燕子花:今回はお二人にお礼の意味も込めて、当て書きで書いてみたんです!また3人でやりましょ!
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万作:えー!大好きな燕子花先生に当て書きしてもらうなんて、夢のようです!やりましょう!やりましょう!
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竜胆:いや、その、私は……
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万作:どうしたんですか?竜胆さん。
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竜胆:少し、考えさせてくれっ!
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万作:あーちょっと、竜胆さーん!竜胆さーん!
:
:
:
0:終わり