台本概要

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タイトル 勇者と魔王と聖剣のピリオド。
作者名 音佐りんご。  (@ringo_otosa)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(不問2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ◇あらすじ◇
激しい戦いの末、魔王に勝利した勇者。瀕死の魔王に「何か言い残すことは無いか?」とたずねると――なんかめっちゃしゃべり始めた。

◆備考◆
一応、登場人物は男性想定で書いてますが、読み方は問いません。ご自由に。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
勇者 不問 150 ノル・アドニス。外見はイケメン。
魔王 不問 149 デドロビア・ウィン・ドラグテイル。外見はイケおじ。 一部(火精霊)の兼ね役あり。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:勇者と魔王と聖剣のピリオド。 : 0:◇あらすじ◇ 0:激しい戦いの末、魔王に勝利した勇者。瀕死の魔王に「何か言い残すことは無いか?」とたずねると――なんかめっちゃしゃべり始めた。 0:◆登場人物◆ 勇者:ノル・アドニス。外見はイケメン。 魔王:デドロビア・ウィン・ドラグテイル。外見はイケおじ。一部(火精霊)の兼ね役あり。 : 0:以下本編。 : 0:◇◆◇ : 0:魔王城最奥部『玉座の間』 0:玉座に力なく腰掛ける傷だらけの魔王デドロビア。その心臓には聖剣が突き刺さっている。 0:正面に勇者ノル。聖剣の柄を握っている。 : 魔王:……く、ははは……見事だ、勇者ノル・アドニス。 勇者:はぁ……はぁ、これで終わりだ、魔王デドロビア・ウィン・ドラグテイル。貴様の野望も。 魔王:……は、はは、よもやこの我を打ち倒す者が、現れようとは……。 勇者:伝説の錬金術師によって打たれた聖剣『ソード・ピリオド』によって、心臓を貫かれたんだ。いくら再生能力を持つお前と言えども、じきに消滅する。 魔王:その、ようだな……。 勇者:何か言い残すことは―― 魔王:――無い。 : 0:間。 : 勇者:そうか。ならば、そのまま最期を迎えるといい。俺はブラムダルク王国に帰る。 : 0:勇者、踵を返して歩き出す。 : 魔王:と、言いたいところだが。 勇者:……なんだ? 魔王:聞いて、くれる、か? 勇者、ノル・アドニスよ。 勇者:ああ、俺には聞き届ける義務がある。お前を葬らんとする俺には。 魔王:っふ、そう、か……聞いて、くれる、か。はは、……感謝、する勇者ノル・アドニス。 勇者:感謝? 自分を討った存在に対してか? おかしな奴だ。 魔王:おかしな、奴、はは、そうかも……知れぬな、勇者ノル・アドニス。 勇者:その「勇者ノル・アドニス」っての、やめてくれないか? 魔王:ふむ……、もしや、自分の名が、好きではないのか? 勇者:そういう複雑な事情は無い。ただ、お前が俺をそう呼び続けるなら、お前のことを魔王デドロビア・ウィン・ドラグテイルって呼ばなきゃだろ?  魔王:然り、だな。 勇者:それに固っ苦しいのは好きじゃない。俺のことは勇者かアドニスと――。 魔王:分かったよ、ノルくん。 勇者:……は? 魔王:どうした、ノルくん? 勇者:いや、友達か? ファーストネームに「くん」付けはどうかと……。 魔王:あぁ、すまない。失礼だったか。三百年も魔王などをやっておった故、距離感がつかめなくてな。許して欲しい。 勇者:……仕方ないな。 魔王:では――勇者ノルくん。 勇者:いや肩書付ければよしって話でもないんだが? 魔王:そうか。では、アドくん。 勇者:まさかのあだ名。 魔王:アドニス。 勇者:さんは? 魔王:注文が多いぞ勇者アドニスさん。 勇者:ちょっと舐められてる感じあるんだけど。 魔王:それを言うなら、貴様こそ年長者への敬意とかは無いのか? 勇者:いや。俺たち、敵同士なんだけど? 魔王:ならば呼び方なぞどうでもよかろう。 勇者:どうでもよくないし。ていうかさ、負けたやつを敬う必要とか、ある? 魔王:…………クズが。 勇者:はぁ? そのクズに負けたのお前じゃん。クズ以下じゃん。 魔王:こやつ……。でも貴様がクズであることに変わりはないよな? ほとんど同類みたいなものだよな? 勇者:……だから? 魔王:開き直りおったな。 勇者:んなこた分かってんだよ、自分がクズなことなんてよ。 魔王:分かってるなら治せないのか? 勇者:出来たら苦労しねぇし。魔王倒す方がまだ簡単だわ。 魔王:我と較べるな。貴様この後、真の自分との戦い始めそうなセリフだな。 勇者:でも俺思うんだよな。 魔王:何がだ? 勇者:いや、クズの自覚無い奴よりはクズじゃねぇって。 魔王:その発言が正にクズのそれだが。 勇者:うっせんだよ、魔王のくせによぉ。 魔王:我を倒すまでの貴様どこ行った? 正統派イケメン勇者みたいな勇者ノル・アドニスどこ行った? 勇者:誰がクズ・アドニスだよあぁん? 魔王:ガラ悪っ……。さては普段猫被っているタイプか? 勇者:そーそー、俺様、品行方正な勇者だからよ? あ、ヤニ吸っていい? てか吸う。 魔王:玉座の間は禁煙なのだが……。 勇者:あぁん? かてぇこというなよ、どうせ最期なんだし。 魔王:軽い台詞だなぁ。 勇者:あ。 魔王:どうした? 勇者:ライター壊れてんじゃねぇかよボケが。テメェのせいだぞ? 魔王:知らんわ、魔法で点ければいいだろう。 勇者:はぁ? 俺光属性しか使えねんだよ。見りゃ分かんだろがよ。 魔王:光属性には見えんぞお前。 勇者:へへっ、光あるところに影があるってな。 魔王:邪悪なんだよな……。 勇者:んー。ま、出力上げれば行けるか……よっしゃ。俺式光魔法――超発火光線《レイ・バースト・イグニッション》! 大いなる光の前に燃え尽きろ! 魔王:灰にしてどうする! 貴様、目的忘れてるだろ! 勇者:おっと、いっけね。 魔王:やめろ、我がつけてやる……。 勇者:さんきゅー。 魔王:来たれ我が道を照らす灯火の眷属――精霊召喚『*火精霊《イグニス》』! 勇者:精霊? さっきそんなの使ってたっけ? 魔王:精霊は基本的に臆病だからな、戦いには向かんし我が殴った方が早い。 勇者:まぁ、それもそうか。 魔王:あと、我は聖剣『ソード・ピリオド』とやらのせいで、こうして喋る以外、指一本動かせん。 勇者:あーね。 魔王:……イグニス、火。 勇者:へー、便利じゃん。 : 魔王:(火精霊)きゅー! : 0:火精霊、勇者の煙草に火を点ける。 : 勇者:…………はぁー。生き返るわぁ。 魔王:なんだかなぁ……。 勇者:てかさ、お前も被ってるよな? 魔王:何の話だ? 勇者:猫。 魔王:猫? 勇者:てか、ライオン? なんか王者の風格みたいなの作ってるじゃん。魔王ムーブ的な。 魔王:……さてな。 勇者:あぁ? とぼけてんじゃねぇぞ魔王さんよぉ? 魔王:貴様、勇者ムーブやめたらただのチンピラだな。 勇者:はぁ? どう見ても顔のいいチンピラだろうが。……ぷはぁー。 魔王:げほっ、げっほ! 煙っ! やめろ……! 死ぬ……! 勇者:へへっ、いーじゃん、どうせもうすぐ死ぬんだし。 魔王:クズが。 勇者:クズで結構。てか、そのまま固っ苦しい感じで死んでいくつもりかよ。 魔王:魔王としての矜持というものがあるからな。 勇者:要は、外面だろ? なぁもっと自分に素直になれよ? 魔王:勇者とは思えん台詞だな……。 勇者:勇者の仕事は魔王倒しゃ一区切りだしな。でなきゃ素で話してねぇし。 魔王:煙草も吸わないか? 勇者:いや、ヤニは基本吸う。 魔王:全然猫被りきれてないんだよな……。 勇者:ほっとけや。てか、デドロビアさんよぉ。 魔王:なんだアドくん。 勇者:アドくんやめろ。 魔王:良いだろう、アドくん。どうせもうすぐ消えるのだ。 勇者:それもそうか。 魔王:アドくん。 勇者:何回も呼ぶな、殺すぞ。 魔王:今まさに殺されている最中なのだが……。 勇者:そんで、デドロビアさんよぉ。おめぇなんかあるんだろ? 言い残したこと、みたいなの。 魔王:あぁ、そういう話だったな、忘れていた。 勇者:忘れんなよ。 魔王:ちなみに我、あとどれくらいで消えると思う? 勇者:知らん、十分くらいじゃね? 魔王:うわ、適当。 勇者:知らねぇよ、魔王を聖剣で刺すのなんて初めてなんだからよ。おめぇこそ分かったりしねぇの? 魔王:それこそ聖剣で刺されるのなんて初めてって話だろうが。 勇者:ま、確かに? 魔王:……よし。 勇者:なんの決意だよ? 魔王:魔王の仮面を外そうかと思ってな。 勇者:勝手に外せよ。 魔王:はは、そうだな。では……。 勇者:おう。 魔王:…………。 勇者:…………。 魔王:…………。 勇者:……いや、なんか喋れよ。 魔王:しかし、意識すると緊張して、上手く外せんのだ。 勇者:知らねぇよ、じゃあ、言い残したこと喋りながら、徐々に解していけばいいんじゃね? 魔王:ふむ、名案だな。 勇者:いや、普通だろ。 魔王:アドくん。 勇者:……なんだよ。 魔王:我はな、 勇者:おう。 魔王:……我は、今から三百五十年前、この『メルテドラグ』大陸南端にある『テイル』という名の小さな漁村で、平凡な、しかし仲の良い魔族の夫婦、ゼルツとアネットの間に生まれたのだ。 勇者:…………。 魔王:生まれた時の名はアゼル。身体は他の子に比べて小さく病弱で、丘の向こうの『リトラ』の町でも名医として知られるレーモン・ブランデル先生からは「この子は長く生きられない」と言われていた。 勇者:…………。 魔王:しかし、両親はそんな我にも惜しみなく愛情を注ぎ、大切に育ててくれた。 勇者:……あのさ、ちょっといいか? 魔王:なんだ、アドくん? 勇者:それ、いつ終わる? 魔王:まだ始まったばかりだが? 勇者:わかってんだよ、んなこたぁよ! それちゃんと終わるやつかって聞いてんだよ! まさかその調子でテイルの村だ、ゼルツだアネットだレーモン・ブランデル先生だなんて話すつもりじゃねぇだろうな三百五十年分順番に! 魔王:ふむ、そのつもりだが? 勇者:聞いてられっかよ! 魔王:しかし先ほど貴様は「聞き届ける義務がある。」と言っていたじゃないか? 勇者:いや、言ったけどよ! 幼少期の医者の情報とか絶対いらねぇだろ! 今後その情報が何かの役に立つこととかねぇだろどう考えても! 魔王:ふふふ。 勇者:何笑ってんだよこら? 魔王:と、思うじゃん? 勇者:今仮面外すのかよ。てか、どういうことだよデドロビア。 魔王:アゼル。 勇者:は? 魔王:僕のことはアゼルでええで。 勇者:うわ、急に距離詰めてくる……。まぁいいや、それでアゼル? その医者は結局ナニモン・ブランデルなんだ? お前の師匠とか? 魔王:師匠……。まぁ、その辺が無難な推理やろね。けど、ちゃうねんなぁこれが。 勇者:喋り方うぜぇな……。 魔王:南部訛りや。あかんか? 勇者:あかん……じゃねぇ、駄目とは言わねぇけどよ、気が散る。 魔王:殺生なこといいなや。 勇者:……それで? 魔王:結論から言えば、僕にとってブランデル先生は恩人であり――仇や。 勇者:仇……? 随分不穏だな。何があったんだ? 魔王:せやなぁ、順を追って説明したいんやけど……。 勇者:どうせ長くなんだろ? 要点だけ言え。 魔王:せっかちやなぁアドくんは。ま、ええわ。名医レーモン・ブランデル先生は、奇蹟とも言える治療法を発見し、僕の持病を治した恩人や。 勇者:それが何で仇になるんだよ? 魔王:ブランデル先生が発見した治療法。それはな、本来、病気を治したりするようなもんではのうて、人の潜在能力を引き出す方法の探求やったからや。 勇者:潜在能力……? 話が見えねぇんだが……。 魔王:なんせ三百年以上前の話やからな、アドくんが知る筈ないのもしゃーないけど、テイル村とかリトラの町って聞いたことある? 勇者:いや、初めて聞いた。 魔王:南部訛りはどうや? 勇者:たぶん、ねぇな。聞いたことも無い。 魔王:せやろな。この言葉は今から三百四十年前、僕が十歳の時に地上からほぼ永遠に失われたんやから。 勇者:滅んだのか……? 魔王:せやで。今この言葉を使ってるのは僕と、ごく一部の魔族、まぁ、それもこの戦いで失われてしもたから、ほとんどおらんのやろうけど、大陸南部はその昔に、暮らしとる人も含めて全部消えてもうた。 勇者:ちょっと待てよ! そんなの聞いたこともねぇ! いくら三百年以上前だからって、そんな大きな事件なら少しくらい残ってる筈だろ? それに、大陸南部はある。ここが、この魔王城のある地域がそうじゃねぇか! 魔王:ちゃうで、アドくん。 勇者:なにが? 魔王:ここは大陸中部や。 勇者:は? つまり……。 魔王:正解やで。 勇者:ここから南が消えるような災害ってことか……? 魔王:災害……せやな。ただしそれは天災やのうて、人災やけどな。 勇者:人災……? もしかして、それをやったのが……。 魔王:レーモン・ブランデル――いや、錬金術師ダーク・ブルムや。 勇者:ダーク・ブルム……? 魔王:あの男は、テイル村、及びリトラを含む南部一帯の町で数々の人体実験を行い、その副産物として件の『治療法』を発見し、そして―― 勇者:地図を変えてしまう程の能力を持った……? 魔王:っていうのは、ちょっと飛躍しすぎやな。 勇者:は? じゃぁ、何なんだよ? 魔王:分かるやろ、話の流れ的に。 勇者:……お前を、魔王デドロビア・ウィン・ドラグテイルを生んだのがダーク・ブルム……? 魔王:つまり、そういうことや。 勇者:いや、でもそれでなんで南部が滅ぶ? お前は確かに強かったけど、そこまでの力は無かっただろう? 寧ろ――。 魔王:――寧ろ、なんや? 勇者:……いや。 魔王:当てたるわ。寧ろ、魔王よりも勇者の方ができそうな力を持ってる。そう、たとえば―― 勇者:――偶然だろ。 魔王:……まだ、何も言うてへんけど、何が偶然なん? 勇者:いや、そんなもの、所詮憶測だ。 魔王:せやなぁ、それは正しいわ。正しい考え方や。 勇者:え? 魔王:だってそうやろ? 魔王やし嘘ついてるかも知らん。なんせ三百年前のことや、僕があることないこと言うとるだけで、大陸南部もダーク・ブルムも全部、虚言妄言作り話かも知らん。 勇者:それは、今までのことが全部、嘘ってこと、なんだよな……? 魔王:いや、知らんけど。 勇者:は? お前が言ったんだろう……! 魔王:まぁ、言うたけどな? *嘘吐《うそつ》きが自分で「僕*嘘吐《うそつ》いてますぅ」言うたかて全部が全部嘘とも限らへんし、全部が全部本当かも知らへんやん? 勇者:それは……。 魔王:そもそも、嘘吐きやなくたって間違えることはあるしな。思い込みだってあるやろ? あ、そういえば一個だけ、今まで言った中で嘘吐いてしもてたのあったわ。 勇者:……どんな嘘だ? 魔王:僕「刺されるのなんて初めて」って言ったけどあれ、嘘や。 勇者:……っ! 魔王:厳密には言い間違えただけなんやけど。 勇者:だとしたら、それはつまり、そういうことなのかアゼル? : 0:間。 : 魔王:さぁ、どうなんやろな? 勇者:どうなんやろなってお前! 魔王:ごめんな、アドくん。もうちょっと話してたいんやけど、そろそろ時間みたいやわ。 勇者:時間……? ま、待てよ! 俺はどうしたらいいんだよ!? 魔王:どうするか。それは――己で決めることだ勇者ノル・アドニスよ。 勇者:え……? 魔王:我は魔王としての役目を終え、貴様は勇者としての仕事を全うした。それ以上は何もない。違うか? 勇者:……そう、だな。悪かった。 魔王:ではな、貴様との戦い、存外悪くなかった。 : 0:魔王の身体が消滅していく。 : 勇者:……あのさ。 魔王:…………。 勇者:一つだけ聞いても良いか、アゼル。 魔王:…………。 勇者:仇討ち、したいと思うのはおかしなことか? 魔王:……我と較べるな。 勇者:けどよ……! 魔王:言っておくが、魔王倒す方がまだ簡単だぞ? 勇者:それができた時、俺はたぶん、自分のクズさ加減を許せなくなる。 魔王:……そうか。 勇者:だから、ちょっくら、倒してくるわ。 魔王:まさか貴様……? 勇者:真の敵。決まってんだろ? 魔王:……ありがとな。 勇者:自分を討った存在に対してか? おかしな奴だ。 魔王:勇者ノル・アドニスよ。 勇者:その「勇者ノル・アドニス」っての、やめてくれないか? 魔王:うん? 勇者:ノルくん。 魔王:ノルくん? 勇者:って、呼んでいい。 魔王:分かった。アドくん。 勇者:おい! 魔王:冗談だ。――ノルくん。 勇者:おう。 魔王:頼ん、だ……。 勇者:どうか安らかにな、アゼル。 : 0:魔王、灰になって消え、玉座に突き立った聖剣が残る。 : 勇者:……レーモン・ブランデル、ダーク――*ダルク《・・・》・*ブラム《・・・》……。俺をコケにしやがって、何が勇者だ、聖剣だ? 光あるところに影がある? そういうことだろうがよ……! クソが……! 魔王:(火精霊)きゅー? : 0:勇者の周囲を赤い光(火精霊)が漂う。 : 勇者:ん? おめぇは……。 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:火精霊《イグニス》だっけか? 魔王:(火精霊)きゅっきゅー♪ 勇者:なんだ、ついてくるってか? 魔王:(火精霊)きゅきゅーっ! 勇者:っは良いぜ、ちょうど火が欲しかったんだ。 魔王:(火精霊)きゅー? 勇者:ヤニが吸いてぇって意味じゃねぇよ? いや、吸いてぇ気分ではあるんだけどな。 魔王:(火精霊)きゅー♪ 勇者:お? なんだよ? 魔王:(火精霊)きゅきゅきゅー! : 0:火精霊、玉座に突き立つ聖剣に触れると、剣が燃え上がる。 : 勇者:うぉぉ!? 聖剣が燃えた! 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:お前がやったのか? 魔王:(火精霊)きゅー♪ 勇者:そんなことできんなら初めから――いや、そういうことなのか……? 魔王:(火精霊)きゅー? 勇者:……まぁいい。お前にそんな力があるってんなら、好都合だ。 魔王:(火精霊)きゅきゅー? 勇者:誰が描いたか知らねぇが、下らねぇ筋書きで終わらせるつもりだったんなら、超えてってろうぜ、そんな結末よぉ。そうだろうイグニス? 魔王:(火精霊)きゅー。 勇者:あん? なんだよ不満そうだな、イグニス。 魔王:(火精霊)きゅー。 勇者:もしかして、名前か? 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:つってもなぁ……。あー。そうだなぁ……我が道を照らす灯火の……。アゼル……。よし。お前の名前はゼルテラス。 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:安直で悪かったなぁ! こういうの苦手なんだよ……。 魔王:(火精霊)きゅー。 勇者:っと、聖剣が完全に消えてやがる……。お前、すげぇな? 魔王:(火精霊)きゅー♪ : 0:玉座の聖剣が消滅している。 : 勇者:これなら、やれるか? 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:ははっ! よし、じゃあ行こうぜ、ゼルテラス! 魔王:(火精霊)きゅきゅー? 勇者:どこへ? 決まってんだろ、*友《ダチ》の野望――悲願を叶えにだよ。 魔王:(火精霊)きゅー♪ 勇者:灯火の眷属ゼルテラスと魔王ノル・アドニスで、な。

0:勇者と魔王と聖剣のピリオド。 : 0:◇あらすじ◇ 0:激しい戦いの末、魔王に勝利した勇者。瀕死の魔王に「何か言い残すことは無いか?」とたずねると――なんかめっちゃしゃべり始めた。 0:◆登場人物◆ 勇者:ノル・アドニス。外見はイケメン。 魔王:デドロビア・ウィン・ドラグテイル。外見はイケおじ。一部(火精霊)の兼ね役あり。 : 0:以下本編。 : 0:◇◆◇ : 0:魔王城最奥部『玉座の間』 0:玉座に力なく腰掛ける傷だらけの魔王デドロビア。その心臓には聖剣が突き刺さっている。 0:正面に勇者ノル。聖剣の柄を握っている。 : 魔王:……く、ははは……見事だ、勇者ノル・アドニス。 勇者:はぁ……はぁ、これで終わりだ、魔王デドロビア・ウィン・ドラグテイル。貴様の野望も。 魔王:……は、はは、よもやこの我を打ち倒す者が、現れようとは……。 勇者:伝説の錬金術師によって打たれた聖剣『ソード・ピリオド』によって、心臓を貫かれたんだ。いくら再生能力を持つお前と言えども、じきに消滅する。 魔王:その、ようだな……。 勇者:何か言い残すことは―― 魔王:――無い。 : 0:間。 : 勇者:そうか。ならば、そのまま最期を迎えるといい。俺はブラムダルク王国に帰る。 : 0:勇者、踵を返して歩き出す。 : 魔王:と、言いたいところだが。 勇者:……なんだ? 魔王:聞いて、くれる、か? 勇者、ノル・アドニスよ。 勇者:ああ、俺には聞き届ける義務がある。お前を葬らんとする俺には。 魔王:っふ、そう、か……聞いて、くれる、か。はは、……感謝、する勇者ノル・アドニス。 勇者:感謝? 自分を討った存在に対してか? おかしな奴だ。 魔王:おかしな、奴、はは、そうかも……知れぬな、勇者ノル・アドニス。 勇者:その「勇者ノル・アドニス」っての、やめてくれないか? 魔王:ふむ……、もしや、自分の名が、好きではないのか? 勇者:そういう複雑な事情は無い。ただ、お前が俺をそう呼び続けるなら、お前のことを魔王デドロビア・ウィン・ドラグテイルって呼ばなきゃだろ?  魔王:然り、だな。 勇者:それに固っ苦しいのは好きじゃない。俺のことは勇者かアドニスと――。 魔王:分かったよ、ノルくん。 勇者:……は? 魔王:どうした、ノルくん? 勇者:いや、友達か? ファーストネームに「くん」付けはどうかと……。 魔王:あぁ、すまない。失礼だったか。三百年も魔王などをやっておった故、距離感がつかめなくてな。許して欲しい。 勇者:……仕方ないな。 魔王:では――勇者ノルくん。 勇者:いや肩書付ければよしって話でもないんだが? 魔王:そうか。では、アドくん。 勇者:まさかのあだ名。 魔王:アドニス。 勇者:さんは? 魔王:注文が多いぞ勇者アドニスさん。 勇者:ちょっと舐められてる感じあるんだけど。 魔王:それを言うなら、貴様こそ年長者への敬意とかは無いのか? 勇者:いや。俺たち、敵同士なんだけど? 魔王:ならば呼び方なぞどうでもよかろう。 勇者:どうでもよくないし。ていうかさ、負けたやつを敬う必要とか、ある? 魔王:…………クズが。 勇者:はぁ? そのクズに負けたのお前じゃん。クズ以下じゃん。 魔王:こやつ……。でも貴様がクズであることに変わりはないよな? ほとんど同類みたいなものだよな? 勇者:……だから? 魔王:開き直りおったな。 勇者:んなこた分かってんだよ、自分がクズなことなんてよ。 魔王:分かってるなら治せないのか? 勇者:出来たら苦労しねぇし。魔王倒す方がまだ簡単だわ。 魔王:我と較べるな。貴様この後、真の自分との戦い始めそうなセリフだな。 勇者:でも俺思うんだよな。 魔王:何がだ? 勇者:いや、クズの自覚無い奴よりはクズじゃねぇって。 魔王:その発言が正にクズのそれだが。 勇者:うっせんだよ、魔王のくせによぉ。 魔王:我を倒すまでの貴様どこ行った? 正統派イケメン勇者みたいな勇者ノル・アドニスどこ行った? 勇者:誰がクズ・アドニスだよあぁん? 魔王:ガラ悪っ……。さては普段猫被っているタイプか? 勇者:そーそー、俺様、品行方正な勇者だからよ? あ、ヤニ吸っていい? てか吸う。 魔王:玉座の間は禁煙なのだが……。 勇者:あぁん? かてぇこというなよ、どうせ最期なんだし。 魔王:軽い台詞だなぁ。 勇者:あ。 魔王:どうした? 勇者:ライター壊れてんじゃねぇかよボケが。テメェのせいだぞ? 魔王:知らんわ、魔法で点ければいいだろう。 勇者:はぁ? 俺光属性しか使えねんだよ。見りゃ分かんだろがよ。 魔王:光属性には見えんぞお前。 勇者:へへっ、光あるところに影があるってな。 魔王:邪悪なんだよな……。 勇者:んー。ま、出力上げれば行けるか……よっしゃ。俺式光魔法――超発火光線《レイ・バースト・イグニッション》! 大いなる光の前に燃え尽きろ! 魔王:灰にしてどうする! 貴様、目的忘れてるだろ! 勇者:おっと、いっけね。 魔王:やめろ、我がつけてやる……。 勇者:さんきゅー。 魔王:来たれ我が道を照らす灯火の眷属――精霊召喚『*火精霊《イグニス》』! 勇者:精霊? さっきそんなの使ってたっけ? 魔王:精霊は基本的に臆病だからな、戦いには向かんし我が殴った方が早い。 勇者:まぁ、それもそうか。 魔王:あと、我は聖剣『ソード・ピリオド』とやらのせいで、こうして喋る以外、指一本動かせん。 勇者:あーね。 魔王:……イグニス、火。 勇者:へー、便利じゃん。 : 魔王:(火精霊)きゅー! : 0:火精霊、勇者の煙草に火を点ける。 : 勇者:…………はぁー。生き返るわぁ。 魔王:なんだかなぁ……。 勇者:てかさ、お前も被ってるよな? 魔王:何の話だ? 勇者:猫。 魔王:猫? 勇者:てか、ライオン? なんか王者の風格みたいなの作ってるじゃん。魔王ムーブ的な。 魔王:……さてな。 勇者:あぁ? とぼけてんじゃねぇぞ魔王さんよぉ? 魔王:貴様、勇者ムーブやめたらただのチンピラだな。 勇者:はぁ? どう見ても顔のいいチンピラだろうが。……ぷはぁー。 魔王:げほっ、げっほ! 煙っ! やめろ……! 死ぬ……! 勇者:へへっ、いーじゃん、どうせもうすぐ死ぬんだし。 魔王:クズが。 勇者:クズで結構。てか、そのまま固っ苦しい感じで死んでいくつもりかよ。 魔王:魔王としての矜持というものがあるからな。 勇者:要は、外面だろ? なぁもっと自分に素直になれよ? 魔王:勇者とは思えん台詞だな……。 勇者:勇者の仕事は魔王倒しゃ一区切りだしな。でなきゃ素で話してねぇし。 魔王:煙草も吸わないか? 勇者:いや、ヤニは基本吸う。 魔王:全然猫被りきれてないんだよな……。 勇者:ほっとけや。てか、デドロビアさんよぉ。 魔王:なんだアドくん。 勇者:アドくんやめろ。 魔王:良いだろう、アドくん。どうせもうすぐ消えるのだ。 勇者:それもそうか。 魔王:アドくん。 勇者:何回も呼ぶな、殺すぞ。 魔王:今まさに殺されている最中なのだが……。 勇者:そんで、デドロビアさんよぉ。おめぇなんかあるんだろ? 言い残したこと、みたいなの。 魔王:あぁ、そういう話だったな、忘れていた。 勇者:忘れんなよ。 魔王:ちなみに我、あとどれくらいで消えると思う? 勇者:知らん、十分くらいじゃね? 魔王:うわ、適当。 勇者:知らねぇよ、魔王を聖剣で刺すのなんて初めてなんだからよ。おめぇこそ分かったりしねぇの? 魔王:それこそ聖剣で刺されるのなんて初めてって話だろうが。 勇者:ま、確かに? 魔王:……よし。 勇者:なんの決意だよ? 魔王:魔王の仮面を外そうかと思ってな。 勇者:勝手に外せよ。 魔王:はは、そうだな。では……。 勇者:おう。 魔王:…………。 勇者:…………。 魔王:…………。 勇者:……いや、なんか喋れよ。 魔王:しかし、意識すると緊張して、上手く外せんのだ。 勇者:知らねぇよ、じゃあ、言い残したこと喋りながら、徐々に解していけばいいんじゃね? 魔王:ふむ、名案だな。 勇者:いや、普通だろ。 魔王:アドくん。 勇者:……なんだよ。 魔王:我はな、 勇者:おう。 魔王:……我は、今から三百五十年前、この『メルテドラグ』大陸南端にある『テイル』という名の小さな漁村で、平凡な、しかし仲の良い魔族の夫婦、ゼルツとアネットの間に生まれたのだ。 勇者:…………。 魔王:生まれた時の名はアゼル。身体は他の子に比べて小さく病弱で、丘の向こうの『リトラ』の町でも名医として知られるレーモン・ブランデル先生からは「この子は長く生きられない」と言われていた。 勇者:…………。 魔王:しかし、両親はそんな我にも惜しみなく愛情を注ぎ、大切に育ててくれた。 勇者:……あのさ、ちょっといいか? 魔王:なんだ、アドくん? 勇者:それ、いつ終わる? 魔王:まだ始まったばかりだが? 勇者:わかってんだよ、んなこたぁよ! それちゃんと終わるやつかって聞いてんだよ! まさかその調子でテイルの村だ、ゼルツだアネットだレーモン・ブランデル先生だなんて話すつもりじゃねぇだろうな三百五十年分順番に! 魔王:ふむ、そのつもりだが? 勇者:聞いてられっかよ! 魔王:しかし先ほど貴様は「聞き届ける義務がある。」と言っていたじゃないか? 勇者:いや、言ったけどよ! 幼少期の医者の情報とか絶対いらねぇだろ! 今後その情報が何かの役に立つこととかねぇだろどう考えても! 魔王:ふふふ。 勇者:何笑ってんだよこら? 魔王:と、思うじゃん? 勇者:今仮面外すのかよ。てか、どういうことだよデドロビア。 魔王:アゼル。 勇者:は? 魔王:僕のことはアゼルでええで。 勇者:うわ、急に距離詰めてくる……。まぁいいや、それでアゼル? その医者は結局ナニモン・ブランデルなんだ? お前の師匠とか? 魔王:師匠……。まぁ、その辺が無難な推理やろね。けど、ちゃうねんなぁこれが。 勇者:喋り方うぜぇな……。 魔王:南部訛りや。あかんか? 勇者:あかん……じゃねぇ、駄目とは言わねぇけどよ、気が散る。 魔王:殺生なこといいなや。 勇者:……それで? 魔王:結論から言えば、僕にとってブランデル先生は恩人であり――仇や。 勇者:仇……? 随分不穏だな。何があったんだ? 魔王:せやなぁ、順を追って説明したいんやけど……。 勇者:どうせ長くなんだろ? 要点だけ言え。 魔王:せっかちやなぁアドくんは。ま、ええわ。名医レーモン・ブランデル先生は、奇蹟とも言える治療法を発見し、僕の持病を治した恩人や。 勇者:それが何で仇になるんだよ? 魔王:ブランデル先生が発見した治療法。それはな、本来、病気を治したりするようなもんではのうて、人の潜在能力を引き出す方法の探求やったからや。 勇者:潜在能力……? 話が見えねぇんだが……。 魔王:なんせ三百年以上前の話やからな、アドくんが知る筈ないのもしゃーないけど、テイル村とかリトラの町って聞いたことある? 勇者:いや、初めて聞いた。 魔王:南部訛りはどうや? 勇者:たぶん、ねぇな。聞いたことも無い。 魔王:せやろな。この言葉は今から三百四十年前、僕が十歳の時に地上からほぼ永遠に失われたんやから。 勇者:滅んだのか……? 魔王:せやで。今この言葉を使ってるのは僕と、ごく一部の魔族、まぁ、それもこの戦いで失われてしもたから、ほとんどおらんのやろうけど、大陸南部はその昔に、暮らしとる人も含めて全部消えてもうた。 勇者:ちょっと待てよ! そんなの聞いたこともねぇ! いくら三百年以上前だからって、そんな大きな事件なら少しくらい残ってる筈だろ? それに、大陸南部はある。ここが、この魔王城のある地域がそうじゃねぇか! 魔王:ちゃうで、アドくん。 勇者:なにが? 魔王:ここは大陸中部や。 勇者:は? つまり……。 魔王:正解やで。 勇者:ここから南が消えるような災害ってことか……? 魔王:災害……せやな。ただしそれは天災やのうて、人災やけどな。 勇者:人災……? もしかして、それをやったのが……。 魔王:レーモン・ブランデル――いや、錬金術師ダーク・ブルムや。 勇者:ダーク・ブルム……? 魔王:あの男は、テイル村、及びリトラを含む南部一帯の町で数々の人体実験を行い、その副産物として件の『治療法』を発見し、そして―― 勇者:地図を変えてしまう程の能力を持った……? 魔王:っていうのは、ちょっと飛躍しすぎやな。 勇者:は? じゃぁ、何なんだよ? 魔王:分かるやろ、話の流れ的に。 勇者:……お前を、魔王デドロビア・ウィン・ドラグテイルを生んだのがダーク・ブルム……? 魔王:つまり、そういうことや。 勇者:いや、でもそれでなんで南部が滅ぶ? お前は確かに強かったけど、そこまでの力は無かっただろう? 寧ろ――。 魔王:――寧ろ、なんや? 勇者:……いや。 魔王:当てたるわ。寧ろ、魔王よりも勇者の方ができそうな力を持ってる。そう、たとえば―― 勇者:――偶然だろ。 魔王:……まだ、何も言うてへんけど、何が偶然なん? 勇者:いや、そんなもの、所詮憶測だ。 魔王:せやなぁ、それは正しいわ。正しい考え方や。 勇者:え? 魔王:だってそうやろ? 魔王やし嘘ついてるかも知らん。なんせ三百年前のことや、僕があることないこと言うとるだけで、大陸南部もダーク・ブルムも全部、虚言妄言作り話かも知らん。 勇者:それは、今までのことが全部、嘘ってこと、なんだよな……? 魔王:いや、知らんけど。 勇者:は? お前が言ったんだろう……! 魔王:まぁ、言うたけどな? *嘘吐《うそつ》きが自分で「僕*嘘吐《うそつ》いてますぅ」言うたかて全部が全部嘘とも限らへんし、全部が全部本当かも知らへんやん? 勇者:それは……。 魔王:そもそも、嘘吐きやなくたって間違えることはあるしな。思い込みだってあるやろ? あ、そういえば一個だけ、今まで言った中で嘘吐いてしもてたのあったわ。 勇者:……どんな嘘だ? 魔王:僕「刺されるのなんて初めて」って言ったけどあれ、嘘や。 勇者:……っ! 魔王:厳密には言い間違えただけなんやけど。 勇者:だとしたら、それはつまり、そういうことなのかアゼル? : 0:間。 : 魔王:さぁ、どうなんやろな? 勇者:どうなんやろなってお前! 魔王:ごめんな、アドくん。もうちょっと話してたいんやけど、そろそろ時間みたいやわ。 勇者:時間……? ま、待てよ! 俺はどうしたらいいんだよ!? 魔王:どうするか。それは――己で決めることだ勇者ノル・アドニスよ。 勇者:え……? 魔王:我は魔王としての役目を終え、貴様は勇者としての仕事を全うした。それ以上は何もない。違うか? 勇者:……そう、だな。悪かった。 魔王:ではな、貴様との戦い、存外悪くなかった。 : 0:魔王の身体が消滅していく。 : 勇者:……あのさ。 魔王:…………。 勇者:一つだけ聞いても良いか、アゼル。 魔王:…………。 勇者:仇討ち、したいと思うのはおかしなことか? 魔王:……我と較べるな。 勇者:けどよ……! 魔王:言っておくが、魔王倒す方がまだ簡単だぞ? 勇者:それができた時、俺はたぶん、自分のクズさ加減を許せなくなる。 魔王:……そうか。 勇者:だから、ちょっくら、倒してくるわ。 魔王:まさか貴様……? 勇者:真の敵。決まってんだろ? 魔王:……ありがとな。 勇者:自分を討った存在に対してか? おかしな奴だ。 魔王:勇者ノル・アドニスよ。 勇者:その「勇者ノル・アドニス」っての、やめてくれないか? 魔王:うん? 勇者:ノルくん。 魔王:ノルくん? 勇者:って、呼んでいい。 魔王:分かった。アドくん。 勇者:おい! 魔王:冗談だ。――ノルくん。 勇者:おう。 魔王:頼ん、だ……。 勇者:どうか安らかにな、アゼル。 : 0:魔王、灰になって消え、玉座に突き立った聖剣が残る。 : 勇者:……レーモン・ブランデル、ダーク――*ダルク《・・・》・*ブラム《・・・》……。俺をコケにしやがって、何が勇者だ、聖剣だ? 光あるところに影がある? そういうことだろうがよ……! クソが……! 魔王:(火精霊)きゅー? : 0:勇者の周囲を赤い光(火精霊)が漂う。 : 勇者:ん? おめぇは……。 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:火精霊《イグニス》だっけか? 魔王:(火精霊)きゅっきゅー♪ 勇者:なんだ、ついてくるってか? 魔王:(火精霊)きゅきゅーっ! 勇者:っは良いぜ、ちょうど火が欲しかったんだ。 魔王:(火精霊)きゅー? 勇者:ヤニが吸いてぇって意味じゃねぇよ? いや、吸いてぇ気分ではあるんだけどな。 魔王:(火精霊)きゅー♪ 勇者:お? なんだよ? 魔王:(火精霊)きゅきゅきゅー! : 0:火精霊、玉座に突き立つ聖剣に触れると、剣が燃え上がる。 : 勇者:うぉぉ!? 聖剣が燃えた! 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:お前がやったのか? 魔王:(火精霊)きゅー♪ 勇者:そんなことできんなら初めから――いや、そういうことなのか……? 魔王:(火精霊)きゅー? 勇者:……まぁいい。お前にそんな力があるってんなら、好都合だ。 魔王:(火精霊)きゅきゅー? 勇者:誰が描いたか知らねぇが、下らねぇ筋書きで終わらせるつもりだったんなら、超えてってろうぜ、そんな結末よぉ。そうだろうイグニス? 魔王:(火精霊)きゅー。 勇者:あん? なんだよ不満そうだな、イグニス。 魔王:(火精霊)きゅー。 勇者:もしかして、名前か? 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:つってもなぁ……。あー。そうだなぁ……我が道を照らす灯火の……。アゼル……。よし。お前の名前はゼルテラス。 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:安直で悪かったなぁ! こういうの苦手なんだよ……。 魔王:(火精霊)きゅー。 勇者:っと、聖剣が完全に消えてやがる……。お前、すげぇな? 魔王:(火精霊)きゅー♪ : 0:玉座の聖剣が消滅している。 : 勇者:これなら、やれるか? 魔王:(火精霊)きゅー! 勇者:ははっ! よし、じゃあ行こうぜ、ゼルテラス! 魔王:(火精霊)きゅきゅー? 勇者:どこへ? 決まってんだろ、*友《ダチ》の野望――悲願を叶えにだよ。 魔王:(火精霊)きゅー♪ 勇者:灯火の眷属ゼルテラスと魔王ノル・アドニスで、な。