台本概要

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タイトル DISTOPIA BREAK:First『対立』
作者名 NAOKI  (@NAOKI24480603)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(不問5)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 万和(ばんな)213年。一人の剣士がある力に目覚めた。
伸展と呼ばれるそれは、人でありながら人を超える大いなる力。
その力は解放される事で、更に強大な力を剣士に与えた。
伸展を扱える者は少し、また少しと増えていき、やがて人々は彼らを、尊敬と畏怖の念を込めて『伸展師(しんてんし)』と呼ぶようになる。
 
時を経て。伸展解放に次ぐ上位能力『終伸展(しゅうしんてん)』が現れた頃、世にひとつの組織が生まれた。
名を皇組(すめらぎぐみ)。
恐怖こそが誉れ。奪取の先にこそ、誠(まこと)の自由と正義が存在せしと謳う、紫魂(しこん)の夜叉。
彼らは次第に、持たざる者を支配し始めた。
相次ぐ悲惨な戦闘が頻発し、日夜いとも容易く命が失われていく。
そんな中、皇組(すめらぎぐみ)に立ち向かわんとする者たちが現れた。
名を榊組(さかきぐみ)。
正義の名の下に、希望を抱き、世を常闇(とこやみ)から掬いあげんとする、碧き使徒。
 
異なる思想を掲げた二つの組織は、選ばれし者にのみ許された唯一無二の技=『伸展(しんてん)』を振るい、今時代を動かし始める…。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
望(もち) 不問 45 【男性想定】 本作の主人公。 過去の記憶があまり無く、アテもなく放浪していたところで、鞠と田夜に襲われる。 伸展は目覚めている様だが、トラウマによって使用できない。
包水(ほうすい) 不問 34 【女性想定】 二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 自分に厳しく人にも厳しい、芯の通った真人間。 襲われていた望を助け、榊組に招き入れる。 伸展・水浅葱(しんてん・みずあさぎ)の解放者。
鞠(まり) 不問 55 【女性想定】 榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 気だるげで喧嘩っ早い。田夜の実姉。 伸展・齟齬総殺(しんてん・そごそうさつ)の解放者。
田夜(でんや) 不問 52 【男性想定】 榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 人懐っこくやんちゃ。鞠の実弟。 伸展・一(しんてん・いちもんじ)の解放者。
尚悦(なおえつ) 不問 16 【男性想定】 榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 口調は砕けているが、有無を言わさぬ貫禄を持つ。 鞠と田夜に懐かれており、尚悦もまた二人を可愛がっている。 伸展・多門ノ壁 夜壁(しんてん・たもんのかべ、やへい)の解放者。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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DISTOPIA BREAK:First『対立』  :   :登場人物紹介(マーカー用) 望(もち):本作の主人公。 望(もち):過去の記憶があまり無く、アテもなく放浪していたところで、鞠と田夜に襲われる。 望(もち):伸展は目覚めている様だが、トラウマによって使用できない。 包水(ほうすい):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 包水(ほうすい):自分に厳しく人にも厳しい、芯の通った真人間。 包水(ほうすい):襲われていた望を助け、榊組に招き入れる。 包水(ほうすい):伸展・水浅葱(しんてん・みずあさぎ)の解放者。 鞠(まり):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 鞠(まり):気だるげで喧嘩っ早い。田夜の実姉。 鞠(まり):伸展・齟齬総殺(しんてん・そごそうさつ)の解放者。 田夜(でんや):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 田夜(でんや):人懐っこくやんちゃ。鞠の実弟。 田夜(でんや):伸展・一(しんてん・いちもんじ)の解放者。 尚悦(なおえつ):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 尚悦(なおえつ):口調は砕けているが、有無を言わさぬ貫禄を持つ。 尚悦(なおえつ):鞠と田夜に懐かれており、尚悦もまた二人を可愛がっている。 尚悦(なおえつ):伸展・多門ノ壁 夜壁(しんてん・たもんのかべ、やへい)の解放者。  :   :  0:シナリオスタート  :  尚悦(なおえつ):(ナレーション) 尚悦(なおえつ):万和(ばんな)213年。一人の剣士がある力に目覚めた。 尚悦(なおえつ):伸展と呼ばれるそれは、人でありながら人を超える大いなる力。 尚悦(なおえつ):その力は解放される事で、更に強大な力を剣士に与えた。 尚悦(なおえつ):伸展を扱える者は少し、また少しと増えていき、やがて人々は彼らを、尊敬と畏怖の念を込めて『伸展師(しんてんし)』と呼ぶようになる。 尚悦(なおえつ):  尚悦(なおえつ):時を経て。伸展解放に次ぐ上位能力『終伸展(しゅうしんてん)』が現れた頃、世にひとつの組織が生まれた。 尚悦(なおえつ):名を皇組(すめらぎぐみ)。 尚悦(なおえつ):恐怖こそが誉れ。奪取の先にこそ、誠(まこと)の自由と正義が存在せしと謳う、紫魂(しこん)の夜叉。 尚悦(なおえつ):彼らは次第に、持たざる者を支配し始めた。 尚悦(なおえつ):相次ぐ悲惨な戦闘が頻発し、日夜いとも容易く命が失われていく。 尚悦(なおえつ):そんな中、皇組(すめらぎぐみ)に立ち向かわんとする者たちが現れた。 尚悦(なおえつ):名を榊組(さかきぐみ)。 尚悦(なおえつ):正義の名の下に、希望を抱き、世を常闇(とこやみ)から掬いあげんとする、碧き使徒。 尚悦(なおえつ):  尚悦(なおえつ):異なる思想を掲げた二つの組織は、選ばれし者にのみ許された唯一無二の技=『伸展(しんてん)』を振るい、今時代を動かし始める…。  :   :  包水(ほうすい):(タイトルコール) 包水(ほうすい):DISTOPIA BREAK First『対立』 包水(ほうすい):(でぃすとぴあ ぶれいく ふぁーすと『たいりつ』)  :   :   :【場面】無領地・人気のない寂れた道  :  田夜(でんや):「はーぁ…めんどくせえ。人探しとか、他の奴にやらせとけっての…」 鞠(まり):「やめとけ、デンヤ。アマツさんの耳に入ったら、ただじゃ済まねぇぞ?」 田夜(でんや):「あ、やっべ…。はぁ…アマツさん、マジでこっわいよなぁ…。俺、あの人に楯突いて生きてる人、見た事ねぇや」 鞠(まり):「そりゃそうだろ。実質うちらの頭(かしら)みたいなもんじゃねぇか」 田夜(でんや):「それだけどさぁ、なんであんな強ぇ人が、俺らと同じ『聖(ひじり)』なのかな?もうあの人だけ別で、一強で良くない?」 鞠(まり):「んなこと、私が知るかよ。そーゆー難しい事は、お強い方々に任せておけばいいんだって!」 田夜(でんや):「ふぅん…そんなもんかぁ」 鞠(まり):「まぁ、あれだよ。私ら二人は、ナオエツさんについてけば何の問題も無しってこった!」 田夜(でんや):「へへっ!それもそーだな!」 0:笑い合う姉弟。 鞠(まり):「しっかし、マジで誰もいねぇなぁ。本当にこんな辺鄙(へんぴ)なトコに人が住んでんのかねぇ…。ん?」 田夜(でんや):「ん?どーしたの?」 鞠(まり):「デンヤ、それなんだよ?」 田夜(でんや):「は?何が?」 鞠(まり):「それだよ、そのネックレス。そんなのもってたっけ?」 田夜(でんや):「え、あー…いや、別に…」 鞠(まり):「…? あぁっ!もしかして彼女か!?」 田夜(でんや):「は!?」 鞠(まり):「水臭いじゃねーかよ!そんな子が出来たなら、姉ちゃんに紹介しろよ!」 田夜(でんや):「なっ、なんでだよ! ……まぁ、いつか会わせてやるよ」 鞠(まり):「いつかって、いつだよ?なぁなぁ、どんな子?ヒントねーの?ヒント」 田夜(でんや):「るっせぇなぁ…。…まあ…しいていうなら、桜が似合いそうな人、かな? 田夜(でんや):(おちゃらけながら)ま、姉ちゃんとは正反対ってことだよ!」 鞠(まり):「んだとぉ?こいつぅ!」 田夜(でんや):「いてててっ、やめろよ!…って、あ」 鞠(まり):「あん?」 田夜(でんや):「アマツさんがいってたのって、あいつじゃね?」 鞠(まり):「うーん?おー、そーだそーだ」 田夜(でんや):「やっと見つけた! おい、そこのガキ!」 鞠(まり):「てめぇも対して年かわらねぇだろ」  :  望(もち):「え…なんですか…?」 田夜(でんや):「お前、名前を教えろ!」 望(もち):「は…名前?…どうして、ですか?」 田夜(でんや):「どーしたもこーしたもねぇよ!名前はなんだって言ってんの!」 鞠(まり):「阿呆!そんな唐突に名前聞いたって、警戒されるだけに決まってんだろ!?」 田夜(でんや):「いってぇ!姉ちゃん、すぐに暴力振るう癖やめろよなー!」 鞠(まり):「うるせぇ!お前はもう少し頭使え!」 望(もち):「あ、あの…貴方たちは?」 鞠(まり):「ん?あー悪い悪い。私らは皇組(すめらぎぐみ)のモンだ」 望(もち):「皇組…!」 田夜(でんや):「そーだ!お前『モチ』ってヤツだろ?俺らと一緒に来い!」 望(もち):「…なんで、僕の名前を…」 田夜(でんや):「しらばっくれるなよ。お前、伸展師(しんてんし)だろ?」 望(もち):「っ!? なんで、それを…」 鞠(まり):「なんで?そんなの私らだって知らねぇよ。でもな?力を持ったやつは取り入れる。それが常識だぜ?」 望(もち):「そんな…知ってるはずない!だって、僕は…この力を…」 鞠(まり):「あん?お前、もしかして…伸展、解放させてねぇのか? 鞠(まり):…ハッ、もったいねぇ。力なんて使ってなんぼだろ」 田夜(でんや):「そーだそーだ!俺らについて来いよ。その力、気兼ねなく自由につかえるぜ?」 望(もち):「嫌です…僕は皇組になんて入りたくない…」 鞠(まり):「(溜め息)…交渉決裂、ね…しゃーねぇ。恨むなよ?」 望(もち):「え…?」 鞠(まり):「くたばれ!おらぁ!」 0:望に鞠が襲い掛かる。間一髪で避ける望。 望(もち):「うわっ…!?」 鞠(まり):「…へぇ?ちったぁ、動けるじゃねぇか!そらぁ!」 望(もち):「くっ…、やめろ…っ!」 鞠(まり):「どーした!止めたければ、力を使ってもいいんだぜぇ!?」 望(もち):「やめてくれ!僕は力を使いたくないんだ!」 田夜(でんや):「なんだ?変わったヤツだなー。他のヤツらにはない力なんて、めっちゃアガるじゃん!」 鞠(まり):「おらよ!」 望(もち):「ぐっ…!だから…僕は使いたくないっていってるだろ!?」 鞠(まり):「チッ…こいつ、全然受けようとしやがらねぇ…」 田夜(でんや):「姉ちゃん。楽しくないのは問題じゃない?」 鞠(まり):「あぁ、そうだな。めんどくせぇ…! 鞠(まり):伸展解放!齟齬総殺!(しんてんかいほう、そごそうさつ)」 望(もち):「…!? しっ、伸展…」  :  0:回想(幼少期)  :  望(もち):(幼少期) 望(もち):「お母さん、みてみて!僕すっごく上手に使える様になったんだよ?」 望(もち):「いくよ?見ててね!」 望(もち):「伸展! ほら、すごいでしょ!?僕にも大きい岩が切れる様になったんだぁ!」 望(もち):  望(もち):「…え?あれ……と、止まらない…」 望(もち):「あ…あ、ぁ…うわああああああああ!!!」 望(もち):  望(もち):「お母さん…僕、ただ…力を見せたくて…」 望(もち):「…僕のせいだ…。僕が、こんな力を使えるから…っ!」 望(もち):「こんな力…欲しくなかった!!」  :  0:回想終わり  :  望(もち):「っ…うぐ…おえっ…」 田夜(でんや):「おいおい、なんだよ? 急に青ざめて…そんなんじゃ簡単に殺されちまうぜ?」 望(もち):「くっ…うる、さい!」 田夜(でんや):「おっとあっぶね!」 鞠(まり):「よそ見してんなよ、デンヤ」 田夜(でんや):「目ぇつぶってても避けれるってこんなのw」 鞠(まり):「おい。はやく力を使わないと本当に死んじまうぜ?」 望(もち):「はっ…はっ…っぐ、伸…展…!っ、うぐ…!」 田夜(でんや):「…これ、使い物にならねぇんじゃね?なんだよ、はずれじゃん」 鞠(まり):「…おいお前。なんで打たねぇんだよ!舐めてんのか!?おい!?」 望(もち):「くっ…!」 鞠(まり):「ちっ…ちょこまかとめんどくせぇ!」 田夜(でんや):「おい、姉ちゃん!なにやってんだよ!」 鞠(まり):「うるせぇな!チョロチョロしてあたらねぇんだよ!」 田夜(でんや):「ったく!じゃあもう俺にやらせろよ!」 鞠(まり):「あぁ!?おい!デンヤ!」 田夜(でんや):「いくぜぇ?伸展解放!(しんてんかいほう)」 望(もち):「はっ!?伸展…!うう!」 田夜(でんや):「一!いちもんじ))」 0:田夜が唐突に放った技が、望の肩を掠める。 望(もち):「っぐあ…!!!」 田夜(でんや):「ちっ!」 鞠(まり):「…んだよ、大口叩いといて掠っただけかよ?ちゃんと当てろよな」 田夜(でんや):「手が滑ったんだよ!つーか姉ちゃんもほとんど当たってなかったじゃんか!」 鞠(まり):「うるせぇなぁ」 望(もち):「う、うぅ…」 鞠(まり):「(深い溜め息)…つっまんねぇ。デンヤ、もう譲ってやるからお前殺れよ」 田夜(でんや):「えぇ?姉ちゃん飽きるの早すぎw」 鞠(まり):「ああ!?いいからさっさとやれよ!」 田夜(でんや):「あーもう!分かったって! 田夜(でんや):…じゃあなクソガキ!俺はほんのちょっと、楽しかったぜえええ!?」 包水(ほうすい):「(食い気味に)そこで何をしている!!!」 鞠(まり):「…あん?なんだてめぇは?」 包水(ほうすい):「何をしている、と聞いている」 鞠(まり):「てめぇには関係ねえだろ、すっこんでろ部外者」 包水(ほうすい):「君たちは…皇組か…」 田夜(でんや):「っち!めんどくせぇな…」 包水(ほうすい):「引け、ここで引くなら見逃してやる」 鞠(まり):「は?笑わせんなよ?くそだりぃ…」 田夜(でんや):「急に出しゃばってきて、なに上から目線でもの言ってんだよ」 鞠(まり):「…頭にきたわ。おいデンヤどけ、コイツは私が殺してやる…」 田夜(でんや):「あ?おい!姉ちゃん!?」  :   :【SE】炎が燃え上がる音 鞠(まり):「(詠唱)『つまんないなぁ。どいつもこいつも、すぐ死んじゃうんだから…抗えよ。』 鞠(まり):  鞠(まり):終伸展解放 念幕早層 齟齬総殺! 鞠(まり):(しゅうしんてんかいほう、ねんはくそうそう、そごそうさつ)」 包水(ほうすい):「愚かな…はあっ!」 鞠(まり):「なっ!こいつ、伸展をそのまま…うああっ!」 田夜(でんや):「姉ちゃん!くっそ…こいつ!」 包水(ほうすい):「甘い!」 田夜(でんや):「なっ!うわぁぁ!」 鞠(まり):「デンヤ!くそっ…なんだこいつ、強すぎる…」 田夜(でんや):「…やべぇ、なんだあれ…伸展も使ってねぇのに…」 包水(ほうすい):「もう一度言う、引け。私は無闇な殺生は好まん。お前達はまだ若い。その命、みすみす手放すな」 鞠(まり):「ハッ…舐めやがって…。てめぇが何モンかは知らねぇけどな…私たちを見下すんじゃねぇ!」 田夜(でんや):「そーだぜ…俺たちを!その辺のヤツらと一緒にすんじゃねぇ!」 鞠(まり):「デンヤ!一気に攻めるぞ!」 田夜(でんや):「おう!」 鞠(まり):「(同時に)伸展解放!」 田夜(でんや):「(同時に)伸展解放!」 包水(ほうすい):「致し方ないか…。 包水(ほうすい):伸展解放 水浅葱! 包水(ほうすい):(しんてんかいほう、みずあさぎ)」 尚悦(なおえつ):「(被せて) 尚悦(なおえつ):伸展解放 多門ノ壁 夜壁 尚悦(なおえつ):(しんてんかいほう、たもんのかべ、やへい)」 0:包水の放った技が、打ち消される。 包水(ほうすい):「…! お前は…!」 尚悦(なおえつ):「大丈夫かいな、マリ。デンヤ」 鞠(まり):「ナオエツさん!」 尚悦(なおえつ):「…なんや、懐かしい顔や。なぁ、ホウスイさん? 尚悦(なおえつ):せやけど、俺の部下に手をだしてもらっちゃあ、困りますわ」 包水(ほうすい):「…ナオエツ」 尚悦(なおえつ):「別にこのまま戦ってもええんですけど…ご覧の通り、この二人はまだまだ未熟者。 尚悦(なおえつ):俺の伸展も攻撃向きやあらへん。アンタを退屈させるのも忍びないですし…。今回は、ここらで手打ちにしましょや」 田夜(でんや):「えっ!?ナオエツさん!?」 包水(ほうすい):「…引くのならば、こちらに異存はない」 尚悦(なおえつ):「ほなお先に…」 鞠(まり):「あっ…待ってください!」 田夜(でんや):「…ちっ」  :   :【場面変更】皇組・帰路  :  田夜(でんや):「ナオエツさん!なんで引いたんだよ!あんなやつぶっ殺してやればよかったのに!」 尚悦(なおえつ):「そう言いなさんな、デンヤ。お前らも痛い目みたやろ?今日は諦めとき」 鞠(まり):「ナオエツさんは、あいつのこと知ってる様でしたけど…」 尚悦(なおえつ):「おぉ、知っとるで?せやな…ちぃと教えてやろか。 尚悦(なおえつ):あいつはな、榊組(さかきぐみ)のホウスイ言うやつや」 田夜(でんや):「榊組(さかきぐみ)…!」 尚悦(なおえつ):「そうや?その榊組に、階級があるのは知っとるか?」 鞠(まり):「椿(つばき)と…その上位の縁(えにし)、ですよね?」 尚悦(なおえつ):「おー、せやせや!よう勉強しとんのぉ、マリ」 鞠(まり):「え!?…あ、いえ…そんな…」 田夜(でんや):「なにその態度、きっもちわる」 鞠(まり):「んなっ…なんか言ったか!?」 尚悦(なおえつ):「まぁまぁ、ケンカしなさんな。 尚悦(なおえつ):ほんでな?ホウスイ言うんは、その縁(えにし)に所属してる実力者の一人や。あいつは強いでぇ?」 田夜(でんや):「ナオエツさん!あんなやつ褒めるなよ!俺らだって油断してなきゃ、あんなやつ…!」 尚悦(なおえつ):「ははは!強がるな強がるな!むしろこの程度で済んで良かったわ」 鞠(まり):「…でもナオエツさんなら、どうにかできたんじゃないですか? 鞠(まり):あんなコト言ってましたけど、ナオエツさんの伸展なら、あいつの伸展なんてワケない様に見えましたけど…」 尚悦(なおえつ):「マリ。舐めたらあかんで?あいつは実質、榊組の頭(かしら)や。そんなヤツが『ワケない』なんてこと、絶対にあらへん」 鞠(まり):「っ、…すみません」 尚悦(なおえつ):「まぁえぇわ、お前らも無事だったことやしな。ほな、さっさと帰んで?」 田夜(でんや):「…あ!でもナオエツさん! 田夜(でんや):俺ら、あのモチってヤツを『仲間に出来ないなら、殺してこい』って、アマツさんに言われてんだよ! 田夜(でんや):このままじゃ俺ら、殺されに帰るだけだぜ?」 尚悦(なおえつ):「わかっとる、わかっとる。 尚悦(なおえつ):それに関しては、俺がアマツに口利きしたるで。心配せんとき」 田夜(でんや):「むぅ…ナオエツさんが、そう言うなら…」  :   :【場面変更】包水と望  :  包水(ほうすい):「ふぅ…。君、大丈夫か。ケガは?」 望(もち):「ぁ…大丈夫です。ありがとうございます…」 包水(ほうすい):「そうか、災難だったな。…しかし、ずいぶんと一方的にやられたもんだ。何があった?」 望(もち):「……それは…」 包水(ほうすい):「どうやら訳ありのようだな」 望(もち):「え…?」 包水(ほうすい):「君は伸展が使えるのではないのか?あのままだと殺されていただろう。なぜ使わなかった?」 望(もち):「それは…」 包水(ほうすい):「……いや違うな、使わないではなく使えなかっただな」 望(もち):「…震えがとまらないんです」 包水(ほうすい):「震え?」 望(もち):「僕…記憶がないんです。 望(もち):伸展が使えた記憶はかすかにあって、でも使おうとすると体が震えだして、吐き気が止まらなくなる…」 包水(ほうすい):「なるほど」 望(もち):「もういやだ…なんで僕がこんな力を…」 包水(ほうすい):「本来なら君の気持ちを尊重して、無理矢理聞き出す様な事はしないんだが…このままだと君は殺されるぞ」 望(もち):「え?」 包水(ほうすい):「あいつらは皇組(すめらぎぐみ)と言ってな、力を持つことを至上としている。 包水(ほうすい):勢力を増すために伸展師を次々と吸収、意に沿わないものは消してきた。」 望(もち):「そんな…」 包水(ほうすい):「伸展は限られた者だけが使える特別な力だ。 包水(ほうすい):練度は別として、それが使えるだけで戦力になる事に他ならない。 包水(ほうすい):だが…君は彼らの誘いに乗れなかった。」 望(もち):「…僕が伸展を使えなかったから」 包水(ほうすい):「ああ、だが私としては有難かったがな」 望(もち):「え?」 包水(ほうすい):「もし君が伸展を使えて、皇組に組みしていたら、いずれ私は君を討たなくてはならなかった」 望(もち):「…貴方は誰なんですか?」 包水(ほうすい):「私はホウスイ。榊組に属している」 望(もち):「榊組…皇組と対立してる…あの?」 包水(ほうすい):「あぁそうだ。このまま皇組が勢力を増してしまうと、待つのは恐怖による統治のみだ。我々はそれを食い止めるために力を結集している」 望(もち):「恐怖による…統治」 包水(ほうすい):「君はどうするんだ?このままここに残って大人しく殺されるのを待つのか?」 望(もち):「それは…嫌です。でも僕にできることなんて…」 包水(ほうすい):「ならば、私と来るか?」 望(もち):「貴方と?」 包水(ほうすい):「今でこそ力を使えないという話だが…一度、伸展の力に目覚めた今、それが消える事はない」 望(もち):「でも、もう僕にはこの力を使う事なんて…」 包水(ほうすい):「君は力の使い方を学ぶべきだろう。たしかに今は使うことが出来ないかもしれない。しかし伸展の力はあまりにも大きい。制御出来ない大きな力は、己の身を滅ぼすだけだ。」 望(もち):「力の使い方…」 包水(ほうすい):「まずは君にとってその力がなんなのか考えてみるのはどうだ。そうすれば己の信じる正義をみつけることもできるだろう」 望(もち):「そうすれば…この力に苛まれずに生きれるんでしょうか」 包水(ほうすい):「さあ、私に分かるわけないだろう?」 望(もち):「え?そんな!?」 包水(ほうすい):「それを探すために前を向くんだ。前を向き続けさえすれば、いつか希望もみえてくるさ」 0:微かにだが、望の目に光が宿る。そのまま包水を見上げて。 望(もち):「……よろしく、お願いします!」  :   :  0:次回予告 望(もち):ホウスイに導かれ、榊組へ入る事を決めた望。 望(もち):果たしてその選択は、彼に…そして世にどんな影響を与えるのか…? 望(もち):…今、歯車が回りはじめる。 望(もち):  望(もち):次回。DISTOPIA BREAK Second 『再会』 望(もち):(でぃすとぴあ ぶれいく せかんど『さいかい』) 0:続く

DISTOPIA BREAK:First『対立』  :   :登場人物紹介(マーカー用) 望(もち):本作の主人公。 望(もち):過去の記憶があまり無く、アテもなく放浪していたところで、鞠と田夜に襲われる。 望(もち):伸展は目覚めている様だが、トラウマによって使用できない。 包水(ほうすい):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 包水(ほうすい):自分に厳しく人にも厳しい、芯の通った真人間。 包水(ほうすい):襲われていた望を助け、榊組に招き入れる。 包水(ほうすい):伸展・水浅葱(しんてん・みずあさぎ)の解放者。 鞠(まり):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 鞠(まり):気だるげで喧嘩っ早い。田夜の実姉。 鞠(まり):伸展・齟齬総殺(しんてん・そごそうさつ)の解放者。 田夜(でんや):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 田夜(でんや):人懐っこくやんちゃ。鞠の実弟。 田夜(でんや):伸展・一(しんてん・いちもんじ)の解放者。 尚悦(なおえつ):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 尚悦(なおえつ):口調は砕けているが、有無を言わさぬ貫禄を持つ。 尚悦(なおえつ):鞠と田夜に懐かれており、尚悦もまた二人を可愛がっている。 尚悦(なおえつ):伸展・多門ノ壁 夜壁(しんてん・たもんのかべ、やへい)の解放者。  :   :  0:シナリオスタート  :  尚悦(なおえつ):(ナレーション) 尚悦(なおえつ):万和(ばんな)213年。一人の剣士がある力に目覚めた。 尚悦(なおえつ):伸展と呼ばれるそれは、人でありながら人を超える大いなる力。 尚悦(なおえつ):その力は解放される事で、更に強大な力を剣士に与えた。 尚悦(なおえつ):伸展を扱える者は少し、また少しと増えていき、やがて人々は彼らを、尊敬と畏怖の念を込めて『伸展師(しんてんし)』と呼ぶようになる。 尚悦(なおえつ):  尚悦(なおえつ):時を経て。伸展解放に次ぐ上位能力『終伸展(しゅうしんてん)』が現れた頃、世にひとつの組織が生まれた。 尚悦(なおえつ):名を皇組(すめらぎぐみ)。 尚悦(なおえつ):恐怖こそが誉れ。奪取の先にこそ、誠(まこと)の自由と正義が存在せしと謳う、紫魂(しこん)の夜叉。 尚悦(なおえつ):彼らは次第に、持たざる者を支配し始めた。 尚悦(なおえつ):相次ぐ悲惨な戦闘が頻発し、日夜いとも容易く命が失われていく。 尚悦(なおえつ):そんな中、皇組(すめらぎぐみ)に立ち向かわんとする者たちが現れた。 尚悦(なおえつ):名を榊組(さかきぐみ)。 尚悦(なおえつ):正義の名の下に、希望を抱き、世を常闇(とこやみ)から掬いあげんとする、碧き使徒。 尚悦(なおえつ):  尚悦(なおえつ):異なる思想を掲げた二つの組織は、選ばれし者にのみ許された唯一無二の技=『伸展(しんてん)』を振るい、今時代を動かし始める…。  :   :  包水(ほうすい):(タイトルコール) 包水(ほうすい):DISTOPIA BREAK First『対立』 包水(ほうすい):(でぃすとぴあ ぶれいく ふぁーすと『たいりつ』)  :   :   :【場面】無領地・人気のない寂れた道  :  田夜(でんや):「はーぁ…めんどくせえ。人探しとか、他の奴にやらせとけっての…」 鞠(まり):「やめとけ、デンヤ。アマツさんの耳に入ったら、ただじゃ済まねぇぞ?」 田夜(でんや):「あ、やっべ…。はぁ…アマツさん、マジでこっわいよなぁ…。俺、あの人に楯突いて生きてる人、見た事ねぇや」 鞠(まり):「そりゃそうだろ。実質うちらの頭(かしら)みたいなもんじゃねぇか」 田夜(でんや):「それだけどさぁ、なんであんな強ぇ人が、俺らと同じ『聖(ひじり)』なのかな?もうあの人だけ別で、一強で良くない?」 鞠(まり):「んなこと、私が知るかよ。そーゆー難しい事は、お強い方々に任せておけばいいんだって!」 田夜(でんや):「ふぅん…そんなもんかぁ」 鞠(まり):「まぁ、あれだよ。私ら二人は、ナオエツさんについてけば何の問題も無しってこった!」 田夜(でんや):「へへっ!それもそーだな!」 0:笑い合う姉弟。 鞠(まり):「しっかし、マジで誰もいねぇなぁ。本当にこんな辺鄙(へんぴ)なトコに人が住んでんのかねぇ…。ん?」 田夜(でんや):「ん?どーしたの?」 鞠(まり):「デンヤ、それなんだよ?」 田夜(でんや):「は?何が?」 鞠(まり):「それだよ、そのネックレス。そんなのもってたっけ?」 田夜(でんや):「え、あー…いや、別に…」 鞠(まり):「…? あぁっ!もしかして彼女か!?」 田夜(でんや):「は!?」 鞠(まり):「水臭いじゃねーかよ!そんな子が出来たなら、姉ちゃんに紹介しろよ!」 田夜(でんや):「なっ、なんでだよ! ……まぁ、いつか会わせてやるよ」 鞠(まり):「いつかって、いつだよ?なぁなぁ、どんな子?ヒントねーの?ヒント」 田夜(でんや):「るっせぇなぁ…。…まあ…しいていうなら、桜が似合いそうな人、かな? 田夜(でんや):(おちゃらけながら)ま、姉ちゃんとは正反対ってことだよ!」 鞠(まり):「んだとぉ?こいつぅ!」 田夜(でんや):「いてててっ、やめろよ!…って、あ」 鞠(まり):「あん?」 田夜(でんや):「アマツさんがいってたのって、あいつじゃね?」 鞠(まり):「うーん?おー、そーだそーだ」 田夜(でんや):「やっと見つけた! おい、そこのガキ!」 鞠(まり):「てめぇも対して年かわらねぇだろ」  :  望(もち):「え…なんですか…?」 田夜(でんや):「お前、名前を教えろ!」 望(もち):「は…名前?…どうして、ですか?」 田夜(でんや):「どーしたもこーしたもねぇよ!名前はなんだって言ってんの!」 鞠(まり):「阿呆!そんな唐突に名前聞いたって、警戒されるだけに決まってんだろ!?」 田夜(でんや):「いってぇ!姉ちゃん、すぐに暴力振るう癖やめろよなー!」 鞠(まり):「うるせぇ!お前はもう少し頭使え!」 望(もち):「あ、あの…貴方たちは?」 鞠(まり):「ん?あー悪い悪い。私らは皇組(すめらぎぐみ)のモンだ」 望(もち):「皇組…!」 田夜(でんや):「そーだ!お前『モチ』ってヤツだろ?俺らと一緒に来い!」 望(もち):「…なんで、僕の名前を…」 田夜(でんや):「しらばっくれるなよ。お前、伸展師(しんてんし)だろ?」 望(もち):「っ!? なんで、それを…」 鞠(まり):「なんで?そんなの私らだって知らねぇよ。でもな?力を持ったやつは取り入れる。それが常識だぜ?」 望(もち):「そんな…知ってるはずない!だって、僕は…この力を…」 鞠(まり):「あん?お前、もしかして…伸展、解放させてねぇのか? 鞠(まり):…ハッ、もったいねぇ。力なんて使ってなんぼだろ」 田夜(でんや):「そーだそーだ!俺らについて来いよ。その力、気兼ねなく自由につかえるぜ?」 望(もち):「嫌です…僕は皇組になんて入りたくない…」 鞠(まり):「(溜め息)…交渉決裂、ね…しゃーねぇ。恨むなよ?」 望(もち):「え…?」 鞠(まり):「くたばれ!おらぁ!」 0:望に鞠が襲い掛かる。間一髪で避ける望。 望(もち):「うわっ…!?」 鞠(まり):「…へぇ?ちったぁ、動けるじゃねぇか!そらぁ!」 望(もち):「くっ…、やめろ…っ!」 鞠(まり):「どーした!止めたければ、力を使ってもいいんだぜぇ!?」 望(もち):「やめてくれ!僕は力を使いたくないんだ!」 田夜(でんや):「なんだ?変わったヤツだなー。他のヤツらにはない力なんて、めっちゃアガるじゃん!」 鞠(まり):「おらよ!」 望(もち):「ぐっ…!だから…僕は使いたくないっていってるだろ!?」 鞠(まり):「チッ…こいつ、全然受けようとしやがらねぇ…」 田夜(でんや):「姉ちゃん。楽しくないのは問題じゃない?」 鞠(まり):「あぁ、そうだな。めんどくせぇ…! 鞠(まり):伸展解放!齟齬総殺!(しんてんかいほう、そごそうさつ)」 望(もち):「…!? しっ、伸展…」  :  0:回想(幼少期)  :  望(もち):(幼少期) 望(もち):「お母さん、みてみて!僕すっごく上手に使える様になったんだよ?」 望(もち):「いくよ?見ててね!」 望(もち):「伸展! ほら、すごいでしょ!?僕にも大きい岩が切れる様になったんだぁ!」 望(もち):  望(もち):「…え?あれ……と、止まらない…」 望(もち):「あ…あ、ぁ…うわああああああああ!!!」 望(もち):  望(もち):「お母さん…僕、ただ…力を見せたくて…」 望(もち):「…僕のせいだ…。僕が、こんな力を使えるから…っ!」 望(もち):「こんな力…欲しくなかった!!」  :  0:回想終わり  :  望(もち):「っ…うぐ…おえっ…」 田夜(でんや):「おいおい、なんだよ? 急に青ざめて…そんなんじゃ簡単に殺されちまうぜ?」 望(もち):「くっ…うる、さい!」 田夜(でんや):「おっとあっぶね!」 鞠(まり):「よそ見してんなよ、デンヤ」 田夜(でんや):「目ぇつぶってても避けれるってこんなのw」 鞠(まり):「おい。はやく力を使わないと本当に死んじまうぜ?」 望(もち):「はっ…はっ…っぐ、伸…展…!っ、うぐ…!」 田夜(でんや):「…これ、使い物にならねぇんじゃね?なんだよ、はずれじゃん」 鞠(まり):「…おいお前。なんで打たねぇんだよ!舐めてんのか!?おい!?」 望(もち):「くっ…!」 鞠(まり):「ちっ…ちょこまかとめんどくせぇ!」 田夜(でんや):「おい、姉ちゃん!なにやってんだよ!」 鞠(まり):「うるせぇな!チョロチョロしてあたらねぇんだよ!」 田夜(でんや):「ったく!じゃあもう俺にやらせろよ!」 鞠(まり):「あぁ!?おい!デンヤ!」 田夜(でんや):「いくぜぇ?伸展解放!(しんてんかいほう)」 望(もち):「はっ!?伸展…!うう!」 田夜(でんや):「一!いちもんじ))」 0:田夜が唐突に放った技が、望の肩を掠める。 望(もち):「っぐあ…!!!」 田夜(でんや):「ちっ!」 鞠(まり):「…んだよ、大口叩いといて掠っただけかよ?ちゃんと当てろよな」 田夜(でんや):「手が滑ったんだよ!つーか姉ちゃんもほとんど当たってなかったじゃんか!」 鞠(まり):「うるせぇなぁ」 望(もち):「う、うぅ…」 鞠(まり):「(深い溜め息)…つっまんねぇ。デンヤ、もう譲ってやるからお前殺れよ」 田夜(でんや):「えぇ?姉ちゃん飽きるの早すぎw」 鞠(まり):「ああ!?いいからさっさとやれよ!」 田夜(でんや):「あーもう!分かったって! 田夜(でんや):…じゃあなクソガキ!俺はほんのちょっと、楽しかったぜえええ!?」 包水(ほうすい):「(食い気味に)そこで何をしている!!!」 鞠(まり):「…あん?なんだてめぇは?」 包水(ほうすい):「何をしている、と聞いている」 鞠(まり):「てめぇには関係ねえだろ、すっこんでろ部外者」 包水(ほうすい):「君たちは…皇組か…」 田夜(でんや):「っち!めんどくせぇな…」 包水(ほうすい):「引け、ここで引くなら見逃してやる」 鞠(まり):「は?笑わせんなよ?くそだりぃ…」 田夜(でんや):「急に出しゃばってきて、なに上から目線でもの言ってんだよ」 鞠(まり):「…頭にきたわ。おいデンヤどけ、コイツは私が殺してやる…」 田夜(でんや):「あ?おい!姉ちゃん!?」  :   :【SE】炎が燃え上がる音 鞠(まり):「(詠唱)『つまんないなぁ。どいつもこいつも、すぐ死んじゃうんだから…抗えよ。』 鞠(まり):  鞠(まり):終伸展解放 念幕早層 齟齬総殺! 鞠(まり):(しゅうしんてんかいほう、ねんはくそうそう、そごそうさつ)」 包水(ほうすい):「愚かな…はあっ!」 鞠(まり):「なっ!こいつ、伸展をそのまま…うああっ!」 田夜(でんや):「姉ちゃん!くっそ…こいつ!」 包水(ほうすい):「甘い!」 田夜(でんや):「なっ!うわぁぁ!」 鞠(まり):「デンヤ!くそっ…なんだこいつ、強すぎる…」 田夜(でんや):「…やべぇ、なんだあれ…伸展も使ってねぇのに…」 包水(ほうすい):「もう一度言う、引け。私は無闇な殺生は好まん。お前達はまだ若い。その命、みすみす手放すな」 鞠(まり):「ハッ…舐めやがって…。てめぇが何モンかは知らねぇけどな…私たちを見下すんじゃねぇ!」 田夜(でんや):「そーだぜ…俺たちを!その辺のヤツらと一緒にすんじゃねぇ!」 鞠(まり):「デンヤ!一気に攻めるぞ!」 田夜(でんや):「おう!」 鞠(まり):「(同時に)伸展解放!」 田夜(でんや):「(同時に)伸展解放!」 包水(ほうすい):「致し方ないか…。 包水(ほうすい):伸展解放 水浅葱! 包水(ほうすい):(しんてんかいほう、みずあさぎ)」 尚悦(なおえつ):「(被せて) 尚悦(なおえつ):伸展解放 多門ノ壁 夜壁 尚悦(なおえつ):(しんてんかいほう、たもんのかべ、やへい)」 0:包水の放った技が、打ち消される。 包水(ほうすい):「…! お前は…!」 尚悦(なおえつ):「大丈夫かいな、マリ。デンヤ」 鞠(まり):「ナオエツさん!」 尚悦(なおえつ):「…なんや、懐かしい顔や。なぁ、ホウスイさん? 尚悦(なおえつ):せやけど、俺の部下に手をだしてもらっちゃあ、困りますわ」 包水(ほうすい):「…ナオエツ」 尚悦(なおえつ):「別にこのまま戦ってもええんですけど…ご覧の通り、この二人はまだまだ未熟者。 尚悦(なおえつ):俺の伸展も攻撃向きやあらへん。アンタを退屈させるのも忍びないですし…。今回は、ここらで手打ちにしましょや」 田夜(でんや):「えっ!?ナオエツさん!?」 包水(ほうすい):「…引くのならば、こちらに異存はない」 尚悦(なおえつ):「ほなお先に…」 鞠(まり):「あっ…待ってください!」 田夜(でんや):「…ちっ」  :   :【場面変更】皇組・帰路  :  田夜(でんや):「ナオエツさん!なんで引いたんだよ!あんなやつぶっ殺してやればよかったのに!」 尚悦(なおえつ):「そう言いなさんな、デンヤ。お前らも痛い目みたやろ?今日は諦めとき」 鞠(まり):「ナオエツさんは、あいつのこと知ってる様でしたけど…」 尚悦(なおえつ):「おぉ、知っとるで?せやな…ちぃと教えてやろか。 尚悦(なおえつ):あいつはな、榊組(さかきぐみ)のホウスイ言うやつや」 田夜(でんや):「榊組(さかきぐみ)…!」 尚悦(なおえつ):「そうや?その榊組に、階級があるのは知っとるか?」 鞠(まり):「椿(つばき)と…その上位の縁(えにし)、ですよね?」 尚悦(なおえつ):「おー、せやせや!よう勉強しとんのぉ、マリ」 鞠(まり):「え!?…あ、いえ…そんな…」 田夜(でんや):「なにその態度、きっもちわる」 鞠(まり):「んなっ…なんか言ったか!?」 尚悦(なおえつ):「まぁまぁ、ケンカしなさんな。 尚悦(なおえつ):ほんでな?ホウスイ言うんは、その縁(えにし)に所属してる実力者の一人や。あいつは強いでぇ?」 田夜(でんや):「ナオエツさん!あんなやつ褒めるなよ!俺らだって油断してなきゃ、あんなやつ…!」 尚悦(なおえつ):「ははは!強がるな強がるな!むしろこの程度で済んで良かったわ」 鞠(まり):「…でもナオエツさんなら、どうにかできたんじゃないですか? 鞠(まり):あんなコト言ってましたけど、ナオエツさんの伸展なら、あいつの伸展なんてワケない様に見えましたけど…」 尚悦(なおえつ):「マリ。舐めたらあかんで?あいつは実質、榊組の頭(かしら)や。そんなヤツが『ワケない』なんてこと、絶対にあらへん」 鞠(まり):「っ、…すみません」 尚悦(なおえつ):「まぁえぇわ、お前らも無事だったことやしな。ほな、さっさと帰んで?」 田夜(でんや):「…あ!でもナオエツさん! 田夜(でんや):俺ら、あのモチってヤツを『仲間に出来ないなら、殺してこい』って、アマツさんに言われてんだよ! 田夜(でんや):このままじゃ俺ら、殺されに帰るだけだぜ?」 尚悦(なおえつ):「わかっとる、わかっとる。 尚悦(なおえつ):それに関しては、俺がアマツに口利きしたるで。心配せんとき」 田夜(でんや):「むぅ…ナオエツさんが、そう言うなら…」  :   :【場面変更】包水と望  :  包水(ほうすい):「ふぅ…。君、大丈夫か。ケガは?」 望(もち):「ぁ…大丈夫です。ありがとうございます…」 包水(ほうすい):「そうか、災難だったな。…しかし、ずいぶんと一方的にやられたもんだ。何があった?」 望(もち):「……それは…」 包水(ほうすい):「どうやら訳ありのようだな」 望(もち):「え…?」 包水(ほうすい):「君は伸展が使えるのではないのか?あのままだと殺されていただろう。なぜ使わなかった?」 望(もち):「それは…」 包水(ほうすい):「……いや違うな、使わないではなく使えなかっただな」 望(もち):「…震えがとまらないんです」 包水(ほうすい):「震え?」 望(もち):「僕…記憶がないんです。 望(もち):伸展が使えた記憶はかすかにあって、でも使おうとすると体が震えだして、吐き気が止まらなくなる…」 包水(ほうすい):「なるほど」 望(もち):「もういやだ…なんで僕がこんな力を…」 包水(ほうすい):「本来なら君の気持ちを尊重して、無理矢理聞き出す様な事はしないんだが…このままだと君は殺されるぞ」 望(もち):「え?」 包水(ほうすい):「あいつらは皇組(すめらぎぐみ)と言ってな、力を持つことを至上としている。 包水(ほうすい):勢力を増すために伸展師を次々と吸収、意に沿わないものは消してきた。」 望(もち):「そんな…」 包水(ほうすい):「伸展は限られた者だけが使える特別な力だ。 包水(ほうすい):練度は別として、それが使えるだけで戦力になる事に他ならない。 包水(ほうすい):だが…君は彼らの誘いに乗れなかった。」 望(もち):「…僕が伸展を使えなかったから」 包水(ほうすい):「ああ、だが私としては有難かったがな」 望(もち):「え?」 包水(ほうすい):「もし君が伸展を使えて、皇組に組みしていたら、いずれ私は君を討たなくてはならなかった」 望(もち):「…貴方は誰なんですか?」 包水(ほうすい):「私はホウスイ。榊組に属している」 望(もち):「榊組…皇組と対立してる…あの?」 包水(ほうすい):「あぁそうだ。このまま皇組が勢力を増してしまうと、待つのは恐怖による統治のみだ。我々はそれを食い止めるために力を結集している」 望(もち):「恐怖による…統治」 包水(ほうすい):「君はどうするんだ?このままここに残って大人しく殺されるのを待つのか?」 望(もち):「それは…嫌です。でも僕にできることなんて…」 包水(ほうすい):「ならば、私と来るか?」 望(もち):「貴方と?」 包水(ほうすい):「今でこそ力を使えないという話だが…一度、伸展の力に目覚めた今、それが消える事はない」 望(もち):「でも、もう僕にはこの力を使う事なんて…」 包水(ほうすい):「君は力の使い方を学ぶべきだろう。たしかに今は使うことが出来ないかもしれない。しかし伸展の力はあまりにも大きい。制御出来ない大きな力は、己の身を滅ぼすだけだ。」 望(もち):「力の使い方…」 包水(ほうすい):「まずは君にとってその力がなんなのか考えてみるのはどうだ。そうすれば己の信じる正義をみつけることもできるだろう」 望(もち):「そうすれば…この力に苛まれずに生きれるんでしょうか」 包水(ほうすい):「さあ、私に分かるわけないだろう?」 望(もち):「え?そんな!?」 包水(ほうすい):「それを探すために前を向くんだ。前を向き続けさえすれば、いつか希望もみえてくるさ」 0:微かにだが、望の目に光が宿る。そのまま包水を見上げて。 望(もち):「……よろしく、お願いします!」  :   :  0:次回予告 望(もち):ホウスイに導かれ、榊組へ入る事を決めた望。 望(もち):果たしてその選択は、彼に…そして世にどんな影響を与えるのか…? 望(もち):…今、歯車が回りはじめる。 望(もち):  望(もち):次回。DISTOPIA BREAK Second 『再会』 望(もち):(でぃすとぴあ ぶれいく せかんど『さいかい』) 0:続く