台本概要
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タイトル | DISTOPIA BREAK:force『血約』 |
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作者名 | NAOKI (@NAOKI24480603) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(不問5) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
万和(ばんな)213年。一人の剣士がある力に目覚めた。 伸展と呼ばれるそれは、人でありながら人を超える大いなる力。 その力は解放される事で、更に強大な力を剣士に与えた。 伸展を扱える者は少し、また少しと増えていき、やがて人々は彼らを、尊敬と畏怖の念を込めて『伸展師(しんてんし)』と呼ぶようになる。 時を経て。伸展解放に次ぐ上位能力『終伸展(しゅうしんてん)』が現れた頃、世にひとつの組織が生まれた。 名を皇組(すめらぎぐみ)。 恐怖こそが誉れ。奪取の先にこそ、誠(まこと)の自由と正義が存在せしと謳う、紫魂(しこん)の夜叉。 彼らは次第に、持たざる者を支配し始めた。 相次ぐ悲惨な戦闘が頻発し、日夜いとも容易く命が失われていく。 そんな中、皇組(すめらぎぐみ)に立ち向かわんとする者たちが現れた。 名を榊組(さかきぐみ)。 正義の名の下に、希望を抱き、世を常闇(とこやみ)から掬いあげんとする、碧き使徒。 異なる思想を掲げた二つの組織は、選ばれし者にのみ許された唯一無二の技=『伸展(しんてん)』を振るい、今時代を動かし始める…。 125 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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春屋(はるや) | 不問 | 18 | 【女性想定】 二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 前回、悪間憑に敗れた田夜と恋仲だった。 伸展・鷹眼千万(しんてん・たかめせんばん)の解放者。 |
海貝(うかい) | 不問 | 55 | 【女性想定】 二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 春屋と歳も近く、仲が良い。野矢に憧れている。 伸展・薔(しんてん・みずたで)の解放者。 |
野矢(のうや) | 不問 | 50 | 【男性想定】 二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 一見軽いが仲間想いで頭も切れる実力者。辛い過去を持つ。 伸展・静空夜血約陣(しんてん・せいくうやけつやくじん)の解放者。 |
萌寧(もね) | 不問 | 49 | 【女性想定】 二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 優しく凜とした女性。野矢の伸展と、それにまつわる過去を知っている。 伸展・天泣薊(しんてん・てんきゅうあざみ)の解放者。 |
悪間憑(あまつ) | 不問 | 31 | 【女性想定】 榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 残酷で残忍。前回、尚悦と田夜を殺した。 伸展・赤凛一擲(しんてん・せきりんいってき)の解放者。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
DISTOPIA BREAK:force『血約』
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:登場人物紹介(マーカー用)
春屋(はるや):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
春屋(はるや):前回、悪間憑に敗れた田夜と恋仲だった。
春屋(はるや):伸展・鷹眼千万(しんてん・たかめせんばん)の解放者。
海貝(うかい):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
海貝(うかい):春屋と歳も近く、仲が良い。野矢に憧れている。
海貝(うかい):伸展・薔(しんてん・みずたで)の解放者。
野矢(のうや):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
野矢(のうや):一見軽いが仲間想いで頭も切れる実力者。辛い過去を持つ。
野矢(のうや):伸展・静空夜血約陣(しんてん・せいくうやけつやくじん)の解放者。
萌寧(もね):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
萌寧(もね):優しく凜とした女性。野矢の伸展と、それにまつわる過去を知っている。
萌寧(もね):伸展・天泣薊(しんてん・てんきゅうあざみ)の解放者。
悪間憑(あまつ):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。
悪間憑(あまつ):残酷で残忍。前回、尚悦と田夜を殺した。
悪間憑(あまつ):伸展・赤凛一擲(しんてん・せきりんいってき)の解放者。
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:
0:シナリオスタート
:
:【場面】榊組(さかきぐみ)拠点・一室
:
0:野矢と萌寧が話しているところに海貝がやってくる。
海貝(うかい):「あ、ノウヤさんにモネさん」
野矢(のうや):「あ、ウカイ。お疲れ~」
萌寧(もね):「ウカイさん。こんにちは」
海貝(うかい):「お二人とも、ハルヤちゃん見てませんか?」
野矢(のうや):「ハルヤちゃん?見てないな~、モネは知ってる?」
萌寧(もね):「いえ。今日は一度も」
海貝(うかい):「そうですか…。ん~、どこ行っちゃったんだろ…?」
萌寧(もね):「珍しいですね。ハルヤさん几帳面ですから、どこかへ行く時は必ず声をかけてくださるんですが…」
野矢(のうや):「それもそうだねぇ」
海貝(うかい):「あ。お話なさってたんですよね?邪魔しちゃってごめんなさい」
萌寧(もね):「大丈夫ですよ。マリさんの話について、ノウヤさんと意見交換してただけですから」
海貝(うかい):「マリさんって…あの、皇から来たっていう人ですか?」
野矢(のうや):「うん。あのマリって子が皇で頼りにしてたのが、ナオエツって言うんだけどさ。そのナオエツが、うちの密偵(みってい)だったんだよね」
海貝(うかい):「密偵?じゃあそのマリさんて人も…」
野矢(のうや):「あー違う違う。あの子はナオエツが皇に潜入捜査に行ってから拾った子らしいよ。
野矢(のうや):ナオエツがいつか榊に連れてこようと思って、姉弟揃って面倒見てたらしい」
海貝(うかい):「姉弟…てことは、弟さんはまだ皇に?」
萌寧(もね):「…いえ、亡くなりました」
海貝(うかい):「え…」
野矢(のうや):「アマツに殺られたらしい。あの子を逃がそうとしたナオエツもその時にね」
萌寧(もね):「…アマツ…姿を見る事は敵いませんでしたが、壁越しでさえ凄まじい威圧感でした…」
海貝(うかい):「そんなに…。今、そのマリさんは…?」
萌寧(もね):「塞ぎこんでいます…。食事も喉を通らない様で…」
野矢(のうや):「まぁ仕方ないね。むしろその状態でよく話してくれたものだよ」
萌寧(もね):「彼女もまた、清き心根の人だったということでしょう。彼…ナオエツを慕っていた様でしたから…」
海貝(うかい):「慕って…それは…」
野矢(のうや):「…ウカイ?なんでそんな顔してるのさ」
海貝(うかい):「っ、なんでもありません…弟と大切な方を一度に亡くしたなんて、悲しすぎるじゃないですかっ!当然の反応ですっ!」
野矢(のうや):「…・・ま、ウカイが仲良くしてあげなよ。支えてくれる人がいれば、そんなに辛いことじゃないよ。
野矢(のうや):それに、この世にいなかったとしても…それまでの繋がりが消えるわけじゃないからさ…」
萌寧(もね):「ノウヤさん……そうですね」
海貝(うかい):「…ノウヤさんに言われなくても、そうします…。ハルヤちゃんと一緒に、笑わせてやりますよ!」
野矢(のうや):「そうそう。その調子」
萌寧(もね):「あ、そういえばノウヤさん。ハルヤさんって過去にマリさんと会ったことがあるんでしょうか?」
野矢(のうや):「え。なんで?」
萌寧(もね):「いえ、マリさんに尋ねられたんですが…榊組で探してるっていう人の特徴が、どう考えてもハルヤさんの事だったもので…」
海貝(うかい):「二人は顔見知りだった、って事ですか?」
萌寧(もね):「偵察に出た際に出会った可能性はあります。ハルヤさんの性格なら、縁(えにし)の方に報告していると思ったのですが…」
野矢(のうや):「いや待って。違う、そうじゃない」
海貝(うかい):「え?どうしたんです?」
野矢(のうや):「…デンヤだ」
萌寧(もね):「デンヤ…?確か、マリさんが弟さんをそう呼んでいた様な…」
野矢(のうや):「(食い気味に)ハルヤちゃんの恋人だよ!前にそんな話になった時に、不自然に話を濁してたんだ。あのハルヤちゃんが、だよ?
野矢(のうや):それに…前にウズキ君の妹が攻め入って来た時、一緒に来た男、デンヤって呼ばれてた!
野矢(のうや):あの時ウズキ君と妹を止めたのは、あの二人だ!」
海貝(うかい):「そんなことって…。待ってください、マリさんがその話をした時、その場にハルヤちゃんはいましたか!?」
萌寧(もね):「いたはずですよ。あの時に居なかったのはモチさんと、彼の指導を任されていたウカイさんだけですから」
海貝(うかい):「ハルヤちゃん…!早く追わないと!!(走り出す)」
野矢(のうや):「ウカイ!?どこに行くんだ!」
海貝(うかい):「ハルヤちゃん、前に言っていたんです!落ち着いたら大切な人と行きたい場所があるって!!」
0:海貝、慌てて飛び出していく。
:
野矢(のうや):「…行っちゃった。なんでそんな慌てて…」
萌寧(もね):「…皇にいた恋人…落ち着いたら…。まさか、敵地の近くなんじゃ…?」
野矢(のうや):「! …あー、まったく!一人で突っ走るなって、いつも言ってるのに!」
萌寧(もね):「私も参ります!」
0:野矢と萌寧、海貝を追って飛び出していく。
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:
海貝(うかい):(タイトルコール)
海貝(うかい):DISTOPIA BREAK Forth『血約』
海貝(うかい):(でぃすとぴあ ぶれいく ふぉーす『けつやく』)
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:【場面変更】皇組拠点付近・絶景
:
春屋(はるや):「…すごく綺麗な場所ですね。貴方が『私に見せたい』ってはしゃいでた理由、やっとわかりましたよ…。
春屋(はるや):でもやられましたね…『一緒に見よう』なんて言うもんだから、すっかりその気でいたのに…結局、私一人で来ちゃいました…。
春屋(はるや):
春屋(はるや):ネックレス…お姉さんから預かりましたよ。…酷いじゃないですか、せっかくお揃いだったのに、返されたらお揃いじゃなくなっちゃいますよ。
春屋(はるや):何より……こんな形見みたいに渡されたって、嬉しくないです…。
春屋(はるや):
春屋(はるや):…なんなんですか。本当に、貴方はなんなのですか…。
春屋(はるや):身勝手な約束をして…声も届かぬ遠い空から『死んでごめんなさい』じゃないでしょうに…!
春屋(はるや):…果たしてくださいよ…っ!男が一度、言ったのだからっ…『必ず一緒に』と、言ったのだから……」
0:春屋、その場で泣き崩れる。
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0:その場に現れる悪間憑。
悪間憑(あまつ):「あらあら…?こんなところに可愛いお嬢さんが…珍しいこともあるのねぇ」
春屋(はるや):「! …どなたですか?」
悪間憑(あまつ):「名乗るほどのものではないわ?それよりどうしたの?こんなに泣いてしまって、可哀想に…」
春屋(はるや):「(食い気味に)近付かないでください」
悪間憑(あまつ):「…怯えているのね?」
春屋(はるや):「…もう一度聞きます。貴方は誰ですか?」
悪間憑(あまつ):「ふふっ、私…?私はアマツ。皇組の、アマツ…」
春屋(はるや):「アマ、ツ…?お前が……っ、お前がデンヤさんを殺したのか!」
悪間憑(あまつ):「デンヤ?だぁれ、それ?」
春屋(はるや):「っ、ふざけるな!」
悪間憑(あまつ):「うーん…あぁ!デンヤってあれか?あの役に立たない、木偶(でく)のことか」
春屋(はるや):「うるさい!あの人の優しさをわからないお前が…あの人を語るな!!」
悪間憑(あまつ):「なんだ?そんなに怖い顔して…まさか怒っているのか?」
春屋(はるや):「…黙れ…黙れ黙れぇ!」
悪間憑(あまつ):「ふふふ、もっと語ってみろよ。…もう二度と戻らない、くだらない木偶との思い出話をな」
春屋(はるや):「っ!あの人をっ、馬鹿にするな!!」
悪間憑(あまつ):「はぁ、まともに会話もできないのね?…これだから弱い人間は…」
春屋(はるや):「このっ…!」
悪間憑(あまつ):「ふふふっ、ふふ…あはっ、あははは!あははははははははは!(大笑い)」
春屋(はるや):「!?」
悪間憑(あまつ):「…木偶と一緒にいるやつも、また木偶か。そんなに寂しいなら、貴様も今すぐにそいつの元に送ってやろう…」
春屋(はるや):「っっ!…死ぬのは、お前の方だ!!」
:
:【SE】鷹の鳴き声
春屋(はるや):「(詠唱)『広い荒野に飛び立つ鷹の様に、命を持って飛び立ちなさい。』
春屋(はるや):
春屋(はるや):終伸展解放 春季永遠恋命 鷹眼千万
春屋(はるや):(しゅうしんてんかいほう、しゅんきとわれんめい、たかめせんばん)」
悪間憑(あまつ):「ほう?美しいな……反吐(へど)が出る。
悪間憑(あまつ):
悪間憑(あまつ):伸展解放 赤凛一躑
悪間憑(あまつ):(しんてんかいほう、せきりんいってき)」
春屋(はるや):「ぐっ…」
悪間憑(あまつ):「他愛も無い…所詮この程度か」
春屋(はるや):「っ…お前が、お前がぁぁぁぁぁぁ!」
:
:【時間経過】海貝・野矢・萌寧、春屋と悪間憑の元に到着
:
海貝(うかい):「ハルヤちゃん!!」
悪間憑(あまつ):「ふん…思ったよりもつまらなかったな」
春屋(はるや):「か、は…」
萌寧(もね):「そんな…ハルヤさん!」
野矢(のうや):「…アマツ…っ!」
海貝(うかい):「こ、の…!よくもおおおおおお!」
0:悪間憑に飛びかかろうとした海貝、腕を引き止める野矢。
野矢(のうや):「(被せて)やめろ!ウカイ!」
海貝(うかい):「っ!どうして止めるんですか!?」
野矢(のうや):「お前じゃ勝てない」
海貝(うかい):「じゃあ!ハルヤちゃんを見捨てろって言うんですか!?」
野矢(のうや):「いや、俺がいく」
萌寧(もね):「ノウヤさん!?何を言っているんです!貴方は戦えないではないですか!!」
海貝(うかい):「そうです!いつも私に任せてばかりなんだから、今回だって…」
野矢(のうや):「(声を荒げる)引けと言ってるんだ!!」
海貝(うかい):「っ!?」
萌寧(もね):「ノウヤさん…」
野矢(のうや):「(口調が戻り)大丈夫、僕がいく…ほら。たまにはちゃんとお仕事しないと、怒られちゃうからさ?
野矢(のうや):モネも。ここは僕に任せてよ」
悪間憑(あまつ):「逃がすとでも?」
0:海貝を狙う悪間憑。野矢がそれを防ぐ。
野矢(のうや):「させないよ?僕の大切な仲間なんだ。手出しはさせない」
悪間憑(あまつ):「ほざけ…先に殺してくれるわ。
悪間憑(あまつ):伸展解放 赤凜一擲
悪間憑(あまつ):(しんてんかいほう、せきりんいってき)」
野矢(のうや):「チッ…」
悪間憑(あまつ):「どうした?でかい口を叩いた割りに、受けもしないのか?」
野矢(のうや):「はっ!」
悪間憑(あまつ):「なんだ?遊んでいるのか?」
野矢(のうや):「ふっ…!」
悪間憑(あまつ):「はぁ!」
野矢(のうや):「ぐっ…」
悪間憑(あまつ):「まだだ」
野矢(のうや):「うぐ…がはっ…」
萌寧(もね):「ノウヤさん!」
悪間憑(あまつ):「…貴様。馬鹿にしているのか…?」
野矢(のうや):「はぁ…はぁ…」
海貝(うかい):「ノウヤさん…?なんで伸展を打たないんです!」
萌寧(もね):「! (ウカイに)やめなさい!」
海貝(うかい):「! モネさん…?」
萌寧(もね):「ノウヤさんを…けしかけないで下さい…っ!」
悪間憑(あまつ):「…くだらん。仕舞いだ」
海貝(うかい):「ノウヤさん!!
海貝(うかい):伸展解放 薔!(しんてんかいほう、みずたで)」
悪間憑(あまつ):「チッ…小賢しい…。伸展…ぐっ!?」
0:海貝に狙いを定めた悪間憑を、野矢が突き飛ばす。
野矢(のうや):「…ウカイに手を出すな。お前の相手は、俺だ…」
悪間憑(あまつ):「調子に乗るなよ…?伸展も使えない分際で…」
野矢(のうや):「(食い気味に)使えるさ」
萌寧(もね):「ノウヤさん!?」
野矢(のうや):「アマツ…お前が強い事は知っている。誰がどう見たって、このザマだ…俺が勝てるわけがないと思うだろう。
野矢(のうや):だが俺はここで引くわけにはいかない。だから…俺は打つ」
萌寧(もね):「ノウヤさん!いけませんっ!やめてください!」
海貝(うかい):「モネさん…?」
:
:【SE】鈴の音
野矢(のうや):「(詠唱)『楽に死ねるさ』」
萌寧(もね):「その技を使ってはいけません!」
野矢(のうや):「(詠唱)『ここで死のうと、何処で死のうと』」
萌寧(もね):「それを使ってしまったら、貴方は…!」
野矢(のうや):「(詠唱)『君はもう、夢の中なのだから』」
萌寧(もね):「死んでしまいます!!」
海貝(うかい):「…え?」
野矢(のうや):「(詠唱)『…魅せろ。』
:【SE】鈴の音、再度(『魅せろ』被せても良い)
野矢(のうや):「終伸展解放 遠夢華蝋千人六華 静空夜血約陣
野矢(のうや):(しゅうしんてんかいほう、えんむかろう せんじんろっか、せいくう やけつやくじん)」
0:唱え終わると共に、抗えない力が空から降り注ぎ、悪間憑を地面へと押し付ける。
悪間憑(あまつ):「がはっ!」
海貝(うかい):「(呆然と)……すごい…」
萌寧(もね):「やめてください、ノウヤさん!貴方の終伸展は、貴方の血を代償にするもの!」
悪間憑(あまつ):「ぐ、あ…あぁ…」
萌寧(もね):「何のために縁(えにし)の方々が、貴方を戦闘から遠ざけていたのか、わからないのですか!!!」
海貝(うかい):「だから…いつも私とペアで…?伸展を使わなくてもいい様に…?」
萌寧(もね):「そうです!!だからこうして止めているのでしょう!?」
海貝(うかい):「そんな……」
萌寧(もね):「やめてください…私はもう…仲間を見送るのは、ご免です…!」
野矢(のうや):「…二人とも、心配性だなぁ」
海貝(うかい):「ノウヤさん!」
野矢(のうや):「僕は大丈夫だから、早くこの場を離れてよ。このままじゃ二人がちゃんと逃げられるか心配で、僕まで逃げられないじゃないか」
海貝(うかい):「…私、貴方のこと良く知りもしないであんなこと…っ!」
野矢(のうや):「(食い気味に)ウカイ?別に君のせいじゃないよ。僕が隠してただけだからさ」
海貝(うかい):「っ…はい…」
野矢(のうや):「ねぇウカイ、お願い。モネを連れて、ここから逃げて?
野矢(のうや):大丈夫。僕だって死ぬのは嫌だもん、ちゃんと機を見て逃げるつもりだから」
海貝(うかい):「…信じて、いいんですよね?」
野矢(のうや):「当然。僕が嘘ついたこと、一度もないでしょ?」
海貝(うかい):「(少し笑って)…そうですね。
海貝(うかい):モネさん、行きましょう。私たちがいつまでもここにいたら、邪魔になります」
萌寧(もね):「……姉さんとの約束を違えたら…私、貴方を許しませんから…!」
0:海貝・萌寧、その場を後にする。
野矢(のうや):「(呟く様に)本当に…君たち姉妹は、そっくりだね…」
:
:【場面変更】榊組までの帰路・海貝と萌寧
:
0:しばらく走り続けた後、足を緩め歩き出す二人。
海貝(うかい):「はぁ…はぁ…」
萌寧(もね):「はぁ…はぁ…っ、ノウヤさん…一人で逃げられるでしょうか?」
海貝(うかい):「…大丈夫ですよ。あの人の逃げ足が速いの、モネさんだって知ってるでしょう?」
萌寧(もね):「…そう、ですね……」
海貝(うかい):「…モネさんは、ノウヤさんの伸展が…あぁいう物だって、知ってたんですね」
萌寧(もね):「えぇ…」
海貝(うかい):「私、全然知りませんでした…あの人があんなすごい技使えることも、その技があの人の体を蝕む代物(しろもの)だってことも…」
萌寧(もね):「…私もですよ。私もあの時、初めて知ったんです」
海貝(うかい):「あの時…?」
萌寧(もね):「…ウカイさん。貴方はノウヤさんをどう思っていますか?」
海貝(うかい):「どう、って…。そうですね…正直、よくわからないです。
海貝(うかい):いつもヘラヘラしてるのに、どこか勘が鋭くて…。縁(えにし)っていう大きな立場なのに、私みたいな生意気な後輩にいじられても笑っていて…強くて優しくて暖かくて…。
海貝(うかい):上手く言えないですけど…憧れています。
海貝(うかい):私が今より力をつけて強くなれた時…あの人みたいになりたいと、そう思う程に」
萌寧(もね):「…そうですか。昔、貴方と同じことを言った人がいました。
萌寧(もね):彼女は言葉使いこそ丁寧でしたが、頑固で短気で融通が効かなくて…今思えば、色々な人から怖がられてたかも知れませんね」
海貝(うかい):「丁寧で、頑固で短気…なんだか、モネさんに似てますね。その人」
萌寧(もね):「あら、酷いですね?私もそう思われているんですか?」
海貝(うかい):「あ…それは、その…」
萌寧(もね):「…ふふ、冗談ですよ。でも、そうですね…似てはいるのでしょうね。彼女は、私の姉でしたから」
海貝(うかい):「モネさんの…。お姉さん、いらしたんですね?」
萌寧(もね):「えぇ…とても強い人でした。なんて言ったって、縁(えにし)に籍を置いていたんですからね」
海貝(うかい):「縁(えにし)に?すごい!…あれ、でも…」
萌寧(もね):「亡くなりました。ノウヤさんを庇って…」
海貝(うかい):「え…」
萌寧(もね):「あの頃の彼は伸展こそ使ってはいましたが、能力の代償について隠していました。使用後の疲労は顕著(けんちょ)でしたが、あの威力です…誰も気にかけなかったんです。
萌寧(もね):それに気付いたのが、私の姉でした。彼を叱咤(しった)しつつも献身的に支え、そしていつしか想い合う仲に…」
海貝(うかい):「…それなのに、なんで…」
萌寧(もね):「その頃は榊と皇に限らず、至るところで様々な戦闘が行われていました。当然、縁(えにし)の二人は敵地に赴き戦う日々…。ツケが回ってきたのでしょう。ノウヤさんが倒れ、彼を庇った姉は致命傷を受けました」
海貝(うかい):「…っ!」
萌寧(もね):「拠点に戻ってきた頃には、辛うじて息がある状態…。私は姉に縋りついて泣きました。ノウヤさんも…」
海貝(うかい):「(泣き始める)」
萌寧(もね):「そんな私たちに、姉は言ったんです。『生きて、どうか平和な世を作って欲しい。私もその平和な世に少しでも力添え出来たのだと、それを証明して欲しい。だから生きて、生き抜いて』と」
海貝(うかい):「だからっ…ノウヤさんは、ずっと…!」
萌寧(もね):「えぇ…。私の伸展が解放されたのも、その時でした。…皮肉ですよね、姉が死んだのがきっかけで、力が解放されるなんて…」
海貝(うかい):「…ごめんなさい…ごめん、なさい…」
萌寧(もね):「…泣かないでください。彼は戻ってくると言ったではありませんか…貴方は、それを信じたのでしょう?
萌寧(もね):私もまた…それを信じたから、ここにいるのです。だから待ちましょう?彼が疲れて帰ってきた時に、たくさん褒めて労わなくては」
海貝(うかい):「…っはい…」
:
:【場面変更】皇組拠点付近・野矢と悪間憑
:
野矢(のうや):「…っ、はぁ…は、あ……。そろそろ…逃げられた、かな…?
野矢(のうや):ぐっ!…はは、予想以上に…血を使いすぎたな…」
0:静空夜血約陣を解除し、悪間憑の様子を見る。
野矢(のうや):「…どうにか、倒せたみたいだな…良かった…。さて僕も帰らないと…」
悪間憑(あまつ):「目障りだな。小僧」
野矢(のうや):「がふっ…?!」
悪間憑(あまつ):「よもやここまでの使い手が榊にいたとはな」
野矢(のうや):「…ははっ、まじかよ…冗談、だろ…?」
悪間憑(あまつ):「私を楽しませてくれた褒美だ、くれてやる。
悪間憑(あまつ):
悪間憑(あまつ):(詠唱)『恐怖こそ自由、我れこそが勝者、それ以外何もない、滅びるが良いぞ。』
悪間憑(あまつ):
悪間憑(あまつ):終伸展解放 恐鳴域韋駄虎 赤凛一擲
悪間憑(あまつ):(しゅうしんてんかいほう、きょうめいいきいだとら、せきりんいってき)」
:
野矢(のうや):「(心の中で)最後の最後に…嘘、ついちゃったな…。ごめん…」
:
悪間憑(あまつ):「……くっ…ごほっ!
悪間憑(あまつ):くそっ!忌々しい…!ここまで苦戦を強いられるとは…。
悪間憑(あまつ):だがまぁ、これでいい…縁(えにし)のひとりを屠れたのだ。腕の一本位くれてやろう。
悪間憑(あまつ):くくくく……はっはははははっははは!!!」
:
:
0:次回予告
春屋(はるや):アマツの手にかかり、デンヤの後を追うことになったハルヤ。
春屋(はるや):ノウヤもまた、過去に愛した女との約束を果たせず、散っていく。
春屋(はるや):あまりにも強大な敵・アマツを止められる者は現れるのか…?
春屋(はるや):
春屋(はるや):次回。DISTOPIA BREAK Final『激闘』
春屋(はるや):(でぃすとぴあ ぶれいく ふぁいなる『げきとう』)
0:続く
DISTOPIA BREAK:force『血約』
:
:登場人物紹介(マーカー用)
春屋(はるや):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
春屋(はるや):前回、悪間憑に敗れた田夜と恋仲だった。
春屋(はるや):伸展・鷹眼千万(しんてん・たかめせんばん)の解放者。
海貝(うかい):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
海貝(うかい):春屋と歳も近く、仲が良い。野矢に憧れている。
海貝(うかい):伸展・薔(しんてん・みずたで)の解放者。
野矢(のうや):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
野矢(のうや):一見軽いが仲間想いで頭も切れる実力者。辛い過去を持つ。
野矢(のうや):伸展・静空夜血約陣(しんてん・せいくうやけつやくじん)の解放者。
萌寧(もね):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
萌寧(もね):優しく凜とした女性。野矢の伸展と、それにまつわる過去を知っている。
萌寧(もね):伸展・天泣薊(しんてん・てんきゅうあざみ)の解放者。
悪間憑(あまつ):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。
悪間憑(あまつ):残酷で残忍。前回、尚悦と田夜を殺した。
悪間憑(あまつ):伸展・赤凛一擲(しんてん・せきりんいってき)の解放者。
:
:
0:シナリオスタート
:
:【場面】榊組(さかきぐみ)拠点・一室
:
0:野矢と萌寧が話しているところに海貝がやってくる。
海貝(うかい):「あ、ノウヤさんにモネさん」
野矢(のうや):「あ、ウカイ。お疲れ~」
萌寧(もね):「ウカイさん。こんにちは」
海貝(うかい):「お二人とも、ハルヤちゃん見てませんか?」
野矢(のうや):「ハルヤちゃん?見てないな~、モネは知ってる?」
萌寧(もね):「いえ。今日は一度も」
海貝(うかい):「そうですか…。ん~、どこ行っちゃったんだろ…?」
萌寧(もね):「珍しいですね。ハルヤさん几帳面ですから、どこかへ行く時は必ず声をかけてくださるんですが…」
野矢(のうや):「それもそうだねぇ」
海貝(うかい):「あ。お話なさってたんですよね?邪魔しちゃってごめんなさい」
萌寧(もね):「大丈夫ですよ。マリさんの話について、ノウヤさんと意見交換してただけですから」
海貝(うかい):「マリさんって…あの、皇から来たっていう人ですか?」
野矢(のうや):「うん。あのマリって子が皇で頼りにしてたのが、ナオエツって言うんだけどさ。そのナオエツが、うちの密偵(みってい)だったんだよね」
海貝(うかい):「密偵?じゃあそのマリさんて人も…」
野矢(のうや):「あー違う違う。あの子はナオエツが皇に潜入捜査に行ってから拾った子らしいよ。
野矢(のうや):ナオエツがいつか榊に連れてこようと思って、姉弟揃って面倒見てたらしい」
海貝(うかい):「姉弟…てことは、弟さんはまだ皇に?」
萌寧(もね):「…いえ、亡くなりました」
海貝(うかい):「え…」
野矢(のうや):「アマツに殺られたらしい。あの子を逃がそうとしたナオエツもその時にね」
萌寧(もね):「…アマツ…姿を見る事は敵いませんでしたが、壁越しでさえ凄まじい威圧感でした…」
海貝(うかい):「そんなに…。今、そのマリさんは…?」
萌寧(もね):「塞ぎこんでいます…。食事も喉を通らない様で…」
野矢(のうや):「まぁ仕方ないね。むしろその状態でよく話してくれたものだよ」
萌寧(もね):「彼女もまた、清き心根の人だったということでしょう。彼…ナオエツを慕っていた様でしたから…」
海貝(うかい):「慕って…それは…」
野矢(のうや):「…ウカイ?なんでそんな顔してるのさ」
海貝(うかい):「っ、なんでもありません…弟と大切な方を一度に亡くしたなんて、悲しすぎるじゃないですかっ!当然の反応ですっ!」
野矢(のうや):「…・・ま、ウカイが仲良くしてあげなよ。支えてくれる人がいれば、そんなに辛いことじゃないよ。
野矢(のうや):それに、この世にいなかったとしても…それまでの繋がりが消えるわけじゃないからさ…」
萌寧(もね):「ノウヤさん……そうですね」
海貝(うかい):「…ノウヤさんに言われなくても、そうします…。ハルヤちゃんと一緒に、笑わせてやりますよ!」
野矢(のうや):「そうそう。その調子」
萌寧(もね):「あ、そういえばノウヤさん。ハルヤさんって過去にマリさんと会ったことがあるんでしょうか?」
野矢(のうや):「え。なんで?」
萌寧(もね):「いえ、マリさんに尋ねられたんですが…榊組で探してるっていう人の特徴が、どう考えてもハルヤさんの事だったもので…」
海貝(うかい):「二人は顔見知りだった、って事ですか?」
萌寧(もね):「偵察に出た際に出会った可能性はあります。ハルヤさんの性格なら、縁(えにし)の方に報告していると思ったのですが…」
野矢(のうや):「いや待って。違う、そうじゃない」
海貝(うかい):「え?どうしたんです?」
野矢(のうや):「…デンヤだ」
萌寧(もね):「デンヤ…?確か、マリさんが弟さんをそう呼んでいた様な…」
野矢(のうや):「(食い気味に)ハルヤちゃんの恋人だよ!前にそんな話になった時に、不自然に話を濁してたんだ。あのハルヤちゃんが、だよ?
野矢(のうや):それに…前にウズキ君の妹が攻め入って来た時、一緒に来た男、デンヤって呼ばれてた!
野矢(のうや):あの時ウズキ君と妹を止めたのは、あの二人だ!」
海貝(うかい):「そんなことって…。待ってください、マリさんがその話をした時、その場にハルヤちゃんはいましたか!?」
萌寧(もね):「いたはずですよ。あの時に居なかったのはモチさんと、彼の指導を任されていたウカイさんだけですから」
海貝(うかい):「ハルヤちゃん…!早く追わないと!!(走り出す)」
野矢(のうや):「ウカイ!?どこに行くんだ!」
海貝(うかい):「ハルヤちゃん、前に言っていたんです!落ち着いたら大切な人と行きたい場所があるって!!」
0:海貝、慌てて飛び出していく。
:
野矢(のうや):「…行っちゃった。なんでそんな慌てて…」
萌寧(もね):「…皇にいた恋人…落ち着いたら…。まさか、敵地の近くなんじゃ…?」
野矢(のうや):「! …あー、まったく!一人で突っ走るなって、いつも言ってるのに!」
萌寧(もね):「私も参ります!」
0:野矢と萌寧、海貝を追って飛び出していく。
:
:
海貝(うかい):(タイトルコール)
海貝(うかい):DISTOPIA BREAK Forth『血約』
海貝(うかい):(でぃすとぴあ ぶれいく ふぉーす『けつやく』)
:
:
:【場面変更】皇組拠点付近・絶景
:
春屋(はるや):「…すごく綺麗な場所ですね。貴方が『私に見せたい』ってはしゃいでた理由、やっとわかりましたよ…。
春屋(はるや):でもやられましたね…『一緒に見よう』なんて言うもんだから、すっかりその気でいたのに…結局、私一人で来ちゃいました…。
春屋(はるや):
春屋(はるや):ネックレス…お姉さんから預かりましたよ。…酷いじゃないですか、せっかくお揃いだったのに、返されたらお揃いじゃなくなっちゃいますよ。
春屋(はるや):何より……こんな形見みたいに渡されたって、嬉しくないです…。
春屋(はるや):
春屋(はるや):…なんなんですか。本当に、貴方はなんなのですか…。
春屋(はるや):身勝手な約束をして…声も届かぬ遠い空から『死んでごめんなさい』じゃないでしょうに…!
春屋(はるや):…果たしてくださいよ…っ!男が一度、言ったのだからっ…『必ず一緒に』と、言ったのだから……」
0:春屋、その場で泣き崩れる。
:
0:その場に現れる悪間憑。
悪間憑(あまつ):「あらあら…?こんなところに可愛いお嬢さんが…珍しいこともあるのねぇ」
春屋(はるや):「! …どなたですか?」
悪間憑(あまつ):「名乗るほどのものではないわ?それよりどうしたの?こんなに泣いてしまって、可哀想に…」
春屋(はるや):「(食い気味に)近付かないでください」
悪間憑(あまつ):「…怯えているのね?」
春屋(はるや):「…もう一度聞きます。貴方は誰ですか?」
悪間憑(あまつ):「ふふっ、私…?私はアマツ。皇組の、アマツ…」
春屋(はるや):「アマ、ツ…?お前が……っ、お前がデンヤさんを殺したのか!」
悪間憑(あまつ):「デンヤ?だぁれ、それ?」
春屋(はるや):「っ、ふざけるな!」
悪間憑(あまつ):「うーん…あぁ!デンヤってあれか?あの役に立たない、木偶(でく)のことか」
春屋(はるや):「うるさい!あの人の優しさをわからないお前が…あの人を語るな!!」
悪間憑(あまつ):「なんだ?そんなに怖い顔して…まさか怒っているのか?」
春屋(はるや):「…黙れ…黙れ黙れぇ!」
悪間憑(あまつ):「ふふふ、もっと語ってみろよ。…もう二度と戻らない、くだらない木偶との思い出話をな」
春屋(はるや):「っ!あの人をっ、馬鹿にするな!!」
悪間憑(あまつ):「はぁ、まともに会話もできないのね?…これだから弱い人間は…」
春屋(はるや):「このっ…!」
悪間憑(あまつ):「ふふふっ、ふふ…あはっ、あははは!あははははははははは!(大笑い)」
春屋(はるや):「!?」
悪間憑(あまつ):「…木偶と一緒にいるやつも、また木偶か。そんなに寂しいなら、貴様も今すぐにそいつの元に送ってやろう…」
春屋(はるや):「っっ!…死ぬのは、お前の方だ!!」
:
:【SE】鷹の鳴き声
春屋(はるや):「(詠唱)『広い荒野に飛び立つ鷹の様に、命を持って飛び立ちなさい。』
春屋(はるや):
春屋(はるや):終伸展解放 春季永遠恋命 鷹眼千万
春屋(はるや):(しゅうしんてんかいほう、しゅんきとわれんめい、たかめせんばん)」
悪間憑(あまつ):「ほう?美しいな……反吐(へど)が出る。
悪間憑(あまつ):
悪間憑(あまつ):伸展解放 赤凛一躑
悪間憑(あまつ):(しんてんかいほう、せきりんいってき)」
春屋(はるや):「ぐっ…」
悪間憑(あまつ):「他愛も無い…所詮この程度か」
春屋(はるや):「っ…お前が、お前がぁぁぁぁぁぁ!」
:
:【時間経過】海貝・野矢・萌寧、春屋と悪間憑の元に到着
:
海貝(うかい):「ハルヤちゃん!!」
悪間憑(あまつ):「ふん…思ったよりもつまらなかったな」
春屋(はるや):「か、は…」
萌寧(もね):「そんな…ハルヤさん!」
野矢(のうや):「…アマツ…っ!」
海貝(うかい):「こ、の…!よくもおおおおおお!」
0:悪間憑に飛びかかろうとした海貝、腕を引き止める野矢。
野矢(のうや):「(被せて)やめろ!ウカイ!」
海貝(うかい):「っ!どうして止めるんですか!?」
野矢(のうや):「お前じゃ勝てない」
海貝(うかい):「じゃあ!ハルヤちゃんを見捨てろって言うんですか!?」
野矢(のうや):「いや、俺がいく」
萌寧(もね):「ノウヤさん!?何を言っているんです!貴方は戦えないではないですか!!」
海貝(うかい):「そうです!いつも私に任せてばかりなんだから、今回だって…」
野矢(のうや):「(声を荒げる)引けと言ってるんだ!!」
海貝(うかい):「っ!?」
萌寧(もね):「ノウヤさん…」
野矢(のうや):「(口調が戻り)大丈夫、僕がいく…ほら。たまにはちゃんとお仕事しないと、怒られちゃうからさ?
野矢(のうや):モネも。ここは僕に任せてよ」
悪間憑(あまつ):「逃がすとでも?」
0:海貝を狙う悪間憑。野矢がそれを防ぐ。
野矢(のうや):「させないよ?僕の大切な仲間なんだ。手出しはさせない」
悪間憑(あまつ):「ほざけ…先に殺してくれるわ。
悪間憑(あまつ):伸展解放 赤凜一擲
悪間憑(あまつ):(しんてんかいほう、せきりんいってき)」
野矢(のうや):「チッ…」
悪間憑(あまつ):「どうした?でかい口を叩いた割りに、受けもしないのか?」
野矢(のうや):「はっ!」
悪間憑(あまつ):「なんだ?遊んでいるのか?」
野矢(のうや):「ふっ…!」
悪間憑(あまつ):「はぁ!」
野矢(のうや):「ぐっ…」
悪間憑(あまつ):「まだだ」
野矢(のうや):「うぐ…がはっ…」
萌寧(もね):「ノウヤさん!」
悪間憑(あまつ):「…貴様。馬鹿にしているのか…?」
野矢(のうや):「はぁ…はぁ…」
海貝(うかい):「ノウヤさん…?なんで伸展を打たないんです!」
萌寧(もね):「! (ウカイに)やめなさい!」
海貝(うかい):「! モネさん…?」
萌寧(もね):「ノウヤさんを…けしかけないで下さい…っ!」
悪間憑(あまつ):「…くだらん。仕舞いだ」
海貝(うかい):「ノウヤさん!!
海貝(うかい):伸展解放 薔!(しんてんかいほう、みずたで)」
悪間憑(あまつ):「チッ…小賢しい…。伸展…ぐっ!?」
0:海貝に狙いを定めた悪間憑を、野矢が突き飛ばす。
野矢(のうや):「…ウカイに手を出すな。お前の相手は、俺だ…」
悪間憑(あまつ):「調子に乗るなよ…?伸展も使えない分際で…」
野矢(のうや):「(食い気味に)使えるさ」
萌寧(もね):「ノウヤさん!?」
野矢(のうや):「アマツ…お前が強い事は知っている。誰がどう見たって、このザマだ…俺が勝てるわけがないと思うだろう。
野矢(のうや):だが俺はここで引くわけにはいかない。だから…俺は打つ」
萌寧(もね):「ノウヤさん!いけませんっ!やめてください!」
海貝(うかい):「モネさん…?」
:
:【SE】鈴の音
野矢(のうや):「(詠唱)『楽に死ねるさ』」
萌寧(もね):「その技を使ってはいけません!」
野矢(のうや):「(詠唱)『ここで死のうと、何処で死のうと』」
萌寧(もね):「それを使ってしまったら、貴方は…!」
野矢(のうや):「(詠唱)『君はもう、夢の中なのだから』」
萌寧(もね):「死んでしまいます!!」
海貝(うかい):「…え?」
野矢(のうや):「(詠唱)『…魅せろ。』
:【SE】鈴の音、再度(『魅せろ』被せても良い)
野矢(のうや):「終伸展解放 遠夢華蝋千人六華 静空夜血約陣
野矢(のうや):(しゅうしんてんかいほう、えんむかろう せんじんろっか、せいくう やけつやくじん)」
0:唱え終わると共に、抗えない力が空から降り注ぎ、悪間憑を地面へと押し付ける。
悪間憑(あまつ):「がはっ!」
海貝(うかい):「(呆然と)……すごい…」
萌寧(もね):「やめてください、ノウヤさん!貴方の終伸展は、貴方の血を代償にするもの!」
悪間憑(あまつ):「ぐ、あ…あぁ…」
萌寧(もね):「何のために縁(えにし)の方々が、貴方を戦闘から遠ざけていたのか、わからないのですか!!!」
海貝(うかい):「だから…いつも私とペアで…?伸展を使わなくてもいい様に…?」
萌寧(もね):「そうです!!だからこうして止めているのでしょう!?」
海貝(うかい):「そんな……」
萌寧(もね):「やめてください…私はもう…仲間を見送るのは、ご免です…!」
野矢(のうや):「…二人とも、心配性だなぁ」
海貝(うかい):「ノウヤさん!」
野矢(のうや):「僕は大丈夫だから、早くこの場を離れてよ。このままじゃ二人がちゃんと逃げられるか心配で、僕まで逃げられないじゃないか」
海貝(うかい):「…私、貴方のこと良く知りもしないであんなこと…っ!」
野矢(のうや):「(食い気味に)ウカイ?別に君のせいじゃないよ。僕が隠してただけだからさ」
海貝(うかい):「っ…はい…」
野矢(のうや):「ねぇウカイ、お願い。モネを連れて、ここから逃げて?
野矢(のうや):大丈夫。僕だって死ぬのは嫌だもん、ちゃんと機を見て逃げるつもりだから」
海貝(うかい):「…信じて、いいんですよね?」
野矢(のうや):「当然。僕が嘘ついたこと、一度もないでしょ?」
海貝(うかい):「(少し笑って)…そうですね。
海貝(うかい):モネさん、行きましょう。私たちがいつまでもここにいたら、邪魔になります」
萌寧(もね):「……姉さんとの約束を違えたら…私、貴方を許しませんから…!」
0:海貝・萌寧、その場を後にする。
野矢(のうや):「(呟く様に)本当に…君たち姉妹は、そっくりだね…」
:
:【場面変更】榊組までの帰路・海貝と萌寧
:
0:しばらく走り続けた後、足を緩め歩き出す二人。
海貝(うかい):「はぁ…はぁ…」
萌寧(もね):「はぁ…はぁ…っ、ノウヤさん…一人で逃げられるでしょうか?」
海貝(うかい):「…大丈夫ですよ。あの人の逃げ足が速いの、モネさんだって知ってるでしょう?」
萌寧(もね):「…そう、ですね……」
海貝(うかい):「…モネさんは、ノウヤさんの伸展が…あぁいう物だって、知ってたんですね」
萌寧(もね):「えぇ…」
海貝(うかい):「私、全然知りませんでした…あの人があんなすごい技使えることも、その技があの人の体を蝕む代物(しろもの)だってことも…」
萌寧(もね):「…私もですよ。私もあの時、初めて知ったんです」
海貝(うかい):「あの時…?」
萌寧(もね):「…ウカイさん。貴方はノウヤさんをどう思っていますか?」
海貝(うかい):「どう、って…。そうですね…正直、よくわからないです。
海貝(うかい):いつもヘラヘラしてるのに、どこか勘が鋭くて…。縁(えにし)っていう大きな立場なのに、私みたいな生意気な後輩にいじられても笑っていて…強くて優しくて暖かくて…。
海貝(うかい):上手く言えないですけど…憧れています。
海貝(うかい):私が今より力をつけて強くなれた時…あの人みたいになりたいと、そう思う程に」
萌寧(もね):「…そうですか。昔、貴方と同じことを言った人がいました。
萌寧(もね):彼女は言葉使いこそ丁寧でしたが、頑固で短気で融通が効かなくて…今思えば、色々な人から怖がられてたかも知れませんね」
海貝(うかい):「丁寧で、頑固で短気…なんだか、モネさんに似てますね。その人」
萌寧(もね):「あら、酷いですね?私もそう思われているんですか?」
海貝(うかい):「あ…それは、その…」
萌寧(もね):「…ふふ、冗談ですよ。でも、そうですね…似てはいるのでしょうね。彼女は、私の姉でしたから」
海貝(うかい):「モネさんの…。お姉さん、いらしたんですね?」
萌寧(もね):「えぇ…とても強い人でした。なんて言ったって、縁(えにし)に籍を置いていたんですからね」
海貝(うかい):「縁(えにし)に?すごい!…あれ、でも…」
萌寧(もね):「亡くなりました。ノウヤさんを庇って…」
海貝(うかい):「え…」
萌寧(もね):「あの頃の彼は伸展こそ使ってはいましたが、能力の代償について隠していました。使用後の疲労は顕著(けんちょ)でしたが、あの威力です…誰も気にかけなかったんです。
萌寧(もね):それに気付いたのが、私の姉でした。彼を叱咤(しった)しつつも献身的に支え、そしていつしか想い合う仲に…」
海貝(うかい):「…それなのに、なんで…」
萌寧(もね):「その頃は榊と皇に限らず、至るところで様々な戦闘が行われていました。当然、縁(えにし)の二人は敵地に赴き戦う日々…。ツケが回ってきたのでしょう。ノウヤさんが倒れ、彼を庇った姉は致命傷を受けました」
海貝(うかい):「…っ!」
萌寧(もね):「拠点に戻ってきた頃には、辛うじて息がある状態…。私は姉に縋りついて泣きました。ノウヤさんも…」
海貝(うかい):「(泣き始める)」
萌寧(もね):「そんな私たちに、姉は言ったんです。『生きて、どうか平和な世を作って欲しい。私もその平和な世に少しでも力添え出来たのだと、それを証明して欲しい。だから生きて、生き抜いて』と」
海貝(うかい):「だからっ…ノウヤさんは、ずっと…!」
萌寧(もね):「えぇ…。私の伸展が解放されたのも、その時でした。…皮肉ですよね、姉が死んだのがきっかけで、力が解放されるなんて…」
海貝(うかい):「…ごめんなさい…ごめん、なさい…」
萌寧(もね):「…泣かないでください。彼は戻ってくると言ったではありませんか…貴方は、それを信じたのでしょう?
萌寧(もね):私もまた…それを信じたから、ここにいるのです。だから待ちましょう?彼が疲れて帰ってきた時に、たくさん褒めて労わなくては」
海貝(うかい):「…っはい…」
:
:【場面変更】皇組拠点付近・野矢と悪間憑
:
野矢(のうや):「…っ、はぁ…は、あ……。そろそろ…逃げられた、かな…?
野矢(のうや):ぐっ!…はは、予想以上に…血を使いすぎたな…」
0:静空夜血約陣を解除し、悪間憑の様子を見る。
野矢(のうや):「…どうにか、倒せたみたいだな…良かった…。さて僕も帰らないと…」
悪間憑(あまつ):「目障りだな。小僧」
野矢(のうや):「がふっ…?!」
悪間憑(あまつ):「よもやここまでの使い手が榊にいたとはな」
野矢(のうや):「…ははっ、まじかよ…冗談、だろ…?」
悪間憑(あまつ):「私を楽しませてくれた褒美だ、くれてやる。
悪間憑(あまつ):
悪間憑(あまつ):(詠唱)『恐怖こそ自由、我れこそが勝者、それ以外何もない、滅びるが良いぞ。』
悪間憑(あまつ):
悪間憑(あまつ):終伸展解放 恐鳴域韋駄虎 赤凛一擲
悪間憑(あまつ):(しゅうしんてんかいほう、きょうめいいきいだとら、せきりんいってき)」
:
野矢(のうや):「(心の中で)最後の最後に…嘘、ついちゃったな…。ごめん…」
:
悪間憑(あまつ):「……くっ…ごほっ!
悪間憑(あまつ):くそっ!忌々しい…!ここまで苦戦を強いられるとは…。
悪間憑(あまつ):だがまぁ、これでいい…縁(えにし)のひとりを屠れたのだ。腕の一本位くれてやろう。
悪間憑(あまつ):くくくく……はっはははははっははは!!!」
:
:
0:次回予告
春屋(はるや):アマツの手にかかり、デンヤの後を追うことになったハルヤ。
春屋(はるや):ノウヤもまた、過去に愛した女との約束を果たせず、散っていく。
春屋(はるや):あまりにも強大な敵・アマツを止められる者は現れるのか…?
春屋(はるや):
春屋(はるや):次回。DISTOPIA BREAK Final『激闘』
春屋(はるや):(でぃすとぴあ ぶれいく ふぁいなる『げきとう』)
0:続く