台本概要
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タイトル | DISTOPIA BREAK:Real Final『絶望』 |
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作者名 | NAOKI (@NAOKI24480603) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(不問5) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
万和(ばんな)213年。一人の剣士がある力に目覚めた。 伸展と呼ばれるそれは、人でありながら人を超える大いなる力。 その力は解放される事で、更に強大な力を剣士に与えた。 伸展を扱える者は少し、また少しと増えていき、やがて人々は彼らを、尊敬と畏怖の念を込めて『伸展師(しんてんし)』と呼ぶようになる。 時を経て。伸展解放に次ぐ上位能力『終伸展(しゅうしんてん)』が現れた頃、世にひとつの組織が生まれた。 名を皇組(すめらぎぐみ)。 恐怖こそが誉れ。奪取の先にこそ、誠(まこと)の自由と正義が存在せしと謳う、紫魂(しこん)の夜叉。 彼らは次第に、持たざる者を支配し始めた。 相次ぐ悲惨な戦闘が頻発し、日夜いとも容易く命が失われていく。 そんな中、皇組(すめらぎぐみ)に立ち向かわんとする者たちが現れた。 名を榊組(さかきぐみ)。 正義の名の下に、希望を抱き、世を常闇(とこやみ)から掬いあげんとする、碧き使徒。 異なる思想を掲げた二つの組織は、選ばれし者にのみ許された唯一無二の技=『伸展(しんてん)』を振るい、今時代を動かし始める…。 235 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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望(もち) | 不問 | 57 | 【男性想定】二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 死んだ包水の意思を継ぎ、実兄・鬼沙羅を倒すため立ち上がる。 伸展・梵(しんてん・そよぎ)の解放者。 |
雨点(うずき) | 不問 | 45 | 【男性想定】二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。 長年探していた実妹・雪奈を説得すべく、話し合いに来た。 伸展・鬼轟(しんてん・きごう)の解放者。 |
雪奈(せつな) | 不問 | 46 | 【女性想定】榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 鬼沙羅に惑わされ、実兄の雨点を殺しにやって来た。 伸展・代症剰也(しんてん・だいしょうあまつえ)の解放者。 |
鬼沙羅(きさら) | 不問 | 73 | 【男性想定】榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。 唯一の神(かなえ)。望は実弟。 終伸展・狼狽黒罰(しゅうしんてん・ろうばいこくばち)の解放者。 |
鞠(まり) | 不問 | 22 | 【女性想定】元、皇組(すめらぎぐみ)に属していた伸展師。 悪間憑に実弟と大切な人を殺された。今は榊組に身を寄せている。 伸展・齟齬総殺(しんてん・そごそうさつ)の解放者。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
DISTOPIA BREAK:Real Final『絶望』
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:登場人物紹介(マーカー用)
望(もち):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
望(もち):死んだ包水の意思を継ぎ、実兄・鬼沙羅を倒すため立ち上がる。
望(もち):伸展・梵(しんてん・そよぎ)の解放者。
雨点(うずき):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
雨点(うずき):長年探していた実妹・雪奈を説得すべく、話し合いに来た。
雨点(うずき):伸展・鬼轟(しんてん・きごう)の解放者。
雪奈(せつな):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。
雪奈(せつな):鬼沙羅に惑わされ、実兄の雨点を殺しにやって来た。
雪奈(せつな):伸展・代症剰也(しんてん・だいしょうあまつえ)の解放者。
鬼沙羅(きさら):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。
鬼沙羅(きさら):唯一の神(かなえ)。望は実弟。
鬼沙羅(きさら):終伸展・狼狽黒罰(しゅうしんてん・ろうばいこくばち)の解放者。
鞠(まり):元、皇組(すめらぎぐみ)に属していた伸展師。
鞠(まり):悪間憑に実弟と大切な人を殺された。今は榊組に身を寄せている。
鞠(まり):伸展・齟齬総殺(しんてん・そごそうさつ)の解放者。
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0:シナリオスタート
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0:雪奈の回想
雪奈(せつな):「…私は、どうしたらいいのだろう…。私のせいで、デンヤもナオエツさんも…マリさんまでいなくなってしまった…。
雪奈(せつな):ねぇ…どうしたらいいの…?兄さん…」
鬼沙羅(きさら):「セツナ」
雪奈(せつな):「キサラ…さん…」
鬼沙羅(きさら):「聞いたよ。榊組(さかきぐみ)に、お兄さんがいたんだって?」
雪奈(せつな):「…どうして…そのことを…」
鬼沙羅(きさら):「そんなことは、どうでもいいじゃないか。大切なのは…セツナが『憎くて、憎くて堪らない』お兄さんが…敵側にいたってことさ」
雪奈(せつな):「…私、は…あ、兄が…」
鬼沙羅(きさら):「(食い気味に)どうしたの?」
雪奈(せつな):「あ…」
鬼沙羅(きさら):「まさか今更『憎くない』なんて、言うつもり…?あんなに嫌ってたじゃないか。
鬼沙羅(きさら):セツナを捨てて、三人だけで幸せに生きてきたやつらでしょ?何を、遠慮することがあるの?」
雪奈(せつな):「……でも…兄は言いました…。本当は迎えに来てたって…。
雪奈(せつな):私に会えなくて…ずっと、ずっと私の事を…探してくれていたんだって…」
鬼沙羅(きさら):「(被せて)嘘だね」
雪奈(せつな):「っ!?」
鬼沙羅(きさら):「それが本当なら、なんで君は…こんなにも不幸になったんだい?
鬼沙羅(きさら):思い出してごらんよ…。預け先で君が受けた、地獄にも勝る酷い仕打ちを…」
雪奈(せつな):「…それは…」
鬼沙羅(きさら):「少ない食事に、汚い衣服。君が告げる言葉を受け入れず、やつらは君を怒鳴りつけた…。
鬼沙羅(きさら):本当に君が大切なのだとしたら…なんで君は、そんなところに預けられたのかなぁ…?」
雪奈(せつな):「…それ、は…」
鬼沙羅(きさら):「セツナが寒さに震え眠れなかった夜…彼らは仲良く眠りについた。
鬼沙羅(きさら):セツナが空腹でたまらなかったあの時…彼らは暖かい食卓を囲んでいた」
雪奈(せつな):「あ……」
鬼沙羅(きさら):「あの時の辛さは、苦しさは…そんなにすぐ忘れられるものだったのかい?
鬼沙羅(きさら):口ではなんとだって言える。いくらでも…上辺だけの言葉を並べられる…」
雪奈(せつな):「上辺……」
鬼沙羅(きさら):「でも、僕は違う…。辛い境遇にいたセツナを助けてあげたのは…誰だい…?」
雪奈(せつな):「…キサラ、さんです…」
鬼沙羅(きさら):「そうだ。僕は、何もしてくれなかったセツナの家族たちとは違うだろう?
鬼沙羅(きさら):何の力もなく、虚ろな目をしたセツナを救い、育てたのは僕だ。憎い者と戦う力の使い方を教えてあげたのは、僕だ」
雪奈(せつな):「キサラ…さん…」
鬼沙羅(きさら):「ねぇ…セツナ?…お願いがあるんだ」
雪奈(せつな):「お願い…?」
鬼沙羅(きさら):「そう、お願い。セツナを助けてあげた僕の為に…君の憎いお兄さんを…ウズキを殺してきてくれるよね?」
雪奈(せつな):「そんなこと…!」
鬼沙羅(きさら):「(食い気味に)セツナ」
雪奈(せつな):「っ…」
鬼沙羅(きさら):「出来るよね?…セツナ?」
雪奈(せつな):「…はい…。わかり、ました…」
鬼沙羅(きさら):「うん。セツナはいい子だね」
0:回想終わり
:
:
鞠(まり):(タイトルコール)
鞠(まり):DISTOPIA BREAK Real Final『絶望』
鞠(まり):(でぃすとぴあ ぶれいく りある ふぁいなる『ぜつぼう』)
:
:
:【場面】榊組拠点・鞠の部屋
:
雨点(うずき):「(扉をたたく)…マリさん。少しはなにか召し上がらないと…」
鞠(まり):「…食べたくない」
雨点(うずき):「…気持ちが分かるなんて、簡単には言えませんが…そのままでは貴方までどうにかなってしまいます…」
鞠(まり):「…ほっといてくれ」
雨点(うずき):「自暴自棄にならないでください。貴方がそれでは、彼らはあまりにも救われないではないですか…。だから…」
鞠(まり):「…わかってる…そんなことっ、わかってんだよ!!!」
雨点(うずき):「マリさん…」
鞠(まり):「んなことっ…私が…一番わかってんだよ…っ!」
雨点(うずき):「……」
鞠(まり):「(しばらく泣いて)…ごめん。分かってんだ…こんなの、八つ当たりだよな…」
雨点(うずき):「いえ…私も軽率でした。申し訳、ありません」
鞠(まり):「…いや、あんたがいってることは正しいよ。私は二人に…ナオエツさんとデンヤに守られたから、今ここにいるんだ…。
鞠(まり):…デンヤはさ…?昔はそりゃあ弱っちくて、泣き虫でさ…私が守ってやらなきゃって、ずっと思ってた…。
鞠(まり):それがいつの間にか、あんなにかっこよくなっててさ…『今度は俺が守ってやる』だって…っ、ほんっとうに…馬鹿だ!私なんか守って死んで、どうすんだよ!!
鞠(まり):大切な人だっていたんだろ!?なんで、あんなこと…私は、どうすりゃいいんだよ!?一人で残されて…もう、どうしていいかなんか…わからねぇよ…」
雨点(うずき):「…私にも妹がいるんです」
鞠(まり):「……」
雨点(うずき):「幼い頃に生き別れ…きっと生きていると信じ、探し続けてました。
雨点(うずき):けれど、時折ふと思わずにはいられなかった。『もしかしたら、もう…』っ、そう考えるとおかしくなりそうでした。
雨点(うずき):私たちの選択は間違っていたのか?一緒にいるべきだったのでは?あの時、預けるべきではなかったのでは…?」
鞠(まり):「…妹」
雨点(うずき):「…はい。でも、この間ようやく会うことができたんです。私が想像していたよりも、妹は元気そうで…安心しました。…『敵』という事を除けば、ですが…」
鞠(まり):「…じゃあ、あんたがセツナの…?」
雨点(うずき):「ええ、セツナは私の妹です。…本当に嬉しかった!心の中で何度も諦めていた事が、叶ったんですから!
雨点(うずき):…でも、その嬉しさに任せて、私はセツナの気持ちを蔑(ないがし)ろにしました…。今までどんな思いをして過ごしてきたのか…そんなこと一つも考えずに、私の一方的な気持ちで声をかけて…結局、混乱させてしまった…」
鞠(まり):「…そんなの、仕方ねーじゃねーか…ずっと、会いたかったんだろ?」
雨点(うずき):「えぇ…でも、そのせいでセツナは余計に辛い思いをしたかもしれない…!そう考えると…どんな顔でセツナに会えばいいのか、分からないんです…」
鞠(まり):「…は?」
雨点(うずき):「私の存在は、セツナにとって負担にしかならないのではないか…ならばもう、いっそ会わない方が…」
鞠(まり):「(被せて)ふっざけんなよ!!!!!」
0:鞠が雨点に掴みかかる。
雨点(うずき):「ぐっ!?マリ…さん!?なにを…」
鞠(まり):「なに腑抜けたこといってんだテメーは!!どんな顔で会えばいいか分からない!?つべこべ言ってんな!
鞠(まり):お前の妹は、そこにいるんだろ!?話せるんだろ!?お前の手の届くとこにいて!!触れることが、出来るんだろ!?セツナに伝えたい事…いっぱい、あるんじゃねーのかよ!!」
雨点(うずき):「…私は…セツナを諦めたくない…!」
鞠(まり):「…じゃあ、今伝えなきゃどうすんだよ…!次があるかなんて…っ、わかんねぇんだぞ……?」
雨点(うずき):「…マリさん…」
鞠(まり):「…わかったら、さっさと行っちまえ…。…そんで、二人で帰ってこい…」
雨点(うずき):「……はい!ありがとうございます!」
0:雨点、走り去る。
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:【場面】榊と皇、どちらのものでもない、とある領地
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0:雨点と待ち合わせた場所へ到着する
雪奈(せつな):「……こんにちは」
雨点(うずき):「っ!セツナ…?セツナっ、来てくれたのか!?」
雪奈(せつな):「……」
雨点(うずき):「良かった…ありがとう!あの時は取り乱してすまない。もう一度ちゃんと話したかったんだ!…私の話を、聞いてくれるか?」
雪奈(せつな):「……」
雨点(うずき):「…ぁ、セツナ…?」
雪奈(せつな):「っ!はあああああああああああ!!」
0:雨点に襲いかかる雪奈。
雨点(うずき):「くっ!?何を…」
雪奈(せつな):「…ふっ、何を?バカ言わないで頂戴。知ってるでしょう…私は、皇(すめらぎ)の者よ?
雪奈(せつな):榊組(さかきぐみ)の人間を殺すのに、理由も何もないでしょ」
雨点(うずき):「そんな…やめてくれ。私はお前とは戦いたくない!」
雪奈(せつな):「なら、そのままここで死になさい!」
雨点(うずき):「私は!お前とだけは戦いたくないんだ!頼むから、話を…」
雪奈(せつな):「(被せて)もう遅いのよ!!何もかもっ!!!」
雨点(うずき):「ぐっ…がはっ…!」
雪奈(せつな):「はぁ…はぁ…もう、遅いのよ…」
雨点(うずき):「げほ…遅い…?」
雪奈(せつな):「っ、だってそうでしょう!?私はキサラさんに拾われた!私、なんでもやったわ!?
雪奈(せつな):もう捨てられたくなかったから!もう二度と!!あんな惨めな思いしたくなかったから!!
雪奈(せつな):だからっ…たくさんの人を手にかけた!『助けて』って泣いて縋る人を笑いながら、切って切って切って…切り捨てたのよ!!!
雪奈(せつな):…そんな私が…どうして何事もなかったかの様に、兄さんの元に戻れるって言うの!?どうしてよ!!ねぇ!答えて!!!」
雨点(うずき):「セツナ…落ち着くんだ…」
雪奈(せつな):「……私は、落ち着いてるわ」
雨点(うずき):「なら、ちゃんと話を…」
:
:【SE】いくつもの炎の球が燃えるような音
雪奈(せつな):「(詠唱)『ごめんなさいね。私が興味あるのは、貴方の中身なの。』
雪奈(せつな):
雪奈(せつな):終伸展解放 忌部霊冥不傀 代症剰也
雪奈(せつな):(しゅうしんてんかいほう、いんべれいめいふか、だいしょうあまつえ)」
雨点(うずき):「っセツナ…!」
雪奈(せつな):「だってもう…私には何もっ!ないんだから!!!」
雨点(うずき):「くっ!うがっ…!!」
雪奈(せつな):「!? …なんで?…なんで避けないのよ!!!」
0:雨点、雪奈を抱きしめる。
雪奈(せつな):「っ!?何を…!」
雨点(うずき):「(食い気味に)セツナ」
雪奈(せつな):「…!」
雨点(うずき):「やっと…目が合った…」
雪奈(せつな):「……兄、さん…私…」
雨点(うずき):「うん」
雪奈(せつな):「…私…寂しかった…!」
雨点(うずき):「私もだよ」
雪奈(せつな):「明日には迎えにくる…明日こそはって毎日思ってた…!」
雨点(うずき):「ああ、頑張ったな…」
雪奈(せつな):「でも…辛くて…私、待ってたのに…」
雨点(うずき):「セツナ、ずっと一人にさせて…ごめんな?」
雪奈(せつな):「う、ぁ…兄さんっ…兄さん…っ!!」
雨点(うずき):「ほら、泣くな…大丈夫だから…」
雪奈(せつな):「うあ、うああああああん!!」
雨点(うずき):「まったく…セツナは相変わらず、泣き虫だなぁ…っ、うっ…!」
雪奈(せつな):「!! 兄さんっ!?」
雨点(うずき):「あ…はは、やっぱり少し…痛いな…。ひとまずここを(離れよう)」
鬼沙羅(きさら):「(被せて)あれ?セツナ?まだ殺せてないの?」
雪奈(せつな):「っキサラさん…!」
鬼沙羅(きさら):「何してるの?セツナ、いつものセツナならもうとっくに終わってるでしょ?」
雪奈(せつな):「ぁ…あ…私、は…」
鬼沙羅(きさら):「ほら、憎い兄を殺す、いい機会じゃないか」
雪奈(せつな):「(食い気味に)キサラさんっ!」
鬼沙羅(きさら):「……何?」
雪奈(せつな):「…私、もう…無理です…」
鬼沙羅(きさら):「……なにが?」
雪奈(せつな):「私に兄さんは…殺せません…!」
鬼沙羅(きさら):「そっか、じゃあさようなら」
雪奈(せつな):「え…?」
0:言いしなに、雪奈を切りつける鬼沙羅。雪奈の体が崩れ落ちる。
:
雨点(うずき):「……ぁ、ああ…っセツナあああああああああああああああああああ!!」
鬼沙羅(きさら):「…何だ?」
雨点(うずき):「うああああああ!ああぁっ!あああぁぁ!!」
鬼沙羅(きさら):「…鬱陶しいなぁ」
0:雨点、激怒して鬼沙羅に切りかかる
雨点(うずき):「きさまああああああ!」
:
:【SE】雷の様な、低く転がる様な音。
雨点(うずき):「(詠唱)『晴れているところに雨が降るように。月の光が差し込む場所にもまた、鬼がいる。』
雨点(うずき):
雨点(うずき):終伸展解放 月界雨井時抱魔 鬼轟!
雨点(うずき):(しゅうしんてんかいほう、げっかいういとだま、きごう)」
0:望、鬼沙羅に追いつく。
望(もち):「だめだ!ウズキさぁぁぁぁぁぁん!!」
:
:【SE】狼の遠吠え
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『全てを壊してやる、そして新たに与えよう。異存のない、完全なる世界を。』
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 滅心混常闇 狼狽黒罰
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げんしんろん とこやみ、ろうばいこくばち)」
雨点(うずき):「ぐはっ!」
鬼沙羅(きさら):「ほう…致命傷はさけたか」
雨点(うずき):「ぐっ、貴様…貴様あああああああ!!」
雨点(うずき):終伸展…!(技の途中でとめる)…鬼轟?」
望(もち):「ウズキさん!そいつの技は…!」
鬼沙羅(きさら):「たしかこうだったか?
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 月界雨井時抱魔 鬼轟!
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げっかいういとだま、きごう)」」
雨点(うずき):「がは!」
鬼沙羅(きさら):「セツナ良かったな。またすぐに兄に会えたぞ?はっ!」
0:鬼沙羅、雨点の首を落とす。
:
望(もち):「あ…あああ…・ウズキ、さん…!!!」
鬼沙羅(きさら):「…モチ?お前、ここで何をしてる?大人しくしていろと言っただろう?」
望(もち):「っ…どうして…」
鬼沙羅(きさら):「?」
望(もち):「っ、どうして!こんな酷い事が出来るんだ!!」
鬼沙羅(きさら):「必要な事だからだ。この世には、奪う者と奪われる者しかいない。
鬼沙羅(きさら):奪う者が力を集め、世を統べる。力を持つ者が頂点に立つ。当然の摂理だろ?」
望(もち):「必要ってなんだよ!?そんなことの為に、沢山の人を殺したのか!?」
鬼沙羅(きさら):「それが正義だ」
望(もち):「…っ!うわああああああああああああ!」
0:望が鬼沙羅に切りかかる
鬼沙羅(きさら):「ふんっ!」
望(もち):「ぐぁ…っ!」
鬼沙羅(きさら):「愚かな。その程度の力で何ができる?お前は黙って、行く末を眺めていればいい」
望(もち):「嫌だ!」
鬼沙羅(きさら):「聞き分けの無いやつだな」
:
:【SE】雷の様な、低く転がる様な音。
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『恐怖こそ自由、我こそが勝者、それ以外何もない、滅びるが良いぞ。』
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 恐鳴域韋駄虎 赤凛一擲
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、きょうめいいきいだとら、せきりんいってき)」
望(もち):「があっ!…く、そ…こんな…こんなこと許されていいわけが…」
鬼沙羅(きさら):「モチ、お前は勘違いをしている。」
望(もち):「なに…?」
鬼沙羅(きさら):「これは救いだ。
鬼沙羅(きさら):唯一無二の力を持つ絶対者が世を統べ、弱者には『死』という永遠の安息を与える。
鬼沙羅(きさら):そうすることで、真の平穏な世界が出来上がる」
望(もち):「そんな傲慢な…!!」
鬼沙羅(きさら):「ならばお前に平和が創れるのか?」
望(もち):「人の信念を踏みにじってつくるものが平和なわけない!」
:
:【SE】風の音
望(もち):(詠唱)『お前は間違っている!それが正義なら、彼らのしてきた事はなんなんだ!…返せ、返せよ!!』
望(もち):
望(もち):終伸展解放! 星城白鐘 梵!!
望(もち):(しゅうしんてんかいほう、せいじょうくろがね、そよぎ)」
鬼沙羅(きさら):「お前は…何を見ていたんだ?」
:
:【SE】狼の遠吠え
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『全てを壊してやる、そして新たに与えよう。異存のない、完全なる世界を。』
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 滅心混常闇 狼狽黒罰
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げんしんろん とこやみ、ろうばいこくばち)」
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望(もち):「ぐはっ!」
鬼沙羅(きさら):「俺は全ての伸展を手中に収め、君臨する。世界は俺に恐怖し、争いのない完璧な世界が完成する」
望(もち):「げほっ…そんなの完璧な世界なんかじゃない…!」
鬼沙羅(きさら):「力無き弟よ、もう諦めろ。仲間はいない、伸展もなくなった。お前の戦う理由はどこにある?」
望(もち):「理由ならみつけた…」
鬼沙羅(きさら):「なんだと…?」
望(もち):「…立場に悩みながら、未来を夢見た人がいた」
鬼沙羅(きさら):「…」
望(もち):「形に囚われず、耐えて守った人がいた」
鬼沙羅(きさら):「何の話だ…?」
望(もち):「自分を犠牲に、仲間を守った人がいた!期待に応え、狂気に立ち向かった人がいた!」
鬼沙羅(きさら):「おい…なんだ?その力は…」
望(もち):「壊れた絆をたぐりよせ!最後まで戦い抜いた人がいた!!」
鬼沙羅(きさら):「…それは…まさか…」
望(もち):「僕に生き様を、正義の形を見せてくれた人がいた!!
望(もち):それを踏みにじってまで創る世界が完璧なはずがない!
望(もち):自分の正義を探せる世界を、みなが信じた己の道を進める世界を
望(もち):恐怖ではなく、希望で手をとり合える世界を、僕は歩みたい!」
:
:【SE】風の音と龍の鳴き声
望(もち):「極神展解放!星龍夜光 神中昇天 幕末転眼!!
望(もち):(ごくしんてん かいほう、せいりゅうやこう、しんじゅしょうてん、ばくまつてんがん)」
鬼沙羅(きさら):「くっ…!何度やっても同じことだ…!」
:【SE】狼の遠吠え
鬼沙羅(きさら):「終伸展解放!滅心混常闇 狼狽黒罰!!
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げんしんろん とこやみ、ろうばいこくばち)」
望(もち):「僕はもう嫌なんだ!自分の力におびえて、ただ隠れて生きるなんて!
望(もち):奪えるものなら奪ってみろよ!」
0:二つの伸展がぶつかり合い、鬼沙羅が押される。
:
鬼沙羅(きさら):「ぐ…技が、奪えない……!?」
望(もち):「僕はもう逃げない…!恐怖で人を従え、ただ奪うだけのお前に…負けたりなんかしない!!」
鬼沙羅(きさら):「綺麗ごとだ!この世はそんなに綺麗なものではない!」
望(もち):「僕だって分かってる!でも僕は榊組でたくさんの事を知ったんだ!
望(もち):力の使い方だけじゃない!仲間を持つ心強さや、それを失う悲しさも!何より…自分が信じるに値する『正義』を!
望(もち):その『正義』が言うんだ!お前は間違ってると!!支配の上に成り立つ平和なんて…あってはならない!!!」
鬼沙羅(きさら):「全てが正しくおさまる道などない!互いに主張する正義が交わることはない!!
鬼沙羅(きさら):力が分散すれば争いの火種になる。己の力量をわきまえず力をふるってどうなった!?待つのは悲劇だと、お前も知っているだろう!」
望(もち):「知ってるよ!痛いくらいに僕は良く知ってる!でも…その悲劇を抱えてなお、前を向くんだ!」
鬼沙羅(きさら):「なぜ分からない!!そんなもの夢物語だ!期待して信じた先には絶望しかない!」
望(もち):「だって!ただ誰かの絶望におびえて生きてるだけなんて、死んでるのとかわらないじゃないか!!」
鬼沙羅(きさら):「そんな夢見がちな覚悟でなしえるほど簡単なものではない!お前はただ俺が統べた世界を享受すればいいのだ!」
望(もち):「嫌だ!僕にも皆から託された譲れない想いがある!だからキサラ!お前の思想を認めることは絶対に出来ない!!」
鬼沙羅(きさら):「…そこまでいうならば!見せてみろ!お前の覚悟を!!もう…手加減などしない!!
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『聴かせよう この手で消す命ほど美しい物は無い、渡せその命。
鬼沙羅(きさら):極神展解放 斬凱常落仙蘭 覇門減心 狼怪明天
鬼沙羅(きさら):(ごくしんてんかいほう、きがじょうらくせんらん、はもんげっし、ろうかいみょうてん)」
望(もち):「極神展解放 星龍夜光 神中昇天 幕松転眼!
望(もち):(ごくしんてんかいほう、せいりゅうやこう、しんじゅしょうてん、ばくまつてんがん)」
望(もち):「僕は!あの日の絶望も!悲しみも!全部背負ったまま、この力ごと前に進むって決めたんだぁ!!!」
0:今までと比べ物にならない力がぶつかる。
:
鬼沙羅(きさら):「…そうか…お前はそう生きるのか」
望(もち):「え…?」
鬼沙羅(きさら):「…がふ!」
:
0:間。
:
望(もち):「…おい…なんで力を弱めたんだ…?」
鬼沙羅(きさら):「ぐ、がはっ…強く、なったな…モチ」
望(もち):「(食い気味に)そんなことを聞いてるんじゃない!お前は…何を考えてるんだ…っ!?」
鬼沙羅(きさら):「は、はは…ごほっ!…バカだなぁ、言ったじゃないか…」
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:
0:過去の回想・続き
:
望(もち):(幼少期)
望(もち):「こんな力なら…僕は…欲しくなかった!!!」
鬼沙羅(きさら):(幼少期)
鬼沙羅(きさら):「モチ…。そうだな…こんな力があるから…」
望(もち):「兄ちゃん…僕が…僕のせいで…」
鬼沙羅(きさら):「なら…その力、兄ちゃんがもらってやる」
望(もち):「え…?」
鬼沙羅(きさら):「俺がこの世の伸展を全部集めて、持っていってやる!…それで、平和な世の中を作ってきてやるから…。だから泣くな、モチ。お前のせいじゃない!」
:
0:回想終わり
:
:
鬼沙羅(きさら):(M)力が憎かった…。母を奪った力が、憎くて憎くて仕方なかった。
鬼沙羅(きさら):モチの絶望した顔が、血に濡れた母の顔が・・脳裏に焼き付いて離れない。
鬼沙羅(きさら):目の前で起こった惨劇を眺めながら、この考えにいきつくのに時間はかからなかった。
鬼沙羅(きさら):『伸展を消そう』。諸悪の根源であるこの力を、根こそぎ消し去ってやろう。
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):向かった先は、伸展師の多く集まる皇組の拠点。
鬼沙羅(きさら):俺が伸展師だと告げれば、やつらはいとも簡単に受けいれ、懐に入り込むのは難しくなかった。
鬼沙羅(きさら):そこからは目立たぬように行動をした。俺の伸展だけで事を成すには、あまりにも無力だったから。
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):数年して、神(かなえ)の地位にいたヤツが死んだ。機は熟した。
鬼沙羅(きさら):俺の思想に共鳴したアマツを使い、伸展師達の力を奪っていった。
鬼沙羅(きさら):そこからの展開は凄まじかった。彼女の伸展は大きな戦闘力を持っていた。
鬼沙羅(きさら):当然、多くの命が失われる事もわかっていたし、非難される事も全て理解していた。
鬼沙羅(きさら):それでも俺は、影に潜み、計画を進めていった…。呪われた力の根絶の為に。
鬼沙羅(きさら):たとえ俺のせいで多くの命が散ったとしても、止まるわけにはいかなかった。
鬼沙羅(きさら):いや…止まれなかった。
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):俺はただ…お前が幸せに暮らせる未来を、作りたかった。
:
:
望(もち):「嘘、だ…そんな…」
鬼沙羅(きさら):「…強大すぎる力は悲しみを生む…お前だって、そう…思ってただろ…?」
望(もち):「だからって…なんでこんなっ…!?」
鬼沙羅(きさら):「伸展は…呪い、だ…。この力のせいで沢山の命が消えたのを見てきた…。
鬼沙羅(きさら):だからこの力を消そうと思ったんだ…だが、俺は間違っていたのかもな…」
望(もち):「違う…!兄ちゃんがこんな事をしたのは…僕が…!」
鬼沙羅(きさら):「(食い気味に)違うぞ…。お前の伸展を受けて気付いた…この世に悪なんて、いらなかった…。ただ、自分の力を呪ったまま…奪うことしかしなかった俺は、なにも見えてなかったのかもな…」
望(もち):「そんなことない!!やり方は間違っていたかもしれない…でも、兄ちゃんは…」
鬼沙羅(きさら):「モチ…ありがとう…。最期に出会ったのが、お前で…よかった…」
望(もち):「…最期?何言ってるんだよ…?」
鬼沙羅(きさら):「ずっと決めてたんだ…。この世に伸展なんてないほうがいい…なら全てを集め終わった時…俺は…」
望(もち):「まさ、か…やめ…ろ…。やめろよっ、兄ちゃん…!」
0:赤黒い球体から無数の文字が飛び出し、鬼沙羅にまとわりつく。
鬼沙羅(きさら):「伸展解放…(しんてんかいほう」
望(もち):「!?うそだろ…そんな…身体が透けて…!」
鬼沙羅(きさら):「幸せになれよ…モチ…呪縛封陣(じゅばくふうじん)…」
望(もち):「や、め…、っっっ!兄ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁん!!」
:
:
:【時間経過】榊組拠点付近・小高い丘
:
望(もち):(M)あれから数日。僕は拠点に戻ると、死んだ様に眠った。
望(もち):起きた時に迎えてくれたモネが言うには『辛かった出来事を忘れるのではなく、夢の中に留めて、皆の生き様を確かめる様だった』らしい。
:
望(もち):「…これでよし、っと…」
:
望(もち):(N)爽やかな風が髪を揺らす。少し離れた場所に座るマリが、目を瞑って祈っていた。
:
望(もち):「マリ…大丈夫?」
鞠(まり):「……あぁ」
望(もち):「…手を。そろそろ冷えてきたよ」
鞠(まり):「ん……」
:
望(もち):(N)決して長いとは言えない、本当に短い時間。その間に、多くの命が失われてしまった。
:
鞠(まり):「…つまん、ないなぁ…。どいつも、こいつも…っ、ぐすっ…すぐ、死んじゃうんだから…っ…」
望(もち):「…そうだね…」
:
望(もち):(N)嗚咽を漏らし泣くマリに、かける言葉が見つからなくて、そっと手を握る。
:
望(もち):「……でも僕らは生きてる」
鞠(まり):「…っ、うん…」
:
望(もち):(N)あまりにも辛く、悲しい月日だった。きっとこれから何度も思い返しては、肩を震わせ泣くのだろう。
望(もち):それでも希望を失ってはいけない。彼らが最後までそうであった様に。
望(もち):
望(もち):『誰かのためじゃない、自分の為に』。
望(もち):『その先にまだ希望があるのなら、顔をあげ、前を向き、手を伸ばせ』。
望(もち):
望(もち):ねぇ…僕はちゃんと、前を見れているかな?
:
鞠(まり):「…モチ?」
望(もち):「…なんでもない。帰ろうか、モネが待ってる」
:
:
望(もち):DISTOPIA BREAK・完
望(もち):(でぃすとぴあぶれいく・かん)
0:Fin.
DISTOPIA BREAK:Real Final『絶望』
:
:登場人物紹介(マーカー用)
望(もち):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
望(もち):死んだ包水の意思を継ぎ、実兄・鬼沙羅を倒すため立ち上がる。
望(もち):伸展・梵(しんてん・そよぎ)の解放者。
雨点(うずき):二大勢力の一つ・榊組(さかきぐみ)に属する伸展師。
雨点(うずき):長年探していた実妹・雪奈を説得すべく、話し合いに来た。
雨点(うずき):伸展・鬼轟(しんてん・きごう)の解放者。
雪奈(せつな):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。
雪奈(せつな):鬼沙羅に惑わされ、実兄の雨点を殺しにやって来た。
雪奈(せつな):伸展・代症剰也(しんてん・だいしょうあまつえ)の解放者。
鬼沙羅(きさら):榊組と対立する二大勢力の一つ・皇組(すめらぎぐみ)に属する伸展師。
鬼沙羅(きさら):唯一の神(かなえ)。望は実弟。
鬼沙羅(きさら):終伸展・狼狽黒罰(しゅうしんてん・ろうばいこくばち)の解放者。
鞠(まり):元、皇組(すめらぎぐみ)に属していた伸展師。
鞠(まり):悪間憑に実弟と大切な人を殺された。今は榊組に身を寄せている。
鞠(まり):伸展・齟齬総殺(しんてん・そごそうさつ)の解放者。
:
:
0:シナリオスタート
:
0:雪奈の回想
雪奈(せつな):「…私は、どうしたらいいのだろう…。私のせいで、デンヤもナオエツさんも…マリさんまでいなくなってしまった…。
雪奈(せつな):ねぇ…どうしたらいいの…?兄さん…」
鬼沙羅(きさら):「セツナ」
雪奈(せつな):「キサラ…さん…」
鬼沙羅(きさら):「聞いたよ。榊組(さかきぐみ)に、お兄さんがいたんだって?」
雪奈(せつな):「…どうして…そのことを…」
鬼沙羅(きさら):「そんなことは、どうでもいいじゃないか。大切なのは…セツナが『憎くて、憎くて堪らない』お兄さんが…敵側にいたってことさ」
雪奈(せつな):「…私、は…あ、兄が…」
鬼沙羅(きさら):「(食い気味に)どうしたの?」
雪奈(せつな):「あ…」
鬼沙羅(きさら):「まさか今更『憎くない』なんて、言うつもり…?あんなに嫌ってたじゃないか。
鬼沙羅(きさら):セツナを捨てて、三人だけで幸せに生きてきたやつらでしょ?何を、遠慮することがあるの?」
雪奈(せつな):「……でも…兄は言いました…。本当は迎えに来てたって…。
雪奈(せつな):私に会えなくて…ずっと、ずっと私の事を…探してくれていたんだって…」
鬼沙羅(きさら):「(被せて)嘘だね」
雪奈(せつな):「っ!?」
鬼沙羅(きさら):「それが本当なら、なんで君は…こんなにも不幸になったんだい?
鬼沙羅(きさら):思い出してごらんよ…。預け先で君が受けた、地獄にも勝る酷い仕打ちを…」
雪奈(せつな):「…それは…」
鬼沙羅(きさら):「少ない食事に、汚い衣服。君が告げる言葉を受け入れず、やつらは君を怒鳴りつけた…。
鬼沙羅(きさら):本当に君が大切なのだとしたら…なんで君は、そんなところに預けられたのかなぁ…?」
雪奈(せつな):「…それ、は…」
鬼沙羅(きさら):「セツナが寒さに震え眠れなかった夜…彼らは仲良く眠りについた。
鬼沙羅(きさら):セツナが空腹でたまらなかったあの時…彼らは暖かい食卓を囲んでいた」
雪奈(せつな):「あ……」
鬼沙羅(きさら):「あの時の辛さは、苦しさは…そんなにすぐ忘れられるものだったのかい?
鬼沙羅(きさら):口ではなんとだって言える。いくらでも…上辺だけの言葉を並べられる…」
雪奈(せつな):「上辺……」
鬼沙羅(きさら):「でも、僕は違う…。辛い境遇にいたセツナを助けてあげたのは…誰だい…?」
雪奈(せつな):「…キサラ、さんです…」
鬼沙羅(きさら):「そうだ。僕は、何もしてくれなかったセツナの家族たちとは違うだろう?
鬼沙羅(きさら):何の力もなく、虚ろな目をしたセツナを救い、育てたのは僕だ。憎い者と戦う力の使い方を教えてあげたのは、僕だ」
雪奈(せつな):「キサラ…さん…」
鬼沙羅(きさら):「ねぇ…セツナ?…お願いがあるんだ」
雪奈(せつな):「お願い…?」
鬼沙羅(きさら):「そう、お願い。セツナを助けてあげた僕の為に…君の憎いお兄さんを…ウズキを殺してきてくれるよね?」
雪奈(せつな):「そんなこと…!」
鬼沙羅(きさら):「(食い気味に)セツナ」
雪奈(せつな):「っ…」
鬼沙羅(きさら):「出来るよね?…セツナ?」
雪奈(せつな):「…はい…。わかり、ました…」
鬼沙羅(きさら):「うん。セツナはいい子だね」
0:回想終わり
:
:
鞠(まり):(タイトルコール)
鞠(まり):DISTOPIA BREAK Real Final『絶望』
鞠(まり):(でぃすとぴあ ぶれいく りある ふぁいなる『ぜつぼう』)
:
:
:【場面】榊組拠点・鞠の部屋
:
雨点(うずき):「(扉をたたく)…マリさん。少しはなにか召し上がらないと…」
鞠(まり):「…食べたくない」
雨点(うずき):「…気持ちが分かるなんて、簡単には言えませんが…そのままでは貴方までどうにかなってしまいます…」
鞠(まり):「…ほっといてくれ」
雨点(うずき):「自暴自棄にならないでください。貴方がそれでは、彼らはあまりにも救われないではないですか…。だから…」
鞠(まり):「…わかってる…そんなことっ、わかってんだよ!!!」
雨点(うずき):「マリさん…」
鞠(まり):「んなことっ…私が…一番わかってんだよ…っ!」
雨点(うずき):「……」
鞠(まり):「(しばらく泣いて)…ごめん。分かってんだ…こんなの、八つ当たりだよな…」
雨点(うずき):「いえ…私も軽率でした。申し訳、ありません」
鞠(まり):「…いや、あんたがいってることは正しいよ。私は二人に…ナオエツさんとデンヤに守られたから、今ここにいるんだ…。
鞠(まり):…デンヤはさ…?昔はそりゃあ弱っちくて、泣き虫でさ…私が守ってやらなきゃって、ずっと思ってた…。
鞠(まり):それがいつの間にか、あんなにかっこよくなっててさ…『今度は俺が守ってやる』だって…っ、ほんっとうに…馬鹿だ!私なんか守って死んで、どうすんだよ!!
鞠(まり):大切な人だっていたんだろ!?なんで、あんなこと…私は、どうすりゃいいんだよ!?一人で残されて…もう、どうしていいかなんか…わからねぇよ…」
雨点(うずき):「…私にも妹がいるんです」
鞠(まり):「……」
雨点(うずき):「幼い頃に生き別れ…きっと生きていると信じ、探し続けてました。
雨点(うずき):けれど、時折ふと思わずにはいられなかった。『もしかしたら、もう…』っ、そう考えるとおかしくなりそうでした。
雨点(うずき):私たちの選択は間違っていたのか?一緒にいるべきだったのでは?あの時、預けるべきではなかったのでは…?」
鞠(まり):「…妹」
雨点(うずき):「…はい。でも、この間ようやく会うことができたんです。私が想像していたよりも、妹は元気そうで…安心しました。…『敵』という事を除けば、ですが…」
鞠(まり):「…じゃあ、あんたがセツナの…?」
雨点(うずき):「ええ、セツナは私の妹です。…本当に嬉しかった!心の中で何度も諦めていた事が、叶ったんですから!
雨点(うずき):…でも、その嬉しさに任せて、私はセツナの気持ちを蔑(ないがし)ろにしました…。今までどんな思いをして過ごしてきたのか…そんなこと一つも考えずに、私の一方的な気持ちで声をかけて…結局、混乱させてしまった…」
鞠(まり):「…そんなの、仕方ねーじゃねーか…ずっと、会いたかったんだろ?」
雨点(うずき):「えぇ…でも、そのせいでセツナは余計に辛い思いをしたかもしれない…!そう考えると…どんな顔でセツナに会えばいいのか、分からないんです…」
鞠(まり):「…は?」
雨点(うずき):「私の存在は、セツナにとって負担にしかならないのではないか…ならばもう、いっそ会わない方が…」
鞠(まり):「(被せて)ふっざけんなよ!!!!!」
0:鞠が雨点に掴みかかる。
雨点(うずき):「ぐっ!?マリ…さん!?なにを…」
鞠(まり):「なに腑抜けたこといってんだテメーは!!どんな顔で会えばいいか分からない!?つべこべ言ってんな!
鞠(まり):お前の妹は、そこにいるんだろ!?話せるんだろ!?お前の手の届くとこにいて!!触れることが、出来るんだろ!?セツナに伝えたい事…いっぱい、あるんじゃねーのかよ!!」
雨点(うずき):「…私は…セツナを諦めたくない…!」
鞠(まり):「…じゃあ、今伝えなきゃどうすんだよ…!次があるかなんて…っ、わかんねぇんだぞ……?」
雨点(うずき):「…マリさん…」
鞠(まり):「…わかったら、さっさと行っちまえ…。…そんで、二人で帰ってこい…」
雨点(うずき):「……はい!ありがとうございます!」
0:雨点、走り去る。
:
:【場面】榊と皇、どちらのものでもない、とある領地
:
0:雨点と待ち合わせた場所へ到着する
雪奈(せつな):「……こんにちは」
雨点(うずき):「っ!セツナ…?セツナっ、来てくれたのか!?」
雪奈(せつな):「……」
雨点(うずき):「良かった…ありがとう!あの時は取り乱してすまない。もう一度ちゃんと話したかったんだ!…私の話を、聞いてくれるか?」
雪奈(せつな):「……」
雨点(うずき):「…ぁ、セツナ…?」
雪奈(せつな):「っ!はあああああああああああ!!」
0:雨点に襲いかかる雪奈。
雨点(うずき):「くっ!?何を…」
雪奈(せつな):「…ふっ、何を?バカ言わないで頂戴。知ってるでしょう…私は、皇(すめらぎ)の者よ?
雪奈(せつな):榊組(さかきぐみ)の人間を殺すのに、理由も何もないでしょ」
雨点(うずき):「そんな…やめてくれ。私はお前とは戦いたくない!」
雪奈(せつな):「なら、そのままここで死になさい!」
雨点(うずき):「私は!お前とだけは戦いたくないんだ!頼むから、話を…」
雪奈(せつな):「(被せて)もう遅いのよ!!何もかもっ!!!」
雨点(うずき):「ぐっ…がはっ…!」
雪奈(せつな):「はぁ…はぁ…もう、遅いのよ…」
雨点(うずき):「げほ…遅い…?」
雪奈(せつな):「っ、だってそうでしょう!?私はキサラさんに拾われた!私、なんでもやったわ!?
雪奈(せつな):もう捨てられたくなかったから!もう二度と!!あんな惨めな思いしたくなかったから!!
雪奈(せつな):だからっ…たくさんの人を手にかけた!『助けて』って泣いて縋る人を笑いながら、切って切って切って…切り捨てたのよ!!!
雪奈(せつな):…そんな私が…どうして何事もなかったかの様に、兄さんの元に戻れるって言うの!?どうしてよ!!ねぇ!答えて!!!」
雨点(うずき):「セツナ…落ち着くんだ…」
雪奈(せつな):「……私は、落ち着いてるわ」
雨点(うずき):「なら、ちゃんと話を…」
:
:【SE】いくつもの炎の球が燃えるような音
雪奈(せつな):「(詠唱)『ごめんなさいね。私が興味あるのは、貴方の中身なの。』
雪奈(せつな):
雪奈(せつな):終伸展解放 忌部霊冥不傀 代症剰也
雪奈(せつな):(しゅうしんてんかいほう、いんべれいめいふか、だいしょうあまつえ)」
雨点(うずき):「っセツナ…!」
雪奈(せつな):「だってもう…私には何もっ!ないんだから!!!」
雨点(うずき):「くっ!うがっ…!!」
雪奈(せつな):「!? …なんで?…なんで避けないのよ!!!」
0:雨点、雪奈を抱きしめる。
雪奈(せつな):「っ!?何を…!」
雨点(うずき):「(食い気味に)セツナ」
雪奈(せつな):「…!」
雨点(うずき):「やっと…目が合った…」
雪奈(せつな):「……兄、さん…私…」
雨点(うずき):「うん」
雪奈(せつな):「…私…寂しかった…!」
雨点(うずき):「私もだよ」
雪奈(せつな):「明日には迎えにくる…明日こそはって毎日思ってた…!」
雨点(うずき):「ああ、頑張ったな…」
雪奈(せつな):「でも…辛くて…私、待ってたのに…」
雨点(うずき):「セツナ、ずっと一人にさせて…ごめんな?」
雪奈(せつな):「う、ぁ…兄さんっ…兄さん…っ!!」
雨点(うずき):「ほら、泣くな…大丈夫だから…」
雪奈(せつな):「うあ、うああああああん!!」
雨点(うずき):「まったく…セツナは相変わらず、泣き虫だなぁ…っ、うっ…!」
雪奈(せつな):「!! 兄さんっ!?」
雨点(うずき):「あ…はは、やっぱり少し…痛いな…。ひとまずここを(離れよう)」
鬼沙羅(きさら):「(被せて)あれ?セツナ?まだ殺せてないの?」
雪奈(せつな):「っキサラさん…!」
鬼沙羅(きさら):「何してるの?セツナ、いつものセツナならもうとっくに終わってるでしょ?」
雪奈(せつな):「ぁ…あ…私、は…」
鬼沙羅(きさら):「ほら、憎い兄を殺す、いい機会じゃないか」
雪奈(せつな):「(食い気味に)キサラさんっ!」
鬼沙羅(きさら):「……何?」
雪奈(せつな):「…私、もう…無理です…」
鬼沙羅(きさら):「……なにが?」
雪奈(せつな):「私に兄さんは…殺せません…!」
鬼沙羅(きさら):「そっか、じゃあさようなら」
雪奈(せつな):「え…?」
0:言いしなに、雪奈を切りつける鬼沙羅。雪奈の体が崩れ落ちる。
:
雨点(うずき):「……ぁ、ああ…っセツナあああああああああああああああああああ!!」
鬼沙羅(きさら):「…何だ?」
雨点(うずき):「うああああああ!ああぁっ!あああぁぁ!!」
鬼沙羅(きさら):「…鬱陶しいなぁ」
0:雨点、激怒して鬼沙羅に切りかかる
雨点(うずき):「きさまああああああ!」
:
:【SE】雷の様な、低く転がる様な音。
雨点(うずき):「(詠唱)『晴れているところに雨が降るように。月の光が差し込む場所にもまた、鬼がいる。』
雨点(うずき):
雨点(うずき):終伸展解放 月界雨井時抱魔 鬼轟!
雨点(うずき):(しゅうしんてんかいほう、げっかいういとだま、きごう)」
0:望、鬼沙羅に追いつく。
望(もち):「だめだ!ウズキさぁぁぁぁぁぁん!!」
:
:【SE】狼の遠吠え
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『全てを壊してやる、そして新たに与えよう。異存のない、完全なる世界を。』
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 滅心混常闇 狼狽黒罰
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げんしんろん とこやみ、ろうばいこくばち)」
雨点(うずき):「ぐはっ!」
鬼沙羅(きさら):「ほう…致命傷はさけたか」
雨点(うずき):「ぐっ、貴様…貴様あああああああ!!」
雨点(うずき):終伸展…!(技の途中でとめる)…鬼轟?」
望(もち):「ウズキさん!そいつの技は…!」
鬼沙羅(きさら):「たしかこうだったか?
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 月界雨井時抱魔 鬼轟!
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げっかいういとだま、きごう)」」
雨点(うずき):「がは!」
鬼沙羅(きさら):「セツナ良かったな。またすぐに兄に会えたぞ?はっ!」
0:鬼沙羅、雨点の首を落とす。
:
望(もち):「あ…あああ…・ウズキ、さん…!!!」
鬼沙羅(きさら):「…モチ?お前、ここで何をしてる?大人しくしていろと言っただろう?」
望(もち):「っ…どうして…」
鬼沙羅(きさら):「?」
望(もち):「っ、どうして!こんな酷い事が出来るんだ!!」
鬼沙羅(きさら):「必要な事だからだ。この世には、奪う者と奪われる者しかいない。
鬼沙羅(きさら):奪う者が力を集め、世を統べる。力を持つ者が頂点に立つ。当然の摂理だろ?」
望(もち):「必要ってなんだよ!?そんなことの為に、沢山の人を殺したのか!?」
鬼沙羅(きさら):「それが正義だ」
望(もち):「…っ!うわああああああああああああ!」
0:望が鬼沙羅に切りかかる
鬼沙羅(きさら):「ふんっ!」
望(もち):「ぐぁ…っ!」
鬼沙羅(きさら):「愚かな。その程度の力で何ができる?お前は黙って、行く末を眺めていればいい」
望(もち):「嫌だ!」
鬼沙羅(きさら):「聞き分けの無いやつだな」
:
:【SE】雷の様な、低く転がる様な音。
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『恐怖こそ自由、我こそが勝者、それ以外何もない、滅びるが良いぞ。』
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 恐鳴域韋駄虎 赤凛一擲
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、きょうめいいきいだとら、せきりんいってき)」
望(もち):「があっ!…く、そ…こんな…こんなこと許されていいわけが…」
鬼沙羅(きさら):「モチ、お前は勘違いをしている。」
望(もち):「なに…?」
鬼沙羅(きさら):「これは救いだ。
鬼沙羅(きさら):唯一無二の力を持つ絶対者が世を統べ、弱者には『死』という永遠の安息を与える。
鬼沙羅(きさら):そうすることで、真の平穏な世界が出来上がる」
望(もち):「そんな傲慢な…!!」
鬼沙羅(きさら):「ならばお前に平和が創れるのか?」
望(もち):「人の信念を踏みにじってつくるものが平和なわけない!」
:
:【SE】風の音
望(もち):(詠唱)『お前は間違っている!それが正義なら、彼らのしてきた事はなんなんだ!…返せ、返せよ!!』
望(もち):
望(もち):終伸展解放! 星城白鐘 梵!!
望(もち):(しゅうしんてんかいほう、せいじょうくろがね、そよぎ)」
鬼沙羅(きさら):「お前は…何を見ていたんだ?」
:
:【SE】狼の遠吠え
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『全てを壊してやる、そして新たに与えよう。異存のない、完全なる世界を。』
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):終伸展解放 滅心混常闇 狼狽黒罰
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げんしんろん とこやみ、ろうばいこくばち)」
:
望(もち):「ぐはっ!」
鬼沙羅(きさら):「俺は全ての伸展を手中に収め、君臨する。世界は俺に恐怖し、争いのない完璧な世界が完成する」
望(もち):「げほっ…そんなの完璧な世界なんかじゃない…!」
鬼沙羅(きさら):「力無き弟よ、もう諦めろ。仲間はいない、伸展もなくなった。お前の戦う理由はどこにある?」
望(もち):「理由ならみつけた…」
鬼沙羅(きさら):「なんだと…?」
望(もち):「…立場に悩みながら、未来を夢見た人がいた」
鬼沙羅(きさら):「…」
望(もち):「形に囚われず、耐えて守った人がいた」
鬼沙羅(きさら):「何の話だ…?」
望(もち):「自分を犠牲に、仲間を守った人がいた!期待に応え、狂気に立ち向かった人がいた!」
鬼沙羅(きさら):「おい…なんだ?その力は…」
望(もち):「壊れた絆をたぐりよせ!最後まで戦い抜いた人がいた!!」
鬼沙羅(きさら):「…それは…まさか…」
望(もち):「僕に生き様を、正義の形を見せてくれた人がいた!!
望(もち):それを踏みにじってまで創る世界が完璧なはずがない!
望(もち):自分の正義を探せる世界を、みなが信じた己の道を進める世界を
望(もち):恐怖ではなく、希望で手をとり合える世界を、僕は歩みたい!」
:
:【SE】風の音と龍の鳴き声
望(もち):「極神展解放!星龍夜光 神中昇天 幕末転眼!!
望(もち):(ごくしんてん かいほう、せいりゅうやこう、しんじゅしょうてん、ばくまつてんがん)」
鬼沙羅(きさら):「くっ…!何度やっても同じことだ…!」
:【SE】狼の遠吠え
鬼沙羅(きさら):「終伸展解放!滅心混常闇 狼狽黒罰!!
鬼沙羅(きさら):(しゅうしんてんかいほう、げんしんろん とこやみ、ろうばいこくばち)」
望(もち):「僕はもう嫌なんだ!自分の力におびえて、ただ隠れて生きるなんて!
望(もち):奪えるものなら奪ってみろよ!」
0:二つの伸展がぶつかり合い、鬼沙羅が押される。
:
鬼沙羅(きさら):「ぐ…技が、奪えない……!?」
望(もち):「僕はもう逃げない…!恐怖で人を従え、ただ奪うだけのお前に…負けたりなんかしない!!」
鬼沙羅(きさら):「綺麗ごとだ!この世はそんなに綺麗なものではない!」
望(もち):「僕だって分かってる!でも僕は榊組でたくさんの事を知ったんだ!
望(もち):力の使い方だけじゃない!仲間を持つ心強さや、それを失う悲しさも!何より…自分が信じるに値する『正義』を!
望(もち):その『正義』が言うんだ!お前は間違ってると!!支配の上に成り立つ平和なんて…あってはならない!!!」
鬼沙羅(きさら):「全てが正しくおさまる道などない!互いに主張する正義が交わることはない!!
鬼沙羅(きさら):力が分散すれば争いの火種になる。己の力量をわきまえず力をふるってどうなった!?待つのは悲劇だと、お前も知っているだろう!」
望(もち):「知ってるよ!痛いくらいに僕は良く知ってる!でも…その悲劇を抱えてなお、前を向くんだ!」
鬼沙羅(きさら):「なぜ分からない!!そんなもの夢物語だ!期待して信じた先には絶望しかない!」
望(もち):「だって!ただ誰かの絶望におびえて生きてるだけなんて、死んでるのとかわらないじゃないか!!」
鬼沙羅(きさら):「そんな夢見がちな覚悟でなしえるほど簡単なものではない!お前はただ俺が統べた世界を享受すればいいのだ!」
望(もち):「嫌だ!僕にも皆から託された譲れない想いがある!だからキサラ!お前の思想を認めることは絶対に出来ない!!」
鬼沙羅(きさら):「…そこまでいうならば!見せてみろ!お前の覚悟を!!もう…手加減などしない!!
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):「(詠唱)『聴かせよう この手で消す命ほど美しい物は無い、渡せその命。
鬼沙羅(きさら):極神展解放 斬凱常落仙蘭 覇門減心 狼怪明天
鬼沙羅(きさら):(ごくしんてんかいほう、きがじょうらくせんらん、はもんげっし、ろうかいみょうてん)」
望(もち):「極神展解放 星龍夜光 神中昇天 幕松転眼!
望(もち):(ごくしんてんかいほう、せいりゅうやこう、しんじゅしょうてん、ばくまつてんがん)」
望(もち):「僕は!あの日の絶望も!悲しみも!全部背負ったまま、この力ごと前に進むって決めたんだぁ!!!」
0:今までと比べ物にならない力がぶつかる。
:
鬼沙羅(きさら):「…そうか…お前はそう生きるのか」
望(もち):「え…?」
鬼沙羅(きさら):「…がふ!」
:
0:間。
:
望(もち):「…おい…なんで力を弱めたんだ…?」
鬼沙羅(きさら):「ぐ、がはっ…強く、なったな…モチ」
望(もち):「(食い気味に)そんなことを聞いてるんじゃない!お前は…何を考えてるんだ…っ!?」
鬼沙羅(きさら):「は、はは…ごほっ!…バカだなぁ、言ったじゃないか…」
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0:過去の回想・続き
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望(もち):(幼少期)
望(もち):「こんな力なら…僕は…欲しくなかった!!!」
鬼沙羅(きさら):(幼少期)
鬼沙羅(きさら):「モチ…。そうだな…こんな力があるから…」
望(もち):「兄ちゃん…僕が…僕のせいで…」
鬼沙羅(きさら):「なら…その力、兄ちゃんがもらってやる」
望(もち):「え…?」
鬼沙羅(きさら):「俺がこの世の伸展を全部集めて、持っていってやる!…それで、平和な世の中を作ってきてやるから…。だから泣くな、モチ。お前のせいじゃない!」
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0:回想終わり
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鬼沙羅(きさら):(M)力が憎かった…。母を奪った力が、憎くて憎くて仕方なかった。
鬼沙羅(きさら):モチの絶望した顔が、血に濡れた母の顔が・・脳裏に焼き付いて離れない。
鬼沙羅(きさら):目の前で起こった惨劇を眺めながら、この考えにいきつくのに時間はかからなかった。
鬼沙羅(きさら):『伸展を消そう』。諸悪の根源であるこの力を、根こそぎ消し去ってやろう。
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):向かった先は、伸展師の多く集まる皇組の拠点。
鬼沙羅(きさら):俺が伸展師だと告げれば、やつらはいとも簡単に受けいれ、懐に入り込むのは難しくなかった。
鬼沙羅(きさら):そこからは目立たぬように行動をした。俺の伸展だけで事を成すには、あまりにも無力だったから。
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):数年して、神(かなえ)の地位にいたヤツが死んだ。機は熟した。
鬼沙羅(きさら):俺の思想に共鳴したアマツを使い、伸展師達の力を奪っていった。
鬼沙羅(きさら):そこからの展開は凄まじかった。彼女の伸展は大きな戦闘力を持っていた。
鬼沙羅(きさら):当然、多くの命が失われる事もわかっていたし、非難される事も全て理解していた。
鬼沙羅(きさら):それでも俺は、影に潜み、計画を進めていった…。呪われた力の根絶の為に。
鬼沙羅(きさら):たとえ俺のせいで多くの命が散ったとしても、止まるわけにはいかなかった。
鬼沙羅(きさら):いや…止まれなかった。
鬼沙羅(きさら):
鬼沙羅(きさら):俺はただ…お前が幸せに暮らせる未来を、作りたかった。
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望(もち):「嘘、だ…そんな…」
鬼沙羅(きさら):「…強大すぎる力は悲しみを生む…お前だって、そう…思ってただろ…?」
望(もち):「だからって…なんでこんなっ…!?」
鬼沙羅(きさら):「伸展は…呪い、だ…。この力のせいで沢山の命が消えたのを見てきた…。
鬼沙羅(きさら):だからこの力を消そうと思ったんだ…だが、俺は間違っていたのかもな…」
望(もち):「違う…!兄ちゃんがこんな事をしたのは…僕が…!」
鬼沙羅(きさら):「(食い気味に)違うぞ…。お前の伸展を受けて気付いた…この世に悪なんて、いらなかった…。ただ、自分の力を呪ったまま…奪うことしかしなかった俺は、なにも見えてなかったのかもな…」
望(もち):「そんなことない!!やり方は間違っていたかもしれない…でも、兄ちゃんは…」
鬼沙羅(きさら):「モチ…ありがとう…。最期に出会ったのが、お前で…よかった…」
望(もち):「…最期?何言ってるんだよ…?」
鬼沙羅(きさら):「ずっと決めてたんだ…。この世に伸展なんてないほうがいい…なら全てを集め終わった時…俺は…」
望(もち):「まさ、か…やめ…ろ…。やめろよっ、兄ちゃん…!」
0:赤黒い球体から無数の文字が飛び出し、鬼沙羅にまとわりつく。
鬼沙羅(きさら):「伸展解放…(しんてんかいほう」
望(もち):「!?うそだろ…そんな…身体が透けて…!」
鬼沙羅(きさら):「幸せになれよ…モチ…呪縛封陣(じゅばくふうじん)…」
望(もち):「や、め…、っっっ!兄ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁん!!」
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:【時間経過】榊組拠点付近・小高い丘
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望(もち):(M)あれから数日。僕は拠点に戻ると、死んだ様に眠った。
望(もち):起きた時に迎えてくれたモネが言うには『辛かった出来事を忘れるのではなく、夢の中に留めて、皆の生き様を確かめる様だった』らしい。
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望(もち):「…これでよし、っと…」
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望(もち):(N)爽やかな風が髪を揺らす。少し離れた場所に座るマリが、目を瞑って祈っていた。
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望(もち):「マリ…大丈夫?」
鞠(まり):「……あぁ」
望(もち):「…手を。そろそろ冷えてきたよ」
鞠(まり):「ん……」
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望(もち):(N)決して長いとは言えない、本当に短い時間。その間に、多くの命が失われてしまった。
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鞠(まり):「…つまん、ないなぁ…。どいつも、こいつも…っ、ぐすっ…すぐ、死んじゃうんだから…っ…」
望(もち):「…そうだね…」
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望(もち):(N)嗚咽を漏らし泣くマリに、かける言葉が見つからなくて、そっと手を握る。
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望(もち):「……でも僕らは生きてる」
鞠(まり):「…っ、うん…」
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望(もち):(N)あまりにも辛く、悲しい月日だった。きっとこれから何度も思い返しては、肩を震わせ泣くのだろう。
望(もち):それでも希望を失ってはいけない。彼らが最後までそうであった様に。
望(もち):
望(もち):『誰かのためじゃない、自分の為に』。
望(もち):『その先にまだ希望があるのなら、顔をあげ、前を向き、手を伸ばせ』。
望(もち):
望(もち):ねぇ…僕はちゃんと、前を見れているかな?
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鞠(まり):「…モチ?」
望(もち):「…なんでもない。帰ろうか、モネが待ってる」
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望(もち):DISTOPIA BREAK・完
望(もち):(でぃすとぴあぶれいく・かん)
0:Fin.