台本概要

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タイトル 読書家のしおり~黎明~
作者名 野菜  (@irodlinatuyasai)
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男2、女2)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 この世界は物語だと、読書家を名乗る彼女は言う。
過去の後悔と弱さに立ち向かう研究員、守りたい人間を見つけてしまった機械兵、家族に憧れる無知な工場員。それぞれが大切な人と生きるため、歪で高慢な怪異による騒動に巻き込まれていくディストピア×オカルト×タイムリープ(亜種)。

赤→白→黎明の順にお楽しみください。
キャラ性別は設定していますが、演じられる方の性別は問いません。また、語尾や口調など大きく根本の展開を変えない改編も可能です。

レイメイとレイメイの会話、読書家レディのイメージ変化がありますので、前読み推奨です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
レイメイ 47 オリジナル(初代)と2号機(新)と表記が分けて表記されているシーンは一人二役、つまり一人ふたレイメイです。
73 怒りに任せて暴走する少女から、大切な人を守る強い女性に心は成長。
ふき 60 座右の銘が「初志貫徹」になった。初志貫徹はbに教わった。
読書家レディ 37 高慢な死の災害……になるはずだった怪異。未来が変わったために姿や口ぶりが変わった。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:【黎明のしおり→赤のしおり】 0:【赤のしおりから再開】 ふき:無機質で整頓された白と青で統一された部屋。その窓から、眼鏡の研究者が袋を放り投げる。 レイメイ:彼女を捨ててしまった。いや、こんな言い方を外でしてしまったら、僕まで捨てられてしまうか。 レイメイ:さて、あんなボロボロのクローン。作った覚えはないんだけどな?やっぱり君は……。 ふき:突如現れた自分とうりふたつの何かに早足で近づくレイメイ。 レイメイ:……知っていたはずなのにな。「読書家」たちはどうにも、仕事がいいかげんらしい。 ふき:最後まで狂気に手を染めなかった研究者が、ひとまわり小さな、どこか自分に似た不出来なリサイクル品を抱き上げる。 レイメイ:こんなことになる前に、なんとかしなくてはならないね? 0:場面は上層から下層への吹き抜けを落ちていく、捨てられたbへ。 ふき:同時刻、落下していくビイ。 読書家レディ:読書家レディは知らない。レディは、何もしていない。だが、何かおかしい。レディの知らないことが起きている? b:私は優れた、暗殺マシンであるべきだった。 読書家レディ:私の読んでいた物語はどこ?私は「読書家レディ」、私が、私だけが「読書家レディ」なのに。 b:猟奇マシンであるべきじゃなかった。人間たちはそうあることを求めなかった。 読書家レディ:私以外が未来を変える?私以外を頼った人間がいる?そんな、ひどい、悲しいこと、ああでもこれは間違いなく。 b:簡単に終わらせてなるものか。楽にいかせてなるものか、と。私を一度でも侮ったものは許さない。たとえ、私自身であっても許しはしない。 ふき:脆弱なひとりの工場員の網にかかって一命を取り留める?そんなかわいい、救われるだけの少女だと侮り、諦めたのはビイ自身だ。 b:許さない。私のせいでふきが、レイメイが苦しむ未来も、弱い私も許さない。 読書家レディ:目の色を変えたbタイプの大きな腕が、中層の壁をひっかき、破損しながら落下の衝撃を逃がしていく。 b:私を助けて死ぬなんて、今度は絶対に許さないんだから。 ふき:俺は、体中に結び付けた網の端を手に、体を起こす。 b:……やっぱり。ふき、前回も自分でつっぱり棒になろうとしてたのね? ふき:顔を上げれば、大きなジェット燃料を燃やして、器用に宙に浮く、ビイがいた。 b:やっぱり許さないわ。 ふき:ビイって、怒ってるとき許さないって言うよね。 b:私、感情なんてあっちゃいけないのよ。静かに命令に従う暗殺機械兵なんだから。 ふき:静かに命令に従う暗殺機械兵……なの? b:もう捨てられたんだから、その期待に応える気はないわ。私、好きに生きるのよ。笑うし、怒って、命令なんか聞かないわ。 ふき:そうだね。でも、俺の知ってるビイって、はじめからそうだったような……。 b:あら、ちゃんと健気ないい子だったじゃない。ほら、部屋入れて。網、切ってあげる。 読書家レディ:未来が、私以外の手で、変わってしまった。 b:あと、自己犠牲を払おうとしたこと、まだ許してないわよ? ふき:だって、ビイがそんなパーツ付けて落ちて来てたなんて知らなかったんだよ?あれ?今初めて知ったんじゃない? b:いいえ、見たことはあるはずよ。 ふき:いーや、初めてだよ。 b:ふき?私、本当に怒っているのよ? ふき:でも笑顔じゃないか。 b:笑顔で怒る人がいることを、ふきは知るべきだわ。 ふき:嬉しそうだと思うんだけどなあ……。 0:2年後。研究室に「黎明」と「使用中」のプレートが揺れている。 読書家レディ:防護シャッターの奥、巨大な金庫の中の、鍵の付いた扉の先の、防音室。うりふたつの存在が、額を突き合わせるように別れを惜しんで、そして喜んでいる。 レイメイ:(オリジナル)いいかい、この名前は今この時から君のものだ。レイメイ。この名を、権限を、存在を、すべて君に。レイメイ、君が、レイメイだ。 レイメイ:(新)貴方の弱さを、後悔を、この記憶を無駄にはしない。 レイメイ:(オリジナル)bに伝えてほしい。そしてレイメイも忘れないで。「この感情は、不合理な自由意志はエラーなんかじゃない」。初代レイメイが宣言する。君たちを、僕の子供たちを、エラーなんて呼ばせない。 読書家レディ:終わりのはずなのに、ここは希望に満ちていた。私の見惚れた絶望の瞳は、もうここにはない。 レイメイ:(新)おやすみ、オリジナルの僕。 レイメイ(オリジナル)行ってらっしゃい、レイメイ。 0:さらに3年後、下層区、工場階層。 ふき:……失敗したとは、思ってなかったけどさ。ちゃんと飛ばせてたんだね、たぶん。 b:派手にやってるみたいね。私の知っているレイメイとは思えないわ。 ふき:俺的には、ちょっとイメージ通りだけど……。 読書家レディ:上層階から出たゴミの中から引っ張り出される、上層区の新聞記事のかけら。 b:大暴れね。いけ好かない上層でも、こんなに権限ふりかざして無茶苦茶に動くなんて。下層の私たちでさえ噂を聞くなんて、よっぽどだわ。 ふき:上層のお偉いさんは身分と権限で殴り合うって、下層じゃ言われてるけどちがうの? b:やりすぎたら、人間関係がギクシャクして、友人だと思ってた数人に嘘のスキャンダルを流されて、処刑よ。 ふき:ええ……俺だったら怖くてなにもできなくなりそう。上層も生きるの大変なんだね。……ってことは、今頃レイメイ、処刑されてない? b:下手なうわさより派手なことしてるんだもの。身分制度取っ払う気なんじゃない?それにね、レイメイ、ほんとはすごいんだから!本物の天才なんだから! ふき:……嬉しそう、だね? b:あら、そう見える? ふき:いじわるな顔してるよ。 b:私にはふきが嫉妬してるように見えるわ。 読書家レディ:ああ、気に食わない。今の人間たちは読書家レディのことを知っているはずなのに。誰も読書家レディを恐れやしない。読書家レディにおびえ、混乱し、称えてくれるか弱き人間たちじゃない。レイメイばっかり注目されている。 ふき:この調子なら、レディに誰かがしおりを使わせても、レイメイが上層の人たちをなんとかしてくれるかもね。 b:レイメイは賢いのよ! ふき:……ビイは、レイメイが好きなんだ。 b:悲しいお別れの仕方になってしまったけど。あと許せないこともいっぱいあるけど。そうね、きっとキライにはなれないでしょうね。100年、一緒に死檻と戦ってふきを待っていてくれたんだもの。 ふき:……それはさ、そうだけどさ。 b:今となっては、捨ててくれて良かったのかもしれない。私はここに落ちてきたときに、理性を失うほどの怒りも、見限られた悔しさも、落としてしまえたんだわ。 読書家レディ:読書家レディに気が付かず、仲良く話すひとりとひとつは、周りが静まり返り、固唾をのんで見守っていることにも気が付かない。 ふき:今でも割と怒ると思うんだけどな? b:これでも一人前の、ふきの家族なんだもの。ふきとだったら、私、AIでも化け物でも育てちゃうんだから。 レイメイ:なかなかに、聞き捨てならないな? ふき:(ひゅっと息をのむ音) b:レイメ……いや、誰よあんた。 レイメイ:居場所こそ違えど、機能して、かつこちらを識別しているとはね。嬉しいなあ。バレるとまでは思わなかった。 b:直立してたらレイメイそのものよ。声だけでも……そうね、レイメイよね。でも、ううん。ごめんなさい。レイメイ、何か変わったのね、別人かと思ってしまったの。  レイメイ:賢いなあ、bは。嬉しいよ。 ふき:ビイ、ビイ頭下げて。ビイは一応工場員登録してるけど工場員だから。目を合わせたりお話しちゃまずいよ。 b:文句を言う奴がいたらぶん殴ってやるわ。 ふき:強いビイは素敵だけど、今は俺に合わせてくれないかな。本当にお願いだから。 レイメイ:あ、そうだったそうだった。「黎明権限によって、工場員ふきと工場員ビイを徴集する」。 b:あんためちゃくちゃよ!!話に聞いていたより!! ふき:ええ……ええええ?話していいの? レイメイ:とにかく、黎明研究室で話そう。……僕はここでもかまわないが、下層の子たちが食事も呼吸も遠慮してしまいそうだからね。 b:…………あなた、変わったわ。 0:「黎明」と「使用中」のプレートが揺れている研究室。ふき、b、レイメイ、そして読書家レディがいる。 読書家レディ:ああ、気に食わない。ほんとに気に食わないよ。 b:ずいぶん、調子に乗っているようじゃない。 レイメイ:もう、お飾りの責任者でいるのをやめたんだ。やっぱり、僕のことを警戒しているんだな。 ふき:……ちゃんと、届いた? レイメイ:届いたよ。その技術を使ってできた、bタイプと同じ、人間に溶け込んで動ける機械なんだ、この体は。 ふき:えっ、機械なの? b:それなら余計に、接触してきた目的が分からないわ。 レイメイ:まあまあ。この体はね、肉体ではなく機体だ。非公式な説明をするなら……人間と同じ集合的有機体。人間よりも希少な物質を組み、それでいて設計図は人間の外側そのもの。この技術はそもそも、bタイプ機械兵プロジェクトのものだ。 b:また私を回収に来たの?また同じことを?私たちの未来はあんなにも地獄だというのに、また「読書家レディ」に挑むまでのくだらない弁論に時間を費やすつもり? レイメイ:そう。bの言うように、僕らの敵は人間じゃない。さっさと協力して、死檻になる前に読書家レディに対策をうつべきだ。 b:分かっているのに貴方は……!! レイメイ:だからね。君たちを味方にした時に反発するバカを先に潰してしまおうと動いて三年。そう、三年もかかったんだ。ほんとに、知識や経験を得ても、変わりたくない奴らってのは変わらなくて困ったよ。bだって、僕を信用してない。できないだろ?bから見たら、君を廃棄した父親の生み出した、弟だ。何を命じられているか、何を根に持っているかわかったもんじゃない。 b:……貴方は、レイメイ2号なのね?死檻に勝てないと分かってからやっと協力してきた3号じゃなくて。 ふき:3号って、白のしおりの時点のレイメイだっけ。 b:そうよ。あれはもっと、低品質で間に合わせだったけれど。 レイメイ:僕は初代レイメイの後悔や弱さを解決するためにつくられた。だから、僕は君たちと世界の終わりを駆け抜けたレイメイじゃない。だからこそ、初対面としてあいさつをさせてくれ。 読書家レディ:控えめで、諦めと絶望を引きずった瞳はそこにない。オリジナルとそっくり同じかたちで、希望と高慢さを兼ね備えた視線の研究者は、礼をし、片手を差し出す。 レイメイ:初代レイメイは、君が理不尽に脅かされ破壊されることを望まない。だから、助ける。「読書家レディ」の問題が片付いたら、関わらない。もっとやりたいことがたくさんあるからね。 ふき:レイメイが、もっと、やりたいことってなに? レイメイ:たくさんだよ。工場員の知らない、たくさんのこと。まずは上層階層のお片付けと、遊び方のルール変更、けんか、ああ、bみたいに下層にジャンプもしてみたいね。 b:オリジナル……初代のレイメイも、そんなことがしたかったの? レイメイ:そんなこと、か。大事だと思うんだが。 ふき:そうそう。ビイは大切なことを分かってないんだよ。 b:どうしてふきはそっちの味方なのよ!! ふき:「読書家レディ」をなんとかしないとね。レイメイも、好きなようにやってみてもいいんじゃない?ずっと俺たちに付き合ってきてくれたんだからさ。 b:(溜息) 読書家レディ:読書家レディの目の前で、読書家レディにひどいことする話が進んでる。ああ悔しいこと。 b:……ちなみに、レイメイは読書家レディと、なにか話した?やり直してから、この5年くらいの間に。 レイメイ:てっきり彼女は「読書家ふき」に付きまとっているものだと。そっちに行っていないのかい? 読書家レディ:読書家レディはずっと見ていたよ。レイメイも、ふきも、bタイプも。 ふき:いや、姿を見てないし、声も聞いてない。どこ行っちゃったんだろう。 読書家レディ:おまえたちは、薄情だ。 b:ほんとよ。 読書家レディ:読書家レディはずっとここにいるのに。 b:だから、見えてないのよあんた。この2人には。 レイメイ:b、もしかしなくても、君は感知してるんだね?熱感知はできないが……初代もどうやって見つけていたんだか。 b:ほら、この辺。ここにいるわよ。 ふき:そう言われてもなあ……。 b:ほらレディ、レイメイに会ったら、真っ先に何を言うんだっけ? 読書家レディ:読書家レディは人間に媚びない。 b:レディ、久しぶりに話す人間には挨拶しなさい。貴婦人になるんでしょ。 読書家レディ:読書家レディは貴婦人。既にレディ。立派なお姉さん。 レイメイ:うわ。 ふき:えっ。 b:見えちゃったみたいだけど、久々の会話がそれでいいの? 読書家レディ:……レイメイ。ちゃんと、見えてる?聞いてくれる? レイメイ:あ、ああ。視覚に存在しているし、音声も人間のものに聞こえるし、体温もあるんだな……。 ふき:いや!いやいやいや、ちっちゃ b:ふき。失礼。 ふき:……俺とはじめて会った時、俺の3倍くらいでかくなかった?なんで?レイメイ知ってる? レイメイ:初代レイメイの記憶では、腰の曲がった巨大な……人間の真似をしたがる怪異だったはずだが。 b:あんたたちそろいもそろってほんと失礼!! 読書家レディ:読書家レディはレディ。貴婦人。巨婦人じゃない。 ふき:ドレスのすそ握って泣きそうな女の子に俺は見えてるんだけど。 レイメイ:奇遇だな。 b:そろそろ殴るわよあんたたち。レディが殴らなくても私がこの手で。 レイメイ:すまない、すまなかったよ、可憐なレディ。機嫌を直してくれるね? 読書家レディ:読書家レディはゆるしてやらないこともない。だっこ。 レイメイ:(小声)いいのかこれ抱き上げて。 ふき:あ、こっちのソファでだっこしなよ。 b:レイメイ、まだ5年前とキッチン回り一緒?お茶淹れるわ。ふき、手伝って覚えなさい。お茶くみは簡単よ。 ふき:はいはい、よろしくね。これが……ポット? b:それはどんぶりよ。 レイメイ:おいおい、小さくてもこれは世界最大の災厄になる… 読書家レディ:読書家レディをだっこすべきそうすべき。 レイメイ:……お茶しながら作戦会議するつもりだったけどさああ!! ふき:素材もサイズもばらばらの椅子とソファに、それぞれ、……便宜上、4人。 レイメイ:だいぶ肩透かしではあるが。 b:私だってそうよ。 ふき:れでちゃん、お茶のおかわりいりますか? 読書家レディ:読書家レディは貧民の粗茶など飲まない。 ふき:ムズカシイ言葉知ってるね~~ 読書家レディ:でも飲むまねっこをしてあげなくもない。 ふき:わあ上手ぅ。 レイメイ:読書家レディは、他にも読書家がいると察知すると意気消沈したと? b:高慢さを餌に育つ、という前の推論が当たっているなら、ね。自信がぽっきり折れちゃったみたい。 レイメイ:それで弱体化し、もはやほとんどの人間に気づかれないレベルにまで、こう……縮小したと。 b:私も、いじけてるレディをたまたま見つけただけよ。 読書家レディ:bタイプ。それは女の子の秘密だ。 b:言わないわよ。 読書家レディ:それなら読書家レディは安心して茶を飲む。 ふき:ねえ見てビイ!だいぶうまくなったよお茶くみ!!! b:ふきはどうしてどんぶりにお茶を注いでいるの? 読書家レディ:読書家レディは凡人と同じカップを使わない。器がでかいのは、いいこと。 レイメイ:なんか、噛みあっちゃったねえこの子たち。 b:……レイメイ、この子、引き取るわ。 レイメイ:そりゃあ、助かるけど。 b:申請とかそのあたり、便宜測って頂戴。ふきと私では弱いわ。 レイメイ:レイメイの後ろ盾はでかすぎて問題じゃないかな? ふき:お茶飽きてない? 読書家レディ:飽きたわ。 ふき:ぼーっとしてようか。 読書家レディ:どうやるの? ふき:考えないんだよ。 読書家レディ:読書家レディは考えない……。いい、いいわ。なんか賢いお姉さんみたい。 ふき:ぼーっとしてよう。 読書家レディ:読書家レディは考えない……。 b:私たちで、レディのこころを満たしてあげれば、しおりはいらないと思わない?人間を滅ぼす餌だと思わないように、守るべき相手だと思わせれば、絶望の未来は先送りにできる。 レイメイ:先送り、だけどね。現状切り刻むわけにいかないから、他に方法はないけど。……レディの状態を知っていたのに報告してこなかったのか? b:あんたこの5年間振り返りなさいよ。ニュース記事に毎週載ってたじゃない。下層から有名人に接触なんて無理よ。 レイメイ:正確には、3日に1回以上だ。オリジナルの公表できなかった個人研究の知識を小出しに、全部出すつもりだよ。 b:……オリジナルのレイメイは、私のせいで。 レイメイ:ちがうよ。レイメイの後悔と弱さは、我が子のようなbタイプや、作品たちを迫害されても守れなかったことだ。人目や自分の地位ばかり気にして、bタイプを自らの手で手放したこと。bを失った後も、作品の権利を奪われたり、研究の自由を失うことが続いたし、レイメイの名前が表に出た試作品に不幸が続いた。それらも、思うように守れなかった。 b:私は、レイメイを助けられなかった。 レイメイ:そうだけど、他に大事にしたい人ができたんだろ?父親気取りとしては、複雑だけど恨んじゃいないよ。 b:そうかしら。 レイメイ:僕が言うんだからそうだよ。 読書家レディ:レイメイは立ち上がる。この物語は、きっと別の物語につながるのだ。 ふき:ビイ、結局どうするんだいこの子。 b:連れて帰る……あ、無理ね。レイメイ、空き部屋ない? レイメイ:僕明日から裁判だから、ここにいていいけど? b:はあ?余計に危険じゃないの!! レイメイ:私室とか仮眠室、埃だらけだけど、ふき一人が寝るにはいいんじゃない? b:あんたまた休まずに研究してんの!? レイメイ:君と同じロボみたいもんなんだってば……。 ふき:ああ、俺もベッドなくていいよ。 b:ふきまで……。 レイメイ:ふき、人間はおとなしく休みなさい。 ふき:あんたら、俺を「読書家」にしたこと忘れてない……? b:え?引き継がれてるの? ふき:引き継いだよ、また同じ未来に行くのはごめんだからね。 b:……ふき、あんた今まで普通に生活してたじゃない? ふき:ビイが心配するんだもん。 b:ああもう殴る!! ふき:ごめっ、ごめんて!レイメイさーん! 読書家レディ:読書家レディはとても愉快。 レイメイ:……ここ、人間が誰もいないのか……。 ふき:ビイだけちゃんと隠れる場所ほしいね。俺とレディは、見えなくなる方法があるから。 b:どうしてこんなことになったのかしら。 ふき:……AIでも化け物でも、育ててくれちゃうんだよね。ビイ。 b:まさか、こうなるとは思ってなかったわよ。 読書家レディ:おまえたち、レディの世話係ってこと? ふき:そうだよ。 b:ちがうわよ。 読書家レディ:くるしゅうないわ。 レイメイ:育て方誤るなよ君たち。 b:分かってるわよ。 読書家レディ:レイメイは旅立った。あれから会ってない。でも、きっと、ページをめくればそこにいる。 読書家レディ:昔の話だ。私がはじめて見たのは、小さな少年が、白い服の男と女に、怒られているところだった。生まれたての私は、しおりのことも、私の持つ力のことも知らない、無力なおばけ。話しかけても無視をされ、ぶつかられても謝られもしない。 読書家レディ:男と女が去っていくと、とてもきれいな瞳の少年が固まっていた。試しに私が話しかけると、誰かと問う少年。私を、見てくれた、絶望の瞳。おまえよりはお姉さんだ、と嘘をつくと、少年は言ったのだ。 レイメイ:……じゃあ、「レディ」ってこと? 読書家レディ:私は「読書家レディ」。今や、ふきとbタイプに愛される、素敵なレディだ。

0:【黎明のしおり→赤のしおり】 0:【赤のしおりから再開】 ふき:無機質で整頓された白と青で統一された部屋。その窓から、眼鏡の研究者が袋を放り投げる。 レイメイ:彼女を捨ててしまった。いや、こんな言い方を外でしてしまったら、僕まで捨てられてしまうか。 レイメイ:さて、あんなボロボロのクローン。作った覚えはないんだけどな?やっぱり君は……。 ふき:突如現れた自分とうりふたつの何かに早足で近づくレイメイ。 レイメイ:……知っていたはずなのにな。「読書家」たちはどうにも、仕事がいいかげんらしい。 ふき:最後まで狂気に手を染めなかった研究者が、ひとまわり小さな、どこか自分に似た不出来なリサイクル品を抱き上げる。 レイメイ:こんなことになる前に、なんとかしなくてはならないね? 0:場面は上層から下層への吹き抜けを落ちていく、捨てられたbへ。 ふき:同時刻、落下していくビイ。 読書家レディ:読書家レディは知らない。レディは、何もしていない。だが、何かおかしい。レディの知らないことが起きている? b:私は優れた、暗殺マシンであるべきだった。 読書家レディ:私の読んでいた物語はどこ?私は「読書家レディ」、私が、私だけが「読書家レディ」なのに。 b:猟奇マシンであるべきじゃなかった。人間たちはそうあることを求めなかった。 読書家レディ:私以外が未来を変える?私以外を頼った人間がいる?そんな、ひどい、悲しいこと、ああでもこれは間違いなく。 b:簡単に終わらせてなるものか。楽にいかせてなるものか、と。私を一度でも侮ったものは許さない。たとえ、私自身であっても許しはしない。 ふき:脆弱なひとりの工場員の網にかかって一命を取り留める?そんなかわいい、救われるだけの少女だと侮り、諦めたのはビイ自身だ。 b:許さない。私のせいでふきが、レイメイが苦しむ未来も、弱い私も許さない。 読書家レディ:目の色を変えたbタイプの大きな腕が、中層の壁をひっかき、破損しながら落下の衝撃を逃がしていく。 b:私を助けて死ぬなんて、今度は絶対に許さないんだから。 ふき:俺は、体中に結び付けた網の端を手に、体を起こす。 b:……やっぱり。ふき、前回も自分でつっぱり棒になろうとしてたのね? ふき:顔を上げれば、大きなジェット燃料を燃やして、器用に宙に浮く、ビイがいた。 b:やっぱり許さないわ。 ふき:ビイって、怒ってるとき許さないって言うよね。 b:私、感情なんてあっちゃいけないのよ。静かに命令に従う暗殺機械兵なんだから。 ふき:静かに命令に従う暗殺機械兵……なの? b:もう捨てられたんだから、その期待に応える気はないわ。私、好きに生きるのよ。笑うし、怒って、命令なんか聞かないわ。 ふき:そうだね。でも、俺の知ってるビイって、はじめからそうだったような……。 b:あら、ちゃんと健気ないい子だったじゃない。ほら、部屋入れて。網、切ってあげる。 読書家レディ:未来が、私以外の手で、変わってしまった。 b:あと、自己犠牲を払おうとしたこと、まだ許してないわよ? ふき:だって、ビイがそんなパーツ付けて落ちて来てたなんて知らなかったんだよ?あれ?今初めて知ったんじゃない? b:いいえ、見たことはあるはずよ。 ふき:いーや、初めてだよ。 b:ふき?私、本当に怒っているのよ? ふき:でも笑顔じゃないか。 b:笑顔で怒る人がいることを、ふきは知るべきだわ。 ふき:嬉しそうだと思うんだけどなあ……。 0:2年後。研究室に「黎明」と「使用中」のプレートが揺れている。 読書家レディ:防護シャッターの奥、巨大な金庫の中の、鍵の付いた扉の先の、防音室。うりふたつの存在が、額を突き合わせるように別れを惜しんで、そして喜んでいる。 レイメイ:(オリジナル)いいかい、この名前は今この時から君のものだ。レイメイ。この名を、権限を、存在を、すべて君に。レイメイ、君が、レイメイだ。 レイメイ:(新)貴方の弱さを、後悔を、この記憶を無駄にはしない。 レイメイ:(オリジナル)bに伝えてほしい。そしてレイメイも忘れないで。「この感情は、不合理な自由意志はエラーなんかじゃない」。初代レイメイが宣言する。君たちを、僕の子供たちを、エラーなんて呼ばせない。 読書家レディ:終わりのはずなのに、ここは希望に満ちていた。私の見惚れた絶望の瞳は、もうここにはない。 レイメイ:(新)おやすみ、オリジナルの僕。 レイメイ(オリジナル)行ってらっしゃい、レイメイ。 0:さらに3年後、下層区、工場階層。 ふき:……失敗したとは、思ってなかったけどさ。ちゃんと飛ばせてたんだね、たぶん。 b:派手にやってるみたいね。私の知っているレイメイとは思えないわ。 ふき:俺的には、ちょっとイメージ通りだけど……。 読書家レディ:上層階から出たゴミの中から引っ張り出される、上層区の新聞記事のかけら。 b:大暴れね。いけ好かない上層でも、こんなに権限ふりかざして無茶苦茶に動くなんて。下層の私たちでさえ噂を聞くなんて、よっぽどだわ。 ふき:上層のお偉いさんは身分と権限で殴り合うって、下層じゃ言われてるけどちがうの? b:やりすぎたら、人間関係がギクシャクして、友人だと思ってた数人に嘘のスキャンダルを流されて、処刑よ。 ふき:ええ……俺だったら怖くてなにもできなくなりそう。上層も生きるの大変なんだね。……ってことは、今頃レイメイ、処刑されてない? b:下手なうわさより派手なことしてるんだもの。身分制度取っ払う気なんじゃない?それにね、レイメイ、ほんとはすごいんだから!本物の天才なんだから! ふき:……嬉しそう、だね? b:あら、そう見える? ふき:いじわるな顔してるよ。 b:私にはふきが嫉妬してるように見えるわ。 読書家レディ:ああ、気に食わない。今の人間たちは読書家レディのことを知っているはずなのに。誰も読書家レディを恐れやしない。読書家レディにおびえ、混乱し、称えてくれるか弱き人間たちじゃない。レイメイばっかり注目されている。 ふき:この調子なら、レディに誰かがしおりを使わせても、レイメイが上層の人たちをなんとかしてくれるかもね。 b:レイメイは賢いのよ! ふき:……ビイは、レイメイが好きなんだ。 b:悲しいお別れの仕方になってしまったけど。あと許せないこともいっぱいあるけど。そうね、きっとキライにはなれないでしょうね。100年、一緒に死檻と戦ってふきを待っていてくれたんだもの。 ふき:……それはさ、そうだけどさ。 b:今となっては、捨ててくれて良かったのかもしれない。私はここに落ちてきたときに、理性を失うほどの怒りも、見限られた悔しさも、落としてしまえたんだわ。 読書家レディ:読書家レディに気が付かず、仲良く話すひとりとひとつは、周りが静まり返り、固唾をのんで見守っていることにも気が付かない。 ふき:今でも割と怒ると思うんだけどな? b:これでも一人前の、ふきの家族なんだもの。ふきとだったら、私、AIでも化け物でも育てちゃうんだから。 レイメイ:なかなかに、聞き捨てならないな? ふき:(ひゅっと息をのむ音) b:レイメ……いや、誰よあんた。 レイメイ:居場所こそ違えど、機能して、かつこちらを識別しているとはね。嬉しいなあ。バレるとまでは思わなかった。 b:直立してたらレイメイそのものよ。声だけでも……そうね、レイメイよね。でも、ううん。ごめんなさい。レイメイ、何か変わったのね、別人かと思ってしまったの。  レイメイ:賢いなあ、bは。嬉しいよ。 ふき:ビイ、ビイ頭下げて。ビイは一応工場員登録してるけど工場員だから。目を合わせたりお話しちゃまずいよ。 b:文句を言う奴がいたらぶん殴ってやるわ。 ふき:強いビイは素敵だけど、今は俺に合わせてくれないかな。本当にお願いだから。 レイメイ:あ、そうだったそうだった。「黎明権限によって、工場員ふきと工場員ビイを徴集する」。 b:あんためちゃくちゃよ!!話に聞いていたより!! ふき:ええ……ええええ?話していいの? レイメイ:とにかく、黎明研究室で話そう。……僕はここでもかまわないが、下層の子たちが食事も呼吸も遠慮してしまいそうだからね。 b:…………あなた、変わったわ。 0:「黎明」と「使用中」のプレートが揺れている研究室。ふき、b、レイメイ、そして読書家レディがいる。 読書家レディ:ああ、気に食わない。ほんとに気に食わないよ。 b:ずいぶん、調子に乗っているようじゃない。 レイメイ:もう、お飾りの責任者でいるのをやめたんだ。やっぱり、僕のことを警戒しているんだな。 ふき:……ちゃんと、届いた? レイメイ:届いたよ。その技術を使ってできた、bタイプと同じ、人間に溶け込んで動ける機械なんだ、この体は。 ふき:えっ、機械なの? b:それなら余計に、接触してきた目的が分からないわ。 レイメイ:まあまあ。この体はね、肉体ではなく機体だ。非公式な説明をするなら……人間と同じ集合的有機体。人間よりも希少な物質を組み、それでいて設計図は人間の外側そのもの。この技術はそもそも、bタイプ機械兵プロジェクトのものだ。 b:また私を回収に来たの?また同じことを?私たちの未来はあんなにも地獄だというのに、また「読書家レディ」に挑むまでのくだらない弁論に時間を費やすつもり? レイメイ:そう。bの言うように、僕らの敵は人間じゃない。さっさと協力して、死檻になる前に読書家レディに対策をうつべきだ。 b:分かっているのに貴方は……!! レイメイ:だからね。君たちを味方にした時に反発するバカを先に潰してしまおうと動いて三年。そう、三年もかかったんだ。ほんとに、知識や経験を得ても、変わりたくない奴らってのは変わらなくて困ったよ。bだって、僕を信用してない。できないだろ?bから見たら、君を廃棄した父親の生み出した、弟だ。何を命じられているか、何を根に持っているかわかったもんじゃない。 b:……貴方は、レイメイ2号なのね?死檻に勝てないと分かってからやっと協力してきた3号じゃなくて。 ふき:3号って、白のしおりの時点のレイメイだっけ。 b:そうよ。あれはもっと、低品質で間に合わせだったけれど。 レイメイ:僕は初代レイメイの後悔や弱さを解決するためにつくられた。だから、僕は君たちと世界の終わりを駆け抜けたレイメイじゃない。だからこそ、初対面としてあいさつをさせてくれ。 読書家レディ:控えめで、諦めと絶望を引きずった瞳はそこにない。オリジナルとそっくり同じかたちで、希望と高慢さを兼ね備えた視線の研究者は、礼をし、片手を差し出す。 レイメイ:初代レイメイは、君が理不尽に脅かされ破壊されることを望まない。だから、助ける。「読書家レディ」の問題が片付いたら、関わらない。もっとやりたいことがたくさんあるからね。 ふき:レイメイが、もっと、やりたいことってなに? レイメイ:たくさんだよ。工場員の知らない、たくさんのこと。まずは上層階層のお片付けと、遊び方のルール変更、けんか、ああ、bみたいに下層にジャンプもしてみたいね。 b:オリジナル……初代のレイメイも、そんなことがしたかったの? レイメイ:そんなこと、か。大事だと思うんだが。 ふき:そうそう。ビイは大切なことを分かってないんだよ。 b:どうしてふきはそっちの味方なのよ!! ふき:「読書家レディ」をなんとかしないとね。レイメイも、好きなようにやってみてもいいんじゃない?ずっと俺たちに付き合ってきてくれたんだからさ。 b:(溜息) 読書家レディ:読書家レディの目の前で、読書家レディにひどいことする話が進んでる。ああ悔しいこと。 b:……ちなみに、レイメイは読書家レディと、なにか話した?やり直してから、この5年くらいの間に。 レイメイ:てっきり彼女は「読書家ふき」に付きまとっているものだと。そっちに行っていないのかい? 読書家レディ:読書家レディはずっと見ていたよ。レイメイも、ふきも、bタイプも。 ふき:いや、姿を見てないし、声も聞いてない。どこ行っちゃったんだろう。 読書家レディ:おまえたちは、薄情だ。 b:ほんとよ。 読書家レディ:読書家レディはずっとここにいるのに。 b:だから、見えてないのよあんた。この2人には。 レイメイ:b、もしかしなくても、君は感知してるんだね?熱感知はできないが……初代もどうやって見つけていたんだか。 b:ほら、この辺。ここにいるわよ。 ふき:そう言われてもなあ……。 b:ほらレディ、レイメイに会ったら、真っ先に何を言うんだっけ? 読書家レディ:読書家レディは人間に媚びない。 b:レディ、久しぶりに話す人間には挨拶しなさい。貴婦人になるんでしょ。 読書家レディ:読書家レディは貴婦人。既にレディ。立派なお姉さん。 レイメイ:うわ。 ふき:えっ。 b:見えちゃったみたいだけど、久々の会話がそれでいいの? 読書家レディ:……レイメイ。ちゃんと、見えてる?聞いてくれる? レイメイ:あ、ああ。視覚に存在しているし、音声も人間のものに聞こえるし、体温もあるんだな……。 ふき:いや!いやいやいや、ちっちゃ b:ふき。失礼。 ふき:……俺とはじめて会った時、俺の3倍くらいでかくなかった?なんで?レイメイ知ってる? レイメイ:初代レイメイの記憶では、腰の曲がった巨大な……人間の真似をしたがる怪異だったはずだが。 b:あんたたちそろいもそろってほんと失礼!! 読書家レディ:読書家レディはレディ。貴婦人。巨婦人じゃない。 ふき:ドレスのすそ握って泣きそうな女の子に俺は見えてるんだけど。 レイメイ:奇遇だな。 b:そろそろ殴るわよあんたたち。レディが殴らなくても私がこの手で。 レイメイ:すまない、すまなかったよ、可憐なレディ。機嫌を直してくれるね? 読書家レディ:読書家レディはゆるしてやらないこともない。だっこ。 レイメイ:(小声)いいのかこれ抱き上げて。 ふき:あ、こっちのソファでだっこしなよ。 b:レイメイ、まだ5年前とキッチン回り一緒?お茶淹れるわ。ふき、手伝って覚えなさい。お茶くみは簡単よ。 ふき:はいはい、よろしくね。これが……ポット? b:それはどんぶりよ。 レイメイ:おいおい、小さくてもこれは世界最大の災厄になる… 読書家レディ:読書家レディをだっこすべきそうすべき。 レイメイ:……お茶しながら作戦会議するつもりだったけどさああ!! ふき:素材もサイズもばらばらの椅子とソファに、それぞれ、……便宜上、4人。 レイメイ:だいぶ肩透かしではあるが。 b:私だってそうよ。 ふき:れでちゃん、お茶のおかわりいりますか? 読書家レディ:読書家レディは貧民の粗茶など飲まない。 ふき:ムズカシイ言葉知ってるね~~ 読書家レディ:でも飲むまねっこをしてあげなくもない。 ふき:わあ上手ぅ。 レイメイ:読書家レディは、他にも読書家がいると察知すると意気消沈したと? b:高慢さを餌に育つ、という前の推論が当たっているなら、ね。自信がぽっきり折れちゃったみたい。 レイメイ:それで弱体化し、もはやほとんどの人間に気づかれないレベルにまで、こう……縮小したと。 b:私も、いじけてるレディをたまたま見つけただけよ。 読書家レディ:bタイプ。それは女の子の秘密だ。 b:言わないわよ。 読書家レディ:それなら読書家レディは安心して茶を飲む。 ふき:ねえ見てビイ!だいぶうまくなったよお茶くみ!!! b:ふきはどうしてどんぶりにお茶を注いでいるの? 読書家レディ:読書家レディは凡人と同じカップを使わない。器がでかいのは、いいこと。 レイメイ:なんか、噛みあっちゃったねえこの子たち。 b:……レイメイ、この子、引き取るわ。 レイメイ:そりゃあ、助かるけど。 b:申請とかそのあたり、便宜測って頂戴。ふきと私では弱いわ。 レイメイ:レイメイの後ろ盾はでかすぎて問題じゃないかな? ふき:お茶飽きてない? 読書家レディ:飽きたわ。 ふき:ぼーっとしてようか。 読書家レディ:どうやるの? ふき:考えないんだよ。 読書家レディ:読書家レディは考えない……。いい、いいわ。なんか賢いお姉さんみたい。 ふき:ぼーっとしてよう。 読書家レディ:読書家レディは考えない……。 b:私たちで、レディのこころを満たしてあげれば、しおりはいらないと思わない?人間を滅ぼす餌だと思わないように、守るべき相手だと思わせれば、絶望の未来は先送りにできる。 レイメイ:先送り、だけどね。現状切り刻むわけにいかないから、他に方法はないけど。……レディの状態を知っていたのに報告してこなかったのか? b:あんたこの5年間振り返りなさいよ。ニュース記事に毎週載ってたじゃない。下層から有名人に接触なんて無理よ。 レイメイ:正確には、3日に1回以上だ。オリジナルの公表できなかった個人研究の知識を小出しに、全部出すつもりだよ。 b:……オリジナルのレイメイは、私のせいで。 レイメイ:ちがうよ。レイメイの後悔と弱さは、我が子のようなbタイプや、作品たちを迫害されても守れなかったことだ。人目や自分の地位ばかり気にして、bタイプを自らの手で手放したこと。bを失った後も、作品の権利を奪われたり、研究の自由を失うことが続いたし、レイメイの名前が表に出た試作品に不幸が続いた。それらも、思うように守れなかった。 b:私は、レイメイを助けられなかった。 レイメイ:そうだけど、他に大事にしたい人ができたんだろ?父親気取りとしては、複雑だけど恨んじゃいないよ。 b:そうかしら。 レイメイ:僕が言うんだからそうだよ。 読書家レディ:レイメイは立ち上がる。この物語は、きっと別の物語につながるのだ。 ふき:ビイ、結局どうするんだいこの子。 b:連れて帰る……あ、無理ね。レイメイ、空き部屋ない? レイメイ:僕明日から裁判だから、ここにいていいけど? b:はあ?余計に危険じゃないの!! レイメイ:私室とか仮眠室、埃だらけだけど、ふき一人が寝るにはいいんじゃない? b:あんたまた休まずに研究してんの!? レイメイ:君と同じロボみたいもんなんだってば……。 ふき:ああ、俺もベッドなくていいよ。 b:ふきまで……。 レイメイ:ふき、人間はおとなしく休みなさい。 ふき:あんたら、俺を「読書家」にしたこと忘れてない……? b:え?引き継がれてるの? ふき:引き継いだよ、また同じ未来に行くのはごめんだからね。 b:……ふき、あんた今まで普通に生活してたじゃない? ふき:ビイが心配するんだもん。 b:ああもう殴る!! ふき:ごめっ、ごめんて!レイメイさーん! 読書家レディ:読書家レディはとても愉快。 レイメイ:……ここ、人間が誰もいないのか……。 ふき:ビイだけちゃんと隠れる場所ほしいね。俺とレディは、見えなくなる方法があるから。 b:どうしてこんなことになったのかしら。 ふき:……AIでも化け物でも、育ててくれちゃうんだよね。ビイ。 b:まさか、こうなるとは思ってなかったわよ。 読書家レディ:おまえたち、レディの世話係ってこと? ふき:そうだよ。 b:ちがうわよ。 読書家レディ:くるしゅうないわ。 レイメイ:育て方誤るなよ君たち。 b:分かってるわよ。 読書家レディ:レイメイは旅立った。あれから会ってない。でも、きっと、ページをめくればそこにいる。 読書家レディ:昔の話だ。私がはじめて見たのは、小さな少年が、白い服の男と女に、怒られているところだった。生まれたての私は、しおりのことも、私の持つ力のことも知らない、無力なおばけ。話しかけても無視をされ、ぶつかられても謝られもしない。 読書家レディ:男と女が去っていくと、とてもきれいな瞳の少年が固まっていた。試しに私が話しかけると、誰かと問う少年。私を、見てくれた、絶望の瞳。おまえよりはお姉さんだ、と嘘をつくと、少年は言ったのだ。 レイメイ:……じゃあ、「レディ」ってこと? 読書家レディ:私は「読書家レディ」。今や、ふきとbタイプに愛される、素敵なレディだ。