台本概要
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タイトル | 【バトル系】月に変わらぬ鳥の歌 |
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作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(男2、不問3) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
月の結晶は死んだ者を生き返らせる効果がある そんな月の結晶を強奪する組織、風切(かざきり)と 月の結晶を守るものたちが己の信念を掲げ、熱く戦う 481 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
カナメ | 不問 | 152 | お金が大好き 猛禽類の隼(はやぶさ)姿で戦う |
シラウ | 不問 | 160 | 色んな歌が聞こえる少年 作中では出てこないですが15歳くらいの設定です |
クロハ | 男 | 141 | さまざまな葛藤を抱えている シラウには兄貴と慕われている |
ランギク | 不問 | 74 | キレる時に口調が荒くなる オネエ口調だったり妖艶な感じで良いです |
ハヅキ | 男 | 145 | 仮面を被った謎の人物 風を技を使う |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:3人は追いかけられていた
カナメ:おおおぉいーー!!なぜいきなり追いかけられてるんです!?あなた達のせいですよ!どうしてくれるんですか!
シラウ:わかんないっすよ!なんでいきなり追いかけられてるっすか!あの飯屋の店主、オイラと兄貴のこと君の仲間だと思ってるっす!
クロハ:全く!いきなり追いかけられても困るわ!金持ってないなら言ってくれよ!
カナメ:あなた達だってお金持ってるんでしょう?
クロハ:これは5年間シラウと貯め続けた金だ!1天も無駄に出来ないんだ!
カナメ:いいですよ!減るもんじゃないですし!
クロハ:お前は減らないだろうな!こっちはおもくそ減るだろ!
シラウ:兄貴ー!何とかしてぇー!
クロハ:仕方ねぇなー!追いかけてくる店の店主には恨みはねぇが
クロハ:茂葉理図無!(もよりずむ)
0:クロハが地面に手を当てると無数の葉が追いかけていた店主に襲いかかる
クロハ:行くぞ!
カナメ:やりますね!
カナメ:ふぅー!危なかったー!
シラウ:はあ、はあ、走るのは苦手っす
クロハ:んで?お前は誰なんだ?
カナメ:聞かれてますよ?
クロハ:お前のこと言ってんだよ!
カナメ:私ですか?私はただの旅人ですよ
クロハ:旅人だー?旅人だったらちゃんと金持ってろよ
カナメ:それが……私のお金は無くなってしまったんです……
クロハ:無くなっただと?何があったんだん
カナメ:ギャンブルで無くなりました
クロハ:自業自得じゃねーかよ!
カナメ:ええそうですよ!無くなったもんは取り戻せないですからね!
クロハ:だからって食い逃げすんじゃねーよ!俺らまで巻き込まれたじゃねーか!
カナメ:お金持ってるんですよね!?匂いがしましたよ〜?
クロハ:だからって!お前お会計の時に俺らの後ろ立って一緒でって言ったろ!?俺らは2人分しか払えないって言ったらあの店主が怒ったんだぞ!
カナメ:心の狭い人達ですね〜
クロハ:お前基準の世界じゃねーんだよ!
シラウ:でも〜!鬼ごっこしてるみたいで楽しかったっす!
シラウ:兄貴もありがとう!
クロハ:ったく!もうあの町にはいけなくなるぞ?
シラウ:オイラ達も旅人だから問題はないよ!
クロハ:問題大ありだ!次の宿探さないとだしな
シラウ:ついて行くよー!兄貴ー!
カナメ:………?
カナメ:………何の音だろ?
カナメ:……っ!!危ない!
:シュパンッ!
シラウ:うわあー!
クロハ:………あ、あいつは?
ランギク:あーらぁー!避けちゃったの?勘が鋭いわね。あんた
シラウ:だ、誰っすか!ナイフなんて投げつけて!危ないっすよ!
ランギク:ごめんねぇ〜何がとは言わないけど……
ランギク:そろそろなのよ……
クロハ:………
カナメ:何の真似ですか?この方たちは私の大事な……
カナメ:金づるなのですよ?
クロハ:ついにはっきり言ったな!?
ランギク:あーらー?そこの坊や、ふざけてる暇なんてあるのかしら?
クロハ:………
ランギク:とりあえず、あんた達には死んでもらうわね
シラウ:ど、どうしてー!オイラ達何もしてないっすよー!
シラウ:まさか、さっきの店主の仲間!?
カナメ:いえ、仲間ではなさそうですね
シラウ:え?
カナメ:あの方の首には、風切(かざきり)の印(いん)が写っている
ランギク:よくご存知で!あんた。どこの国の方かしら?
カナメ:影の犯罪組織を潰すと金になりますからね
カナメ:ずっと目を付けてたんですよ
ランギク:あーらぁー!お金目当てであたし達を潰そうだなんて軽々しく見てるのね。んふふっ。んふふふふっ!あはははははははは!!!
ランギク:舐めてんじゃねーぞ?クソガキ
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
0:ランギクの振りかざしたナイフからは斬撃が飛ぶ
シラウ:うわぁー!!
クロハ:あ、あぶねぇー!
ランギク:ごめんなさいねぇーあたしのナイフの切れ味はあの大木(たいぼく)でさえ真っ二つに切ってしまうのぉー!
0:ランギクの放つ斬撃で大木が倒れる
クロハ:シラウ!避けろ!
シラウ:くぅ!
カナメ:和光鳥!(わこうどり)
0:カナメの腕からは大きな羽根が鋭くランギクに向かって振られる
クロハ:……な、なんだ!?
ランギク:おおっと!危ないじゃない!あんたのその姿…ただ者じゃなさそうね
カナメ:いい加減にして貰えますか?森の木がどれほどの価値のある存在か、あなたにはわからないんですか?
ランギク:知らないわよ。あたしは今、あんたに邪魔されてイライラしてんだよ。ぶち殺すぞ
シラウ:……あの鳥の姿…
ランギク:わからない?あんた達の持ってるその袋の中身を見せて欲しいって言ってんのよ
シラウ:こ、これはお金しか入ってないっすよ!
ランギク:嘘よ!その中には!
ランギク:月の結晶が入ってるはずよ!
カナメ:………月の結晶?
ランギク:そうよ!早く渡しなさい
クロハ:………くっ!
クロハ:その袋には金しか入ってねぇ
ランギク:……は?
クロハ:月の結晶なんて入ってねぇんだよ
ランギク:……何よ!襲って損したじゃない!
ランギク:はあ!あたしもう帰る。もうそろそろだって聞いたのにまだなの?
クロハ:…………
カナメ:あなた達の目的はなんですか?
ランギク:バカねぇ、それをあんたに教える義理なんてあるわけないでしょ?
ランギク:さようなら
0:ランギクは森の中に消えていく
シラウ:な、何だったんだ
カナメ:風切の幹部か何かですね。恐らく相当強い
シラウ:そんなやつがなんでオイラ達に!?
カナメ:わからない。けど、月の結晶を探してるなんて、悪巧みしてるに違いないですね
シラウ:っ!オイラ達も月の結晶を探してるっす!
カナメ:あなた達も?
カナメ:一体なんのために?
シラウ:月の結晶は!奇跡の結晶って呼ばれてるっす!
シラウ:死んだ人を生き返らせる力があるっすよ!だから!
シラウ:オイラの父ちゃんを!生き返らせたいっす!
カナメ:………
シラウ:君……いや、師匠!
カナメ:し、師匠!?
シラウ:このお金、あげるっす!
クロハ:シラウ!?
シラウ:この人の姿見たでしょ!兄貴!
クロハ:……あぁ、見たよ。あれは猛禽類(もうきんるい)の一族。隼(はやぶさ)の姿だった
シラウ:なら!オイラ達もこの人にかけてみるべきっす!
シラウ:月の結晶を一緒に探して欲しいっす!
カナメ:月の結晶を!?
シラウ:そうっす!月の結晶を持ってるとさっきみたいに襲われたりする事もあるっす
シラウ:だから、オイラ達を守って欲しいっす!
カナメ:何言ってるんですか。私はお金なんかに踊らされないですよ
シラウ:1000万天入ってるっす!
カナメ:全力でやらせて頂きます!
クロハ:軽すぎだろ!
クロハ:……俺は反対だぞ。シラウ。
シラウ:なんで?
クロハ:見ず知らずの人間を信用するな。お前の悪い癖だぞ
クロハ:俺らが気を抜いている間に金を取って逃げるかもしれない。仮にもこいつは隼(はやぶさ)だ
シラウ:そん時はそん時っす。食い逃げした仲だし、大丈夫だよ!
クロハ:……あのな
クロハ:はあ、じゃあ金は俺が持ってる。月の結晶が見つかったらこいつに渡すからな?
シラウ:わかった!
カナメ:全く、勝手に話を進めてますが、私だって旅人なんですよ?
シラウ:師匠は何が目的で旅してるっすか?
カナメ:私は……目的なんてないですよ
シラウ:ならオイラ達と旅に出るっすよ!
カナメ:強引ですね〜
カナメ:大体、月の結晶がどこにあるか手がかりはあるんですか?
シラウ:全くない!
クロハ:ほら、言わんこっちゃない。何も計画無しに行動するなバカ!
シラウ:でもね、声がする方に行けばきっと見つかるっすよ!
クロハ:………その声ははっきりとはきこえないだろ?
シラウ:うん、まあね、んーーじゃあーー
シラウ:助けてっすー!師匠!
カナメ:とりあえずこういう時は情報収集からですよ。隣町の方へ行きましょう
クロハ:まあさっきお前が食い逃げしたからさっきの町には行けねーからな
カナメ:それはご愛嬌ですよ
0:3人は隣町の方へ行く
0:3人はとある酒場に移動する
シラウ:師匠?ここに居て何になるっすか?
カナメ:酒場はバカの集まりとも言われてるんです。自分たちの所属している団体の情報を身内を通して簡単にベラベラと大声で話すんですよ
シラウ:それはバカっすね!!
クロハ:バカはお前だ!声がでけー!
カナメ:あなたも声が大きいですよ!バカ共に聞こえてしまう!!
:ガシャン!!
シラウ:わあああー!!大男のバカが怒った!
クロハ:言わんこっちゃねーな!
クロハ:こうなったらぶっ殺すぞ
カナメ:ダメです!無駄な争いは避けるべきですよ!
クロハ:知るか!
ハヅキ:はあ、全く。騒がしいね
0:狐の仮面を被ったある一人の男が3人に近づく
クロハ:………?
シラウ:うわあーー!!!また一人こっちに来るっすよ!
カナメ:………
ハヅキ:乱風貌(らんふうぼう)
0:男は大男を片手で持ち上げ、爆風を起こして大男を吹き飛ばした
カナメ:な、なんですかあれは!
ハヅキ:お酒くらいしんみり飲ませてよ。全く
シラウ:……と、とんでもなく強そうな人っす!
ハヅキ:ん?君たち、そんなにおののいてなんだい?
ハヅキ:あ、わかったよ。君たちはひょっとして!
ハヅキ:僕のとびきりの笑顔を見に来たんだね
カナメ:………は?
ハヅキ:あ、怖がらないでいいよ、安心して
ハヅキ:僕は君たちの味方だから
クロハ:……この声
シラウ:誰っすか!なんの用っすか!
ハヅキ:僕はハヅキ。風の使い手さ
カナメ:……風?
ハヅキ:ははっ!風って言葉に敏感にならないでよ、カナメさん
カナメ:……なぜ私の名前を?
ハヅキ:僕はね、風の音を通して人の会話を自由に聞くことが出来るんだ
ハヅキ:カナメさん。君は随分悪さをしてきてるみたいだね
カナメ:…………
ハヅキ:あ、大丈夫だよ。悪さしてるからと言って僕がどうこうするわけじゃないから
ハヅキ:君たち、月の結晶を探してるんでしょ?
シラウ:そうっすよ!月の結晶でオイラの父ちゃんを生き返らせるっす!
ハヅキ:手がかりもないのに?
シラウ:そ、それは
カナメ:あなたは何者なんですか?
ハヅキ:んー僕はー。そうだなー。
ハヅキ:占い師。とでも言おうかな?
カナメ:面白そうですね。じゃあ私の……
ハヅキ:私の事を占ってくれって?
カナメ:………?
ハヅキ:ん?どうかしたのかな?
カナメ:………あなた、奇妙ですよ?
ハヅキ:よく言われるよ。でも大丈夫、僕は君たちの味方さ!
ハヅキ:さあさあ!こんなところじゃなんだし場所を変えて話そうか
ハヅキ:月の結晶の話をね
ハヅキ:ほーら!風が気持ちいいね!
ハヅキ:この風の音からは沢山の声が聞こえるんだ
ハヅキ:君たちには聞こえる?
シラウ:聞こえないっすよ
ハヅキ:南南東にあるコアカリーという町に現れた男がその町を滅ぼそうとしている
ハヅキ:何のためだろうか……
シラウ:コアカリーはオイラの住んでた町っすよ!なんでそんなことに!?
カナメ:………なんだって?
クロハ:お前、なんのつもりだ!
ハヅキ:僕かい!?
クロハ:本当にシラウの故郷が誰かに襲われてるその保証は?
ハヅキ:君、随分とこの子に肩入れしてるんだね
クロハ:………
カナメ:シラウ、私と行きましょう
シラウ:師匠!?
カナメ:私のスピードなら5分で着きます。様子を見て、その方の信用を決めましょう
シラウ:えぇー!兄貴は?
クロハ:襲われたとしても俺なら大丈夫
ハヅキ:僕を信用してよ
カナメ:じゃあ、行こう
シラウ:うん
0:シラウはカナメの背中に乗って飛んでいく
クロハ:……お前、誰だ
ハヅキ:んー?わかんないかなー?
クロハ:………仮面を外せ
ハヅキ:どうして?もしかして、知り合いだと思ってるの?
クロハ:……ふざげんな
ハヅキ:なにか君に裏があるから僕が誰か気になるのかなー?
クロハ:ふざけんなって言ってんだろ!!
クロハ:灰枯(ハイカラ)!
ハヅキ:おいおい、こんなところでおっぱじめてもしょうがないだろ?
クロハ:お前の正体を暴くまでは引けねえだろ!
ハヅキ:シラウって子が居なくなってから急にどうしたの?
クロハ:白々しい!
ハヅキ:んまあ、君に僕を殺すことは出来ないけどね
ハヅキ:そろそろ出てきたらどうだい?
ランギク:あら?気付いてたの?
クロハ:……なっ!お前は
カナメ:シラウ、なるべく急ぐのですが一つ聞いて欲しいことがあります
シラウ:なんすか?
カナメ:故郷を滅ぼされても、復讐の念は持たないことです
シラウ:……どうして?
カナメ:人は物事を感情で左右されてしまう傾向があるんです
カナメ:だからこそ、こういう時こそ、自分の感情に左右されないでください
カナメ:月の結晶は必ず私が見つけ出しますから
シラウ:し、師匠?本当にオイラの故郷が誰かに……
カナメ:もしもの場合です。故郷を滅ぼされる気持ちなら私だって理解できます
シラウ:どうして?師匠の故郷は……無くなったっすか?
カナメ:……はい。風切のやつらの手によって私の故郷は滅ぼされました
シラウ:……風切って
カナメ:家や建物は焼かれて、農家は食い荒らされ、人は連れ去られ、抵抗するものは殺される。
カナメ:風切という組織はそういう組織なんです。そして
カナメ:月の結晶を探している
シラウ:月の結晶を?
カナメ:はい。月の結晶はこの世界に3つ。そのうちの1つが私の父が持っていたんです
シラウ:………ということは
カナメ:そう、5年前に父も町も、諸共滅ぼされました
シラウ:そ、そんな組織許せないっすよ!
カナメ:ほら、感情的にならないでください
シラウ:そんな!父ちゃんを殺されて感情的にならないなんて!師匠ひどいっすよ!冷酷にもほどがあるっす!
カナメ:感情的になるのは最初だけでいいんですよ。それに、シラウ、クロハがさっきの謎の人物に殺されない保証だってないんですよ?
シラウ:あ、兄貴なら大丈夫っすよ!
カナメ:そう信じましょう
カナメ:見えてきましたよ。コアカリーが
シラウ:………え?
カナメ:………
シラウ:な、なんすかこれは!!
カナメ:か、金だ金だーー!!
カナメ:金!金!金!金!金だあああぁぁーーー!!!
シラウ:し、師匠!感情が!感情がぶっ壊れてるっすよ!
シラウ:てか!なんでこんなにお金が落ちてるっすか!
カナメ:なんでですかね!でもどうでもいいや!おい!おっさん!その金は私のですよー!!どけどけー!!
シラウ:落ち着くっすよ!早く兄貴のところに戻るっす!
カナメ:あと、1万天!1万天拾います!
シラウ:いいから行くっす!!
0:また空を飛ぶカナメとシラウ
シラウ:はあ、まさかコアカリーの町長が町の地域開拓でお金を配ってるなんて思わなかったっす!
カナメ:私、将来はコアカリーに住みますね
シラウ:なんか来て欲しくないっすよ
カナメ:そういえばシラウとクロハはコアカリーで一緒に住んでたんですか?
シラウ:違うっすよ、兄貴とは血は繋がってないっす
カナメ:……そうだったんですか
シラウ:オイラの父ちゃんが死んだ時、そばに居てくれたのが兄貴だったっす
カナメ:じゃあクロハは昔はどこに住んでたんです?
シラウ:知らないっす
カナメ:知らないって……ちょっとは人を疑いなさい
シラウ:兄貴はとってもいいやつっすよ!
シラウ:もう5年も一緒に居るっす!今更疑うなんてないっすよ
カナメ:まあそれもそうですね
シラウ:オイラと兄貴は本物の兄弟っす
0:今から5年前
シラウ:……うぅ〜。父ちゃん
シラウ:なんで、なんで死んだんだよ!
シラウ:オイラは……オイラはどうしたら……
クロハ:おい、そこで何してる
シラウ:……君は?
クロハ:何してると聞いてるんだ
シラウ:……オイラは…父ちゃんが……
クロハ:父ちゃん?お前の父親か?
シラウ:父ちゃんが死んじゃったっす
クロハ:一人なのか?
シラウ:一人っすよ!父ちゃんが何者かに襲われたっす!
シラウ:……水の歌が…木の歌が…聞こえる
シラウ:あれ?石の歌まで聞こえる
クロハ:………お前、父親の名前を言ってみろ
シラウ:父ちゃんの…名前は…シロガネ
クロハ:……っ!?シロガネの?
シラウ:オイラ、どうやって生きていけばいいかわからない
クロハ:……俺についてこい
シラウ:……君、誰?
クロハ:俺の名前はクロハ
シラウ:君は…なんでここに?
クロハ:お前の父親に呼ばれてここに来たんだ
シラウ:どうして!?
クロハ:お前の父親は……いや、細かいことはまた後で話そう
クロハ:俺について来るんだ
シラウ:うん
シラウ:それから毎日兄貴と一緒に居たっす
シラウ:お金が無い日も、食べ物がない日も、ずっと一緒
シラウ:二人で貯めたあのお金も、月の結晶が見つかった時に誰かに売って貰うためっす
カナメ:そうだったんですね
シラウ:だから、兄貴とオイラの絆は絶対に切れることはないっす
カナメ:……なるほどね
0:一方クロハとハヅキは
ハヅキ:刃風露!(はかぜろ)
ランギク:面白いわね、こんなにワクワクするのは久しぶりだわ
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
ハヅキ:斬撃を飛ばせるとはね。じゃあ僕も剣でも使うか
ハヅキ:夜半の嵐(よわのあらし)
ランギク:風で刀を作った?
クロハ:………
ハヅキ:矢風!(やかぜ)
ランギク:自分も斬撃を飛ばせるってアピールしたいわけー?
ランギク:遅すぎるのよ
ランギク:天地斬!(あまちざん)
ハヅキ:無数の斬撃!その威力もスピードも桁違いだ!
ハヅキ:やっぱり面白いね
ランギク:あたしもそう思ってたところよ
ハヅキ:ねえ、クロハさん。
クロハ:……なんだ?
ランギク:よそ見は厳禁よ!
ハヅキ:おおっと!容赦ないねー。手加減しないのも嬉しいや
ハヅキ:この状況ってさ、本来なら2対1だろ?
クロハ:………
ハヅキ:この人はさ……
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
ハヅキ:どうして君を狙わないんだい?
クロハ:……っ!
ハヅキ:何度も僕は君に少しでも近づいて攻撃を避けている
ハヅキ:でも、クロハさんもこのナイフの人に攻撃を仕掛けない。、これってどうしてなのかな?
クロハ:……お前、何も喋るな
ハヅキ:お喋りが大好きなんだよね。最後まで喋らせてよ。ね?
ハヅキ:風切の最高幹部。クロハさん
クロハ:仮面を取れって言ってんだろ!!
ハヅキ:おっとー!?2対1かと思ったら1対2?やっぱ君は風切の人間だったんじゃないの?
クロハ:黙れ!!
ランギク:性格悪いわね。どういうつもりかしら?
ランギク:もういいんじゃない?あんただって最高幹部でしょ?ハヅキちゃん
クロハ:え?
ハヅキ:まあ仕方ないよね。クロハさんがいつまでもトロトロしてるから意地悪しちゃったよ
0:ハヅキは仮面を外す
ランギク:ねえ、クロハちゃん。あたしがボスから言われた事、教えてあげるわね。
ランギク:あのガキはまだ能力は解放されてないの?ってさ
クロハ:………お前は
ハヅキ:ほんとに。5年も経ってるのにまだ解放されないなんて、不思議でしょうがない
ハヅキ:おまけに月の結晶もまだひとつも見つけられてないんでしょ?
ハヅキ:しっかりしてよくれよ。僕の弟なんだよ?君は
クロハ:………兄貴
ハヅキ:そんなに髪を伸ばして風切の印(いん)でも隠してるの?
クロハ:当たり前だろ。シラウにバレたら任務は終わる
ハヅキ:任務だなんだって言うけど、僕はもうとっくに終わらせてるよ?
ハヅキ:僕は一つ、月の結晶を持っている
クロハ:それはどこから?
ハヅキ:………ふふっ。カナメさんのお父さんが持ってたんだ
クロハ:あいつの?父親が?
ハヅキ:はい。カナメさんの故郷。ハクトミヤコでね。
ハヅキ:任務完了して5年が経って暇してるんだよ
ハヅキ:クロハはシラウ君の能力解放待ちなんでしょ?
クロハ:………ああ、そんなところだ
ハヅキ:自然の歌が聞こえるってレアにも程がある
ハヅキ:なんでシラウ君のお父さん殺したの?
クロハ:ち、違う!俺は殺してない!
ハヅキ:じゃあなんで……死んだの?
クロハ:……それは
シラウ:兄貴ー!!
クロハ:シ、シラウ!?
カナメ:クロハ!離れて!
カナメ:千鳥!(ちどり)
ランギク:狙いはあたしよね?
ハヅキ:……ふふっ。僕に任せてよ
カナメ:ハヅキの仮面が取れている?
ハヅキ:ぎゃあああ助けてぇぇー!!
カナメ:あなたは強いでしょう?
ハヅキ:この人強すぎて勝てないよー!
カナメ:は、離れなさい!
ハヅキ:離れたら、僕はあのナイフに殺されるんだー!!
ハヅキ:………とか言ってね
ハヅキ:乱風貌(らんふうぼう)
0:ハヅキはカナメに抱きつき爆風で自らも飛ぶ
カナメ:……くっ!何を!
ハヅキ:僕と空の散歩しようよ
シラウ:師匠!
カナメ:シラウ!クロハと逃げてください!
シラウ:うん!兄貴!行こう
クロハ:………おう
ランギク:あらー?あのガキと一緒に逃げるのー?
ランギク:そうはさせないわよ?
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
シラウ:くぅ!
ランギク:ここであんたを逃すわけにはいかない
シラウ:なんで、オイラを狙うっすか!
ランギク:ねぇ!あの木の声とか聞こえるの?
シラウ:声?声なんて聞こえないっす。歌なら聞こえてくるっす
ランギク:歌?
クロハ:それ以上は何も言うな。シラウ
ランギク:あんたが何止めてんのよ。
ランギク:5年も歳月が流れてまだ任務完了しないなんて、最高幹部失格よ
シラウ:………あ、兄貴?どういうこと?
クロハ:………
ランギク:そうよね、でももうボスから命令されてるから言うわよ
ランギク:あんたが兄貴って慕ってるこの男は
ランギク:風切の最高幹部なのよ!
シラウ:………兄貴が?
クロハ:………っ!
0:クロハはシラウのみぞおちを殴る
シラウ:うっ!兄貴。……どうして
クロハ:俺は……お前を探していたんだ
シラウ:………オイラを?
クロハ:お前のその、自然の歌が聞こえる能力はやがて解放されると月の結晶の歌も聞こえてくるんだ
クロハ:お前の父親、シロガネもその能力を持っている
シラウ:……じゃあ、オイラの父ちゃんを殺したのは…
クロハ:俺では無い!
シラウ:……へへっ、そうっすよね。兄貴がそんなことするわけない
ランギク:なにいつまでも兄弟ごっこしてんのよ。この男はあんたを裏切ったのよ?
ランギク:兄貴はそんなことするわけが無いとか、そんな人間じゃないって?
ランギク:反吐が出るわ。気持ち悪い。家族でもない人間と馴れ合いして楽しい?
シラウ:君は兄貴のこと知らないんすよ
ランギク:はあ?
シラウ:兄貴は、お金のないオイラのために働いてくれた。ご飯だってオイラの分を多くくれた
シラウ:心の優しい兄貴をオイラはずっと見てきたっす。
シラウ:オイラを裏切ったとしても兄貴は兄貴っす。オイラは目に見えたものだけが真実だと思う
クロハ:……シラウ
ランギク:バカね!真実は黒幕だったってのに!あんたはいずれこいつに殺されるのよ
シラウ:兄貴に殺されるなら!オイラはそれで!!
シラウ:……へへっ。本望っす
クロハ:……くっ!
ランギク:黄泉斬!(よみきり)
シラウ:さよなら。師匠。兄貴
クロハ:葉裂風!(はれつふう)
ランギク:うっ!!
0:クロハの放った葉はランギクの脇腹に刺さる
ランギク:あんた?正気?
シラウ:兄貴!
ランギク:ついに情が移ったってわけ!?明らかに時間かかってるからおかしいと思ったのよ
クロハ:……お前たちのやってる事は誰も幸せにならない
ランギク:幸せになりたいの?相変わらず夢見る少年ね
ランギク:まあ、こうなってしまったからにはあたしも腹を括るわね
ランギク:ぶち殺してやるよ
ランギク:天地残(あまちざん)
クロハ:葉理亜(ばりあ)
クロハ:シラウ、森を抜けろ
シラウ:兄貴!?
クロハ:いいから早く!
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
ランギク:逃がさねえよ?クソガキども
シラウ:木が倒れて……
クロハ:逃げられねぇか
ランギク:あんたは確か最高幹部だけど、あんまり強くないのよね?
クロハ:黙れ
ランギク:あんたが死ねばあたしが最高幹部になれるって事ね!
ランギク:六道斬!(ろくどうざん)
クロハ:ぐぅわああ!!
ランギク:きゃはははは!!血が溢れてるわねー!可愛いわよ、こっち向いてちょうだい
シラウ:兄貴ー!
クロハ:……くそ
クロハ:……シラウを…守れなかった
シラウ:森の歌。歌森伝森(かしんでんしん)
ランギク:な、なに?
クロハ:森の葉が踊り出した?
シラウ:兄貴!オイラが森を解放したから、この力、受け取って!
クロハ:いつもの数倍、力がみなぎる…
ランギク:なんなのよ!これは!
クロハ:葉利剣(ハリケーン)
ランギク:うわっ!竜巻!?
クロハ:お前もここまでだ!!
クロハ:葉壊!(はかい)
ランギク:ぎゃああああああああ!!!!
0:ランギクは無数の葉によって切り刻まれる
シラウ:あ、兄貴!やった!
クロハ:あ、ああ。シラウのおかげだ
シラウ:オイラは森の力を解放しただけっすよ
クロハ:それがすげぇんだよ
クロハ:とにかく、ここから離れよう!
シラウ:うん!
0:カナメとハヅキは
ハヅキ:このくらいの高さならちょうどいいかー
ハヅキ:伊吹颪!(いぶきおろし)
カナメ:うわああぁぁ!!
0:カナメは地面に叩きつけられる
ハヅキ:大ダメージまではいかなそうだなー。その羽が邪魔だ
カナメ:あなたの目的はなんですか?
ハヅキ:僕の目的?この印を見てもわからない?
カナメ:やはり風切でしたか。じゃあ目的はやはり月の結晶?
ハヅキ:さすが!詳しいね!どうしてそんな詳しいか僕に教えてよ
カナメ:あなたに教える義理なんてない!
カナメ:千鳥!(ちどり)
ハヅキ:よっと!冷たい人だなー!
ハヅキ:なんかその感じハクトミヤコのあの人に似てるなー
カナメ:……な、何故私の故郷の名前を?
ハヅキ:え!カナメさんハクトミヤコ出身なの!?通りで猛禽類(もうきんるい)の血を受け継いでるわけだ
カナメ:………まさか、あなた
ハヅキ:ハクトミヤコの英雄を殺したのは僕だよ
ハヅキ:君のお父さんを殺したのは!この僕だよ!!
ハヅキ:刃風露!(はかぜろ)
カナメ:うっ!
ハヅキ:んー。向こうの声が一つ無くなったね。誰か死んだか
ハヅキ:カナメさんにプレゼントを用意してあげるよ
カナメ:………っ!
0:カナメの前にはハヅキの部下が大人数で押し寄せてきた
ハヅキ:何人居るのかな?ありったけの部下を用意したから、遊んどいてよ
カナメ:………っ!貴様
ハヅキ:じゃあ、向こうの様子見てくるねー!
カナメ:……くっ!やられた!
カナメ:一体、何人居るんだ?
0:シラウとクロハは
シラウ:はぁ!はぁ!走るのは苦手っすー!
クロハ:もう少しだ!とにかく走るぞ!
シラウ:師匠も生きてるかな?
クロハ:あいつは大丈夫に決まってる。きっと今でもハヅキと戦ってるはずだ
ハヅキ:そのハヅキが登場だよー!
クロハ:っ!?
シラウ:ひぃー!!し、師匠はどこに!?
ハヅキ:ははっ死んでるといいね
ハヅキ:ところで、ランギクはどうしたの?
クロハ:ランギクは……俺が倒した
ハヅキ:どうして?君は風切の人間だろ?
クロハ:風切の人間だからだ!
クロハ:俺はお前らと過ごしてきて少しずつ感じていたんだ
クロハ:生きることの苦しさを。生きることの虚しさを
ハヅキ:殺戮こそが生きる道。破壊こそが信条だ
ハヅキ:その心を自分の仲間に向けてはいけないだろう。仮にも僕は君の兄なんだぞ?
シラウ:……兄貴の…兄貴?
ハヅキ:なあ!クロハ!!
クロハ:お前らが仲間なんて認めてねえよ!
ハヅキ:残念だよ!君が裏切りに裏切りを重ねるなんてね!
クロハ:もう俺も腹を括ったんだよ!お前らのすきにはさせねぇ!正しくもない信条なんか掲げるなよ!
ハヅキ:じゃあ君は何が正しいと思ってる?正しさには必ず正義感というものが存在してるだろう
ハヅキ:君の正義を教えてみろ
クロハ:正義なんて持ってねぇよ!俺はただ、お前らのやり方が気に食わねえだけだ!
ハヅキ:あのやり方が気に食わない、このやり方が好きじゃないなんてタチの悪いわがままだな
ハヅキ:いいか?クロハよく聞け
ハヅキ:風林火斬!(ふうりんかざん)
クロハ:うっ!!
シラウ:兄貴ー!
ハヅキ:刃風露!(はかぜろ)
シラウ:うわあああー!!!
ハヅキ:自分の身も守れない人間は殺されたと嘆くが、クロハ、一つ教えといてやるよ
クロハ:……くっ!
ハヅキ:僕が人を殺してるんじゃない自分の弱さが自分自身を殺したんだ
ハヅキ:神風・小夜嵐!(かみかぜさよあらし)
シラウ:あ、兄貴ーー!!
クロハ:くっそぉぉーー!!
0:ハヅキの一撃は何者かによって止められる
ハヅキ:あぁ!?
カナメ:日暮(ひぐらし)の、咲いた花びら幾千の、見まごうように、あなた重ねて
カナメ:薮雨!(やぶさめ)
ハヅキ:ぐっ!
シラウ:師匠!
クロハ:……カナメ
カナメ:お待ちどうさま。私としたことが敵襲により、少々遅れました。怪我は無いですか?
シラウ:怪我だらけっす!
カナメ:大丈夫。傷の10や20は死ぬのうちに入りません。動けないなら動く必要もありませんよ?
カナメ:あなた達は頑張りました。本当にありがとうございます。
ハヅキ:ちょっとちょっとー!なんで僕が置いてきぼりにされてんの!寂しいじゃんか
ハヅキ:急に出てきて、急に襲われて、君のお父さんを殺した僕に対して怒りの言葉一つもないの?
カナメ:怒り?ええ。怒ってますよ。でも
カナメ:感情的になってしまうと周りが見えなくなるということを。弟子に教えてあげないといけないので
シラウ:し、師匠!!
ハヅキ:あっはっはっは!!笑わせてくれるね!どいつもこいつも綺麗事並べてさ!
ハヅキ:ちゃんと実力で勝負しようよ
カナメ:怒った私は怖いですよ?覚悟はいいですか?
カナメ:和光鳥!(わこうどり)
ハヅキ:風車!(かざぐるま)
クロハ:くっ!なんて爆風だ
シラウ:と、飛ばされるっす!
カナメ:あなた達の組織は私が絶対に潰します!
ハヅキ:ばーか!僕に手こずってるようじゃまだまだ甘いよ!
カナメ:私は5年前、父に誓ったんだ。復讐をするのでは無い。この組織にハクトミヤコという町がどんな影響を及ぼしていたかを教えてやれと
ハヅキ:ああ!そうだね!ハクトミヤコはムカつく奴らばかりだったさ。猛禽類の姿を見るだけで吐き気がする
ハヅキ:君の居たその町は風切にとっては天敵ばかりだったよ。でもね、最後に勝ったものが正義なんだ
ハヅキ:だからこそ風切が正しい!逆らう奴には服従させること!立ち向かう奴は殺すだけだ
ハヅキ:この世界を乗っ取ろうとしてるわけではない。この世界の中心が風切であるべきだと考えてるだけ
ハヅキ:そのためには月の結晶がいるんだ。だからお前の父親も殺した!!
カナメ:あなた達のその野望は!正義でもなんでもない。ただの自己中心的な考えだろう!
カナメ:人々はいつだって繋がれた一つの心であるべきです。そうすれば世界の中心は自分たちになるはずです
ハヅキ:それをすると反発するやつが出てくるから力で教えてるんだ
カナメ:人が気持ちを伝える時は、言葉で伝えるものですよ
ハヅキ:疾風!(はやて)
カナメ:白雁!(はくがん)
ハヅキ:夜半の嵐(よわのあらし)矢風!(やかぜ)
カナメ:姫羽白!(ひめはじろ)
カナメ:あなたが父を殺したのも。月の結晶が目的なんでしょう?
ハヅキ:そうだ
カナメ:私の父が何度も口にしていたことを教えてあげます
ハヅキ:あ?
カナメ:月の結晶は、悪に染められたものには通用しない
ハヅキ:………貴様!僕をあざ笑ってるつもりか!?
カナメ:あなた達の思想と月の結晶の在り方が違うなんて面白いなと思いまして、月の結晶だって、使われる人を選んでいるのです
ハヅキ:くっ!!
ハヅキ:風林火斬!(ふうりんかざん)
カナメ:迅速!(じんそく)
ハヅキ:ちょこまかと!
カナメ:私の速さに付いてこれる人は居ませんよ
カナメ:私は風切は許さない。でも、私はあなた達を捕まえて、やりたいことがありますからね
ハヅキ:何をするつもりだ?
カナメ:あなた達を捕まえて、金を貰って、億万長者になることです
ハヅキ:ふざけるなぁぁーー!!
カナメ:一気にカタをつけますよ
カナメ:斬戮鳥!(ざんりくちょう)
ハヅキ:うぅ!!
カナメ:この羽は硬く、あなたの思想をも貫き、打ち砕きます
ハヅキ:うわあああああぁぁーー!!!
ハヅキ:……くっ
シラウ:し、師匠!!
カナメ:ふう、さて、この方はどうしましょうか
シラウ:師匠、この人、もう一度助けてあげるっす
カナメ:何を言ってるんです。そんなことダメにきまってるじゃないですか
シラウ:この人は、兄貴の、兄貴なんすよ
カナメ:でも!この方のやってきたことは許されることではありません!
シラウ:そうっすよ。でも、家族が死ぬ辛さってオイラ達にもわかるっすよね
カナメ:……そうですけど
ハヅキ:乱風貌!(らんふうぼう)
カナメ:ぐっ!!
ハヅキ:吹き飛べ!隼!!(はやぶさ)
カナメ:な、何を!!
シラウ:師匠!!
ハヅキ:お前も死ぬんだよ!!月の結晶の歌が聞こえるそこのガキ!もう月の結晶が使えないとわかったらお前も消しとくべきだ
ハヅキ:鎌鼬!(かまいたち)
カナメ:くっ!!間に合わ……
クロハ:っ!ぐはっ!
0:クロハはシラウを庇う
シラウ:あ、兄貴!!
カナメ:ハヅキーー!!
カナメ:和光鳥!!(わこうどり)
ハヅキ:おっとー!危ない危ない。もう僕に戦える力は残ってないからね。ここらで退散させてもらうよ
ハヅキ:じゃあ、また会う日まで楽しみにしてるよ
ハヅキ:乱風貌!(らんふうぼう)
カナメ:……くっ!!
シラウ:兄貴!兄貴ー!!
ハヅキ:………くそ、クロハめ、あのガキを庇いやがった。このままじゃ月の結晶が奴らの手に渡ってしまう
ハヅキ:おい、ランギク、起きろ
ランギク:起きてるわよ、しばらく休ませてちょうだい
ハヅキ:酷いやられ用だな。僕達はまだまだ弱いのか?
ランギク:まだまだ弱いわよ。だからこそ、風切は強くなり続けなければいけない
ランギク:そうやって昔から少しずつ大きくなってきたんだから
ハヅキ:ランギク何歳だっけ?
ランギク:レディーに年齢聞くなんて失礼よ?
ハヅキ:まあいい、次あいつらに会う時には必ず仕留めてやるさ
シラウ:兄貴!兄貴ー!!
シラウ:どうしよう、オイラがあの人を助けようとしたから……
クロハ:……がはっ!!
シラウ:よかった、まだ生きてる
クロハ:ああ、でももう助からねーよ
シラウ:そんな事ないよ、今、手当するから
クロハ:無駄だ、もう動く力がない
シラウ:兄貴……
クロハ:シラウ、俺が裏切り者だったって聞いた時、絶望したか?
シラウ:絶望なんてするわけないよ、兄貴は兄貴だ!
クロハ:そっか、ありがとう。俺は…生まれてからずっと、悪の一族に育てられてきた
クロハ:その時から俺はもう死んでたんだ。生きてる意味なんてなかった
クロハ:でも、シラウ。お前に会えて、お前と時を共にして、わかったんだ
シラウ:……なに?
クロハ:お前は手のかかるやつだ、前向きすぎてうっとうしい、バカだし、うるさいし、頑固で人の話も聞かねぇ、何度喧嘩したかわかんねぇ。ムカつくんだよ
クロハ:でも、なんでだろうな。そう感じるほどに……俺はお前と
クロハ:生きてるって実感出来たんだ
シラウ:兄貴……!
クロハ:だからシラウ、これからも変わらないお前で居てくれ
クロハ:俺はお前が居たから生きてこれたんだ
シラウ:……ダメだよ兄貴、これからも生きるんだよ!
クロハ:シラウ、俺は死んでも、お前の兄貴だ
0:クロハは目を閉じる
シラウ:兄貴?兄貴!ねえ!兄貴!!目を覚ましてよ!
シラウ:兄貴ー!!
カナメ:生き様に、見えた背中は身寄りなく。空の青さと、愛を重ねて
シラウ:師匠?
カナメ:クロハが命懸けであなたを守りたいと思った理由はなんでしょう?
シラウ:……そんなの、わかんないよ
カナメ:守りたいと思えるくらいあなたの心が綺麗だからです
シラウ:……え?
カナメ:あなたの誰も疑わない心はいずれ、誰かのためになり、町のためになり、国のためになる
カナメ:月の結晶は綺麗な心の方にしか力を宿しませんからね
カナメ:クヨクヨしてる暇はないですよ。やることが増えました
シラウ:な、なんすか?
カナメ:月の結晶、もう1個必要になったでしょう?探すんですよ。クロハのために
シラウ:……へへっ!そうっすね!クヨクヨなんてしてられないっす!
カナメ:クロハはコアカリーの方で見てもらいましょう。立ち止まってる暇があれば金の事を考えるのです
シラウ:師匠は月の結晶使えなさそうですね
カナメ:余計なこと言うんじゃありません!
シラウ:いて!
カナメ:さあ、乗ってください
シラウ:うん!
0:カナメとシラウは空へと羽ばたく
0:月に変わらぬ鳥の歌
0:3人は追いかけられていた
カナメ:おおおぉいーー!!なぜいきなり追いかけられてるんです!?あなた達のせいですよ!どうしてくれるんですか!
シラウ:わかんないっすよ!なんでいきなり追いかけられてるっすか!あの飯屋の店主、オイラと兄貴のこと君の仲間だと思ってるっす!
クロハ:全く!いきなり追いかけられても困るわ!金持ってないなら言ってくれよ!
カナメ:あなた達だってお金持ってるんでしょう?
クロハ:これは5年間シラウと貯め続けた金だ!1天も無駄に出来ないんだ!
カナメ:いいですよ!減るもんじゃないですし!
クロハ:お前は減らないだろうな!こっちはおもくそ減るだろ!
シラウ:兄貴ー!何とかしてぇー!
クロハ:仕方ねぇなー!追いかけてくる店の店主には恨みはねぇが
クロハ:茂葉理図無!(もよりずむ)
0:クロハが地面に手を当てると無数の葉が追いかけていた店主に襲いかかる
クロハ:行くぞ!
カナメ:やりますね!
カナメ:ふぅー!危なかったー!
シラウ:はあ、はあ、走るのは苦手っす
クロハ:んで?お前は誰なんだ?
カナメ:聞かれてますよ?
クロハ:お前のこと言ってんだよ!
カナメ:私ですか?私はただの旅人ですよ
クロハ:旅人だー?旅人だったらちゃんと金持ってろよ
カナメ:それが……私のお金は無くなってしまったんです……
クロハ:無くなっただと?何があったんだん
カナメ:ギャンブルで無くなりました
クロハ:自業自得じゃねーかよ!
カナメ:ええそうですよ!無くなったもんは取り戻せないですからね!
クロハ:だからって食い逃げすんじゃねーよ!俺らまで巻き込まれたじゃねーか!
カナメ:お金持ってるんですよね!?匂いがしましたよ〜?
クロハ:だからって!お前お会計の時に俺らの後ろ立って一緒でって言ったろ!?俺らは2人分しか払えないって言ったらあの店主が怒ったんだぞ!
カナメ:心の狭い人達ですね〜
クロハ:お前基準の世界じゃねーんだよ!
シラウ:でも〜!鬼ごっこしてるみたいで楽しかったっす!
シラウ:兄貴もありがとう!
クロハ:ったく!もうあの町にはいけなくなるぞ?
シラウ:オイラ達も旅人だから問題はないよ!
クロハ:問題大ありだ!次の宿探さないとだしな
シラウ:ついて行くよー!兄貴ー!
カナメ:………?
カナメ:………何の音だろ?
カナメ:……っ!!危ない!
:シュパンッ!
シラウ:うわあー!
クロハ:………あ、あいつは?
ランギク:あーらぁー!避けちゃったの?勘が鋭いわね。あんた
シラウ:だ、誰っすか!ナイフなんて投げつけて!危ないっすよ!
ランギク:ごめんねぇ〜何がとは言わないけど……
ランギク:そろそろなのよ……
クロハ:………
カナメ:何の真似ですか?この方たちは私の大事な……
カナメ:金づるなのですよ?
クロハ:ついにはっきり言ったな!?
ランギク:あーらー?そこの坊や、ふざけてる暇なんてあるのかしら?
クロハ:………
ランギク:とりあえず、あんた達には死んでもらうわね
シラウ:ど、どうしてー!オイラ達何もしてないっすよー!
シラウ:まさか、さっきの店主の仲間!?
カナメ:いえ、仲間ではなさそうですね
シラウ:え?
カナメ:あの方の首には、風切(かざきり)の印(いん)が写っている
ランギク:よくご存知で!あんた。どこの国の方かしら?
カナメ:影の犯罪組織を潰すと金になりますからね
カナメ:ずっと目を付けてたんですよ
ランギク:あーらぁー!お金目当てであたし達を潰そうだなんて軽々しく見てるのね。んふふっ。んふふふふっ!あはははははははは!!!
ランギク:舐めてんじゃねーぞ?クソガキ
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
0:ランギクの振りかざしたナイフからは斬撃が飛ぶ
シラウ:うわぁー!!
クロハ:あ、あぶねぇー!
ランギク:ごめんなさいねぇーあたしのナイフの切れ味はあの大木(たいぼく)でさえ真っ二つに切ってしまうのぉー!
0:ランギクの放つ斬撃で大木が倒れる
クロハ:シラウ!避けろ!
シラウ:くぅ!
カナメ:和光鳥!(わこうどり)
0:カナメの腕からは大きな羽根が鋭くランギクに向かって振られる
クロハ:……な、なんだ!?
ランギク:おおっと!危ないじゃない!あんたのその姿…ただ者じゃなさそうね
カナメ:いい加減にして貰えますか?森の木がどれほどの価値のある存在か、あなたにはわからないんですか?
ランギク:知らないわよ。あたしは今、あんたに邪魔されてイライラしてんだよ。ぶち殺すぞ
シラウ:……あの鳥の姿…
ランギク:わからない?あんた達の持ってるその袋の中身を見せて欲しいって言ってんのよ
シラウ:こ、これはお金しか入ってないっすよ!
ランギク:嘘よ!その中には!
ランギク:月の結晶が入ってるはずよ!
カナメ:………月の結晶?
ランギク:そうよ!早く渡しなさい
クロハ:………くっ!
クロハ:その袋には金しか入ってねぇ
ランギク:……は?
クロハ:月の結晶なんて入ってねぇんだよ
ランギク:……何よ!襲って損したじゃない!
ランギク:はあ!あたしもう帰る。もうそろそろだって聞いたのにまだなの?
クロハ:…………
カナメ:あなた達の目的はなんですか?
ランギク:バカねぇ、それをあんたに教える義理なんてあるわけないでしょ?
ランギク:さようなら
0:ランギクは森の中に消えていく
シラウ:な、何だったんだ
カナメ:風切の幹部か何かですね。恐らく相当強い
シラウ:そんなやつがなんでオイラ達に!?
カナメ:わからない。けど、月の結晶を探してるなんて、悪巧みしてるに違いないですね
シラウ:っ!オイラ達も月の結晶を探してるっす!
カナメ:あなた達も?
カナメ:一体なんのために?
シラウ:月の結晶は!奇跡の結晶って呼ばれてるっす!
シラウ:死んだ人を生き返らせる力があるっすよ!だから!
シラウ:オイラの父ちゃんを!生き返らせたいっす!
カナメ:………
シラウ:君……いや、師匠!
カナメ:し、師匠!?
シラウ:このお金、あげるっす!
クロハ:シラウ!?
シラウ:この人の姿見たでしょ!兄貴!
クロハ:……あぁ、見たよ。あれは猛禽類(もうきんるい)の一族。隼(はやぶさ)の姿だった
シラウ:なら!オイラ達もこの人にかけてみるべきっす!
シラウ:月の結晶を一緒に探して欲しいっす!
カナメ:月の結晶を!?
シラウ:そうっす!月の結晶を持ってるとさっきみたいに襲われたりする事もあるっす
シラウ:だから、オイラ達を守って欲しいっす!
カナメ:何言ってるんですか。私はお金なんかに踊らされないですよ
シラウ:1000万天入ってるっす!
カナメ:全力でやらせて頂きます!
クロハ:軽すぎだろ!
クロハ:……俺は反対だぞ。シラウ。
シラウ:なんで?
クロハ:見ず知らずの人間を信用するな。お前の悪い癖だぞ
クロハ:俺らが気を抜いている間に金を取って逃げるかもしれない。仮にもこいつは隼(はやぶさ)だ
シラウ:そん時はそん時っす。食い逃げした仲だし、大丈夫だよ!
クロハ:……あのな
クロハ:はあ、じゃあ金は俺が持ってる。月の結晶が見つかったらこいつに渡すからな?
シラウ:わかった!
カナメ:全く、勝手に話を進めてますが、私だって旅人なんですよ?
シラウ:師匠は何が目的で旅してるっすか?
カナメ:私は……目的なんてないですよ
シラウ:ならオイラ達と旅に出るっすよ!
カナメ:強引ですね〜
カナメ:大体、月の結晶がどこにあるか手がかりはあるんですか?
シラウ:全くない!
クロハ:ほら、言わんこっちゃない。何も計画無しに行動するなバカ!
シラウ:でもね、声がする方に行けばきっと見つかるっすよ!
クロハ:………その声ははっきりとはきこえないだろ?
シラウ:うん、まあね、んーーじゃあーー
シラウ:助けてっすー!師匠!
カナメ:とりあえずこういう時は情報収集からですよ。隣町の方へ行きましょう
クロハ:まあさっきお前が食い逃げしたからさっきの町には行けねーからな
カナメ:それはご愛嬌ですよ
0:3人は隣町の方へ行く
0:3人はとある酒場に移動する
シラウ:師匠?ここに居て何になるっすか?
カナメ:酒場はバカの集まりとも言われてるんです。自分たちの所属している団体の情報を身内を通して簡単にベラベラと大声で話すんですよ
シラウ:それはバカっすね!!
クロハ:バカはお前だ!声がでけー!
カナメ:あなたも声が大きいですよ!バカ共に聞こえてしまう!!
:ガシャン!!
シラウ:わあああー!!大男のバカが怒った!
クロハ:言わんこっちゃねーな!
クロハ:こうなったらぶっ殺すぞ
カナメ:ダメです!無駄な争いは避けるべきですよ!
クロハ:知るか!
ハヅキ:はあ、全く。騒がしいね
0:狐の仮面を被ったある一人の男が3人に近づく
クロハ:………?
シラウ:うわあーー!!!また一人こっちに来るっすよ!
カナメ:………
ハヅキ:乱風貌(らんふうぼう)
0:男は大男を片手で持ち上げ、爆風を起こして大男を吹き飛ばした
カナメ:な、なんですかあれは!
ハヅキ:お酒くらいしんみり飲ませてよ。全く
シラウ:……と、とんでもなく強そうな人っす!
ハヅキ:ん?君たち、そんなにおののいてなんだい?
ハヅキ:あ、わかったよ。君たちはひょっとして!
ハヅキ:僕のとびきりの笑顔を見に来たんだね
カナメ:………は?
ハヅキ:あ、怖がらないでいいよ、安心して
ハヅキ:僕は君たちの味方だから
クロハ:……この声
シラウ:誰っすか!なんの用っすか!
ハヅキ:僕はハヅキ。風の使い手さ
カナメ:……風?
ハヅキ:ははっ!風って言葉に敏感にならないでよ、カナメさん
カナメ:……なぜ私の名前を?
ハヅキ:僕はね、風の音を通して人の会話を自由に聞くことが出来るんだ
ハヅキ:カナメさん。君は随分悪さをしてきてるみたいだね
カナメ:…………
ハヅキ:あ、大丈夫だよ。悪さしてるからと言って僕がどうこうするわけじゃないから
ハヅキ:君たち、月の結晶を探してるんでしょ?
シラウ:そうっすよ!月の結晶でオイラの父ちゃんを生き返らせるっす!
ハヅキ:手がかりもないのに?
シラウ:そ、それは
カナメ:あなたは何者なんですか?
ハヅキ:んー僕はー。そうだなー。
ハヅキ:占い師。とでも言おうかな?
カナメ:面白そうですね。じゃあ私の……
ハヅキ:私の事を占ってくれって?
カナメ:………?
ハヅキ:ん?どうかしたのかな?
カナメ:………あなた、奇妙ですよ?
ハヅキ:よく言われるよ。でも大丈夫、僕は君たちの味方さ!
ハヅキ:さあさあ!こんなところじゃなんだし場所を変えて話そうか
ハヅキ:月の結晶の話をね
ハヅキ:ほーら!風が気持ちいいね!
ハヅキ:この風の音からは沢山の声が聞こえるんだ
ハヅキ:君たちには聞こえる?
シラウ:聞こえないっすよ
ハヅキ:南南東にあるコアカリーという町に現れた男がその町を滅ぼそうとしている
ハヅキ:何のためだろうか……
シラウ:コアカリーはオイラの住んでた町っすよ!なんでそんなことに!?
カナメ:………なんだって?
クロハ:お前、なんのつもりだ!
ハヅキ:僕かい!?
クロハ:本当にシラウの故郷が誰かに襲われてるその保証は?
ハヅキ:君、随分とこの子に肩入れしてるんだね
クロハ:………
カナメ:シラウ、私と行きましょう
シラウ:師匠!?
カナメ:私のスピードなら5分で着きます。様子を見て、その方の信用を決めましょう
シラウ:えぇー!兄貴は?
クロハ:襲われたとしても俺なら大丈夫
ハヅキ:僕を信用してよ
カナメ:じゃあ、行こう
シラウ:うん
0:シラウはカナメの背中に乗って飛んでいく
クロハ:……お前、誰だ
ハヅキ:んー?わかんないかなー?
クロハ:………仮面を外せ
ハヅキ:どうして?もしかして、知り合いだと思ってるの?
クロハ:……ふざげんな
ハヅキ:なにか君に裏があるから僕が誰か気になるのかなー?
クロハ:ふざけんなって言ってんだろ!!
クロハ:灰枯(ハイカラ)!
ハヅキ:おいおい、こんなところでおっぱじめてもしょうがないだろ?
クロハ:お前の正体を暴くまでは引けねえだろ!
ハヅキ:シラウって子が居なくなってから急にどうしたの?
クロハ:白々しい!
ハヅキ:んまあ、君に僕を殺すことは出来ないけどね
ハヅキ:そろそろ出てきたらどうだい?
ランギク:あら?気付いてたの?
クロハ:……なっ!お前は
カナメ:シラウ、なるべく急ぐのですが一つ聞いて欲しいことがあります
シラウ:なんすか?
カナメ:故郷を滅ぼされても、復讐の念は持たないことです
シラウ:……どうして?
カナメ:人は物事を感情で左右されてしまう傾向があるんです
カナメ:だからこそ、こういう時こそ、自分の感情に左右されないでください
カナメ:月の結晶は必ず私が見つけ出しますから
シラウ:し、師匠?本当にオイラの故郷が誰かに……
カナメ:もしもの場合です。故郷を滅ぼされる気持ちなら私だって理解できます
シラウ:どうして?師匠の故郷は……無くなったっすか?
カナメ:……はい。風切のやつらの手によって私の故郷は滅ぼされました
シラウ:……風切って
カナメ:家や建物は焼かれて、農家は食い荒らされ、人は連れ去られ、抵抗するものは殺される。
カナメ:風切という組織はそういう組織なんです。そして
カナメ:月の結晶を探している
シラウ:月の結晶を?
カナメ:はい。月の結晶はこの世界に3つ。そのうちの1つが私の父が持っていたんです
シラウ:………ということは
カナメ:そう、5年前に父も町も、諸共滅ぼされました
シラウ:そ、そんな組織許せないっすよ!
カナメ:ほら、感情的にならないでください
シラウ:そんな!父ちゃんを殺されて感情的にならないなんて!師匠ひどいっすよ!冷酷にもほどがあるっす!
カナメ:感情的になるのは最初だけでいいんですよ。それに、シラウ、クロハがさっきの謎の人物に殺されない保証だってないんですよ?
シラウ:あ、兄貴なら大丈夫っすよ!
カナメ:そう信じましょう
カナメ:見えてきましたよ。コアカリーが
シラウ:………え?
カナメ:………
シラウ:な、なんすかこれは!!
カナメ:か、金だ金だーー!!
カナメ:金!金!金!金!金だあああぁぁーーー!!!
シラウ:し、師匠!感情が!感情がぶっ壊れてるっすよ!
シラウ:てか!なんでこんなにお金が落ちてるっすか!
カナメ:なんでですかね!でもどうでもいいや!おい!おっさん!その金は私のですよー!!どけどけー!!
シラウ:落ち着くっすよ!早く兄貴のところに戻るっす!
カナメ:あと、1万天!1万天拾います!
シラウ:いいから行くっす!!
0:また空を飛ぶカナメとシラウ
シラウ:はあ、まさかコアカリーの町長が町の地域開拓でお金を配ってるなんて思わなかったっす!
カナメ:私、将来はコアカリーに住みますね
シラウ:なんか来て欲しくないっすよ
カナメ:そういえばシラウとクロハはコアカリーで一緒に住んでたんですか?
シラウ:違うっすよ、兄貴とは血は繋がってないっす
カナメ:……そうだったんですか
シラウ:オイラの父ちゃんが死んだ時、そばに居てくれたのが兄貴だったっす
カナメ:じゃあクロハは昔はどこに住んでたんです?
シラウ:知らないっす
カナメ:知らないって……ちょっとは人を疑いなさい
シラウ:兄貴はとってもいいやつっすよ!
シラウ:もう5年も一緒に居るっす!今更疑うなんてないっすよ
カナメ:まあそれもそうですね
シラウ:オイラと兄貴は本物の兄弟っす
0:今から5年前
シラウ:……うぅ〜。父ちゃん
シラウ:なんで、なんで死んだんだよ!
シラウ:オイラは……オイラはどうしたら……
クロハ:おい、そこで何してる
シラウ:……君は?
クロハ:何してると聞いてるんだ
シラウ:……オイラは…父ちゃんが……
クロハ:父ちゃん?お前の父親か?
シラウ:父ちゃんが死んじゃったっす
クロハ:一人なのか?
シラウ:一人っすよ!父ちゃんが何者かに襲われたっす!
シラウ:……水の歌が…木の歌が…聞こえる
シラウ:あれ?石の歌まで聞こえる
クロハ:………お前、父親の名前を言ってみろ
シラウ:父ちゃんの…名前は…シロガネ
クロハ:……っ!?シロガネの?
シラウ:オイラ、どうやって生きていけばいいかわからない
クロハ:……俺についてこい
シラウ:……君、誰?
クロハ:俺の名前はクロハ
シラウ:君は…なんでここに?
クロハ:お前の父親に呼ばれてここに来たんだ
シラウ:どうして!?
クロハ:お前の父親は……いや、細かいことはまた後で話そう
クロハ:俺について来るんだ
シラウ:うん
シラウ:それから毎日兄貴と一緒に居たっす
シラウ:お金が無い日も、食べ物がない日も、ずっと一緒
シラウ:二人で貯めたあのお金も、月の結晶が見つかった時に誰かに売って貰うためっす
カナメ:そうだったんですね
シラウ:だから、兄貴とオイラの絆は絶対に切れることはないっす
カナメ:……なるほどね
0:一方クロハとハヅキは
ハヅキ:刃風露!(はかぜろ)
ランギク:面白いわね、こんなにワクワクするのは久しぶりだわ
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
ハヅキ:斬撃を飛ばせるとはね。じゃあ僕も剣でも使うか
ハヅキ:夜半の嵐(よわのあらし)
ランギク:風で刀を作った?
クロハ:………
ハヅキ:矢風!(やかぜ)
ランギク:自分も斬撃を飛ばせるってアピールしたいわけー?
ランギク:遅すぎるのよ
ランギク:天地斬!(あまちざん)
ハヅキ:無数の斬撃!その威力もスピードも桁違いだ!
ハヅキ:やっぱり面白いね
ランギク:あたしもそう思ってたところよ
ハヅキ:ねえ、クロハさん。
クロハ:……なんだ?
ランギク:よそ見は厳禁よ!
ハヅキ:おおっと!容赦ないねー。手加減しないのも嬉しいや
ハヅキ:この状況ってさ、本来なら2対1だろ?
クロハ:………
ハヅキ:この人はさ……
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
ハヅキ:どうして君を狙わないんだい?
クロハ:……っ!
ハヅキ:何度も僕は君に少しでも近づいて攻撃を避けている
ハヅキ:でも、クロハさんもこのナイフの人に攻撃を仕掛けない。、これってどうしてなのかな?
クロハ:……お前、何も喋るな
ハヅキ:お喋りが大好きなんだよね。最後まで喋らせてよ。ね?
ハヅキ:風切の最高幹部。クロハさん
クロハ:仮面を取れって言ってんだろ!!
ハヅキ:おっとー!?2対1かと思ったら1対2?やっぱ君は風切の人間だったんじゃないの?
クロハ:黙れ!!
ランギク:性格悪いわね。どういうつもりかしら?
ランギク:もういいんじゃない?あんただって最高幹部でしょ?ハヅキちゃん
クロハ:え?
ハヅキ:まあ仕方ないよね。クロハさんがいつまでもトロトロしてるから意地悪しちゃったよ
0:ハヅキは仮面を外す
ランギク:ねえ、クロハちゃん。あたしがボスから言われた事、教えてあげるわね。
ランギク:あのガキはまだ能力は解放されてないの?ってさ
クロハ:………お前は
ハヅキ:ほんとに。5年も経ってるのにまだ解放されないなんて、不思議でしょうがない
ハヅキ:おまけに月の結晶もまだひとつも見つけられてないんでしょ?
ハヅキ:しっかりしてよくれよ。僕の弟なんだよ?君は
クロハ:………兄貴
ハヅキ:そんなに髪を伸ばして風切の印(いん)でも隠してるの?
クロハ:当たり前だろ。シラウにバレたら任務は終わる
ハヅキ:任務だなんだって言うけど、僕はもうとっくに終わらせてるよ?
ハヅキ:僕は一つ、月の結晶を持っている
クロハ:それはどこから?
ハヅキ:………ふふっ。カナメさんのお父さんが持ってたんだ
クロハ:あいつの?父親が?
ハヅキ:はい。カナメさんの故郷。ハクトミヤコでね。
ハヅキ:任務完了して5年が経って暇してるんだよ
ハヅキ:クロハはシラウ君の能力解放待ちなんでしょ?
クロハ:………ああ、そんなところだ
ハヅキ:自然の歌が聞こえるってレアにも程がある
ハヅキ:なんでシラウ君のお父さん殺したの?
クロハ:ち、違う!俺は殺してない!
ハヅキ:じゃあなんで……死んだの?
クロハ:……それは
シラウ:兄貴ー!!
クロハ:シ、シラウ!?
カナメ:クロハ!離れて!
カナメ:千鳥!(ちどり)
ランギク:狙いはあたしよね?
ハヅキ:……ふふっ。僕に任せてよ
カナメ:ハヅキの仮面が取れている?
ハヅキ:ぎゃあああ助けてぇぇー!!
カナメ:あなたは強いでしょう?
ハヅキ:この人強すぎて勝てないよー!
カナメ:は、離れなさい!
ハヅキ:離れたら、僕はあのナイフに殺されるんだー!!
ハヅキ:………とか言ってね
ハヅキ:乱風貌(らんふうぼう)
0:ハヅキはカナメに抱きつき爆風で自らも飛ぶ
カナメ:……くっ!何を!
ハヅキ:僕と空の散歩しようよ
シラウ:師匠!
カナメ:シラウ!クロハと逃げてください!
シラウ:うん!兄貴!行こう
クロハ:………おう
ランギク:あらー?あのガキと一緒に逃げるのー?
ランギク:そうはさせないわよ?
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
シラウ:くぅ!
ランギク:ここであんたを逃すわけにはいかない
シラウ:なんで、オイラを狙うっすか!
ランギク:ねぇ!あの木の声とか聞こえるの?
シラウ:声?声なんて聞こえないっす。歌なら聞こえてくるっす
ランギク:歌?
クロハ:それ以上は何も言うな。シラウ
ランギク:あんたが何止めてんのよ。
ランギク:5年も歳月が流れてまだ任務完了しないなんて、最高幹部失格よ
シラウ:………あ、兄貴?どういうこと?
クロハ:………
ランギク:そうよね、でももうボスから命令されてるから言うわよ
ランギク:あんたが兄貴って慕ってるこの男は
ランギク:風切の最高幹部なのよ!
シラウ:………兄貴が?
クロハ:………っ!
0:クロハはシラウのみぞおちを殴る
シラウ:うっ!兄貴。……どうして
クロハ:俺は……お前を探していたんだ
シラウ:………オイラを?
クロハ:お前のその、自然の歌が聞こえる能力はやがて解放されると月の結晶の歌も聞こえてくるんだ
クロハ:お前の父親、シロガネもその能力を持っている
シラウ:……じゃあ、オイラの父ちゃんを殺したのは…
クロハ:俺では無い!
シラウ:……へへっ、そうっすよね。兄貴がそんなことするわけない
ランギク:なにいつまでも兄弟ごっこしてんのよ。この男はあんたを裏切ったのよ?
ランギク:兄貴はそんなことするわけが無いとか、そんな人間じゃないって?
ランギク:反吐が出るわ。気持ち悪い。家族でもない人間と馴れ合いして楽しい?
シラウ:君は兄貴のこと知らないんすよ
ランギク:はあ?
シラウ:兄貴は、お金のないオイラのために働いてくれた。ご飯だってオイラの分を多くくれた
シラウ:心の優しい兄貴をオイラはずっと見てきたっす。
シラウ:オイラを裏切ったとしても兄貴は兄貴っす。オイラは目に見えたものだけが真実だと思う
クロハ:……シラウ
ランギク:バカね!真実は黒幕だったってのに!あんたはいずれこいつに殺されるのよ
シラウ:兄貴に殺されるなら!オイラはそれで!!
シラウ:……へへっ。本望っす
クロハ:……くっ!
ランギク:黄泉斬!(よみきり)
シラウ:さよなら。師匠。兄貴
クロハ:葉裂風!(はれつふう)
ランギク:うっ!!
0:クロハの放った葉はランギクの脇腹に刺さる
ランギク:あんた?正気?
シラウ:兄貴!
ランギク:ついに情が移ったってわけ!?明らかに時間かかってるからおかしいと思ったのよ
クロハ:……お前たちのやってる事は誰も幸せにならない
ランギク:幸せになりたいの?相変わらず夢見る少年ね
ランギク:まあ、こうなってしまったからにはあたしも腹を括るわね
ランギク:ぶち殺してやるよ
ランギク:天地残(あまちざん)
クロハ:葉理亜(ばりあ)
クロハ:シラウ、森を抜けろ
シラウ:兄貴!?
クロハ:いいから早く!
ランギク:霧斬舞!(きりきりまい)
ランギク:逃がさねえよ?クソガキども
シラウ:木が倒れて……
クロハ:逃げられねぇか
ランギク:あんたは確か最高幹部だけど、あんまり強くないのよね?
クロハ:黙れ
ランギク:あんたが死ねばあたしが最高幹部になれるって事ね!
ランギク:六道斬!(ろくどうざん)
クロハ:ぐぅわああ!!
ランギク:きゃはははは!!血が溢れてるわねー!可愛いわよ、こっち向いてちょうだい
シラウ:兄貴ー!
クロハ:……くそ
クロハ:……シラウを…守れなかった
シラウ:森の歌。歌森伝森(かしんでんしん)
ランギク:な、なに?
クロハ:森の葉が踊り出した?
シラウ:兄貴!オイラが森を解放したから、この力、受け取って!
クロハ:いつもの数倍、力がみなぎる…
ランギク:なんなのよ!これは!
クロハ:葉利剣(ハリケーン)
ランギク:うわっ!竜巻!?
クロハ:お前もここまでだ!!
クロハ:葉壊!(はかい)
ランギク:ぎゃああああああああ!!!!
0:ランギクは無数の葉によって切り刻まれる
シラウ:あ、兄貴!やった!
クロハ:あ、ああ。シラウのおかげだ
シラウ:オイラは森の力を解放しただけっすよ
クロハ:それがすげぇんだよ
クロハ:とにかく、ここから離れよう!
シラウ:うん!
0:カナメとハヅキは
ハヅキ:このくらいの高さならちょうどいいかー
ハヅキ:伊吹颪!(いぶきおろし)
カナメ:うわああぁぁ!!
0:カナメは地面に叩きつけられる
ハヅキ:大ダメージまではいかなそうだなー。その羽が邪魔だ
カナメ:あなたの目的はなんですか?
ハヅキ:僕の目的?この印を見てもわからない?
カナメ:やはり風切でしたか。じゃあ目的はやはり月の結晶?
ハヅキ:さすが!詳しいね!どうしてそんな詳しいか僕に教えてよ
カナメ:あなたに教える義理なんてない!
カナメ:千鳥!(ちどり)
ハヅキ:よっと!冷たい人だなー!
ハヅキ:なんかその感じハクトミヤコのあの人に似てるなー
カナメ:……な、何故私の故郷の名前を?
ハヅキ:え!カナメさんハクトミヤコ出身なの!?通りで猛禽類(もうきんるい)の血を受け継いでるわけだ
カナメ:………まさか、あなた
ハヅキ:ハクトミヤコの英雄を殺したのは僕だよ
ハヅキ:君のお父さんを殺したのは!この僕だよ!!
ハヅキ:刃風露!(はかぜろ)
カナメ:うっ!
ハヅキ:んー。向こうの声が一つ無くなったね。誰か死んだか
ハヅキ:カナメさんにプレゼントを用意してあげるよ
カナメ:………っ!
0:カナメの前にはハヅキの部下が大人数で押し寄せてきた
ハヅキ:何人居るのかな?ありったけの部下を用意したから、遊んどいてよ
カナメ:………っ!貴様
ハヅキ:じゃあ、向こうの様子見てくるねー!
カナメ:……くっ!やられた!
カナメ:一体、何人居るんだ?
0:シラウとクロハは
シラウ:はぁ!はぁ!走るのは苦手っすー!
クロハ:もう少しだ!とにかく走るぞ!
シラウ:師匠も生きてるかな?
クロハ:あいつは大丈夫に決まってる。きっと今でもハヅキと戦ってるはずだ
ハヅキ:そのハヅキが登場だよー!
クロハ:っ!?
シラウ:ひぃー!!し、師匠はどこに!?
ハヅキ:ははっ死んでるといいね
ハヅキ:ところで、ランギクはどうしたの?
クロハ:ランギクは……俺が倒した
ハヅキ:どうして?君は風切の人間だろ?
クロハ:風切の人間だからだ!
クロハ:俺はお前らと過ごしてきて少しずつ感じていたんだ
クロハ:生きることの苦しさを。生きることの虚しさを
ハヅキ:殺戮こそが生きる道。破壊こそが信条だ
ハヅキ:その心を自分の仲間に向けてはいけないだろう。仮にも僕は君の兄なんだぞ?
シラウ:……兄貴の…兄貴?
ハヅキ:なあ!クロハ!!
クロハ:お前らが仲間なんて認めてねえよ!
ハヅキ:残念だよ!君が裏切りに裏切りを重ねるなんてね!
クロハ:もう俺も腹を括ったんだよ!お前らのすきにはさせねぇ!正しくもない信条なんか掲げるなよ!
ハヅキ:じゃあ君は何が正しいと思ってる?正しさには必ず正義感というものが存在してるだろう
ハヅキ:君の正義を教えてみろ
クロハ:正義なんて持ってねぇよ!俺はただ、お前らのやり方が気に食わねえだけだ!
ハヅキ:あのやり方が気に食わない、このやり方が好きじゃないなんてタチの悪いわがままだな
ハヅキ:いいか?クロハよく聞け
ハヅキ:風林火斬!(ふうりんかざん)
クロハ:うっ!!
シラウ:兄貴ー!
ハヅキ:刃風露!(はかぜろ)
シラウ:うわあああー!!!
ハヅキ:自分の身も守れない人間は殺されたと嘆くが、クロハ、一つ教えといてやるよ
クロハ:……くっ!
ハヅキ:僕が人を殺してるんじゃない自分の弱さが自分自身を殺したんだ
ハヅキ:神風・小夜嵐!(かみかぜさよあらし)
シラウ:あ、兄貴ーー!!
クロハ:くっそぉぉーー!!
0:ハヅキの一撃は何者かによって止められる
ハヅキ:あぁ!?
カナメ:日暮(ひぐらし)の、咲いた花びら幾千の、見まごうように、あなた重ねて
カナメ:薮雨!(やぶさめ)
ハヅキ:ぐっ!
シラウ:師匠!
クロハ:……カナメ
カナメ:お待ちどうさま。私としたことが敵襲により、少々遅れました。怪我は無いですか?
シラウ:怪我だらけっす!
カナメ:大丈夫。傷の10や20は死ぬのうちに入りません。動けないなら動く必要もありませんよ?
カナメ:あなた達は頑張りました。本当にありがとうございます。
ハヅキ:ちょっとちょっとー!なんで僕が置いてきぼりにされてんの!寂しいじゃんか
ハヅキ:急に出てきて、急に襲われて、君のお父さんを殺した僕に対して怒りの言葉一つもないの?
カナメ:怒り?ええ。怒ってますよ。でも
カナメ:感情的になってしまうと周りが見えなくなるということを。弟子に教えてあげないといけないので
シラウ:し、師匠!!
ハヅキ:あっはっはっは!!笑わせてくれるね!どいつもこいつも綺麗事並べてさ!
ハヅキ:ちゃんと実力で勝負しようよ
カナメ:怒った私は怖いですよ?覚悟はいいですか?
カナメ:和光鳥!(わこうどり)
ハヅキ:風車!(かざぐるま)
クロハ:くっ!なんて爆風だ
シラウ:と、飛ばされるっす!
カナメ:あなた達の組織は私が絶対に潰します!
ハヅキ:ばーか!僕に手こずってるようじゃまだまだ甘いよ!
カナメ:私は5年前、父に誓ったんだ。復讐をするのでは無い。この組織にハクトミヤコという町がどんな影響を及ぼしていたかを教えてやれと
ハヅキ:ああ!そうだね!ハクトミヤコはムカつく奴らばかりだったさ。猛禽類の姿を見るだけで吐き気がする
ハヅキ:君の居たその町は風切にとっては天敵ばかりだったよ。でもね、最後に勝ったものが正義なんだ
ハヅキ:だからこそ風切が正しい!逆らう奴には服従させること!立ち向かう奴は殺すだけだ
ハヅキ:この世界を乗っ取ろうとしてるわけではない。この世界の中心が風切であるべきだと考えてるだけ
ハヅキ:そのためには月の結晶がいるんだ。だからお前の父親も殺した!!
カナメ:あなた達のその野望は!正義でもなんでもない。ただの自己中心的な考えだろう!
カナメ:人々はいつだって繋がれた一つの心であるべきです。そうすれば世界の中心は自分たちになるはずです
ハヅキ:それをすると反発するやつが出てくるから力で教えてるんだ
カナメ:人が気持ちを伝える時は、言葉で伝えるものですよ
ハヅキ:疾風!(はやて)
カナメ:白雁!(はくがん)
ハヅキ:夜半の嵐(よわのあらし)矢風!(やかぜ)
カナメ:姫羽白!(ひめはじろ)
カナメ:あなたが父を殺したのも。月の結晶が目的なんでしょう?
ハヅキ:そうだ
カナメ:私の父が何度も口にしていたことを教えてあげます
ハヅキ:あ?
カナメ:月の結晶は、悪に染められたものには通用しない
ハヅキ:………貴様!僕をあざ笑ってるつもりか!?
カナメ:あなた達の思想と月の結晶の在り方が違うなんて面白いなと思いまして、月の結晶だって、使われる人を選んでいるのです
ハヅキ:くっ!!
ハヅキ:風林火斬!(ふうりんかざん)
カナメ:迅速!(じんそく)
ハヅキ:ちょこまかと!
カナメ:私の速さに付いてこれる人は居ませんよ
カナメ:私は風切は許さない。でも、私はあなた達を捕まえて、やりたいことがありますからね
ハヅキ:何をするつもりだ?
カナメ:あなた達を捕まえて、金を貰って、億万長者になることです
ハヅキ:ふざけるなぁぁーー!!
カナメ:一気にカタをつけますよ
カナメ:斬戮鳥!(ざんりくちょう)
ハヅキ:うぅ!!
カナメ:この羽は硬く、あなたの思想をも貫き、打ち砕きます
ハヅキ:うわあああああぁぁーー!!!
ハヅキ:……くっ
シラウ:し、師匠!!
カナメ:ふう、さて、この方はどうしましょうか
シラウ:師匠、この人、もう一度助けてあげるっす
カナメ:何を言ってるんです。そんなことダメにきまってるじゃないですか
シラウ:この人は、兄貴の、兄貴なんすよ
カナメ:でも!この方のやってきたことは許されることではありません!
シラウ:そうっすよ。でも、家族が死ぬ辛さってオイラ達にもわかるっすよね
カナメ:……そうですけど
ハヅキ:乱風貌!(らんふうぼう)
カナメ:ぐっ!!
ハヅキ:吹き飛べ!隼!!(はやぶさ)
カナメ:な、何を!!
シラウ:師匠!!
ハヅキ:お前も死ぬんだよ!!月の結晶の歌が聞こえるそこのガキ!もう月の結晶が使えないとわかったらお前も消しとくべきだ
ハヅキ:鎌鼬!(かまいたち)
カナメ:くっ!!間に合わ……
クロハ:っ!ぐはっ!
0:クロハはシラウを庇う
シラウ:あ、兄貴!!
カナメ:ハヅキーー!!
カナメ:和光鳥!!(わこうどり)
ハヅキ:おっとー!危ない危ない。もう僕に戦える力は残ってないからね。ここらで退散させてもらうよ
ハヅキ:じゃあ、また会う日まで楽しみにしてるよ
ハヅキ:乱風貌!(らんふうぼう)
カナメ:……くっ!!
シラウ:兄貴!兄貴ー!!
ハヅキ:………くそ、クロハめ、あのガキを庇いやがった。このままじゃ月の結晶が奴らの手に渡ってしまう
ハヅキ:おい、ランギク、起きろ
ランギク:起きてるわよ、しばらく休ませてちょうだい
ハヅキ:酷いやられ用だな。僕達はまだまだ弱いのか?
ランギク:まだまだ弱いわよ。だからこそ、風切は強くなり続けなければいけない
ランギク:そうやって昔から少しずつ大きくなってきたんだから
ハヅキ:ランギク何歳だっけ?
ランギク:レディーに年齢聞くなんて失礼よ?
ハヅキ:まあいい、次あいつらに会う時には必ず仕留めてやるさ
シラウ:兄貴!兄貴ー!!
シラウ:どうしよう、オイラがあの人を助けようとしたから……
クロハ:……がはっ!!
シラウ:よかった、まだ生きてる
クロハ:ああ、でももう助からねーよ
シラウ:そんな事ないよ、今、手当するから
クロハ:無駄だ、もう動く力がない
シラウ:兄貴……
クロハ:シラウ、俺が裏切り者だったって聞いた時、絶望したか?
シラウ:絶望なんてするわけないよ、兄貴は兄貴だ!
クロハ:そっか、ありがとう。俺は…生まれてからずっと、悪の一族に育てられてきた
クロハ:その時から俺はもう死んでたんだ。生きてる意味なんてなかった
クロハ:でも、シラウ。お前に会えて、お前と時を共にして、わかったんだ
シラウ:……なに?
クロハ:お前は手のかかるやつだ、前向きすぎてうっとうしい、バカだし、うるさいし、頑固で人の話も聞かねぇ、何度喧嘩したかわかんねぇ。ムカつくんだよ
クロハ:でも、なんでだろうな。そう感じるほどに……俺はお前と
クロハ:生きてるって実感出来たんだ
シラウ:兄貴……!
クロハ:だからシラウ、これからも変わらないお前で居てくれ
クロハ:俺はお前が居たから生きてこれたんだ
シラウ:……ダメだよ兄貴、これからも生きるんだよ!
クロハ:シラウ、俺は死んでも、お前の兄貴だ
0:クロハは目を閉じる
シラウ:兄貴?兄貴!ねえ!兄貴!!目を覚ましてよ!
シラウ:兄貴ー!!
カナメ:生き様に、見えた背中は身寄りなく。空の青さと、愛を重ねて
シラウ:師匠?
カナメ:クロハが命懸けであなたを守りたいと思った理由はなんでしょう?
シラウ:……そんなの、わかんないよ
カナメ:守りたいと思えるくらいあなたの心が綺麗だからです
シラウ:……え?
カナメ:あなたの誰も疑わない心はいずれ、誰かのためになり、町のためになり、国のためになる
カナメ:月の結晶は綺麗な心の方にしか力を宿しませんからね
カナメ:クヨクヨしてる暇はないですよ。やることが増えました
シラウ:な、なんすか?
カナメ:月の結晶、もう1個必要になったでしょう?探すんですよ。クロハのために
シラウ:……へへっ!そうっすね!クヨクヨなんてしてられないっす!
カナメ:クロハはコアカリーの方で見てもらいましょう。立ち止まってる暇があれば金の事を考えるのです
シラウ:師匠は月の結晶使えなさそうですね
カナメ:余計なこと言うんじゃありません!
シラウ:いて!
カナメ:さあ、乗ってください
シラウ:うん!
0:カナメとシラウは空へと羽ばたく
0:月に変わらぬ鳥の歌