台本概要

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タイトル もろはのケモノ
作者名 ましょこさ  (@masyokosa)
ジャンル ファンタジー
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 説明:
魔剣使いの少女と、一緒に旅する魔獣のお話し。
「三振りの魔剣揃いし時、世を統べる覇王が現れる」

(N)←ナレーションです。
牙羅:(獣王)←牙羅役の方が獣王として演じて下さい。
桜珠:(獣王の中)←獣王の中に存在する桜珠の意識です。

お願い:
・過度なアドリブはお控え下さい(軽微なものOKです)
・言いにくいセリフの改変はOKです。
・おふざけNGです。
・ご使用の際は、作者名、シナリオのURLを貼って頂けるとありがたいです。
・ご連絡頂いた作品は、喜んで聞かせて頂きます。\(//∇//)\

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
桜珠 72 桜珠(おうじゅ): 魔剣に選ばれた少女。 獣楼国(じゅうろうこく)のお姫様。
牙羅 不問 61 牙羅(がら): 人語を話す魔獣。 魔剣、獣聖剣(じゅうせいけん)が抜かれると、剣と一体化する。
徳心 55 徳心(とくしん): 旅の途中で出会う謎の男。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
桜珠:(N)世に、魔剣と呼ばれる伝承の剣、3振りあり。獣王宿す、*獣聖剣《じゅうせいけん》。龍王宿す、*龍聖剣《りゅうせいけん》。*不死王《ふしおう》宿す、*死聖剣《しせいけん》。3振りの魔剣*揃《そろ》いし時、世界を統べる覇王が現れる。 0:*桜珠《おうじゅ》、*牙羅《がら》が走っている。森を抜け、とある街に逃げ込む。 牙羅:ねぇ、何だって逃げたりしたのさ。 桜珠:もう追って来ない? 牙羅:ボクらに追いつける奴なんて、そうはいないよ。 桜珠:そうね、街の中までは追って来ないだろうし。 牙羅:あんな奴、簡単に倒せるのに。 桜珠:無駄な殺生はしない主義なの! 牙羅:つまんないのぉ。 桜珠:血の気の多い魔獣にも困ったもんね。 牙羅:だって、最近、全然ボクの出番ないんだもん、、。 桜珠:アンタを満足させるような相手じゃなかったわよ。 牙羅:そりゃそうだけど。 桜珠:あの程度の相手じゃ、こっちの剣で十分。そしたらアンタ、また文句言うでしょ? 牙羅:いつだって、獣王様を出せばいいじゃないか。 桜珠:いーや!あんなヤツ出さなくたって、何とでもなるわよ。 牙羅:圧倒的な力で、ねじ伏せるのが良いんじゃないか。 桜珠:アンタもアイツも、野蛮すぎるのよ。ちっとも言う事聞かないし。*主《あるじ》は私なのよ?そこんとこ、ちゃんと、わきまえなさいよね。 0:*桜珠《おうじゅ》と*牙羅《がら》に*徳心《とくしん》が近づいて来る。 徳心:あのぉ、、剣士様、ですよね? 桜珠:えっ?ええ、まぁ、、。 徳心:魔獣を飼い慣らしていらっしゃるとは、よっぽど腕の立つ、、 牙羅:ボクは飼われてる訳じゃないよ! 徳心:おお!*人語《じんご》を話せるのですか!これは、ますます素晴らしい! 桜珠:ああ、どうも。それじゃ、さよなら。 徳心:お待ち下さい!折行って、お頼みしたい事がございます! 桜珠:嫌です、他を当たって下さい。 徳心:お待ち下さい!突然ですが、私の用心棒になって頂けないでしょうか? 桜珠:えっ、嫌です、、。 牙羅:へー!あんた凄いね! 徳心:と、言いますと? 牙羅:大抵の人間は、桜珠を見ると、舐めてかかるのさ。女の癖に、*分不相応《ぶんふそうおう》な大剣を*背負《しょ》って、魔獣まで連れて、生意気だってね。 徳心:いえいえ、その眼、その*趣《おもむ》き、かなりの使い手とお見受け致します。魔獣様も相当お強いのでしょうね。 牙羅:気に入った!用心棒になってやるよ!ボクは*牙羅《がら》、こっちは*桜珠《おうじゅ》、宜しくな! 徳心:ありがとうございます。私は徳心と申します。 桜珠:ちょっと!勝手に決めないでくれる⁈ 牙羅:良いじゃない。こんな金持ちそうな人の用心棒なら、賊がいっぱい襲ってくるよ!それを護るんだ!どいつもこいつも、かかって来い! 桜珠:いい加減にしなさいよ!何でアンタはそんなに戦いたい訳? 牙羅:だって、いっつも逃げるばっかりで、全然、力を使わせてくれないんだもん、、 桜珠:言ったでしょ、無駄な殺生はしないのよ。そんなに力が、あり余ってるならその辺のネズミでも追いかけてれば? 牙羅:僕は猫じゃない! 徳心:桜珠様!さすがでございます!強いお方程、無駄な殺生はしない。ますます気に入りました!是非、用心棒に!謝礼は弾みます!是非! 桜珠:悪いけど、他を当たって下さい。お金には困っていないので。さよなら、失礼します。 徳心:待って下さい!ほんの数日で良いんです、私を隣の国、*竜胆国《りんどうこく》まで送って頂くだけで。 牙羅:ちょうど良かった!これからボクらも*竜胆国《りんどうこく》へ行く所だったんだ! 徳心:おお!それは、それは! 牙羅:用心棒が嫌なら、旅仲間って事で良いだろ?行き先が一緒なんだし。 桜珠:(ため息)はぁ、、別に、わたし達に、勝手について来る分には構わないけど。 牙羅:よし!決まりだね!明るいうちに山を超えて、隣町までいっちゃおうよ! 桜珠:嫌よ、さっきの奴がまだ、街の外をうろついてるかも知れないでしょ?また絡まれたら面倒だもん。 牙羅:そうだね!桜珠の大剣目当てのさっきの賊が、見るからに金持ちそうな徳心を見たら、絶対襲ってくるね!さあ、行こう! 桜珠:アンタ、人の話し聞いてる? 徳心:色々、ご事情がおありのようですが、先を急ぎますので、今日の内に山を越えられるとありがたいのですが、、 牙羅:徳心もこう言ってるし、行こうよ、桜珠。いつ出発したって、どうせ誰かしらに絡まれるんだし。 桜珠:(ため息) 牙羅:よし!出発だー! 桜珠:アンタ、何でそんなに嬉しそうなのよ、、 0:山道を歩く3人 徳心:はあ、はぁ、、 桜珠:徳心、大丈夫? 牙羅:ここから先は、もっと険しくなるよ? 徳心:大丈夫です、急ぎましょう、、 桜珠:一休みしましょ。何かあった時、走る力が残って無いと、足手纏いだわ。まぁ、その時は、置いて行くけど。 0:木陰で一休みする一行。 徳心:すみません、こんなにキツイとは、、でも、桜珠さんと牙羅さんのお陰で、心強いです。 桜珠:牙羅の背中に乗せってってあげれば? 牙羅:ボクは馬じゃないよ、それに四つ脚だとスピード調整出来ないから、振り落としちゃうよ。 桜珠:自分の脚なのに、調整効かないなんて、不便なバカ脚ね。 牙羅:酷いなぁ、四つ脚だと野生に還っちゃうんだよ、四つ脚は緊急用なの! 徳心:お構いなく、自分の足で歩けますから、同行して頂けるだけで、ありがたいです。 桜珠:徳心は、*竜胆国《りんどうこく》へは何しに? 徳心:ええ、古い友人がおりまして。 桜珠:古いって、徳心はまだ若いでしょう? 徳心:はは、そう見えますか? 牙羅:見える、見える、しかも、凄く金持ちそう。 徳心:はは、長旅にこんな身なりで、、。世間知らずで、お恥ずかしい限りです。一応、護身用に剣だけは持って来ましたが、、 桜珠:世間知らずは、私も一緒。国を出る事なんて、滅多にないんだから。 徳心:ほう、そうなんですか。 牙羅:桜珠は、王女様なんだよ! 桜珠:*牙羅《がら》! 牙羅:あっ、ごめん、つい、、 徳心:王女様?そう言えば、その剣の紋章、たしか*獣楼国《じゅうろうこく》の、、 桜珠:(ため息)こんな大剣背負わされてるのには、色々事情があってね、、。 徳心:ちょっと見せて頂いても宜しいでしょうか、(桜珠の大剣に触ろうとする) 桜珠:ダメ!、あっ、ごめんなさい、この剣は、チョット訳ありでね、、あんまり人に触らせたくないの。 徳心:いえいえ、こちらこそ失礼しました。 牙羅:ちょっとくらい良いじゃないか、どうせ桜珠にしか使えないんだし。 桜珠:はぁ、、何で、私なのよ、、。 徳心:桜珠様にしか使えない?それは興味深い、ちょっと鞘から抜いた所を見せて頂いても、、 桜珠:えっ、嫌です。 牙羅:抜いたら最後、狂人桜珠に大変身! 徳心:またまた、ご冗談を(笑) 桜珠:冗談、、でもないんだけど、、 徳心:剣を握ると、人が変わるという事ですか? 牙羅:それは見てのお楽しみ!剣を抜いた桜珠に乞うご期待!お代は見てのお帰りだよ~! 桜珠:人を見せ物みたいに言わないでくれる? 徳心:これは、ますます楽しみですねぇ。 0:不穏な気配を感じる牙羅 牙羅:桜珠、何かいるよ。 桜珠:ええ、さっきの奴、、違う、この気配は、、。 0:木々の間から現れる、不死者達。 徳心:うっ、うわぁぁぁ! 桜珠:つっ!この距離まで気付かなかった! 牙羅:相変わらず、気配を消すのが上手い連中だね。 徳心:何ですか!コイツら! 牙羅:*不死者《ふししゃ》だよ。魔剣で*不死王《ふしおう》に操られてる兵隊さ。 桜珠:徳心!逃げて! 徳心:そんな事言われても、囲まれてますよぉ。 桜珠:コイツらの目当ては、わたしの背負ってる*獣聖剣《じゅうせいけん》よ、徳心の事は眼中にないはず、、 0:徳心に襲いかかる不死者 徳心:うわぁああああああ! 桜珠:危ないっっ! 0:間一髪のところで、腰に挿した剣を抜き、不死者の首を刎ねる桜珠。 牙羅:どうやら、みさかい無しって感じだね、 0:這い回り、逃げる徳心 徳心:ひえ~っっ!うわぁあ! 0:徳心を護りながら、戦う桜珠と牙羅。 桜珠:くっ、、えいっ!、、たぁあっっ! 牙羅:がぁあっ!でぇぇぇい!、、っっっっ! 桜珠:何体いるの⁈キリがないっっ! 牙羅:桜珠!魔剣を!*獣聖剣《じゅうせいけん》を! 桜珠:こんな奴ら、コッチで十分!っだぁあああっっっ! 徳心:うわぁぁ!くるなぁぁぁっっ! 牙羅:つっ!がぁぁっ!、、ダメだ桜珠!これじゃ、徳心を護り切れないよ!獣聖剣を抜いて! 徳心:桜珠さ~ん、、!助けて~! 桜珠:、、くっ、、仕方ないわね、、 牙羅:(N)魔剣に手をかける桜珠、模造刀を抜くかのように、軽々とその大剣を鞘から抜き出す。その瞬間、ボクの身体は銀色の光と化し、魔剣の刀身に吸い込まれる。 徳心:おおっ! 牙羅:(N)ぼくの身体と一体化し、仄かな光に包まれた獣聖剣を構える桜珠。その表情からは、少女の幼さは消えていいた。別人かと思わせる程の眼光は、鋭く敵を捉え、やや吊り上がったりかのように見える口角からは、*微《かす》かに笑みが溢れている。 桜珠:私に魔剣を抜かせた大罪を、悔いるがいい、*愚者共《ぐしゃども》よ、、 牙羅:(N)不死者達の足が止まる。感情を持たない筈の不死者達が、明らかに桜珠を恐れている。 徳心:獣聖剣の力、存分に見せて頂きますよ。 牙羅:(N)20体はいたであろう不死者の群れは、次々と、いや、ほぼ同時に首を*撥《は》ねられ、その場に崩れ落ちた。 徳心:素晴らしい!あの数の敵を一瞬で!目にも留まらぬ速さとはこの事ですな! 桜珠:ふぅううっ。 徳心:しかし、これでは、、力の半分も見られていませんね、、少々みくびり過ぎましたか、、 桜珠:なに? 徳心:仕方ありません、私がお相手致しましょう。 桜珠:お前、何者だ? 徳心:不死王様に、獣聖剣の力をお知らせしなければ成りませんので、もう少しお付き合い願いますよ。 桜珠:不死王の犬か、、 徳心:犬とは、心外ですねぇ、、せめて側近と言って頂きたい。 桜珠:斬るっ! 牙羅:(N)一瞬で間合いに入り、振り下ろした桜珠の剣を、徳心は閃光のごとき*抜剣《ばっけん》で軽々と受け留める。 桜珠:ぐっ、、貴様、、、 徳心:いいですねぇ、でも、こんなモノではないのでしょう?ふんっ! 桜珠:くっ! 牙羅:(N)徳心が剣に力を込めると、桜珠は後方に押し戻された。 徳心:さぁ!見せて下さい!あなたの力を!魔剣の威力を! 0:桜珠に斬りかかる徳心 徳心:はぁぁぁっ! 桜珠:ぐっ!だぁぁっ!はっ! 牙羅:(N)激しく斬り合う二人、互角、、いや、獣聖剣を抜いている桜珠が、押されている。 徳心:どうしました?獣聖剣の力はこんなものですか?魔獣が吸い込まれた時は、ワクワクしましたが、、いささか、拍子抜けですね。 桜珠:はぁ、はぁ、、 徳心:どうやら、持ち主の未熟さ故、魔剣の威力が発揮しきれていない、という所でしょうか。 桜珠:はぁ、はぁ、、仕方ない、、わね、、 徳心:ん? 桜珠:ツワモノアリ、、、 牙羅:(N)桜珠が呪文のように呟くと、剣身に宿った獣王の意思と、ボクの意識が、桜珠の身体に流れ込む。 桜珠:うっ!ふぅぅっ!がぁあああっ! 徳心:こ、これは! 桜珠:(N)私の身体は大きく膨れ上がり、ゴツゴツと隆起した筋肉の鎧に包まれる。全身を覆う黒い*鋼《はがね》のような体毛、燃え盛る炎のような紅い立て髪、*蒼《あお》く鋭く光る眼と、触れるモノ全てを切り裂いてしまいそうな牙と爪。身体が変容すると共に、意識が獣王に支配されて行く。 徳心:これが、*獣聖剣《じゅうせいけん》の、、。素晴らしい、、! 牙羅:(獣王)小賢しい、不死王の犬め。俺様と出会った事を後悔させてやるぜ!狩るモノと狩られるモノの違いを、思い知るがいい! 徳心:いいですねぇ、その自信、その迫力、まさに獣王だ! 0:徳心に斬り掛かる獣王 牙羅:(獣王)がぁぁっ! 徳心:ぬぁっ!(受けると同時に、後方へ飛び退く) 0:徳心の剣は砕け、額から血が流れている。 徳心:ほう、私の剣が粉々に、、。素晴らしい、、。 牙羅:(獣王)俺様の力が見たかったんだろう?もっと見せてやるぜ?冥土の土産にしな! 徳心:残念ですが、これ以上は危険なようですね。ここで死ぬ訳にも行きませんので、。 牙羅:(獣王)覚悟もなく剣を抜いたのか?後悔しても、もう遅いぞ!ふんっっ! 桜珠:(N)間合いを詰め、横一閃に剣を振り切る獣王。徳心の身体は真っ二つになった、、。、、かに、見えた、、。 牙羅:(獣王)なにっ!? 桜珠:(N)そこに残されていたのは、徳心の*纏《まと》っていた、*煌《きら》びやかな衣服だけだった。生い茂った木々の何処かから、いや、天空から、徳心の高笑いが聞こえてきた。 徳心:ははははは!危ないところでした。またお会い致しましょう。*来《きた》るべき時に、*彼《か》の地で! 牙羅:(獣王)ちっ、逃げ足だけは速いようだな、、。 桜珠:(獣王の中)、、に、、なさい、、 牙羅:(獣王)ん?なんだ、、まだ、意思があるのか、、。 桜珠:(獣王の中)剣を、鞘に、、。納めなさい、、。 牙羅:(獣王)厄介な相手も出てきた、このままでいた方が、何かと都合がいいだろ。 桜珠:(獣王の中)勝手は許さない、、私の身体を、、返しなさい、、。 牙羅:(獣王)今は、俺様の身体だ、引っ込んでな! 桜珠:(獣王の中)剣を納めなさい!! 牙羅:(獣王)がっ!身体が、、言う事をきかねぇ、、。ちっ、、わかったよ、、好きにしな。 : 牙羅:(N)獣王の中の桜珠の意識が、*獣聖剣《せいじゅうけん》を鞘に納める。魔剣へと還る獣王の意思、ボクの意識と身体も剣から抜け出し、獣王の身体は*華奢《きゃしゃ》な少女へと戻って行った。 : 桜珠:はぁ、はぁ、はぁ、、。全く、、獣王の奴、言うこと聞きやしない。アンタもアンタよっ! 牙羅:ボクに言わないでよ。獣王様に逆らえる訳ないじゃない。 桜珠:圧倒的な力ってヤツを、一緒になって楽しんでるんでしょ? 牙羅:そりゃ、まぁ、本能っていうか、、 桜珠:剣を抜く度に、獣王の意思がだんだん強くなってる、、。いざとなったら、アンタが何とかしてくれなきゃ困るのよ⁈ 牙羅:わかってるって、牙羅様に任せとけ! 桜珠:はぁ、もう、誰も信用できない、、。もう、獣聖剣は絶対抜かない! 牙羅:そうも行かないだろ?徳心、、アイツ、強いよ。 桜珠:もう!何で私なのよぉ!私はお姫様として、皆んなにチヤホヤされて、楽しく暮らしたいのぉ! 牙羅:仕方ないよ、魔剣に選ばれちゃったんだから、、世界を統べる覇王となれ!ってね。 桜珠:冗談じゃないわよ!何が覇王よ!獣王のバカだけでも持て余してるのにぃぃ! :間 徳心:桜珠に牙羅、そして獣王。なかなかに面白い。、、さて、さて、もう一振りの魔剣、*龍聖剣《りゅうせいけん》はどんな力を秘めているのか、、楽しみですねぇ。 : 桜珠:(N)世に、魔剣と呼ばれる伝承の剣、3振りあり。獣王宿す、*獣聖剣《じゅうせいけん》。龍王宿す、*龍聖剣《りゅうせいけん》。*不死王《ふしおう》宿す、*死聖剣《しせいけん》。3振りの魔剣*揃《そろ》いし時、世界を統べる覇王が現れる。 0:END?

桜珠:(N)世に、魔剣と呼ばれる伝承の剣、3振りあり。獣王宿す、*獣聖剣《じゅうせいけん》。龍王宿す、*龍聖剣《りゅうせいけん》。*不死王《ふしおう》宿す、*死聖剣《しせいけん》。3振りの魔剣*揃《そろ》いし時、世界を統べる覇王が現れる。 0:*桜珠《おうじゅ》、*牙羅《がら》が走っている。森を抜け、とある街に逃げ込む。 牙羅:ねぇ、何だって逃げたりしたのさ。 桜珠:もう追って来ない? 牙羅:ボクらに追いつける奴なんて、そうはいないよ。 桜珠:そうね、街の中までは追って来ないだろうし。 牙羅:あんな奴、簡単に倒せるのに。 桜珠:無駄な殺生はしない主義なの! 牙羅:つまんないのぉ。 桜珠:血の気の多い魔獣にも困ったもんね。 牙羅:だって、最近、全然ボクの出番ないんだもん、、。 桜珠:アンタを満足させるような相手じゃなかったわよ。 牙羅:そりゃそうだけど。 桜珠:あの程度の相手じゃ、こっちの剣で十分。そしたらアンタ、また文句言うでしょ? 牙羅:いつだって、獣王様を出せばいいじゃないか。 桜珠:いーや!あんなヤツ出さなくたって、何とでもなるわよ。 牙羅:圧倒的な力で、ねじ伏せるのが良いんじゃないか。 桜珠:アンタもアイツも、野蛮すぎるのよ。ちっとも言う事聞かないし。*主《あるじ》は私なのよ?そこんとこ、ちゃんと、わきまえなさいよね。 0:*桜珠《おうじゅ》と*牙羅《がら》に*徳心《とくしん》が近づいて来る。 徳心:あのぉ、、剣士様、ですよね? 桜珠:えっ?ええ、まぁ、、。 徳心:魔獣を飼い慣らしていらっしゃるとは、よっぽど腕の立つ、、 牙羅:ボクは飼われてる訳じゃないよ! 徳心:おお!*人語《じんご》を話せるのですか!これは、ますます素晴らしい! 桜珠:ああ、どうも。それじゃ、さよなら。 徳心:お待ち下さい!折行って、お頼みしたい事がございます! 桜珠:嫌です、他を当たって下さい。 徳心:お待ち下さい!突然ですが、私の用心棒になって頂けないでしょうか? 桜珠:えっ、嫌です、、。 牙羅:へー!あんた凄いね! 徳心:と、言いますと? 牙羅:大抵の人間は、桜珠を見ると、舐めてかかるのさ。女の癖に、*分不相応《ぶんふそうおう》な大剣を*背負《しょ》って、魔獣まで連れて、生意気だってね。 徳心:いえいえ、その眼、その*趣《おもむ》き、かなりの使い手とお見受け致します。魔獣様も相当お強いのでしょうね。 牙羅:気に入った!用心棒になってやるよ!ボクは*牙羅《がら》、こっちは*桜珠《おうじゅ》、宜しくな! 徳心:ありがとうございます。私は徳心と申します。 桜珠:ちょっと!勝手に決めないでくれる⁈ 牙羅:良いじゃない。こんな金持ちそうな人の用心棒なら、賊がいっぱい襲ってくるよ!それを護るんだ!どいつもこいつも、かかって来い! 桜珠:いい加減にしなさいよ!何でアンタはそんなに戦いたい訳? 牙羅:だって、いっつも逃げるばっかりで、全然、力を使わせてくれないんだもん、、 桜珠:言ったでしょ、無駄な殺生はしないのよ。そんなに力が、あり余ってるならその辺のネズミでも追いかけてれば? 牙羅:僕は猫じゃない! 徳心:桜珠様!さすがでございます!強いお方程、無駄な殺生はしない。ますます気に入りました!是非、用心棒に!謝礼は弾みます!是非! 桜珠:悪いけど、他を当たって下さい。お金には困っていないので。さよなら、失礼します。 徳心:待って下さい!ほんの数日で良いんです、私を隣の国、*竜胆国《りんどうこく》まで送って頂くだけで。 牙羅:ちょうど良かった!これからボクらも*竜胆国《りんどうこく》へ行く所だったんだ! 徳心:おお!それは、それは! 牙羅:用心棒が嫌なら、旅仲間って事で良いだろ?行き先が一緒なんだし。 桜珠:(ため息)はぁ、、別に、わたし達に、勝手について来る分には構わないけど。 牙羅:よし!決まりだね!明るいうちに山を超えて、隣町までいっちゃおうよ! 桜珠:嫌よ、さっきの奴がまだ、街の外をうろついてるかも知れないでしょ?また絡まれたら面倒だもん。 牙羅:そうだね!桜珠の大剣目当てのさっきの賊が、見るからに金持ちそうな徳心を見たら、絶対襲ってくるね!さあ、行こう! 桜珠:アンタ、人の話し聞いてる? 徳心:色々、ご事情がおありのようですが、先を急ぎますので、今日の内に山を越えられるとありがたいのですが、、 牙羅:徳心もこう言ってるし、行こうよ、桜珠。いつ出発したって、どうせ誰かしらに絡まれるんだし。 桜珠:(ため息) 牙羅:よし!出発だー! 桜珠:アンタ、何でそんなに嬉しそうなのよ、、 0:山道を歩く3人 徳心:はあ、はぁ、、 桜珠:徳心、大丈夫? 牙羅:ここから先は、もっと険しくなるよ? 徳心:大丈夫です、急ぎましょう、、 桜珠:一休みしましょ。何かあった時、走る力が残って無いと、足手纏いだわ。まぁ、その時は、置いて行くけど。 0:木陰で一休みする一行。 徳心:すみません、こんなにキツイとは、、でも、桜珠さんと牙羅さんのお陰で、心強いです。 桜珠:牙羅の背中に乗せってってあげれば? 牙羅:ボクは馬じゃないよ、それに四つ脚だとスピード調整出来ないから、振り落としちゃうよ。 桜珠:自分の脚なのに、調整効かないなんて、不便なバカ脚ね。 牙羅:酷いなぁ、四つ脚だと野生に還っちゃうんだよ、四つ脚は緊急用なの! 徳心:お構いなく、自分の足で歩けますから、同行して頂けるだけで、ありがたいです。 桜珠:徳心は、*竜胆国《りんどうこく》へは何しに? 徳心:ええ、古い友人がおりまして。 桜珠:古いって、徳心はまだ若いでしょう? 徳心:はは、そう見えますか? 牙羅:見える、見える、しかも、凄く金持ちそう。 徳心:はは、長旅にこんな身なりで、、。世間知らずで、お恥ずかしい限りです。一応、護身用に剣だけは持って来ましたが、、 桜珠:世間知らずは、私も一緒。国を出る事なんて、滅多にないんだから。 徳心:ほう、そうなんですか。 牙羅:桜珠は、王女様なんだよ! 桜珠:*牙羅《がら》! 牙羅:あっ、ごめん、つい、、 徳心:王女様?そう言えば、その剣の紋章、たしか*獣楼国《じゅうろうこく》の、、 桜珠:(ため息)こんな大剣背負わされてるのには、色々事情があってね、、。 徳心:ちょっと見せて頂いても宜しいでしょうか、(桜珠の大剣に触ろうとする) 桜珠:ダメ!、あっ、ごめんなさい、この剣は、チョット訳ありでね、、あんまり人に触らせたくないの。 徳心:いえいえ、こちらこそ失礼しました。 牙羅:ちょっとくらい良いじゃないか、どうせ桜珠にしか使えないんだし。 桜珠:はぁ、、何で、私なのよ、、。 徳心:桜珠様にしか使えない?それは興味深い、ちょっと鞘から抜いた所を見せて頂いても、、 桜珠:えっ、嫌です。 牙羅:抜いたら最後、狂人桜珠に大変身! 徳心:またまた、ご冗談を(笑) 桜珠:冗談、、でもないんだけど、、 徳心:剣を握ると、人が変わるという事ですか? 牙羅:それは見てのお楽しみ!剣を抜いた桜珠に乞うご期待!お代は見てのお帰りだよ~! 桜珠:人を見せ物みたいに言わないでくれる? 徳心:これは、ますます楽しみですねぇ。 0:不穏な気配を感じる牙羅 牙羅:桜珠、何かいるよ。 桜珠:ええ、さっきの奴、、違う、この気配は、、。 0:木々の間から現れる、不死者達。 徳心:うっ、うわぁぁぁ! 桜珠:つっ!この距離まで気付かなかった! 牙羅:相変わらず、気配を消すのが上手い連中だね。 徳心:何ですか!コイツら! 牙羅:*不死者《ふししゃ》だよ。魔剣で*不死王《ふしおう》に操られてる兵隊さ。 桜珠:徳心!逃げて! 徳心:そんな事言われても、囲まれてますよぉ。 桜珠:コイツらの目当ては、わたしの背負ってる*獣聖剣《じゅうせいけん》よ、徳心の事は眼中にないはず、、 0:徳心に襲いかかる不死者 徳心:うわぁああああああ! 桜珠:危ないっっ! 0:間一髪のところで、腰に挿した剣を抜き、不死者の首を刎ねる桜珠。 牙羅:どうやら、みさかい無しって感じだね、 0:這い回り、逃げる徳心 徳心:ひえ~っっ!うわぁあ! 0:徳心を護りながら、戦う桜珠と牙羅。 桜珠:くっ、、えいっ!、、たぁあっっ! 牙羅:がぁあっ!でぇぇぇい!、、っっっっ! 桜珠:何体いるの⁈キリがないっっ! 牙羅:桜珠!魔剣を!*獣聖剣《じゅうせいけん》を! 桜珠:こんな奴ら、コッチで十分!っだぁあああっっっ! 徳心:うわぁぁ!くるなぁぁぁっっ! 牙羅:つっ!がぁぁっ!、、ダメだ桜珠!これじゃ、徳心を護り切れないよ!獣聖剣を抜いて! 徳心:桜珠さ~ん、、!助けて~! 桜珠:、、くっ、、仕方ないわね、、 牙羅:(N)魔剣に手をかける桜珠、模造刀を抜くかのように、軽々とその大剣を鞘から抜き出す。その瞬間、ボクの身体は銀色の光と化し、魔剣の刀身に吸い込まれる。 徳心:おおっ! 牙羅:(N)ぼくの身体と一体化し、仄かな光に包まれた獣聖剣を構える桜珠。その表情からは、少女の幼さは消えていいた。別人かと思わせる程の眼光は、鋭く敵を捉え、やや吊り上がったりかのように見える口角からは、*微《かす》かに笑みが溢れている。 桜珠:私に魔剣を抜かせた大罪を、悔いるがいい、*愚者共《ぐしゃども》よ、、 牙羅:(N)不死者達の足が止まる。感情を持たない筈の不死者達が、明らかに桜珠を恐れている。 徳心:獣聖剣の力、存分に見せて頂きますよ。 牙羅:(N)20体はいたであろう不死者の群れは、次々と、いや、ほぼ同時に首を*撥《は》ねられ、その場に崩れ落ちた。 徳心:素晴らしい!あの数の敵を一瞬で!目にも留まらぬ速さとはこの事ですな! 桜珠:ふぅううっ。 徳心:しかし、これでは、、力の半分も見られていませんね、、少々みくびり過ぎましたか、、 桜珠:なに? 徳心:仕方ありません、私がお相手致しましょう。 桜珠:お前、何者だ? 徳心:不死王様に、獣聖剣の力をお知らせしなければ成りませんので、もう少しお付き合い願いますよ。 桜珠:不死王の犬か、、 徳心:犬とは、心外ですねぇ、、せめて側近と言って頂きたい。 桜珠:斬るっ! 牙羅:(N)一瞬で間合いに入り、振り下ろした桜珠の剣を、徳心は閃光のごとき*抜剣《ばっけん》で軽々と受け留める。 桜珠:ぐっ、、貴様、、、 徳心:いいですねぇ、でも、こんなモノではないのでしょう?ふんっ! 桜珠:くっ! 牙羅:(N)徳心が剣に力を込めると、桜珠は後方に押し戻された。 徳心:さぁ!見せて下さい!あなたの力を!魔剣の威力を! 0:桜珠に斬りかかる徳心 徳心:はぁぁぁっ! 桜珠:ぐっ!だぁぁっ!はっ! 牙羅:(N)激しく斬り合う二人、互角、、いや、獣聖剣を抜いている桜珠が、押されている。 徳心:どうしました?獣聖剣の力はこんなものですか?魔獣が吸い込まれた時は、ワクワクしましたが、、いささか、拍子抜けですね。 桜珠:はぁ、はぁ、、 徳心:どうやら、持ち主の未熟さ故、魔剣の威力が発揮しきれていない、という所でしょうか。 桜珠:はぁ、はぁ、、仕方ない、、わね、、 徳心:ん? 桜珠:ツワモノアリ、、、 牙羅:(N)桜珠が呪文のように呟くと、剣身に宿った獣王の意思と、ボクの意識が、桜珠の身体に流れ込む。 桜珠:うっ!ふぅぅっ!がぁあああっ! 徳心:こ、これは! 桜珠:(N)私の身体は大きく膨れ上がり、ゴツゴツと隆起した筋肉の鎧に包まれる。全身を覆う黒い*鋼《はがね》のような体毛、燃え盛る炎のような紅い立て髪、*蒼《あお》く鋭く光る眼と、触れるモノ全てを切り裂いてしまいそうな牙と爪。身体が変容すると共に、意識が獣王に支配されて行く。 徳心:これが、*獣聖剣《じゅうせいけん》の、、。素晴らしい、、! 牙羅:(獣王)小賢しい、不死王の犬め。俺様と出会った事を後悔させてやるぜ!狩るモノと狩られるモノの違いを、思い知るがいい! 徳心:いいですねぇ、その自信、その迫力、まさに獣王だ! 0:徳心に斬り掛かる獣王 牙羅:(獣王)がぁぁっ! 徳心:ぬぁっ!(受けると同時に、後方へ飛び退く) 0:徳心の剣は砕け、額から血が流れている。 徳心:ほう、私の剣が粉々に、、。素晴らしい、、。 牙羅:(獣王)俺様の力が見たかったんだろう?もっと見せてやるぜ?冥土の土産にしな! 徳心:残念ですが、これ以上は危険なようですね。ここで死ぬ訳にも行きませんので、。 牙羅:(獣王)覚悟もなく剣を抜いたのか?後悔しても、もう遅いぞ!ふんっっ! 桜珠:(N)間合いを詰め、横一閃に剣を振り切る獣王。徳心の身体は真っ二つになった、、。、、かに、見えた、、。 牙羅:(獣王)なにっ!? 桜珠:(N)そこに残されていたのは、徳心の*纏《まと》っていた、*煌《きら》びやかな衣服だけだった。生い茂った木々の何処かから、いや、天空から、徳心の高笑いが聞こえてきた。 徳心:ははははは!危ないところでした。またお会い致しましょう。*来《きた》るべき時に、*彼《か》の地で! 牙羅:(獣王)ちっ、逃げ足だけは速いようだな、、。 桜珠:(獣王の中)、、に、、なさい、、 牙羅:(獣王)ん?なんだ、、まだ、意思があるのか、、。 桜珠:(獣王の中)剣を、鞘に、、。納めなさい、、。 牙羅:(獣王)厄介な相手も出てきた、このままでいた方が、何かと都合がいいだろ。 桜珠:(獣王の中)勝手は許さない、、私の身体を、、返しなさい、、。 牙羅:(獣王)今は、俺様の身体だ、引っ込んでな! 桜珠:(獣王の中)剣を納めなさい!! 牙羅:(獣王)がっ!身体が、、言う事をきかねぇ、、。ちっ、、わかったよ、、好きにしな。 : 牙羅:(N)獣王の中の桜珠の意識が、*獣聖剣《せいじゅうけん》を鞘に納める。魔剣へと還る獣王の意思、ボクの意識と身体も剣から抜け出し、獣王の身体は*華奢《きゃしゃ》な少女へと戻って行った。 : 桜珠:はぁ、はぁ、はぁ、、。全く、、獣王の奴、言うこと聞きやしない。アンタもアンタよっ! 牙羅:ボクに言わないでよ。獣王様に逆らえる訳ないじゃない。 桜珠:圧倒的な力ってヤツを、一緒になって楽しんでるんでしょ? 牙羅:そりゃ、まぁ、本能っていうか、、 桜珠:剣を抜く度に、獣王の意思がだんだん強くなってる、、。いざとなったら、アンタが何とかしてくれなきゃ困るのよ⁈ 牙羅:わかってるって、牙羅様に任せとけ! 桜珠:はぁ、もう、誰も信用できない、、。もう、獣聖剣は絶対抜かない! 牙羅:そうも行かないだろ?徳心、、アイツ、強いよ。 桜珠:もう!何で私なのよぉ!私はお姫様として、皆んなにチヤホヤされて、楽しく暮らしたいのぉ! 牙羅:仕方ないよ、魔剣に選ばれちゃったんだから、、世界を統べる覇王となれ!ってね。 桜珠:冗談じゃないわよ!何が覇王よ!獣王のバカだけでも持て余してるのにぃぃ! :間 徳心:桜珠に牙羅、そして獣王。なかなかに面白い。、、さて、さて、もう一振りの魔剣、*龍聖剣《りゅうせいけん》はどんな力を秘めているのか、、楽しみですねぇ。 : 桜珠:(N)世に、魔剣と呼ばれる伝承の剣、3振りあり。獣王宿す、*獣聖剣《じゅうせいけん》。龍王宿す、*龍聖剣《りゅうせいけん》。*不死王《ふしおう》宿す、*死聖剣《しせいけん》。3振りの魔剣*揃《そろ》いし時、世界を統べる覇王が現れる。 0:END?