台本概要

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タイトル 行ってらっしゃい。行ってきます。
作者名 ましょこさ  (@masyokosa)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 説明:
ただのお隣さんが、気になるお隣さんになって、、。

シナリオ内の表記:
(M)←モノローグです。

お願い:
・性別変更NGです。
・過度なアドリブはお控え下さい(軽微なものOKです)
・言いにくいセリフの改変はOKです。
・おふざけNGです。
・ご使用の際は、作者名、シナリオのURLを貼って頂けるとありがたいです。
・ご連絡頂いた作品は、喜んで聞かせて頂きます。\(//∇//)\

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
千鶴 135 千鶴(ちづる):雅人のお隣さん。
雅人 132 雅人(まさと):千鶴のお隣さん。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:夕方のスーパー、買い物中の千鶴。 千鶴:お腹すいたぁ、何食べよっかなぁ、、げっ!高級北海道酪農牛乳、1リットルで1500円⁈、どこのセレブがこんな物買うのよ、、。ってセレブはこんな庶民のスーパーには来ないか。 千鶴:ああ、惣菜コーナーの、半額シール達が私を呼んでいる~! 0: 千鶴:これとこれと、、あとこコレも、、あっ、これも美味しいのよね~! 0:半額惣菜でカゴがいっぱいになる。 千鶴:戦利品の数々よ!、、ん~、こんなに食べ切れるかしら、、半額シールの魔力恐るべし、、このカゴ誰かに見られたら、ちょっと恥ずかしいかも、、。 雅人:こんばんは、、 千鶴:げっ! 雅人:あっ、すいません、いきなり、、決して怪しいものでは、、 千鶴:えっと、お隣さん、、ですよね? 雅人:えっ? 千鶴:あれ?違いましたか? 雅人:いえ!違いません!お隣さんです! 千鶴:あ、圧が、、 雅人:知っててくれたんですね!! 千鶴:ええ、だって、たまに挨拶とか、、 雅人:挨拶!してますよね!おはようございます!とか、こんばんは!とか、、嬉しいなぁ、覚えててくれたんだ! 千鶴:あの、圧が、、 雅人:ああ、すいません、、覚えていてくれてるとは思ってなくて、つい興奮しちゃいました、、 千鶴:ふふっ、、河村さん、、でしたっけ?面白い人ですね(笑) 雅人:え?いや、、 千鶴:いつもお見かけするのはスーツ姿だったから、真面目な人かと思ってましたけど、あっ、会社勤めの人は、スーツ姿当たり前か。 0:千鶴のカゴの中を見て 雅人:いっぱい食べるんですね。 千鶴:あっ、いえ、コレは、、 雅人:ああ、すいません!女性に向かって失礼な事を! 千鶴:半額シールの山で、お恥ずかしい、、給料日前なもので、、。お腹空いてる状態でスーパーにきちゃダメですね、つい欲張っちゃう(笑) 千鶴:あっ、でも、どれも本当に美味しいんですよ、ちょっと食べきれないけど、棚に戻すの惜しいなぁ、、半額だし、、。 雅人:じゃあ、僕のカゴ入れてください。 千鶴:え? 雅人:泣く泣く棚に戻すなら、僕のカゴに入れて下さい。千鶴さんの無念を僕が引き受けます! 千鶴:え? 雅人:いや、だから、食べきれない千鶴さんの無念を、、 千鶴:千鶴って、、私の名前、、知って、、 雅人:あっ、いや、それは、、お隣さんだから、、毎朝、表札を、その、、、すいません、気持ち悪いですよね、、 千鶴:(笑)そんなに焦らないでください、毎朝うちの前を通ってれば、そりゃ知ってますよね。私だって河村さんって知ってた訳だし。 雅人:はあ、、 千鶴:いきなり下の名前呼びは、びっくりしましたけど(笑) 雅人:ああ、ほんと、すいません!えっと、、真鍋さん、、 千鶴:千鶴さんでいいですよ、私も下の名前で呼ぼうかな、えっと、、 雅人:雅人です! 千鶴:じゃあ、雅人さん、私の無念を、雅人さんのカゴに移動します。 雅人:はい!喜んで! 千鶴:くすっ、居酒屋でのバイト経験あったりします? 雅人:え? 千鶴:いえ、何でもありません(笑) 雅人:居酒屋でのバイト経験はありません、えっと、コンビニと、靴屋と、、 千鶴:ぷっ、、(笑) やっぱり面白い人ですね、面白くて真面目な人(笑) 雅人:え、いや、、 千鶴:困らないで下さい。褒めてるんですよ? 雅人:えっ?ありがとうございます。 千鶴:じゃあ、これと、これと、、あっ、これも凄く美味しいんですよぉ。 0:千鶴のカゴに入っていた、半額惣菜が、ほとんど雅人のカゴに移される。 千鶴:あれ?何かすいません、私のかき集めた半額惣菜達が、ほとんど雅人さんのカゴに、、やっぱり少し、棚に戻しますね。 雅人:いえ、大丈夫です。千鶴さんの美味しいと思うもの、全部食べてみたいです。千鶴さんの無念、全部僕が引き受けます! 千鶴:半額だし? 雅人:半額だし! 千鶴:ふふふ、、 雅人:ははは、、 0:間 千鶴:(M)話しやすい人だな、と思った。真面目なのに面白くて、ちょっと抜けてて、、。家に帰ってからも、半額惣菜を食べながら、ぼんやりと彼の事を考えていた。今頃、隣で私の無念達を食べているのだろうか? 雅人:(M)思いがけず、楽しい時間を過ごす事が出来た。何も言わずに終わりにするつもりだったけど、これじゃあ、ますます未練が残っちゃうな、、でも、良い思い出ができた。彼女お勧めの半額惣菜を食べながら、カレンダーを眺めていた。 0:翌朝、玄関を出る雅人、玄関前を掃除している千鶴に会う。 千鶴:おはようございます。 雅人:あっ、おはようございます。昨日のお惣菜、どれも凄く美味しかったです。 千鶴:ああ、良かったです。何か、押し付けたみたいになっちゃって、食べ切れました? 雅人:ええ、特にあの、白身魚の、、 千鶴:南蛮漬け! 雅人:そう、それ! 千鶴:あれ、私の一推しなんです! 雅人:すっごく美味しかったです! 千鶴:良かったぁ、気に入って貰えて。って、私が作ったんじゃないのに、変ですよね。 雅人:わかりますよ、自分の好きな物を気に言って貰えると嬉しいですよね。僕の会社の近くにも、スーパーがあって、そこのブロッコリーの胡麻和えが凄く美味しくて、会社中に広めちゃいました。 千鶴:へぇ、食べてみたいなぁ。 雅人:じゃあ、今日、買って来ますよ!、、いえ、あの、、良かったらですけど、、。 千鶴:いいんですか?楽しみにしてます! 雅人:はい!、、えっと、帰って来たら、お届けしますね。 千鶴:お腹を空かせて、待ってます(笑) 雅人:心を込めて、お届けします(笑)、、じゃあ、 千鶴:行ってらっしゃい。 雅人:行って来ます。 千鶴:(M)スーツ姿の雅人さんの背中を見送る。行ってらっしゃい、、早く帰ってきてね、まるで新婚の奥さんみたい(笑)。 雅人:(M)急に親しくなった、、と、思って良いのだろうか、「行ってらっしゃい」、僕を元気づける魔法の言葉、。こんな気持ちになれるんだったら、もっと早く声をかければ良かった、、。 0:間 千鶴:(M)仕事から帰って、今朝のやりとりを思い出す。雅人さんの帰りを待って、なんだか、ソワソワ、、。 0:呼び鈴の音(ピンポーン) 千鶴:あっ、はーい。 0:ドアを開ける千鶴。 雅人:こんばんは。 千鶴:こんばんは。 雅人:あの、これ、今朝言ってた、ブロッコリーの胡麻和えです。 千鶴:ありがとうございます。スーツ姿のままなんですね、一旦家に帰ってからでも良かったのに。 雅人:いえ、千鶴さんが、お腹を空かせてると、いけないと思って。 千鶴:お腹空かせて、待ってました。 雅人:大変お待たせ致しました。存分にご賞味ください。 千鶴:はい(笑) 雅人:お口に合うと良いんですけど、、 千鶴:大丈夫ですよ、雅人さんとは、食べ物の好みが似てるみたいだから。 雅人:はは、、何か良いですね、そういうの。 千鶴:(少し照れて)あ、はい、、 雅人:(帰ろうとして)じゃあ、、 千鶴:あっ、待って下さい。 雅人:え? 千鶴:実は私も、雅人さんにお土産が。 雅人:えっ⁈ほんとですか⁈嬉しいなぁ。 千鶴:職場の近くに、美味しいケーキ屋さんがあって、あっ、甘いもの大丈夫ですか? 雅人:はい、大好きです。ありがとうございます。 千鶴:よかったぁ。、、じゃあ、、えっと、、 雅人:はい。 千鶴:、、あの、、えーっと、、ケーキ、、 雅人:はい、、? 千鶴:、、あ、、持って来ますね、、 雅人:はい。 0:千鶴がケーキの箱を雅人に渡す。 千鶴:、、どうぞ、、 雅人:ありがとうございます。 千鶴:いえ、、 雅人:じゃあ。 千鶴:、、、はい、じゃあ、、 0:玄関のドアを閉める千鶴。 雅人:(M)部屋に帰って、箱を開けると、チョコレートケーキが二つ入っていた。一緒に食べるつもりでいてくれたのかな? 雅人:まさか、、ね、、。 千鶴:(M)雅人さんと、一緒に食べようと思って買って来たチョコレートケーキ、、「上がりませんか?」の一言が言えなかった、、 0:間 雅人:(M)それから千鶴さんとは、また挨拶をするだけの関係に戻っていた。仲良くなれた気がしていたけど、、挨拶をするだけのお隣さん。まあ、こんなもんだよな、、。このまま、何も言わないまま、、 : 0:会社帰りの雅人が歩いている。 雅人:遅くなっちゃったな、、もう、スーパーもやってないし、冷蔵庫に何かあったかな、、  : 雅人:(M)残業を終え、いつもの帰り道、マンション近くの公園の前を通ると、突然、声をかけられた。 千鶴:雅人さん! 雅人:えっ⁈、、あっ、千鶴さん。 千鶴:こんばんは。 雅人:こんばんは。どうしたんですか? 千鶴:えっ、あの、、ブランコに、、 雅人:はあ、、 千鶴:今日は遅いんですね。 雅人:ええ、色々、終わらせなきゃいけない仕事があって。 千鶴:大変ですね、良かったら、どうですか? 雅人:えっ? 千鶴:ブランコ、、 雅人:ああ、、 千鶴:すいません、お仕事でお疲れですよね、、 雅人:いえ、お邪魔します。(ブランコに座る) 雅人:何か懐かしいなぁ、、この公園、毎日前を通るけど、初めて入りました。、、あの、なんで、こんな時間に? 千鶴:、、玄関前で待ってようかと思ったんですけど、あまりにも待ち伏せっぽくなっちゃうから、、 雅人:えっ?僕を待ってたんですか? 千鶴:はい、、 雅人:夜の公園も、なかなか待ち伏せっぽいですけど(笑) 千鶴:偶然を装うつもりだったんですけど、公園にいるには不自然な時間になってしまったので、白状しちゃいました、、 雅人:すいません、遅くなっちゃって、、 千鶴:何で、雅人さんが謝るんですか(笑) 雅人:あれ?ほんとだ、、何で謝ってるんだろ(笑) 千鶴:ほんと、いい人ですね。 雅人:いやぁ、、。で、何の御用でしょうか? 千鶴:大した事じゃないんですけど、職場でちょっとイヤな事あって、、話せる人、いなくて、、 雅人:僕で良ければ聞きますよ。いい人なんで(笑) 千鶴:じゃあ、その人の良さに付け込ませて下さい(笑) 雅人:はい。どうぞ、遠慮なく。 千鶴:今日、職場で、先輩に会議の資料のコピーをとるように言われたんです。 雅人:ほう、、 千鶴:結構な枚数あったんですけど、5部ずつコピーして、ホッチキスで留めて、時間になったら配るようにって、、 雅人:ほうほう、、 千鶴:で、言われた通り、資料の準備して、時間になって、会議室に行ったら、、 雅人:行ったら? 千鶴:会議の出席者が8人いたんです!資料は5冊しか作ってないのに、、。 雅人:え?、でも、それって、千鶴さんのせいじゃ、、 千鶴:そうなんですよ!私は5部づつって言われたんです!指示通りに仕事しただけなんです! 雅人:だったら、千鶴さんは悪く無いじゃないですか。 千鶴:でも、指示を出した先輩は知らんぷり、、何のフォローもしてくれず、、 雅人:えーっ、それは酷いなぁ。 千鶴:ですよね?結局、私が平謝り、会議は資料不足のまま始まり、後で課長にイヤミを散々言われました。 雅人:先輩は? 千鶴:後からわたしの所へ来て、「私、8部ずつって言ったよね?」って、、私の聞き間違いにされました。 雅人:酷すぎる!女の先輩? 千鶴:はい、、 雅人:それって、もしかしてワザとなんじゃないかな? 千鶴:え? 雅人:千鶴さんが、若くて、可愛いから、嫉妬したんですよ。 千鶴:いや、、 雅人:絶対そうですよ。可愛い人って、色々大変ですよね、男にはわからない苦労があるって言うか、、。可愛いと得することばかりじゃないんだよなぁ。でも、可愛いのは千鶴さんのせいじゃないし、、 千鶴:あの、、 雅人:はい? 千鶴:そんなに、可愛いいを連呼されると、照れるんですけど、、 雅人:あっ、ごめんなさい、、つい本音が、、。よ、よるの公園が僕をそうさせるのかなぁ、、 千鶴:ぷっ、なんですかそれ(笑) 雅人:え、いや、ちょっとロマンチックに言ってみたんですけど、、 千鶴:(笑)ありがとうございます。何か元気になりました。 雅人:それは良かった。 千鶴:話せる人がいるって良いですね。 雅人:僕で良ければ、いつでも聞きますよ。 千鶴:また待ち伏せしますね(笑) 雅人:今度、僕の愚痴も聞いて下さい。僕も話せる人いなくて。 千鶴:わたしで良ければ、いつでも。 雅人:じゃあ、次の日曜日はどうですか?最近出来た、駅前の喫茶店で。 千鶴:それって、、 雅人:あっ、お嫌じゃなければ、ですけど、、 千鶴:、、楽しみにしてます。 雅人:良かったぁ。 千鶴:(M)ドキドキした、「それって、デートのお誘いですか?」と言おうとして、飲み込んだ。 雅人:(M)ドキドキした、「デートしてください」を遠回しに言ってみた。 : 0:日曜日、喫茶店で向かい合う 千鶴と雅人。 雅人:(M)よく晴れた日曜日、喫茶店の窓際の席で、僕はもう、1時間も会社での失敗談を話していた。僕の話しを聞いて、笑ったり、一緒に怒ったりしてくれる彼女、時々目が合うと、照れ臭くて、景色をみる振りをして視線をそらしてしまう。 千鶴:(M)美味しいケーキと、美味しい紅茶、彼の心地よい声、優しい話し方。失敗談なのに何だか楽しくて、失礼ながらつい笑ってしまう。彼とは、中々目が合わないけれど、一緒の時間を過ごせているのが、とても心地よかった。 : 雅人:、、で、その一瞬で300人分の顧客データが、消滅しちゃったんです、、 千鶴:うわぁ、やっちゃいましたねぇ、、 雅人:血の気が引きました、、会社を爆破して帰ろうかと思いました、、 千鶴:いや、爆破はまずいでしょ、、それはもう、失敗じゃなくてテロですから。 雅人:もちろん、会社のみんなを避難させてから、爆破しますよ。 千鶴:あっ、そこはやっぱり、いい人なんだ。 雅人:目的はあくまでも、パソコンの破壊なので。 千鶴:いい人でよかった。(笑) 雅人:爆破してますけど。(笑) 千鶴:爆破してるけど、いい人。ん?やっぱり悪い人か? 雅人:かなり悪い人だと思います。 千鶴:ですよね? 0:笑いあう二人 千鶴:あっ、また目を逸らした。 雅人:えっ? 千鶴:目が合いそうになると、外見ますよね? 雅人:あっ、バレてましたか、、こういうシュチュエーション、慣れてなくて、、 千鶴:まあ、私もですけど、、、 雅人:初デートなのに、カッコ悪い話しばっかりだし。 千鶴:、、これ、、デート、、なんだ、、 雅人:えっ!いや!、、深い意味はないです、、二人で出かける事を、総称して、デートと言うのかな、、と、、 千鶴:、、ですよね、うん、これ、、デートです、、ね。 雅人:はい、、 千鶴:、、次のデートは、失敗談ばっかりにならないように、お互い頑張りましょう。 雅人:次の? 千鶴:次の、、次の日曜日とか、、どうですか? 雅人:ああ、、えっと、、 千鶴:あっ、すいません、忙しいですよね、、。じゃあ、また空いてる日に、、 雅人:あの、、土曜日に、、 千鶴:えっ?土曜日ですか?、ああ、残念。次の土曜日は仕事で、、 雅人:土曜日に、引っ越すんです。 千鶴:えっ? 雅人:僕、次の土曜日に、引っ越すんです。 千鶴:えっ⁈えぇぇぇっ! 雅人:あの、声が、、 千鶴:すいません、大きな声出しちゃって、、じゃなくて!引っ越すんですか⁈ 雅人:はい、 千鶴:え?なに?うそ、、どこに? 雅人:ウチの会社、マレーシアに支社がありまして、、そこに、、 千鶴:マレーシア?海外⁈ 雅人:はい、、 千鶴:何で?そんな、急に、 雅人:いえ、急でもなくて、半年前から決まってたんです。 千鶴:私にしてみたら、急ですよ、何で今まで言ってくれなかったんですか⁈ 雅人:いや、ただのお隣さんだったし、、 千鶴:そりゃ、そうだけど、、 雅人:転勤が決まって、もう千鶴さんとも、挨拶出来なくなるなぁって思ってて。そしたらあの日、偶然スーパーで千鶴さんを見かけて、勇気を出して声かけたんです。 千鶴:あの日から今日まで、言うタイミングいくらでもありましたよね? 雅人:、、何か、言い出せなくて、、 千鶴:「ただのお隣さんだから、言わなくてもいいやぁ、」って?「引越しの当日にでも挨拶するかぁ、」って?そういう事ですか? そりゃそうですよね、ただのお隣さんですもんね。 「ケーキとか貰ったし、愚痴くらいなら聞いてやるかぁ、」って、「公園で待ち伏せされてるし、無視したら何されるかわからないし、土曜日までの我慢だし」って、そう思ってたって事ですよね⁈ 雅人:千鶴さん、、 千鶴:、、あっ、すいません、、突然で、びっくりしちゃって、つい、、何か、面倒臭い女になってましたね、、 雅人:いえ、ホント、今日まで言い出せなくて、すいません、、 0: 千鶴:(M)それから、何となく気まづい雰囲気のまま、喫茶店を出た。 一緒にマンションまで歩いて帰る気にはなれず、スーパーに寄るからと言って、途中で別れた。 、、何で今まで言ってくれなかったのよ、、。 寂しいのか、悲しいのか、怒りなのか、よく分からない感情が込み上げてくる、気持ちの整理がつかない、、。 もう、挨拶できなくなっちゃうのか、、。 雅人:(M)一人で部屋に帰って来て、カレンダーを見る。やっぱり、話すタイミングとしては遅過ぎた。あの日、スーパーで話すべきだったのか、、そもそも、話しかけずに、ただのお隣さんでいた方が良かったのかも、、。 なんとなく気になるお隣さん、それだけの関係でいた方が、、。 いや、今でもそれだけの関係、、だよな、、。 彼女はどう思っているんだろう?、、。 もう、挨拶できなくなるんだな、、。 0: 千鶴:(M)月曜日、雅人さんが玄関から出る音が聞こえた。会わないように少し時間をずらして、玄関を出る。何やってるんだろう、、。 普通に挨拶すれば良いだけなのに、、 雅人:(M)火曜日、初めて話しをしたスーパーに寄った。あの時、楽しかったなぁ。帰ったら、荷造りしなくちゃ、、 千鶴:(M)水曜日、仕事帰りに公園のブランコに座った。マンションの窓を見上げると、雅人さんの部屋の窓から灯りが漏れている。 もう、帰ってたんだ、、それとも、今日は休みだったのかな、、。 雅人:(M)木曜日、二人で話した喫茶店の前を通った。 中を覗く、、居るわけないか、、。 ここで食べたケーキも、彼女に貰ったケーキも、美味しかったなぁ、、。 千鶴:(M)金曜日、引越しの業者さんが来て、荷物を運び出している。 荷物は先にマレーシアに行くのか、、。雅人さんの話し声がする、、。 なんだか懐かしく感じる、、。 雅人:(M)土曜日、引越し当日。 あの日から今日まで、とうとう千鶴さんと話す機会は無かった、、。 今日は、確か仕事って言ってたな、、。 千鶴:(M)土曜日、引越し当日。 時間は聞いてなかったけど、雅人さんが、玄関から出て来る音が聞こえてきた。 午前6時、いつもの出勤時間より、2時間も早い。 もう、行くんだ、、。 窓から外を見ると、マンションの入り口を出て行く、彼の姿が見えた、、。 気づくと私は、玄関から飛び出し、階段をかけ降りていた。 0: 千鶴:おはようございます! 雅人:千鶴さん!、、おはようございます! 千鶴:引越し、今日でしたね、、 雅人:あっ、はい、、。えっと、今日、お仕事でしたよね? 千鶴:えっ?ええ、、。ちょうど、出かけるところで、、 雅人:こんな早くに、その格好で出勤ですか? 千鶴:えっ⁈、、。 千鶴:(M)夢中で飛び出した私は、黒のスウェット姿で、髪はボサボサだった、、もちろんノーメイク、、。 最後の最後にやってしまった、、。 雅人:ぷっ、、ははは 千鶴:、、お恥ずかしい、、。 雅人:心配だなぁ、僕がいなくなった後。 千鶴:大丈夫ですよぉ、今日はたまたま、、 雅人:半額惣菜食べ過ぎて、お腹壊さないで下さいね。 千鶴:はい。 雅人:イヤな事があったら、ため込んじゃ駄目ですよ。 千鶴:はい。 雅人:夜の公園は危ないので、真っ直ぐ家に帰って下さいね。 千鶴:はい。、、それも、大丈夫です。待ってても、もう雅人さんには会えないので、、、。 雅人:(M)ふと見せた、彼女の寂しそうな顔、、。 こういう時、どうすればいいのか、、。 抱きしめたい衝動を抑えて、僕は彼女に右手を差し出した。 千鶴:(M)あふれ出そうな涙を堪える。抱きしめてくれるかと思った、、。 私の前に差し出された右手は、微かに震えているように見えた。 雅人:(M)彼女が僕の手を、優しく握る。 僕らは初めてお互いの体温を感じ、見つめあった。 千鶴:行ってらっしゃい。 雅人:行ってきます。 0:END

0:夕方のスーパー、買い物中の千鶴。 千鶴:お腹すいたぁ、何食べよっかなぁ、、げっ!高級北海道酪農牛乳、1リットルで1500円⁈、どこのセレブがこんな物買うのよ、、。ってセレブはこんな庶民のスーパーには来ないか。 千鶴:ああ、惣菜コーナーの、半額シール達が私を呼んでいる~! 0: 千鶴:これとこれと、、あとこコレも、、あっ、これも美味しいのよね~! 0:半額惣菜でカゴがいっぱいになる。 千鶴:戦利品の数々よ!、、ん~、こんなに食べ切れるかしら、、半額シールの魔力恐るべし、、このカゴ誰かに見られたら、ちょっと恥ずかしいかも、、。 雅人:こんばんは、、 千鶴:げっ! 雅人:あっ、すいません、いきなり、、決して怪しいものでは、、 千鶴:えっと、お隣さん、、ですよね? 雅人:えっ? 千鶴:あれ?違いましたか? 雅人:いえ!違いません!お隣さんです! 千鶴:あ、圧が、、 雅人:知っててくれたんですね!! 千鶴:ええ、だって、たまに挨拶とか、、 雅人:挨拶!してますよね!おはようございます!とか、こんばんは!とか、、嬉しいなぁ、覚えててくれたんだ! 千鶴:あの、圧が、、 雅人:ああ、すいません、、覚えていてくれてるとは思ってなくて、つい興奮しちゃいました、、 千鶴:ふふっ、、河村さん、、でしたっけ?面白い人ですね(笑) 雅人:え?いや、、 千鶴:いつもお見かけするのはスーツ姿だったから、真面目な人かと思ってましたけど、あっ、会社勤めの人は、スーツ姿当たり前か。 0:千鶴のカゴの中を見て 雅人:いっぱい食べるんですね。 千鶴:あっ、いえ、コレは、、 雅人:ああ、すいません!女性に向かって失礼な事を! 千鶴:半額シールの山で、お恥ずかしい、、給料日前なもので、、。お腹空いてる状態でスーパーにきちゃダメですね、つい欲張っちゃう(笑) 千鶴:あっ、でも、どれも本当に美味しいんですよ、ちょっと食べきれないけど、棚に戻すの惜しいなぁ、、半額だし、、。 雅人:じゃあ、僕のカゴ入れてください。 千鶴:え? 雅人:泣く泣く棚に戻すなら、僕のカゴに入れて下さい。千鶴さんの無念を僕が引き受けます! 千鶴:え? 雅人:いや、だから、食べきれない千鶴さんの無念を、、 千鶴:千鶴って、、私の名前、、知って、、 雅人:あっ、いや、それは、、お隣さんだから、、毎朝、表札を、その、、、すいません、気持ち悪いですよね、、 千鶴:(笑)そんなに焦らないでください、毎朝うちの前を通ってれば、そりゃ知ってますよね。私だって河村さんって知ってた訳だし。 雅人:はあ、、 千鶴:いきなり下の名前呼びは、びっくりしましたけど(笑) 雅人:ああ、ほんと、すいません!えっと、、真鍋さん、、 千鶴:千鶴さんでいいですよ、私も下の名前で呼ぼうかな、えっと、、 雅人:雅人です! 千鶴:じゃあ、雅人さん、私の無念を、雅人さんのカゴに移動します。 雅人:はい!喜んで! 千鶴:くすっ、居酒屋でのバイト経験あったりします? 雅人:え? 千鶴:いえ、何でもありません(笑) 雅人:居酒屋でのバイト経験はありません、えっと、コンビニと、靴屋と、、 千鶴:ぷっ、、(笑) やっぱり面白い人ですね、面白くて真面目な人(笑) 雅人:え、いや、、 千鶴:困らないで下さい。褒めてるんですよ? 雅人:えっ?ありがとうございます。 千鶴:じゃあ、これと、これと、、あっ、これも凄く美味しいんですよぉ。 0:千鶴のカゴに入っていた、半額惣菜が、ほとんど雅人のカゴに移される。 千鶴:あれ?何かすいません、私のかき集めた半額惣菜達が、ほとんど雅人さんのカゴに、、やっぱり少し、棚に戻しますね。 雅人:いえ、大丈夫です。千鶴さんの美味しいと思うもの、全部食べてみたいです。千鶴さんの無念、全部僕が引き受けます! 千鶴:半額だし? 雅人:半額だし! 千鶴:ふふふ、、 雅人:ははは、、 0:間 千鶴:(M)話しやすい人だな、と思った。真面目なのに面白くて、ちょっと抜けてて、、。家に帰ってからも、半額惣菜を食べながら、ぼんやりと彼の事を考えていた。今頃、隣で私の無念達を食べているのだろうか? 雅人:(M)思いがけず、楽しい時間を過ごす事が出来た。何も言わずに終わりにするつもりだったけど、これじゃあ、ますます未練が残っちゃうな、、でも、良い思い出ができた。彼女お勧めの半額惣菜を食べながら、カレンダーを眺めていた。 0:翌朝、玄関を出る雅人、玄関前を掃除している千鶴に会う。 千鶴:おはようございます。 雅人:あっ、おはようございます。昨日のお惣菜、どれも凄く美味しかったです。 千鶴:ああ、良かったです。何か、押し付けたみたいになっちゃって、食べ切れました? 雅人:ええ、特にあの、白身魚の、、 千鶴:南蛮漬け! 雅人:そう、それ! 千鶴:あれ、私の一推しなんです! 雅人:すっごく美味しかったです! 千鶴:良かったぁ、気に入って貰えて。って、私が作ったんじゃないのに、変ですよね。 雅人:わかりますよ、自分の好きな物を気に言って貰えると嬉しいですよね。僕の会社の近くにも、スーパーがあって、そこのブロッコリーの胡麻和えが凄く美味しくて、会社中に広めちゃいました。 千鶴:へぇ、食べてみたいなぁ。 雅人:じゃあ、今日、買って来ますよ!、、いえ、あの、、良かったらですけど、、。 千鶴:いいんですか?楽しみにしてます! 雅人:はい!、、えっと、帰って来たら、お届けしますね。 千鶴:お腹を空かせて、待ってます(笑) 雅人:心を込めて、お届けします(笑)、、じゃあ、 千鶴:行ってらっしゃい。 雅人:行って来ます。 千鶴:(M)スーツ姿の雅人さんの背中を見送る。行ってらっしゃい、、早く帰ってきてね、まるで新婚の奥さんみたい(笑)。 雅人:(M)急に親しくなった、、と、思って良いのだろうか、「行ってらっしゃい」、僕を元気づける魔法の言葉、。こんな気持ちになれるんだったら、もっと早く声をかければ良かった、、。 0:間 千鶴:(M)仕事から帰って、今朝のやりとりを思い出す。雅人さんの帰りを待って、なんだか、ソワソワ、、。 0:呼び鈴の音(ピンポーン) 千鶴:あっ、はーい。 0:ドアを開ける千鶴。 雅人:こんばんは。 千鶴:こんばんは。 雅人:あの、これ、今朝言ってた、ブロッコリーの胡麻和えです。 千鶴:ありがとうございます。スーツ姿のままなんですね、一旦家に帰ってからでも良かったのに。 雅人:いえ、千鶴さんが、お腹を空かせてると、いけないと思って。 千鶴:お腹空かせて、待ってました。 雅人:大変お待たせ致しました。存分にご賞味ください。 千鶴:はい(笑) 雅人:お口に合うと良いんですけど、、 千鶴:大丈夫ですよ、雅人さんとは、食べ物の好みが似てるみたいだから。 雅人:はは、、何か良いですね、そういうの。 千鶴:(少し照れて)あ、はい、、 雅人:(帰ろうとして)じゃあ、、 千鶴:あっ、待って下さい。 雅人:え? 千鶴:実は私も、雅人さんにお土産が。 雅人:えっ⁈ほんとですか⁈嬉しいなぁ。 千鶴:職場の近くに、美味しいケーキ屋さんがあって、あっ、甘いもの大丈夫ですか? 雅人:はい、大好きです。ありがとうございます。 千鶴:よかったぁ。、、じゃあ、、えっと、、 雅人:はい。 千鶴:、、あの、、えーっと、、ケーキ、、 雅人:はい、、? 千鶴:、、あ、、持って来ますね、、 雅人:はい。 0:千鶴がケーキの箱を雅人に渡す。 千鶴:、、どうぞ、、 雅人:ありがとうございます。 千鶴:いえ、、 雅人:じゃあ。 千鶴:、、、はい、じゃあ、、 0:玄関のドアを閉める千鶴。 雅人:(M)部屋に帰って、箱を開けると、チョコレートケーキが二つ入っていた。一緒に食べるつもりでいてくれたのかな? 雅人:まさか、、ね、、。 千鶴:(M)雅人さんと、一緒に食べようと思って買って来たチョコレートケーキ、、「上がりませんか?」の一言が言えなかった、、 0:間 雅人:(M)それから千鶴さんとは、また挨拶をするだけの関係に戻っていた。仲良くなれた気がしていたけど、、挨拶をするだけのお隣さん。まあ、こんなもんだよな、、。このまま、何も言わないまま、、 : 0:会社帰りの雅人が歩いている。 雅人:遅くなっちゃったな、、もう、スーパーもやってないし、冷蔵庫に何かあったかな、、  : 雅人:(M)残業を終え、いつもの帰り道、マンション近くの公園の前を通ると、突然、声をかけられた。 千鶴:雅人さん! 雅人:えっ⁈、、あっ、千鶴さん。 千鶴:こんばんは。 雅人:こんばんは。どうしたんですか? 千鶴:えっ、あの、、ブランコに、、 雅人:はあ、、 千鶴:今日は遅いんですね。 雅人:ええ、色々、終わらせなきゃいけない仕事があって。 千鶴:大変ですね、良かったら、どうですか? 雅人:えっ? 千鶴:ブランコ、、 雅人:ああ、、 千鶴:すいません、お仕事でお疲れですよね、、 雅人:いえ、お邪魔します。(ブランコに座る) 雅人:何か懐かしいなぁ、、この公園、毎日前を通るけど、初めて入りました。、、あの、なんで、こんな時間に? 千鶴:、、玄関前で待ってようかと思ったんですけど、あまりにも待ち伏せっぽくなっちゃうから、、 雅人:えっ?僕を待ってたんですか? 千鶴:はい、、 雅人:夜の公園も、なかなか待ち伏せっぽいですけど(笑) 千鶴:偶然を装うつもりだったんですけど、公園にいるには不自然な時間になってしまったので、白状しちゃいました、、 雅人:すいません、遅くなっちゃって、、 千鶴:何で、雅人さんが謝るんですか(笑) 雅人:あれ?ほんとだ、、何で謝ってるんだろ(笑) 千鶴:ほんと、いい人ですね。 雅人:いやぁ、、。で、何の御用でしょうか? 千鶴:大した事じゃないんですけど、職場でちょっとイヤな事あって、、話せる人、いなくて、、 雅人:僕で良ければ聞きますよ。いい人なんで(笑) 千鶴:じゃあ、その人の良さに付け込ませて下さい(笑) 雅人:はい。どうぞ、遠慮なく。 千鶴:今日、職場で、先輩に会議の資料のコピーをとるように言われたんです。 雅人:ほう、、 千鶴:結構な枚数あったんですけど、5部ずつコピーして、ホッチキスで留めて、時間になったら配るようにって、、 雅人:ほうほう、、 千鶴:で、言われた通り、資料の準備して、時間になって、会議室に行ったら、、 雅人:行ったら? 千鶴:会議の出席者が8人いたんです!資料は5冊しか作ってないのに、、。 雅人:え?、でも、それって、千鶴さんのせいじゃ、、 千鶴:そうなんですよ!私は5部づつって言われたんです!指示通りに仕事しただけなんです! 雅人:だったら、千鶴さんは悪く無いじゃないですか。 千鶴:でも、指示を出した先輩は知らんぷり、、何のフォローもしてくれず、、 雅人:えーっ、それは酷いなぁ。 千鶴:ですよね?結局、私が平謝り、会議は資料不足のまま始まり、後で課長にイヤミを散々言われました。 雅人:先輩は? 千鶴:後からわたしの所へ来て、「私、8部ずつって言ったよね?」って、、私の聞き間違いにされました。 雅人:酷すぎる!女の先輩? 千鶴:はい、、 雅人:それって、もしかしてワザとなんじゃないかな? 千鶴:え? 雅人:千鶴さんが、若くて、可愛いから、嫉妬したんですよ。 千鶴:いや、、 雅人:絶対そうですよ。可愛い人って、色々大変ですよね、男にはわからない苦労があるって言うか、、。可愛いと得することばかりじゃないんだよなぁ。でも、可愛いのは千鶴さんのせいじゃないし、、 千鶴:あの、、 雅人:はい? 千鶴:そんなに、可愛いいを連呼されると、照れるんですけど、、 雅人:あっ、ごめんなさい、、つい本音が、、。よ、よるの公園が僕をそうさせるのかなぁ、、 千鶴:ぷっ、なんですかそれ(笑) 雅人:え、いや、ちょっとロマンチックに言ってみたんですけど、、 千鶴:(笑)ありがとうございます。何か元気になりました。 雅人:それは良かった。 千鶴:話せる人がいるって良いですね。 雅人:僕で良ければ、いつでも聞きますよ。 千鶴:また待ち伏せしますね(笑) 雅人:今度、僕の愚痴も聞いて下さい。僕も話せる人いなくて。 千鶴:わたしで良ければ、いつでも。 雅人:じゃあ、次の日曜日はどうですか?最近出来た、駅前の喫茶店で。 千鶴:それって、、 雅人:あっ、お嫌じゃなければ、ですけど、、 千鶴:、、楽しみにしてます。 雅人:良かったぁ。 千鶴:(M)ドキドキした、「それって、デートのお誘いですか?」と言おうとして、飲み込んだ。 雅人:(M)ドキドキした、「デートしてください」を遠回しに言ってみた。 : 0:日曜日、喫茶店で向かい合う 千鶴と雅人。 雅人:(M)よく晴れた日曜日、喫茶店の窓際の席で、僕はもう、1時間も会社での失敗談を話していた。僕の話しを聞いて、笑ったり、一緒に怒ったりしてくれる彼女、時々目が合うと、照れ臭くて、景色をみる振りをして視線をそらしてしまう。 千鶴:(M)美味しいケーキと、美味しい紅茶、彼の心地よい声、優しい話し方。失敗談なのに何だか楽しくて、失礼ながらつい笑ってしまう。彼とは、中々目が合わないけれど、一緒の時間を過ごせているのが、とても心地よかった。 : 雅人:、、で、その一瞬で300人分の顧客データが、消滅しちゃったんです、、 千鶴:うわぁ、やっちゃいましたねぇ、、 雅人:血の気が引きました、、会社を爆破して帰ろうかと思いました、、 千鶴:いや、爆破はまずいでしょ、、それはもう、失敗じゃなくてテロですから。 雅人:もちろん、会社のみんなを避難させてから、爆破しますよ。 千鶴:あっ、そこはやっぱり、いい人なんだ。 雅人:目的はあくまでも、パソコンの破壊なので。 千鶴:いい人でよかった。(笑) 雅人:爆破してますけど。(笑) 千鶴:爆破してるけど、いい人。ん?やっぱり悪い人か? 雅人:かなり悪い人だと思います。 千鶴:ですよね? 0:笑いあう二人 千鶴:あっ、また目を逸らした。 雅人:えっ? 千鶴:目が合いそうになると、外見ますよね? 雅人:あっ、バレてましたか、、こういうシュチュエーション、慣れてなくて、、 千鶴:まあ、私もですけど、、、 雅人:初デートなのに、カッコ悪い話しばっかりだし。 千鶴:、、これ、、デート、、なんだ、、 雅人:えっ!いや!、、深い意味はないです、、二人で出かける事を、総称して、デートと言うのかな、、と、、 千鶴:、、ですよね、うん、これ、、デートです、、ね。 雅人:はい、、 千鶴:、、次のデートは、失敗談ばっかりにならないように、お互い頑張りましょう。 雅人:次の? 千鶴:次の、、次の日曜日とか、、どうですか? 雅人:ああ、、えっと、、 千鶴:あっ、すいません、忙しいですよね、、。じゃあ、また空いてる日に、、 雅人:あの、、土曜日に、、 千鶴:えっ?土曜日ですか?、ああ、残念。次の土曜日は仕事で、、 雅人:土曜日に、引っ越すんです。 千鶴:えっ? 雅人:僕、次の土曜日に、引っ越すんです。 千鶴:えっ⁈えぇぇぇっ! 雅人:あの、声が、、 千鶴:すいません、大きな声出しちゃって、、じゃなくて!引っ越すんですか⁈ 雅人:はい、 千鶴:え?なに?うそ、、どこに? 雅人:ウチの会社、マレーシアに支社がありまして、、そこに、、 千鶴:マレーシア?海外⁈ 雅人:はい、、 千鶴:何で?そんな、急に、 雅人:いえ、急でもなくて、半年前から決まってたんです。 千鶴:私にしてみたら、急ですよ、何で今まで言ってくれなかったんですか⁈ 雅人:いや、ただのお隣さんだったし、、 千鶴:そりゃ、そうだけど、、 雅人:転勤が決まって、もう千鶴さんとも、挨拶出来なくなるなぁって思ってて。そしたらあの日、偶然スーパーで千鶴さんを見かけて、勇気を出して声かけたんです。 千鶴:あの日から今日まで、言うタイミングいくらでもありましたよね? 雅人:、、何か、言い出せなくて、、 千鶴:「ただのお隣さんだから、言わなくてもいいやぁ、」って?「引越しの当日にでも挨拶するかぁ、」って?そういう事ですか? そりゃそうですよね、ただのお隣さんですもんね。 「ケーキとか貰ったし、愚痴くらいなら聞いてやるかぁ、」って、「公園で待ち伏せされてるし、無視したら何されるかわからないし、土曜日までの我慢だし」って、そう思ってたって事ですよね⁈ 雅人:千鶴さん、、 千鶴:、、あっ、すいません、、突然で、びっくりしちゃって、つい、、何か、面倒臭い女になってましたね、、 雅人:いえ、ホント、今日まで言い出せなくて、すいません、、 0: 千鶴:(M)それから、何となく気まづい雰囲気のまま、喫茶店を出た。 一緒にマンションまで歩いて帰る気にはなれず、スーパーに寄るからと言って、途中で別れた。 、、何で今まで言ってくれなかったのよ、、。 寂しいのか、悲しいのか、怒りなのか、よく分からない感情が込み上げてくる、気持ちの整理がつかない、、。 もう、挨拶できなくなっちゃうのか、、。 雅人:(M)一人で部屋に帰って来て、カレンダーを見る。やっぱり、話すタイミングとしては遅過ぎた。あの日、スーパーで話すべきだったのか、、そもそも、話しかけずに、ただのお隣さんでいた方が良かったのかも、、。 なんとなく気になるお隣さん、それだけの関係でいた方が、、。 いや、今でもそれだけの関係、、だよな、、。 彼女はどう思っているんだろう?、、。 もう、挨拶できなくなるんだな、、。 0: 千鶴:(M)月曜日、雅人さんが玄関から出る音が聞こえた。会わないように少し時間をずらして、玄関を出る。何やってるんだろう、、。 普通に挨拶すれば良いだけなのに、、 雅人:(M)火曜日、初めて話しをしたスーパーに寄った。あの時、楽しかったなぁ。帰ったら、荷造りしなくちゃ、、 千鶴:(M)水曜日、仕事帰りに公園のブランコに座った。マンションの窓を見上げると、雅人さんの部屋の窓から灯りが漏れている。 もう、帰ってたんだ、、それとも、今日は休みだったのかな、、。 雅人:(M)木曜日、二人で話した喫茶店の前を通った。 中を覗く、、居るわけないか、、。 ここで食べたケーキも、彼女に貰ったケーキも、美味しかったなぁ、、。 千鶴:(M)金曜日、引越しの業者さんが来て、荷物を運び出している。 荷物は先にマレーシアに行くのか、、。雅人さんの話し声がする、、。 なんだか懐かしく感じる、、。 雅人:(M)土曜日、引越し当日。 あの日から今日まで、とうとう千鶴さんと話す機会は無かった、、。 今日は、確か仕事って言ってたな、、。 千鶴:(M)土曜日、引越し当日。 時間は聞いてなかったけど、雅人さんが、玄関から出て来る音が聞こえてきた。 午前6時、いつもの出勤時間より、2時間も早い。 もう、行くんだ、、。 窓から外を見ると、マンションの入り口を出て行く、彼の姿が見えた、、。 気づくと私は、玄関から飛び出し、階段をかけ降りていた。 0: 千鶴:おはようございます! 雅人:千鶴さん!、、おはようございます! 千鶴:引越し、今日でしたね、、 雅人:あっ、はい、、。えっと、今日、お仕事でしたよね? 千鶴:えっ?ええ、、。ちょうど、出かけるところで、、 雅人:こんな早くに、その格好で出勤ですか? 千鶴:えっ⁈、、。 千鶴:(M)夢中で飛び出した私は、黒のスウェット姿で、髪はボサボサだった、、もちろんノーメイク、、。 最後の最後にやってしまった、、。 雅人:ぷっ、、ははは 千鶴:、、お恥ずかしい、、。 雅人:心配だなぁ、僕がいなくなった後。 千鶴:大丈夫ですよぉ、今日はたまたま、、 雅人:半額惣菜食べ過ぎて、お腹壊さないで下さいね。 千鶴:はい。 雅人:イヤな事があったら、ため込んじゃ駄目ですよ。 千鶴:はい。 雅人:夜の公園は危ないので、真っ直ぐ家に帰って下さいね。 千鶴:はい。、、それも、大丈夫です。待ってても、もう雅人さんには会えないので、、、。 雅人:(M)ふと見せた、彼女の寂しそうな顔、、。 こういう時、どうすればいいのか、、。 抱きしめたい衝動を抑えて、僕は彼女に右手を差し出した。 千鶴:(M)あふれ出そうな涙を堪える。抱きしめてくれるかと思った、、。 私の前に差し出された右手は、微かに震えているように見えた。 雅人:(M)彼女が僕の手を、優しく握る。 僕らは初めてお互いの体温を感じ、見つめあった。 千鶴:行ってらっしゃい。 雅人:行ってきます。 0:END