台本概要
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タイトル | ワインレッドを貴女に |
---|---|
作者名 | うたう (@utaunandayo) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
その赤を貴女にー
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
吸血鬼 | 女 | 47 | 吸血鬼の真祖。服はあまり好きじゃない。 |
男 | 男 | 49 | 人間の男。 もうすぐ成人。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
:
:
0:【ワインレッドを貴女に】
:
:
男:(M)染まる、染まる、染まる。
男:身体も視界も全てが赤く、紅く、朱く染まる。
男:張り付きぬめる、生暖かい感触。
男:鉄臭い匂い。
男:横たわる先程まで人だった肉塊。
男:その何もかもが精神すらも侵し、紅が飲み込んでゆく。
男:その最中。一つの声が耳に届く。
吸血鬼:あら?貴方…素敵ね。とっても真っ赤よ。私とお揃いね?
男:それは何もかも赤い世界に降り立つ銀色。
男:銀色は自らも紅く染まっているのにも関わらず嬉しそうに微笑んでいた。
:
:
:
0:薄暗い森の先。ひっそりと佇む洋館。
0:既に夕刻になろうという時間、男はとある寝室へと向っていた。扉の前につくと数回、戸を叩く。
:
男:レディ、起きていらっしゃいますか?
男:……失礼します。おはようございますレディ。
男:もう夕刻ですよ。そろそろ起きて下さい。
吸血鬼:…………ん。
0:ベッドには長い銀髪を微かに動かし、陶器のような肌をさらし、一糸纏わぬ姿で眠る女がいた。
男:…………レディ。
吸血鬼:…もう夕方?おはようモン・シャトン。
男:おはようございます。また服を脱いで寝ていたのですね?下着までそこらに脱ぎ散らかして。
吸血鬼:だって服って窮屈なんだもの。それにこの私の美しい肉体を隠してしまうなんて世界の損失よね。
男:世の男達には刺激が強すぎます。
吸血鬼:あら、じゃあ貴方も興奮するの?
男:当然、今にも押し倒してしまいそうですよ。
男:ですので早急にこちらを着てください。
0:男はバスローブを手渡す。
吸血鬼:ふふ、私はそれでも全然構わないのだけれども、可愛いモン・シャトンのお願いだものね。聞いてあげるわ。
男:ありがとうございます。
吸血鬼:相変わらず堅物ね。もっと気楽に甘えてくれてもいいのに。
男:…それは出来ません。貴方も知っているでしょう。
吸血鬼:ええ、そうね。そうだったわね。ふふふふ。
男:……ところで先程使い魔がなにやら小包を持ってきました。こちらです。
吸血鬼:あら、あいつからとは珍しいわね。
吸血鬼:…ふんふん、ふーん。どういう気まぐれかしら?親切に作り方まで。
男:どなたからですか?
吸血鬼:古い知り合い。過去には大罪に例えられ【暴食】とまで畏れられた吸血鬼よ。…まぁいまじゃ、見る影もないけどね。
吸血鬼:そんなことよりモン・シャトン。お願いがあるの。
男:はい、なんでしょう。
吸血鬼:昨日【姿】を変えたから折角のネイルが消えてしまったのよ。だからまた塗ってくれないかしら?色は……貴方に任せるわ。
0:手を男の前に差し出す。男はそっとその手をとりー
男:喜んで。レディ。
:
:
:
0:両手を塗り終え、足の爪に色を乗せ始める。
男:他にもいらっしゃるのですね。
吸血鬼:何が?
男:吸血鬼ですよ、貴女以外に。
吸血鬼:そういえば会ったことなかったけ?
男:ええ。
吸血鬼:いるわよぉ。昔に比べたら随分と少なくなったけどね。
男:そうなのですか?
吸血鬼:私達は永遠を生きられるけれども不滅ではないもの。真祖ならまだしも眷属は弱点も多いわ。
吸血鬼:それこそ昔は吸血鬼狩りともよく殺し合ってたしね。
男:吸血鬼狩り…、本当にいたんですね。本や映画だけのフィクションかと思ってました。
吸血鬼:ふふふ、可笑しなこというのね。モン・シャトン。
吸血鬼:その虚構(フィクション)の代名詞とも言える【私】が、こうして貴方の目の前実在(いる)というのに。
男:…おっしゃる通りで。
男:しかし吸血鬼狩りとは…。今も狙われることが?
吸血鬼:大戦以降はこちらが余程目立った動きをしない限りはちょっかいをかけてくることはなくなったわね。
吸血鬼:だって、私強いもの。
男:知ってますよ。身を持って。
吸血鬼:そうねぇ、ふふ。
男:……そういえば一昨日は金髪だったのに、今日は銀髪でお姿も変わっていたので昨晩はまた【お食事に】?
吸血鬼:ええ、お相手はちょっとお年を召した紳士だったけれどもとても素敵だったわ。
男:…そうですか。
吸血鬼:なに?妬いてるの?
男:いいえ。そういうわけでは、ただ……。
吸血鬼:そんなに心配しなくても大丈夫よ。モン・シャトン。【食事】をしただけだもの。深みがあってとぉっても美味しかったわ。
男:…その方も幸せだったのでしょうね。
吸血鬼:ええ、最初は怯えていたけれども最後は恍惚な顔を浮かべていたわ。だから残さず全部頂いたのよ。
男:それは偉いですね。
吸血鬼:うふふふ。
男:……終わりましたよ。
吸血鬼:ありがとう。あら素敵な色。
男:お色は今のお姿に合うと思いワインレッドに。
吸血鬼:いいわ、深みもあってドロドロの濃い血のよう。
男:……ええ。貴女には血が似合いますから。
吸血鬼:ふふ、ふふふふ。うふふふ。
男:?どうされました?
吸血鬼:そうね、そうね。いいわ。モン・シャトン。ふふ。私いまとってもいい気分。だからー
0:羽織っていたバスローブを脱ぎ素肌をさらけ出す。
吸血鬼:だから、久々に遊んである。おいで。可愛いモン・シャトン。
男:ーーはい。
0:男は一歩前へと踏み出した。
:
:
0:ーーーー
男:(M)それは突然だった。
男:いつもの夜。両親と共に寝静まった頃だった。
男:鈍く、嫌な音と匂いで目が覚めると、手にぬるりとしたなにかが触れた。
男:すぐにそれは血だと分かった。
男:目の前に母だったものの首だけがあったからだ。
男:すぐ横には父だったもの。部屋の中は返り血で塗り替えられていた。
男:むせ返るような血と脂と臓物の匂い。
男:視界を埋め尽くす
男:赤
男:紅
男:朱
男:精神さえもその色に犯されそうになる最中、ふと違う色が目に入った。
男:それは【銀色】だった。
男:銀色の長い髪の女だった。
男:その銀色は【食事】をしていた。美味しそうに、本当に美味しそうに、千切れた父か母の腕から血を啜っていた。
男:雲一つない夜、満月の光が窓から銀色を照らしていた。
男:その光景はまるで一枚の絵画のようだった。
男:女はひとしきり飲み干すとこちらに気付いたのか振り向きー
吸血鬼:まぁ、子供がいたのね。お腹が空きすぎて気付かなかった。あら、貴方、…素敵ね?とっても真っ赤よ。私とお揃いね?
男:暴力と血と赤の空間で、銀色は月明かりに照らされてキラキラと輝いていた。銀色はそっと私に触れ
吸血鬼:それに、ああ、まるで目が猫みたい。とても可愛い。……気に入ったわ!そうだ!子猫ちゃん、私といらっしゃいな。きっと楽しいわよ?
:
男:少女のように微笑んだ。
:
0:ゴトリと鈍い音が響いた。
男:ーーひゅ、か、ひゅ。
吸血鬼:今日はここまでね。
0:男は血だまりに沈み息も絶え絶えになっていた。
吸血鬼:でも凄いわ!モン・シャトン!今日は三回も私に攻撃を当てられたわ。
男:あ、が、褒めて…頂き、光栄、です。
吸血鬼:うふふ。嬉しくってついつい張り切ってしまったわね?ごめんなさいね。すぐに治してあげるわ。
0:女は自らの血を一滴男に垂らす。するとみるみると男の傷口が塞がっていく。
男:………っありがとうございます。
吸血鬼:うふふ。
男:…でもどうして急に?最近はこういうの乗り気ではなかったのに。
吸血鬼:だって今日貴方ずっと私に殺気を放っていたでしょ?
男:ーーー。
吸血鬼:あんまりにも熱烈だったからお誘いは受けなきゃと思ってね。ふふ。
男:ーふっははっは。そう、ですね、そうでした。
吸血鬼:ねぇ、どうして?そんなに怒っていたの?
男:貴女の姿が、出会ったあの時と同じだったので。父と母を殺した時の姿と。
吸血鬼:そうだったかしら?
男:そうですよ。
吸血鬼:なるほど。だから殺したくなったのね!いいわ!いいわ!その煮えたぎるような瞳!私、貴方の目大好きよ!まるで懐かない猫の様で。
男:それに約束ですから。
吸血鬼:ええ、そうね。【成人】するまでの間に私の心臓を刺せれば大人しく殺されてあげる。でもー
男:出来なければ貴女の眷属になる。そういう約束です。
吸血鬼:ふふふ、最近は随分と大人しかったからもう諦めたのかと思っていたのに……
男:そうですね。正直強すぎて半ば諦めていました、ですが。
吸血鬼:思い出してしまったのね?
男:……。
吸血鬼:ふふふふ。素敵、素敵ね!モン・シャトン!そうでなくっちゃ、忘れては駄目よ?
男:忘れません、忘れませよ。その時が来るまでは。
吸血鬼:うふふふふふ。さてそろそろお茶でも飲みましょ?貴方も疲れたでしょう?
男:…そうですね。今日は何に致しますか?
吸血鬼:そうね、さっき届いてた小包に茶葉が入っていたの、あれにしましょう!なんでもロイヤルミルクティーにぴったりだとか。淹れてくださる?
男:もちろん、最高のをお出ししましょう。
吸血鬼:ええ、お願いね。
:
:
:
男:(M)今でも思い出せば臓腑が煮えたぎるほどの怒りを感じる。両親の仇。殺したい相手。
男:その事に安堵すると同時に、私の返り血を浴び、くるくると回りながら嬉しそうに笑う貴女をみて愛おしいとも思ってしまう。
男:ああ、私は狂ってしまっているのだ。
男:あの日、あの赤の小さな世界で出会った銀色を美しいと思ってしまった。
男:「約束の時」まであと少し。
男:果たしてその時が来たら私のこの心はどうなってしまうのか……今はまだわからない。でもきっと私はー
:
:
吸血鬼:(M)ふふ、あの時は気まぐれに拾ってみたのだけどとても素敵に育ってくれたわ!
吸血鬼:本当に素敵で、可哀想な子。
吸血鬼:人は憎しみであれ、愛情であれ、きっかけはなんであれ、【私達】に出会ってしまったらもう最後。だって魅られているのですもの。
吸血鬼:だってそうでしょう?どんな関係になろうとも【私達】を求めていることには代わりないのだから。
吸血鬼:うふふふ。でもこの私が眷属を作ろうとするなんてそうないことよ?
吸血鬼:だから約束のその時まで待ってあげる。
吸血鬼:ねぇ私の可愛い子猫ちゃん。
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0:【ワインレッドを貴女に】
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男:(M)染まる、染まる、染まる。
男:身体も視界も全てが赤く、紅く、朱く染まる。
男:張り付きぬめる、生暖かい感触。
男:鉄臭い匂い。
男:横たわる先程まで人だった肉塊。
男:その何もかもが精神すらも侵し、紅が飲み込んでゆく。
男:その最中。一つの声が耳に届く。
吸血鬼:あら?貴方…素敵ね。とっても真っ赤よ。私とお揃いね?
男:それは何もかも赤い世界に降り立つ銀色。
男:銀色は自らも紅く染まっているのにも関わらず嬉しそうに微笑んでいた。
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0:薄暗い森の先。ひっそりと佇む洋館。
0:既に夕刻になろうという時間、男はとある寝室へと向っていた。扉の前につくと数回、戸を叩く。
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男:レディ、起きていらっしゃいますか?
男:……失礼します。おはようございますレディ。
男:もう夕刻ですよ。そろそろ起きて下さい。
吸血鬼:…………ん。
0:ベッドには長い銀髪を微かに動かし、陶器のような肌をさらし、一糸纏わぬ姿で眠る女がいた。
男:…………レディ。
吸血鬼:…もう夕方?おはようモン・シャトン。
男:おはようございます。また服を脱いで寝ていたのですね?下着までそこらに脱ぎ散らかして。
吸血鬼:だって服って窮屈なんだもの。それにこの私の美しい肉体を隠してしまうなんて世界の損失よね。
男:世の男達には刺激が強すぎます。
吸血鬼:あら、じゃあ貴方も興奮するの?
男:当然、今にも押し倒してしまいそうですよ。
男:ですので早急にこちらを着てください。
0:男はバスローブを手渡す。
吸血鬼:ふふ、私はそれでも全然構わないのだけれども、可愛いモン・シャトンのお願いだものね。聞いてあげるわ。
男:ありがとうございます。
吸血鬼:相変わらず堅物ね。もっと気楽に甘えてくれてもいいのに。
男:…それは出来ません。貴方も知っているでしょう。
吸血鬼:ええ、そうね。そうだったわね。ふふふふ。
男:……ところで先程使い魔がなにやら小包を持ってきました。こちらです。
吸血鬼:あら、あいつからとは珍しいわね。
吸血鬼:…ふんふん、ふーん。どういう気まぐれかしら?親切に作り方まで。
男:どなたからですか?
吸血鬼:古い知り合い。過去には大罪に例えられ【暴食】とまで畏れられた吸血鬼よ。…まぁいまじゃ、見る影もないけどね。
吸血鬼:そんなことよりモン・シャトン。お願いがあるの。
男:はい、なんでしょう。
吸血鬼:昨日【姿】を変えたから折角のネイルが消えてしまったのよ。だからまた塗ってくれないかしら?色は……貴方に任せるわ。
0:手を男の前に差し出す。男はそっとその手をとりー
男:喜んで。レディ。
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0:両手を塗り終え、足の爪に色を乗せ始める。
男:他にもいらっしゃるのですね。
吸血鬼:何が?
男:吸血鬼ですよ、貴女以外に。
吸血鬼:そういえば会ったことなかったけ?
男:ええ。
吸血鬼:いるわよぉ。昔に比べたら随分と少なくなったけどね。
男:そうなのですか?
吸血鬼:私達は永遠を生きられるけれども不滅ではないもの。真祖ならまだしも眷属は弱点も多いわ。
吸血鬼:それこそ昔は吸血鬼狩りともよく殺し合ってたしね。
男:吸血鬼狩り…、本当にいたんですね。本や映画だけのフィクションかと思ってました。
吸血鬼:ふふふ、可笑しなこというのね。モン・シャトン。
吸血鬼:その虚構(フィクション)の代名詞とも言える【私】が、こうして貴方の目の前実在(いる)というのに。
男:…おっしゃる通りで。
男:しかし吸血鬼狩りとは…。今も狙われることが?
吸血鬼:大戦以降はこちらが余程目立った動きをしない限りはちょっかいをかけてくることはなくなったわね。
吸血鬼:だって、私強いもの。
男:知ってますよ。身を持って。
吸血鬼:そうねぇ、ふふ。
男:……そういえば一昨日は金髪だったのに、今日は銀髪でお姿も変わっていたので昨晩はまた【お食事に】?
吸血鬼:ええ、お相手はちょっとお年を召した紳士だったけれどもとても素敵だったわ。
男:…そうですか。
吸血鬼:なに?妬いてるの?
男:いいえ。そういうわけでは、ただ……。
吸血鬼:そんなに心配しなくても大丈夫よ。モン・シャトン。【食事】をしただけだもの。深みがあってとぉっても美味しかったわ。
男:…その方も幸せだったのでしょうね。
吸血鬼:ええ、最初は怯えていたけれども最後は恍惚な顔を浮かべていたわ。だから残さず全部頂いたのよ。
男:それは偉いですね。
吸血鬼:うふふふ。
男:……終わりましたよ。
吸血鬼:ありがとう。あら素敵な色。
男:お色は今のお姿に合うと思いワインレッドに。
吸血鬼:いいわ、深みもあってドロドロの濃い血のよう。
男:……ええ。貴女には血が似合いますから。
吸血鬼:ふふ、ふふふふ。うふふふ。
男:?どうされました?
吸血鬼:そうね、そうね。いいわ。モン・シャトン。ふふ。私いまとってもいい気分。だからー
0:羽織っていたバスローブを脱ぎ素肌をさらけ出す。
吸血鬼:だから、久々に遊んである。おいで。可愛いモン・シャトン。
男:ーーはい。
0:男は一歩前へと踏み出した。
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0:ーーーー
男:(M)それは突然だった。
男:いつもの夜。両親と共に寝静まった頃だった。
男:鈍く、嫌な音と匂いで目が覚めると、手にぬるりとしたなにかが触れた。
男:すぐにそれは血だと分かった。
男:目の前に母だったものの首だけがあったからだ。
男:すぐ横には父だったもの。部屋の中は返り血で塗り替えられていた。
男:むせ返るような血と脂と臓物の匂い。
男:視界を埋め尽くす
男:赤
男:紅
男:朱
男:精神さえもその色に犯されそうになる最中、ふと違う色が目に入った。
男:それは【銀色】だった。
男:銀色の長い髪の女だった。
男:その銀色は【食事】をしていた。美味しそうに、本当に美味しそうに、千切れた父か母の腕から血を啜っていた。
男:雲一つない夜、満月の光が窓から銀色を照らしていた。
男:その光景はまるで一枚の絵画のようだった。
男:女はひとしきり飲み干すとこちらに気付いたのか振り向きー
吸血鬼:まぁ、子供がいたのね。お腹が空きすぎて気付かなかった。あら、貴方、…素敵ね?とっても真っ赤よ。私とお揃いね?
男:暴力と血と赤の空間で、銀色は月明かりに照らされてキラキラと輝いていた。銀色はそっと私に触れ
吸血鬼:それに、ああ、まるで目が猫みたい。とても可愛い。……気に入ったわ!そうだ!子猫ちゃん、私といらっしゃいな。きっと楽しいわよ?
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男:少女のように微笑んだ。
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0:ゴトリと鈍い音が響いた。
男:ーーひゅ、か、ひゅ。
吸血鬼:今日はここまでね。
0:男は血だまりに沈み息も絶え絶えになっていた。
吸血鬼:でも凄いわ!モン・シャトン!今日は三回も私に攻撃を当てられたわ。
男:あ、が、褒めて…頂き、光栄、です。
吸血鬼:うふふ。嬉しくってついつい張り切ってしまったわね?ごめんなさいね。すぐに治してあげるわ。
0:女は自らの血を一滴男に垂らす。するとみるみると男の傷口が塞がっていく。
男:………っありがとうございます。
吸血鬼:うふふ。
男:…でもどうして急に?最近はこういうの乗り気ではなかったのに。
吸血鬼:だって今日貴方ずっと私に殺気を放っていたでしょ?
男:ーーー。
吸血鬼:あんまりにも熱烈だったからお誘いは受けなきゃと思ってね。ふふ。
男:ーふっははっは。そう、ですね、そうでした。
吸血鬼:ねぇ、どうして?そんなに怒っていたの?
男:貴女の姿が、出会ったあの時と同じだったので。父と母を殺した時の姿と。
吸血鬼:そうだったかしら?
男:そうですよ。
吸血鬼:なるほど。だから殺したくなったのね!いいわ!いいわ!その煮えたぎるような瞳!私、貴方の目大好きよ!まるで懐かない猫の様で。
男:それに約束ですから。
吸血鬼:ええ、そうね。【成人】するまでの間に私の心臓を刺せれば大人しく殺されてあげる。でもー
男:出来なければ貴女の眷属になる。そういう約束です。
吸血鬼:ふふふ、最近は随分と大人しかったからもう諦めたのかと思っていたのに……
男:そうですね。正直強すぎて半ば諦めていました、ですが。
吸血鬼:思い出してしまったのね?
男:……。
吸血鬼:ふふふふ。素敵、素敵ね!モン・シャトン!そうでなくっちゃ、忘れては駄目よ?
男:忘れません、忘れませよ。その時が来るまでは。
吸血鬼:うふふふふふ。さてそろそろお茶でも飲みましょ?貴方も疲れたでしょう?
男:…そうですね。今日は何に致しますか?
吸血鬼:そうね、さっき届いてた小包に茶葉が入っていたの、あれにしましょう!なんでもロイヤルミルクティーにぴったりだとか。淹れてくださる?
男:もちろん、最高のをお出ししましょう。
吸血鬼:ええ、お願いね。
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男:(M)今でも思い出せば臓腑が煮えたぎるほどの怒りを感じる。両親の仇。殺したい相手。
男:その事に安堵すると同時に、私の返り血を浴び、くるくると回りながら嬉しそうに笑う貴女をみて愛おしいとも思ってしまう。
男:ああ、私は狂ってしまっているのだ。
男:あの日、あの赤の小さな世界で出会った銀色を美しいと思ってしまった。
男:「約束の時」まであと少し。
男:果たしてその時が来たら私のこの心はどうなってしまうのか……今はまだわからない。でもきっと私はー
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吸血鬼:(M)ふふ、あの時は気まぐれに拾ってみたのだけどとても素敵に育ってくれたわ!
吸血鬼:本当に素敵で、可哀想な子。
吸血鬼:人は憎しみであれ、愛情であれ、きっかけはなんであれ、【私達】に出会ってしまったらもう最後。だって魅られているのですもの。
吸血鬼:だってそうでしょう?どんな関係になろうとも【私達】を求めていることには代わりないのだから。
吸血鬼:うふふふ。でもこの私が眷属を作ろうとするなんてそうないことよ?
吸血鬼:だから約束のその時まで待ってあげる。
吸血鬼:ねぇ私の可愛い子猫ちゃん。
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