台本概要

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タイトル ようこそ猫の手霊障事務所へ ~狂いの毒~
作者名 瓶の人  (@binbintumeru)
ジャンル その他
演者人数 5人用台本(男1、女1、不問3)
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 恐怖に身が震え
嗤いが耳を劈き
毒が山に狂いを齎す

※ようこそ ねこのて れいしょうじむしょへ くるいのどく
3/13

※注意事項
●過度なアドリブ、改変をしたい場合(キャラクターの性転換、セリフを丸々変える等)はご連絡ください。
●男性が女性キャラを女性として、女性が男性キャラを男性として演じる際や、語尾等の軽微な改変はご連絡不要です。
●配信等でご利用される場合は、可能であれば作者名、作品名、掲載サイトのURLを提示して頂けると幸いです。
●全力で楽しんで下さると幸いです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ココ 148 普段は栗色の長い髪が特徴の女性の姿をした管狐(くだぎつね)の妖怪。 テレパシーや千里眼を用いたサポートを得意としている。
ランマル 70 背中と尻尾の先に大きなカマがある鎌鼬(かまいたち)の妖怪。 コガラシの父親。風の霊力を用いて戦う。 死んでも辞めないが口癖。
コガラシ 不問 47 尻尾の先に小さなカマがある鎌鼬(かまいたち)の妖怪。 ランマルの子供。ランマルの作ったイチゴが大好物。
ガザン 不問 95 山を守る烏天狗(からすてんぐ)の妖怪。鼻から上をカラスのくちばしの様な仮面で覆っている。 扇子を介して風の霊力を操る。
餓者髑髏 不問 63 顔面と体を髑髏の仮面と真っ黒なローブで隠している、餓者髑髏(がしゃどくろ)の妖怪。 非常に狡猾で非情な性格をしており、ガスを用いた戦闘をする。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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ガザン:「この風は………木々が…動物が…山全体が怯えている… ガザン:この山に何か良くない事が起きようとしている… ガザン:この山を守る為、早急に対処せねば…」 0:  0:  0: 0:山を汗だくになりながら登るココ ココ:「はぁ…はあ…まったく、あの人は…ホントに困った人だ。」 0:  ココ:【N】先日私は、リーダーと共に霊障報告のあった山村へと調査をしに行った ココ:特にこれといった調査結果は得られず、調査が終わり下山すると女の子と遊ぶ為にリーダーは町へ繰り出した ココ:放置された私はどうしたものかと悩み……近くにかつて世話になった人達が住んでいるのを思い出した 0:  ココ:「しかしまぁ、相変わらず凄い山奥に住んでいるね…こんなに運動したのは久しぶりだよ…運動不足なのは感じていたけれども、それにしたってこんなキツイものかな…明日は筋肉痛確定だ…」 ガザン:「随分と軟弱物になったものだなココ。」 ココ:「っ!?アナタは…」 ガザン:「久しいな。こうして顔を合わせるのはいつぶりだろうか。」 ココ:「相変わらず突然現れるのですね…心臓がいくつあっても足りませんよ。ガザン様、本当にお久しぶりです。私がこの山から下りて以来ですから…もう十数年以上も前ですね。」 ガザン:「そうか、もうそんな年月が経つのか。通りで、あんなに生意気だった子供が大人しくなっているわけだ。」 ココ:「え、えっと…その節は大変ご迷惑を…」 ガザン:「ははは、いやいいさ。子供の世話をするのも私達大人の仕事だ。」 ココ:「そう仰って頂けて何よりです…」 ガザン:「さて、思い出話に花を咲かせたい所だがこのまま立ち話ではなんだろう。お主を集落まで連れて行くとするか。」 ココ:「え、そんな申し訳ないですよ!」 ガザン:「なに、私の力を以ってすれば容易い事。」 0:懐から出した扇子を煽るとココとガザンを風が包む ココ:「や、やはりこれで行くのですね……」 ガザン:「このまま集落まで飛ぶぞココ。」 ココ:「う……はいっ!!」 0:  0:  0:  0:集落に降り立つココとガザン ガザン:「さあ、着いたぞ。」 ココ:「うぷっ…」 ガザン:「大丈夫か?」 ココ:「は、はい…大丈夫です…すみません、ありがとうございます。」 ガザン:「ははは、これが苦手なのは変わらずのようだな。」 ココ:「す、すみません……しかし本当にガザン様の霊力制御は凄いですね。こんなに細かい制御、私でも出来ないですよ。」 ガザン:「年季の差という物だな。そして、これでもこの山の主(ぬし)として守る立場に居る。これくらいは出来なくてはな。」 ココ:「流石です。私も更に精進しなくては。」 ランマル:「ココ?」 ココ:「え?あっ!」 ランマル:「ココじゃないか!はは、聞いたことがある声だと思ったら、やっぱりココだ!」 ココ:「ランマルさん!」 ランマル:「久しぶりだなココ!いやぁ、本当に久しぶりだ!大きくなったな!ほら、良く顔を見せてくれ。」 ココ:「ランマルさん、お元気そうで良かったです。」 ランマル:「ランマルさんだなんて、そんな他人行儀はよしてくれ。これでもお前の親なんだ。」 ココ:「そうですね…何年も顔を見せない親不孝な子供ですが…」 ランマル:「そんなことはないさ、何があってもどんなに離れていてもお前は私の子供で、私はお前の親だよ。」 ココ:「…おとうさん…はい、ありがとうございます。」 ガザン:「感動の再会を邪魔するようで申し訳ないが、輪に入りたそうに木陰から見ている者がいるぞ。」 ココ:「え?」 ランマル:「コガラシ、そんな所に居ないでこっちへ来なさい。」 ココ:「コガラシ…?」 ランマル:「そうか、ココは初めて会うのか。コイツはコガラシ。私の子供だ。」 ココ:「子供ですか!おとうさんにそっくりですね!」 ランマル:「ほら、コガラシ。挨拶しなさい。」 コガラシ:「えっと…あの…初めまして…コガラシです。」 ココ:「初めまして、私はココ。管狐の妖怪だよ。」 コガラシ:「くだぎつね…?鎌鼬(かまいたち)じゃないの…?それに、なんで人間の恰好をしているの?」 ココ:「私はキミやキミのお父さんとは違う妖怪なんだ。この格好は…もう慣れてしまってラクなんだ。」 ランマル:「ココは色々あってな。さ、積もる話もあるだろうから1度私の家に来なさい。ガザン様ももしよろしければ…」 ガザン:「せっかくのご厚意だが、私気になる事があるので遠慮しよう。」 ランマル:「分かりました。ココ、コガラシ行くよ。」 ココ:「あの、ガザン様、この後少々お話が。」 ガザン:「時間を作っておこう。」 ココ:「ありがとうございます。では、後程。」 0: 0: 0:ランマルの家 ランマル:「さ、適当にくつろいでくれ。」 ココ:「久しぶりだなぁ…懐かしい香り…」 コガラシ:「あの、ココさん。」 ココ:「ん?」 コガラシ:「えと、これ…良かったら。」 0:手の中にあるものを見せるコガラシ ココ:「え?これは…イチゴだ。貰っていいの?」 コガラシ:「うん。うちで採れたんだ。食べて。」 ココ:「うん、ありがとう。じゃあ、貰うね。もぐ……うん!甘くて凄く美味しい!」 コガラシ:「っ!良かった。」 ココ:「おとうさん、まだイチゴ作ってたんだね。懐かしい味。」 ランマル:「そりゃあそうだ。死ぬまで辞めないさ。」 ココ:「死ぬまで辞めない。その口癖も、この家も全部本当に懐かしい。」 ランマル:「そうだな、ココがこの家を出てもう長いもんな。どうだ元気にしてたか?」 ココ:「うん。おとうさんも、集落の皆も元気そうで良かった。」 ランマル:「…そうだな。」 0:ランマルの表情が曇る ココ:「…どうかしたの?」 ランマル:「いや、集落の皆は健康そのものなんだが…最近木々がざわついていてな。」 ココ:「木々が?」 ランマル:「山全体が怯えている、とでも言えばいいだろうか。」 コガラシ:「うん…動物達も不安がってた。」 ココ:「…動物達も…何かが今この山に起きてるって事?」 ランマル:「その可能性がある…何かの前兆で無ければいいのだが…」 ココ:「ガザン様は何か?」 ランマル:「良くない風が吹いていると言っていたな。」 ココ:「良くない風…」 ランマル:「せっかく久しぶりに会えたのにすまないなココ。さ、お前は何も気にせずゆっくりしてくれ。」 ココ:「ううん、大丈夫。むしろ丁度いいタイミングで来れた。」 ランマル:「どういうことだ?」 ココ:「私は今、仲間と一緒に人助けをしてるんだよ。」 ランマル:「人助け…?」 ココ:「うん。困っている人が居るのにゆっくりなんかできないよ。私が皆に猫の手をお貸しするよ。」 0:  0:  0:  0:大樹の枝に立つガザンの元へやってくるココ ココ:「ガザン様。」 ガザン:「ココか、良く来たな。して、話とは何かな。」 ココ:「おとうさ…ランマルさんから話を聞きました。今この山に何か異変が起きていると。」 ガザン:「…そうか。聞いたか。」 ココ:「ガザン様は、どうお考えですか?」 ガザン:「先日からこの山には良くない風が吹いている。その風によって、木々、そして動物達が怯えているのだ。 ガザン:何か邪悪な、狂気を感じる風…とでも言えばいいか。」 ココ:「邪悪…狂気……私がガザン様にお尋ねしたかったのは、悪霊についてです。」 ガザン:「悪霊について何を?」 ココ:「最近、私の住む街を中心に悪霊による霊障被害が少しずつ多くなっているのです。 ココ:今回私が、この近くへ来たのもその関係です。」 ガザン:「今回のこの風はその悪霊によるものだと、お主は思うのだな?」 ココ:「はい、恐らくは。」 ガザン:「悪霊とは、昔に1度対峙したことはあるが…今回のはその際のとまた違う悪しき感覚だ。」 ココ:「そうなのですか?」 ガザン:「単純に考えれば、その時の悪霊以上の存在だと考えた方がいいだろう。」 ココ:「そうですね…ガザン様。もし戦闘になれば私も加勢を…」 ガザン:「その申し出は有り難いが、お主は客人だ。」 ココ:「しかしっ!」 ガザン:「まて。」 ココ:「っ!」 ガザン:「風が…近い……悪しき者の風が…」 0:仮面を付けた誰かが歩いてくる ココ:「あれは……」 ガザン:「あやつが…悪しき風の正体…」 餓者髑髏:「ふう、やっと辿り着きました…ホント、足場の悪い山ですねぇ。何故この私がこんな所に……あら?先客がいらっしゃったんですか?」 ガザン:「お主は何者だ。何故この大樹に訪れた。」 餓者髑髏:「あら、私ですか?答えてあげてもいいですけど、人に名前を尋ねる時はまず自分からじゃないですかぁ?」 ガザン:「…そうだな。私はガザン、この山の主である烏天狗(からすてんぐ)だ。」 餓者髑髏:「隣の方は?」 ココ:「っ!わ、私は管狐のココだ。」 餓者髑髏:「そうなんですね、まぁ興味はないんですけど。 餓者髑髏:では改めまして、お初にお目にかかります私は餓者髑髏(がしゃどくろ)と申します。今からあの方の命によりこの山を…蹂躙(じゅうりん)致します。」 ココ:「蹂躙…?」 餓者髑髏:「ええ、聞こえませんでしたか?蹂躙ですよ蹂躙。」 ガザン:「なぜお主はこの山を蹂躙せねばならないのか。」 餓者髑髏:「別に私はしたくてするんじゃありませんよ?こんな足場の悪い山なんかに来たくもなかったですし。でも、あの方の命とあればやるしかないんですよ。 餓者髑髏:この山をめっちゃめちゃにし、そしてこの大樹を壊せって命を受けたからには…ね。」 ガザン:「大樹をだと…?」 ココ:「あの方…とは誰なのかな?」 餓者髑髏:「あの方はあの方ですよ。てか、さっきから質問が多いですねぇ…もう答えるの面倒なので始めちゃっていいですか?」 ガザン:「動くな。動けばお主は無事では済まないぞ。」 餓者髑髏:「あら、怖いですねぇ。そんな威圧されたら怖くて怖くて動けないじゃないですかぁ…でーも、一歩も動かなくても別にいいんですよねぇ。」 ガザン:「なに…?」 ココ:「コイツの中で霊力が膨れ上がって…!いったい何を…」 餓者髑髏:「あっはははは!!さぁ、始めていきましょうか……蹂躙……開始だぁああ!!」 0:餓者髑髏のローブの内側から紫色をしたガスが噴き出す ココ:「これは…ガス!?」 ガザン:「なに!?しかし、こんなもの私の風で吹き飛ばしてしまえば…!」 餓者髑髏:「…ひひっ!」 ココ:「まってガザン様!」 0:風でガスが加速し森に蔓延していく ガザン:「なっ!」 餓者髑髏:「あーあ、やっちゃいましたねぇ!山の主自ら、守るべき山の民を危険に追いやっちゃいましたねぇ!!」 ココ:「コイツ…!」 餓者髑髏:「私、優しいので教えてあげます。今のガスは神経性の毒ガス、吸い込めば筋肉や内臓の働きが低下し、1時間は体が麻痺して動けません。 餓者髑髏:更にこのガスは空気より重いので舞い上がる事無く下に溜まるんですよ!我ながらナイス発明です!」 ガザン:「ココ。集落の様子を見に行ってくれないか。」 ココ:「ガザン様はどうされるのですか!」 ガザン:「私はあやつを仕留める。お主は集落の皆を安全な場所へ誘導してやってくれ。今ならまだ間に合うはずだ。」 ココ:「しかし…」 ガザン:「ココ。お主にしかできぬことだ。」 ココ:「っ…分かりました…どうか、ご武運を…!」 餓者髑髏:「どーこ行こうってんですかぁ?私から離れて良いなんて言ってないですよぉ!」 ココ:「また、ガスが!」 ガザン:「ぬんっ!」 0:扇子を煽るとドーム状の風が発生しガスの蔓延を防いだ 餓者髑髏:「あらぁ…」 ガザン:「先ほどは後れを取ったが、これでも山の主なのだ。民を、山を守るのが私の仕事…これ以上好き勝手はさせるわけにはいかない。」 ココ:「ガザン様…」 ガザン:「いけ、ココ。この場は私に任せろ。」 ココ:「…はい!!」 餓者髑髏:「ふぅん…少しは楽しめそうですねぇ。」 ガザン:「お主には、この山の肥やしになってもらうぞ。」 0:  0:  0:  0:集落へ向かうココ ココ:「はぁはぁ…!!みんな、どうか間に合って!」 コガラシ:「ココさん!」 ココ:「コガラシ!無事で良かった!」 コガラシ:「お父さんが皆を避難させてくれて…」 ココ:「そうだったんだ…良かった……でも、なんでコガラシはここに?」 コガラシ:「その、ココさんが心配で勝手に探しに…」 ココ:「…そうだったんだね。ありがとうコガラシ。でも危ない真似はしちゃだめだよ?」 コガラシ:「はい、ごめんなさい…」 ランマル:「コガラシ!」 コガラシ:「お父さん…!」 ランマル:「やっと見つけたぞコガラシ!勝手にいなくなるな、心配しただろう!」 コガラシ:「ごめんなさい、ココさんを探してて…」 ランマル:「それは私がやると言っただろう……だが、見つけてくれてありがとうなコガラシ。」 コガラシ:「…うんっ。」 ランマル:「ココ。無事で何よりだ。」 ココ:「おとうさんも無事で良かった。他の皆は?」 ランマル:「ああ、嫌な気配がして直ぐに山の聖域へ逃がした。あそこならある程度の攻撃からは身を守れるはずだ。」 ココ:「そう…なら安心かな……でもこの辺りもじきに危なくなる。コガラシもおとうさんも早くその聖域に逃げて。」 コガラシ:「何があったんですか…」 ランマル:「いったい何が起きてる?ガザン様はどうした?」 ココ:「この山に敵が攻めてきたんだ、ガザン様は今それと交戦してる。」 ランマル:「敵だと…?複数いるのか?」 ココ:「いや、それが相手は1人なんだ…しかも異常な程の霊力を保持してる。」 ランマル:「……ココ、コガラシ、お前達は聖域に行きなさい。」 ココ:「え?」 コガラシ:「なんで?お父さんは?一緒に行かないの?」 ランマル:「私は、ガザン様の助太刀に行く。私もこの山の民、守る権利がある。」 コガラシ:「ダメだよ、お父さんダメだよ!もし行くんなら一緒に行く!だってボクだって山の民なんだから!」 ランマル:「ダメだ!お前はまだ幼い。未来ある子供を戦わせるわけにはいかない。」 コガラシ:「でも…!!」 ココ:「おとうさん。私も行きます。」 コガラシ:「ココさん…!?」 ランマル:「ココ…お前も私にとって大切な子供なんだ。危険な目に合ってほしくはない、分かってくれ…」 ココ:「おとうさん、さっき言ったでしょう?猫の手を貸すって。皆を守る為に、私も全力で戦う。私にとっても皆は大切な家族だから。」 ランマル:「……これ以上何を言っても聞かなそうだな…昔からいじっぱりだったもんなココ。」 ココ:「ふふ、良く分かってるね。」 コガラシ:「お父さん…ボクも…!」 ランマル:「コガラシ、お前は聖域で皆を守ってあげるんだ。何かあっても、きっとお前なら大丈夫だ。」 ココ:「キミが集落の皆を守ってくれれば、私達は全力で戦えるんだよ。」 コガラシ:「……。」 ココ:「コガラシ?」 コガラシ:「…わかった…うん!分かった、ボク頑張る!」 ココ:「いい子だ。もうこの辺も危なくなってくる、早く聖域に行って!」 コガラシ:「は、はい!」 ランマル:「…よし、我々も行くぞココ。」 ココ:「はい!おとうさん、この山を守りに行こう!」 0:  0:  0:ガザンと餓者髑髏、交戦中 ガザン:「たあああ!」 餓者髑髏:「涼しい風ですねぇ、こんなものなんですか?山の主ってのは。」 ガザン:「はあ…はあ…なんだこやつ…手ごたえがまるでない…?」 餓者髑髏:「あららぁ?どうしたんですかぁ?もう終わりなんですか?さっきから全然痛くも痒くもないのですが?もしかして手加減してくれてます?」 ガザン:「くっ…これならばどうだ!風魔(ふうま)!」 0:扇子から圧縮された巨大な空気が放たれる 餓者髑髏:「ぐはああああ!なーんて。」 ガザン:「なっ!?確かに当たっているはず…なぜ…」 餓者髑髏:「ぬるい…ぬるいんですよぉ…その程度じゃあ私を追い返すことも出来やしないですよ?」 ガザン:「いったいどういうカラクリだ…なぜびくともしないのだ。」 餓者髑髏:「さーて、そろそろ受けるだけってのも飽きたんで…攻めていいですか?仕事しないとなんで。」 ガザン:「させん!叉斬渦(さざんか)!」 餓者髑髏:「あーもう、そんな風なんかじゃ聞かないですよ!いい加減、大人しくしてて下さい!」 0:足元から黄色がかったガスを噴射する ガザン:「これは…!だがまた閉じ込めてしまえば…!!」 餓者髑髏:「そう何度も同じ手は通用しませんって…」 ガザン:「なっ!?ガスが急速にこちらへ向かって!?」 餓者髑髏:「あっはははは!いい驚きっぷりですね!ま、それもそうですよね。ガスが意思を持って襲い掛かってきたわけですから。」 ガザン:「な、なんだこれは!払っても払ってもきりがない!」 餓者髑髏:「それは私の霊力が混ぜ込まれて作られているんですよ。なので私の意志で自在に動かせるガスなんです。 餓者髑髏:ちなみに、そのガスを吸えば一時的に霊力が扱えなくなるのと、五感が通常より衰えますのでお気を付けを。」 ガザン:「この芸当……並みの霊力制御では出来ぬぞ。」 餓者髑髏:「私をそこら辺の有象無象と一緒にしないでもらえますかぁ?怒りますよぉ?」 ガザン:「っ!?更に量がっ!?」 餓者髑髏:「あっはは!せっかくなんで量を増やしちゃいました。山の主さんなんですからこれくらいどうにかできて当然ですよね?」 ガザン:「お主…!!」 餓者髑髏:「さぁ!私を楽しませて下さい!」 ガザン:「こうなれば致し方ない……」 餓者髑髏:「あら?諦めちゃうんですか?」 ガザン:「私は山の主、烏天狗(からすてんぐ)のガザン。正確に言えば山に繁栄をもたらすこの大樹…霊樹(れいじゅ)の守護者。 ガザン:霊樹よ。この山を、霊樹を守る為…力をお借りします。」 0:大樹から力が溢れ、ガザンに集まっていく 餓者髑髏:「あららぁ…これは面白いですねぇ。あの方がこの木を厄介がるのも分かりました。」 ガザン:「散れっ!風魔(ふうま)!」 餓者髑髏:「あらぁ、私のガスが見事に消されてしまいましたね……」 ガザン:「もうお主のガスは私に通用しない、覚悟するのだな。」 餓者髑髏:「ひひ…」 ガザン:「?」 餓者髑髏:「ひっはははっははは!!いいですね!やっと少しは本気が出せそうです! 餓者髑髏:さぁ、満足させて下さいね…天狗さん。」 0: 0: 0:ガザンの元へ向かうココとランマル ココ:「はぁ、はぁ…」 ランマル:「おいココ、この紫のはなんだ!」 ココ:「まずい…もうここまでガスが…!」 ランマル:「ガス?」 ココ:「敵が使う攻撃がガスなんだ、しかもガザン様の風でもかき消す事が出来なかった。」 ランマル:「なんだそれは…そんな奴と戦ってガザン様は大丈夫なのか?」 ココ:「分からない、でも無事を祈るしかないよ…」 ランマル:「…ああ。にしてもその敵とやらは何の為にここに来たんだ。」 ココ:「大樹を壊すように命じられて来たらしい。」 ランマル:「大樹を…?」 ココ:「おそらく、この山を守る大樹の力が目的なんだと思う。」 ランマル:「もしあの木が破壊されたらこの山の民はおろか、動植物達までも危険に晒されてしまう…」 ココ:「もちろんそんな事はさせない、その為に早く行こう!」 ランマル:「ああ!!」 ココ:「もう少しで大樹に着くよ!」 ランマル:「ガザン様…どうかご無事で!!」 0:大樹にたどり着いた2人 ココ:「ガザン様!!」 ランマル:「…これは……」 餓者髑髏:「あらぁ?さっき逃げて行った方…ともう1匹なんか増えてますね。鎌鼬…ですかね?」 0:餓者髑髏の足元に片膝をついて肩で呼吸をしているガザン ココ:「ガザン様…!!大丈夫ですか!!」 ガザン:「ココ……なぜ戻ってきた…ランマル…まで…」 ココ:「そんなの、助ける為に…」 ガザン:「逃げろ…」 ココ:「…できません!」 ガザン:「逃げるのだ!」 ココ:「っ!」 ガザン:「お前ではこやつに勝てない…!こやつは…強すぎる…」 ココ:「しかし…ガザン様を置いて行くだなんて…それに大樹を壊されてしまったらこの山は!」 餓者髑髏:「あーもう!!うるさいですねぇ!さっきから私を放ってなーにペチャクチャ話してるんですかぁ!? 餓者髑髏:いい加減この天狗もボコボコにされて辛いでしょうからね、最高の毒で楽にしてあげましょうか。」 0:ガザンの頭を踏み付ける ココ:「ガザン様ぁあ!!」 餓者髑髏:「さあ、死んでください!」 ランマル:「守風(かみかぜ)!!」 0:風のバリアがガザンを包み餓者髑髏が弾かれる 餓者髑髏:「あらぁっとと?」 ランマル:「ガザン様、まだ諦めないで下さい!」 ガザン:「ランマル…」 ココ:「おとうさん…」 ランマル:「あなたはこの山の主です、けれど我々もこの山の民。同胞も山も守る権利があります。共に戦わせて下さい。」 ガザン:「…そうだな……すまなかったココ、ランマル。」 ココ:「ガザン様…」 0:ゆっくり立ち上がるガザン ガザン:「いい喝が入った…ありがとう。私はまだ、主として未熟だな… ガザン:危険な戦いだが、共に戦ってくれるか?」 ココ:「はいっ!」 ランマル:「当たり前です!」 餓者髑髏:「いい雰囲気の所悪いですけど…こっちはもう時間ないんで、全員まとめてちゃっちゃと殺しちゃいますね。みーんな仲良くあの世行きですよ! 餓者髑髏:さあ、私の最高最狂の毒に狂い恐怖して下さい!」 0:ローブの下から黒いガスが大量に噴射される ココ:「なんだこの禍々しいガス…」 ランマル:「まずいぞ…このままだと動物や皆が危ない!」 ガザン:「私が霊樹より授かりし力で消し飛ばしてくれる!叉斬渦(さざんか)!!」 餓者髑髏:「はっはは!無駄!無駄ですよぉ!このガスは今までのとは違い霊力を通さないのです。」 ガザン:「なっ!?」 餓者髑髏:「吸った者は幻覚や幻聴を見続け、その幸せな世界にいながら全身に猛毒が回るのを待つのみなのです。どうです最高でしょう!!」 ランマル:「聖域に到達してしまったら皆が…!!」 ココ:「私が…私がどうにかします!」 ランマル:「ココ!?やめろ危険だ!」 ココ:「大丈夫だよ。おとうさんもガザン様も知っているでしょう。私の目を。」 餓者髑髏:「目…?」 ココ:「私の目は霊力の流れや量を見る事が出来るの。」 餓者髑髏:「見えた所でなんですか?このガスをどうにかできるんですか?霊力も通さないこの私の最高傑作を。」 ココ:「どんな物も必ずほころびがある……流旋(りゅうせん)の構え。」 ランマル:「その構えは…」 ココ:「そして、そのほころびをつけば…!」 0:迫ってきたガスを回転してかき消すココ 餓者髑髏:「なに…!?私の…ガスが消えた…!!」 ココ:「霊力、空気の流れを理解し受け流す、全てはほころびから崩壊する。」 ガザン:「ココ、その技は…」 ココ:「ガザン様、おとうさんから昔教わった物を自己流にしたものです…上手くいって良かった。」 餓者髑髏:「な…な…!くそぉ……あなた良くもやってくれましたね…!」 ココ:「もうこれでキミのガス攻撃は私達に通用しない!」 ランマル:「良くやったココ!くらえ風牙(ふうが)!!」 餓者髑髏:「あーもう!!せっかちですね!そんな攻撃効かないですよ!」 ランマル:「な、当たったのに効いてない…?」 ガザン:「ぬぅ…やはりか…私の攻撃もあやつに一切通らなかったのだ。」 ココ:「そんな…っ!?まって、そいつ体に…霊力を纏ってる!」 ランマル:「なに!?」 餓者髑髏:「あら、あらら?見破られましたか。そう、私は常に霊力を込めた鎧に等しい強固なガスを纏っています。並みの攻撃は通じません。」 ランマル:「見えない鎧を身に着けているという事か…」 ガザン:「なんと厄介な…」 ココ:「なら私がまた壊すだけ!」 餓者髑髏:「馬鹿ですか?そう簡単に行くわけないでしょう?」 0:黄色いがかったガスを4つ噴射する ガザン:「ぬっ!あれは…気を付けろ!あのガスは意思を持って追尾してくる!」 ココ:「え…?追尾…!?」 ガザン:「ココ!ランマルと私で道を開ける、その隙に!ランマル行けるか?」 ランマル:「ああ、任せて下さいガザン様!!」 ガザン:「行くぞ風魔(ふうま)!!」 ランマル:「くらえ風牙(ふうが)!!」 餓者髑髏:「おお、いいですね!でもでもほらほら!どんなに消した所で無意味ですよ!」 ランマル:「まだ出しやがるのか!っ!ココ!危ない!」 ココ:「はぁあああ!!っと…大丈夫だよおとうさん!」 餓者髑髏:「くそ!!まだまだまだぁあ!」 ガザン:「まだ増えるのか…!」 ランマル:「くそ、キリがない!」 ココ:「2人ともあと少し耐えて!もう少しで!!」 餓者髑髏:「この管狐ぇ、もう目の前まで!近寄るんじゃないですよ!」 0:黒いガスを噴射する ココ:「っ!?」 ランマル:「危ないココ!!」 ガザン:「ランマルまて!!」 ココ:「おとうさん!?ダメ!」 0:ココを突き飛ばすランマル ココ:「っ!!おとうさん!!」 ランマル:「ぐああああ!!」 ガザン:「ランマル!!!」 餓者髑髏:「あら、あららぁあ!!あっはははは!これはこれは思わぬ展開!!いいですねぇえ!」 ココ:「おとうさぁああん!!くそ、餓者髑髏ぉぉお!!」 餓者髑髏:「あっはははぁっ!?がはああ!!?」 0:ココの攻撃で吹き飛ぶ餓者髑髏 ココ:「おとうさん!おとうさん!!」 ランマル:「う…く……」 餓者髑髏:「ひひ…ひっははは…楽しいですねぇ!楽しいですねぇ!!」 ココ:「餓者髑髏キミ…っ!?まずい、またガスが奴を覆って…」 餓者髑髏:「ふふ無駄ですよ、私はいくらでもガスを纏えるのですから……がはっ!?」 ガザン:「っ!?」 ココ:「なに?凄い速さで何かが…?」 餓者髑髏:「…なんだ、誰ですか!ぐ…なんなんですか!」 コガラシ:「お父さんに…お父さんに何をしたぁあああ!!」 餓者髑髏:「ぐはっ!?なんだコイツ!」 ガザン:「コガラシ!?」 ココ:「なんでここに…」 コガラシ:「大好きなお父さんを!ボクの大切な家族を!いじめるな!!」 0:高速で回転しながら尻尾の鎌で切り付けていく 餓者髑髏:「ぐあああ!!あの鎌鼬の子供ですか…!!」 ココ:「コガラシ!だめ、危ないから下がって!」 コガラシ:「嫌だ!お父さんを傷つけたコイツを許せない!」 餓者髑髏:「くうぅ…!いい加減…離れろガキっ!」 コガラシ:「うああ!」 ココ:「コガラシ!」 餓者髑髏:「はぁ…はぁ…全く…やってくれやがりましたね。痛いじゃないですかぁ…私のお気に入りのローブもボロボロにしてくれやがって…どうしてくれるんですかぁ?えぇ?」 コガラシ:「お父さんを返せ…お父さんを返せよ…!」 餓者髑髏:「はぁ…お父さんお父さんってうるさいですね。返すも何も、毒を吸ったあの鎌鼬は助かりませんよ。」 コガラシ:「なっ……!?」 餓者髑髏:「ふふ、まぁせいぜい残り僅かな親子の時間を過ごす事ですね。」 ガザン:「どこへ行くつもりだ!」 餓者髑髏:「ここまで邪魔をされ、お気に入りのローブもボロボロにされ、私はもう戦う気力もありません。なので今回はおいとまさせて頂きます。ですが、勘違いしないで下さい?大樹を諦めたわけではありませんので。」 ココ:「…餓者髑髏、最後に聞かせて。キミに大樹を壊すよう命じた人…あの方って誰?」 餓者髑髏:「あの方が誰、ですかぁ?それはですねぇ……答えてあげる義理なんてあるわけないじゃないですかぁ!! 餓者髑髏:あっははは!それでは、またいつかお会いしましょう。さようならみなさん。」 0:笑いながら消えていく餓者髑髏 ガザン:「悪しき風が感じられなくなった……」 コガラシ:「お父さん!!お父さん!!しっかりして!」 ガザン:「っ!」 ココ:「おとうさん…!」 ランマル:「う…あぁ……!」 ココ:「おとうさん…せっかくまた会えたのに…」 ランマル:「あぁ…コガラシ……ココ……」 コガラシ:「お父さん…!!ここに居るよ、ボクもココさんもガザン様もここに居るよ!」 ランマル:「コガラシ……ココ…すまない…」 ココ:「何も謝る事なんてないんだよおとうさん…守れなくてごめんねおとうさん…」 コガラシ:「もう、なにもしてあげられないの…?お父さんを助けてあげる事は出来ないの?」 ココ:「……ガザン様。」 ガザン:「どうしたココ。」 ココ:「山の大樹…霊樹の力で解毒をする事は出来ないですか?悪しき霊力を遮断する聖域を霊樹は作る事できる。 ココ:もしかしたら、この神聖な力で毒を除去出来るのではないですか?」 コガラシ:「出来るんですかガザン様!」 ガザン:「……残念だが、それは不可能だ。」 ココ:「何故ですか!」 ガザン:「確かに、並みの毒程度であれば可能だ。しかし、この毒は…あやつの霊力が練られた物。強力な呪いに近い。」 コガラシ:「助けて下さい!お父さんを助けて下さい!ガザン様!お願いです!ココさんお願いです!助けてください…お父さんを……ボクのお父さんを…」 ココ:「コガラシ……」 コガラシ:「猫の手、貸してくれるんですよね?じゃあ貸してくださいよ…お父さんを助ける為に貸して下さいよココさん!」 ココ:「っ…ごめん…コガラシ…」 コガラシ:「ココさん……う、ううあぁあああ!」 0:ランマルの腹の上に顔を埋めながら泣くコガラシ ガザン:「完全な解毒は難しいかもしれないが、延命…あるいは時間をかけての治療は可能かも知れぬ。」 ココ:「え、それはどういう…」 ガザン:「霊樹の根本の地下に、霊樹の力が満たされた小さな泉がある。そこに浸からせれば多少は、毒の効力を抑えられるやもしれん。」 コガラシ:「助けられるんですか!?」 ガザン:「それは分からぬ。」 ココ:「でも、少しでも助かる可能性があるなら試す価値はあると思う。コガラシ、どうかな?」 コガラシ:「ほんの少しでもお父さんが助かるなら…試したいですガザン様!」 ガザン:「そうか。では…行くとしよう。」 0:  0:  0:霊樹の泉 ココ:「これが…霊樹の泉…凄い……力が溢れてる…」 ガザン:「さあ、ランマルをこの泉へ。」 ココ:「はい。」 ランマル:「あ、あぁあああ…!」 コガラシ:「お父さん…!大丈夫!?」 ランマル:「ううう…」 ガザン:「霊樹の力と毒の力がぶつかり合ってるのだ。次第に収まるはずだ。」 ココ:「これで、おとうさんはしばらく大丈夫なんですよね。」 ガザン:「おそらくはな。ランマルを犯しているこの毒は、先ほども言った通り呪いに近い。この毒に練りこまれている霊力はあやつを浄化しない限り根絶しないだろう。」 ココ:「餓者髑髏を倒さない限り…おとうさんを救う事は出来ない…」 コガラシ:「…ココさん。ボクも連れてって。」 ココ:「え?」 コガラシ:「ボクも強くなって、アイツを倒したい。そしてお父さんを守りたいんだ。」 ココ:「コガラシ…ううん。ダメだよコガラシ。」 コガラシ:「なんでですかココさん!」 ココ:「私は当然アイツ…餓者髑髏を倒してみせる。でも、その前にもしかしたらまたここにアイツが来るかもしれないし、他の何かが来るかもしれない。その時におとうさんを守るのはキミだよコガラシ。キミがここで、私の…キミの大切な家族を守るんだ。」 コガラシ:「……。」 ココ:「出来るかな?」 コガラシ:「…分かったよ。ここでお父さんを守る。ボクが皆を守って見せる!」 ココ:「うん、いい返事だ。」 ガザン:「私も山の主として、霊樹を、山を、そして家族達を守ろう。」 ココ:「はい、お願いします!」 ガザン:「コガラシ。」 コガラシ:「は、はい。」 ガザン:「私がお主に稽古をつけよう。共にあやつを撃退出来るほど強くなってやろう。」 コガラシ:「…!!はいっ!」 ココ:「うんとりあえず、大丈夫そうだね。おとうさん、もう少し待っててね。」 ランマル:「……ココ…」 ココ:「っ!」 ランマル:「ありがとう…」 ココ:「…うん。こちらこそ、あの時私を助けてくれてありがとう。今度は私が助ける番だからね。それじゃあ、ガザン様。コガラシ。私は行くよ。」 ガザン:「ココ。気を付けていくのだぞ。」 コガラシ:「絶対あいつを倒して、お父さんを助けてね。それで、元気にまたここに来てね!約束!」 ココ:「うん。約束。絶対、おとうさんを助けてこの山を守ってみせるから。」 0:  0:  0:  餓者髑髏:「あの天狗と鎌鼬、そして管狐……あいつら絶対に許しませんよ…あの方からの命を遂行出来なかった事…なんて説明すればいいか… 餓者髑髏:しかし…あの管狐ぇえ!まさか私のガスを攻略する者がいるとは思わなかったですよぉ… 餓者髑髏:この私に泥を塗った事、後悔させてやりますよ。必ずね……あっははははははっははははぁあああ!」

ガザン:「この風は………木々が…動物が…山全体が怯えている… ガザン:この山に何か良くない事が起きようとしている… ガザン:この山を守る為、早急に対処せねば…」 0:  0:  0: 0:山を汗だくになりながら登るココ ココ:「はぁ…はあ…まったく、あの人は…ホントに困った人だ。」 0:  ココ:【N】先日私は、リーダーと共に霊障報告のあった山村へと調査をしに行った ココ:特にこれといった調査結果は得られず、調査が終わり下山すると女の子と遊ぶ為にリーダーは町へ繰り出した ココ:放置された私はどうしたものかと悩み……近くにかつて世話になった人達が住んでいるのを思い出した 0:  ココ:「しかしまぁ、相変わらず凄い山奥に住んでいるね…こんなに運動したのは久しぶりだよ…運動不足なのは感じていたけれども、それにしたってこんなキツイものかな…明日は筋肉痛確定だ…」 ガザン:「随分と軟弱物になったものだなココ。」 ココ:「っ!?アナタは…」 ガザン:「久しいな。こうして顔を合わせるのはいつぶりだろうか。」 ココ:「相変わらず突然現れるのですね…心臓がいくつあっても足りませんよ。ガザン様、本当にお久しぶりです。私がこの山から下りて以来ですから…もう十数年以上も前ですね。」 ガザン:「そうか、もうそんな年月が経つのか。通りで、あんなに生意気だった子供が大人しくなっているわけだ。」 ココ:「え、えっと…その節は大変ご迷惑を…」 ガザン:「ははは、いやいいさ。子供の世話をするのも私達大人の仕事だ。」 ココ:「そう仰って頂けて何よりです…」 ガザン:「さて、思い出話に花を咲かせたい所だがこのまま立ち話ではなんだろう。お主を集落まで連れて行くとするか。」 ココ:「え、そんな申し訳ないですよ!」 ガザン:「なに、私の力を以ってすれば容易い事。」 0:懐から出した扇子を煽るとココとガザンを風が包む ココ:「や、やはりこれで行くのですね……」 ガザン:「このまま集落まで飛ぶぞココ。」 ココ:「う……はいっ!!」 0:  0:  0:  0:集落に降り立つココとガザン ガザン:「さあ、着いたぞ。」 ココ:「うぷっ…」 ガザン:「大丈夫か?」 ココ:「は、はい…大丈夫です…すみません、ありがとうございます。」 ガザン:「ははは、これが苦手なのは変わらずのようだな。」 ココ:「す、すみません……しかし本当にガザン様の霊力制御は凄いですね。こんなに細かい制御、私でも出来ないですよ。」 ガザン:「年季の差という物だな。そして、これでもこの山の主(ぬし)として守る立場に居る。これくらいは出来なくてはな。」 ココ:「流石です。私も更に精進しなくては。」 ランマル:「ココ?」 ココ:「え?あっ!」 ランマル:「ココじゃないか!はは、聞いたことがある声だと思ったら、やっぱりココだ!」 ココ:「ランマルさん!」 ランマル:「久しぶりだなココ!いやぁ、本当に久しぶりだ!大きくなったな!ほら、良く顔を見せてくれ。」 ココ:「ランマルさん、お元気そうで良かったです。」 ランマル:「ランマルさんだなんて、そんな他人行儀はよしてくれ。これでもお前の親なんだ。」 ココ:「そうですね…何年も顔を見せない親不孝な子供ですが…」 ランマル:「そんなことはないさ、何があってもどんなに離れていてもお前は私の子供で、私はお前の親だよ。」 ココ:「…おとうさん…はい、ありがとうございます。」 ガザン:「感動の再会を邪魔するようで申し訳ないが、輪に入りたそうに木陰から見ている者がいるぞ。」 ココ:「え?」 ランマル:「コガラシ、そんな所に居ないでこっちへ来なさい。」 ココ:「コガラシ…?」 ランマル:「そうか、ココは初めて会うのか。コイツはコガラシ。私の子供だ。」 ココ:「子供ですか!おとうさんにそっくりですね!」 ランマル:「ほら、コガラシ。挨拶しなさい。」 コガラシ:「えっと…あの…初めまして…コガラシです。」 ココ:「初めまして、私はココ。管狐の妖怪だよ。」 コガラシ:「くだぎつね…?鎌鼬(かまいたち)じゃないの…?それに、なんで人間の恰好をしているの?」 ココ:「私はキミやキミのお父さんとは違う妖怪なんだ。この格好は…もう慣れてしまってラクなんだ。」 ランマル:「ココは色々あってな。さ、積もる話もあるだろうから1度私の家に来なさい。ガザン様ももしよろしければ…」 ガザン:「せっかくのご厚意だが、私気になる事があるので遠慮しよう。」 ランマル:「分かりました。ココ、コガラシ行くよ。」 ココ:「あの、ガザン様、この後少々お話が。」 ガザン:「時間を作っておこう。」 ココ:「ありがとうございます。では、後程。」 0: 0: 0:ランマルの家 ランマル:「さ、適当にくつろいでくれ。」 ココ:「久しぶりだなぁ…懐かしい香り…」 コガラシ:「あの、ココさん。」 ココ:「ん?」 コガラシ:「えと、これ…良かったら。」 0:手の中にあるものを見せるコガラシ ココ:「え?これは…イチゴだ。貰っていいの?」 コガラシ:「うん。うちで採れたんだ。食べて。」 ココ:「うん、ありがとう。じゃあ、貰うね。もぐ……うん!甘くて凄く美味しい!」 コガラシ:「っ!良かった。」 ココ:「おとうさん、まだイチゴ作ってたんだね。懐かしい味。」 ランマル:「そりゃあそうだ。死ぬまで辞めないさ。」 ココ:「死ぬまで辞めない。その口癖も、この家も全部本当に懐かしい。」 ランマル:「そうだな、ココがこの家を出てもう長いもんな。どうだ元気にしてたか?」 ココ:「うん。おとうさんも、集落の皆も元気そうで良かった。」 ランマル:「…そうだな。」 0:ランマルの表情が曇る ココ:「…どうかしたの?」 ランマル:「いや、集落の皆は健康そのものなんだが…最近木々がざわついていてな。」 ココ:「木々が?」 ランマル:「山全体が怯えている、とでも言えばいいだろうか。」 コガラシ:「うん…動物達も不安がってた。」 ココ:「…動物達も…何かが今この山に起きてるって事?」 ランマル:「その可能性がある…何かの前兆で無ければいいのだが…」 ココ:「ガザン様は何か?」 ランマル:「良くない風が吹いていると言っていたな。」 ココ:「良くない風…」 ランマル:「せっかく久しぶりに会えたのにすまないなココ。さ、お前は何も気にせずゆっくりしてくれ。」 ココ:「ううん、大丈夫。むしろ丁度いいタイミングで来れた。」 ランマル:「どういうことだ?」 ココ:「私は今、仲間と一緒に人助けをしてるんだよ。」 ランマル:「人助け…?」 ココ:「うん。困っている人が居るのにゆっくりなんかできないよ。私が皆に猫の手をお貸しするよ。」 0:  0:  0:  0:大樹の枝に立つガザンの元へやってくるココ ココ:「ガザン様。」 ガザン:「ココか、良く来たな。して、話とは何かな。」 ココ:「おとうさ…ランマルさんから話を聞きました。今この山に何か異変が起きていると。」 ガザン:「…そうか。聞いたか。」 ココ:「ガザン様は、どうお考えですか?」 ガザン:「先日からこの山には良くない風が吹いている。その風によって、木々、そして動物達が怯えているのだ。 ガザン:何か邪悪な、狂気を感じる風…とでも言えばいいか。」 ココ:「邪悪…狂気……私がガザン様にお尋ねしたかったのは、悪霊についてです。」 ガザン:「悪霊について何を?」 ココ:「最近、私の住む街を中心に悪霊による霊障被害が少しずつ多くなっているのです。 ココ:今回私が、この近くへ来たのもその関係です。」 ガザン:「今回のこの風はその悪霊によるものだと、お主は思うのだな?」 ココ:「はい、恐らくは。」 ガザン:「悪霊とは、昔に1度対峙したことはあるが…今回のはその際のとまた違う悪しき感覚だ。」 ココ:「そうなのですか?」 ガザン:「単純に考えれば、その時の悪霊以上の存在だと考えた方がいいだろう。」 ココ:「そうですね…ガザン様。もし戦闘になれば私も加勢を…」 ガザン:「その申し出は有り難いが、お主は客人だ。」 ココ:「しかしっ!」 ガザン:「まて。」 ココ:「っ!」 ガザン:「風が…近い……悪しき者の風が…」 0:仮面を付けた誰かが歩いてくる ココ:「あれは……」 ガザン:「あやつが…悪しき風の正体…」 餓者髑髏:「ふう、やっと辿り着きました…ホント、足場の悪い山ですねぇ。何故この私がこんな所に……あら?先客がいらっしゃったんですか?」 ガザン:「お主は何者だ。何故この大樹に訪れた。」 餓者髑髏:「あら、私ですか?答えてあげてもいいですけど、人に名前を尋ねる時はまず自分からじゃないですかぁ?」 ガザン:「…そうだな。私はガザン、この山の主である烏天狗(からすてんぐ)だ。」 餓者髑髏:「隣の方は?」 ココ:「っ!わ、私は管狐のココだ。」 餓者髑髏:「そうなんですね、まぁ興味はないんですけど。 餓者髑髏:では改めまして、お初にお目にかかります私は餓者髑髏(がしゃどくろ)と申します。今からあの方の命によりこの山を…蹂躙(じゅうりん)致します。」 ココ:「蹂躙…?」 餓者髑髏:「ええ、聞こえませんでしたか?蹂躙ですよ蹂躙。」 ガザン:「なぜお主はこの山を蹂躙せねばならないのか。」 餓者髑髏:「別に私はしたくてするんじゃありませんよ?こんな足場の悪い山なんかに来たくもなかったですし。でも、あの方の命とあればやるしかないんですよ。 餓者髑髏:この山をめっちゃめちゃにし、そしてこの大樹を壊せって命を受けたからには…ね。」 ガザン:「大樹をだと…?」 ココ:「あの方…とは誰なのかな?」 餓者髑髏:「あの方はあの方ですよ。てか、さっきから質問が多いですねぇ…もう答えるの面倒なので始めちゃっていいですか?」 ガザン:「動くな。動けばお主は無事では済まないぞ。」 餓者髑髏:「あら、怖いですねぇ。そんな威圧されたら怖くて怖くて動けないじゃないですかぁ…でーも、一歩も動かなくても別にいいんですよねぇ。」 ガザン:「なに…?」 ココ:「コイツの中で霊力が膨れ上がって…!いったい何を…」 餓者髑髏:「あっはははは!!さぁ、始めていきましょうか……蹂躙……開始だぁああ!!」 0:餓者髑髏のローブの内側から紫色をしたガスが噴き出す ココ:「これは…ガス!?」 ガザン:「なに!?しかし、こんなもの私の風で吹き飛ばしてしまえば…!」 餓者髑髏:「…ひひっ!」 ココ:「まってガザン様!」 0:風でガスが加速し森に蔓延していく ガザン:「なっ!」 餓者髑髏:「あーあ、やっちゃいましたねぇ!山の主自ら、守るべき山の民を危険に追いやっちゃいましたねぇ!!」 ココ:「コイツ…!」 餓者髑髏:「私、優しいので教えてあげます。今のガスは神経性の毒ガス、吸い込めば筋肉や内臓の働きが低下し、1時間は体が麻痺して動けません。 餓者髑髏:更にこのガスは空気より重いので舞い上がる事無く下に溜まるんですよ!我ながらナイス発明です!」 ガザン:「ココ。集落の様子を見に行ってくれないか。」 ココ:「ガザン様はどうされるのですか!」 ガザン:「私はあやつを仕留める。お主は集落の皆を安全な場所へ誘導してやってくれ。今ならまだ間に合うはずだ。」 ココ:「しかし…」 ガザン:「ココ。お主にしかできぬことだ。」 ココ:「っ…分かりました…どうか、ご武運を…!」 餓者髑髏:「どーこ行こうってんですかぁ?私から離れて良いなんて言ってないですよぉ!」 ココ:「また、ガスが!」 ガザン:「ぬんっ!」 0:扇子を煽るとドーム状の風が発生しガスの蔓延を防いだ 餓者髑髏:「あらぁ…」 ガザン:「先ほどは後れを取ったが、これでも山の主なのだ。民を、山を守るのが私の仕事…これ以上好き勝手はさせるわけにはいかない。」 ココ:「ガザン様…」 ガザン:「いけ、ココ。この場は私に任せろ。」 ココ:「…はい!!」 餓者髑髏:「ふぅん…少しは楽しめそうですねぇ。」 ガザン:「お主には、この山の肥やしになってもらうぞ。」 0:  0:  0:  0:集落へ向かうココ ココ:「はぁはぁ…!!みんな、どうか間に合って!」 コガラシ:「ココさん!」 ココ:「コガラシ!無事で良かった!」 コガラシ:「お父さんが皆を避難させてくれて…」 ココ:「そうだったんだ…良かった……でも、なんでコガラシはここに?」 コガラシ:「その、ココさんが心配で勝手に探しに…」 ココ:「…そうだったんだね。ありがとうコガラシ。でも危ない真似はしちゃだめだよ?」 コガラシ:「はい、ごめんなさい…」 ランマル:「コガラシ!」 コガラシ:「お父さん…!」 ランマル:「やっと見つけたぞコガラシ!勝手にいなくなるな、心配しただろう!」 コガラシ:「ごめんなさい、ココさんを探してて…」 ランマル:「それは私がやると言っただろう……だが、見つけてくれてありがとうなコガラシ。」 コガラシ:「…うんっ。」 ランマル:「ココ。無事で何よりだ。」 ココ:「おとうさんも無事で良かった。他の皆は?」 ランマル:「ああ、嫌な気配がして直ぐに山の聖域へ逃がした。あそこならある程度の攻撃からは身を守れるはずだ。」 ココ:「そう…なら安心かな……でもこの辺りもじきに危なくなる。コガラシもおとうさんも早くその聖域に逃げて。」 コガラシ:「何があったんですか…」 ランマル:「いったい何が起きてる?ガザン様はどうした?」 ココ:「この山に敵が攻めてきたんだ、ガザン様は今それと交戦してる。」 ランマル:「敵だと…?複数いるのか?」 ココ:「いや、それが相手は1人なんだ…しかも異常な程の霊力を保持してる。」 ランマル:「……ココ、コガラシ、お前達は聖域に行きなさい。」 ココ:「え?」 コガラシ:「なんで?お父さんは?一緒に行かないの?」 ランマル:「私は、ガザン様の助太刀に行く。私もこの山の民、守る権利がある。」 コガラシ:「ダメだよ、お父さんダメだよ!もし行くんなら一緒に行く!だってボクだって山の民なんだから!」 ランマル:「ダメだ!お前はまだ幼い。未来ある子供を戦わせるわけにはいかない。」 コガラシ:「でも…!!」 ココ:「おとうさん。私も行きます。」 コガラシ:「ココさん…!?」 ランマル:「ココ…お前も私にとって大切な子供なんだ。危険な目に合ってほしくはない、分かってくれ…」 ココ:「おとうさん、さっき言ったでしょう?猫の手を貸すって。皆を守る為に、私も全力で戦う。私にとっても皆は大切な家族だから。」 ランマル:「……これ以上何を言っても聞かなそうだな…昔からいじっぱりだったもんなココ。」 ココ:「ふふ、良く分かってるね。」 コガラシ:「お父さん…ボクも…!」 ランマル:「コガラシ、お前は聖域で皆を守ってあげるんだ。何かあっても、きっとお前なら大丈夫だ。」 ココ:「キミが集落の皆を守ってくれれば、私達は全力で戦えるんだよ。」 コガラシ:「……。」 ココ:「コガラシ?」 コガラシ:「…わかった…うん!分かった、ボク頑張る!」 ココ:「いい子だ。もうこの辺も危なくなってくる、早く聖域に行って!」 コガラシ:「は、はい!」 ランマル:「…よし、我々も行くぞココ。」 ココ:「はい!おとうさん、この山を守りに行こう!」 0:  0:  0:ガザンと餓者髑髏、交戦中 ガザン:「たあああ!」 餓者髑髏:「涼しい風ですねぇ、こんなものなんですか?山の主ってのは。」 ガザン:「はあ…はあ…なんだこやつ…手ごたえがまるでない…?」 餓者髑髏:「あららぁ?どうしたんですかぁ?もう終わりなんですか?さっきから全然痛くも痒くもないのですが?もしかして手加減してくれてます?」 ガザン:「くっ…これならばどうだ!風魔(ふうま)!」 0:扇子から圧縮された巨大な空気が放たれる 餓者髑髏:「ぐはああああ!なーんて。」 ガザン:「なっ!?確かに当たっているはず…なぜ…」 餓者髑髏:「ぬるい…ぬるいんですよぉ…その程度じゃあ私を追い返すことも出来やしないですよ?」 ガザン:「いったいどういうカラクリだ…なぜびくともしないのだ。」 餓者髑髏:「さーて、そろそろ受けるだけってのも飽きたんで…攻めていいですか?仕事しないとなんで。」 ガザン:「させん!叉斬渦(さざんか)!」 餓者髑髏:「あーもう、そんな風なんかじゃ聞かないですよ!いい加減、大人しくしてて下さい!」 0:足元から黄色がかったガスを噴射する ガザン:「これは…!だがまた閉じ込めてしまえば…!!」 餓者髑髏:「そう何度も同じ手は通用しませんって…」 ガザン:「なっ!?ガスが急速にこちらへ向かって!?」 餓者髑髏:「あっはははは!いい驚きっぷりですね!ま、それもそうですよね。ガスが意思を持って襲い掛かってきたわけですから。」 ガザン:「な、なんだこれは!払っても払ってもきりがない!」 餓者髑髏:「それは私の霊力が混ぜ込まれて作られているんですよ。なので私の意志で自在に動かせるガスなんです。 餓者髑髏:ちなみに、そのガスを吸えば一時的に霊力が扱えなくなるのと、五感が通常より衰えますのでお気を付けを。」 ガザン:「この芸当……並みの霊力制御では出来ぬぞ。」 餓者髑髏:「私をそこら辺の有象無象と一緒にしないでもらえますかぁ?怒りますよぉ?」 ガザン:「っ!?更に量がっ!?」 餓者髑髏:「あっはは!せっかくなんで量を増やしちゃいました。山の主さんなんですからこれくらいどうにかできて当然ですよね?」 ガザン:「お主…!!」 餓者髑髏:「さぁ!私を楽しませて下さい!」 ガザン:「こうなれば致し方ない……」 餓者髑髏:「あら?諦めちゃうんですか?」 ガザン:「私は山の主、烏天狗(からすてんぐ)のガザン。正確に言えば山に繁栄をもたらすこの大樹…霊樹(れいじゅ)の守護者。 ガザン:霊樹よ。この山を、霊樹を守る為…力をお借りします。」 0:大樹から力が溢れ、ガザンに集まっていく 餓者髑髏:「あららぁ…これは面白いですねぇ。あの方がこの木を厄介がるのも分かりました。」 ガザン:「散れっ!風魔(ふうま)!」 餓者髑髏:「あらぁ、私のガスが見事に消されてしまいましたね……」 ガザン:「もうお主のガスは私に通用しない、覚悟するのだな。」 餓者髑髏:「ひひ…」 ガザン:「?」 餓者髑髏:「ひっはははっははは!!いいですね!やっと少しは本気が出せそうです! 餓者髑髏:さぁ、満足させて下さいね…天狗さん。」 0: 0: 0:ガザンの元へ向かうココとランマル ココ:「はぁ、はぁ…」 ランマル:「おいココ、この紫のはなんだ!」 ココ:「まずい…もうここまでガスが…!」 ランマル:「ガス?」 ココ:「敵が使う攻撃がガスなんだ、しかもガザン様の風でもかき消す事が出来なかった。」 ランマル:「なんだそれは…そんな奴と戦ってガザン様は大丈夫なのか?」 ココ:「分からない、でも無事を祈るしかないよ…」 ランマル:「…ああ。にしてもその敵とやらは何の為にここに来たんだ。」 ココ:「大樹を壊すように命じられて来たらしい。」 ランマル:「大樹を…?」 ココ:「おそらく、この山を守る大樹の力が目的なんだと思う。」 ランマル:「もしあの木が破壊されたらこの山の民はおろか、動植物達までも危険に晒されてしまう…」 ココ:「もちろんそんな事はさせない、その為に早く行こう!」 ランマル:「ああ!!」 ココ:「もう少しで大樹に着くよ!」 ランマル:「ガザン様…どうかご無事で!!」 0:大樹にたどり着いた2人 ココ:「ガザン様!!」 ランマル:「…これは……」 餓者髑髏:「あらぁ?さっき逃げて行った方…ともう1匹なんか増えてますね。鎌鼬…ですかね?」 0:餓者髑髏の足元に片膝をついて肩で呼吸をしているガザン ココ:「ガザン様…!!大丈夫ですか!!」 ガザン:「ココ……なぜ戻ってきた…ランマル…まで…」 ココ:「そんなの、助ける為に…」 ガザン:「逃げろ…」 ココ:「…できません!」 ガザン:「逃げるのだ!」 ココ:「っ!」 ガザン:「お前ではこやつに勝てない…!こやつは…強すぎる…」 ココ:「しかし…ガザン様を置いて行くだなんて…それに大樹を壊されてしまったらこの山は!」 餓者髑髏:「あーもう!!うるさいですねぇ!さっきから私を放ってなーにペチャクチャ話してるんですかぁ!? 餓者髑髏:いい加減この天狗もボコボコにされて辛いでしょうからね、最高の毒で楽にしてあげましょうか。」 0:ガザンの頭を踏み付ける ココ:「ガザン様ぁあ!!」 餓者髑髏:「さあ、死んでください!」 ランマル:「守風(かみかぜ)!!」 0:風のバリアがガザンを包み餓者髑髏が弾かれる 餓者髑髏:「あらぁっとと?」 ランマル:「ガザン様、まだ諦めないで下さい!」 ガザン:「ランマル…」 ココ:「おとうさん…」 ランマル:「あなたはこの山の主です、けれど我々もこの山の民。同胞も山も守る権利があります。共に戦わせて下さい。」 ガザン:「…そうだな……すまなかったココ、ランマル。」 ココ:「ガザン様…」 0:ゆっくり立ち上がるガザン ガザン:「いい喝が入った…ありがとう。私はまだ、主として未熟だな… ガザン:危険な戦いだが、共に戦ってくれるか?」 ココ:「はいっ!」 ランマル:「当たり前です!」 餓者髑髏:「いい雰囲気の所悪いですけど…こっちはもう時間ないんで、全員まとめてちゃっちゃと殺しちゃいますね。みーんな仲良くあの世行きですよ! 餓者髑髏:さあ、私の最高最狂の毒に狂い恐怖して下さい!」 0:ローブの下から黒いガスが大量に噴射される ココ:「なんだこの禍々しいガス…」 ランマル:「まずいぞ…このままだと動物や皆が危ない!」 ガザン:「私が霊樹より授かりし力で消し飛ばしてくれる!叉斬渦(さざんか)!!」 餓者髑髏:「はっはは!無駄!無駄ですよぉ!このガスは今までのとは違い霊力を通さないのです。」 ガザン:「なっ!?」 餓者髑髏:「吸った者は幻覚や幻聴を見続け、その幸せな世界にいながら全身に猛毒が回るのを待つのみなのです。どうです最高でしょう!!」 ランマル:「聖域に到達してしまったら皆が…!!」 ココ:「私が…私がどうにかします!」 ランマル:「ココ!?やめろ危険だ!」 ココ:「大丈夫だよ。おとうさんもガザン様も知っているでしょう。私の目を。」 餓者髑髏:「目…?」 ココ:「私の目は霊力の流れや量を見る事が出来るの。」 餓者髑髏:「見えた所でなんですか?このガスをどうにかできるんですか?霊力も通さないこの私の最高傑作を。」 ココ:「どんな物も必ずほころびがある……流旋(りゅうせん)の構え。」 ランマル:「その構えは…」 ココ:「そして、そのほころびをつけば…!」 0:迫ってきたガスを回転してかき消すココ 餓者髑髏:「なに…!?私の…ガスが消えた…!!」 ココ:「霊力、空気の流れを理解し受け流す、全てはほころびから崩壊する。」 ガザン:「ココ、その技は…」 ココ:「ガザン様、おとうさんから昔教わった物を自己流にしたものです…上手くいって良かった。」 餓者髑髏:「な…な…!くそぉ……あなた良くもやってくれましたね…!」 ココ:「もうこれでキミのガス攻撃は私達に通用しない!」 ランマル:「良くやったココ!くらえ風牙(ふうが)!!」 餓者髑髏:「あーもう!!せっかちですね!そんな攻撃効かないですよ!」 ランマル:「な、当たったのに効いてない…?」 ガザン:「ぬぅ…やはりか…私の攻撃もあやつに一切通らなかったのだ。」 ココ:「そんな…っ!?まって、そいつ体に…霊力を纏ってる!」 ランマル:「なに!?」 餓者髑髏:「あら、あらら?見破られましたか。そう、私は常に霊力を込めた鎧に等しい強固なガスを纏っています。並みの攻撃は通じません。」 ランマル:「見えない鎧を身に着けているという事か…」 ガザン:「なんと厄介な…」 ココ:「なら私がまた壊すだけ!」 餓者髑髏:「馬鹿ですか?そう簡単に行くわけないでしょう?」 0:黄色いがかったガスを4つ噴射する ガザン:「ぬっ!あれは…気を付けろ!あのガスは意思を持って追尾してくる!」 ココ:「え…?追尾…!?」 ガザン:「ココ!ランマルと私で道を開ける、その隙に!ランマル行けるか?」 ランマル:「ああ、任せて下さいガザン様!!」 ガザン:「行くぞ風魔(ふうま)!!」 ランマル:「くらえ風牙(ふうが)!!」 餓者髑髏:「おお、いいですね!でもでもほらほら!どんなに消した所で無意味ですよ!」 ランマル:「まだ出しやがるのか!っ!ココ!危ない!」 ココ:「はぁあああ!!っと…大丈夫だよおとうさん!」 餓者髑髏:「くそ!!まだまだまだぁあ!」 ガザン:「まだ増えるのか…!」 ランマル:「くそ、キリがない!」 ココ:「2人ともあと少し耐えて!もう少しで!!」 餓者髑髏:「この管狐ぇ、もう目の前まで!近寄るんじゃないですよ!」 0:黒いガスを噴射する ココ:「っ!?」 ランマル:「危ないココ!!」 ガザン:「ランマルまて!!」 ココ:「おとうさん!?ダメ!」 0:ココを突き飛ばすランマル ココ:「っ!!おとうさん!!」 ランマル:「ぐああああ!!」 ガザン:「ランマル!!!」 餓者髑髏:「あら、あららぁあ!!あっはははは!これはこれは思わぬ展開!!いいですねぇえ!」 ココ:「おとうさぁああん!!くそ、餓者髑髏ぉぉお!!」 餓者髑髏:「あっはははぁっ!?がはああ!!?」 0:ココの攻撃で吹き飛ぶ餓者髑髏 ココ:「おとうさん!おとうさん!!」 ランマル:「う…く……」 餓者髑髏:「ひひ…ひっははは…楽しいですねぇ!楽しいですねぇ!!」 ココ:「餓者髑髏キミ…っ!?まずい、またガスが奴を覆って…」 餓者髑髏:「ふふ無駄ですよ、私はいくらでもガスを纏えるのですから……がはっ!?」 ガザン:「っ!?」 ココ:「なに?凄い速さで何かが…?」 餓者髑髏:「…なんだ、誰ですか!ぐ…なんなんですか!」 コガラシ:「お父さんに…お父さんに何をしたぁあああ!!」 餓者髑髏:「ぐはっ!?なんだコイツ!」 ガザン:「コガラシ!?」 ココ:「なんでここに…」 コガラシ:「大好きなお父さんを!ボクの大切な家族を!いじめるな!!」 0:高速で回転しながら尻尾の鎌で切り付けていく 餓者髑髏:「ぐあああ!!あの鎌鼬の子供ですか…!!」 ココ:「コガラシ!だめ、危ないから下がって!」 コガラシ:「嫌だ!お父さんを傷つけたコイツを許せない!」 餓者髑髏:「くうぅ…!いい加減…離れろガキっ!」 コガラシ:「うああ!」 ココ:「コガラシ!」 餓者髑髏:「はぁ…はぁ…全く…やってくれやがりましたね。痛いじゃないですかぁ…私のお気に入りのローブもボロボロにしてくれやがって…どうしてくれるんですかぁ?えぇ?」 コガラシ:「お父さんを返せ…お父さんを返せよ…!」 餓者髑髏:「はぁ…お父さんお父さんってうるさいですね。返すも何も、毒を吸ったあの鎌鼬は助かりませんよ。」 コガラシ:「なっ……!?」 餓者髑髏:「ふふ、まぁせいぜい残り僅かな親子の時間を過ごす事ですね。」 ガザン:「どこへ行くつもりだ!」 餓者髑髏:「ここまで邪魔をされ、お気に入りのローブもボロボロにされ、私はもう戦う気力もありません。なので今回はおいとまさせて頂きます。ですが、勘違いしないで下さい?大樹を諦めたわけではありませんので。」 ココ:「…餓者髑髏、最後に聞かせて。キミに大樹を壊すよう命じた人…あの方って誰?」 餓者髑髏:「あの方が誰、ですかぁ?それはですねぇ……答えてあげる義理なんてあるわけないじゃないですかぁ!! 餓者髑髏:あっははは!それでは、またいつかお会いしましょう。さようならみなさん。」 0:笑いながら消えていく餓者髑髏 ガザン:「悪しき風が感じられなくなった……」 コガラシ:「お父さん!!お父さん!!しっかりして!」 ガザン:「っ!」 ココ:「おとうさん…!」 ランマル:「う…あぁ……!」 ココ:「おとうさん…せっかくまた会えたのに…」 ランマル:「あぁ…コガラシ……ココ……」 コガラシ:「お父さん…!!ここに居るよ、ボクもココさんもガザン様もここに居るよ!」 ランマル:「コガラシ……ココ…すまない…」 ココ:「何も謝る事なんてないんだよおとうさん…守れなくてごめんねおとうさん…」 コガラシ:「もう、なにもしてあげられないの…?お父さんを助けてあげる事は出来ないの?」 ココ:「……ガザン様。」 ガザン:「どうしたココ。」 ココ:「山の大樹…霊樹の力で解毒をする事は出来ないですか?悪しき霊力を遮断する聖域を霊樹は作る事できる。 ココ:もしかしたら、この神聖な力で毒を除去出来るのではないですか?」 コガラシ:「出来るんですかガザン様!」 ガザン:「……残念だが、それは不可能だ。」 ココ:「何故ですか!」 ガザン:「確かに、並みの毒程度であれば可能だ。しかし、この毒は…あやつの霊力が練られた物。強力な呪いに近い。」 コガラシ:「助けて下さい!お父さんを助けて下さい!ガザン様!お願いです!ココさんお願いです!助けてください…お父さんを……ボクのお父さんを…」 ココ:「コガラシ……」 コガラシ:「猫の手、貸してくれるんですよね?じゃあ貸してくださいよ…お父さんを助ける為に貸して下さいよココさん!」 ココ:「っ…ごめん…コガラシ…」 コガラシ:「ココさん……う、ううあぁあああ!」 0:ランマルの腹の上に顔を埋めながら泣くコガラシ ガザン:「完全な解毒は難しいかもしれないが、延命…あるいは時間をかけての治療は可能かも知れぬ。」 ココ:「え、それはどういう…」 ガザン:「霊樹の根本の地下に、霊樹の力が満たされた小さな泉がある。そこに浸からせれば多少は、毒の効力を抑えられるやもしれん。」 コガラシ:「助けられるんですか!?」 ガザン:「それは分からぬ。」 ココ:「でも、少しでも助かる可能性があるなら試す価値はあると思う。コガラシ、どうかな?」 コガラシ:「ほんの少しでもお父さんが助かるなら…試したいですガザン様!」 ガザン:「そうか。では…行くとしよう。」 0:  0:  0:霊樹の泉 ココ:「これが…霊樹の泉…凄い……力が溢れてる…」 ガザン:「さあ、ランマルをこの泉へ。」 ココ:「はい。」 ランマル:「あ、あぁあああ…!」 コガラシ:「お父さん…!大丈夫!?」 ランマル:「ううう…」 ガザン:「霊樹の力と毒の力がぶつかり合ってるのだ。次第に収まるはずだ。」 ココ:「これで、おとうさんはしばらく大丈夫なんですよね。」 ガザン:「おそらくはな。ランマルを犯しているこの毒は、先ほども言った通り呪いに近い。この毒に練りこまれている霊力はあやつを浄化しない限り根絶しないだろう。」 ココ:「餓者髑髏を倒さない限り…おとうさんを救う事は出来ない…」 コガラシ:「…ココさん。ボクも連れてって。」 ココ:「え?」 コガラシ:「ボクも強くなって、アイツを倒したい。そしてお父さんを守りたいんだ。」 ココ:「コガラシ…ううん。ダメだよコガラシ。」 コガラシ:「なんでですかココさん!」 ココ:「私は当然アイツ…餓者髑髏を倒してみせる。でも、その前にもしかしたらまたここにアイツが来るかもしれないし、他の何かが来るかもしれない。その時におとうさんを守るのはキミだよコガラシ。キミがここで、私の…キミの大切な家族を守るんだ。」 コガラシ:「……。」 ココ:「出来るかな?」 コガラシ:「…分かったよ。ここでお父さんを守る。ボクが皆を守って見せる!」 ココ:「うん、いい返事だ。」 ガザン:「私も山の主として、霊樹を、山を、そして家族達を守ろう。」 ココ:「はい、お願いします!」 ガザン:「コガラシ。」 コガラシ:「は、はい。」 ガザン:「私がお主に稽古をつけよう。共にあやつを撃退出来るほど強くなってやろう。」 コガラシ:「…!!はいっ!」 ココ:「うんとりあえず、大丈夫そうだね。おとうさん、もう少し待っててね。」 ランマル:「……ココ…」 ココ:「っ!」 ランマル:「ありがとう…」 ココ:「…うん。こちらこそ、あの時私を助けてくれてありがとう。今度は私が助ける番だからね。それじゃあ、ガザン様。コガラシ。私は行くよ。」 ガザン:「ココ。気を付けていくのだぞ。」 コガラシ:「絶対あいつを倒して、お父さんを助けてね。それで、元気にまたここに来てね!約束!」 ココ:「うん。約束。絶対、おとうさんを助けてこの山を守ってみせるから。」 0:  0:  0:  餓者髑髏:「あの天狗と鎌鼬、そして管狐……あいつら絶対に許しませんよ…あの方からの命を遂行出来なかった事…なんて説明すればいいか… 餓者髑髏:しかし…あの管狐ぇえ!まさか私のガスを攻略する者がいるとは思わなかったですよぉ… 餓者髑髏:この私に泥を塗った事、後悔させてやりますよ。必ずね……あっははははははっははははぁあああ!」