台本概要

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タイトル 暗殺者とサバイバル
作者名 ハスキ  (@e8E3z1ze9Yecxs2)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 「サウザント・キリング」の二つ名を持つ凄腕の冒険者クロウは次の依頼の為に客船で海を移動していた。そんな時に現れたクロウを狙う謎の暗殺者。慣れていたクロウは軽くあしらうもドジな暗殺者は海に落ちてしまう。それを見たクロウも後を追って荒れ狂う海に飛び込むのだった⋯
男女不問。世界観を壊さない程度のアドリブOK

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
クロウ 114 「サウザント・キリング」の二つ名を持つ東の大陸一の凄腕の冒険者。その強さからいろんな街で依頼を頼まれるほどの信頼がある。それと同時に敵も沢山作っているのでよく暗殺者から命を狙われる事がある。出生に秘密がある。
116 冒険者風の少女、骸(むくろ)。捨て子で親の顔を知らず物心ついた時には奴隷商人に拾われ暗殺者のボスに買われた。後は暗殺者として育てられたが本心は殺しが好きではないのでためらいがある。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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クロウ:はー。安い船代だったから怪しいとは思ったが、案の定ボロ船だったな。さらに天候も最悪ときた。 骸:あのーもしかして、あなたクロウさんですか? クロウ:お?なんだお前さんは 骸:あ、やっぱり冒険者で有名なあのクロウさんだ!私前から貴方のファンだったんです~ クロウ:お、おう。そうか、可愛い女の子にそんな風に言われるとなんだか照れるな。そんなに俺は有名なのか? 骸:もう何言ってるんですかー。冒険者問わずこの大陸で貴方の事を知らない人はいませんよ、「サウザント・キリング」の二つ名は私のような小娘でも知ってます クロウ:そんな二つ名が付いてたのか・・今知ったぞ。 骸:ぜひぜひサインして下さい!えと・・この羊皮紙にお願いします! クロウ:ちょっと待て。 骸:痛っ!あ、あの、なんで「私の手」を掴まれてるんでしょうか? クロウ:お前の懐に入れた「もう片方の手」が気になったんでな。 骸:っ!!な、なんで・・ クロウ:殺気がダダ漏れだぞ。素人かお前?それとも「未経験」なだけか? 骸:くっ、バレちゃしょうがないね!そうさ、私はまだこの道は日が浅いけど、れっきとした暗殺者さ。あんたの命、頂かせてもらうよ! クロウ:はっ、こんな若いやつが暗殺者とはな。世も末だな 骸:知ったふうに言ってくれるけど、あんたに何がわかるんだい クロウ:あー分からんね。人の命を狙うクズの考えは 骸:ふん、あんたには分からないだろうね。何者にも縛られず、好きな事が出来る自由な冒険者なんかやってる奴にはね! クロウ:はっ、お前も俺の何を知ってるというんだ? 骸:そんなの知りたくもないよ! クロウ:そうかい。まあ、殺るってんなら相手してやるよ。だが子供だからって負けてやるわけにはいかんからな 骸:ナメないで!うらっ! クロウ:ほー、なかなか筋はいいな 骸:く、うら!、な、なんで、当たらない! クロウ:残念だがまだまだ荒削りだな、ほら、脇がガラ空き、だ! 骸:ぐふっ! クロウ:どうした、まだやるのか? 骸:ち、チクショー・・私は、負ける訳にはいかないんだ・・ クロウ:はー、めんどくさい事になったな 骸:次こそ、うらぁ~! クロウ:大ぶりすぎるぞ、ほっ 骸:くっ!・・うわっ! クロウ:あ、馬鹿!お前そっちは! 骸:う、うわぁ~~! クロウ:チッ、こんな荒れた海に落ちやがって!待ってろ! :間 骸:う・・うん?ここは・・どこだ? クロウ:お、やっと起きたか眠り姫さん。 骸:っ!ク、クロウ?なんであんたがいるんだ!? クロウ:おいおい、命の恩人になんて言い草だよ。誰が助けてやったと思ってるんだ? 骸:助けた?・・あ、あの時、海に落ちたのか?・・ クロウ:やっと思い出したようだな。大変だったんだぞ?落ちた場所からは流されまくって、船には戻れずだったし。なんとか奇跡的にこの無人島に流れ着いたってところだ。 骸:・・私は、失敗したのか。 クロウ:そういう事だな。まあ命があっただけましだろ 骸:⋯殺せ。 クロウ:は?なんでだよ? 骸:どうせ帰っても失敗した事が暗殺者ギルドのやつにバレて始末されるんだ・・ クロウ:んで、俺に一思いに殺ってくれと? 骸:そうだよ!さっきのであんたには逆立ちしても勝てない実力の差があるのはわかったし、そうするしかないだろ⋯。 クロウ:そうか・・ 骸:だから、 クロウ:だが断る! 骸:なっ! クロウ:甘えるんじゃない、自分の人生を他人に任せるんじゃないよ。俺はそんな協力などしないからな 骸:・・じゃあ、私はいったいどうしたらいいだよ・・ クロウ:簡単だ。生きたらいいだろ? 骸:は? クロウ:お前がどんな理由で暗殺者になったかなんて知らないし聞かないが、お前はまだ、生きてるんだろ? 骸:う・・ クロウ:それにここにはお前と俺しか居ない。何に恐れる必要があるんだ? 骸:それは・・あっ!い、今のは違うよ! クロウ:どうやら、誰かの腹の虫も賛成してるみたいだな。 骸:こ、これはちがっ、 クロウ:ほら、お前が寝てる間に島を探索して取ってきてやった果物だ。もちろん食べれるやつだから心配するな。 骸:い、いやそんな心配をしてるんじゃなくて⋯ クロウ:腹が減ってはまともな考えも浮かんでこないからな。ほら、とりあえず食え食え 骸:わ、わかったから頭を撫で回さないで!まったく・・。・・あむ。 クロウ:どうだ? 骸:・・うまい クロウ:だろ?もっとあるから気が済むまで食べろ 骸:う、うん :間 骸:ふー。美味しかった クロウ:ふ、それは何よりだ。どうだ、ちょっとは落ち着いたか? 骸:・・とりあえず、礼は言っとくわ。ありがとう クロウ:気にするな。なんかお前を見てたら昔の俺を見てるみたいで、ほっとけなかっただけだ。 骸:え? クロウ:お前、名前は? 骸:あ・・む、骸だよ クロウ:骸か。まあ、ひとまずよろしくな 骸:あ、ああ。それよりさっきのってどういう意味・・ クロウ:さ、もう遅い時間になってきたから寝るか。お互い流されて体力を消耗してるしな。じゃあお先にー。 骸:あ、ちょっとまだ話の途中・・ クロウ:ぐーー、ぐーー 骸:寝るのはや! 骸:・・すごい無防備だけど、あたしが寝首かいてくるとか考えないの? クロウ:ぐお~、むにゃむにゃ・・ 骸:・・フフ、不思議なやつ :間 骸:あ、あつい・・ クロウ:た、たしかに・・この辺の気候は熱帯みたいだな 骸:でもほんとにこの島のどこかにあるの? クロウ:ああ、必ずあるはずだ。 骸:すごい自信だけど、根拠(こんきょ)はあるの? クロウ:ない。ただのカンだ 骸:カン!?ただのカンで私はこの森を何時間も歩かされてるわけ~!? クロウ:ははは、そうなるな。だが、 骸:え? クロウ:俺のカンは外れた事はないんだ 骸:はいはい、そうですか。あー足が棒になるよー クロウ:ん?シッ!静かに 骸:え?え?な、なんなの? クロウ:この音は・・間違いない。こっちだ! 骸:ちょ、ちょっとクロウ、置いてくな~! クロウ:おー!あったぞ~! 骸:え?・・あ、水だ クロウ:はっはっは、だから言っただろ? 骸:はは・・すごいけど、それ野生のカンじゃん :間 クロウ:・・よっと、ほら、スープができたぞ 骸:ん・・ありがと クロウ:うーん、我ながらいい出来栄えだ。 骸:さっきのやつって何? クロウ:ん?あーそうか、お前は火の魔法を見るのは初めてだったか。あれは初歩の火の魔法「プチファイア」だ 骸:へー、あれが魔法なんだ。 クロウ:これは生活魔法だから学校行けば誰でも習えるぞ。 骸:私は、学校行った事ないんだ・・ クロウ:そうか・・ 骸:わ、私ね⋯その⋯ クロウ:言いずらい事だったら、無理に言わなくてもいいんだぞ? 骸:・・ううん。クロウには、聞いて欲しい・・かな、私の事 クロウ:・・わかった、ならちゃんと聞くから、話してくれるか? 骸:うん。 :間 骸:私ね、両親の顔知らないんだ。 クロウ:・・ 骸:私が物心ついた時は奴隷商の商人に育てられてた。そこではまとな勉強なんかの教育は受けさせてもらえず、それから何年かしたら私は暗殺者ギルドのボスに買われていたわ 骸:そこでは暗殺者にさせる為に一般常識や読み書きは勉強させてもらえたけど、すべては潜入活動の為や暗殺対象に近づく為の知識を得る為の勉強だったわ クロウ:なるほど、だから最初は話してて違和感がなかったのか。 骸:学校というものがあるのは知ってたけどね。私がいた場所はそんな明日生きてるかも保証されない、さっき話した仲間が次の日帰ってこないような、そんな場所だったわ。 クロウ:なるほど・・でも話してくれたという事は少なからず今の暗殺者の仕事について悩んでるんじゃないか? 骸:・・そうね。私の仲が良かった友達が帰って来なかった時は辛かった・・いつか私もそうなるんじゃないかって・・ クロウ:だからか。お前の攻撃には未熟さもあったが、何より気の迷いを感じたんだ。人を傷つけるのにためらいがあるような 骸:・・クロウには、なんでもお見通しなんだね。そう、私は人を・・殺したくなんかない・・ クロウ:・・なら辞めちまえ 骸:へ? クロウ:お前はまだ誰も人を殺してないんだろ? 骸:そ、そうだけど クロウ:ならまだ間に合うさ。今のお前なら、別の新たな生き方だってまだ出来るさ 骸:で、でも私は・・暗殺者以外、他の生き方なんか知らないし・・ クロウ:なら、俺が教えてやる 骸:えっ クロウ:俺が骸に、一人で生きていける知識を教えてやる。なーに時間はたっぷりあるんだ、任せろ 骸:っ!あ、ありがとう・・でも・・私、こんな時、どうしたらいいか・・わからなくって・・ごめん・・ クロウ:・・そんな時はとにかく、泣けばいいんだ。 骸:う・・うああ~! クロウ:よしよし、吐き出せ、全部、俺が受け止めてやる 骸:うう・・ありがと・・クロウ・・ :間 クロウ:ようく見とけ、これから見せるのが座学でも教えた火、水、風、土、の四大元素の魔法だ。 骸:う、うん クロウ:ハァーーー! 骸:す、すごい、一度に四つの魔法を操るなんて・・ クロウ:ふー。ここまでになるには相当練習が必要だが、最初は一つでも成功させれば十分だ。さ、やってみろ 骸:よ、よし。見ててね、ハァーー! クロウ:よし、いいぞ、そのまま身体の中で魔法の形を意識しながら手のひらから*練《ね》り出すんだ! 骸:ふー・・プチファイア~!・・あ、あれ? クロウ:はっはっは!見事なプチ、ファイアだな! 骸:わ、笑うことないじゃない! クロウ:いやいやすまんすまん、でもこの短期間で火を出す所まで来れるのは十分凄いことだぞ 骸:え、ほ、ほんと?私、すごい? クロウ:ああそうだ、俺は最初火を出せるようになるまで、お前よりもっと時間がかかったんだ。もしかしたら骸は俺よりすごい魔法の才能があるかもしれんな 骸:ほ、ほんと?クロウにそう言われたら・・嬉しいな(小声) クロウ:ん、どうした? 骸:な、なんでもないから!じ、じゃあ、練習続けてくるね! クロウ:はっはっは、すごいやる気だな。・・お前は、道を踏み外すんじゃないぞ・・ :間 クロウ:よし・・骸、かかってこい 骸:いくよ、クロウ。⋯はっ! クロウ:くっ、なかなか速いな 骸:はっ!せっ!でやっ! クロウ:チッ、ならこれでどうだ!ハッ! 骸:っ!き、消えた クロウ:(M)背後は取らせてもらうぞ骸。少し卑怯だが、まだ負けてやる訳にはいかないからな⋯ 骸:っ!見えた!「バインド!」 クロウ:な!ぐわっ! 骸:よし!ヒットした、クロウ、みーつけた! クロウ:ぐ、解けないだと!?なんて強力な拘束(こうそく)魔法だ! 骸:はい、チェックメイトだよクロウ クロウ:ふう、OKOK、降参だ。俺の負けだ、骸。 骸:やったー!クロウから初勝利取っちゃった~! クロウ:まさかほんとに俺を追い抜いてしまうぐらいの才能を秘めていたとはな・・こいつは驚いたな 骸:よーし、今の感じを忘れないようにもっかい戦ってよクロウ! クロウ:おいおい、まだやるのか?少し休憩しないか? 骸:え~、あ、今晩は私の料理の番でしょ?うーんと美味しくするから、ね?ね? クロウ:・・あーわかったわかった!後でたっぷり美味い飯を食わしてもらうからな! 骸:ふふ、そうこなくっちゃ! クロウ:・・頃合いかもしれんな(小声) :間 骸:クロウ、話って何? クロウ:まあ座れ 骸:う、うん クロウ:これを、お前に渡しておく 骸:え?・・これって・・手紙? クロウ:そうだ。それには俺の書いた手紙が入っている。それを持って西の大陸に行け。そこの一番大きな国に行きそこの国王に渡すんだ 骸:え?え?西の大陸?国王? クロウ:いきなりの話で混乱してると思うが聞いてくれ 骸:う、うん クロウ:実は、俺は西にある大陸の国の・・まあ関係者だ。今はわけあって国を離れて冒険者をやっているが、その西の国王には多少顔がきくんだ。 骸:へ~、クロウって王様と関係があったんだ、凄いね! クロウ:ま、まあな。それはさておいてその手紙を西の国王に見せればお前はきっと新たな生き方が出来るはずだ 骸:この手紙で?どういう事? クロウ:はっきり言う。お前には俺を遥かにしのぐ魔法の才能がある。だからそれをさらに伸ばすべきだ 骸:え、私に・・才能?そ、そんなこと急に言われても、私わかんない・・ クロウ:大丈夫だ。この東の大陸一の冒険者である俺が言ってるんだから間違いない。お前は俺が見てきたどの魔法使いより高い素質がある。 骸:クロウ・・。私はそんな事より、クロウとずっと・・ クロウ:ん?なんだ今の音は・・島の東側からだ!骸、俺が見てくるから待ってろ! 骸:あ、ちょっと、クロウ待って! :間 クロウ:はぁはぁ、やっぱり暗殺者ギルドの連中だったか。大方骸が失敗したのを察知して俺もろとも始末しに来たか・・ クロウ:大型船がひい、ふい、みい、チッ、俺一人に何千人かき集めてきてるんだよ。まあそれだけの実力と思われて光栄だがよ 骸:はぁはぁ、クロウ、私も一緒に戦うよ・・ クロウ:骸!馬鹿野郎が!なんで待ってなかったんだ!? 骸:何か嫌な予感がしたから付いてきて良かった、クロウ、一人で戦う気じゃないよね? クロウ:・・ああ、その通りだ 骸:どうしてなの!?私も戦えるって証明したよね? クロウ:お前に教えたのは人間を殺す為の魔法じゃない!新たな生き方をする為のものだ! 骸:う・・でも、このままじゃクロウが死んじゃうよ! クロウ:・・心配するな骸、俺の強さはお前が一番知ってるだろう?俺は「サウザント・キリング」のクロウだぞ?こんなやつらに負けるかよ 骸:っ!クロウが強いのは分かってる、分かってるけど⋯やっぱりほっとけないよ! クロウ:ふっ、⋯お前はそういうやつだよな。許せ⋯「時間を*司《つかさど》る神クロノスよ、その力、我に与えよ⋯」 骸:え?・・この魔法は・・ちょっと待ってクロウ、こんな魔法、私、知らない! クロウ:そりゃ教えてなかったからな。魔力すべてと引き換えにする危険な「禁術」魔法だからな・・ 骸:ま、まさか・・いや、いやよ!クロウ、それだけは使っちゃ駄目! クロウ:骸、お前なら大丈夫だ。自分を信じろ!ハァァァァ!!*時戻《ときもど》し、「タイム・バニシュ!」 骸:クロウーーーー!・・ クロウ:行ったな。・・元気でな、骸、お前は最高の弟子だったよ・・ :間 骸:(M)私は気がついたら「あの」時代より前の時代、過去の世界に飛ばされていた。 骸:(M)それは私がまだ暗殺者ギルドに入る前の時代だった 骸:(M)クロウが私をこの時代に飛ばしたのは、私にもう一度、新たな生き方を自分で決めろと言っているように感じた 骸:(M)私は選ばないといけない、あの時、あの時代で私に生き方を教えてくれたあの人に報いる為にも :間 クロウ:はぁはぁ、もう・・目がかすんできやがったか・・ クロウ:こいつらいったい何人いるんだよ?さすがに「サウザント・キリング」の俺でも骨が折れるぞ クロウ:でも⋯最後に、俺のすべてをあいつに伝えれたからな、後悔はない。 クロウ:はぁはぁ、だが、最後にあいつの成長した姿を見たかったな・・ クロウ:さあ!かかって来やがれ、サウザント・キリングが伊達じゃないってのを見せてやるぜ!さあ、全員踊らしてやるぜ! 骸:それ、楽しそうじゃない?私も混ぜてもらってもいいかしら? クロウ:なっ!?⋯ばかやろ、あれほど付いて来るなって言ったのによ⋯ 骸:そうだっけ?そんな昔の事忘れちゃった。でも、安心してちょうだい。今からあなたに加勢するのは、「西の大陸一の冒険者」、なんだからね! :【完】

クロウ:はー。安い船代だったから怪しいとは思ったが、案の定ボロ船だったな。さらに天候も最悪ときた。 骸:あのーもしかして、あなたクロウさんですか? クロウ:お?なんだお前さんは 骸:あ、やっぱり冒険者で有名なあのクロウさんだ!私前から貴方のファンだったんです~ クロウ:お、おう。そうか、可愛い女の子にそんな風に言われるとなんだか照れるな。そんなに俺は有名なのか? 骸:もう何言ってるんですかー。冒険者問わずこの大陸で貴方の事を知らない人はいませんよ、「サウザント・キリング」の二つ名は私のような小娘でも知ってます クロウ:そんな二つ名が付いてたのか・・今知ったぞ。 骸:ぜひぜひサインして下さい!えと・・この羊皮紙にお願いします! クロウ:ちょっと待て。 骸:痛っ!あ、あの、なんで「私の手」を掴まれてるんでしょうか? クロウ:お前の懐に入れた「もう片方の手」が気になったんでな。 骸:っ!!な、なんで・・ クロウ:殺気がダダ漏れだぞ。素人かお前?それとも「未経験」なだけか? 骸:くっ、バレちゃしょうがないね!そうさ、私はまだこの道は日が浅いけど、れっきとした暗殺者さ。あんたの命、頂かせてもらうよ! クロウ:はっ、こんな若いやつが暗殺者とはな。世も末だな 骸:知ったふうに言ってくれるけど、あんたに何がわかるんだい クロウ:あー分からんね。人の命を狙うクズの考えは 骸:ふん、あんたには分からないだろうね。何者にも縛られず、好きな事が出来る自由な冒険者なんかやってる奴にはね! クロウ:はっ、お前も俺の何を知ってるというんだ? 骸:そんなの知りたくもないよ! クロウ:そうかい。まあ、殺るってんなら相手してやるよ。だが子供だからって負けてやるわけにはいかんからな 骸:ナメないで!うらっ! クロウ:ほー、なかなか筋はいいな 骸:く、うら!、な、なんで、当たらない! クロウ:残念だがまだまだ荒削りだな、ほら、脇がガラ空き、だ! 骸:ぐふっ! クロウ:どうした、まだやるのか? 骸:ち、チクショー・・私は、負ける訳にはいかないんだ・・ クロウ:はー、めんどくさい事になったな 骸:次こそ、うらぁ~! クロウ:大ぶりすぎるぞ、ほっ 骸:くっ!・・うわっ! クロウ:あ、馬鹿!お前そっちは! 骸:う、うわぁ~~! クロウ:チッ、こんな荒れた海に落ちやがって!待ってろ! :間 骸:う・・うん?ここは・・どこだ? クロウ:お、やっと起きたか眠り姫さん。 骸:っ!ク、クロウ?なんであんたがいるんだ!? クロウ:おいおい、命の恩人になんて言い草だよ。誰が助けてやったと思ってるんだ? 骸:助けた?・・あ、あの時、海に落ちたのか?・・ クロウ:やっと思い出したようだな。大変だったんだぞ?落ちた場所からは流されまくって、船には戻れずだったし。なんとか奇跡的にこの無人島に流れ着いたってところだ。 骸:・・私は、失敗したのか。 クロウ:そういう事だな。まあ命があっただけましだろ 骸:⋯殺せ。 クロウ:は?なんでだよ? 骸:どうせ帰っても失敗した事が暗殺者ギルドのやつにバレて始末されるんだ・・ クロウ:んで、俺に一思いに殺ってくれと? 骸:そうだよ!さっきのであんたには逆立ちしても勝てない実力の差があるのはわかったし、そうするしかないだろ⋯。 クロウ:そうか・・ 骸:だから、 クロウ:だが断る! 骸:なっ! クロウ:甘えるんじゃない、自分の人生を他人に任せるんじゃないよ。俺はそんな協力などしないからな 骸:・・じゃあ、私はいったいどうしたらいいだよ・・ クロウ:簡単だ。生きたらいいだろ? 骸:は? クロウ:お前がどんな理由で暗殺者になったかなんて知らないし聞かないが、お前はまだ、生きてるんだろ? 骸:う・・ クロウ:それにここにはお前と俺しか居ない。何に恐れる必要があるんだ? 骸:それは・・あっ!い、今のは違うよ! クロウ:どうやら、誰かの腹の虫も賛成してるみたいだな。 骸:こ、これはちがっ、 クロウ:ほら、お前が寝てる間に島を探索して取ってきてやった果物だ。もちろん食べれるやつだから心配するな。 骸:い、いやそんな心配をしてるんじゃなくて⋯ クロウ:腹が減ってはまともな考えも浮かんでこないからな。ほら、とりあえず食え食え 骸:わ、わかったから頭を撫で回さないで!まったく・・。・・あむ。 クロウ:どうだ? 骸:・・うまい クロウ:だろ?もっとあるから気が済むまで食べろ 骸:う、うん :間 骸:ふー。美味しかった クロウ:ふ、それは何よりだ。どうだ、ちょっとは落ち着いたか? 骸:・・とりあえず、礼は言っとくわ。ありがとう クロウ:気にするな。なんかお前を見てたら昔の俺を見てるみたいで、ほっとけなかっただけだ。 骸:え? クロウ:お前、名前は? 骸:あ・・む、骸だよ クロウ:骸か。まあ、ひとまずよろしくな 骸:あ、ああ。それよりさっきのってどういう意味・・ クロウ:さ、もう遅い時間になってきたから寝るか。お互い流されて体力を消耗してるしな。じゃあお先にー。 骸:あ、ちょっとまだ話の途中・・ クロウ:ぐーー、ぐーー 骸:寝るのはや! 骸:・・すごい無防備だけど、あたしが寝首かいてくるとか考えないの? クロウ:ぐお~、むにゃむにゃ・・ 骸:・・フフ、不思議なやつ :間 骸:あ、あつい・・ クロウ:た、たしかに・・この辺の気候は熱帯みたいだな 骸:でもほんとにこの島のどこかにあるの? クロウ:ああ、必ずあるはずだ。 骸:すごい自信だけど、根拠(こんきょ)はあるの? クロウ:ない。ただのカンだ 骸:カン!?ただのカンで私はこの森を何時間も歩かされてるわけ~!? クロウ:ははは、そうなるな。だが、 骸:え? クロウ:俺のカンは外れた事はないんだ 骸:はいはい、そうですか。あー足が棒になるよー クロウ:ん?シッ!静かに 骸:え?え?な、なんなの? クロウ:この音は・・間違いない。こっちだ! 骸:ちょ、ちょっとクロウ、置いてくな~! クロウ:おー!あったぞ~! 骸:え?・・あ、水だ クロウ:はっはっは、だから言っただろ? 骸:はは・・すごいけど、それ野生のカンじゃん :間 クロウ:・・よっと、ほら、スープができたぞ 骸:ん・・ありがと クロウ:うーん、我ながらいい出来栄えだ。 骸:さっきのやつって何? クロウ:ん?あーそうか、お前は火の魔法を見るのは初めてだったか。あれは初歩の火の魔法「プチファイア」だ 骸:へー、あれが魔法なんだ。 クロウ:これは生活魔法だから学校行けば誰でも習えるぞ。 骸:私は、学校行った事ないんだ・・ クロウ:そうか・・ 骸:わ、私ね⋯その⋯ クロウ:言いずらい事だったら、無理に言わなくてもいいんだぞ? 骸:・・ううん。クロウには、聞いて欲しい・・かな、私の事 クロウ:・・わかった、ならちゃんと聞くから、話してくれるか? 骸:うん。 :間 骸:私ね、両親の顔知らないんだ。 クロウ:・・ 骸:私が物心ついた時は奴隷商の商人に育てられてた。そこではまとな勉強なんかの教育は受けさせてもらえず、それから何年かしたら私は暗殺者ギルドのボスに買われていたわ 骸:そこでは暗殺者にさせる為に一般常識や読み書きは勉強させてもらえたけど、すべては潜入活動の為や暗殺対象に近づく為の知識を得る為の勉強だったわ クロウ:なるほど、だから最初は話してて違和感がなかったのか。 骸:学校というものがあるのは知ってたけどね。私がいた場所はそんな明日生きてるかも保証されない、さっき話した仲間が次の日帰ってこないような、そんな場所だったわ。 クロウ:なるほど・・でも話してくれたという事は少なからず今の暗殺者の仕事について悩んでるんじゃないか? 骸:・・そうね。私の仲が良かった友達が帰って来なかった時は辛かった・・いつか私もそうなるんじゃないかって・・ クロウ:だからか。お前の攻撃には未熟さもあったが、何より気の迷いを感じたんだ。人を傷つけるのにためらいがあるような 骸:・・クロウには、なんでもお見通しなんだね。そう、私は人を・・殺したくなんかない・・ クロウ:・・なら辞めちまえ 骸:へ? クロウ:お前はまだ誰も人を殺してないんだろ? 骸:そ、そうだけど クロウ:ならまだ間に合うさ。今のお前なら、別の新たな生き方だってまだ出来るさ 骸:で、でも私は・・暗殺者以外、他の生き方なんか知らないし・・ クロウ:なら、俺が教えてやる 骸:えっ クロウ:俺が骸に、一人で生きていける知識を教えてやる。なーに時間はたっぷりあるんだ、任せろ 骸:っ!あ、ありがとう・・でも・・私、こんな時、どうしたらいいか・・わからなくって・・ごめん・・ クロウ:・・そんな時はとにかく、泣けばいいんだ。 骸:う・・うああ~! クロウ:よしよし、吐き出せ、全部、俺が受け止めてやる 骸:うう・・ありがと・・クロウ・・ :間 クロウ:ようく見とけ、これから見せるのが座学でも教えた火、水、風、土、の四大元素の魔法だ。 骸:う、うん クロウ:ハァーーー! 骸:す、すごい、一度に四つの魔法を操るなんて・・ クロウ:ふー。ここまでになるには相当練習が必要だが、最初は一つでも成功させれば十分だ。さ、やってみろ 骸:よ、よし。見ててね、ハァーー! クロウ:よし、いいぞ、そのまま身体の中で魔法の形を意識しながら手のひらから*練《ね》り出すんだ! 骸:ふー・・プチファイア~!・・あ、あれ? クロウ:はっはっは!見事なプチ、ファイアだな! 骸:わ、笑うことないじゃない! クロウ:いやいやすまんすまん、でもこの短期間で火を出す所まで来れるのは十分凄いことだぞ 骸:え、ほ、ほんと?私、すごい? クロウ:ああそうだ、俺は最初火を出せるようになるまで、お前よりもっと時間がかかったんだ。もしかしたら骸は俺よりすごい魔法の才能があるかもしれんな 骸:ほ、ほんと?クロウにそう言われたら・・嬉しいな(小声) クロウ:ん、どうした? 骸:な、なんでもないから!じ、じゃあ、練習続けてくるね! クロウ:はっはっは、すごいやる気だな。・・お前は、道を踏み外すんじゃないぞ・・ :間 クロウ:よし・・骸、かかってこい 骸:いくよ、クロウ。⋯はっ! クロウ:くっ、なかなか速いな 骸:はっ!せっ!でやっ! クロウ:チッ、ならこれでどうだ!ハッ! 骸:っ!き、消えた クロウ:(M)背後は取らせてもらうぞ骸。少し卑怯だが、まだ負けてやる訳にはいかないからな⋯ 骸:っ!見えた!「バインド!」 クロウ:な!ぐわっ! 骸:よし!ヒットした、クロウ、みーつけた! クロウ:ぐ、解けないだと!?なんて強力な拘束(こうそく)魔法だ! 骸:はい、チェックメイトだよクロウ クロウ:ふう、OKOK、降参だ。俺の負けだ、骸。 骸:やったー!クロウから初勝利取っちゃった~! クロウ:まさかほんとに俺を追い抜いてしまうぐらいの才能を秘めていたとはな・・こいつは驚いたな 骸:よーし、今の感じを忘れないようにもっかい戦ってよクロウ! クロウ:おいおい、まだやるのか?少し休憩しないか? 骸:え~、あ、今晩は私の料理の番でしょ?うーんと美味しくするから、ね?ね? クロウ:・・あーわかったわかった!後でたっぷり美味い飯を食わしてもらうからな! 骸:ふふ、そうこなくっちゃ! クロウ:・・頃合いかもしれんな(小声) :間 骸:クロウ、話って何? クロウ:まあ座れ 骸:う、うん クロウ:これを、お前に渡しておく 骸:え?・・これって・・手紙? クロウ:そうだ。それには俺の書いた手紙が入っている。それを持って西の大陸に行け。そこの一番大きな国に行きそこの国王に渡すんだ 骸:え?え?西の大陸?国王? クロウ:いきなりの話で混乱してると思うが聞いてくれ 骸:う、うん クロウ:実は、俺は西にある大陸の国の・・まあ関係者だ。今はわけあって国を離れて冒険者をやっているが、その西の国王には多少顔がきくんだ。 骸:へ~、クロウって王様と関係があったんだ、凄いね! クロウ:ま、まあな。それはさておいてその手紙を西の国王に見せればお前はきっと新たな生き方が出来るはずだ 骸:この手紙で?どういう事? クロウ:はっきり言う。お前には俺を遥かにしのぐ魔法の才能がある。だからそれをさらに伸ばすべきだ 骸:え、私に・・才能?そ、そんなこと急に言われても、私わかんない・・ クロウ:大丈夫だ。この東の大陸一の冒険者である俺が言ってるんだから間違いない。お前は俺が見てきたどの魔法使いより高い素質がある。 骸:クロウ・・。私はそんな事より、クロウとずっと・・ クロウ:ん?なんだ今の音は・・島の東側からだ!骸、俺が見てくるから待ってろ! 骸:あ、ちょっと、クロウ待って! :間 クロウ:はぁはぁ、やっぱり暗殺者ギルドの連中だったか。大方骸が失敗したのを察知して俺もろとも始末しに来たか・・ クロウ:大型船がひい、ふい、みい、チッ、俺一人に何千人かき集めてきてるんだよ。まあそれだけの実力と思われて光栄だがよ 骸:はぁはぁ、クロウ、私も一緒に戦うよ・・ クロウ:骸!馬鹿野郎が!なんで待ってなかったんだ!? 骸:何か嫌な予感がしたから付いてきて良かった、クロウ、一人で戦う気じゃないよね? クロウ:・・ああ、その通りだ 骸:どうしてなの!?私も戦えるって証明したよね? クロウ:お前に教えたのは人間を殺す為の魔法じゃない!新たな生き方をする為のものだ! 骸:う・・でも、このままじゃクロウが死んじゃうよ! クロウ:・・心配するな骸、俺の強さはお前が一番知ってるだろう?俺は「サウザント・キリング」のクロウだぞ?こんなやつらに負けるかよ 骸:っ!クロウが強いのは分かってる、分かってるけど⋯やっぱりほっとけないよ! クロウ:ふっ、⋯お前はそういうやつだよな。許せ⋯「時間を*司《つかさど》る神クロノスよ、その力、我に与えよ⋯」 骸:え?・・この魔法は・・ちょっと待ってクロウ、こんな魔法、私、知らない! クロウ:そりゃ教えてなかったからな。魔力すべてと引き換えにする危険な「禁術」魔法だからな・・ 骸:ま、まさか・・いや、いやよ!クロウ、それだけは使っちゃ駄目! クロウ:骸、お前なら大丈夫だ。自分を信じろ!ハァァァァ!!*時戻《ときもど》し、「タイム・バニシュ!」 骸:クロウーーーー!・・ クロウ:行ったな。・・元気でな、骸、お前は最高の弟子だったよ・・ :間 骸:(M)私は気がついたら「あの」時代より前の時代、過去の世界に飛ばされていた。 骸:(M)それは私がまだ暗殺者ギルドに入る前の時代だった 骸:(M)クロウが私をこの時代に飛ばしたのは、私にもう一度、新たな生き方を自分で決めろと言っているように感じた 骸:(M)私は選ばないといけない、あの時、あの時代で私に生き方を教えてくれたあの人に報いる為にも :間 クロウ:はぁはぁ、もう・・目がかすんできやがったか・・ クロウ:こいつらいったい何人いるんだよ?さすがに「サウザント・キリング」の俺でも骨が折れるぞ クロウ:でも⋯最後に、俺のすべてをあいつに伝えれたからな、後悔はない。 クロウ:はぁはぁ、だが、最後にあいつの成長した姿を見たかったな・・ クロウ:さあ!かかって来やがれ、サウザント・キリングが伊達じゃないってのを見せてやるぜ!さあ、全員踊らしてやるぜ! 骸:それ、楽しそうじゃない?私も混ぜてもらってもいいかしら? クロウ:なっ!?⋯ばかやろ、あれほど付いて来るなって言ったのによ⋯ 骸:そうだっけ?そんな昔の事忘れちゃった。でも、安心してちょうだい。今からあなたに加勢するのは、「西の大陸一の冒険者」、なんだからね! :【完】