台本概要
437 views
タイトル | かくれんぼ |
---|---|
作者名 | くま@甘党 |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 4人用台本(男2、女2) ※兼役あり |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
※A・Cは演者の名前をそのまま役名として使ってください。
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
優 |
男 ![]() |
58 | (ゆう) |
加奈 |
女 ![]() |
29 | (かな) Aと兼ね役 |
和男 |
男 ![]() |
19 | (かずお) Bと兼ね役・友達と兼ね役 |
理恵 |
女 ![]() |
24 | (りえ) Cと兼ね役 |
友達 |
男 ![]() |
4 | |
A |
女 ![]() |
12 | |
B |
男 ![]() |
9 | |
C |
女 ![]() |
10 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
かくれんぼ
優(ゆう)
加奈(かな)
和男(かずお)
理恵(りえ)
0:回想
優:もーいーかーい!
加奈・和男・里奈:もーいーよー!
0:現代
優M:(語り口調)みんなも幼い頃、一度は遊んだ事があると思う。
優M:
優M:鬼を決めて、鬼は目をつぶって10秒数えて、その間に隠れたみんなを鬼が探す遊び。
優M:
優M:名称は「かくれんぼ」。
優M:
優M:だけど…。
優M:
優M:僕が7歳の時に体験した「かくれんぼ」は、
優M:
優M:みんなが知っているソレとは、少し違ったんだ…。
優M:
優M:今日はその話をしようと思う。
0:回想 公園
加奈:今日はかくれんぼしよー!
和男:えー、今日「も」じゃん!
理恵:いいじゃん、かくれんぼ!楽しいし!
優:はぁ…また鬼になったら嫌だなぁ…。
和男:優、じゃんけん弱いからw
理恵:ふふふw
加奈:じゃーいくよー!じゃーんけーん…。
―:
和男:よーし隠れろー!
加奈:やっぱり優君が鬼だーw
理恵:あははw いつもチョキしか出さないもんねーw
優:……くっそー。なんで僕はチョキばっかり出しちゃうんだ…。
0:現代
優M:僕はこの頃、じゃんけんが弱かった。
優M:
優M:というより、みんなが言うには僕はチョキしか出さなかったみたいだ。
優M:
優M:今でもじゃんけんをすると、意識してないとすぐにチョキを出してしまう…。
優M:
優M:この日もみんなはグーを出し、決まっていたかのように僕が鬼になった。
優M:
優M:そして10秒数えて、いつもと同じようにみんなに聞いたんだ。
0:回想
優:もーいーかーい?
加奈・理恵:もーいーよー!
優:……あれ?今カズくんの声がしなかったような…。
優:
優:…まぁいいや。探し始めよう。
―:
優:加奈ちゃんみーっけ!
加奈:えー、なんでわかったのー?うまく隠れてたのにー!
優:鬼になり過ぎて、みんなが隠れていそうな場所がわかるようになってきたんだw
加奈:むーーー。
―:
優:理恵ちゃんみーっけ!
理恵:うわっ!あーあ、見つかっちゃった…。
優:あとはカズ君だけか…。どこだろう…?
理恵:え、カズ君まだ見つかってないの?
理恵:珍しい!いつも最初に見つかるのにね!
優:そうなんだ。いつも単純な場所に隠れているのに…今日はどこにも居なくて…。
―:
加奈:ねーまだー?
理恵:つまんないよー。
優:んー…本当に見つからないや…。
加奈:カズ君、隠れるの上手になったのかな?
理恵:えー?でもこの公園で隠れられる場所なんてそんなにないよー?
加奈:それもそうだけど…。
優:んー………(公園内を見渡して)…あっ!
加奈:あ、カズ君!
―:和男が無言で歩いてくる
理恵:優君が見つけられないから自分から出てきたのー?w
和男:……。
優:…カズ君?
和男:……。
加奈:どうしたの…?
理恵:優君がちゃんと探さなかったから怒ってるんじゃない?w
優:え…ごめん…カズ君。でもどこを探しても見つからなくて…。
理恵:いーじゃん!ほら、次やろうよ!
加奈:またじゃんけんする?
優:えー、1番最初に見つかった人が鬼でいいじゃん…。
理恵:だーめ!いつも毎回じゃんけんで決めてるんだから!
優:うーん…。
理恵:はい、じゃーんけーん…。
―:
加奈:あははw またまた優君が鬼ー!w
理恵:いえーい!かっくれろー!w
優:…もう、不公平だよこんなの…。……あれ?カズ君…?
和男:……。
優:…か、隠れないの?僕、数えるよ?
和男:……。
0:現代
優M:この時、既にカズ君の様子はおかしかったんだ。
優M:
優M:だけど僕は、あまり深く考えずに、そのままかくれんぼを続けてしまった…。
優M:
優M:目をつぶって10秒数えた。
優M:
優M:そしていつも通り…。
―:
優:もーいーかーい?
加奈:もーいーよー!
優:………加奈ちゃん…だけ?
優:
優:もう一回…聞いてみようかな。
優:
優:もーいーかーい?
加奈:もーいーよー!
優:……やっぱり加奈ちゃんの声だけだ。
0:現代
優M:2人の声が聞こえないまま目を開けるのは反則になるかなと僕は悩んだ。
優M:だけど、数え始める前まで目の前に居たカズ君の事を思い出して
優M:恐る恐る目を開けたんだ…。
0:回想
優:…ん……あれ、カズ君が居ない。隠れたのかな…?
0:現代
優M:目を開けると、そこにカズ君は居なかった。
優M:
優M:僕はとりあえずみんなを探し始めた。
優M:
優M:でも見つかったのは声が聞こえた加奈ちゃんだけだった。
0:回想
加奈:ねーえー、カズ君と理恵ちゃんはー?
優:はぁ…はぁ…、こんなに探してるのに…なんで…見つからないんだ?
加奈:……あ、2人共来たよ!
優:え?
―:和男と理恵が無言で歩いてくる
和男:……。
理恵:……。
優:ど…どこに隠れてたの?2人とも全然見つけられなかったよ…。
和男:……。
理恵:……。
0:現代
優M:明らかに様子がおかしい2人を見て、僕は怖くなった。
優M:
優M:いつもだったら、「遅い!」とか「早く見つけてよー!」とか
優M:
優M:鬼である僕をいじってくるはずだ…。
優M:
優M:僕は何も話さなくなった2人が、とても怖かったんだ。
優M:
優M:そしていよいよ…。
0:回想
加奈:じゃあ時間的に次が最後だね!
優:…え?まだやるの?
加奈:もっちろん!じゃあ鬼は優君ね!
優:な、なんで!?
加奈:だってw じゃんけんしても毎回優君が負けるんだもんw
優:そんな……、僕、もうチョキ出さないからじゃんけんしようよ!
加奈:それでもきっと優君が負けるだろうから鬼は優君ね!決まり!
優:ちょっと加奈ちゃん!
加奈:さぁー隠れよー!w
優:あ……行っちゃった…。………えっと、…じゃあ2人も…隠れて…?
和男:……。
理恵:……。
優:………僕、数えるよ…?
―:10秒数えて
優:……もーいーかーい?
優:
優:………誰も…答えない……。
優:
優:…もーいーかーーい!?
優:
優:…………。
優:
優:目…開けるよ…?
優:
優:…………え…?
0:現代
優M:予想はしていたんだ…。
優M:
優M:どんどん返事をする人が少なくなっていったから
優M:
優M:きっと最後は誰も返事をしないんじゃないかって…。
優M:
優M:だけど、目を開けると、それ以上の恐怖が待っていたんだ。
優M:
優M:さっきまで夕日でオレンジ色に照らされていた公園が、
優M:
優M:たった10秒、数を数えただけで…、
優M:
優M:急に夜になったように、真っ暗になっていた。
優M:
優M:僕は気付いたら泣いていて、誰かを探しに行く余裕なんて無かった。
0:回想
優:……ねぇ…誰かいる…?
優:
優:……ねえってば!!!
優:
優:……………。
優:
優:僕、もう帰るからね……?
優:
優:か…帰るよ……?
優:
優:……ばいばい!
0:現代
優M:怖くて、怖くて、僕はそのまま泣きながら家に帰った。
優M:
優M:お母さんに出迎えられて、今日あった事を話そうとした。
優M:
優M:だけど、お母さんは電話中で、「おかえり」と口パクで言われ
優M:
優M:僕が泣いている事にも気付かず、またリビングに戻っていった。
優M:
優M:家に入りリビングを覗くと、窓から外の景色が見えた。
優M:
優M:さっきと同じ、夕焼けに染まったオレンジ色の空が…。
優M:
優M:僕は何が何だかわからなくて、とりあえず自分の部屋に戻った。
優M:
優M:夜になり、ご飯を食べる気にもなれず、お風呂に入る事もなく布団に入った。
優M:
優M:勝手に帰ってきてしまったが*故《ゆえ》に、みんながちゃんと家に帰ったのか考えていた。
優M:
優M:だけど、よくある「うちの子が帰ってこないの」という電話が掛かってくる事もなく、
優M:
優M:今日1日、何もなかったように時間が過ぎていった。
優M:
優M:だけど僕は、どうしても公園での出来事が気になって眠れなかった。
優M:
優M:天井とにらめっこをしていると、ふと、みんながまだ隠れているんじゃないかと思ったんだ。
優M:
優M:そして僕は…無意識に聞いていた。
0:回想
優:(呟くように)……もーいーかーい…。
和男:(小声で)もーいーよー!
―:勢いよく起き上がる
優:…え!?
優:
優:……い、今……確かにカズ君の声が…。
優:
優:……ゴクッ…。
優:
優:…も……もーいーかーい?
―:(バラバラに各自3回程繰り返して言ってください)
和男:もーいーよー!
理恵:もーいーよー!
加奈:もーいーよー!
―:(みんなの声に被せて)
優:え……なんで…?どこ…から?
優:
優:な、なにこれ……?
優:
優:みんな…どこ!?
0:現代
優M:この夜から、その言葉を言うと
優M:
優M:みんなの声が聞こえるんだ…。
優M:
優M:さらに不思議な事に、次の日学校に行っても3人は居なくて、
優M:
優M:先生に聞いても、家に帰ってお母さんに聞いても
優M:
優M:みんなが3人の事を「知らない」って言うんだ…。
優M:
優M:つい昨日まで一緒に遊んでいたのに…
優M:
優M:学校でも仲良く話していたのに…
優M:
優M:元々みんなが居なかったように…
優M:
優M:「存在」自体、無いものとされている…。
優M:
優M:もちろん僕は、あの公園に行って何度もみんなを探した。
優M:
優M:「もーいーかーい」と言うと、ハッキリと聞こえるみんなの声。
優M:
優M:声の聞こえる方を探し、何度も、何度も何度も、毎日のように探したけど…
優M:
優M:3人を見つける事はできなかった…。
優M:
優M:それからだんだんと公園に行く頻度は減り、ある日僕は、遂に探す事を諦めた。
優M:
優M:年数が経つにつれ、この事は徐々に記憶から遠ざかっていった。
優M:
優M:きっと恐怖のあまり、僕は記憶から消したかったんだと思う…。
優M:
優M:そして17歳になった僕は、この事をほとんど忘れていたんだ…。
0:教室
優:え?
友達:だから、もういいかい?って…、ノート。
優:ノ…ノート?
友達:貸していたノート、そろそろ返してくれないかな?来週の授業で使うからさ。
優:あ、あぁ…ごめん、ありがとう。
友達:うん。また授業休んだら貸してあげるから、いつでも言ってね!
優:…うん、助かる。ありがとう!
友達:はーい!
優:…もう、いいかい……。
優:
優:この言葉を言わなくなったのって…なんでだっけ?
優M:僕は過去の記憶を思い起こす事ができず、咄嗟に言ってしまった…。
優:……「もーいーかーい」。
―:(バラバラに各自3回程繰り返して言ってください)
和男:もーいーよー!
理恵:もーいーよー!
加奈:もーいーよー!
優:あ……あ……みんなの……声が……。
―:(だんだんと声の音量を上げて繰り返してください)
―:(優の「うるさい」に合わせてピタッと止めてください)
和男:もーいーよー!
理恵:もーいーよー!
加奈:もーいーよー!
―:(みんなの声に被せて)
優:や…やめ……頭が…割れる………うるさい!!
―:
優:…………そうだ……。
優:
優:ぼ…僕はまだ…みんなを見つけてなかったんだ…。……うぅっ!?
優M:頭の中で一瞬ノイズが走ったと思った途端、
優M:
優M:目の前に3人の子供が現れた。
優M:
優M:それは
優M:
優M:僕がずっと探していた3人だった…。
優:え…?
優:
優:か、カズ君…?それに、加奈ちゃんに理恵ちゃんも……。
和男:どうして…。
優:…え?
加奈:どうして私達を探してくれなかったの……。
優:さ…探したよ!だけど……。
理恵:優君のせいで………。お前が見つけてくれなかったせいで……。
優:な…何…?
和男:…お前のせいで…俺達は……俺達の存在が!!
加奈:無かったことになった!!
優:………え…?
理恵:お前が真剣に探していれば!!
和男:俺達を見つけてくれれば!!
加奈:私達は帰れたのに!!
優:ち…ちょっと待ってよ……なんなんだよこれ…!?
理恵:………優君。
優:……え?
加奈:今度は隠れる側をやらせてあげる。
優:な…なんで?
和男:俺達が鬼をやるよ。ずっと鬼を嫌がってただろ?
優:え……いや……それは…。
―:景色がパッと光り、一瞬目を閉じ開けると、
―:かくれんぼをしていた公園に立っていて、夜になっている
優:…………え?
優:
優:な…なんで…!
優:
優:ここ…は、あの公園…!?
和男:もーいーかーい?
優:…カズ君…? ………も、もーいーよー!
加奈:もーいーかーい?
優:…も、もーいーよー!
理恵:もーいーかーい?
優:もーいーよー!!
優:
優:………なんで、誰も来てくれないの…?
優:
優:……も、もーいーよーー!!
優:
優:…………グズ…。
優:
優:(泣きながら)……こ、怖い……。
優:
優:怖いよ……。
優:
優:誰か早く見つけてよーーー!!
0:
A:ねぇ、3丁目の建設中のビル、どうして最近工事が進まないか知ってる?
B:あーw なんか声が聞こえるんだってねw
C:声?
A:そう、「もーいーよー」ってw
C:え、それなら誰かがかくれんぼしてるんじゃないの?
B:それが違うんだって。誰も居ない深夜にも聞こえるんだって!
A:そうそうw
C:えぇ……。
A:なんかね、昔は公園だったらしくて、確か名前が…
B:「異世界公園」!
C:い、異世界公園!?
A:通称ねw 本当は第1公園とか第2公園って単純な名前だったはず。
C:それがなんで「異世界公園」に?
A:その公園でかくれんぼをすると、異世界に取り込まれて、
B:誰かが見つけてれくれないと、こっちの世界に戻ってこれないんだっけ。
C:え…異世界に取り込まれたら…見つけようが無くない?
A:そうw だからそれを知ってる人は絶対あの公園でかくれんぼはしないのw
B:でも何も知らない子供はよくやっちゃって…。
A:何人も子供がこの世界から居なくなったって!w
C:それ本当なの?w
B:それが原因で、公園を無くしてビルを建てたんだってよ?
A:でもその建設中、作業員まで居なくなる事件が起きたんだよね。
C:え?
B:それで建設中のまま放置されてるのか…。
A:そういう事w
C:えー…。
A:あれ?信じてない?
B:じゃあ…今日行ってみる?
C:え?本気?
A:あははw いいねw 行ってみようか!
0:数日後
B:あれ?AとCは? …は? …だ、誰の事って……。
かくれんぼ
優(ゆう)
加奈(かな)
和男(かずお)
理恵(りえ)
0:回想
優:もーいーかーい!
加奈・和男・里奈:もーいーよー!
0:現代
優M:(語り口調)みんなも幼い頃、一度は遊んだ事があると思う。
優M:
優M:鬼を決めて、鬼は目をつぶって10秒数えて、その間に隠れたみんなを鬼が探す遊び。
優M:
優M:名称は「かくれんぼ」。
優M:
優M:だけど…。
優M:
優M:僕が7歳の時に体験した「かくれんぼ」は、
優M:
優M:みんなが知っているソレとは、少し違ったんだ…。
優M:
優M:今日はその話をしようと思う。
0:回想 公園
加奈:今日はかくれんぼしよー!
和男:えー、今日「も」じゃん!
理恵:いいじゃん、かくれんぼ!楽しいし!
優:はぁ…また鬼になったら嫌だなぁ…。
和男:優、じゃんけん弱いからw
理恵:ふふふw
加奈:じゃーいくよー!じゃーんけーん…。
―:
和男:よーし隠れろー!
加奈:やっぱり優君が鬼だーw
理恵:あははw いつもチョキしか出さないもんねーw
優:……くっそー。なんで僕はチョキばっかり出しちゃうんだ…。
0:現代
優M:僕はこの頃、じゃんけんが弱かった。
優M:
優M:というより、みんなが言うには僕はチョキしか出さなかったみたいだ。
優M:
優M:今でもじゃんけんをすると、意識してないとすぐにチョキを出してしまう…。
優M:
優M:この日もみんなはグーを出し、決まっていたかのように僕が鬼になった。
優M:
優M:そして10秒数えて、いつもと同じようにみんなに聞いたんだ。
0:回想
優:もーいーかーい?
加奈・理恵:もーいーよー!
優:……あれ?今カズくんの声がしなかったような…。
優:
優:…まぁいいや。探し始めよう。
―:
優:加奈ちゃんみーっけ!
加奈:えー、なんでわかったのー?うまく隠れてたのにー!
優:鬼になり過ぎて、みんなが隠れていそうな場所がわかるようになってきたんだw
加奈:むーーー。
―:
優:理恵ちゃんみーっけ!
理恵:うわっ!あーあ、見つかっちゃった…。
優:あとはカズ君だけか…。どこだろう…?
理恵:え、カズ君まだ見つかってないの?
理恵:珍しい!いつも最初に見つかるのにね!
優:そうなんだ。いつも単純な場所に隠れているのに…今日はどこにも居なくて…。
―:
加奈:ねーまだー?
理恵:つまんないよー。
優:んー…本当に見つからないや…。
加奈:カズ君、隠れるの上手になったのかな?
理恵:えー?でもこの公園で隠れられる場所なんてそんなにないよー?
加奈:それもそうだけど…。
優:んー………(公園内を見渡して)…あっ!
加奈:あ、カズ君!
―:和男が無言で歩いてくる
理恵:優君が見つけられないから自分から出てきたのー?w
和男:……。
優:…カズ君?
和男:……。
加奈:どうしたの…?
理恵:優君がちゃんと探さなかったから怒ってるんじゃない?w
優:え…ごめん…カズ君。でもどこを探しても見つからなくて…。
理恵:いーじゃん!ほら、次やろうよ!
加奈:またじゃんけんする?
優:えー、1番最初に見つかった人が鬼でいいじゃん…。
理恵:だーめ!いつも毎回じゃんけんで決めてるんだから!
優:うーん…。
理恵:はい、じゃーんけーん…。
―:
加奈:あははw またまた優君が鬼ー!w
理恵:いえーい!かっくれろー!w
優:…もう、不公平だよこんなの…。……あれ?カズ君…?
和男:……。
優:…か、隠れないの?僕、数えるよ?
和男:……。
0:現代
優M:この時、既にカズ君の様子はおかしかったんだ。
優M:
優M:だけど僕は、あまり深く考えずに、そのままかくれんぼを続けてしまった…。
優M:
優M:目をつぶって10秒数えた。
優M:
優M:そしていつも通り…。
―:
優:もーいーかーい?
加奈:もーいーよー!
優:………加奈ちゃん…だけ?
優:
優:もう一回…聞いてみようかな。
優:
優:もーいーかーい?
加奈:もーいーよー!
優:……やっぱり加奈ちゃんの声だけだ。
0:現代
優M:2人の声が聞こえないまま目を開けるのは反則になるかなと僕は悩んだ。
優M:だけど、数え始める前まで目の前に居たカズ君の事を思い出して
優M:恐る恐る目を開けたんだ…。
0:回想
優:…ん……あれ、カズ君が居ない。隠れたのかな…?
0:現代
優M:目を開けると、そこにカズ君は居なかった。
優M:
優M:僕はとりあえずみんなを探し始めた。
優M:
優M:でも見つかったのは声が聞こえた加奈ちゃんだけだった。
0:回想
加奈:ねーえー、カズ君と理恵ちゃんはー?
優:はぁ…はぁ…、こんなに探してるのに…なんで…見つからないんだ?
加奈:……あ、2人共来たよ!
優:え?
―:和男と理恵が無言で歩いてくる
和男:……。
理恵:……。
優:ど…どこに隠れてたの?2人とも全然見つけられなかったよ…。
和男:……。
理恵:……。
0:現代
優M:明らかに様子がおかしい2人を見て、僕は怖くなった。
優M:
優M:いつもだったら、「遅い!」とか「早く見つけてよー!」とか
優M:
優M:鬼である僕をいじってくるはずだ…。
優M:
優M:僕は何も話さなくなった2人が、とても怖かったんだ。
優M:
優M:そしていよいよ…。
0:回想
加奈:じゃあ時間的に次が最後だね!
優:…え?まだやるの?
加奈:もっちろん!じゃあ鬼は優君ね!
優:な、なんで!?
加奈:だってw じゃんけんしても毎回優君が負けるんだもんw
優:そんな……、僕、もうチョキ出さないからじゃんけんしようよ!
加奈:それでもきっと優君が負けるだろうから鬼は優君ね!決まり!
優:ちょっと加奈ちゃん!
加奈:さぁー隠れよー!w
優:あ……行っちゃった…。………えっと、…じゃあ2人も…隠れて…?
和男:……。
理恵:……。
優:………僕、数えるよ…?
―:10秒数えて
優:……もーいーかーい?
優:
優:………誰も…答えない……。
優:
優:…もーいーかーーい!?
優:
優:…………。
優:
優:目…開けるよ…?
優:
優:…………え…?
0:現代
優M:予想はしていたんだ…。
優M:
優M:どんどん返事をする人が少なくなっていったから
優M:
優M:きっと最後は誰も返事をしないんじゃないかって…。
優M:
優M:だけど、目を開けると、それ以上の恐怖が待っていたんだ。
優M:
優M:さっきまで夕日でオレンジ色に照らされていた公園が、
優M:
優M:たった10秒、数を数えただけで…、
優M:
優M:急に夜になったように、真っ暗になっていた。
優M:
優M:僕は気付いたら泣いていて、誰かを探しに行く余裕なんて無かった。
0:回想
優:……ねぇ…誰かいる…?
優:
優:……ねえってば!!!
優:
優:……………。
優:
優:僕、もう帰るからね……?
優:
優:か…帰るよ……?
優:
優:……ばいばい!
0:現代
優M:怖くて、怖くて、僕はそのまま泣きながら家に帰った。
優M:
優M:お母さんに出迎えられて、今日あった事を話そうとした。
優M:
優M:だけど、お母さんは電話中で、「おかえり」と口パクで言われ
優M:
優M:僕が泣いている事にも気付かず、またリビングに戻っていった。
優M:
優M:家に入りリビングを覗くと、窓から外の景色が見えた。
優M:
優M:さっきと同じ、夕焼けに染まったオレンジ色の空が…。
優M:
優M:僕は何が何だかわからなくて、とりあえず自分の部屋に戻った。
優M:
優M:夜になり、ご飯を食べる気にもなれず、お風呂に入る事もなく布団に入った。
優M:
優M:勝手に帰ってきてしまったが*故《ゆえ》に、みんながちゃんと家に帰ったのか考えていた。
優M:
優M:だけど、よくある「うちの子が帰ってこないの」という電話が掛かってくる事もなく、
優M:
優M:今日1日、何もなかったように時間が過ぎていった。
優M:
優M:だけど僕は、どうしても公園での出来事が気になって眠れなかった。
優M:
優M:天井とにらめっこをしていると、ふと、みんながまだ隠れているんじゃないかと思ったんだ。
優M:
優M:そして僕は…無意識に聞いていた。
0:回想
優:(呟くように)……もーいーかーい…。
和男:(小声で)もーいーよー!
―:勢いよく起き上がる
優:…え!?
優:
優:……い、今……確かにカズ君の声が…。
優:
優:……ゴクッ…。
優:
優:…も……もーいーかーい?
―:(バラバラに各自3回程繰り返して言ってください)
和男:もーいーよー!
理恵:もーいーよー!
加奈:もーいーよー!
―:(みんなの声に被せて)
優:え……なんで…?どこ…から?
優:
優:な、なにこれ……?
優:
優:みんな…どこ!?
0:現代
優M:この夜から、その言葉を言うと
優M:
優M:みんなの声が聞こえるんだ…。
優M:
優M:さらに不思議な事に、次の日学校に行っても3人は居なくて、
優M:
優M:先生に聞いても、家に帰ってお母さんに聞いても
優M:
優M:みんなが3人の事を「知らない」って言うんだ…。
優M:
優M:つい昨日まで一緒に遊んでいたのに…
優M:
優M:学校でも仲良く話していたのに…
優M:
優M:元々みんなが居なかったように…
優M:
優M:「存在」自体、無いものとされている…。
優M:
優M:もちろん僕は、あの公園に行って何度もみんなを探した。
優M:
優M:「もーいーかーい」と言うと、ハッキリと聞こえるみんなの声。
優M:
優M:声の聞こえる方を探し、何度も、何度も何度も、毎日のように探したけど…
優M:
優M:3人を見つける事はできなかった…。
優M:
優M:それからだんだんと公園に行く頻度は減り、ある日僕は、遂に探す事を諦めた。
優M:
優M:年数が経つにつれ、この事は徐々に記憶から遠ざかっていった。
優M:
優M:きっと恐怖のあまり、僕は記憶から消したかったんだと思う…。
優M:
優M:そして17歳になった僕は、この事をほとんど忘れていたんだ…。
0:教室
優:え?
友達:だから、もういいかい?って…、ノート。
優:ノ…ノート?
友達:貸していたノート、そろそろ返してくれないかな?来週の授業で使うからさ。
優:あ、あぁ…ごめん、ありがとう。
友達:うん。また授業休んだら貸してあげるから、いつでも言ってね!
優:…うん、助かる。ありがとう!
友達:はーい!
優:…もう、いいかい……。
優:
優:この言葉を言わなくなったのって…なんでだっけ?
優M:僕は過去の記憶を思い起こす事ができず、咄嗟に言ってしまった…。
優:……「もーいーかーい」。
―:(バラバラに各自3回程繰り返して言ってください)
和男:もーいーよー!
理恵:もーいーよー!
加奈:もーいーよー!
優:あ……あ……みんなの……声が……。
―:(だんだんと声の音量を上げて繰り返してください)
―:(優の「うるさい」に合わせてピタッと止めてください)
和男:もーいーよー!
理恵:もーいーよー!
加奈:もーいーよー!
―:(みんなの声に被せて)
優:や…やめ……頭が…割れる………うるさい!!
―:
優:…………そうだ……。
優:
優:ぼ…僕はまだ…みんなを見つけてなかったんだ…。……うぅっ!?
優M:頭の中で一瞬ノイズが走ったと思った途端、
優M:
優M:目の前に3人の子供が現れた。
優M:
優M:それは
優M:
優M:僕がずっと探していた3人だった…。
優:え…?
優:
優:か、カズ君…?それに、加奈ちゃんに理恵ちゃんも……。
和男:どうして…。
優:…え?
加奈:どうして私達を探してくれなかったの……。
優:さ…探したよ!だけど……。
理恵:優君のせいで………。お前が見つけてくれなかったせいで……。
優:な…何…?
和男:…お前のせいで…俺達は……俺達の存在が!!
加奈:無かったことになった!!
優:………え…?
理恵:お前が真剣に探していれば!!
和男:俺達を見つけてくれれば!!
加奈:私達は帰れたのに!!
優:ち…ちょっと待ってよ……なんなんだよこれ…!?
理恵:………優君。
優:……え?
加奈:今度は隠れる側をやらせてあげる。
優:な…なんで?
和男:俺達が鬼をやるよ。ずっと鬼を嫌がってただろ?
優:え……いや……それは…。
―:景色がパッと光り、一瞬目を閉じ開けると、
―:かくれんぼをしていた公園に立っていて、夜になっている
優:…………え?
優:
優:な…なんで…!
優:
優:ここ…は、あの公園…!?
和男:もーいーかーい?
優:…カズ君…? ………も、もーいーよー!
加奈:もーいーかーい?
優:…も、もーいーよー!
理恵:もーいーかーい?
優:もーいーよー!!
優:
優:………なんで、誰も来てくれないの…?
優:
優:……も、もーいーよーー!!
優:
優:…………グズ…。
優:
優:(泣きながら)……こ、怖い……。
優:
優:怖いよ……。
優:
優:誰か早く見つけてよーーー!!
0:
A:ねぇ、3丁目の建設中のビル、どうして最近工事が進まないか知ってる?
B:あーw なんか声が聞こえるんだってねw
C:声?
A:そう、「もーいーよー」ってw
C:え、それなら誰かがかくれんぼしてるんじゃないの?
B:それが違うんだって。誰も居ない深夜にも聞こえるんだって!
A:そうそうw
C:えぇ……。
A:なんかね、昔は公園だったらしくて、確か名前が…
B:「異世界公園」!
C:い、異世界公園!?
A:通称ねw 本当は第1公園とか第2公園って単純な名前だったはず。
C:それがなんで「異世界公園」に?
A:その公園でかくれんぼをすると、異世界に取り込まれて、
B:誰かが見つけてれくれないと、こっちの世界に戻ってこれないんだっけ。
C:え…異世界に取り込まれたら…見つけようが無くない?
A:そうw だからそれを知ってる人は絶対あの公園でかくれんぼはしないのw
B:でも何も知らない子供はよくやっちゃって…。
A:何人も子供がこの世界から居なくなったって!w
C:それ本当なの?w
B:それが原因で、公園を無くしてビルを建てたんだってよ?
A:でもその建設中、作業員まで居なくなる事件が起きたんだよね。
C:え?
B:それで建設中のまま放置されてるのか…。
A:そういう事w
C:えー…。
A:あれ?信じてない?
B:じゃあ…今日行ってみる?
C:え?本気?
A:あははw いいねw 行ってみようか!
0:数日後
B:あれ?AとCは? …は? …だ、誰の事って……。