台本概要

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タイトル 殺人現場~恐怖の旅館編~
作者名 あまくケイ  (@amak0331)
ジャンル コメディ
演者人数 4人用台本(不問4)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 とある古びた、おぞましい旅館にて、泊まりに来ていた観光客が殺された
刑事さんからの依頼で来た探偵は、怪しい雰囲気を纏った支配人から話を聞く

4人不問
15~20分程度です
ストーリーの展開が崩れない程度のアドリブは可

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
探偵 不問 54 事件を解決しに来た探偵 ツッコミ 不問
刑事 不問 43 現場を担当する刑事 不問
支配人 不問 50 旅館の支配人 不問
料理長 不問 42 旅館でメニューを作っている料理長 不問
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:朝、おぞましい外観をした旅館 探偵:どうも 刑事:あぁ、探偵さん 探偵:聞いたよ。難航してるって? 刑事:はは……情けない限りです。さっそく現場、見られます? 探偵:そうだな、案内してくれ 0:現場へ到着 探偵:ここが犯行現場か 刑事:ええ。被害者の遺体や証拠品は、すでにこちらで回収しています 探偵:部屋の様子から見ると……あまり揉みあった形跡もない。おそらく何か鈍器のようなもので殴られて一発かな 刑事:流石、探偵さん。おっしゃる通りです 探偵:まだまだ序の口さ。手段が判っても、犯人を暴くのに繋げないと意味がないからな 刑事:そうですね…… 探偵:にしても、古い旅館だよな、ここ 支配人:ありがとうございます。それが、我が旅館のアピールポイントですので 0:部屋の入り口から声が聞こえた 探偵:あなたは? 刑事:この方は、支配人さんです 支配人:この度はお世話になります 探偵:どうも、はじめまして。……早速だけど、質問をいいかな? 支配人:はい、なんなりと 探偵:この旅館には、全員で何人いたんだ? 支配人:私と、泊まりに来ていたカップルの観光客、あとは食事を任せている料理長ですね 刑事:そのうち、殺害されたのは、女性の観光客です。女性は、後ろから頭を殴られ死亡。犯行時刻は夜21時から、24時の間と思われます 支配人:他のアルバイトやスタッフはいませんでした。定時にあがったので 探偵:料理長は帰らなかったのか? 支配人:ええ。泊まり込みで仕事をしてました。なにせ、仕事熱心なもので 探偵:なるほど。そしたら、観光客か……えっと 刑事:大丈夫です。こちらで先に、事情聴取をしています 探偵:仕事が早いね。なんて言ってた? 刑事:その件ですが……気が動転しておりまして、まだこれからです 探偵:ふうん。となると、まずは候補が1人か。一件、一緒に居た男性が、明らかに犯人のように見えるが…… 刑事:それで決めつけるのは良くない、でしたね 探偵:はは……。こりゃ一本とられたな 探偵:そしたら、支配人さんから聞くか、いや、料理長からにするか……あれ? その料理長はどこに? 支配人:あぁ。申し訳ない……。あの人、まだ寝てるのかな……? 料理長:呼んだか……? 0:眠そうな様子で、料理長が入ってくる 支配人:おお、起きましたか 料理長:何があったんだ? この状況 支配人:殺人ですよ 料理長:へぇ……寝ている間にそんなことが 探偵:昨日の夜から、泊まり込みで旅館に? 料理長:ああ 探偵:具体的に何をしていたんですか? 料理長:次のメニューをどうするか考えていたんだ 料理長:このまま帰ったら、いいアイデアも出てこないと思ってな 支配人:だからと言って、そこまで身を削らなくても…… 料理長:客が喜んでくれる料理を作りたいんだ。眠ってなんかいられない。それに、アイデアが浮かんでくるのは、いつだって現場なんだよ 刑事:ほんとうに、仕事熱心な方なんですね 刑事:私も現場主義なもので、お気持ち、分かります 料理長:へぇ。話が分かるな、あんた。気が合いそうだ 探偵:ふうん、眠ってなんかいられない、か 料理長:なんだよ? 探偵:いや。メニューの事以外で、眠れない事情があったんじゃないか、と思っただけだよ 料理長:あんた……俺を疑ってるのか? 探偵:別に。まだ犯人だとは思ってない。ただ、候補には入っている。 料理長:……気に入らない奴だな 支配人:まぁまぁ、落ち着いて 探偵:もちろん、支配人さんもだ 探偵:あなたは夜、何をしていたんだ? 支配人:私はスタッフの管理作業に終われていて、パソコンに向かってひたすら作業をしていました 探偵:仕事を終えた後は? 支配人:その後ですか……、実は、お客様を、私の部屋へお呼びしたんです 探偵:えっ? なんで? 支配人:せっかく来ていただいたので、怪談話をしたんですよ 探偵:怪談話?  料理長:この人、客が来た時はいつもこれなんだよ。自分の部屋に呼んで、怪談話を聞かせるんだ 支配人:それはそれは、怖がっていました……私としても、それが楽しくてですね 刑事:怪談話かぁ、苦手だなぁ 支配人:身が凍るお話も面白い物ですよ、ふふふ…… 料理長:一番怪しいのはあんただよな。どうみても 支配人:私は、怖がらせたいだけですよ 探偵:本当に?  支配人:はい。でも、まさか殺人が起こるとは、全く思っていませんでした…… 刑事:支配人さんの立場からすると、殺人が起こった館なんて言われ始めたら、人が来なくなるわけですし、嫌ですよね 支配人:困ったものです…… 探偵:そういえば、客は二人だけ? 支配人:はい……やはり……外観のせいか、予約数も少なく 支配人:まぁいかんせん、怖さをウリにした旅館ですので 刑事:でも、こういった風情が好きな人に、ウケはいいと思いますね 支配人:ありがとうございます 探偵:ふむ。犯人候補は、一緒に居た観光客、料理長、支配人…… 探偵:もちろん、観光客が犯人……と考えるのが定石だが、料理長は果たして仕事の為だけに泊まったのか……疑わしいのが一つ、あとは支配人も……犯行現場にいなかったアリバイはない 刑事:支配人さん、監視カメラなどは? 支配人:あぁ……ごめんなさい、建物が古く、経費が足りないもので……設置はしていないんですよ……。もちろん、部屋には鍵がついていますが、防犯対策と言えど、その程度ですね…… 刑事:マスターキーは? 支配人:ロビーにあります 刑事:それを使っているのは、支配人さんだけ? 料理長:いいや、俺もだ 刑事:えっ? 料理長さんも? 料理長:接客の対応を任される時があってな 支配人:どうしても手が離せない時のために、ですね。万が一、他の仕事も出来るように、最低限のことは教えています 料理長:まったく、こき使うのがうまいもんだぜ 刑事:ふうむ……マスターキーを使って部屋に入ることも、この二人にはできてしまう……犯行は可能、か。ますます分からないな…… 探偵:とりあえず、聞ける事を聞いていこう 支配人:はぁ……殺人があった旅館と噂が広まったら、どうやって経営していけばいいのか…… 料理長:これじゃ料理のひとつも、ふるえなくなるな 探偵:お二人とも、見聞きしたことでいいので、何かありませんか? 支配人:……そういえば。こちらに来られる前、二人とも、喧嘩をしていたのかな? 怒号が飛び交っていて 刑事:え? そうなんですか? 支配人:はい。部屋の前まで来られても、まだ言い合っているので、なだめてあげたんですよ 料理長:おいおい。そんな状況でよく怪談話なんかしたな 支配人:来ていただいた方には、満足して帰っていただきたいですから。それがこの旅館のブランド価値だと思っていますので 支配人:ただ……そのあと、部屋を出たら、また口論を再開したみたいで、よほどストレスが溜まっているのかもしれません 探偵:ふうん。……その話から推察するに、二人の関係は良くなかった、か 刑事:そのようですね…… 支配人:私が話を終えて、部屋を出ていかれた後も「お前は最悪な女だ! 別の男と寝やがって!」とか言っていて 探偵:だいぶ荒れてるな 支配人:えぇ、それもすごい喧噪で…… 料理長:そうだ、思い出した 探偵:ん? 料理長:昨日のディナー、男がずっと不機嫌そうな顔しててさ、女が先に帰っても、まだ残っていて 料理長:んで、食事の片づけをするとき、ふと男の方を見たら、テーブルで……ぶつぶつ独り言を言ってて…… 探偵:へぇ。なんて言ってたんだ? 料理長:「あいつだけは絶対に許さねえ」とか「今夜殺してやる」とか……流石に冗談かと思ったけど 探偵:……ほう 料理長:あと、どこから拾ってきたんだろうかな。木の棒をひっさげて、部屋に帰って行ったのを見たんだよ 探偵:……木の棒? 料理長:ああ。たしかバットくらいの大きさだったな 支配人:もしかしたら、拾ったのかも。近くの林で、林業をしている業者がいて。その作業のあとでしょう、散らばってることが多いんですよ 刑事:そういえば、部屋の中に、へし折れた木の棒がありましたね。現場のものを回収した時に、なんでこんなところにあるか、疑問に思ったのですが……なるほど……あれは外から持ってきたのか 探偵:……えっ? 料理長:あの業者、昼頃によく作業してるんだよな。音がうるさいのなんのって 支配人:でも、この間来られて、差し入れもくれました 刑事:その業者の方は、最近は訪れましたか? 支配人:いや……見ないですね 料理長:忙しくなったんじゃねえのか? 刑事:ううむ、怪しいな。その線も洗ってみたほうがいいかもしれない 料理長:まさか、業者が? 刑事:でも、もし観光客と知り合いなら……少なからず、何かある気が 支配人:前から準備していた、計画的な犯行……ということでしょうか? 刑事:その可能性が高いですね。探偵さんも以前おっしゃっていたのですが、既に殺されたパターンもあると 料理長:既に、か……。例えば1週間前とか? 支配人:それだと、私が怪談話をしていた被害者の女性は……誰なんです? 刑事:おそらくですが、霊として出てきた可能性も、考えられます 支配人:なるほど…… 料理長:いい線いっているんじゃねえか、刑事さん 刑事:ありがとうございます……。なら、さっそく、その林業会社を調べるか…… 探偵:いや、必要ないと思う 刑事:えっ? 料理長:なんでだよ? 支配人:まさか……犯人が分かったのですか? 探偵:うん 料理長:へぇ、じゃあ聞いてやろうじゃねえか 刑事:一体……誰なんです? 探偵さん 探偵:……刑事さん、確認なんだけど 刑事:なんでしょう? 探偵:……へし折れた木の棒があったんだよね? 刑事:ええ、そうですが 探偵:現場に? 刑事:はい 探偵:……いやそれ……観光客が殺したんじゃないの? 支配人:ええっ!? 料理長:なんだって!? 刑事:待ってください! それは本当に間違いないんですか!? 探偵:いやいや確定だって。木の棒、明らかに凶器だろ 探偵:それに、さっきの証言踏まえたらさ、殺したとしか考えられないよ 探偵:あと業者関係なさすぎるし、心霊現象とか、おかしいだろ 刑事:いやでも、まだ殺したとは…… 料理長:っ! おい、支配人……お前が殺すように仕向けたんじゃないのか? 支配人:なっ、なんですか、急に! 料理長:怖い話に乗っかって、客人に変なことを吹き込んだんだろ!? 支配人:そんなわけないですよ! 信じてください! 探偵:あの、ちょっと落ち着いて…… 料理長:売上が悪くて辛いからって、何でもしていいって思ってんのか! 支配人:私は本当にしていない! そもそも、客人とは初めて会うし、私が関与する必要性がありません! 料理長:嘘つけ! 俺はな……お前が本気でこの旅館を広めたいって聞いた時から、ついていくって決めてたんだよ! なのに今はどうだ! みじめにいいわけか! 支配人:私は……私はやってない……神にかけて誓う! 支配人:本当に……私はやっていないんだ……! 探偵:いやだから観光客だって 料理長:お前の言う事は信じないぞ、探偵 刑事:落ち着いてください。ここで争っても仕方ありません 料理長:……悪い、刑事さん。ついカッとなっちまった 刑事:寝不足だと、イライラしがちですから 刑事:……探偵さん。お言葉ですが、一緒に居た観光客もまだやったと認めていませんので、早急に決めるのは、よろしくないかと 探偵:でもなぁ……証拠が綺麗に揃ってるからな 支配人:私は、その……長年この旅館を経営しておりますが、殺人などは絶対にしません。私は、この旅館に来ていただいたお客様を、幸せにしたいだけなのです 支配人:探偵さん、信じてください 探偵:信じるも何も、犯人は…… 料理長:その犯人は実際に捕まってないんだよな? 探偵:まぁ……そうだけども 料理長:だったら安心するのは早くないか? 探偵:ううむ…… 刑事:少しずつ情報は出てきているんですがね…… 刑事:ん……? 電話 0:刑事は携帯を取り出す 刑事:もしもし? ……おお、事情聴取が終わったのか。どうだった? 刑事:……え!? なんだって……! 刑事:ああ、わかった。連絡ありがとう 0:電話を切る 探偵:どうした? 刑事:同行していた観光客が……罪を認めたようです 探偵:だと思ったよ 支配人:そんな……まさか、お客様が…… 料理長:マジか……本当に、探偵の言う通りだったのか…… 支配人:……探偵さん、改めて、ありがとうございます 料理長:あんたの事、疑って悪かった……見直したよ 探偵:えっ? あ、ああ、どうも 支配人:お客様がそのようなことをした、というショックはまだ……大きいですが……営業の再開を、これから考えていかないと 料理長:実際に殺人がおこっちまったからな……どうやってその辺りを払拭していくか 支配人:それは私が考える仕事です。料理長はお客様の為に、いい料理をふるうよう、引き続きお願いします 料理長:ふっ。なら、あんたの不安がぶっ飛ぶような、いい料理を作ろうじゃないか 支配人:頼もしい限りです 刑事:とりあえず、これで解決ですね…… 探偵:そうだな 支配人:もしよかったら、また旅館にもお越しください。良かったら刑事さんと一緒にどうですか? 刑事:はは、さっきも言いましたが、怖いものは苦手で……ただ、もし、被害者の女性が化けて出てくるのであれば、しっかり供養してあげたいものです 支配人:ふふ、そうですね…… 刑事:……やはり流石です、探偵さん。今回も、ありがとうございました 刑事:また後程、報酬をお支払いいたします。今後とも、よしなに 探偵:……何しに来たんだ、俺は!

0:朝、おぞましい外観をした旅館 探偵:どうも 刑事:あぁ、探偵さん 探偵:聞いたよ。難航してるって? 刑事:はは……情けない限りです。さっそく現場、見られます? 探偵:そうだな、案内してくれ 0:現場へ到着 探偵:ここが犯行現場か 刑事:ええ。被害者の遺体や証拠品は、すでにこちらで回収しています 探偵:部屋の様子から見ると……あまり揉みあった形跡もない。おそらく何か鈍器のようなもので殴られて一発かな 刑事:流石、探偵さん。おっしゃる通りです 探偵:まだまだ序の口さ。手段が判っても、犯人を暴くのに繋げないと意味がないからな 刑事:そうですね…… 探偵:にしても、古い旅館だよな、ここ 支配人:ありがとうございます。それが、我が旅館のアピールポイントですので 0:部屋の入り口から声が聞こえた 探偵:あなたは? 刑事:この方は、支配人さんです 支配人:この度はお世話になります 探偵:どうも、はじめまして。……早速だけど、質問をいいかな? 支配人:はい、なんなりと 探偵:この旅館には、全員で何人いたんだ? 支配人:私と、泊まりに来ていたカップルの観光客、あとは食事を任せている料理長ですね 刑事:そのうち、殺害されたのは、女性の観光客です。女性は、後ろから頭を殴られ死亡。犯行時刻は夜21時から、24時の間と思われます 支配人:他のアルバイトやスタッフはいませんでした。定時にあがったので 探偵:料理長は帰らなかったのか? 支配人:ええ。泊まり込みで仕事をしてました。なにせ、仕事熱心なもので 探偵:なるほど。そしたら、観光客か……えっと 刑事:大丈夫です。こちらで先に、事情聴取をしています 探偵:仕事が早いね。なんて言ってた? 刑事:その件ですが……気が動転しておりまして、まだこれからです 探偵:ふうん。となると、まずは候補が1人か。一件、一緒に居た男性が、明らかに犯人のように見えるが…… 刑事:それで決めつけるのは良くない、でしたね 探偵:はは……。こりゃ一本とられたな 探偵:そしたら、支配人さんから聞くか、いや、料理長からにするか……あれ? その料理長はどこに? 支配人:あぁ。申し訳ない……。あの人、まだ寝てるのかな……? 料理長:呼んだか……? 0:眠そうな様子で、料理長が入ってくる 支配人:おお、起きましたか 料理長:何があったんだ? この状況 支配人:殺人ですよ 料理長:へぇ……寝ている間にそんなことが 探偵:昨日の夜から、泊まり込みで旅館に? 料理長:ああ 探偵:具体的に何をしていたんですか? 料理長:次のメニューをどうするか考えていたんだ 料理長:このまま帰ったら、いいアイデアも出てこないと思ってな 支配人:だからと言って、そこまで身を削らなくても…… 料理長:客が喜んでくれる料理を作りたいんだ。眠ってなんかいられない。それに、アイデアが浮かんでくるのは、いつだって現場なんだよ 刑事:ほんとうに、仕事熱心な方なんですね 刑事:私も現場主義なもので、お気持ち、分かります 料理長:へぇ。話が分かるな、あんた。気が合いそうだ 探偵:ふうん、眠ってなんかいられない、か 料理長:なんだよ? 探偵:いや。メニューの事以外で、眠れない事情があったんじゃないか、と思っただけだよ 料理長:あんた……俺を疑ってるのか? 探偵:別に。まだ犯人だとは思ってない。ただ、候補には入っている。 料理長:……気に入らない奴だな 支配人:まぁまぁ、落ち着いて 探偵:もちろん、支配人さんもだ 探偵:あなたは夜、何をしていたんだ? 支配人:私はスタッフの管理作業に終われていて、パソコンに向かってひたすら作業をしていました 探偵:仕事を終えた後は? 支配人:その後ですか……、実は、お客様を、私の部屋へお呼びしたんです 探偵:えっ? なんで? 支配人:せっかく来ていただいたので、怪談話をしたんですよ 探偵:怪談話?  料理長:この人、客が来た時はいつもこれなんだよ。自分の部屋に呼んで、怪談話を聞かせるんだ 支配人:それはそれは、怖がっていました……私としても、それが楽しくてですね 刑事:怪談話かぁ、苦手だなぁ 支配人:身が凍るお話も面白い物ですよ、ふふふ…… 料理長:一番怪しいのはあんただよな。どうみても 支配人:私は、怖がらせたいだけですよ 探偵:本当に?  支配人:はい。でも、まさか殺人が起こるとは、全く思っていませんでした…… 刑事:支配人さんの立場からすると、殺人が起こった館なんて言われ始めたら、人が来なくなるわけですし、嫌ですよね 支配人:困ったものです…… 探偵:そういえば、客は二人だけ? 支配人:はい……やはり……外観のせいか、予約数も少なく 支配人:まぁいかんせん、怖さをウリにした旅館ですので 刑事:でも、こういった風情が好きな人に、ウケはいいと思いますね 支配人:ありがとうございます 探偵:ふむ。犯人候補は、一緒に居た観光客、料理長、支配人…… 探偵:もちろん、観光客が犯人……と考えるのが定石だが、料理長は果たして仕事の為だけに泊まったのか……疑わしいのが一つ、あとは支配人も……犯行現場にいなかったアリバイはない 刑事:支配人さん、監視カメラなどは? 支配人:あぁ……ごめんなさい、建物が古く、経費が足りないもので……設置はしていないんですよ……。もちろん、部屋には鍵がついていますが、防犯対策と言えど、その程度ですね…… 刑事:マスターキーは? 支配人:ロビーにあります 刑事:それを使っているのは、支配人さんだけ? 料理長:いいや、俺もだ 刑事:えっ? 料理長さんも? 料理長:接客の対応を任される時があってな 支配人:どうしても手が離せない時のために、ですね。万が一、他の仕事も出来るように、最低限のことは教えています 料理長:まったく、こき使うのがうまいもんだぜ 刑事:ふうむ……マスターキーを使って部屋に入ることも、この二人にはできてしまう……犯行は可能、か。ますます分からないな…… 探偵:とりあえず、聞ける事を聞いていこう 支配人:はぁ……殺人があった旅館と噂が広まったら、どうやって経営していけばいいのか…… 料理長:これじゃ料理のひとつも、ふるえなくなるな 探偵:お二人とも、見聞きしたことでいいので、何かありませんか? 支配人:……そういえば。こちらに来られる前、二人とも、喧嘩をしていたのかな? 怒号が飛び交っていて 刑事:え? そうなんですか? 支配人:はい。部屋の前まで来られても、まだ言い合っているので、なだめてあげたんですよ 料理長:おいおい。そんな状況でよく怪談話なんかしたな 支配人:来ていただいた方には、満足して帰っていただきたいですから。それがこの旅館のブランド価値だと思っていますので 支配人:ただ……そのあと、部屋を出たら、また口論を再開したみたいで、よほどストレスが溜まっているのかもしれません 探偵:ふうん。……その話から推察するに、二人の関係は良くなかった、か 刑事:そのようですね…… 支配人:私が話を終えて、部屋を出ていかれた後も「お前は最悪な女だ! 別の男と寝やがって!」とか言っていて 探偵:だいぶ荒れてるな 支配人:えぇ、それもすごい喧噪で…… 料理長:そうだ、思い出した 探偵:ん? 料理長:昨日のディナー、男がずっと不機嫌そうな顔しててさ、女が先に帰っても、まだ残っていて 料理長:んで、食事の片づけをするとき、ふと男の方を見たら、テーブルで……ぶつぶつ独り言を言ってて…… 探偵:へぇ。なんて言ってたんだ? 料理長:「あいつだけは絶対に許さねえ」とか「今夜殺してやる」とか……流石に冗談かと思ったけど 探偵:……ほう 料理長:あと、どこから拾ってきたんだろうかな。木の棒をひっさげて、部屋に帰って行ったのを見たんだよ 探偵:……木の棒? 料理長:ああ。たしかバットくらいの大きさだったな 支配人:もしかしたら、拾ったのかも。近くの林で、林業をしている業者がいて。その作業のあとでしょう、散らばってることが多いんですよ 刑事:そういえば、部屋の中に、へし折れた木の棒がありましたね。現場のものを回収した時に、なんでこんなところにあるか、疑問に思ったのですが……なるほど……あれは外から持ってきたのか 探偵:……えっ? 料理長:あの業者、昼頃によく作業してるんだよな。音がうるさいのなんのって 支配人:でも、この間来られて、差し入れもくれました 刑事:その業者の方は、最近は訪れましたか? 支配人:いや……見ないですね 料理長:忙しくなったんじゃねえのか? 刑事:ううむ、怪しいな。その線も洗ってみたほうがいいかもしれない 料理長:まさか、業者が? 刑事:でも、もし観光客と知り合いなら……少なからず、何かある気が 支配人:前から準備していた、計画的な犯行……ということでしょうか? 刑事:その可能性が高いですね。探偵さんも以前おっしゃっていたのですが、既に殺されたパターンもあると 料理長:既に、か……。例えば1週間前とか? 支配人:それだと、私が怪談話をしていた被害者の女性は……誰なんです? 刑事:おそらくですが、霊として出てきた可能性も、考えられます 支配人:なるほど…… 料理長:いい線いっているんじゃねえか、刑事さん 刑事:ありがとうございます……。なら、さっそく、その林業会社を調べるか…… 探偵:いや、必要ないと思う 刑事:えっ? 料理長:なんでだよ? 支配人:まさか……犯人が分かったのですか? 探偵:うん 料理長:へぇ、じゃあ聞いてやろうじゃねえか 刑事:一体……誰なんです? 探偵さん 探偵:……刑事さん、確認なんだけど 刑事:なんでしょう? 探偵:……へし折れた木の棒があったんだよね? 刑事:ええ、そうですが 探偵:現場に? 刑事:はい 探偵:……いやそれ……観光客が殺したんじゃないの? 支配人:ええっ!? 料理長:なんだって!? 刑事:待ってください! それは本当に間違いないんですか!? 探偵:いやいや確定だって。木の棒、明らかに凶器だろ 探偵:それに、さっきの証言踏まえたらさ、殺したとしか考えられないよ 探偵:あと業者関係なさすぎるし、心霊現象とか、おかしいだろ 刑事:いやでも、まだ殺したとは…… 料理長:っ! おい、支配人……お前が殺すように仕向けたんじゃないのか? 支配人:なっ、なんですか、急に! 料理長:怖い話に乗っかって、客人に変なことを吹き込んだんだろ!? 支配人:そんなわけないですよ! 信じてください! 探偵:あの、ちょっと落ち着いて…… 料理長:売上が悪くて辛いからって、何でもしていいって思ってんのか! 支配人:私は本当にしていない! そもそも、客人とは初めて会うし、私が関与する必要性がありません! 料理長:嘘つけ! 俺はな……お前が本気でこの旅館を広めたいって聞いた時から、ついていくって決めてたんだよ! なのに今はどうだ! みじめにいいわけか! 支配人:私は……私はやってない……神にかけて誓う! 支配人:本当に……私はやっていないんだ……! 探偵:いやだから観光客だって 料理長:お前の言う事は信じないぞ、探偵 刑事:落ち着いてください。ここで争っても仕方ありません 料理長:……悪い、刑事さん。ついカッとなっちまった 刑事:寝不足だと、イライラしがちですから 刑事:……探偵さん。お言葉ですが、一緒に居た観光客もまだやったと認めていませんので、早急に決めるのは、よろしくないかと 探偵:でもなぁ……証拠が綺麗に揃ってるからな 支配人:私は、その……長年この旅館を経営しておりますが、殺人などは絶対にしません。私は、この旅館に来ていただいたお客様を、幸せにしたいだけなのです 支配人:探偵さん、信じてください 探偵:信じるも何も、犯人は…… 料理長:その犯人は実際に捕まってないんだよな? 探偵:まぁ……そうだけども 料理長:だったら安心するのは早くないか? 探偵:ううむ…… 刑事:少しずつ情報は出てきているんですがね…… 刑事:ん……? 電話 0:刑事は携帯を取り出す 刑事:もしもし? ……おお、事情聴取が終わったのか。どうだった? 刑事:……え!? なんだって……! 刑事:ああ、わかった。連絡ありがとう 0:電話を切る 探偵:どうした? 刑事:同行していた観光客が……罪を認めたようです 探偵:だと思ったよ 支配人:そんな……まさか、お客様が…… 料理長:マジか……本当に、探偵の言う通りだったのか…… 支配人:……探偵さん、改めて、ありがとうございます 料理長:あんたの事、疑って悪かった……見直したよ 探偵:えっ? あ、ああ、どうも 支配人:お客様がそのようなことをした、というショックはまだ……大きいですが……営業の再開を、これから考えていかないと 料理長:実際に殺人がおこっちまったからな……どうやってその辺りを払拭していくか 支配人:それは私が考える仕事です。料理長はお客様の為に、いい料理をふるうよう、引き続きお願いします 料理長:ふっ。なら、あんたの不安がぶっ飛ぶような、いい料理を作ろうじゃないか 支配人:頼もしい限りです 刑事:とりあえず、これで解決ですね…… 探偵:そうだな 支配人:もしよかったら、また旅館にもお越しください。良かったら刑事さんと一緒にどうですか? 刑事:はは、さっきも言いましたが、怖いものは苦手で……ただ、もし、被害者の女性が化けて出てくるのであれば、しっかり供養してあげたいものです 支配人:ふふ、そうですね…… 刑事:……やはり流石です、探偵さん。今回も、ありがとうございました 刑事:また後程、報酬をお支払いいたします。今後とも、よしなに 探偵:……何しに来たんだ、俺は!