台本概要
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タイトル | 植物に聞いてみた ~ アオキ |
---|---|
作者名 | ねこつう (@nekonotsuuro) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男1、不問1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
戦に敗れ、洞窟に隠れて泣き言を言っている落ち武者に、不思議な声が聞こえてくる。 声は、自分のことを「物の怪」だと言い、なぜか落ち武者をからかい、挑発してくるのだが…… https://note.com/nekonotsuuro/n/n0e687cd30c2a より転載 ・この作品は朗読、配信などで、非商用に限り、無料にて利用していただけますが著作権は放棄しておりません。テキストの著作権は、ねこつうに帰属します。 ・配信の際は、概要欄または、サムネイルなどに、作品タイトル、作者名、掲載URLのクレジットをお願いいたします。 ・語尾や接続詞、物語の内容や意味を改変しない程度に、言いやすい言い回しに変える事は、構いません。 174 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
落ち武者 |
男 ![]() |
22 | 戦に大敗して洞窟に隠れている。 |
アオキ | 不問 | 21 | 落ち武者をからかい挑発する正体不明の声。実は植物の精霊。 |
語り | 不問 | 1 | 落ち武者と兼ね役も可 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
落ち武者: はぁはぁ…
落ち武者: まったく、何故こんなことに……
落ち武者: 与平が帰って来なければ、
落ち武者: わしはこの洞窟で野垂れ死にではないか……
アオキ: ……うぅむ
アオキ: さきほどから聞いておれば
アオキ: うじうじと泣き言ばかり…
アオキ: ほとほとあきれ果てるというものだ
落ち武者: ……!?
落ち武者: 何奴! いったいどこにおる!
落ち武者: (刀を抜こうと構えるくらいの感じで)
アオキ: ……(笑う)
アオキ: ぉお、落ち武者が威勢のいいことだ
アオキ:
アオキ: 我は人間ごときの目には見えぬ
アオキ: ぬしらは、我を「物の怪」と呼んでおるらしいなぁ
落ち武者: ぬっ?
アオキ: そう、殺気をたてなくてもよい
アオキ: おぬしに、危害を加えるつもりなぞない
アオキ: 最後に誰かと会話とやらをしてみたかっただけじゃ
落ち武者: ……?
アオキ: ……のう、落ち武者
アオキ: おぬしは哀れじゃなぁ
落ち武者: 黙れっ、物の怪…
落ち武者: 味方の十倍の敵が攻めてきたのだ
落ち武者: わしは…わしはっ、
落ち武者: それでも勇敢に戦った!
アオキ: なんと杜撰(ずさん)な作戦じゃ
アオキ: 十倍の敵と戦うなど、阿呆な大将がすること
アオキ: 下についたものどもは苦労するばかりじゃな……
落ち武者: 杜撰なことなどない!
落ち武者: しかし
落ち武者: 大雨で川が増水し、援軍が間に合わなかったのだ
落ち武者: わしの策に落ち度はなかった!
アオキ: なんとっ
アオキ: おぬしが、阿呆の大将であったか!
落ち武者: 阿呆の大将ではない!
アオキ: (笑う) では、捕まったら敵に言うがよい
アオキ: 「援軍が間に合わなかっただけで、
アオキ: 負けたわけではないのだ!」と。
アオキ: 最後に笑ってもらえるネタだぞ?
落ち武者: ネタとか言うなッ!
アオキ: いくらでも吠えればよい
アオキ: お前はただの哀れな落ち武者じゃ
アオキ: 今のままでは、な (笑う)
落ち武者: ぬううう!
落ち武者: …………二十年も、耐えておったのに。
落ち武者: ……(トホホな感じで)初戦で負け、物の怪にまでからかわれるなぞ…
落ち武者: 思うてもみなんだ
アオキ: なんだ
アオキ: また、落ち込んでおるのか
アオキ: せわしない奴じゃのう
アオキ: …そうじゃ
アオキ: 想う者くらい、おらんのか?
落ち武者: ……おもうもの…マサコ……
アオキ: いるではないか
アオキ: して、それはお主の一方的な恋か?
落ち武者: 無礼なことを言うでない!
落ち武者: 城を埋め尽くすほどの女子(おなご)が
落ち武者: 方々(ほうぼう)でわしの帰りを待ちわびておる
落ち武者: こんな洞窟で朽ち果ててなるものか!
アオキ: ほぉ
アオキ: そんなに、おぬしはもてるのか……
アオキ: 落ち武者を好むとは
アオキ: 悪趣味な女子(おなご)も多いのじゃのう……
落ち武者: うるさい! 黙れっ!
落ち武者: 貴様、無礼にも程があるぞ!
アオキ: 無礼?(笑う)
アオキ: 無礼か…ならば、せいぜいきばってみせればよい
アオキ: 阿呆の大将?
落ち武者: 先程から貴様は……
落ち武者: ………ぃや、待て
落ち武者: そもそも、落ち武者とバカにしてくるためだけに話しかけるなどあるか?
落ち武者:
落ち武者:
落ち武者: 貴様……
落ち武者: 何か魂胆があって、
落ち武者: わしを挑発しておるのか?
アオキ: ほう
アオキ: 阿呆な落ち武者大将にしては、なかなか賢いではないか
落ち武者: これでも一軍の大将だからな
落ち武者: ……そういえば貴様、妙なことを言っていたな
落ち武者: 最後に誰かと話したかったと。
アオキ: 簡単なことよ。
アオキ: お前と同じ理由じゃ。
落ち武者: わしと同じ理由だと?
アオキ: 生き残るためじゃ。
落ち武者: わからぬ……
落ち武者: 物の怪なら、いくらでも長生きできるのではないのか?
アオキ: いや、我はおぬしに切られたのだ。
アオキ: おぬしは我の仇(かたき)だ。
落ち武者: なに?
アオキ: 正確には、与平とかいうおぬしの仲間が我を切った。
アオキ: そして、切り取った我の体で、
アオキ: この洞窟の入り口を隠したのじゃ。
アオキ: 葉っぱだけではなく枝も青いゆえ、
アオキ: 我はアオキと呼ばれておる。
アオキ: 我はアオキの精霊じゃ!
アオキ: 生命力強く萎れにくいゆえ、利用したのであろうが、
アオキ: いくら我でも、切り取られてはなぁ
アオキ: いずれ枯れてしまう
落ち武者: じゅ、樹木の精霊であったか!
落ち武者: ……それは……悪いことを…した
落ち武者: しかし、それでも、なぜ……
アオキ: ……落ち武者になったおぬしにもしもまだ他を思う心があるのなら、
アオキ: 我の枝を切って清潔な砂に挿し(さし)水をやってはくれぬか。
アオキ: そうしてくれれば我は苗木になり生き延びる
落ち武者: それだけで根付くのか……なんというしぶとさじゃ!
落ち武者: 見習いたいものだ!
落ち武者: そうか! 物の怪。
落ち武者: 貴様はそのために
落ち武者: わざと挑発して、わしの気を引いたな?
アオキ: どうせ互いに瀬戸際ならば、仇であっても、
アオキ: 水を向けて賭けてみようとな
アオキ: そう思ったのだ
落ち武者: なんと肝の座った駆け引き上手
落ち武者: 気に入った!
落ち武者: 貴様を配下に加えたいくらいだ!
アオキ: なんという戯れ(たわむれ)を!
アオキ: 草木と話しておっては、阿呆がとうとう乱心したと言われるぞ?
アオキ: それに、おぬしは間もなく、我の声が聞こえなくなる。
落ち武者: ……?
アオキ: 我らと話ができるのは、特別な力のある者か、
アオキ: あるいは、生と死の境界線にいるもののみ
アオキ: しかし、おぬしはこれ以上振り返ることも、
アオキ: 死を思うことも、もうあるまい……
落ち武者: …………そうだな……
落ち武者: 貴様のお陰で、覚悟がついた!
落ち武者: わしを信じてついてきてくれた者たち……
落ち武者: 生きている者、散っていった者たちのために……
落ち武者: もうわしは、負けぬ!
落ち武者: アオキの精霊よ。
落ち武者: 貴様の声が聞こえなくなっても……
落ち武者: この頼朝……ここを脱出するときに、
落ち武者: 誓って配下の者に命じよう!
落ち武者: 必ず貴様の枝を土に植えて根付かせるようにと。
落ち武者: そして、平家との戦いに、わしが勝利した暁には、
落ち武者: お主に敬意を払い生涯大事に育ててやる
落ち武者: もうわしは、絶対に負けぬ!
落ち武者: このいまいましい世の中を、
落ち武者: この源頼朝(みなもとのよりとも)が作り替えてくれる!
語り: 西暦一一八〇年。
語り: のちに鎌倉幕府を開く源頼朝は
語り: 二十年もの沈黙を破り、伊豆で兵を挙げた。
語り: しかし、運悪く大雨で増水した川に阻まれて
語り: 味方の軍勢は足止めされる。
語り: そのため
語り: 頼朝は、十倍もの敵軍と戦うことになり
語り: 初戦は大敗。
語り: その逃亡中、
語り: 頼朝が隠れていた洞窟の入り口を隠すために、
語り: 萎れにくいアオキの木が使われ、
語り: それを持ってきた土地の者に
語り: 頼朝が青木という名字を与えたという伝説がある。
落ち武者: はぁはぁ…
落ち武者: まったく、何故こんなことに……
落ち武者: 与平が帰って来なければ、
落ち武者: わしはこの洞窟で野垂れ死にではないか……
アオキ: ……うぅむ
アオキ: さきほどから聞いておれば
アオキ: うじうじと泣き言ばかり…
アオキ: ほとほとあきれ果てるというものだ
落ち武者: ……!?
落ち武者: 何奴! いったいどこにおる!
落ち武者: (刀を抜こうと構えるくらいの感じで)
アオキ: ……(笑う)
アオキ: ぉお、落ち武者が威勢のいいことだ
アオキ:
アオキ: 我は人間ごときの目には見えぬ
アオキ: ぬしらは、我を「物の怪」と呼んでおるらしいなぁ
落ち武者: ぬっ?
アオキ: そう、殺気をたてなくてもよい
アオキ: おぬしに、危害を加えるつもりなぞない
アオキ: 最後に誰かと会話とやらをしてみたかっただけじゃ
落ち武者: ……?
アオキ: ……のう、落ち武者
アオキ: おぬしは哀れじゃなぁ
落ち武者: 黙れっ、物の怪…
落ち武者: 味方の十倍の敵が攻めてきたのだ
落ち武者: わしは…わしはっ、
落ち武者: それでも勇敢に戦った!
アオキ: なんと杜撰(ずさん)な作戦じゃ
アオキ: 十倍の敵と戦うなど、阿呆な大将がすること
アオキ: 下についたものどもは苦労するばかりじゃな……
落ち武者: 杜撰なことなどない!
落ち武者: しかし
落ち武者: 大雨で川が増水し、援軍が間に合わなかったのだ
落ち武者: わしの策に落ち度はなかった!
アオキ: なんとっ
アオキ: おぬしが、阿呆の大将であったか!
落ち武者: 阿呆の大将ではない!
アオキ: (笑う) では、捕まったら敵に言うがよい
アオキ: 「援軍が間に合わなかっただけで、
アオキ: 負けたわけではないのだ!」と。
アオキ: 最後に笑ってもらえるネタだぞ?
落ち武者: ネタとか言うなッ!
アオキ: いくらでも吠えればよい
アオキ: お前はただの哀れな落ち武者じゃ
アオキ: 今のままでは、な (笑う)
落ち武者: ぬううう!
落ち武者: …………二十年も、耐えておったのに。
落ち武者: ……(トホホな感じで)初戦で負け、物の怪にまでからかわれるなぞ…
落ち武者: 思うてもみなんだ
アオキ: なんだ
アオキ: また、落ち込んでおるのか
アオキ: せわしない奴じゃのう
アオキ: …そうじゃ
アオキ: 想う者くらい、おらんのか?
落ち武者: ……おもうもの…マサコ……
アオキ: いるではないか
アオキ: して、それはお主の一方的な恋か?
落ち武者: 無礼なことを言うでない!
落ち武者: 城を埋め尽くすほどの女子(おなご)が
落ち武者: 方々(ほうぼう)でわしの帰りを待ちわびておる
落ち武者: こんな洞窟で朽ち果ててなるものか!
アオキ: ほぉ
アオキ: そんなに、おぬしはもてるのか……
アオキ: 落ち武者を好むとは
アオキ: 悪趣味な女子(おなご)も多いのじゃのう……
落ち武者: うるさい! 黙れっ!
落ち武者: 貴様、無礼にも程があるぞ!
アオキ: 無礼?(笑う)
アオキ: 無礼か…ならば、せいぜいきばってみせればよい
アオキ: 阿呆の大将?
落ち武者: 先程から貴様は……
落ち武者: ………ぃや、待て
落ち武者: そもそも、落ち武者とバカにしてくるためだけに話しかけるなどあるか?
落ち武者:
落ち武者:
落ち武者: 貴様……
落ち武者: 何か魂胆があって、
落ち武者: わしを挑発しておるのか?
アオキ: ほう
アオキ: 阿呆な落ち武者大将にしては、なかなか賢いではないか
落ち武者: これでも一軍の大将だからな
落ち武者: ……そういえば貴様、妙なことを言っていたな
落ち武者: 最後に誰かと話したかったと。
アオキ: 簡単なことよ。
アオキ: お前と同じ理由じゃ。
落ち武者: わしと同じ理由だと?
アオキ: 生き残るためじゃ。
落ち武者: わからぬ……
落ち武者: 物の怪なら、いくらでも長生きできるのではないのか?
アオキ: いや、我はおぬしに切られたのだ。
アオキ: おぬしは我の仇(かたき)だ。
落ち武者: なに?
アオキ: 正確には、与平とかいうおぬしの仲間が我を切った。
アオキ: そして、切り取った我の体で、
アオキ: この洞窟の入り口を隠したのじゃ。
アオキ: 葉っぱだけではなく枝も青いゆえ、
アオキ: 我はアオキと呼ばれておる。
アオキ: 我はアオキの精霊じゃ!
アオキ: 生命力強く萎れにくいゆえ、利用したのであろうが、
アオキ: いくら我でも、切り取られてはなぁ
アオキ: いずれ枯れてしまう
落ち武者: じゅ、樹木の精霊であったか!
落ち武者: ……それは……悪いことを…した
落ち武者: しかし、それでも、なぜ……
アオキ: ……落ち武者になったおぬしにもしもまだ他を思う心があるのなら、
アオキ: 我の枝を切って清潔な砂に挿し(さし)水をやってはくれぬか。
アオキ: そうしてくれれば我は苗木になり生き延びる
落ち武者: それだけで根付くのか……なんというしぶとさじゃ!
落ち武者: 見習いたいものだ!
落ち武者: そうか! 物の怪。
落ち武者: 貴様はそのために
落ち武者: わざと挑発して、わしの気を引いたな?
アオキ: どうせ互いに瀬戸際ならば、仇であっても、
アオキ: 水を向けて賭けてみようとな
アオキ: そう思ったのだ
落ち武者: なんと肝の座った駆け引き上手
落ち武者: 気に入った!
落ち武者: 貴様を配下に加えたいくらいだ!
アオキ: なんという戯れ(たわむれ)を!
アオキ: 草木と話しておっては、阿呆がとうとう乱心したと言われるぞ?
アオキ: それに、おぬしは間もなく、我の声が聞こえなくなる。
落ち武者: ……?
アオキ: 我らと話ができるのは、特別な力のある者か、
アオキ: あるいは、生と死の境界線にいるもののみ
アオキ: しかし、おぬしはこれ以上振り返ることも、
アオキ: 死を思うことも、もうあるまい……
落ち武者: …………そうだな……
落ち武者: 貴様のお陰で、覚悟がついた!
落ち武者: わしを信じてついてきてくれた者たち……
落ち武者: 生きている者、散っていった者たちのために……
落ち武者: もうわしは、負けぬ!
落ち武者: アオキの精霊よ。
落ち武者: 貴様の声が聞こえなくなっても……
落ち武者: この頼朝……ここを脱出するときに、
落ち武者: 誓って配下の者に命じよう!
落ち武者: 必ず貴様の枝を土に植えて根付かせるようにと。
落ち武者: そして、平家との戦いに、わしが勝利した暁には、
落ち武者: お主に敬意を払い生涯大事に育ててやる
落ち武者: もうわしは、絶対に負けぬ!
落ち武者: このいまいましい世の中を、
落ち武者: この源頼朝(みなもとのよりとも)が作り替えてくれる!
語り: 西暦一一八〇年。
語り: のちに鎌倉幕府を開く源頼朝は
語り: 二十年もの沈黙を破り、伊豆で兵を挙げた。
語り: しかし、運悪く大雨で増水した川に阻まれて
語り: 味方の軍勢は足止めされる。
語り: そのため
語り: 頼朝は、十倍もの敵軍と戦うことになり
語り: 初戦は大敗。
語り: その逃亡中、
語り: 頼朝が隠れていた洞窟の入り口を隠すために、
語り: 萎れにくいアオキの木が使われ、
語り: それを持ってきた土地の者に
語り: 頼朝が青木という名字を与えたという伝説がある。