台本概要

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タイトル Tail Wind外伝「微能力者の暗躍?」
作者名 なぎ@泣き虫保護者  (@fuyu_number10)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、女3) ※兼役あり
時間 60 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 過去作(どこにも今は出回ってませんが)の焼き直しで生まれたシリーズです。
スタンダードなお話なので、皆様でキャラクターをバンバン色付けしてください。

※台本をご利用になる際は、Xのポストにてお報せくださいませ。
強制ではありませんが、反響を知りたいのと、
お伺いできる限りお邪魔して聴かせていただければと思いますので、よろしければ。

なお、特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
こまち 52 烏丸 こまち(からすま こまち)・・・今回の被害者。剣道部の男子との合同練習で、想い人の亮太朗の鎖骨を折ってしまう。
紫苑 31 高坂 紫苑(こうさか しおん)・・・能力者。占いや催眠のような術を使う。ミステリアスな空気をまとう。
まりあ 39 高坂 まりあ・・・能力者。紫苑と同じく占いの術を使えるが、紫苑ほどではない。ほんわかしている。少し間延びした喋り方。
千夏 35 小鳥遊 千夏(たかなし ちなつ)能力者。先の二名とは違って攻撃的な能力を持つ。「影」を斬ることができる。元気な雰囲気。ハキハキ喋る。
亮太朗 21 宗像 亮太朗(むなかた りょうたろう)・・・さわやか野郎。こまちとの剣道の稽古中に、こまちの突きを受けて鎖骨を骨折する。愛称はりょーくん。クラスメートAと兼ね役。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
紫苑:「これは、ある「特別」な力を持った者たちの、活動の物語。」 まりあ:「「特別な」力。でも、それは人々に知られることなく・・・。」 千夏:「ひっそりと、解き放たれる。」 0: こまち:(N)「いつもの朝。いつもの時間。いつもの道具。そして、大切な人。 こまち:剣道の道具は、いつになっても、量が減っても、慣れることなく重たい。 こまち:こんなものを持ち歩くきっかけになったのは。 こまち:中学に入って、剣道部の見学に行ったとき。 こまち:彼が真っ直ぐに振り下ろす竹刀の軌跡の、うつくしさ。 こまち:一目惚れ、だった。 こまち:話しかけてみると、普段竹刀を振っているとは思えないほど穏やかで、 こまち:私は、*陽《ひ》だまりの中にいるようで、それでいて、いつも顔は熱を持つのだ。 こまち:それは、彼を追いかけて同じ高校の生徒になってからも、変わらない。」 0: こまち:「(うんざりした顔で)重い・・・。」 亮太朗:「最近防具とかは道場に置いておけるようになって、道着だけになったんだからさ、贅沢言わない!」 こまち:「ううう・・・それはわかるんですけどぉ・・・。」 亮太朗:「軽くなった分説得力無いかもだけど、トレーニングだと思ってさ。」 こまち:「(むー、とむくれながら)りょーくん先輩、持ってくださいよー。」 亮太朗:「(笑いながら)ダメだってば。そうやって甘えるのは禁止ね。」 こまち:「ちぇー。」 0:亮太朗、こまち、笑う。 亮太朗:「そういえば、今日は男女で合同稽古だっけ。」 こまち:「そうですよー!*乱取《らんど》りもやるんですから!りょーくん先輩、今日は負けませんから!」 亮太朗:「こまちは雑念が多いからなー、すぐに動きに振り回されるし。」 こまち:「そ、それは!ちちち違いますよ!雑念、じゃないですし!」 亮太朗:「何で必死なの・・・?」 こまち:「いや必死でもないし!絶対!負けないんだからねっ!」 0:亮太朗に「ずびし」と指を差すこまち。 亮太朗:「えぇぇ・・・。」 こまち:「えぇぇ、じゃないです!りょーくん先輩、相手してくださいね!」 亮太朗:「やっぱりそうなる・・・?まぁいいけど、怪我とかしないでね・・・。」 こまち:「言いましたね~!?負けませんよ!」 0:「ふんす」と鼻息の荒いこまち。 亮太朗:「(時計を確認)さ、そろそろ急いだほうがいいかな。」 こまち:「え?もうそんな時間ですかぁ?!」 0:急いで登校する二人。 0:一方その頃。 紫苑:「(ため息)大きな傷と、それよりも大きな傷。先に*塞《ふさ》ぐべきはどちらか・・・。」 0:紫苑の部屋をノックする音。 まりあ:「お兄ちゃん、私先に行くよー?」 紫苑:「ん、・・・あぁ、うん。行ってらっしゃい。気を付けて。」 まりあ:「はーい。お兄ちゃんも早めに出てね!行ってきますー!」 紫苑:「(もう一つ、深いため息)そうだね。僕も、そろそろ行かないと。」 紫苑:(小声で)大きな傷、小さな、傷・・・。(ため息)」 0:紫苑の薄暗い部屋のドアが、静かに閉じられる。 0:場面転換。とある学校の、とある教室。朝。先に登校していたまりあに千夏が声をかける。 千夏:「まーりあっ!おっはよー!」 まりあ:「あ、*千夏《ちな》っちゃん、おはよぉー。」 千夏:「ねねね、まりあ、今日こそは!今日こそはっ!」 まりあ:「えー?千夏っちゃん、そんな毎日占っても・・・。」 千夏:「いいじゃんいいじゃん!『流れ』が変わってるかもだし!」 まりあ:「むー・・・。」 千夏:「ね!ね!?お願い!」 まりあ:「もー、しょうがないなぁ・・・。」 千夏:「あはっ!やったー!」 まりあ:「でも、私はお兄ちゃんみたいな精度は出ないからね?」 千夏:「うんうん、いいからいいからー!」 0:まりあ、タロットカードを取り出して千夏を占う。 まりあ:「・・・はい、星の逆位置・・・だね・・・まだまだ道は長そう・・・。」 千夏:「あーん!もー!なんでよー!」 まりあ:「(ぼそっと)いっそのこと、思い切って言ってみたらいいのに・・・。」 千夏:「まりあ?何か言った?」 まりあ:「え?んーん、なんでも。」 こまち:「おはよ!まりあちゃん、千夏ちゃん!」 千夏:「お!こまちー!おはよー!」 まりあ:「おはよ、こまちちゃん!相変わらず重そうだね、道着。」 こまち:「そうなんだよー・・・もう朝から肩が*凝《こ》っちゃってさぁ・・・。」 千夏:「よろしい!んじゃアタシが肩揉んであげるよ。」 こまち:「いやいや、千夏はいつも変なトコ触るからやだよ!」 千夏:「んー?良いではないか良いではないかぁ~!」 こまち:「ちょっ、こらー!やめろー!」 まりあ:「(乾いた笑い)あはは・・・さて、と。」 0:二人を置いて占いを続行するまりあ。 千夏:「あれ?まりあ、何占ってるの?」 まりあ:「うん・・・ちょっとね・・・。」 こまち:「まりあちゃんの占いって当たるからね・・・気になるよね~。」 千夏:「もー!、教えてよー!」 まりあ:「ちょ、ちょっとまってよ、ね?」 千夏:「・・・まりあ?」 まりあ:「うん、これは・・・。」 千夏:「・・・もしかして、何か起こる・・・?」 まりあ:「千夏っちゃん、「準備したほうがいい」、かな・・・。」 千夏:「・・・そういうことね。わかった。」」 まりあ:「お兄ちゃんにも連絡しておかないと・・・お弁当も渡さなくちゃ。」 千夏:「え、紫苑さん忘れてんの?」 こまち:「まりあちゃんのお兄さん、・・・よくお弁当忘れてない?」 まりあ:「ぎりぎりまで占いしてたみたいから、きっと忘れるだろうと思って・・・先読みして持ってきちゃってたんだ。」 千夏:「まりあ・・・アンタできる子・・・!」 まりあ:「この分だと解決までお弁当忘れちゃいそうだね・・・。」 千夏:「いやいや、さすがにさぁ・・・。」 こまち:「(不思議そうに)ん?」 0:場面転換。放課後。剣道場にて。乱取りで相対するこまちと亮太朗。 こまち:「っ、ふー、ふー。」 亮太朗:「・・・。」 こまち:「(っ!くる!)」 0:亮太朗がこまちに鋭い面を打ち込む。 亮太朗:「あああっ!」 こまち:「んっ!?」 0:こまち、右にかわす。防具に当たるが、亮太朗の面は有効打にならない。 亮太朗:「今日のこまちは・・・手ごわいね。」 こまち:「いたた・・・*稽古《けいこ》、ちゃんとやってますから!」 亮太朗:「・・・(一つ息をつく)勝負。」 こまち:「・・・いきます!!はああっ!」 0:こまちの思い切った突き。亮太朗はかわそうとするが。 亮太朗:「ぐ、っ・・・・!!」 こまち:「っ!?」 0:亮太朗が竹刀を落とし、肩に手を当てて座り込む。 こまち:「先輩!?」 亮太朗:「ぅっぐ・・・やば・・・*鎖骨《さこつ》折れたっぽい・・・っ。」 こまち:「ぇっ!!?あぁ、あ、誰か!救急車!!」 0:十数分後、学校に響くサイレンの音。 0:場面転換。翌日。学園内の廊下。ざわざわとした中で、とある生徒の会話。 生徒A:「ねぇねぇ、聞いた?剣道部の話!」 生徒B:「*烏丸《からすま》さんが*宗像《むなかた》先輩にケガさせたって!」 生徒A:「宗像先輩、骨折したんだって!」 生徒B:「今度の対抗戦、どうするんだろ~?」 0:同じく学園内、昼休み。紫苑が弁当を忘れて購買に行こうとするところ。 紫苑:「しまった・・・今日も弁当忘れてる・・・今日はおにぎりでも買いに(行くか)」 クラスメートA:「(紫苑のセリフを遮る)おー!まりあちゃん!いらっしゃい!」 まりあ:「こんにちは!お兄ちゃん、はい!お弁当!」 紫苑:「あれ?・・・あー。うん、ありがとう、まりあ。」 クラスメートA:「まりあちゃん、相変わらず優しくって可愛いねぇ・・・ねぇねぇ、今日の放課後、お茶でもどう?」 紫苑:「(即座に)おい。妹に手を出すならお前と言えど・・・容赦はしないぞ。」 クラスメートA:「じょ、冗談だって!ってかホントお前って・・・。」 紫苑:「ん?(笑顔で)」 まりあ:「ご、ごめんなさい、今日もバイトがあるので・・・。」 クラスメートA:「あっ、ああー!あはは、全然大丈夫!気にしないで!」 まりあ:「お兄ちゃん、・・・。」 0:まりあ、紫苑にタロットカードの1枚を手渡す。 紫苑:「・・・やっぱりね。分かった。ありがと。」 まりあ:「うんっ。それじゃ!」 0:まりあ、「てててっ」と退場。紫苑はタロットカードを表に向ける。 紫苑:「塔・・・正位置か・・・災難?破壊?あたりかなぁ・・・。」 0:学園と同じ町にある病院から学校へ。亮太朗のお見舞いから登校するこまち。 こまち:「(ため息)私が、・・・私があんなことしなければ・・・。」 0:こまちの影が、黒く、濃くなっていく。こまちの動きとは明らかにシンクロしていない。 こまち:「私・・・どうしたらいいんだろう・・・。」 こまち:「もし、もしも・・・りょーくん先輩が、二度と剣道が出来なくなっちゃったら・・・っ!」 0:こまちの影が、*漆黒《しっこく》に変わった、その時。 こまち:「私なんて、大事な人を傷つけた私なんて・・・あは、そうだよね・・・。」 こまち:「いなく、なっちゃえば・・・。」 0:こまちの足取りは、学校の校舎にフラフラと消えていく。 0:場面転換。紫苑の教室。 紫苑:「・・・?あれは・・・たしか。」 0:別視点、まりあ・千夏の教室。 まりあ:「・・・ん・・・。」 千夏:「あれって・・・こまち?」 まりあ:「千夏っちゃん、行こう。」 千夏:「え?まりあ?行くって?」 まりあ:「こまちちゃん、もしかしたらアレかも。」 千夏:「(表情を引き締めて)了解。まずは紫苑さんとこだね。」 0:紫苑とまりあ・千夏組合流。校舎の屋上には人だかり。 こまち:「来ないで!」 0:こまちのクラスメートや先生が声をかけるが。 こまち:「来ないで!来たらここから飛び降りるから!」 まりあ:「こまちちゃん、・・・あの、あの!」 千夏:「こまち!バカなことしないで!お願い!」 こまち:「千夏・・・まりあちゃん、・・・これは、私の一生のお願い・・・来ないで!」 紫苑:「ふむ・・・とりあえず、人払いをしようか。」 0:紫苑が手をひらり、と振ると、教師を含めやじ馬が急に興味を無くしたような表情で、校舎の中に入っていく。 紫苑:「さて、えーっと・・・烏丸さん。」 こまち:「はい・・・。」 紫苑:「君はここで何をしようとしているか、自分で分かっている?」 こまち:「はい・・・私にはもう、生きている資格なんて・・・。ここから飛び降りれば、全てが終わる、終わらせられるんです!」 紫苑:「うん、それは分かった。でもね、今から飛び降りても、僕の話を聞いてから飛び降りても大して変わらないよ?」 こまち:「それは・・・そうですけど・・・。」 紫苑:「でしょ?まぁそのままでいいから、・・・『聞いて。』」 0:高音の鈴の音が「ちりーん」と響く。 0:瞬間、こまちの瞳からハイライトが消える。ぺたん、と座るこまち。ぼんやりとしている。 こまち:「はい・・・。」 0:紫苑は優しく話しかける。 紫苑:「どうして、飛び降りようって思ったの?」 こまち:「それは・・・。(言い淀む)」 紫苑:「『教えて』?」 0:高音の鈴の音が再び「ちりーん」と響く。 こまち:「・・・昨日の、剣道部でのことです。男子との合同稽古で、相手の先輩を突きにいったんですけど・・・。」 紫苑:「うん。」 こまち:「切っ先が逸れて、相手の、肩に入ってしまって・・・。」 紫苑:「それで?」 こまち:「先輩の、鎖骨が・・・折れ、ちゃ、って・・・!(*嗚咽《おえつ》)」 紫苑:「その先輩には謝ったのかな?」 こまち:「無理言って救急車にも乗せてもらって、ずっと謝って・・・病院でも・・・でも・・・!」 紫苑:「許してもらえなかったの?」 こまち:「逆、です・・・「いいよ、こまちは悪くない」って!「本当に気にするな」って・・・!」 紫苑:「そっか。許してもらえたけど、自分が自分を許せない、そんな感じ?」 こまち:「そうなんです。大切な人を、大好きな人を、傷つけちゃったから・・・それに、彼が剣道を続けられなくなったら、 こまち:って思ったら、私、なんてことしたんだろう、って・・・どうやって責任取れば・・・!」 紫苑:「まりあ、そろそろ「出てくる」よ。準備を。」 まりあ:「うん。千夏っちゃん!」 千夏:「おけおけ!準備完了!いつでもどうぞ、ってね!」 こまち:「私があの時、思い切り竹刀を振らなかったら!「突き」を狙わなかったらっ! こまち:大好きな先輩を、傷つけずに済んだのにっ!!」 0:こまちの影からこまちの形をした「何か」が立ち上がる。 紫苑:「来たね。 紫苑:烏丸さん、君は飛び降りれば全て終わる、と言ったね。でもそれは・・・全然間違ってるよ。 紫苑:好きな人を残して居なくなることは・・・「解決」じゃない。」 まりあ:「千夏っちゃん、誘導するね!」 千夏:「おっけー!任せて!」 まりあ:「お願い、こまちちゃんを助けて・・・。」 0:まりあのペンダントが浮かび輝き、赤いレーザーポインターのように輝く点を走らせ動かす。 0:こまちの影は、そのまりあの誘導に引っかかり、千夏のもとへ。 まりあ:「かかった!千夏っちゃん!」 千夏:「技の名前まだ考えてないけどっ!!消えろぉー!!」 0:千夏の手刀(のように見える)の一振りで、こまちの影は一刀両断される。こまちは完全に気を失う。 千夏:「へへへー、どんなもんよ!ねねね、紫苑さん!見ててくれた!?」 紫苑:「え、うん、・・・いや、技の名前、って・・・。」 千夏:「ん?だってほら、ヒーローは必殺技に名前がついてんじゃん!」 紫苑:「千夏・・・僕らはヒーローとかじゃないんだよ。」 千夏:「あれ?そう?でもさー、こんな能力、何でアタシたちに?」 紫苑:「さぁ、それはまだ何も分からないけどね。」 まりあ:「二人とも、お疲れ様ー。」 紫苑:「さて、彼女を保健室に運んで、終わりにしよう。」 千夏:「(まりあと同時)はーい!」 まりあ:「(千夏と同時)はーい!」 0:学校の保健室、こまちが目覚める。時刻は既に放課後。 こまち:「う、うん、・・・あれ?千夏ちゃん、まりあちゃん?それに・・・りょーくん先輩?」 千夏:「こまち!」 まりあ:「こまちちゃん、よかったぁ~。」 亮太朗:「うん、本当によかった。気分はどう?」 こまち:「あ、はい・・・大丈夫、です・・・。でもどうして?」 亮太朗:「こまちの具合が悪くなった、ってLINEがあってね、飛んできたよ。」 こまち:「そんな!?先輩大けがしたのに!・・・私のせいで!」 亮太朗:「こまち、落ち着いてって。」 こまち:「でも、でも・・・!」 亮太朗:「こまち、大丈夫だから。」 千夏:「さてさて、アタシとまりあはそろそろ帰るね!」 まりあ:「こまちちゃん、お大事に、だよ~!」 0:千夏・まりあ退場。 こまち:「えっ、えっ!?千夏ちゃん?!、まりあちゃん!?」 亮太朗:「こまち。」 こまち:「りょーくん先輩・・・んっ?」 0:亮太朗、怪我をしていない方の腕で、こまちをそっと抱きしめる。 こまち:「先輩・・・。」 亮太朗:「大丈夫。誰も、悪くない。誰も、泣かなくっていいんだよ。」 こまち:「・・・はい・・・。」 0:保健室に、静寂が訪れる。 0:場面転換。紫苑の部屋。 紫苑:「大きな傷も、小さな傷も、塞がったね。何よりだ・・・。」 まりあ:「それだけじゃ、なかった、ね。」 紫苑:「そうだね。あの二人はきっとこれからうまくいくよ。」 千夏:「(むくれている)」 まりあ:「千夏っちゃん?」 千夏:「(大きな声で)何であたしは、上手くいかないのぉ~!!!???」 まりあ:「あはは・・・。」 0:おしまい。

紫苑:「これは、ある「特別」な力を持った者たちの、活動の物語。」 まりあ:「「特別な」力。でも、それは人々に知られることなく・・・。」 千夏:「ひっそりと、解き放たれる。」 0: こまち:(N)「いつもの朝。いつもの時間。いつもの道具。そして、大切な人。 こまち:剣道の道具は、いつになっても、量が減っても、慣れることなく重たい。 こまち:こんなものを持ち歩くきっかけになったのは。 こまち:中学に入って、剣道部の見学に行ったとき。 こまち:彼が真っ直ぐに振り下ろす竹刀の軌跡の、うつくしさ。 こまち:一目惚れ、だった。 こまち:話しかけてみると、普段竹刀を振っているとは思えないほど穏やかで、 こまち:私は、*陽《ひ》だまりの中にいるようで、それでいて、いつも顔は熱を持つのだ。 こまち:それは、彼を追いかけて同じ高校の生徒になってからも、変わらない。」 0: こまち:「(うんざりした顔で)重い・・・。」 亮太朗:「最近防具とかは道場に置いておけるようになって、道着だけになったんだからさ、贅沢言わない!」 こまち:「ううう・・・それはわかるんですけどぉ・・・。」 亮太朗:「軽くなった分説得力無いかもだけど、トレーニングだと思ってさ。」 こまち:「(むー、とむくれながら)りょーくん先輩、持ってくださいよー。」 亮太朗:「(笑いながら)ダメだってば。そうやって甘えるのは禁止ね。」 こまち:「ちぇー。」 0:亮太朗、こまち、笑う。 亮太朗:「そういえば、今日は男女で合同稽古だっけ。」 こまち:「そうですよー!*乱取《らんど》りもやるんですから!りょーくん先輩、今日は負けませんから!」 亮太朗:「こまちは雑念が多いからなー、すぐに動きに振り回されるし。」 こまち:「そ、それは!ちちち違いますよ!雑念、じゃないですし!」 亮太朗:「何で必死なの・・・?」 こまち:「いや必死でもないし!絶対!負けないんだからねっ!」 0:亮太朗に「ずびし」と指を差すこまち。 亮太朗:「えぇぇ・・・。」 こまち:「えぇぇ、じゃないです!りょーくん先輩、相手してくださいね!」 亮太朗:「やっぱりそうなる・・・?まぁいいけど、怪我とかしないでね・・・。」 こまち:「言いましたね~!?負けませんよ!」 0:「ふんす」と鼻息の荒いこまち。 亮太朗:「(時計を確認)さ、そろそろ急いだほうがいいかな。」 こまち:「え?もうそんな時間ですかぁ?!」 0:急いで登校する二人。 0:一方その頃。 紫苑:「(ため息)大きな傷と、それよりも大きな傷。先に*塞《ふさ》ぐべきはどちらか・・・。」 0:紫苑の部屋をノックする音。 まりあ:「お兄ちゃん、私先に行くよー?」 紫苑:「ん、・・・あぁ、うん。行ってらっしゃい。気を付けて。」 まりあ:「はーい。お兄ちゃんも早めに出てね!行ってきますー!」 紫苑:「(もう一つ、深いため息)そうだね。僕も、そろそろ行かないと。」 紫苑:(小声で)大きな傷、小さな、傷・・・。(ため息)」 0:紫苑の薄暗い部屋のドアが、静かに閉じられる。 0:場面転換。とある学校の、とある教室。朝。先に登校していたまりあに千夏が声をかける。 千夏:「まーりあっ!おっはよー!」 まりあ:「あ、*千夏《ちな》っちゃん、おはよぉー。」 千夏:「ねねね、まりあ、今日こそは!今日こそはっ!」 まりあ:「えー?千夏っちゃん、そんな毎日占っても・・・。」 千夏:「いいじゃんいいじゃん!『流れ』が変わってるかもだし!」 まりあ:「むー・・・。」 千夏:「ね!ね!?お願い!」 まりあ:「もー、しょうがないなぁ・・・。」 千夏:「あはっ!やったー!」 まりあ:「でも、私はお兄ちゃんみたいな精度は出ないからね?」 千夏:「うんうん、いいからいいからー!」 0:まりあ、タロットカードを取り出して千夏を占う。 まりあ:「・・・はい、星の逆位置・・・だね・・・まだまだ道は長そう・・・。」 千夏:「あーん!もー!なんでよー!」 まりあ:「(ぼそっと)いっそのこと、思い切って言ってみたらいいのに・・・。」 千夏:「まりあ?何か言った?」 まりあ:「え?んーん、なんでも。」 こまち:「おはよ!まりあちゃん、千夏ちゃん!」 千夏:「お!こまちー!おはよー!」 まりあ:「おはよ、こまちちゃん!相変わらず重そうだね、道着。」 こまち:「そうなんだよー・・・もう朝から肩が*凝《こ》っちゃってさぁ・・・。」 千夏:「よろしい!んじゃアタシが肩揉んであげるよ。」 こまち:「いやいや、千夏はいつも変なトコ触るからやだよ!」 千夏:「んー?良いではないか良いではないかぁ~!」 こまち:「ちょっ、こらー!やめろー!」 まりあ:「(乾いた笑い)あはは・・・さて、と。」 0:二人を置いて占いを続行するまりあ。 千夏:「あれ?まりあ、何占ってるの?」 まりあ:「うん・・・ちょっとね・・・。」 こまち:「まりあちゃんの占いって当たるからね・・・気になるよね~。」 千夏:「もー!、教えてよー!」 まりあ:「ちょ、ちょっとまってよ、ね?」 千夏:「・・・まりあ?」 まりあ:「うん、これは・・・。」 千夏:「・・・もしかして、何か起こる・・・?」 まりあ:「千夏っちゃん、「準備したほうがいい」、かな・・・。」 千夏:「・・・そういうことね。わかった。」」 まりあ:「お兄ちゃんにも連絡しておかないと・・・お弁当も渡さなくちゃ。」 千夏:「え、紫苑さん忘れてんの?」 こまち:「まりあちゃんのお兄さん、・・・よくお弁当忘れてない?」 まりあ:「ぎりぎりまで占いしてたみたいから、きっと忘れるだろうと思って・・・先読みして持ってきちゃってたんだ。」 千夏:「まりあ・・・アンタできる子・・・!」 まりあ:「この分だと解決までお弁当忘れちゃいそうだね・・・。」 千夏:「いやいや、さすがにさぁ・・・。」 こまち:「(不思議そうに)ん?」 0:場面転換。放課後。剣道場にて。乱取りで相対するこまちと亮太朗。 こまち:「っ、ふー、ふー。」 亮太朗:「・・・。」 こまち:「(っ!くる!)」 0:亮太朗がこまちに鋭い面を打ち込む。 亮太朗:「あああっ!」 こまち:「んっ!?」 0:こまち、右にかわす。防具に当たるが、亮太朗の面は有効打にならない。 亮太朗:「今日のこまちは・・・手ごわいね。」 こまち:「いたた・・・*稽古《けいこ》、ちゃんとやってますから!」 亮太朗:「・・・(一つ息をつく)勝負。」 こまち:「・・・いきます!!はああっ!」 0:こまちの思い切った突き。亮太朗はかわそうとするが。 亮太朗:「ぐ、っ・・・・!!」 こまち:「っ!?」 0:亮太朗が竹刀を落とし、肩に手を当てて座り込む。 こまち:「先輩!?」 亮太朗:「ぅっぐ・・・やば・・・*鎖骨《さこつ》折れたっぽい・・・っ。」 こまち:「ぇっ!!?あぁ、あ、誰か!救急車!!」 0:十数分後、学校に響くサイレンの音。 0:場面転換。翌日。学園内の廊下。ざわざわとした中で、とある生徒の会話。 生徒A:「ねぇねぇ、聞いた?剣道部の話!」 生徒B:「*烏丸《からすま》さんが*宗像《むなかた》先輩にケガさせたって!」 生徒A:「宗像先輩、骨折したんだって!」 生徒B:「今度の対抗戦、どうするんだろ~?」 0:同じく学園内、昼休み。紫苑が弁当を忘れて購買に行こうとするところ。 紫苑:「しまった・・・今日も弁当忘れてる・・・今日はおにぎりでも買いに(行くか)」 クラスメートA:「(紫苑のセリフを遮る)おー!まりあちゃん!いらっしゃい!」 まりあ:「こんにちは!お兄ちゃん、はい!お弁当!」 紫苑:「あれ?・・・あー。うん、ありがとう、まりあ。」 クラスメートA:「まりあちゃん、相変わらず優しくって可愛いねぇ・・・ねぇねぇ、今日の放課後、お茶でもどう?」 紫苑:「(即座に)おい。妹に手を出すならお前と言えど・・・容赦はしないぞ。」 クラスメートA:「じょ、冗談だって!ってかホントお前って・・・。」 紫苑:「ん?(笑顔で)」 まりあ:「ご、ごめんなさい、今日もバイトがあるので・・・。」 クラスメートA:「あっ、ああー!あはは、全然大丈夫!気にしないで!」 まりあ:「お兄ちゃん、・・・。」 0:まりあ、紫苑にタロットカードの1枚を手渡す。 紫苑:「・・・やっぱりね。分かった。ありがと。」 まりあ:「うんっ。それじゃ!」 0:まりあ、「てててっ」と退場。紫苑はタロットカードを表に向ける。 紫苑:「塔・・・正位置か・・・災難?破壊?あたりかなぁ・・・。」 0:学園と同じ町にある病院から学校へ。亮太朗のお見舞いから登校するこまち。 こまち:「(ため息)私が、・・・私があんなことしなければ・・・。」 0:こまちの影が、黒く、濃くなっていく。こまちの動きとは明らかにシンクロしていない。 こまち:「私・・・どうしたらいいんだろう・・・。」 こまち:「もし、もしも・・・りょーくん先輩が、二度と剣道が出来なくなっちゃったら・・・っ!」 0:こまちの影が、*漆黒《しっこく》に変わった、その時。 こまち:「私なんて、大事な人を傷つけた私なんて・・・あは、そうだよね・・・。」 こまち:「いなく、なっちゃえば・・・。」 0:こまちの足取りは、学校の校舎にフラフラと消えていく。 0:場面転換。紫苑の教室。 紫苑:「・・・?あれは・・・たしか。」 0:別視点、まりあ・千夏の教室。 まりあ:「・・・ん・・・。」 千夏:「あれって・・・こまち?」 まりあ:「千夏っちゃん、行こう。」 千夏:「え?まりあ?行くって?」 まりあ:「こまちちゃん、もしかしたらアレかも。」 千夏:「(表情を引き締めて)了解。まずは紫苑さんとこだね。」 0:紫苑とまりあ・千夏組合流。校舎の屋上には人だかり。 こまち:「来ないで!」 0:こまちのクラスメートや先生が声をかけるが。 こまち:「来ないで!来たらここから飛び降りるから!」 まりあ:「こまちちゃん、・・・あの、あの!」 千夏:「こまち!バカなことしないで!お願い!」 こまち:「千夏・・・まりあちゃん、・・・これは、私の一生のお願い・・・来ないで!」 紫苑:「ふむ・・・とりあえず、人払いをしようか。」 0:紫苑が手をひらり、と振ると、教師を含めやじ馬が急に興味を無くしたような表情で、校舎の中に入っていく。 紫苑:「さて、えーっと・・・烏丸さん。」 こまち:「はい・・・。」 紫苑:「君はここで何をしようとしているか、自分で分かっている?」 こまち:「はい・・・私にはもう、生きている資格なんて・・・。ここから飛び降りれば、全てが終わる、終わらせられるんです!」 紫苑:「うん、それは分かった。でもね、今から飛び降りても、僕の話を聞いてから飛び降りても大して変わらないよ?」 こまち:「それは・・・そうですけど・・・。」 紫苑:「でしょ?まぁそのままでいいから、・・・『聞いて。』」 0:高音の鈴の音が「ちりーん」と響く。 0:瞬間、こまちの瞳からハイライトが消える。ぺたん、と座るこまち。ぼんやりとしている。 こまち:「はい・・・。」 0:紫苑は優しく話しかける。 紫苑:「どうして、飛び降りようって思ったの?」 こまち:「それは・・・。(言い淀む)」 紫苑:「『教えて』?」 0:高音の鈴の音が再び「ちりーん」と響く。 こまち:「・・・昨日の、剣道部でのことです。男子との合同稽古で、相手の先輩を突きにいったんですけど・・・。」 紫苑:「うん。」 こまち:「切っ先が逸れて、相手の、肩に入ってしまって・・・。」 紫苑:「それで?」 こまち:「先輩の、鎖骨が・・・折れ、ちゃ、って・・・!(*嗚咽《おえつ》)」 紫苑:「その先輩には謝ったのかな?」 こまち:「無理言って救急車にも乗せてもらって、ずっと謝って・・・病院でも・・・でも・・・!」 紫苑:「許してもらえなかったの?」 こまち:「逆、です・・・「いいよ、こまちは悪くない」って!「本当に気にするな」って・・・!」 紫苑:「そっか。許してもらえたけど、自分が自分を許せない、そんな感じ?」 こまち:「そうなんです。大切な人を、大好きな人を、傷つけちゃったから・・・それに、彼が剣道を続けられなくなったら、 こまち:って思ったら、私、なんてことしたんだろう、って・・・どうやって責任取れば・・・!」 紫苑:「まりあ、そろそろ「出てくる」よ。準備を。」 まりあ:「うん。千夏っちゃん!」 千夏:「おけおけ!準備完了!いつでもどうぞ、ってね!」 こまち:「私があの時、思い切り竹刀を振らなかったら!「突き」を狙わなかったらっ! こまち:大好きな先輩を、傷つけずに済んだのにっ!!」 0:こまちの影からこまちの形をした「何か」が立ち上がる。 紫苑:「来たね。 紫苑:烏丸さん、君は飛び降りれば全て終わる、と言ったね。でもそれは・・・全然間違ってるよ。 紫苑:好きな人を残して居なくなることは・・・「解決」じゃない。」 まりあ:「千夏っちゃん、誘導するね!」 千夏:「おっけー!任せて!」 まりあ:「お願い、こまちちゃんを助けて・・・。」 0:まりあのペンダントが浮かび輝き、赤いレーザーポインターのように輝く点を走らせ動かす。 0:こまちの影は、そのまりあの誘導に引っかかり、千夏のもとへ。 まりあ:「かかった!千夏っちゃん!」 千夏:「技の名前まだ考えてないけどっ!!消えろぉー!!」 0:千夏の手刀(のように見える)の一振りで、こまちの影は一刀両断される。こまちは完全に気を失う。 千夏:「へへへー、どんなもんよ!ねねね、紫苑さん!見ててくれた!?」 紫苑:「え、うん、・・・いや、技の名前、って・・・。」 千夏:「ん?だってほら、ヒーローは必殺技に名前がついてんじゃん!」 紫苑:「千夏・・・僕らはヒーローとかじゃないんだよ。」 千夏:「あれ?そう?でもさー、こんな能力、何でアタシたちに?」 紫苑:「さぁ、それはまだ何も分からないけどね。」 まりあ:「二人とも、お疲れ様ー。」 紫苑:「さて、彼女を保健室に運んで、終わりにしよう。」 千夏:「(まりあと同時)はーい!」 まりあ:「(千夏と同時)はーい!」 0:学校の保健室、こまちが目覚める。時刻は既に放課後。 こまち:「う、うん、・・・あれ?千夏ちゃん、まりあちゃん?それに・・・りょーくん先輩?」 千夏:「こまち!」 まりあ:「こまちちゃん、よかったぁ~。」 亮太朗:「うん、本当によかった。気分はどう?」 こまち:「あ、はい・・・大丈夫、です・・・。でもどうして?」 亮太朗:「こまちの具合が悪くなった、ってLINEがあってね、飛んできたよ。」 こまち:「そんな!?先輩大けがしたのに!・・・私のせいで!」 亮太朗:「こまち、落ち着いてって。」 こまち:「でも、でも・・・!」 亮太朗:「こまち、大丈夫だから。」 千夏:「さてさて、アタシとまりあはそろそろ帰るね!」 まりあ:「こまちちゃん、お大事に、だよ~!」 0:千夏・まりあ退場。 こまち:「えっ、えっ!?千夏ちゃん?!、まりあちゃん!?」 亮太朗:「こまち。」 こまち:「りょーくん先輩・・・んっ?」 0:亮太朗、怪我をしていない方の腕で、こまちをそっと抱きしめる。 こまち:「先輩・・・。」 亮太朗:「大丈夫。誰も、悪くない。誰も、泣かなくっていいんだよ。」 こまち:「・・・はい・・・。」 0:保健室に、静寂が訪れる。 0:場面転換。紫苑の部屋。 紫苑:「大きな傷も、小さな傷も、塞がったね。何よりだ・・・。」 まりあ:「それだけじゃ、なかった、ね。」 紫苑:「そうだね。あの二人はきっとこれからうまくいくよ。」 千夏:「(むくれている)」 まりあ:「千夏っちゃん?」 千夏:「(大きな声で)何であたしは、上手くいかないのぉ~!!!???」 まりあ:「あはは・・・。」 0:おしまい。